説明

押しボタンスイッチ

【課題】押しボタンスイッチの構造を簡素化する。
【解決手段】押しボタンスイッチ1は、内部に一対の揺動部材125を備え、押しボタン部11が押されると、揺動部材125が揺動軸41を中心に回動する。一方の揺動部材125から他方の揺動部材125に亘って板ばね124が設けられ、揺動部材125が回動すると、板ばね124の中央部27が上昇し、スイッチ機構26が操作される。揺動部材125は板状であり、押しボタン部11の縦方向全体と重なる。これにより、押しボタン部11の端のみが押されても、スイッチ機構26を確実に操作することができる。また、板ばね124の中央部27が下方に窪み、揺動部材125が板状であることから、押しボタンスイッチ1が薄型化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタン部を押すことにより操作される押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エレベータの操作盤において、薄型の押しボタンスイッチが採用されている。このような押しボタンスイッチとして、例えば、特許文献1ないし4に示すものがある。特許文献1に開示される押しボタンスイッチでは、多数のレバーやアーム部を有する部材により、平行状態を保ちながら操作プランジャを昇降させる平行運動機構が構成される。特許文献2に開示される押釦スイッチでは、2つのレバー部材、2つのジョイント部材、スイッチ作動部材等を組み合わせることにより、押釦部を平行移動させるリンク機構が構成される。
【0003】
一方、特許文献3の押しボタンスイッチでは、スイッチの四隅に4個の操作片を配置することにより、押圧操作板の任意の位置における動作荷重が同じとなる。特許文献4のスイッチ装置では、2つの駆動アームと2つの可動片とを組み合わせることにより、端押ししても接点動作が安定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−93376号公報
【特許文献2】特開2003−272473号公報
【特許文献3】特開2003−257278号公報
【特許文献4】特開2006−100211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1ないし4の押しボタンスイッチでは、構造が複雑であるため、製造コストが高くなってしまう。特に、特許文献1および2の押しボタンスイッチでは、部品数が多く、特許文献3の押しボタンスイッチでは、複雑な形状の金属加工が必要となる。その結果、品質の不安定化を招く虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、押しボタンスイッチの構造を簡素化することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、押しボタンスイッチであって、底部と、前記底部の上方に位置する押しボタン部と、前記底部と前記押しボタン部との間にて左右に分かれて配置される一対の揺動部材と、前記一対の揺動部材の一方から他方に亘って存在するばね部材と、前記ばね部材の上方に位置するスイッチ機構とを備え、前記一対の揺動部材のそれぞれが、前記底部に平行かつ左右方向に垂直な縦方向を向く揺動軸を中心に揺動可能に支持され、前記揺動軸よりも前記左右方向外側にて、前記ばね部材の上面に接する第1ばね接触部と、前記第1ばね接触部よりも前記左右方向内側にて、前記ばね部材の下面に接する第2ばね接触部と、前記揺動軸よりも前記左右方向外側、かつ、前記縦方向における両端部に設けられ、前記押しボタン部の下降により下方に向かう力を受けるボタン当接部とを備え、前記ボタン当接部が下降して少なくとも一方の揺動部材が揺動することにより、前記ばね部材の前記一対の揺動部材の間の部位が上昇して前記スイッチ機構が操作される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の押しボタンスイッチであって、前記一対の揺動部材のそれぞれが、前記第1ばね接触部よりも前記左右方向内側にて、前記ばね部材の上面に接する第3ばね接触部をさらに備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の押しボタンスイッチであって、前記ばね部材が、板ばねである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の押しボタンスイッチであって、前記板ばねが、前記一対の揺動部材の間にて下方に窪む窪み部を備え、前記窪み部の前記左右方向の幅が、前記スイッチ機構の幅よりも大きい。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の押しボタンスイッチであって、前記一対の揺動部材のそれぞれが、樹脂にて成型された板状である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、押しボタンスイッチの構造を簡素化することができる。請求項2の発明では、簡単な構造で、端押し時に押しボタン部全体を下降させることができる。
