説明

押釦スイッチ用部材、キーパネルおよび電子機器

【課題】同一の位置に、少なくとも2つの表示パターンを表示できると共に、クリック感も良好とすること。
【解決手段】基板20と、基板20上に配置された複数のスイッチ素子30および点発光素子40と、基板に対向配置された導光板50と、を少なくとも有し、導光板50のうち、少なくとも複数のスイッチ素子30から選択される1つのスイッチ素子30に対向し、かつ、押釦領域S1、S2内において、導光板50の基板20が配置された側の面50B上に、開口部62を有する遮光層60が設けられ、導光板50の、内部、裏面50B、および、操作面50T、から選択される少なくともいずれかの部位に、コア層52を進行する光を操作面50T側へと反射および/または散乱させる表示パターン形成部56が設けられている押釦スイッチ用部材、ならびに、これを用いたキーパッドおよび電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材、キーパネルおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押釦スイッチ用部材における押釦部分の文字等の表示方式としては、裏面に配置されたLED等により照光することで、文字等を表示する照光方式が知られている。このような照光方式の押釦スイッチ用部材としては、たとえば、押釦層の下方に多層状に配置された複数の指示ユニットを備え、各指示ユニットは、発光素子と、この発光素子と組み合わされ、かつ、一方の表面に模様層が設けられた導光素子とを有するものが提案されている。この押釦スイッチ用部材では、模様層が、ボタン位置に対応する複数の模様を有するため、同一ボタン位置に異なるボタン画像を表示するマルチモード表示が可能である(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の押釦スイッチ用部材では、マルチモード表示を可能とするために、押釦スイッチ用部材の厚み方向に、2つの層状の導光素子が配置されたり、層状の導光素子と層状の発光素子とが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3143541号公報(請求項1、図1、図2、図4、要約書等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の押釦スイッチ用部材では、押釦スイッチ用部材の操作面と、押圧力を入力信号に変換するスイッチ素子との間に、2つの厚みのある層状の部材、すなわち、導光板のような層状の導光素子や、ELシートのような層状の発光素子が存在する。このため、操作面とスイッチ素子との間に、導光板やELシートのように、厚みのある層状の部材が、1層のみ存在する従来の押釦スイッチ用部材と比べて、クリック感が悪くなる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、同一の位置に、少なくとも2つの表示パターンを表示できると共に、クリック感も良好な押釦スイッチ用部材、ならびに、これを用いたキーパネルおよび電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明の押釦スイッチ用部材は、基板と、基板の片面側に配置された1つ以上のスイッチ素子と、基板のスイッチ素子が配置された面側に配置された1つ以上の点発光素子と、基板のスイッチ素子が配置された面側に対向して配置された導光板と、を少なくとも有し、導光板のうち、少なくとも、導光板の平面方向の一領域内において、導光板の基板が配置された側の面上に、開口部を有する遮光層が設けられ、導光板の、内部、基板が配置された側の面、および、基板が配置された側と反対側の面、から選択される少なくともいずれかの部位に、導光板内を進行する光の進行方向を、導光板の基板が配置された側と略反対側の方向に変更する機能を有する表示パターン形成部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の押釦スイッチ用部材の一実施態様は、導光板の平面方向の一領域が、1つ以上のスイッチ素子から選択される1つのスイッチ素子に対向し、かつ、1つの押釦部分に対応する領域であることが好ましい。
【0008】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、導光板の基板が配置された側と反対側の面上に、1つ以上のスイッチ素子の各々に対応する透光性のキートップが設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、導光板の基板が配置された側の面に、半透光層と、遮光層とがこの順に設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、導光板の基板が配置された側と反対側の面上に、半透光層が設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、表示パターン形成部と、開口部とが、導光板の平面方向に対して、少なくとも部分的に重複するように配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、導光板の平面方向に対して、表示パターン形成部と、開口部とが略重複する位置に配置され、開口部内において、導光板の基板が配置された側の面上に、ドット状パターン、ライン状パターン、網目状パターン、および、これらを2種類以上組み合わせた複合パターン、ならびに、これらパターンを反転表示したパターンから選択されるパターンを有する開口部内遮光層が設けられ、表示パターン形成部が、ドット状パターン、ライン状パターン、網目状パターン、および、これらを2種類以上組み合わせた複合パターン、ならびに、これらパターンを反転表示したパターンから選択されるパターンで、形成され、かつ、導光板の平面方向に対して、開口部内遮光層と重複する領域内のみに表示パターン形成部が配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、表示パターン形成部が、導光板の平面方向において、開口部と重複しない位置に設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、点発光素子を2つ以上有し、かつ、個々の点発光素子毎に選択的に発光可能なことが好ましい。
【0015】
本発明の押釦スイッチ用部材の他の実施態様は、一の点発光素子と、他の点発光素子との間に、互いの照射光を遮光する遮光壁が配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明のキーパネルは、本発明の押釦スイッチ用部材を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の電子機器は、本発明の押釦スイッチ用部材を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の電子機器の一実施態様は、電子機器が携帯電話であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように本発明によれば、同一の位置に、少なくとも2つの表示パターンを表示できると共に、クリック感も良好な押釦スイッチ用部材、ならびに、これを用いたキーパネルおよび電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の押釦スイッチ用部材の一例を示す模式断面図である。
【図2】図1に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図である。ここで、図2(A)は、点発光素子および導光板用光源を発光させた状態について示したものであり、図2(B)は、導光板用光源のみを発光させた状態について示したものであり、図2(C)は、点発光素子のみを発光させた状態について示したものであり、図2(D)は、点発光素子および導光板用光源のいずれも発光させない状態について示したものである。
【図3】本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図4】本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図5】図4に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図である。ここで、図5(A)は、点発光素子および導光板用光源を発光させた状態について示したものであり、図5(B)は、導光板用光源のみを発光させた状態について示したものであり、図5(C)は、点発光素子のみを発光させた状態について示したものであり、図5(D)は、点発光素子および導光板用光源のいずれも発光させない状態について示したものである。
【図6】本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図7】図6に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図である。ここで、図7(A)は、点発光素子および導光板用光源を発光させた状態について示したものであり、図7(B)は、導光板用光源のみを発光させた状態について示したものであり、図7(C)は、点発光素子のみを発光させた状態について示したものであり、図7(D)は、点発光素子および導光板用光源のいずれも発光させない状態について示したものである。
