説明

押出成形用樹脂組成物、それを用いた太陽電池モジュールの封止材、遮水シート、又はターポリン

【課題】エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物とを含有し、太陽電池封止材、遮水シート、ターポリンなどの生産性に優れ、耐熱性、透明性、柔軟性に優れる押出成形用樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記(a1)〜(a5)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体成分(A)及び有機過酸化物成分(B)を含有することを特徴とする押出成形用樹脂組成物などによって提供。
(a1)密度が0.860〜0.920g/cm
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下
(a3)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10s−1での溶融粘度が9.0×10poise以下
(a4)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10−1での溶融粘度が1.8×10poise以下
(a5)ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)が、シートの引張弾性率(E)との関係式(a)を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形用樹脂組成物、それを用いた太陽電池モジュールの封止材、遮水シート、又はターポリンに関し、より詳しくは、エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物とを含有し、太陽電池モジュールの封止材、遮水シート、ターポリンなどの生産性に優れ、耐熱性、透明性、柔軟性に優れる押出成形用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、透明性、柔軟性等が良好であることから、太陽電池モジュールの封止材や屋外で使用されるシートなど、さまざまな用途に使用されている。
【0003】
例えば太陽電池モジュールでは、従来から価格、加工性、耐湿性等の観点から、封止材として、酢酸ビニル含量の高いエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)に有機過酸化物を配合して架橋構造を付与した組成物が採用されている(たとえば、特許文献1参照)。ところが、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系樹脂は、長期にわたって使用されると黄変、亀裂入り、発泡等の劣化・変質により耐湿性が低下して、太陽電池セルの腐食等による発電量の低下を招いていた。これらはEVA系樹脂が加水分解性の高いエステル構造を有しているために、太陽光や水分の影響を受け易いものと考えられている。
【0004】
そのため、太陽電池モジュールの封止材では、結晶化度が40%以下の非晶性又は低結晶性のα−オレフィン系共重合体からなるものが提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2には、低結晶性のエチレン・ブテン共重合体に、有機過酸化物を混合し、異形押出機を用いて加工温度100℃でシートを作製することが例示されているが、加工温度が低いため、生産性が高められないという問題がある。
また、太陽電池モジュールの封止材として、(a)約0.90g/cc未満の密度、(b)ASTM D−882−02により測定して約150メガパスカル(mPa)未満の2%割線係数、(c)約95℃未満の融点、(d)ポリマーの重量に基づいて少なくとも約15および約50重量%未満のα−オレフィン含量、(e)約−35℃未満のTg、ならびに(f)少なくとも約50のSCBDI、の1以上の条件を満たすポリオレフィンコポリマーを含むポリマー材料が提案されている(特許文献3参照)。
太陽電池モジュールでは、太陽電池素子の薄膜化に伴い、太陽電池封止材も薄膜化する傾向がある。その際、太陽電池上部保護材側または下部保護材側から衝撃が加わると、配線が断線しやすいことが問題となっていた。それを改良するため、封止材の剛性を高くすることが求められるが、特許文献3のポリマー材料では剛性を高くすると、架橋効率が悪くなることが問題となっていた。
【0005】
一方、廃棄物処分場では、処分場の表面を完全に覆うように多数の遮水シートが敷設されている。遮水シートは、耐熱性を有するだけでなく、現場で取扱いやすいように柔軟性がなければならない。また、遮水シートを繋ぎあわせて大面積化するために、遮水シートを熱により融着させて一体化しており、この融着部分には遮水シートと全く同一の強度、遮水性および耐久性をもつことが要求される。
さらに、懸垂幕等の長期屋外掲示物に適した看板用途として、繊維編織布を基布とし、その少なくとも一方の面に、ポリエチレン系樹脂組成物の層を積層したターポリンが使用されている。ターポリンは、繊維編織布に比べ強度があり雨に強い為、看板用途だけではなく、工事現場のシートや農畜産業のハウス、一般テント素材などとしても使用されている。したがって、ターポリンにも、遮水シートと同じく強度、遮水性および耐久性が要求される。
しかしながら、前記のような従来の技術では、生産性、耐熱性、透明性、柔軟性に優れる押出成形用樹脂組成物は得られず、十分な性能を有する遮水シートやターポリンは開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−023870号公報
【特許文献2】特開2006−210906号公報
【特許文献3】特表2010−504647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エチレン・α−オレフィン共重合体と有機過酸化物とを含有し、太陽電池封止材、遮水シート、ターポリンなどの生産性に優れ、耐熱性、透明性、柔軟性に優れる押出成形用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、樹脂成分としてメタロセン触媒などを用いて重合された特定の性状を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を選択し、これに有機過酸化物を配合することにより、耐熱性、透明性、柔軟性に優れる押出成形用樹脂組成物が得られ、これを用いれば太陽電池モジュールの封止材、遮水シート、ターポリンなどの生産性が大幅に向上するとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とする押出成形用樹脂組成物が提供される。
成分(A):下記(a1)〜(a5)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)密度が0.860〜0.920g/cm
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下
(a3)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10s−1での溶融粘度(η)が9.0×10poise以下
(a4)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10−1での溶融粘度(η)が1.8×10poise以下
(a5)ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)が下記式(a)を満たす。
式(a): N ≧ −0.67×E+53
( ただし、Nは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの分岐数であり、Eは、ISO1184−1983に準拠して測定した、シートの引張弾性率である。)
成分(B):有機過酸化物
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、(a5)ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)が、下記式(a’)を満たすことを特徴とする押出成形用樹脂組成物が提供される。
式(a’): −0.67×E+80 ≧ N ≧ −0.67×E+53
