説明

押出ラミネート用エチレン系重合体組成物および積層体

【課題】
耐熱性が良好でありながらラミネート成形品のカールが少なく、かつラミネート成形品の端部厚みが中央部よりも厚くなりにくい押出ラミネート用エチレン系重合体組成物を提供する。
【解決手段】
密度920〜955kg/m、MFR5g/10分以上10g/10分未満であるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)50〜80重量%と、密度955kg/mより大きく975kg/m以下、MFR5g/10分以上40g/10分未満の高密度ポリエチレン(B)10〜40重量%および密度915〜930kg/m、MFR1.25〜10g/10分の高圧法低密度ポリエチレン(C)10〜40重量%からなり、下記要件(a)〜(d)を満たす押出ラミネート用エチレン系重合体組成物。
(a)160℃で測定された溶融張力10〜100mN
(b)MFR4〜17g/10分
(c)MFR/MFRが0.25〜4.0
(d)MFR/MFRが0.25〜4.0

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性が良好でありながらラミネート成形品のカールが少なく、かつラミネート成形品の端部厚みが中央部よりも厚くなりにくい押出ラミネート用エチレン系重合体組成物およびこれよりなる層を少なくとも一層有する積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出ラミネート加工によって得られる積層体のうち、ポリエチレン系樹脂を少なくとも一層とする積層体は、クラフト包装、軟包装、印画紙支持体、テープ、各種容器など幅広い用途分野で用いられている。従来までこれらの積層体に用いられるポリエチレン系樹脂は、その優れた成形加工性からラジカル重合により合成される分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)が主であった。しかしながら、LDPEの密度は一般的に918〜925kg/mであり、密度と共に変化する物性、例えば、柔軟性、耐熱性、剛性、ガスバリア性などを変えることは困難であり、使用に際して制限を生じていた。一方、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)や直鎖状高密度ポリエチレン(HDPE)などの直鎖状ポリエチレンは、その短鎖分岐数に応じて密度を幅広く変化させることが可能であるが、成形加工性に劣るため押出ラミネート加工による積層体を得ることが困難であった。そこで、直鎖状ポリエチレンとLDPEの混合物を押出ラミネート加工し、積層体を得る方法がしばしば用いられている(例えば、特許文献1〜4参照)。耐熱性、剛性、ガスバリア性が求められる場合、直鎖状ポリエチレンとして密度の高いポリエチレンすなわちHDPEの使用が望まれるが(例えば、特許文献5〜6参照)、密度の高いポリエチレンを使用した場合積層体のカールの発生が問題となっていた。積層体のカールは樹脂が固化する際にその体積が収縮することにより基材との間にサイズ差が生じ、積層体が一方向に反り返る現象であり、積層体の反り返りにより製袋などの二次加工の際に積層体の端部が加工機へひっかかったり、ヒートシール部分がめくれ上がったりすることにより支障が生じる場合がある。
【0003】
カールの大きさは樹脂密度に比例して大きくなるため、カールを抑制するには樹脂密度を低下させることが必要となり、樹脂密度とともに向上する性能である耐熱性、剛性、ガスバリア性との両立は困難であった。
【0004】
また複数の樹脂を混合したエチレン系重合体組成物は、ラミネート成形した際にエチレン系重合体組成物層の端部が中央部よりも厚くなりやすいという問題があった。基材に対してエチレン系重合体組成物層の幅を狭くしてラミネートフィルムを成形する場合、エチレン系重合体組成物層の端部厚みが中央部よりも厚くなると、巻物にした場合に厚みの厚い部分が盛り上がり、ラミネートフィルムにしわが入って商品価値が大幅に低下するといった問題があった。そのため、端部の厚みが中央部と同じになるようなエチレン系重合体組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−65443号公報
【特許文献2】特開平6−322189号公報
【特許文献3】特開平7−92610号公報
【特許文献4】特開2000−73018号公報
【特許文献5】特開平6−49290号公報
【特許文献6】特開平10−36582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、耐熱性が良好でありながらラミネート成形品のカールが少なく、かつラミネート成形品の端部厚みが中央部よりも厚くなりにくい押出ラミネート用エチレン系重合体組成物およびこれよりなる層を少なくとも一層有する積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的に対して鋭意検討した結果見出されたものである。すなわち、本発明は、密度920kg/m以上955kg/m以下、メルトフローレート(以下MFRと記す)5g/10分以上10g/10分未満であるエチレンと炭素数3から6のα−オレフィンを共重合してなるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)50〜80重量%と、密度955kg/mより大きく975kg/m以下、MFR5g/10分以上40g/10分未満の高密度ポリエチレン(B)10〜40重量%および密度915kg/m以上930kg/m以下、MFR1.25g/10分以上10g/10分以下の高圧法低密度ポリエチレン(C)10〜40重量%からなり、下記要件(a)〜(d)を満たす押出ラミネート用エチレン系重合体組成物に関するものである。
(a)160℃で測定された溶融張力10〜100mN
(b)MFR4g/10分以上17g/10分以下
(c)エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のMFR(MFR)と高密度ポリエチレン(B)のMFR(MFR)の比MFR/MFRが0.25〜4.0
(d)エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のMFR(MFR)と高圧法低密度ポリエチレン(C)のMFR(MFR)の比MFR/MFRが0.25〜4.0
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、エチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3〜6のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体である。炭素数3〜6のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等が挙げられる。これら炭素数3〜6のα−オレフィンの少なくとも2種類を併用してもよい。
