説明

押出成形装置およびこれを用いた成形体の製造方法

【課題】切断面の変形、中空部やその開口の閉塞を生じさせることなく、成形体を製造できる押出成形装置およびこれを用いた成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】成形材料が押し出される押出孔303を有するダイと、該ダイにおける押出孔の開口304を有する表面に対して略平行に張りわたされた線材505を有し、線材505を開口304を横切らせることにより、押し出された成形材料を切断するための切断装置を備え、ダイにおける押出孔の開口304を有する表面は、開口304を含む第1の領域301と、第1の領域301に隣接する領域であって、第1の領域301に対して線材505の進行方向前方に配置された第2の領域302とを有し、第2の領域302における表面の高さが第1の領域301における表面の高さよりも低い押出成形装置およびこれを用いた成形体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形装置およびこれを用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、触媒、触媒担体、吸着材、乾燥材、調湿材等は、たとえば直径1〜10mm、長さ1〜20mm程度の柱状または筒状等に成形され、充填器や反応器などに充填されて種々の化学反応プロセスなどに使用されている。このような触媒等の成形体を製造するために、従来から押出成形法が採用されている。押出成形法は、用途等に応じて調製された成形材料をダイから押し出し、押し出された成形材料を所定の長さに切断して成形体を製造する方法である。
【0003】
特許文献1〜3には、成形品が連続的に押し出される押出孔を有するダイと、2点間に張りわたされた線材を有し、成形品の押出方向と直交する方向に回転または往復動して線材を押出孔の前面を横切らせ押出直後の成形品を切断する切断装置とを備える、連続的に押出成形品を製造することができる押出成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−313007号公報
【特許文献2】特開2002−67020号公報
【特許文献3】特開2002−79568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
押し出された成形材料を張りわたされた線材によって切断することにより成形体を製造する方法においては、線材が成形体の切断面端部に引っ掛かり、移動する線材に切断された成形体が追従し、成形体の切断面がダイ表面で引きずられ、その結果、成形体の切断面が変形したり、筒型成形体の場合には、中空部やその開口が閉塞する場合があった。このような閉塞部を有する筒型成形体を、たとえば反応器に充填して化学反応プロセスに適用すると、圧力損失の増加を招き、化学反応プロセスに支障をきたす。
【0006】
そこで本発明は、切断面の変形、中空部やその開口の閉塞を生じさせることなく、成形体を製造できる押出成形装置およびこれを用いた成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、成形材料が押し出される押出孔を有するダイと、該ダイにおける押出孔の開口を有する表面に対して略平行に張りわたされた線材を有し、該線材を、押出孔の開口を横切らせることにより、押し出された成形材料を切断するための切断装置を備える押出成形装置に関する。本発明の押出成形装置は、ダイにおける押出孔の開口を有する表面が、該開口を含む第1の領域と、該第1の領域に隣接する領域であって、第1の領域に対して線材の進行方向前方に配置された第2の領域とを有し、第2の領域における表面の高さが、第1の領域における表面の高さよりも低いことを特徴とする。
【0008】
本発明の押出成形装置において、第1の領域の表面積S1と第2の領域の表面積S2との比S1/S2は、好ましくは0.9以下である。また、第1の領域における表面の高さと第2の領域における表面の高さとの差は、好ましくは0.1mm以上である。
【0009】
本発明の押出成形装置において、ダイは押出孔を複数有していてもよい。この場合、前記第1の領域と前記第2の領域とは、ダイにおける押出孔の開口を有する表面において、線材の進行方向に沿って交互に配置される。
【0010】
また、ダイが複数の押出孔を有する場合において、当該複数の押出孔は同心円上に配置され、かつ、切断装置は、該同心円の中心を回転軸として線材を回転させることにより、複数の押出孔から押し出された成形材料を切断する装置であることが好ましい。
【0011】
押出孔から押し出される成形材料は筒型形状を有することが好ましい。すなわち、本発明の押出成形装置は、筒型形状の成形体を製造する装置として好適である。
【0012】
