説明

押出コーティング

シングルサイト触媒によって触媒された重合によって製造され、かつエチレンへの共単量体として少なくとも2のC4〜12アルファ−オレフィンを含むポリエチレンを含むコーティングを持っている、押出コーティングされた基体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン組成物を用いて基体を押出コーティングする方法並びに押出されコーティングされた構成物自体に関する。もっと特定すると、本発明は、ある2峰性のシングルサイトポリエチレンを押出コーティングに使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧ラジカルプロセス、好ましくはオートクレーブ反応器で慣用的につくられた低密度ポリエチレン(LDPE)が、長年にわたって押出コーティングに使用されてきた。押出コーティングでは、重合体樹脂は溶融され、そして薄いホットフィルムへと形成され、これは通常、移動する平らな基体、たとえば紙、板紙、金属箔、またはプラスチックフィルム上にコーティングされる。コーティングされた基体は、次に1組の逆回転するロールの間を通され、該ロールはコーティングを基体上に押しつけて、完全な接触および接着を確保する。
【0003】
押出コーティングに使用される重合体は、それをコーティングとして有用にするある特性を保有する必要がある。たとえば、コーティングは適当な水蒸気バリア性を提供し、かつ良好なシール特性を示さなければならない。それは、必要不可欠な機械的特性およびホットタック性も保有しなければならない。この点に関して、LDPEは、押出コーティングに要求される理想的な機械的特性を保有していない。というのは、LDPEは必要な靭性および酷使への耐性が不足しているからである。したがって、機械的特性を改善するためにLDPEに他の重合体グレードをブレンドすることが知られている。
【0004】
それゆえ、機械的特性を改善するために、LDPEはこれまで、より高密度のポリエチレン、たとえば中または高密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンと組み合わされていた。たとえば、押出コーティング組成物の加工性を改善するために、少量のLDPE(5〜30重量%)がLLDPEに加えられることができる。しかし、組成物中のLDPE含有量が増加すると、線状重合体の有益な特性、たとえば、環境応力亀裂抵抗、ガスバリア特性、シール特性が、直ぐに希釈されまたは失われる。他方、LDPE含有量が低過ぎると、ブレンドは十分な加工性を持たないかもしれない。このような低LDPE含有量のブレンドの問題は、これがLLDPE単独よりも良好な加工性を持つ一方で、高い引取り速度では押出可能でなくまたは伸長引取りされないかもしれないことである。したがって、良好な機械的特性と良好な加工性との間には二律背反の関係がある。
【0005】
ジーグラーナッタ触媒反応を使用して慣用的につくられた線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超低密度ポリエチレン(ULDPE)の押出組成物は、改善された機械的特性を提供するが、これらもまた押出性の不足の故に加工するのが困難である。
【0006】
したがって、良好な機械的特性および加工特性の両方を提供する、押出コーティングに適したさらなるポリエチレン重合体組成物を発明する必要性がある。
【0007】
国際特許出願公開第01/62847号は、多段プロセスでシングルサイト触媒を使用してつくられた2峰性のポリエチレン組成物を使用することによって、この問題への解決策を提案する。該組成物はそのまままたは押出前に少量のLDPEと混合されて、押出コーティングとして使用されることができる。該製造された重合体は好ましくは、2段プロセスのループおよび気相段階の両方でブテンが使用された、2峰性のエチレン/ブテン共重合体である。
【0008】
国際特許出願公開第01/62847号に記載された重合体は、許容できるシール開始温度および比較的広いシーリングの窓を持つけれども、そのホットタック強度は限定される。これに関連して、ヘキセンーエチレン共重合体はブテンーエチレン共重合体よりも優れたシール特性を提供し、またオクテンーエチレン共重合体はヘキセンーエチレン共重合体よりも優れた特性を提供することが知られている。
【0009】
しかし、比較的高級のアルファ−オレフィンの共単量体、すなわちC以上のアルファ−オレフィンの使用は、重合体製品のコストを増加し、また一般に、共単量体の取り込み効率は、共単量体の炭素数が増加するにつれて減少する、すなわちヘキセンはブテンよりも低度に効率的に取り込まれ、またオクテンはヘキセンよりも低度に効率的に取り込まれる等である。したがって、当業者は、比較的高級の共単量体を含めることに積極的でない。
【特許文献1】国際特許出願公開第01/62847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは今驚くべきことに、2の異なったアルファ−オレフィン共単量体を取り込むことによって、該共単量体のどちらかを唯一の共単量体として使用して製造されたポリエチレンよりも優れたシール特性およびホットタック特性を持つ、押出コーティングに理想的な、多峰性の、たとえば2峰性のポリエチレン組成物が製造されることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、1面から見れば本発明は、押出コーティングされた基体であって、当該コーティングが、シングルサイト触媒によって触媒された重合によって製造され、かつエチレンへの共単量体として少なくとも2のC4〜12アルファ−オレフィン、好ましくはブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、およびデセン−1から選ばれた少なくとも2のアルファ−オレフィン、特にはブテン−1およびヘキセン−1を含むポリエチレンを含む基体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
