説明

押出成形方法、および押出成形装置

【課題】押出量を絞っても、成形不良の発生や成形品の表面性を低下させることなく良好な成形品を成形することが可能な押出成形方法、および押出成形装置を提供する。
【解決手段】押出成形装置10は、回転駆動されるスクリュー21をバレル22内に配置した単軸押出機20と、単軸押出機のスクリューのフィードゾーンC1に固形の樹脂材料40を供給するフィーダー30と、単軸押出機から押し出された樹脂材料を成形品60に成形するダイ50と、を有する。フィーダーは、フィードゾーンに供給する樹脂材料の供給量を、飽食フィード時の理論樹脂押出量の4〜79%の範囲で、成形品の成形に必要な生産押出量とスクリューの回転数とから定まる量としている。また、単軸押出機は、スクリューの回転数を、コンプレッションゾーンC2およびメータリングゾーンC3において樹脂材料に作用するせん断応力を少なくとも30kPa以上に維持する回転数としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形方法、および押出成形装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、単軸押出機への成形材料の適量供給に関する成形方法および成形装置に係り、せん断応力の適正化によって成形品の品質向上に寄与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の肉体的・時間的負担を軽減するために検査・治療方法にカテーテルまたはチューブを用いる例が増えている。一般に、カテーテルは、血管、尿管等を通して生体内に挿入し、血管壁や生体器官等を傷つけることなく正確に所定の生体部位に到達させるための医療機器としての高い操作性と安全性が求められる。医師はX線テレビモニターに映ったカテーテルの透視画像を頼りにカテーテルを操作するので、カテーテルの造影性(X線に写ること)はなくてはならない基本機能といえる。
【0003】
カテーテルやチューブに造影性を付与する手法としては、押出原料に造影剤を練り込むことにより達成するのが一般的である。例えば、造影剤として硫酸バリウムを30wt%二軸混練したペレットを用いるなど、造影剤を含む樹脂を押出成形することによって、カテーテルまたはチューブに造影性を付与している。
【0004】
造影剤を多量に含むペレットを用いてチューブを押出成形すると、製品の肌荒れ(メルトフラクチャー)、未溶融、ゲル、焼け異物、目ヤニ、発泡等の成形不良を引き起こし易い。肌荒れなどの上記成形不良は外観不良として歩留まりを下げ生産性を著しく落とす。カテーテルやチューブは生体内に挿入するなど生体組織との接触を伴うことから、表面が滑らかであることが必須であり、肌荒れなどの上記成形不良によって生じる外観不良は許容されない。
【0005】
医療機器分野以外の一般産業分野においても、ハイフィラーコンパウンドや添加剤の多い樹脂組成物を押出成形するときに肌荒れなどの上記成形不良を引き起こし易いことはよく知られている。
【0006】
カテーテルやチューブの押出成形は単軸押出機により行われる。単軸押出機における材料供給は、飽食供給の場合には、ホッパーから投入された材料をスクリューによって搬送することによって、順次行われる。したがって、飽食供給の場合には、ホッパー内の材料重量がスクリューの搬送能力に大きく影響する。すなわち、ホッパー内の原料レベルの位置変動は搬送能力に大きな影響を及ぼし、食い込み不安定による製品寸法の周期的変動(サージング現象)を引き起こす。
【0007】
この対策としてバレルフィード部にグルーブと呼ばれる強制フィード機構を設けている押出機が近年の主流となっている。グルーブはバレルフィード部に押出機長手方向に複数の溝(縦溝)を掘るなどして形成されるが、グルーブの目的は原料ペレット(樹脂)とバレルの摩擦抵抗を高め大量の樹脂を前方へ送ることを可能とすることにある。しかしながら、同時に、摩擦による発熱や、ペレットの機械的破損は避けられない。
【0008】
摩擦による発熱に対しては、バレルフィード部に冷却機構を設けることが必要となる。しかしながら、バレルフィード部に冷却機構を設けても多量の造影剤を含むペレット自体、脆く割れ易い性質がある。また、グルーブ付押出機のバレルフィード部で冷却不足となると、フィード口内面への材料付着によるブリッジ現象、あるいはバレル表面での溶融促進により、スクリューのフィードゾーンに材料が巻き付いたまま共回りする現象(メルトプラッキング、melt plugging)を引き起こす。その結果、固体搬送能力の低下を招き、押出量の低下やサージング現象などが生じてしまうので、寸法不良の原因となる。
【0009】
また、ペレットの機械的破損は、グルーブへの樹脂の挟み込みを引き起こし、グルーブへの滞留を招いて、清掃性が極端に悪くなる。滞留したペレットの粉(破損ペレット)が焼け(炭化異物)の主原因になるともいわれている。
【0010】
近年の押出機はグルーブ付きが標準的である。グルーブ付き押出機にあっては、押出機の可塑化能力以上の樹脂供給、すなわち、過供給をもたらし易く、この解消のためにL/Dの長大化やスクリュー負荷の上昇を招いている。
【0011】
樹脂の過供給は、未溶融樹脂によるコブの発生等の外観不良を引き起こす。この過供給を防止するために二軸押出機で、飢餓供給フィーダーが開発され実用化されている。あるいは射出成型において飢餓フィーダーが提案されているが、押出成形への実用化例はほとんどない。特許文献1〜3には、飢餓供給に関する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された技術は、射出成型に適用したものであり、特許文献2に開示された技術は、再生ペレットの製造に適用したものである。また、特許文献3に開示された技術は、ギヤポンプ付きの溶融紡糸用押出機の吐出圧力の制御装置の一部に適用したものに過ぎない。飢餓供給は、スクリューのフィードゾーンに適宜のガス抜き空隙を常時形成するように維持しつつ、スクリューに対して原料供給を行うものである。
