説明

押出コーティング用改良樹脂組成物

【課題】押出コーティング、押出異形材および押出キャストフィルムを作製するのに適したポリエチレン系樹脂を提供する。
【解決手段】押出コーティングでの使用に特に適した組成物が開示される。組成物は、損失弾性率(またはG”)対貯蔵弾性率(またはG’)の自然対数−自然対数プロットの傾きSが[0.635*(メルトインデックス)+13.2]/[(メルトインデックス)+16.6]を超えるようなレオロジーを有するポリマー材料を含み、該ポリマー材料は、85,000g/molを超える分子量を有するGPCクロマトグラムの0.23未満のCDFRI画分、および1,750,000g/molまたはそれ以上の従来のGPC分子量における0.07超のCDFLS画分を有する。組成物は、押出コーティングで使用したときに低下したネックインを示し、ネックインは溶融強度から独立しており、そのために改良された押出工程を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレン押出組成物に関するものである。特に本発明は、高いドローダウンおよび実質的に低下したネックインを有する、密度範囲0.956g/cc〜0.863g/ccのエチレンポリマー押出組成物に関する。本発明は、エチレンポリマー押出組成物を作製する方法および押出コーティング品、押出異形材の形の物品および押出キャストフィルムの形の物品を作製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカル開始剤を用いてエチレンの高圧重合によって作製された低密度ポリエチレン(LDPE)は、直鎖PE(本明細書では、直鎖および実質的に直鎖均質および不均質ポリエチレンコポリマーおよびホモポリマーを意味するとして定義される)、たとえばZiegler−Natta配位(遷移金属)触媒を用いた低〜中圧でのエチレンおよびα−オレフィンの共重合によって作製された不均一直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)および超低密度ポリエチレン(ULDPE)と同様に、たとえば基材、たとえば板紙、紙、および/またはポリマー基材を押出コーティングするために;使い捨てオムツおよび食品包装などの用途のための押出キャストフィルムを作製するために;そして押出異形材、たとえばワイヤおよびケーブルジャケットを作製するために使用できることが既知である。しかしながらLDPEは一般に、優れた押出加工性および高い押出ドローダウン速度を示すが、LDPE押出組成物は、多くの用途のために十分な耐乱用性および強靭性が不足している。押出コーティングおよび押出キャスティング工程のために、高分子量を有する(すなわち約2g/10分未満のメルトインデックス、I2を有する)LDPE組成物を提供することによって乱用特性を改良する努力は、そのような組成物が必然的にあまりに大きい溶融強度を有するために高いライン速度でうまくドローダウンされないため、有効ではない。
【0003】
ULDPE(超低密度ポリエチレン)押出組成物の形の直鎖PEは、改良された耐乱用性および靭性特性を提供し、MDPE(中密度ポリエチレン)およびHDPE(高密度ポリエチレン)押出組成物は改良された耐バリア性(たとえば水分およびグリース透過に対する)を提供するが、これらの直鎖エチレンポリマーは、許容しがたい高いネックインおよびドロー安定性を示す;押出機におけるモータ負荷および背圧によって測定されるように、それらは純LDPEと比較して、比較的低い押出加工性も示す。
【0004】
ある用途において、従来の高圧工程で行えるよりも高い密度の樹脂で基材をコーティングすることが必要である。そのような用途の例は、剥離紙、写真印刷紙の裏当てなどである。これらの状況では、適切な密度の純直鎖PEの使用は、そのような樹脂は激しいドロー安定性現象、たとえばドローレゾナンス(draw resonance)およびエッジウィーブ(edge-weave)はもちろんのこと、許容されないネックインを受けるため、望ましくない。これらの欠陥は、中程度のメルトインデックスのオートクレーブLDPEを高密度直鎖PEとブレンドすることによって部分的に克服される。5〜10g/10分のメルトインデックスを有する直鎖PEおよび5〜8のメルトインデックスを有する20〜50%のLDPEのブレンドによって従来実施されているが、しかしながらこれらのブレンドは、比較的高いネックインおよび低いドローダウンを被る。大量のLDPEもブレンドによって可能なより高い密度を低下させる。反対に、LDPEによってよりも低い密度の樹脂組成物が要求されるとき、大量のLDPEは、そのようなブレンドの密度下限を上昇させる。それゆえ組成物は、低いネックイン、高いドローダウンならびに上昇した密度上限および下限を提供する必要がある。
【0005】
製織(スクリム)および不織基材のコーティングにおいて、ポリエチレンは表面引力によって基材に付着しないために、コーティング樹脂が繊維の周りに流れて接着を引き起こすことが頻繁に必要である。代表的な基材はポリプロピレンである。これらの場合では、高いメルトインデックスLDPEが、繊維の周りに流れる能力を有するため、使われることが多い。都合の悪いことに、そのようなLDPE樹脂は、ウェブ不安定性を示すことが多い。したがって、製織基材にうまく付着することが可能であり、同時に商業生産速度でドロー安定性をほとんどまたは全く示さずに、低いネックインを示すポリエチレン組成物への要求がある。
【0006】
柔軟性包装および板紙/アルミニウム箔/PEジュース容器で使用されるようなシーラント用途では、高いホットタックまたはヒートシール強度と共に、シール開始温度が低いことが望ましい。メルトインデックスが通例7〜15の範囲の純LDPE樹脂は、これらの用途に使用されている。メタロセン触媒直鎖PEの近年の導入は、より低いシール開始温度およびより強いシール強度を提供している。そのような直鎖PE樹脂は一般に、LDPE樹脂とブレンドされて、合理的に十分な加工性パラメータ、たとえば純直鎖PEと比較して改良されたネックイン、低下したドロー安定性および消費電力を提供する。しかしながらこれらの組成物は純LDPEと比較して改良されたシール性能を提供するが、その加工性は実質的に劣っている(R. W. Halle, D. M. Simpson, "A New Enhanced Polyethylene for Extrusion Coating and Laminating”, TAPPI 2002 PLACE Confを参照)。したがって従来のLDPE樹脂に接近するか、またはそれを超える改良されたシール性能および加工性を提供する樹脂組成物への要求がある。
【発明の開示】
【0007】
本発明者らはこれらの欠陥の多くが、(通例0.2〜1.0g/10分の範囲の)低いメルトインデックスLDPEを10〜25%の量で、20〜100、好ましくは30〜40の範囲である高いメルトインデックスの直鎖PEと共に含む混合物によって、実質的に緩和されることを見出した。直鎖PEの密度および種類は、コーティング基材の最終用途によって決定される。特にLDPEは、10を超えるMWDおよび3.0を超えるMw(絶対)/Mw(GPC)比を有することにより特徴付けられる。
【0008】
