説明

押出ラミネーション用フィルム積層体およびその製造方法

【課題】二軸延伸フィルム上にヒートシール樹脂を押出ラミネーションによって積層しても良好な接着力を得ることができ、またインライン法によっても製造することができ、さらに環境適合性においても優れるフィルム積層体を提供する。
【解決手段】二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびアセチレングリコール系界面活性剤(C)を含有する樹脂層が形成され、(A)と(B)の質量比率(A)/(B)が、60/40〜97/3であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)が1〜30質量部であることを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸変性ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂およびアセチレングリコール系界面活性剤を含有する樹脂層が、二軸延伸フィルムの少なくとも片面に形成された、押出ラミネーション用フィルム積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカプロンアミド(ナイロン6、N6)フィルムに代表されるポリアミド二軸延伸フィルムや、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル二軸延伸フィルムは、その優れた力学特性、耐熱性、耐ピンホール性、耐薬品性のために、広範な用途に使用されている。これらの二軸延伸フィルムを包装用途として使用する場合には、多くの場合、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのヒートシール性を有する樹脂を、二軸延伸フィルムの片面もしくは両面に積層し、これにヒートシールを施すことによって種々の包装形態としている。
【0003】
このようなヒートシール性樹脂を二軸延伸フィルムに積層する場合、(1)ヒートシール性樹脂フィルムを、接着剤を用いて二軸延伸フィルムにラミネートする方法(ドライラミネート法)、(2)溶融したヒートシール性樹脂を二軸延伸フィルム上に押出し後、冷却固化して積層する方法(押出ラミネート法)が一般的に用いられる。後者の場合、さらに二軸延伸フィルムとヒートシール性樹脂フィルムの中間に、同種あるいは別種のヒートシール性樹脂を押出して貼り合わせつつ積層する方法や、二軸延伸フィルムに2段階でヒートシール性樹脂を押出し積層する方法などがある。
上記(2)の押出ラミネート法は、ヒートシール性樹脂フィルムを使用せず、原料樹脂を直接二軸延伸フィルムに押出すことによって、二軸延伸フィルム上にヒートシール性樹脂をフィルム状に積層することができるため、(1)のドライラミネート法に比べて低コストであり、採用されるケースが増えている。
【0004】
しかしながら、この押出ラミネート法においては、ポリアミドやポリエステルからなる二軸延伸フィルムとヒートシール性樹脂とが、本質的に接着性に乏しいため、両層の中間に接着剤層を設けるのが一般的である。このとき、接着剤としては、有機チタネート系、有機イソシアネート系、ポリエチレンイミン系などの接着性化合物を、一般には有機溶剤に溶かしたものが使用されるが、有機溶剤の使用は作業環境の悪化や火災の危険性があり、また、近年の環境問題への関心の高まりから、できるだけ使用を避ける方法が求められている。
【0005】
有機溶剤を使用しない接着剤(ノンソルベント接着剤)が使用される場合もあるが、溶剤型に比べて接着力が一般に劣っており、またフィルムに塗工する場合の濡れ性にも問題があり、限定された用途にのみ使用されている。
【0006】
このような観点から、二軸延伸フィルムに対して接着剤を使用せずに押出ラミネーションを行う技術が望まれている。
【0007】
特許文献1では、ヒートシール性樹脂層との易接着性能を付与するために、二軸延伸フィルム上に、メラミン系架橋剤を含有する樹脂層が積層されているが、近年、環境問題への関心が高まり、この架橋剤は法規制によっても使用が制限されている物質のひとつである。
【0008】
特許文献2には、ヒートシール性樹脂をフィルム状に押出し、次いでその表面にオゾン処理を施し、これを活性化処理した熱可塑性樹脂フィルムの表面に圧着することで、熱可塑性樹脂フィルムへの接着性を発現させる方法が提案されている。しかしながら、この方法は、実施のためには特別な装置を導入しなければならないものであった。
【0009】
特許文献3、4には、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリウレタン樹脂とを含有する接着剤が記載され、そして、これらの接着剤を介して、シーラント樹脂を押出しラミネートしたり、各種基材フィルムを貼り合わせることが記載されている。これらの文献に記載された接着剤は、基材フィルムに塗布後、すぐに相手材を積層するためのものであるので、接着剤を塗布した基材フィルム2枚を、塗布面と非塗布面が接触するように重ねるとブロッキングしやすいものであった。したがって、押出ラミネーション用のフィルムとして、この接着剤を塗布したフィルムを、インラインで製造することは不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−148729号公報
【特許文献2】特開2001−246660号公報
【特許文献3】特開2008−229971号公報
