説明

押出方法、及びそれを用いた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

【課題】 二軸押出機を使用して反射率の高い熱可塑性樹脂フィルムを供給する。
【解決手段】 スクリューの最外径をDとした際に、ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが2.5D〜15.0Dである二軸押出機を用いた押出方法であって、
表面張力が30mN/m以下の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を、1つの原料供給口から二軸押出機に供給して押出すことを特徴とする押出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率の高い熱可塑性樹脂フィルムを製造可能な方法及びそれを用いた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を使用してフィルムを製膜する際に添加剤の分散性の観点から二軸押出機が使用されることがある。特に表面張力の低い樹脂を二軸押出機を用いて溶融・混練する場合、押出機のスクリュー構成によっては、剪断不足により樹脂が溶けなかったり、剪断過多により、熱分解してゲル化物・炭化物等が生成し製膜したフィルムの欠点となることがある。
【0003】
特許文献1には熱可塑性樹脂と香料を溶融混練するときの二軸押出機の剪断速度の規定があるが、スクリュー構成についての具体的な記述はない。特許文献2には、溶融温度、軟化温度の違う樹脂を二軸押出機で押し出すときのスクリュー構成が記載されているが、溶融温度、軟化温度の低い樹脂は樹脂が溶融した部分に供給しており、その場合、装置が複雑になり、また、樹脂を一定に押し出しするのが困難となる。ポリスチレン系樹脂を押し出す場合の二軸押出機のスクリュー構成については、特許文献3に開示されている。しかし、表面張力の低い樹脂を押し出す際にどのようなスクリューを使用したら良いかについては記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−296835号公報
【特許文献2】特開2002−347100号公報
【特許文献3】特開2007−144829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、樹脂を十分に溶融・混練し反射率の高いフィルムを得るための方法及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、以下である。
1) スクリューの最外径をDとした際に、ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが2.5D〜15.0Dである二軸押出機を用いた押出方法であって、
表面張力が30mN/m以下の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を、1つの原料供給口から二軸押出機に供給して押出すことを特徴とする押出方法。
2) 前記表面張力が30mN/m以下の熱可塑性樹脂が、ポリメチルペンテンであることを特徴とする、請求項1に記載の押出方法。
3) 請求項1又は2に記載の押出方法を用いた工程を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、反射率の高いフィルムを得るための方法及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の二軸押出機の模式図の一例
【図2】本発明のニーディングディスクの模式図の一例
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
図1に本発明の二軸押出機の例を示す。図1において1は押出機のシリンダー、2はスクリュー、3は原料供給口、4は第1ベント孔、5は第2ベント孔である。なお、これは一例であり、本発明に用いる二軸押出機はこれに限定されない。
【0011】
本発明に用いる二軸押出機では、スクリューは複数のスクリューピースから構成されている。つまり図1中の2のスクリューは各ピースに分割されている。なお、本発明の二軸押出機では、各スクリューピースの原料搬送方向の長さは、スクリューの最外径をDとしたときに、Dに数字を乗じた長さとする。ニーディングディスクを使用している長さとは、各スクリューピースのうちニーディングディスクを使用している全てのピースの原料搬送方向の長さの総和とする。
【0012】
ここでスクリューの最外径とは、スクリューを回転させたときのスクリューの端部の軌道のうち一番長い径のことである。図1においては、6の長さである。
【0013】
例えば、あるスクリューピースの原料搬送方向の長さが、スクリュー外径と同じであれば、そのスクリューピースの原料搬送方向の長さは1.0Dとなる。また、図1の各スクリューピースのうちニーディングディスクを使用しているものが図中の7、8のみであり、7、8の原料搬送方向の長さがそれぞれ1.0Dであれば、ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さとは2.0Dとなる。
【0014】
本発明に用いる二軸押出機では、図2に示すような形状を持つディスク状のセグメントを位相を持たせて複数枚重ねたニーディングディスクをスクリューピースとして使用する。ニーディングディスクには、ディスク状のセグメントを樹脂の押出方向に推進力が働くように位相を持たせて複数枚重ねた順送りニーディングや樹脂の押出方向とは逆方向に推進力が働くように位相を持たせて複数枚重ねた逆送りニーディングや樹脂の押出方向にも逆方向にも推進力が働かないように位相を持たせて複数枚重ねたニュートラルニーディングなどがある。
【0015】
そして本発明に用いる二軸押出機では、ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが、2.5D〜15.0Dであることが重要である。特に好ましくは、ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが3.0D〜12.0Dである。
