説明

抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法

【課題】従来の機能を損なうことなく、タービン抽気およびタービン排気の背圧の有効活用を維持しつつ風損を効果的に抑制する抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備は、抽気背圧蒸気タービン100と、この抽気背圧蒸気タービン100に第1の蒸気ヘッダ109を介して蒸気を供給する蒸気発生器107と、前記抽気背圧蒸気タービン100からの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダ111,112からなる抽気背圧蒸気タービン設備において、前記抽気背圧蒸気タービン100のタービン最終段落が風損による過加熱になったとき、低温の蒸気を供給する手段109,117,111,128を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンロータ(回転軸)の回転中、タービンケーシング内が風損によって過加熱状態になることを効果的に抑制する抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抽気背圧蒸気タービンは、タービン中間段落から蒸気を抽出(抽気)し、抽出した蒸気およびタービン段落で膨張仕事を終えたタービン排気のそれぞれを工場等におけるプロセス用蒸気として利用するタービンである。
【0003】
この抽気背圧蒸気タービンには、例えばコンバインドサイクル発電プラントと組み合わせた造水プラントのプロセス用蒸気として使用することがあり、その構成として図9に示すものがある。
【0004】
コンバインドサイクル発電プラント1は、空気圧縮機2、ガスタービン燃焼器3、ガスタービン4、発電機5、蒸気発生器(排熱回収ボイラ)6を備え、空気圧縮機2で大気(空気)を吸い込んで圧縮し、圧縮した高圧空気を燃料弁7からの燃料とともにガスタービン燃焼器3に供給し、ここで燃焼ガスを生成し、生成した燃焼ガスをガスタービン4で膨張仕事をさせ、その際に発生する動力(回転トルク)で発電機5を駆動するとともに、膨張仕事を終えたガスタービン排ガス(排熱)を蒸気発生器6に熱源として供給し、復水給水系統(図示せず)からの給水を熱交換して蒸気を発生させている。
【0005】
また、コンバインドサイクル発電プラント1の蒸気発生器6は、第1の蒸気ヘッダ8、発電機9に軸直結する抽気背圧蒸気タービン10、第2の蒸気ヘッダ11、低圧蒸気ヘッダ12を介して使用する蒸気圧力の異なる、例えば造水プラントA13a、造水プラントB13bのそれぞれに接続し、発生した蒸気を高圧ヘッダ入口弁14を介装した蒸気供給管15を経て第1の蒸気ヘッダ8に一旦集められ、ここから中圧バイパス弁16を介装した中圧バイパス管17を経て第2の蒸気ヘッダ11と低圧バイパス弁19を介装した低圧バイパス管20とのそれぞれに供給している。
【0006】
一方、抽気背圧蒸気タービン10は、第1の蒸気ヘッダ8から途中で主蒸気弁21を備えた主蒸気管22を経て供給された蒸気に膨張仕事をさせ、その際に発生する動力(回転トルク)で発電機9を駆動し、膨張仕事を終えたタービン排気を途中に排気弁23を備えた排気管24を経て低圧蒸気ヘッダ12に供給している。
【0007】
また、抽気背圧蒸気タービン10は、タービン中間段落から抽出(抽気)した蒸気を、途中に抽気弁25を備えた抽気管26を経て第2の蒸気ヘッダ11に供給している。
【0008】
このようにして、第2の蒸気ヘッダ11および低圧蒸気ヘッダ12のそれぞれに集められた蒸気のうち、比較的圧力の高い蒸気は、途中に中圧蒸気送気弁27を備えた中圧蒸気送気管28を経て造水プラントA13aに供給され、また比較的圧力の低い蒸気は、途中に低圧蒸気送気弁29を備えた低圧蒸気送気管30を経て造水プラントB13bに供給され、造水プラントA13aおよび造水プラントB13bのそれぞれで海洋等から採取した水を飲料水や緑化用水等に生成される。
【0009】
ところで、造水プラントに限らず、例えば、パルプ等のプロセス蒸気供給用として適用される抽気背圧蒸気タービン10は、タービン段落で膨張仕事を終えたタービン排気の背圧をプロセスプラント用として有効に活用するものであるから、排気段(タービン最終段落)を真空にさせていない。
【0010】
このため、抽気背圧蒸気タービン10は、無負荷運転時、あるいは低負荷運転時、回転するタービン動翼と蒸気との間に回転摩擦による風損が生じ、この風損によってタービンケーシング内の温度が上昇する。タービンケーシング内の温度上昇によって、タービン部品は過加熱状態になり、局所的に過度な熱応力が発生し、許容限界を超えることがあった。
【0011】
従来、復水タービンでは、排気段に連通する復水器を真空にし、タービン排気をより一層多量に凝縮させて復水を生成しているが、それでも低負荷運転時等において、風損が発生し、タービン部品を過加熱させることがあった。