( ただし、Nは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの分岐数であり、Eは、ISO1184−1983に準拠して測定した、シートの引張弾性率である。)
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、下記の成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とする押出成形用樹脂組成物が提供される。
成分(A):下記(a1)〜(a4)及び(a6)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)密度が0.860〜0.920g/cm
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下
(a3)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10s−1での溶融粘度(η)が9.0×10poise以下
(a4)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10−1での溶融粘度(η)が1.8×10poise以下
(a6)フローレシオ(FR):190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)が7.0未満
成分(B):有機過酸化物
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、さらに、特性(a6)のフローレシオ(FR)が、5.0〜6.2であることを特徴とする押出成形用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.2〜5重量部であることを特徴とする押出成形用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、さらに、下記の成分(C)を含有することを特徴とする押出成形用樹脂組成物が提供される。
成分(C):ヒンダードアミン系光安定化剤
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、成分(A)が、エチレン・1−ブテン共重合体、又はエチレン・1−ヘキセン共重合体であることを特徴とする押出成形用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、押出成形用樹脂組成物からなる太陽電池封止材が提供される。
【0014】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、押出成形用樹脂組成物を、シート状に押出成形してなる遮水シートが提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、押出成形用樹脂組成物を用いて、基布の少なくとも一方の面に積層してなるターポリンが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の押出成形用樹脂組成物は、特定の密度、分子量分布、溶融粘度特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とし、これに有機過酸化物を配合しているため、この樹脂組成物をシート化する際には、エチレン・α−オレフィン共重合体が比較的短時間で架橋して、剛性と架橋効率とのバランスもよく、太陽電池封止材としてモジュールの形成が容易であり、製造コストを低減することができる。また、得られた太陽電池モジュールは、透明性、柔軟性、耐候性等に優れるものとなり、長期間安定した変換効率を維持することが期待できる。
さらに、本発明の押出成形用樹脂組成物は、柔軟性、耐候性等に優れるために、廃棄物処分場で、処分場の表面を完全に覆う遮水シートとして現場で取扱いやすく、遮水シートが相互に重なる部分は、熱により融着させて一体化できるので、この融着部分も遮水シートと全く同一の強度、遮水性および耐久性をもつものとなる。また、押出成形用樹脂組成物が透明性を有するために布地の色彩が生かされたターポリン(看板)としてだけでなく、耐久性があるのでテントなどとして屋外に長期間設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
1.押出成形用樹脂組成物
本発明の押出成形用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)は、下記のエチレン・α−オレフィン共重合体成分(A)及び有機過酸化物成分(B)を含有することを特徴とする。
【0017】
(1)成分(A)
本発明に用いる成分(A)は、下記(a1)〜(a4)の特性を有し、かつ必要に応じて(a5)及び/又は(a6)の特性を有したエチレン・α−オレフィン共重合体である。
【0018】
(a1)密度が0.860〜0.920g/cm
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下
(a3)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10s−1での溶融粘度(η)が9.0×10poise以下
(a4)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10−1での溶融粘度(η)が1.8×10poise以下
【0019】
(a5)ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)が下記式(a)を満たす。
式(a): N ≧ −0.67×E+53
( ただし、Nは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの個数であり、Eは、ISO1184−1983に準拠して測定した、シートの引張弾性率である。)
(a6)フローレシオ(FR):190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)が7.0未満
【0020】
(i)成分(A)のモノマー構成
本発明に使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分としたエチレンとα−オレフィンのランダム共重合体である。
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。かかるエチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1共重合体等が挙げられる。なかでも、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体が好ましい。また、α−オレフィンは1種または2種以上の組み合わせでもよい。2種のα−オレフィンを組み合わせて三元共重合体とする場合は、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン三元共重合体、エチレン・1−ブテン・1−ヘキセン三元共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン三元共重合体、エチレン・1−ブテン・1−オクテン三元共重合体等が挙げられる。
【0021】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、そのα−オレフィンの含有量が5〜40重量%であり、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは15〜30重量%である。この範囲であれば柔軟性と耐熱性が良好である。
ここでα−オレフィンの含有量は、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製 JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0022】
(ii)成分(A)の重合触媒及び重合法
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、チーグラー触媒、バナジウム触媒又はメタロセン触媒等、好ましくはバナジウム触媒又はメタロセン触媒、より好ましくはメタロセン触媒を使用して製造することができる。製造法としては、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等が挙げられる。