一般に、ネックインおよび溶融強度は反比例することが考えられる。それゆえ参考文献、たとえばKaleらへのU.S.Patents 5,582,923および5,777,155(それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられている)において、物理靭性を改良するための直鎖PEの添加は、押出可能性因子、たとえばネックインの上昇を犠牲にして行われる。それゆえ押出コーティング業界では、現在の慣行は、より低いメルトインデックスLDPEを、より狭いダイ幅および比較的低い最大引取速度の機器での押出に利用することである。そのような低いメルトインデックスオートクレーブLDPE樹脂は、低いネックイン(2インチ未満(両側で1インチ))および十分なドローダウン速度を提供する。通例、より広いダイ幅および改良された内部デックルを備えたより高速な機器は、不都合なことにより大きなネックインを生じる傾向にあるより高いメルトインデックスオートクレーブLDPEと共に供給される。それゆえ複数のグレードのLDPEが近年要求され、樹脂メーカーと押出コーティング施設の両方が複雑な製品処理能力を、在庫貯蔵に関するさらなる要件とともに必要としている。したがって、高いドローダウンおよび低いネックインを同時に生じた樹脂の1つのグレードを提供することは好都合である。
【0009】
ネックインと溶融強度との従来の関係を破壊する組成物のそのような新たなファミリーが今や発見され、ネックインがポリマーの溶融強度とは無関係に制御できることを意味する。低いネックインを示すこれらの新しい組成物の好ましい用途において、溶融強度は低く5cN未満であり、本発明の多くの有用な例において、溶融強度は190℃の標準温度では低すぎて測定できない。直鎖PEのメルトインデックスは、20〜100g/10分の範囲で変化し、生じた溶融強度は5〜1cN未満の範囲で変化して、一方、生じたブレンドのメルトインデックスは実質的に変化する。それゆえメルトインデックスは、ネックイン性能に実質的に影響を及ぼすことなく広い範囲に渡って変化し、それゆえ通常関連する直鎖PEベース押出コーティング樹脂よりも、低いネックイン、高いドローダウンおよび低い消費電力を示す組成物を提供することが可能である。
【0010】
本発明の好ましい態様において、このネックインは、おおよそ440フィート/分の引取速度にておおよそ2インチ(各側で1インチ)未満である。メルトインデックスの実際の範囲は、大半のコーティング用途において3〜30g/10分であり、本発明の組成物は、この全範囲をカバーすることができるが、しかしながら好ましい範囲は、1200フィート/分を超えるドローダウンを維持するために、10〜30g/10分である。押出コーティング機器の最高動作速度が、使用される樹脂の特性によって制限されないことが望ましい。それゆえ最高ライン速度に到達する前にドロー安定性も、破壊も示さない樹脂を使用することが望ましい。そのような樹脂が2インチ未満の非常に低いネックインを示すことがなおさらに好ましい。本発明で提供された樹脂は、低いネックインおよび優れたドロー安定性を示し、同時に要求されるドローダウン能力は、正しいメルトインデックスを選択することによって得られる。通例、メルトインデックスは10〜20g/10分の範囲内である。樹脂にたとえば、低い引取を有する古い機器と、最新の高速機器との両方での押出に適切となる15g/10分のメルトインデックスを与えることが、本発明のさらなる特徴である。両者の状況においてネックインは2インチ未満である。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、レオロジー特性によって特徴付けることができる。本発明の組成物のレオロジーは、組成物によって観察されたネックイン対メルトインデックスの独立を実現するために必要な要件の1つであると考えられる。組成物は、自然対数(損失弾性率(またはG”))対自然対数(貯蔵弾性率(またはG’))の概算された傾き(またはS)(線形最小二乗回帰による)が[0.635*(メルトインデックス)+13.2]/[(メルトインデックス)+16.6]を超えるようなレオロジーを有するとして特徴付けることが可能であり、ここでメルトインデックスは、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定した組成物のメルトインデックスである。
【0012】
所望のレオロジーは、高分子量を有し、高度に分岐した分子の比較的少量を含有する樹脂から得られることが発見されている。この構造成分を含む樹脂は、低いネックインと、10g/10分を超えるメルトインデックスにおける高いドローダウンの驚くべき組合せを示す。したがって、本発明の樹脂はまた、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定されたその構造アーキテクチャに従って識別できる。本発明の樹脂は、示差屈折率検出器と共にゲル透過クロマトグラフィーによって決定されたように85,000を超える分子量を有するGPCクロマトグラムの画分パーセンテージがGPCクロマトグラムの全面積の23%未満である樹脂であり、低角度レーザー光散乱検出器による全光散乱面積のなお7%超が1,750,000g/molの従来のGPC分子量よりも上に発生する。さらに組成物の高分子量部分の分岐は好ましくは、Mark−Houwinkプロット(たとえばWood-Adams, Dealy, deGroot and Redwine, "Effect of Molecular Structure on the Linear Viscoelastic Behavior of Polyethylene",33 Macromolecules 2000,7489によって述べられているように)で表現されるような櫛状に対して樹状であり、ここで傾きは300,000〜3,000,000の絶対分子量範囲において0.25未満である。
【0013】
樹脂組成物は、材料、たとえば直鎖PE材料に加えた高分子量、高度分岐成分を有するLDPEとのブレンドを好都合に含む。組成物は他のポリマー材料、たとえばポリプロピレン、エチレン−スチレンコポリマー、高圧エチレンコポリマー、たとえばエチルビニルアセテート(EVA)およびエチレンアクリル酸なども含む。
【0014】
本発明の組成物を作製するのに使用する好ましいブレンド中の直鎖PEは、当技術分野で既知のいずれの直鎖PEでもよく、当技術分野で一般に既知であるように所望の物理特性に応じて変更できる。
【0015】
本発明の組成物を作製するのに使用する好ましいLDPEは、ASTMD1238、条件190℃/2.16kgに従って測定された、2〜0.2g/10分のメルトインデックス(I2)、それぞれ25〜50cNまたはそれ以上の溶融強度、従来のGPCによって測定された10を超えるMw/Mnおよび3.0を超えるMw(絶対)/Mw(GPC)比を有する。そのようなLDPEは好ましくは、オートクレーブリアクター内で35℃以下の冷却エチレン供給を用いて、単相モードにて3つまたはそれ以上の区域で作製される。リアクターは好ましくは、転移点(2相と単相系との間の相境界)を超えておおよそ240℃の平均リアクター温度で運転される。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明の樹脂を使用することによって押出コーティング性能を改良する工程である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一連の樹脂の損失弾性率G”対弾性率または貯蔵弾性率G’の自然対数のプロットである。