【0009】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、JIS K6760(1995)に記載された方法で測定した密度が920kg/m以上955kg/m以下、好ましくは920kg/m以上945kg/m以下、最も好ましくは920kg/m以上935kg/m以下のものである。ここで、密度が920kg/m未満の場合、エチレン系重合体組成物の耐熱性が劣るため好ましくない。一方、955kg/mを超える場合、該エチレン−α−オレフィン共重合体の融解温度は高く、エチレン系重合体組成物は耐熱性、剛性に優れるものとなる反面、同組成物を使用して製造した績層体のカールが大きくなり好ましくない。なお密度の測定は、JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定することができる。
【0010】
また、本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、JIS K6760(1995)に記載された方法で測定したMFRが、5g/10分以上10g/10分未満、好ましくは7g/10分以上10g/10分未満のものである。ここで、MFRが5g/10分未満である場合、エチレン系重合体組成物とする際の押出機の負荷が大きくなり、生産性が低下する好ましくない。一方、10g/10分以上の場合、溶融張力が小さなり、押出ラミネート成形品の端部厚みが中央部と比較して厚くなる可能性がある。なおMFRは、190℃、2.16kg荷重の条件でメルトインデクサーにより測定することができる。
【0011】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、構造中に長鎖分岐を有するものであることが好ましい。構造中に長鎖分岐を有することでエチレン−α−オレフィン共重合体(A)の溶融張力が高くなり、押出ラミネート用エチレン系重合体組成物のラミネート加工性が向上する。さらに、炭素数6以上の長鎖分岐を炭素数1000個あたり0.01〜0.2個有すると、ラミネート加工時のネックイン(溶融膜の幅落ち)とドローダウン(引取速度の上限)のバランスに最も優れるため好ましい。なお、長鎖分岐数とは、13C−NMR測定で検出されるヘキシル基以上(炭素数6以上)の分岐の数である。
【0012】
さらに本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、エチレンを重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン重合体またはエチレンと炭素数3〜6のオレフィンを共重合して得られ末端にビニル基を有するエチレン共重合体からなるマクロモノマーであって、数平均分子量(Mn)が2000以上であるマクロモノマーと、エチレン又はエチレンおよび炭素数3〜6のオレフィンを重合することにより得られるポリエチレン系重合体であることが望ましい。
【0013】
マクロモノマーとは、末端にビニル基を有するオレフィン重合体であり、好ましくはエチレンを重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン重合体、またはエチレンと炭素数3〜6のオレフィンを共重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン共重合体である。
【0014】
炭素数3〜6のオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンもしくはビニルシクロアルカン等のα−オレフィン、ブタジエンもしくは1,4−ヘキサジエン等のジエンを例示することができる。また、これらのオレフィンを2種類以上混合して用いることもできる。
【0015】
マクロモノマーの直鎖状ポリエチレン換算の数平均分子量(Mn)は、2,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上である。直鎖状ポリエチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、4,000以上であることが好ましく、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは15,000より大きい。マクロモノマーの分子量を大きくすることでエチレン−α−オレフィン共重合体(A)に導入される長鎖分岐の長さが長くなり、溶融張力が向上する。
【0016】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量の比Mw/Mnが2〜5の範囲にあることが望ましい。なお、Mw/Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリエチレン換算値である重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定することにより算出することが可能である。Mw/Mnがこの範囲にある場合、樹脂中の低分子量成分の含有比率が少ないため、低分子量成分の滲出に由来するラミネート成形時のロール汚染やラミネート成形品の表面のべたつきおよびヒートシール不良などの弊害が抑制され、同時に押出負荷が必要以上に高くなってラミネート加工時の押出量が制限されることもない。
【0017】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)を製造する方法に制限はなく、チーグラー触媒を用いる方法、フィリップス触媒を用いる方法、メタロセン触媒を用いる方法などで製造可能であるが、メタロセン触媒を用いる方法で製造することが好ましい。
【0018】
メタロセン触媒を用いて、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)を製造する場合、用いるメタロセン触媒は、メタロセン錯体、活性化助触媒、および必要に応じて有機アルミニウム化合物を構成成分として有し、特定のメタロセン触媒によりマクロモノマーを合成し、マクロモノマーの合成と同時に、特定のメタロセン触媒によりマクロモノマーとエチレンの共重合またはマクロモノマーとエチレンと炭素数3〜6のオレフィンの共重合とエチレンと炭素数3〜6のオレフィンの共重合を行うことが好ましい。
【0019】
マクロモノマーを合成する特定のメタロセン触媒は、メタロセン錯体に、非架橋型ビス(インデニル)ジルコニウム錯体、非架橋型ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体、架橋型ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体、もしくは架橋型(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(j)と記す。)を用いた触媒であることが好ましい。
【0020】
成分(j)の具体例として、例えばビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1,1−ジメチル−1−シラエタン−1,2−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、プロパン−1,3−ジイル−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができるが、これらに限定されるこのではない。
