説明

抽出剤を用いたキラル液晶膜の改変方法

本発明は、キラル液晶層を、液晶層から抽出剤中への物質の拡散が起こるように、抽出媒体(抽出剤)にコーティング法または印刷法により接触させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル液晶膜を、特にこれらの反射波長を改変する方法に関し、ここで、液晶層から抽出剤中への物質の拡散が起こるように、キラル液晶層が、コーティング法または印刷法により液体抽出媒体(抽出剤)と接触させる。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶またはキラルネマチック液晶(LC)材料では、一般に、液晶分子が分子の長軸に垂直な螺旋超構造を形成する。
【0003】
「キラルネマチック」および「コレステリック」という用語は、従来技術では互いに一緒に使用されている。「キラルネマチック」という用語は、ホスト混合物中に螺旋状にねじれた超構造を誘起する光学活性成分でドーピングされた、ネマチックホスト混合物からなるLC材料にしばしば適用される。これに対して、「コレステリック」という用語は、例えばコレステリル誘導体など、螺旋ねじれを含む「生来の」コレステリック相を有するキラルLC材料にしばしば使用される。この2つの用語は、同じものを表すためにもしばしば使用される。本願では、「コレステリック」という用語は、上記の両タイプのLC材料に使用され、この用語は、「キラルネマチック」および「コレステリック」のそれぞれ最も広い意味を包含するものとする。
【0004】
上記および後記の「液晶化合物」または「メソゲン化合物」という用語は、1つまたは複数の棒状、板状または円板状のメソゲン基、すなわち、中間相または液晶相を誘起することが可能な基を有する化合物を包含する。棒状または板状の基を有する化合物はまた、「棒状(calamitic)」液晶として知られており、円板状の基を有する化合物はまた、「円板状(discotic)」液晶として知られている。メソゲン化合物はそれ自体が液晶相を形成し得る。しかし、これは、他の化合物と混合され場合または重合後にのみ液晶相を形成することも可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コレステリック相の注目すべき光学的性質は、高施光性および著しい円二色性であり、これらは、層内の円偏光の選択的反射により生じる。視角に応じて異なって見える色は、螺旋超構造のピッチに依存する。とりわけ、色および偏光の選択的反射によるきわめて興味深い効果がここで生じる。これらは、例えば、有価証券、銀行券、身分証明書などのセキュリティ印刷に使用する十分な可能性を有する。しかし、こうした書類の偽造のセキュリティに関する絶えず増え続ける要求により、追加のセキュリティ機能の導入がますます必要になっている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、特にセキュリティマーキングに使用するのに適した改変されたキラル液晶膜、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるLC被膜の改変方法は、この目的を達成するのに非常に適していることを見出した。この方法では、LC層から抽出剤中への物質の拡散が起こるように、重合性キラル、好ましくはコレステリックLC層を液体抽出媒体(抽出剤)と接触させる。第1ステップでは、コレステリック相の均一な構造が生じるように、コレステリックLC材料またはコーティングを暗色の基板表面に適用し、LC層を部分的または完全に硬化する。第2ステップでは、適当なコーティング法または印刷法により抽出剤をLC被膜に適用する。この拡散および抽出工程中に、LC被膜のそれぞれの視角依存性反射帯のより短い波長領域への移動が起きる。抽出剤はまた、純粋に抽出する機能またはLC被膜の光学的改変に加えて、さらなるタスク、例えば、光学的、電気光学的または電気的タスクも果たす性質を有していてよい。
【0008】
特許明細書US6071438および対応するドイツ公開明細書DE19718293A1には、コレステリック液晶の反射帯を広げる目的で、部分的または完全に硬化したコレステリックLC被膜から抽出可能成分を抽出すること、および得られた層を広帯域フィルタ、偏光子または反射板として使用することが記載されている。この記載された抽出にかけられるLC層は、5〜200μm、特に好ましくは15μmと80μmの間の厚さを有する。抽出媒体による攻撃は、好ましくは、網目組織の濃度勾配が得られるように行われる。抽出のためには、その化学的性質のためにさらなる反応、特に重合、に対して非反応性の有機溶媒またはこれらの混合物が使用される。抽出時間は、記載の実施例により5秒と10秒の間の範囲で異なり、それぞれの場合、続いて、残留溶媒を蒸発させる目的で、90℃で2分間の処理が行われる。
【0009】
しかし、US6071438およびDE19718293A1に記載の方法は、加工ステップおよび時間の非常に正確な制御が必要であり、これにより、複雑で高価な方法となる。さらに、記載された熱処理により、使用することができる支持体材料が制限される。なぜなら、例えば、フィルムまたは薄いプラスチックカードなどの熱感受性の支持体材料は、これらが過剰な高温に曝露されると永久に変形され、これによってさらに後続の生産ステップで加工することができないので、使用することができないためである。
【0010】
US6071438またはDE19718293A1には、抽出剤の印刷加工または塗布によるキラルLC層を改変する方法は記載されておらず、溶媒の蒸発または重合などによる固化の後で、それ自体がタスク、例えば光学的性質のタスクを行う抽出媒体の使用も記載されていない。
【0011】
EP0606940A2および対応するドイツ特許明細書DE69417776T2には、螺旋ピッチが層の一方の表面における最小値から層の他の表面の最大値まで実質上継続的に増加することを特徴とする特性を有するコレステリック広帯域偏光子が記載されている。これは、とりわけ、コレステリック配列を有する重合性LC材料の光学的活性層の一方の表面に、拡散により層中に濃度勾配を生じさせる反応性モノマーの被膜を提供することにより達成される。モノマーが光学的活性層中に拡散して、層が膨潤するのを可能にする。この膨潤により、分子の螺旋のピッチの増加が生じ、層の厚さにわたるモノマーの濃度勾配またはそれに対応する選定された曝露時間を導入する場合、あるいは異なる速度で拡散するモノマーの混合物を使用する場合は、分子の螺旋のピッチの変化が生じる。光学的活性層中での拡散は、モノマーを重合させることにより停止される。
【0012】
しかし、EP0606940A2およびDE69417776T2に記載の偏光子は、約20μmの光学的活性層の高い厚さを有する。さらに、そこに記載の方法では、60℃で約10分の長い拡散時間が必要である。これは、特に大きな工業規模によるフィルムの生産に対して不利である。
【0013】