また本発明は、上記押出成形装置を用いて、押出孔から押し出された成形材料を切断装置で切断する成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切断面の変形、中空部やその開口の閉塞を生じさせることなく、成形体を連続的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の押出成形装置に用いられるダイにおける押出孔の開口を有する表面の一例を模式的に示す上面図である。
【図2】図1に示されるII−II線における断面図である。
【図3】本発明の一実施形態である押出成形装置を示す概略断面図である。
【図4】図3に示される押出成形装置が備えるダイを示す概略上面図である。
【図5】図4に示されるV−V線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の押出成形装置は、成形材料が押し出される押出孔を有するダイと、該ダイにおける押出孔の開口を有する表面に対して略平行に張りわたされた線材を有し、該線材を、押出孔の開口を横切らせることにより、押し出された成形材料を切断するための切断装置とを備えるものであり、ダイにおける押出孔の開口を有する表面が、該開口を含む第1の領域と、該第1の領域に隣接する領域であって、第1の領域に対して線材の進行方向前方に配置された第2の領域とを有し、第2の領域における表面の高さが、第1の領域における表面の高さよりも低いことを特徴とする。以下、本発明の押出成形装置に用いられるダイの特徴について図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明の押出成形装置に用いられるダイにおける押出孔の開口を有する表面の一例を模式的に示す上面図であり、図2は、図1に示されるII−II線における断面図である。図1は、ダイにおける押出孔の開口を有する側の表面(成形材料から押し出される側の表面であり、切断装置が備える線材が配置される側の表面である。以下、この表面をダイの「前面」ともいう。)の一部を上から見た図である。
【0017】
図1および2に示されるダイ100の前面は、成形材料が押し出される押出孔103の開口104を含む領域である第1の領域101と、第1の領域101に隣接する領域であって、ダイ100の前面に対して略平行に張りわたされた、切断装置が備える線材105の成形材料切断時の進行方向に関し、第1の領域101に対して前方に配置された第2の領域102とを有する。より具体的には、第1の領域101と第2の領域102とは、ダイ100の前面において、線材105の成形材料切断時の進行方向に沿って交互に配置されている。また、図2に示されるように、第2の領域102における表面の高さは、第1の領域101における表面の高さよりも低くなるように設定されている。すなわち、本発明の押出成形装置に用いられるダイは、押出孔の開口が存在する第1の領域の線材進行方向前方に、第1の領域に隣接して、開口が位置する表面の高さより低い表面高さを有する第2の領域を備えるものであり、さらに換言すれば、線材の進行方向に沿ってダイの前面に凸部と凹部とを連続して設け、該凸部に押出孔を配した(該凸部表面に押出孔の開口を配した)構造ともいえる。
【0018】
上記のような構造を有するダイを備える本発明の押出成形装置によれば、押出孔103の開口104を横切ることにより、押出孔103から押し出された成形材料を切断した線材105は、すぐさまダイ前面と接触しない第2の領域102上を通過することになるため、移動する線材105に切断された成形体が追従し、成形体の切断面がダイ前面で引きずられることがなくなるか、もしくは引きずられる距離が極端に短くなるため、成形体の切断面の変形を効果的に抑制または防止することができる。特に、筒型成形体を製造する場合においては、切断面の変形により、中空部やその開口の閉塞が生じるおそれがあるが、本発明の押出成形装置によれば、このような閉塞を効果的に抑制または防止することができるため、極めて有利である。
【0019】
以下、実施の形態を示して本発明をさらに詳細に説明する。図3〜5は、本発明の一実施形態である押出成形装置を示す概略図であり、図3は断面図、図4は用いられているダイの上面図(ダイ前面を上から見た図)、図5は図4に示されるV−V線における断面図である。
【0020】
本実施形態の押出成形装置は、押出装置400と、押出装置400の前面に取り付けられ、成形材料が連続的に押し出される押出孔303を有するダイ300と、ダイ300の前面側にダイ300に対向するように設置され、線材505を有する切断装置500とを備える。また、押出装置400の内部空間からダイ300の押出孔の開口304まで延びるピン401が各押出孔内に設けられており、これにより、押出孔303から押し出された成形材料は中空の筒型形状となる。該成形材料を線材505により切断して得られる成形体600もまた筒型形状である。
【0021】