【0021】
また、マクロモノマーの合成と同時に、マクロモノマーの共重合を行う特定のメタロセン触媒は、メタロセン錯体に、架橋型(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体もしくは架橋型(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウム錯体(以下、成分(k)と記す。)を用いた触媒であることが好ましい。
【0022】
成分(k)の具体例として、例えばジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−トリメチルシリル−1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(2−フェニル−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロライドおよび上記遷移金属化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体を例示することができる。また上記遷移金属化合物のジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に置換した化合物も例示することもできるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
成分(j)に対する成分(k)の量は、特に制限はなく、0.0001〜100倍モルであることが好ましく、特に好ましくは0.001〜10倍モルである。
【0024】
メタロセン触媒の構成成分として用いる活性化助触媒は、メタロセン錯体、またはメタロセン錯体と有機アルミニウム化合物の反応物を、オレフィンの重合が可能な活性種に変換する役割を果たす化合物を示し、メタロセン錯体からカチオン性化合物を生成させる化合物であることが好ましく、生成したカチオン性化合物は、オレフィンを重合することが可能な重合活性種として作用する。活性化助触媒は、重合活性種を形成した後、生成したカチオン性化合物に対して弱く配位または相互作用するものの、該活性種と直接反応しない化合物を提供する化合物である。
【0025】
活性化助触媒の具体的な例として、メチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサン、シリカゲル担持アルキルアルミノキサン、トリス(ペンタフルオエオフェニル)ホウ素などのトリス(フッ素化アリール)ホウ素、N,N−ジメチルアンモニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などのテトラキス(フッ素化アリール)ホウ素塩などのホウ素化合物、これらのシリカゲル担持物、および粘土鉱物、有機化合物で処理した粘土鉱物などを挙げることができるが、これら活性化助触媒の中で有機化合物で処理した粘土鉱物を用いることが好ましい。
【0026】
活性化助触媒として、有機化合物で処理した粘土鉱物を用いる場合、用いる粘土鉱物は、スメクタイト群に属する粘土鉱物が好ましく、具体例としてモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトなどを挙げることができる。また、これら粘土鉱物を複数混合して用いることも可能である。
【0027】
なお、有機化合物処理とは、粘土鉱物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成することを示す。
【0028】
有機化合物処理で用いられる有機化合物としては、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−オクタデシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ビス(n−エイコシル)アミン塩酸塩、N−メチル−ジオレイルアミン塩酸塩、N−メチル−ジベヘニルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン塩酸塩などのアルキルアンモニウム塩を例示することができる。
【0029】
メタロセン触媒は、成分(j)と成分(k)の混合物を活性化助触媒と反応させる方法、成分(j)と活性化助触媒を反応させた後、成分(k)を反応させる方法、成分(j)と成分(k)を別々に反応させる方法などで調製されるが、メタロセン触媒の調製方法に特に制限はない。
【0030】
なお、メタロセン触媒は、触媒の調製時、メタロセン錯体の活性化や溶媒中の不純物の除去など、必要に応じてトリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムを用いてもよい。
【0031】
本発明押出ラミネート用ポリエチレン樹脂組成物の成分であるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)を製造する際には、重合温度−100〜120℃で行うことが好ましく、特に生産性を考慮すると20〜120℃が好ましく、さらには60〜120℃の範囲で行うことが好ましい。また、重合時間は10秒〜20時間の範囲が好ましく、重合圧力は常圧〜300MPaの範囲で行うことが好ましい。重合性単量体としては、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンであり、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンである場合、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンの供給割合として、エチレン/炭素数3〜6のα−オレフィン(モル比)が、1〜200、好ましくは3〜100、さらに好ましくは5〜50の供給割合を用いることができる。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段階以上に分けて行うことも可能である。また、エチレン系共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0032】
重合はスラリー状態、溶液状態または気相状態で実施することができ、特に、重合をスラリー状態で行う場合にはパウダー粒子形状の整ったエチレン系共重合体を効率よく、安定的に生産することができる。
【0033】
本発明の押出ラミネート用ポリエチレン樹脂組成物の成分であるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)の長鎖分岐数は、マクロモノマーの末端ビニル数を増加させることによって増加できる。マクロモノマーの末端ビニル数は、マクロモノマー合成用のメタロセン化合物の選択により制御することができる。例えば、非架橋型メタロセン化合物を架橋型メタロセン化合物に変更することによって増加させることができる。
【0034】