WO96/02597と対応するドイツ公開明細書DE4441651A1およびDE19532419A1には、基板に、ポリマー結合剤または重合性結合剤を含む重合性キラルLC材料をコーティングおよび印刷する方法が記載されている。しかし、抽出により適用されるLC層を改変する方法は、ここには記載されていない。
【0014】
したがって、本発明の他の目的は、上記諸明細書に開示されている方法の欠点を回避する方法を提供することである。本発明の他の目的は、抽出方法により、硬化した液晶層中に、変動する情報を持続的に取り込む手段を提供することである。
【0015】
上記の目的は、上記および後記のように、本発明による方法の提供により達成し得ることを見出した。
【0016】
本願は、重合性の、または重合したキラル液晶の光学的性質を改変する方法、特にこれらの光学的反射帯を、好ましくは高エネルギー領域に移動させる方法に関するもので、以下のステップすなわち
i)重合性または硬化性キラル液晶材料の第1層を支持体に適用するステップと、
ii)重合性キラル液晶材料の第1層を、部分的または完全に重合または硬化するステップと、
iii)1種または複数の抽出媒体の少なくとも1つの他の層を、部分的または十分に重合または硬化した第1液晶層へ適用するステップと、
iv)適当な場合は、第1液晶層および/または1つまたは複数の他の層を完全に重合または硬化するステップと
を含むことを特徴とする。
【0017】
本願はさらに、本発明による方法により製造される液晶膜に関する。
【0018】
本願はさらに、本発明による方法により製造される、硬化または重合したキラル液晶材料の1つまたは複数の層を含む印刷製品に関する。
【0019】
本願はさらに、少なくとも1つの複屈折マーキングを含む、本発明による印刷製品に関する。
【0020】
本願はさらに、本発明による方法により製造された、印刷モチーフを有する印刷製品に関し、
i)印刷モチーフが、第1の光学的効果を有する少なくとも1つの領域を有し、
ii)印刷モチーフが、光学的反射帯の高エネルギー領域への移動による第1の光学的効果とは異なる、第2の光学的効果を有する少なくとも1つの領域を有することを特徴とする。
【0021】
本願はさらに、本発明による印刷製品に関し、液晶材料および/または抽出剤が印刷法により、第1層の場合は任意選択で印刷基板へ適用されることを特徴とする。
【0022】
本願はさらに、本発明による印刷製品に関し、層の少なくとも1つが、光学的効果を生じるための、光学的に可変性の成分を有することを特徴とする。
【0023】
本願はさらに、本発明による印刷製品に関し、光学的効果が、第1層の適用された媒体からの成分が、これと接触する別の第2層中に拡散することにより生じることを特徴とする。
【0024】
本願はさらに、本発明による方法により製造された、可変の方法で取り込まれている情報を用いる液晶膜または印刷製品の、装飾要素、セキュリティ要素、鑑定要素または識別要素としての使用に関する。
【0025】
本願はさらに、本発明による液晶膜または本発明による印刷製品を含む、セキュリティ機能、鑑定機能または識別機能に関する。
【0026】
本願はさらに、本発明による少なくとも1つの、液晶膜、印刷製品、セキュリティ機能、鑑定機能または識別機能を備えた、セキュリティ文書、識別文書または銀行券、インク転移フィルム、反射フィルム、または光学式データキャリアに関する。
【0027】
本発明は、物質について言えばキラルネマチックまたはコレステリック液晶インクまたはコーティング、あるいはこれら全体がキラルネマチック相形成性であるインクまたはコーティングからなる、重合性または硬化性印刷インクに基づいている。本明細書では、放射線硬化性、特に好ましくはUV硬化性であり、光、UV放射線、または電子ビームに曝露されると重合または硬化するインクまたはコーティングの使用が好ましい。
【0028】
本発明による方法の第1ステップでは、キラルLC物質、好ましくはコレステリック物質、またはそれ全体がキラルメソゲンである物質の被膜または層を基板表面に適用し、適当な方法により硬化、重合または架橋する。LC材料は、好ましくは、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、レリーフ印刷またはインクジェット印刷などの第1の印刷法により、あるいは例えば、ローラーコーティング、スプレーまたはディッピングなどの第1コーティング法を用いて適用される。好ましくは、暗色、特に黒色または褐色の基板表面が使用される。本明細書では、キラル中間相の均一な構造が、LC材料を適用中に自発的に、あるいは当業者に知られ文献に記載されている適当な方法により製造される。コレステリック液晶の場合、これは平面配向(グランジャン構造)が好ましい。
【0029】
適した印刷基板には、例えば、プラスチック、紙、板、皮革、セルロース、繊維、ガラス、セラミックまたは金属製のフィルムまたはフォイルがある。適したプラスチックには、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)、ジまたはトリアセチルセルロース(DAC、TAC)、特にPETまたはTACがある。暗色または黒色の基板が特別好ましい。
【0030】
第2ステップでは、第2の適当なコーティング法または印刷法を用いて、抽出媒体(抽出剤)をLC被膜に完全または部分的に適用する。拡散および抽出工程中に、LC被膜のそれぞれの視角依存性反射帯の短波長領域への移動が、抽出剤を適用した領域中で生じる。抽出媒体はさらに、純粋に抽出する機能またはLC被膜の光学的改変を経て、他のタスク、例えば光学的、電気光学的または電気的タスクを実施することが可能な性質であり得る。
【0031】
すなわち、例えば、インクを抽出剤として連続的インクジェットデバイスにより適用することができる。これらのデバイスに使用されるインクは一般に、本発明による特性を有する1種または複数の溶媒をベースとする。ここで選択されたインクが蛍光染料または顔料をさらに含む場合は、LC層の偏光機能、視角依存性色彩効果、改変された色彩効果、インクジェットインクを適用した領域の蛍光、および自由にプログラム可能なインクジェットデバイスの使用による可変性の情報を含む5重のセキュリティ機能が、例えば、テキスト、画像、バーコードなどの形態でもたらされる。蛍光の種類は、使用される染料または顔料により決まり、UV光を用いて、またはIR光を用いたアップコンバージョンにより可視化することができる。
【0032】
適切であれば、抽出後の第3ステップで、LC被膜を完全に重合または架橋し、その結果改変された反射波長を有するこのLC層のキラル構造が、特に、抽出剤またはこれに溶解された成分それ自体が実質上重合性の場合は、固定される。
【0033】
この硬化したLC被膜は、好ましくはポリマー網状組織である。
【0034】
適したLC材料は、特に、光重合性、例えばUV−硬化性のコレステリック液晶の印刷インク、特に、以下に説明する従来技術から知られている重合性コレステリックLC化合物および混合物である。始めに説明したように、コレステリック相の形態の液晶は、その分子の長軸に垂直に螺旋超構造を形成して、層内での円偏光の選択的反射のために、高施光性および著しい円二色性を示す。この場合視角に応じて異なって見える色は、螺旋超構造のピッチに依存しており、これ自体はキラル成分のねじれ力により決まる。この場合このピッチは、特にキラル成分の濃度を、例えばキラルドーパントの形態で変化させることにより、またはポリマー骨格の網目組織濃度を変化させることにより変えることができる。次に、この変化により、コレステリック層の選択的に反射される光の波長範囲の変化が生じる。