【0012】
現在主流の単軸押出機は、同一サイズならばどれだけ多量の樹脂を押出せるか、つまり、可塑化能力の観点から、市場において評価され、競われており、単軸押出機での飢餓供給はほとんど利用されていない。
【0013】
単軸押出機における溶融・混合は、バレルからの加熱とスクリューのコンプレッションゾーンのせん断作用による自己発熱で行われる。単軸押出機の押出量(g/Hr)は、飽食供給および飢餓供給のいずれの場合であっても、スクリュー回転数を増加するのに比例して増加する。このため、あるサイズの単軸押出機において、成形品の成形に必要な生産押出量(g/Hr)が比較的少ない場合には、スクリューの回転数を下げて、単軸押出機からの溶融樹脂の押出量(g/Hr)を少なくする運転を行っている。しかしながら、スクリューの回転数を過度に下げてしまうと、焼け(炭化物)や、添加物の二次凝集などの成形不良が生じ易くなり、成形品の表面性が悪化することがある。
【0014】
このため、単軸押出機の選定にあたっては、スクリュー回転数を過度に下げた運転を回避するために、単軸押出機の押出量と、成形品の生産押出量との組み合わせから適正なサイズの単軸押出機を選定することが重要とされている。
【0015】
しかしながら、スクリューに要求される機械的強度を確保する観点から、スクリューの小径化には限界があり、小径のスクリューを備える単軸押出機を適用してもなお、成形品の生産押出量(g/Hr)にあわせてスクリューの回転数を下げざるを得ない場合がある。このときには、前述したように、スクリューの回転数の低下に伴って成形不良が生じ易くなり、成形品の表面性が悪化する。
【0016】
なお、一般産業用の押出機については押出量は「kg/Hr」によって表現されるが、医療用の押出機、特にカテーテル用の小型押出機では10〜500g/Hrの押出量が求められている。この押出量は、一般産業用押出機の押出量に比べると1/1000程度であり、極めて少ない。このため、本明細書においては、押出量については「g/Hr」によって表現することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003−236885号公報
【特許文献2】特開2003−300211号公報
【特許文献3】特開平7−88936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、単軸押出機の評価は可塑化能力の点についてなされており、押出量を絞ったときに、成形不良の発生を抑えて、成形品の表面性をどのようにして向上させるか、については何ら考察されていない。
【0019】
本発明者らは、成形不良の発生や成形品の表面性を低下させることなく押出量を絞った運転をどのようにして行えばよいかについて鋭意研究した結果、スクリューのコンプレッションゾーンおよびメータリングゾーンにおける溶融樹脂の滞留や添加物の二次凝集防止にはせん断応力が大きく関与し、溶融樹脂の滞留による焼け(炭化物)を防止するためには、特定のせん断応力以上が必要であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0020】
現実の押出成形と結びつけて説明すると、せん断応力は単軸押出機ではスクリュー回転数と置き換えることが可能である(同一スクリュー・温度)。つまり、押出成形の不良を起こさないためには、ある程度のスクリュー回転数(=せん断応力)を必要とすることがわかった。押出機のスクリューの低速回転は、滞留時間が長くなり、熱分解、発泡、ゲル、焼け発生等の成形不良を引き起す原因となることがわかった。
【0021】
そこで、本発明の目的は、押出量を絞っても、成形不良の発生や成形品の表面性を低下させることなく良好な成形品を成形することが可能な押出成形方法、および押出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成する本発明の押出成形方法は、単軸押出機のスクリューのフィードゾーンに固形の樹脂材料を供給し、前記スクリューの回転によって前記樹脂材料を移送しながら可塑化し、可塑化させた前記樹脂材料を前記単軸押出機から成形品を成形するダイに押し出す押出成形方法である。この押出成形方法においては、前記スクリューのフィードゾーンに供給する前記樹脂材料の供給量を、飽食フィード時の理論樹脂押出量の4〜79%の範囲で、前記成形品の成形に必要な生産押出量と前記スクリューの回転数とから定まる量とし、かつ、前記スクリューの前記回転数を、前記スクリューのコンプレッションゾーンおよびメータリングゾーンにおいて前記樹脂材料に作用するせん断応力を少なくとも30kPa以上に維持する回転数としている。
【0023】