本発明の押出ラミネート用ポリエチレン樹脂組成物の成分であるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)のMw/Mnは、マクロモノマーのMnを減少させることによって増加できる。マクロモノマーのMnは、マクロモノマー合成用のメタロセン化合物の選択により制御することができる。例えば、非架橋型メタロセン化合物を架橋型メタロセン化合物に変更することによって減少させることができる。
【0035】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高密度ポリエチレン(B)は、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒などにより重合されたエチレン単独重合体および/またはエチレン−α−オレフィン共重合体である。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンもしくはビニルシクロアルカン等が例示される。
【0036】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高密度ポリエチレン(B)は、JIS K6760(1995)の方法で測定した密度が955kg/mより大きく975kg/m以下、好ましくは密度が955kg/mより大きく970kg/m以下のものである。密度が955kg/m以下の場合は、本発明のエチレン系重合体組成物の耐熱性が低下するため好ましくない。また密度が975kg/mより大きい場合は、本発明のエチレン系重合体組成物を成形してなる積層体のカールが非常に大きくなるため好ましくない。
【0037】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高密度ポリエチレン(B)は、JIS K6760(1995)の方法で測定したMFRが5g/10分以上40g/10分未満、好ましくは15g/10分以上40g/10分未満のものである。ここで、MFRが5g/10分未満である場合、エチレン系重合体組成物のラミネート加工時の押出負荷が大きくなり生産性が低下するため好ましくない。一方、40g/10分以上の場合、溶融張力が小さくなり、押出ラミネート成形品の端部厚みが中央部と比較して厚くなるる可能性がある。
【0038】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(C)は、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができ、本発明の範囲において適宜選択される。
【0039】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(C)は、JIS K6760(1995)の方法で測定した密度が915kg/m以上930kg/m以下、好ましくは915kg/m以上925kg/m以下のものである。密度が915kg/m未満の場合は、本発明のエチレン系重合体組成物の耐熱性が低下する恐れがある。また密度が930kg/mより大きい場合は、高圧法低密度ポリエチレンの融解温度は高く、エチレン系重合体組成物は耐熱性、剛性に優れるものとなる反面、ラミネート加工性が劣るものとなる。
【0040】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(C)は、JIS K6760(1995)の方法で測定したMFRが1.25g/10分以上10g/10分以下、好ましくは2.5g/10分以上5g/10分以下のものである。ここで、MFRが1.25g/10分未満である場合、エチレン系重合体組成物のラミネート加工時の押出負荷が大きくなり生産性が低下するため好ましくない。一方、10g/10分を超える場合、溶融張力が小さくなりラミネート加工時のネックインが大きくなるため好ましくない。
【0041】
上記要件を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体(A)、高密度ポリエチレン(B)および高圧法低密度ポリエチレン(C)を特定量ブレンドした押出ラミネート用エチレン系重合体組成物は、押出ラミネートにより積層体とした際の耐熱性とカールのバランスに優れたものである。本発明のエチレン系重合体組成物は、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)50〜80重量%、好ましくは50〜70重量%、高密度ポリエチレン(B)10〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、および高圧法低密度ポリエチレン(C)10〜40重量%、好ましくは20〜35重量%からなるものである。高密度ポリエチレン(B)の配合量が10重量%未満では、エチレン系重合体組成物の密度が低くなり耐熱性が低下するため好ましくなく、一方配合量が40重量%を超える場合はエチレン系重合体組成物の密度が高くなり耐熱性、剛性に優れるものとなる反面、積層体のカールが大きくなり好ましくない。また高圧法低密度ポリエチレン(C)の配合量が10重量%未満では、エチレン系重合体組成物の溶融張力が小さくなり、ラミネート加工時のネックインが大きくなるため好ましくなく、一方配合量が40重量%を超える場合はエチレン系重合体組成物の密度が低くなり、耐熱性に劣るものとなるため好ましくない。
【0042】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物は、160℃で測定された溶融張力が10〜100mNであり、好ましくは20〜100mNである。溶融張力が10mN未満の場合、ラミネート加工時のネックインが大きくなり好ましくない。一方溶融張力が100mNを超える場合はラミネート加工時の高速延展性が劣る場合があり好ましくない。
【0043】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物は、JIS6760(1995)の方法で測定したMFRが4g/10分以上17g/10分以下であり、好ましくは7g/10分以上17g/10分以下であり、さらに好ましくは10g/10分以上17g/10分以下である。MFRが4g/10分未満の場合、ラミネート加工時の高速延展性が劣る場合があり好ましくない。一方MFRが17g/10分を超える場合は、押出ラミネート成形品の端部厚みが中央部と比較して厚くなる場合があり好ましくない。
【0044】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物は、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のMFR(MFR)と高密度ポリエチレン(B)のMFR(MFR)の比MFR/MFRが0.25〜4.0であり、かつエチレン−α−オレフィン共重合体(A)のMFR(MFR)と高圧法低密度ポリエチレン(C)のMFR(MFR)の比MFR/MFRが0.25〜4.0である。エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、高密度ポリエチレン(B)、高圧法低密度ポリエチレン(C)の各々のMFRがこれらの関係を満たさない場合、各構成成分の溶融時の粘度差が大きくなり、均一な混合が困難になるため、ラミネート加工時にエチレン系重合体組成物の流動性にむらが生じ、押出ラミネート成形品の端部厚みが中央部と比較して厚くなる場合があり好ましくない。
