説明

押下スイッチ機構

【課題】部品点数の増加を招くことなく、圧縮コイルスプリングの振動を抑制しつつ押下操作の際の力量に変化が生じることを防止することのできる押下スイッチ機構を提供する。
【解決手段】筐体11に設けられた押下ボタン34の押下操作により操作信号を出力する押下スイッチ機構30であって、筐体11に対する押下ボタン34の押下操作方向で筐体11と押下ボタン34との間に設けられた圧縮コイルスプリング33と、押下操作方向に押し下げられた押下ボタン34により押されることで操作信号を出力するスイッチ装置35と、を備え、圧縮コイルスプリング33は、中心軸線Acが押下操作方向に対して傾斜を為している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の電子機器に用いられる押下スイッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ(以下、「デジタルカメラ」という)等の撮像装置では、例えば、シャッターボタンを押し下げる押下操作により撮影を実行させる押下スイッチ機構を用いるものが知られている。この押下スイッチ機構では、シャッターボタンとしての押下ボタンを圧縮コイルスプリングで支持することにより、押下ボタン(シャッターボタン)の押下操作を可能とするものがある。このような押下スイッチ機構では、圧縮コイルスプリングが圧縮されること(弾性変形)に起因して当該圧縮コイルスプリングに振動が生じてしまう虞がある。この圧縮コイルスプリングの振動は、異音を生じさせてしまったり、押下ボタンに伝わることで操作感触の悪化を招いてしまったりする虞がある。
【0003】
このため、上記した押下スイッチ機構では、圧縮コイルスプリングの内方に、圧縮変形されるゴム製の柱状体を挿入することが考えられている(特許文献1参照)。この押下スイッチ機構では、圧縮コイルスプリングが圧縮変形されて柱状体が圧縮変形されると、その柱状体が圧縮コイルスプリングに押し当てられるので、圧縮コイルスプリングにおける振動を抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した押下スイッチ機構では、押下ボタンが押下操作される際、先ず圧縮コイルスプリングが圧縮変形され、その後に圧縮コイルスプリングとともに柱状体が圧縮変形されることから、押下ボタンを押し下げるための力量に変化を生じさせてしまう。このことは、押下操作を行っている使用者に違和感を与えてしまい、押下操作における操作感触を損ねてしまう虞がある。
【0005】
また、上記した押下スイッチ機構では、圧縮コイルスプリングとは別に柱状体を設ける必要があることから、部品点数の増加を招いてしまうとともに作業工程の増加を招いてしまい、コストの上昇を招いてしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、部品点数の増加を招くことなく、圧縮コイルスプリングの振動を抑制しつつ押下操作の際の力量に変化が生じることを防止することのできる押下スイッチ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の押下スイッチ機構は、筐体に設けられた押下ボタンの押下操作により操作信号を出力する押下スイッチ機構であって、前記筐体に対する前記押下ボタンの押下操作方向で前記筐体と前記押下ボタンとの間に設けられた圧縮コイルスプリングと、前記押下操作方向に押し下げられた前記押下ボタンにより押されることで操作信号を出力するスイッチ装置と、を備え、前記圧縮コイルスプリングは、中心軸線が前記押下操作方向に対して傾斜を為している。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の押下スイッチ機構では、部品点数の増加を招くことなく、圧縮コイルスプリングの振動を抑制しつつ押下操作の際の力量に変化が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る撮像装置の一例としてのデジタルカメラ10におけるレンズ鏡胴13の状態の変化の様子を示す説明図であり、(a)は収納位置を示し、(b)は繰出位置を示す。
【図2】デジタルカメラ10における制御ブロックを示す説明図である。
【図3】押下スイッチ機構30の構成を模式的な断面で示す説明図であり、押下ボタン34がOFF状態とされた様子を示す。
【図4】押下スイッチ機構30の構成を説明するための模式的な斜視図であり、押下ボタン34(シャッターボタン15)および圧縮コイルスプリング33を取り付ける前の様子を示す。
【図5】圧縮コイルスプリング33の構成を説明するための説明図であり、押下ボタン34のOFF状態での様子を示す。
【図6】押下スイッチ機構30の構成を模式的な断面で示す図3と同様の説明図であり、押下ボタン34がON状態とされた際の様子を示す。
【図7】押下操作方向(上下方向)と圧縮コイルスプリング33の偏芯方向(上下方向に直交する方向)とを含む面に沿って得られた圧縮コイルスプリング33の断面を、4つの角とそれを四角形状に結ぶ線分とで示す説明図であり、(a)は押下ボタン34がOFF状態とされた際の様子を示し、(b)は圧縮コイルスプリング33の内周が押下ガイド軸部34bの外周面に押し当てられる様子を示す。
【図8】押下スイッチ機構30Bの圧縮コイルスプリング33Bの構成を示す説明図であり、一端座巻部33aと他端座巻部33bとが所定の角度を為している様子を実線で示し、押下スイッチ機構30Bにおける押下ボタン34のOFF状態での様子を二点鎖線で示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願発明に係る押下スイッチ機構、およびその押下スイッチ機構が設けられる撮像装置の各実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明に係る押下スイッチ機構の一実施例としての押下スイッチ機構30およびそれが設けられる撮像装置の一実施例としてのデジタルカメラ10の概略的な構成を、図1から図7を用いて説明する。以下の説明では、デジタルカメラ10を基準として、後述する撮影光学系12の光軸(図1(b)の矢印参照)方向を前後方向(被写体側が前方(F側))とし(矢印FB参照)、デジタルカメラ10を正面視した高さ方向を上下方向とし(矢印UD参照(上側がU))、前後方向および上下方向を含む面に直交する方向を左右方向(デジタルカメラ10を正面視して左手が右側方向(R側)となる)とする(矢印LR参照)。
【0012】