【0035】
したがって、LC被膜のキラル成分が、本願の意味の適当な抽出剤を用いて抽出して除去されると、あるいは他の非重合のまたは重合が不十分な成分がこのようにして除去されると、このことにより螺旋ピッチが減少し、これによって反射波長のより高いエネルギー、より短い波長領域への移動が生じる。
【0036】
好ましい実施形態では、抽出媒体は、フリーラジカルによりまたはカチオン性に重合させることができない溶媒または溶媒混合物である。
【0037】
適当な好ましい抽出剤は、その構造上の性質に従って、
(a)例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランから選択される、小さな双極子モーメントおよび低誘電率を有する非極性非プロトン性溶媒、
(b)例えば、アセトン、ニトロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン(2−ブタノン)および酢酸エチルから選択される、大きな双極子モーメントおよび高誘電率を有する極性非プロトン性溶媒、および
(c)例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコールおよびアニリンから選択される、高度に極性のOHまたはNH基を含み、他の分子と水素結合を形成し得るプロトン性溶媒に分けることができる有機溶媒である。
【0038】
しかし、これらの溶媒の混合物を使用することも可能である。最後に挙げた群(c)の代表物は、本発明によるLC材料に関しては比較的弱いまたは無視し得る抽出力を有し、上記の群(a)および(b)の代表物の強い抽出力から非常に強い抽出力を低下させるか、またはこれらの溶媒の抽出作用を細かく分けることを容易にするのに特に適している。
【0039】
好ましい実施形態では、抽出剤は、群(a)から選択される1種または複数の溶媒を含む。
【0040】
他の好ましい実施形態では、抽出剤は、群(b)から選択される1種または複数の溶媒を含む。
【0041】
他の好ましい実施形態では、抽出剤は、群(a)および/または(b)からの少なくとも1種の溶媒を含む混合物である。
【0042】
1つの好ましい実施形態では、抽出剤は、群(a)および/または(b)からの少なくとも1種の溶媒と、群(c)からの少なくとも1種の溶媒を含む混合物である。
【0043】
LC層と接触すると先ず拡散および抽出工程を行うが、しかし、次いで、例えばUV線などの適切な作用因子によりランダムに完全に重合できる抽出剤はまた、本発明による方法に対して、特許明細書US6071438に比較して有利に適している。
【0044】
他の好ましい実施形態では、抽出剤は、例えば、フリーラジカルによりまたはカチオン性で硬化し、非反応性有機溶媒を含まないか、または少量、好ましくは5%未満のみ含む市販のワニスである。これらの場合、抽出作用は、アクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、エポキシドまたはビニルエーテルなど、例えば、これらのワニス中に存在する結合剤前駆体またはモノマーなど、他の成分の存在に起因し、これらは、第1にLC層から物質を溶解し、第2に反応して分子の網状組織を形成する能力を有する。この場合、少なくとも一部のモノマーは、複数の重合性基を含むべきである。このことにより、さらなる抽出を制限する、3次元網状組織の可能性が引き起こされる。
【0045】
他の好ましい実施形態では、抽出剤はLC化合物、特に硬化性または重合性LC化合物、またはこれらの混合物である。この好ましい実施形態によれば、その液体、スメクチック、ネマチック、コレステリックまたは等方性相の形態の第2の硬化性LC層が、上記の第1ステップで、例えば適当なコーティング法または印刷法により基板に適用され、硬化した第1LC層に適用される。十分に長い曝露時間後、または第1LC層が改変された後、次いで第2LC層を硬化する。2つのLC層の異なる組成物を適切に選択することにより、例えば、第1LC層からモノマーの拡散を引き起こし、第1LC層における螺旋のピッチの差を減少させる濃度勾配を達成することが可能である。
【0046】
本発明の他の好ましい実施形態では、抽出剤は、上記の群(a)または(b)からの溶媒、またはこれらの溶媒の対応する混合物、および溶媒または溶媒混合物の蒸発後に、既にすぐに使用可能であるかまたは固体である、あるいは例えば化学線の作用により開始される追加の硬化反応中に、すぐに使用可能であるかまたは固体になる印刷被膜をもたらす、さらなる比率の1種または複数の成分からなる。
【0047】
抽出剤中の上記の群(a)または(b)、または(a)と(b)の混合物からの溶媒のパーセントは、とりわけこの目的に適した適用方法および適用手段の選択に依存し、例えば、ローラー塗布法の場合は、好ましくは10〜60%、インクジェット法の場合は、好ましくは70〜95%である。
【0048】
他の好ましい実施形態では、抽出剤は、スメクチック、ネマチックまたはコレステリックLCと有機溶媒、特に上記の群(a)、(b)または対応するこれらの混合物との混合物である。これらは、上記の第1ステップで基板に適用され、硬化した第1LC層に、適当なコーティング法および印刷法により適用される。十分に長い曝露時間後、または第1LC層が改変された後、および溶媒または溶媒混合物の蒸発が完了後、次いで第2LC層を硬化させる。
【0049】
しかし、多くの場合環境上許容できない非重合性溶媒の使用を実質上除外することが一般的に好ましい。
【0050】
原則として、使用される抽出剤は、一方では、LC層の色および偏光の選択的反射の変化を生じさせ、他方では、既に述べたようにこれら自体の光学的効果を有する印刷インクまたは他のインクおよびコーティングであり得る。最も単純な場合、これは、吸収、透過および反射の相互作用から生じる、ある種の色度およびある種の光沢である。
【0051】
特に、例えば、熱伝導率および導電率、磁化率、誘電的、光学的および弾性力学的異方性、蛍光または燐光などの特定の特性を有する、より実質的な機能を果たす印刷インクおよび他のインクならびにコーティングは、特にセキュリティ印刷に関連する。また、適用される抽出剤自体は光学的効果を有さないが、その代わりに、基底層のコレステリックLC層のコーティングまたは印刷と関連してのみ働くことも可能である。光学的効果は、互いに増大し、増強しまたは相殺し得る。さらに、前記インク、印刷インクおよび表面コーティングは、例えば、光沢または無光沢表面、耐引っかき性、または汚れ防止設計などの機能的特性を持ち得る。
【0052】