【特許文献4】特開2009−286920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題に対して、二軸延伸フィルム上にヒートシール樹脂を押出ラミネーションによって積層しても良好な接着力を得ることができ、またインライン法によっても製造することができ、さらに環境適合性においても優れるフィルム積層体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂および特定の界面活性剤を含有する樹脂層を二軸延伸フィルムに積層することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびアセチレングリコール系界面活性剤(C)を含有する樹脂層が形成され、(A)と(B)の質量比率(A)/(B)が、60/40〜97/3であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)が1〜30質量部であることを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分であることを特徴とする(1)記載の押出ラミネーション用フィルム積層体。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)、アセチレングリコール系界面活性剤(C)および水性媒体を含有し、(A)と(B)の質量比率(A)/(B)が、60/40〜97/3であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)が1〜30質量部であることを特徴とする水性分散体。
(4)上記(1)または(2)記載の押出ラミネーション用フィルム積層体の製造方法であって、二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、(3)記載の水性分散体を塗布することを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体の製造方法。
(5)上記(1)または(2)記載の押出ラミネーション用フィルム積層体の製造方法であって、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの少なくとも片面に、(3)記載の水性分散体を塗布したのち、延伸することを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィルム積層体は、ポリエチレン等のヒートシール性樹脂に対する接着性に優れるので、押出ラミネーション時に接着剤を用いることなく、実用上、十分なラミネート強力を有するヒートシール層を形成することが出来る。また、本発明のフィルム積層体は、耐ブロッキング性に優れるので、インライン法によって製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルム積層体は、二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびアセチレングリコール系界面活性剤(C)を含有する樹脂層が形成されているフィルム積層体である。
以下、二軸延伸フィルムを「基材フィルム」と呼び、該二軸延伸フィルム上に形成した酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)とアセチレングリコール系界面活性剤(C)とを含有する層を、単に「樹脂層」と呼ぶことがある。
【0015】
(二軸延伸フィルム)
本発明において、二軸延伸フィルムを構成する樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂が使用できるが、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、およびこれらの混合物などのポリエステル系樹脂、あるいはポリカプロンアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)、およびこれらの混合物などのポリアミド系樹脂が挙げられる。これらのポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムは、成形性、加工性、力学特性、ガスバリア性などに優れ、包装材料として優れた性能を有している。また、基材フィルムとしては上記のポリエステルやポリアミドを含む積層体、あるいは他の熱可塑性樹脂からなるフィルムの積層体を用いてもよい。フィルムの厚みは特に限定されないが、5〜500μmの範囲が好ましい。
【0016】
二軸延伸フィルムは、熱可塑性樹脂を原料として通常公知の方法で製造することができる。例えば、上述のポリアミド樹脂やポリエステル樹脂を押出機で加熱、溶融してTダイより押出し、冷却ロールなどにより冷却固化させて未延伸フィルムを得るか、もしくは円形ダイより押出して水冷あるいは空冷により固化させて未延伸フィルムを得る。延伸フィルムを製造するには、未延伸フィルムを一旦巻き取った後、または連続して同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法により延伸する方法が好ましい。フィルムの機械的特性や厚み均一性などの性能面からはTダイによるフラット式製膜法とテンター延伸法を組み合わせる方法が好ましい。
【0017】
(酸変性ポリオレフィン樹脂)
本発明で用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸成分により酸変性してなるものである。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、オレフィン化合物(A2)、アクリル酸またはメタクリル酸(A3)の3成分からなる樹脂が最も好ましい。
【0018】
(A1)成分としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸は、塩、酸無水物、ハーフエステル、ハーフアミドなどの誘導体になっていてもよい。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。なお、無水マレイン酸単位を含有するポリオレフィン樹脂中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造を取りやすく、一方、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部、または全部が開環してマレイン酸、あるいはその塩の構造を取りやすくなる。
【0019】
(A2)成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン類が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のオレフィンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0020】
