説明

抽出方法並びにそれに用いられる抽出容器、抽出キットおよび弁拡張部材

【課題】検体採取棒の採取部から検体を抽出する場合において、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように検体の大部分を抽出容器に取り込むことを可能とする。
【解決手段】棒体11および棒体11に取り付けられた採取部12からなる検体採取棒10を用いて検体を採取し、検体採取棒10を抽出容器(30および40)に挿入し、この検体採取棒10の挿入路に設けられた引っ掛け部31であって、採取部12の径L1より幅L3が小さくかつ棒体11を配置することが可能な間隙31aを有する引っ掛け部31のこの間隙31aに、棒体11を配置し、この棒体11が間隙31aに配置された状態でこの棒体11を引き抜くとともに、採取部12を引っ掛け部31に引っ掛けて、採取部12を棒体11から取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿棒等の検体採取棒を用いて採取した血液、尿、痰、唾液、鼻汁、涙液および便等の検体を検体採取棒の採取部から抽出するための抽出方法並びにそれに用いられる抽出容器、抽出キットおよび弁拡張部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応(免疫反応)等を利用して検体中の被検物質について検査を行う検査方法が、各種の臨床検査に広く応用されている。例えば抗原抗体反応を利用した一般的な検査方法は、血液、尿、痰、唾液、鼻汁、涙液および便等の検体を綿棒等の検体採取棒を用いて採取し、採取された検体を抽出容器に収容された検体抽出液に抽出し、検体が抽出された検体液を、酵素、貴金属コロイド、着色ラテックス、色素等の呈色識別物質で標識された標識抗体を含有する標識抗体液と接触させ、検体中の抗原と標識抗体とを特異的に反応させて抗原抗体の免疫複合体を形成させ、免疫複合体の量を目視により又は光学的な変化として測定し、検体中の抗原の定性測定又は定量測定を行うものである。
【0003】
上記のような検査方法において、検体液を得るために検体採取棒の採取部から検体を抽出するための抽出容器が使用される。例えば、特許文献1には、綿棒の検体を付着させる部分である綿球を、抽出容器の側部内壁に設けた突起で擦り合わせて、検体の抽出効率を向上させることが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−36732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような方法では、どんなに突起で綿棒を擦り合わせても、綿棒が圧縮から開放された際にその周囲の抽出液が再度吸収され、この綿棒が廃棄されるとともに希少な検体も廃棄されてしまうため、せっかく採取した検体を無駄にするという問題がある。また、このような検体採取棒の採取部に再付着した検体が、検体採取棒とともに廃棄されているという事情は、綿棒を用いて検査を行った場合に限らない。
【0006】
被検者から採取できる検体には量に限りがあるため、できる限り採取した検体を無駄にせず、有効に利用できるようにすることが望ましい。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、綿棒等の検体採取棒を用いて採取した検体を検体採取棒の採取部から抽出する場合において、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように検体の大部分を抽出容器に取り込むことを可能とする抽出方法並びにそれに用いられる抽出容器および抽出キットを提供することを目的とするものである。
【0008】
さらに、本発明は、検体採取棒の採取部の径より径が小さくかつ検体採取棒の棒体を配置することが可能な弁開口を有する弁体を備えた抽出容器を用いて検査を行う場合であっても、弁体に検体を付着させることなく、検体採取棒の挿抜を容易に実施することを可能とする弁拡張部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る抽出方法は、
棒体および棒体に取り付けられた採取部からなる検体採取棒を用いて検体を採取し、
検体採取棒を抽出容器に挿入し、
この検体採取棒の挿入路に設けられた引っ掛け部であって、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部のこの間隙に、棒体を配置し、
この棒体が間隙に配置された状態でこの棒体を引き抜くとともに、採取部を引っ掛け部に引っ掛けて、採取部を棒体から取り外し、
取り外した採取部を抽出容器に収容された抽出液に浸漬せしめて、採取部から検体を抽出することを特徴とするものである。
【0010】
本明細書において、「検体採取棒の挿入路」とは、抽出容器の内部であって、開口部から挿入された検体採取棒が移動可能な範囲の空間を意味する。
【0011】
「採取部の径」とは、棒体の長さ方向に垂直な方向の採取部の最大の長さを意味する。
【0012】
「採取部の径より幅が小さ」い間隙とは、採取部の径の長さよりも幅が短い間隙を意味し、間隙が拡縮する場合には通常の状態(縮径時の状態をいい、例えば外力によって径が弾性的に拡縮するような場合には、当該外力が働いていない状態をいう。以下同じ。)において、採取部の径の長さよりも幅が短い間隙を意味する。ここで、「間隙の幅」とは、間隙に内接する最大円の直径の長さを意味する。
【0013】
「棒体を配置することが可能な」間隙とは、棒体の径の長さよりも幅が長い間隙、または拡縮することにより棒体の径の長さよりも幅が長くなれる間隙を意味する。つまり、間隙が拡縮するような場合には、間隙の幅は必ずしも通常時に棒体の径より大きい必要はない。ここで、「棒体の径」とは、棒体の長さ方向に垂直な方向の棒体の最大の長さを意味する。
【0014】
「棒体が間隙に配置された状態でこの棒体を引き抜く」とは、棒体と間隙の配置関係をほぼ変えずに、棒体を棒体の長さ方向に引き抜くことを意味する。
【0015】
また、本発明に係る抽出方法において、引っ掛け部は、抽出容器内部に挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より通常時の径が小さくかつ拡縮自在の弁開口を有する弁体であり、
