説明

押出発泡体

【課題】熱伝導率が低く断熱性能に優れ、柔軟性を有し、且つ製造時発泡体中に残留する可燃性発泡剤の、空気等の不燃性ガスへの置換も容易な発泡体の提供。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を20重量%以上含有し、平均粒径が1〜100μmである黒鉛微粉末を、樹脂100重量部に対して0.1〜6重量部含有する、密度が5〜35kg/m、気泡径が0.1〜2mmであることを特徴とする押出発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率が低く、断熱性能に優れ、且つ柔軟性を有し、住宅等の断熱材等に好適に使用され、製造時、発泡体中に残留する可燃性発泡剤の、空気等の不燃性ガスへの置換が容易な新規な押出発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺な板状又はシート状のポリオレフィン系樹脂発泡体を製造するための方法として、ポリオレフィン系樹脂と発泡剤を押出機中で溶融混練した後、ダイスより、低圧下に押出して発泡させる押出発泡法が広く用いられている。
上述の押出発泡法によって得られたポリオレフィン系樹脂発泡体は、柔軟性を有し、施工現場でのサイズカットや床・壁内への施工性も容易である。ポリオレフィン系樹脂発泡体は、基材樹脂の有する特性として、熱伝導率の低い発泡剤の保持性が低いため、発泡剤が、熱伝導率の高い空気と置換しやすい。その為、発泡剤の保持性が良いスチレン系等の硬質系の断熱材用発泡体に比べ、断熱性能が劣っている。近年、地球温暖化抑制の面から住宅等建築物の省エネルギー化を目的とした高断熱化の要求や省資源化の面で、低い熱伝導率を有し断熱性能に優れ、使用する原材料を少なくするために発泡体の密度を低くし、且つ柔軟性を有する断熱材が求められている。
【0003】
また、上述の押出発泡法によって得られた発泡体中には、発泡に用いた発泡剤が製造後しばらく残留しているため、近年、地球環境にやさしいものへの切替が望まれており、例えばオゾン層破壊の少なく、且つ地球温暖化係数の小さい発泡剤として、フロンガスの代替としてプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の可燃性ガスの利用が進められている。これらの可燃性発泡剤が発泡体中に長期間残留すると、静電気のスパーク等で着火することがあるので、製造業者は残留する可燃性発泡剤が空気と置換するまでの間製品を出荷出来ない状況におかれている。
薄いシート状の発泡体の場合には、製造後に発泡体を大気中に放置しておくだけで比較的短時間で残留可燃性発泡剤を空気と置換することが可能である。断熱材に用いられる厚い発泡体では、残留可燃性発泡剤が容易には空気と置換せず、大気中に放置して、完全に空気と置換するためには、数ヶ月、あるいはそれ以上の期間を要するという問題がある。その為、保管スペース不足、保管時の安全管理、及び長期在庫による流通制約等多くの問題が生じている。
非特許文献1に、断熱性能を高める方法として、気泡径を小さくし、熱流遮断回数を増加させる方法や、発泡体の密度を40kg/m前後の比較的高い密度とすることが記載されている。
【0004】
しかしながら、開示された方法では、発泡体の断熱性能を向上させる効果が不十分、製造時発泡体中に残留する可燃性発泡剤の空気等の不燃性ガスへの置換を促進する効果が見られない等の問題がある。
放射伝熱を抑制し、断熱性能を向上させる方法として、特許文献1には,赤外波長5〜30μmに吸収を示し、且つ300Kでの黒体放射に対する厚さ10μmにおける、平均吸収率が0.3以上である添加物を合成樹脂に配合した発泡合成樹脂断熱体が、特許文献2には、赤外線反射率が40%以上である微粉末が気泡膜中に分散されている熱可塑性樹脂発泡体が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらに開示された方法では、発泡体の断熱性能を向上させる効果が不十分、製造時発泡体中に残留する可燃性発泡剤の空気等の不燃性ガスへの置換を促進する効果が見られない、又は良好な発泡体が得られない等の問題がある。
特許文献3、及び特許文献4には、限定された黒鉛粉を含有するスチレン系樹脂発泡体が開示されている。
しかしながら、これらに開示された方法でも、発泡体の断熱性能を向上させる効果が不十分、製造時発泡体中に残留する可燃性発泡剤の、空気等の不燃性ガスへの置換を促進する効果が見られない、又は良好な発泡体が得られない等の問題がある。
【0006】
残留可燃性発泡剤を早急に放出させる試みとして、特許文献5には、発泡体に針を突き刺して穴を開ける方法が開示されている。
しかしながら、この方法では残留可燃性発泡剤の放出と不活性ガスへの置換は促進されるが、針で穴を開けるために発泡体表面が傷ついて外観が著しく低下するという問題や、発泡体が断熱材用途に使用される際には、穴を開けたために吸水率が増加し、その水分が発泡体の断熱性を著しく低下する品質問題が残されており、断熱性能を向上させる効果は有さない。
特許文献6には、オレフィン系樹脂の溶解性パラメーター(SP1)と、フィラーの溶解性パラメーター(SP2)の差の絶対値が1.2以上であるフィラーを、オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部含有するオレフィン系樹脂発泡体が開示されているが、断熱性能を向上させる効果は有さない。
【0007】
【特許文献1】特開昭56−50935号公報
【特許文献2】特開昭63−183941号公報
【特許文献3】特表2001−525001号公報
【特許文献4】特開2005−2268号公報
【特許文献5】特表平6−507129号公報
【特許文献6】特開2004−352839号公報
