担体ナノ粒子ならびに関連する組成物、方法およびシステム
ボロン酸含有ポリマーにカップリングされたポリオール含有ポリマーを含む担体ナノ粒子であって、このボロン酸含有ポリマーをナノ粒子の外部の環境へと提示するように構成されている担体ナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法およびシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
Mark E. DavisおよびChristopher A.Alabiによる。
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年8月13日出願の、発明の名称「Delivery System Utilizing Couplings Between Polyol and Boronic acids(ポリオール−ボロン酸間のカップリングを利用した送達システム)」の米国仮出願第61/188,855号(事件整理番号 CIT−5200−P)に基づく優先権を主張する。この米国仮出願は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本開示は担体ナノ粒子に関し、特に、注目する化合物を送達するのに適したナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞、組織、器官、および生物への注目する化合物の効果的な送達は、生物医学、画像法および所定の標的への種々のサイズおよび次元の分子の送達が望ましい他の分野で、課題となってきた。
【0004】
病理学検査、治療的処置のためであれ、または基礎生物学研究のためであれ、注目する生物活性および/または化学活性と一般には関連づけられている種々の種類の生体材料および生体分子を送達するためのいくつかの方法が公知であり使用されている。
【0005】
化学薬品または生物剤(例えば薬物、生物製剤、治療薬または造影剤)として使用されるのに適した分子の数が増えるにつれて、種々の複雑度、次元および化学的性質を持つ化合物とともに使用するのに適した送達システムの開発は、特に困難であることが判明してきた。
【0006】
ナノ粒子は、種々の送達方法を用いて薬剤を送達するための担体として有用な構造体である。いくつかのナノ粒子送達システムが存在し、それらは、薬剤を包み込み、輸送し、そして特定の標識へと送達するための多くの異なる戦略を利用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に提示されるのは、いくつかの実施形態で注目する化合物の有効かつ特異的な送達のための多機能なツールをもたらすナノ粒子ならびに関連する組成物、方法およびシステムである。特に、いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子は、種々のサイズ、次元および化学的性質を持つ広い範囲の分子を所定の標的へと運んで送達するための柔軟なシステムとして使用することができる。
【0008】
第1の態様によれば、ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子が記載される。このナノ粒子では、ボロン酸含有ポリマーは、ポリオール含有ポリマーにカップリングされ、当該ナノ粒子は、ボロン酸含有ポリマーをそのナノ粒子の外部の環境へと提示するように構成される。このナノ粒子では、1以上の注目する化合物は、ポリオール含有ポリマーおよび/もしくはボロン酸含有ポリマーの一部分として、またはこれらに連結されて、当該ナノ粒子により運ばれうる。
【0009】
第2の態様によれば、組成物が記載される。この組成物は、本願明細書に記載されるナノ粒子と、適切な溶媒および/または賦形剤とを含む。
【0010】
第3の態様によれば、化合物を標的に送達するための方法が記載される。この方法は、その標的を本願明細書に記載されるナノ粒子と接触させることを含み、このとき、当該化合物は、本願明細書に記載されるナノ粒子のポリオール含有ポリマーの中、またはボロン酸含有ポリマーの中に含まれる。
【0011】
第4の態様によれば、化合物を標的に送達するためのシステムが記載される。このシステムは、当該化合物を含む本願明細書に記載されるナノ粒子の中に組織化されるために、可逆的な共有結合を介して相互結合(reciprocal binding)できる、ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを少なくとも含む。
【0012】
第5の態様によれば、化合物を個体に投与するための方法が記載される。この方法は、当該個体に本願明細書に記載されるナノ粒子の有効量を投与することを含み、このとき、この化合物は、ポリオール含有ポリマーの中および/またはボロン酸含有ポリマーの中に含まれる。
【0013】
第6の態様によれば、化合物を個体に投与するためのシステムが記載される。このシステムは、本願明細書に記載される方法に従って当該個体に投与されるべき化合物を連結する本願明細書に記載されるナノ粒子の中に組織化されるために、可逆的な共有結合を介して相互結合できる、ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを少なくとも含む。
【0014】
第7の態様によれば、ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子を調製するための方法が記載される。この方法は、当該ポリオール含有ポリマーを当該ボロン酸含有ポリマーにカップリングすることを可能にする時間の間および条件下で、当該ポリオール含有ポリマーを当該ボロン酸含有ポリマーと接触させることを含む。
【0015】
第8の態様によれば、いくつかのボロン酸含有ポリマーが記載される。これは、本開示の以下の節で詳細に例証される。
【0016】
第9の態様によれば、いくつかのポリオール含有ポリマーが記載される。これは、本開示の以下の節で詳細に例証される。
【0017】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、種々のサイズ、次元および化学的性質を持つ化合物を運ぶのに適した柔軟な分子構造として使用することができる。
【0018】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、分解、免疫系による認識、および血清タンパク質または血液細胞との連結に起因する減少から、運ばれた化合物を保護することができる送達システムとして使用することができる。
【0019】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、立体的安定化、ならびに/または化合物を特定の標的(組織、組織内の特定の細胞種およびさらにはある細胞種の中の特定の細胞内位置)へと送達する能力によって特徴付けられる送達システムとして使用することができる。
【0020】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、運ばれた化合物を制御可能な態様で放出する(同じナノ粒子内の複数の化合物を異なる速度でおよび/または時期に制御放出することを含む)ように設計することができる。
【0021】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、当該技術分野のあるシステムと比べて、標的指向化の間の高められた特異性および/もしくは選択性で、ならびに/または標的による化合物の高められた認識で、化合物を送達するために使用することができる。
【0022】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、注目する化合物の制御された送達が望ましい応用例(治療学、診断学および臨床的応用例などの医学的応用が挙げられるが、これらに限定されない)に関連して使用することができる。さらなる応用例は、生物学的分析、獣医学での応用、および動物以外の生物における、特に植物における注目する化合物の送達を含む。
【0023】
本開示の1以上の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の発明を実施するための形態および実施例に示される。他の特徴、対象、および利点は、発明を実施するための形態、実施例および図面から、および添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本願明細書に組み込まれその一部を構成する添付の図面は、本開示の1以上の実施形態を例証し、発明を実施するための形態および実施例とともに、本開示の原理および実施を説明する役割を果たす。