まず、押下スイッチ機構30が設けられる撮像装置の一例としてのデジタルカメラ10を、図1および図2を用いて説明する。デジタルカメラ10は、図1に示すように、筐体11の前面(図1を正面視して手前側の面)側に撮影光学系12(図1(b)参照)を有するレンズ鏡胴13が設けられている。この撮影光学系12は、最も被写体側に配置される対物レンズ12aや、図示は略すが、固定レンズ、ズームレンズ、シャッタユニットおよび絞りユニット等の複数の光学部材を備える。対物レンズ12aを含む撮影光学系12としての各光学部材は、レンズ鏡胴13により撮影光学系12の光軸方向(図1(b)の矢印参照)に移動可能に保持される。そのレンズ鏡胴13は、撮影光学系12の光軸に沿って、所定の収納位置(沈胴状態(図1(a)参照))と所定の繰出位置(撮影待機状態(図1(b)参照))との間で進退移動(繰り出しおよび繰り入れ)可能とされている。レンズ鏡胴13では、所定の収納位置(図1(a)参照)と所定の繰出位置(図1(b)参照)とで移行することにより、撮影光学系12(図1参照)の各光学部材(図示せず)を所定のごとく移動させる。
【0013】
筐体11では、上面(図1を正面視して上側の面)に、操作部としての電源ボタン14(図2参照)、シャッターボタン15、モード切替ダイアル16が設けられている。電源ボタン14は、デジタルカメラ10を起動するための操作(起動操作)と、デジタルカメラ10を停止するための操作(停止操作)と、をするものである。シャッターボタン15は、被写体の撮影動作を実行するために、上下方向の下方へと押し下げる操作(以下、押下操作ともいう)をするものである。実施例1では、シャッターボタン15は、本発明に係る押下スイッチ機構30により構成されている。これについては、後に詳細に説明する。モード切替ダイアル16は、各種のシーンモード、静止画モード、動画モード等を設定するものである。また、筐体11では、明確な図示は略すが背面に表示部24(その表示面)やその他の操作スイッチ17が設けられている(図2参照)。この表示部24は、撮像された画像データや記録媒体に記録された画像データに基づき画像を表示する。また、操作スイッチ17は、各メニュー等の設定のための方向指示用スイッチや各種スイッチである。
【0014】
このデジタルカメラ10は、図2に示すように、制御部21と、撮像素子22と、レンズ鏡胴駆動ユニット23と、表示部24と、を有する。制御部21は、操作部としての電源ボタン14、シャッターボタン15、モード切替ダイアル16および操作スイッチ17に為された操作に基づく駆動処理や、撮像素子22からの信号に基づく画像データの生成処理や、レンズ鏡胴駆動ユニット23および表示部24の駆動等の制御を、記憶部21aに格納されたプログラムにより統括的に行う。
【0015】
撮像素子22は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子で構成されており、撮影光学系12を通して受光面(図示せず)上に結像された被写体像を電気信号(画像データ)に変換して出力する。その出力された電気信号(画像データ)は、制御部21へと伝送される。
【0016】
レンズ鏡胴駆動ユニット23は、レンズ鏡胴13を収納位置(図1(a)参照)と繰出位置(図1(b)参照)とで移行させることにより、撮影光学系12の各光学部材を各々支持する光学部材保持枠(図示せず)を移動させる。
【0017】
デジタルカメラ10では、制御部21がシャッターボタン15に後述する1段階の押下操作が為されたことを認識すると、レンズ鏡胴駆動ユニット23を制御してピント調節の動作を実行する。また、デジタルカメラ10では、制御部21がシャッターボタン15に後述する2段階の押下操作が為されたことを認識すると、撮影光学系12を通して撮像素子22(図2参照)の受光面で受光した被写体像の画像データを記録処理する。さらに、デジタルカメラ10では、制御部21の制御下で、記録処理した画像データに基づく画像を表示部24に適宜表示させることができる。制御部21は、押下スイッチ機構30から後述する第1操作信号が出力されると、シャッターボタン15における1段階の押下操作が為された旨を認識し、押下スイッチ機構30から後述する第2操作信号が出力されると、シャッターボタン15における2段階の押下操作が為された旨を認識する。
【0018】
次に、本発明に係る押下スイッチ機構30の特徴部分の概略的な構成を、図3から図7を用いて説明する。なお、図3の説明図は、図4に示すI−I線で得られた断面に相当する。また、各図では、理解容易のために、圧縮コイルスプリング33の態様を簡略化して示しているが、必ずしも実際の態様と一致するものではない。
【0019】
押下スイッチ機構30は、実施例1では、シャッターボタン15における押下操作を可能とするとともに、その押下操作による操作信号の出力を可能とすべく設けられている。この押下スイッチ機構30は、図3に示すように、筐体11の上面を構成するカバー31に設けられた取付凹所32に、圧縮コイルスプリング33と押下ボタン34とが設けられ、その下方にスイッチ装置35とスイッチ基板36とが設けられて構成されている。
【0020】
その取付凹所32は、図4に示すように、カバー31の表面(筐体11の上面)を上下方向の下方へ向けて凹ませて形成されている。取付凹所32は、上下方向で見ると、デジタルカメラ10(その外形を形作る筐体11)の左右方向に長尺であり、その左右方向の両端の端壁部32aが半円形状とされている。その取付凹所32の底壁32bには、図3および図4に示すように、操作穴部41と、環状凹所42と、一対のガイド穴部43と、一対の引掛穴部44と、が設けられている。
【0021】
その操作穴部41は、取付凹所32の底壁32bにおいて、左右方向で見た中央位置を上下方向に貫通する貫通穴として形成されている。操作穴部41には、その周辺を取り巻いて受入ボス部分41aが設けられている。この受入ボス部分41aは、取付凹所32の底壁32bの上面(取付凹所32の底面)よりも上方へと突出する筒状とされている。この受入ボス部分41aを取り巻いて環状凹所42が設けられている。
【0022】
その環状凹所42は、受入ボス部分41aを取り巻きつつ取付凹所32の底壁32bの上面(取付凹所32の底面)を下方へ向けて凹ませて形成されており、上側から見て環状を呈している。環状凹所42には、環状部材45が配置される。この環状部材45は、円板状の部材の中央に円形の穴が設けられて形成された環状を呈し、環状凹所42への挿入が可能な大きさ寸法とされている。環状部材45は、圧縮コイルスプリング33の台座(設置箇所)を形成する。環状凹所42は、環状部材45が配置されることにより、取付凹所32の底壁32bの上面(取付凹所32の底面)と、略等しい平坦面とされる。この環状凹所42(環状部材45)の左右方向で見た外側に一対のガイド穴部43が設けられている。
【0023】
その両ガイド穴部43は、取付凹所32の底壁32bを上下方向に貫通する貫通穴として形成されている。両ガイド穴部43には、実施例1では、その周辺を取り巻いてガイドボス部分43aが設けられている。このガイドボス部分43aは、取付凹所32の底壁32bの上面(取付凹所32の底面)よりも上方へと突出する筒状とされている。また、実施例1では、一方のガイド穴部43(図4等を正面視して左側)は、上側から見て、左右方向に長尺な長穴とされており、内周面に一対の平坦箇所43bが形成されている。その両平坦箇所43bは、前後方向に直交する面に沿って設けられており、前後方向で対向されている。その各ガイド穴部43の左右方向で見た外側に一対の引掛穴部44が設けられている。