【非特許文献1】プラスチックフォームハンドブック 牧 廣編 日刊工業新聞社刊p229〜234
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱伝導率が低く、断熱性能に優れ、且つ発泡体に残留する可燃性発泡剤の、空気等の不燃性ガスへの置換が容易な押出発泡体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明はさらに、柔軟性に優れ、吸水性、及び水蒸気透過率の低い押出発泡体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリオレフィン系樹脂を用い、特定の黒鉛を添加すると共に、密度とセルサイズを制御することにより、熱伝導率が低く、断熱性能に優れ、且つ発泡体に残留する可燃性発泡剤の、空気等の不燃性ガスへの置換を容易にする押出発泡体を得ることが出来ることを見いだし、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ポリオレフィン系樹脂を20重量%以上含む樹脂と、前記樹脂100重量部に対して平均粒径が1〜100μmである黒鉛微粉末0.1〜6重量部とからなる発泡体であって、発泡体の密度が5〜35kg/m、気泡径が0.1〜2mmであることを特徴とする押出発泡体。
(2)黒鉛微粉末が、天然燐片状黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、及び人造黒鉛から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする(1)に記載の押出発泡体。
(3)独立気泡率が2〜80%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の押出発泡体。
(4)樹脂中に、芳香族系ポリマーが5〜80重量%含まれていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の押出発泡体。
(5)樹脂中に、芳香族系ポリマーが5〜79.9重量%と、芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーとのブロック共重合樹脂が0.1〜15重量%含まれていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の押出発泡体。
(6)帯電防止剤が、樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部含まれていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の押出発泡体。
(7)ポリオレフィン系樹脂を20重量%以上含む樹脂と、前記樹脂100重量部に対して平均粒径が1〜100μmである黒鉛微粉末を0.1〜6重量部とを混合し、発泡剤として可燃性発泡剤を圧入し、押出して発泡させることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに1つ記載の押出発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の押出発泡体は、柔軟性を有し、吸水性、蒸気透過率、及び熱伝導率が低く、断熱性能に優れ、且つ発泡体に残留している可燃性発泡剤を、空気等の不燃性ガスに短期間で置換でき、外観にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂は、一般にポリオレフィン系樹脂と呼ばれるものならいずれを用いてもよい。例えば、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、プロピレン重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン系アイオノマー樹脂、プロピレン系アイオノマー樹脂、ポリブテン、エチレン−ブテンランダム共重合体等が挙げられ、一種あるいは二種以上を用いることができる。発泡性に優れるという点で、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、及びエチレン系アイオノマー樹脂が好ましい。発泡性に優れ、大きな断面の発泡体が得られるという点で、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、及びエチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体がより好ましく、中でも、高密度ポリエチレン、及び高圧法低密度ポリエチレンが特に好ましい。
ポリオレフィン系樹脂のMFRは、独立気泡率の分布や黒鉛の分散が均一になり易いため、5〜0.001が好ましく、3〜0.005がより好ましく、1〜0.01が特に好ましい。
【0012】
本発明の押出発泡体を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を20重量%以上含むことが必要であり、35重量%以上が好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。樹脂中にポリオレフィン樹脂が20重量%以上存在することにより、発泡体の柔軟性が向上し、独立気泡率が制御しやすい。
ポリオレフィン系樹脂と併用される樹脂としては、特に制限はなく、一種あるいは二種以上を用いることができる。芳香族系ポリマー、芳香族系モノマーとポリオレフィン系モノマーとの共重合樹脂、アクリル系樹脂、芳香族モノマーとアクリル系モノマーとの共重合樹脂等は、ポリオレフィン系樹脂に配合した時にも発泡性が良いことから適している。
【0013】