【図8】本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図9】図8に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図である。ここで、図9(A)は、導光板用光源のみを発光させた状態について示したものであり、図9(B)は、点発光素子のみを発光させた状態について示したものであり、図9(C)は、点発光素子および導光板用光源のいずれも発光させない状態について示したものである。
【図10】本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。
【図11】図10に示す押釦スイッチ用部材の表示パターン形成部および開口部内遮光層の導光板の平面方向に対する相対的位置関係の一例を示す拡大断面図である。
【図12】図10に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図である。ここで、図12(A)は、導光板用光源のみを発光させた状態について示したものであり、図12(B)は、点発光素子のみを発光させた状態について示したものであり、図12(C)は、点発光素子および導光板用光源のいずれも発光させない状態について示したものである。
【図13】本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式平面図である。ここで、図13(A)は、導光板用光源のみを発光させた状態について示したものであり、図13(B)は、遮光壁の一方の側に配置された点発光素子のみを発光させた状態について示したものであり、図13(C)は、遮光壁の他方の側に配置された点発光素子のみを発光させた状態について示したものである。
【図14】図13に示す押釦スイッチ用部材の断面構造の一例を示す模式断面図である。
【図15】本実施形態の電子機器の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<押釦スイッチ用部材>
本実施形態の押釦スイッチ用部材は、基板と、基板の片面側に配置された1つ以上のスイッチ素子と、基板のスイッチ素子が配置された面側に配置された1つ以上の点発光素子と、基板のスイッチ素子が配置された面側に対向して配置された導光板と、を少なくとも有し、導光板のうち、少なくとも、導光板の平面方向の一領域内において、導光板の基板が配置された側の面上に、開口部を有する遮光層が設けられ、導光板の、内部、基板が配置された側の面、および、基板が配置された側と反対側の面、から選択される少なくともいずれかの部位に、導光板内を進行する光の進行方向を、導光板の基板が配置された側と略反対側の方向に変更する機能を有する表示パターン形成部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本実施形態の押釦スイッチ用部材では、押釦スイッチ用部材の厚み方向において導光板が配置された側の面(操作面)と、スイッチ素子との間に、押釦スイッチの操作性という観点で、クリック感を低下させる方向に作用する実質的に厚みのある部材は、1層の導光板のみである。このため、操作面とスイッチ素子との間に、押釦スイッチの操作性という観点で、クリック感を低下させる方向に作用する実質的に厚みのある部材が2層存在する特許文献1に記載の押釦スイッチ用部材と比べて、良好なクリック感が得られる。これに加えて、導光板の平面方向の一領域には、(1)点発光素子を発光させることにより、遮光層に設けた開口部を光が通過するため、開口部の形状に対応する表示パターンが表示でき、また、(2)導光板内に光を導入することで、導光板内を通過する光が表示パターン形成部にて操作面側へと散乱および/または反射されることで、導光板の平面方向における表示パターン形成部の輪郭形状に対応する表示パターンが表示できる。このため、上記(1)または(2)に示す表示モードを選択することで、導光板の平面方向の一領域に、2つの表示パターンを別々に表示できる。なお、「導光板の平面方向の一領域」とは、導光板の平面方向において、任意の位置・面積・形状を有する領域を意味するが、通常は、「押釦スイッチ用部材が有する1つ以上のスイッチ素子から選択される1つのスイッチ素子に対向し、かつ、1つの押釦部分に対応する領域(1つの押釦領域)」であることが好ましい。ここで、「1つの押釦部分に対応する領域(1つの押釦領域)」とは、導光板の平面方向に対して、1つのスイッチ素子が配置された位置を中心として、当該スイッチ素子の近傍も含む領域を意味する。なお、以下の説明においては、特に説明の無い限り、導光板の平面方向の一領域が、1つの押釦領域であることを前提として説明する。
【0023】
なお、上記(1)および(2)に示す表示モードを同時に選択して2つの表示パターンを同時に表示してもよい。この場合、2つの表示パターンを同時に表示することで、2つの表示パターンの組み合わせにより新たな意味が生じる場合は、合計で3つの表示パターンを表示できるといえる。具体例としては、開口部による表示パターンが”1”であり、表示パターン形成部による表示パターンが”0”であり、両者を同時に左右に並べて表示することで”10”と表示される場合、あるいは、開口部による表示パターンが”−”であり、表示パターン形成部による表示パターンが”|”であり、両者を同時に重ね合わせて表示することで”+”と表示される場合などが一例として挙げられる。
【0024】
なお、1つの押釦領域に2つの表示パターンの一方のみを表示する表示モード、1つの押釦領域に2つの表示パターンの他方のみを表示する表示モード、および、1つの押釦領域に2つの表示パターンを同時に表示する表示モード、を適宜選択して切り替え表示が可能なマルチ表示は、押釦スイッチ用部材が、2つ以上の押釦部分に対応する領域(2つ以上の押釦領域)を有している場合、少なくとも1つの押釦領域で行うことができればよいが、複数の押釦領域で行うこともでき、全ての押釦領域で行うこともできる。
【0025】
図1は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の一例を示す模式断面図であり、具体的には本実施形態の押釦スイッチ用部材の基本的構成の一例を示す図である。なお、図1に示す例では、押釦スイッチ用部材の一部分(2つの隣り合う押釦領域近傍)について示したものである。
【0026】
図1に示す押釦スイッチ用部材10A(10)は、基板20と、基板20の片面(表面20T)に配置されたスイッチ素子30A、30Bと、基板20の表面20Tに配置された点発光素子40と、基板20の表面20Tに対向して配置された導光板50と、を少なくとも有する。なお、図1に示す例では、基板20の表面20Tの一方の側から他方の側(図中の左側から右側)へと、スイッチ素子30A(30)、点発光素子40、および、スイッチ素子30B(30)がこの順に配置されており、点発光素子40は、スイッチ素子30Aとスイッチ素子30Bとの略中間点に位置する。そして、押釦スイッチ用部材10Aの平面方向において、スイッチ素子30Aが配置された位置を中心としてその近傍の領域が一つの押釦部分に対応する領域(図中、点線D0と点線D1とで囲まれた領域(押釦領域S1))を形成し、スイッチ素子30Bが配置された位置を中心としてその近傍の領域がもう一つの押釦部分に対応する領域(図中、点線D1と点線D2とで囲まれた領域(押釦領域S2))を形成している。ここで、図中、点線で示される押釦領域S1と押釦領域S2との境界線D1上に点発光素子40が位置している。
【0027】
また、導光板50は、コア層52と、コア層52の基板20が配置された側と反対側に位置する上側クラッド層54Tと、コア層52の基板20が配置された側に位置する下側クラッド層54Bと、から構成されており、不図示の光源(導光板用光源)から照射される光がコア層52を通過できるようになっている。なお、導光板用光源は導光板50の端面側に配置され、押釦スイッチ用部材10Aと一体的に設けられていてもよく、押釦スイッチ用部材10Aを組み込むキーパネルや電子機器側に設けられているものであってもよい。そして、このコア層52と、下側クラッド層54Bとの界面には、表示パターン形成部56A(56)、および、表示パターン形成部56B(56)が設けられている。なお、図1中、押釦スイッチ用部材10Aの平面方向に対して、表示パターン形成部56Aは、押釦領域S1内において、スイッチ素子30Aよりもやや左側に設けられており、表示パターン形成部56Bは、押釦領域S2内において、スイッチ素子30Bよりもやや左側に設けられている。なお、表示パターン形成部56は、導光板50内を進行する光(コア層52内を進行する光)の進行方向を、導光板50の基板20が配置された側と略反対側の方向に変更する機能を有するものである。ここで、この光の進行方向の変更は、散乱および反射から選択される少なくとも一方の態様で行われる。以下の説明においては、特に言及無き場合、表示パターン形成部56は、コア層52内を通過する光を操作面50T側へと散乱する機能を有するものとして説明する。
【0028】