【0045】
本発明のエチレン系重合体組成物には、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて、安定剤、滑剤、難燃剤、分散剤、充填剤、発泡剤、発泡核剤、架橋剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、着色剤などを含有させることができる。また、他の熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。
【0046】
本発明のエチレン系重合体組成物は、通常樹脂組成物とする際の方法を用いることができ、例えば溶融・混合方法として、単軸押出機やニ軸押出機を用いた押出混練、ロール混練など公知の方法を挙げることができ、該方法で溶融混練することにより得ることができる。
【0047】
本発明のエチレン系重合体組成物は、公知の押出ラミネート成形機により、Tダイより押出されたエチレン系重合体組成物からなる溶融フィルムを直接基材に貼り合せることにより積層体とすることができ、本発明のエチレン系重合体組成物よりなる層を少なくとも1層有する。
【0048】
本発明の積層体は、下記要件(g)を満たすことが好ましい。
(g)エチレン系重合体組成物よりなる層の厚みの最大値dと最小値dが式(1)の関係を満足する。
【0049】
(d−d)/d≦0.15 (1)
エチレン系重合体組成物よりなる層の厚みの最大値dと最小値dが式(1)の関係を満足すると、本発明の積層体を巻物にした場合に、厚みの厚い部分が盛り上がりラミネートフィルムにしわが入って商品価値が大幅に低下するといった問題がなく、好ましい。
【0050】
押出ラミネート成形法は、シングルラミネート、タンデムラミネート、共押出ラミネート、サンドイッチラミネートのいずれでもよく、特に制限を受けない。また、押出ラミネート加工を行う際、基材とエチレン系重合体組成物層との接着性が良好な積層体を得るため、250〜350℃の温度でダイより押出すことが好ましい。また、エチレン系重合体組成物の溶融フィルムが少なくとも基材と接する面は、空気もしくはオゾンガスにより酸化されていてもよい。空気による酸化反応を進行させる場合、270℃以上の温度でダイより押出すことが好ましく、また、オゾンガスによる酸化反応を進行させる場合は、250℃以上で押出すことが好ましい。なお、オゾンガスの処理量としては、ダイより押出されたフィルム1m当たり0.5mg以上であることが好ましい。また、基材との接着性を高めるため、基材の接着面に対してアンカーコート剤処理、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。
【0051】
基材としては、合成高分子重合体フィルムおよびシート、織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成高分子重合体からなるフィルムおよびシート等が挙げられる。さらに、これらの高分子重合体フィルムおよびシートは、さらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルムおよびシートは、さらにウレタン系インキ等を用いて印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、伸張紙、上質紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。
【0052】
本発明の積層体は、スナック菓子、インスタントラーメン等の乾燥食品、スープ、味噌、漬物、ソース、飲料等の水物飲食品包装、薬、輸液バッグ等の医薬品包装、シャンプー、化粧品、おむつのバックシートなどのトイレタリー用品、印画紙支持体、紙製容器および蓋、紙皿、離型紙および離型テープ、易解離性フィルム、紙製セミレトルトパックなど広範囲にわたりフィルム、容器、テープ、支持体として用いることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の押出ラミネート用エチレン系重合体組成物は、耐熱性が良好でありながらラミネート成形品のカールが少ないものであり、広範囲にわたりフィルム、容器、テープ、支持体として用いることができ、産業用資材としてきわめて有用である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
〜分子量および分子量分布の測定〜
マクロモノマーおよびエチレン−α−オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー(株)製 HLC−8121GPC/HTを用い、カラムとしては東ソー(株)製 TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正されている。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0056】
〜密度の測定〜
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)およびエチレン系重合体組成物の密度は、JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0057】
〜MFRの測定〜
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)およびエチレン系重合体組成物のMFRは、JIS K6760(1995)に準拠してメルトインデクサーで測定した。
【0058】
〜溶融張力の測定〜
エチレン系重合体組成物の溶融張力は、バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ)に、長さが8mm,直径が2.095mm、流入角が90°のダイスを装着し測定した。溶融張力は、温度を160℃に設定し、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を47に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)を測定した。最大延伸比が47未満の場合、破断しない最高の延伸比での引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力とした。
【0059】
〜長鎖分岐数の測定〜
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の長鎖分岐数は、Varian製 VNMRS−400型核磁気共鳴装置を用いて、13C−NMRによってヘキシル基以上の長鎖分岐の数を測定した。溶媒はテトラクロロエタン−d2である。主鎖メチレン炭素1,000個当たりの個数として、「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」第31巻、25号、8677〜8683ページ(1998年)に記載の下記式(4)から求めた。
【0060】
長鎖分岐数=IAα/(3×IAtot) (4)