他の面から見れば本発明は、シングルサイト触媒によって触媒された重合によって製造され、かつエチレンへの共単量体として少なくとも2のC4〜12アルファ−オレフィン、好ましくはブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、およびデセン−1から選ばれた少なくとも2のアルファ−オレフィン、特にはブテン−1およびヘキセン−1を含むポリエチレンを押出コーティングでまたはキャストフィルムの形成に使用する方法を提供する。
【0013】
多くの場合、シールされるべき表面の間に形成されるシールは、それがまだ熱い間に負荷下に置かれる。強いシールが冷却前においてさえ形成されることを確実にするためには、ポリエチレンのホットタック特性が重要であることを、これは意味する。すべての押出コーティングは、その範囲内でシーリングが行われることができる窓、すなわちその範囲内で押出物が部分的に溶融状態になる窓を持つ。伝統的に、このシーリングの窓はどちらかというと狭かった。これは、ヒートシーリングプロセスの間の温度制御が重要であることを意味する。本発明の重合体は、より広いシーリングの窓を許し、それによってシーリング操作がより低い温度で行われることを許し、かつヒートシーリングの間の温度制御をより低度に重要にすることを確保する。より低い温度で操作することによって、シールされるべき物品が高温度に曝されず、かつシーリングに係わらなくてもよい押出コーティングの在りうる他の成分も高温度に曝されない利益がある。より低い温度は、それを発生しかつ維持することがもちろん安価であるので、経済的な利点もある。
【0014】
本発明の押出コーティングのポリエチレンは、典型的には2以上のポリエチレンの混合物、たとえばブレンドによってまたは2段以上の重合反応によって製造されたものである。成分であるポリエチレンは、単独重合体、共重合体、3元重合体または4以上の共単量体の重合体であることができる。しかし、好ましくは少なくとも1の重合体は3元重合体であり、または少なくとも2の重合体は共重合体であって、特にその中で1の共単量体、すなわち多い方の成分がエチレンであり、かつ1若しくは2の共単量体、すなわち少ない方の成分がCおよび/またはCアルファ−オレフィンである。
【0015】
より早い段階でより低級のアルファ−オレフィン共単量体(たとえば、ブテン−1)が取り込まれ、かつより遅い段階でより高級のアルファ−オレフィン共単量体(たとえば、ヘキセン−1)が取り込まれる2段以上の重合で、重合体が調製されるべきことは特に好まれる。それにもかかわらず、第1段階でエチレン単独重合体が製造され、かつ第2段階でエチレン3元重合体が製造される、若しくはその逆の2段重合反応で、または第1段階でより高級のアルファ−オレフィンの共単量体とのエチレン共重合体が製造され、かつ第2段階でより低級のアルファ−オレフィンの共単量体とのエチレン共重合体が製造される2段重合反応で、重合体を製造することは本発明の範囲内である。同様に、エチレン共重合体が第1段階で製造され、かつエチレン3元重合体が第2段階で製造され、またはその逆であることができる。従来技術で周知の予備重合段階を採用することも可能である。
【0016】
もっとも好まれる実施態様では、ポリエチレンは、好ましくはスラリー相でつくられたエチレン/ブテン−1共重合体(より低い分子量の成分)と、好ましくは気相でつくられたエチレン/ヘキセン−1共重合体(より高い分子量の成分)との混合物から形成される。
【0017】
本明細書で使用されるエチレンの「単独重合体」の表現は、実質的に、すなわち少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、もっとも好ましくは少なくとも99.8重量%のエチレン単位からなるポリエチレンのことをいう。
【0018】
本発明のエチレン重合体は、いわゆるシングルサイト触媒、たとえば1以上のη結合性配位子によって配位された金属を含む触媒を使用して製造される。このようなη結合をされた金属は通常、メタロセンと呼ばれ、金属は典型的にはZr、HfまたはTi、特にZrまたはHfである。η結合性配位子は、典型的にはη環状配位子、すなわち任意的に縮合したまたは垂れ下がりの置換基を持つホモまたはヘテロ環のシクロペンタジエニル基である。このようなメタロセン触媒は、約20年間にわたり科学および特許の文献に広く記載されてきた。このようなメタロセン触媒は、触媒活性化剤または助触媒、たとえばメチルアルミノキサンのようなアルモキサンとともにしばしば使用され、これも同様に文献に広く記載されている。
【0019】
本発明の押出コーティングに使用される重合体は、好ましくは多峰性、たとえば2峰性、すなわちその分子量プロフィールが単一のピークを含まないで、代わりに該重合体が別々に製造された成分を含む事実の結果として、異なった平均分子量のまわりを中心とした(区別できるかできないかも知れない)2以上のピークの組み合わせを含む。この実施態様では、より高い分子量の成分は、好ましくはより高級のアルファ−オレフィン共単量体の共重合体(または3元重合体等)に相当し、かつより低い分子量の成分は、好ましくはエチレン単独重合体またはより低級のアルファ−オレフィンの共単量体の共重合体(または3元重合体等)に相当する。このような2峰性のエチレン重合体は、たとえば2段以上の重合によってまたは2以上の異なった重合触媒を1段重合で使用することによって調製されることができる。しかし、好ましくは該重合体は、2段重合で同じ触媒、たとえばメタロセン触媒を用いて、特にループ反応器中のスラリー重合とそれに続く気相反応器中の気相重合を使用して製造される。ループ反応器−気相反応器系は、デンマーク国Borealis A/S社によって開発され、BORSTAR(商標)技術として知られている。
【0020】
好ましくは、より低い分子量の重合体部分は、連続運転されるループ反応器で製造され、そこではエチレンが上述の重合触媒および連鎖移動剤、たとえば水素の存在下に重合される。希釈剤は典型的には不活性の脂肪族炭化水素、好ましくはイソブタンまたはプロパンである。C〜C12のアルファ−オレフィン共単量体が好ましくは、より低い分子量の共重合体部分の密度を調節するために加えられる。
【0021】