また、上記目的を達成する本発明の押出成形装置は、回転駆動されるスクリューをバレル内に配置した単軸押出機と、前記単軸押出機のスクリューのフィードゾーンに固形の樹脂材料を供給するフィーダーと、前記単軸押出機から押し出された前記樹脂材料を成形品に成形するダイと、を有している。この押出成形装置においては、前記フィーダーは、前記スクリューのフィードゾーンに供給する前記樹脂材料の供給量を、飽食フィード時の理論樹脂押出量の4〜79%の範囲で、前記成形品の成形に必要な生産押出量と前記スクリューの回転数とから定まる量とする。また、前記単軸押出機は、前記スクリューの前記回転数を、前記スクリューのコンプレッションゾーンおよびメータリングゾーンにおいて前記樹脂材料に作用するせん断応力を少なくとも30kPa以上に維持する回転数としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スクリューのフィードゾーンに供給する樹脂材料の供給量を上記の範囲に抑えて、単軸押出機の押出量を抑えながら、成形品の良否に大きな影響を与えるせん断応力を維持する回転数でスクリューを回転駆動している。このため、成形品の成形に必要な生産押出量となるように押出量を絞っても、成形不良の発生を抑え、成形品の表面性を低下させることなく良好な成形品を成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る押出成形装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の押出成形装置の運転条件の説明に使用する説明図である。
【図3】本発明の押出成形装置において樹脂供給量の幅(上限・下限)についての説明に使用する説明図である。
【図4】図4(A)は、実施例1および対比例1に係る単相チューブを示す断面図、図4(B)は、実施例2に係るチューブであって、ベース部の中に造影部を配置したチューブを示す断面図である。
【図5】図5(A)は、未溶融樹脂の塊が発生していない実施例2のチューブを概念的に示す図、図5(B)は、未溶融樹脂の塊が発生した対比例2のチューブを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0027】
図1を参照して、本実施形態の押出成形装置10は、概説すると、回転駆動されるスクリュー21をバレル22内に配置した単軸押出機20と、単軸押出機20のスクリュー21のフィードゾーンC1に固形の樹脂材料40を供給する定量フィーダー30(フィーダーに相当する)と、単軸押出機20から押し出された樹脂材料を成形品60に成形するダイ50と、単軸押出機20や定量フィーダー30の作動を制御するコントローラ70と、を有している。そして、定量フィーダー30は、コントローラ70によって作動が制御され、スクリュー21のフィードゾーンC1に供給する樹脂材料40の供給量を、飽食フィード時の理論樹脂押出量の4〜79%の範囲で、成形品60の成形に必要な生産押出量とスクリュー21の回転数とから定まる量としている。また、単軸押出機20は、コントローラ70によって作動が制御され、スクリュー21の回転数を、スクリュー21のコンプレッションゾーンC2およびメータリングゾーンC3において樹脂材料40に作用するせん断応力を少なくとも30kPa以上に維持する回転数としている。この押出成形装置10にあっては、単軸押出機20のスクリュー21のフィードゾーンC1に固形の樹脂材料40を供給し、スクリュー21の回転によって樹脂材料を移送しながら可塑化し、可塑化させた樹脂材料を単軸押出機20からダイ50に押し出すことによって、成形品60を押出成形している。本実施形態の押出成形装置10は、スクリュー21のフィードゾーンC1の温度を調整する調整機構80をさらに有している。調整機構80は、スクリュー21のコンプレッションゾーンC2における熱が伝熱されるフィードゾーンC1を冷却して、供給した樹脂材料40がスクリュー21のフィードゾーンC1において溶融しないようにしている。以下、詳述する。
【0028】
成形品60は特に限定されないが、例えば、カテーテルやチューブなどの医療用の管状体61(図4(A)を参照)を例示することができる。また、造影性を付与したカテーテルやチューブなどの医療用の管状体62でもよく、このような管状体にあっては、透明なベース部62aの中に造影部62bがストライプ状に軸線方向に沿って配置されている(図4(B)を参照)。
【0029】
このような医療器具の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエステルポリアミド、軟質ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、形状記憶樹脂等の各種樹脂材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、さらには、これらのうちの2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)が挙げられる。
【0030】
単軸押出機20は、シリンダーとも称されるバレル22と、バレル22内に回転可能に保持されるスクリュー21と、スクリュー21を回転駆動する歯車列23やモータ24と、を有している。バレル22には、成形材料を投入する投入口が開口されている。スクリュー21は、基端側から先端側に順に、フィードゾーンC1、コンプレッションゾーンC2、およびメータリングゾーンC3が形成されている。スクリュー21のフィードゾーンC1、およびスクリュー21基端部がバレル22の投入口に臨む部位によって供給部25が構成される。スクリュー21のフィードゾーンC1とバレル22内周面との間の隙間寸法は、コンプレッションゾーンC2とバレル22内周面との間の隙間寸法よりも大きい。また、コンプレッションゾーンC2とバレル22内周面との間の隙間寸法は、メータリングゾーンC3とバレル22内周面との間の隙間寸法よりも大きい。
【0031】