(A3)成分の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0021】
上記のような(A1)〜(A3)の成分を有する酸変性ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、アクリル酸メチルあるいはアクリル酸エチル、無水マレイン酸からなる三元共重合体が最も好ましい。ここで、アクリル酸エステル単位は、後述する樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、その様な場合には、それらの変化を加味した各構成成分の比率が規定の範囲にあればよい。
【0022】
(A1)〜(A3)から構成されるポリオレフィン樹脂を用いる場合には、(A1)成分をこの樹脂全体の0.01質量%以上、5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上、5質量%未満含有していることが好ましく、1〜4質量%が最も好ましい。(A1)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、前述のように樹脂を水性化することが困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しく、耐アルカリ性やポリエステル系フィルムとの接着性の点から(A1)成分の含有量を5質量%未満とすることが好ましい。
【0023】
また、ポリオレフィン樹脂の水性化が容易で、また耐水性等の性能が向上するという点から、(A2)と(A3)の質量比率(A2)/(A3)は55/45〜99/1とすることが好ましく、さらに、良好な接着性を持たせるために60/40〜98/2であることが好ましく、75/25〜95/5であることが特に好ましい。
【0024】
本発明に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂(A)には、その他のモノマーが、この樹脂全体の20質量%以下で共重合されていてもよい。例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3〜30のアルキルビニルエーテル類、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄等が挙げられる。
【0025】
本発明に用いる酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるMFRが、0.01〜100g/10分が好ましい。さらに好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは2〜30g/10分のものを用いることができる。メルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化が困難となり、一方、100g/10分を超えると、樹脂層が、硬くてもろくなり、機械的物性や加工性が低下する傾向にある。
【0026】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の合成法は特に限定されないが、一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、不飽和カルボン酸、あるいはその無水物はグラフト共重合(グラフト変性)されていてもよい。
【0027】
(ポリウレタン樹脂)
本発明で用いるポリウレタン樹脂(B)とは、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。本発明においては、ポリウレタン樹脂の構造は特に限定されないが、耐ボイル性の点から、ガラス転移温度が0℃以上であることが好ましく、さらに耐ブロッキング性の点から、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が特に好ましい。
【0028】
ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類などの高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられる。
【0029】
また、ポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族および脂環族の公知ジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。また、ジイソシアネート類にはトリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
【0030】
本発明におけるポリウレタン樹脂(B)は、水性媒体への分散性の点から陰イオン性基を有していることが好ましい。陰イオン性基とは水性媒体中で陰イオンとなる官能基のことであり、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基などである。この中でもカルボキシル基を有していることが好ましい。
【0031】
ポリウレタン樹脂に陰イオン性基を導入するには、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基などを有するポリオール成分を用いればよく、カルボキシル基を有するポリオール化合物としては、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシル−プロピオンアミド等が挙げられる。
【0032】