芳香族系ポリマーとしては、配合した時に低い独立気泡率でも発泡の安定性を有する点から、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体、ポリα―メチルスチレン、ポリp−メチルスチレンが好ましく、ポリスチレンは、大きな断面の発泡体が得られると言う点から、より好ましい。
本発明の押出発泡体を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂と芳香族系ポリマーからなることが好ましい。芳香族系ポリマーを5〜80重量%の範囲で添加することは、樹脂の押出量の小さい小型の設備を用いても、目的とする大きな断面の発泡体が得られ易いと言う点から好ましく、更に大きな断面の発泡体が得られ、且つポリオレフィン系樹脂の有する柔軟性、低い吸水率や低い水蒸気等透過率を維持出来る事から5〜65重量%の範囲で添加することはより好ましく、10〜50重量%の範囲で加えることは特に好ましい。
【0014】
樹脂中に、ポリオレフィン系樹脂と、芳香族系ポリマーが含まれている場合には、相溶性を上げるために、さらに芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーのブロック共重合樹脂が含まれていることが好ましい。
芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーとのブロック共重合樹脂としては、例えばイソプレン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとのブロック共重合体、共役ジエン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとのブロック共重合体、水素添加されたイソプレン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとのブロック共重合体、水素添加された共役ジエン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとのブロック共重合体等が挙げられ、芳香族ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等があげられ、これらの一種あるいは二種以上を用いることができる。熱安定性の面から、水素添加されたイソプレン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとのブロック共重合体、水素添加された共役ジエン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとのブロック共重合体が好ましく、少ない添加量で相溶性を上げることが出来る点から水素添加されたスチレンとブタジエンとのブロック共重合体が特に好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂が20重量%以上含まれている場合には、芳香族系ポリマー5〜79.9重量%、及び芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーのブロック共重合樹脂が、0.1〜15重量%の範囲で含まれていることが好ましく、芳香族系ポリマー5〜79.8重量%、及び芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーのブロック共重合樹脂が、0.2〜10重量%の範囲で含まれていることがさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂が35重量%以上含まれている場合には、芳香族系ポリマー5〜64.9重量%、及び芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーのブロック共重合樹脂が、0.1〜15重量%の範囲で含まれていることが好ましく、芳香族系ポリマー5〜64.8重量%、及び芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーのブロック共重合樹脂が、0.2〜10重量%の範囲で含まれていることがさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂が50重量%以上含まれている場合には、芳香族系ポリマー10〜49.9重量%、及び芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーのブロック共重合樹脂が、0.1〜15重量%の範囲で含まれていることが好ましく、芳香族系ポリマー10〜49.8重量%、及び芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーのブロック共重合樹脂が、0.2〜10重量%の範囲で含まれていることがさらに好ましい。
【0016】
本発明に用いられる黒鉛微粉末としては、天然燐片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、人造黒鉛等が挙げられ、一種あるいは二種以上を用いることができる。
黒鉛微粉末の添加量は、十分な断熱性が得られることから、樹脂100重量部に対して、0.1〜6重量部が必要であり、好ましくは、0.5〜4重量部である。
押出発泡体では、黒鉛の平均粒径が小さいと断熱性が向上する傾向があり、良好な発泡体が得られ、独立気泡率がコントロールし易くなることから、黒鉛の平均粒径は1〜100μmであり、2〜50μmが好ましく、3〜30μmがより好ましい。
【0017】