【0016】
ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが2.5Dより短いと、特に表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を押し出す際に、表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂自体が滑りやすいため剪断不足となって、該樹脂が溶けずに押出不良を起こしてしまったり、表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂をフィルム母材となるポリエステル樹脂のなかに混練微分散させようとしたときに樹脂が所望の大きさに微分散しなかったりする。表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂が所望の大きさに微分散していないと、フィルム母材であるポリエスエル樹脂に、表面張力が30mN/N以下の非相溶である樹脂を分散させ、それを延伸しボイド(気泡)を形成し光散乱作用を利用して白色化させるようなフィルムの場合、フィルムの反射率が落ちてしまう。
【0017】
ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが15.0Dよりも長いと剪断過多となってしまい押し出す樹脂が熱分解してゲル化物・炭化物等が生成し、製膜したフィルムの欠点となってしまう。
【0018】
なお、本発明に用いる二軸押出機のスクリューの最外径Dの長さは、特に限定されないが、好ましくは20mm以上450mm以下である。
【0019】
また本発明に用いる二軸押出機中のニーディングディスク以外の各スクリューピースの原料搬送方向の長さは、特に限定されないが、好ましくは0.2D以上2.0D以下である。
【0020】
本発明に用いる二軸押出機のスクリューを構成するスクリューピースの数は、特に限定されないが、好ましくは10個以上150個以下である。
【0021】
二軸押出機のスクリューを構成するニーディングディスク以外のスクリューピースとしては、樹脂送り用スクリューピースなどがあるが、本発明ではいずれのスクリューピースを使用することも可能である。なお、樹脂送り用スクリューピースを使用する場合には、順フルフライトのスクリューピースを用いることが好ましい。
【0022】
なお、本発明に用いる二軸押出機は、前述の通りニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが、2.5D〜15.0Dであることを特徴とするが、本発明のフィルムの製造方法は、前述の二軸押出機を用いた工程を有する方法である。
【0023】
本発明に用いる二軸押出機は、図1中の3の1つの原料供給口から、全ての原料(表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物)を供給するのが好ましい。供給する原料のうち、一部の原料を図1中の3の原料供給口から供給し、残りの原料を図1中の8の原料供給口から供給すると、装置が複雑になり、また、押し出すときの樹脂圧力を一定に保ちながら一定量の原料を押し出すことが難しくなり、吐出変動や押出不良につながってしまう。
【0024】
これらのことから、好ましい本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、前述の二軸押出機を用いた方法を工程として有し、該二軸押出機の1つの原料供給口から原料を供給することを特徴とする製造方法である。
【0025】
本発明に用いる二軸押出機を使用して、フィルム母材となるポリエステル樹脂に、表面張力が30mN/N以下の非相溶である樹脂を分散させ、それを延伸しボイド(気泡)を形成し光散乱作用を利用して白色化させるような白色ポリエステルフィルムを製膜した場合、その得られるフィルムは、本発明の製造方法により反射率の高いフィルムとなる。
【0026】
得られた白色ポリエステルフィルムを液晶ディスプレイに使用する場合、400〜700nmの光の波長域における平均反射率が白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面で97%以上である必要がある。97%未満であると、液晶ディスプレイに適用したとき、バックライトとしての輝度が不十分となることがある。本発明において平均反射率とは、日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U―3310)に積分球を取り付け、標準白色板(酸化アルミニウム)を100%とした時の反射率を400〜700nmにわたって測定し、得られたチャートより波長を5nm間隔で反射率を読み取り、平均した値である。
【0027】
本発明では、表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いるが、樹脂組成物中には、表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂以外の成分を含むことができる。好ましくは、該樹脂組成物中には、表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂以外の成分が主成分(ここで主成分とは、樹脂組成物中に質量換算で最も多く存在する成分を意味する。)であることである。
【0028】
表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物中に用いる、表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂以外の成分の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチルサクシネート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂、などを用いることができる。この中で、強度・耐熱性・透明性の観点から、特にポリエステルを用いることがより好ましい。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位に有するポリエステルは、安価であり、非常に多岐にわたる用途に用いることができるので好ましい。
