説明

押ボタンスイッチおよびこれを用いた電子機器

【課題】設置のためのスペースやコストの拡大を招くことなく、クリック感を向上する。
【解決手段】押圧力により下方に変位して可動接点と固定接点とを接触させ、押圧力が解除されると上方に変位して各接点の接触を解除する可動部10を有するスイッチ本体1と、押下操作に応じて可動部10を押圧するボタン部2と、一端部がボタン部に連結されて、ボタン部2を支持する支持腕3とを具備するスイッチSWにおいて、支持腕3のボタン部2に連結されていない側端部を、上下方向に沿う支持面内の可動部10の上面の移動範囲の斜め下方に回動可能に支持する。ボタン部2の底面2Mは、押下操作を受けていないときには傾斜した状態で可動部10から離れて位置するが、押下操作によりスイッチ本体1の可動接点と固定接点とを接触させる位置まで下がったときの底面2Mは、ほぼ水平な状態となって可動部10を押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押下操作に応じて動作する押ボタンスイッチおよびこのスイッチが導入された操作部を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な押ボタンスイッチとして、下端部に可動接点が設けられた可動部と、可動部を押圧するボタン部とを有するものがある。可動部は、回路基板上に設けられた固定接点の上に対向配備され、ボタン部は筐体の表面に露出する。ユーザの指によりボタン部が押下されると、ボタン部と可動部とは共に下方に変位して、可動接点と固定接点とが接触した状態となる。ボタン部から指が離れると、ボタン部および可動部は元の位置に戻り、各接点の接触状態が解除される(特許文献1を参照。)。
【0003】
近年は、様々な小型の電子機器に適合する押ボタンスイッチが開発され、特許文献2に示されるように、幅狭の筐体の上部に複数の押ボタンスイッチが配備される場合もある。このような電子機器では、制御基板を起立状態で収容するので、図8に示すような構成の押ボタンスイッチが使用される場合がある。
【0004】
この例の押ボタンスイッチSW0は、上下方向に移動可能な可動部10を有するスイッチ本体1と、押下操作に応じて可動部10を押圧するボタン部2と、ボタン部2に一体に設けられる支持腕3とを具備する。スイッチ本体1の背面は起立配備された基板の一面(図中の背景部分)に固定され、支持腕3の先端部も、同じ基板面に回動可能に取り付けられる。
【0005】
図8(1)に示すように、押下操作が行われていない状態のボタン部2は、可動部10からやや離れた状態で支持される。ボタン部2が押下操作による押圧力を受けると、図8(2)に示すように、支持腕3の基板に取り付けられた先端部を軸として支持腕3およびボタン部2が回転し、ボタン部2は斜めに傾いた状態で可動部10を押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−56738号公報
【特許文献2】特開2004−101446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
押ボタンスイッチを使用する場合には、ボタンを押下したユーザに、十分なクリック感(ボタンを押した手応え)を与えるのが望ましい。
図9は、押ボタンスイッチの押下操作に伴う可動部からの反力Fと可動部のストローク量Sとの関係を表す曲線(FS曲線)を示す。可動部が移動を開始した直後は反力が徐々に上昇するが、可動部が可変接点と固定接点とを接触させる高さ位置(以下、「オン点」という。)を通過する間(図中のS1−S2間)に反力が急激に低下する。その後の反力は、再び上昇に転じる。クリック感は、この反力の低下や増加の切り替わりによって生じるが、図8(2)の例のように可動部が斜めから押圧されると、この反力の変化の傾きが緩やかになって、クリック感が低下する。
【0008】
図8の構成においてクリック感を向上するには、オン点を通過する可動部10を、垂直方向に近い方向から押圧する必要がある。そのためには、ボタン部2の底面ができるだけ傾かないようにする必要がある。言い換えれば、できるだけ小さい回転角度で図8(2)に示したのと同じ高さ位置までボタン部2を移動させる必要がある。しかし、少さな回転角度で同等のストローク量を確保するには、支持腕3を長くする必要があるので、スイッチSW0の設置に必要なスペースが広がってしまう。このため、操作部の大きさが限られる小型の電子機器への導入には支障が生じるおそれがある。