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。市販品としては、日本ポリエチレン社製のハーモレックス(登録商標)シリーズ、カーネル(登録商標)シリーズ、プライムポリマー社製のエボリュー(登録商標)シリーズ、住友化学社製のエクセレン(登録商標)GMHシリーズ、エクセレン(登録商標)FXシリーズが挙げられる。バナジウム触媒としては、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウムハライドとを触媒成分とする触媒が挙げられる。
【0023】
(iii)成分(A)の特性
(a1)密度
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、密度が0.860〜0.920g/cmであり、好ましくは0.870〜0.915g/cm、さらに好ましくは0.875〜0.910g/cmである。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が0.860g/cm未満では、加工後のシートがブロッキングしてしまい、密度が0.920g/cmを超えると加工後のシートの剛性が高すぎて、取り扱い性に欠けるものとなる。
【0024】
ポリマーの密度は、例えばα−オレフィン含有量、重合温度、触媒量などを適宜調節することで調節できる。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(23℃)。
【0025】
(a2)Z平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、ゲルパーミエーションクロマグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下であり、好ましくは2.0〜5.0である。Mz/Mnが8.0を超えると透明性が悪化する。Mz/Mnを所定の範囲に調整するには、適当な触媒系を選択する方法等によることができる。
【0026】
なお、Mz/Mnの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行い、測定条件は次のとおりである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0027】
なお、Z平均分子量(Mz)は、高分子量成分の平均分子量への寄与が大きいので、Mz/Mnは、Mw/Mnに比べて高分子量成分の存在を確認しやすい。高分子量成分は、透明性に影響を与える要因であり、高分子量成分が多いと透明性は悪化する。また、架橋効率も悪化する傾向が見られる。よって、Mz/Mnは小さい方が好ましい。
【0028】
(a3)、(a4)溶融粘度
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、100℃で測定した、せん断速度が特定の範囲でなければならない。100℃で測定した、せん断速度に着目するのは、当該温度での組成物を製品化する際の製品への影響を推定するためである。
すなわち、せん断速度2.43×10sec−1での溶融粘度(η)が9.0×10poise以下、好ましくは8.0×10poise以下、より好ましくは7.0×10poise以下、さらに好ましくは5.5×10poise以下、さらにまた好ましくは5.0×10poise以下、特に好ましくは3.0×10poise以下、最も好ましくは2.5×10poise以下である。溶融粘度(η)は、1.0×10poise以上、さらには1.5×10poise以上であることが好ましい。溶融粘度(η)がこの範囲にあれば低温で低速成形時の生産性がよく、製品への加工に問題が生じない。
溶融粘度(η)は、エチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)や分子量分布などにより調整可能である。メルトフローレートの値を高めると溶融粘度(η)は小さくなる傾向がある。分子量分布など他の性状が異なれば、大小関係が逆転することもありうるが、たとえば、好ましくはMFR(JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重))が5〜50g/10分であり、より好ましくは10〜40g/10分、さらに好ましくは15〜35g/10分、最も好ましくは25〜35g/10分とすることで、溶融粘度(η)を所定の範囲に収めやすい。
【0029】
さらに、本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、100℃で測定した、せん断速度2.43×10sec−1での溶融粘度(η)が、1.8×10poise以下、好ましくは1.7×10poise以下、より好ましくは1.5×10poise以下、さらに好ましくは1.4×10poise以下、最も好ましくは1.3×10poise以下である。溶融粘度(η)は、5.0×10poise以上、さらには8.0×10poise以上であることが好ましい。溶融粘度(η)がこの範囲にあれば低温で低速成形時の生産性がよく、製品への加工に問題が生じない。
ここで、溶融粘度(η)、(η)は、径1.0mm、L/D=10のキャピラリーを有するキャピラリーレオメーターを用いて得られる測定値である。
2種類のせん断速度を設けるのは、低速成形時、高速成形時の製品の表面への影響が小さく、それぞれの成形速度領域で同様の製品が得られるようにするためである。
また、本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、ηとηとの比(η/η)が、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.2以下、さらに好ましくは4.0以下、さらにまた好ましくは3.0以下である。ηとηとの比(η/η)は、1.1以上が好ましく、さらには1.5以上であることが好ましい。(η/η)が上記範囲であれば、低速成形時、高速成形時のシート表面への影響が少なく好ましい。
【0030】
(a5)ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)と、引張弾性率(E)が下記式(a)を満たしていることが好ましい。
式(a): N ≧ −0.67×E+53
( ただし、Nは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの分岐数であり、Eは、ISO1184−1983に準拠して測定した、シートの引張弾性率である。)
ここで、ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)は、例えばE. W. Hansen, R. Blom, and O. M. Bade, Polymer, 36巻 4295頁(1997年)を参考にC−NMRスペクトルから算出することができる。
【0031】
太陽電池モジュールでは、太陽電池素子の薄膜化に伴い、太陽電池封止材も薄膜化する傾向がある。薄膜化した太陽電池封止材では、上部保護材または下部保護材から衝撃が加わると、配線が断線しやすいため、封止材の剛性を高くすることが求められる。剛性を高くすると、架橋効率が悪くなるので、高分子鎖の分岐度がある程度高い共重合体を用いて、架橋前の共重合体の流動性を向上させ、成形性に優れた材料として使用する必要がある。本発明では、エチレン・α−オレフィン共重合体のコモノマーによる分岐数(N)が式(a)を満たすポリマー構造となっているので、剛性と架橋効率のバランスが良好である。
本発明に係るエチレン・α−オレフィン共重合体は、上述した様に、触媒を用いた共重合反応により製造できるが、共重合させる原料単量体の組成比や使用する触媒の種類を選択することにより、その高分子鎖中の分岐度を容易に調整することが可能である。本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体が式(a)を満たすためには、エチレン・α−オレフィン共重合体中のコモノマーは、プロピレン、1−ブテン、又は1−ヘキセンから選択するのが好ましい。また、気相法、高圧法を用いて製造するのが好ましく、特に、高圧法を選択するのがより好ましい。