【0012】
このため、復水タービンであっても、例えば、特開昭56−107905号公報(特許文献1)に見られるように、高圧タービンバイパス系を利用し、高圧タービンバイパス系からの蒸気を高圧タービンの出口側から高圧タービンの入口側に向って逆流させ、風損によるタービン部品の過加熱を抑制していた。
【特許文献1】特開昭56−107905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に開示されているように、排気段を真空に維持させる復水タービンであっても、蒸気量の少ない低負荷運転時等において、風損が発生し、その対策が講じられているだけに、抽気背圧蒸気タービンも風損に対する何らの対策を講じ、タービン部品の強度を高く維持させ、安定した運転の確保が必要とされていた。
【0014】
その際、抽気背圧蒸気タービンは、従来のように、タービン排気の熱を奪う復水器を設けることなくタービン排気の背圧を有効に活用できる状態を維持させたまま、風損を抑制させる対策が求められている。
【0015】
本発明は、このような背景技術に照らしてなされたもので、従来の機能を損なうことなく、タービン抽気およびタービン排気の背圧の有効活用を維持しつつ風損を効果的に抑制する抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、抽気背圧蒸気タービンと、この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給する蒸気発生器と、前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる抽気背圧蒸気タービン設備において、前記抽気背圧蒸気タービンのタービン最終段落が風損による過加熱になったとき、低温の蒸気を供給する手段を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備は、上述の目的を達成するために、請求項2に記載したように、低温の蒸気を供給する手段は、減温器であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備は、上述の目的を達成するために、請求項3に記載したように、減温器は、第1の蒸気ヘッダと抽気背圧蒸気タービンとの間に設置したものである。
【0019】
また、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備は、上述の目的を達成するために、請求項4に記載したように、減温器は、前記蒸気発生器と第1の蒸気ヘッダとの間に設置したものである。
【0020】
また、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備は、上述の目的を達成するために、請求項5に記載したように、抽気背圧蒸気タービンと、この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給する蒸気発生器と、前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる抽気背圧蒸気タービン設備において、前記抽気背圧蒸気タービンに温度検出器を設け、この温度検出器からの信号に基づいて前記蒸気発生器からの蒸気温度を調節する制御装置を備えたものである。
【0021】
また、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備は、上述の目的を達成するために、請求項6に記載したように、抽気背圧蒸気タービンと、この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給するボイラと、前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる抽気背圧蒸気タービン設備において、前記抽気背圧蒸気タービンに温度検出器を設け、この温度検出器からの信号に基づいて前記ボイラに燃料供給する燃料弁に弁開閉信号を与える制御装置を備えたものである。
【0022】
また、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備は、上述の目的を達成するために、請求項7に記載したように、抽気背圧蒸気タービンと、この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給する蒸気発生器と、前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる抽気背圧蒸気タービン設備において、前記抽気背圧蒸気タービンに温度検出器と圧力検出器を設け、予め求められた前記抽気背圧蒸気タービン内の圧力と風損による温度上昇との関係と前記抽気背圧蒸気タービンが許容可能な温度上限値とを格納するとともに、前記各検出器からの信号が入力される制御装置とを設け、前記温度検出器からの温度もしくは前記圧力検出器からの圧力から演算される温度に基づいて前記蒸気発生器からの蒸気温度を調節するものである。
