説明

担体としてのイオン性液体

【化1】


本発明によれば、(a)式(I)のハロゲン化されたビスイミン前駆体成分をつくり;(b)式(I)のハロゲン化されたビスイミン前駆体成分を溶媒の中でイオン性液体の前駆体と反応させてイオン性液体をつくり;(c)段階(b)でつくられたイオン性液体を式(II)LMY、但し式中Lは不安定な配位子、MはNiまたはPdから選ばれる金属であり、Yはハロゲンである、の金属錯体と反応させ;(d)イオン性液体に溶解した単一部位の触媒成分を回収する段階を含んで成ることを特徴とする担持された触媒成分を製造する方法が提供される。また本発明においては、イオン性液体に溶解された活性をもった触媒系、およびオレフィンの重合におけるその使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用の担持された触媒成分の製造に対するイオン性液体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン性液体は例えば特許文献1〜3のような文献に記載されている。これらの文献にはイオン性液体を製造する種々の方法およびイオン性液体の種々の用途が記載されている。これらの用途には、例えば非特許文献1に記載されているようなイオン性液体に溶解した種々のニッケルをベースにした前駆体を用いエテン、プロペン、またはブテンのオリゴマー化を行うことが含まれている。また同じ文献には、AlCl3−xを共触媒として使用してハロゲン化ジアルキルイミダゾリウム/ハロゲン化アンモニウム型のイオン性液体の中でZiegler−Natta型の重合を行い得ることが記載されている。
【0003】
他の用途としては例えば非特許文献2に記載されているように、室温またはそれ以下で液体であるイオン性液体を遷移金属を媒介とした触媒の溶媒として用いることが含まれる。二量体化またはオリゴマー化においては大部分の試みが成功しているが、重合についてはなお問題があり、特に単一部位の触媒成分を用いる場合にはそうである。
【0004】
従って、α−オレフィンの重合に活性をもったイオン性液体をベースにした新規単一部位の触媒成分の開発が必要とされている。
【特許文献1】米国特許−A−5,994,602号明細書。
【特許文献2】国際公開96/18459号パンフレット。
【特許文献3】国際公開01/81353号パンフレット。
【非特許文献1】Dupont,J.,de Souza R.F.,Suarez P.A.Z.,Chem.Rev.誌、,102巻,3667頁(2002年)。
【非特許文献2】Welton T.,Chem.Rev.誌、99巻,2071頁(1999年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、イオン性液体に担持された単一部位の触媒成分の製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、イオン性液体に担持された単一部位の触媒成分を提供することである。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、上記のような担持された単一部位の触媒成分を使用してα−オレフィンを重合させる方法を提供することである。
【0008】
さらに本発明の他の目的は、該新規触媒系を用いて新規重合体を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って本発明によれば、α−オレフィンを重合させるための担持された単一部位の触媒成分を製造する方法において、
(a)下記式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
のハロゲン化されたビスイミン前駆体成分をつくり:
(b)該ハロゲン化されたビスイミン前駆体成分を溶媒の中でイオン性液体の前駆体と反応させてイオン性液体をつくり;
(c)段階(b)で得られたイオン性液体を溶媒の中で式(II)
MY (II)、
但し式中Lは不安定な配位子であり、MはNiまたはPdから選ばれる金属であり、Yはハロゲンである、
の含金属前駆体と反応させ;
(d)担持された単一部位の触媒成分を回収する段階を含んで成る方法が提供される。
【0012】
ハロゲン化されたビスイミン前駆体は
− 式(III)
【0013】
【化2】

【0014】
但し式中各Arは同一または相異なり置換基をもったまたはもたないベンゼン環Bz−Rであることができ、ここでRは水素または炭素数1〜12のアルキル基であり、該ベンゼン環は好ましくは2位および6位に置換基をもっており、好適な置換基はメチル、エチル、イソプロピルである、
のビスイミンを、
− リチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムt−ブチレートと、−78〜−10℃、好ましくは約−30℃の温度において、30分〜3時間の間、好ましくは30分〜1時間の間反応させ、次いで
− 式IV
【0015】
【化3】