さらに導光板50の基板20が配置された側の面(裏面50B)には、遮光層60が設けられている。この遮光層60には、開口部62A(62)、および、開口部62B(62)が設けられている。なお、図1中、押釦スイッチ用部材10Aの平面方向に対して、開口部62Aは、押釦領域S1内において、スイッチ素子30Aよりもやや右側に設けられており、表示パターン形成部56Bは、押釦領域S2内において、スイッチ素子30Bよりもやや右側に設けられている。このため、押釦スイッチ用部材10Aの平面方向において、押釦領域S1内に位置する表示パターン形成部56Aおよび開口部62Aは互いに重複しない位置に存在し、押釦領域S2内に位置する表示パターン形成部56Bおよび開口部62Bは互いに重複しない位置に存在する。なお、説明の都合上、図1および後述する図面中において、上側クラッド層54Tおよび下側クラッド層54Bは、導光板50の厚みの約1/3の厚みを占める部材として図示してある。しかしながら、一般的に導光板50の厚みは0.1mm〜0.3mm程度であり、上側クラッド層54Tおよび下側クラッド層54Bの厚みは、0.01mm〜0.05mm程度である。
【0029】
次に、この押釦スイッチ用部材10Aの表示動作について説明する。図2は、図1に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図であり、押釦スイッチ用部材10Aの押釦領域S1を、操作面50T側から目視した場合の表示状態について示したものである。ここで、図2における表示状態は、点発光素子40および導光板50のコア層52に光を照射する導光板用光源の発光の有無による明度−暗度の相対的変化について示したものである。
【0030】
まず、導光板50のコア層52に光を導入した場合、コア層52の下側クラッド層54側に位置する表示パターン形成部56Aにて、光が操作面50T側へと散乱される。ここで、表示パターン形成部56Aが、数字の”1”を示す表示パターンを成す場合、図2(A)または図2(B)に示すように押釦領域S1内の左側に、明るく輝く数字の”1”が表示される。これに対して、導光板50のコア層52に光を導入しない場合、図2(C)または図2(D)に示すように押釦領域S1内の左側には、数字の”1”は実質的に表示されない。但し、導光板50のコア層52に光を導入しない場合でも、操作面50T側からは、薄らと、表示パターン形成部56Aの表示パターンである”1”が認識される。
【0031】
また、点発光素子40を発光させた場合、点発光素子40から発せられた光は、開口部62Aを経て、操作面50T側へと照光される。ここで、開口部62Aが、アルファベットの”abc”を示す表示パターンを成す場合、図2(A)または図2(C)に示すように押釦領域S1内の右側に、明るく輝くアルファベットの”abc”が表示される。これに対して、点発光素子40を発光させない場合、図2(B)または図2(D)に示すように押釦領域S1内の右側には、アルファベットの”abc”は実質的に表示されない。但し、点発光素子40を発光させない場合でも、操作面50T側からは、薄らと、開口部62Aの表示パターンである”abc”が認識される。以下、導光板用光源、および/または、点発光素子40、を発光させた状態で、表示パターンを明るく輝くように表示させる表示を「照光表示」と称す場合がある。
【0032】
なお、押釦スイッチ10Aでは、押釦スイッチ用部材10Aの平面方向において、押釦領域S1内に位置する表示パターン形成部56Aおよび開口部62Aは互いに重複しない位置に存在する。このため、図2(A)に示すように、数字の”1”と、アルファベットの”abc”とを同時に照光表示しても、各々の表示パターンが重なり合うことなく、別々に表示される。また、図2に示すように、数字の”1”の照光表示および非表示と、アルファベットの”abc”の照光表示および非表示と、を組み合わせることにより、双方が照光表示されるダブル表示モード(図2(A))、いずれか一方のみが照光表示されるシングル表示モード(図2(B)、図2(C))、ならびに、双方共に実質的に表示されない非表示モード(図2(D))を実現できる。なお、図2に示す例は、導光板用光源、および、点発光素子40のON/OFF動作のみを前提とした4つの表示モードを示したものであるが、導光板用光源および/または点発光素子40の、発光強度を段階的に切り替えたりあるいは発光色を変えることにより、さらに多様な表示モードを実現することもできる。たとえば、導光板用光源および点発光素子40の双方を発光させる場合でも、一方の発光強度を相対的に強くし、他方の発光強度を相対的に弱くすることができる。この場合、2つの表示パターンを同時に照光表示されると共に、一方の表示パターンを選択的に強調して照光表示できる。
【0033】
押釦スイッチ10Aの押釦操作を行う場合は、操作面50Tの押釦領域S1、押釦領域S2の中央部近傍を押圧する。この場合、導光板50が変形して導光板50の裏面50B側が、スイッチ素子30A、30Bの頂上部に設けられた押し子32A(32)、32B(32)に接触し、これを下方に押圧する。この際、押圧力が、スイッチ素子30A、30Bにおいて、電気信号に変換され、スイッチ素子30A、30Bに接続された不図示の配線を介して電子機器の本体部分等に伝達される。なお、押釦操作を阻害しないように、点発光素子40の高さ(基板20の厚み方向の長さ)は、押し子32A、32Bよりも低い位置となるように設定されることが好ましい。
【0034】
なお、図1に示す押釦スイッチ用部材10Aは、操作面50T上に、何らの部材も配置されていないため、押釦スイッチ用部材の薄型化に適している。しかしながら、押釦操作時の入力性を向上させる観点からは、導光板50の操作面50T上に、スイッチ素子30A、30Bの各々に対応する透光性のキートップを設けてもよい。この場合、導光板50を構成する主材料は、弾性を有する樹脂が用いられる。
【0035】
図3は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図であり、具体的には図1に示す押釦スイッチ用部材10Aの操作面50T上にキートップを設けた場合の一例を示す図である。ここで、図3中、図1に示すものと同様のものについては、同じ符号が付してある。図3に示す押釦スイッチ用部材10B(10)では、押釦領域S1内の操作面50T上に、押釦領域S1の周縁部以外の領域を占めるようにキートップ70A(70)が配置され、押釦領域S2内の操作面50T上に、押釦領域S2の周縁部以外の領域を占めるようにキートップ70B(70)が配置されている。これらキートップ70A、70Bは、その断面形状が台形状で透光性を有している。また、2つのキートップ70A、70Bで覆われていない操作面50T上、すなわち、押釦領域S1と他の押釦領域と、および、押釦領域S2と他の押釦領域と、の境界線D0、D1、D2近傍の操作面50T上には、パネル部材80が配置されている。なお、パネル部材80は、操作面50Tの平面方向に対して、表示パターン形成部56A、56B、および、開口部62A、62Bと重複しない位置に設けられる。
【0036】
図3に示す押釦スイッチ用部材10Bでは、キートップ70A、70Bおよびパネル部材80が導光板50の操作面50T上に配置されているものの、基本的に、図1に示す押釦スイッチ用部材10Aと実質同様の照光表示を実現できる。また、各々の押釦領域S1、S2に対応するように、キートップ70A、70Bが配置され、かつ、キートップ70A、70Bが配置されない部分にはパネル部材80が配置される。このため、図2(D)に示すような非照光状態であっても、個々の押釦の位置を視覚的に認識するのが極めて容易である。なお、キートップ70A、70Bおよびパネル部材80と、操作面50Tとの間には、接着剤層やその他の層(加飾層など)が設けられていてもよい。
【0037】
なお、図1に示す押釦スイッチ用部材10A、および、図3に示す押釦スイッチ用部材10Bでは、図2に示すように、点発光素子40または導光板用光源が非発光状態であっても、開口部62A、62Bまたは表示パターン形成部56A、56Bのパターン形状が薄らと認識される。したがって、点発光素子40が非発光状態である場合において、開口部62A、62Bのパターン形状が視覚的に完全に認識できないようにするためには、導光板50の裏面50Bに、半透光層と、遮光層60とをこの順に積層して設けることが好ましい。また、点発光素子40および/または導光板用光源が非発光状態である場合において、開口部62A、62Bおよび/または表示パターン形成部56A、56Bのパターン形状が視覚的に完全に認識できないようにするためには、導光板50の操作面50Tに半透光層を設けることが好ましい。
【0038】
図4は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。ここで、図4中、図1および図3に示すものと同様のものについては、同じ符号が付してある。図4に示す押釦スイッチ用部材10C(10)は、図3に示す押釦スイッチ用部材10Bの裏面50Bに半透光層90Bを設け、さらにその上に遮光層60を設けた構成を有するものであり、この点以外は、図3に示す押釦スイッチ用部材10Bと同様の構成を有するものである。
【0039】