好ましくは、水素濃度は、より低い分子量の共重合体部分が所望のメルトフローレートを持つように選択される。より好ましくは、水素とエチレンとのモル比は0.1〜1.5mol/kmol、もっとも好ましくは0.2〜1.0mol/kmolである。
【0022】
より低い分子量の共重合体部分の目標密度が955kg/mを超える場合には、運転温度が反応混合物の臨界温度を超え、かつ運転圧力が反応混合物の臨界圧力を超える、いわゆる超臨界状態で、プロパン希釈剤を使用してループ反応器を運転することが有利である。そのときに温度の好ましい範囲は90〜110℃、かつ圧力の範囲は50〜80バールである。
【0023】
スラリーは、ループ反応器から間欠的にまたは連続的に除かれ、そして分離装置に移送され、そこで少なくとも連鎖移動剤(たとえば水素)が重合体から分離される。活性触媒を含有する重合体は、次に気相反応器中に導入され、そこで追加のエチレン、共単量体(一または複数の共単量体)および任意的に連鎖移動剤の存在下に重合が進行して、より高い分子量の共重合体部分が製造される。重合体は気相反応器から間欠的にまたは連続的に抜き出され、そして残留する炭化水素が重合体から分離される。気相反応器から回収された重合体は、本発明のポリエチレン組成物である。
【0024】
気相反応器の条件は、ポリエチレン重合体が所望の特性を持つように選ばれる。好ましくは、反応器の温度は70〜100℃、かつ圧力は10〜40バールである。水素とエチレンとのモル比は好ましくは0〜1mol/kmol、より好ましくは0〜0.5mol/kmolの範囲にあり、かつアルファ−オレフィン共単量体とエチレンとのモル比は好ましくは1〜100mol/kmol、より好ましくは5〜50mol/kmol、またもっとも好ましくは5〜30mol/kmolの範囲にある。
【0025】
押出コーティングプロセスは、慣用の押出コーティング技術を使用して実施されることができる。したがって、重合プロセスから得られた重合体は、典型的にはペレットの形態で、任意的に添加剤を含有して押出装置へ供給される。押出機から重合体溶融物はフラットダイを通して、コーティングされるべき基体へ送られる。ダイリップとニップ間に距離がある故に、溶融されたプラスチックは空気中で短時間酸化され、通常これはコーティングと基体との間の改善された接着をもたらす。コーティングされた基体はチルロール上で冷却され、その後耳取り機に通され、そして巻き上げられる。1000m/分まで、たとえば300〜800m/分のライン速度で、ラインの幅は例として500〜1500mm、たとえば800〜1100mmで変化することができる。重合体溶融物の温度は典型的には275〜330℃である。
【0026】
本発明の多峰性のポリエチレン組成物は、基体上に単層コーティングとしてまたは共押出の1層として押出されることができる。これらのいずれの場合でも、該多峰性ポリエチレン組成物をそのまま使用すること、または該多峰性ポリエチレン組成物を他の重合体、特にLDPEと、最終ブレンドの重量に基づいてブレンドが0〜50%、好ましくは10〜40%、また特には15〜35%のLDPEを含有するようにブレンドすることが可能である。ブレンド操作は反応器後の処理においてまたはコーティングプロセスの押出直前に行うことができる。
【0027】
多層押出コーティングでは、他の層は所望の特性および加工性を持つ任意の重合体樹脂を含むことができる。そのような樹脂の例は;ガスバリア層のPA(ポリアミド)およびEVA;エチレンの極性共重合体、たとえばエチレンとビニルアルコールとの共重合体またはエチレンとアクリル酸エステル単量体との共重合体;接着剤層、たとえばアイオノマー、エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体等;剛性のためのHDPE;耐熱性および耐油性を改善するためのポリプロピレン;高圧プロセスで製造されたLDPE樹脂;エチレンとアルファ−オレフィン共単量体とをジーグラー、クロムまたはメタロセン触媒の存在下に重合することによって製造されたLLDPE樹脂;並びにMDPE樹脂を含む。
【0028】
好まれる実施態様では、重合体はLDPEとブレンドされ、好ましくは当該LDPEは少なくとも3g/10分、好ましくは少なくとも6.5g/10分のメルトインデックスを持ち、かつ押出コーティング用に設計されている。LDPEは最終ブレンドの15〜35重量%を形成することができる。該ブレンドは、従来技術で知られるように単層として基体上にコーティングされることができ、または他の重合体(一または複数の重合体)とともに共押出されることができる。
【0029】
基体は、好ましくは繊維に基づいた物質、たとえば紙または板紙である。基体は、たとえばポリエステル、セロファン、ポリアミド、ポリプロピレンまたは延伸(oriented)ポリプロピレンからつくられたフィルムであることもできる。他の好適な基体はアルミニウム箔を含む。
【0030】
コーティングは、典型的には厚さが10〜1000μm、特に20〜100μmであろう。具体的な厚さは、基体の性質およびその予定される以後の取り扱い条件に従って選ばれるだろう。基体は10〜1000μm、たとえば6〜300μmという厚さであることができる。
【0031】
さらなる面から見ると、本発明は押出コーティング用のポリエチレン組成物であって、当該組成物がシングルサイト触媒によって触媒された重合によって製造され、かつエチレンへの共単量体として少なくとも2のC4〜12アルファ−オレフィン、好ましくはブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、およびデセン−1から選ばれた少なくとも2のアルファ−オレフィン、特にはブテン−1およびヘキセン−1を持つポリエチレン組成物も提供する。
【0032】
さらなる面から見ると、本発明は、シングルサイト触媒によって触媒された重合によって製造され、かつエチレンへの共単量体として少なくとも2のC4〜12アルファ−オレフィン、好ましくはブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、およびデセン−1から選ばれた少なくとも2のアルファ−オレフィン、特にはブテン−1およびヘキセン−1を含むポリエチレンを押出して、重合体溶融物を形成し、そして基体を当該溶融物でコーティングすることを含む、基体を押出コーティングする方法を提供する。