スクリュー21のコンプレッションゾーンC2、およびメータリングゾーンC3に対応して、バレル22の周囲には、ヒーター部82、83がそれぞれ設けられている。コンプレッションゾーンC2、およびメータリングゾーンC3におけるヒーター部82、83のそれぞれは、加熱機としてバンドヒーターが用いられている。フィードゾーンC1については、バンドヒーターと空冷との組み合わせでは、コンプレッションゾーンC2における熱が伝熱されるフィードゾーンC1を十分に冷却することができない。このため、フィードゾーンC1の温度を調整する調整機構80は、加熱機としてバンドヒーターの他に、フィードゾーンC1を冷却するために、熱容量の大きい油や水を一定温度で循環させる機構を備えている。
【0032】
定量フィーダー30は、原料としてのペレット41がローダー(図示せず)によって供給される予備ホッパー31と、単軸押出機20のバレル22の投入口に接続される主ホッパー32と、予備ホッパー31から主ホッパー32にペレット41を搬送する輸送部33と、を有している。
【0033】
ペレット41は、所定形状に形成された固形の樹脂材料40であり、図示しない除湿乾燥機において加熱乾燥されている。ペレット41は樹脂メーカー推奨の乾燥条件にて樹脂メーカー指定の含水率に保たれている。
【0034】
図示する輸送部33は、フィードスクリュー34を回転可能に保持する筒体35と、フィードスクリュー34を回転駆動するモータ36とを有している。モータ36によってフィードスクリュー34を回転駆動することによって、予備ホッパー31から落下・供給されたペレット41を搬送して、主ホッパー32内へ供給する。輸送部33は、図示したスクリュー式のほか、コイル式、ベルト式、振動式、空気輸送、ピストン輸送、その他の方法を適用して、ペレット41を搬送することができる。輸送部333には代表的に特開2001−47214号、特開2003−236885号、特開2003−300211号、特開2005−138542号、特開2005−47051号記載のような形式の材料供給装置を用いることができる。また、これら容量式定量フィーダー以外にも、重量式定量フィーダーも好適に用いることができる。主ホッパー32には、減圧手段や、不活性ガスの導入手段を適宜設けることができる。
【0035】
飢餓供給はスクリューの3〜4Dを飢餓状態とするという定義(下記の非特許文献1を参照)があるが、本発明では主ホッパー32から見える1〜2D分においてスクリュー21の表面が見えるレベルであることが積載ペレット重量によらない供給になるので望ましく、必ずしも3〜4Dを飢餓状態としなくてもよい。
【0036】
非特許文献1:社団法人西日本プラスチック製品工業会 新技術・材料セミナー記事 「半世紀に及ぶ慣習に一石を投じるハングリー成形(2005.9)」(https://ct.nishipla.or.jp/site/pdf/45.t_shingijutsuseminar/200509c.pdf)を参照。
【0037】
単軸押出機20の供給部にグルーブを設けても設けなくても良いが、ペレット41とバレル22との摩擦抵抗を高める手段、例えば、エンボス加工やバレル22表面の面租度などを調整しても良い。また、供給部25のバレル22内径寸法に、先端方向に縮径する傾斜(いわゆるテーパー構造)をつけてもよい。
【0038】
製品の押出量は、主として、輸送部33の計量によって制御される。但し、本発明の成形方法の要点は、製品サイズに必要な生産押出量を定量フィーダー30で供給すること、かつ、適切なせん断応力をスクリュー21回転から得ることであり、輸送部33での計量と単軸押出機20のスクリュー21の回転数との併用もより好ましく用いることができる。
【0039】
図2を参照して、本発明の押出成形装置10の運転条件について説明する。一般的な単軸押出機での押出量Qは、図2のO−A線上にある。すなわち、押出量はスクリューの回転数に正比例する。簡単には押出量Q=係数×スクリューの回転数である。直線の傾き係数はスクリューデザイン(圧縮比等)、樹脂の粘度特性、フィード食い込み量、背圧等の因子によって決まる。
【0040】
スクリュー21のメータリングゾーンC3における1山(1D)の体積=BからなるO−B線を押出量の下限と仮定する。この場合、図2の△OABで囲まれる押出量Qの範囲が、単軸押出機20のスクリュー回転数と、定量フィーダー30による定量の供給量とによって制御可能な範囲となる。但し、本発明の目的である良好な押出成形品60を得るためには、適正なせん断応力域での運転が必要である。このためには、図2の台形CDEFの範囲において押出成形装置10を運転する運用が望ましい。従来における「押出量がスクリューの回転数に比例するように押出成形装置を運転する」という固定観念を打破することによって、O−A線上の条件にて運転していた従来に比べて、格段に自由度の高い運転が可能となる。
【0041】
図3を参照して、樹脂供給量の幅(上限・下限)について説明する。従来技術の飽食フィードによる押出成形では、図3のグラフの符号L1によって示される実線の範囲でしか、使われていない実態がある。単軸押出機20の回転数は、スクリュー21の強度の観点から、スクリュー21の破断等を生じない範囲の制限を受けるからである。
【0042】
本発明でも、従来の飽食フィードや従来の飢餓フィードでも、低速回転(低せん断応力域)では綺麗な成形品60の表面を得ることはできない。
【0043】
従来の飽食フィードおよび従来の飢餓フィードは、スクリュー回転数と押出量は比例する。一方、本発明にあっては、押出量はスクリュー回転数に依存しないという特徴を持っている。
【0044】
