説明

押釦スイッチ用カバー部材

【課題】 作業効率を向上させ、コストの削減を図る。
【解決手段】 不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、ビニルモノマー20〜50重量部、エポキシ樹脂5〜30重量部、メラミン樹脂 2〜20重量部、ラジカル反応硬化剤 0.1〜2 重量部および酸性触媒0.1〜2重量部を配合してなる熱硬化性樹脂製のキートップ10と、EL素子30および樹脂シート40と接着する性質を有する選択接着剤が添加されたシリコーンゴム製のシリコーンゴムシート20と、EL素子30と、樹脂シート40とを、成形金型を用いて圧縮加熱成形することにより、押釦スイッチ用カバー部材1を一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル用電子機器に用いられる押釦スイッチ用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、EL素子を、シリコーンゴム製のキーパッド(上部パッド部材およびベースパッド部材)と一体成形した押釦スイッチ用カバー部材が開示されている。特許文献1の図1〜図3に示される押釦スイッチ用カバー部材は、キートップがシリコーンゴム製である場合の実施例であり、図4〜図6に示される押釦スイッチ用カバー部材は、キートップが合成樹脂製である場合の実施例である。キートップがシリコーンゴム製である場合には、キートップをも含めて一体成形されている。キートップが合成樹脂製である場合には、キートップが接着剤を用いてキーパッドに接着されている。
【特許文献1】特開2003−7161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、キートップは、確実な操作性と耐久性とが要求されるため、軟質なシリコーンゴム製であるよりも硬質な樹脂製であることが好ましい。しかしながら、キートップを硬質な樹脂製にした場合には、キートップの材質とキーパッドの材質とが異なるため、キートップとキーパッドとを一体成形するのには困難を要する。したがって、従来技術のように、合成樹脂製のキートップは、接着剤を用いてキーパッドに接着されることになる。このような場合には、製造工程に接着工程が組み込まれることになるため、作業効率が低下する。また、キートップを所定の位置に正確に配置するために、位置決め用の治具を用いる必要があり、多大なコストを要する。
【0004】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、作業効率を向上させることができるとともに、コストの削減を図ることができる押釦スイッチ用カバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材は、熱硬化性樹脂製のキートップと、シリコーンゴム製のシートと、一方の面上にEL素子が形成された樹脂製のシートとを備え、キートップとシリコーンゴム製のシートと樹脂製のシートが一体成形されたことを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、熱硬化性樹脂製のキートップと、シリコーンゴム製のシートと、一方の面上にEL素子が形成された樹脂製のシートとが一体成形されるため、各部材間を接着するための接着工程や、各部材の位置を決めるための位置決め用の治具を不要にすることができる。したがって、作業効率を向上させることができるとともに、コストの削減を図ることができる。
【0007】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材において、上記熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、ビニルモノマー20〜50重量部、エポキシ樹脂5〜30重量部、メラミン樹脂 2〜20重量部、ラジカル反応硬化剤 0.1〜2 重量部および酸性触媒0.1〜2重量部配合したものであることが好ましい。また、本発明の押釦スイッチ用カバー部材において、上記シリコーンゴムには、樹脂製のシートと接着する性質を有する選択接着剤が添加されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材によれば、作業効率を向上させることができるとともに、コストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0010】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態における押釦スイッチ用カバー部材1の断面図である。図1に示すように、押釦スイッチ用カバー部材1は、キートップ10と、シリコーンゴムシート20と、EL素子30と、樹脂シート40とを有する。
【0011】
キートップ10は、熱硬化性樹脂により成形される。本発明に用いられる熱硬化性樹脂は、主剤である不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、ビニルモノマーを20〜50重量部、エポキシ樹脂を5〜30重量部、メラミン樹脂を2〜20重量部、ラジカル反応硬化剤を0.1〜2重量部、酸性触媒を0.1〜2重量部、それぞれ配合したものであることが好ましい。
【0012】