【0009】
クリック感を確保する他の方法として、スイッチ専用の基板を筐体の上面の下に水平に配置して、特許文献1に記載されているような構成の押ボタンスイッチを導入する方法が考えられる。しかし、この方法では、2枚の基板が必要になる上に、基板間の電気接続などのための工数が増えるため、コスト高となる。
【0010】
本発明は上記の問題に着目し、設置のためのスペースやコストの拡大を招くことなく、クリック感が向上した押ボタンスイッチを提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による押ボタンスイッチは、押圧力により下方に変位して可動接点と固定接点とを接触させ、押圧力の解除によって上方に変位して各接点の接触を解除する可変部を有するスイッチ本体と、押下操作に応じて可動部の上面を押圧するボタン部と、一端部がボタン部に連結されると共に、他端部が上下方向に沿う支持面に回動可能に取り付けられて、押下操作を受けていない状態のボタン部を可動部から離した状態で支持する支持腕とを具備する。支持腕のボタン部に連結されていない側の端部は、可動部の上面の移動範囲の横もしくは斜め下に位置合わせされて支持面に取り付けられる。またボタン部の底面は、押下操作を受けていない状態下で傾斜面になると共に、可動部を可動接点と固定接点とを接触させる位置まで押圧したときの底面がほぼ水平な状態となるように、当該底面の傾斜角度が設定される。
【0012】
上記の構成によれば、押下操作前のボタン部は、その底面を傾斜させた状態で支持される。押下操作が行われると、ボタン部および支持腕は、支持腕のボタン部に連結されていない端部を軸に回転するので、ボタン部は可動部との隙間を徐々に縮めながら下降して可動部を押圧する。可動接点と固定接点とを接触させる高さ位置(オン点)付近にまで可動部が下がったときに、可動部を押圧するボタン部の底面はほぼ水平な状態となるので、オン点を通過する可動部を垂直方向に近い方向から押圧することが可能になる。よって、押下操作を行ったユーザに、十分なクリック感を体感させることが可能になる。
【0013】
上記構成の押ボタンスイッチの一実施形態では、ボタン部の底面の傾斜角度は、可動接点と固定接点とを接触させる位置まで下がった可動部の上面の中心点(後述するB点)と支持腕の回転の軸となる位置とを結ぶ直線と、押下操作を受けていない状態のボタン部の底面の中心点と支持腕の回転の軸となる位置とを結ぶ直線とがなす角度θに対して所定の誤差の範囲内の角度φになるように設定される。より限定された実施形態では、上記の誤差の範囲をθ−3度からθ+3度までの範囲に設定する。
これらの実施形態によれば、ボタン部および支持腕が角度θ回転したときのボタン部の底面の傾きの水平方向に対する差を微小なものにすることが可能になる。
【0014】
上記構成の押ボタンスイッチは、筐体内の支持面(たとえば筐体内に起立配置された基板の一面や筐体の内壁面)にスイッチ本体の上面および下面を除く一面および支持腕のボタン部に連結されていない側の端部を取り付けて、前記ボタン部を筐体の表面に露出させた状態で配備することができる。この構成によれば、支持腕を長くしなくとも、オン点を通過する可動部に対して垂直に近い方向からの押圧力をかけることが可能になるから、設置スペースに余裕が少ない小型の電子機器にも操作性の良い押ボタンスイッチを配備することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上下方向に沿う支持面に取り付けられるタイプの押ボタンスイッチについて、設置のためのスペースやコストを増やすことなく、クリック感を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用された押ボタンスイッチの構成を示す模式図である。
【図2】図1のA,B,Cの各点と角度θ,角度φとの関係を示す模式図である。
【図3】本発明を適用しないでクリック感を確保するための押ボタンスイッチの構成を示す模式図である。
【図4】本発明による押ボタンスイッチが導入された光電センサの外観を示す斜視図である。
【図5】上記の光電センサの側面図である。
【図6】押ボタンスイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3の詳細な構成を示す斜視図である。
【図7】押ボタンスイッチSW1a,SW1a,SW1b,SW2,SW3のスイッチ本体とボタン部との関係を示す図である。