【0033】
本発明の押出コーティングは好ましくは、
a) エチレンとブテン−1とのより低い分子量の共重合体、および
b) エチレンとC〜C12のアルファ−オレフィン(たとえば、C〜C12のアルファ−オレフィン)とのより高い分子量の共重合体
を含む2峰性の3元重合体か、あるいは、
a) エチレンとC〜C12のアルファ−オレフィンとの2元共重合体である、より低い分子量の重合体、および
b) a)のより低い分子量の重合体がエチレンとC〜C12のアルファ−オレフィン(たとえば、C〜C12のアルファ−オレフィン)との2元共重合体であるならばエチレンとブテン−1との2元共重合体であり、あるいはエチレンとブテン−1とC〜C12のアルファ−オレフィン(たとえば、C〜C12のアルファ−オレフィン)との3元重合体である、より高い分子量の重合体
を含む2峰性の重合体のどちらかを含む。
【0034】
好まれる実施態様では、本発明は、比較的狭い分子量分布(MWD)並びに優れたシール特性、良好な加工性、低水蒸気透過性および低レベルの抽出分を持つ2峰性の重合体のコーティングを提供する。MWDは好ましくは2.5〜10、特には3.0〜6.0である。
【0035】
多峰性、たとえば2峰性の重合体の重量平均分子量は、好ましくは50,000〜250,000g/molである。より低い分子量の重合体部分は、好ましくは5000〜100,000g/mol、より好ましくは10,000〜70,000g/molの重量平均分子量を好ましくは持ち、かつより高い分子量の重合体部分は、好ましくは50,000〜500,000g/mol、より好ましくは100,000〜300,000g/molの重量平均分子量を好ましくは持つ。
【0036】
重合体の分子量分布はさらに、ISO 1133に従う、190℃におけるそのメルトフローレート(MFR)によって特徴付けられる。最終の多峰性、たとえば2峰性の重合体は、好ましくは1〜30g/10分、より好ましくは5〜25g/10分のメルトフローレートMFRを持つ。より低い分子量の重合体部分は、好ましくは5〜1000g/10分、より好ましくは10〜200g/10分のメルトインデックスMFRを持つ。
【0037】
重合体の密度は好ましくは905〜940kg/m、より好ましくは905〜935kg/mである。より低い分子量の重合体部分の密度は好ましくは920〜950kg/m、より好ましくは925〜940kg/mである。より高い分子量の成分の重合体部分の密度は、好ましくは880〜910kg/m、より好ましくは895〜905kg/mである。より低い分子量の成分は、より高い分子量の成分よりも高い密度を持たなければならない。
【0038】
シール開始温度は、重合体のMFRおよびより低い分子量の成分の密度を調節することによって制御されることができる。より高いMFRは、より低いシール開始温度をもたらす。非常に好まれる実施態様では、本発明の重合体は、広い温度範囲にわたって一定のヒートシール力を生じる。したがって、ヒートシール力は実質的に一定であり、たとえば少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃の温度範囲にわたって、ヒートシール力は2N/25.4mm以内、好ましくは1N/25.4mm以内にある。これらの特性は図1および2に示される。
【0039】
本発明に従う2峰性の重合体は、全組成に対して好ましくは30〜70重量%、より好ましくは35〜60重量%、またもっとも好ましくは38〜55重量%のより低い分子量の共重合体部分を含む。
【0040】
重合体中の全共単量体含有量は好ましくは0.5〜10mol%、好ましくは1.5〜6.5mol%、より好ましくは2〜5mol%であり、かつより低い分子量の重合体中の共単量体含有量は好ましくは0〜2.0mol%、好ましくは0.5〜1.5mol%である。より高い分子量の重合体中の共単量体含有量は好ましくは1.5〜8mol%、好ましくは3.5〜6mol%である。共単量体含有量はNMRによって測定されることができる。
【0041】
重合体の融点は100〜130℃、好ましくは110〜120℃であることができる。
【0042】
さらに、より高い分子量の共重合体部分の分子量は、より低い分子量の共重合体部分が上で特定されたメルトインデックスおよび密度を持つときに、最終の2峰性重合体が上述のメルトインデックスおよび密度を持つようなものでなければならない。
【0043】
重合体自体に加えて、本発明のコーティングは、従来技術で知られた酸化防止剤、プロセス安定剤、顔料および他の添加剤をも含有することができる。その上、2の他のアルファ−オレフィン共単量体を持つ、多峰性のシングルサイト触媒のエチレン重合体は、所望の最終用途に適したシール特性および機械的特性を保持しながら、他の重合体とブレンドされることができる。使用されることができるこのような他の重合体の例は、LDPE、HDPE、MDPE、LLDPE、EMA、EBA、およびEVAを含む。典型的には、HDPE、MDPEまたはLLDPEの場合には全重合体の約50重量%まで、より好ましくは30重量%までが、このような他の重合体によって構成されることができる。2の他のアルファ−オレフィン共単量体を持つ、多峰性のシングルサイト触媒のエチレン重合体は、キャストフィルムラインでフィルムを製造するのに使用されることもできる。
【0044】
本発明は、これから以下の非制限的な実施例および数種のサンプルのヒートシール特性を示す添付図によってさらに例示される。
【0045】
実験の部
【0046】
ISO 1133に従う、190℃におけるメルトフローレート(MFR、ときにはメルトインデックスとも呼ばれる)。測定に使用された荷重は下付き文字として示され、すなわちMFRは2.16kgの荷重下に測定されたMFRを表す。
【0047】
分子量の平均および分子量分布は、オンライン粘度計付きのWaters Alliance社のGPC V2000測定機を使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定された。炉の温度は140℃であった。トリクロロベンゼンが溶媒として使用された。
【0048】