ビニルモノマーの配合量を20重量部未満にすると、不飽和ポリエステル樹脂の硬化が遅くなるため、他部材との接着性が不十分となり、50重量部超にすると、熱硬化性樹脂の強度が不足する。エポキシ樹脂の配合量を5重量部未満にすると、熱硬化性樹脂の収縮が大きくなり、熱硬化性樹脂の強度が不足していまい、30重量部超にすると、熱硬化性樹脂がほとんど収縮しなくなるため、金型から取り出し難くなり作業性が低下する。メラミン樹脂の配合量を2重量部未満にすると、他部材との接着性が不十分となり、20重量部超にすると、熱硬化性樹脂中に気泡が生じるおそれがある。ラジカル反応硬化剤の配合量を0.1重量部未満にすると、熱硬化性樹脂材料としての硬化が不十分となり、2重量部超にすると、熱硬化性樹脂の収縮が大きくなり、クラックの発生や変形など外観不良が発生する。酸性触媒の配合量を0.1重量部未満にすると、メラミン樹脂の硬化が起こらずに他部材との接着性が低下し、2重量部超にすると、メラミン樹脂の反応が早く進みすぎるため、気泡孔が生じやすくなる。
【0013】
熱硬化性樹脂は、例えば、エスターC755−1(三井東圧化学(株)製商品名)98.7重量部と、マイコート506(三井サイテック(株)製商品名)1.3重量部と、パラトルエンスルホン酸(関東化学(株)製商品名)0.5重量部と、n−ブタノール(関東化学(株)製商品名)0.5重量部と、バーヘキサ3M(日本油脂(株)製商品名)1.0重量部とを配合することにより生成することができる。
【0014】
エスターC755−1には、XE604と、DAP(ジアリルフタレート)と、XE652(グリミジルメタクリレート)と、XE640(ポリエチレングリコールジメタクリレート)と、マイコート506(アルキル化メラミン樹脂)とが配合される。
【0015】
エスターC755−1およびXE604は、熱硬化性樹脂に配合される不飽和ポリエステル樹脂として用いる。DAPは、ビニルモノマーとして用いる。XE652は、エボキシ樹脂として用いる。マイコート506は、熱硬化性樹脂に配合されるメラミン樹脂として用いる。バーヘキサ3Mは、ラジカル反応硬化剤として用いる。パラトルエンスルホン酸は、酸性触媒として用いる。
【0016】
なお、熱硬化性樹脂の詳細については、参考文献(特開平9−67418号公報)を参照し、この参考文献の内容を本願の開示内容に組み込む。
【0017】
一部のキートップ10の天面には、加飾層50が形成される。この加飾層50は、数字、文字、記号等をキートップ10天面に印刷することによって形成される。
【0018】
シリコーンゴムシート20は、EL素子30および樹脂シート40と接着する性質を有する選択接着剤が添加されたシリコーンゴムにより形成される。具体例を挙げて説明すると、シリコーンゴムシート20は、例えば、選択接着性シリコーンゴムコンパウンド X−30−3511AU(信越化学工業(株)製商品名)100重量部と、付加架橋剤 C−25A(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部と、付加架橋剤 C−25B(信越化学工業(株)製商品名)0.5重量部と、制御剤 X−93−1242(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部とを配合することにより生成することができる。
【0019】
なお、シリコーンゴムシート20は、選択接着性シリコーンゴムコンパウンドを配合したシリコーンゴムによって形成されることには限定されない。例えば、シリコーンゴムコンパウンドに、選択接着剤を添加したシリコーンゴムによって形成されることとしてもよい。具体例を挙げて説明すると、シリコーンゴムシート20は、例えば、シリコーンゴムコンパウンド HG−060U(信越化学工業(株)製商品名)100重量部と、付加架橋剤 C−25A(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部と、付加架橋剤 C−25B(信越化学工業(株)製商品名)0.5重量部と、制御剤 X−93−1242(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部と、選択接着剤X−93−3046(信越化学工業(株)製商品名)1.0重量部とを配合することによって生成することができる。また、シリコーンゴムシート20は、例えば、シリコーンゴムコンパウンド DY32−6014U(東レダウコーニングシリコーン(株)製商品名)100重量部と、過酸化物架橋剤 パーブチルI(日本油脂(株)製商品名)1.0重量部と、選択接着剤X−93−3046(信越化学工業(株)製商品名)1.0重量部とを配合することによっても生成することができる。さらに、シリコーンゴムシート20は、例えば、シリコーンゴムコンパウンド SH−851U(東レダウコーニングシリコーン(株)製商品名)100重量部と、シリコーン生ゴムKE−79VBS(信越化学工業(株)製商品名)5.0重量部と、過酸化物架橋剤 パーブチルI(日本油脂(株)製商品名)1.0重量部と、選択接着剤X−93−3046(信越化学工業(株)製商品名)1.0重量部とを配合することによっても生成することができる。
【0020】
EL素子30は、基材フィルムと透明電極と発光層と誘電体層と対向電極とが積層して形成される。EL素子30の対向電極側の表面には、絶縁層が形成され、透明電極と対向電極の一端部には、外部電源と接続するための端子部がそれぞれ形成される。なお、第1実施形態におけるEL素子30は、基材フィルム、透明電極、発光層、誘電体層、対向電極の順に積層されており、発光面側となる基材フィルム側が、シリコーンゴムシート20と一体化され、非発光面側となる対向電極側が、樹脂シート40と一体化される。
【0021】
EL素子30の基材フィルムは、樹脂製のシートにより形成される。樹脂製のシートとしては、例えば、ポリカーボネート(PC),ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリアミド、またはこれらのアロイや共重合体等の変性物からなるシートが該当する。