【図8】従来の押ボタンスイッチの構成を示す模式図である。
【図9】可動部の押圧により生じる反力Fとストローク量Sとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明が適用された押ボタンスイッチの構成例を模式的に示す。
この実施例の押ボタンスイッチSWは、上部に突出する可動部10を有するスイッチ本体1、可動部10を押圧するためのボタン部2、ボタン部2を支持する支持腕3などにより構成される。スイッチ本体1の背面および支持腕3の一端部は、起立配備された制御基板の一面(図中の背景部分)に取り付けられる。
【0018】
スイッチ本体1の内部には、固定接点(図示せず。)が配備され、可動部10の下端部には可動接点(図示せず。)が配備される。可動部10は、図示しない弾性部材などによって、スイッチ本体1内に上下動可能に支持されており、スイッチ本体1の上面が図中のB点の高さまで下がったときに、可動接点と固定接点とが接触した状態となる。
【0019】
ボタン部2と支持腕3とは一体に形成される。ボタン部2は、立方体形状の本体の底部に鍔部20が一体に設けられた形状のもので、その鍔部20の一辺に支持腕3が連ねられる。鍔部20はスイッチ本体1より十分に大きく、その厚みは、支持腕3に連結されている辺から対向側の辺に向かうにつれて徐々に小さくなる。この鍔部20の厚みの変化によって、ボタン部2の底面2Mは、支持腕3に連結されている側から反対側に向う方向において斜め上に変位する傾斜面となる。
【0020】
支持腕3は、スイッチ本体1の上面の移動範囲よりやや低い位置に、スイッチ本体1から所定距離離して回動可能に支持される。この支持腕3によって、ボタン部2は、鍔部20の支持腕3の近傍部分(スイッチ本体より外側)の底面を可動部10の上面の高さに合わせて、水平な姿勢で支持される。このときボタン部2と可動部10との間には、ボタン部2の底面2Mの傾斜角度φに応じた隙間が形成される。ユーザの指によりボタン部2が押下されると、ボタン部2および支持腕3は支持腕3の取付位置を軸として回転し、上記の隙間が徐々に狭められて可動部10が押圧される。
【0021】
図中のA点は、押下操作を受けていないときのボタン部2の底面2Mの中心位置を示し、B点は、可動接点と固定接点とが接触したときの可動部10の上面の中心位置(「オン点」に対応する。)を示す。また、C点は、支持腕3の回転軸の位置に相当する。
【0022】
ボタン部2の底面2Mの傾斜角度φは、図中の角度θに近い角度に設定されている。
角度θは、A点とC点とを結ぶ線分ACと、B点とC点とを結ぶ線分BCとがなす角度である。支持腕3がC点を軸に角度θ回転すると、支持腕3に連なるボタン部2も角度θ傾いた姿勢になると共に、A点を含む底面2MがB点の高さ付近まで下がる。ボタン部2に押圧される可動部10の上面も、同様にB点の高さ付近まで下がる。
【0023】
押圧操作前のボタン部2の底面2Mの傾斜角度φがθに近い値に設定されていると、角度θ傾いたボタン部2の底面2Mは、ほぼ水平になり、真下の可動部10を垂直に近い方向から押圧することが可能になる。よって、可動部10からの反力の変化のカーブが急峻になり、押下操作を行ったユーザに十分なクリック感を与えることができる。
【0024】
図2は、上記したボタン部2の底面2Mの中心点の位置を示すA点,可動部10のオン点を示すB点,支持腕3の回転軸の位置を示すC点,および角度θ,φの関係を示す。またこの図では、線分AC,線分BCと共に、ボタン部の底面2Mの傾きを極太線により示す。
【0025】
また図2では、A−B間の高さの差をd、A−C間の高さの差をh、C点からスイッチ本体1の中心線までの距離をI、線分ACの長さをL1、線分BCの長さをL2とする。これらのパラメータにより、線分ACおよび線分BCが水平方向に対してなす角度θ1,θ2を、次の式により算出することができる。
【0026】
【数1】

【0027】
さらに、上式により求めたθ1,θ2を用いて、θ=θ1−θ2の演算を実行すれば、θを求めることができる。
したがって、スイッチの設計の際に、先にA,B,Cの各点の位置を定めると、これらの関係から角度θを算出することができる。さらに、角度θに対するボタン部2の底面2Mの傾斜角度φの角度差が所定の誤差範囲に収まるようにすれば、オン点の付近でも、クリック感を確保するのに必要と考えられる押圧方向から可動部10を押圧することが可能になる。
【0028】
