説明

押圧方法、押圧装置、接続構造、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置

【課題】端子部と電極とを、絶縁性樹脂を用いて低コストで確実に接続することのできる押圧方法を提供する。
【解決手段】本発明の押圧方法は、表面に複数の凸部81が形成された端子部73を押圧ツール201で電極47に押圧する工程を含む。複数の凸部81は、端子部73の延在方向に所定間隔Wpで配置される。複数の凸部81の前記延在方向の長さは互いに等しい。押圧ツール201は、端子部73を電極47に向けて押圧する押圧面201Aを有し、押圧面201Aの前記延在方向の長さWtは、所定間隔Wpの自然数倍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧方法、押圧装置、接続構造、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロデバイスを製造する方法の1つとして液滴吐出法(インクジェット法)が知られている。液滴吐出法は、デバイスを形成するための材料を含む液状体を液滴状にして液滴吐出ヘッドより吐出するものである。例えば、特許文献1には、液滴吐出ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)に関する技術の一例が開示されている。特許文献1に開示されている液滴吐出ヘッドにおいては、駆動回路部(ICドライバ)と駆動素子(圧電素子)とがワイヤボンディングの手法によって接続されている。
【0003】
ところで、液滴吐出法に基づいてマイクロデバイスを製造する際、マイクロデバイスの更なる微細化の要求に応えるために、液滴吐出ヘッドに設けられたノズル開口部どうしの間の距離(ノズルピッチ)はできるだけ小さい(狭い)ことが好ましい。上記圧電素子はノズル開口部に対応して複数形成されるため、ノズルピッチを小さくすると、そのノズルピッチに応じて圧電素子どうしの間の距離も小さくする必要がある。ところが、圧電素子どうしの間の距離が小さくなると、それら複数の圧電素子のそれぞれとICドライバとをワイヤボンディングの手法によって接続することが困難となる。
【0004】
このため、例えば特許文献2には、液滴吐出ヘッドの溝内に形成された圧電素子の電極とICドライバとを、可撓性基板を介して接続した液滴吐出装置が記載されている。特許文献2に開示されている液滴吐出装置によれば、溝の深さ方向に向けて下がる可撓性基板の端部(接続部)を水平方向に折り曲げて、圧電素子の電極に対して可撓性基板の端部を面接触させて接続している。
【0005】
従来、こうした可撓性基板の端子部と、接続対象となる接続部品の電極との接続においては、例えば特許文献3に示すように、可撓性基板の端子部と接続部品の電極との間に異方性導電性樹脂(ACP;Anisotropic Conductive Paste)を接合材として挟んで接合してなるものが知られている。異方性導電性樹脂は、絶縁性樹脂に導電性粒子(例えば銀粒子)を分散させたものであり、端子部の接合方向だけに導電性が得られ、端子部の配列方向は絶縁性を確保することができるものである。
【0006】
しかしながら、異方性導電性樹脂は極めて高価であり、また、隣接する端子部間の形成ピッチを狭めると端子部間の絶縁性が低下するため、端子部を狭い間隔で高密度に配列できないという課題があった。このため、例えば特許文献4及び5には、可撓性基板の端子部と接続部品の電極との間に比較的安価な絶縁性樹脂(NCP;Non Conductive Paste)を挟んで接合するとともに、可撓性基板のそれぞれの端子部を接続部品の電極に確実に接触させることにより、可撓性基板と接続部品とを電気的に接続したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−127379号公報
【特許文献2】特開2008−263049号公報
【特許文献3】特開2006−086153号公報
【特許文献4】特開平5−166884号公報
【特許文献5】特開昭62−184788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
可撓性基板の端子部と接続部品の電極とを絶縁性樹脂を用いて接続する場合、絶縁性樹脂には導電性粒子が含まれていないので、可撓性基板の端子部と接続部品の電極との接触を確実に得るためには、押圧ツールによって可撓性基板に大きな荷重をかけて、可撓性基板の端子部と接続部品の電極との間の絶縁性樹脂を排除しなければならない。そのためには、異方性導電性樹脂を用いて接続する場合に比べておよそ15倍の荷重が必要となる。
【0009】
可撓性基板に大きな荷重を加えると、接続部品に対してダメージを与えることがある。そのため、例えば特許文献5では、可撓性基板の端子部の幅を部分的に細くして、押圧部の単位面積当たりの荷重を大きくしている。
【0010】
しかしながら、特許文献5の構造では、可撓性基板の端子部の幅の狭い部分が一定の間隔で周期的に配置されているため、可撓性基板の端子部と接続部品の電極との押圧部が、可撓性基板の端子部の延在方向でずれると、可撓性基板の端子部と接続部品の電極との押圧部の面積が変化する。そのため、同じ荷重を加えた場合でも、単位面積当たりの荷重が小さくなり、導通不良を引き起こす懸念があった。
【0011】
本発明の目的は、端子部と電極とを、絶縁性樹脂を用いて低コストで確実に接続することのできる押圧方法及び押圧装置を提供すること、また、このような押圧方法及び押圧装置を用いることにより、接続信頼性に優れた接続構造、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の押圧方法は、表面に複数の凸部が形成された端子部を押圧ツールで電極に押圧する押圧工程を含み、前記複数の凸部は、前記端子部の延在方向に所定間隔で配置され、前記複数の凸部の前記延在方向の長さは互いに等しく、前記押圧ツールは、前記端子部を前記電極に向けて押圧する押圧面を有し、前記押圧面の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、端子部と電極との押圧部が端子部の延在方向においてずれても、端子部と電極との押圧部の面積は変わらない。そのため、押圧部の単位面積当たりの荷重の大きさが一定になり、導通不良の発生が抑えられる。
【0014】
前記端子部の表面に形成される凸部の個数をmとし、前記押圧面の前記延在方向の長さを前記所定間隔のn倍としたときに(m,nはいずれも自然数)、m>nなる関係が満たされることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、押圧ツールの押圧位置が若干ずれても、確実に凸部の配置領域を押圧することができる。よって、導通不良の発生が抑えられ、歩留まりが向上する。
【0016】
前記凸部の前記延在方向の長さは、前記凸部間の凹部の前記延在方向の長さ以下であることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、端子部における凸部の面積が小さくなり、押圧部の単位面積当たりの荷重が大きくなる。よって、導通不良の発生が抑えられ、歩留まりが向上する。