密度はISO 1183−1987に従って決定された。
【0049】
重合体のブテン−1およびヘキセン−1含有量は13C NMRによって決定された。
【0050】
ベース重量(坪量)は以下のように決定された。すなわち、5つのサンプルが、押出コーティングされた紙から装置の横断方向と平行に切り出された。サンプルの大きさは10cm×10cmであった。該サンプルは溶媒中に10〜30分間入れられ、その後に紙がプラスチックから除かれ、そして溶媒が放置蒸発された。サンプルは次に秤量され、そして平均値が計算された。その結果が、1平方メートル当たりのプラスチックの重量として示された。
【0051】
紙基体が均一のベース重量を持っていれば、測定は紙を除かずになされるだろう。そのような場合には、紙のベース重量は、測定されたベース重量から差し引かれた。その差が結果として報告された。
【0052】
重合体のレオロジーは、Rheometrics社のRDA II Dynamic Rheometerを使用して決定された。測定は190℃において窒素雰囲気下に実施された。測定は、周波数(ω)の関数として貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G’’)並びに複素粘度の絶対値(η)または複素弾性率の絶対値(G)を与えた。

【0053】
Cox−Merz則によれば、複策粘度関数η(ω)は、周波数がrad/秒で採られるならば、従来の粘度関数(せん断速度の関数としての粘度)と同じである。この経験式が正しければ、複素弾性率の絶対値は従来の(すなわち、定常状態の)粘度測定におけるせん断応力に相当する。これは、関数η(G)がせん断応力の関数としての粘度と同じであることを意味する。
【0054】
本方法では、低せん断応力での粘度すなわち低Gでのη(これはいわゆるゼロ粘度の近似としての役割をする。)およびゼロせん断速度粘度の両方が、平均分子量の尺度として使用された。他方で、Gとともに粘度が減少することであるせん断流動化は、分子量分布が広ければ広いほど、より顕著になる。この特性は、いわゆるせん断流動化指数SHIを、2の異なったせん断応力での粘度の比として定義することによって近似されることができる。以下の実施例では、せん断応力(またはG)0および100kPaが使用された。したがって、

ここで、
ηは、ゼロせん断速度粘度である。
η100は、G=100kPaでの複素粘度である。
【0055】
上述のように、貯蔵弾性率関数G’(ω)、および損失弾性率関数G’’(ω)は動的測定から1次関数として得られた。特定の値の損失弾性率における貯蔵弾性率の値は、分子量分布の広さとともに増加する。しかし、この量は重合体の分子量分布の形に非常に依存する。実施例では、G’’=5kPaにおけるG’の値が使用された。
【0056】
融解温度および結晶化度は、10℃/分の加熱および冷却速度でMettler社のToledo DSC822を使用する示差走査熱量計法(DSC)によって決定された。
【0057】
触媒調製の実施例1
【0058】
134グラムのメタロセン錯体(Witco社によってTA02823として供給され、0.36重量%のHfを含有するビス(n−ブチルジシクロペンタジエニル)ハフニウム2塩化物)および(Albemarle社によって供給された)トルエン中のメチルアルモキサン(MAO)の30%溶液9.67kgが一緒にされ、そして3.18kgの乾燥した、精製トルエンが加えられた。こうして得られた錯体溶液は、17kgのGrace社によるシリカ担体Sylopol 55SJ上に加えられた。錯体は、均一なスプレーにより2時間かけて非常にゆっくりと供給された。温度は30℃未満に保たれた。混合物は、錯体の添加後30℃で3時間反応させておかれた。こうして得られた固体触媒は、窒素でパージすることによって50℃で3時間乾燥され、そして回収された。
【0059】
触媒調製の実施例2
【0060】
ベンジルカリウムを使用することによる(n−BuCp)HfClのベンジル化
【0061】
ベンジルカリウムの合成

最初に、200mmolのカリウム第3級ブトキシド(Fluka社製品番号60100、97%)が250mlのトルエンに溶解された。次に、200mmolのn−ブチルリチウム(ヘキサン中約2.5M溶液、Aldrich社)が1.5時間で加えられた。混合物は白色から赤色に変わった。混合物は2.5日間撹拌された。混合物は次にろ過され、そしてトルエン(5×100ml)およびペンタン(50ml)で洗われた。その結果、21.7グラムのベンジルカリウムが、赤れんが色の、トルエンに不溶性の固体として得られた。収率は83%であった。
【0062】
THF−d中でのH−NMR、δ(ppm):6.01(m、2H)、5.10(d、2H)、4.68(t、1H)、2.22(s、2H)。ケミカルシフトは3.60ppmの溶媒シグナルを基準とする。THF−d中での13C−NMR、δ(ppm):152.3、129.4、110.1、94.3、51.6。ケミカルシフトは66.50ppmの溶媒シグナル(真中のピーク)を基準とする。
【0063】
(n−BuCp)Hf(CHPh)の合成

6.87mmolのビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウム2塩化物および150mlのトルエンが20℃で混合されて、茶灰色の溶液を与えた。次に、上述のように調製されたベンジルカリウムの14.74mmolが、0℃の該溶液に固体として10分間で加えられた。冷却浴が除かれ、そして混合物は20℃で3時間撹拌された。溶媒が減圧下に除かれ、そして残渣が3×30mlのペンタンで抽出された。合体されたペンタン溶液から溶媒が除かれ、3.86gの(n−BuCp)Hf(CHPh)が黄色の液体として得られた。収率93%。
【0064】
トルエン−d中でのH−NMR、δ(ppm):7.44(t、4H)、7.11(d、4H)、7.08(t、2H)、5.75(m、4H)、5.67(m、4H)、2.33(t、4H)、1.77(s、4H)、1.54(m、4H)、1.43(m、4H)、1.07(t、6H)。ケミカルシフトは2.30ppmの溶媒シグナル(真中のピーク)を基準とする。トルエン−d中での13C−NMR、δ(ppm):152.7、137.5、128、126.8、121.6、112.7、110.5、65.3、34.5、29.7、22.8、14.1。ケミカルシフトは20.46ppmの溶媒シグナル(真中のピーク)を基準とする。元素分析:C 63.57%(計算値63.72)、H 6.79%(計算値6.68)、Hf 29.78%(計算値29.59)、K <0.1%(計算値0)。