【0029】
本発明でいうところのポリエステルとしては、典型的なものは、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体であるホモポリエステルや共重合ポリエステルである。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどが挙げられる。これらは、カルボン酸あるいはアルコールの形で重縮合するのみならず、エステル化誘導体など誘導体としてから重縮合体とできることはいうまでもない。
【0030】
また、このポリエステルの中には、公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤などが添加されていても良い。
【0031】
フィルム母材である樹脂に、非相溶である樹脂を分散させ、それを延伸しボイド(気泡)を形成し光散乱作用を利用して白色化させるようなフィルムの場合、母材にに用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。ポリエチレンテレフタレートフイルムは耐水性、耐久性、耐薬品性などに優れている。
【0032】
フィルム母材である樹脂に、非相溶である樹脂を分散させ、それを延伸しボイド(気泡)を形成し光散乱作用を利用して白色化させるようなフィルムの場合、非相溶である樹脂としては、直鎖状、分鎖状あるいは環状のポリオレフィンが好ましく使用できる。直鎖状、分鎖状のポリオレフィンとしては、例えば、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリフルオロスチレン、ポリ−2−メチル−4−フルオロスチレン、ポリビニル−t−ブチルエーテル、セルロールトリアセテート、セルロールトリプロピオネート、ポリビニルフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレンから選ばれた表面張力が30mN/N以下の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でもポリ−4−メチルペンテン−1(ポリメチルペンテン)が好ましい。
【0033】
ボイドを作るための非相溶な樹脂の表面張力が30mN/N以下の樹脂であれば、母材にポリエチレンテレフタレート使用した場合、表面張力差によりボイド形成をしやすくなり、できた白色ポリエステルフィルムは反射率の高いものとなる。
【0034】
次に、本発明のフィルム製造方法を、例を挙げて以下に説明する。
【0035】
まず熱可塑性樹脂ペレットを用意し、二軸押出機の原料投入部に供給する。二軸押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物やゲル化物などを取り除かれる。このとき、二軸押出機は、1台であっても、複数台であってもよい。また複数台の二軸押出機を用いる場合は、フィルターを通過した熱可塑性樹脂を積層装置に送り込む。積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができる。また、これらを任意に組み合わせても良い。
【0036】
このようにして得られた溶融体は、ダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
【0037】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、必要に応じて二軸延伸することが好ましい。二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0038】
逐次二軸延伸の場合について説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、フィルムを構成する樹脂にポリエチレンテレフタレートならびにポリメチルペンテンを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としてはフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃が好ましい。
【0039】
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0040】
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸を言い、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、積層フィルムを構成する樹脂のいずれかにポリエチレンテレフタレートならびにポリメチルペンテンを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては、積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度以上であり、ガラス転移温度+120以下の温度が好ましい。
【0041】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
【0042】
本発明で得られるフィルムは、特にフィルムの母材、たとえばポリエステル中に表面張力の低い非相溶な樹脂を含有せしめた白色ポリエステルフィルムであれば、反射率の高いフィルムである。反射率が低い白色ポリエステルを反射板として使用すると、反射板としての機能を十分に満たさない等の不具合が発生する。
【実施例】
【0043】
本発明の二軸押出機を使用した押出方法を用いて得られたフィルムを評価するための、フィルムの反射率測定法ならびに樹脂の表面張力測定方法
(フィルムの反射率測定法)