【0016】
但し式中Xはハロゲンであり、nは2〜12、好ましくは5〜8、さらに好ましくは6に等しい整数である、
の化合物と−78℃ないし最高−10℃の温度において反応させ、次に30分〜16時間、好ましくは約1時間の間に亙りゆっくりと室温(約25℃)に戻すことによって製造される。
【0017】
すべての反応は、標準的なSchlenk法またはグローブボックス法を用い、大気圧においてアルゴン下で行われる。
【0018】
得られるハロゲン化されたビスイミンは式Iによって表される。
【0019】
【化4】

【0020】
次に、ハロゲン化されたビスイミンをイオン性液体の前駆体、好ましくはN−アルキルイミダソールまたはピリジンと例えばテトラヒドロフラン(THF)、CHClまたはCHCNのような溶媒の中で、或いは溶媒を用いないで反応させる。
【0021】
イオン性液体の中で、陰イオンXはCl、Br、I、BF、PF、AsF、SbF、NOおよびNOから選ぶことができる。またXは式AlR4−zX”の化合物から選ぶことができる。ここでRは置換基をもったまたはもたない炭素数1〜12のアルキル、または置換基をもったまたはもたない炭素数5または6のシクロアルキル、置換基をもったまたはもたないヘテロアルキル、置換基をもったまたはもたないヘテロシクロアルキル、置換基をもったまたはもたない炭素数5または6のアリール、または置換基をもったまたはもたないヘテロアリール、またはアルコキシ、アリールオキシ、アシル、シリル、ボリル、フォスフィノ、アミノ、チオ、またはセレノから選ぶことができる。ここでX”はハロゲンであり、zは0〜4の整数である。イオン性液体の陽イオン部分は、イミダゾリウム、ピラゾリン、チアゾール、トリアゾール、ピロール、インドン、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピペラジンまたはピペリジンから選ばれる化合物をプロトン化またはアルキル化することによってつくることができる。
【0022】
好ましくは陰イオンXはBrまたはBFであり、陽イオン部分はイミダゾリウムまたはピリジニウムから誘導されることが好ましい。従ってイオン性液体の前駆体は好ましくはN−アルキルイミダソールまたはピリジンである。
【0023】
イオン性液体の前駆体がN−アルキルイミダゾリウムである場合、反応は50〜80℃、好ましくは60〜70℃において、1〜24時間、好ましくは4〜6時間に亙って行われる。得られる中間生成物は式Vのイオン対である。
【0024】
【化5】

【0025】
イオン性液体の前駆体がピリジニウムである場合、反応は20〜80℃、好ましくは50〜70℃において、1〜5日間、好ましくは3日間に亙って行われる。得られる中間生成物は式VIのイオン対である。
【0026】
【化6】

【0027】
次に中間生成物VまたはVIを式LMYの金属錯体と典型的にはCHCl、THF、またはCHCNから選択される溶媒の中で、室温(約25℃)において1〜24時間、好ましくは14〜18時間反応させる。得られる生成物はイオン性液体がN−アルキルイミダゾリウムの場合、式VII
【0028】
【化7】

【0029】
の担持された触媒成分を表すイオン対であり、イオン性液体がピリジニウムの場合式VIII
【0030】
【化8】

【0031】
の担持された触媒成分を表すイオン対である。ここでM、Ar、およびYは上記定義の通りである。
【0032】
金属錯体との反応を行う前に、随時中間生成物VIまたはVIIを塩Cと反応させることができる。ここでCはK、Na、NHから選ぶことができる陽イオンであり、AはPF、SbF、BF、(CF−SO、ClO、CFSO、NO、またはCFCOから選ぶことができる陰イオンである。この反応は典型的にはCHCl、THF、またはCHCNから選ばれる溶媒の中で、温度50〜80℃、好ましくは約60℃において6〜48時間、好ましくは16〜24時間の間行われる。
【0033】
次に前と同じようにして金属錯体との反応を行い、イオン性液体前駆体がN−アルキルイミダゾリウムの場合式IX
【0034】
【化9】