弁開口に検体採取棒を挿入した後、この弁開口を上記間隙として、棒体がこの弁開口に配置された状態でこの棒体を引き抜くとともに、採取部を弁体に引っ掛けて、採取部を棒体から取り外すことが好ましい。
【0016】
本明細書において、弁開口の「通常時の径」とは、通常の状態の弁体を正面(挿入路方向)から眺めたときの弁体の開口の径(開口に内接する最大円の直径の長さ)を意味する。
【0017】
弁開口が「拡縮自在」であるとは、弁開口が、例えばその弁体を構成する材料の弾性的な特性を利用して、拡張したり縮小したりすることが可能となっている状態を意味する。
【0018】
また、本発明に係る抽出方法において、取り外した採取部を解しながら検体を抽出することが好ましい。
【0019】
さらに、本発明に係る抽出容器は、
抽出液を収容し、棒体および棒体に取り付けられた採取部からなる検体採取棒を用いて、採取部で採取した検体を、採取部から抽出液に抽出するための抽出容器であって、
開口部と、
この開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部とを備えたことを特徴とするものである。
【0020】
本明細書において、抽出容器の「開口部」とは、容器全体としての開口の部分を意味し、例えば抽出容器が複数の部材からなるときは、これらがすべて結合された状態の容器の開口の部分を意味する。
【0021】
また、本発明に係る抽出容器において、引っ掛け部は、採取部の径より径が小さくかつ棒体を配置することが可能な弁開口を有する弁体であることが好ましく、弁体は、抽出容器の奥に向かうほど絞られた形状であることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る抽出容器は、抽出液を収容する容器本体と、弁拡張部材とを備え、
容器本体は、本体開口部と、本体開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた上記弁体とを有し、
弁拡張部材は、本体開口部に挿入されて容器本体に嵌合するように構成されたものであり、さらに、容器本体に嵌合された状態で、検体採取棒を容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、容器本体に嵌合された状態で、弁開口を拡張する弁拡張部とを有するものであることが好ましい。
【0023】
本明細書において、弁拡張部材を容器本体に「嵌合する」とは、弁拡張部材が容器本体に挿入され弁拡張部が弁体に作用しうるように、凹部と凸部を単に嵌め合わせることの他、引っ掛け部を凹部に係り合わせて結合すること(係合)やネジ巻き式で結合すること(螺合)を含む意味である。
【0024】
また、本発明に係る抽出容器において、弁拡張部材は、容器本体への嵌合状態の深浅の度合を調整可能であって、嵌合状態が深くなるほど、弁開口を拡張するように構成されたものであることが好ましい。
【0025】
或いは、本発明に係る抽出容器において、抽出液を収容する容器本体と、弁部材とを備え、
容器本体が、本体開口部を有し、
弁部材が、容器本体に結合するように構成されたものであり、さらに、本体開口部に結合された状態で、検体採取棒を容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、部材開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた上記弁体とを有するものとすることができる。
【0026】
本明細書において、「結合する」とは、凹部と凸部を単に嵌め合わせることの他、引っ掛け部を凹部に係り合わせて結合すること(係合)やネジ巻き式で結合すること(螺合)を含む意味である。
【0027】
さらに、本発明に係る抽出キットは、
上記に記載の抽出容器と、棒体および棒体に取り付けられた採取部からなる、検体を採取するための検体採取棒と、抽出容器の開口部に結合することが可能な蓋部材とを備え、
蓋部材が、この蓋部材が開口部に結合されたとき、開口部を塞ぐ位置に配置されたフィルタと、蓋部材が開口部に結合されたとき、フィルタ通して抽出液を外部へ取り出すことを可能とするノズル部とを備えたことを特徴とするものである。
【0028】
さらに、本発明に係る弁拡張部材は、
本体開口部と、本体開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた弁体とを有し、抽出液を収容する容器本体の本体開口部に挿入されて容器本体に嵌合するように構成された弁拡張部材であって、
弁体が、検体採取棒の採取部の径より径が小さくかつ検体採取棒の棒体を配置することが可能な弁開口を有するものであり、
容器本体に嵌合された状態で、検体採取棒を容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、容器本体に嵌合された状態で、弁開口を拡張する弁拡張部とを備えたことを特徴とするものである。
【0029】
本発明に係る弁拡張部材は、容器本体への嵌合状態の深浅の度合を調整可能であって、嵌合状態が深くなるほど弁開口を拡張するように構成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る抽出方法は、特に、検体採取棒の挿入路に設けられた引っ掛け部であって、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部のこの間隙に、棒体を配置し、この棒体が間隙に配置された状態でこの棒体を引き抜くとともに、採取部を引っ掛け部に引っ掛けて、採取部を棒体から取り外し、取り外した採取部を抽出容器に収容された抽出液に浸漬せしめて、採取部から検体を抽出するものであるから、採取部を廃棄しないため、採取部に再付着した検体を無駄にすることがない。この結果、綿棒等の検体採取棒を用いて採取した検体を検体採取棒の採取部から抽出する場合において、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように検体の大部分を抽出容器に取り込むことが可能となる。
【0031】
さらに、本発明に係る抽出容器および抽出キットは、開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部を備えたことを特徴とするものであるから、この抽出容器および抽出キットを用いて、検体採取棒から採取部を取り外すことができ、採取部を廃棄しないため、採取部に再付着した検体を無駄にすることがない。この結果、綿棒等の検体採取棒を用いて採取した検体を検体採取棒の採取部から抽出する場合において、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように検体の大部分を抽出容器に取り込むことが可能となる。