【0018】
前記端子部を前記押圧ツールで前記電極に押圧する前に、加工ツールを用いて前記端子部の表面に前記複数の凸部をプレス加工する工程を含むことが望ましい。
【0019】
この構成によれば、端子部を電極に押圧する前に、端子部の表面の凸部の間隔を加圧ツールによって調整することができる。例えば、表面に凸部が形成された端子部を有する部材を購入した場合のように、凸部の間隔を任意に変更できない場合には、予め設定された凸部の間隔に合わせて特定の押圧面の幅を有する押圧ツールを選択する必要がある。しかし、本発明のように加工ツールを用いて凸部の間隔を調節できる場合には、押圧ツールの押圧面の幅に合わせて凸部の間隔を調節すればよいため、押圧ツールの選択幅が広がるというメリットがある。
【0020】
本発明の押圧装置は、表面に複数の凸部が形成された端子部を電極に押圧する押圧ツールを含み、前記複数の凸部は、前記端子部の延在方向に所定間隔で配置され、前記複数の凸部の前記延在方向の長さは互いに等しく、前記押圧ツールは、前記端子部を前記電極に向けて押圧する押圧面を有し、前記押圧面の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、端子部と電極との押圧部が端子部の延在方向においてずれても、端子部と電極との押圧部の面積は変わらない。そのため、押圧部の単位面積当たりの荷重の大きさが一定になり、導通不良の発生が抑えられる。
【0022】
前記端子部の表面に前記複数の凸部をプレス加工する加工ツールを含むことが望ましい。
【0023】
加工ツールを備えない場合には、予め設定された凸部の間隔に合わせて特定の押圧面の幅を有する押圧ツールを選択する必要がある。しかし、凸部の幅を自在に制御可能な加工ツールを備える場合には、押圧ツールの押圧面の幅に合わせて凸部の間隔を調節すればよい。そのため、押圧ツールの選択幅が広がるというメリットがある。
【0024】
本発明の押圧方法は、端子部と電極とを接続する際に広く適用可能である。端子部と電極はどのような基板に形成されていても良い。端子部を可撓性基板の表面に形成した場合、前記押圧ツールの押圧面は、前記可撓性基板の前記端子部が形成された面とは反対側の面と接して当該面を前記電極にむけて押圧する面であり、前記押圧面の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍である。
【0025】
本発明の接続構造は、表面に複数の凸部が形成された端子部を電極に押圧して接続した接続構造であって、前記複数の凸部は、前記端子部の延在方向に所定間隔で配置され、前記複数の凸部の前記延在方向の長さは互いに等しく、前記端子部と前記電極とが押圧される押圧部の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、端子部と電極との押圧部が端子部の延在方向においてずれても、端子部と電極との押圧部の面積は変わらない。そのため、押圧部の単位面積当たりの荷重の大きさが一定になり、導通不良の発生が抑えられる。
【0027】
本発明の液滴吐出ヘッドは、第1基板と、前記第1基板上に形成された駆動素子と、前記第1基板の前記駆動素子側に設けられた第2基板と、前記駆動素子を駆動する駆動回路部と、前記駆動素子と前記駆動回路部とを接続する配線が形成された可撓性基板と、を有し、前記配線の端部には、前記駆動素子の電極と接続する端子部が形成され、前記端子部の表面には、複数の凸部が形成され、前記複数の凸部は、前記端子部の延在方向に所定間隔で配置され、前記複数の凸部の前記延在方向の長さは互いに等しく、前記端子部と前記電極とが押圧される押圧部の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、端子部と電極との押圧部が端子部の延在方向においてずれても、端子部と電極との押圧部の面積は変わらない。そのため、単位面積当たりの荷重の大きさが一定になり、導通不良の発生が抑えられる。
【0029】
本発明の液滴吐出装置は、本発明の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、端子部と電極との導通不良の発生が抑えられるので、接続信頼性に優れた液滴吐出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】液滴吐出ヘッドの一形態の外観斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。
【図3】液滴吐出ヘッドをノズル開口側から見た斜視図の一部破断図である。
【図4】図1のA−A線矢視断面図である。
【図5】OLB接続部の要部を拡大して示す図である。
【図6】フレキシブル回路基板の平面図である。
【図7】フレキシブル回路基板の製造方法の説明図である。
【図8】フレキシブル回路基板の製造方法の説明図である。
【図9】フレキシブル回路基板をリザーバ形成基板に押圧する押圧装置の概略図である。
【図10】フレキシブル回路基板をリザーバ形成基板に押圧する工程の説明図である。
【図11】押圧工程の課題を説明するための説明図である。
【図12】本発明の押圧工程の効果を説明するための説明図である。
【図13】液滴吐出装置の第1形態の概略斜視図である。
【図14】液滴吐出装置の第2形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。液滴吐出ヘッドの長手方向(ノズルの配列方向)をY軸方向、液滴吐出ヘッドの短手方向(Y軸方向と直交する方向)をX軸方向、液滴吐出ヘッドの厚さ方向(X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向)をZ軸方向とする。
【0033】
[液滴吐出ヘッド]
図1は液滴吐出ヘッドの一形態を示す外観斜視図、図2は液滴吐出ヘッドの分解斜視図、図3は液滴吐出ヘッドをノズル開口側から見た斜視図の一部破断図、図4は図1のA−A線矢視断面図、図5は可撓性基板の接続部を拡大して示す断面図、図6は可撓性基板の平面図である。
【0034】
図1〜図4に示すように、液滴吐出ヘッド1は、液滴が吐出されるノズル開口31を備えたノズル基板21と、ノズル基板21の上面に設けられた流路形成基板22(第1基板)と、流路形成基板22の上面に設けられ、圧電素子23の駆動によって変位する振動板24と、振動板24の上面に設けられたリザーバ形成基板25(第2基板)と、リザーバ形成基板25の上面側に設けられたケース部材101と、圧電素子23とドライバIC(駆動回路部)26とを電気的に接続する配線が形成された可撓性基板27と、を備えた基体1Aを主体に構成されている。液滴吐出ヘッド1の動作は、外部コントローラCTによって制御される。なお、本実施形態では、一つの基体1Aにより液滴吐出ヘッドを構成しているが、複数の基体1Aをユニット化することで液滴吐出ヘッドを構成するようにしてもよい。
【0035】
