説明

抽出溶剤中の植物の有効成分含有量を増加させる方法

【課題】抽出溶剤中の植物の有効成分含有量を増加する方法が提供される。
【解決手段】遠赤外線放射物質で該溶剤を処理し、該処理済の溶剤で該植物の有効成分を抽出して該溶剤中における該植物有効成分含有量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抽出溶剤中の植物の有効成分含有量を増加する方法に関し、特に遠赤外線放射物質が放射した遠赤外線を利用して溶液中の植物の有効成分含有量を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの伝統の漢方薬又は香料の有効成分は植物の二次代謝物(Secondary metabolites)が多い。植物の二次代謝物は植物中の非生産に必要とする小分子有機化合物でありその種類は非常に多く化学構造も異なり、現在、大方のフェノール類化合物、テンペル類化合物及び含窒素有機物の三大種類に分けられる。
植物二次代謝物の応用は十分に広汎であり、現在、既に医薬、化学工程、食品及び農業等の工業に応用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
漢方薬について言えば長期間違法に採集され、多くの草薬が絶滅の危機に瀕し、その上一部の草薬は環境因素に限られ人工栽培が容易でないので、これら漢方薬の取得が容易でなく、その二次代謝物は、より珍貴を示す。更に甚だしくは一部の天然植株中の目標二次代謝物の含有量が低すぎ、例えば赤豆杉樹皮中のタキソールの含有量は万分の2しかないので該二次代謝物はなかなか市場の需要を満足できない。したがって如何に有効的に植物中から最大量の目標二次代謝物を取得するかは重要の課題となっている。
【0004】
人々は化学合成の方法を用いて資源の有限問題を解決することに務めているがこの方法はあらゆる植物の有効成分に対して適用されるのではなく且つコストが高く、合成過程において異種構造物を形成すると共に環境汚染等の問題を引起す欠点を有している。
したがって発明人は上記従来の技術の欠点にかんがみ、鋭意試験と研究とを重ねた結果、ついに「溶剤中の植物の有効成分含有量を増加する方法」を案出した。
【0005】
本発明の目的は植物の有効成分の溶出を増加する方法を提供して、従来の技術である化学合成方法を利用して植物有効成分を製造する場合に存在している高コスト、フロープロセスの複雑さを解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供される、抽出溶剤中の植物の有効成分含有量を増加する方法は、遠赤外線放射物質で該溶剤を処理するステップと該溶剤で該植物の有効成分を抽出して該溶剤中における該植物有効成分含有量を増加するステップとを備えてなる。
【0007】
本発明の次の目的は液体中における植物の有効成分含有量を増加する方法を提供することにあり、当該方法は遠赤外線放射物質で該液体を処理するステップと、該植物を該液体中に浸漬して該植物の有効成分を液体中に溶出させるステップとを備えてなる。
本発明のまた次の目的は液体中における植物の有効成分含有量を増加する組成物を提供することにある。当該組成物は主要成分が酸化鉱物である遠赤外線放射物質を包含してなり、当該組成物は該遠赤外線放射物質より放射された遠赤外線を介して該液体中の該植物の有効成分含有量が増加するのを促進する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の遠赤外線放射物質は茶水中の総ポリフェノール含有量に対して影響する。また本発明の遠赤外線放射物質は茶水の抗酸化能力に対して影響する。
すなわち、抽出溶剤中の植物の有効成分含有量が増加する。また液体中における植物の有効成分含有量を増加する。さらに、液体中における植物の有効成分含有量を増加する組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明により提供される、抽出溶剤中の植物の有効成分含有量を増加する方法は、遠赤外線放射物質で該溶剤を処理するステップと該溶剤で該植物の有効成分を抽出して該溶剤中における該植物有効成分含有量を増加するステップとを備えてなる。
一つの態様によれば該遠赤外線放射物質で該溶剤を処理するステップは常温下で進行される。
また一つの態様によれば該方法は更に降温ステップを備えてなる。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質の主要成分は酸化鉱物である。