【0024】
その両引掛穴部44は、取付凹所32の底壁32bにおける左右方向で見た両端箇所を上下方向に貫通する貫通穴として形成されており、取付凹所32の半円形状の端壁部32aと上下方向で連続するものとされている。このため、両引掛穴部44は、取付凹所32における左右方向で見た両端箇所において、端壁部32aに沿って底壁32bを貫通している。この取付凹所32の底壁32bに圧縮コイルスプリング33(図3参照)が設けられる。
【0025】
その圧縮コイルスプリング33は、図3に示すように、螺旋状とされた線材により構成され、両端に環状の一端座巻部33aと他端座巻部33bとが設けられている。圧縮コイルスプリング33は、取付凹所32の底壁32bに設けられた受入ボス部分41aの外径寸法よりも大きな内径寸法とされている。圧縮コイルスプリング33は、無負荷状態において最も伸びて、一端側の一端座巻部33aと他端側の他端座巻部33bとを接近させる動作に抗する弾性力を発揮する。この圧縮コイルスプリング33は、図5に示すように、後述する押下ボタン34のOFF状態(図3参照)において、中心軸線Acを後述する押下ボタン34の押下操作方向(上下方向)に対して所定の角度α(図7参照)を為す直線とするとともに、一端座巻部33aと他端座巻部33bとを、押下ボタン34の押下操作方向(上下方向)に直交する面に沿う環状としている。また、圧縮コイルスプリング33では、明確な図示は略すが、無負荷状態の最も伸びた態様であっても一端座巻部33aと他端座巻部33bとが互いに平行とされている。この圧縮コイルスプリング33の所定の角度α(図7参照)すなわち一端座巻部33aと他端座巻部33bとにおける上下方向に直交する面に沿う方向で見た偏芯量Baの設定については、後に詳細に説明する。この圧縮コイルスプリング33は、図3に示すように、一端座巻部33aが受入ボス部分41aを取り巻きつつ環状凹所42に設けられた環状部材45上に配置されて、取付凹所32の底壁32bに固定されて設けられる。その圧縮コイルスプリング33の他端座巻部33bに押下ボタン34が取り付けられる。
【0026】
その押下ボタン34は、筐体11(カバー31)の表面に対して押下操作される箇所を形成するものであり、実施例1ではシャッターボタン15を形成している(図1参照)。押下ボタン34は、ボタン本体34aと、押下ガイド軸部34bと、一対の補助ガイド軸部34cと、一対の引掛部34dと、を有する。
【0027】
ボタン本体34aは、押下操作のために筐体11(カバー31)の表面から露出される箇所を形成するものである。このボタン本体34aは、実施例1では、板状を呈し、上下方向で見た形状が取付凹所32の内周面に倣うものとされている(図1参照)。ボタン本体34aは、上下方向に直交する面に沿う状態で、取付凹所32の内方に嵌め入れることが可能とされている。
【0028】
押下ガイド軸部34bは、円柱形状を呈し、ボタン本体34aの中央位置において、当該ボタン本体34aに直交する方向へと突出されて設けられている。その押下ガイド軸部34bは、取付凹所32の操作穴部41すなわち受入ボス部分41aの内方へと挿入することが可能な大きさ寸法とされている。
【0029】
一対の補助ガイド軸部34cは、円柱形状を呈し、ボタン本体34aに直交する方向へと突出されて設けられている。一対の補助ガイド軸部34cは、左右方向で見て押下ガイド軸部34bの外側に設けられており、上下方向で見て取付凹所32の一対のガイド穴部43に対応されている。この各補助ガイド軸部34cは、対応する取付凹所32のガイド穴部43へと挿入することが可能な大きさ寸法とされている。補助ガイド軸部34cは、実施例1では、一方のガイド穴部43(図3等を正面視して左側)に挿入されると、前後方向で見て対向する両平坦箇所43b(図4参照)に接触する径寸法とされている。このため、押下ボタン34(ボタン本体34a)は、押下ガイド軸部34bもしくは他方の補助ガイド軸部34c(図3等を正面視して右側)を中心として回転することが防止されている。
【0030】
一対の引掛部34dは、柱状を呈し、ボタン本体34aに直交する方向へと突出されて設けられている。その一対の引掛部34dは、左右方向で見てボタン本体34aの両端部に設けられており、上下方向で見て取付凹所32の一対の引掛穴部44に対応されている。一対の引掛部34dでは、突出端にフック部34eが形成されている。そのフック部34eは、引掛部34dの突出端から左右方向で見た外側へと突出されて形成されている。各引掛部34dは、フック部34e側から対応する取付凹所32の引掛穴部44へと挿入することが可能な大きさ寸法とされている。また、一対の引掛部34dは、それぞれが対応する引掛穴部44へと挿入されると、フック部34eが上下方向で見て取付凹所32の両端の端壁部32a(その下端)に引っ掛かる位置関係とされている。
【0031】
この押下ボタン34は、圧縮コイルスプリング33の他端座巻部33bが、押下ガイド軸部34bを取り巻くようにボタン本体34aに固定されて、カバー31(筐体11)の取付凹所32に取り付けられる。この取付状態において、押下ボタン34では、押下ガイド軸部34bが取付凹所32の操作穴部41へと挿入され、一対の補助ガイド軸部34cが取付凹所32の対応するガイド穴部43へと挿入され、一対の引掛部34dが取付凹所32の対応する引掛穴部44へと挿入されてフック部34eが端壁部32a(その下端)に引っ掛けられる。この押下ボタン34(ボタン本体34a)は、押下ガイド軸部34bと操作穴部41との案内作用と、両補助ガイド軸部34cと両ガイド穴部43との案内作用と、により、筐体11の取付凹所32において上下方向へと移動することが可能とされている。また、押下ボタン34(ボタン本体34a)は、圧縮コイルスプリング33により取付凹所32から上下方向の上側に突出する方向へと押されているとともに、両フック部34eが取付凹所32の両端壁部32a(その下端)に上下方向で引っ掛かることにより取付凹所32から上側へと離脱することが防止されている。このため、押下ボタン34は、ボタン本体34a(その表面)を筐体11(カバー31)から露出させつつ、その筐体11(カバー31)に対して圧縮コイルスプリング33の押す力に抗して上下方向の下側へと押下操作することが可能とされている。これにより、押下スイッチ機構30では、上下方向が押下ボタン34の押下操作方向となり、一対の引掛部34dのフック部34eが対応する取付凹所32の端壁部32a(その下端)に引っ掛かる位置が押下ボタン34の押下操作方向での移動範囲における上端位置となる(図3参照)。その押下ボタン34の押下ガイド軸部34bが挿入された取付凹所32の操作穴部41の下方にスイッチ装置35が設けられている。
【0032】