【0013】
請求項3ないし5の発明では、押しボタンスイッチを薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】押しボタンスイッチの斜視図である。
【図2】押しボタンスイッチの斜視図である。
【図3】押しボタンスイッチの平面図である。
【図4】押しボタンスイッチの正面図である。
【図5】押しボタンスイッチの分解斜視図である。
【図6】押しボタンスイッチの分解斜視図である。
【図7】揺動部材の斜視図である。
【図8】押しボタンスイッチの内部を示す平面図である。
【図9】押しボタンスイッチの断面図である。
【図10】押しボタンスイッチの断面図である。
【図11】押しボタンスイッチの断面図である。
【図12】押しボタンスイッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る押しボタンスイッチ1の上面を含む斜視図、図2は、下面を含む斜視図、図3は平面図、図4は正面図である。押しボタンスイッチ1は、押しボタン部11と、本体部12とを備える。押しボタンスイッチ1は、エレベータの操作盤に使用されるが、他の機器の操作盤や他の様々な用途に使用することができる。
【0016】
以下の説明では、押しボタンスイッチ1の押しボタン部11側を上側、本体部12側を下側として説明するが、上下方向は重力方向と一致する必要はない。また、図3における左右方向を「左右方向」と呼び、上下方向(すなわち、図4の左右方向および上下方向に垂直な方向)を「縦方向」と呼ぶ。もちろん、左右方向や縦方向は、押しボタンスイッチ1を操作する者から見て左右方向や縦方向である必要はない。
【0017】
押しボタン部11は、操作者が指で下方に押すことにより、下方へと移動する。これにより、押しボタンスイッチ1がオン状態となる。押しボタン部11から指が離れると、押しボタン部11は上昇して元の位置に戻り、オフ状態となる。押されている間だけ押しボタンスイッチ1がオフ状態となり、押されていない間にオン状態となってもよい。電子回路を内蔵することにより、押しボタン部11が押下される毎にオン状態とオフ状態とが入れ替わってもよく、さらに複雑なスイッチング動作が行われてもよい。
【0018】
後述するように、押しボタンスイッチ1内には光源が内蔵されており、例えば、押しボタン部11が押されることにより、押しボタン部11が光る。押しボタンスイッチ1の外形は、およそ直方体であり、平面視した場合、正方形である。押しボタンスイッチ1の外形は任意に変更されてよく、平面視した場合に、長方形、円形、楕円等であってもよい。また、押しボタン部11は本体部12の上方全体を覆う大きさでなくてもよく、本体部12よりも小さくても大きくてもよい。
【0019】
図5および図6は、押しボタンスイッチ1の分解斜視図である。図5は上面側を示し、図6は下面側を示す。押しボタンスイッチ1は、パネル111と、パネルホルダ112と、リフレクタ121と、基板122と、保護ラバー123と、板ばね124と、一対の揺動部材125と、ベース部126とを備える。
【0020】
パネル111およびパネルホルダ112により、押しボタン部11が構成される。パネル111は正方形であり、透光性を有する。パネルホルダ112は正方形のフレーム状である。パネルホルダ112の内側にパネル111が嵌め込まれて固定される。パネルホルダ112の各辺の下部は、パネルホルダ112の外形よりも僅かに内側に位置し、下部がベース部126の内側に位置することにより、押しボタン部11の移動が案内される。パネルホルダ112の左右の各辺の下部は、辺の両端部側に分かれて下方に突出する2つの突起部21を有する。パネルホルダ112の縦方向両側の各辺の下部は、中央にて下方に突出する1つの突起部22を有する。パネル111とパネルホルダ112とは、一体形成されてもよい。
【0021】
リフレクタ121は、パネルホルダ112よりも小さい正方形のフレーム状である。リフレクタ121の表面には、鏡面仕上げが施されている。リフレクタ121は、下方に突出する4つの脚部23を有する。