本発明の他の好ましい実施形態では、所与のLC層からある種の成分が抽出媒体中に拡散すると、LC層の偏光の選択的反射特性および色の選択的反射特性に変化が生じるのみならず、抽出媒体またはその1種または複数の成分の光学的特性または反応性の改変がもたらされる。例えば、LC層中で重合されなかったキラルドーパントは、LC層から抽出媒体中に拡散することができ、これは、例えばそれがネマチック性であれば、このようにしてねじれが起こり、または例えばそれがコレステリック性であればねじれ状態の変化、したがって異方性が起こる。この実施形態の他の好ましい変形形態では、抽出剤の1種または複数の成分と化学的に反応して、例えば、重縮合または重付加によりその硬化を開始することが可能である反応性成分のLC層から抽出媒体中への抽出が行われる。
【0053】
本願の設計変形形態は、この液体抽出媒体と接触したLC層の色の選択的反射および偏光選択的反射特性の変化は、急速に、好ましくはほぼ1秒、特に好ましくは、ほぼ1秒未満で生じるという事実により区別される。既述のように、ある場合はLC層から抽出された成分により開始し得る、抽出媒体または1種または複数のこれらの成分中に考慮に入れるべき第2の反応に、同様の時間が関わる。
【0054】
US6071438とは対照的に、本発明による方法では、抽出媒体またはこれらの媒体の抽出成分(複数)は、LC層を通して完全におよび均一に浸透する。均一な抽出がLC被膜の層の厚さ全体にわたり誘起されるという事実は、螺旋ピッチ、網目組織濃度または屈折率の勾配は、層厚にわたり生じないことを意味する。この代わりに、元のピッチ(すなわち、抽出前)より小さな螺旋ピッチがLC層中に形成される。
【0055】
この液体抽出媒体(抽出剤)は、コーティングシステム、印刷インクおよびインクの形態で、または純粋な有機溶媒の形態で適用できる。適当な適用方法は、一般に、ディッピング、スプレー、ローラーコーティング、ポーリング、ナイフコーティングおよびプリンティング(印刷)である。この温度は、0℃と200℃超の間の範囲であり、特に、使用される媒体および改変されるLC層の融点、相転移点および沸点に依存する。ここでは、特定の役割がまた、LC層、および基板または支持体材料の熱伝導率により果たされる。従来の印刷法すべて、例えば、レリーフ、グラビア、フレキソ、オフセット、スクリーン、エンボスまたはインクジェット印刷を使用することができ、但し本願では、印刷法はまた、抽出媒体が万年筆またはボールペンを用いて適用されるものである。
【0056】
特に好ましい実施形態では、抽出媒体は、市販のインクジェットプリンタ、例えばMetronic AG社製を用いて適用される。例えば、「AlphaJet」型のインクジェットデバイスおよび「BetaJet」型のインクジェットデバイスを使用してきた。「AlphaJet」デバイスは、いわゆる「継続流運転」で動作し、速蒸発性溶媒をベースとするインクを使用する。「BetaJet」デバイスは、いわゆる「ドロップオンデマンド運転」で動作し、好ましくは蒸発すべき溶媒を含まないインクを使用する。これらの方法は両方とも、その技術およびその利点および欠点に関して当業者に知られている。いずれの技術も本発明による方法に適している。なぜなら、印刷される抽出媒体を、前記組成物に対応する両方のインクジェットプリンタに適合できるからである。この場合、インクはさらに温められて、これらの抽出特性にさらに影響することがある。純粋な有機溶媒または溶媒混合物に、例えば、連続的インクジェット法に使用するための対応する導電率用添加剤が供給される場合は、これらを印刷することも可能である。
【0057】
印刷し、抽出を完了した後、抽出物中に存在する揮発性溶媒成分は、高温において除去されるか、または適当な溶媒を選択することにより、LC層中から抽出された成分と共に除去される。抽出媒体が、基本的に蒸発される溶媒のみからなる場合は、後者が好ましくは実施される。後処理に適当な溶媒は、好ましくは、LC被膜または適用された第2の印刷を攻撃しないもの、または上記群(c)からの溶媒であるものである。
【0058】
この液体抽出媒体による攻撃を受けたコレステリックLC被膜は、従来の印刷法を用いて、適当な、特に化学物質非感受性の印刷基板に適用される。適当な適用方法は、一般に、ディッピング、スプレー、ローラーコーティング、ポーリング、ナイフコーティングおよびプリンティング(印刷)である。従来の印刷法すべて、例えばレリーフ、グラビア、フレキソ、オフセット、スクリーン、エンボス印刷、インクジェット印刷、ヒートシール印刷または他の転写印刷法を使用することができる。本願では、印刷法はまた、コレステリック被膜が、例えば、万年筆またはボールペンあるいは他の筆記用具により適用されるものである。
【0059】
LC被膜の層厚は、好ましくは0.5と10μmの間、特に好ましくは1と5μmの間、非常に特に好ましくは1.5と3μmの間である。これらの薄い層厚は、例えば特許明細書US6071438と対照的に、本発明およびその諸実施形態による方法の実施に特定の貢献を行っている。なぜなら、抽出媒体が、LC層を通して完全におよび非常に迅速に浸透することができるからである。
【0060】
コレステリックLC層の重合度または網目組織濃度は、本発明による媒体による処理中に達成される色効果をかなりの程度まで決定する。網目組織濃度が高すぎる場合は、LC層から成分を抽出することは一般に不可能である。本発明の一実施形態では、したがって、LC層の乾燥は、その一定の比率が重合されずに残るように制御される。これによって、最大限可能な網目組織濃度が生じない。これは、例えばフリーラジカル重合により乾燥する場合は、比較的非反応性成分を選択することにより、例えば、ジアクリレートまたはトリアクリレートの代わりにモノアクリレート、またはアクリレートの代わりにメタクリレートを使用することにより、適切な場合は、対応して低いUV照射強度、対応して短いUV照射時間により、またはUV線を減衰させるフィルタの使用により、禁止剤、乾燥雰囲気中の酸素濃度により、アミンの濃度および選択により、カチオン性重合の場合は、イオン性光開始剤の濃度により、または雰囲気の湿度の作用により実施される。LC層中に溶解、分散または懸濁された成分、UV−吸収剤は、重合が不完全にしか進行しないことを可能にするのに適している。
【0061】
好ましい実施形態では、LC被膜の抽出可能な成分は、光重合性成分、特にフリーラジカルまたはカチオン性光重合の意味では反応性であるが、LCポリマーまたはLCポリマー網状組織への結合が不十分なため抽出可能な成分である。重合性LC層は、好ましくは1種または複数のこのような成分を含む。
【0062】
他の好ましい実施形態では、LC層のポリマーまたはポリマー網状組織は、その構造上の性質のためにその中には重合されず、そのため抽出可能な成分を含む。LC被膜の特に好ましい抽出可能な成分は、光重合の意味、特にフリーラジカルまたはカチオン性光重合の意味では、非反応性の成分である。重合性LC層は、好ましくは1種または複数のこのような成分を含む。
【0063】
ここでは、コレステリック液晶の螺旋ピッチに作用させる目的で導入された、化学的に非反応性または非重合性のキラルドーパントが特に好ましい。これらの成分が、完全または部分的に硬化したLC被膜から抽出により完全または部分的に再び除去される場合は、この結果はLC被膜の反射特性の一つの変化であり、これにより反射波長が高エネルギー領域に移動することが明らかである。