【0032】
さらに、本発明に係る弁拡張部材は、本体開口部と、本体開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた弁体とを有し、抽出液を収容する容器本体の本体開口部に挿入されて容器本体に嵌合するように構成された弁拡張部材であって、弁体が、検体採取棒の採取部の径より通常時の径が小さくかつ検体採取棒の棒体を配置することが可能な弁開口を有するものであり、容器本体に嵌合された状態で、検体採取棒を容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、容器本体に嵌合された状態で、弁開口を拡張する弁拡張部とを備えたことを特徴とするものであるから、容器本体にこの弁拡張部材を嵌合するだけで、上記弁開口を広げることができる。この結果、上記のような弁開口を有する弁体を備えた抽出容器を用いて検査を行う場合であっても、弁体に検体を付着させることなく、検体採取棒の挿抜を容易に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は、第1の実施形態の抽出キットの構成を示す概略断面図である。(b)は、引っ掛け部を通る断面で切った時の第1の実施形態の抽出容器を示す概略断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、第1の実施形態において綿球を取り外す工程を示す概略断面図である。
【図3】(a)は、第2の実施形態の抽出キットの構成を示す概略断面図である。(b)は、第2の実施形態の抽出キットの容器本体、弁拡張部材および蓋部材が嵌合された様子を示す概略断面図である。(c)は、容器本体の本体開口部を上面から眺めた時の形態を示す概略上面図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の抽出容器に設けられる弁体の他の形態を示す概略上面図である。
【図5】第2の実施形態において、容器本体と弁拡張部材との嵌合状態が浅い場合の弁体および弁拡張部の位置関係を示す概略断面図である。
【図6】(a)〜(e)は、第2の実施形態において綿球を取り外す工程を示す概略断面図である。
【図7】第2の実施形態において、取り外した綿球を解しながら綿球から検体を抽出する様子を示す概略断面図である。
【図8】(a)は、第3の実施形態の抽出キットの構成を示す概略断面図である。(b)は、第3の実施形態の抽出キットの容器本体、弁部材および蓋部材が結合された様子を示す概略断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、第3の実施形態において綿球を取り外す工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0035】
「第1の実施形態の抽出方法、抽出容器」
まず、本発明の第1の実施形態の抽出方法および抽出容器について説明する。図1aは、本実施形態の抽出容器20および綿棒10からなる抽出キットK1を示す概略断面図であり、図1bは、引っ掛け部21を通る断面で切った時の抽出容器20を示す概略断面図である。また、図2は、上記抽出キットK1を用いた本実施形態の抽出方法の工程のうち綿球を取り外す工程を示す概略断面図である。
【0036】
本実施形態の抽出方法は、棒体11およびこの棒体11に取り付けられた綿球12からなる綿棒10を用いて被検者から検体を採取し、綿棒10を抽出液Sが収容された抽出容器20に開口部22から挿入し(図2a)、適度に綿球12を抽出液Sに浸漬した後、抽出容器20内部の綿棒10の挿入路に設けられた引っ掛け部21であって、綿球12の径L1より幅が小さくかつ棒体11を配置することが可能な間隙L2を有する引っ掛け部21のこの間隙L2に、棒体11を配置し、この棒体11が間隙L2に配置された状態でこの棒体11を引き抜くとともに、綿球12を引っ掛け部21に引っ掛けて(図2b)、綿球12を棒体11から取り外し、取り外した綿球12を抽出液Sに浸漬せしめて(図2c)、抽出容器20に綿球12が取り込まれた状態で綿球12から検体を抽出することを特徴とするものである。
【0037】
本発明で使用できる検体は、尿、糞便、唾液、鼻汁、喀痰、血液、血清などの生
体試料が挙げられ、綿棒等の検体採取棒により採取されるものである。
【0038】
抽出液Sとは、検体から特定の成分を抽出する機能を果たす液に限らず、検体と混ざり合うことにより、検体を検査に適した状態とするための処理液、検体を希釈するための希釈液、検体の一部を分散あるいは溶解させる分散媒体や溶媒などを意味する。
【0039】
検体の抽出とは、検体を抽出液に溶解、分散等させることを意味し、採取した採取部を単に抽出液に浸して経時的に検体を拡散させることや、抽出液に浸した採取部を積極的に掻き回したり、潰したり、解したりすることを含む意味である。
【0040】
一方、本実施形態の抽出キットK1は、図1aに示すように、棒体11およびこの棒体11に取り付けられた綿球12からなる綿棒10と、抽出容器20とから構成される。
【0041】
検体採取棒は、本実施形態においては綿棒10であるが、棒体およびこの棒体に取り付けられた採取部からなるものであれば、特に限定されるものではなく、実際に市販されているもの等を使用することができる。
【0042】