【図1】ボロン酸含有化合物の不存在下での関連する形成についてのナノ粒子および関連する方法の略図を示す。パネルAは、本願明細書に記載される実施形態に係る、ポリオール含有ポリマー(MAP、4)および注目する化合物(核酸)の略図を示す。パネルBは、パネルAに示されるポリオール含有ポリマーおよび化合物の組織化の際に形成されるナノ粒子を示す。
【図2】本開示の実施形態に係る、ナノ粒子および関連する製造方法の略図を示す。パネルAは、本開示の実施形態に係る、注目する分子(核酸)とともに、ポリオール含有ポリマー(MAP、4)およびボロン酸含有ポリマー(BA−PEG、6)を示す。パネルBは、パネルAに示されるポリマーおよび化合物の組織化の際に形成されるBA−ペグ化され安定化されたナノ粒子を示す。
【図3】本願明細書に記載される実施形態に係る、ポリオール含有ポリマーおよび注目する化合物を含む複合体の形成を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係るプラスミドDNAを用いたMAPゲル遅延度アッセイの結果を示す。DNAラダーは、レーン1に添加されている。レーン2〜8は、漸増的に増加された電荷比を持つMAPと組み合わされたプラスミドDNAを示す。電荷比は、このMAP上の正電荷の量を核酸上の負電荷の量で割ったものとして定義される。
【図4】本願明細書に記載される実施形態に係る、ポリオール含有ポリマーおよび注目する化合物を含む複合体の形成を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係るsiRNAを用いたMAPゲル遅延度アッセイの結果を示す。DNAラダーは、レーン1に添加されている。レーン2〜8は、漸増的に増加された電荷比を持つMAPと組み合わされたsiRNAを示す。
【図5】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係る、ナノ粒子の特性を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係るMAP−プラスミドナノ粒子についての、粒径(動的光散乱(DLS)測定から決定された) 対 電荷比およびゼータ電位(ナノ粒子の表面電荷に関連する特性) 対 電荷比のプロットを説明する図表を示す。
【図6】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係るナノ粒子の特性。特に、この図は、本開示の実施形態に係るBA−ペグ化MAP−プラスミドナノ粒子についての粒径(DLS) 対 電荷比およびゼータ電位 対 電荷比のプロットを説明する図表を示す。
【図7】本願明細書に開示される実施形態に係るBA−ペグ化MAP−プラスミドナノ粒子の塩安定性を示す。プロットA: 5:1 BA−PEG + np + 1× PBS 5分後;プロットB: 5:1 BA−PEG + np、3×100kDaで透析した + 1× PBS 5分後;プロットC: 5:1 BA−PEGを用いた予めのペグ化(prePEGylated) + 1× PBS 5分後;プロットD: 5:1 BA−PEGを用いた予めのペグ化 、3×100kDaで透析した + PBS 5分後。
【図8】本願明細書に記載される実施形態に係るナノ粒子を用いたインビトロでのヒト細胞への薬剤の送達を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、HeLa細胞へのMAP/pGL3形質移入についての、相対発光量(RLU)(これは、細胞へと送達されたpGL3プラスミドから発現されたルシフェラーゼタンパク質の量の尺度である) 対 電荷比のプロットを説明する図表を示す。
【図9】本願明細書に記載される実施形態に係るナノ粒子を用いた薬剤の標的への送達を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、MAP/pGL3形質移入後の細胞生存 対 電荷比のプロットを説明する図表を示す。この実験についての生存データは、図8に示されている。
【図10】本願明細書に記載される実施形態に係るナノ粒子を用いた複数の化合物の、標的への送達を示す。特に、この図は、本願明細書に記載される実施形態に係る、5+/−の電荷比でpGL3およびsiGL3を含有するMAP粒子の、HeLa細胞への同時形質移入についての相対発光量(RLU) 対 粒子の種類のプロットを説明する図表を示す。語siCONは、制御配列を持つsiRNAを意味する。
【図11】本願明細書に記載される実施形態に係るナノ粒子を用いた、化合物の標的への送達を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、5+/−の電荷比のMAP/siGL3のHeLa−Luc細胞への送達についての相対発光量(RLU) 対 siGL3濃度のプロットを示す。
【図12】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係る、標的指向化リガンドを提示するボロン酸含有ポリマーの合成の略図を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、ボロン酸−PEGジスルフィド−トランスフェリンの合成についての概略図を示す。
【図13】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係る、ナノ粒子の合成の略図を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、水の中でのカンプトテシン ムチン酸ポリマー(CPT−ムチン酸ポリマー)を用いたナノ粒子の処方物の概略図を示す。
【図14】本開示の実施形態に従って調製された、水の中のCPT−ムチン酸ポリマー接合体から形成されたナノ粒子の粒径およびゼータ電位を要約する表を示す。
【図15】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係る、ナノ粒子の合成の略図を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、水の中でのCPT−ムチン酸ポリマーおよびボロン酸−ジスルフィド−PEG5000を用いたボロン酸−ペグ化ナノ粒子の処方物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ナノ粒子、ならびに当該ナノ粒子の中に含まれる注目する化合物(本願明細書中では積み荷(cargo)とも)を送達するために関連して使用することができる関連する組成物、方法、およびシステムが本願明細書に提示される。
【0026】
用語「ナノ粒子」は、本願明細書で使用する場合、ナノスケールの次元の複合構造体を意味する。特に、ナノ粒子は、典型的には、約1〜約1000nmの範囲のサイズの粒子であり、通常は球状であるが、当該ナノ粒子組成物に応じて異なる形態が可能である。当該ナノ粒子の外部の環境に接触するナノ粒子の部分は、一般に当該ナノ粒子の表面として同定される。本願明細書に記載されるナノ粒子では、サイズの制限は、2次元に限定することができ、その結果、本願明細書に記載されるナノ粒子は約1〜約1000nmの直径を有する複合構造体を含み、特定の直径は、ナノ粒子組成物および実験計画に従う当該ナノ粒子の意図された使用に依存する。例えば、いくつかの治療的応用例で使用されるべきナノ粒子は、典型的には約200nm以下のサイズを有し、特に癌治療に関連する送達のために使用されるものは、典型的には約1〜約100nmの直径を有する。
【0027】
当該ナノ粒子のさらなる所望の特性、例えば表面電荷および立体的安定化もまた、注目する特定の応用例を考慮して変わりうる。癌治療などの臨床的応用例で望まれる可能性がある例示となる特性は、Davisら、2008、Duncan 2006およびAllen 2002(各々、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする)に記載されている。さらなる特性は、本開示を読めば当業者によって特定できる。ナノ粒子の次元および特性は、当該技術分野で公知の技術によって検出することができる。粒子の次元を検出するための例示となる技術としては、動的光散乱(DLS)ならびに様々な顕微鏡法(透過型電子顕微鏡法(TEM)および原子間力顕微鏡(AFM)など)が挙げられるが、これらに限定されない。粒子形態を検出するための例示となる技術としては、TEMおよびAFMが挙げられるが、これらに限定されない。当該ナノ粒子の表面電荷を検出するための例示となる技術としては、ゼータ電位法が挙げられるが、これらに限定されない。他の化学特性を検出するために適切なさらなる技術は1H、11B、および13Cおよび19F NMR、UV/Visおよび赤外/ラマン分光法および蛍光分光法(ナノ粒子が蛍光標識と組み合わせて使用される場合)を含み、さらなる技術は当業者によって特定できる。