また一つの態様によれば該酸化鉱物は60〜95wt%の酸化アルミニウムを包含してなる。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質より放射された遠赤外線の4〜16μm波長における放射係数は0.9以上である。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質は1〜20wt%の酸化鉄を包含してなる。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質は1〜10wt%の酸化マグネシウムを包含してなる。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質は1〜30wt%の炭酸カルシウムを包含してなる。
また一つの態様によれば該溶剤は水、又は有機溶剤である。
また一つの態様によれば該植物は茶葉又は漢方薬である。
また一つの態様によれば該有効成分は抗酸化成分である。
【0010】
本発明の次の目的は液体中における植物の有効成分含有量を増加する方法を提供することにあり、当該方法は遠赤外線放射物質で該液体を処理するステップと、該植物を該液体中に浸漬して該植物の有効成分を液体中に溶出させるステップとを備えてなる。
一つの態様によれば該遠赤外線放射物質で該液体を処理するステップは常温下で進行される。
一つの態様によれば上記方法は更に加熱ステップ及び/又は濃縮ステップを備えてなる。
一つの態様によれば該遠赤外線放射物質の主要成分は酸化鉱物である。
また一つの態様によれば該酸化鉱物は60〜95wt%の酸化アルミニウムを包含してなる。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質より放射された遠赤外線の4〜16μm波長における放射係数は0.9以上である。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質は1〜10wt%の酸化マグネシウムを包含してなる。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質は1〜30wt%の炭酸カルシウムを包含してなる。
また一つの態様によれば該液体は水である。
また一つの態様によれば該植物は茶葉又は漢方薬である。
また一つの態様によれば該有効成分は抗酸化成分である。
【0011】
本発明のまた次の目的は液体中における植物の有効成分含有量を増加する組成物を提供することにある。当該組成物は主要成分が酸化鉱物である遠赤外線放射物質を包含してなり、当該組成物は該遠赤外線放射物質より放射された遠赤外線を介して該液体中の該植物の有効成分含有量が増加するのを促進する。
一つの態様によれば該遠赤外線放射物質は常温下で遠赤外線を放射する。
また一つの態様によれば該遠赤外線放射物質より放射された遠赤外線の4〜16μm波長における放射係数は0.9以上である。
また一つの態様によれば該酸化鉱物は60〜95wt%の酸化アルミニウムを包含してなる。
また一つの態様によれば該酸化鉱物は1〜20wt%の酸化鉄を包含してなる。
また一つの態様によれば該酸化鉱物は1〜10wt%の酸化鉄を包含してなる。
また一つの態様によれば該酸化鉱物は1〜30wt%の炭酸カルシウムを包含してなる。
また一つの態様によれば該液体は水である。
また一つの態様によれば該植物は茶葉又は漢方薬である。
また一つの態様によれば該有効成分は抗酸化成分である。
【産業上の利用可能性】
【0012】
漢方、香料等の植物の有効成分の溶出を増加する方法を提供して、従来の技術である化学合成方法を利用して植物有効成分を製造する場合に存在している高コスト、フロープロセスの複雑さが解決される。
以下好適な実施例により添付図を参照しながら本発明の技術手段をより具体的説明する。
【実施例1】
【0013】
本実施例中の遠赤外線放射物質の原料は儀器科学技術研究センターと台北医学大学とが共同して開発した高効能遠赤外線陶磁粉末であり、その生物効能は既に多項実験を通して相当効果を有していることが証明されている。その成分は数種の天然鉱物成分により組成され、60〜95wt%の酸化アルミニウム、1〜20wt%の酸化鉄、1〜10wt%の酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムを包含している。その他成分はなお二酸化チタン、硼化チタン又はより多い天然鉱物を包含することがあり、例えば酸化シリコン、水酸化亜鉛及び炭化物等を含むことがある。黒体を標準として遠赤外線スペクトグラフで計測すると該遠赤外線放射物質は生命光線波長範囲が6〜14ミクロメータ(μm)の区間において平均0.98以上の放射率を有する。且つ、アメリカAATCC100標準方法に基づいて減菌率をテストすれば、該放射された遠赤外線は金黄色葡萄球菌及び大腸桿菌に対していずれも99.9%以上の抑菌効果を有する。
【0014】