図3に示すように、流路形成基板22の下面側は開口しており、その開口を覆うようにノズル基板21が流路形成基板22の下面に接続されている。ノズル基板21は、例えばステンレスやガラスセラミックスによって構成されている。ノズル基板21には、ノズル基板21を厚み方向に貫通する貫通孔であって機能液の液滴を吐出するノズル開口31が複数形成されている。Y軸方向に複数並んで形成されたノズル開口31によって、第1〜第4のノズル開口群31A〜31Dが構成されている。第1ノズル開口群31Aと第2ノズル開口群31BとはX軸方向に関して対向配置され、第3ノズル開口群31Cと第4ノズル開口群31DとはX軸方向に関して対向配置されている。第3ノズル開口群31Cは第1ノズル開口群31Aに対してY軸方向で隣り合うように形成され、第4ノズル開口群31Dは第2ノズル開口群31Bに対してY軸方向で隣り合うように形成されている。
【0036】
図3では、第1から第4のノズル開口群31A〜31Dがそれぞれ6個のノズル開口31によって構成されているように示されているが、実際には、例えば720個程度のノズル開口31が形成されている。
【0037】
流路形成基板22の内側には複数の隔壁35が形成されている。流路形成基板22は、例えば剛体であるシリコン単結晶によって形成されている。複数の隔壁35は、流路形成基板22の母材であるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。流路形成基板22の下面には例えば接着剤や熱溶着フィルムなどを介してノズル基板21が固定されている。流路形成基板22の上面には振動板24が設けられている。流路形成基板22と、ノズル基板21と、振動板24とで囲まれた空間によって、ノズル開口31より吐出される機能液が配置される圧力発生室36が形成されている。圧力発生室36は、第1から第4のノズル開口群31A〜31Dのそれぞれを構成する複数のノズル開口31に対応するよう、Y軸方向に複数並んで形成されている。各圧力発生室36は、隔壁35によって仕切られている。
【0038】
第1ノズル開口群31Aに対応して形成された複数の圧力発生室36によって第1圧力発生室群36Aが構成されている。第2ノズル開口群31Bに対応する複数の圧力発生室36によって第2圧力発生室群36Bが構成されている。第3ノズル開口群31Cに対応する複数の圧力発生室36によって第3圧力発生室群36Cが構成されている。第4ノズル開口群31Dに対応する複数の圧力発生室36によって第4圧力発生室群36Dが構成されている。第1圧力発生室群36Aと第2圧力発生室群36BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されており、それらの間には隔壁22Kが形成されている。第3圧力発生室群36Cと第4圧力発生室群36DとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されており、それらの間には隔壁22Kが形成されている。
【0039】
図3及び図4に示すように、第1圧力発生室群36Aを構成する複数の圧力発生室36の一方の端部は、リザーバ37の一部を構成する供給路38を介して連通部39により互いに連通されている。連通部39は、流路形成基板22に形成された貫通孔であって、リザーバ部51に接続されている。連通部39及びリザーバ部51は、いずれもY軸方向に延びるように形成されている。リザーバ部51と連通部39とによってリザーバ37が構成されている。リザーバ37は、第1圧力発生室群36Aを構成する複数の圧力発生室36の共通の機能液保持室(インク室)となっている。リザーバ形成基板25には、各連通部39の側壁に接続されて各連通部39に機能液を導入する導入路52が形成されている。機能液導入口58より導入された機能液は、導入路52を介してリザーバ37に流れ込み、供給路38を経て、第1圧力発生室群36Aを構成する複数の圧力発生室36のそれぞれに供給される。
【0040】
第2〜第4圧力発生室群36B〜36Dを構成する圧力発生室36の端部も、それぞれ供給路38を介して連通部39によって互いに連通されている。そして、機能液導入口58より導入された機能液は、リザーバ37に流れ込み、供給路38を経て、第2〜第4圧力発生室群36B〜36Dを構成する複数の圧力発生室36のそれぞれに供給される。
【0041】
リザーバ形成基板25は、例えば流路形成基板22と同一材料であるシリコン単結晶をエッチングすることで形成されている。リザーバ形成基板25は、例えば熱酸化により表面に絶縁膜が形成された状態となっている。なお、リザーバ形成基板25としては、流路形成基板22の熱膨張率とほぼ同一の熱膨張率を有する材料によって形成されていることが好ましく、例えばガラスやセラミックス材料などを用いてもよい。
【0042】
流路形成基板22とリザーバ形成基板25との間に配置された振動板24は、流路形成基板22の上面を覆うように設けられた弾性膜41と、弾性膜41の上面に設けられた下電極膜42とを備えている。弾性膜41は、例えば厚さ1〜2μm程度の二酸化シリコンによって形成されており、下電極膜42は、例えば厚さ0.2μm程度の白金などによって形成されている。なお、本実施形態において、下電極膜42は、複数の圧電素子23に共通する電極となっている。
【0043】
振動板24を変位させるための圧電素子23は、下電極膜42の上面に設けられた圧電体膜45と、圧電体膜45の上面に設けられた上電極膜46と、上電極膜46の引出配線であるリード電極47(電極)とを備えている。圧電体膜45は、例えば厚さ1μm程度の金属酸化物によって構成されている。上電極膜46は、例えば厚さ0.1μm程度の白金などによって構成され、リード電極47は、例えば厚さ0.1μm程度の金などによって構成されている。なお、リード電極47と下電極膜42との間には、絶縁膜(図示略)が設けられている。
【0044】
圧電素子23は、複数のノズル開口31及び圧力発生室36のそれぞれに対応するように複数設けられている。圧電素子23は、ノズル開口31ごと(圧力発生室36ごと)に設けられている。下電極膜42は複数の圧電素子23の共通電極として機能し、上電極膜46及びリード電極47は複数の圧電素子23の個別電極として機能する。
【0045】
なお、圧電素子23は、圧電体膜45、上電極膜46及びリード電極47に加えて下電極膜42を含むものであってもよい。すなわち、本実施形態における下電極膜42は、圧電素子23としての機能と振動板24としての機能とを兼ね備える構成としてもよい。本実施形態では、弾性膜41及び下電極膜42によって振動板24が構成されているが、弾性膜41を省略して下電極膜42が弾性膜41の機能を兼ね備える構成としてもよい。
【0046】