また、鎖長延長剤を用いて適宜ポリウレタン樹脂の分子量を調整することもできる。こうした化合物としては、イソシアネート基と反応することができるアミノ基や水酸基などの活性水素を2個以上有する化合物が挙げられ、例えば、ジアミン化合物、ジヒドラジド化合物、グリコール類を用いることができる。ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミンなどが挙げられる。その他、N−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−3−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類およびダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等も挙げられる。更に、グルタミン酸、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸類も挙げられる。ジヒドラジド化合物としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシンジヒドラジドなどの2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどの不飽和ジヒドラジド、炭酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、チオカルボジヒドラジドなどが挙げられる。グリコール類としては、前述のポリオール類から適宜選択して用いることができる。
【0033】
本発明で用いられるポリウレタン樹脂(B)としては、アイオノマー型自己乳化型ポリウレタン樹脂、アイオノマー型自己乳化型ポリウレタン−ポリ尿素樹脂などが挙げられる。耐溶剤性を高めるためには、少なくとも両成分のどちらか一方に芳香族系の成分を用いることが好ましい。また、接着性を高めるためには、ポリマー主鎖あるいは末端に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基を導入したものを用いることが好ましい。
【0034】
(アセチレングリコール系界面活性剤)
本発明で用いるアセチレングリコール系界面活性剤(C)とは、アセチレン基を中央に持ち、左右対称な構造を有するアセチレングリコールの非イオン性界面活性剤であり、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加したものを例示することができる。エチレンオキサイドの付加数は、アセチレングリコール1モルに対して、6〜16モルであることが好ましい。この界面活性剤(C)は特に消泡性に優れるぬれ剤として、水系材料への応用に適したものである。ポリエステルやポリアミド二軸延伸フィルム上に塗布する場合には、実際に塗布する水溶液中に、アセチレングリコール系界面活性剤(C)を0.3質量%以上添加することが好ましい。
【0035】
(樹脂層)
二軸延伸フィルムに積層される樹脂層の組成は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の質量比率(A)/(B)については、60/40〜97/3であることが必要であり、70/30〜85/15であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の量が60質量%よりも少ない場合は、目的とするポリオレフィン系のヒートシール性樹脂に対する接着性が十分得られず、また、97質量%より多い場合は二軸延伸フィルムとの密着性が不十分であり、望ましいラミネート強力が得られない。
【0036】
また、アセチレングリコール系界面活性剤(C)については、(A)と(B)の合計100質量部に対して、1〜30質量部であることが必要であり、3〜10質量部であることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤(C)の量が1質量部未満では、後述する耐ブロッキング性に優れる、厚みが薄い樹脂層の塗布が困難になる。一方、30質量部より多い場合はアセチレングリコール系界面活性剤(C)が可塑化作用し、樹脂層が脆くなり、ラミネート強力が低下してしまう。
【0037】
樹脂層には、必要に応じて接着性や膜の性能に影響を与えない範囲で、帯電防止剤やスリップ剤など公知の各種添加剤を加えることができる。
【0038】
二軸延伸フィルム上に形成される樹脂層の厚みは0.03〜10μmが好ましく、0.05〜0.2μmがさらに好ましい。樹脂層の厚みが0.03μmより薄い場合には十分な接着性が得られず、10μmより厚くしても性能が飽和するため、それ以上の厚みを形成することは経済的ではない。また、樹脂層の厚みが0.2μmより薄い場合には、フィルム積層体は、耐ブロッキング性が有利となる。
【0039】
(水性分散体)
本発明において、二軸延伸フィルム上に樹脂層を形成する方法として、酸変性オレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)、アセチレングリコール系界面活性剤(C)、水性媒体を含有する水性分散体(以下、「樹脂層形成用水性分散体」と呼ぶことがある。)をフィルムに塗布後乾燥する方法が挙げられる。本発明で用いる樹脂層形成用水性分散体は、各成分が混合された塗布液の形態で、実用上十分な安定性を有していることが好ましい。実用上十分な安定性とは、塗布液を室温または所定の温度で貯蔵したとき6時間以上、好ましくは24時間以上、より好ましくは数日以上にわたって、均一性や、粘度、性能などが変化しないことを言う。なお、本発明でいう水性分散体は、樹脂が水性媒体に分散もしくは溶解されているものであり、水性媒体とは、水を主成分とし、必要により後述する水溶性の有機溶剤や塩基性化合物を含有する液体を指す。
【0040】
水性分散体における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)、アセチレングリコール系界面活性剤(C)の組成は、上記樹脂層を形成できる組成であればよく、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の質量比率(A)/(B)については、60/40〜97/3であることが必要であり、70/30〜85/15であることが好ましい。また、アセチレングリコール系界面活性剤(C)については、(A)と(B)の合計100質量部に対して、1〜30質量部であることが必要であり、3〜10質量部であることが好ましい。
【0041】