【図2】図1のプロットによる線形最小二乗回帰から得た線の傾きのメルトインデックスに対するプロットである。
【図3】NBS 1476高圧低密度ポリエチレン標準で得た適切な光散乱クロマトグラムの例である。
【図4】低角度光散乱検出器(LS)の蓄積検出器画分(CDF)の、直鎖ポリエチレン同等GPC MWの対数底10に対するプロットである。
【図5】屈折計検出器(RI)の蓄積検出器画分(CDF)の、直鎖ポリエチレン同等GPC MWの対数底10に対するプロットである。
【図6】直鎖PEのMIが直鎖PEと2つの異なる種類のLDPEとのブレンドについて調節されるときの、ネックイン性能のプロットであり、本発明の好ましいブレンドでのネックインおよびMIの独立性を示す。
【図7】一連の材料のホットタック強度の、温度に対するプロットであり、直鎖PE成分の適切な選択によって本発明で可能な優れたホットタック性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の用語は、本発明のために所与の意味を有するものとする:
「引取」は本明細書では、基材が移動し、それゆえ溶融ポリマー押出物を伸張または伸長する速度を意味するとして定義される。
【0019】
関連技術において「溶融張力」とも呼ばれる「溶融強度」は本明細書では、標準可塑度計の、たとえばASTM D1238−Eで述べられているような可塑度計のダイを溶融押出物が通過するときに、その融点より上で破壊速度より前に溶融強度が水平に達する引取速度にて、溶融押出物を引張るのに必要な力(歪セルを装備した巻上ドラムによって印加される)を意味するとして定義および定量化される。本明細書ではセンチニュートン(cN)で報告される溶融強度値は、Gottfert Rheotensを使用して190℃にて決定する。密度はASTM D792に従って試験する。
【0020】
「ネックイン」は本明細書では、ダイ幅と製造品の押出物幅との差として定義される。本明細書で報告されるネックイン値は、おおよそ250ポンド/時の押出速度において、600°Fの温度(別途記載されている場合は除く)にて、24インチにデッケルされた30インチワイドダイを装備し、25ミルダイギャップを有する3.5インチ直径、30:1 L/D Black−Clawson押出コーターを使用して、1ミルのコーティング厚を生じる、440フィート/分の引取速度にて決定される。「ドローダウン」は、溶融ポリマーがダイから離れる引取スピード(同じ機器、押出速度および温度を使用した)またはエッジの不安定性が認められるスピードを意味する。
【0021】
「ポリマー」という用語は、本明細書で使用するように、同じまたは異なる種類のどちらかのモノマーを重合することによって作製されたポリマー化合物を指す。それゆえ総称のポリマーは、1種類のみのモノマーから作製されたポリマーを指すのに通常使用される「ホモポリマー」という用語はもちろんのこと、2またはそれ以上の各種モノマーから作製されたポリマーを指す「コポリマー」も含む。
【0022】
「LDPE」という用語は「高圧エチレンポリマー」または「高分岐ポリエチレン」とも呼ばれ、ポリマーがオートクレーブまたは管状リアクター内、14,500psi(100MPa)を超える圧力にて、フリーラジカル開始剤、たとえばペルオキシドを使用して部分的にまたは完全にホモ重合または共重合されることを意味するとして定義される(たとえば参照により本明細書に組み入れられているUS 4,599,392を参照)。
【0023】
「直鎖PE」という用語は、いずれかの直鎖、実質的に直鎖または不均質ポリエチレンコポリマーまたはホモポリマーを意味するとして定義される。直鎖PEは、いずれかの工程、たとえば気相、溶液相、あるいはスラリーまたはその組合せによって作製できる。直鎖PEは、それぞれまた直鎖PEである1またはそれ以上の成分より成る。
【0024】
「分子量分布」すなわち「MWD」という用語は、重量平均分子量の数平均分子量に対する比(MW/Mn)として定義される。MwおよびMnは従来のGPCを使用して当技術分野で既知の方法に従って決定される。比Mw(絶対)/Mw(GPC)が定義され、ここでMw(絶対)は低角度(たとえば15度)における光散乱面積およびポリマーの注入質量から導出した重量平均分子量であり、Mw(GPC)はGPC校正から得た重量平均分子量である。光散乱検出器は、直鎖ポリエチレンホモポリマー標準、たとえばNBS 1475に関して、GPC機器と同等の重量平均分子量を生じるように校正されている。
【0025】
組成物の説明
本発明の対象の組成物は、多重検出器GPCによって決定されるように、そのレオロジー特性およびその分子アーキテクチャに従って特徴付けることができる。
【0026】
本発明の組成物のレオロジーは、組成物のネックイン対メルトインデックスの独立につながると考えられている。組成物のレオロジーは、動的剪断レオロジーを使用して、ポリマーサンプルの弾性的および粘性的反応を独立して測定する以下の方法に従って示すことができる。測定は、190℃の温度および0.1〜1001/秒の周波数範囲で、振動剪断レオメータ、たとえばRheometrics RMS−800を使用して実施すべきである。これらの値の自然対数計算は次にプロットできる(ln(G”)対ln(G’))。
【0027】
線形最小二乗回帰がln(G”)対ln(G’)データに対して実施可能あり、形式:
Ln(G”) =S*(ln(G’))+G
の式が得られ、式中、Sは線の回帰傾きであり、Gは、G’の自然対数がゼロであるときのG”の自然対数である。
【0028】
回帰によって決定されたSが各樹脂の弾性を定量化するために特に有用なパラメータであることが発見されている。本発明の組成物は、[0.635*(メルトインデックス)+13.2]/[(メルトインデックス)+16.6]を超えるSを有することによって差別化できる。好ましくは本発明の組成物は、この値を1%、さらに好ましくは1.5%超過する。
【0029】
これらの組成物は驚くべきことに、特に組成物が好ましいLDPEを少なくとも13%含むときに、メルトインデックスと効果的に独立した、押出コーティングにおけるネックイン性能を示す。この独立は、ドローダウンの低下を犠牲にして達成されない。それゆえ高いメルトインデックスおよび高いドローダウンを有するが、驚くほど低いネックインを有する樹脂を提供することが可能である。この独立を図6に示し、ここで30〜3g/10分の範囲の各種メルトインデックスの直鎖PEが、(a)MWD>10.0およびMw(絶対)/Mw(GPC)>3.0の0.47MI LDPE、または(b)MWD<10.0および約2.7のMw(絶対)/Mw(GPC)の8.0MI LDPEの、どちらかの15重量%とブレンドされる。これらのブレンドのネックインは、440フィート/分の速度で測定され、値は図6にプロットされる。しかしながらドローダウンは、最終組成物のメルトインデックスによって制御され、より高いメルトインデックスを有する組成物はより高いドローダウンを提供する。いずれの例でも、ウェブ破壊前に測定可能なドローレゾナンスまたはエッジウィーブを示す、そのような組成物は観察されていない。