断熱性や発泡性は、黒鉛微粉末の種類により異なる。黒鉛微粉末の種類としては、断熱性を向上させ易いこと、発泡性が良いこと、発泡体の断面が得られ易いこと、及び独立気泡率のコントロールが行い易いことから、天然燐片状黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、人造黒鉛が好ましく、天然燐片状黒鉛、人造黒鉛がより好ましく、人造黒鉛が特に好ましい。また、人造黒鉛の中でも板状の形状を有する板状人造黒鉛が同様の理由から好ましい。これは、本発明の発泡体に特有の現象であり理由は定かではないが、黒鉛微粉末の形状、粉末端部の形状、組成や結晶構造等多くの因子が複雑に関係しているものと考えられる。
本発明における発泡体の密度は、断熱性能が一層向上すること、可燃性発泡剤を不燃性ガスに置換するのが容易であることから5〜35kg/mであり、6〜30kg/mが好ましく、7〜20kg/mがより好ましい。
【0018】
本発明における発泡体の気泡径は、良好な断熱性や発泡性の観点から0.1〜2mmであり、0.2〜1.5mmが好ましく、0.3〜1mmがより好ましい。気泡径は、気泡核形成剤を添加しコントロールすることができる。通常使用される気泡核形成剤としては、たとえば、タルク、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、クレー、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ガラスビーズ、ガラスパウダー、酸化チタン、カーボンブラック、無水シリカ、ケイ酸カルシウム等の無機微粉末や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のような有機微粉末が挙げられる。
【0019】
本発明における発泡体は、発泡体に残留している可燃性発泡剤を、空気等の不燃性ガスに短期間で置換でき、吸水率や水蒸気透過率を小さい値に維持でき、且つ発泡体を壁や床下等に充填施工する際に、発泡体の反発性が小さく施工作業が行い易いことから、独立気泡率は2〜80%が好ましく、5〜70%がより好ましく、10〜58%以下が特に好ましい。
本発明の発泡体は、帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤を添加することにより、発泡体の高い断熱性能や低い吸水性を維持したまま、本発明の発泡体生産時に発泡体の帯電を抑え、発泡体からの放電による発火の危険性を除くことが出来、生産時の高い安全を確保することが出来る。帯電防止剤の添加量は、樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましく、0.3〜2重量部が特に好ましい。
【0020】
本発明に用いられる帯電防止剤は、極性基を有する低分子量アルキル化合物が好ましい。例えば、脂肪酸と多価アルコールのエステル、脂肪酸アミド、アルキル脂肪酸アミド、アルキルスルホン酸金属塩等が挙げられ、一種あるいは二種以上を用いることができる。
脂肪酸は、例えば、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。多価アルコールは、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、マンニット、ソルビット、ソルビタン等が挙げられる。アルキル脂肪酸アミドは、R−CONH−Rで表される化合物(ただしR、Rは、炭素数11〜18のアルキル基)等が挙げられる。アルキルスルホン酸金属塩は、例えば炭素数10〜26のアルキルスルホン酸とナトリウム、カリウム、リチウム等の金属塩が挙げられる。
【0021】
本発明における発泡体の押出発泡に用いられる発泡剤は、可燃性発泡剤が好ましく、主として一般の可燃性発泡剤が使用できるが、不燃性発泡剤を混合しても支障はない。可燃性発泡剤としては、例えばプロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素や、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素や、ジメチルエーテル、メチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトン等のケトン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。また不燃性の発泡剤としては、例えばトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、炭酸ガス、窒素、空気、ヘリウム、アルゴン等の無機ガス等が挙げられる。特に、可燃性発泡剤としては、非ハロゲン系である脂肪族炭化水素、環式脂肪族炭化水素、エーテル等を用い、不燃性の発泡剤を混合する場合も非ハロゲン系である炭酸ガス、窒素、空気、ヘリウム、アルゴン等の発泡剤を用いることが、環境への影響が少なく好ましい。これらの発泡剤は、単体で用いても良く、2種以上の発泡剤を混合して用いても良い。
【0022】
気泡核形成剤の他に、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。例えば、着色剤、難燃剤等の各種添加剤を添加してもよい。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の安定剤を適量配合することは、発泡体の使用時の光による劣化や発泡体のリサイクル時の高分子の劣化が低減するため好ましい。
これらの添加剤は、発泡体を製造する際の妨げとならず、且つ製造される発泡体の特性に影響を及ぼさない程度の範囲で添加してもよい。
本発明における押出発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂を20重量%以上含む樹脂と、前記樹脂100重量部に対して、0.1〜6重量部の平均粒径が1〜100μmである黒鉛微粉末を押出機に供給し、押出機に取り付けた発泡剤注入口から可燃性発泡剤を圧入し、押出機中で溶融混練した後、溶融混合物を押出機に連結された冷却装置で発泡温度まで冷却後、ダイスより、低圧下に押出して発泡させる押出発泡法が好ましい。