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を得るためには、たとえば、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と水とを、必要に応じて塩基性化合物や有機溶剤と共に、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を用いることができる。
【0042】
この際、塩基性化合物の添加は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基を中和して、生成したアニオン間の静電気的反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与されるため、好ましい。塩基性化合物の添加量は酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.0〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると樹脂層形成時の乾燥時間が長くなったり、水分散液が着色する場合がある。
【0043】
塩基性化合物の具体例としては、LiOH、KOH、NaOH等の金属水酸化物やアンモニア又は有機アミン化合物が挙げられる。中でも、樹脂層形成時に揮発する化合物を用いることがフィルム積層体の製造工程上好ましく、アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物が好ましい。このような有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
【0044】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体の製造において、樹脂の分子量がある程度大きい場合には、有機溶剤を添加することが好ましい。このとき用いる有機溶剤の添加量は水性分散体100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましく、2〜30質量部がより好ましく、3〜20質量部が特に好ましい。有機溶剤の添加量が20質量部を超える場合には、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱することにより(ストリッピング)、有機溶剤の含有量を低減させ、0.01質量%程度にすることができる。
【0045】
有機溶剤としては、20℃における水に対する溶解性が5g/L以上のものが好ましく用いられ、10g/L以上のものがさらに好ましく用いられる。そのような有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられ、中でも、樹脂の水性化がし易く、しかも水性媒体中から有機溶剤を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からイソプロパノールが特に好ましい。
【0046】
なお、既述のような製造方法によれば、一般に水性分散体の製造において用いられる乳化剤成分や保護コロイド作用を有する化合物を添加しなくても水性分散体を得ることができるが、樹脂の水系媒体への分散をさらに容易にするために、乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物を反応系内に加えることもできる。しかしながら、こうした化合物は一般的に不揮発性であるので、フィルム積層体の樹脂層中にも残存し、これを可塑化する作用を有するため、耐水性や耐薬品性を悪化させる。耐水性が悪化した場合、フィルム積層体を用いて水分を含む内容物を包装したときなどに、袋の破裂の原因となる恐れがある。また、耐薬品性が悪化した場合は、フィルムの表面に印刷を施す場合にインキの溶剤に表面が侵され、性能低下や印刷品位の悪化が生じやすい。そのため、乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物の使用はできるだけ少量にとどめるほうがよい。
【0047】
本発明で言う乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0048】
保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン− プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0049】
水性分散体を製造するための装置としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体と樹脂粉末ないしは粒状物との混合物を適度に撹拌できるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。なお、水性化速度を速めるという点から、原料樹脂の粒子径は1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状のものを用いることが好ましい。
【0050】
この装置の槽内に既述の各原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を50〜200℃、好ましくは60〜200℃に保ちつつ、好ましくは5〜120分間攪拌を続けることにより樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。槽内の温度が50℃未満の場合は、樹脂の水性化が困難になる。槽内の温度が200℃を超える場合は、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下する恐れがある。
【0051】
槽内の加熱方法としては槽外部からの加熱が好ましく、例えば、オイルや水を用いて槽を加熱する、あるいはヒーターを槽に取り付けて加熱を行うことができる。槽内の冷却方法としては、例えば、室温で自然放冷する方法や0〜40℃のオイルまたは水を使用して冷却する方法を挙げることができる。
【0052】
