説明

押出組成物

食品製造に使用するための押し出し表面活性成分の製造方法であって、押し出しの開始前、または押し出し中の加工工程中に、親水性乳化剤の添加によって担体を親水性化するが押し出すべき表面活性成分を後の工程まで添加しない方法を提供する。本製造方法によって製造される表面活性成分の押出物は、短時間でベーキング生地の増量をもたらし、優れた貯蔵安定性を有するため、ベーカリー製品の製造において有利な特性によって区別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化剤を含有する食品用出発生成物を製造するための押出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の食品製造において、食品添加剤の混合物はしばしば使用され、一般的には半最終製品として、構成成分の別の混合物中に組み込まれ、次いで、さらに加工される。計量と混合の必要がなくなるため、対応する組成物によって関連する作業が容易となり、製造の安全性が高まる。これらの予備生成物の製造によって、同じ化学組成物であるにもかかわらず、さらなる加工中に、その製造に使用する方法に応じて非常に異なる挙動を示す混合物となることが多い。そこで、化学組成物と特定の物理化学的特性だけでなく、その製造方法はこれらの予備混合物を使用する最終調製物の挙動に大きく影響する。
【0003】
欧州特許EP0153870B1は、パン焼き用組成物の製造に好適に用いられる、親油性表面活性物質を有する担体の易流動性粉末の形態での調整物を記載する。担体による加工の結果として、遥かに良好な湿潤性が親油性表面活性物質にもたらされる。噴霧乾燥によって通常製造される組成物は、このようにして、より経済的で、より簡易な押出方法によって初めて製造され、引き続いて製造されるパン焼き生地の改善された挙動によって区別されていた。
【特許文献1】欧州特許EP0153870B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
焼付け後に軽くてふっくらした生成物を得るため、パン生地(ドウ)を打ち、できるだけ多くのエアーを安定して取り込むように意図した、いわゆる起泡試験では、本発明による生成物は従来の生成物に対して明らかな利点を示した。
【0005】
それでもなお、食品、特に菓子類の製造のための乳化剤を含有する予備生成物の特性を改善する必要がある。製造方法は、簡易な方法で完結し得るものであるべきである。押し出された表面活性物質は、得られた最終生成物に反映されるその発泡性能と安定性について、改善された特性を示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、親水性乳化剤の添加によって担体を親水性化し、次いで押し出すべき表面活性物質を別の工程で添加する、押し出された表面活性物質の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、少なくとも一つの表面活性物質および少なくとも一つの親水性化担体を含有する組成物の押出方法であって、
a)担体を供給する工程、
b)少なくとも一つの親水性乳化剤を担体に添加することによって担体を親水性化し、親水性化担体を得る工程、
c)少なくとも一つの表面活性物質を親水性化担体に添加し、少なくとも一つの表面活性物質と親水性化担体を含有する組成物を得る工程、および
d)組成物を押し出す工程、
を含んでなり、親水性乳化剤を担体に添加した後に表面活性物質を親水性化担体に添加することを特徴とする方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
これは、特に2つの異なる手順を通じて達成し得る。押出の開始前に担体を親水性乳化剤と混合して、得られた混合物を押出機(例えば図1に示したもの)に供給することができ、もしくは、親水性乳化剤を押出機中で担体に添加して、押し出すべき表面活性物質をその後に押出工程を継続しながら補充のみ行う(例えば図2に示したもの)。好適な実施形態では、親水性乳化剤と表面活性物質の間には強い接触がなく、より多くの表面活性物質を添加する前に、親水性乳化剤が担体を親水性化するのに利用可能である。
【0008】
図1は、押出工程の一つの可能性ある形態を説明するものである。ここで、本発明による方法では、区画1に添加される担体は既に親水性化され得る(方法1)。
【0009】
図2は、押出工程の別の可能性ある形態を説明するものである。ここで、区画3への添加によって初めて担体が親水性化される(本発明による方法2)。
【0010】