【0030】
本発明の対象の組成物は、多重検出器ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって証明されるように、その独自の分子アーキテクチャに従って特徴付けることもできる。少なくとも1個の低角度レーザー光散乱検出器(LS)および従来の屈折率(RI)検出器を装備した、適正に校正されたGPCを使用すると、本発明の組成物は以下の特性を示すであろう:第1に、示差屈折率検出器を備えたゲル透過クロマトグラフィーによって決定されたように、85,000を超える直鎖の同等のポリエチレン分子量を有するGPCクロマトグラムの画分パーセンテージは、GPCクロマトグラムの総面積の23%未満であり、低角度レーザー光散乱検出器による全光散乱面積のなお7%超が1,750,000g/molの従来のGPC分子量よりも上に発生する。材料は好ましくは、示差屈折率検出器を備えたゲル透過クロマトグラフィーによって決定されるように、GPCクロマトグラム総面積の21%未満の、好ましくは20%未満の、最も好ましくは15%未満の85,000を超える分子量を有するGPCクロマトグラムの画分パーセンテージを有するであろう。材料は好ましくは、1,750,000g/molの従来のGPC分子量より上で生じる、低角度レーザー光散乱検出器からの全光散乱面積の9%超も有するであろう。
【0031】
本発明の組成物は、いずれの溶融強度を有することもでき、驚くべきことにこれらの樹脂によって観察された低いネックインの観点から、9cN未満、さらに好ましくは5cN未満の溶融強度が特に好都合である。
【0032】
上述から理解されるように、基材にコーティングされたときに本発明の組成物の物理特性は、特定の要求に従って調整できる。本発明の好ましいブレンドにおいて、たとえば特定の直鎖PE(または他の直鎖PEを含む他の材料との直鎖PEの組合せ)部分を選択して、どのような特徴が所望されても最適化することができる。たとえば引張特性および耐乱用性は通例、従来のLDPEのそれらを超過するであろう。本発明者らは、ヒートシール特性およびホットタック特性が従来のLDPEよりも優れていることも見出し、より低い開始温度ならびに上昇したシールおよびホットタック強度を示した。
【0033】
本発明の組成は製造品、たとえばフィルム層への変換後にわずかに変更されることが、当業者によって認識されるであろう。本発明の別の態様はしたがって、損失弾性率(またはG”)対貯蔵弾性率(またはG’)の自然対数−自然対数プロットのSが[0.665*(メルトインデックス)+14.2]/[(メルトインデックス)+16.6]より大きいようなレオロジーを有するポリマーフィルム層であり、ここで該ポリマー材料は、85,000を超える直鎖の同等のポリエチレン分子量を有する、GPCクロマトグラムの0.23未満のCDF RI画分および1,750,000g/molまたはそれ以上の従来のGPC分子量において0.07を超えるCDF LS画分を有する。フィルム層は、好ましくは0.1〜40ミルでありうる。本発明のフィルム層には、当技術分野で既知であるように、処理、たとえば火炎またはコロナ処理ならびに印刷が好都合に行われる。フィルム層によって使用される基材は、付着を促進するために、火炎処理、コロナ処理、または各種のプライマーによるコーティングを行うことができる。
【0034】
より低いメルトインデックス(たとえば5〜9g/10分)の従来のLDPEに関連するネックイン性能を提供する高いメルトインデックスの樹脂を提供する能力の結果として、本発明の好ましいブレンドは、直鎖PEを含む大部分の組成にもかかわらず、押出コーティングおよび押出積層化用途で使用される従来の高圧低密度ポリエチレンに類似した加工性(モータ負荷要件によって決定されたように)を示す。
【0035】
本発明の組成物は、場合により追加のポリマー、たとえばわずかな量のポリプロピレンを用いた直鎖PEおよびLDPEのブレンドを使用して、好都合に実現できる。本発明の好ましいブレンドは、好ましくは組成物の総重量に基づいて組成物の少なくとも70%を構成し、組成物の最大100%を構成することがある。ブレンドの直鎖PE部分は、好ましくはブレンドの70重量%を構成する。さらに好ましくは、ブレンドは少なくとも75パーセントを、なおさらに好ましくは直鎖PEの80〜85パーセントを構成する。本発明の組成物は、95パーセント以下の直鎖PEを、しかし好ましくは90パーセント以下の、そして最も好ましくは85パーセント以下の直鎖PEを含有すべきである。
【0036】
本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも5パーセントの、好ましくは少なくとも10パーセントの、さらに好ましくは15〜20パーセントの、少なくとも1つの高圧エチレンポリマー組成物、すなわちLDPEも含有する。好ましくはこの組成物は、全組成の30パーセント以下、さらに好ましくは25パーセント以下、最も好ましくは20パーセント以下である。直鎖PEおよびLDPEの全量は必ずしも100%に等しくなる必要がないことを理解すべきである。
【0037】
好ましい高圧エチレンポリマー組成物の分子アーキテクチャは、ネックイン、最終組成物のレオロジー特性に関連していると考えられる。理論に拘泥するものではなく、本発明の好ましいブレンドのLDPE部分はレオロジーと分子アーキテクチャの独自の組合せをもたらす、高分子量の高度に分岐した構造を提供できると考えられる。しかしながら高分子量の高度に分岐した部分は、高圧低密度樹脂に由来する必要がないことを理解すべきであり、他の工程、たとえばWO 02/074816で述べられている工程が利用できる。
【0038】
本発明での使用に好ましいLDPEは、0.2〜2g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。さらに好ましくは、メルトインデックスは0.25より大きく、最も好ましくは0.3g/10分超である。メルトインデックスは好ましくは2未満であり、さらに好ましくは1未満、最も好ましくは0.7g/10分未満である。LDPEの溶融強度は、好ましくは24.1−18.0*log10(MI)超、あるいは25cNまたはそれ以上、さらに好ましくは30cNまたはそれ以上、最も好ましくは40cNまたはそれ以上である。実際的な理由で、溶融強度は好ましくは100cN未満である。好ましいLDPEは、従来のGPCによって測定したように10を超える、好ましくは12を超えるMW/Mn、そして3.0を超える、好ましくは3.2を超える、最も好ましくは3.5を超えるMw(絶対)/Mw(GPC)比も有する。
【0039】
そのようなLDPEは、3またはそれ以上の区域を備えた単相モードで動作する、35℃以下の冷却エチレン供給を用いたオートクレーブリアクター内で行うことができる。リアクターは好ましくは、転移点(2相と単相系との間の相境界)を超えておおよそ240℃の平均リアクター温度で運転される。
【0040】
本発明の組成物は、LDPE樹脂の1つが比較的より高いメルトインデックスを有し、もう一方がより低いメルトインデックスを有し、より高度に分岐しているLDPE/LDPEブレンドも含む。より高いメルトインデックスを有する成分は管状リアクターから得られ、より低いMIの、より高度に分岐したブレンドの成分は、各リアクターのメルトインデックスを制御する特殊な方法、たとえば再循環流中のテロマーの回収またはオートクレーブ(AC)リアクターへの新しいエチレンの添加、あるいは当技術分野で既知の他のいずれかの方法と組合せて、独立した押出において、または並列した管状/オートクレーブリアクターを使用して添加される。