本発明での樹脂材料40の供給量は、飽食フィード時の理論樹脂押出量の4〜79%の範囲が好ましい。さらに好ましくは、12〜47%である。飽食フィード時の理論樹脂押出量の4%未満の場合、メータリングゾーンC3における4ピッチ分の体積重量以下しか樹脂供給しないので、押出成形品60に気泡を噛み込み易くなる。さらにはダイ50からの背圧に負け、サージング現象を起こして樹脂吐出が不安定になり易い。製品押出の定量性を確保するには、メータリングゾーンC3における6ピッチ分の樹脂量のストックがあることが経験上好ましい。逆に、樹脂供給量が79%を越えると従来技術となんら変らず、スクリュー21の回転数と押出量とは比例してしまう。本発明の意図は、押出量をスクリュー21の回転数に依存させないことであり、押出量はスクリュー21の回転では増加させないようにしていることである。すなわち、押出量を抑えながら、成形品60の表面性を適正なスクリュー回転数、つまり最適なせん断応力により得ることにある。
【0045】
ペレット41のサイズは、樹脂材料40の供給量を飽食フィード時の理論樹脂押出量の4〜79%の範囲に設定し易い大きさが選択されている。定量フィーダー30は、使用する樹脂材料ごとにキャリブレーションされ、設定目盛り(フィードスクリュー34の回転数)と吐出量(樹脂重量)との関係が求められている。このため樹脂材料40の種類によって密度が異なっても、樹脂材料40の供給量を設定する上記範囲が密度の影響を受けることはない。
【0046】
なお、グラフ中の符号(1)によって示される線の左側が、低せん断応力域つまり表面性が悪い領域である。符号(2)によって示される線分は、飽食フィード時のトルク限界を示し、符号(3)によって示される線分は、本発明のトルク限界を示している。
【0047】
本発明でいうせん断応力とは、単軸押出機20内部のスクリュー21外表面におけるせん断応力またはバレル22内表面におけるせん断応力を指す。これらのせん断応力は、押出シミュレーションソフトなどの市販のCAEソフトによって、容易に計算で求めることが可能である。押出シミュレーションソフトは、例えば、コンピュプラスト社製のバーチャルエクストルージョンラボラトリーや、ポリダイナミクス社のネクストルードキャド(ポリキャド、POLCAD Family)などを例示することができる。
【0048】
押出シミュレーションソフトでは、通常、使用する樹脂の特性データ(融点等)、粘度データ(せん断粘度、伸張粘度)、使用押出機の寸法、押出機の運転情報などを必要により入力して計算する。
【0049】
樹脂の特性データ(融点等)には、固体時の特性値として、密度(Solid phase density)、熱容量(Heat capacity)、熱伝導率(Thermal conductivity)、溶融温度(Melting temperature)、融解熱(Heat of fution)などがあり、溶融時の熱特性として、溶融密度、熱容量、熱伝導率、流動停止温度などがある。汎用的な樹脂であればソフト付属の材料データベースに登録されており、そのデータをそのまま使用することができる。また、他の文献や樹脂メーカーの技術情報のデータを用いることができる。
【0050】
粘度データ(せん断粘度)は、温度条件を振りツインキャピラリーレオメーターで測定するか、樹脂メーカーの技術情報のデータを用いることができる。
【0051】
押出機の寸法は、本体断面図やスクリューの図面から得ることができ、バレル、ヒーター、スクリューの寸法などを用いる。
【0052】
押出機の運転情報には、バレルの温度設定や樹脂圧または押出量などがある。押出量が不明の場合には製品チューブのサイズと生産速度などを用いる。
【0053】
実際の計算においては、せん断粘度を粘度計(キャピラリー式レオメーター)にて測定した値を入力する。キャピラリー式レオメーターは多くの測定装置が各社から市販されているが、粘度のせん断速度依存性が正確に測定できるものが望ましく、シングルボアタイプの(株)東洋精機製作所製のキャピログラフや(株)島津製作所製のフローテスター、ツインボアタイプのRosand社(現、Malvern Instruments社)やイマテック社(IMATEK社)などのツインキャピラリーレオメーターなどを用いることが望ましい。再現性が高く、補正された真のせん断が容易に測定可能なツインキャピラリーレオメーターから得られた粘度データを用いることがより好ましい。
【0054】
せん断粘度をη、せん断応力をτ、せん断速度をγとすると、η=τ/γという定義式から、せん断応力は、τ=ηγである。せん断速度γは、単軸押出機20の場合、直径D、スクリュー21溝深さhの場合、円周率π、スクリュー回転数Nとすると、γ≒πDN/hであるので、τ≒ηπDN/hである。ここで、簡易的には、単軸押出機20を同一樹脂、同一温度、同一スクリュー21=同一のスクリュー溝深さ、押出機内の同一位置とすると、η、π、D、hは定数となるので、その位置におけるせん断応力τはスクリュー回転数に比例する。ηπD/h=κとすると、τ≒κNである。このように、単軸押出機20では、せん断応力はスクリュー回転数に置き換えることが可能である。
【0055】
本発明でいう適正なせん断応力の範囲とは、単軸押出機20内部のスクリュー21外表面におけるせん断応力またはバレル22内表面におけるせん断応力のどちらか低い方が、少なくとも30kPa以上となる範囲をいう。さらに好ましくは、50kPa以上である。スクリュー21外表面におけるせん断応力またはバレル22内表面におけるせん断応力が30kPa未満となると、壁面にこびりついた樹脂をこそぎ落とす力がなくなる。これにより、樹脂がそこに滞留することになり、熱によるポリマーの劣化が発生し、分解による低粘度化、酸化による黄変、架橋によるゲル発生、炭化などが起きる。これらは、押出成形品60の外観不良となる。一方、適正なせん断応力域で運転すると、適切なせん断応力によってソリッドベッドの破壊による未溶融樹脂、いわゆるブツの発生も減少する。さらに、適切なせん断応力によって、造影剤等の添加剤の二次凝集を防止することができる。