【0064】
これに関連して、「完全に硬化したLCまたは液晶膜」とは、DIN EN ISO 4622に従った「スタック性(stackability)」、およびDIN EN 29117に従った「乾燥性(drying−through)」の試験基準を満たしていることを意味する。
【0065】
対照的に、「部分的に硬化したLC被膜」とは、これらが、例えば従来の刷版印刷法を用いて、つぶれることなく印刷することができるように硬化されることである。このことが不可能な場合は、例えばインクジェットプリンタに基づく非接触印刷法が使用される。
【0066】
いずれの場合も、本発明によるLC層は、抽出剤を含む適用された第2の印刷がそれに十分に付着し、滲み出すまたは流れることがない程度まで硬化される。
【0067】
好ましい変形形態では、完全または部分的に硬化したLC被膜は、第2の印刷(抽出剤の)の1種または複数の成分と特異的に結びつく反応性基を有する分子を含む。このようにして、例えば、抽出剤によるLC層の特に良好な濡れ、およびLC層の抽出剤への付着または化学結合を達成することができる。
【0068】
このUV照射出力を時間でまたは位置で変えることにより、LC被膜の異なる領域を様々な程度に硬化させること、および低硬化領域が高硬化領域よりより強い程度に攻撃されて異なる色効果をもたらすように、これらに抽出媒体をコートすることも可能である。
【0069】
本発明により部分的にのみ硬化したLC被膜が使用される場合は、これらを完全に乾燥し、第3ステップで、抽出による改変が完了した後当業者には知られている適当な方法を用いて硬化する。
【0070】
他の好ましい実施形態では、逆のやり方で、先ず抽出媒体を基板に適用し、次いでLC被膜を一番上に印刷する。このことにより、このLC被膜は、ある領域でのみ化学的および物理的性質の改変を受ける。複数の領域に異なる抽出力の異なる抽出剤をあらかじめ印刷して、LC被膜をコートした後、多色画像が達成されることが可能になる。
【0071】
他の好ましい実施形態では、抽出媒体に対する増加する受容性を有する複数のLC層が重ねて印刷されるので、多色画像を達成するさらなる可能性をもたらす。
【0072】
他の好ましい実施形態では、抽出可能な成分を含むLC層に、画定された透明な保護層が例えばフレキソ印刷法によりあるあらかじめ指定された領域に供給され、この保護層は、一方ではこのLC層との相互作用をなにも受けず、他方では抽出媒体による攻撃に抵抗する。続いて上記の抽出剤による処理が実施され、その結果、LC層の保護されていない領域、すなわち、保護層が供給されなかった領域のみがその特性の変化を受ける。この実施形態のさらに好ましい変形形態は、画定された透明で強固な付着性の保護層の代わりに、再び剥離または除去することができるマスクを使用する方法に関する。
【0073】
一般に、本発明およびこの諸実施形態よる方法はまた、セキュリティ文書の保護された領域中にある不当な干渉を、例えば溶媒の使用により、コレステリックLC層の明らかな変色がやがて生じるような方法ではっきりとさせるのに役立つ。
【0074】
本発明によるLC材料は、好ましくは、コレステリック相またはキラルスメクチック相、例えばキラルスメクチックC(またはSc*)相、特に好ましくは、コレステリックLC材料を有する重合性LC材料である。LC材料は、その少なくとも1種が、1つまたは複数の重合性基を持つ、複数の化合物の混合物が好ましい。重合性LC材料は、好ましくは、1つの重合性基を有する少なくとも1種のメソゲン化合物(一反応性化合物)、および2またはそれ以上の重合性基を有する少なくとも1種のメソゲン化合物(二または多反応性化合物)を含む。
【0075】
上記および下記に挙げられた重合性化合物は、好ましくはモノマーである。
【0076】
重合性LC材料は、好ましくは、1種または複数の重合性メソゲン化合物および少なくとも1種のキラル化合物を含む。このキラル化合物は、重合性であるかまたは非重合性でもよい。これはメソゲン化合物または非メソゲン化合物でもよい。
【0077】
少なくとも1つの、好ましくは2つまたはそれ以上の重合性基、および場合により重合性および/またはメソゲンである少なくとも1種のキラル化合物を有する、少なくとも1種のメソゲンモノマーまたは液晶モノマーを含む重合性LC材料が特に好ましい。
【0078】
本発明に適する重合性一、二または多反応性メソゲン化合物は、当業者には知られているか、またはそれ自体知られている方法、例えばHouben−Weyl、Methodn der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag、Stuttgartなど、有機化学の規範となる著作に記載されている方法で調製することができる。
【0079】
本発明に適する重合性メソゲン化合物の典型的な例は、例えば、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、WO95/22586およびWO97/00600に開示されている。しかし、これらの文献に開示されている化合物は、単に例としての役割を果たすものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0080】
特に適している好ましいキラルおよびアキラル重合性一および二反応性メソゲン化合物(反応性メソゲン)の例を以下のリストに示すが、これは本発明を説明するためのものであり、これを限定するものではない。
【0081】
【化1−1】

【0082】
【化1−2】

【0083】
【化1−3】

【0084】
上記の式において、Pは、重合性基、好ましくはアクリロイル、メタクリロイル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシド、オキセタンまたはスチリル基を表し、xおよびyは、それぞれ互いに独立に、1〜12の整数を表し、Aは、L1により一、二、三または四置換されていてもよい1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンを表し、uおよびvは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、Z0は、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合を表し、R0は、極性または非極性基を表し、Terは、例えば、メンチルなどのテルペン基を表し、cholはコレステリル基を表し、rは、0、1、2、3または4を表し、L、L1およびL2は、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、CN、または1〜7個のC原子を有する、任意選択でハロゲン化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシを表す。上に示した式中のフェニル環は、任意選択で、Lにより一、二、三または四置換されている。