【0028】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、注目する化合物、特に薬剤を所定の標的に送達するために使用することができる。
【0029】
用語「送達する」および「送達」は、本願明細書で使用する場合、化合物の空間的位置に影響を及ぼすという活動、特に当該位置を制御するという活動を意味する。従って、本開示に関して化合物を送達することは、ある一組の条件下でのある時間におけるその化合物の位置決めおよび移動に影響を及ぼし、その結果それらの条件下でのその化合物の位置決めおよび移動は当該化合物がそうでなければ有していたであろう位置決めおよび移動とは変更される、能力を示す。
【0030】
特に、基準終点に対する化合物の送達は、当該化合物の位置決めおよび移動を制御し、その結果当該化合物が選択された基準終点に最終的に位置決めされる能力を意味する。インビトロ系では、化合物の送達は、通常、当該化合物の化学的ならびに/または生物学的な検出可能な特性および活性の対応する修飾に関連付けられる。インビボ系では、化合物の送達は、典型的には、当該化合物の薬物動態および恐らくは薬力学の修飾にも関連付けられる。
【0031】
化合物の薬物動態は、典型的には個体の体によってもたらされる、系からのその化合物の吸収、分配、代謝および排泄を意味する。特に、用語「吸収」は体に入る物質のプロセスを意味し、用語「分配」は体の体液および組織全体にわたる物質の分散または散在を意味し、用語「代謝」は親化合物の、娘代謝産物への不可逆的な変換を意味し、用語「排泄」は体からの当該物質の排出を意味する。当該化合物が処方物の中にある場合、薬物動態は当該化合物のその処方物からの遊離(これは、その処方物からの当該化合物、典型的には薬物の放出のプロセスを意味する)をも含む。用語「薬力学」は、体に対する、または体内もしくは体上の微生物もしくは寄生虫に対するある化合物の生理学的効果、および薬物作用の機序および薬物濃度と効果との間の関係を意味する。当業者なら、注目する化合物、特に注目する薬剤(薬物など)の薬物動態ならびに薬力学の特徴および特性を検出するために適切な技術および手順を特定することができるであろう。
【0032】
用語「薬剤」は、本願明細書で使用する場合、標的に関連付けられた化学的または生物活性を呈することができる化合物を意味する。用語「化学活性」は、本願明細書で使用する場合、分子が化学反応を実施する能力を意味する。用語「生物活性」は、本願明細書で使用する場合、分子が生命体に影響を及ぼす能力を意味する。薬剤の例示となる化学活性は、共有結合によるまたは静電的な相互作用の形成を含む。薬剤の例示となる生物活性は、内因性分子の産生および分泌、内因性分子または外因性分子の吸収および代謝、ならびに注目する遺伝子の遺伝子発現(転写および翻訳を含む)の活性化または不活化を含む。
【0033】
用語「標的」は、本願明細書で使用する場合、注目する生物系(単細胞または多細胞の生命体またはそれらのいずれかの一部を含む)を意味し、これはインビトロまたはインビボ生物系またはそれらのいずれかの一部を含む。
【0034】
本願明細書に記載されるナノ粒子では、ボロン酸含有ポリマーは、当該ナノ粒子の外部の環境に対して提示されるように当該ナノ粒子の中に配置されるポリオール含有ポリマーにカップリングされる。
【0035】
用語「ポリマー」は、本願明細書で使用する場合、典型的には共有結合による化学結合によって連結される繰り返し構造単位から構成される大分子を意味する。適切なポリマーは、直鎖状および/または分枝状であってもよく、ホモポリマーまたは共重合体の形態をとってもよい。共重合体が使用される場合、その共重合体はランダム共重合体または分枝状の共重合体であってもよい。例示となるポリマーは、水分散性の、特に水溶性のポリマーを含む。例えば、適切なポリマーとしては、多糖、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。治療用のならびに/または医薬としての使用および応用例のために、当該ポリマーは、低毒性プロファイルを有するべきであり、特にこれは毒性または細胞毒性ではない。適切なポリマーとしては、約500,000以下の分子量を有するポリマーが挙げられる。特に、適切なポリマーは、約100,000以下の分子量を有することができる。
【0036】
用語「ポリオール含有ポリマー」または「ポリオールポリマー」は、本願明細書で使用する場合、複数のヒドロキシル官能基を提示するポリマーを意味する。特に、本願明細書に記載されるナノ粒子を形成するのに適切なポリオール含有ポリマーは、ボロン酸含有ポリマーの少なくとも1つのボロン酸とのカップリング相互作用のためのヒドロキシル官能基の少なくとも一部を提示するポリマーを含む。
【0037】
用語「提示する」は、化合物または官能基に関して本願明細書で使用する場合、その化合物または官能基の化学反応性を連結されたままに維持するために実施された連結を意味する。従って、表面に提示された官能基は、その官能基を化学的に特徴付ける1以上の化学反応を適切な条件下で実施することができる。
【0038】
ポリオール含有ポリマーを形成する構造単位は、ペンタエリスリトール、エチレングリコールおよびグリセリンなどの単量体ポリオールを含む。例示となるポリオール含有ポリマーはポリエステル、ポリエーテルおよび多糖を含む。例示となる適切なポリエーテルとしては、ジオール、特にp≧1である一般式HO−(CH2CH2O)p−Hを有するジオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。例示となる、適切な多糖としては、シクロデキストリン類、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチンおよびβ−グルカン類が挙げられるが、これらに限定されない。例示となる、適切なポリエステルとしては、ポリカーボネート、ポリブチレート(ポリ酪酸エステル)およびポリエチレンテレフタレート(すべて、ヒドロキシル末端基で停止しているもの)が挙げられるが、これらに限定されない。例示となるポリオール含有ポリマーは、約500,000以下、特に約300〜約100,000の分子量のポリマーを含む。
【0039】
いくつかのポリオール含有ポリマーは、市販されており、かつ/または当業者によって特定できる技術および手順を使用して製造することができる。例示となるポリオールポリマーの合成のための例示となる手順はLiuら 2005に記載されており、他のものは実施例1〜4に例証されている。ポリオール含有ポリマーを作成するためのさらなる手順は、本開示を考慮して当業者によって特定できるであろう。
【0040】
用語「ボロン酸含有ポリマー」または「BAポリマー」は、本願明細書で使用する場合、ポリオール含有ポリマーのヒドロキシル基に結合するために提示された少なくとも1つのボロン酸基を含有するポリマーを意味する。特に、本願明細書に記載されるナノ粒子のボロン酸含有ポリマーは、少なくとも1つの構造単位の中に、炭素−ホウ素の化学結合を含有するアルキルまたはアリール置換ボロン酸を含むポリマーを包含する。適切なBAポリマーは、ボロン酸が末端構造単位にあるかまたは得られたポリマーに親水性を与えるためのいずれかの他の適切な位置にあるポリマーを含む。例示となるポリオール含有ポリマーは、約40,000以下、特に約20,000以下、または約10,000以下の分子量を有するポリマーを含む。
【0041】
いくつかのボロン酸含有ポリマーは、市販されており、かつ/または当業者によって特定できる技術および手順を使用して製造することができる。例示となるポリオールポリマーの合成のための例示となる手順は、LiuおよびReineke(2005)に記載されており、他の新しいものは実施例5〜8に例証されている。BAポリマーを作成するためのさらなる手順は、本開示を考慮して当業者によって特定できるであろう。
【0042】