【0041】
本発明の押出組成物の作製に使用するための適切な高圧エチレンポリマー組成物は、低密度ポリエチレン(ホモポリマー)、少なくとも1つのα−オレフィン、たとえばブタンと共重合されたエチレン、そして少なくとも1つのα,β−エチレン性不飽和コモノマー、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレートおよびビニルアセテートとエチレン共重合されたエチレンを含む。有用な高圧エチレンコポリマー組成物を作製する適切な技法は、McKinneyらによってUS Patent 4,599,392で述べられている。
【0042】
本発明では高圧エチレンホモポリマーとコポリマーの両方が有用であると考えられているが、ホモポリマーポリエチレンが一般に好ましい。
直鎖PE
【0043】
本発明の好ましい組成物を構成するいずれの種類の直鎖PEもブレンドに使用できる。これは、U.S.Patent5,272,236、U.S.Patent5,278,272、U.S.Patent5,582,923およびU.S.Patent5,733,155でさらに定義されている実質的に直鎖のエチレンポリマー;U.S.Patent No.3,645,992に述べられているような不均質分岐直鎖エチレンポリマー組成物;U.S.Patent No.4,076,698で開示された工程に従って作製されるような不均質分岐エチレンポリマー;および/またはそのブレンド(US3,914,342またはUS5,854,045に開示されているような)を含む。直鎖PEは、当技術分野で既知のいずれかの種類のリアクターまたはリアクター構成を使用して、気相、溶液相またはスラリー重合あるいはその組合せを介して作製できる。
【0044】
本発明で使用する場合、直鎖PEは好ましくは、20g/10分またはそれ以上、さらに好ましくは25g/10分超、最も好ましくは少なくとも30g/10分のメルトインデックスを有する。直鎖PEのメルトインデックスは、1000g/10分もの、好ましくは500g/10分またはそれ以下、最も好ましくは50g/10分未満でありうる。
【0045】
ポリマー押出組成物の作製
本発明のポリマー押出組成物を作製するのに好ましいブレンドは、タンブル乾燥ブレンド、秤量供給、溶媒ブレンド、化合物を介したメルトブレンドまたはサイドアーム押出などはもちろんのことその組合せを含む、当技術分野で既知の適切な手段によって作製できる。驚くべきことに、低いメルトインデックスLDPE成分とより高いメルトインデックス成分、直鎖PEまたはLDPEのどちらかとのメルトインデックスの差を考慮すると、これらのブレンドはゲル化を防止する特殊な混合手順を必要としない。30:1単軸スクリューで押出された乾燥ブレンド混合物は、最小限の非混合ゲルと共に生じたフィルム層を提供する。
【0046】
本発明の押出組成物は、多重検出器GPCによって示された必要なレオロジーおよび分子アーキテクチャが維持される限り、他のポリマー材料、たとえばポリプロピレン、高圧エチレンコポリマー、たとえばエチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、およびエチレンアクリル酸(EAA)など、エチレン−スチレンインターポリマーとブレンドすることも可能である。組成物を使用して、単層または多層品および構造を、たとえばシーラント、接着剤または結合層として作製することができる。一般に当技術分野で既知であるように、他のポリマー材料を本発明の組成物とブレンドして、加工、フィルム強度、ヒートシール、または接着特徴を改良することができる。
【0047】
好ましい組成物のLDPEおよび直鎖PE部分のどちらも、本発明の組成物を作製するために、化学的および/または物理的修飾形で使用できる。そのような修飾は、いずれの既知の技法によっても、たとえばアイオノマー化および押出グラフト化によって実施できる。
【0048】
添加剤、たとえば抗酸化剤(たとえばヒンダードフェノール、たとえばCiba Geigyによって供給されたIrganox(登録商標)1010またはIrganox(登録商標)1076)、ホスファイト(たとえばまたCiba Geigyによって供給されたIrgafos(登録商標)168)、粘着添加剤(たとえばPIB)、Standostab PEPQ(商標)(Sandozによって供給された)、顔料、着色剤、充填剤も、本発明のエチレンポリマー押出組成物に、出願人が発見した高いドローダウンおよび実質的に低下したネックインを妨害しない程度まで添加することができる。強力な接着を必要とする押出コーティング用途では、これらの化合物は基材への接着を妨害するため、本発明の組成物は、好ましくは抗酸化剤を含有しないか、限られた量のみ含有する。しかしながら高レベルの抗酸化剤を含む組成物は、当技術分野で周知の技法、たとえば基材のコロナおよび火炎処理を使用して、および樹脂押出温度を上昇させることによって接着させることができる。本発明の組成物は、これに限定されるわけではないが、未処理および処理済二酸化ケイ素、タルク、炭酸カルシウム、および粘土はもちろんのこと、第1級、第2級および置換脂肪酸アミド、チルロール剥離剤、シリコーンコーティングなどを含む、アンチブロッキングおよび摩擦特徴の係数を向上させる添加剤も含有する。たとえば透明キャストフィルムのかぶり防止特徴を向上させるために、たとえばNiemannによってUS Patent 4,486,552で述べられているように、他の添加剤も添加できる。本発明のコーティング、異形材およびフィルムの静電気特徴を向上させて、たとえば電子感受性商品の包装および作製を可能にするために、なお他の添加剤、たとえば第4級アンモニウム化合物を単独で、またはエチレン−アクリル酸(EAA)コポリマーまたは他の機能性ポリマーと組合せて添加できる。特に極性基材への接着を向上させるために、他の機能性ポリマー、たとえば無水マレイン酸グラフトポリエチレンも添加できる。
【0049】
本発明の組成物を含む多層化構造は、同時押出、積層化およびその組合せを含む既知の手段によって作製できる。その上、本発明の組成物は、より高いドローダウン材料を使用して1またはそれ以上のより低いドローダウン材料を本質的に「運ぶ」同時押出操作において利用できる。特に本発明の組成物は、より低いドローダウンの物質を運ぶのに十分に適している。
【0050】
本発明のエチレンポリマー押出組成物は、単層または多層構造にかかわらず、当技術分野で一般に既知であるように、押出コーティング、押出異形材および押出キャストフィルムを作製するのに使用することができる。本発明の組成物がコーティング目的に、または多層構造において使用される場合、たとえばこれに限定されるわけではないが、紙製品、金属、セラミックス、ガラスおよび各種ポリマー、特に他のポリオレフィン、およびその組合せを含む基材または隣接材料層は、極性でも非極性でもよい。押出プロファイリングでは、これに限定されるわけではないが、冷蔵庫ガスケット、ワイヤおよびケーブルジャケット、ワイヤコーティング、医療用チューブおよび水道配管を含む各種の物品が潜在的に製造され、組成物の物理特性がその目的に適している。本発明の組成物から、または本発明の組成物を用いて作製された押出キャストフィルムも、食品包装および工業用ストレッチ包装用途で使用される。