【0056】
本発明では、単軸押出機20内でのせん断応力値に、特に上限値を設けていない。しかしながら、200kPa以上となると、せん断発熱の制御がやや困難になる。したがって、せん断応力が200kPa以上においても単軸押出機20の温度制御が良好であり、せん断発熱を制御することが可能であるならば、せん断応力が200kPa以上となる運転をすることも可能である。ただし、ダイ50の出口部でのせん断応力が150kPaを超えると、メルトフラクチャー現象、ダイスウエル現象、目ヤニを発生しやすくなることが知られており、本発明の目的である良好な外観の押出製品を得るのには不都合である。このような場合には、押出機内部のバレル22表面およびスクリュー21表面のせん断応力とは別に、ダイ50の出口部の壁面におけるせん断応力にも注意を払う必要がある。
【0057】
スクリュー21のフィードゾーンC1は、通常、コンプレッションゾーンC2やメータリングゾーンC3と同様に、加熱機としてバンドヒーターが用いられている。しかしながら、ヒーターと空冷との組み合わせでは、コンプレッションゾーンC2における熱(ヒーター部の熱、およびバレル22と樹脂ペレット41との摩擦発熱)が伝熱されるフィードゾーンC1の冷却が間にあわない。このため、フィードゾーンC1の温度を調整する調整機構80は、加熱機としてバンドヒーターの他に、フィードゾーンC1を冷却するために、熱容量の大きい油や水を一定温度で循環させる機構を備えている。熱容量の大きい油や水を一定温度で循環することによって、フィードゾーンC1を十分に冷却し、コンプレッションゾーンC2からの伝熱を遮断し、かつ内部摩擦発熱をコントロールすることが可能となる。フィードゾーンC1の調整機構80の温度と、コンプレッションゾーンC2のヒーター部82の温度との温度差は、適宜の温度差を設定できるが、例えば、100℃以上付けることが望ましい。循環する油は市販されている射出成型の金型温調用のものを用いることができる。油温調の場合には80〜150℃の範囲、水冷の場合には室温〜80℃の範囲で温度調整する。フィードゾーンC1の温度が150℃以上の場合は、通常のバンドヒーターや、アルミや真鋳製の鋳込みヒーターを利用可能である。
【0058】
スクリュー21のフィードゾーンC1の温度を調整する調整機構80によるメリットは、スクリュー21のコンプレッションゾーンC2における熱が伝熱されるフィードゾーンC1を冷却することによって、フィードゾーンC1を本来の固体搬送部と位置付けることができることである。供給した樹脂材料40がスクリュー21のフィードゾーンC1において溶融しないようにできるので、圧縮前に樹脂を溶かさずに、固体での搬送能力を高めることができる。
【0059】
本件発明者らは、別途、押出機の内部を押出動作中に観察可能とした可視化押出機を作製し、これまでの押出機においてコンプレッションゾーンC2の高温の影響によって、フィードゾーンC1の温度が設定以上に高くなり、フィードゾーンC1において樹脂材料40が溶けてしまう現象を確認した。圧縮前に樹脂材料40が溶けると、コンプレッションゾーンC2において液体を圧縮することになり、押出機内部の樹脂圧力が異常に高まることを見出した。高い樹脂圧力はサージング現象、押出量の周期的変動、すなわち製品寸法の変動を引き起こすので好ましくない。また、圧縮前にメルトプールができるとソリッドベットの破壊が起き未溶融、いわゆるブツが発生しやすくなり製品の外観不良につながる。
【0060】
スクリュー21のフィードゾーンC1の温度を調整する調整機構80によるメリットは、上述したような外観不良の防止のみならず、熱可塑性エラストマーや多成分かららなるポリマーアロイの押出成形に有用である。フィードゾーンC1の温度を下げて融点の低い第一成分を溶かさず、コンプレッションゾーンC2で第一、第二成分を一気に溶かすことが可能になるからである。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、スクリュー21のフィードゾーンC1に供給する樹脂材料40の供給量を所定の範囲に抑えて、単軸押出機20の押出量を抑えながら、成形品60の良否に大きな影響を与えるせん断応力を維持する回転数でスクリュー21を回転駆動している。このため、成形品60の成形に必要な生産押出量となるように押出量を絞っても、成形不良の発生を抑え、成形品60の表面性を低下させることなく良好な成形品60を成形することが可能となる。
【0062】
また、スクリュー21のフィードゾーンC1の温度を調整する調整機構80によって、スクリュー21のコンプレッションゾーンC2における熱が伝熱されるフィードゾーンC1を冷却して、供給した樹脂材料40がスクリュー21のフィードゾーンC1において溶融しないようにしている。このため、フィードゾーンC1を本来の固体搬送部と位置付けることができ、圧縮前に樹脂を溶かさずに、固体での搬送能力を高めることができる。
【0063】
また、成形品60が医療用の管状体61、またはベース部62aの中に造影部62bを配置した医療用の管状体62であるので、成形不良を防ぎ、表面性や品質(強度や伸びの安定性)の改善された造影剤入りカテーテルまたはチューブを得ることができ、安全性が高く操作性に優れるカテーテルの製造技術を提供できる。表面性の良いカテーテルやチューブは術者の負担を軽減するとともに、患者さんの侵襲を抑え、なおかつ安価な医療用具の提供に繋がるので、医療経済性に寄与できるものである。