【0022】
基板122は、脚部23に対応する4つの切り欠き24を有する。基板122の上面には複数のLED(発光ダイオード)25が実装される。LED25は、リフレクタ121の内側に位置する。基板122の下面の中央には、スイッチ機構26が実装される。スイッチ機構26は、小型のタクトスイッチである。基板122の下面には、他の電子部品も実装される。
【0023】
保護ラバー123は、スイッチ機構26の下面を覆う。これにより、スイッチ機構26に不必要に大きな力や衝撃が加わることが防止され、スイッチ機構26の寿命が向上する。板ばね124は、左右方向に延びる帯状の金属の部材を折り曲げたものである。板ばね124の中央部27は、下方に向かって突出するように屈曲する。一対の揺動部材125は、ベース部126内の左右に配置される。各揺動部材125は、縦方向に延びる板状である。揺動部材125は樹脂にて成型される。揺動部材125の詳細については後述する。板ばね124は、一方の揺動部材125から他方の揺動部材125に亘って存在する。
【0024】
ベース部126は無蓋箱状である。すなわち、ベース部126は、正方形の底部31と、底部31の外縁部から上方に突出する側壁部32とを備える。ベース部126と押しボタン部11とが組み合わされることにより、リフレクタ121、基板122、保護ラバー123、板ばね124および揺動部材125を収容する空間が形成される。底部31の中央には2つのラバー支持部33が設けられ、ラバー支持部33の周囲に4つの基板支持部34が設けられる。ラバー支持部33および基板支持部34は底部31から上方に突出する。
【0025】
ラバー支持部33は、保護ラバー123と接して基板122と共に保護ラバー123を挟持する。基板支持部34は、基板122の下面に当接して基板122を支持する。基板支持部34には、リフレクタ121の脚部23とスナップフィット構造により係合する係合部が設けられる。脚部23は基板122の切り欠き24を介して基板支持部34と係合する。これにより、基板122がリフレクタ121と基板支持部34との間に挟まれるようにして支持される。
【0026】
図7は、揺動部材125の斜視図である。図8は、押しボタンスイッチ1から押しボタン部11、リフレクタ121、基板122および保護ラバー123を取り除いた平面図である。図9は、図3に示すA−Aの位置での押しボタンスイッチ1の断面図である。一対の揺動部材125は、ベース部126の底部31と押しボタン部11との間にて左右に分かれて配置される。
【0027】
図7および図8において一点鎖線にて示す軸41は、揺動部材125の揺動の中心となる揺動軸である。揺動軸41は、ベース部126の底部31に平行かつ左右方向に垂直な縦方向を向き、左右方向に離れて位置する。揺動部材125の縦方向の両端部には、揺動軸41に沿って突出する突起部421が設けられる。実際には、突起部421は、揺動軸41を中心とする円柱部42の両端部である。突起部421がベース部126の側壁部32に設けられた凹部35内に位置することにより、揺動部材125が揺動可能に支持される。図9に示すように、実際には、ベース部126の底部31に溝36設けられており、円柱部42が溝36上に位置することによっても、揺動が案内される。
【0028】
図7および図8に示すように、揺動部材125の揺動軸41よりも左右方向外側、かつ、縦方向における両端部には、ボタン当接部43が設けられる。ボタン当接部43は、少なくとも縦方向の両端部に設けられていればよく、両端部の間にさらに設けられてもよい。また、縦方向の一端側から他端側全体にボタン当接部43を設けてもよい。ボタン当接部43は、図6に示すパネルホルダ112の下部の突起部21と当接する。ボタン当接部43は、押しボタン部11の下降により下方に向かう力を受ける。これにより、右側の揺動部材125は揺動軸41を中心として回動し、揺動軸41よりも左右方向外側の部位が下方に向かい、左右方向内側の部位が上方へと向かう。左側の揺動部材125も揺動軸41を中心として回動し、揺動軸41よりも左右方向外側の部位が下方に向かい、左右方向内側の部位が上方へと向かう。また、図3における押しボタン部11の右上または右下の部位が押下された場合は、少なくとも右側の揺動部材125が回動し、押しボタン部11の左上または左下の部位が押下された場合は、少なくとも左側の揺動部材125が回動する。
【0029】