実施例
【0051】
実施例で使用する樹脂すべての名称を表1に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0052】
レオロジー決定
ポリマー材料のレオロジーを決定する適切な工程を示すために、樹脂A、B、C、D、E、B1およびB2のサンプルを作製した。次にこれらの組成物それぞれの損失弾性率G”および弾性率または貯蔵弾性率G’をRheometrics RMS800振動剪断レオメータによって決定した。樹脂B1、樹脂Dおよび樹脂Aについて得られた値を表2に報告し、これらの値の自然対数プロット(追加の樹脂のプロット共に)を図1に示す。
【表6】

【表7】

【表8】

【0053】
線形最小二乗回帰は、各樹脂のln(G”)対ln(G’)データに対して実施することができ、形式:
ln(G”)=(S)*(ln(G’)+G
の式を生じ、式中、Sは線の回帰傾きであり、Gは、G’の自然対数がゼロであるときのG”の自然対数である。
次にこの傾きの値をメルトインデックスに対してプロットできる。これらの値を図2に示す。
【0054】
式S=[0.635*(メルトインデックス)+13.2]/[(メルトインデックス)+16.6]によって形成された線もこのプロットに表され、この線の下の傾きを有するこれらの組成物は、本発明の範囲内ではない。

分子アーキテクチャの決定
【0055】
各種の高分子組成物の分子アーキテクチャを決定するために、以下の手順を使用した:クロマトグラフシステムは、Precision Detectors(マサチューセッツ州、アマースト)2角レーザー光散乱検出器Model 2040を装備したWaters(マサチューセッツ州、ミルフォード)150C高温クロマトグラフより構成されていた。光散乱検出器の15度角を分子量の計算に使用した。データ収集は、Viscotek(テキサス州、ヒューストン)TriSECソフトウェアバージョン3および4−チャンネルViscotek Data Manager DM400を使用して実施した。システムは、Polymer Laboratories(英国、シュロップシャー)からのオンライン溶媒脱気装置を装備していた。
【0056】
カルーセルコンパートメントは140℃で操作し、カラムコンパートメントは150℃で操作した。使用したカラムは、7個のPolymer Laboratories 20ミクロンMixed−A LSカラムであった。使用した溶媒は、1,2,4トリクロロベンゼンであった。サンプルは、溶媒50ミリリットル中ポリマー0.1グラムの濃度で調製した。クロマトグラフィー溶媒およびサンプル調製溶媒はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)200ppmを含有していた。どちらの溶媒源も窒素散布した。ポリエチレンサンプルは、160℃にて4時間静かに攪拌した。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分であった。
【0057】
GPCカラムセットの校正は、580〜8,400,000の範囲の分子量を持つ18個の狭分子量分布ポリスチレン標準を用いて実施し、個々の分子量間に少なくとも10の間隔がある5つの「カクテル混合物」に配列した。標準は、Polymer Laboratories(英国、シュロップシャー)から購入した。ポリスチレン標準は、1,000,000に等しいまたはそれ以上の分子量では溶媒50ミリリットル中0.025グラムで、1,000,000未満の分子量では溶媒50ミリリットル中0.05グラムで調製した。ポリスチレン標準は、80℃にて30分間静かに攪拌しながら溶解させた。狭標準混合物を最初に、そして分解を最小限にするために、最高分子量の成分が減少する順
番に実施した。下の式を使用して、ポリスチレン標準ピーク分子量をポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621(1968)に述べられているように):
Mホ゜リエチレン=Ax(Mホ゜リスチレン)B
式中、Mは分子量であり、Aは0.41の値であり、Bは1.0に等しい。4次多項式を使用して、各ポリエチレン当量校正点を適合させた。
【0058】
GPCカラムセットの全プレートカウントは、エイコサンを用いて実施した(TCB 50ミリリットル中0.04gで調製し、静かに攪拌しながら20分間に渡って溶解させた)。プレートカウントおよび対称性を以下の式に従って、200マイクロリットル注入について測定した:
【0059】
プレートカウント=5.54*(ピーク最大値におけるRV/(1/2高さにおけるピーク幅))^2、式中、RVは保持容量(ミリリットル)であり、ピーク幅の単位はミリリットルである。
対称=(10分の1高さにおける後ピーク幅−ピーク最大値におけるRV)/(ピーク最大値におけるRV−10分の1高さにおける前ピーク幅)
【0060】
式中、RVは保持容量(ミリリットル)であり、ピーク幅の単位はミリリットルである。
【0061】
多重検出器オフセット決定のための系統的手法は、Balke、Moureyらによって発表された手法(Mourey and Balke, Chromatography Polym. Chpt 12,(1992))(Balke, Thitiratsakul, Lew, Cheung, Mourey, Chromatography Polym. Chpt 13,(1992))に従って実施し、Dow broad polystyrene 1683からの二重検出器log MW結果を狭標準校正曲線からの狭標準カラム校正結果に対して組織内ソフトウェアを使用して最適化した。分子量データは、Zimm(Zimm, B. H., J. Chem. Phys., 16, 1099(1948))およびKratochvil(Kratochvil, P., Classical Light Scattering from Polymer Solutions, Elsevier, Oxford, NY(1987))によって発表された方法に従った方法で得た。分子量の決定に使用した総注入濃度は、屈折率は、分子量115,000の直鎖ポリエチレンホモポリマーからのサンプル屈折率面積および屈折率検出器校正から得た。クロマトグラフィー濃度は、第2ビリアル係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するために十分に低いと見なされた。
【0062】
溶出成分(クロマトグラフィー変化によって引き起こされる)および流速成分(ポンプ変化によって引き起こされる)を含有する、時間に対する偏差を監視するために、遅い溶出ナローピークは一般に「マーカーピーク」として使用される。したがって流速マーカーが、脱気クロマトグラフィーサンプルシステム溶媒とポリスチレンカクテル混合物の1つの溶出サンプルとの間のエアピーク不一致に基づいて確立された。この流速マーカーを使用して、エアピークの配列によって、サンプルすべての流速を線形的に補正した。次にマーカーピークの時間の変化は、流速およびクロマトグラフィーの傾きの両方における線形シフトに関連すると見なされる。