【0035】
の担持された触媒成分を表すイオン対が得られ、或いはイオン性液体前駆体がピリジニウムの場合式X
【0036】
【化10】

【0037】
の担持された触媒成分を表すイオン対が得られる。
【0038】
また本発明によれば、上記方法で得られるイオン性液体に担持された触媒成分が提供される。
【0039】
次に賦活剤を加えることにより活性をもった担持された触媒系が得られる。
【0040】
賦活剤はアルミノキサンまたはアルミニウムアルキル、または硼素をベースにした賦活剤から選ぶことができる。
【0041】
アルミニウムアルキルは式AlRのものであり、ここで各Rは同一または相異なり、ハロゲン、または炭素数1〜12のアルコキシまたはアルキルから選ばれ、xは1〜3である。特に適したアルミニウムアルキルは塩化ジアルキルアルミニウムであり、最も好適なものは塩化ジエチルアルミニウム(EtAlCl)である。
【0042】
好適なアルミノキサンは下記式によって表されるオリゴマー状の直鎖および/または環式のアルキルアルミノキサンを含んで成っている:
オリゴマーの直鎖アルミノキサンに対しては
【化11】

オリゴマーの環式アルミノキサンに対しては
【化12】

ここでnは1〜40、好ましくは10〜20、mは3〜40、好ましくは3〜20であり、RはC〜C−アルキル基、好ましくはメチルである。メチルアルミノキサン(MAO)が好適に使用される。
【0043】
適当な硼素をベースにした賦活剤は例えばヨーロッパ特許−A−0,427,696号明細書記載のテトラキス−ペンタフルオロフェニルボラートトリフェニルカルベニウム[C(Ph)B(C]のような硼酸トリフェニルカルベニウムを含んで成っていることができる。
【0044】
他の適当な硼素含有賦活剤はヨーロッパ特許−A−0,277,004号明細書に記載されている。
【0045】
賦活剤の量は、Al/Mの比が100〜1000になるような量である。
【0046】
さらに本発明によれば、α−オレフィンを単独重合または共重合させる方法において、
(a)イオン性液体に担持された触媒成分、無極性の溶媒、および賦活剤を反応器の中に注入し;
(b)単量体および随時共重合単量体を反応器の中に注入し;
(c)重合条件下に保ち;
(d)チップまたはブロックの形で重合体を回収する段階を含んで成る方法が提供される。
【0047】
この重合過程に対する温度および圧力の条件には特別の制限はない。
【0048】
反応器中の圧力は0.5〜50バール、好ましくは1〜20バール、最も好ましくは4〜10バールで変化し得る。
【0049】
重合温度は10〜100℃、好ましくは20〜50℃、最も好ましくは室温(約25℃)である。
【0050】
溶媒は無極性であり、典型的にはアルカン、好ましくはn−ヘプタンから選ばれる。
【0051】
反応は30分〜24時間の間で行われる。
【0052】
本発明に従って得られる重合体は典型的にはチップおよびブロックの混合物として得られ、この場合ブロックの量の方が優っている。チップは大きさが0.5〜5mmであり、ブロックの大きさは5mm〜5cm、好ましくは約1cmである。チップの量は典型的には重合体の全重量に関し25重量%未満、好ましくは15重量%未満である。
【0053】
本発明に使用できる単量体は炭素数3〜8のα−オレフィンおよびエチレン、好ましくはエチレンおよびプロピレンである。
【実施例】
【0054】
すべての反応は真空ライン上でアルゴン下において標準的なグローブボックス法およびSchlenk法を用いて行った。
【0055】
種々のイオン性液体を用いる担持された触媒成分の合成
ハロゲン化されたビスイミン(1)の合成
【0056】
【化13】