揺動部材125には、縦方向に並ぶボタン当接部43の間に、ばね取付部44が設けられる。ばね取付部44は、揺動軸41よりも左右方向外側に位置するのであれば、揺動部材125の最も外側に設けられる必要はない。図8および図9に示すように、ばね取付部44は板ばね124の両端部の上面に接する。揺動部材125の縦方向中央かつ揺動軸41の左右方向内側には、内側に突出するばね支持部45が設けられる。ばね支持部45は、板ばね124の下面に当接する。
【0030】
図9に示す状態において、押しボタン部11の中央部が押下されると、右側の揺動部材125の2つのボタン当接部43にパネルホルダ112の右側の2つの突起部21(図6参照)が当接し、右側の揺動部材125は、揺動軸41を中心として時計回りに回動する。また、左側の揺動部材125の2つのボタン当接部43にパネルホルダ112の左側の2つの突起部21が当接し、左側の揺動部材125は、揺動軸41を中心として反時計回りに回動する。これにより、板ばね124の両端部が、ばね取付部44により下方へと向かい、板ばね124の中央部27が、ばね支持部45により上方へと向かう。図10に示すように、中央部27の上昇により、中央部27の上方に位置するスイッチ機構26が操作される。正確には、スイッチ機構26は、図5に示す保護ラバー123を介して操作される。
【0031】
板ばね124は、常に右側の揺動部材125に反時計回りの力(トルク)を与え、左側の揺動部材125に時計回りの力を与える。したがって、操作者の指が押しボタン部11から離れると、板ばね124の力(およびスイッチ機構26からの力)により、右側の揺動部材125が揺動軸41を中心として反時計回りに回動し、左側の揺動部材125が揺動軸41を中心として時計回りに回動し、押しボタン部11が上昇して図9に示す状態に戻る。押しボタン部11は、図9に示されない部位にてベース部126と上下方向に当接し、押しボタン部11はベース部126からは抜けない。このように、押しボタンスイッチ1では、別途、押しボタン部11を復帰させるばねを設ける必要はない。
【0032】
なお、揺動部材125が回動を開始する前の状態から回動後の状態まで、板ばね124の両端部の上面は常にばね取付部44に接して上方に向かう力を与える。押しボタン部11を押し込む初期の力は、板ばね124により決定される。ばね支持部45は、押しボタン部11が押し込まれた状態では板ばね124の下面に接するが、図9の状態では必ずしも板ばね124の下面に接する必要はない。
【0033】
押しボタン部11の右側かつ縦方向中央の部位が押された場合、右側の揺動部材125の2つのボタン当接部43にパネルホルダ112の右側の2つの突起部21が当接する。押しボタン部11の図3における右上の部位が押された場合、右側の揺動部材125の図8における上側のボタン当接部43に突起部21が当接する。押しボタン部11の図3における右下の部位が押された場合、右側の揺動部材125の図8における下側のボタン当接部43に突起部21が当接する。
【0034】
同様に、押しボタン部11の左側かつ縦方向中央の部位が押された場合、左側の揺動部材125の2つのボタン当接部43にパネルホルダ112の左側の2つの突起部21が当接する。押しボタン部11の図3における左上の部位が押された場合、左側の揺動部材125の図8における上側のボタン当接部43に突起部21が当接する。押しボタン部11の図3における左下の部位が押された場合、左側の揺動部材125の図8における下側のボタン当接部43に突起部21が当接する。また、押しボタン部11の図3における上側かつ左右方向の中央の部位が押された場合、右側の揺動部材125の図8における上側のボタン当接部43と左側の揺動部材125の図8における上側のボタン当接部43に突起部21が当接する。同様に、押しボタン部11の図3における下側かつ左右方向の中央の部位が押された場合、右側の揺動部材125の図8における下側のボタン当接部43と左側の揺動部材125の図8における下側のボタン当接部43に突起部21が当接する。
【0035】
以上のように、押しボタン部11の押圧位置によって、押しボタン部11により押されるボタン当接部43は変化する。しかし、押しボタン部11のいずれの位置が押された場合であっても、少なくとも1つのボタン当接部43が押しボタン部11に押されて少なくとも一方の揺動部材125が揺動軸41を中心として回動する。また、いずれのボタン当接部43が押された場合であっても、回動する際には、揺動部材125は、ばね取付部44およびばね支持部45により板ばね124に同様に力を与える。これにより、押しボタン部11の任意の位置を押圧しても確実にスイッチ機構26を操作することができる。