スイッチ装置35は、スイッチ本体部35aとスイッチ突起部35bとを有し、そのスイッチ突起部35bが操作穴部41の上下方向の下側に存在して設けられている。このスイッチ装置35は、スイッチ本体部35aに対してスイッチ突起部35bが押し込まれると(図示の例では下側へ押し下げる(図6参照))、スイッチ本体部35aが信号を出力する。また、スイッチ装置35では、押し込みが解除されると、スイッチ突起部35bが初期位置に復帰する構成とされている。実施例1では、スイッチ装置35は、図示は略すがスイッチ本体部35aに対するスイッチ突起部35bの押し込み量が2段階に設定されており、段階毎に異なる信号を出力する構成とされている。すなわち、スイッチ装置35は、スイッチ本体部35aに対してスイッチ突起部35bが押し込まれて1段階の位置となると第1信号を出力し、そこからさらにスイッチ突起部35bが押し込まれて2段階の位置となると第2信号を出力する。また、スイッチ装置35では、スイッチ突起部35bの押し込みに要する力量(復帰力に抗する力量)の変化で、スイッチ突起部35bが1段階の位置となったことの把握を可能としている。さらに、スイッチ装置35では、スイッチ突起部35bにおける復帰力に抗する力量が、上述した圧縮コイルスプリング33における復帰力に抗する力量よりも大きなものとされている。
【0033】
このスイッチ装置35は、上述したように取付凹所32に取り付けられた押下ボタン34が上端位置(図3参照)であると、その押下ガイド軸部34b(その先端)によりスイッチ突起部35bが押し込まれない位置関係とされている。このため、押下スイッチ機構30では、押下ボタン34が上端位置であると、スイッチ装置35から信号が出力されることはなく、以下ではOFF状態(図3参照)という。また、スイッチ装置35は、上述したように取付凹所32に取り付けられた押下ボタン34が押下操作されると、その押下ガイド軸部34b(その先端)がスイッチ突起部35bを押し込む位置関係とされている(図6参照)。これにより、押下スイッチ機構30では、押下ガイド軸部34b(その先端)がスイッチ本体部35aに対してスイッチ突起部35bを押し込んだ状態における押下ボタン34の位置が、その押下ボタン34の押下操作方向での移動範囲における下端位置となり以下ではON状態(図6参照)という。このスイッチ装置35は、スイッチ基板36に取り付けられている。
【0034】
そのスイッチ基板36は、板状を呈し、図示は略すがコンデンサや抵抗等の電子部品が実装されており、筐体11に固定されている。スイッチ基板36には、スイッチ装置35のスイッチ本体部35aが電気的に接続されて実装されている。このスイッチ基板36では、それぞれに設けられた電子部品により所定の電子回路を構成しており、スイッチ本体部35aから信号(実施例1では、第1信号および第2信号)が出力されると、シャッターボタン15における押下操作が為されたことを示す操作信号(実施例1では、後述する第1操作信号および第2操作信号)を制御部21に出力する。
【0035】
この押下スイッチ機構30では、ボタン本体34a(その表面)を筐体11(カバー31)から露出させつつ、その筐体11(カバー31)に対して上下方向の下側へと押下操作することを可能とした押下ボタン34でシャッターボタン15(図1参照)を形成している。押下スイッチ機構30では、筐体11(カバー31)から露出させたシャッターボタン15(押下ボタン34)が押下操作されると、そのボタン本体34aと取付凹所32の底壁32bとの間で圧縮コイルスプリング33が圧縮され、その押下ガイド軸部34b(その先端)がスイッチ装置35のスイッチ突起部35bをスイッチ本体部35aに押し込む。その押し込み量が1段階の位置となると(所謂半押し状態)、スイッチ装置35のスイッチ本体部35aがスイッチ基板36へと第1信号を出力し、そのスイッチ基板36がシャッターボタン15における1段階の押下操作が為されたことを示す第1操作信号を制御部21に出力する。その後、押し込み量が2段階の位置となると(所謂全押し状態)、スイッチ装置35のスイッチ本体部35aがスイッチ基板36へと第2信号を出力し、そのスイッチ基板36がシャッターボタン15における2段階の押下操作が為されたことを示す第2操作信号を制御部21に出力する。また、押下スイッチ機構30では、シャッターボタン15(押下ボタン34)への押下操作が解除されると、圧縮コイルスプリング33の復帰力(復元力)によりシャッターボタン15(押下ボタン34(その表面))を筐体11(カバー31)から露出させる初期位置に戻す。
【0036】
本願発明の押下スイッチ機構30では、押下ボタン34が押下操作される際に、圧縮コイルスプリング33の一部を他の構成箇所の一部に接触させるために、その圧縮コイルスプリング33の所定の角度αすなわち一端座巻部33aと他端座巻部33bとにおける上下方向に直交する面に沿う方向で見た偏芯量Baを設定している。この設定方法について図7を用いて以下で説明する。この図7は、理解容易のために、押下操作方向(上下方向)と圧縮コイルスプリング33の偏芯方向(上下方向に直交する方向)とを含む面に沿って得られた圧縮コイルスプリング33の断面を、4つの角とそれを四角形状に結ぶ線分とで示したものであり、(a)は押下ボタン34がOFF状態(図3参照)とされた際の様子を示し、(b)は圧縮コイルスプリング33の内周が押下ガイド軸部34bの外周面に押し当てられる様子を示す。
【0037】
先ず、上述したように押下スイッチ機構30として組み付けられた状態において、押下ボタン34がOFF状態(図3参照)とされた際の他端座巻部33bにおける2つの角に存在する線材の断面の一方(図7を正面視して左側)を点P1とし他方を点P2とする(図7(a)参照)。また、一端座巻部33aにおける2つの角に存在する線材の断面の一方(図7を正面視して左側)を点P3とし他方を点P4とする(図7参照)。さらに、点P1の押下操作方向(上下方向)の下方であって、一端座巻部33aと交わる位置を点P5とする(図7(a)参照)。点P4の押下操作方向(上下方向)の上方であって、押下ボタン34がOFF状態(図3参照)とされた際の他端座巻部33bと交わる位置を点P6とする(図7(a)参照)。点P1の押下操作方向(上下方向)の下方に存在する線材の断面を点P7とする(図7(a)参照)。
【0038】
押下スイッチ機構30の圧縮コイルスプリング33では、中心軸線Acを押下ボタン34の押下操作方向(上下方向)に対して傾斜させていることから、内部に存在する押下スイッチ機構30の他の構成箇所の大きさ寸法を勘案して、傾斜角度と内径寸法とを調整することにより、圧縮コイルスプリング33に他の構成箇所の一部を接触させることができる。換言すると、圧縮コイルスプリング33では、押下操作方向(上下方向)に伸びる円柱形状(矩形P1−P5−P4−P6)を呈し、その径寸法線分P1−P6(P5−P4)よりも大きな径寸法の円柱形状物を受け入れることにより、内周が当該円柱形状物に干渉することとなる。
【0039】