日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U―3310)に積分球を取り付け、標準白色板(酸化アルミニウム)を100%とした時の反射率を400〜700nmにわたって測定する。得られたチャートより5nm間隔で反射率を読み取り、平均値を計算し、反射率とする。
(樹脂の表面張力測定方法)
SUSプレートの上で加熱溶融し、その後、常温に戻し固化させて、試験サンプルを作成した。その試験サンプルをJIS−K6768(改正1999年7月20日)に従って表面張力を測定し、樹脂の表面張力とした。
【0044】
(実施例1)
各樹脂ペレットを以下の配合比にて混合し、最外径Dが65mmの二軸押出機に1つの供給口から供給し、押出機にて280℃の溶融樹脂Aとした。ガラス転移温度Tgが78℃、融点Tmが255℃、固有粘度が0.62dl/gであるポリエチレンテレフタレート(PET):70質量%
・分子量4000のポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(東レデュポン(株)製“ハイトレル”):5質量%
・ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸を10モル%とポリエチレングリコールを5モル%共重合した共重合物:10質量%
ポリメチルペンテン(三井化学(株)製TPX820):15質量%
また、ポリメチルペンテンの表面張力を測定すると、24mN/mであった。
平均粒径1.0μmの炭酸カルシウムを14質量%含有するガラス転移温度Tgが78℃、融点Tmが255℃、固有粘度が0.62dl/gであるポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを、最外径Dが30mmの二軸押出機に供給し、押出機にて280℃の溶融樹脂Bとした。
【0045】
溶融樹脂Aを押出した65mmの二軸押出機には、ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが3.0Dであるスクリューを使用した。
【0046】
溶融樹脂Aと溶融樹脂Bはフィードブロックにて積層させ、シート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムとした。その後未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き長手方向に3.1倍縦延伸した。続いて縦延伸されたフィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内に導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後テンター内で230℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取り、二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの反射率の測定結果を表1に示す。
(実施例2)
溶融樹脂Aを押出した最外径Dが65mmの二軸押出機に、ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが5.0Dであるスクリューを使用した以外は実施例1と同様に製膜して、フィルムを得た。得られたフィルム反射率の測定結果を表1に示す。
(比較例1)
最外径Dが65mmでニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが2.0Dであるスクリューを使用した二軸押出機に実施例1の溶融樹脂Aの配合と同様の配合にて、原料を1つの供給口から供給すること以外は実施例1と同様に製膜しようとしたが、最外径Dが65mmの押出機内の樹脂が溶融せず押出することができないので実験を中断した。
【0047】
(比較例2)
実施例1の溶融樹脂Aの配合構成のうち、ポリメチルペンテンを環状オレフィンとエチレンの共重合体(ポリプラスチックス社製TOPAS)に変更し、最外径Dが65mmでニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが2.0Dであるスクリューである二軸押出機を使用した以外は実施例1と同様に製膜をして、フィルムを得た。得られたフィルムの反射率の測定結果を表1に示す。環状オレフィンとエチレンの共重合体の表面張力を測定すると、31mN/mであった。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明を使用して製造した反射率の高い熱可塑性樹脂フィルムに関するものである。
【符号の説明】
【0050】
1 押出機のシリンダー
2 スクリュー
3 原料供給口
4 第1ベント孔
5 第2ベント孔
6 スクリュー最外径D
7 スクリューピースの長さ1.0D
8 スクリューピースの長さ1.0D
9 原料供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューの最外径をDとした際に、ニーディングディスクを使用している部分の原料搬送方向の長さが2.5D〜15.0Dである二軸押出機を用いた押出方法であって、
表面張力が30mN/m以下の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を、1つの原料供給口から二軸押出機に供給して押出すことを特徴とする押出方法。
【請求項2】
前記表面張力が30mN/m以下の熱可塑性樹脂が、ポリメチルペンテンであることを特徴とする、請求項1に記載の押出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の押出方法を用いた工程を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−111841(P2013−111841A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259866(P2011−259866)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】