【0063】
フローマーカーピークの保持容量(RV)測定の最高精度を促進するために、最小二乗適合ルーチンを使用して、フローマーカー濃度クロマトグラムピークを二次方程式に適合させた。次に二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置について解いた。フローマーカーピークに基づいてシステムを校正した後、有効な流速(校正傾きの測定値として)を式1として計算する。高温SECシステムにおいて、酸化防止不一致ピークまたは空気ピーク(移動相が十分に脱気されている場合)は、有効なフローマーカーとして使用できる。有効な流速マーカーの主な特徴は以下のとおりである:フローマーカーは単分散であるはずである。フローマーカーは全カラム透過容量近くまで溶出するはずである。フローマーカーは、サンプルのクロマトグラフィー積分領域を妨害しないはずである。
【0064】
式1 流速有効=流速公称*フローマーカー校正/フローマーカー観測
好ましいカラム設定は、請求項に適切な最高分子量画分を十分に分離する20ミクロン粒子サイズおよび「混合」多孔率のカラム設定である。
【0065】
十分なカラム分離および適当な剪断率の検証は、NBS 1476高圧低密度ポリエチレン標準に対するオンライン光散乱検出器の低角度(20度未満)を参照することによって行える。適切な光散乱クロマトグラムは、(非常に高いMWピークおよび中程度の分子量ピーク)双峰性に見えるはずであり、図3に示すのとおおよそ同等のピーク高さを有する。全LSピーク高さの半分より低い、2つのピーク間の溝高さを示すことにより十分な分離があるはずである。クロマトグラフィーシステムのプレートカウント(上述したようにエイコサンに基づいて)は、32,000超であるはずであり、対称は1.00〜1.12であるはずである。
【0066】
屈折計の蓄積検出器画分(CDF)(「CDF RI」)および光散乱検出器の蓄積検出器画分(「CDF LS」)の計算は、以下のステップによって実施される:
1)サンプル間のエアピークの保持容量比および一貫した狭標準カクテル混合物の保持容量比に基づいてクロマトグラムを線形的に流量補正する。
2)校正の節で述べられているように屈折計に対する光散乱検出器オフセットを補正する。
3)光散乱および屈折計クロマトグラムからベースラインを引いて、屈折計クロマトグラムから観察できる光散乱クロマトグラムにおける低分子量保持容量すべてを積分するよう確認する積分領域を設定する。
4)校正の節で述べられているように、ポリスチレン−ポリエチレン変換因子(0.41)よって修正されたポリスチレン校正曲線に基づく各データスライスにおける分子量を計算する。
5)各データスライスにおける高分子量から低分子量までの(低−高保持容量)(i)ベースラインを引いたピーク高さ(H)に基づいて、以下の式に従って、各クロマトグラムの蓄積検出器画分(CDF)(CDF RIおよびCDF LS)を計算する:
【数1】

式中、iはLowestR VindexとHighestR Vindexとの間である。
6)CDF対分子量のプロットは、ステップ(5)からの各積分データスライスにおけるCDFを計算して、それをステップ(4)からの各積分データスライスにおけるポリエチレン同等分子量のlogに対してプロットすることによって得られる。
【0067】
このGPC法を使用して、以下のブレンドに対して解析を実施した:90%樹脂Fおよび10%樹脂Cを含むブレンド;50%樹脂Fおよび50%樹脂Cを含むブレンド;ならびに80%樹脂Gおよび20%樹脂Nを含むブレンド。これらの材料のプロットを図4および図5に示す。これらの図は、CDF RIプロットの85,000MWのlog、およびCDF LSプロットの1,750,000MWのlogも示す。これらの線から、80%樹脂Gおよび20%樹脂Nのブレンドが本発明のCDF LS基準を満足しないことと、80%樹脂Gおよび20%樹脂Nのブレンドも、50%樹脂Fおよび50%樹脂Cを含むブレンドも本発明のCDF RI基準を満足しないことが明確にわかる。
【0068】
各種の溶融強度でのネックイン性能を証明するために、直鎖PEおよびLDPEのブレンドを含む一連の組成物を作製した。特定の樹脂および使用した量を表3に示す。表3は、ブレンド全体の溶融強度、ブレンド全体のメルトインデックス、おおよそ250ポンド/時の押出速度における440フィート/分(および利用可能な場合には880フィート/分)での運転時に観察されるネックイン、ドローダウン(「+」はドローダウン限度に達しなかったことを示す)、非押出樹脂について上述したレオロジー方法に従って決定した傾きS、ならびにGPCからのCDF RI(85,000MW超の画分として表現)およびCDF LS(1,750,000MW超の画分として表現)も示す。表は、押出後のフィルム層に対して行ったSの一部の決定についても報告する。押出樹脂を得るために、押出樹脂はコーティング基材から分離されるか、さらに好都合には適切な金属シート上に直接押出すことができる。この後者の方法は好ましくは、コーティング操作を目的とした基材上にダイを配置する前に、十分な押出速度(たとえば250ポンド/時)で実施できる。
【0069】
結果は、押出コーティング用途での本発明の樹脂の優位性を明らかに示している。特に比較実施例17は、押出コーティング用に設計され、好ましい本発明の組成物と同様のメルトインデックスを有するオートクレーブLDPE樹脂が、同等の低いネックイン値を提供しないことを示している。比較実施例18は、メルトインデックス8を持ち、LDPEを含む好ましい直鎖PEよりも低いメルトインデックスを有するメタロセン気相樹脂のブレンドが、著しくより高いネックインを示すことを表している(そしてこのブレンドがより高いモータ負荷を必要とすることも報告された)。
【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【0070】
実施例のさらなるセットでは、ポリマーを1ミルクラフト紙に615°F(324℃)にてコーティングして、1インチ幅細片に切断し、ホットタック強度はJ&B Instrumentsからのホットタック試験機を使用して測定した。サンプルに0.275N/mm2の圧力を0.5秒のシール時間に渡って受けさせて、次に0.1秒間冷却させた。剥離スピードは200mm/秒に設定した。生じたデータを以下の図7に示す。本発明の組成物は広範な温度範囲に渡ってはるかに高いホットタック強度を有するので、データは特に従来のLDPE押出コーティング樹脂と比較したときの、本発明の本態様の優位性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損失弾性率(またはG”)の自然対数対貯蔵弾性率(またはG’)の自然対数のプロットの、線形最小二乗回帰によって決定された傾き(またはS)が[0.635*(メルトインデックス)+13.2]/[(メルトインデックス)+16.6]を超えるようなレオロジーを有するポリマー材料を含む組成物であって、該ポリマー材料が85,000g/molを超える分子量を有するGPCクロマトグラムの0.23未満のCDF RI画分、および1,750,000g/molまたはそれ以上の従来のGPC分子量において0.07超のCDF LS画分を有する、組成物。
【請求項2】