一般的には、検体採取棒は、付着または吸着等させることにより検体を採取する部分である採取部と、この採取部を支持する部分である棒体からなる。採取部および棒体は特に限定されず、例えば、採取部は繊維材料(綿、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、パルプ、毛(例えば羊毛)、シルクなど)を圧縮して丸めたもの、または所定形状に成形された多孔質材料(ウレタン、スポンジ(例えば海綿)など)から形成することができ、棒体は(ポリプロピレン、アクリル、ポリアセタール、木材、紙、軽金属(例えばアルミニウム)など)から形成することができる。検体採取および加工の容易性の観点から、採取部は綿、レーヨンから形成することが好ましい。採取部の形状は、特に限定されないが通常球状または楕円体状であるが、検体採取の容易性の観点から凹凸段付形状、スパイラル状、先端細形状等とすることもできる。採取部は、検体採取および取り外しの容易性の観点から、棒体の径以上の長さの径を有するように形成されたものが好ましいが、多孔質材料を棒体の先端に固定するような場合には必ずしもそうである必要はない。採取部の径は、特に限定されないが、一般的には例えば5mm程度であり、乳幼児向けの1〜3mm程の小さいものや、10mm程の大きいものもある。棒体の長さは、一般的には例えば100mm程度であり、乳幼児向けの50mm程の小さいものや、150〜200mm程の大きいものもある。採取部の棒体への取り付け方法は、特に限定されず、例えば繊維材料を棒体に巻き付ける方法、または所定形状に成形された多孔質材料を棒体の先端に固定する方法等を採用することができる。ただし、上記取り付けは、検体を採取する際には外れないが検体を抽出するときに引っ掛け部21からの物理的作用が働いた際には外すことが可能、となるような強度で行う必要がある。本実施形態の説明で用いている綿棒は、抽出液に浸漬されて濡れた状態では取り外しやすくなるため、検体採取棒として特に好ましい。採取部は、引っ掛け部21に引っ掛けて棒体から取り外されるが、取り外される際、検体の抽出に影響を与えない範囲で棒体の一部(例えば、所定形状に成形された多孔質材料を棒体の先端で固定するための、この多孔質材料に挿入される芯など)を含むように取り外されてもよい。
【0043】
抽出容器20は、開口部22と、引っ掛け部21とを有するものである。
【0044】
本実施形態の引っ掛け部21は、抽出容器20の内部の綿棒10の挿入路に間隙L2を形成するように所定の距離離して配置された2つの突起部からなるものである。上記間隙L2は、綿棒10の棒体11の径よりも大きく、かつ綿球12の径L1よりも小さくなるように設計されており、綿棒10をこの間隙L2に配置してそのまま引き抜くと、棒体11はすり抜けることが可能であるが綿球12は引っ掛かるように構成されている。したがって、綿球12が引っ掛かった状態で棒体11を引っ張ると、綿球12を棒体11から容易に取り外すことができる。本実施形態では図1bに示すように、引っ掛け部21はL字型の突起部によって構成されているが、これに限られるものではなく、他の形状の突起部であってもよい。また、上記の突起部の角に斜面を取る等して、棒体11が間隙L2に配置しやすいようにガイドを形成してもよい。
【0045】
また、取り外された綿球12はそのまま抽出液Sに落ちるため、引き続き検体の公知の抽出作業を続行することが可能である。綿球12の取り外すタイミングは特に限定されないが、適度に抽出液Sに浸漬して綿球12を濡らし、ある程度解してから行うことが好ましい。
【0046】
以上のように、本発明に係る抽出方法は、特に、検体採取棒の挿入路に設けられた引っ掛け部であって、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部のこの間隙に、棒体を配置し、この棒体が間隙に配置された状態でこの棒体を引き抜くとともに、採取部を引っ掛け部に引っ掛けて、採取部を棒体から取り外し、取り外した採取部を抽出容器に収容された抽出液に浸漬せしめて、採取部から検体を抽出するものであるから、採取部を廃棄しないため、採取部に再付着した検体を無駄にすることがない。この結果、綿棒等の検体採取棒を用いて採取した検体を検体採取棒の採取部から抽出する場合において、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように検体の大部分を抽出容器に取り込むことが可能となる。
【0047】
また、本発明に係る抽出容器は、開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部を備えたことを特徴とするものであるから、この抽出容器を用いて、検体採取棒から採取部を取り外すことができ、採取部を廃棄しないため、採取部に再付着した検体を無駄にすることがない。この結果、綿棒等の検体採取棒を用いて採取した検体を検体採取棒の採取部から抽出する場合において、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように検体の大部分を抽出容器に取り込むことが可能となる。
【0048】
「第2の実施形態の抽出方法、抽出容器および抽出キット」
次に、本発明の第2の実施形態の抽出方法および抽出キットについて説明する。図3aは、本実施形態の抽出キットK2の構成を示す概略断面図であり、図3bは、本実施形態の抽出キットK2の容器本体30、弁拡張部材40および蓋部材50が嵌合された様子を示す概略断面図であり、図3cは、容器本体30の本体開口部32を上面(検体採取棒の挿入方向)から眺めた時の形態を示す概略上面図である。
【0049】
本実施形態の抽出方法は、図3aに示す抽出キットK2を用いて実施される。
【0050】
具体的には、本実施形態の抽出方法は、抽出液Sを収容した容器本体30に弁拡張部材40を深い嵌合状態となるように嵌合して抽出容器(30および40)を用意し、棒体11およびこの棒体11に取り付けられた綿球12からなる綿棒10を用いて被検者から検体を採取し、綿棒10を開口部42から抽出容器(30および40)に挿入し、適度に綿球12を抽出液Sに浸漬した後、容器本体30内部の綿棒10の挿入路に設けられた弁体31であって、綿球12の径L1より通常時の径L3が小さくかつ棒体11を配置することが可能な弁開口31aを有する弁体31のこの弁開口31aに、棒体11を配置し、この棒体11が弁開口31aに配置された状態でこの棒体11を引き抜くとともに、綿球12を弁体31に引っ掛けて、綿球12を棒体11から取り外し、取り外した綿球12を抽出液Sに浸漬せしめて、抽出容器(30および40)に綿球12が取り込まれた状態で綿球12から検体を抽出することを特徴とするものである。
【0051】
一方、本実施形態の抽出キットK2は、具体的には、図3aに示すように、綿棒10と、容器本体30および弁拡張部材40からなる抽出容器と、弁拡張部材40に結合する蓋部材50とから構成される。なお、抽出キットK2の構成として抽出液を含んでもよい。
【0052】