上記の遠赤外線放射物質で抽出用水を約20時間処理した。該処理は遠赤外線放射物質を水と直接接触しなくても処理の効果を達成することができ、そして処理の時間が長ければ長い程効果が良いけれども20時間の処理で十分に差異性を見ることができる。漢薬材を処理後の水中に入れて加熱して蒸煮(抽出)し、漢薬材の種類に応じて蒸煮時間を調整する。しかる後、渣滓を除去しえて汁を起こせば、該漢薬材の湯剤(抽出物)となり、湯剤中には漢薬材の各種の有効成分が含まれている。遠赤外線放射物質は予め処理水の作用で湯剤中の漢薬材の有効成分を増加させて固定量の漢薬材にその最大有効成分の溶出効果を発揮させる。
【0015】
本発明は特に高貴な滋養薬剤、例えば亀板dendrobium manileに適用され本来は3回煎じてから薬材中の有効成分をはじめて煎出すことができたが遠赤外線を通して処理した水はこれら有効成分の溶解度を向上して煎煮時間、回数を短縮減少させることができる。
他には本発明は特に長時間煎ずる必要のある薬材、例えばeretmochelys squamosa真珠母等を適用している。その重要な有効成分は常に組織の隙間に分布され、溶出が容易でなかったが本発明の方法を利用すれば比較的短時間内で等量の有効成分を取得することができる。
上記湯剤は一歩進んで濃縮して濃縮剤、又は適当かつ適量の賦形剤を添加して粉形に形成し、ひいては携帯に便利な服用の錠剤又はカプセルに製造される。他には、上記湯剤の製造方法を利用して漢方薬の植物性農薬または植物性殺虫剤及び殺菌剤を製造することにより植物病虫害を防除することができる。
【実施例2】
【0016】
本実施例中の遠赤外線放射物質の性質、例えば成分及び効果等はいずれも実施例1と同一であるからここではその説明を省略する。
一部の植物有効成分は有機溶剤で抽出してからはじめて比較的よい抽出効果を得ることができ、本発明の方法は同様にこれら植物有効成分の取得に適用される。
本実施例は上記の遠赤外線放射物質を利用して有機溶剤を約20時間処理し、摩碎した植物材料を有機溶剤抽出法で抽出して植物材料の抽出物を得た。抽出後状況に応じて再度分離純化ステップを進行して該食物材料の有効成分を取得する。有機溶剤の抽出方法は回流抽出法及び連続抽出法を包含するが、両方法はいずれも本発明の方法に適用される。
【実施例3】
【0017】
本実施例中の遠赤外線放射物質の性質例えば成分及び効果等はいずれも実施例1と同一であるからここではその説明を省略する。
本実施例は上記の遠赤外線放射物質を利用して3種の水源、即ち抵抗値が18.2MΩの超純水(dd water)、逆浸透水(RO water)及び上水(top water)を利用した。この三種の水源はいずれも遠心管中に置かれ、それを上記遠赤外線放射物質中に差し込んで20時間処理した。等量の茶葉を処理した後の三種の水中に10分間入れて実験組とし、等量の茶葉を予め処理しなかった三種の水中に10分間入れて対照組とし、該実験組及び対照組が放射した総ポリフェノール及びその抗酸化能力を比較した。
【0018】
図1は本発明の遠赤外線放射物質が茶水中のポリフェノール含有量に対して影響する棒グラフである。総ポリフェノールの測定は総ポリフェノール呈色定量Gutfinger方法とFolin−Ciocalteu試剤とにより測定される。図に示すように、対照組に対応して遠赤外線放射物質で予め超純水、逆浸透水及び上水を処理すれば、その茶水中の総ポリフェノール含有量をそれぞれ約10.5%、約12.4%及び約37.20%増加する(表1参照)。
【0019】
【表1】

【0020】
その中、遠赤外線放射物質は上水に対して影響が最大である(表2参照)。
図2は本発明の遠赤外線放射物質が茶水の抗酸化能力に対して影響する棒グラフである。茶水の抗酸化力はDMPDフリーラジカル消滅分析法を利用して評価される。該方法は一定量のフリーラジカルを給与し、添加の茶飲抗酸化程度が良ければよいほど消滅のフリーラジカルもますます多くなり、フリーラジカルの抑制百分比がますます高くなる。図中に示すように、遠赤外線放射物質の処理は三種の茶水に対していずれもその抗酸化能力を向上しており、その増幅は7.10%から13.99%の間にあり、その中、上水に対する影響が最大である(表2参照)。
【0021】
【表2】

【0022】
上記の図2から分かるように遠赤外線放射物質は上水に対して顕著な影響があり、室温下において水分子を影響することにより、茶水中の茶ポリフェノール等のポリフェノール類含有量を増加させると共に、茶水の抗酸化成分及び能力を向上させる。本実施例中の遠赤外線放射物質は常温下で水を処理し、冷煎茶水を製造するが、もし処理後の水を先に加熱して煎茶しても、やはり本実施例中の効果に達することができる。
【0023】
上記の三実施例はいずれも溶剤抽出法を利用して植物の有効成分を得る実例であり、その差別は実施例1が煎煮法、実施例2が有機溶剤抽出法そして実施例3が浸漬法を用いたことにある。
【0024】