切断装置500は、2つのガイドローラ501,501間に張りわたされた線材505を有している。線材505は、ダイ300の前面(押出孔の開口304が位置する表面)に対して略平行に、かつ、ダイ300前面における押出孔の開口304が位置する表面に接触可能な位置に張りわたされている。また、切断装置500は、成形材料の押出方向に対して平行に配置された回転軸502と、この回転軸502に直交して一体に取り付けられた円板形の取付け板503と、回転軸502を回転させるモーター504とを備えており、この取付け板503に2つのガイドローラ501,501が備え付けられている。すなわち、切断装置500は、回転軸502をモーター504にて回転させることにより、取付け板503および線材505を成形材料の押出方向に直交する面内(ダイ300の前面に平行な面内)で回転させ、押出孔の開口304が位置する表面(後述する凸部310の頂面)に接触しながら開口304を横切って、各押出孔303から押し出された成形材料を連続的に切断できるように構成されている。
【0022】
図4および5に示されるように、ダイ300は円板形状を有しており、その前面には、押出孔303の開口304を含む領域である第1の領域301と、第1の領域301の線材505進行方向前方であって、第1の領域301に隣接して設けられた、開口304が位置する表面の高さより低い表面高さを有する第2の領域302とが同心円上に交互に配置されている。すなわち、第1の領域301において、ダイ300前面は凸部310から構成されており、凸部310の頂面に押出孔303の開口304が位置している。一方、第2の領域302は、凸部310,310間に形成された凹部320から構成されており、その底面は、凸部310の頂面より低い位置にある。第1の領域301および第2の領域302が配置される同心円の中心は、切断装置500の回転軸502と同軸上にあり、したがって、線材505の進行方向に沿って、第1の領域301と第2の領域302とが交互に配置されている。
【0023】
切断装置500の回転軸502を回転させて線材505を回転させることにより、線材505がそれぞれの凸部310の頂面(したがって、開口304)を接触しながら順次通過して、それぞれの押出孔303から押し出された成形材料を順次切断する。これにより、筒型形状の成形体600が連続的に製造される。
【0024】
本実施形態の押出成形装置によれば、第1の領域301を構成する凸部310の頂面を横切ることにより、押出孔303から押し出された成形材料を切断した線材505は、すぐさまダイ前面と接触しない第2の領域302を構成する凹部320上を通過することになるため、移動する線材505に切断された成形体600が追従し、成形体600の切断面がダイ前面で引きずられることがなくなるか、もしくは引きずられる距離が極端に短くなるため、成形体600の中空部やその開口の閉塞を効果的に抑制または防止することができる。
【0025】
ここで、第1の領域301の表面積S1(より具体的には、凸部310の頂面の面積である)と第2の領域の表面積S2(より具体的には、凹部320の底面の面積である)との比S1/S2は、0.9以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、また、好ましくは0.1以上である。これにより、成形体の切断面の変形および筒型成形体の中空部やその開口の閉塞をより効果的に抑制または防止することができる。
【0026】
また、第1の領域301における表面の高さ(より具体的には、凸部310の頂面の高さである)と第2の領域302における表面の高さ(より具体的には、凹部320の底面の高さである)との差は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。これにより、成形体の切断面の変形および筒型成形体の中空部やその開口の閉塞をより効果的に抑制または防止することができる。
【0027】
本実施形態の押出成形装置に用いることができる押出装置400としては、たとえばプランジャー式押出装置、スクリュー式押出装置等が挙げられる。押出装置400は、単軸(1軸)または2軸のいずれであってもよい。成形材料は、押出装置400の内部空間から押出孔303へ圧送され、押出孔303の開口304から押し出される。押出圧は特に限定されないが、通常1〜10MPa、好ましくは2〜4MPaである。
【0028】
上述のように、各押出孔303には、押出装置400の内部空間から押出孔303の開口304まで延びる、成形材料を筒型成形体に成形するためのピン401が設けられている。ピン401の直径は、所望する筒型成形体の形状(中空部の直径)に応じて適宜選択することができ、たとえば0.1〜9mmであり、好ましくは1〜5mmである。また、押出孔303の直径(開口304の直径)も、所望する筒型成形体の形状に応じて適宜選択することができ、たとえば約1〜10mmであり、好ましくは3〜6mmである。
【0029】
切断装置500が備える線材505としては、ピアノ線等の金属線、プラスチック材料からなる線材、繊維材料からなる線材などを挙げることができるが、なかでもピアノ線が好ましい。
【0030】