綿棒10は第1の実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態の抽出容器は、弁拡張部材40の弁拡張部41が容器本体30の内部に挿入されるように、容器本体30と弁拡張部材40とが嵌合されることにより構成されている。
【0054】
容器本体30は、本体開口部32と、本体開口部32から挿入された綿棒10の挿入路に設けられた弁体31とを有し、弁拡張部材40が本体開口部32に挿入されて容器本体30と嵌合することが可能となるように、ネジ巻き式の本体嵌合部33を有するものである。容器本体30は、弁体31も含め全体としては、樹脂製の一体成型品であるが、容器本体30の側面部分のうち開口部側の領域34aと底面部側の領域34bとは、肉厚等を変更することにより、硬さが異なるように形成されている。本実施形態では、容器本体30の側面部分の開口部側の領域34aが比較的硬質に仕上げられているのに対し、底面部側の領域34bは、弾性変形可能な可撓性の高い材質に仕上げられている。弾性変形可能な素材としては、弾力性と可撓性とを有する素材であって、耐薬性、成形性を有するものであればよく、臭気を伴わないものがより好ましい。
【0055】
具体的には、弾性変形可能な素材として、熱可塑性樹脂、シリコン樹脂、熱可塑性エラストマー等が例示される。また、これらの樹脂を組み合わせてもよい。熱可塑性樹脂の場合、例えば、オレフィン系樹脂の場合、熱可塑性樹脂エラストマー水素添加スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーと組み合わせることで成形性が向上することが知られている。熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)等のポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、EVA等が挙げられる。これらは、2種類以上を組み合わせたポリマーブレンド、ポリマーアロイでもよい。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、塩化ビニル系等の中から適宜成形性、耐薬品性、環境性、コスト等を考慮して選択されるが、中でもスチレン系、オレフィン系が好ましい。またこれらは、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて、例えば積層する等して用いてもよい。
【0056】
弁体31は、容器本体(抽出容器)内部における綿棒10の挿入路に設けられており、綿球12の径L1より通常時の径L3が小さくかつ棒体11を配置することが可能な弁開口31aを有することにより、本発明における引っ掛け部として機能する。引っ掛け部を弁体とすることにより、検体および抽出液の飛散や漏れ等を防止できるという効果も奏する。本実施形態の弁体31は、棒体11を綿球12から引き抜く際の引っ張る力に対抗できるように、容器本体30(抽出容器)の奥に向かうほど絞られた形状、いわゆる逆止弁形状に形成されている。また、図3cに示すように、弁体31にはスリット31bが形成されており、弁開口31aの開閉を容易にしている。
【0057】
なお、本発明の抽出容器の弁体は、上記態様に限られるものではなく、例えば図4aに示すようなジャバラ状の弁体、図4bに示すような複数のフラップからなる弁体、および図4cに示すようなスリットのみが形成された弁体等を採用することも可能である。また、ブラシ状の素材により弁体を形成してもよい。
【0058】
弁拡張部材40は、容器本体30に嵌合された状態で、綿棒10を容器本体30へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部42と、容器本体30に嵌合された状態で、弁開口31aを拡張する弁拡張部41と、容器本体30に嵌合することを可能とする嵌合部43とを有するものである。
【0059】
弁拡張部41は、弁拡張部材40が容器本体30に深く嵌合された場合に、弁体31を押し広げるよう構成されている。これにより、綿球12の径L1より通常時の径L3が小さくかつ棒体11を配置することが可能なの弁開口31aを有する弁体31を備えた容器本体30(抽出容器)を用いて検査を行う場合であっても、綿棒10の挿抜を容易に実施することが可能となる。
【0060】
部材開口部42は、弁拡張部材40が容器本体30嵌合された場合に、抽出容器(容器本体30および弁拡張部材40)全体の開口部となる。これらが嵌合されたとき、綿棒10はこの部材開口部42から挿入される。部材開口部42の径L4は、特に限定されないが、綿棒10の挿抜を容易にするため、綿球12の径L1より大きいことが好ましい。
【0061】
部材嵌合部43は、弁拡張部材40が容器本体30に嵌合することを可能とするものであり、前述した本体嵌合部33と相補的なネジ巻き形状が形成されている。
【0062】
本実施形態では、本体嵌合部33と部材嵌合部43がネジ巻き式で構成されているため、そのネジの巻き具合によって容器本体30および弁拡張部材40の嵌合状態の深浅の度合を調整することが可能である。このように上記嵌合状態の深浅の度合を調整するための構造としては、上記のような手動で行うネジ巻き式の構造に限定されず、スライド式の構造やボタンで深浅の度合を切り替えることができる構造等を採用することも可能である。そして、本実施形態の弁拡張部41は、上記嵌合状態が深くなるほど、弁開口31aを拡張するように構成されている。図5は、容器本体30および弁拡張部材40の嵌合状態が浅い状態を示す概略断面図であり、このような場合、弁拡張部41が弁体31に接触することができなくなるため、弁体31は拡張しない。本実施形態では、弁体31および弁拡張部41の形状が共にテーパー形状であるが、上記のように弁開口31aの開口状態を調整するような構成としては、弁体31および弁拡張部41のうちどちらかの形状がテーパー形状であればよい。
【0063】
蓋部材50は、フィルタ51とノズル部52とを有し、弁拡張部材40の部材開口部42の外部側の部分42b(抽出容器の開口部)に結合することが可能となるように結合部55が形成されている。フィルタ51は、蓋部材50が開口部42bに結合されたとき、開口部42bを塞ぐ位置に配置されたものであり、ノズル部52は、蓋部材50が開口部42bに結合されたとき、フィルタ51を通して抽出液Sをろ過しながら外部へ取り出すことを可能とするものである。この蓋部材50を抽出容器に結合することにより、ノズル部52を下に向け、例えばイムノクロマト担体等の検査デバイスに容易に抽出液Sを取り出すことが可能となる。このような場合、抽出容器に残った綿球12は、蓋部材50のフィルタ51により遮断されるので、検査に影響を与えることはない。なお、図3のような構造では、弁体31と容器本体30の側面部分34aとの間の空間36に、抽出液Sが溜まってしまい必要な量の抽出液Sを取り出すことができなくなるという問題が生じうるが、弁体31および弁拡張部41に抽出液Sの取り出し口等を設けるにより上記問題は解消する。