【0022】
EL素子30の透明電極は、導電性ポリマーにより形成されるが、より好ましくは、透明性を有し、かつ導電性が高いポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンの誘導体により形成するのがよい。なお、必要に応じて、透明電極の発光層側の面上に、不透明な補助電極を少なくとも部分的に積層させて配線することとしてもよい。これにより、給電性を向上させることができ、透明電極の導電性が補償される。
【0023】
EL素子30の発光層は、例えば、防湿被膜をコーティングした硫化亜鉛等の無機蛍光体粉を、バインダーに分散することにより形成される。なお、バインダーとしては、例えば、フッ素樹脂、合成ゴム、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはこれらの共重合物が該当するが、誘導率の高いバインダーを選択することによって、発光層をより高輝度に発光させることが可能となる。
【0024】
EL素子30の誘電体層は、例えば、チタン酸バリウム、酸化チタン等の誘電体粉を、バインダーに分散することにより形成される。バインダーの具体例は、上述した発光層のバインダーと同様である。
【0025】
EL素子30の対向電極は、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の金属もしくは合金、またはカーボンブラック、グラファイト等の導電性フィラーを、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系の樹脂もしくはゴム、またはこれらの共重合物に分散したものからなる導電膜により形成される。また、金、銀、銅、ニッケル等の金属もしくは合金からなる金属膜、またはこれらの複合膜により形成してもよい。
【0026】
樹脂シート40は、樹脂製のシートにより形成される。樹脂製のシートの具体例は、上述したEL素子30の基材フィルムと同様である。
【0027】
[第1実施形態の実施例]
次に、第1実施形態における押釦スイッチ用カバー部材1の実施例について説明する。
【0028】
まず、押釦スイッチ用カバー部材1の成形金型を構成するキートップ10側の成形金型と樹脂シート40側の成形金型のうち、キートップ10側の成形金型に、熱硬化性樹脂を充填した。この熱硬化性樹脂は、エスターC755−1(三井東圧化学(株)製商品名)98.7重量部と、マイコート506(三井サイテック(株)製商品名)1.3重量部と、パラトルエンスルホン酸(関東化学(株)製商品名)0.5重量部と、n−ブタノール(関東化学(株)製商品名)0.5重量部と、バーヘキサ3M(日本油脂(株)製商品名)1.0重量部とを配合したものである。
【0029】
次に、キートップ10側の成形金型に充填された熱硬化性樹脂を、150[℃]、30秒以上の条件で硬化させた。
【0030】
次に、一方の面上にEL素子30が形成された樹脂シート40を、樹脂シート40側の成形金型に配置した。この場合には、樹脂シート40の面のうち、EL素子30が形成されていない方の面が、樹脂シート40側の成形金型に接するように配置する。
【0031】
熱硬化性樹脂が硬化した後(熱硬化性樹脂の空気層との界面が硬化すればよい)、キートップ10側の成形金型に、熱硬化性樹脂と接着する性質を有するシリコーンゴムを充填した。このシリコーンゴムは、選択接着性シリコーンゴムコンパウンド X−30−3511AU(信越化学工業(株)製商品名)100重量部と、付加架橋剤 C−25A(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部と、付加架橋剤 C−25B(信越化学工業(株)製商品名)0.5重量部と、制御剤 X−93−1242(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部とを配合したものである。
【0032】
次に、キートップ10側の成形金型に、上記樹脂シート40が配置された樹脂シート40側の成形金型を載せて圧縮し、150[℃]、2分の条件で加熱した。
【0033】
次に、成形金型を開いて部材を取り出し、必要に応じて打ち抜き処理や後架橋処理を施した後に、キートップ10の天面に湿式法により加飾層50を形成した。これにより、キートップ10とシリコーンゴムシート20とEL素子30と樹脂シート40とが一体成形された押釦スイッチ用カバー部材1が得られた。
【0034】
[第1実施形態の変形例]
なお、上述した第1実施形態においては、各部材が、キートップ10、シリコーンゴムシート20、EL素子30、樹脂シート40の順に形成されているが、本願発明は、この構成に限定されない。例えば、図2に示す構成であってもよい。図2は、第1実施形態の変形例における押釦スイッチ用カバー部材1sの断面図である。図2に示すように、押釦スイッチ用カバー部材1sは、キートップ10と、シリコーンゴムシート20と、樹脂シート40と、EL素子30sとを有する。
【0035】
本変形例の押釦スイッチ用カバー部材1sは、シリコーンゴムシート20の下面側において、樹脂シート40、EL素子30sの順に形成されている点で、シリコーンゴムシート20の下面側において、EL素子30、樹脂シート40の順に形成されている第1実施形態の押釦スイッチ用カバー部材1とは異なる。また、本変形例のEL素子30sは、非発光面側である対向電極側に基材フィルムが形成されている点で、発光面側である透明電極側に基材フィルムが形成されている第1実施形態のEL素子30とは異なる。その他の構成については第1実施形態における押釦スイッチ用カバー部材1の構成と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付し、その説明を省略する。