成形体600の原料となる成形材料の種類や組成は、特に限定されず、得られる成形体600の用途に応じて適宜選択することができる。たとえば、成形体600を触媒として用いる場合には、アルミナ、シリカ、チタニア等の金属酸化物、モリブテン、コバルト、ビスマス等を主成分とする複合金属酸化物のほか、モリブテン、バナジウム、リン等からなるヘテロポリ酸などを主原料として用いることができる。成形体600を触媒担体として用いる場合には、コージエライト、ムライト、擬ベーマイト、シリカ、アルミナ、チタン酸アルミナ、ゼオライト、スメクタイト、アパタイト、珪藻類などを主原料として用いることができる。また、種々のプラスチック材料などを成形材料の主原料として用いてもよい。
【0031】
成形材料は、上記主原料のほか、得られる成形体の強度を向上させるための補強繊維や、バインダー材、溶媒などの従来公知の添加剤を含むことができる。補強繊維としては、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維等の無機繊維;ポリエステル繊維、ポリアミド繊維(ナイロン繊維等)、ポリイミド繊維等の合成繊維などを挙げることができる。補強繊維の繊維長は、成形体の大きさ等によって決定されるため、特に限定されるものではないが、平均繊維長は、たとえば0.01〜1mm程度とすることができ、好ましくは0.1〜0.8mmである。また、補強繊維の平均繊維径は、たとえば1〜10μm程度とすることができ、好ましくは1.5〜5μmである。補強繊維の含有量は、主原料100質量部(乾燥質量)に対して、通常1〜30質量部、好ましくは2〜20質量部である。
【0032】
バインダー材としては、たとえば、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム等の無機塩;セルロース、ポリビニルアルコール、ピリジン、ポリアクリルアミド、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の有機化合物が挙げられる。成形材料中のバインダー材の含有量は、主原料および補強繊維の合計量100質量部(乾燥質量)に対して、通常1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。
【0033】
溶媒としては、たとえば、水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等の炭素数1〜4のアルコール;ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素;流動パラフィン、大豆油、白絞油、軽油、灯油等のパラフィン類などが挙げられる。成形材料中の溶媒の含有量は、主原料および補強繊維の合計量100質量部(乾燥質量)に対して、通常1〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
【0034】
ピン401を各押出孔303に備える本実施形態の押出成形装置により製造される成形体600は、筒型形状を有するものであり、より具体的には、円筒形状である。成形体600のサイズは特に限定されないが、たとえば、直径が1〜10mm、長さが1〜20mm、内径が0.1〜9mmである。成形体600は、たとえば、触媒、触媒担体、吸着剤、乾燥材、調湿材などとして好適に用いることができる。
【0035】
なお、本実施形態の押出成形装置は、種々の変形を施すことが可能である。たとえば、ダイ300が備える押出孔303の数は8個に限定されるものではなく、ダイ300の外径や押出孔303の内径等を考慮して、たとえば、2個、4個、16個、32個などとすることができる。また、押出孔303の数は1個であってもよい。
【0036】
押出孔303が有するピン401の数は1個に限定されるものではなく、押出孔1個あたり複数のピン401が設けられてもよい。これにより、たとえばハニカム形状の成形体を得ることができる。また、ピン401を有しない構成とすれば、柱状の成形体を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態において、第1の領域301および第2の領域302(凸部310および凹部320)は、同心円上に配置されているが、このような構成に限定されるものではなく、たとえば図1に示す例のように、第1の領域と第2の領域とを列状に配置してもよい。この場合、取付け板503を回転させるのではなく、成形材料の押出方向に直交する面内(ダイ300の前面に平行な面内)で往復動させることにより、連続的に成形材料の切断を行なうことができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