ここで、上述したように、圧縮コイルスプリング33は、他端座巻部33bが押下ボタン34の押下ガイド軸部34bを取り巻きつつボタン本体34aに固定されているとともに、その押下ガイド軸部34bが取付凹所32の操作穴部41内に挿入されている。このため、圧縮コイルスプリング33の内方には押下ボタン34の押下ガイド軸部34bと取付凹所32の操作穴部41を規定する受入ボス部分41aとが存在する(図5等参照)。その受入ボス部分41a(操作穴部41)は、上下方向に直交する面で見ると、圧縮コイルスプリング33の圧縮量が変化することにより、その圧縮コイルスプリング33(その内周)との間隔が変化する。このため、本願発明の押下スイッチ機構30では、基本的には、他の構成箇所の一部として、押下ボタン34の押下ガイド軸部34bを用いるべく、押下ガイド軸部34bの外径寸法を線分P1−P6(P5−P4)の大きさ寸法よりも大きくかつ線分P3−P4(P1−P2)の大きさ寸法よりも小さく設定する(図5参照)。これにより、圧縮コイルスプリング33の内方に押下ガイド軸部34bを受け入れつつ、その外周面と圧縮コイルスプリング33の内周とが接触することを可能とする。
【0040】
ここで、押下ガイド軸部34bは、取付凹所32の操作穴部41内に挿入されることから、上下方向に直交する面で見て、押下ガイド軸部34b(その外周面)と圧縮コイルスプリング33(その内周)との間には、所定の間隔が設けられている。この所定の間隔を考慮しつつ押下ガイド軸部34bの外周面と圧縮コイルスプリング33の内周とを接触させるためには、押下ガイド軸部34bの外径寸法と圧縮コイルスプリング33の内径寸法との差分よりも、線分P3−P5(P6−P2)の大きさ寸法を大きく設定すればよい。その線分P3−P5の大きさ寸法は、左右方向で見たP3とP1との位置の差により規定される。その線分P1−P3は、中心軸線Acと平行な直線であることから、線分P3−P5の大きさ寸法は、一端座巻部33aと他端座巻部33bとにおける上下方向に直交する面に沿う方向で見た偏芯量Ba(双方の中心位置の間隔)となる。このため、押下ガイド軸部34bの外径寸法と圧縮コイルスプリング33の内径寸法との差分よりも、圧縮コイルスプリング33における一端座巻部33aと他端座巻部33bとの偏芯量Baを大きく設定することにより、押下ガイド軸部34bの外周面(その一部)と圧縮コイルスプリング33の内周(その一部)とを接触させることが可能となる。このため、圧縮コイルスプリング33における上述した中心軸線Acの傾き(所定の角度α)は、一端座巻部33aと他端座巻部33bとの偏芯量Baを、押下スイッチ機構30として組み付けた状態における圧縮コイルスプリング33の押下操作方向で見た長さ寸法(上下方向で見たP1およびP5(P4およびP6)の間隔)で割った値で表される正接(タンジェント)の角度、すなわち当該値の逆正接(アークタンジェント)となる。
【0041】
また、本発明では、操作穴部41を規定する受入ボス部分41aの外径寸法を、線分P3−P4の大きさ寸法よりも小さく設定する。これにより、押下ガイド軸部34bを押下操作方向(上下方向)に移動可能に受け入れる操作穴部41を規定する受入ボス部分41aを、圧縮コイルスプリング33の内方に配置することができる。
【0042】
このため、本願発明の押下スイッチ機構30では、受入ボス部分41aの外径寸法および受入ボス部分41aと圧縮コイルスプリング33(その一端座巻部33a)との間の所定の間隔を考慮しつつ、押下ガイド軸部34bの外径寸法と圧縮コイルスプリング33の内径寸法との差分よりも、圧縮コイルスプリング33における一端座巻部33aと他端座巻部33bとの偏芯量Baを大きく設定して、圧縮コイルスプリング33(その内周)に押下ガイド軸部34b(その外周面)を干渉(接触)させる位置関係とする。
【0043】
この押下スイッチ機構30は、実施例1では、以下のような設定としている。先ず、図5に示すように、押下ガイド軸部34bの外径寸法を1.7mmとする。これに対し、圧縮コイルスプリング33は、外径寸法が0.23mmの線材を用いて、総巻数を3.5として、押下ボタン34がOFF状態(図3参照)とされた際の高さ寸法(押下操作方向(上下方向)での大きさ寸法)を1.8mmとし、外径寸法を3.6mmとする。すると、内径寸法は、3.14mmとなり、その圧縮コイルスプリング33の内径寸法と押下ガイド軸部34bの外径寸法(1.7mm)との差分が、1.44mmとなる。実施例1では、押下ガイド軸部34bの中心位置すなわちそこが挿入される操作穴部41(そこを規定する受入ボス部分41a)の軸線と、一端座巻部33aの中心位置(中心軸線Ac)と、を一致させる位置関係としている。このため、押下ガイド軸部34b(その外周面)と圧縮コイルスプリング33の一端座巻部33a(その内周)とでは、中心を通る直線上の2箇所(押下ガイド軸部34bの両側)で0.72mmの間隔が設けられている。このことから、実施例1の押下スイッチ機構30では、圧縮コイルスプリング33における一端座巻部33aと他端座巻部33bとの偏芯量Baを、0.72mmよりも大きく設定している。このため、図5からも明らかなように、一端座巻部33aが取付凹所32に固定された圧縮コイルスプリング33では、その他端座巻部33bおよびその近傍(それらの内周)が押下ガイド軸部34b(その外周面)に干渉することとなる。また、押下スイッチ機構30では、圧縮コイルスプリング33における偏芯量Baおよび受入ボス部分41aの外周縁部41bの形状を適宜調節することにより、圧縮コイルスプリング33(その内周)と受入ボス部分41aの外周縁部41b(その上端縁部)とが、例え接触したとしても、押下ボタン34おける押下操作およびその復帰を阻害することの無いように、接触量および接触の態様を設定する。
【0044】
このような構成であるため、押下スイッチ機構30では、一端座巻部33aが受入ボス部分41aの軸線と一致されて取付凹所32に固定された圧縮コイルスプリング33の他端座巻部33b内に操作穴部41の押下ガイド軸部34bを挿入することにより、他端座巻部33bの内周が押下ガイド軸部34bの外周面に接触し、そこに押されて他端座巻部33bが上下方向に直交する方向(図示の例では左側)へと変位する(図7(b)に二点鎖線で示す点P1および実線で示す点P1参照)。これは、取付凹所32に対する押下ボタン34の上下方向に直交する方向で見た位置が、上述したように、取付凹所32の操作穴部41へと挿入された押下ガイド軸部34bと、取付凹所32の対応するガイド穴部43へと挿入された一対の補助ガイド軸部34cとにより、規定されることによる。このとき、圧縮コイルスプリング33は、螺旋状とされた線材により構成されていることから、図7(b)に示すように、他端座巻部33bと同様に、その近傍位置における内周(図示の例では点P7で示す線材)が押下ガイド軸部34bの外周面に押し当てられる(図7(b)に二点鎖線で示す点P7および実線で示す点P7参照)。