驚くべきことに、本発明の方法によって得ることのできる表面活性物質の押し出された予備生成物は、貯蔵、湿潤性およびフロー特性における非常に良好な安定性を示すだけでなく、比較可能な市販の粉末状生成物に対して、発泡性能とペースト形態での安定性などの改善された適用特性も有すことが判明した。予備的な親水性化によって、表面活性物質の変更された構造または変更された混合が生じ、従って、表面活性物質の改善された適用性が生じ、順次、ペースト製造中の発泡工程に決定的な影響を与え、菓子類品目に軽くてより安定性の構造をもたらす
【0011】
本発明の製造方法は別の工程を含むが、これは製造を複雑にするものではなく、第二の変形では、該方法は「ワン・ポット法」としてでも実施することができる。試行で得られた結果は、押出方法は極めて一定の結果を与えることを示していた。
【0012】
担体
表面活性物質の押出物に適当な本発明による担体は、食品産業で使用される通常の主要な成分または充填剤である。これには主として、菓子類の製造において使用される小麦粉または澱粉などの物質(例えば小麦澱粉、とうもろこし澱粉、米澱粉、イモ澱粉)、加工澱粉、セルロースまたはセルロース誘導体および他の炭水化物、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、乳糖、デキストリン、マルトデキストリン、糖アルコールおよび麦芽誘導物質(例えば麦芽粉、麦芽エキス)、酵母食品、大豆生成物、例えば大豆粉、大豆タンパク質、増粘剤および親水コロイド(グアーガム、穀粉、キャロブガム、キサンタン、アルギネートを含む)、乳製品、例えば脱脂粉乳、全脂粉乳、乳清粉末、カゼイン、およびそれらの混合物が含まれるが、このリストは決して完全ではない。
澱粉および小麦粉は、菓子類の製造に好適に用いられる。
【0013】
親水性乳化剤親水性化剤
担体のための親水性化剤として使用し得る適当な乳化剤は、押出物の重量を基準に0.03〜10重量%の量、好ましくは0.1〜5重量%の量で用いられる。
【0014】
基本的に、親水性化剤は8を超えるHLB値を有するべきであり、好ましくは8を超える。
【0015】
乳化剤には、特に以下のものが含まれる:
(a)ソルビタンエステル、
(b)ポリソルベート、即ち、6〜22個、好ましくは12〜18個の炭素原子を含有する脂肪酸に基づくソルビタンモノ−、セスキ−、ジ−および/またはトリエステルへの1〜20molエチレンオキシドの付加生成物、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエートなどへの5〜15molエチレンオキシドの付加生成物:
(c)スクロースエステルなどの糖エステル、例えばスクロースモノパルミテートおよびステアレート、
(d)脂肪酸およびその塩など、
(e)約1〜40molエチレンオキシドで縮合された食用脂肪酸によるグリセロールの部分エステル。
【0016】
表面活性物質
食品製造のための押出物に加工された表面活性物質は親水性化剤(親水性乳化剤)とは異なり、好ましくは、より低いHLB値を有する。
食品製造に通常使用される表面活性物質には、特に以下のもの(単独または組み合わせて)が含まれる:
(a)ポリオールエステル、
(b)ポリハイドロール、
(c)6〜22個、好ましくは12〜18個の炭素原子を含有する脂肪酸に基づくモノ−およびジグリセリドならびにその工業用混合物、例えばラウリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリドまたはオレイン酸モノグリセリド、
(d)レシチン、
(e)プロピレングリコールエステル、
(f)エステル化モノグリセリド(ACETEM、ラクタム)。
【0017】
本発明の好適な実施形態において実施され得る押出
押出機中で、乾燥状またはペースト状の材料を回転スクリューによって前方へ輸送し、その過程で混合し、粒度を減少させ、圧縮および可塑化し、ならびに末端部を通じて押し出す。幾分乾燥状の出発物質は、重量式または容積式による投入装置を経由して押出機の主要部分に送られる。押出機のこの部分では、1本または2本のスクリューが中空シリンダー中で回転する。圧縮機の投与/充填は、スクリューの回転速度によって影響され得る。
【0018】
適用するせん断エネルギーに応じて、スクリューは比較的強力または非強力に(機械的なせん断および摩擦を通じて)、物質を混合および加熱する。こうしてポンプ送り可能なペーストが形成され、ノズルから押し出され、微粉砕化される。
【0019】
押出工程は50〜150℃、好ましくは130℃のノズル温度で実施される。
【0020】
本発明の利点は、上記した表面活性物質の添加前に親水性化剤を担体材料に添加するという事実によって発現される。これを別の先行するプロセス段階で行うことができ、もしくは、これを押出工程に統合してよい。いずれの場合にも、表面活性物質を添加する前に親水性化を行わなければならない。