【0023】
また、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備の運転方法は、上述の目的を達成するために、請求項8に記載したように、抽気背圧蒸気タービンと、この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給する蒸気発生器と、前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる抽気背圧蒸気タービン設備において、前記第1の蒸気ヘッダに送られた蒸気を、第2の蒸気ヘッダとこの第2の蒸気ヘッダに接続する抽気管を介して前記抽気背圧蒸気タービンに逆流させる方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法は、抽気運転前までの間に、風損によるタービン最終段落のタービン部品が過加熱になることを抑制するため、抽気背圧蒸気タービンに比較的温度の低い蒸気を供給する手段を備えたので、タービン部品の温度上昇を迅速かつ確実に抑制でき、抽気背圧蒸気タービンの安定運転を長く維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の実施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明する。
【0026】
なお、図1ないし図6において、蒸気発生器107の熱源としてガスタービンプラントを用いたものを例示するが、本発明はこれに限定されるものではなく、蒸気発生器の容量に見合う熱を供給できるものであれば特に形式を問わないのであり、原子炉からの熱や、各種ボイラからの熱、地熱や太陽光の集熱、等であっても良い。
【0027】
同様に、プロセス側プラントとして造水プラントを設置したものを例示するが、これに限定されるものではなく、極く一般的な製造工場、石油化学プラント、等であっても良い。
【0028】
図1は、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第1実施形態を示す概略系統図である。
【0029】
本発明に係る抽気背圧蒸気タービン100は、例示としてコンバインドサイクル発電プラント101と造水プラント102を組み合わせる構成にしている。
【0030】
コンバインドサイクル発電プラント101は、空気圧縮機103、ガスタービン燃焼器104、ガスタービン105、発電機106、蒸気発生器(排熱回収ボイラ)107を備え、空気圧縮機103で大気(空気)を吸い込んで圧縮し、圧縮した高圧空気を燃料弁108からの燃料とともにガスタービン燃焼器104に供給し、ここで燃焼ガスを生成し、生成した燃焼ガスをガスタービン105で膨張仕事をさせ、その際に発生する動力(回転トルク)で発電機106を駆動するとともに、膨張仕事を終えたガスタービン排ガス(排熱)を蒸気発生器107に熱源として供給し、給水を熱交換して蒸気を発生させている。
【0031】
また、コンバインドサイクル発電プラント101の蒸気発生器107は、第1の蒸気ヘッダ109、発電機110に軸直結する抽気背圧蒸気タービン100、抽・排気蒸気ヘッダとして第2の蒸気ヘッダ111、低圧蒸気ヘッダ112を介して使用する蒸気圧力の異なるプロセス側プラント、例えば、造水プラントA102a、造水プラントB102bのそれぞれに接続し、発生した蒸気を高圧ヘッダ入口弁113を介装した蒸気供給管114を経て第1の蒸気ヘッダ109に送られ、ここから中圧バイパス弁116を介装した中圧バイパス管117を経て第2の蒸気ヘッダ111と低圧バイパス弁118を介装した低圧バイパス管119とのそれぞれに供給している。
【0032】
一方、抽気背圧蒸気タービン100は、第1の蒸気ヘッダ109から途中に主蒸気弁115を備えた主蒸気管120を経て供給された蒸気に膨張仕事をさせ、その際に発生する動力(回転トルク)で発電機110を駆動し、膨張仕事を終えたタービン排気を途中に排気弁121を備えた排気管122を経て低圧蒸気ヘッダ112に供給している。
【0033】
また、抽気背圧蒸気タービン100は、タービン中間段落から抽気したタービン抽気を第2の蒸気ヘッダ111に供給し、途中に抽気弁127を備えた抽気管128を設けている。そして、第1の蒸気ヘッダ109に集められた比較的圧力の高い蒸気は、中圧蒸気送気弁123、中圧蒸気送気管124を介して造水プラントA102aに供給され、また、低圧蒸気ヘッダ112に集められた比較的圧力の低い蒸気は、低圧蒸気送気弁125、低圧蒸気送気管126を介して造水プラントB102bにそれぞれ供給される。
【0034】
このような構成を備えた抽気背圧蒸気タービン設備の運転方法を説明する。
【0035】
上述したように、無負荷運転時または低負荷運転時で、かつ抽気運転前に抽気背圧蒸気タービン100は、蒸気量が少ないため、タービン動翼の回転中、タービンケーシング内の空気の撹拌による風損が発生し、タービン部品が過加熱される。