第1ノズル開口群31Aを構成する各ノズル開口31と対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子23により、第1圧電素子群23Aが形成されている。第2ノズル開口群31Bを構成する各ノズル開口31と対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子23により、第2圧電素子群23Bが形成されている。第1圧電素子群23Aと第2圧電素子群23BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。図4には図示されていないが、第3ノズル開口群31Cを構成する各ノズル開口31と対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子23により、第3圧電素子群23Cが形成されている。第4ノズル開口群31Dを構成する各ノズル開口31と対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子23により、第2圧電素子群23Dが形成されている。第3圧電素子群23Cと第4圧電素子群23DとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。
【0047】
リザーバ形成基板25の上面には、コンプライアンス基板53が接合されている。コンプライアンス基板53は、封止膜54及び固定板55を有する。封止膜54は、例えば厚さ6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルムのような剛性が低く可撓性を有する材料によって形成されている。封止膜54によってリザーバ部51の上部が封止されている。固定板55は、例えば厚さ30μm程度のステンレス鋼のような金属などの硬質の材料によって形成されている。固定板55のうち、リザーバ部51に対応する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部56となっている。リザーバ部51の上部は、可撓性を有する封止膜54のみによって封止されたものとなっている。リザーバ部51の上部の封止膜54は、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部57となっている。コンプライアンス基板53上には、ケース部材101が設けられている。
【0048】
リザーバ部51の外側のコンプライアンス基板53及びケース部材101には、導入路52に連通してリザーバ部51に機能液を供給するための機能液導入口58が形成されている。通常、機能液導入口58からリザーバ部51に機能液が供給されると、例えば圧電素子23の駆動時の機能液の流れや周囲の熱などによってリザーバ部51内に圧力変化が生じる。しかしながら、リザーバ部51の上部が封止膜54のみによって封止された可撓部57となっているので、可撓部57が撓み変形してその圧力変化を吸収する。したがって、リザーバ部51内は一定の圧力に保持される。なお、他の部分は固定板55によって十分な強度に保持されている。ケース部材101は、可撓部57の変形を損なわないように可撓部57に非接触状態で設けられている。
【0049】
リザーバ形成基板25のX軸方向における中央部には、Y軸方向に延びる溝状の開口部60が形成されている。開口部60によって、リザーバ形成基板25は、第1圧力発生室群36Aに対応して設けられた第1圧電素子群23Aを封止する第1封止部61Aと、第2圧力発生室群36Bに対応して設けられた第2圧電素子群23Bを封止する第2封止部61Bとに分けられている。図4には図示されていないが、開口部60によって、第3圧力発生室群36Cに対応して設けられた第3圧電素子群23Cを封止する第3封止部61Cと、第4圧力発生室群36Dに対応して設けられた第4圧電素子群23Dを封止する第4封止部61Dとに分けられている。開口部60においては、流路形成基板22(隔壁22K)の一部が露出している。
【0050】
開口部60は、X軸方向に並んだ2つずつの開口部60がY軸方向に延びる壁部25Aにより仕切られており、それぞれの開口部60からX軸方向外側の領域に、第1から第4圧電素子群23A〜23Dを振動板24との間で封止する第1および第2封止部61A,61Bと、第3および第4封止部61C,61Dとが形成されている。第1封止部61Aは、第1圧力発生室群36Aに対応する第1圧電素子群23Aを振動板24との間で封止し、第2封止部61Bは、第2圧力発生室群36Bに対応する第2圧電素子群23Bを振動板24との間で封止している。第3封止部61Cは、第3圧力発生室群36Cに対応する第3圧電素子群23Cを振動板24との間で封止し、第4封止部61Dは、第4圧力発生室群36Dに対応する第4圧電素子群23Dを振動板24との間で封止している。
【0051】
リザーバ形成基板25のうち、圧電素子23と対向する領域には、圧電素子23の運動を阻害しない程度の空間が確保されており、この空間を密封可能な圧電素子保持部62が形成されている。圧電素子保持部62は、第1および第2封止部61A,61Bと、第3および第4封止部61C,61Dのそれぞれに形成されており、第1から第4の圧電素子群23A〜23Dを覆う大きさで形成されている。また、圧電素子23のうち、少なくとも圧電体膜45は、この圧電素子保持部62内に密封されている。
【0052】
リザーバ形成基板25は、圧電素子23を外部環境から遮断し、圧電素子23を封止するための封止部材としての機能を有している。リザーバ形成基板25で圧電素子23を封止することにより、水分などの外部環境による圧電素子23の破壊を防止することができる。本実施形態では、圧電素子保持部62の内部を密封した状態としただけであるが、例えば圧電素子保持部62内の空間を真空や、窒素またはアルゴン雰囲気などとすることで圧電素子保持部62内を低湿度に保持することができ、圧電素子23の破壊をより確実に防止することができる。
【0053】
第1封止部61Aの圧電素子保持部62によって封止されている圧電素子23のうち、リード電極47の一方の端部は、第1封止部61Aの外側まで延びており、開口部60において露出した流路形成基板22上に配置されている。第2封止部61Bの圧電素子保持部62によって封止される圧電素子23のうち、リード電極47の他方の端部は、第2封止部61Bの外側まで延びており、開口部60において露出した流路形成基板22上に配置されている。第3封止部61Cの圧電素子保持部62によって封止されている圧電素子23のうち、リード電極47の一方の端部は、第3封止部61Cの外側まで延びており、開口部60において露出した流路形成基板22上に配置されている。第4封止部61Dの圧電素子保持部62によって封止される圧電素子23のうち、リード電極47の他方の端部は、第4封止部61Dの外側まで延びており、開口部60において露出した流路形成基板22上に配置されている。
【0054】
ケース部材101のX軸方向における中央部には、Y軸方向に沿って形成される開口部102が形成されている。開口部102は、少なくともリザーバ形成基板25に形成された開口部60の開口領域を含む大きさとされており、図1及び図2に示されるようにドライバIC26の保持領域103が切欠状に形成されている。
【0055】
ドライバIC26は、例えば回路基板や駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を有するドライバICであり、第1から第4のノズル開口群31A〜31Dに応じて4つ設けられている。圧電素子23はドライバIC26により駆動される。各ドライバIC26は、可撓性基板27の一方の面の所定領域(実装領域)にフリップチップ実装されている。ドライバIC26は、図4及び図5に示すように、ケース部材101に形成された開口部102の保持領域103の内側面103aに樹脂65によってモールドされている。