この圧縮コイルスプリング33(その内周)において、他端座巻部33bの近傍位置での押下ガイド軸部34bの外周面に押し当てられる範囲は、押下ガイド軸部34bの外径寸法と圧縮コイルスプリング33における偏芯量Baとの設定により調整することができる。すると、押下スイッチ機構30では、押下ボタン34が押下操作されたり、その押下ボタン34が初期位置へと復帰したりする際、圧縮コイルスプリング33における他端座巻部33bを除く箇所と、押下ガイド軸部34b(その外周面)と、の押下操作方向(上下方向)で見た相対的な位置関係が変化する(図3、図6および図7(b)参照)。これにより、押下スイッチ機構30では、押下ボタン34の押下操作方向(上下方向)での移動に伴って、圧縮コイルスプリング33における他端座巻部33bを除く押下ガイド軸部34b(その外周面)へと押し当てられた箇所(図示の例では点P7で示す線材)と、押下ガイド軸部34bの外周面と、を擦り合わせることができる。このため、押下スイッチ機構30では、押下ボタン34が押下操作方向(上下方向)に移動すると、圧縮コイルスプリング33の内周と押下ガイド軸部34bの外周面との間に摩擦力を生じさせることができるので、圧縮されるもしくはそこから復帰すること(弾性変形)で圧縮コイルスプリング33に生じる得る振動を抑制することができる。
【0045】
実施例1の押下スイッチ機構30では、圧縮コイルスプリング33の中心軸線Acを押下ボタン34の押下操作方向(上下方向)に対して傾斜させていることから、押下ボタン34が押下操作された際に、圧縮コイルスプリング33の内周と他の構成箇所の一部(実施例1では押下ガイド軸部34bの外周面)とを接触させることができ、圧縮コイルスプリング33に生じる得る振動を抑制することができる。このため、圧縮コイルスプリング33の振動に起因して異音が生じることを抑制することができる。
【0046】
また、実施例1の押下スイッチ機構30では、筐体11(カバー31)に設けられた取付凹所32と押下ボタン34との間に配される圧縮コイルスプリング33を、その中心軸線Acを押下ボタン34が押下操作により移動する方向(上下方向)に対して傾斜させて構成するものであることから、簡易な構成とすることができる。
【0047】
さらに、実施例1の押下スイッチ機構30では、押下ボタン34が押下操作により移動する方向(上下方向)に対して中心軸線Acが傾斜する圧縮コイルスプリング33を用いるだけであることから、圧縮コイルスプリング33の振動の抑制のために新たな部材を設ける必要がないので、部品点数の増加を防止することができる。このため、作業工程の増加を防止することができ、コストの上昇も抑制することができる。
【0048】
実施例1の押下スイッチ機構30では、押下ボタン34が押下操作により移動する方向(上下方向)に対して中心軸線Acを傾斜させた圧縮コイルスプリング33の内周を、他の構成箇所の一部としての押下ガイド軸部34bの外周面に押し当てて(接触させて)、内周と外周面とを押下操作方向(上下方向)での相対的な位置ずれに伴い擦り合わせるものであるので、双方の間に生じる摩擦力を押下ボタン34の押下操作に要する力量(圧縮コイルスプリング33における復帰力に抗する力量とスイッチ突起部35bにおける復帰力に抗する力量)に比べて小さなものとすることができる。このため、押下ボタン34(シャッターボタン15)の押下操作の際の力量の変化を実使用上無視することのできる程度に抑えることができる。
【0049】
実施例1の押下スイッチ機構30では、押下ボタン34が押下操作により移動する方向(上下方向)に対して、中心軸線Acを傾斜させた圧縮コイルスプリング33の内周を、押下ガイド軸部34bの外周面に接触させる(押し当てる)ものであることから、押下ボタン34(シャッターボタン15)の押下操作に拘らず(押下操作方向(上下方向)で見た位置に拘らず)常に接触させる(安定して押し当てる)ことができるので、押下ボタン34を押し下げる過程(押下操作)において圧縮コイルスプリング33に生じる得る振動を抑制することができるとともに、その押下ボタン34が初期位置へと復帰する際にも圧縮コイルスプリング33に生じる得る振動を抑制することができる。このため、圧縮コイルスプリング33の振動に起因して異音が生じることを確実に防止することができる。
【0050】
実施例1の押下スイッチ機構30では、基本的に、押下ガイド軸部34bの外径寸法と圧縮コイルスプリング33の内径寸法との差分よりも、圧縮コイルスプリング33における一端座巻部33aと他端座巻部33bとの偏芯量Baを大きく設定することで、圧縮コイルスプリング33が圧縮される過程において、その圧縮コイルスプリング33(その内周の一部)と押下ガイド軸部34b(その外周面の一部)とを接触させる(押し当てる)ものであることから、簡易な構成とすることができる。
【0051】
実施例1の押下スイッチ機構30では、押下ガイド軸部34b(そこが挿入される操作穴部41(受入ボス部分41a))の中心位置と一端座巻部33aの軸線(中心位置)とを一致させて圧縮コイルスプリング33を取付凹所32に設けるとともに、押下ガイド軸部34bの外径寸法と圧縮コイルスプリング33の内径寸法との差分を等分した値よりも、圧縮コイルスプリング33における一端座巻部33aと他端座巻部33bとの偏芯量Baを大きく設定していることから、その圧縮コイルスプリング33における偏芯量Baを小さなものとしつつ、その圧縮コイルスプリング33(その内周の一部)と押下ガイド軸部34b(その外周面の一部)とを接触させる(押し当てる)ことができる。
【0052】
実施例1の押下スイッチ機構30では、圧縮コイルスプリング33での振動を抑制した押下ボタン34でシャッターボタン15を形成していることから、シャッターボタン15としての操作感触を良好なものとすることができる。
【0053】
実施例1の押下スイッチ機構30では、押下操作のための力量の変化を防止した押下ボタン34でシャッターボタン15を形成していることから、シャッターボタン15としての操作感触を良好なものとすることができる。これは、シャッターボタン15では、押下操作における押込操作量の差異(1段階の位置(半押し状態)および2段階の位置(全押し状態))により、ピント調節の実行と撮影の実行とを別個に行うことが可能とされており、その押込操作量の差異の把握がスイッチ装置35におけるスイッチ突起部35bの押し込みに要する力量の変化によるものとされていることから、筐体11(カバー31(その取付凹所32))に対するシャッターボタン15(押下ボタン34)の押下操作のための力量がスイッチ突起部35bにおける復帰力に抗する力量よりも小さなものとされていることにより、そのシャッターボタン15を押下操作している使用者がスイッチ装置35におけるスイッチ突起部35bの押し込みに要する力量の変化を容易に把握できることによる。
【0054】
実施例1の押下スイッチ機構30が設けられたデジタルカメラ10では、シャッターボタン15の操作感触を良好なものとすることができるとともに、シャッターボタン15での異音の発生を防止することができる。このため、より品質を向上させることができる。