[式中、IAαはヘキシル基以上の長鎖分岐のα−炭素ピーク(化学シフト:34.6ppm)の積分強度であり、IAtotは主鎖メチレン炭素のピーク(30.0ppm)の積分強度である。]
〜ネックイン〜
エチレン重合体組成物を90mmφのスクリューを有する押出ラミネーター(ムサシノキカイ(株)製)の押出機へ供給し、315℃の温度で開口幅600mmのTダイより押出し、基材の引取り速度を200m/分として、幅600mm、坪量50g/mのクラフト紙基材上に押出ラミネート用樹脂組成物が中央部の厚みが20μmの厚さになるよう押出ラミネートした際の、Tダイ開口幅とエチレン系重合体組成物のコート幅との差をネックインとし、その値を測定した。
【0061】
〜カール〜
〜ネックイン〜の測定において作製した積層体を、エチレン系重合体組成物層を上にして平坦な面に置き、これに10cm四方の正方形を描いた。その正方形の対角線に切り込みを入れ、気温23℃、相対湿度50%の条件で24時間放置後に、切り込み部分が平坦面より反り上がった高さを測定した。
【0062】
〜耐熱性(グロス変化)〜
〜ネックイン〜の測定において作製した積層体を、スモールオーブン(Werner Mathis社製)を用いて110〜135℃の温度(5℃間隔)で30秒間加熱し、加熱前後のエチレン系重合体組成物層側のグロスをグロスメーター(日本電色社製)で測定した。加熱前のグロス値に対し加熱後のグロス値が120%を越えた時の温度を耐熱温度とした。
【0063】
〜エチレン系重合体組成物層の厚み変化〜
〜ネックイン〜の測定において作製した積層体の厚みを、端部から50mmおきに計測し、最も厚い部分の厚みをd(mm)、最も薄い部分の厚みをd(mm)とした。
【0064】
合成例1
[変性ヘクトライトの調製]
水3リットルにエタノール3リットルと37%濃塩酸100ミリリットルを加えた後、得られた溶液にN−メチル−ジオレイルアミン585g(1.1mol)を添加し、60℃に加熱することによって、塩酸塩溶液を調製した。この溶液にヘクトライト1kgを加えた。この懸濁液を60℃で、3時間撹拌し、上澄液を除去した後、60℃の水50Lで洗浄した。その後、60℃、10−3torrで24時間乾燥し、ジェットミルで粉砕することによって、平均粒径5.2μmの変性ヘクトライトを得た。
[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]
前記変性ヘクトライト500gをヘキサン1.7リットルに懸濁させ、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド8.81g(20.0mmol)とトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2mol)の混合液を添加し、60℃で3時間攪拌した後、静置して上澄み液を除去、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.15M)を添加してマクロモノマー合成触媒(100g/L)とした。
【0065】
上記で調製したマクロモノマー合成触媒にジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドに対して5mol%のジフェニルメチレン(1−シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.58g(1.05mmol)を添加して室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.15M)を添加して最終的に100g/Lのポリエチレン系樹脂製造触媒を得た。
[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)の製造]
内容積540Lの重合器に、ヘキサンを145kg/時、エチレンを33.0kg/時、ブテン−1を5.3kg/時、水素を4NL/時およびポリマー生産量が30kg/時になるように上記[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]で調製したポリエチレン系樹脂製造触媒を連続的に供給し、全圧を3,000kPa、重合器内温を60℃に保ちながら連続的に重合反応を行った。重合器から連続的にスラリー抜き出し、未反応の水素、エチレン、ブテン−1を除去した後、分離、乾燥の工程を経てエチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)粉末を得た。これを200℃に設定した50mm径の単軸押出機を使用して溶融混練し、ペレタイズすることでエチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)ペレットを得た。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)ペレットの密度は921kg/m、MFRは9.0g/10分、長鎖分岐数は1000炭素原子当り0.13個、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは3.8であった。
【0066】
なお、この合成例では、下記参考例1に示すマクロモノマーの製造と同時に、エチレンおよび1−ブテンの重合が行われている。
【0067】
参考例1
[マクロモノマーの合成]
合成例1[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)の製造]において、ポリエチレン系樹脂製造触媒の代わりに合成例1[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]で調製したマクロモノマー合成触媒を用いたこと以外は、合成例1と同様に行い、マクロモノマーペレットを得た。得られたマクロモノマーペレットのMn=20,000であり、Mw/Mn=2.8であった。また、マクロモノマーペレットの末端構造を解析したところ、1,000炭素当りの末端ビニル数は0.05個であった。
【0068】
合成例2
[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−2)の製造]
合成例1[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)の製造]において、ブテン−1を5.3kg/時から5.0kg/時、水素供給量を4NL/時から2NL/時に変え、合成例1と同様に行い、エチレン−α−オレフィン共重合体(A−2)を得た。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(A−2)の密度は921kg/m、MFRは6.0g/10分、長鎖分岐数は1000炭素原子当り0.10個、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは4.2であった。
【0069】
参考例2
[マクロモノマーの合成]