【0036】
なお、本変形例のEL素子30sを、第1実施形態のEL素子30と同様の構成にしてもよい。この場合には、非発光面側となる対向電極の下面側に第2の樹脂シートを形成することとすればよい。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。まず、図3を参照して第2実施形態における押釦スイッチ用カバー部材2の構成について説明する。図3に示すように、押釦スイッチ用カバー部材2は、樹脂シート40の下面側に押圧部60をさらに有している点で、第1実施形態における押釦スイッチ用カバー部材1の構成とは異なる。したがって、その他の構成は、第1実施形態における押釦スイッチ用カバー部材1の構成と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付しその説明は省略する。以下においては、第1実施形態との相違点である押圧部60についてのみ説明する。
【0038】
押圧部60は、対向基板(不図示)上に設けられたドーム状の接点部材を押し下げるために設けられる。押圧部60は、樹脂シート40の所定の位置に形成され、樹脂シート40と同じ材料を用いて一体成形される。
【0039】
[第2実施形態の変形例]
なお、上述した第2実施形態においては、各部材が、キートップ10、シリコーンゴムシート20、EL素子30、樹脂シート40の順に形成されているが、本願発明は、この構成に限定されない。例えば、図4に示す構成であってもよい。図4は、第2実施形態の変形例における押釦スイッチ用カバー部材2sの断面図である。図4に示すように、押釦スイッチ用カバー部材2sは、キートップ10と、シリコーンゴムシート20と、樹脂シート40と、EL素子30と、押圧部60付きの樹脂シート70とを有する。
【0040】
本変形例の押釦スイッチ用カバー部材2sは、シリコーンゴムシート20の下面側において、樹脂シート40、EL素子30の順に形成され、このEL素子30の下面側に押圧部60付きの樹脂シート70がさらに形成されている点で第2実施形態の押釦スイッチ用カバー部材2とは異なる。この押圧部60付きの樹脂シート70は、第2実施形態の押圧部60付き樹脂シート40と同様であるため、その説明を省略する。その他の構成については第2実施形態における押釦スイッチ用カバー部材2の構成と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付し、その説明を省略する。
【0041】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。まず、図5を参照して第3実施形態における押釦スイッチ用カバー部材3の構成について説明する。図5に示すように、押釦スイッチ用カバー部材3は、樹脂シート40の下面側に押圧部60s付きのシリコーンゴムシート80をさらに有している点で、第1実施形態における押釦スイッチ用カバー部材1の構成とは異なる。したがって、その他の構成は、第1実施形態における押釦スイッチ用カバー部材1の構成と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付しその説明は省略する。以下においては、第1実施形態との相違点である押圧部60s付きのシリコーンゴムシート80、および実施例についてのみ説明する。
【0042】
シリコーンゴムシート80は、第1実施形態のシリコーンゴムシート20と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
押圧部60sは、対向基板上に設けられたドーム状の接点部材を押し下げるために設けられる。押圧部60sは、シリコーンゴムシート80の所定の位置に形成され、シリコーンゴムシート80と同じ材料を用いて一体成形される。
【0044】
[第3実施形態の実施例]
次に、第3実施形態における押釦スイッチ用カバー部材3の実施例について説明する。
【0045】
まず、押釦スイッチ用カバー部材3の成形金型を構成するキートップ10側の成形金型とシリコーンゴムシート80側の成形金型のうち、キートップ10側の成形金型に、着脱式の樹脂シート固定用のスペーサを配置した。
【0046】
次に、一方の面上にEL素子30が形成された樹脂シート40を、スペーサの上に配置した。この場合には、EL素子30側がスペーサに接するように配置する。
【0047】
次に、スペーサ上に配置された樹脂シート40の上に、熱硬化性樹脂と接着する性質を有するシリコーンゴムを配置した。このシリコーンゴムは、選択接着性シリコーンゴムコンパウンド X−30−3511AU(信越化学工業(株)製商品名)100重量部と、付加架橋剤 C−25A(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部と、付加架橋剤 C−25B(信越化学工業(株)製商品名)0.5重量部と、制御剤 X−93−1242(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部とを配合したものである。
【0048】
次に、キートップ10側の成形金型に、シリコーンゴムシート80側の成形金型を載せて圧縮し、150[℃]、2分の条件で加熱した。
【0049】