【0057】
リチウムジイソプロピルアミド(LDA)の予備的な溶液をつくるために、0.41mLのブチルリチウム(ヘキサン中1.6モル濃度)をイソプロピルアミンのTHF溶液0.101mL(0.72ミリモル)に温度−35℃において加えた。Schlenk管中においてアルゴン下で155mg(0.46ミリモル)のビスイミンを5mLのTHFに導入した後、温度−35℃に冷却した。次にLDAの溶液を温度−35℃において滴下して加え、反応混合物が赤色に変わるまで30分間撹拌した。この溶液を−35℃に冷却した0.184mL(1.19ミリモル)の1,6−ジブロモヘキサンの溶液に注入し、得られた混合物を−35℃において1時間撹拌し、次いで室温で16時間撹拌した。THFを蒸発させ、ペンタン5mLを加えて白色沈澱をつくった。これを濾過し、濾液を濃縮して黄色の油にした。シリカゲルのカラムを用い,溶出液としてペンタンからペンタン/トルエン(80/20)へと濃度勾配をつけた溶液を使用し、220mgの黄色の油を95%の収率で回収した。生成物に対してHおよび13C NMRの測定を行い次の結果を得た:
H NMR(200MHz,CDC1)δ:6.88(s,4),3.33(tr,2),2.53(q,2),2.49(tr,2),2.28(s,6),2.01(s,12),1.76(q,2),1.47(m,2),1.25(m,6),1.02(tr,3)。
【0058】
13C NMR(50MHz,CDC1)δ:172.22,171.07,145.82,132.25,128.66,124.62,33.81,32.72,29.71,29.06,28.23,27.66,26.41,22.34,20.71,18.17,11.20。
【0059】
ビスイミン(3)の合成
【0060】
【化14】

【0061】
ジクロロメタン40mLの溶液に、0.628mL(6ミリモル)の2,5−ペンタンジオンおよび5.86mL(42ミリモル)の2,4,6−トリメチルアニリンを加え、温度−20℃に冷却した。0.59mL(7.1ミリモル)のTiClの溶液を−20℃の温度で滴下して加え、反応混合物が赤色に変わるまで−20℃で30分間撹拌した。この混合物を室温に戻し、5日間撹拌した。ジクロロメタンを蒸発させ、120mLのジエチルエーテルを加えて沈澱をつくった。濾過した後、濾液を濃縮して褐色の固体にし、これを20mLのメタノールで洗滌して1.575gの黄色の粉末を78.5%の収率で得た。
【0062】
生成物に対してHおよび13C NMRの測定を行い次の結果を得た:
H NMR(200MHz,CDCl)δ:6.86(s,4),2.50(q,2),226(s,6),1.99(s,15),1.00(tr,3)。
【0063】
13C NMR(50MHz,CDCl)δ:172.73,145.67,132.41,128.64,124.55,22.21,20.77,17.95,16.36,11.44。
【0064】
イオン対(5)
【0065】
【化15】

【0066】
Schlenk管の中でアルゴン下において、5mLのTHFを導入した後、100mg(0.201ミリモル)のハロゲン化されたビスイミン(1)を加えた。次に0.032mL(0.402ミリモル)のN−メチルイミダゾールを加えた。反応媒質を66℃で5時間、次に室温で16時間還流させた。次いで真空下で濃縮して黄色の油にし、これを3回3mLのジエチルエーテルで洗滌して粉末を得た。この粉末を1mLのジクロロメタンに溶解し、次に25mLのペンタンで沈澱させた.この沈澱を濾過した後、真空下で蒸発させ、107mgの黄色の粉末を95%の収率で得た。
【0067】
生成物に対してHおよび13C NMRの測定を行い次の結果を得た:
H NMR(200MHz,CDCl)δ:10.56(s,1),7.22(tr,1),7.10(tr,1),6.68(s,4),4.20(tr,2),4.08(s,3),2.51(q,2),2.47(tr,2),2.39(s,6),1.99(s,12),1.80(m,2),1.43(m,2),1.20(m,6),1.00(tr,3)。
【0068】
13C NMR(50MHz,CDCl)δ:172.7,171.2,146.11,132.73,129.11,124.96,123.47,121.85,55.79,37.2,30.66,29.95,29.42,28.75,26.71,26.39,22.77,21.19,18.60,11.68。
【0069】
イオン対(6)
【0070】
【化16】