【0055】
したがって、実施例1の押下スイッチ機構30では、部品点数の増加を招くことなく、圧縮コイルスプリング33の振動を抑制しつつシャッターボタン15(押下ボタン34)の押下操作の際の力量に変化が生じることを防止することができる。
【実施例2】
【0056】
次に、実施例2の押下スイッチ機構30Bについて、図8を用いて説明する。この実施例2は、押下スイッチ機構30Bにおける圧縮コイルスプリング33Bの構成が上記した実施例の押下スイッチ機構30(デジタルカメラ10)とは異なる例である。この実施例2の押下スイッチ機構30B(デジタルカメラ10)は、基本的な構成は上記した実施例1の押下スイッチ機構30(デジタルカメラ10)と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図8は、押下スイッチ機構30Bの圧縮コイルスプリング33Bの構成を示す説明図であり、一端座巻部33aと他端座巻部33bとが所定の角度を為している様子を実線で示し、押下スイッチ機構30Bにおける押下ボタン34のOFF状態での様子を二点鎖線で示している。
【0057】
実施例2の押下スイッチ機構30Bで用いる圧縮コイルスプリング33Bでは、図8に示すように、中心軸線Ac´を曲線とすることにより、実施例1の圧縮コイルスプリング33と同様に一端座巻部33aと他端座巻部33bとを偏芯させるものである。この偏芯量Baの設定方法は、実施例1の圧縮コイルスプリング33と同様である。圧縮コイルスプリング33Bでは、中心軸線Ac´が曲線であることを除くと、実施例1の圧縮コイルスプリング33と同様とされている。このため、実施例2の圧縮コイルスプリング33Bでは、押下ボタン34がOFF状態(図3参照)とされた際の高さ寸法(押下操作方向(上下方向)での大きさ寸法)である1.8mmに対して、0.72mmよりも大きな寸法だけ偏芯させるべく中心軸線Ac´の軌跡を設定する。この中心軸線Ac´(その軌跡)の設定方法の一例について、以下で説明する。
【0058】
ここで、圧縮コイルスプリング33Bは、押下ボタン34のボタン本体34aと取付凹所32の底壁32bとの間に設けられることから、押下スイッチ機構30Bとして組み付けられると、実施例1と同様に他端座巻部33bは、一端座巻部33aと平行な状態とされる(図8に二点鎖線で示す圧縮コイルスプリング33B参照)。圧縮コイルスプリング33Bでは、この状態における押下ガイド軸部34bの外周面に押し当てられる側(図8を正面視して左側)の縁部を、他端座巻部33bが一端座巻部33aと平行とされる前の反対側(図8を正面視して右側)の縁部と等しい態様であるものとみなすことができる。
【0059】
この反対側の圧縮コイルスプリング33Bの内周において、他端座巻部33bの角が存在する位置を点P11とし、一端座巻部33aの角が存在する位置を点P12とする。また、点P11の押下操作方向(上下方向)の下方であって、一端座巻部33a(その下端)を延長させた線と交わる位置を点P13とする。さらに、線分P11−P12に対して他端座巻部33bを直交させるとともに、その上端を延長させた線と線分P12−P13の延長線とが交わる位置を点P14とする。角P11−P12−P13における角度をβとし、角P11−P14−P12における角度をθとする。線分P11−P13は、押下スイッチ機構30Bとして組み付けられた状態において、押下ボタン34がOFF状態(図3参照)とされた際の圧縮コイルスプリング33Bの高さ寸法であり、一端座巻部33aと他端座巻部33bとが為す角度を設定する際の偏芯量Baに対する基準の高さ寸法とする。
【0060】
圧縮コイルスプリング33Bでは、線分P12−P13が一端座巻部33aと他端座巻部33bとの偏芯量Baとなり、実施例1と同様の条件により0.72mmよりも大きな値とする。また、線分P11−P13すなわち押下ボタン34がOFF状態(図3参照)とされた際の圧縮コイルスプリング33Bの高さ寸法は、1.8mmとなる。さらに、上記した条件より、三角形P11−P12−P13と三角形P11−P12−P14とは、互いに相似する直角三角形となる。このため、線分P12−P13を0.72mmとすると、一端座巻部33aと他端座巻部33bとが為す角度θは、{90−β=90−arctan(1.8/0.72)}で示すことができ、arctan(0.72/1.8)で示すことができる。このため、角度θは、略22度となる。このことから、上記した条件とされた圧縮コイルスプリング33Bでは、押下スイッチ機構30Bにおける上記した条件下で、一端座巻部33aと他端座巻部33bとが為す角度を22度よりも大きく設定することにより、偏芯量Baを0.72mmよりも大きくすることができ、内周を押下ガイド軸部34bの外周面に押し当てる(接触させる)ことを可能とすることができる。
【0061】
実施例2の押下スイッチ機構30Bでは、圧縮コイルスプリング33Bの中心軸線Ac´を曲線として、一端座巻部33aと他端座巻部33bとが為す角度を設定することにより、一端座巻部33aと他端座巻部33bとの偏芯量Baを規定していることから、圧縮コイルスプリング33B(その内周)を押下ガイド軸部34b(その外周面)に押し当てる(接触させる)ことができ、圧縮されるもしくはそこから復帰すること(弾性変形)で圧縮コイルスプリング33Bに生じる得る振動を抑制することができる。
【0062】
実施例2の押下スイッチ機構30B(デジタルカメラ10)では、基本的に実施例1の押下スイッチ機構30(デジタルカメラ10)と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0063】
それに加えて、実施例2の押下スイッチ機構30Bでは、圧縮コイルスプリング33Bの中心軸線Ac´を曲線として、一端座巻部33aと他端座巻部33bとが為す角度を設定することにより、圧縮コイルスプリング33B(その内周)と押下ガイド軸部34b(その外周面)とを接触させる(押し当てる)ことができるので、簡易な構成とすることができる。
【0064】
したがって、実施例2の押下スイッチ機構30Bでは、部品点数の増加を招くことなく、圧縮コイルスプリング33Bの振動を抑制しつつシャッターボタン15(押下ボタン34)の押下操作の際の力量に変化が生じることを防止することができる。
【0065】
なお、上記した各実施例では、本発明に係る押下スイッチ機構の一例としての押下スイッチ機構30、30Bについて説明したが、筐体に設けられた押下ボタンの押下操作により操作信号を出力する押下スイッチ機構であって、前記筐体に対する前記押下ボタンの押下操作方向で前記筐体と前記押下ボタンとの間に設けられた圧縮コイルスプリングと、前記押下操作方向に押し下げられた前記押下ボタンにより押されることで操作信号を出力するスイッチ装置と、を備え、前記圧縮コイルスプリングは、中心軸線が前記押下操作方向に対して傾斜を為している押下スイッチ機構であればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0066】