【0036】
第1の実施の形態に係る押しボタンスイッチ1では、押しボタン部11の下降をスイッチ機構26に伝達する機構が、実質的に一対の揺動部材125および板ばね124により実現される。これにより、押しボタンスイッチ1の構造を簡素化することができ、押しボタンスイッチ1の製造コストを削減することができる。
【0037】
また、揺動部材125の構造は、板状の部材に、ボタン当接部43、ばね取付部44およびばね支持部45を設けたものである。揺動部材125をこのような板状の簡単な構造とし、かつ、樹脂にて成型することにより、押しボタンスイッチ1の製造コストをさらに削減することができる。また、押しボタンスイッチ1の薄型化も実現される。
【0038】
加えて、押しボタンスイッチ1では、板ばね124が帯状であることから、元の材料から板ばね124を低コストにて製造することができる。板ばね124の中央部27は、一対の揺動部材125の間の部位であり、下方へと窪む窪み部となっており、窪み部の左右方向の幅はスイッチ機構26の幅よりも大きい。これにより、左右方向および縦方向において板ばね124の中央部27以外の部位がスイッチ機構26と干渉することを避けつつ、押しボタンスイッチ1を薄型化することができる。
【0039】
押しボタンスイッチ1では、揺動部材125が左右に設けられ、かつ、揺動部材125が押しボタン部11の縦方向全体と重なることから、押しボタン部11の隅を押す、いわゆる端押しが行われても、少なくとも一方の揺動部材が回動して板ばね124の中央部27が上昇し、スイッチ機構26の操作が行われる。これにより、押しボタンスイッチ1の操作を確実に行うことができる。
【0040】
押しボタンスイッチ1では、剛性が異なる板ばね124に変更することにより、押しボタンスイッチの操作に要する力の大きさを容易に変更することができる。また、板ばね124を変更して、図9に示す状態において板ばね124の端部がばね取付部44に与える力を変更することにより、押しボタン部11を押し込む際の初期の力を変更することができる。
【0041】
さらに、揺動部材125の設計を変更して、図10中に符号451にて示す、揺動軸41からばね支持部45の先端までの距離を変更することにより、スイッチ機構26の操作ストロークを容易に変更することができる。これにより、採用するスイッチ機構26の変更に容易に対応することができる。揺動部材125およびベース部126の設計を変更する場合、揺動軸41からボタン当接部43までの左右方向における距離を変えることにより、押しボタン部11の押し込み量やスイッチ機構26の操作ストロークを様々に変更することができる。
【0042】
このように、押しボタンスイッチ1では、板ばね124や揺動部材125等の簡単な設計変更により、押しボタンスイッチ1の用途に合わせた様々な仕様変更に容易に対応することができる。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0043】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る押しボタンスイッチ1aの断面図であり、図10の状態に対応する。押しボタンスイッチ1aでは、揺動部材125のばね支持部45の上方に、ばね保持部46が設けられる。ばね保持部46は、板ばね124の上面に接する。具体的には、板ばね124の(縦方向の)両側においてばね支持部45から上方に突出する突出部が設けられ、この突出部に、板ばね124の上面に向かって互いに近づくように僅かに突出する突起がばね保持部46として設けられる。ばね保持部46は、板ばね124の上面に引っかかるようにして接する。ばね支持部45上において、板ばね124は、ばね支持部45とばね保持部46との間に挟まれるようにして保持される。
【0044】
押しボタンスイッチ1aでは、押しボタン部11が端押しされて一方の揺動部材125が回動すると、第1の実施の形態と同様に、板ばね124の中央部27が上昇してスイッチ機構26が操作される。このとき、他方の揺動部材125では、ばね保持部46が板ばね124により持ち上げられ、ばね支持部45が上昇してばね取付部44が下降する。その結果、他方の揺動部材125側においても押しボタン部11が下降し、押しボタン部11全体が下降する。押しボタン部11から指が離されると、第1の実施の形態と同様に、板ばね124の復元力により、両揺動部材125が回動し、押しボタン部11が元の高さに戻る。
【0045】