なお、この後、必要に応じてさらにジェット粉砕処理を行ってもよい。ここでいうジェット粉砕処理とは、水性分散体を高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士や樹脂粒子と衝突板等とを衝突させて、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化することであり、そのための装置の具体例としては、A.P.V.A.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM−110E/H等が挙げられる。
【0053】
(混合方法)
上述のように、本発明のフィルム積層体を製造する方法としては、酸変性オレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)、アセチレングリコール系界面活性剤(C)を含有する樹脂層形成用水性分散体を二軸延伸フィルム上に塗布する方法が例示される。この水性分散体は、前述の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体と、他の成分とを、適当な容器中、所定量混合して調製することができる。容器に仕込む順番はいずれが先でもよくまた同時に仕込んでもよい。
【0054】
(樹脂層形成法)
基材フィルムに樹脂層形成用水性分散体を塗布する場合、二軸延伸されたフィルムに塗布後乾燥、熱処理してもよく、また、配向が完了する以前の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸の終了したフィルムに該水性分散体を塗布し、乾燥後あるいは乾燥と同時に延伸し配向を完了させてもよい。本発明のフィルム積層体は耐ブロッキング性に優れるので、未延伸フィルムや一軸延伸フィルム上に水性分散体を塗布して樹脂層を形成し、次いでフィルムを延伸するインライン法を適用して製造することができる。
【0055】
樹脂層形成用水性分散体の塗布方法は特に限定されるものではなく、通常公知の方法から選定される。例えばグラビアロール法、リバースロール法、エアーナイフ法、リバースグラビア法、メイヤーバー法、インバースロール法、又はこれらの組み合わせによる各種コーティング方式や、各種噴霧方式などを採用することができる。また、コーターの前にコロナ処理装置などを設置し、基材フィルムの濡れ張力を調整することができる。
【実施例】
【0056】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。使用した原料や酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の作製方法は次の通りである。
【0057】
(A)酸変性ポリオレフィン樹脂:
(A−1)アルケマ社製 ボンダインHX−8290(MFR:65g/10分、融点81℃)
(A−2)アルケマ社製 ボンダインTX−8030(MFR:3g/10分、融点95℃)
(A−3)アルケマ社製 ボンダインHX−8140(MFR:20g/10分、融点80℃)
【0058】
(B)ポリウレタン樹脂:
(B−1)大日本インキ化学工業社製 ハイドラン
【0059】
(C)アセチレングリコール系界面活性剤:
(C−1)日信化学工業社製 オルフィンE1004
【0060】
参考例1
(酸変性ポリオレフィン水性分散体E−1の作製)
ヒーター付の密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた攪拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂(アルケマ社製 ボンダインHX−8290)、90.0gのイソプロピルアルコール(和光純薬社製 以下、IPAと略称する場合がある)、3.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製 以下、DMEAと略称する場合がある)および147.0gの蒸留水をガラス容器に仕込んだ。そして、そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を140〜145℃に保って、30分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却し、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体とした。さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体と180gの蒸留水を二口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置した上で、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約180gの、水とIPAを留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)することで、乳白色の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
【0061】
参考例2
(酸変性ポリオレフィン水性分散体E−2の作製)
酸変性ポリオレフィン樹脂として、「アルケマ社製 ボンダインTX−8030」を用いた以外は、参考例1と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン水性分散体E−2を得た。
【0062】
参考例3
酸変性ポリオレフィン樹脂として、「アルケマ社製 ボンダインHX−8140」を用いた以外は、参考例1と同様の操作を行って、酸変性ポリオレフィン水性分散体E−3を得た。
【0063】
本発明における評価方法は次の通りである。
(1)塗工性
樹脂層形成用水性分散体をハンドコート法により塗布した。ハンドコート法は任意に調製した溶液をフィルム上にマイヤーバーを使用し、人力で塗工する方法である。塗工性について、次のように評価した。
○:塗工可能。
△:塗工可能であるが、コート層端部の薄い部分ではじき。
×:フィルムが液をはじき、塗工不可。
【0064】
(2)ブロッキングテスト