また、上記した各実施例では、押下スイッチ機構30、30Bの押下ボタン34でシャッターボタン15を形成するものとされていたが、圧縮コイルスプリング33、33Bを用いて押下操作が可能とされた押下ボタン34であればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0067】
さらに、上記した各実施例では、圧縮コイルスプリング33、33Bの内周を押下ガイド軸部34bの外周面と接触させて(押し当てて)いたが、中心軸線Ac、Ac´を押下ボタン34の押下操作方向(上下方向)に対して傾斜させることで圧縮コイルスプリング33、33Bの内周を押下スイッチ機構における他の構成箇所の一部に接触させるものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0068】
上記した各実施例では、スイッチ装置35がスイッチ本体部35aに対するスイッチ突起部35bの押し込み量が2段階に設定されており、段階毎に異なる信号を出力する構成とされていたが、筐体11(カバー31)に対して圧縮コイルスプリング33、33Bの押す力に抗して上下方向の下側へと押下操作された押下ボタン34(その押下ガイド軸部34b)によりスイッチ突起部35bが押し込まれることで、操作信号を出力するものであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0069】
上記した各実施例では、デジタルカメラ10に押下スイッチ機構30、30Bが設けられていたが、カメラ機能を組み込んだPDA(personal data assistant)や携帯電話機等の携帯型情報端末装置に搭載されていてもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。これは、このような携帯型情報端末装置も外観は若干異にするもののデジタルカメラ10と実質的に全く同様の機能・構成を含んでいるものが多いことによる。同様に、本発明に係る押下スイッチ機構(30、30B)を画像入力装置に採用してもよい。
【0070】
以上、本発明の押下スイッチ機構、およびその押下スイッチ機構が設けられた撮像装置を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0071】
10 (撮像装置の一例としての)デジタルカメラ
11 筐体
15 シャッターボタン
30、30B 押下スイッチ機構
31 (筐体の一部を構成する)カバー
33、33B 圧縮コイルスプリング
33a (圧縮コイルスプリングの座巻部の一例としての)一端座巻部
33b (圧縮コイルスプリングの座巻部の一例としての)他端座巻部
34 押下ボタン
34b 押下ガイド軸部
35 スイッチ装置
41 操作穴部
Ac、Ac´ 中心軸線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開平08−115632号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けられた押下ボタンの押下操作により操作信号を出力する押下スイッチ機構であって、
前記筐体に対する前記押下ボタンの押下操作方向で前記筐体と前記押下ボタンとの間に設けられた圧縮コイルスプリングと、
前記押下操作方向に押し下げられた前記押下ボタンにより押されることで操作信号を出力するスイッチ装置と、を備え、
前記圧縮コイルスプリングは、中心軸線が前記押下操作方向に対して傾斜を為していることを特徴とする押下スイッチ機構。
【請求項2】
前記圧縮コイルスプリングでは、前記中心軸線が前記押下操作方向に対して傾斜する直線とされていることを特徴とする請求項1に記載の押下スイッチ機構。
【請求項3】
前記押下ボタンは、前記押下操作方向に伸びる押下ガイド軸部を有し、
前記筐体は、前記押下ガイド軸部を前記押下操作方向に沿って受け入れる操作穴部を有し、
前記圧縮コイルスプリングでは、両端の座巻部の中心位置が、前記中心軸線に直交する方向で見て、前記圧縮コイルスプリングの内径寸法と前記操作穴部の外径寸法との差分を等分した値よりも大きく偏芯されていることを特徴とする請求項2に記載の押下スイッチ機構。
【請求項4】
前記圧縮コイルスプリングでは、前記両座巻部の中心位置が、前記中心軸線に直交する方向で見て、前記圧縮コイルスプリングの内径寸法と前記操作穴部の外径寸法との差分よりも大きく偏芯されていることを特徴とする請求項3に記載の押下スイッチ機構。
【請求項5】
前記圧縮コイルスプリングでは、前記中心軸線が曲線とされていることを特徴とする請求項1に記載の押下スイッチ機構。
【請求項6】
前記押下ボタンは、前記押下操作方向に伸びる押下ガイド軸部を有し、
前記筐体は、前記押下ガイド軸部を前記押下操作方向に沿って受け入れる操作穴部を有し、
前記圧縮コイルスプリングでは、両端の座巻部における前記中心軸線に直交する面の為す角度が、前記圧縮コイルスプリングの内径寸法と前記操作穴部の外径寸法との差分を等分した値を、前記筐体と前記押下ボタンとの間に設けられる際の前記押下操作方向での大きさ寸法で割った値で表される正接の角度よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項5に記載の押下スイッチ機構。
【請求項7】
前記圧縮コイルスプリングでは、前記両座巻部における前記中心軸線に直交する面の為す角度が、前記圧縮コイルスプリングの内径寸法と前記操作穴部の外径寸法との差分を、前記筐体と前記押下ボタンとの間に設けられる際の前記押下操作方向での大きさ寸法で割った値で表される正接の角度よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項6に記載の押下スイッチ機構。
【請求項8】
前記押下ボタンは、撮影動作の実行のためのシャッターボタンであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の押下スイッチ機構。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の押下スイッチ機構が設けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の押下スイッチ機構が設けられていることを特徴とする携帯端末機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−105561(P2013−105561A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247269(P2011−247269)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】