より具体的にはEを固定してNを増減させるためには、主にエチレンと共重合させるコモノマーの炭素数を変更する方法によることができる。エチレンに対して1−ブテン又は1−ヘキセンの量が60〜80wt%となるように混合し、メタロセン触媒を使用して、重合温度130〜200℃で反応させエチレン・α−オレフィン共重合体を製造することが好ましい。これにより、エチレン・α−オレフィン共重合体の分岐数Nが適度に調整でき、得られるシートの引張弾性率Eが、40MPa以下となって、式(a)が示す範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0032】
本発明では、特性(a5)の関係式が、下記式(a’)で示されることが好ましい。また、特性(a5)の関係式は、下記式(a’’)であることがより好ましい。
式(a’): −0.67×E+80 ≧ N ≧ −0.67×E+53
式(a’’): −0.67×E+75 ≧ N ≧ −0.67×E+54
【0033】
(a6)フローレシオ(FR)
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、フローレシオ(FR)、すなわち190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)が7.0未満であることが好ましい。なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS−K7210−1999に準拠して測定した値である。
【0034】
FRは、エチレン・α−オレフィン共重合体の分子量分布、長鎖分岐の量と相関が深いことが知られている。本発明では、上記(a1)〜(a4)の条件を満たすポリマーの中でも、190℃における10kg荷重でのMFR測定値(I10)と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値(I2.16)との比(I10/I2.16)が7.0未満であるものを使用する。このような長鎖分岐に特徴があるポリマー構造となっている共重合体を用いることで、剛性と架橋効率のバランスが良好なものとなる。これに対して、FRが7.0以上であると、太陽電池封止材として架橋する際の架橋効率が悪くなる傾向にある。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体のFRは、7.0未満であり、好ましくは、6.5未満、より好ましくは、6.3未満である。ただし、FRが5.0未満であると、太陽電池封止材として十分な剛性が得られにくくなることがある。特性(a6)のフローレシオ(FR)は、5.0〜6.2であることが最も好ましい。
【0035】
(4)成分(B)
本発明の樹脂組成物に用いる成分(B)は、有機過酸化物であり、主に成分(A)を架橋するために用いられる。
有機過酸化物としては、分解温度(半減期が1時間である温度)が70〜180℃、とくに90〜160℃の有機過酸化物を用いることができる。このような有機過酸化物として、例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。
【0036】
(5)成分(B)の配合割合
成分(B)の配合割合は、成分(A)を100重量部としたときに、好ましくは、0.2〜5重量部であり、より好ましくは、0.5〜3重量部、さらに好ましくは、1〜2重量部である。成分(B)の配合割合が上記範囲よりも少ないと、架橋しないかまたは架橋に時間がかかる。また、上記範囲よりも大きいと、分散が不十分となり架橋度が不均一になりやすい。
【0037】
(6)ヒンダードアミン系光安定化剤(C)
本発明において、樹脂組成物にはヒンダードアミン系光安定化剤を配合することが好ましい。ヒンダードアミン系光安定化剤は、ポリマーに対して有害なラジカル種を補足し、新たなラジカルを発生しないようにするものである。ヒンダードアミン系光安定化剤には、低分子量のものから高分子量のものまで多くの種類の化合物があるが、従来公知のものであれば特に制限されずに用いることができる。
【0038】
低分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロパーオキサイド及びオクタンの反応生成物(分子量737)70重量%とポリプロピレン30重量%からなるもの;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(分子量685);ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート混合物(分子量509);ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量481);テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量791);テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(分子量847);2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900);1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物(分子量900)などが挙げられる。
【0039】
高分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量2,000〜3,100);コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(分子量3,100〜4,000);N,N’,N”,N”‘−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2,286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2,600〜3,400)、並びに、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の環状アミノビニル化合物とエチレンとの共重合体などが挙げられる。上述したヒンダードアミン系光安定化剤は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
これらの中でも、ヒンダードアミン系光安定化剤としては、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](分子量2,000〜3,100);コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(分子量3,100〜4,000);N,N’,N”,N”‘−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2,286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2,600〜3,400)環状アミノビニル化合物とエチレンとの共重合体が好ましい。これらを用いれば、製品使用時に経時でのヒンダードアミン系光安定剤のブリードアウトを妨げることができる。また、ヒンダードアミン系光安定化剤は、融点が、60℃以上であるものを用いるのが、組成物の作製しやすさの観点から好ましい。
【0041】
本発明において、ヒンダードアミン系光安定化剤の含有量は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して、0.01〜2.5重量部とし、好ましくは0.01〜1.0重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、0.01〜0.2重量部、最も好ましくは0.03〜0.1重量部とするのがよい。前記含有量を0.01重量部以上とすることにより安定化への効果が十分に得られ、2.5重量部以下とすることによりヒンダードアミン系光安定化剤の過剰な添加による樹脂の変色を抑えることができる
また、本発明において、前記有機過酸化物(B)と前記ヒンダードアミン系光安定化剤(C)との重量比(B:C)を、1:0.1〜1:10とし、好ましくは1:0.2〜1:6.5とする。これにより、樹脂の黄変を顕著に抑制することが可能となる。
【0042】
(7)架橋助剤
また、本発明の樹脂組成物には架橋助剤を配合することができる。架橋助剤は、架橋反応を促進させ、エチレン・α−オレフィン共重合体の架橋度を高めるのに有効であり、その具体例としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物を例示することができる。