次に、この押釦スイッチ用部材10Cの表示動作について説明する。図5は、図4に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図であり、押釦スイッチ用部材10Cの押釦領域S1を、導光板50のキートップ70A、70Bおよびパネル部材80が配置された側から目視した場合の表示状態について示したものである。ここで、図5における表示状態は、点発光素子40および導光板用光源の発光の有無による明度−暗度の相対的変化について示したものである。
【0040】
まず、導光板50のコア層52に光を導入した場合、コア層52の下側クラッド層54側に位置する表示パターン形成部56Aにて、光が操作面50T側へと散乱される。ここで、表示パターン形成部56Aが、数字の”1”を示す表示パターンを成す場合、図5(A)または図5(B)に示すように押釦領域S1内の左側に、明るく輝く数字の”1”が表示される。これに対して、導光板50のコア層52に光を導入しない場合、図5(C)または図5(D)に示すように押釦領域S1内の左側には、数字の”1”は実質的に表示されない。但し、導光板50のコア層52に光を導入しない場合でも、操作面50T側からは、薄らと、表示パターン形成部56Aの表示パターンである”1”が認識される。
【0041】
また、点発光素子40を発光させた場合、点発光素子40から発せられた光は、開口部62Aを経て、操作面50T側へと照光される。ここで、開口部62Aが、アルファベットの”abc”を示す表示パターンを成す場合、図5(A)または図5(C)に示すように押釦領域S1内の右側に、明るく輝くアルファベットの”abc”が表示される。これに対して、点発光素子40を発光させない場合、図5(B)または図5(D)に示すように押釦領域S1内の右側には、アルファベットの”abc”は表示されない。そして、図2(B)または図2(D)に例示した場合と異なり、図5(B)または図5(D)に示す例では、操作面50T側からは、薄らと、開口部62Aの表示パターンである”abc”が認識されることも無い。
【0042】
この理由は、押釦スイッチ用部材10Cを、キートップ70A、70Bが配置された側から観察する観察者と、開口部62Aとの間に、半透光層90Bが存在するためである。この結果、操作面50T側から導光板50内へと入射した室内光や自然光の、遮光層60が存在する部分と、遮光層60が存在しない部分(開口部62A)と、における反射率に殆ど差が生じなくなる。それゆえ、点発光素子40を発光させない場合、操作面50T側からは、薄らと、開口部62Aの表示パターンである”abc”が認識されない。一方、点発光素子40から発光される光は、開口部62Aにおいて、室内光や自然光よりも照度が圧倒的に高い。このため、点発光素子40が発光した場合は、この光の一部が、開口部62Aに位置する、半透光層90Bを透過して、観察者に、明るく輝くアルファベットの”abc”として認識されることになる。
【0043】
図6は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。ここで、図6中、図1、図3および図4に示すものと同様のものについては、同じ符号が付してある。図6に示す押釦スイッチ用部材10D(10)は、図3に示す押釦スイッチ用部材10Bの操作面50Tに半透光層90Tを設け、さらにその上にキートップ70A、70Bおよびパネル部材80を設けた構成を有するものであり、この点以外は、図3に示す押釦スイッチ用部材10Bと同様の構成を有するものである。なお、図3に示す例では、半透光層90Tは、操作面50Tに設けられているが、キートップ70A、70Bの天面および側面、ならびに、パネル部材80の表面に設けられていてもよい。
【0044】
次に、この押釦スイッチ用部材10Dの表示動作について説明する。図7は、図6に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図であり、押釦スイッチ用部材10Dの押釦領域S1を、導光板50のキートップ70A、70Bおよびパネル部材80が配置された側から目視した場合の表示状態について示したものである。ここで、図7における表示状態は、点発光素子40および導光板用光源の発光の有無による明度−暗度の相対的変化について示したものである。
【0045】
まず、導光板50のコア層52に光を導入した場合、コア層52の下側クラッド層54側に位置する表示パターン形成部56Aにて、光が操作面50T側へと散乱される。ここで、表示パターン形成部56Aが、数字の”1”を示す表示パターンを成す場合、図7(A)または図7(B)に示すように押釦領域S1内の左側に、明るく輝く数字の”1”が表示される。これに対して、導光板50のコア層52に光を導入しない場合、図7(C)または図7(D)に示すように押釦領域S1内の左側には、数字の”1”は表示されない。そして、図2(C)または図2(D)に例示した場合と異なり、図7(C)または図7(D)に示す例では、操作面50T側からは、薄らと、表示パターン形成部56Aの表示パターンである”1”が認識されることも無い。
【0046】
この理由は、押釦スイッチ用部材10Dを、キートップ70A、70Bが配置された側から観察する観察者と、表示パターン形成部56Aとの間に、半透光層90Tが存在するためである。この結果、操作面50T側から導光板50内へと入射した室内光や自然光の、表示パターン形成部56Aが存在する部分と、表示パターン形成部56Aが存在しない部分と、における反射率に殆ど差が生じなくなる。それゆえ、導光板用光源を発光させない場合、操作面50T側からは、薄らと、表示パターン形成部56Aの表示パターンである”1”が認識されない。一方、導光板用光源から発光される光は、表示パターン形成部56Aにおいて、室内光や自然光よりも照度が圧倒的に高い。このため、導光板用光源が発光した場合は、表示パターン形成部56Aにて操作面50T側へと散乱された光の一部が、半透光層90Tを透過して、観察者に、明るく輝く数字の”1”として認識されることになる。
【0047】
また、点発光素子40を発光させた場合、点発光素子40から発せられた光は、開口部62Aを経て、操作面50T側へと照光される。ここで、開口部62Aが、アルファベットの”abc”を示す表示パターンを成す場合、図7(A)または図7(C)に示すように押釦領域S1内の右側に、明るく輝くアルファベットの”abc”が表示される。これに対して、点発光素子40を発光させない場合、図7(B)または図7(D)に示すように押釦領域S1内の右側には、アルファベットの”abc”は表示されない。そして、図2(B)または図2(D)に例示した場合と異なり、図7(B)または図7(D)に示す例では、操作面50T側からは、薄らと、開口部62Aの表示パターンである”abc”が認識されることも無い。この理由は、図4に示した押釦スイッチ用部材10Cの場合と同様に、観察者と、開口部62Aとの間に、半透光層90Tが存在するためである。
【0048】
なお、図1、図3、図4および図6に示す押釦スイッチ用部材10A,10B、10C、10Dにおいては、表示パターン形成部56Aと開口部62Aと、および、表示パターン形成部56Bと開口部62Bとが、導光板50の平面方向に対して、完全に重複しないように配置されているが、少なくとも部分的に重複するように配置してもよい。たとえば、表示パターン形成部56Aと、開口部62Aとを、導光板50の平面方向において、部分的に重複するように配置した場合、押釦領域S1内の略同じ位置に、表示パターン形成部56Aにより形成される表示パターンと、開口部62Aにより形成される表示パターンとを照光表示することができる。なお、このような照光表示を行う場合、一方の表示パターンのみを照光表示し、他方の表示パターンを照光表示しない際に、当該他方の表示パターンが薄らと認識されないことが望ましい。明るく光っている一方の表示パターンの背景部分に、薄らと他方の表示パターンが認識されない方が、基本的には、押釦スイッチ用部材のデイザン性をより向上させると共に、明るく光っている一方の表示パターンの視認性もより向上させることができるからである。このような照光表示を実現するためには、本実施形態の押釦スイッチ用部材は、図6に示す押釦スイッチ用部材10Dのように、導光板50の操作面50Tに半透光層90Tを設けた構成を有することが特に好ましい。
【0049】
このような構成を採用した場合、押釦領域S1内に照光表示される2つの表示パターンの押釦領域S1内における配置位置・表示パターンの大きさの自由度が非常に大きくなる。このため、1つの表示パターンで表示される表示内容を、アルファベットの”abc”のみのように、1つの意味のみを有する文字・記号に限定されず、アルファベットおよび数字の組み合わせ”1 abc”のように、2つまたはそれ以上の意味を有する文字・記号とすることが容易である。また、押釦領域S1内に、一方の表示パターンを大きいサイズで照光表示させると同時に、他方の表示パターンも大きいサイズで照光表示させることができ、互いの表示パターンのサイズや押釦領域S1内の配置位置を考慮せずに、表示パターンの表示内容、サイズ、押釦領域S1内の表示位置を任意に設定できる。
【0050】