【0064】
以上、本発明の押出成形方法および押出成形装置10を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
例えば、医療用のカテーテルやチューブの製造に本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、一般産業において広く適用することができる。例えば、ハイフィラーコンパウンドや添加剤の多い樹脂組成物の押出成形や精密チューブ押出にも有用である。また、製品品はチューブなどの管状体に限られるものではなく、フィルム、シート、中空のパイプ、中実の棒、繊維などの押出成形における成形不良対策にも有用な技術となり得る。
【実施例1】
【0066】
次に、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0067】
実施例1および比較例1の成形材料として、D硬度のポリウレタン樹脂(ダウケミカル社製ペレセン2363−65D)を用いた。造影剤として、タングステンを40wt%含んでいる。造影剤は二軸押出機により外部混練業者にて混練し、コンパウンドペレット41として入手した。タングステン40wt%を含むポリウレタンは、血管造影カテーテルやガイドワイヤーに汎用される樹脂原料である。
【0068】
図1に示した本発明の押出成形装置10によって、図4(A)に示される単相チューブ61を成形した。単軸押出機20には、市販されている(株)プラ技研製の「MDX12−24型」を用いた。
【0069】
目標寸法は外径1.25×内径0.80mmであり、外径寸法公差は±0.03mmである。
【0070】
なお、実施例1および比較例1では、フィードゾーンC1のヒーター部には、油温調機あるいは水冷却機を組み込まず、通常のバンドヒーターのみとした。スクリュー21はポリウレタン樹脂押出成形用に一般的に用いられる圧縮比3程度のフルフライトスクリューを用いた。チューブダイおよびインダイ/アウトダイは実施例1および比較例1で同一のものを使用した。チューブ引落率は同一の2倍とした。温度条件も同一で、フィードゾーンC1:190℃、コンプレッションゾーンC2:192℃、メータリングゾーンC3:195℃、ダイ50:200℃とした。実施例1および比較例1ともに押出量は130g/Hr、引き取り速度2m/min前後で有意な差はなかった。
【0071】
実施例1および比較例1の違いは、実施例1では、定量フィーダー30による原料樹脂の供給量を130g/Hrとし、スクリュー回転数を50rpmとした。このとき、押出CAEソフトによる解析結果から、押出機内部の最低せん断応力は、メータリングゾーンC3直前のスクリュー21表面で50kPaであった。
【0072】
比較例1では、通常の飽食供給とし、押出量は130g/Hrとなるスクリュー回転数は10rpmであった。同様に押出CAEソフトによる解析結果から、押出機内部の最低せん断応力は、メータリングゾーンC3直前のスクリュー21表面で17kPaであった。
【0073】
比較例1を飽食供給のまま50rpmとした場合、500g/Hrの押出量となり、引き取り速度は10m/minとなった。この条件では成形速度が速すぎて、造影剤を多量に含むチューブは成形中に切れ易く、また、脈動が起きて外径が変動し易く、安定した寸法のチューブを得ることは困難であった。
【0074】
実施例1と比較例2との比較結果(外観検査および引張試験)を下記の表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
引張試験におけるチャック間距離は30mm、引張速度は1000mm/minである。実施例1および比較例2ともに形状・断面積が同一なので、単純にロードセル荷重と伸び率とで単純比較した。使用機器は、(株)島津製作所製の精密万能試験機オートグラフである。また、せん断応力は、押出シミュレーションソフトとしてコンピュプラスト社製のバーチャルエクストルージョンラボラトリーを用いて求めた。
【0077】
表1に示すように、本発明によれば、チューブの表面性だけでなく、引張試験における強度、および伸びにおいて有意に差が出た。本発明によれば、単軸押出機20内で適切なせん断応力がかかっているので、焼けの発生が少なく、造影剤の二次凝集が防げている。したがって、造影剤を40wt%もの高配合にしても、表面性に艶があり、強度と伸びのあるチューブが得られた。かかるチューブはX線透視化での視認性に優れ、生体内に挿入されるのに適した表面性を有している。したがって、医療用として、好適に用いることができる。
【0078】
また、単軸押出機20のスクリュー回転数と、押出チューブの表面性の観察とを詳細に行った結果から、スクリュー21は20rpm以上、すなわち単軸押出機20内の最低せん断応力が30kPa以上であることが、表面性の良い押出成形品60を得るのに必要であることが分かった。
【実施例2】
【0079】
実施例2は、図4(B)に示すように、透明なベース部62aの中に8本の造影ライン(造影部62bに相当する)を配置したチューブ62を成形した。このチューブ62は、留置針用カテーテルの14Gサイズ用に用いられる。
【0080】