【0064】
以下、本実施形態の抽出方法において、図6を用いて綿球12を取り外す工程を具体的に説明する。
【0065】
まず、容器本体30とこの容器本体30に嵌合された弁拡張部材40とからなる抽出容器を用意する(図6a)。このとき、弁拡張部材40は、容器本体30の弁開口31aを拡張するように、容器本体30に深い嵌合状態となるように設定される。検体を採取した綿棒10を抽出容器の開口部(弁拡張部材40の部材開口部42)に挿入し、綿球12を抽出液Sに浸漬する(図6b)。その後、容器本体30および弁拡張部材40の嵌合状態を浅くすることによって、弁開口31aの拡張状態を解除し(図6c)、綿球12を弁開口31aのある弁体31の先端に引っ掛けて(図6d)、棒体11を引き抜くことにより、綿球12を棒体11から取り外す(図6e)。以上の工程により、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように抽出容器に取り込むことが可能となる。
【0066】
例えば蓋部材50を用いて抽出液Sを取り出す場合には、容器本体30ごと綿球12を摘むことで、検体を搾り出すことが好ましい。また、図7に示すように、抽出液Sを取り出す前に、予め綿球12を解すことも好ましい。このようにすることにより、単に綿球12を抽出容器に取り込むだけではなく、綿球12の奥に存在する抽出しにくい検体も抽出することが可能となり、より検体の抽出効率が向上する。
【0067】
以上のように、本発明に係る抽出方法は、特に、検体採取棒の挿入路に設けられた引っ掛け部であって、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部のこの間隙に、棒体を配置し、この棒体が間隙に配置された状態でこの棒体を引き抜くとともに、採取部を引っ掛け部に引っ掛けて、採取部を棒体から取り外し、取り外した採取部を抽出容器に収容された抽出液に浸漬せしめて、採取部から検体を抽出するものであるから、採取部を廃棄しないため、採取部に再付着した検体を無駄にすることがない。この結果、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0068】
さらに、本実施形態に係る抽出方法は、引っ掛け部として、検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より通常時の径が小さくかつ棒体を配置することが可能な弁開口を有する弁体を利用しているから、検体および抽出液の飛散や漏れ等を防止することが可能となる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る抽出方法は、取り外した採取部を解しながら検体を抽出するから、採取部の奥に存在する抽出しにくい検体も抽出することが可能となり、より検体の抽出効率を向上させることが可能となる。
【0070】
また、本発明に係る抽出容器および抽出キットは、開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部を備えたことを特徴とするものであるから、この抽出容器および抽出キットを用いて、検体採取棒から採取部を取り外すことができ、採取部を廃棄しないため、採取部に再付着した検体を無駄にすることがない。この結果、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0071】
さらに、本実施形態に係る抽出容器および抽出キットは、引っ掛け部として、検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より通常時の径が小さくかつ棒体を配置することが可能な弁開口を有する弁体を備えるから、検体および抽出液の飛散や漏れ等を防止することが可能となる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る抽出容器および抽出キットは、抽出液を収容する容器本体と、弁拡張部材とを備え、容器本体は、本体開口部と、本体開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた上記弁体とを有し、弁拡張部材は、本体開口部に挿入されて容器本体に嵌合するように構成されたものであり、さらに、容器本体に嵌合された状態で、検体採取棒を容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、容器本体に嵌合された状態で、弁開口を拡張する弁拡張部とを有するものであるから、上記のような弁開口を有する弁体を備えた抽出容器を用いて検査を行う場合であっても、検体採取棒の挿抜を容易に実施することが可能となる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る抽出容器および抽出キットは、弁拡張部材が、容器本体への嵌合状態の深浅の度合を調整可能であって、嵌合状態が深くなるほど、弁開口を拡張するように構成されたものであるから、弁体の開閉を容易に実施することが可能となる。
【0074】
「第3の実施形態の抽出方法、抽出容器および抽出キット」
次に、本発明の第3の実施形態の抽出方法および抽出キットについて説明する。図8aは、本実施形態の抽出キットK3の構成を示す概略断面図であり、図8bは、本実施形態の抽出キットK3の容器本体60、弁部材70および蓋部材50が嵌合された様子を示す概略断面図である。
【0075】
本実施形態の抽出方法は、図8aに示す抽出キットK3を用いて実施される。
【0076】