【0065】
触媒の担持および活性化
134グラムの(n−BuCp)HfClが、上述のように調製された164グラムの(n−BuCp)Hf(CHPh)に換えられ、そしてシリカ担体として(Grace社によって供給された)SP9−391が使用された以外は触媒調製の実施例1のように、メタロセンが担持され、そして活性化された。
【実施例1】
【0066】
500dmの容積を持つ、連続運転のループ反応器が、85℃の温度および60バールの圧力で運転された。反応器中に、プロパン希釈剤、エチレン、ブテン−1共単量体、水素および触媒調製の実施例1に従って調製された重合触媒が、ループ反応器の液相中のエチレン濃度が7mol%、水素とエチレンとの比が0.65mol/kmol、ブテン−1とエチレンとの比が155mol/kmolおよび反応器の重合体生産速度が25kg/時であるような量で導入された。こうして形成された重合体は、100g/10分のメルトインデックスMFRおよび935kg/mの密度を持っていた。
【0067】
スラリーは、沈降レッグを使用することによって反応器から間欠的に抜き出され、そして約50℃の温度および約3バールの圧力で運転されているフラッシュ槽に導かれた。
【0068】
フラッシュ槽から、少量の残留炭化水素を含有する粉体が、75℃の温度および20バールの圧力で運転されている気相反応器中に移送された。気相反応器中に、追加のエチレン、ヘキセン−1共単量体および不活性ガスとしての窒素が、循環ガス中のエチレン濃度が22mol%、水素とエチレンとの比が約0.5mol/kmol、ヘキセン−1とエチレンとの比が12mol/kmolおよび重合体生産速度が26kg/時であるような量で同様に導入された。ブテン−1の濃度は非常に低いので、ガス組成を監視するのに使用されたオンラインのガスクロマトグラフによっては検知されることができなかった。
【0069】
気相反応器から回収された重合体は、該粉体に400ppmのIrganox B561を添加することによって安定化された。安定化された重合体は次に、日本製鋼所社によって製造されたCIM90P押出機を用いて窒素雰囲気下に押出され、そしてペレット化された。溶融温度は200℃、生産量は280kg/時および比エネルギー投入量(SEI)は200kW時/トンであった。
【0070】
ループと気相の反応器間の生産分割比は、したがって49/51であった。重合体ペレットは2.7g/10分のMFR、920kg/mの密度、2.1重量%のブテン−1含有量、6.3重量%のヘキセン−1含有量、90600g/molの重量平均分子量M、16200g/molの数平均分子量Mおよび226000g/molのz−平均分子量Mを持っていた。さらに、重合体は3630Pa・秒のゼロせん断速度粘度η、4.1のせん断流動化指数SHI0/100を持っていた。
【実施例2】
【0071】
プロセス条件が表1に示されるように調整された以外は、実施例1の手順が繰り返された。重合体の特性は表2に示される。
【実施例3】
【0072】
プロセス条件が表1に示されるように調整された以外は、実施例1の手順が繰り返された。重合体の特性は表2に示される。
【実施例4】
【0073】
プロセス条件が表1に示されるように調整された以外は、実施例1の手順が繰り返された。重合体はペレット化されないで、粉体として回収された。重合体の特性は表2に示される。
【実施例5】
【0074】
プロセス条件が表1に示されるように調整された以外は、実施例4の手順が繰り返された。粉体がペレット化される前に、重合体中に15%のCA8200が加えられた。CA8200は、Borealis社によって製造販売される、7.5g/10分のMFRおよび920kg/mの密度を持つ押出コーティング用のLDPE重合体である。表2に示された重合体の特性は、粉体から決定された。
【実施例6】
【0075】
触媒が触媒調製の実施例2に従って調製され、かつプロセス条件が表1に示されるように調整された以外は、実施例1の手順が繰り返された。得られた粉体は、次に12%のCA8200とドライブレンドされ、そして実施例1に記載されたように押出された。分析データは表2に示される。分子量、結晶化度および共単量体含有量は粉体から測定され、一方レオロジー特性はブレンドから測定された。
【実施例7】
【0076】
プロセス条件が表1に示されるように調整された以外は、実施例6の手順が繰り返された。LDPEは重合体に加えられなかった。分析データは表2に示される。
【実施例8】
【0077】
プロセス条件が表1に示されるように調整された以外は、実施例6の手順が繰り返された。粉体の一部が次に回収され、そして実施例1に記載されたように押出された。LDPEは重合体に加えられなかった。分析データは表2に示される。
【実施例9】
【0078】
プロセス条件が表1に示されるように調整された以外は、実施例6の手順が繰り返された。さらに、得られた粉体の一部が回収され、そして9%のCA8200とドライブレンドされ、そして次に実施例6に記載されたように押出された。ブレンドの分析データは表2に示される。
【実施例10】
【0079】
実施例8の粉体の一部が、13%のCA8200とドライブレンドされ、そして次に実施例6に記載されたように押出された。ブレンドの分析データは表2に示される。
【実施例11】
【0080】
実施例8の粉体の一部が、24%のCA8200とドライブレンドされ、そして次に実施例6に記載されたように押出された。ブレンドの分析データは表2に示される。
【実施例12】
【0081】
気相反応器の温度が80℃であり、その他の運転条件は表1に示される通りであり、かつLDPEの量が10重量%であること以外は、実施例6の手順が繰り返された。重合体の分析データは表2に示される。分子量、結晶化度および共単量体含有量は粉体から測定され、一方レオロジー特性はブレンドから測定された。