より具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。架橋助剤は、成分(A)100重量部に対し、0〜5重量部程度の割合で配合することができる。
【0043】
(8)紫外線吸収剤
本発明の樹脂組成物には、紫外線吸収剤を配合することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0044】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、などを挙げることができる。またトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
これら紫外線吸収剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対し0〜2.0重量部配合し、好ましくは0.05〜2.0重量部、より好ましくは0.1〜1.0重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部、最も好ましくは0.2〜0.4重量部配合するのがよい。
【0045】
(9)他の添加成分
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン系樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、着色剤、分散剤、充填剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を挙げることができる。
また、本発明の樹脂組成物には、柔軟性等を付与するため、本発明の目的を損なわない範囲で、チーグラー系又はメタロセン系触媒によって重合された結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体及び/又はEBR、EPR等のエチレン・α−オレフィンエラストマー若しくはSEBS、水添スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー等のゴム系化合物を3〜75重量部配合することもできる。さらに、溶融張力等を付与するため、高圧法低密度ポリエチレンを3〜75重量部配合することもできる。
【0046】
本発明の押出成形用樹脂組成物は、各種用途に利用でき用途によって限定されるものではないが、耐熱性、透明性、柔軟性等に優れるため、屋外での使用に特に適しており、例えば太陽電池封止材、遮水シート、ターポリン等に好適である。
【0047】
2.太陽電池封止材
本発明の太陽電池封止材(以下、単に封止材ともいう)は、上記樹脂組成物をペレット化し、あるいはシート化したものである。
【0048】
この太陽電池封止材を用いれば、太陽電池素子を上下の保護材とともに固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば上部透明保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの、下部基板保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部透明保護材を形成させるような構成のもの、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作成したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
【0049】
太陽電池素子としては、特に制限されず、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。
【0050】
太陽電池モジュールを構成する上部保護材としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などを例示することができる。下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層の保護材を例示することができる。このような上部及び/又は下部の保護材には、封止材との接着性を高めるためにプライマー処理を施すことができる。
【0051】
本発明の樹脂組成物を太陽電池用封止材に用いる場合、樹脂組成物は、上部保護材や太陽電池素子との接着力を向上させるために、シランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
シランカップリング剤としては、例えばγ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロルシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましくは、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
これらのシランカップリング剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して0〜5重量部使用し、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部、さらに好ましくは0.1〜2重量部、特に好ましくは0.5〜1重量部、最も好ましくは0.05〜1重量部で使用される。
【0052】
本発明の太陽電池封止材は、ペレットとして使用してもよいが、通常、0.1〜1mm程度の厚みのシート状に成形して使用される。0.1mmよりも薄いと強度が小さく、接着が不十分となり、1mmよりも厚いと透明性が低下して問題になる場合がある。好ましい厚さは、0.1〜0.8mmである。
シート状太陽電池封止材は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機などを使用する公知のシート成形法によって製造することができる。例えばエチレン・α−オレフィン共重合体に、架橋剤を添加し、必要に応じて、ヒンダードアミン系光安定化剤、さらには架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤を予めドライブレンドしてT−ダイ押出機のホッパーから供給し、80〜150℃の押出温度において、シート状に押出成形することによって得ることができる。これらドライブレンドに際して、一部又は全部の添加剤は、マスターバッチの形で使用することができる。またT−ダイ押出やカレンダー成形において、予めエチレン・α−オレフィン共重合体に一部又は全部の添加剤を、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて溶融混合して得た樹脂組成物を使用することもできる。
【0053】
太陽電池モジュールを製造するに当たっては、本発明の封止材のシートを予め作っておき、封止材の樹脂組成物が溶融する温度、例えば150〜200℃で圧着するという方法によって、前記のような構成のモジュールを形成することができる。
【0054】
一方、太陽電池モジュールを製造する際、有機過酸化物が実質的に分解せず、かつ本発明の封止材料が溶融するような温度で、太陽電池素子や保護材に該封止材を仮接着し、次いで昇温して充分な接着とエチレン・α−オレフィン共重合体の架橋を行うこともできる。この場合は、封止材層の融点(DSC法)が40℃以上、150℃の貯蔵弾性率が10Pa以上の耐熱性が良好な太陽電池モジュールを得るために、封止材層におけるゲル分率(試料1gをキシレン100mlに浸漬し、110℃、24時間加熱した後、20メッシュ金網で濾過し未溶融分の質量分率を測定)が50〜98%、好ましくは70〜95%程度になるように架橋するのがよい。
【0055】
なお、前記特許文献2では、非晶性又は低結晶性エチレン・ブテン共重合体100重量部に、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを1.5重量部および架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを2重量部混合した混合物を、異型押出機を用いて加工温度100℃で厚み0.5mmのシートを作製している(実施例3)。しかしながら、このような組成物を選択したのでは、加工温度が低いため十分な生産性を得ることはできない。
【0056】
太陽電池素子の封止作業では、太陽電池素子を上記本発明の封止材でカバーした後、有機過酸化物が分解しない程度の温度に数分から10分程度加熱して仮接着し、次に、オーブン内において有機過酸化物が分解する150〜200℃程度の高温で5分から30分間加熱処理して接着させる等の方法がある。