【0023】
本発明における押出発泡体は、供給する気泡核形成剤の量を制御することにより、目的とする気泡径の発泡体を製造することができ、また、圧入する発泡剤の量を制御することにより、目的とする密度の発泡体を製造することができる。
本発明における押出発泡体の製造方法は、連続して発泡体の製造を行っても、押出発泡設備の途中にシリンダー等の加圧設備を有した溶融混合物を一時的に貯蔵する装置を配置すると共にダイスを開閉できる構造とし、ダイスを閉じ溶融混合物を貯蔵する操作と、ダイスを開けると同時に貯蔵した溶融混合物を排出する操作を繰り返し、間欠的に発泡体の製造を行っても良い。
【実施例】
【0024】
次に、実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。
実施例および比較例中の発泡体の性質は以下のようにして測定し、評価した。
(1)発泡体密度(JIS K 6767準拠法)
発泡体の幅方向に5等分した各位置から全厚み方向に切り出した物(サンプルサイズ20mm×20mm×厚み25mm)について質量及び体積を測定し、次式により密度を測定して、5点の密度の平均値を発泡体密度とした。
発泡体密度(g/cm)=発泡体質量(g)/発泡体体積(cm
(2)独立気泡率(ASTM−D−2856準拠法)
発泡体の幅方向に5等分した各位置から20mm×20mm×厚み25mmの大きさにサンプルを切り出し、エアーピクノメーター(東京サイエンス社製、MODEL1000(商品名))を使用して連続気泡部を除いた独立気泡部分の体積を測定して次式により独立気泡率を求め、5点の独立気泡率の平均値を発泡体の独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=独立気泡部体積(cm)/発泡体見かけの体積(=10cm)×100
【0025】
(3)発泡体のセルサイズ
発泡体の中央部から試験片をカットし、カット面に発泡体の押出方向、幅方向、厚み方向に沿ってL(mm)の直線を引き、これらの直線に接触している気泡の数を数え、次式により押出方向、幅方向、厚み方向のセルサイズを算出し、更に3方向の平均値をセルサイズとした(グリッドライン法)。
各方向のセルサイズ(mm)=1.626×L/気泡数
(4)黒鉛微粉末の平均粒径
レーザー回折式粒度分布測定装置(シーラス社製、CILAS920(商品名))により、粒度分布を測定し、累積体積が50%の粒子径を平均粒子径とした。
(5)人造黒鉛の形状
人造黒鉛を分散させ、走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−5600LV(商品名))で撮影し、ランダムに30個を選び、各々の人造黒鉛の最も長い片を長片とし、長片に垂直の片を短片とする。「長片」/「短片」の値を算出し、その値から大きい値順に10個の値を選び、その10個の値を平均し、平均値が、3以上の人造黒鉛を板状人造黒鉛とし、平均値が、3未満の人造黒鉛を非板状人造黒鉛とした。
【0026】
(6)発泡体の熱伝導率(JIS A 1412−2準拠法)
発泡体を300mm×300mm×厚み25mmの大きさに切断し、試験体1枚・対称構成方式の測定装置(英弘精機社製、HC−074・304(商品名))を用い、30℃に温調された加熱板と10℃に温調された冷却熱板の間に挟み、試験体温度差20℃、試験体平均温度20℃で測定した。
(7)吸水率(NDS Z 0503準拠法)
全表面が切断面からなる様に100mm×100mm、厚さ25mmの大きさに発泡体を切り出し、NDS Z 0503によって測定した結果から、以下の基準で評価した。
◎:吸水率 0.1%未満
○:吸水率 0.1%以上〜1%未満
×:吸水率 1%以上
【0027】
(8)ガス置換所要日数
発泡体中央部から全厚み方向に発泡体を切り出しガラスボトルに密封した後オーブンにて加熱溶融し、発泡体内部のガスを放出させた物をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC−14B(商品名))にてガス濃度を測定し、発泡体内ガス濃度を算出する。測定した発泡体内可燃性ガスの濃度が、その可燃性ガスの燃焼下限以下になるのに40℃雰囲気下でエージングに要する日数によって、以下の基準で評価した。
◎:40℃雰囲気下でエージングに要する日数 10日未満
○:40℃雰囲気下でエージングに要する日数 10日以上〜20日未満
×:40℃雰囲気下でエージングに要する日数 20日以上
【0028】
(9)帯電防止性能
発泡体を10枚重ねた状態で周囲に金属が存在しない床上に30分静置し、一番上の発泡体について、静電気測定器(シムコジャパン社製、FMX-002(商品名))を用いて発泡体表面の帯電電位を5点測定し、5点の平均を発泡体の帯電圧とする。測定時の雰囲気は、温度20℃±3℃、湿度55%±5%とする。帯電圧測定結果により、以下の基準で評価した。
◎:帯電圧 5kV未満
○:帯電圧 5kV以上〜10kV未満
×:帯電圧 10kV以上
【0029】
(10)MFR(JIS K 7210:1999準拠)
ポリプロピレン系樹脂は、試験温度230℃、公称荷重2.16kgで測定した。ポリプロピレン系樹脂以外のポリエチレンを含むポリオレフィン系樹脂は、試験温度190℃、公称荷重2.16kgで測定した。ポリスチレンを含む芳香族系ポリマーは、試験温度200℃、公称荷重5.00kgで測定した。アクリル系樹脂は、試験温度230℃、公称荷重3.80kgで測定した。なお、MFR0.1g/10分未満の樹脂については、MFR0.1g/10分以上0.5g/10分以下の樹脂と同じ試料の充填量(3〜5g)、基準となる切り取り時間間隔を240秒とし、測定値の精度が劣る時には、切り取り時間間隔を最大600秒迄延長し、測定した。