図8は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。ここで、図8中、図1、図3、図4および図6に示すものと同様のものについては、同じ符号が付してある。図8に示す押釦スイッチ用部材10E(10)は、図6に示す押釦スイッチ用部材10Eにおいて、表示パターン形成部56Aと開口部62Aと、および、表示パターン形成部56Aと開口部62Bとが、導光板50の平面方向において、部分的に重複するように配置された構成を有するものである。ここで、図8に示す例では、導光板50の平面方向において、表示パターン形成部56Aおよび開口部62Aは、共に、押釦領域S1の中央部に配置され、表示パターン形成部56Bおよび開口部62Bは、共に、押釦領域S2の中央部に配置されている。そして、導光板50の平面方向における、表示パターン形成部56Aの幅は、開口部62Aの幅よりも大きく、表示パターン形成部56Bの幅は、開口部62Bの幅よりも大きい。このため、導光板50の平面方向において、開口部62Aは、表示パターン形成部56Aの一部の領域と重複し、開口部62Bは、表示パターン形成部56Bの一部の領域と重複している。なお、以上に説明した点を除けば、図8に示す押釦スイッチ用部材10Eのその他の構成は、図6に示す押釦スイッチ用部材10Dと同様である。
【0051】
次に、この押釦スイッチ用部材10Eの表示動作について説明する。図9は、図8に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図であり、押釦スイッチ用部材10Eの押釦領域S1を、導光板50のキートップ70A、70Bおよびパネル部材80が配置された側から目視した場合の表示状態について示したものである。ここで、図9における表示状態は、点発光素子40および導光板用光源の発光の有無による明度−暗度の相対的変化について示したものである。
【0052】
まず、点発光素子40を発光させない状態で、導光板用光源を発光させた場合、コア層52の下側クラッド層54側に位置する表示パターン形成部56Aにて、光が操作面50T側へと散乱される。ここで、表示パターン形成部56Aが、数字およびアルファベットの組み合わせからなる”1 abc”を示す表示パターンを成す場合、図9(A)に示すように押釦領域S1内の中央部に、明るく輝く数字およびアルファベットの”1 abc”が表示される。なお、この場合、観察者と、開口部62Aとの間には、半透光層90Tが存在するため、開口部62Aにより形成される表示パターンは、薄らと認識されることもない。
【0053】
次に、導光板用光源を発光させない状態で、点発光素子40を発光させた場合、点発光素子40から発せられた光は、開口部62Aを経て、操作面50T側へと照光される。ここで、開口部62Aが、記号の”&”を示す表示パターンを成す場合、図9(B)に示すように、押釦領域S1内の中央部に、明るく輝く記号の”&”が表示される。なお、この場合、観察者と、表示パターン形成部56Aとの間には、半透光層90Tが存在するため、表示パターン形成部56Aにより形成される表示パターンは、薄らと認識されることもない。
【0054】
また、導光板用光源および点発光素子40の双方を発光させない場合には、図9(C)に示すように、何も表示されず、かつ、開口部62Aおよび表示パターン形成部56Aにより形成される表示パターンが薄らと認識されることもない。なお、図8に示す押釦スイッチ用部材10Eでは、導光板用光源および点発光素子40の双方を同時に発光させて、照光表示を行うことも可能である。しかしながら、図9に例示したように、一方の表示パターンが”1 abc”であり、他方の表示パターンが”&”であるような場合において、双方を同時に照光表示すると、”1 abc”と”&”とが、押釦領域S1の中央部において、重複して照光表示されることになる。この場合、押釦領域S1内に表示された内容は、観察者には、意味不明の記号として認識されることになる。したがって、このような場合、通常は、導光板用光源および点発光素子40の双方を発光させる態様での照光表示は行わないことが好ましい。
【0055】
表示パターン形成部56A、56Bおよび開口部62A、62Bは、図2、図5、図7および図9に例示したように照光表示したい表示パターンの輪郭線の内側の領域(表示パターンエリア)内の全てを、表示パターン形成部56A、56Bおよび開口部62A、62Bとして形成したものとすることができる。しかしながら、表示パターンが、視覚的に意味ある文字、記号、図形等として識別できるのであれば、上述した態様(第一の態様)に限定されない。たとえば、表示パターンエリア外を、表示パターン形成部56A、56Bおよび開口部62A、62Bで形成する第二の態様(上述した第一の態様を反転表示した態様)、表示パターンの輪郭線に沿ってライン状の表示パターン形成部56A、56Bおよび開口部62A、62Bを形成する第三の態様、あるいは、第三の態様を反転表示した第四の態様を、必要に応じて適宜採用することもできる。
【0056】
また、第一の態様および第二の態様は、表示パターンエリア内および表示パターンエリア外が完全に塗潰された態様での完全塗潰し表示であるが、表示パターンエリア内および表示パターンエリア外の少なくとも一方が、<a>ドット状パターン、<b>ライン状パターン、<c>網目状パターン、および、<d>これらを2種類以上組み合わせた複合パターン、ならびに、<e>これら<a>〜<d>のパターンを反転表示したパターンなどにより部分的に塗潰された態様での部分的塗潰し表示であってもよい。なお、表示パターンエリア内および表示パターンエリア外の双方を、たとえば、同じドット状パターンで部分的塗潰し表示する場合、表示パターンが認識できるように、表示パターンエリア内と表示パターンエリア外とにおけるドットの配置ピッチ、サイズ等は互いに異なるものとされる。
【0057】
また、第三の態様および第四の態様は、表示パターンの輪郭線に沿った領域(境界領域)と、輪郭線に沿った部分の外側の領域(外側領域)と、輪郭線に沿った部分の内側の領域(内側領域)とを、各々完全に塗潰した態様での完全塗潰し表示であるが、これら領域の少なくとも1つが、<a>ドット状パターン、<b>ライン状パターン、<c>網目状パターン、および、<d>これらを2種類以上組み合わせた複合パターン、ならびに、<e>これら<a>〜<d>のパターンを反転表示したパターンなどにより部分的に塗潰された態様での部分的塗潰し表示であってもよい。なお、上記3つの領域のうち、隣接するいずれか2つの領域を、たとえば、同じドット状パターンで部分的塗潰し表示する場合、表示パターンが認識できるように、一方の領域と他方の領域とにおけるドットの配置ピッチ、サイズ等は互いに異なるものとされる。
【0058】
このように、本実施形態の押釦スイッチ用部材では、図1〜図9に例示した完全塗潰し表示以外にも、部分的塗潰し表示を採用することもできる。
【0059】
なお、導光板50の平面方向に対して、たとえば、表示パターン形成部56Aと開口部62Aと、および、表示パターン形成部56Bと開口部62Bとが、略重複するように配置される場合には、本実施形態の押釦スイッチ用部材は以下に示す構成を採用することが特に好ましい。すなわち、この場合、開口部62A、62B内において、導光板50の基板20が配置された側の面(裏面50B)に、ドット状パターン、ライン状パターン、網目状パターン、および、これらを2種類以上組み合わせた複合パターン、ならびに、これらパターンを反転表示したパターンから選択されるパターンを有する開口部内遮光層が設けられる。また、表示パターン形成部56A、56Bは、ドット状パターン、ライン状パターン、網目状パターン、および、これらを2種類以上組み合わせた複合パターン、ならびに、これらパターンを反転表示したパターンから選択されるパターンで、形成される。言い換えれば、表示パターン形成部56A、56Bは、表示パターンエリア内が、ドット状パターン等により部分的に塗潰された表示パターンを形成する。ここで、導光板50の平面方向に対して、開口部内遮光層と上述した所定のパターンからなる表示パターン形成部56A、56Bとは、開口部内遮光層と重複する領域内にのみ配置される。
【0060】
この場合、点発光素子40から発せられた光が開口部56A、56B内を通過して操作面50T側へと通過する場合、裏面50Bに対して略直交するように操作面50T側へと通過する光(すなわち、観察者に最も認識されやすい光)は、導光板50中において、表示パターン形成部56A、56Bの存在しない領域のみを通過することになる。このため、開口部56A、56B内を通過した光(裏面50Bに対して略直交する成分の光)の一部が、表示パターン形成部56A、56Bにより散乱されて、表示パターンが部分的に見にくくなるのを防止できる。
【0061】
図10は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式断面図である。ここで、図10中、図1、図3、図4、図6および図8に示すものと同様のものについては、同じ符号が付してある。図10に示す押釦スイッチ用部材10F(10)は、押釦領域S1の中央部に位置するように開口部62Aが設けられ、押釦領域S2の中央部に位置するように開口部62Bが設けられている。ここで、導光板50の平面方向に対して、表示パターン形成部56A1(56)、56B1(56)と、開口部62A、62Bとが実質的に重複する位置に配置されている。そして、開口部62A、62B内には、ドット状パターンを有する開口部内遮光層64A(64)、64B(64)が設けられている。また、表示パターン形成部56A1、56B1も、ドット状パターンで形成されている。すなわち、表示パターン形成部56A1、56B1は、個々のドットの集合体により1つの表示パターンを形成している。なお、以上に説明した点を除けば、図10に示す押釦スイッチ用部材10Fのその他の構成は、図6に示す押釦スイッチ用部材10Dと同様である。