【0036】
このため、本実施形態では、無負荷または低負荷運転時の抽気運転前、中圧蒸気送気管124の中圧蒸気送気弁123を閉弁させ、中圧バイパス管117の中圧バイパス弁116、抽気管128の抽気弁127、排気管122の排気弁121、主蒸気管120の主蒸気弁115のそれぞれを開弁させ、主蒸気管120から抽気背圧蒸気タービン100に供給される蒸気に、第1の蒸気ヘッダ109から中圧バイパス管117の中圧バイパス弁116、第2の蒸気ヘッダ111、抽気管128の抽気弁127を介して供給される蒸気を合流させる。
【0037】
この合流により、主蒸気管120から抽気背圧蒸気タービン100に供給された蒸気は温度を低下させ、抽気背圧蒸気タービン100のタービン最終段落(排気段)の温度上昇を抑制させる。
【0038】
このように、本実施形態は、抽気背圧蒸気タービンの抽気運転前の無負荷または低負荷運転時、既設の抽気管128を利用し、中圧バイパス管117から第2の蒸気ヘッダ111に供給される蒸気を、矢印Eに示すように逆流させて抽気背圧蒸気タービンに供給し、主蒸気管120から抽気背圧蒸気タービンに供給される蒸気と合流させて蒸気温度を低下させるので、抽気背圧蒸気タービン100のタービン最終段落(排気段)におけるタービン部品の温度上昇を簡易な手段によって容易かつ確実に抑制することができ、抽気背圧蒸気タービンの安定運転を長く維持させることができる。
【0039】
図2は、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第2実施形態を示す概略系統図である。なお、第1実施形態の構成要素と同一構成要素には、同一符号を付す。
【0040】
本実施形態に係る抽気背圧蒸気タービン100は、第1の蒸気ヘッダ109からの蒸気に膨張仕事をさせる際、その蒸気を供給する主蒸気管120に減温器129を設けたものである。
【0041】
このように、本実施形態は、第1の蒸気ヘッダ109に抽気背圧蒸気タービン100を接続させる主蒸気管120に減温器129を設け、第1の蒸気ヘッダ109から抽気背圧蒸気タービン100に供給される比較的高温の蒸気を減温させる構成にしたので、抽気背圧蒸気タービンの最終段落(排気段)におけるタービン部品の温度上昇を簡易手段によって容易かつ確実に抑制することができ、抽気背圧蒸気タービンの安定運転を長く維持させることができる。
【0042】
なお、本実施形態は、第1の蒸気ヘッダ109に抽気背圧蒸気タービン100を接続させる主蒸気管120に減温器129を設けたが、この例に限らず、例えば、図3に示すように、蒸気発生器107に第1の蒸気ヘッダ109を接続させる蒸気供給管114に減温器109を設けてもよい。抽気背圧蒸気タービン100に、直に、低温蒸気を供給できる点で有効である。
【0043】
図4は、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第4実施形態を示す概略系統図である。なお、第1実施形態の構成要素と同一構成要素には同一符号を付す。
【0044】
本実施形態に係る抽気背圧蒸気タービン100は、タービン最終段落(排気段)の出口側に温度検出器130を設けるとともに、この温度検出器130で検出した温度信号が予め定められた温度を超えたとき、弁開閉信号を演算し、その演算信号をガスタービン燃焼器104の燃料弁108に与えて燃料弁108を制御する制御装置131を設けたものである。
【0045】
このように、本実施形態は、抽気背圧蒸気タービン100のタービン最終段落(排気段)の出口側に温度検出器130を設けるとともに、抽気運転を開始する前の無負荷または低負荷時、温度検出器130からの検出温度信号が予め定められた設定値を超えたとき、弁開閉信号を演算し、その演算信号を燃料弁108に与えて燃料弁108を制御する制御装置131を設け、燃料弁108からガスタービン燃焼器104に供給する燃料を調整し、ガスタービン105から蒸気発生器107に供給する排ガス(排熱)の温度調整に基づいて蒸気発生器107からの蒸気の温度を調整する構成にしたので、抽気背圧蒸気タービンの最終段落(排気段)におけるタービン部品の温度上昇を容易かつ確実に抑制することができ、抽気背圧蒸気タービンの安定運転を長く維持させることができる。
【0046】
なお、本実施形態は、抽気背圧蒸気タービン100にコンバインドサイクル発電プラント101と造水プラント102を組み合わせ、抽気背圧蒸気タービン100のタービン最終段落(排気段)の温度が予め定められた設定値を超えたとき、ガスタービン燃焼器104に燃料を供給する燃料弁108の弁開度を調整する制御装置131を設けたが、この例に限らず、例えば、図5に示すように、自家発電用の汽力発電所134、具体的には、ボイラ132に燃料を供給する燃料弁133の弁開度を調整し、抽気背圧蒸気タービン100のタービン最終段落(排気段)における温度上昇を抑制する際、上述の温度検出器130および制御装置131を適用してもよい。