【0030】
[実施例1]
150mmのバレル内径を有する単軸スクリュー型押出機の供給領域に、600kg/時間の速度で、高密度ポリエチレン(密度0.96g/cm、MFR=0.04g/10分)100重量%、樹脂100重量部に対し、黒鉛微粉末として板状人造黒鉛(昭和電工社製、UF−G30(商品名)、平均粒径9μm)2.0重量部、気泡核形成剤としてタルク(富士タルク社製、LMP−90(商品名))1.0重量部及び帯電防止剤としてパルミチン酸モノグリセライド60質量%とアルキル基の炭素数が14から16(平均値=15)であるアルキルスルホン酸ナトリウム40重量%の混合物1.0重量部を供給した。押出機のバレル温度を190℃〜210℃に調整し、押出機の先端に取り付けた発泡剤注入口から発泡剤としてノルマルブタンを、この樹脂100重量部に対し25重量部を圧入し、当該溶融樹脂組成物と混合して発泡性溶融混合物とした。この発泡性溶融混合物を押出機の出口に取り付けた冷却装置で136℃まで冷却した後、約2.2mmの平均厚みと約160mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートより、常温、大気圧下の雰囲気中に連続的に押出して発泡させ、樹脂発泡体の引き取り速度を調整しながら成形して、厚み30mm、幅600mm、長さ2000mmの板状樹脂発泡体を得た。この発泡体を発泡1時間後から40℃で10日間その後室温で20日間保存した後、セルサイズ、密度、独立気泡率、吸水率の評価を行なった。また、得られた発泡体を、発泡1時間後から40℃に10日間及び20日保存した後、発泡体内の発泡剤濃度の測定を行なった。更に、得られた発泡体内の、ガス(発泡剤)濃度が、検出限界限界0.1%未満になるまで、40℃で雰囲気下に置き、その後10日間23℃雰囲気下に保存した後、発泡体の熱伝導率の測定を行った。これらの結果を表1に示す。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0031】
[実施例2]
樹脂として実施例1記載の高密度ポリエチレン85重量%、ポリスチレン(MFR=0.9g/10分)14重量%、水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、タフッテックH1051(商品名))1重量%を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0032】
[実施例3]
樹脂として実施例1記載の高密度ポリエチレン49重量%、実施例2記載のポリスチレン39重量%、実施例2記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体12重量%を用い、樹脂100重量部に対して、発泡剤としてノルマルブタンを10重量部圧入し、約3mmの平均厚みと約210mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートを用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0033】
[実施例4]
樹脂として高圧法低密度ポリエチレン(密度0.922g/cm、MFR=0.2g/10分)を100重量部、気泡調整剤として実施例1記載のタルクを1.5重量部用い、発泡剤としてノルマルブタンを23重量部圧入し、発泡性溶融混合物を押出機の出口に取り付けた冷却装置で108℃まで冷却した以外は、実施例1と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0034】
[実施例5]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン69重量%、ポリスチレン(MFR=7.0g/10分)25重量%、水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、タフッテックH1043(商品名))6重量%を用い、気泡調整剤として実施例1記載のタルク1.0重量部、実施例1記載の帯電防止剤1.5重量部用い、樹脂、黒鉛、気泡核剤、及び帯電防止剤をスクリュー型押出機の供給領域に900kg/時間の速度で供給し、発泡剤としてノルマルブタンを39重量部圧入し、約1.5mmの平均厚みと約115mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートを用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0035】
[実施例6]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン72重量%、実施例5記載のポリスチレン25重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体3重量%を用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0036】
[実施例7]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン72重量%、実施例5記載のポリスチレン25重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体3重量%を用い、発泡剤としてノルマルブタンを16重量部圧入した以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0037】