溶剤抽出法は植物中の各種成分が溶剤中における溶解性質に基づき有効成分に対して溶解度が大きく溶出を必要としない成分に対して溶解度が小さい溶剤を選用して、有効成分を植物組織内から溶解し出す方法である。植物の有効成分を抽出する方法はなお水蒸気蒸留法があり水蒸気の蒸留につれて破壊されない漢草薬成分、例えば一部の小分子生物アルカリ等の抽出に適用される。この方法は水の加熱前において先に遠赤外線放射物質で水を処理することもできる。その他、植物の有効成分を抽出する方法ないしはその後一歩進んだ分離及び純化の方法は、植物有効成分を溶剤中に溶解するステップを必要とするものであれば、いずれも先ず本発明の遠赤外線放射物質で予め該溶剤を処理して溶剤中の有効成分含有量を向上する目的を達成することができる。
【0025】
本発明により採用された遠赤外線放射物質の成分由来は天然鉱物成分であり、測定器で測定したところ圧電位性マイナス・イオンの放出があるばかりで、遊離輻射は測定されなかった。現在、遊離輻射はまだ普遍的に遺伝子突然変異(Genemutation)及び癌の危険性があると認められており、そして多くの遠赤外線製品は製品中に遠赤外線の放射係数を向上するために過量の希土類元素が添加され、使用者を過量な遊離輻射中に暴露させてしまっているのに、これは自覚されていない。本発明は非常に高い遠赤外線放射係数を有しているばかりではなく、遊離輻射の憂いもない。したがって本発明の応用製品、特に人体と接触又は人体摂取食品水分と関係する製品はいずれも十分健康安全である。
【0026】
以上、説明したものは本発明の好適な実施例に過ぎず本発明の技術的思想はこれに限定させるものではなく添付クレームの範囲を逸脱しない限り当業者による単純な設計変更、付加、修飾、置換はいずれも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の遠赤外線放射物質が茶水中の総ポリフェノール含有量に対して影響することを示す棒グラフの図である。
【図2】本発明の遠赤外線放射物質が茶水の抗酸化能力に対して影響することを示す棒グラフの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出溶剤中の植物の有効成分含有量を増加する方法であって、遠赤外線放射物質で前記溶剤を処理するステップと、
前記溶剤で前記植物の有効成分を抽出して該溶剤中における前記植物有効成分含有量を増加するステップと
を備えてなる方法。
【請求項2】
前記遠赤外線放射物質で前記溶剤を処理するステップは常温下で進行させ、及び/又は
上記方法は更に降温ステップを備えてなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記遠赤外線放射物質の主要成分は酸化鉱物であり、
前記酸化鉱物は60〜95%の酸化アルミニウムを包含してなり
前記遠赤外線放射物質より放射された遠赤外線4〜16μm波長における放射係数は0.9以上であり、
前記遠赤外線放射物質は1〜20wt%の酸化鉄を包含してなり
前記遠赤外線放射物質は1〜10wt%の酸化マグネシウムを包含してなり、及び/又は
前記遠赤外線放射物質は1〜30wt%の炭酸カルシウムを包含してなる
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記溶剤は水又は有機溶剤であり、及び/又は
前記植物は茶葉又は漢方薬である
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記有効成分は抗酸化成分である請求項1記載の方法。
【請求項6】
液体中の植物有効成分含有量を増加する方法であって
遠赤外線放射物質で前記液体を処理するステップと
前記植物を前記液体中に浸漬して該植物の有効成分を該液体中に溶出させるステップと
を備えてなる方法。
【請求項7】
前記方法は更に加熱ステップ及び/又は濃縮ステップを備えてなる請求項6記載の方法。
【請求項8】
液体中における植物の有効成分含有量を増加する組成物であって
主要成分が酸化鉱物である遠赤外線放射物質を包含してなる前記組成物は該遠赤外線放射物質より放射された遠赤外線を介して前記液体中の前記植物の有効成分含有量が増加するのを促進する組成物。
【請求項9】
前記遠赤外線放射物質は常温下で遠赤外線を放射する請求項8記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−308483(P2008−308483A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332173(P2007−332173)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(507420950)財團法人國家実驗研究院 (3)
【出願人】(507420961)台北医學大學 (2)
【Fターム(参考)】