【0085】
これに関連して「極性基」という用語は、F、Cl、CN、NO2、OH、OCH3、OCN、SCN、4個までのC原子を有する、任意選択でフッ素化されたアルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ、または1〜4個のC原子を有する、モノ、オリゴまたはポリフッ素化されたアルキルまたはアルコキシから選択される基を表す。これに関連して、「非極性基」という用語は、任意選択でハロゲン化された、アルキル、1つまたはそれより多い、好ましくは1〜12固のC原子を有するアルキルを含む、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、これは、上記定義の「極性基」には入らない。
【0086】
好ましいLC混合物は、
a)1種または複数の二反応性のアキラルおよび/またはキラルメソゲン化合物、および
b)1種または複数の一反応性のアキラルおよび/またはキラルメソゲン化合物を含み、
但し、成分a)およびb)の少なくとも1つは、キラル化合物を含む。
【0087】
他の好ましいLC混合物は、
a)1種または複数の二反応性アキラルメソゲン化合物、
b)1種または複数の一反応性アキラルメソゲン化合物、
c)1種または複数の非重合性キラル化合物を含む。
【0088】
特に好ましいLC混合物は、
a)5〜70%、好ましくは5〜50%、特に好ましくは5〜40%の、1種または複数の二反応性アキラルおよび/またはキラルメソゲン化合物、
b)30〜95%、好ましくは50〜75%の、1種または複数の一反応性アキラルおよび/またはキラルメソゲン化合物を含む。
【0089】
他の好ましいLC混合物は、
a)5〜70%、好ましくは5〜50%、特に好ましくは5〜40%の、1種または複数の二反応性アキラルメソゲン化合物、
b)30〜95%、好ましくは50〜75%の、1種または複数の一反応性アキラルおよび/またはキラルメソゲン化合物、
c)0.1〜15%、好ましくは0.5〜10%、特に好ましくは1〜5%の、1種または複数の非重合性キラル化合物を含む。
【0090】
一反応性化合物は、好ましくは、式Ia〜IgおよびIi、特に好ましくは、vが1であるIa、IeおよびIgから選択される。
【0091】
二反応性化合物は、好ましくは式IIaおよびIIb、特に好ましくはIIaから選択される。
【0092】
重合性キラル化合物は、好ましくは式Ik〜IqおよびIIc〜II、特に好ましくは、Ikから選択される。
【0093】
特に好ましいキラル化合物は、ツイステッド液晶相の製造に使用される、従来技術から知られているキラルドーパントである。
【0094】
適当なドーパントは、例えば、市販の化合物、ノナン酸コレステリル(CN)、CB15、R/S−811、R/S−1011、R/S−2011、R/S−3011またはR/S−4011(Merck KGaA、Darmstadt)から選択される。高ねじれ力を有するドーパント、例えばキラル糖誘導体、特に、例えば、WO98/00428に開示されている、イソソルビトール、イソマンニトールまたはイジトール、特に好ましくはイソソルビトール誘導体など、ジアンヒドロヘキシトールの誘導体が特に適している。さらに、例えばGB2328207に記載のヒドロベンゾイン誘導体、例えばWO02/94805に記載のキラルビナフチル、例えばWO02/34739に記載のキラルビナフトール、例えば、WO02/06265に記載のキラルTADDOL、および例えばWO02/06196およびWO02/06195に記載のフッ素化架橋基および末端または中心キラル基を有するキラル化合物が好ましい。
【0095】
好ましい実施形態では、LC材料は、70%まで、好ましくは1〜50%の、例えば、1〜20個のC原子を有するアルキル基を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートなどの重合性基を有する、1つまたは複数の非メソゲン化合物を含む。
【0096】
他の好ましい実施形態では、LC材料は、40%まで、好ましくは1〜20%の、例えば、1〜20個のC原子を有するアルキルジアクリレートまたはアルキルジメタクリレートなどの2個またはそれより多くの重合性基を有する1種または複数の非メソゲン化合物、あるいは例えば、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリトリトールテトラアクリレートなどの多官能性架橋剤を含む。
【0097】
他の好ましい実施形態では、LC材料は、1種または複数の連鎖移動剤、例えば、ドデカンチオールまたはトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、特に液晶チオール化合物などのチオール化合物を含む。このLCポリマーの自由鎖長、または2つの架橋点の間の鎖長を、例えば、このような試薬の添加により短縮させることができる。
【0098】
他の好ましい実施形態では、LC材料は、例えば、WO96/02597に記載の、1種または複数のポリマーまたは重合性の結合剤、あるいは分散助剤を含む。
【0099】
重合性LC材料はまた、例えば、触媒、増感剤、安定剤、連鎖移動剤、抑制剤、コモノマー、界面活性物質、可塑剤、湿潤剤、分散助剤、流動性改良剤、粘度低下剤、疎水化剤、付着剤、流動剤、消泡剤、脱気剤または脱泡剤、希釈剤、反応性シンンナー、染料、着色剤または顔料などの他の成分または助剤を含む。
【0100】
他の好ましい実施形態では、LC材料は、1種または複数の添加剤、例えば、基板上にこのLC分子の平面配向を誘起するかまたは増大させる界面活性物質を含む。適した物質は当業者には知られており、例えば、J.Cognard、Mol.Cryst.Liq.Cryst.78、Supplement 1、1〜77(1981)に記載されている。非イオン性化合物、例えば、市販のFluorad FC−171(登録商標)(3M)またはZonyl FSN(登録商標)(DuPont)などの非イオン性フルオロカーボンが特に好ましい。
【0101】
しかし、一般に、LC材料を基板上にコーティングまたは印刷する間に生じるせん断力は、コレステリック相中でLC分子が、均一な肉眼的に均質な平面配向を自発的に形成するには十分である。
【0102】
基板のLC材料によるコーティングまたは印刷に続いて、好ましくは乾燥工程が行われるが、これは、LC材料の重合性硬化成分、および平面構造の化学的および物理的な影響に対する特別な感受性のために、好ましくは不活性ガス(例えば窒素またはアルゴン)下で実施される。
【0103】
他のステップでは、このLC層は、抽出剤でコートまたは印刷される。抽出工程により、LC層の色の短波領域への移動が生じ、接触されていない領域は不変のままである。
【0104】
次のステップでは、LC層のin situでの部分的重合または硬化が、例えば、光照射、特にUV光、IR光または可視光、X線、ガンマ線、あるいは例えば、イオンまたは電子などの高エネルギー粒子などの化学線で処理することにより実施される。光重合、特にUV光による重合が特に好ましい。使用される放射線源は、例えば個別のUVランプまたは一連のUVランプであり得る。他の可能な放射線源には、例えば、LEDまたは半導体レーザなどの発光半導体、あるいはUVレーザ、IRレーザまたは可視光波長領域のレーザなどの一般的なレーザがある。