モリブデン酸アンモニウム[(NH46Mo724・4H2O]13241gを温水15000gに溶解し、これをA液とした。一方、硝酸鉄(III)[Fe(NO33・9H2O]6060g、硝酸コバルト[Co(NO32・6H2O]13096gおよび硝酸セシウム[CsNO3]585gを温水6000gに溶解し、次いで硝酸ビスマス[Bi(NO33・5H2O]2910gを溶解し、これをB液とした。A液中に、攪拌しながらB液を添加してスラリーを得、次いでこのスラリーを気流乾燥機にて乾燥し、触媒前駆体を得た。この触媒前駆体100質量部に対し、シリカアルミナファイバー(サンゴバン・ティーエム製、RFC400−SL)9質量部、純水32質量部、メチルセルロース4質量部および三酸化アンチモン2.5質量部を加え、混練機で混練することにより、ペースト状の成形材料を得た。
【0040】
次に、図3〜5に示される押出成形装置(押出孔303の直径:6.4mm、ピン401の直径:2.3mm、凸部310の頂面の高さと凹部320の底面の高さとの差:1.5mm、凸部310の頂面の面積S1と凹部320の底面の面積S2との比S1/S2:0.5、線材:ピアノ線)を用いて押出成形を行ない、外径6.4mm、内径2.3mm、長さ6.5mmの円筒型成形体を連続的に製造した。
【0041】
<比較例1>
第2の領域302を有しない、すなわち、凸部310,310間に凹部320を有する構造ではなく、図4および5における凹部320に相当するダイ表面の高さが押出孔の開口304が位置する表面と同じ高さであるダイを備える押出成形装置(押出孔の直径、ピンの直径、線材の材質などその他の構造は実施例1と同じである)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、外径6.4mm、内径2.3mm、長さ6.5mmの円筒型成形体を連続的に製造した。
【0042】
(円筒型成形体の形状評価)
実施例1および比較例1で得られた円筒型成形体約700g(約2300個に相当)中に含まれる正常品と不良品との割合を質量比で算出した。「正常品」とは、中空部またはその開口に閉塞がなく、所望の円筒形状を保持しているものであり、「不良品」とは、中空部またはその開口に閉塞が認められる成形体である。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示されるとおり、実施例1の押出成形装置を用いることにより、不良品の割合が大きく低減されることがわかった。
【0045】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
100,300 ダイ、101,301 第1の領域、102,302 第2の領域、103,303 押出孔、104,304 押出孔の開口、105,505 線材、310 凸部、320 凹部、400 押出装置、401 ピン、500 切断装置、501 ガイドローラ、502 回転軸、503 取付け板、504 モーター、600 成形体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料が押し出される押出孔を有するダイと、前記ダイにおける前記押出孔の開口を有する表面に対して略平行に張りわたされた線材を有し、前記線材を前記開口を横切らせることにより、押し出された成形材料を切断するための切断装置を備え、
前記ダイにおける前記押出孔の開口を有する表面は、前記開口を含む第1の領域と、前記第1の領域に隣接する領域であって、前記第1の領域に対して前記線材の進行方向前方に配置された第2の領域とを有し、
前記第2の領域における表面の高さが、前記第1の領域における表面の高さよりも低い、押出成形装置。
【請求項2】
前記第1の領域の表面積S1と前記第2の領域の表面積S2との比S1/S2が0.9以下である、請求項1に記載の押出成形装置。
【請求項3】
前記第1の領域における表面の高さと前記第2の領域における表面の高さとの差が0.1mm以上である、請求項1または2に記載の押出成形装置。
【請求項4】
前記ダイは、前記押出孔を複数有し、
前記ダイにおける前記押出孔の開口を有する表面において、前記線材の進行方向に沿って前記第1の領域と前記第2の領域とが交互に配置される、請求項1〜3のいずれかに記載の押出成形装置。
【請求項5】
前記複数の押出孔は同心円上に配置されており、
前記切断装置は、前記同心円の中心を回転軸として前記線材を回転させることにより、前記複数の押出孔から押し出された成形材料を切断する、請求項4に記載の押出成形装置。
【請求項6】
前記押出孔から押し出される成形材料は筒型形状を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の押出成形装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の押出成形装置を用いて、前記押出孔から押し出された成形材料を前記切断装置で切断する成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−143664(P2011−143664A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7825(P2010−7825)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】