【0047】
図6は、本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第6実施形態を示す概略系統図である。なお、第1実施形態の構成要素と同一構成要素には同一符号を付す。
【0048】
本実施形態に係る抽気背圧蒸気タービン100は、タービン最終段落(排気段)の温度が急激に上昇したときでも、ガスタービン燃焼器104に燃料を供給する燃料弁108を先行的に弁開閉制御できるように制御装置136を設けたものである。
【0049】
従来の抽気背圧蒸気タービン100では、タービン最終段落(排気段)の温度が急激に上昇しても、信号の遅れ等があってガスタービン燃焼器104に燃料を供給する燃料弁108の弁開度を迅速かつ適正に調整することが難しかった。
【0050】
本実施形態は、このような事情を考慮したもので、抽気背圧蒸気タービン100に温度検出器130と圧力検出器135を設けるとともに、予め抽気背圧蒸気タービン100の風損による過加熱許容温度値とともに、抽気背圧蒸気タービン100の最終段の圧力とその圧力での風損による温度上昇との関係を求めてテーブル(表)として格納した制御装置136を設け、この制御装置136からの制御信号により蒸気発生器107の温度制御を行うものである。
【0051】
具体的には、温度検出器130からの温度が過加熱許容温度値を超えた場合、もしくは、圧力検出器135からの圧力値により前記制御装置135に格納されたテーブル値に基づいて算出された温度値が過加熱許容温度値を超えた場合に、この制御装置135からガスタービン燃焼器104の燃料弁108を絞る制御信号を送ることによって、ガスタービン105からの燃焼ガスの温度を低下させて、蒸気発生器107の蒸気温度を低下させることができる。
【0052】
このような構成により、ガスタービン燃焼器104で生成される燃料ガスの温度を低下させて蒸気発生器107に供給されるので、蒸気発生器107では温度の低い蒸気が抽気背圧蒸気タービン100に供給されるため、抽気背圧蒸気タービン100のタービン最終段(排気段)における温度上昇を抑制することができる。また、温度値のみならず圧力値を用いて制御するために、より精度良く温度の管理が行える。
【0053】
また、ある一定時間に対する温度および圧力の履歴を制御装置135に格納し、これらの履歴値から微分値を求めることにより、温度あるいは圧力のトレンドを求めても良く、このような構成を追加することにより、さらに精度が高く、迅速な温度制御が行える。
【0054】
なお、抽気背圧蒸気タービン100の最終段落(排気段)におけるタービン部品の冷却の際、冷却用の蒸気を、図7に示すように、タービン回転数ゼロから定格まで徐々に連続的に低下させ、ここから、例えば抽気運転前までにゼロにしてもよく、また、図8に示すように、階段状に低下させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第1実施形態を示す概略系統図。
【図2】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第2実施形態を示す概略系統図。
【図3】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第3実施形態を示す概略系統図。
【図4】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第4実施形態を示す概略系統図。
【図5】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第5実施形態を示す概略系統図。
【図6】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法の第6実施形態を示す概略系統図。
【図7】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法において、タービン最終段落に冷却用の蒸気を供給する際、冷却用の蒸気を連続的に低下させることを示す線図。
【図8】本発明に係る抽気背圧蒸気タービン設備およびその運転方法において、タービン最終段落に冷却用の蒸気を供給する際、冷却用の蒸気を階段状に低下させることを示す線図。
【図9】従来の抽気背圧蒸気タービン設備を示す概略系統図。
【符号の説明】
【0056】
1 コンバインドサイクル発電プラント
2 空気圧縮機
3 ガスタービン燃焼器
4 ガスタービン
5 発電機
6 蒸気発生器
7 燃料弁
8 第1の蒸気ヘッダ
9 発電機
10 抽気背圧蒸気タービン
11 第2の蒸気ヘッダ
12 低圧蒸気ヘッダ
13a 造水プラントA
13b 造水プラントB
14 高圧ヘッダ入口弁
15 蒸気供給管
16 中圧バイパス弁
17 中圧バイパス管
19 低圧バイパス弁
20 低圧バイパス管
21 主蒸気弁
22 主蒸気管
23 排気弁
24 排気管
25 抽気弁
26 抽気管
27 中圧蒸気送気弁