本願明細書に記載されるナノ粒子では、ポリオールポリマーは当該BAポリマーにカップリングされる。用語「カップリングされる」または「カップリング」は、2つの分子間の連結に関して本願明細書で使用する場合、可逆的な共有結合を形成する相互作用を意味する。特に、適切な媒質の存在下で、当該BAポリマー上に提示されたボロン酸は、迅速かつ可逆的な対をなす共有結合による相互作用を介して当該ポリオールのヒドロキシル基と相互作用し、適切な媒質の中でボロン酸エステルを形成する。適切な媒質としては水およびいくつかの水溶液および当業者によって特定できるさらなる有機媒質が挙げられる。特に、水系媒体の中で接触するとき、BAポリマーおよびポリオールポリマーは反応して、副生成物としての水を生成する。このボロン酸ポリオール相互作用は、一般に水溶液の中でより好ましいが、有機媒質の中でも進行することも知られている。加えて、1,2および1,3ジオール類とともに形成される環状エステルは、それらの非環状エステル対照物よりも一般により安定である。
【0043】
従って、本願明細書に記載されるナノ粒子においては、当該ボロン酸含有ポリマーの少なくとも1つのボロン酸は、可逆的な共有結合で当該ポリオール含有ポリマーのヒドロキシル基に結合される。BAポリマーとポリオールポリマーとの間でのボロン酸エステルの形成は、ホウ素−11核磁気共鳴(11B NMR)、電位差滴定、UV/Visおよび蛍光検出技術などの、当業者によって特定できる方法および技術によって検出することができ、選択される技術は当該ナノ粒子を構成するボロン酸およびポリオールの特定の化学的性質および特性に依存する。
【0044】
本願明細書に記載されるBAポリマーと本願明細書に記載されるポリオールポリマーとのカップリング相互作用から生じるナノ粒子は、当該粒子の表面上にBAポリマーを提示する。いくつかの実施形態では、当該ナノ粒子は、約1〜約1000nmの直径および球状形態を有することができるが、粒子の次元および形態は、当該ナノ粒子を形成するために使用される特定のBAポリマーおよびポリオールポリマーによって、ならびに本開示に従って当該ナノ粒子上で運ばれる化合物によってほぼ決定される。
【0045】
いくつかの実施形態では、当該ナノ粒子により運ばれる注目する化合物はBAポリマーおよび/またはポリオールポリマーの一部を形成する。このような実施形態の例は、ポリマーの1以上の原子が特定の同位体、例えば19Fおよび10Bによって置き換えられているナノ粒子によって提供され、それゆえ、標的を撮像するためおよび/または標的に放射線処置を与えるための薬剤として適切である。
【0046】
いくつかの実施形態では、当該ナノ粒子により運ばれる注目する化合物は、共有結合または非共有結合を介してポリマー、典型的にはポリオールポリマーに連結される。このような実施形態の例は、ポリオールポリマーおよびBAポリマーのうちの少なくとも1つの中の1以上の部分が1以上の注目する化合物を連結するナノ粒子によって与えられる。
【0047】
用語「連結する」、「連結された」または「連結」は、本願明細書で使用する場合、2以上の構成成分を一緒に保つために結合、つなぎ(link)、力またはタイ(tie)によって接続すること(connecting)またはまとめること(uniting)を指し、これは、例えば第1の化合物が第2の化合物に直接結合されている例、および1以上の中間化合物、特に分子がこの第1の化合物と第2の化合物との間に配置されている実施形態など、直接または間接の連結のいずれをも包含する。
【0048】
特に、いくつかの実施形態では、化合物は、ポリマーの適切な部分へのこの化合物の共有結合を介して、ポリオールポリマーまたはBAポリマーに連結されうる。例示となる共有結合は、ムチン酸ポリマーへの薬物カンプトテシンの連結が生分解性エステル結合による結合を介して実施される実施例19、およびBA−PEG5000へのトランスフェリンの連結がトランスフェリンのペグ化を介して実施される実施例9に例証されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、当該ポリマーは、例えば注目する化合物上の対応する官能基に特異的に結合することができる1以上の官能基を付加することにより、特定の注目する化合物の連結を可能にするように、設計または修飾することができる。例えば、いくつかの実施形態では、BA−PEG−X(式中、Xは、マレイミドもしくはヨードアセチル基であるか、またはチオールと特異的にもしくはアミンと非特異的に反応するであろういずれかの脱離基であってもよい)を用いて当該ナノ粒子をペグ化することが可能である。次いで、連結されるべき化合物は、チオール官能基を発現するための修飾の後、マレイミドまたはヨードアセチル基に反応することができる。連結されるべき化合物はまた、アルデヒドまたはケトン基で修飾されてもよく、これらは、縮合反応を介して当該ポリオール上のジオール類と反応して、アセタールまたはケタールを与えることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、注目する化合物は、連結されるべき化合物と当該ポリマーの適切な部分との間の非共有結合(イオン結合および分子間相互作用など)を介して、当該ポリオールポリマーまたはBAポリマーに連結されてもよい。例示となる非共有結合は実施例10に例証されている。
【0051】
注目する化合物は、当該ナノ粒子の形成の前、最中、または形成の後に、例えばポリマーおよび/またはこの微粒子複合材料の中のいずれかの連結された化合物の修飾を介して、当該ナノ粒子に連結されてもよい。当該ナノ粒子上に化合物を連結するための例示となる手順は、実施例の節に例証されている。化合物をBAポリマーポリオールポリマーまたは本願明細書に記載されるナノ粒子の他の成分(例えばそれまでに導入された注目する化合物)に連結するためのさらなる手順は、本開示を読めば、当業者は特定できる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子上に提示されたBAポリマーに連結された少なくとも1つの注目する化合物は、標的指向化リガンドとして使用することができる薬剤である。特に、いくつかの実施形態では、当該ナノ粒子は、BAポリマー上に、標的指向化リガンドとして使用されるべき1以上の薬剤を、そしてポリオールポリマーおよび/またはBAポリマー上に、1以上の選択された標的へと送達されるべき薬剤を連結する。
【0053】
用語「標的指向化リガンド」は、本開示において使用される場合、例えばナノ粒子の細胞受容体連結を可能にすることにより特定の標識、特に特異的な細胞認識を係合する目的でナノ粒子の表面上に提示されうる、いずれかの分子を意味する。適切なリガンドの例としては、ビタミン(例えば葉酸)、タンパク質(例えばトランスフェリン、およびモノクローナル抗体)、単糖(例えばガラクトース)、ペプチド、および多糖が挙げられるが、これらに限定されない。特に、標的指向化リガンドは、ある表面細胞受容体(抗−VEGFなど)、小分子(葉酸など)および他のタンパク質(ホロトランスフェリン(holo−transferrin)など)に対する抗体であってもよい。
【0054】
当業者は理解するとおり、リガンドの選択は、所望の送達の種類によって変わりうる。別の例として、このリガンドは、HIV−1由来のTATタンパク質などの、膜透過性を増大させる薬剤または膜透過性の薬剤であってもよい。TATタンパク質は、細胞核の中へと能動的に運び込まれるウイルス性の転写活性化である。Torchilin,V.P.ら、PNAS. 98、8786 8791、(2001)。BAポリマーに連結された適切な標的指向化リガンドは、典型的には、ボロン酸が遠位端に連結されている柔軟なスペーサー(ポリ(エチレンオキシド)など)を含む(実施例9を参照)。
【0055】
いくつかの実施形態では、含まれるまたは当該ポリオールポリマーおよび/またはBAポリマー(標的指向化リガンドを含む)に連結された化合物の少なくとも1つは、化学活性または生物活性(例えば治療活性)がもたらされるべきである標的(例えば個体)に送達されるべき薬剤(特に薬物)であってもよい。
【0056】