このように、端押し時に2つの揺動部材125が連動するため、押しボタン部11の中央を押す場合と端を押す場合とで、押し込む荷重をほぼ同じとすることができる。その結果、操作性が向上する。また、端押し時に押しボタン部11がほとんど傾斜せずに下降するため、押しボタン部11とベース部126との間に生じる摺接を低減することができる。なお、押しボタン部11の押圧位置と、押し下げられるボタン当接部43の位置との関係は、第1の実施の形態と同様である。
【0046】
また、押しボタンスイッチ1aでは、第1の実施の形態と同様に構造が簡単であり、押しボタンスイッチ1aの製造コストを削減することができる。押しボタンスイッチ1aの薄型化も容易に実現される。
【0047】
上記動作において、ばね取付部44を、揺動軸41の左右方向外側にて板ばね124の上面に接する第1ばね接触部と捉え、ばね支持部45を、揺動軸41の左右方向内側にて板ばね124の下面に接する第2ばね接触部と捉え、ばね保持部46を、揺動軸41よりも左右方向内側にて板ばね124の上面に接触する第3ばね接触部と捉えた場合、押しボタン部11が端押しされると、第1ばね接触部および第2ばね接触部により、板ばね124の中央部27が上昇してスイッチ機構26が操作されるといえる。そして、第3ばね接触部により、他方の揺動部材125も回動する。その結果、押しボタン部11全体がほとんど傾斜せずに下降する。押しボタン部11から指が離されると、第1ばね接触部および第2ばね接触部により、両揺動部材125が元の姿勢に戻り、押しボタン部11が元の位置へと上昇する。なお、上記説明における第1ばね接触部および第2ばね接触部の機能は、第1の実施の形態でも同様である。
【0048】
第1および第2の実施の形態では、ばね支持部45である第2ばね接触部は揺動軸41よりも左右方向内側に設けられるが、第2ばね接触部は第1ばね接触部よりも内側に設けられるのであれば、揺動軸41の外側に位置してもよい。図11では、第3ばね接触部は、揺動軸41よりも左右方向内側に設けられるが、第3ばね接触部は、第1ばね接触部よりも左右方向内側に設けられるのであれば、揺動軸41よりも左右方向外側に設けられてもよい。
【0049】
さらに、第1の実施の形態に係る押しボタンスイッチ1において、図12に示すようにばね取付部44を左右方向内側に延ばしてもよい。これにより、板ばね124の端部の上面が広い面にて接触し、ばね取付部44の左右方向外側の部位441が第1ばね接触部として機能し、左右方向内側の部位442が第3ばね接触部として機能する。このようなばね取付部44によっても端押し時に両揺動部材125を連動させて押しボタン部11全体を下降させることができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0051】
例えば、板ばね124は、棒状のばね部材であってもよい。棒状であっても、第1ばね接触部および第3ばね接触部がばね部材のおよそ上面と捉えることができる部位に接し、第2ばね接触部がばね部材のおよそ下面と捉えることができる部位に接することにより、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様の押しボタンスイッチが実現される。なお、ばね部材が棒状であっても、スイッチ機構26に接する中央部は幅広で平らであることが好ましい。ばね部材は、両揺動部材125の間にて中央部が昇降するように撓むことができる弾性体であれば、材料や形状は様々に変更されてよい。
【0052】
押しボタン部11は円形、楕円、八角形等でもよい。揺動部材125は押しボタン部11よりも縦方向に長くてもよい。この場合、揺動部材125の押しボタン部11に重なる領域の縦方向両端部にボタン当接部43が設けられる。このように、ボタン当接部43は、揺動部材125の縦方向におけるおよそ両端部に位置するのであれば、最も端に設けられる必要はない。
【0053】
ばね部材である板ばね124は、縦方向の中央に配置されなくてもよい。板ばね124はパネル111を照明する光源を避けて図8における上側や下側に偏って配置されてよい。これにより、他の部品の配置の自由度が高くなる。板ばね124は、図8における上下に2つ配置されてもよい。この場合、2つの板ばね124の中央部27の上方に2つのスイッチ機構26が配置される。2つのスイッチ機構26が設けられることにより、押しボタンスイッチの信頼性を高めることができる。
【0054】