合成例2[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−2)の製造]において、ポリエチレン系樹脂製造触媒の代わりに合成例1[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]で調製したマクロモノマー合成触媒を用いたこと以外は、合成例2と同様に行い、マクロモノマーペレットを得た。得られたマクロモノマーペレットのMn=21,000であり、Mw/Mn=2.7であった。また、マクロモノマーペレットの末端構造を解析したところ、1,000炭素当りの末端ビニル数は0.05個であった。
【0070】
合成例3
[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−3)の製造]
合成例1[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)の製造]において、ブテン−1を5.3kg/時から0.5kg/時、重合温度を60℃から85℃に変え、触媒を合成例3[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]で調製したポリエチレン系樹脂製造触媒に変更したこと以外は、合成例1と同様に行い、エチレン−α−オレフィン共重合体(A−3)を得た。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(A−4)の密度は954kg/m、MFRは9.0g/10分、長鎖分岐数は1000炭素原子当り0.03個、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは2.3であった。
【0071】
参考例3
[マクロモノマーの合成]
合成例3[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−3)の製造]において、ポリエチレン系樹脂製造触媒の代わりに合成例3[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]で調製したマクロモノマー合成触媒を用いたこと以外は、合成例3と同様に行い、マクロモノマーペレットを得た。得られたマクロモノマーペレットのMn=17,000であり、Mw/Mn=2.3であった。また、マクロモノマーペレットの末端構造を解析したところ、1,000炭素当りの末端ビニル数は0.02個であった。
【0072】
合成例4
[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−4)の製造]
合成例1[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)の製造]において、水素供給量を4NL/時から5NL/時に変え、合成例1と同様に行い、エチレン−α−オレフィン共重合体(A−4)を得た。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(A−4)の密度は920kg/m、MFRは12.7g/10分、長鎖分岐数は1000炭素原子当り0.10個、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは4.2であった。
参考例4
[マクロモノマーの合成]
合成例4[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−4)の製造]において、ポリエチレン系樹脂製造触媒の代わりに合成例4[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]で調製したマクロモノマー合成触媒を用いたこと以外は、合成例4と同様に行い、マクロモノマーペレットを得た。得られたマクロモノマーペレットのMn=20,000であり、Mw/Mn=2.8であった。また、マクロモノマーペレットの末端構造を解析したところ、1,000炭素当りの末端ビニル数は0.05個であった。
【0073】
【表1】

下記実施例および比較例で用いた高密度ポリエチレンおよび高圧法低密度ポリエチレンの特性を表2に示す。
【0074】
【表2】

実施例1
合成例1に示したエチレン−α−オレフィン共重合体(A−1)65重量%、高密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ニポロンハード 1000;密度966kg/m、MFR20.1g/10分)(以下、(B−1)という。)15重量%、高圧ラジカル重合法で得られた低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 205;密度924kg/m、MFR3.0g/10分)(以下、(C−1)という。)20重量%、をタンブラーミキサーにて予備混合した後、シリンダー温度180℃に調整した単軸押出機((株)プラコー製、型式 PDA−50)で溶融混練、造粒し、エチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、エチレン系重合体組成物の評価方法に示した方法によりラミネート成形した。 得られたエチレン系重合体組成物により密度、MFR、溶融張力、および融点を測定し、押出ラミネート成形時にネックインとカールおよびエチレン系重合体組成物層の厚みの評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0075】
実施例2
組成物の配合比率を、A−1 50重量%、B−1 40重量%、C−1 10重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0076】
実施例3
組成物の配合比率を、A−1 50重量%、B−1 10重量%、C−1 40重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0077】
実施例4
組成物の配合比率を、A−1 80重量%、B−1 10重量%、C−1 10重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0078】
実施例5
エチレン−α−オレフィン共重合体としてA−1の代わりに合成例2に示したエチレン−α−オレフィン共重合体A−2を使用し、高密度ポリエチレンとしてB−1の代わりに高密度ポリエチレンB−2(東ソー(株)製 商品名ニポロンハード 2000;密度959kg/m、MFR13.5g/10分)を使用した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0079】
実施例6
エチレン−α−オレフィン共重合体としてA−1の代わりに合成例3に示したエチレン−α−オレフィン共重合体A−3を使用した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0080】
実施例7
高密度ポリエチレンとしてB−1の代わりに高密度ポリエチレンB−2を使用した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0081】
実施例8
高圧法低密度ポリエチレンとしてC−1の代わりに高圧法低密度ポリエチレンC−2(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 203;密度918kg/m、MFR8.0g/10分)を使用した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