具体的には、本実施形態の抽出方法は、抽出液Sを収容した容器本体60に弁部材70を結合して抽出容器(60および70)を用意し、棒体11およびこの棒体11に取り付けられた綿球12からなる綿棒10を用いて被検者から検体を採取し、綿棒10を開口部72から抽出容器(60および70)に挿入し、適度に綿球12を抽出液Sに浸漬した後、弁部材70の綿棒10の挿入路に設けられた弁体71であって、綿球12の径L1より通常時の径L7が小さくかつ棒体11を配置することが可能な弁開口71aを有する弁体71のこの弁開口71aに、棒体11を配置し、この棒体11が弁開口L7に配置された状態でこの棒体11を引き抜くとともに、綿球12を弁体71に引っ掛けて、綿球12を棒体11から取り外し、取り外した綿球12を抽出液Sに浸漬せしめて、抽出容器(60および70)に綿球12が取り込まれた状態で綿球12から検体を抽出することを特徴とするものである。
【0077】
一方、本実施形態の抽出キットK3は、具体的には、図8aに示すように、綿棒10と、容器本体60および弁部材70からなる抽出容器と、弁部材70に結合する蓋部材50とから構成される。
【0078】
綿棒10および蓋部材50は、それぞれ第1および第2の実施形態と同様である。
【0079】
本実施形態の抽出容器は、弁部材70の弁体71が容器本体60の内部に挿入されるように、容器本体60と弁部材70とが結合されることにより構成されている。
【0080】
容器本体60は、本体開口部62を有し、弁部材70が本体開口部62に挿入されて容器本体60と結合することが可能となるように、ネジ巻き式の本体結合部63を有するものである。容器本体60は、全体としては、樹脂製の一体成型品であるが、第2の実施形態と同様に、容器本体60の側面部分のうち開口部側の領域64aと底面部側の領域64bとは、肉厚等を変更することにより、硬さが異なるように形成されている。なおその他、容器本体60の形成方法や材料については第2の実施形態と同様である。
【0081】
弁部材70は、容器本体60に結合された状態で、綿棒10を容器本体60へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部72と、部材開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた、綿球12の径L1より通常時の径L7が小さくかつ棒体11を配置することが可能な弁開口71aを有する弁体71と、容器本体60に結合することを可能とする結合部73とを有するものである。弁部材70の材料としては、容器本体60と同様の材料の他、ゴム、紙材、アクリル、レーヨン、ウレタン、薄膜金属(アルミニウム等)等を用いることができる。
【0082】
弁体71は、弁部材70の部材開口部72の容器本体側(これは、抽出容器の内部における綿棒10の挿入路に該当する)に設けられており、綿球12の径L1より通常時の径L7が小さくかつ棒体11を配置することが可能な弁開口71aを有することにより、本発明における引っ掛け部として機能する。その他については第2の実施形態の弁体と同様である。
【0083】
部材開口部72は、弁部材70が容器本体60に結合された場合に、抽出容器(容器本体60および弁部材70)全体の開口部となる。これらが結合されたとき、綿棒10はこの部材開口部72から挿入される。部材開口部72の径は、特に限定されないが、綿棒10の挿抜を容易にするため、綿球12の径L1より大きいことが好ましい。
【0084】
部材結合部73は、弁部材70が容器本体60に結合することを可能とするものであり、前述した本体結合部63と相補的なネジ巻き形状が形成されている。なお、弁部材70は、嵌合状態の深浅の度合を調整するという機能は特に必要ではないないため、図8に示すように必ずしも挿入するように結合させる必要はない。
【0085】
以下、本実施形態の抽出方法において、図9を用いて綿球12を取り外す工程を具体的に説明する。
【0086】
まず、容器本体60とこの容器本体60に結合された弁部材70とからなる抽出容器を用意する。検体を採取した綿棒10を抽出容器の開口部(弁部材70の部材開口部72)に挿入し、綿球12を抽出液Sに浸漬する(図9a)。その後、綿球12を弁開口71aのある弁体71の先端に引っ掛けて(図9b)、棒体11を引き抜くことにより、綿球12を棒体11から取り外す(図9c)。以上の工程により、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように抽出容器に取り込むことが可能となる。
【0087】
さらに、前述したように、抽出液Sを取り出す前に、予め綿球12を解す等することにより、単に綿球12を抽出容器に取り込むだけではなく、綿球12の奥に存在する抽出しにくい検体も抽出することが可能となり、より検体の抽出効率が向上する。
【0088】
以上のように、本発明に係る抽出方法は、特に、検体採取棒の挿入路に設けられた引っ掛け部であって、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部のこの間隙に、棒体を配置し、この棒体が間隙に配置された状態でこの棒体を引き抜くとともに、採取部を引っ掛け部に引っ掛けて、採取部を棒体から取り外し、取り外した採取部を抽出容器に収容された抽出液に浸漬せしめて、採取部から検体を抽出するものであるから、採取部を廃棄しないため、採取部に再付着した検体を無駄にすることがない。この結果、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0089】
また、本発明に係る抽出容器および抽出キットは、開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より幅が小さくかつ棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部を備えたことを特徴とするものであるから、この抽出容器および抽出キットを用いて、検体採取棒から採取部を取り外すことができ、採取部を廃棄しないため、採取部に再付着した検体を無駄にすることがない。この結果、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0090】