本願明細書に記載されるナノ粒子を形成するのに適したポリオールポリマーおよびBAポリマーの選択は、化合物および注目する標的を考慮して実施することができる。特に、本願明細書に記載されるナノ粒子を形成するための適切なポリオール含有ポリマーおよび適切なBAポリマーの選択は、候補のポリオールポリマーおよびBAポリマーを準備し、本開示に関するカップリング相互作用を形成することができるポリオールポリマーおよびBAポリマーを選択することにより実施することができ、この場合、選択されたBAポリマーおよびポリオールポリマーは、ポリオールポリマーおよび/またはBAポリマーに含まれるまたは連結されるべき注目する化合物および標的指向化リガンドを考慮して、当該ポリオールポリマーがBAポリマーよりも親水性が小さいような化学組成を有する。ナノ粒子の表面上のBAポリマーおよび当該ナノ粒子の外部の環境にある関連する提示物の検出は、ゼータ電位の検出によって実施することができる。このゼータ電位は、実施例12に例証するような当該ナノ粒子の表面の修飾を実証することができる。(特に図6を参照)。当該粒子の表面電荷および塩溶液の中での当該粒子の安定性を検出するためのさらなる手順としては、実施例12に例証されるものなどの粒径の変化の検出(特に図7を参照)および当業者によって特定できるさらなる手順が挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、ポリオール含有ポリマーは、1以上の、以下の構造単位のうちの少なくとも1つを含む。
【化1】
(式中、
Aは式の有機部分
【化2】
であり、式中、
R1およびR2は、独立に、約10kDa以下の分子量を有するいずれかの炭素ベースの基または有機基から選択され、
Xは、独立に、うちの1以上の−H、−F、−C、−Nまたは−Oを含む脂肪族基から選択され、
Yは、独立に、−OHまたはヒドロキシル(−OH)基を有する有機部分から選択され、例としては−CH2OH、−CH2CH2OH、−CF2OH、−CF2CF2OH、およびC(R1G1)(RG2)(R1G3)OHが挙げられるが、これらに限定されず、R1G1、R1G2およびR1G3は独立に有機ベースの官能基であり、
Bは、第1のA部分のR1およびR2のうちの1つを第2のA部分のR1およびR2のうちの1つとつなぐ有機部分である)
【0058】
用語「部分」は、本願明細書で使用する場合、より大きい分子または分子種の一部分を構成する原子の群を意味する。特に、部分は、繰り返されるポリマー構造単位の構成要素を指す。例示となる部分としては、酸または塩基種、糖、炭水化物、アルキル基、アリール基およびポリマー構造単位を形成するのに有用ないずれかの他の分子構成要素が挙げられる。
【0059】
用語「有機部分」は、本願明細書で使用する場合、炭素原子を含有する部分を意味する。特に、有機基としては、天然および合成の化合物、ならびにヘテロ原子を含む化合物が挙げられる。例示となる天然の有機部分としては、ほとんどの糖類、いくつかのアルカロイドおよびテルペノイド、炭水化物、脂質および脂肪酸、核酸、タンパク質、ペプチドおよびアミノ酸、ビタミンおよび油脂が挙げられるが、これらに限定されない。合成の有機基は、他の化合物との反応によって調製される化合物を指す。
【0060】
いくつかの実施形態では、1以上の注目する化合物は、(A)に、(B)に、または(A)および(B)に連結することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、R1およびR2は、独立に、以下の式を有する:
【化3】
(式中、
dは0〜100であり、
eは0〜100であり、
fは0〜100であり、
Zは、1つの有機部分を別の有機部分に、特に本願明細書で画定されるとおりの別の部分Aまたは部分Bにつなぐ共有結合であり、
Z1は、独立に、−NH2、−OH、−SH、および−COOHから選択される)。
【0062】
いくつかの実施形態では、Zは、独立に、−NH−、−C(=O)NH−、−NH−C(=O)、−SS−、−C(=O)O−、−NH(=NH2+)−または−O−C(=O)−から選択することができる。
【0063】
ポリオール含有ポリマーの構造単位Aが式(IV)を有するいくつかの実施形態では、XはCvH2V+1(式中、vは0〜5であり、Yは−OHであることができる)であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、R1および/またはR2は式(V)(式中、Zは−NH(=NH2+)−であり、かつ/またはZ1はNH2である)を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載される粒子のポリオール含有ポリマーにおいて、(A)は、独立に、下式から選択することができる。
【化4】
(式中、
当該スペーサは、独立に、いずれかの有機部分から選択され、特に硫黄、窒素、酸素またはフッ素などのヘテロ原子を任意に含有するアルキル、フェニルまたはアルコキシ基を挙げることができ、
当該アミノ酸は、遊離アミンおよび遊離カルボン酸基を有するいずれかの有機基から選択され、
nは1〜20であり、かつ
Z1は、独立に、−NH2、−OH、−SH、および−COOHから選択される)。
【0066】
いくつかの実施形態では、Z1はNH2であり、かつ/または当該糖は、グルコース、フルクトース、マンニトール、スクロース、ガラクトース、ソルビトール、キシロースまたはガラクトースなどのいずれかの単糖であることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載される粒子のポリオール含有ポリマーにおいて、1以上の構造単位(A)は、独立に、下式を有することができる。
【化5】
【0068】
いくつかの実施形態では、(B)は、官能基を介して2つの(A)部分をつなぐいずれかの直鎖状の、分枝状の、対称的なまたは非対称の化合物によって形成されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、(B)は、少なくとも2つの架橋できる基が2つの(A)部分をつなぐ化合物によって形成されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、(B)は、中性の、カチオン性のまたはアニオン性の有機基を含有する。この(B)の性質および組成は共有結合でまたは非共有結合で繋がれるべき化合物の化学的性質に依存する。
【0071】
アニオン性の積み荷とともに使用するための(B)の例示となるカチオン性部分としては、アミジン基、第四級アンモニウム、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基(それらのpKaより下でプロトン化される)、およびイミダゾリウムを有する有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
カチオン性の積み荷とともに使用するための(B)に含まれる例示となるアニオン性部分としては、式のスルホン酸アニオン、式の硝酸アニオン、式のカルボン酸アニオン、およびホスホン酸アニオンを有する有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
特に、それぞれアニオン性の積み荷およびカチオン性の積み荷とともに使用するための1以上のカチオン性またはアニオン性の部分(B)は、独立に、下式の一般式を有することができる:
【化6】
(式中、R5は、Aが求核性基を含む場合にAに共有結合することができる求電子性基である)。この場合のR5の例としては、とりわけ−C(=O)OH、−C(=O)Cl、−C(=O)NHS、−C(=NH2+)OMe;−S(=O)OCl−、−CH2Br、アルキルエステルおよび芳香族エステル、末端アルキン、トシレート、およびメシレートが挙げられるが、これらに限定されない。部分Aが求電子性末端基を含む場合は、R5は−NH2(第一級アミン)、−OH、−SH、N3および第二級アミンなどの求核性基を有することになろう。
【0074】
特に、部分(B)がアニオン性の積み荷とともに使用するためのカチオン性部分(B)である場合、「有機基」は、CmH2m(式中、m≧1)からなる一般式を有する骨格および他のヘテロ原子を有することができかつ式(XIII)のアミジン、式(XIV)の第四級アンモニウム、式(XV)の第一級アミン基、式(XVI)の第二級アミン基、式(XVII)の第三級アミン基(それらのpKaより下でプロトン化される)、および式(XVIII)のイミダゾリウムが挙げられる官能基のうちの少なくとも1つを含む必要がある、有機部分である。
【化7】
【0075】
実施形態では、部分(B)がカチオン性の積み荷とともに使用するためのアニオン性部分(B)である場合、この「有機基」は、CmH2m(式中、m≧1)からなる一般式を有する骨格および他のヘテロ原子を有してもよいが、式(XIX)のスルホン酸アニオン、式(XX)の硝酸アニオン、式(XXI)のカルボン酸アニオン、および式(XXII)のホスホン酸アニオンが挙げられる官能基のうちの少なくとも1つを含む必要がある。