【0062】
また、図11は、図10に示す押釦スイッチ用部材の表示パターン形成部および開口部内遮光層の導光板の平面方向に対する相対的位置関係の一例を示す拡大断面図であり、具体的には、押釦領域S1内に位置する表示パターン形成部56A1および開口部内遮光層64Aの導光板50の平面方向に対する相対的位置関係を示したものである。図11に示すように、導光板50の平面方向に対して、ドット状に形成された個々の表示パターン形成部56A1は、ドット状に形成された開口部内遮光層64Aの領域内にのみ配置されている。すなわち、ドット状に形成された開口部内遮光層64A間、および、ドット状に形成された開口部内遮光層64Aと遮光層60との間を通過するように、裏面50B側から操作面50T側へと照射される光(図中、符号Bで示される領域を通過する裏面50Bに対して略直交する成分の光L)は、ドット状に形成された表示パターン形成部56A1には照射されない。このため、光Lが、表示パターン形成部56A1にて散乱されることが無い。
【0063】
図12は、図10に示す押釦スイッチ用部材の表示動作の一例を示す模式平面図であり、押釦スイッチ用部材10Fの押釦領域S1を、導光板50のキートップ70A、70Bおよびパネル部材80が配置された側から目視した場合の表示状態について示したものである。ここで、図12における表示状態は、点発光素子40および導光板用光源の発光の有無による明度−暗度の相対的変化について示したものである。なお、図12に示す例では、導光板50の平面方向に対して、ドット状に形成された個々の表示パターン形成部56A1が、ドット状に形成された開口部内遮光層64Aの領域外に配置された場合において、光Lが、表示パターン形成部56A1にて散乱される現象は考慮しないものとして説明する。すなわち、導光板50の平面方向に対して、ドット状に形成された個々の表示パターン形成部56A1が、ドット状に形成された開口部内遮光層64Aの領域外に配置されていたとしても、光Lが、表示パターン形成部56A1にて散乱されないものと仮定して、説明する。
【0064】
まず、点発光素子40を発光させない状態で、導光板用光源を発光させた場合、コア層52の下側クラッド層54側に位置する表示パターン形成部56A1にて、光が操作面50T側へと散乱される。ここで、正方形のドットが正方配列されたドット状パターンから構成される表示パターン形成部56Aが、アルファベットの”1”を示す表示パターンを成す場合、図12(A)に示すように押釦領域S1内の中央部に、明るく輝くアルファベットの”1”がドット状模様で表示される。なお、この場合、観察者と、開口部62Aとの間には、半透光層90Tが存在するため、開口部62Aにより形成される表示パターンは、薄らと認識されることもない。
【0065】
次に、導光板用光源を発光させない状態で、点発光素子40を発光させた場合、点発光素子40から発せられた光は、開口部62Aを経て、操作面50T側へと照光される。ここで、開口部62Aの輪郭が、アルファベットの”A”を示す表示パターンを成し、かつ、開口部62A内に設けられた開口部内遮光層64Aが、正方形のドットが正方配列されたドット状パターンを反転表示したパターン(すなわち格子状パターン)を成す場合、図12(B)に示すように、押釦領域S1内の中央部に、明るく輝くアルファベットの”A”がドット状模様で表示される。なお、この場合、観察者と、表示パターン形成部56Aとの間には、半透光層90Tが存在するため、表示パターン形成部56Aにより形成される表示パターンは、薄らと認識されることもない。
【0066】
また、導光板用光源および点発光素子40の双方を発光させない場合には、図12(C)に示すように、何も表示されず、かつ、開口部62Aおよび開口部内遮光層64A、ならびに、表示パターン形成部56A1により形成される表示パターンが薄らと認識されることもない。
【0067】
以上に説明した本実施形態の押釦スイッチ用部材10には、少なくとも1つの点発光素子40が設けられていればよいが、2つ以上の点発光素子40が設けられていることが好ましい。この場合、個々の点発光素子毎に選択的に発光可能とすることにより、多様な照光表示が可能となる。なお、押釦スイッチ用部材10が2つ以上の点発光素子40を有する場合、これら2つ以上の点発光素子40は、全て同色の発光色を有するものでもよく、赤色、緑色および青色の組み合わせのように、2種類以上の互いに異なる発光色を有するものでもよい。この場合、個々の押釦領域S1、S2毎に対応させて、所定の色に発光する点発光素子40を配置してもよく、個々の押釦領域S1、S2毎に、RGBの3原色を選択して照光表示できるように、赤色、緑色および青色に発光する3つの点発光素子40を配置してもよい。
【0068】
また、押釦スイッチ用部材10が2つ以上の点発光素子40を有し、かつ、個々の点発光素子40毎に選択的に発光可能な場合、一の点発光素子40と、他の点発光素子40との間に、互いの照射光を遮光する遮光壁が配置されていてもよい。この場合も、より多様な照光表示が可能となる。なお、遮光壁は、導光板50と、基板20との間に配置することができる。
【0069】
図13は、本実施形態の押釦スイッチ用部材の他の例を示す模式平面図であり、具体的には、個々別々に選択的に発光可能な2つ以上の点発光素子と、遮光壁とを備えた押釦スイッチ用部材の一例を示す平面図である。ここで、図13中、図1、図3、図4、図6、図8および図10に示すものと同様のものについては同様の符号が付してある。また、図13中、押釦領域、点発光素子、遮光壁および押釦領域内に表示される表示パターン以外については記載を省略してある。なお、図13中では、互いに隣接する2つの押釦領域の間は、説明の都合上、隙間が設けられたものとしている。図13に示すように押釦スイッチ用部材10G(10)は、2行×3列に配置された6つの押釦領域を有している。ここで、1行目には、左から順に押釦領域A1、押釦領域A2、押釦領域A3が配置され、2行目には、左から順に押釦領域B1、押釦領域B2、押釦領域B3が配置されている。また、押釦領域A1と押釦領域A2との境界線部分には、点発光素子40Aが配置され、押釦領域A2と押釦領域A3との境界線部分には、点発光素子40Bが配置され、押釦領域B1と押釦領域B2との境界線部分には、点発光素子40Cが配置され、押釦領域B2と押釦領域B3との境界線部分には、点発光素子40Dが配置されている。さらに、押釦領域A1、押釦領域A2および押釦領域A3と、押釦領域B1、押釦領域B2および押釦領域B3との境界線部分には、遮光壁100が配置されている。なお、点発光素子40A、40B、40C、40Dは、発光状態にある場合は、白丸印として示してあり、非発光状態にある場合は、黒丸印として示してある。
【0070】
ここで、図13(A)は、全ての点発光素子40A、40B、40C、40Dが非発光状態であり、かつ、導光板用光源を発光させた状態の一例を示したものである。この場合、6つの押釦領域A1、A2、A3、B1、B2、B3の全てにおいて、個々の押釦領域内に設けられた表示パターン形成部56(図13中、不図示)に対応する表示パターンの照光表示が行われる。
【0071】
図13(B)は、導光板用光源を発光させない状態で、遮光壁100の一方の側、すなわち、3つの押釦領域A1、A2、A3が存在する側の点発光素子40A,40Bのみを発光させた状態の一例を示したものである。この場合、3つの押釦領域A1、A2、A3のみにおいて、これら3つの個々の押釦領域内に設けられた開口部62(図13中、不図示)に対応する表示パターンの照光表示が行われる。
【0072】
図13(C)は、導光板用光源を発光させない状態で、遮光壁100の他方の側、すなわち、3つの押釦領域B1、B2、B3が存在する側の点発光素子40C,40Dのみを発光させた状態の一例を示したものである。この場合、3つの押釦領域B1、B2、B3のみにおいて、これら3つの個々の押釦領域内に設けられた開口部62(図13中、不図示)に対応する表示パターンの照光表示が行われる。
【0073】
また、導光板用光源および4つの点発光素子40A、40B、40C、40Dのいずれも発光させない場合には、6つの押釦領域A1、A2、A3、B1、B2、B3の全てにおいて、何も表示されない(図13中、図示省略)。
【0074】
図14は、図13に示す押釦スイッチ用部材の断面構造の一例を示す模式断面図であり、具体的には、図13(A)中に示すように、押釦領域A2、B2を分断する符号X1−X2で示されるラインの断面を矢印方向に見た場合の断面図について示したものである。ここで、図14中、図1、図3、図4、図6、図8、図10および図13に示すものと同様のものについては、同じ符号が付してある。図14に示す押釦スイッチ用部材10Gは、基本的に図10に示す押釦スイッチ用部材10Eとほぼ同様の構成を有するものである。但し、押釦スイッチ用部材10Gでは、互いに隣接する2つの押釦領域A2と押釦領域B2との境界線D1上であって、基板20と導光板50との間に遮光壁100が配置されている。この遮光壁100は、図14の紙面の手前側から奥側へと連続的に設けられている。また、スイッチ素子30A,30Bの図14中の紙面の手前側には、点発光素子40A、40C(図中、不図示)が配置され、スイッチ素子30A,30Bの図14中の紙面の奥側には、点発光素子40B、40D(図中、不図示)が配置されている。このため、点発光素子40A、40Bから発せられた光は、遮光壁100により遮光されるため、押釦領域B2側へと漏れることがない。また、点発光素子40C、40Dから発せられた光は、遮光壁100により遮光されるため、押釦領域A2側へと漏れることがない。