【0056】
図6に示すように、可撓性基板27Aは、例えば厚さ25μm程度のポリイミドからなる絶縁性のフィルム基材(可撓性基材)71を備えている。フィルム基材71の主面71aには、銅などの導電性材料からなる第1配線パターン72、第2配線パターン74、グランド配線76、端子部73が、プリント方式により電解メッキやエッチングなどの手法によって形成されている。
【0057】
フィルム基材71の1辺端には複数の端子部73からなる端子列73Aが形成されている。端子列73Aは、対応する圧電素子群230Aを構成する複数の圧電素子23(リード電極47)のそれぞれに端子部73が接続するようにパターニングされたものである。各端子部73は、対応する圧電素子群230Aを構成する複数の圧電素子23のそれぞれに対向するように、Y軸方向に複数(例えば720個)が並列した状態に形成されている。第1配線パターン72は、端子列73Aの各端子部73から各々延出する複数の配線72aにより構成されており、各配線72aの端子部73と反対側の端部はドライバIC26Aの端子部28に接続されている。各端子部73と圧電素子群230Aを構成する複数の圧電素子23のリード電極47とがそれぞれ接続することにより、ドライバIC26Aは端子列73Aを介して圧電素子群230Aと電気的に接続されている。
【0058】
図5に示したように、ドライバIC26Aとフィルム基材71との間には樹脂78が配置されている。これによってフィルム基材71とドライバIC26Aとの接続強度が高められ、各端子部28と各配線72aとの接続状態が確保されている。また、ドライバIC26Aの端子部29には、グランド配線76と入力信号線78とが接続されている。グランド配線76および入力信号線78は、フィルム基材71の端部に延びており、フィルム基材71の1辺端には外部信号入力部77が形成されている。外部信号入力部77から入力された外部信号は、入力信号線78を介してドライバIC26Aへと入力される。
【0059】
可撓性基板27Aは、曲げ線Oに沿って折り曲げられるようになっている。これにより、可撓性基板27Aのうち、曲げ線Oよりも右側の領域(端子列73Aが形成された領域。以下、接続部27bとする)に対して、ドライバIC26Aが実装される部分であって曲げ線Oよりも左側の領域(第1配線パターン72、第2配線パターン74、グランド配線76が形成された領域。以下、立ち上がり部27aとする)をそれぞれ立ち上げられるようになっている。
【0060】
可撓性基板27Aは、曲げ線Oに沿って折り曲げられた後、接続部27bが開口部60(図5参照)内に挿入される。そして、接続部27bに設けられた端子部73と圧電素子23のリード電極47とが直接接触して、両者の導通が図られている。フィルム基材71と流路形成基板22(詳しくは振動板24)との間には樹脂79が配置されている。これによってフィルム基材71と流路形成基板22との接続強度が高められ、各端子部73と各リード電極47との接続状態が確保されている。
【0061】
図5に示したように、可撓性基板27とケース部材101との間には樹脂65が配置されており、これによって可撓性基板27に設けられたドライバIC26Aがケース部材101の保持領域103の内側面103aにリザーバ形成基板25の面方向(XY平面)に対して垂直状態で固定されている。
【0062】
なお、図6では、可撓性基板27Aの構成を図示しているが、可撓性基板27Dの構成も可撓性基板27Aと同じである。可撓性基板27B、27Cについては、外部信号入力部77の延出方向が異なる以外、可撓性基板27Aと同一の構成となっている。
【0063】
図7(a)は、端子部73の詳細構造を示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)のX軸方向に沿う断面図である。図8(a)及び図8(b)は、端子部73の形成方法の説明図である。
【0064】
端子部73の表面には、厚みの厚い部分(以下、凸部81という)と厚みの薄い部分(以下、凹部82という)が端子部73の延在方向(X軸方向)に沿って交互に形成されている。図5では図示を省略したが、端子部73は、凸部81の先端をリード電極47に接触させることによって、リード電極47と導電接続されており、端子部73とリード電極47との接触面積は、端子部73の表面が凸部81のない平坦な面に形成された場合に比べて、小さくなっている。よって、端子部73とリード電極47とを押圧ツールで押圧する場合に、単位面積当たりの押圧力が大きくなり、小さな押圧力で確実に端子部73とリード電極47とを接触させることができるようになっている。
【0065】
各凸部81のX軸方向の幅W1は互いに等しく、凸部81間の凹部82のX軸方向の幅W2も互いに等しい。本実施形態の場合、W1とW2はいずれも30μmであるが、W1,W2の長さはこれに限定されない。凸部81は、1端子部当たり5つ形成されているが、凸部81の数はこれに限定されない。凸部81は、一定の間隔Wp(=W1+W2)でX軸方向に配列されている。
【0066】
端子部73の表面の凹凸形状は、図8(a)に示すような加工ツール90を用いて形成される。加工ツール90は、SUS等の金属部材の表面に複数の凸部91を形成したものである。各凸部91は、可撓性基板の端子部73に対向するように、X軸方向に沿って配列されている。各凸部91のX軸方向の幅はW2であり、各凸部91間の凹部92のX軸方向の幅はW1である。凹部92のZ方向の深さD2は、端子部73に形成する凸部81のZ方向の高さD1よりも大きい。加工ツール90は、図8(b)に示すように、電解メッキ等により一様な厚みに形成された端子部73の表面に凸部91を押し付ける(プレス加工する)ことにより、端子部73の表面に、凸部81と凹部82とからなる凹凸形状を形成する。
【0067】
図9〜図12は、液滴吐出ヘッドの製造工程の一部(OLB実装工程)を説明するための模式図である。以下の説明では、ドライバIC26と圧電素子23とを接続する手順を中心に説明し、液滴吐出ヘッド1のうち、ノズル基板21、流路形成基板22、リザーバ形成基板25、ケース部材101、圧電素子23などの製造及び接続、配置作業はすでに完了しているものとする。
【0068】
ドライバIC26と圧電素子23との接続は、図9に示す押圧装置200を用いて行われる。押圧装置200は、ボンディングステージ202を備えている。ボンディングステージ202は、図示略のXYθ軸ステージによって、XYθ軸方向に位置決め自在となっている。ボンディングステージ202の上方には、接続部品210である、可撓性基板実装前の基体1Aを撮影するカメラ204が設けられている。ボンディングステージ202には、接続部品210がリード電極を上向きにして搭載され、カメラ204は光軸を鉛直下向きにして設置されている。これにより、ボンディングステージ202上の接続部品210の位置(詳しくは接続部品210のリード電極47)を認識できるようになっている。
【0069】