さらに、本実施形態に係る抽出容器および抽出キットは、容器本体に結合するように構成され、さらに、本体開口部に結合された状態で、検体採取棒を容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、部材開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた、採取部の径より通常時の径が小さくかつ棒体を配置することが可能な弁開口を有する弁体とを有する弁部材を用いているから、弁体を有しない容器に対しても本発明の抽出方法を容易に適用することが可能となり、綿棒等の検体採取棒を用いて採取した検体を検体採取棒の採取部から抽出する場合において、希少な検体を無駄にすることなく、有効に利用できるように検体の大部分を抽出容器に取り込むことが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
10 綿棒
11 棒体
12 綿球
20 抽出容器
22 開口部
30 容器本体
31 弁体
31a 弁開口
32 本体開口部
40 弁拡張部材
41 弁拡張部
42 部材開口部
50 蓋部材
60 容器本体
62 本体開口部
63 本体結合部
70 弁部材
71 弁体
71a 弁開口
72 部材開口部
K1、K2、K3 抽出キット
L1 採取部の径
L2 間隙の幅
L3、L7 弁開口の径
S 抽出液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒体および該棒体に取り付けられた採取部からなる検体採取棒を用いて検体を採取し、
前記検体採取棒を抽出容器に挿入し、
該検体採取棒の挿入路に設けられた引っ掛け部であって、前記採取部の径より幅が小さくかつ前記棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部の該間隙に、前記棒体を配置し、
該棒体が前記間隙に配置された状態で該棒体を引き抜くとともに、前記採取部を前記引っ掛け部に引っ掛けて、該採取部を前記棒体から取り外し、
取り外した前記採取部を前記抽出容器に収容された抽出液に浸漬せしめて、前記採取部から前記検体を抽出することを特徴とする抽出方法。
【請求項2】
前記引っ掛け部が、前記抽出容器内部に挿入される前記検体採取棒の挿入路に設けられた、前記採取部の径より通常時の径が小さくかつ拡縮自在の弁開口を有する弁体であり、
前記弁開口に前記検体採取棒を挿入した後、該弁開口を前記間隙として、前記棒体が該弁開口に配置された状態で該棒体を引き抜くとともに、前記採取部を前記弁体に引っ掛けて、該採取部を前記棒体から取り外すことを特徴とする請求項1に記載の抽出方法。
【請求項3】
取り外した前記採取部を解しながら前記検体を抽出することを特徴とする請求項1または2に記載の抽出方法。
【請求項4】
抽出液を収容し、棒体および該棒体に取り付けられた採取部からなる検体採取棒を用いて、前記採取部で採取した検体を、該採取部から前記抽出液に抽出するための抽出容器であって、
開口部と、
該開口部から挿入される前記検体採取棒の挿入路に設けられた、前記採取部の径より幅が小さくかつ前記棒体を配置することが可能な間隙を有する引っ掛け部とを備えたことを特徴とする抽出容器。
【請求項5】
前記引っ掛け部が、前記採取部の径より径が小さくかつ前記棒体を配置することが可能な弁開口を有する弁体であることを特徴とする請求項4に記載の抽出容器。
【請求項6】
前記弁体が、前記抽出容器の奥に向かうほど絞られた形状であることを特徴とする請求項5に記載の抽出容器。
【請求項7】
抽出液を収容する容器本体と、弁拡張部材とを備え、
前記容器本体が、本体開口部と、該本体開口部から挿入される前記検体採取棒の挿入路に設けられた前記弁体とを有し、
前記弁拡張部材が、前記本体開口部に挿入されて前記容器本体に嵌合するように構成されたものであり、さらに、前記容器本体に嵌合された状態で、前記検体採取棒を前記容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、前記容器本体に嵌合された状態で、前記弁開口を拡張する弁拡張部とを有するものであることを特徴とする請求項5または6に記載の抽出容器。
【請求項8】
前記弁拡張部材が、前記容器本体への嵌合状態の深浅の度合を調整可能であって、該嵌合状態が深くなるほど、前記弁開口を拡張するように構成されたものであることを特徴とする請求項7に記載の抽出容器。
【請求項9】
抽出液を収容する容器本体と、弁部材とを備え、
前記容器本体が、本体開口部を有し、
前記弁部材が、前記本体開口部に挿入されて前記容器本体に結合するように構成されたものであり、さらに、前記本体開口部に結合された状態で、前記検体採取棒を前記容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、該部材開口部から挿入される前記検体採取棒の挿入路に設けられた前記弁体とを有するものであることを特徴とする請求項5または6に記載の抽出容器。
【請求項10】
請求項4から9いずれかに記載の抽出容器と、
棒体および該棒体に取り付けられた採取部からなる、検体を採取するための検体採取棒と、
前記抽出容器の開口部に結合することが可能な蓋部材とを備え、
該蓋部材が、該蓋部材が前記開口部に結合されたとき、該開口部を塞ぐ位置に配置されたフィルタと、前記蓋部材が前記開口部に結合されたとき、前記フィルタを通して前記抽出液を外部へ取り出すことを可能とするノズル部とを備えたことを特徴とする抽出キット。
【請求項11】
本体開口部と、該本体開口部から挿入される検体採取棒の挿入路に設けられた弁体とを有し、抽出液を収容する容器本体の前記本体開口部に挿入されて前記容器本体に嵌合するように構成された弁拡張部材であって、
前記弁体が、前記検体採取棒の採取部の径より径が小さくかつ該検体採取棒の棒体を配置することが可能な弁開口を有するものであり、
前記容器本体に嵌合された状態で、前記検体採取棒を前記容器本体へ挿入することを可能とする貫通口である部材開口部と、前記容器本体に嵌合された状態で、前記弁開口を拡張する弁拡張部とを備えたことを特徴とする弁拡張部材。
【請求項12】
前記容器本体への嵌合状態の深浅の度合を調整可能であって、該嵌合状態が深くなるほど前記弁開口を拡張するように構成されたものであることを特徴とする請求項13に記載の弁拡張部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−215020(P2011−215020A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83896(P2010−83896)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】