なお、発明者らが実験により確認したところ、可動部10への押圧の方向と垂直方向との間の角度差を±3度までの範囲にすれば、クリック感が損なわれないことが判明した。したがって、φ=θ±3度までの範囲で角度φを決めるのが望ましいと思われる。
【0029】
つぎに、ボタン部2の底面2Mを傾斜させたことによる利点を説明するために、図3に、ボタン部2の底面2Mを傾斜させずにクリック感を確保できるように設計されたスイッチSW´を示す。なお、対比を容易にするために、スイッチSW´の各構成にも、図1と同じ符号を付す。
【0030】
押圧操作を受けていないときのボタン部2の底面2Mを水平にすると、押圧操作に応じて支持腕3と共に回転するにつれて、ボタン部2の底面2Mは傾斜した状態となる。先に述べた実験結果によれば、クリック感を確保するには、可動部10に対する押圧方向の垂直方向に対する差を3度以内にする必要があるので、ボタン部2の底面2Mをオン点であるB点まで変位させるのに必要な回転角度θ(線分ABと線分BCとがなす角度)も3度程度までに収める必要がある。
【0031】
しかし、ストローク量を変更することなく回転角度θを小さくするには、線分ACや線分BCを長くする必要があり、そのためには、C点をスイッチ本体1から大きく離さなければならないので、スイッチSW´の設置に必要なスペースが拡大する。またスイッチSW´の設置に割り当てられているスペースでは、角度θを3度程度にするという条件を満たす位置にC点を設定することができない場合には、クリック感を向上するのは困難になる。
【0032】
これに対し、図1の構成例の押ボタンスイッチSWによれば、点A,B,Cを先に定め、これらに適合するように角度θやボタン部2の底面2Mの傾斜角度φを決めることができる。よって、スイッチSWの設置スペースが限定されている場合でも、そのスペース内で可能な場所にC点を定めて、角度θやφを調整することによって対応することが可能になる。たとえば、設置スペースが小さいために図1の例よりC点をスイッチ本体1に近づける必要がある場合には、C点をより下方に設定して角度θを求め、さらにθの値に応じてボタン部2の底面2Mの傾斜角度φを定める。
したがって、図1に示す構成のスイッチSWであれば、小型機器にも容易に導入することが可能になる。
【0033】
なお、図1の例では、支持腕3を取り付ける場所(C点)を、可動部10の上面が移動する範囲に対して斜め下になる位置に設定しているが、これに限らず、可動部10の上面の移動範囲の横にC点を設定してもよい。
【0034】
また、図1の例では、図の背景部分を基板面とし、この基板面にスイッチ本体1の背面が固定されると共に、支持腕3がスイッチ本体1の側方に延びて、同じ基板面に取り付けられるとして説明したが、支持腕3の向きや取付位置はこの例に限定されるものではない。
【0035】
たとえば、スイッチ本体1を薄型にすれば、支持腕3をスイッチ本体1の前面側に延ばした後に、スイッチ本体1の斜め下の位置まで導いて、基板に取り付けることができる。
以下、このような構成の押ボタンスイッチが配備された電子機器の一例を、説明する。
【0036】
図4および図5は、本発明による押ボタンスイッチが導入された光電センサの外観を示す。
この光電センサは、幅狭の筐体200の上面に表示部201および複数の押ボタンスイッチSW1〜SW4が配備された構成のものである。上面は、通常はカバー204により覆われ、設定の際などには、カバー204を開放して各押ボタンスイッチSW1〜SW4を操作できるようになっている。
【0037】
また、この光電センサは、光ファイバを用いて投光および受光を行うタイプのもので、筐体200の前面には、投光用および受光用の各光ファイバ(図示せず。)を挿入するための挿入口202,203が設けられる。また筐体200の背面からは、接続用のケーブル205が引き出されている。
筐体200の内部には、発光素子を含む投光部や受光素子を含む受光部(いずれも図示せず。)が設けられるほか、後記する基板60が起立した姿勢で配備される。
【0038】
表示部201には、7セグLEDによる表示器210(数字やアルファベットを表示するもの)や表示灯211がそれぞれ複数設けられる。表示部201の前方には単独の押ボタンスイッチSW4が配備され、表示部201の後方には3つの押ボタンスイッチSW1,SW2,SW3が、配備されている。これらのうち、表示部201の直近に設けられた押ボタンスイッチSW1には、2つのスイッチSW1a,SW1bが含まれる。
【0039】