【化8】
【0076】
(B)がカルボン酸アニオン(XXI)によって構成される実施形態では、第一級アミンまたはヒドロキシル基を含む化合物は、ペプチドまたはエステル結合の形成を介しても連結することができる。
【0077】
(B)が式(XV)の第一級アミン基および/または式(XVI)の第二級アミン基から構成される実施形態では、カルボン酸基を含む化合物は、ペプチド結合の形成を介しても連結することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では部分(B)は、独立に、以下から選択することができる。
【化9】
(式中、
qは1〜20であり、特に5であることができ、
pは20〜200であり、
Lは脱離基である)
【0079】
用語「脱離基」は、本願明細書で使用する場合、不均等結合開裂で一対の電子をもって離れる分子の断片を意味する。特に、脱離基はアニオンまたは中性分子であることができ、脱離基が離れる能力はその共役酸のpKaに相関し、より低いpKaはより良好な脱離基の能力に関連付けられる。例示となるアニオン性脱離基としては、Cl−、Br−、および、I−などのハロゲン化物ならびパラ−トルエンスルホネートまたは「トシレート」(TsO−)などのスルホン酸エステルが挙げられる。例示となる中性分子の脱離基は水(H2O)、アンモニア(NH3)、およびアルコール(ROH)である。
【0080】
特に、いくつかの実施形態では、Lは、塩化物(Cl)、メトキシ(OMe)、tブトキシ(OtBU)またはNヒドロスクシンイミド(NHS)であることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、式(I)の構造単位は下式を有することができる。
【化10】
【0082】
いくつかの実施形態では、式(II)の構造単位は下式を有することができる。
【化11】
【0083】
いくつかの実施形態では、式(III)の構造単位は下式を有することができる。
【化12】
式中、nは1〜20、特に1〜4である。
【0084】
いくつかの実施形態では、ポリオール含有ポリマーは下式を有することができる。
【化13】
【0085】
いくつかの実施形態では、ボロン酸含有ポリマーは少なくとも1つの末端ボロン酸基を含み、以下の構造を有する:
【化14】
(式中、
R3およびR4は、独立に、いずれかの親水性の有機ポリマーから選択することができ、特に独立にいずれかのポリ(エチレンオキシド)、および双性イオンのポリマーであることができ、
X1は、1以上の−CH、−N、または−Bを含む有機部分であることができ、
Y1は、式−CmH2m−(式中、m≧1であり、オレフィンまたはアルキニル基、または芳香族基(フェニル、ビフェニル、ナフチルもしくはアントラセニルなど)を含むことができる)を持つアルキル基であってもよく、
rは1〜1000であり、
aは0〜3であり、
bは0〜3であり、
官能基1および官能基2は同じであるかもしくは異なり、かつ標的指向化リガンド、特にタンパク質、抗体またはペプチドに結合することができ、または−OH、−OCH3もしくは−(X1)−(Y1)−B(OH)2−などの末端基である。
【0086】
いくつかの実施形態では、R3およびR4は(CH2CH2O)t(式中、tは2〜2000、特に100〜300である)である。
【0087】
いくつかの実施形態ではX1は−NH−C(=O)−、−S−S−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−または−C(=O)−O−であることができ、かつ/またはY1はフェニル基であることができる。
【0088】
いくつかの実施形態ではrは1であることができ、aは0であることができ、かつbは1であることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、官能基1および官能基2は同じであるかもしくは異なり、かつ独立に、−B(OH)2−OCH3、−OHから選択される。
【0090】
特に、式(XXXI)の官能基1および/または2は、積み荷、特にタンパク質、抗体またはペプチドなどの標的指向化リガンドに結合することができる官能基であることができるし、または−OH、−OCH3または−(X)−(Y)−B(OH)2などの末端基であることもできる。
【0091】
用語「官能基」は、本願明細書で使用する場合、分子構造またはその一部分の特徴的な化学反応に関与する、その構造またはその一部分中の原子の特定の群を意味する。例示となる官能基としては、炭化水素、ハロゲンを含む基、酸素を含む基、窒素を含む基、ならびにリンおよび硫黄を含む基が挙げられ、すべて当業者によって特定できる。特に、本開示に関しての官能基としては、カルボン酸、アミン、トリアリールホスフィン、アジド、アセチレン、スルホニルアジド、チオ酸およびアルデヒドが挙げられる。特に、例えば、標的指向化リガンドの中の対応する官能基に結合できる官能基は、以下の結合パートナーを含むように選択することができる:カルボン酸基およびアミン基、アジドおよびアセチレン基、アジドおよびトリアリールホスフィン基、スルホニルアジドおよびチオ酸、およびアルデヒドおよび第一級アミン。さらなる官能基は、本開示を読めば当業者が特定することができる。本願明細書で使用する場合、用語「対応する官能基」は、別の官能基に結合することができる官能基を指す。従って、互いに反応することができる官能基は、対応する官能基と呼ぶことができる。
【0092】
末端基は、高分子またはオリゴマー分子の先端である構成単位を意味する。例えば、PETポリエステルの末端基は、アルコール基またはカルボン酸基であってもよい。末端基は、モル質量を決定するために使用することができる。例示となる末端基は−OH、−COOH、NH2、およびOCH3を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、ボロン酸含有ポリマーは下式を有することができる。
【化15】
式中、sは20〜300である。
【0094】
本開示のナノ粒子に連結されうる例示となる薬剤および標的指向化リガンドは、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、アプタマーポリペプチド、タンパク質、多糖、高分子複合体(タンパク質およびポリヌクレオチドの混合物を含む高分子複合体が挙げられるがこれらに限定されない)、糖類および/もしくは多糖、ウイルス、放射性同位体を有する分子、抗体または抗体断片を含めた有機または無機の分子を含む。
【0095】
用語「ポリヌクレオチド」は、本願明細書で使用する場合、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはそれらの類似体を含む2以上の単量体から構成される有機ポリマーを意味する。用語「ヌクレオチド」は、プリンまたはピリミジン塩基およびリン酸基に結合されたリボースまたはデオキシリボース糖からなり、かつ核酸の基本構造単位であるいくつかの化合物のいずれかを指す。用語「ヌクレオシド」は、デオキシリボースまたはリボースと組み合わせたプリンまたはピリミジン塩基からなり、かつとりわけ核酸中で見出される化合物(グアノシンまたはアデノシンなど)を指す。用語「ヌクレオチド類似体」または「ヌクレオシド類似体」は、それぞれ、1以上の個々の原子が異なる原子または異なる官能基で置き換えられているヌクレオチドまたはヌクレオシドを指す。従って、用語「ポリヌクレオチド」は、いずれの長さの核酸、および特にDNA、RNA、類似体およびそれらの断片を包含する。3以上のヌクレオチドのポリヌクレオチドは、「ヌクレオチドオリゴマー」または「オリゴヌクレオチド」とも呼ばれる。
【0096】
用語「アプタマー」は、本願明細書で使用する場合、特定の標的に結合するオリゴ核酸またはペプチド分子を意味する。特に、核酸アプタマーは、例えば、小分子、タンパク質、核酸、およびさらには細胞、組織および生物などの種々の分子標的に結合するように、インビトロセレクション(in vitro selection)またはこれと等価なもの、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment、試験管内進化法)の何回もの繰り返しを通して操作された核酸種を含むことができる。アプタマーは抗体の分子認識特性に匹敵する分子認識特性を与えるので、アプタマーは、バイオテクノロジーでの応用および治療的応用で有用である。ペプチドアプタマーは、細胞内部でタンパク質に特異的に結合してタンパク質−タンパク質相互作用に干渉するように設計されているペプチドである。特に、ペプチドアプタマーは、例えば酵母2−ハイブリッド(Y2H)系から導き出されるセレクション戦略に従って導き出すことができる。特に、この戦略によれば、転写因子結合ドメインに連結された可変のペプチドアプタマーループが、転写因子活性化ドメインに連結された標的タンパク質に対してスクリーニングされる。このセレクション戦略を介するペプチドアプタマーのその標的へのインビボ結合は、下流の酵母マーカー遺伝子の発現として検出される。
