説明

押出プレスのディスカード切断装置

【課題】構造を簡略化して保全及び製造に係るコストを低減するとともに、シャー刃とダイス端面との隙間を調整してシャー精度を向上させ良好な切断面を得る、ビレットの押出残部であるディスカードと押出製品部とを切り離す押出プレスのディスカード切断装置を提供する。
【解決手段】ダイス12を保持しているエンドプラテン11のコンテナ側に設けた固定フレーム21に、シャーシリンダ22と前記ダイス方向及び反ダイス方向に回動自在なシャーガイド25を下方に向けて取り付け、上端中央部で前記シャーシリンダのピストンロッド23を軸支するとともに、下端部ダイス側にシャー刃29が取り付けられたシャースライド24を前記シャーガイド内で摺動自在に設け、ディスカード41を切断するときに、前記シャースライドの摺動が前記固定フレームの変形に拘束されることのない前記構成とした押出プレスのディスカード切断装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金等の金属押出用押出プレスにおいて、押出成形後にコンテナをダイスより離間させた後、ビレットの押出残部であるディスカードをダイスの端面で切断して押出製品部より切り離すディスカード切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の押出プレス装置のディスカード切断装置は、ダイスを保持しているエンドプラテンの上部のコンテナ側に設けたフレームに、ディスカード切断用のシャー装置が下方に向けて取り付けられていて、シャーシリンダのピストンロッド下端部にシャースライドを介してシャー刃が設けられた構成となっている。
【0003】
このように構成されたディスカード切断装置を備えた押出プレスにおいては、ダイスの温度の変化及びダイスアッセンブリとダイスライドの隙間等によりシャー刃の切断刃面がダイス端面と同一平面とはならず、ダイス端面の位置が0.5〜1mm程度の範囲で変動する。そして、ディスカードを切断するに際してシャー刃とダイス端面との隙間が広がるとディスカードの切断面が悪化する。
例えば、ダイスのコンテナ側にビレットの環状のポートホールがある場合は、ポートホール内のアルミニウム合金がシャーによる切断時に抉り取られる。そして、次の押出時に、その抉り取られた空間の空気が押出製品内に封じ込められ、押出製品に気泡即ちブリスタが発生する。また、切断の切り口面が一様ではなく、抉られることで凹凸面を有する。
【0004】
特許文献1には、ダイスを保持しているエンドプラテンのコンテナ側に設けたフレームに下方に向けて取り付けたディスカード切断用のシャーシリンダ装置を、押出方向及び反押出方向に回転自在に取り付け、前記フレームにシャー刃とダイス端面との隙間を調整可能とした傾転用シリンダを有する押圧装置と、ローラ装置とを設け、シャー刃とダイス端面との隙間を調整してシャー精度を向上させ、良好な切断面を得て前記従来の問題点を解決する技術が開示されている。
(特許文献1参照)
【0005】
ところで、前記従来型の押出プレスでは、ディスカードの切断開始前にダイス端面とシャー刃との隙間を確保し、又ディスカードを切断するときにはダイス端面にシャー刃を押し付けるようにシャーシリンダ装置全体を押圧装置により傾転させる。この構成により、シャーシリンダ装置の回転軸から離れて取り付けられたシャーシリンダは大きく揺動し、シリンダへの圧油は可撓性を有するフレキシブルホースにより供給される。そして、このフレキシブルホースは金属製の配管に対して寿命が短く、定期的な交換を要求される。
さらに、エンドプラテンに設けたフレームに支承されシャーシリンダ装置が傾転する構成であるため、支承部はディスカード切断時に全ての反力を受けることからこの装置は複雑であり、且つディスカード切断時の反力による変形を小さくするように剛構造で大型化され、製作のコストが高くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−178447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、構造を簡略化して保全及び製造に係るコストを低減するとともに、シャー刃とダイス端面との隙間を調整してシャー精度を向上させ良好な切断面を得る、ビレットの押出残部であるディスカードと押出製品部とを切り離す押出プレスのディスカード切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明の請求項1に記載の押出プレスのディスカード切断装置は、押出成形後にダイスからコンテナを離間させ、ビレットの押出残部であるディスカードを前記ダイスの端面で切断して押出製品部より切り離す押出プレスのディスカード切断装置において、前記ダイスを保持しているエンドプラテンのコンテナ側に設けた固定フレームに、シャーシリンダと前記ダイス方向及び反ダイス方向に回動自在なシャーガイドを下方に向けて取り付け、上端中央部で前記シャーシリンダのピストンロッドを軸支するとともに、下端部ダイス側にシャー刃が取り付けられたシャースライドを前記シャーガイド内で摺動自在に設け、ディスカードを切断するときに、前記シャースライドの摺動が前記固定フレームの変形に拘束されることのない前記構成としたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の押出プレスのディスカード切断装置は請求項1に記載の発明において、前記固定フレームのダイス側には、ディスカードを切断するときに前記シャー刃をダイスの端面に沿って押圧可能な前記シャーガイドの押圧装置を、反ダイス側には、ディスカードの切断を開始するときに前記シャー刃とダイスの端面との隙間を確保可能な前記押圧装置に対向して当接面を球面状とした前記シャーガイドのストッパを、それぞれ設けたことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の押出プレスのディスカード切断装置は請求項2に記載の発明において、前記シャーガイドの押圧装置は、弾性体及び駆動シリンダを用いて出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
ディスカードを切断するときに、シャー刃を取り付けたシャースライドにはシャーシリンダの作用とディスカード切断の反力を受けてダイス側へ変形する。そして、このシャースライドの変形に追従して変形、且つ傾動自在とするようにシャーガイドを設ける構成とした。
このように、シャースライドを変形させるとともに、シャーガイドをダイス側へ移動できるよう揺動自在としているため、シャー刃がダイス端面に押し付けられ、ディスカードの切断端面が薄く均一になり、次の押出に際して隙間が形成されてコンテナシール面よりビレットが噴出する花咲き現象を生じることがない。
また、切断面は抉れて凹凸面を形成することがなく平滑で、製品に空気を巻き込みブリスタを生じさせることがない。
【0011】
シャーガイドが下降し、ダイス前面にシャー刃の先端がディスカードに到達した際に、押圧手段により前記ダイス端面へシャー刃を押し付け初期のダイスの姿勢を正し、温度変化やダイスの複数構造などの影響を無くすことで、ダイスの切断端面を薄く均一とする効果をより有効とする。また、ダイスの形状やシャー刃の先端角度が異なっても高い精度の切断面を得る事が出来る。
そして、シャーガイドの位置を規制する当接面を球面状としたストッパをシャーガイドのコンテナ側に、シャーガイドをストッパに押圧する押圧装置をシャーガイドのダイス側に設けた。この構成によりダイス端面の押出製品部の断面積と形状やシャー刃の形状、先端角度が異なっていても、シャー刃とダイス端面との隙間を一定に確保することが出来る。
また、押圧装置の出力を弾性体及び駆動シリンダを用いて行なう構成としたので、装置の構造が簡略化され、装置の小型化とコストの低減が図れ、保全性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態を説明する押出プレスのディスカード切断装置の縦断面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2のA断面図である。
【図4】図2のB断面図である。
【図5】本発明のディスカード切断装置によるディスカード切断状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜図4は本発明の実施形態を示し、11はエンドプラテン、12はダイス、13はダイスライド、15はダイスライド13の紙面と直交する水平方向への移動をガイドするガイド部材、14はガイド部材15の支持部材、16はダイス12からの押圧力を受けるブロックである。エンドプラテン11とブロック16の中心部には、ダイス12から押出される製品42が通る穴が設けられている。41はビレットの押し残しであり製品42と切断分離されて回収されるディスカードである。