ボンディングステージ202に隣接して、押圧ツール201が設けられている。押圧ツール201は、図示略のXZ軸ステージよってX軸方向及びZ軸方向に移動自在となっている。押圧ツール201の下端部には、可撓性基板27を真空吸着する手段及び加熱する手段が設けられている。符合201Aは、可撓性基板27のドライバIC26実装面とは反対側の面を吸着しつつ、可撓性基板27の端子部73を接続部品210のリード電極47上に押圧する押圧面201Aである。押圧ツール201は、押圧面201Aによって可撓性基板27を接続部品210上に押圧しつつ、可撓性基板27と接続部品210との間に配置された樹脂79を加熱手段によって加熱硬化する。押圧ツール201の下方には、可撓性基板27の端子部73を撮影するカメラ203が、光軸を鉛直上向きにして設置されている。これにより、XZ軸ステージ上の押圧ツール201の位置(詳しくは、押圧ツール201の下端部に吸着された可撓性基板27の端子部73)を認識できるようになっている。
【0070】
符号205は、押圧装置200の各構成要素を統括的に制御する制御装置である。制御装置205は、カメラ203及びカメラ204によって撮影された画像に基づいて、可撓性基板27の端子部73の位置及び接続部品210のリード電極47の位置を検出する。そして、その検出位置に基づいて、XYθ軸ステージの移動量及びXZ軸ステージの移動量を算出する。
【0071】
制御装置205は、まず、図10に示すように、カメラ203及びカメラ204によって撮影された画像に基づいてXYθ軸ステージの移動量及びXZ軸ステージの移動量を算出する。そして、算出された移動量に基づいてXYθ軸ステージ及びXZ軸ステージを駆動し、可撓性基板27の端子部73を接続部品210のリード電極47上に移動させる。そして、XZ軸ステージによって押圧ツール201を下降させ、可撓性基板27の端子部73を接続部品210のリード電極47上に押し付ける。
【0072】
可撓性基板27と接続部品210との間には、樹脂79が配置されている。押圧ツール201は、樹脂79を押しのけつつ、可撓性基板27の端子部73と接続部品210のリード電極47とを当接させる。そして、可撓性基板27の端子部73と接続部品210のリード電極47とを接触させた状態で押圧面201Aを加熱し、樹脂79を硬化させる。
【0073】
図11及び図12は、端子部73とリード電極47との接続部の模式図である。図11は、押圧面201AのX軸方向の幅Wtを端子部73の凸部81の間隔Wpと無関係に設定した場合の模式図であり、図12は、押圧面201AのX軸方向の幅Wtを端子部73の凸部81の間隔Wpの自然数倍に設定した場合の模式図である。
【0074】
まず、図11に示すように、押圧面201Aの幅Wtが凸部81の間隔Wpの自然数倍に設定されていない場合(Wr≠a×Wp;aは自然数)を考える。
【0075】
前述のように、端子部73の表面には凸部81が形成されている。そのため、押圧ツール201で可撓性基板27を押圧すると、端子部73の凸部81の先端とリード電極47とが接触し、その部分が押圧部となる。リード電極47と接触する部分は凸部81のみであるため、押圧部の面積は、凸部81を設けない場合に比べて小さくなる。よって、押圧ツール201によって押圧部の単位面積当たりに付与される荷重は、凸部81を設けない場合に比べて大きくなる。その結果、少ない荷重で確実に端子部73とリード電極47との接続を図ることができる。
【0076】
しかし、端子部73の表面に複数の凸部81を設けると、次のような課題が生じる。すなわち、押圧ツール201で可撓性基板27を吸着する場合、押圧ツール201の押圧面201Aの位置と凸部81の位置とを正確に制御することが難しい。そのため、図11(a)と図11(b)のように、押圧ツール201の位置が凸部81の配列方向に若干ずれてしまう場合がある。例えば、図11(a)の位置に押圧ツール201が配置されると、押圧ツール201で押圧する凸部81の数が1つとなる。そのため、押圧部の面積は凸部1個分の面積となる。よって、押圧部の単位面積当たりの荷重が大きくなり、樹脂79を押しのけて凸部81とリード電極47とを確実に接続することが可能となる。一方、図11(b)の位置に押圧ツール201が配置されると、押圧ツール201で押圧する凸部81の数が2つとなる。そのため、押圧部の面積は、凸部2個分の面積となる。よって、押圧部の単位面積当たりの荷重が小さくなり、樹脂79を押しのけて凸部81とリード電極47とを接触させることができなくなる可能性がある。
【0077】
一方、図12に示すように、押圧面201Aの幅Wtが凸部81の間隔Wpの自然数倍に設定されている場合(Wr=a×Wp;aは自然数)を考える。
【0078】
この場合、例えば、図12(a)の位置に押圧ツール201が配置されると、押圧ツール201で押圧する凸部81の数は2つである。そのため、押圧部の面積は、凸部2個分の面積である。図12(b)の位置に押圧ツール201が配置された場合も、押圧ツール201で押圧する凸部81の数は2つである。よって、押圧部の面積は、凸部2個分の面積である。よって、押圧ツール201の押圧面201Aの幅Wtが凸部81の間隔Wpの自然数倍に設定されていると、押圧ツール201の位置が凸部81の配列方向にずれた場合でも、押圧ツール201で押圧する凸部81の数は変わらない。そのため、単位面積当たりの荷重は押圧ツール201の位置ずれによらず一定となり、常に同じ大きさの荷重で押圧することが可能となる。よって、導通不良が生じる惧れが少なくなる。
【0079】
本実施形態の押圧ツール201は、図12のように、押圧ツール201の押圧面201Aの幅Wtが凸部81の間隔Wpの自然数倍に設定されている。そして、この押圧ツール201を用いて端子部73とリード電極47とが押圧された液滴吐出ヘッド1は、端子部73とリード電極47との押圧部のX軸方向の長さが、凸部81のX軸方向の間隔Wpの自然数倍となる接続構造を有する。そのため、端子部73とリード電極47との押圧部が端子部73の延在方向にずれても、端子部73とリード電極47との押圧部の面積は変わらない。そのため、押圧部の単位面積当たりの荷重の大きさが一定になり、導通不良の発生が抑えられる。これにより、信頼性の高い液滴吐出ヘッド1が得られる。
【0080】
[変形例1]
図9及び図10では、端子部73とリード電極47との押圧工程のみを図示した。端子部73の表面には、図8に示した加工ツール90によって凹凸形状が形成されている。この凹凸形状の形成工程は、ドライバIC26と圧電素子23とを接続する工程の前段の工程として、液滴吐出ヘッドの製造工程の一部に組み込んでも良い。すなわち、加工ツール90を用いて端子部73の表面を加工する加工装置を押圧装置200の一部として組み込んでも良い。この構成によれば、端子部73をリード電極47に押圧する前に、端子部73の表面の凸部81の間隔Wpを加圧ツール90によって調整することができる。
【0081】
この構成によれば、次のようなメリットがある。例えば、表面に凸部81が形成された端子部73を有する可撓性基板27を購入した場合のように、凸部81の間隔Wpを任意に変更できない場合には、予め設定された凸部81の間隔Wpに合わせて特定の押圧面201Aの幅Wtを有する押圧ツール201を選択する必要がある。しかし、加工ツール90を用いて凸部81の間隔Wpを調節できる場合には、押圧ツール201の押圧面201Aの幅Wtに合わせて凸部81の間隔Wpを調節すればよいため、押圧ツール201の選択幅が広がる。