【0105】
例えば、コーティング工程中に、基板の移動方向に対して横方向に配置された、それぞれが10mW/cm2の放射照度を有する、1つまたは複数の水銀低圧ランプを使用することが可能である。これらの放射線源の有利な温度プロファイルのために、乾燥操作中にLC材料のさらなる加熱は生じない。重合度は、使用される低圧ランプの数およびあらかじめ指定された硬化速度により制御することができる。これによって、例えば、乾燥しているが積重ね不可能なLC層を作製することができる。これは完全には硬化されてなく、抽出可能成分として非重合性または非反応性キラルドーパントを含んでいるので、これは、本発明による方法の実行のためには理想的な必要条件を有する。
【0106】
好ましくは、重合は化学線を吸収する開始剤の存在下で実施される。UV光重合の場合は、例えば、UV照射で分解し、重合反応を開始させるフリーラジカルまたはイオンを工程中に遊離する光開始剤が使用される。UV光開始剤が特に好ましい。このような光開始剤は、当業者には知られており、例えば、Irgacure(登録商標)907、Irgacure(登録商標)651、Irgacure(登録商標)184、Darocure(登録商標)1173またはDarocure(登録商標)4205(Ciba AG)、またはUVI 6974(Union Carbide)などが市販されている。
【0107】
次のステップでは、これまでに部分的にのみ硬化したLC層の最終硬化が、任意選択で実施される。前段階とは対照的に、LC層は今は、雰囲気中の酸素の存在下での熱または硬化への感受性がはるかに低い。この最終硬化は、部分的硬化の場合より、より強い放射線源、例えば、UV線がLC層中を強度の関連する低下なしに進み、UVランプからより離れたLC領域も最終的に硬化されるように、例えば1W/cm2のUV放射照度を有する従来の中圧ランプを用いて実施することが好ましい。抽出剤への感受性は、一般に最終硬化後はもはや存在しないか、硬化前と同じ程度にはもはや存在しない。
【0108】
しかし、必要に応じて、ある種の物質に非感受性の保護コーティングを第4ステップでLC層に適用することもできる。市販の放射線硬化性コーティング、例えばSicpa製806.961タイプが、このために適当である。
【0109】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、これを限定するものではない。
【実施例1】
【0110】
第1ステップにおいて、重合性コレステリックLC混合物C1を、70℃に加熱したフレキソ印刷機により黒化されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に印刷する。
【0111】
C1:
(A) 17.65%
(B) 37.47%
(C) 32.26%
(D) 3.69%
(E) 4.86%
Addid 900 1.00%
Irgacure 369 2.99%
Irganox 1076 0.08%
【0112】
【化2】

化合物(A)、(B)および(D)は、D.J.Broerら、Makromol.Chem.190、3201〜3215(1989)に記載されたように、またはこれと同様にして調製することができる。化合物(C)は、GB2280445A1から知られている。化合物(E)は、GB2328207A1から知られている。Irgacure 369(登録商標)は、市販の光開始剤(Ciba Geigy)である。Irganox 1076(登録商標)は、市販の安定剤(Ciba Geigy)である。Addid 900(登録商標)は、市販の付着剤(Wacker GmbH)である。
【0113】
このコレステリック混合物C1は、約4.9重量%の量の、光重合性官能基を含まない、ジヒドロベンゾインのクラスからのキラルドーパント(E)を含む。この被膜は約20℃の温度を有している。
【0114】
このフィルム上に刷版をプレスする間に中間相の成分上に働くせん断力、70℃から約20℃への温度の突然の低下、およびフレキソ印刷では通常の約2μmの層厚の実現は、コレステリック液晶相の均一な構造に特に寄与する。この場合、色および偏光の選択的特性を有する印刷モチーフが得られる。この寸法は、とりわけ、使用される刷版により、ならびにアニロックスロールおよび版胴の両方により画定される。「印刷モチーフ」という用語は、必要に応じて数mmから全面積の程度の画像および文字に関する。
【0115】
このインクの適用に続いて、LC層の不活性ガス(窒素またはアルゴン)下での乾燥が行われる。次いで、部分的硬化のためにこのLC層をUV光で照射する。この場合使用される放射線源は、フィルムの移動方向に対して横方向に配置された、それぞれが10mW/cm2のUV−C放射照度を有する水銀低圧ランプである。これらの放射線源の有利な温度プロファイルのために、乾燥操作中にLC材料のさらなる加熱は生じない。20m/分の乾燥速度および8mmの照射間隙により、完全に硬化されてなく、抽出可能な成分をキラルドーパントの形態で含む、乾燥しているが積重ね不可能な2μmの厚さのLC層が得られる。
【0116】
第2ステップでは、抽出剤をこのLC層の一部に、連続フローオペレーションで動作するMetronic AGインクジェットプリンタを用いて印刷する。抽出工程により、LC層の色が短波領域に移動し、抽出されない領域は変らずに残る。このインクは、溶媒、2−ブタノン、酢酸エチルおよびアセトンの混合物、ならびに結合剤、流動性改良剤、湿潤剤および一緒になって、溶媒の蒸発後に固体の透明なインク被膜をもたらす助剤からなる。
【0117】
第3ステップでは、これまでに部分的にのみ硬化したLC層の最終硬化を、UV光がそれに付随した強度の低下なく第2ステップからインクジェット印刷物を通過し、そこに配置されたLC領域も最終的に硬化されるように、従来の水銀中圧ランプを用いて実施する。
【0118】
任意選択の第4ステップでは、この硬化したLC層に、ある種の物質に非感受性の保護コーティングをコートする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の
i)重合性または硬化性キラル液晶材料の第1層を支持体に適用するステップと、
ii)重合性キラル液晶材料の第1層を、部分的または完全に重合または硬化するステップと、
iii)1種または複数の抽出媒体の少なくとも1つの他の層を、部分的または十分に重合または硬化した第1液晶層に適用するステップと、
iv)適切な場合は、第1液晶層および/または1つまたは複数の他の層を完全に重合または硬化するステップと
を含むことを特徴とする、重合性または重合したキラル液晶の光学的性質を改変する方法。
【請求項2】