【0021】
本発明による方法の特定の実施形態
請求項によって網羅される実施形態のほかに、本発明は以下の実施形態も包含する。
1.少なくとも一つの表面活性物質および少なくとも一つの親水性化担体を含有する組成物の押出方法であって、
a)担体を供給する工程、
b)少なくとも一つの親水性乳化剤を担体に添加することによって担体を親水性化し、親水性化担体を得る工程、
c)少なくとも一つの表面活性物質を親水性化担体に添加し、少なくとも一つの表面活性物質と親水性化担体を含有する組成物を得る工程、および
d)組成物を押し出す工程、
を含んでなり、親水性乳化剤を担体に添加した後に表面活性物質を親水性化担体に添加することを特徴とする、方法。
【0022】
2.担体を親水性乳化剤と混合し、得られた混合物を押出機に供給することを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0023】
3.押出中に親水性乳化剤を担体に添加し、押し出しすべき表面活性物質は引き続き押出を継続しながら添加することを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0024】
4.澱粉、加工澱粉、糖類、炭水化物、タンパク質および小麦粉からなる群から選択される物質を担体として使用することを特徴とする、実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
【0025】
5.押し出すべき表面活性物質は、モノ−およびジグリセリド、ポリオールエステル、プロピレングリコールエステル、ACETEM、LACTEM、DATEM、CITREMからなる群から選択されることを特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載の方法。
【0026】
6.8を超えるHLB値、好ましくは12を超えるHLB値を有する親水性乳化剤を、担体を親水性化するために使用することを特徴とする、実施形態1〜5のいずれかに記載の方法。
【0027】
7.約20molのエチレンオキシドで縮合された食用脂肪酸によるソルビトールの部分エステル(ポリソルベート、ポリオキシエチレン−(20)−ソルビタンモノオレエート)を、担体を親水性するために使用することを特徴とする、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法
【0028】
8.脂肪酸の塩を、担体を親水性するために使用することを特徴とする、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
【0029】
9.約1〜40molのエチレンオキシドで縮合された食用脂肪酸グリセロールの部分エステルを、担体を親水性するために使用することを特徴とする、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
【0030】
10.担体を親水性するために親水性乳化剤を担体の乾燥重量を基準に0.03〜10重量%の量で使用することを特徴とする、実施形態1〜9のいずれかに記載の方法。
【0031】
11.押出工程を50〜150℃の温度で行うことを特徴とする、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
【0032】
12.実施形態1〜11のいずれかに記載の方法によって製造された押し出し表面活性物質
【0033】
13.含泡食品を製造するための、実施形態12に記載の物質の使用。
【0034】
14.菓子類を製造するための、実施形態12に記載の物質の使用。
【0035】
15.デザートを製造するための、実施形態12に記載の物質の使用。
【0036】
16.アイスクリームを製造するための、実施形態12に記載の物質の使用。
【0037】
17.キャンディを製造するための、実施形態12に記載の物質の使用。
【0038】
18.エマルジョンを製造するための、実施形態12に記載の物質の使用。
【実施例】
【0039】
押出工程:
押出機:Werner & Pfleiderer ZSK 40 二軸スクリュー押出機、ブラベンダー重量式投与システム。
【0040】
【表1】

【0041】
粉末投与:21kg/h セグメント1
表面活性物質:脂肪酸のポリグリセロールエステル(FDA−CFR−No.172.854,EEC No.475;Polymuls)と食用脂肪酸のモノ−およびジグリセリド(EEC No. E 471: Monomuls 90−35)の混合物
投与:8.9kg/h セグメント4中
水投与:0.9kg/h(+0.4kg/h 親水性添加剤) セグメント3中
ダイ・プレート:4x1mm
スクリュー速度:200r.p.m.