28 中圧蒸気送気管
100 抽気背圧蒸気タービン
101 コンバインドサイクル発電プラント
102 造水プラント
102a 造水プラントA
102b 造水プラントB
103 空気圧縮機
104 ガスタービン燃焼器
105 ガスタービン
106 発電機
107 蒸気発生器
108 燃料弁
109 第1の蒸気ヘッダ
110 発電機
111 第2の蒸気ヘッダ
112 低圧蒸気ヘッダ
113 高圧ヘッダ入口弁
114 蒸気供給管
115 主蒸気弁
116 中圧バイパス弁
117 中圧バイパス管
118 低圧バイパス弁
119 低圧バイパス管
120 主蒸気管
121 排気弁
122 排気管
123 中圧蒸気送気弁
124 中圧蒸気送気管
125 低圧蒸気送気弁
126 低圧蒸気送気管
127 抽気弁
128 抽気管
129 減温器
130 温度検出器
131 制御装置
132 ボイラ
133 燃料弁
134 汽力発電所
135 圧力検出器
136 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽気背圧蒸気タービンと、
この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給する蒸気発生器と、
前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる
抽気背圧蒸気タービン設備において、前記抽気背圧蒸気タービンのタービン最終段落が風損による過加熱になったとき、低温の蒸気を供給する手段を備えたことを特徴とする抽気背圧蒸気タービン設備。
【請求項2】
低温の蒸気を供給する手段は、減温器であることを特徴とする請求項1記載の抽気背圧蒸気タービン設備。
【請求項3】
減温器は、第1の蒸気ヘッダと抽気背圧蒸気タービンとの間に設置したことを特徴とする請求項2記載の抽気背圧蒸気タービン設備。
【請求項4】
減温器は、前記蒸気発生器と第1の蒸気ヘッダとの間に設置したことを特徴とする請求項2記載の抽気背圧蒸気タービン設備。
【請求項5】
抽気背圧蒸気タービンと、
この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給する蒸気発生器と、
前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる
抽気背圧蒸気タービン設備において、
前記抽気背圧蒸気タービンに温度検出器を設け、この温度検出器からの信号に基づいて前記蒸気発生器からの蒸気温度を調節する制御装置を備えたことを特徴とする抽気背圧蒸気タービン設備。
【請求項6】
抽気背圧蒸気タービンと、
この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給するボイラと、
前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる
抽気背圧蒸気タービン設備において、
前記抽気背圧蒸気タービンに温度検出器を設け、この温度検出器からの信号に基づいて前記ボイラに燃料供給する燃料弁に弁開閉信号を与える制御装置を備えたことを特徴とする抽気背圧蒸気タービン設備。
【請求項7】
抽気背圧蒸気タービンと、
この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給する蒸気発生器と、
前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる
抽気背圧蒸気タービン設備において、
前記抽気背圧蒸気タービンに温度検出器と圧力検出器を設け、
予め求められた前記抽気背圧蒸気タービン内の圧力と風損による温度上昇との関係と前記抽気背圧蒸気タービンが許容可能な温度上限値とを格納するとともに、前記各検出器からの信号が入力される制御装置とを設け、
前記温度検出器からの温度もしくは前記圧力検出器からの圧力から演算される温度に基づいて前記蒸気発生器からの蒸気温度を調節することを特徴とする抽気背圧蒸気タービン設備。
【請求項8】
抽気背圧蒸気タービンと、
この抽気背圧蒸気タービンに第1の蒸気ヘッダを介して蒸気を供給する蒸気発生器と、
前記抽気背圧蒸気タービンからの抽気蒸気または排気蒸気が供給される複数の抽排気蒸気ヘッダからなる
抽気背圧蒸気タービン設備において、
前記第1の蒸気ヘッダに送られた蒸気を、第2の蒸気ヘッダとこの第2の蒸気ヘッダに接続する抽気管を介して前記抽気背圧蒸気タービンに逆流させる
ことを特徴とする抽気背圧蒸気タービン設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−207558(P2006−207558A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24394(P2005−24394)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】