この2個口タイプのスイッチSW1a,SW1bと、その後方の2つのスイッチSW2,SW3とに本発明が適用されている。図6および図7は、これらのスイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3の詳細な構成を示す。
なお、図6,7では、各スイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3を、図5とは反対側を正面にして表しているが、以下の説明でも、図6,7で前方に位置する面を前面とする。
【0040】
この例では、スイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3の各スイッチ本体を11a,11b,12,13とし、各可動部を101a,101b,102,103とする。各スイッチ本体11a,11b,12,13は、起立配置された基板60の一面に、所定の間隔を隔てて固定される。
【0041】
スイッチSW1a,SW1bのボタン部21a,21bは、1つの部材21として一体化される。この部材21の前面側の下端部には三つ又状の支持腕31(各枝を支持腕31a,31b,31cとする。)が連結されている。支持腕31aはボタン部21aを支持し、支持腕31bはボタン部21bを支持し、支持腕31cは各ボタン部21a,21bの連結部分(部材21の中央部)を支持する。
【0042】
他のスイッチSW2,SW3のボタン部22,23にも、それぞれ前面の下端部に支持腕32,33が一体に設けられる。これらの支持腕32,33は右斜め下方向(筐体200の前面側)に延びて、水平方向に沿って延びる基部50に繋がる。部材21に連結される三つ又の支持腕31も、同様に基部50に連なる。これにより各ボタン部21a,21b,22,23および支持腕31,32,33が連結されたボタンユニットが形成される。
【0043】
基部50には矩形状の孔部(図示せず。)が3個設けられ、これらの孔部に基板60側に設けられた凸部材51,52,53を嵌め込むことにより、各支持腕31,32,33が基板60に取り付けられる。
【0044】
スイッチSW1a,SW1bのボタン部21a,21bに連なる支持腕31a,31bは、これらの間の支持腕31cの直下の凸部材51を共通の支持手段として、回動可能に支持される。スイッチSW2のボタン部22に連なる支持腕32は、凸部材52により回動可能に支持され、スイッチSW3の支持腕33は、凸部材53により回動可能に支持される。すなわち、各支持腕は、対応するスイッチ本体の可動部の移動範囲に対して斜め下になる位置に回動可能に支持されることになる。
【0045】
図7では、各スイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3のボタン部21a,21b,22,23と、各スイッチ本体11a,11b,12,13および可動体101a,101b,102,103とに網点パターンを付すことにより、両者の関係を明示している。押下操作を受けていないときの各ボタン部21a,21b,22,23は、対応する可動部101a,101b,102,103との間に若干の隙間を確保した状態で支持される。また、各ボタン部21a,21b,22,23の底面は、いずれも、対応する支持腕31a,31b,32,33を止める凸部材51,52,53に近い側から反対側に向かう方向において斜め上方に傾斜する。
【0046】
スイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3のボタン部21a,21b,22,23のいずれかが押下されると、そのボタン部に連結されている支持腕の支持位置を軸として、支持腕およびボタン部が回転し、対応するスイッチ本体の可動部を押圧する。押圧された可動部がオン点まで下がると、可動接点と固定接点とが接触して両者が導通し、その導通による電気信号が図示しない制御回路に入力される。いずれのスイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3においても、ボタン部21a,21b,22,23の底面が対応する可動部101a,101b,102,103をオン点付近まで押圧したときに、当該底面の傾きが水平方向に対して3度以内の角度差になるように、各底面の傾斜角度が設定されている。
【0047】
具体的には、この実施例における各ボタン部21a,21b,22,23の底面の傾斜角度は、1.5〜2.5度の範囲で設定されている。ただし、傾斜角度はこの範囲に限らず、スイッチの設置に用いられるスペースの広さなどによって変動する。