【0082】
[変形例2]
図12では、端子部73の表面に形成される凸部81の個数をmとし、押圧ツール201の押圧面201AのX軸方向の長さWtを凸部81のX軸方向の間隔Wpのn倍としたときに(m,nはいずれも自然数)、mを5、nを2とした。しかし、mとnの組み合わせはこれに限定されない。mとnは、m>nなる関係が満たされていれば良い。これにより、押圧ツール201の押圧位置が若干ずれても、確実に凸部81の配置領域を押圧することができる。
【0083】
[変形例3]
図7では、凸部81のX軸方向の幅W1と凹部82のX軸方向の幅W2を等しくした。しかし、幅W1と幅W2の大きさは必ずしも等しくする必要はない。例えば、凸部のX軸方向の幅W1を凹部82のX軸方向の幅W2よりも小さくすることで、押圧部の単位面積当たりの荷重をより大きくすることができる。
【0084】
[液滴吐出装置−1]
図13は、液滴吐出ヘッド1を備えた液滴吐出装置の第1形態の概略斜視図である。図13の液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1からデバイス製造用のインク(機能液)を吐出するものであり、カラーフィルタや金属配線などを形成するために用いられる。
【0085】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、駆動軸4と、ガイド軸5と、外部コントローラCTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ6とを備えている。液滴吐出ヘッド1は、不図示のキャッリッジにケース部材101を介して液滴吐出装置IJに取付けられている。ステージ7は、液滴吐出ヘッド1によって機能液が吐出される基板Pを支持するもので、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えたものである。液滴吐出ヘッド1のノズル開口部からは、ステージ7に支持されている基板Pに対し、機能液が吐出されるようになっている。
【0086】
駆動軸4には駆動モータ2が接続されている。駆動モータ2はステッピングモータ等からなるもので、外部コントローラCTからY軸方向の駆動信号が供給されると、駆動軸4を回転させるようになっている。駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はY軸方向に移動する。ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、駆動モータ3を備えている。駆動モータ3はステッピングモータ等からなるもので、外部コントローラCTからX軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をX軸方向に移動するようになっている。
【0087】
外部コントローラCTは、液滴吐出ヘッド1に対して液滴吐出を制御するための電圧を供給する。外部コントローラCTは、駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、駆動モータ3に対してステージ7のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0088】
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しない駆動モータを備えている。この駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はガイド軸5に沿ってX軸方向に移動する。クリーニング機構8の移動も外部コントローラCTにより制御される。ヒータ6は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行うようになっている。ヒータ6の電源の投入及び遮断も、外部コントローラCTによって制御されるようになっている。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。
【0089】
液滴吐出ヘッド1より吐出される機能液としては、液晶表示デバイスを形成するための液晶表示デバイス形成用材料、有機EL表示デバイスを形成するための有機EL形成用材料、電子回路の配線パターンを形成するための配線パターン形成用材料などを含むものとする。これにより、液滴吐出装置IJは、液滴吐出法に基づいて吐出した機能液によって、前記各デバイスを製造することができる。
【0090】
液滴吐出装置IJは、前述したように、可撓性基板27及び圧電素子23間の導通信頼性に優れた、高信頼性の液滴吐出ヘッド1を備えている。そのため、長期に亘る信頼性が確保されたものとなる。
【0091】
[液滴吐出装置−2]
図14は、液滴吐出ヘッド1を備えた液滴吐出装置の第2形態の概略斜視図である。図14の液滴吐出装置600は、液滴吐出ヘッド1から印字用のインクを吐出するものであり、紙等の記録媒体に印字を行うために使用される。
【0092】
液滴吐出装置600は、装置本体620と、記録用紙Pを設置するトレイ621と、記録用紙Pを排出する排出口622とを有し、装置本体620の上部面に操作パネル670を有している。操作パネル670は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成されたもので、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えたものである。装置本体620の内部には、主に、往復動するヘッドユニット630を備えた印刷装置640と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置640に送り込む給紙装置650と、印刷装置640および給紙装置650を制御する制御装置660とが設けられている。
【0093】
制御装置660の制御により、給紙装置650は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りするようになっている。間欠送りされる記録用紙Pは、ヘッドユニット630の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット630が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動し、記録用紙Pへの印刷を行うようになっている。すなわち、ヘッドユニット630の往復動と、記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となり、インクジェット方式の印刷が行なわれるようになっている。
【0094】