透明なベース部には、D硬度ポリウレタン(ミラクトランE568)の市販ペレットを原料として用いた。造影部には、D硬度ポリウレタン(ミラクトランE574)に、造影剤として硫酸バリウムを30wt%含む二軸混練ペレットを用いた。透明なベース部用の単軸押出機20には、市販されている(株)プラ技研製の「MDX15−24型」(スクリュー21はバリアタイプ)1台を用いた。スクリュー21の径は15mmである。造影部用の単軸押出機20には、市販されている(株)プラ技研製の「MDX10−18型」(スクリュー21はフルフライトタイプ)1台を用いた。スクリュー21の径は10mmである。造影部用の単軸押出機20に定量フィーダー30を取り付けた。ダイ50は(株)プラ技研製のFIX−2T型を用いた。主な運転条件を下記の表2に示す。
【0081】
また、せん断応力は、押出シミュレーションソフトとしてコンピュプラスト社製のバーチャルエクストルージョンラボラトリーを用いて求めた。
【0082】
【表2】

【0083】
チューブ62を押出成形するときの対比例に係る課題は、図5(B)に概念的に示すように、造影部62bにおいて未溶融樹脂63(ブツ)が発生することであった。本発明を適応することによって、図5(A)に概念的に示すように、未溶融樹脂の塊が発生することはなかった。未溶融樹脂が消えた理由は、造影部用の押出機の回転数を50rpm(内部の最低せん断応力で50kPa以上)と高回転にできたためであり、定量フィーダー30によって供給樹脂量を制限して、適切なせん断応力を与えるスクリュー回転数で造影部62bを押出せたことによる。最低せん断応力を少なくとも30kPa以上とすることによって、造影剤の二次凝集を防止することができた。
【0084】
透明なベース部および造影部をともに飽食供給した対比例において、ベース部に関して押出機内部のせん断応力を最適化したときには、造影部に関して未溶融や造影剤の二次凝集を引き起こした(図5(B)を参照)。これは、成形品断面積に占める造影部62bの断面積が比較的小さいことから、造影部用の単軸押出機の押出量を少なくしなければならず、スクリューの回転数を下げて単軸押出機を運転したことから、押出機内部のせん断応力が30kPa以下となったためである。
【符号の説明】
【0085】
10 押出成形装置、
20 単軸押出機、
21 スクリュー、
22 バレル、
25 供給部、
30 定量フィーダー(フィーダー)、
31 予備ホッパー、
32 主ホッパー、
33 輸送部、
40 固形の樹脂材料、
41 ペレット、
50 ダイ、
60 成形品、
61、62 カテーテルやチューブ(医療用の管状体)、
62a ベース部、
62b 造影部、
70 コントローラ、
80 温度の調節機構、
82 ヒーター部、
83 ヒーター部、
C1 フィードゾーン、
C2 コンプレッションゾーン、
C3 メータリングゾーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単軸押出機のスクリューのフィードゾーンに固形の樹脂材料を供給し、前記スクリューの回転によって前記樹脂材料を移送しながら可塑化し、可塑化させた前記樹脂材料を前記単軸押出機から成形品を成形するダイに押し出す押出成形方法であって、
前記スクリューのフィードゾーンに供給する前記樹脂材料の供給量を、飽食フィード時の理論樹脂押出量の4〜79%の範囲で、前記成形品の成形に必要な生産押出量と前記スクリューの回転数とから定まる量とし、かつ、前記スクリューの前記回転数を、前記スクリューのコンプレッションゾーンおよびメータリングゾーンにおいて前記樹脂材料に作用するせん断応力を少なくとも30kPa以上に維持する回転数としてなる押出成形方法。
【請求項2】
前記スクリューのコンプレッションゾーンにおける熱が伝熱されるフィードゾーンを冷却して、供給した前記樹脂材料が前記スクリューのフィードゾーンにおいて溶融しないようにしてなる、請求項1に記載の押出成形方法。
【請求項3】
前記成形品が医療用の管状体、またはベース部の中に造影部を配置した医療用の管状体である請求項1または請求項2に記載の押出成形方法。
【請求項4】
回転駆動されるスクリューをバレル内に配置した単軸押出機と、
前記単軸押出機のスクリューのフィードゾーンに固形の樹脂材料を供給するフィーダーと、
前記単軸押出機から押し出された前記樹脂材料を成形品に成形するダイと、を有し、
前記フィーダーは、前記スクリューのフィードゾーンに供給する前記樹脂材料の供給量を、飽食フィード時の理論樹脂押出量の4〜79%の範囲で、前記成形品の成形に必要な生産押出量と前記スクリューの回転数とから定まる量とし、
前記単軸押出機は、前記スクリューの前記回転数を、前記スクリューのコンプレッションゾーンおよびメータリングゾーンにおいて前記樹脂材料に作用するせん断応力を少なくとも30kPa以上に維持する回転数としてなる押出成形装置。
【請求項5】
前記スクリューのフィードゾーンの温度を調整する調整機構をさらに有し、前記調整機構は、前記スクリューのコンプレッションゾーンにおける熱が伝熱されるフィードゾーンを冷却して、供給した前記樹脂材料が前記スクリューのフィードゾーンにおいて溶融しないようにしてなる、請求項4に記載の押出成形装置。
【請求項6】
前記成形品が医療用の管状体、またはベース部の中に造影部を配置した医療用の管状体である請求項4または請求項5に記載の押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250399(P2012−250399A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123788(P2011−123788)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(591265611)株式会社プラ技研 (9)
【Fターム(参考)】