【0097】
用語「ポリペプチド」は、本願明細書で使用する場合、2以上のアミノ酸単量体および/またはその類似体から構成される有機の直鎖状の、円形の、または分枝状のポリマーを意味する。用語「ポリペプチド」は、全長タンパク質およびペプチド、ならびにそれらの類似体および断片を含めて、いずれの長さのアミノ酸ポリマーをも包含する。3以上のアミノ酸のポリペプチドは、タンパク質オリゴマー、ペプチドまたはオリゴペプチドとも呼ばれる。特に、用語「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、通常、50アミノ酸単量体未満のポリペプチドを意味する。本願明細書で使用する場合用語「アミノ酸」、「アミノ酸単量体」、または「アミノ酸残基」は、20種の天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、および人工アミノ酸のうちのいずれかを指し、DおよびLの光学異性体の両方を包含する。特に、非天然アミノ酸としては、天然に存在するアミノ酸のD−立体異性体が挙げられる(これらは酵素による分解を受けにくいので、有用なリガンド基本単位を含む)。用語「人工アミノ酸」は、標準的なアミノ酸カップリング化学を使用して容易に一緒にカップリングできるが天然に存在するアミノ酸とは類似していない分子構造を持つ分子を意味する。用語「アミノ酸類似体」は、1以上の個々の原子が異なる原子、同位体、または異なる官能基で置き換えられているが他の点ではその類似体が由来するもとのアミノ酸と同一であるアミノ酸を指す。これらのアミノ酸のすべては、標準的なアミノ酸カップリング化学を使用して、ペプチドまたはポリペプチドへと合成的に組み込むことができる。用語「ポリペプチド」は、本願明細書で使用する場合、1以上の単量体、またはアミノ酸単量体以外の基本単位を含むポリマーを含む。単量体、サブユニット、または基本単位という用語は、適切な条件下で同じであるかもしくは異なる化学的性質の別の単量体に化学的に結合された状態にしてポリマーを形成することができる化合物を意味する。用語「ポリペプチド」は、さらに、1以上の基本単位がアミドまたはペプチド結合以外の化学結合によって別の基本単位に共有結合されているポリマーを含むことが意図されている。
【0098】
用語「タンパク質」は、本願明細書で使用する場合、他のタンパク質、DNA、RNA、脂質、代謝産物、ホルモン、ケモカイン、および小分子を含めた他の生体分子との相互作用(これに限定されない)に関与することができる特定の二次構造および三次構造を持つポリペプチドを意味する。本願明細書に記載される例示となるタンパク質は抗体である。
【0099】
用語「抗体」は、本願明細書で使用する場合、抗原による刺激後の活性化されたB細胞によって産生されかつその抗原に特異的に結合して生物系における免疫応答を促進することができるという種類のタンパク質を指す。完全抗体(full antibody)は典型的には2本の重鎖および2本の軽鎖を含む4つのサブユニットからなる。用語抗体は天然および合成の抗体を包含し、これにはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体またはそれらの断片が含まれるが、これらに限定されない。例示となる抗体としてはIgA、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgMなどが挙げられる。例示となる断片としてはFab、Fv、Fab’、F(ab’)2などが挙げられる。モノクローナル抗体は、「エピトープ」と呼ばれる別の生体分子の単一の特定の空間的なかつ極性の組織に特異的に結合し、そしてこれによりその「エピトープ」と呼ばれる別の生体分子の単一の特定の空間的なかつ極性の組織に相補的であるとして定義される抗体である。いくつかの形態では、モノクローナル抗体は同じ構造を有することもできる。ポリクローナル抗体は、異なるモノクローナル抗体の混合物を指す。いくつかの形態では、ポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体のうちの少なくとも2つが異なる抗原エピトープに結合する、モノクローナル抗体の混合物であることができる。この異なる抗原エピトープは、同じ標的上、異なる標的上、またはこれらの組み合わせにあってもよい。抗体は、宿主の免疫化および血清の採取による(ポリクローナル)か、または連続的なハイブリドーマ細胞株を調製し分泌されたタンパク質を集めることによる(モノクローナル)などの当該技術分野で周知の技術によって調製することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、ポリオールポリマーは、図1および図2の概略図に従って、送達されるべき1以上の注目する化合物と非共有結合による複合体または結合を形成する。
【0101】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子構造体は、薬剤と、ポリオール含有ポリマーとを含み、この薬剤は共有結合によりポリオールポリマーにつながれる。薬剤に接合されたポリオールポリマーの例は実施例16〜21に詳述されている。これらの実施形態では、薬剤に接合されたポリオールポリマー(本願明細書中で「ポリオールポリマー−薬剤接合体」と呼ばれる)は、BA分子との相互作用のためにそのポリマーの表面上に部位を提示する構造のナノ粒子を形成する。
【0102】
それらの実施形態のいくつかでは、当該ナノ粒子は、立体的安定化および/または標的指向化官能基をそのナノ粒子に与えるように構成されたBAポリマーをさらに含む。特に、それらの実施形態では、BAポリマーの添加により、自己凝集および他のナノ粒子との望まれない相互作用を最小になり、従って高められた塩および血清の安定性がもたらされる。例えば、立体的安定化は、本願明細書では、実施例12に記載される例示となるナノ粒子によって例証されるようなPEGを有するBAポリマーによってもたらされる。
【0103】
このような実施形態では、このナノ粒子の構造は、先行技術の薬剤送達方法に勝るいくつかの利点、例えば1以上の薬剤の制御放出を提供する能力を与える。この特徴は、例えば、薬剤とポリオールポリマーとの間の生分解性エステル結合の使用によってもたらされうる。当業者なら、この目的のために適切な他の潜在的な結合を認識するであろう。これらの実施形態では、別の利点は、BAポリマー部分を介しての薬剤の特異的な標識指向化を提供する能力である。
【0104】
いくつかの実施形態では、BAポリマーは、MRIもしくは他の類似の技術において造影剤として使用することができるフッ素化されたボロン酸(実施例7)またはフッ素化された切断可能なボロン酸(実施例8)を含んでもよい。このような造影剤は、このナノ粒子によって送達された薬剤の薬物動態または薬力学を追跡するために有用である可能性がある。
【0105】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子構造体は、薬剤と、ポリオールポリマーとを含み、この場合、当該ナノ粒子は修飾リポソームである。これらの実施形態では、この修飾リポソームは、共有結合を介してポリオールポリマーに接合された脂質を含み、その結果、このリポソームの表面はポリオールポリマーを提示する。これらの実施形態では、この修飾リポソームは、送達されるべき薬剤がこのリポソームナノ粒子内に収容されるように、形成する。
【0106】
用語「リポソーム」は、本願明細書で使用する場合、脂質から構成される小胞構造を意味する。この脂質は、典型的には、長い炭化水素鎖を含む尾部基(tail group)および親水性の頭部基(head group)を有する。この脂質は、送達されるべき薬剤を収容するのに適した内側の水系環境と脂質二重層を形成するように配置される。このようなリポソームは、細胞表面受容体または他の注目する標的による特異的な認識のための適切な標的指向化リガンドまたは分子を含んでもよい外部表面を呈する。
【0107】