【実施例13】
【0082】
運転条件が表1に示される通りであり、かつLDPEの量が25重量%であること以外は、実施例12の手順が繰り返された。重合体の分析データは表2に示される。分子量、結晶化度および共単量体含有量は粉体から測定され、一方レオロジー特性はブレンドから測定された。
【実施例14】
【0083】
運転条件が表1に示される通りであり、かつLDPEの量が30重量%であること以外は、実施例12の手順が繰り返された。重合体の分析データは表2に示される。分子量、結晶化度および共単量体含有量は粉体から測定され、一方レオロジー特性はブレンドから測定された。
【表1−1】

【表1−2】

【表2】

【0084】
N.D.(表2)は、その特性がそれぞれのサンプルについて測定されなかったことを示す。
【0085】
比較例1
【0086】
Dow社によって商標名Affinity PT1451のもとに製造販売される重合体が、コーティング実験に使用された。
【0087】
比較例2
【0088】
Borealis社によって商標名CA8200のもとに製造販売される重合体が、コーティング実験に使用された。該重合体は7.5g/10分のMFRおよび920kg/mの密度を持っていた。
【0089】
比較例3
【0090】
(国際特許出願公開第02/02323号に従ってつくられた):500dmの容積を持つ、連続運転のループ反応器が、85℃の温度および60バールの圧力で運転された。反応器中に、プロパン希釈剤、エチレン、ブテン−1共単量体、水素および触媒調製の実施例1に従って調製された重合触媒が、ループ反応器の液相中のエチレン濃度が6.6mol%、水素とエチレンとの比が0.63mol/kmol、ブテン−1とエチレンとの比が183mol/kmolおよび反応器の重合体生産速度が25kg/時であるような量で導入された。こうして形成された重合体は、120g/10分のメルトインデックスMFRおよび936kg/mの密度を持っていた。
【0091】
スラリーは、沈降レッグを使用することによって反応器から間欠的に抜き出され、そして約50℃の温度および約3バールの圧力で運転されているフラッシュ槽に導かれた。
【0092】
フラッシュ槽から、少量の残留炭化水素を含有する粉体が、75℃の温度および20バールの圧力で運転されている気相反応器中に移送された。気相反応器中に、追加のエチレン、ブテン−1共単量体および不活性ガスとしての窒素が、循環ガス中のエチレン濃度が23mol%、水素とエチレンとの比が約1.2mol/kmol、ブテン−1とエチレンとの比が48mol/kmolおよび重合体生産速度が26kg/時であるような量で同様に導入された。生産分割比はしたがって49/51であった。ヘキセン−1は気相反応器に導入されなかった。
【0093】
気相反応器から回収された重合体は、該粉体に400ppmのIrganox B561を添加することによって安定化された。安定化された重合体は次に、日本製鋼所社によって製造されたCIM90P押出機を用いて窒素雰囲気下に押出され、そしてペレット化された。溶融温度は200℃、生産量は280kg/時および比エネルギー投入量(SEI)は200kW時/トンであった。
【0094】
ループと気相の反応器間の生産分割比は、したがって49/51であった。重合体ペレットは10g/10分のメルトインデックスMFR、916kg/mの密度、8.1重量%のブテン−1含有量、67800g/molの重量平均分子量M、19600g/molの数平均分子量Mおよび140000g/molのz−平均分子量Mを持っていた。さらに、重合体は800Pa・秒のゼロせん断速度粘度η、2.4のせん断流動化指数SHI0/100を持っていた。
【実施例15】
【0095】
実施例4で製造された重合体粉体は、CA8200の量が全組成物の15重量%であり、かつIrganox B561の量が400ppmであるように、CA8200およびIrganox B561とドライブレンドされた。得られたブレンドは、生産量が40kg/時および溶融温度が195℃であるようにBerstorff BZE40A押出機を使用して窒素雰囲気下に押出され、そしてペレット化された。
【実施例16】
【0096】
押出コーティング試験が、Beloit社の共押出コーティングライン上でなされた。該ラインはPeter Cloerenのダイおよび5層のフィードブロックを持っていた。ラインの幅は850〜1000mmであり、かつ最大ライン速度は1000m/分(設計値)であった。
【0097】
上記のコーティングラインで、70g/mのベース重量を持つ両更クラフト紙が、6g/mのベース重量を持つCA8200の1層および26g/mのベース重量を持つ実施例1〜9で調製された本発明の重合体組成物の1層をコーティングされた。重合体溶融物の温度は300℃に設定された。ライン速度は100m/分であった。
【実施例17】
【0098】
押出コーティング試験が、単層のコーティングがいろいろなライン速度で製造されたこと以外は実施例16に従ってなされた。安定な挙動を示す最大ライン速度が報告された。
【0099】
単層のコーティングが、ベース重量が10g/mであるように複数の物質からつくられた。データは表3に示される。
【表3】

【0100】
「no」(表3)は、400m/分よりも大きいライン速度では、挙動が非常に不安定なのでコーティングが分析されることができなかったことを意味する。N.D.は、その特性がそれぞれのサンプルについて測定されなかったことを示す。
【0101】
最大rpmの欄は、コーティングを調製するときの押出機モーターの最大RPM値を示す。この値が大きければ大きいほど、加工性はより良好であり、かつ重合体の処理量はより大きい。
【0102】
最大ライン速度の欄は、m/分単位でのウェブの最大ライン速度を示す。低い最大ライン速度は、樹脂が伸長流動変動(ドローレゾナンス)を起こす傾向を持つことを示し、ドローレゾナンスではダイからの重合体の流れが激しく揺れ始め、そしてコーティングが不均一になる原因となる。この値が大きければ大きいほど、コーティングラインでの重合体の性能がより良好であり、かつコーティングの生産速度がより大きい。
【0103】