印刷装置640は、ヘッドユニット630と、ヘッドユニット630の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット630を往復動させる往復動機構642とを備えたものである。ヘッドユニット630は、その下部に、多数のノズル開口15を備える液滴吐出ヘッド1と、液滴吐出ヘッド1にインクを供給するインクカートリッジ631と、液滴吐出ヘッド1およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有したものである。インクカートリッジ631として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット630には、各色にそれぞれ対応した液滴吐出ヘッド1が設けられることになる。
【0095】
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸643と、キャリッジガイド軸643と平行に延在するタイミングベルト644とを有したものである。キャリッジ632は、キャリッジガイド軸643に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト644の一部に固定されたものである。キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト644を正逆走行させると、キャリッジガイド軸643に案内されて、ヘッドユニット630が往復動する。そして、この往復動の際に、液滴吐出ヘッド1から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われるようになっている。
【0096】
給紙装置650は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有したものである。給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとで構成されたものであり、駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されたものである。このような構成によって給紙ローラ652は、トレイ621に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置640に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ621に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成としてもよい。
【0097】
制御装置660は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置640や給紙装置650等を制御することにより印刷を行うものである。
【0098】
液滴吐出装置600は、前述したように、可撓性基板27及び圧電素子23間の導通信頼性に優れた、高信頼性の液滴吐出ヘッド1を備えている。そのため、長期に亘る信頼性が確保されたものとなる。
【符号の説明】
【0099】
1…液滴吐出ヘッド、22…流路形成基板(第1基板)、23…圧電素子(駆動素子)、25…リザーバ形成基板(第2基板)、26,26A,26B,26C,26D…ドライバIC(駆動回路部)、27,27A,27B,27C,27D…可撓性基板、47…リード電極(電極)、72a…配線、73…端子部、81…凸部、90…加圧ツール、200…押圧装置、201…押圧ツール、201A…押圧面、600…液滴吐出装置、IJ…液滴吐出装置、W1…凸部のX軸方向の長さ、W2…凸部間の凹部のX軸方向の長さ、Wp…凸部のX軸方向の間隔、Wt…押圧面のX軸方向の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の凸部が形成された端子部を押圧ツールで電極に押圧する工程を含み、
前記複数の凸部は、前記端子部の延在方向に所定間隔で配置され、
前記複数の凸部の前記延在方向の長さは互いに等しく、
前記押圧ツールは、前記端子部を前記電極に向けて押圧する押圧面を有し、
前記押圧面の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする押圧方法。
【請求項2】
前記端子部の表面に形成される凸部の個数をmとし、前記押圧面の前記延在方向の長さを前記所定間隔のn倍としたときに(m,nはいずれも自然数)、m>nなる関係が満たされることを特徴とする請求項1に記載の押圧方法。
【請求項3】
前記凸部の前記延在方向の長さは、前記凸部間の凹部の前記延在方向の長さ以下であることを特徴とする請求項2に記載の押圧方法。
【請求項4】
前記端子部を前記押圧ツールで前記電極に押圧する前に、加工ツールを用いて前記端子部の表面に前記複数の凸部をプレス加工する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の押圧方法。
【請求項5】
前記端子部は可撓性基板の表面に形成されており、
前記押圧ツールの押圧面は、前記可撓性基板の前記端子部が形成された面とは反対側の面と接して当該面を前記電極にむけて押圧する面であり、
前記押圧面の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の押圧方法。
【請求項6】
表面に複数の凸部が形成された端子部を電極に押圧する押圧ツールを含み、
前記複数の凸部は、前記端子部の延在方向に所定間隔で配置され、
前記複数の凸部の前記延在方向の長さは互いに等しく、
前記押圧ツールは、前記端子部を前記電極に向けて押圧する押圧面を有し、
前記押圧面の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする押圧装置。
【請求項7】
前記端子部の表面に前記複数の凸部をプレス加工する加工ツールを含むことを特徴とする請求項6に記載の押圧装置。
【請求項8】
表面に複数の凸部が形成された端子部を電極に押圧して接続した接続構造であって、
前記複数の凸部は、前記端子部の延在方向に所定間隔で配置され、
前記複数の凸部の前記延在方向の長さは互いに等しく、
前記端子部と前記電極とが押圧される押圧部の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする接続構造。
【請求項9】
第1基板と、
前記第1基板上に形成された駆動素子と、
前記第1基板の前記駆動素子側に設けられた第2基板と、
前記駆動素子を駆動する駆動回路部と、
前記駆動素子と前記駆動回路部とを接続する配線が形成された可撓性基板と、を有し、
前記配線の端部には、前記駆動素子の電極と接続する端子部が形成され、
前記端子部の表面には、複数の凸部が形成され、
前記複数の凸部は、前記端子部の延在方向に所定間隔で配置され、
前記複数の凸部の前記延在方向の長さは互いに等しく、
前記端子部と前記電極とが押圧される押圧部の前記延在方向の長さは、前記所定間隔の自然数倍であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−218665(P2011−218665A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90158(P2010−90158)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】