【0075】
−基板−
次に、本実施形態の押釦スイッチ用部材10を構成する各部の部材の詳細について説明する。まず、基板20としては、公知の基板が利用でき、たとえば公知の樹脂材料から構成される基板、樹脂材料に無機フィラーを添加した基板などが利用できる。
【0076】
−スイッチ素子−
スイッチ素子30としては、押圧力を電気的信号に変換する機構を有するものであれば公知のスイッチ素子が利用でき、図1等に例示したように、たとえば、押し子32が頂上部分に設けられたドーム状のスイッチ素子などが利用できる。なお、押し子32は、スイッチ素子30の頂上部ではなく、導光板50の裏面50B側に設けてもよい。この場合、押し子は、たとえば、下側クラッド層54Bと一体を成す凸状の部材であってもよい。また、導光板50の裏面50Bに、押し子シートを設けてもよい。この場合、この押し子シートの表面に遮光層60が設けられ、必要に応じて開口部内遮光層64を更に設けてもよい。また、押し子シートの表面に半透光層90Bを設け、さらにその表面に遮光層60を設けてもよい。
【0077】
−光源−
点発光素子40としては、公知の点発光光源が利用でき、たとえば、LED等を利用することができる。また、導光板用光源としては、たとえば、LED等の公知の点発光光源や、蛍光管等の線状発光光源を利用することができる。
【0078】
−導光板および表示パターン形成部−
導光板50としては、端面より入射させた光を面発光させることができるものであれば公知の導光板が利用でき、たとえば、図1等に例示したようにコア層52とクラッド層54T、54Bとから構成されるものなどが利用できる。また、表示パターン形成部56としては、導光板50内をその平面方向と略平行方向に進行する光の進行方向を、散乱および/または反射により、導光板50の基板20が配置された側と略反対側の方向に変更するものであれば特に限定されない。たとえば、図1等に示した例では、コア層52と下側クラッド層54Tとの界面部分を粗面化することで、コア層52を通過する光が操作面50T側へと散乱されやすくしたり、コア層52と下側クラッド層54Bとの界面部分に薄い白色のインク層または金属反射膜を設けたりして、コア層52を通過する光が操作面50T側へと反射されやすくしたりすることができる。ここで、コア層52と下側クラッド層54Tとの界面部分に形成される粗面化部分としては、微細凹部および/または微細凸部を設けることができる。また、白色のインク層は、スクリーン印刷等の公知の印刷方法または公知の塗布方法等を利用して形成でき、金属反射膜は、真空蒸着法またはスパッタリング法等の公知の気相成膜法を利用して形成できる。
【0079】
なお、表示パターン形成部56は、上述したような、コア層52の基板20側に設けられる粗面化部分、白色インク層あるいは金属反射膜などの、光散乱および/または光反射機能を持つ散乱反射部分と、上側クラッド層54T内、操作面50Tまたはコア層52と上側クラッド層54Tとの界面のいずれかに設けられた遮光パターンから構成されていてもよい。この場合、散乱反射部分は、単に、円状、四角状等で、光を遮光パターン側へと散乱および/または反射させ、遮光パターンが表示部に対応した形状を有することで、表示パターンを表示させることができる。但し、このような構成は、表示パターン形成部56が、導光板50の平面方向において、開口部62と重複しない位置に設けられている場合に採用することが好ましい。導光板50の平面方向において、開口部62と重複する位置に、表示パターン形成部56の一部を形成する遮光パターンが存在すると、開口部62により形成される表示パターンが照光表示できなくなるためである。なお、遮光パターンは、遮光層60と同様のものが形成でき、たとえば、操作面50T上に、散乱反射部分に対応するように所定の表示パターンを有する遮光膜を形成できる。また、操作面50T上にキートップ70A,70Bやパネル部材80が設けられる場合、これら部材の底面(操作面50側の面)または天面に、散乱反射部分に対応するように所定の表示パターンを有する遮光膜を設けることが好ましい。なお、この遮光パターンを形成する遮光膜は、押釦スイッチ用部材10の表面に背景模様等を表示する加飾層の機能を兼ねていてもよい。
【0080】
なお、図1等に例示した、上側クラッド層54T、コア層52および下側クラッド層54Bからなる3層構成の導光板50においては、下側クラッド層54Bは省いてもよい。この場合、遮光層60が反射層としての機能も有しているか、あるいは、遮光層60とコア層52との間に反射層を設けることが好ましい。
【0081】
また、導光板50を構成する主材料としては、公知の透光性の樹脂材料が用いられる。この樹脂材料は、たとえば、アクリル樹脂などのように剛性の高い樹脂でもよく、ウレタン樹脂などのように弾性の高い樹脂を有するものでもよい。導光板50が、ウレタン樹脂等から構成され弾性部材として機能する場合には、押釦スイッチ用部材10の剛性を確保するために、剛性の高い部材(フレーム部材等)を併用することが好ましい。また、導光板50の操作面50T上に、図3等に例示したように個々独立した1つのキーに対応するキートップ70を設けたり、複数個のキーが一体的に型成形されたモールドプリントキーを設ける場合には、クリック感を向上させるために、導光板50は、弾性部材であることが好ましい。なお、本願明細書において、「透光性」とは、可視光域の波長の光に対する透過率が、90%以上であることを意味し、95%以上であることが好ましい。
【0082】
−遮光層−
遮光層60および開口部内遮光層64は、少なくとも可視域の波長の光に対する透過率が実質的に0%、すなわち、光を遮光できるものであればその構成は特に限定されないが、オフセット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷などの公知の印刷方法もしくは公知の塗装方法等により形成された白色の層(白色層)、または、真空蒸着法もしくはスパッタリング法等の公知の気相成膜法により形成された金属層であることが好ましい。また、遮光層60が2つ以上の層を積層した構造を有する場合には、導光板50側および基板20側の最外層が、白色層または金属層から構成されることが好ましい。
【0083】
−半透光層−
半透光層90T、90Bは、人間の目で見た場合に、自然光や室内光はほぼ完全に遮光すると共に、点発光素子40および導光板用光源から照射される光は(一定の割合で光吸収されるものの)透過して人間の目で十分に認識させることができる程度の透過率を有するものが用いられる。半透光層90T、90Bを構成する材料としては、たとえば、黒色インク、黒色インクと白色インクとの混合インク、または、有色インクを用いて、オフセット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷などの公知の印刷方法、または、公知の塗装方法等により形成された層が利用できる。なお、黒色インクなどの明度の低いインクを用いる場合は、インク中に含まれる色材の濃度を低くしたり、あるいは、層厚をより薄くすることで、透過率を調整する。また、半透光層90T、90Bは、ハーフミラーとしても機能する層であってもよい。この場合、半透光層90T、90Bは、たとえば、真空蒸着法またはスパッタリング法等の公知の気相成膜法により形成された金属膜もしくは金属酸化物膜、または、アルミ粉等の金属粒子もしくは無機粒子に金属酸化物膜や金属膜をコーティングした光輝性顔料を含むインクを用いて、オフセット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷などの公知の印刷方法、または、公知の塗装方法等により形成された膜から構成される。
【0084】
なお、半透光層90T、90Bは、上述したように自然光や室内光はほぼ完全に遮光し、かつ、点発光素子40および導光板用光源から照射される光は、透過する必要がある。この観点からは、半透光層90T、90Bの可視光域の波長の光に対する透過率は、通常、5%〜30%の範囲内が好ましく、7%〜10%の範囲内がより好ましい。但し、半透光層90T、90Bがハーフミラーとしても機能する層である場合、半透光層90T、90Bは、操作面50T側から入射する室内光や自然光を反射する。このため、点発光素子40および導光板用光源から照射される光が相対的に視認し難しくなる場合がある。この点を考慮すると、ハーフミラーとしても機能する半透光層90T、90Bの透過率は、上述した範囲よりもやや高い範囲であることが好ましく、具体的には、5%〜40%の範囲内が好ましく、7%〜20%の範囲内がより好ましい。
【0085】
−キートップおよびパネル部材−