【0014】
ダイス12は図に示すように公知の複数個の部品で構成される。そして、ダイス12はダイスライド13に載置され、ステム方向への移動は馬蹄形に形成された金具17により規制される。符号17はコンテナライナ、コンテナ本体及びコンテナホルダ等で要部が構成されビレットを装填するコンテナである。
ダイス12を前面側に保持しているエンドプラテン11のコンテナ側上部には、ディスカード切断装置20が取り付けられている。
【0015】
ディスカード切断装置20において、21はエンドプラテン11のダイス12上面に取り付けられた固定フレーム、22はシャーシリンダ、23はピストンロッドである。ピストンロッド23の先端にはクレビス27及びクレビスピン28が取り付けられ、クレビス27及びクレビスピン28はシャースライド24の上端中央部に配した。
そして、シャースライド24の下端部ダイス側には、下方に向けてディスカード41と製品42とを切断して分離するシャー刃29が取り付けられている。
【0016】
図3に示すように、シャーシリンダ22の下方の固定フレーム21の中央部に、シャースライド24を挿通したシャーガイド25を、固定フレーム21に取り付けた軸26に支持されて傾動自在となるように設けた。シャーガイド25は図4に示すように、シャーガイド25の下方に設けた押圧装置30の弾性体31によりコンテナ17の方向に押動され、その動きはシャーガイド25と当接する面が球面状のストッパ32により規制される構成とした。この状態がダイス12へ向かって鉛直下降するシャー刃29の入り位置となる。
【0017】
また、押圧装置30には駆動シリンダ35が設けられ、シャーガイド25に螺設した接続軸37が球面継手38を介して駆動シリンダ35のピストンロッド36に連結され、シャーガイド25を押出プレスの軸線方向に移動自在としている。シャー刃29が下降してディスカード41に当接する前に駆動シリンダ35を作動させシャーガイド25とシャースライド24を傾動することで、シャー刃29によりダイス12をエンドプラテン11に設けたブロック16に押し当てる構成としている。
なお、図2に示す符号18は、図示しないメインシリンダとエンドプラテン11とを連結するタイバー、19はプリコンチューブである。
【0018】
次に、本発明のディスカード切断装置20の作用について説明する。
まず、ビレットの押出が終了した後、図1に示すように、コンテナ17と図示しないステムを後退させて、コンテナ17をダイス12より離間させる。ダイス12のコンテナ17側端面にはビレットの押出残部であるディスカード41が取り残される。この状態で、シャー刃29は上昇限位置にある。次に、シャーシリンダ22を駆動してシャー刃29がディスカード41の外径部に当たる手前の所定の位置まで下降させる。次いで、駆動シリンダ35をダイス12方向に移動してシャー刃29をダイス12の端面に押し当て、ダイス12をブロック16に押出方向に移動する。この操作によりダイス12の端面に沿ってシャー刃29が下降可能となる。引き続き、シャー刃29をダイス12の端面に沿わせたままでディスカード41の外径部に当たるまで下降させる。
【0019】
シャー刃29が下降してディスカード41を切断し始めると、駆動シリンダ35によるシャー刃29のダイス12端面への押し当てを停止させる。これは、シャー刃29によるディスカード41の切断が開始されると、シャースライド24にシャー刃29をダイス12端面へ押しつけようとする曲げモーメントが作用することによる。
切断の開始から切断が進んで切断の終端までダイス12端面とシャー刃29との間隔(デスカードの切り残しの厚み)は0〜0,2mmの一定した寸法が維持され、その切断面は平滑且つ一様で良好な状態となる。その結果、切断面の抉られによる凹凸面が生じることがない。
【0020】
図5に示すように、ダミーブロック41をシャー刃29で切断するときにシャー切断装置20はエンドプラテン11の方向に変形して撓む。本発明では、シャー刃29を先端に取り付けたシャースライド24の案内部であるシャーガイド25が固定フレーム21に軸支される構成とした。この構成によりシャーガイド25の軸26に作用する荷重は、シャースライド24動作時の摺動抵抗分が作用するに過ぎず、従来の構成に比して簡略な構造とすることが出来る。この柔構造の採用により、ディスカード41を切断するに際してシャー刃29をダイス12の端面に押し付ける構成であっても、装置の構造が簡略化され、装置の小型化とコストの低減が図れた。