【0071】
Schlenk管の中でアルゴン下において、45mg(0.09ミリモル)のハロゲン化ビスイミン(1)を加えた後、2mLのピリジンを溶媒として加えた。この溶液を90℃で15時間撹拌した。次にピリジンを蒸発させ、残渣を5mLのジエチルエーテルで3回洗滌した。これを1mLのジクロロメタンに溶解し、次いで20mLのペンタンで沈澱させた。この沈澱を濾過して乾燥し、24mgの黄色の粉末を45%の収率で得た。
【0072】
生成物に対してH NMRの測定を行い次の結果を得た:
H NMR(200MHz,CDCl)δ:9.37(d,2),8.43(tr,1),8.03(tr,2),6.85(s,4),4.86(tr,2),2.48(q,2),2.40(tr,2),2.24(s,6),1.96(s,12),1.90(m,2),1.38(m,2),1.18(m,8).0.85(tr,3)。
【0073】
触媒(7)の合成
【0074】
【化17】

【0075】
Schlenk管の中でアルゴン下において、15mLのジクロロメタンを導入した後、30mg(0.052ミリモル)のイオン対(5)を加えた。次に14.3mg(0.046ミリモル)の(DME)NiBrを加え,橙色に変わるまでこの混合物を室温で16時間撹拌した。ジクロロメタンを蒸発させ、褐色の油を得た。この油を1mLのジクロロメタンに溶解し、次に7mLのペンタンで沈澱させた.この沈澱を濾過した後、乾燥させて31mgの褐色の粉末を75%の収率で得た。
【0076】
触媒(8)の合成
【0077】
【化18】

【0078】
アルゴン下において20mg(0.035ミリモル)のイオン対(6)を導入し、2mLのジクロロメタンを加えた。その後で12.84mg(0.0416ミリモル)の(DME)NiBrを加え、この混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を5mLのジエチルエーテルで洗滌した。次いでこれを5mLのアセトンに溶解して沈殿をつくった。この沈殿を濾過し、乾燥して14mgの橙色の粉末を51%の収率で得た。
【0079】
触媒(9)の合成
【0080】
【化19】

【0081】
Schlenk管の中でアルゴン下において、45mg(0.068ミリモル)のビスイミン−イミダゾリウム(BF)を導入した後5mLのジクロロメタンを導入した。次に25.25mg(0.081ミリモル)の(DME)NiBrを加え、この混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を20mLのジエチルエーテルで2回洗滌した。次いでこれを5mLのアセトンに溶解して沈殿をつくった。この沈殿を濾過し、乾燥して50mgの赤色の粉末を91%の収率で得た。
【0082】
エチレンの重合
重合条件はすべての実施例に対してすべて同じであり、次のようであった:
− 5マイクロモルの触媒成分を60mLのn−ヘプタンに溶解した。
− 300モル等量のメチルアルミノキサン(MOA)を加えた。
− 温度=25℃。
− 圧力=4バール。
− 時間=2時間。
− 重合体を酸性メタノール(10容積%のHCl)で処理する。
【0083】
重合の結果を表Iに示す。
【0084】
【表1】