キートップ70は、図3等に例示したように1つのキーとして認識できる形状のもの、または、複数のキーとして認識できる形状(1枚のシートに個々のキー部分に対応する複数の凸部等を設けた形状)を成すのであればその形状や材質は特に限定されない。しかしながら、キートップ70は、一般的には、断面形状が半円形や半楕円形、台形等などのブロック状樹脂が用いられ、このブロック状樹脂は、基材と一体を成すように、または、基材に接着等により固定することで、基材の片面に複数個設けられたものでもよい。但し、キートップ70としては、光透過性の材料から構成されたものが用いられる。キートップ70は、たとえば、射出成型や、UV硬化型樹脂を用いた型転写などにより作製することができる。キートップの作製に用いられる樹脂材料としては、たとえば、ポリカーボネート樹脂やABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、PMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、PA樹脂(ポリアミド樹脂)、また、UV硬化型樹脂としてはウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0086】
また、パネル部材80は、たとえば、形状が異なる点を除けば、キートップ70と同様の材料や、形成方法で作製したものが利用できるが特にこれに限定されるものではない。また、パネル部材80は、透光性であることは必ずしも要求されず、半透明または遮光性を有する部材であってもよい。但し、パネル部材80の直下に、開口部62A、62B、および/または、表示パターン形成部56A、56Bが設けられる場合には、パネル部材80は、透光性であることが好ましい。
【0087】
<キーパネルおよび電子機器>
本実施形態のキーパネルは、少なくとも本実施形態の押釦スイッチ用部材10を備えたものである。ここで、本願明細書において、「キーパネル」とは操作スイッチを有する操作盤のことである。キーパネルは、スイッチ操作による操作対象となる電子機器本体と一体に設けられたものであってもよいし、スイッチ操作による操作対象となる電子機器本体と物理的に分離して設けられたものであってもよい。なお、後者の場合は、キーパネルと電子機器とが、有線接続されるタイプであってもよいし、キーパネルと電子機器とが赤外線通信などによって信号のやり取りが可能なワイヤレスタイプであってもよい。代表的な例としては、エアーコンディショナ、インターホン、テレビ等のリモートコントローラ、デスクトップタイプのパーソナルコンピューターのキーボードなどに用いられる操作盤が挙げられる。また、キーパネルを備えた電子機器(キーパネルが電子機器本体と一体化した電子機器)としては、電子辞書、携帯電話、電卓、ノートタイプのパーソナルコンピューター、パーソナルディジタルアシスタンス(PDA)、MP3プレーヤ等の音楽再生機能を持つ携帯型プレーヤなどが挙げられる。
【0088】
本実施形態のキーパネルには、本実施形態の押釦スイッチ用部材10以外にも、押釦スイッチ用部材10の端面側に導光板用光源が更に設けられる。本実施形態の電子機器は、上述したキーパネルを電子機器本体と一体的に有するものであればその用途は特に限定されないが、携帯型の電子機器;例えば、携帯電話、電子辞書、PDA、ノートタイプのパーソナルコンピューターなどであることが好ましく、特に携帯電話であることが最も好ましい。図15は、本実施形態の電子機器の一例を示す外観図であり、具体的には携帯電話について示す図である。図15に示す携帯電話200は、ディスプレイ部分202と本実施形態の押釦スイッチ用部材10を備えたキーパネルを有する本体部分204とから構成されている。
【符号の説明】
【0089】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G 押釦スイッチ用部材
20 基板
20T 表面
30、30A、30B スイッチ素子
32、32A、32B 押し子
40、40A、40B、40C、40D 点発光素子
50 導光板
50T 操作面
50B 裏面
52 コア層
54T 上側クラッド層
54B 下側クラッド層
56、56A、56B 表示パターン形成部
56A1、56B1 ドット状パターンで形成された表示パターン形成部
60 遮光層
62、62A、62B 開口部
64、64A、64B 開口部内遮光層
70、70A、70B キートップ
80 パネル部材
90T、90B 半透光層
100 遮光壁
200 携帯電話
202 ディスプレイ部分
204 本体部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板の片面側に配置された1つ以上のスイッチ素子と、
上記基板の上記スイッチ素子が配置された面側に配置された1つ以上の点発光素子と、
上記基板の上記スイッチ素子が配置された面側に対向して配置された導光板と、を少なくとも有し、
上記導光板のうち、少なくとも、上記導光板の平面方向の一領域内において、
上記導光板の上記基板が配置された側の面上に、開口部を有する遮光層が設けられ、
上記導光板の、内部、上記基板が配置された側の面、および、上記基板が配置された側と反対側の面、から選択される少なくともいずれかの部位に、上記導光板内を進行する光の進行方向を、上記導光板の上記基板が配置された側と略反対側の方向に変更する機能を有する表示パターン形成部が設けられていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の押釦スイッチ用部材において、
前記導光板の平面方向の一領域が、
前記1つ以上のスイッチ素子から選択される1つのスイッチ素子に対向し、かつ、1つの押釦部分に対応する領域であることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の押釦スイッチ用部材において、
上記導光板の上記基板が配置された側と反対側の面上に、上記1つ以上のスイッチ素子の各々に対応する透光性のキートップが設けられていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材において、
前記導光板の前記基板が配置された側の面に、半透光層と、前記遮光層とがこの順に設けられていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材において、
前記導光板の前記基板が配置された側と反対側の面上に、半透光層が設けられていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
請求項5に記載の押釦スイッチ用部材において、
前記表示パターン形成部と、前記開口部とが、前記導光板の平面方向に対して、少なくとも部分的に重複するように配置されていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項7】
請求項6に記載の押釦スイッチ用部材において、
前記導光板の平面方向に対して、前記表示パターン形成部と、前記開口部とが略重複する位置に配置され、
前記開口部内において、前記導光板の前記基板が配置された側の面上に、ドット状パターン、ライン状パターン、網目状パターン、および、これらを2種類以上組み合わせた複合パターン、ならびに、これらパターンを反転表示したパターンから選択されるパターンを有する開口部内遮光層が設けられ、
前記表示パターン形成部が、ドット状パターン、ライン状パターン、網目状パターン、および、これらを2種類以上組み合わせた複合パターン、ならびに、これらパターンを反転表示したパターンから選択されるパターンで、形成され、かつ、
前記導光板の平面方向に対して、前記開口部内遮光層と重複する領域内のみに前記表示パターン形成部が配置されていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材において、
上記表示パターン形成部が、上記導光板の平面方向において、上記開口部と重複しない位置に設けられていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材において、
前記点発光素子を2つ以上有し、かつ、個々の点発光素子毎に選択的に発光可能なことを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項10】
請求項9に記載の押釦スイッチ用部材において、
一の点発光素子と、他の点発光素子との間に、互いの照射光を遮光する遮光壁が配置されていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材を備えたことを特徴とするキーパネル。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
請求項12に記載の電子機器において、
電子機器が携帯電話であることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−249176(P2011−249176A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122230(P2010−122230)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】