[実施例8]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン72重量%、実施例5記載のポリスチレン25重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体3重量%を用い、発泡剤としてノルマルブタンを11重量部圧入し、約3mmの平均厚みと約210mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレート用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0038】
[実施例9]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン72重量%、実施例5記載のポリスチレン25重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体3重量%、黒鉛微粉末として板状人造黒鉛(昭和電工社製、UF−G10(商品名)、平均粒径4μm)0.7重量部、気泡核形成剤として実施例1記載のタルク1.0重量部を用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0039】
[実施例10]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン65重量%、実施例5記載のポリスチレン33重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体2重量%、黒鉛微粉末として実施例1記載の板状人造黒鉛3.5重量部、気泡核形成剤として実施例1記載のタルク0.5重量部を用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0040】
[実施例11]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン51重量%、実施例5記載のポリスチレン43重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体6重量%、黒鉛微粉末として実施例9記載の板状人造黒鉛2.0重量部、気泡核形成剤として実施例1記載のタルク0.2重量部を用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0041】
[実施例12]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン39重量%、実施例5記載のポリスチレン57重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体4重量%、黒鉛微粉末として天然燐片状黒鉛(中越黒鉛社製、BF−18A(商品名)、平均粒径19μm)4.0重量部、気泡核形成剤として実施例1記載のタルク0.5重量部、実施例1記載の帯電防止剤2.5重量部用い、発泡剤としてノルマルブタンを18重量部圧入し、約2.5mmの平均厚みと約180mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートを用いた以外は実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0042】
[実施例13]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン34重量%、実施例5記載のポリスチレン62重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体4重量%、黒鉛微粉末として膨張化黒鉛(中越黒鉛社製、BSP−20A(商品名)、平均粒径20μm)3.0重量部、気泡核形成剤は添加せず、実施例1記載の帯電防止剤1.0重量部用い、発泡剤としてノルマルブタンを15重量部圧入し、約3mmの平均厚みと約210mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートを用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、柔軟性を有していた。
【0043】
[実施例14]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン28重量%、実施例5記載のポリスチレン67重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体5重量%、黒鉛微粉末として実施例1記載の板状人造黒鉛2.0重量部、気泡核形成剤として実施例1記載のタルク0.5重量部を用い、発泡剤としてノルマルブタンを15重量部圧入し、約2.5mmの平均厚みと約180mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートを用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、若干強度が高いが、柔軟性を有していた。
【0044】
[実施例15]
樹脂として公知特許特開平9−25353記載の方法により合成されたポリプロピレン(エチレン含有量4.0重量%、MFR=1.2g/10分)38重量%、実施例1記載のポリスチレン60重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体2重量%、黒鉛微粉末として実施例1記載の板状人造黒鉛1重量部、気泡核形成剤として実施例1記載のタルク1.0重量部、実施例1記載の帯電防止剤1.0重量部を用い、発泡剤としてノルマルブタンを22重量部圧入し、発泡性溶融混合物を押出機の出口に取り付けた冷却装置で148℃まで冷却した以外は、実施例1と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していた。