比較例1
エチレン−α−オレフィン共重合体としてA−1の代わりに合成例4に示したエチレン−α−オレフィン共重合体A−4を使用した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0083】
得られたエチレン系重合体組成物は、ラミネート成形品の層厚みの最大値と最小値の差が大きく厚みの安定性が劣った。
【0084】
比較例2
エチレン−α−オレフィン共重合体としてA−1の代わりに合成例2に示したエチレン−α−オレフィン共重合体A−4を使用し、高密度ポリエチレンB−1の代わりに高密度ポリエチレンB−3(東ソー(株)製 商品名ニポロンハード 5700;密度953kg/m、MFR1.0g/10分)を使用した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0085】
得られたエチレン系重合体組成物は、ラミネート成形品の層厚みの最大値と最小値の差が大きく厚みの安定性が劣った。
【0086】
比較例3
高密度ポリエチレン(B)を配合せず、配合比率をA−1 80重量%、C−1 20重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0087】
得られたエチレン系重合体組成物は、同程度の密度を有する実施例3〜5と比較し耐熱性に劣った。
【0088】
比較例4
高圧法低密度ポリエチレン(C)を配合せず、配合比率をA−1 80重量%、B−1 20重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0089】
得られたエチレン系重合体組成物は、ネックインが大きく、ラミネート加工性に劣るものであった
比較例5
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)を配合せず、配合比率をB−1 80重量%、C−1 20重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0090】
得られたエチレン系重合体組成物は、ネックインが大きく、ラミネート加工性に劣るものであった。
【0091】
比較例6
高密度ポリエチレン(B)と高圧法低密度ポリエチレン(C)を配合せず、配合比率をA−1 100重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0092】
得られたエチレン系重合体は、グロス変化温度が低く耐熱性に劣るものであった。
【0093】
比較例7
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(C)を配合せず、配合比率をB−1 100重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0094】
得られたエチレン系重合体は、ネックインが大きく、ラミネート加工性に劣るものであった。
【0095】
比較例8
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)と高密度ポリエチレン(B)を配合せず、配合比率をC−2 100重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0096】
得られたエチレン系重合体は、耐熱性に劣るものであった。
【0097】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度920kg/m以上955kg/m以下、MFR5g/10分以上10g/10分未満であるエチレンと炭素数3から6のα−オレフィンを共重合してなるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)50〜80重量%と、密度955kg/mより大きく975kg/m以下、MFR5g/10分以上40g/10分未満の高密度ポリエチレン(B)10〜40重量%および密度915kg/m以上930kg/m以下、MFR1.25g/10分以上10g/10分以下の高圧法低密度ポリエチレン(C)10〜40重量%からなり、下記要件(a)〜(d)を満たす押出ラミネート用エチレン系重合体組成物。
(a)160℃で測定された溶融張力10〜100mN
(b)MFR4g/10分以上17g/10分以下
(c)エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のMFR(MFR)と高密度ポリエチレン(B)のMFR(MFR)の比MFR/MFRが0.25〜4.0
(d)エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のMFR(MFR)と高圧法低密度ポリエチレン(C)のMFR(MFR)の比MFR/MFRが0.25〜4.0
【請求項2】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)が、下記要件(e)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のエチレン系重合体組成物。
(e)炭素数6以上の長鎖分岐を、炭素数1000個あたり0.01〜0.2個有する
【請求項3】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)が、下記要件(f)を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載のエチレン系重合体組成物。
(f)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2〜5
【請求項4】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)が、エチレンを重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン重合体またはエチレンと炭素数3〜6のオレフィンを共重合して得られ末端にビニル基を有するエチレン共重合体からなるマクロモノマーであって、数平均分子量(Mn)が2000以上であるマクロモノマーと、エチレン又はエチレンおよび炭素数3〜6のオレフィンを重合することにより得られるポリエチレン系重合体をであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物よりなる層を少なくとも1層有することを特徴とする積層体。
【請求項6】
下記要件(g)を満たすことを特徴とする請求項5に記載の積層体。
(g)エチレン系重合体組成物よりなる層の厚みの最大値dと最小値dが式(1)の関係を満足する。
(d−d)/d≦0.15 (1)

【公開番号】特開2013−112795(P2013−112795A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262577(P2011−262577)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】