50mm×50mmに切り出したフィルム積層体2枚を、樹脂層面と非樹脂層面とが接触するように重ね、ステンレス平板に挟んで平らな面に置き、10kgのおもりをのせて60℃で24時間以上静置した後、おもりとステンレス平板を取り除き、フィルム面の密着状態を調べることでブロッキング性の評価とした。フィルム間に全く密着が見られないものを○、容易にはがせるものを△、密着が見られるものを×とした。
【0065】
(3)接着強度
押出機を備えたラミネート装置を用いて、フィルム積層体の樹脂層表面にLDPE(住友化学社製L211)を300℃で溶融押出して、18μmのLDPE層からなるヒートシール層が形成されたラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムから幅15mmの試験片を採取し、島津製作所社製引張試験機AG−IS型を用い、180°剥離法により試験片の端部からヒートシール層とフィルム積層体層の界面を剥離して接着強度を測定した。測定は23℃、50%RHの雰囲気中、引張速度300mm/分で行った。実用上、接着強度は400g/15mm以上が好ましい。
【0066】
実施例1
表1に示す配合比になるように、各成分を混合し、樹脂層形成用水性分散体を調製した。固形分濃度については11.7質量%になるように純水で調整した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本エステル社製、固有粘度0.6)をTダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押出し、表面温度25℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み120μmの未延伸フィルムとした。
続いて、90℃で縦方向に3.4倍延伸させた後、グラビアロール式コーターに導き、メイヤーバー法と組み合わせることにより、上記樹脂層形成用水性分散体を、乾燥後の樹脂層厚みが0.05μmになるように塗布し、次に、温度90℃で2秒間予熱した後、横方向に3.5倍の倍率で延伸した。なお、横方向弛緩率は2%であった。得られたフィルム積層体におけるポリエチレンテレフタレート層の厚みは12μmであった。
得られたフィルム積層体の評価結果を表1に示した。
【0067】
実施例2〜9、比較例1〜6
樹脂層形成用水性分散体における各成分の配合比や、樹脂層の厚みを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の評価結果を表1に示した。
【0068】
比較例7
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製エンブレット、厚み12μm)を使用し、ブロッキングテストを行った。また、このフィルムに樹脂層を形成せずに押出ラミネーションを施し、LDPE層からなるヒートシール層が形成されたラミネートフィルムを得て、このラミネートフィルムの接着強度を測定した。評価結果を表1に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例で得られたフィルム積層体は、耐ブロッキング性に優れ、またヒートシール性樹脂層との接着性に優れるものであった。また、樹脂層厚みが薄いほど耐ブロッキング性は向上する傾向にあった。
これに対して、比較例1〜3では、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の質量比率が、本発明で規定する範囲外であるため、接着強度に劣るものであった。また、比較例4、5では、アセチレングリコール系界面活性剤(C)を含有しないか、含有量が少ないため、フィルムが水性分散体をはじき、塗工不可となった。一方、比較例6では、アセチレングリコール系界面活性剤(C)の含有量が多いため、接着強度に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)およびアセチレングリコール系界面活性剤(C)を含有する樹脂層が形成され、(A)と(B)の質量比率(A)/(B)が、60/40〜97/3であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)が1〜30質量部であることを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体。
【請求項2】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分であることを特徴とする請求項1記載の押出ラミネーション用フィルム積層体。
【請求項3】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、ポリウレタン樹脂(B)、アセチレングリコール系界面活性剤(C)および水性媒体を含有し、(A)と(B)の質量比率(A)/(B)が、60/40〜97/3であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)が1〜30質量部であることを特徴とする水性分散体。
【請求項4】
請求項1または2記載の押出ラミネーション用フィルム積層体の製造方法であって、二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、請求項3記載の水性分散体を塗布することを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の押出ラミネーション用フィルム積層体の製造方法であって、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの少なくとも片面に、請求項3記載の水性分散体を塗布したのち、延伸することを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体の製造方法。



【公開番号】特開2012−91475(P2012−91475A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242880(P2010−242880)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】