【0057】
3.遮水シート
本発明の遮水シートは、廃棄物処分場の敷設現場で使用され、廃棄物の表面を完全に覆うものである。
【0058】
本発明の遮水シートは、その製造方法によって特に限定されず、インフレーション法、Tダイ法等により製造される。すなわち、インフレーション法では厚みのある幅広のシートを高速で成形することができ、経済性に優れるものとなる。また、該遮水シートの厚みは一般的には200μm以上、特に300μm以上が望ましく、超柔軟性グレードとしては、ヤング率が約200N/mm以下、より好ましくは100N/mm以下に調整することが望ましい。
【0059】
本発明の遮水シートは、耐候性を向上させる目的で、前記樹脂成分に100重量部に対して、カーボンブラックを0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部配合することが好ましい。上記カーボンブラックとしては、好ましくはファーネスブラックで、平均粒子径が1〜200mμ、好ましくは3〜100mμ、さらに好ましくは5〜50mμの範囲のものを選択することが望ましい。該カーボンブラックの粒子径・配合量が前記範囲以外であると耐候性の効果が小さくなり、あるいは遮水シートの性能に支障をきたす虞が生じる。
【0060】
本発明の遮水シートを取り扱う場合には、例えば巻回した状態で廃棄処分場の敷設現場まで運び、処分場内でシートを展開し、処分場の表面を完全に覆うように多数の遮水シートを敷設した後、それらの遮水シートを相互に接合する。
接合方法は、任意の公知技術を使用することができる。例えば、接着剤による接合、粘着剤性シーリング材と高熱を利用した熱板式接合、シート同志を高熱で溶融して接合する熱風溶着法、溶接棒を用いる溶接式溶着法などが挙げられるが、特に熱風溶着法および溶接式融着法が好ましい。また、溶接式法により接合する場合には、遮水シートを相互に重ね、重なる部分に遮水シートと同一の材質からなる樹脂を溶接棒として利用し、熱により融着させて一体化する。この方法によれば、接合部の劣化を生じるような異材質の溶剤や接着剤を使用しないため、融着部分は遮水シートと全く同一の強度、遮水性および耐久性をもつことになる。本発明の遮水シートは、熱により容易かつ完全に接合を行うことができるため有利である。
【0061】
本発明の遮水シートは、前記の樹脂成分、もしくは樹脂組成物にカーボンブラックを配合し、そのまま用いることができるが、その性能を逸脱しない範囲内で、天然ゴム、各種合成ゴム、熱可塑性エラストマー、あるいは粘着付与材、架橋剤、さらには炭酸カルシウム、タルク、シリカ、金属繊維、炭素繊維等の各種フィラーや酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、着色剤、架橋剤などを必要に応じて配合してもよい。
【0062】
4.ターポリン
本発明のターポリンは、繊維編織布を基布とし、その少なくとも一方の面に、好ましくは両面に、前記エチレン系共重合体組成物の層が積層されたものであり、看板やテントなどとして使用されるものである。テントは、展示会や各種イベントなどだけでなく、建築資材置き場や農機具置き場でもカバーとして使用される。
【0063】
基布へのエチレン系共重合体組成物の積層方法としては、公知の方法、例えば、カレンダー加工法、押出ラミネート加工法、ドライラミネート加工法、及び含浸法等を用いることができる。中でも、カレンダー加工法が好ましい。
【0064】
具体的には、本発明のターポリンは、前記で調製された樹脂組成物を、カレンダーロールによりシート状に成形し基布に溶融積層するか、Tダイを備えたシート成形機よりシート状に溶融押出し、基布に押出ラミネートして積層するか、成形したシートと基布とを接着剤を用いてドライラミネートして積層する等により製造される。
尚、その際、基布の一方の面又は両面への溶融積層における樹脂組成物の温度は、例えばカレンダー加工法の場合、通常、100〜160℃程度とされ、また、樹脂組成物層の厚さは、一表面当たり100〜1000μm程度とされる。
【0065】
また、基布の繊維編織布としては、従来、この種の基布に用いられているものでよく、具体的には、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアクリル繊維等の合成繊維、或いは、木綿、麻等の天然繊維等の、平織、綾織、朱子織等の織布、或いは編布が挙げられる。
さらに、繊維の太さは、200〜1000デニール程度で、例えば平織の場合、打ち込み本数は、(10〜30)×(15〜35)/インチ程度である。これらの繊維編織布は、幅・長さが0.5〜5m程度、厚さが0.2〜1mm程度のものが一般に使用される。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例によって、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
【0067】
1.樹脂物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR):エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS−K6922−2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:前述の通り、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS−K6922−2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
(3)Mz/Mn:前述の通り、GPCにより測定した。
(4)溶融粘度:JIS−K7199−1999に準拠して、東洋精機製作所製キャピログラフ1−Bを用い、設定温度:100℃、D=1mm、L/D=10のキャピラリーを用いて、せん断速度2.43×10sec−1での溶融粘度(η)、せん断速度2.43×10sec−1での溶融粘度(η)の測定を行った。
(5)分岐数:ポリマー中の分岐数(N)は、NMRにより次の条件で測定し、コモノマー量は、主鎖及び側鎖の合計1000個の炭素あたりの個数で求めた。
装置 : ブルカー・バイオスピン(株) AVANCE III cryo−400MHz
溶媒 : o−ジクロロベンゼン/重化ブロモベンゼン = 8/2混合溶液
<試料量>
460mg/2.3ml
<C−NMR>
・Hデカップル、NOEあり
・積算回数:256scan
・フリップ角:90°
・パルス間隔20秒
・AQ(取り込み時間)=5.45s D1(待ち時間)=14.55s
(6)FR:JIS−K7210−1999に準拠し、190℃、10kg荷重の条件下で測定したMFR(I10)と、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定したMFR(I2.16)との比(I10/I2.16)を計算し、FRとした。
【0068】
2.押出成形物(シート)の評価方法
(1)HAZE
厚み0.7mmのプレスシートを用いて、JIS−K7136−2000に準拠して測定した。プレスシート片を関東化学製特級流動パラフィンを入れたガラス製セルにセットし測定した。プレスシートは、160℃の条件で熱プレス機に30分間保管し、架橋させ準備した。HAZE値は、小さいほど良い。
【0069】
(2)光線透過率
厚み0.7mmのプレスシートを用いて、JIS−K7361−1997に準拠して測定した。プレスシート片を関東化学製特級流動パラフィンを入れたガラス製セルにセットし測定した。プレスシートは、160℃の条件で熱プレス機に30分間保管し、架橋させ準備した。
光線透過率は、80%以上であり、好ましくは、85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0070】
(3)引張弾性率
厚み0.7mmのプレスシートを用いて、ISO1184−1983に準拠して測定した。尚、引張速度1mm/min、試験片幅10mm、つかみ具間を100mmとし、伸び率1%のときの引張弾性率を求めた。この値が小さい程、柔軟性に優れていることを示す。
(4)耐熱性
160℃で30分架橋したシート及び150℃で30分架橋したシートのゲル分率で評価した。ゲル分率が高いほど架橋が進行しており、耐熱性が高いと評価できる。ゲル分率が70wt%のものを、耐熱性評価「○」とした。尚、ゲル分率は、当該シートを、約1gを切り取り精秤して、キシレン100ccに浸漬し110℃で24時間処理し、ろ過後残渣を乾燥し精秤して、処理前の重量で割りゲル分率を算出する。