なお、シャーシリンダ22のピストンロッド23とシャースライド24はクレビス27及びクレビスピン28を介して駆動する構成としたので、ディスカード41を切断するときに固定フレーム21やシャースライド24が変形しても、ピストンロッド23の変形を緩和することが出来る。
【0021】
ディスカード41の切断が完了しシャー刃29の先端への負荷が解放されることでシャー切断装置20は、図5に示す変形状態から図1に示す変形のない状態となる。ディスカード41を切断後、シャーシリンダ21のピストンロッド23を上昇方向に移動させ、上昇限位置で停止してシャー切断装置の工程は終了する。
本発明では、シャー刃29が下降する位置(刃の入り位置)をダイス12の端面と所定の隙間を設ける構成とした。その結果、ディスカード41切断後にシャー刃29を上昇さセル際に、シャー刃29がダイス端面に作用しダイス12が浮き上がることがない効果を有する。更に、切断されたディスカードがシャー刃の先端に付着した状態であっても、上昇するときにダイスの端面にディスカードをくっ付けることがない。
【0022】
以上説明したように、本発明の押出プレスのディスカード切断装置は、装置全体を傾動させることなくシャー刃をダイスの端面に押圧する手段を設ける構成としたので、ディスカードの切断面を切断するときに切断面が平滑であり、余分なディスカードの切り残が生じることがない。また、構造がシンプルで簡略化されているので、装置を小型化できコストを低減すること、また、保全性を向上することができ押出プレスの稼働率が向上、生産性の向上に寄与する。
そして、本発明ではポートホールダイス等のように切断面が大きなダイスや、先端角度の異なるシャー刃を用いる製品であっても、切断面に影響を及ぼすことがない。
【符号の説明】
【0023】
11 エンドプラテン
12 ダイス
13 ダイスライド
17 コンテナ
20 シャー切断装置
21 固定フレーム
22 シャーシリンダ
23 ピストンロッド
24 シャースライド
25 シャーガイド
26 軸
29 シャー刃
30 押圧装置
31 弾性体
32 ストッパ
35 押圧シリンダ
41 ディスカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形後にダイスからコンテナを離間させ、ビレットの押出残部であるディスカードを前記ダイスの端面で切断して押出製品部より切り離す押出プレスのディスカード切断装置において、
ダイスを保持しているエンドプラテンのコンテナ側に設けた固定フレームに、シャーシリンダと前記ダイス方向及び反ダイス方向に回動自在なシャーガイドを下方に向けて取り付け、
上端中央部で前記シャーシリンダのピストンロッドを軸支するとともに、下端部ダイス側にシャー刃が取り付けられたシャースライドを前記シャーガイド内で摺動自在に設け、
ディスカードを切断するときに、前記シャースライドの摺動が前記固定フレームの変形に拘束されることのない前記構成としたことを特徴とする押出プレスのディスカード切断装置。
【請求項2】
前記固定フレームのダイス側には、ディスカードを切断するときに前記シャー刃をダイスの端面に沿って押圧可能な前記シャーガイドの押圧装置を、
反ダイス側には、ディスカードの切断を開始するときに前記シャー刃とダイスの端面との隙間を確保可能な前記押圧装置に対向して当接面を球面状とした前記シャーガイドのストッパを、それぞれ設けたことを特徴とする請求項1に記載の押出プレスのディスカード切断装置。
【請求項3】
前記シャーガイドの押圧装置は、弾性体及び駆動シリンダを用いて出力することを特徴とする請求項2に記載の押出プレスのディスカード切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−279964(P2010−279964A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133990(P2009−133990)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】