前記ポリマー材料が約5cN未満の溶融強度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマー材料がLDPEを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー材料が少なくとも2つのポリマー材料のブレンドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマー材料が直鎖PEを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記LDPEが、10を超えるMWDおよび3.0を超えるMw(絶対)/Mw(GPC)比を有する高分子量高分岐成分を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記LDPEが、単相モードで動作している、35℃以下の冷却エチレン供給を用いたオートクレーブリアクター内で作製される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマー材料が10g/10分を超えるメルトインデックスを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマー材料が約13g/10分を超えるメルトインデックスを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー材料が約100g/10分未満のメルトインデックスを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマー材料が300,000〜3,000,000g/molの絶対分子量範囲において傾きが0.25未満であるMark−Houwinkプロットを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記Sの値が[0.635*(メルトインデックス)+13.2]/[(メルトインデックス)+16.6]よりも少なくとも1%大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記Sの値が[0.635*(メルトインデックス)+13.2]/[(メルトインデックス)+16.6]よりも少なくとも2%大きい、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマー材料が、85,000g/mol超の分子量を有するGPCクロマトグラムの0.21未満のCDF RI画分を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリマー材料が、85,000g/mol超の分子量を有するGPCクロマトグラムの0.20未満のCDF RI画分を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマー材料が、1,750,000g/mol超の分子量を有するGPCクロマトグラムの0.09を超えるCDF LS画分を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
キャストフィルム、異形材押出、コーティング基材、押出積層物または押出コーティング基材を作製するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項18】
ポリマー材料を基材上に押出すための工程において、損失弾性率(またはG”)対貯蔵弾性率(またはG’)の自然対数−自然対数プロットの、線形最小二乗回帰によって決定された傾き(またはS)が[0.635*(メルトインデックス)+13.2]/[(メルトインデックス)+16.6]を超えるようなレオロジーを有するポリマー材料を使用することを特徴とする工程。
【請求項19】
440フィート/分のライン速度で動作しているときに観察されたネックインが3インチ未満である、請求項18に記載の工程。
【請求項20】
440フィート/分のライン速度で動作しているときに観察されたネックインが2.5インチ未満である、請求項18に記載の工程。
【請求項21】
440フィート/分のライン速度で動作しているときに観察されたネックインが2インチ未満である、請求項18に記載の工程。
【請求項22】
ドローダウンが少なくとも1500フィート/分である、請求項18に記載の工程。
【請求項23】
前記ポリマー材料が5cN未満の溶融強度を有する、請求項18に記載の工程。
【請求項24】
損失弾性率(またはG”)対貯蔵弾性率(またはG’)の自然対数−自然対数プロットの、線形最小二乗回帰によって決定された傾き(またはS)が[0.665*(メルトインデックス)+14.2]/[(メルトインデックス)+16.6]を超えるようなレオロジーを有するポリマーフィルム層であって、該ポリマー材料が85,000g/molを超える分子量を有するGPCクロマトグラムの0.23未満のCDF RI画分、および1,750,000g/molまたはそれ以上の従来のGPC分子量における0.07超のCDF LS画分を有する、ポリマーフィルム層。
【請求項25】
前記層が1,750,000g/molまたはそれ以上の従来のGPC分子量における0.09超のCDF LS画分を有する、請求項24に記載のフィルム層。
【請求項26】
前記フィルム層が押出コーティング、押出積層化、またはキャストフィルム工程を使用して作製された、請求項24に記載のフィルム層。
【請求項27】
対象の組成物であって:
a.約2未満のメルトインデックス(I2)、約10を超える分子量分布、約3.0を超えるMw(絶対)/Mw(GPC)比、24.1−18.0*log10を超える溶融強度(MI)を有する、組成物の約10〜約25重量パーセントの高圧低密度型ポリエチレン樹脂と;
b.0.97〜0.857g/ccの範囲の密度および20〜100の範囲のメルトインデックス(I2)を有する、組成物の約90〜約75重量パーセントの直鎖PEとを含み、
対象の組成物のMIが約10g/10分を超える、組成物。
【請求項28】
成分a)が約1g/10分未満のメルトインデックス(I2)を有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が約5cN未満の溶融強度を有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
成分(a)のMw(絶対)/Mw(GPC)比が3.2を超える、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
成分(a)のMw(絶対)/Mw(GPC)比が3.5を超える、請求項27に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233197(P2012−233197A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−167221(P2012−167221)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2006−525522(P2006−525522)の分割
【原出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】