【0071】
3.使用原料
(1)成分(A): エチレン・α−オレフィン共重合体
下記の<製造例1>で重合したエチレンとヘキセン−1の共重合体(PE−1)、<製造例2>で重合したエチレンとブテン−1の共重合体(PE−2)、及び市販のエチレン・α−オレフィン共重合体(PE−3)(PE−6)(PE−7)、<製造例3、4>で重合したエチレンとヘキセン−1の共重合体(PE−4)(PE−5)を用いた。物性を表1に示す。
(2)有機過酸化物:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富社製、ルペロックス101)
(3)ヒンダードアミン系光安定化剤(a):ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(チバ・ジャパン社製、CHIMASSORB 2020FDL)
(4)ヒンダードアミン系光安定化剤(b):コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(チバ・ジャパン社製、TINUVIN 622LD)
(5)紫外線吸収剤:2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(サンケミカル社製、CYTEC UV531)
【0072】
<製造例1>
(i)触媒の調製
エチレンとヘキセン−1の共重合体を製造するための触媒は、特表平7−508545号公報に記載された方法で調製した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0mモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
(ii)重合
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を用い、反応器内の圧力を130MPaに保ち、エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が75重量%となるように40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記触媒溶液を連続的に供給し、重合温度が150℃を維持するようにその供給量を調整した。1時間あたりのポリマー生産量は約4.3kgであった。反応終了後、1−ヘキセン含有量が24重量%、MFRが35g/10分、密度が0.880g/cm、Mz/Mnが3.7であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−1)を得た。
また、PE−1を160℃−0kg/cmの条件で、3分予熱後、160℃−100kg/cm加圧の条件で、5分加圧、その後、30℃に設定された冷却プレスに100kg/cm加圧の条件で、10分間冷却することで、厚み0.7mmのプレスシートを得た。その引張弾性率を、ISO1184−1983に準拠し、測定を行った結果、17MPaであった。
このエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−1)の特性を表1に示す。
【0073】
<製造例2>
表1に示す組成、密度、および溶融粘度となるように、製造例1における重合時のモノマー組成、重合温度を変更して重合を行った。反応終了後、1−ブテン含有量=35重量%、MFR=33g/10分、密度=0.870g/cm、Mz/Mn=3.5であるエチレン・1−ブテン共重合体(PE−2)を得た。製造例1と同様に引張弾性率測定を行った結果、8MPaであった。このエチレン・1−ブテン共重合体(PE−2)の特性を表1に示す。
【0074】
<製造例3>
製造例1において、重合時の1−ヘキセンの組成を74重量%にし、重合温度を135℃に代えた以外は製造例1と同様の製法で重合を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約3.3kgであった。反応終了後、1−ヘキセン含有量=24重量%、MFR=8g/10分、密度=0.880g/cm、Mz/Mn=3.7であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−3)を得た。製造例1と同様に引張弾性率測定を行った結果、17MPaであった。このエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−3)の特性を表1に示す。
【0075】
<製造例4>
製造例1において、重合時の1−ヘキセンの組成を71重量%にし、重合温度を157℃に代えた以外は製造例1と同様の製法で重合を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約4.0kgであった。反応終了後、1−ヘキセン含有量=19重量%、MFR=30g/10分、密度=0.890g/cm、Mz/Mn=3.7であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−4)を得た。製造例1と同様に引張弾性率測定を行った結果、34MPaであった。このエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−4)の特性を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
(実施例1)
エチレンとヘキセン−1の共重合体(PE−1)100重量部に対して、有機過酸化物として、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富社製、ルペロックス101)を1.5重量部と、ヒンダードアミン系光安定化剤(a)として、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(チバ・ジャパン社製、CHIMASSORB 2020FDL)0.2重量部配合した。これを十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いて設定温度130℃、押出量(17kg/時)の条件でペレット化した。
得られたペレットを、160℃−0kg/cmの条件で、3分予熱した後、160℃−100kg/cmの条件で27分加圧(160℃で30分間プレス成形)し、その後、30℃に設定された冷却プレスに100kg/cmの加圧の条件で、10分間冷却することで、厚み0.7mmのシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。
【0078】
(実施例2)
実施例1において、PE−1に替えて、PE−2を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。
【0079】
(実施例3)
実施例1において、ヒンダードアミン系光安定化剤(b)としてコハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物(チバ・ジャパン社製、TINUVIN 622LD)を0.05重量部用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。
【0080】
(実施例4)
実施例3において、PE−1に替えて、PE−2を用いた以外は、実施例3と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。
【0081】
(実施例5)
実施例3において、PE−1に替えて、PE−4を用いた以外は、実施例3と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。
【0082】
(実施例6)
実施例3において、PE−1に替えて、PE−5を用いた以外は、実施例3と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。
【0083】
(実施例7)
実施例3において、さらに、紫外線吸収剤として、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(サンケミカル社製 CYTEC UV531)0.3部を添加した以外は、実施例1と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性、接着性を測定、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0084】