スイッチ機構26は板ばね124の完全に中央に位置する必要はなく、中央部と捉えることができる部位の上方に位置すればよい。また、スイッチ機構26は板ばね124の上方(板ばね124に接触しても接触しなくてもよい。)であれば必ずしも中央部の上方に位置しなくてもよい。押しボタン部11が押された場合に、板ばね124の少なくとも一対の揺動部材125の間の部位が上昇することから、この上昇部位にて操作可能であれば、スイッチ機構26は板ばね124の上方の様々な位置に配置可能である。なお、一対の揺動部材125は、互いに左右対称な形状でなくてもよい。スイッチ機構26には様々なタイプのものが採用されてよい。スイッチ機構26の構造によっては、保護ラバー123は省かれてよい。
【0055】
揺動部材125は、樹脂以外の他の材料にて形成されてよい。揺動部材125は板状でなくてもよい。揺動部材125は、揺動軸41を中心に揺動可能に支持されるのであれば、縦方向の両端部で支持される必要はない。ただし、両端部で支持することにより、揺動部材125の形状を簡素化することができる。
【0056】
押しボタンスイッチには、LED25等の照明部は必ずしも設けられる必要はない。他の手法によりパネル111を照明または発光させてもよい。例えば、基板122の上面に導光板を設け、LEDを導光板のエッジに対向するように基板122に実装することにより、導光板を発光させ、これにより、パネル111の照明が行われてもよい。
【0057】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、様々な機器の操作盤の押しボタンスイッチとして用いることができ、他の様々な用途の押しボタンスイッチとしても利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1a 押しボタンスイッチ
11 押しボタン部
26 スイッチ機構
27 中央部(窪み部)
31 底部
41 揺動軸
43 ボタン当接部
44 ばね取付部(第1ばね接触部)
45 ばね支持部(第2ばね接触部)
46 ばね保持部(第3ばね接触部)
124 板ばね(ばね部材)
125 揺動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタンスイッチであって、
底部と、
前記底部の上方に位置する押しボタン部と、
前記底部と前記押しボタン部との間にて左右に分かれて配置される一対の揺動部材と、
前記一対の揺動部材の一方から他方に亘って存在するばね部材と、
前記ばね部材の上方に位置するスイッチ機構と、
を備え、
前記一対の揺動部材のそれぞれが、
前記底部に平行かつ左右方向に垂直な縦方向を向く揺動軸を中心に揺動可能に支持され、
前記揺動軸よりも前記左右方向外側にて、前記ばね部材の上面に接する第1ばね接触部と、
前記第1ばね接触部よりも前記左右方向内側にて、前記ばね部材の下面に接する第2ばね接触部と、
前記揺動軸よりも前記左右方向外側、かつ、前記縦方向における両端部に設けられ、前記押しボタン部の下降により下方に向かう力を受けるボタン当接部と、
を備え、
前記ボタン当接部が下降して少なくとも一方の揺動部材が揺動することにより、前記ばね部材の前記一対の揺動部材の間の部位が上昇して前記スイッチ機構が操作されることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の押しボタンスイッチであって、
前記一対の揺動部材のそれぞれが、前記第1ばね接触部よりも前記左右方向内側にて、前記ばね部材の上面に接する第3ばね接触部をさらに備えることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の押しボタンスイッチであって、
前記ばね部材が、板ばねであることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載の押しボタンスイッチであって、
前記板ばねが、前記一対の揺動部材の間にて下方に窪む窪み部を備え、
前記窪み部の前記左右方向の幅が、前記スイッチ機構の幅よりも大きいことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の押しボタンスイッチであって、
前記一対の揺動部材のそれぞれが、樹脂にて成型された板状であることを特徴とする押しボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−195072(P2012−195072A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56451(P2011−56451)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】