【0045】
[比較例1]
樹脂として実施例1記載の高密度ポリエチレン100重量%、樹脂100重量部に対して気泡核形成剤として実施例1記載のタルク1.5重量部を用い、黒鉛微粉末及び帯電防止剤を添加しない以外、実施例1と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していたが、可燃性発泡剤の置換所要日数が長く、発泡後の帯電圧も10kV以上と高く、又、熱伝導率(λ)が0.0408W/(m・K)と実施例と比べると断熱性能の劣る発泡体であった。
【0046】
[比較例2]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン100重量%、樹脂100重量部に対して黒鉛微粉末として実施例1記載の板状人造黒鉛8重量部、実施例1記載の帯電防止剤を1重量部用い、気泡核形成剤を添加せず、発泡剤としてノルマルブタンを7.5重量部圧入し、約3.5mmの平均厚みと約240mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートを用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していたが、吸水率が1%以上あり、また、熱伝導率(λ)が0.0422W/(m・K)と断熱性能の悪い発泡体であった。
【0047】
[比較例3]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン13重量%、実施例5記載のポリスチレン81重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体6重量%、黒鉛微粉末として実施例1記載の板状人造黒鉛1重量部、気泡核形成剤として実施例1記載のタルク0.5重量を用い、帯電防止剤を添加せず、発泡剤としてノルマルブタンを10重量部圧入し、約3mmの平均厚みと約210mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートを用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、硬く、柔軟性が無く、可燃性発泡剤の置換所要日数が長く、発泡後の帯電圧も10kV以上と高い発泡体であった。
【0048】
[比較例4]
樹脂として実施例4記載の高圧法低密度ポリエチレン70重量%、実施例5記載のポリスチレン25重量%、実施例5記載の水素添加されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体5重量%、黒鉛微粉末として天然燐片状黒鉛(中越黒鉛工業所社製、HF−250A(商品名)、平均粒径270μm)2重量部、気泡核形成剤として実施例1記載のタルク2重量部、実施例1記載の帯電防止剤を1重量部用いた以外は、実施例4と同様に行った。得られた発泡体は、十分な柔軟性を有していたが、可燃性発泡剤の置換所要日数が長く、又、熱伝導率(λ)が0.0418W/(m・K)と実施例と比べると断熱性能の劣る発泡体であった。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の押出発泡体は、熱伝導率が低く、断熱性能に優れ、柔軟性を有し、且つ住宅等の断熱材等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を20重量%以上含む樹脂と、前記樹脂100重量部に対して平均粒径が1〜100μmである黒鉛微粉末0.1〜6重量部とからなる押出発泡体であって、発泡体の密度が5〜35kg/m、気泡径が0.1〜2mmであることを特徴とする押出発泡体。
【請求項2】
黒鉛微粉末が、天然燐片状黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、及び人造黒鉛から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の押出発泡体。
【請求項3】
独立気泡率が2〜80%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の押出発泡体。
【請求項4】
樹脂中に、芳香族系ポリマーが5〜80重量%含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の押出発泡体。
【請求項5】
樹脂中に、芳香族系ポリマーが5〜79.9重量%と、芳香族系モノマーとオレフィン系モノマーとのブロック共重合樹脂が0.1〜15重量%含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の押出発泡体。
【請求項6】
帯電防止剤が、樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の押出発泡体。
【請求項7】
ポリオレフィン系樹脂を20重量%以上含む樹脂と、前記樹脂100重量部に対して平均粒径が1〜100μmである黒鉛微粉末を0.1〜6重量部とを混合し、発泡剤として可燃性発泡剤を圧入し、押出して発泡させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の押出発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2007−39601(P2007−39601A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227429(P2005−227429)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】