【0085】
イオン性液体を担体として使用すると、反応器に容易に注入される沈澱が製造される。
【0086】
表1から判るように、重合体は大部分ブロックの形で得られ、これは大きさの小さい重合体粒子に比べ取り扱いが遥かに安全であり容易である。
【0087】
また、このポリエチレンの熔融温度、並びに分子量および多分散性は、他の触媒系を使用して得られたものと同等であることが観測された。
【0088】
図1から判るように、対陰イオンの種類は触媒系の活性に著しい影響を与える。図1ではそれぞれBrおよびBFに対し、分単位で表された時間の関数としてmL単位で表されたエチレンの消費量が示されている。BF対陰イオンをベースにした触媒系はB対陰イオンをベースにした触媒系に比べてエチレンの消費量が遥かに多く、従って遥かに大きな活性をもっている。
【0089】
図2から判るように、陽イオンの種類も触媒系の活性に著しい影響を与える。図2には、それぞれピリジニウムおよびイミダゾリウムをベースにしたイオン性液体に対し、分単位で表された時間の関数としてmL単位で表されたエチレンの消費量が示されている。ピリジニウム型のイオン性液体をベースにした触媒系はイミダゾリウム型のイオン性液体をベースにした触媒系に比べてエチレンの消費量が遥かに多く、従って遥かに大きな活性をもっている。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】イミダゾリウム及びそれぞれBFまたはBr対陰イオンをベースにした触媒系に対し、分単位で表された時間の関数としてmL単位で表されたエチレンの消費量を示す図。
【図2】それぞれピリジニウムおよびイミダゾリウムをベースにした触媒系に対し、分単位で表された時間の関数としてmL単位で表されたエチレンの消費量を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)
【化1】

のハロゲン化されたビスイミン前駆体成分をつくり;
(b)式(I)のハロゲン化されたビスイミン前駆体成分を溶媒の中でイオン性液体の前駆体と反応させてイオン性液体をつくり;
(c)段階(b)でつくられたイオン性液体を式(II)
MY (II)、
但し式中Lは不安定な配位子、MはNiまたはPdから選ばれる金属であり、Yはハロゲンである、
の含金属前駆体と反応させ;
(d)担持された単一部位の触媒成分を回収する段階を含んで成ることを特徴とする担持された触媒成分を製造する方法。
【請求項2】
該イオン性液体の前駆体はN−アルキルイミダゾリウムまたはピリジニウムであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階(b)および段階(c)の間において段階(b)の反応生成物をイオン性化合物C
但し式中CはK、Na、NHから選択される陽イオンであり、AはPF、SbF、BF、(CF−SO、ClO、CFSO、NO、またはCFCOから選ばれる陰イオンである、
と反応させることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
段階(b)と段階(c)で使用される溶媒はTHF、CHClまたはCHCNから選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載された方法により得られるイオン性液体に担持された触媒成分。
【請求項6】
請求項5記載の触媒成分および賦活剤を含んで成るイオン性液体に担持された触媒系。
【請求項7】
賦活剤はメチルアルミノキサンであることを特徴とする請求項6記載のイオン性液体に担持された触媒系。
【請求項8】
メチルアルミノキサンの量はAl/Mの比が100〜1000であるような量であることを特徴とする請求項7記載のイオン性液体に担持された触媒系。
【請求項9】
(a)請求項6〜8のいずれか一つに記載されたイオン性液体に担持された触媒系を無極性の溶媒と共に反応器に注入し;
(b)単量体および随時共重合単量体を反応器に注入し;
(c)重合条件下に保ち;
(d)チップまたはブロックの形で重合体を回収する段階を含んで成ることを特徴とするα−オレフィンを単独重合または共重合させる方法。
【請求項10】
無極性溶媒はn−ヘプタンであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
単量体はエチレンまたはプロピレンであることを特徴とする請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一つに記載された方法によって得られるチップおよびブロックの形の重合体。
【請求項13】
チップの量は重合体の全重量に関して25重量%未満であることを特徴とする請求項12記載の重合体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−507559(P2007−507559A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527423(P2006−527423)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052292
【国際公開番号】WO2005/030392
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【出願人】(505252333)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシユ・シヤンテイフイク (24)
【Fターム(参考)】