(実施例8)
実施例4において、さらに、紫外線吸収剤として、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(サンケミカル社製 CYTEC UV531)0.3部を添加した以外は、実施例1と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性、接着性を測定、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0085】
(比較例1)
エチレンとヘキセン−1の共重合体(PE−1)の代わりに、PE−3(エチレン・1−ブテン共重合体、三井化学社製 タフマーA4085S)を用いた以外は、実施例1と同様のペレット化を試みた。ところが、樹脂温度がせん断発熱により上昇して有機化酸化物の分解速度が速くなり、架橋が進行してペレットが得られなかった。
【0086】
(比較例2)
比較例1において、押出機の条件を設定温度100℃、押出量9.7kg/時に変えてペレット化を行い、さらにシート化して得られたシートの評価を行った。結果を表2に示す。押出量を高くすることができず、生産性が劣る結果となった。
【0087】
(比較例3)
PE−1の代わりに、PE−6(エチレン・1−オクテン共重合体、ダウ・ケミカル社製 ENGAGE8200)を用いた以外は、実施例1と同様のペレット化を試みた。ところが、樹脂温度がせん断発熱により上昇して有機過酸化物の分解速度が速くなり、架橋が進行してペレットが得られなかった。
【0088】
(比較例4)
PE−1の代わりに、PE−7(エチレン・1−オクテン共重合体、ダウ・ケミカル社製 ENGAGE8400)を用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。架橋効率が悪く耐熱性が劣る結果となった。
【0089】
【表2】

【0090】
「評価」
この結果、表2から明らかなように、実施例1〜8では、本発明の樹脂組成物を用いているために、これを押出成形して得られたシートは、HAZEが小さく、光線透過率が大きく、耐熱性、剛性と架橋効率のバランスも優れている。
これに対して、比較例1では、本発明とは異なり、溶融粘度が外れるエチレン・1−ブテン共重合体を含む樹脂組成物を用いているために、ペレットが得られなかった。比較例2では、押出温度を下げたためにシートを成形できたが、実施例1よりも大幅に生産性が低下した。また、得られたシートは、耐熱性が優れているものの、HAZEが大きいものとなった。比較例3では、溶融粘度が本発明から外れるエチレン・1−オクテン共重合体を含む樹脂組成物を用いたために、ペレットが得られなかった。比較例4では、式(a)及びFRが本発明から外れるエチレン・1−オクテン共重合体を含む樹脂組成物を用いたために、得られたシートは、架橋効率が悪く耐熱性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の押出成形用樹脂組成物は、透明性、柔軟性、剛性と架橋効率のバランス、耐候性等が要求される太陽電池封止材として利用される。また、柔軟性、耐候性等に優れ、廃棄物処分場で、処分場の表面を完全に覆う遮水シートとして、さらには、樹脂組成物が透明性を有するために布地の色彩が生かされるターポリン(看板)や、耐久性が必要なテント、IC(集積回路)の封止などとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とする押出成形用樹脂組成物。
成分(A):下記(a1)〜(a5)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)密度が0.860〜0.920g/cm
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下
(a3)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10s−1での溶融粘度(η)が9.0×10poise以下
(a4)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10−1での溶融粘度(η)が1.8×10poise以下
(a5)ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)が下記式(a)を満たす。
式(a): N ≧ −0.67×E+53
( ただし、Nは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの分岐数であり、Eは、ISO1184−1983に準拠して測定した、シートの引張弾性率である。)
成分(B):有機過酸化物
【請求項2】
(a5)ポリマー中のコモノマーによる分岐数(N)が、下記式(a’)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の押出成形用樹脂組成物。
式(a’): −0.67×E+80 ≧ N ≧ −0.67×E+53
( ただし、Nは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの分岐数であり、Eは、ISO1184−1983に準拠して測定した、シートの引張弾性率である。)
【請求項3】
下記の成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とする押出成形用樹脂組成物。
成分(A):下記(a1)〜(a4)及び(a6)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(a1)密度が0.860〜0.920g/cm
(a2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比(Mz/Mn)が8.0以下
(a3)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10s−1での溶融粘度(η)が9.0×10poise以下
(a4)100℃で測定した、せん断速度が2.43×10−1での溶融粘度(η)が1.8×10poise以下
(a6)フローレシオ(FR):190℃における10kg荷重でのMFR測定値であるI10と、190℃における2.16kg荷重でのMFR測定値であるI2.16との比(I10/I2.16)が7.0未満
成分(B):有機過酸化物
【請求項4】
特性(a6)のフローレシオ(FR)が、5.0〜6.2であることを特徴とする請求項3に記載の押出成形用樹脂組成物。
【請求項5】
成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、0.2〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の押出成形用樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、下記の成分(C)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の押出成形用樹脂組成物
成分(C):ヒンダードアミン系光安定化剤
【請求項7】
成分(A)が、エチレン・1−ブテン、又はエチレン・1−ヘキセン共重合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の押出成形用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の押出成形用樹脂組成物からなる太陽電池封止材。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の押出成形用樹脂組成物を、シート状に押出成形してなる遮水シート。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の押出成形用樹脂組成物を用いて、基布の少なくとも一方の面に積層してなるターポリン。




【公開番号】特開2010−254989(P2010−254989A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82657(P2010−82657)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】