重合性液晶材料が、少なくとも1つの重合性基ならびに任意選択で重合性および/またはメソゲンである少なくとも1種のキラル化合物を含有する、少なくとも1種のメソゲンまたは液晶のモノマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抽出媒体が、カチオン性もしくはフリーラジカルで重合させることができない、またはカチオン性もしくはフリーラジカル重合に対して非反応性である溶媒もしくは溶媒混合物であることを特徴とする、請求項1から2の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項4】
抽出媒体が、カチオン性またはフリーラジカルで硬化することができる、溶媒または溶媒混合物であることを特徴とする、請求項1から2の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
抽出媒体が、以下の群、
(a)ヘキサン、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなど、小さな双極子モーメントおよび低誘電率を有する非極性非プロトン性溶媒、
(b)アセトン、ニトロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン(2−ブタノン)または酢酸エチルなど、大きな双極子モーメントおよび高誘電率を有する極性非プロトン性溶媒、および
(c)メタノール、エタノール、エチレングリコールまたはアニリンなど、高度に極性のOHまたはNH基を含み、他の分子と水素結合を形成し得るプロトン性溶媒
から選択される1種または複数の溶媒を含むことを特徴とする、請求項1から4の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
抽出媒体が印刷インクであることを特徴とする、請求項1から5の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
抽出媒体が透明であることを特徴とする、請求項1から6の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項8】
抽出媒体が、電磁スペクトルの可視領域または不可視領域を吸収する、1種または複数の染料および/または顔料を含むことを特徴とする、請求項1から7の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の染料および/または顔料が蛍光性であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抽出媒体が、硬化した状態で他の機能的特性を有することを特徴とする、請求項1から9の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項11】
機能的特性が、光学的、電気的または機械的性質であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抽出媒体が、1種または複数のメソゲン化合物または液晶化合物を含み、または純粋な状態でまたは溶媒に溶解されて適用される、この(またはこれらの)化合物から本質的になることを特徴とする、請求項1から11の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項13】
第1液晶層の抽出可能な成分が、重合性であるが、重合されていないか、または部分的にのみ重合した成分からなることを特徴とする、請求項1から12の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項14】
第1液晶層の抽出可能な成分が、非重合性成分からなることを特徴とする、請求項1から12の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項15】
抽出可能な成分が、キラル非重合性ドーパントであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップi)において、第1液晶層が、印刷法またはコーティング法により支持体に適用されることを特徴とする、請求項1から15の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップiii)において、他の層の少なくとも1つが、印刷法またはコーティング法により適用されることを特徴とする、請求項1から16の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項18】
前記請求項の少なくとも一項に記載の方法により製造された液晶膜。
【請求項19】
請求項1から18の少なくとも一項に記載の方法により製造された、硬化または重合したキラル液晶材料の1つまたは複数の層を含む印刷製品。
【請求項20】
少なくとも1つの複屈折マーキングを含むことを特徴とする、請求項19に記載の印刷製品。
【請求項21】
層の少なくとも1つが、インクジェットプリンタを用いて適用されたことを特徴とする、請求項19または20に記載の印刷製品。
【請求項22】
i)印刷モチーフが、第1の光学的効果を有する少なくとも1つの領域を有し、
ii)印刷モチーフが、光学的反射帯の高エネルギー領域への移動による第1の光学的効果とは異なる、第2の光学的効果を有する少なくとも1つの領域を有する
ことを特徴とする、請求項19から21の少なくとも一項に記載の印刷モチーフを有する印刷製品。
【請求項23】
層の少なくとも1つが、光学的効果を生じるための、光学的に可変な成分を有することを特徴とする、請求項19から22の少なくとも一項に記載の印刷製品。
【請求項24】
光学的効果が、第1層の適用された媒体からの成分が、これと接触する別の第2層中に拡散することにより生じることを特徴とする、請求項19から23の少なくとも一項に記載の印刷製品。
【請求項25】
装飾要素、セキュリティ要素、鑑定要素または識別要素としての、請求項18から24の少なくとも一項に記載の液晶膜または印刷製品の使用。
【請求項26】
請求項18から24の少なくとも一項に記載の液晶膜または印刷製品を含む、セキュリティ機能、鑑定機能または識別機能。
【請求項27】
請求項18から24の少なくとも一項に記載の液晶膜または印刷製品を備えた、識別文書、銀行券、セキュリティ文書、インク転移フィルム、反射フィルム、または光学式データキャリア。

【公表番号】特表2007−519941(P2007−519941A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540227(P2006−540227)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012466
【国際公開番号】WO2005/049703
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【出願人】(506170513)カーベーアー−メトロニク アクチェンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】KBA−METRONIC AG
【Fターム(参考)】