各ボタン部21a,21b,22,23の傾斜角度を上記のように調整することにより、いずれのスイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3でも、オン点を通過する可動部101a,101b,102,103を垂直に近い方向から押圧することができ、押下操作を行うユーザに十分なクリック感を与えることが可能になる。
【0048】
なお、設計によっては、支持腕を固定する凸部材を基板60にではなく、スイッチ本体の前面または筐体の内壁面に設けることも可能である。また、スイッチ本体も同様に、筐体の内壁面など、基板以外の支持面に取り付けることも可能である。
また、筐体200の前方に配備される押ボタンスイッチSW4については、詳細な説明を省略するが、このスイッチSW4にも、単独で、他のスイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3と同様の構成を適用することができる。また、各スイッチSW1a,SW1b,SW2,SW3からの信号を受ける制御回路は、基板60のスイッチが配備される範囲より前方または下方、もしくはスイッチとは反対側の面に搭載することができる。
【符号の説明】
【0049】
SW,SW1a,SW1b,SW2,SW3 押ボタンスイッチ
1,11a,11b,12,13 スイッチ本体
2,21a,21b,22,23 ボタン部
3,31a,31b,32,33 支持腕
10,101a,101b,102,103 可動部
2M ボタン部の底面
51,52,53 固定部材
60 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧力により下方に変位して可動接点と固定接点とを接触させ、押圧力の解除によって上方に変位して各接点の接触を解除する可動部を有するスイッチ本体と、押下操作に応じて前記可動部の上面を押圧するボタン部と、一端部がボタン部に連結されると共に、他端部が上下方向に沿う支持面に回動可能に取り付けられて、押下操作を受けていない状態のボタン部を可動部から離した状態で支持する支持腕とを具備し、
前記支持腕の前記ボタン部に連結されていない側の端部は、前記可動部の上面の移動範囲に対して横もしくは斜め下に位置合わせされて前記支持面に取り付けられ、
前記ボタン部の底面は、押下操作を受けていない状態下で傾斜面になると共に、前記可動部を可動接点と固定接点とを接触させる位置まで押圧したときの前記底面がほぼ水平な状態となるように、当該底面の傾斜角度が設定されて成る、押ボタンスイッチ。
【請求項2】
前記ボタン部の底面の傾斜角度は、可動接点と固定接点とを接触させる位置まで下がった可動部の上面の中心点と前記支持腕の回転の軸となる位置とを結ぶ直線と、押下操作を受けていない状態のボタン部の底面の中心点と前記支持腕の回転の軸となる位置とを結ぶ直線とがなす角度θに対して所定の誤差の範囲内の角度になるように設定される、請求項1に記載された押ボタンスイッチ。
【請求項3】
前記角度θに対する誤差の範囲は、θ−3度からθ+3度までの範囲に設定される、請求項2に記載された押ボタンスイッチ。
【請求項4】
押圧力により下方に変位して可動接点と固定接点とを接触させ、押圧力の解除によって上方に変位して各接点の接触を解除する可動部を有するスイッチ本体と、押下操作に応じて前記可動部を押圧するボタン部と、一端部がボタン部に連結されると共に、他端部が上下方向に沿う支持面に回動可能に取り付けられて、押下操作を受けていない状態のボタン部を可動部から離した状態で支持する支持腕とを具備する押ボタンスイッチが、筐体内の前記支持面に前記スイッチ本体の上面および底面を除く一面および支持腕を取り付けると共に、前記ボタン部を筐体の表面に露出させた状態で配備され、
前記支持腕の前記ボタン部に連結されていない側の端部は、可動部の上面の移動範囲の横もしくは斜め下に位置合わせされて前記支持面に取り付けられ、
前記ボタン部の底面は、押下操作を受けていない状態下で傾斜面になると共に、前記可動接点と固定接点とを接触させる位置まで下がったときの前記底面がほぼ水平な状態となるように、当該底面の傾斜角度が設定されて成る、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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