次に、成形金型を開き、樹脂シート固定用のスペーサを取り外した。その後、キートップ10側の成形金型に熱硬化性樹脂を充填した。この熱硬化性樹脂は、エスターC755−1(三井東圧化学(株)製商品名)98.7重量部と、マイコート506(三井サイテック(株)製商品名)1.3重量部と、パラトルエンスルホン酸(関東化学(株)製商品名)0.5重量部と、n−ブタノール(関東化学(株)製商品名)0.5重量部と、バーヘキサ3M(日本油脂(株)製商品名)1.0重量部とを配合したものである。
【0050】
次に、キートップ10側の成形金型に充填された熱硬化性樹脂を、150[℃]、30秒以上の条件で硬化させた。熱硬化性樹脂が硬化した後(熱硬化性樹脂の空気層との界面が硬化すればよい)、キートップ10側の成形金型に、樹脂と接着する性質を有するシリコーンゴムを充填した。このシリコーンゴムは、選択接着性シリコーンゴムコンパウンド X−30−3511AU(信越化学工業(株)製商品名)100重量部と、付加架橋剤 C−25A(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部と、付加架橋剤 C−25B(信越化学工業(株)製商品名)0.5重量部と、制御剤 X−93−1242(信越化学工業(株)製商品名)2.0重量部とを配合したものである。
【0051】
次に、キートップ10側の成形金型に、シリコーンゴムシート80側の成形金型を載せて圧縮し、150[℃]、2分の条件で加熱した。
【0052】
次に、成形金型を開いて部材を取り出し、必要に応じて打ち抜き処理や後架橋処理を施した後に、キートップ10の天面に湿式法により加飾層50を形成した。これにより、キートップ10とシリコーンゴムシート20とEL素子30と樹脂シート40と押圧部60s付きのシリコーンゴムシート80とが一体成形された押釦スイッチ用カバー部材3が得られた。
【0053】
[第3実施形態の変形例]
なお、上述した第3実施形態においては、各部材が、キートップ10、シリコーンゴムシート20、EL素子30、樹脂シート40、押圧部60s付きのシリコーンゴムシート80の順に形成されているが、本願発明は、この構成に限定されない。例えば、図6に示す構成であってもよい。図6は、第3実施形態の変形例における押釦スイッチ用カバー部材3sの断面図である。図6に示すように、押釦スイッチ用カバー部材3sは、キートップ10と、シリコーンゴムシート20と、樹脂シート40と、EL素子30と、押圧部60s付きシリコーンゴムシート80とを有する。
【0054】
本変形例における押釦スイッチ用カバー部材3sは、シリコーンゴムシート20の下面側において、樹脂シート40、EL素子30の順に形成されている点で、シリコーンゴムシート20の下面側において、EL素子30、樹脂シート40の順に形成されている第3実施形態の押釦スイッチ用カバー部材3とは異なる。その他の構成については第3実施形態における押釦スイッチ用カバー部材3の構成と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付し、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態における押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図2】第1実施形態の変形例における押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図3】第2実施形態における押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図4】第2実施形態の変形例における押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図5】第3実施形態における押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図6】第3実施形態の変形例における押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1,1s,2,2s,3,3s・・・押釦スイッチ用カバー部材、10・・・キートップ、20,80・・・シリコーンゴムシート、30,30s・・・EL素子、40,70・・・樹脂シート、50・・・加飾層、60,60s・・・押圧部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂製のキートップと、
シリコーンゴム製のシートと、
一方の面上にEL素子が形成された樹脂製のシートと、を備え、
前記キートップと前記シリコーンゴム製のシートと前記樹脂製のシートが一体成形されたことを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、ビニルモノマー20〜50重量部、エポキシ樹脂5〜30重量部、メラミン樹脂 2〜20重量部、ラジカル反応硬化剤 0.1〜2 重量部および酸性触媒0.1〜2重量部配合したものであることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項3】
前記シリコーンゴムには、前記樹脂製のシートと接着する性質を有する選択接着剤が添加されていることを特徴とする請求項1または2記載の押釦スイッチ用カバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−115634(P2007−115634A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308788(P2005−308788)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】