コーティング重量の欄は、測定されたコーティング重量およびそれが変動した範囲を示す。試験条件は、変動を最小化するための最適化はされなかった。
【実施例18】
【0104】
実施例16で製造されたコーティングは、シール性能を測定するためにホットタック試験に付された。サンプル(コーティングされた面に対してコーティングされた面)は、重ねられそして高められた温度で一緒にプレスされた。シール時間は0.5秒であり、遅延時間は0.2秒であり、そしてシール圧力は、15mmの試験片幅について1.5N/mmであった。シールを破る力が次に測定された。データは添付された図に示される。
【0105】
考察
【0106】
実施例および比較例から、以下のことが判る。
−比較例1の重合体は、極めて良好なシール特性を持つ。しかし、これは表3の低い最大RPM値によって示されるように不十分な加工性を持つ。
−比較例2の重合体は、不十分なシール特性を持つ。しかし、これは極めて良好な加工性を持つ。
−実施例1〜14の重合体は、良好なシール特性と加工性との組み合わせを持つ。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施例3〜8のヒートシール特性のグラフ
【図2】実施例9〜14のヒートシール特性のグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルサイト触媒によって触媒された重合によって製造され、かつエチレンへの共単量体として少なくとも2のC4〜12アルファ−オレフィンを含むポリエチレンを含むコーティングを持っている、押出コーティングされた基体。
【請求項2】
当該ポリエチレンが、エチレンへの共単量体としてブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、およびデセン−1から選ばれた少なくとも2のアルファ−オレフィンを含んでいる、請求項1に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項3】
当該ポリエチレンが、エチレン−ブテン共重合体およびエチレン−ヘキセン共重合体を含んでいる、請求項2に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項4】
当該ポリエチレンが、
a) エチレンとブテン−1とのより低い分子量の共重合体、および
b) エチレンとC〜C12のアルファ−オレフィンとのより高い分子量の共重合体
を含む2峰性の3元重合体を含んでいる、請求項1に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項5】
当該ポリエチレンが、
a) エチレンとC〜C12のアルファ−オレフィンとの2元共重合体である、より低い分子量の重合体、および
b) a)のより低い分子量の重合体がエチレンとC〜C12のアルファ−オレフィンとの2元共重合体であるならばエチレンとブテン−1との2元共重合体であり、あるいはエチレンとブテン−1とC〜C12のアルファ−オレフィンとの3元重合体である、より高い分子量の重合体
を含む2峰性の重合体を含んでいる、請求項1に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項6】
当該ポリエチレンが、3〜6のMWD、5〜20g/10分のMFRおよび905〜930kg/mの密度を持っている、請求項1〜5のいずれか1項に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項7】
当該ポリエチレンが、少なくとも30℃の温度範囲にわたって2N/25.4mm未満だけ変動するヒートシール力を持っている、請求項1〜6のいずれか1項に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項8】
当該コーティングがLDPEを含んでいる、請求項1〜7のいずれか1項に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項9】
LDPEがコーティングの15〜35重量%を形成している、請求項8に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項10】
複数のコーティング層を含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項11】
当該基体が紙、板紙、ポリエステルフィルム、セロファン、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムまたはアルミニウム箔である、請求項1〜10のいずれか1項に記載された押出コーティングされた基体。
【請求項12】
シングルサイト触媒によって触媒された重合によって製造され、かつエチレンへの共単量体として少なくとも2のC4〜12アルファ−オレフィンを含むポリエチレンを押出コーティングでまたはキャストフィルムの形成に使用する方法。
【請求項13】
シングルサイト触媒によって触媒された重合によって製造され、かつエチレンへの共単量体として少なくとも2のC4〜12アルファ−オレフィンを含むポリエチレンを押出して、重合体溶融物を形成し、そして基体を当該溶融物でコーティングすることを含む、基体を押出コーティングする方法。
【請求項14】
当該ポリエチレンが、ループ反応器とそれに続く気相反応器とを含む2段プロセスで製造される、請求項13に記載された方法。
【請求項15】
当該ポリエチレンが、押出前にLDPEとブレンドされる、請求項13〜14のいずれか1項に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513377(P2009−513377A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518053(P2006−518053)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007033
【国際公開番号】WO2005/002744
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】