温度:
セグメント1:室温
セグメント2〜7:80℃
セグメント8:130℃
【0042】
実施例1:
天然澱粉(Remy DR、Remy Industries、ベルギー)を粉末状親水性乳化剤(カリウムステアレート、LIGA Kaliumstearat V pflanzlich、Peter Greven Fett−Chemie GmbH & Co. KG、ドイツ)5重量%と混合し、得られた混合物を上述の押出工程で使用した。
比較のため、親水性粉末状乳化剤を添加しない方法(Nexusによって記載された方法に相当する)を実施した。
【0043】
実施例2:
50%のTWEEN 20と50%のTWEEN 80の混合物からなる親水性乳化剤を、水中に31.25%溶解し、澱粉の添加(実施例1に相当)と表面活性物質の添加前の間に押出工程へ添加した。
比較のため、水相中に親水性乳化剤を添加しない方法(Nexusによって記載された方法に相当する)を実施した。
【0044】

【0045】
全構成成分を室温で混合し、Hobart N50G中にて、レベル3で2分45秒間およびレベル2で30秒間;およびHobart A200中にて、レベル3で6分間およびレベル2で30秒間、泡立たせた。得られたペーストの密度を決定した。得られた値を以下に示す。
【0046】
実施例1について:
a)天然澱粉に基づく乳化剤によるペースト密度(Nexus法):520g/L
b)カリウムステアレートと混合した天然澱粉に基づく乳化剤によるペースト密度:320g/L
c)市販の押し出し乳化剤によるペースト密度(EP0153870、Nexus)、Emulpals 106、バッチNo.2909388:384g/L
【0047】
実施例2について:
a)天然澱粉に基づく乳化剤によるペースト密度(Nexus法):520g/L
b)天然澱粉と水中の親水性添加剤に基づく乳化剤によるペースト密度:336g/L
c)市販の押し出し乳化剤によるペースト密度(EP0153870、Nexus)、Emulpals 106、バッチNo.2909388:384g/L
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】押出の開始前に担体を親水性乳化剤と混合して、得られた混合物を押出機に供給する手順の一例を示す。
【図2】親水性乳化剤を押出機中で担体に添加して、押し出すべき表面活性物質をその後に押出工程を継続しながら補充のみ行う手順の一例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの表面活性物質および少なくとも一つの親水性化担体を含有する組成物の押出方法であって、
a)担体を供給する工程、
b)少なくとも一つの親水性乳化剤を担体に添加することによって担体を親水性化し、親水性化担体を得る工程、
c)少なくとも一つの表面活性物質を親水性化担体に添加し、少なくとも一つの表面活性物質と親水性化担体を含有する組成物を得る工程、および
d)組成物を押し出す工程、
を含んでなり、親水性乳化剤を担体に添加した後に表面活性物質を親水性化担体に添加することを特徴とする、方法。
【請求項2】
担体を親水性乳化剤と混合し、得られた混合物を押出機に供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
押出中に親水性乳化剤を担体に添加し、押し出しすべき表面活性物質はその後に押出を継続しながら添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
澱粉、加工澱粉、糖類、炭水化物、タンパク質および小麦粉からなる群から選択される物質を担体として使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ソルビタンエステル、エトキシル化ソルビタンエステル、糖エステルおよびポリオールエステルからなる群から選択される物質を、担体を親性化するための親水性乳化剤として使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
5を超えるHLB値を有する親水性乳化剤を、担体を親水性化するために使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
担体を親水性化するために、親水性乳化剤を担体の重量を基準に0.03〜10重量%の量で使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
50〜150℃の温度で押出を行うことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって得ることのできる押出組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物の菓子類を製造するための使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−519022(P2009−519022A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544807(P2008−544807)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011601
【国際公開番号】WO2007/076911
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】