用語「共役した」は、本願明細書で使用する場合、1つの分子が第2の分子と共有結合を形成しかつ原子が交互の単結合および多重(例えば二重)結合(例えば、C=C−C=C−C)で共有結合して互いに影響を及ぼし、電子の非局在化をもたらす結合を含むということを意味する。
【0108】
本開示のさらに他の実施形態では、ナノ粒子構造体は薬剤およびポリオールを含み、この場合、当該ナノ粒子は修飾されたミセルである。これらの実施形態では、この修飾されたミセルは、疎水性ポリマーブロックを含むように修飾されたポリオールポリマーを含む。
【0109】
用語「疎水性ポリマーブロック」は、本開示において使用される場合、性質上疎水性であろうポリマーのセグメントを意味する。
【0110】
用語「ミセル」は、本願明細書で使用する場合、液体の中に分散した分子の凝集体を指す。水溶液中の典型的なミセルは、親水性の「頭部」領域が周囲の溶媒と接し、疎水性の単一の尾部領域をそのミセルの中心に封鎖する凝集体を形成する。本開示では、この頭部領域は、例えばポリオールポリマーの表面領域であってもよく、他方で、尾部領域は、例えばポリオールポリマーの疎水性ポリマーブロック領域であってもよい。
【0111】
これらの実施形態では、疎水性ポリマーブロックを持つポリオールポリマーは、送達されるべき薬剤と混合されたとき、修飾されたミセルであるナノ粒子を形成して、送達されるべき薬剤がこのナノ粒子内に収容されるように配列する。このようなナノ粒子の実施形態は、その表面上に、前述の実施形態に係る標的指向化官能基を有するまたは有しないBAポリマーと相互作用するのに適したポリオールポリマーを提示する。これらの実施形態では、この目的のために使用することができるBAポリマーとしては、式(I)または(II)の親水性のAおよび疎水性のBを持つBAポリマーが挙げられる。この相互作用は、それが上記の他のナノ粒子の実施形態についてもたらすのと同じまたは類似の利点をもたらす。
【0112】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子または関連する構成成分は、許容できる溶媒と一緒に組成物の中に含まれてもよい。用語「溶媒」は、本願明細書で使用する場合、有効成分として組成物の中に含まれるナノ粒子に対して通常、溶媒、担体、結合剤、賦形剤または希釈剤として作用する種々の媒質のいずれかを意味する。
【0113】
いくつかの実施形態では、当該組成物が個体に投与されることになっている場合、その組成物は医薬組成物であることができ、この許容できる溶媒は薬学的に許容できる溶媒であることができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、賦形剤または希釈剤と一緒に医薬組成物の中に含まれることができる。特に、いくつかの実施形態では、1以上の適合性でかつ薬学的に許容できる溶媒と組み合わせて、特に薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤と組み合わせてナノ粒子を含有する医薬組成物が開示される。
【0115】
用語「賦形剤」は、本願明細書で使用する場合、薬物の有効成分のための担体として使用される不活性物質を意味する。本願明細書に開示される医薬組成物のための適切な賦形剤としては、個体のからだが当該ナノ粒子を吸収する能力を高めるいずれの物質も挙げられる。適切な賦形剤としては、簡便かつ正確な投薬を可能にするために、ナノ粒子を有する処方物を増量させるために使用することができるいずれの物質もまた挙げられる。単回投薬量としてのその使用に加えて、賦形剤は、ナノ粒子の取り扱いを補助するために製造プロセスで使用することができる。薬物の投与経路、および形態に応じて、異なる賦形剤が使用されてもよい。例示となる賦形剤としては、固結防止剤(antiadherent)、結合剤、コーティング崩壊剤、充填剤、香料(甘味料など)および着色料、滑剤、潤滑剤、防腐剤、吸着剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
用語「希釈剤」は、本願明細書で使用する場合、組成物の有効成分を希釈または保持するために使用される希釈するための薬剤を意味する。適切な希釈剤としては、医薬製剤の粘度を減少させることができるいずれの物質も挙げられる。
【0117】
ある実施形態では、組成物、特に医薬組成物は、全身投与用に処方することができ、この全身投与は非経口投与、より具体的には静脈内投与、皮内投与、および筋肉内投与を含む。
【0118】
非経口投与用の例示となる組成物としては、ナノ粒子を含む滅菌水溶液、注射剤または懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非経口投与用組成物は、以前にフリーズドライ処理された凍結乾燥された形態で調製された粉末状組成物を、生物学的に適合した水系液体(蒸留水、生理溶液または他の水溶液)に溶解させることにより、使用時に調製することができる。
【0119】
用語「凍結乾燥(lyophilization)」(フリーズドライ処理(freeze−drying)または低温乾燥(cryodesiccation)としても知られる)は、典型的には傷みやすい物質を保存するまたはその物質をより運搬に便利にするために使用される脱水プロセスを意味する。フリーズドライは、物質を凍結させ、次いで周囲の圧力を低下させ、そしてこの物質の中の凍結した水を固相から気体へと直接昇華させることができる十分な熱を加えることにより、機能する。
【0120】
医薬での応用においては、フリーズドライ処理は、製品(ワクチンおよび他の注射剤など)の貯蔵寿命を延ばすためにしばしば使用される。水を物質から除去しその物質をバイアルの中に密封することにより、その物質は容易に保存でき、輸送でき、そして後で注射のためにそのもとの形態へと再構成することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子は所定の標的へと送達される。いくつかの実施形態では、この標的はインビトロ生物系であり、当該方法は、標的を本願明細書に記載されるナノ粒子と接触させることを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、個体への薬剤の送達のために1つの方法が提供される。この方法は、種々の開示された実施形態に係る適切なナノ粒子を処方することを含む。このナノ粒子もまた、いくつかの開示された実施形態に係る薬学的に許容できる組成物へと処方されてもよい。この方法は、ナノ粒子を被験体に送達することをさらに含む。当該ナノ粒子を個体に送達するために、このナノ粒子またはナノ粒子処方物は、経口で、非経口で、局所に、または直腸に与えられてもよい。それらは、各投与経路に適した形態で送達される。例えば、ナノ粒子組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態で、注射、吸入、点眼薬、軟膏剤、座薬、点滴により;ローションまたは軟膏剤により局所に;および座薬により直腸に投与することができる。
【0123】
用語「個体」は、本願明細書で使用する場合、単一の生物学有機体を包含し、この例としては植物または動物、特に高等動物、特に脊椎動物(哺乳動物、特にヒトなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
語句「非経口投与」および「非経口投与された」は、本願明細書で使用する場合、経腸投与および局所投与以外の投与方法、通常は注射による方法を意味し、これには静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内(intradennal)、腹腔内、経気管、皮下、外皮下(subcuticular)、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内および幹内(intrastemal)への注射および点滴が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
語句「全身投与」、「全身投与された」、「末梢投与」および「末梢投与された」は、本願明細書で使用する場合、中枢神経系へと直接投与すること以外のナノ粒子またはその組成物の投与、そのため、このナノ粒子またはその組成物は個体の系に入り、従って代謝および他の類似のプロセスにさらされる投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0126】
本願明細書に記載される医薬組成物の中の有効成分または薬剤の現実の投薬レベルは、特定の個体、組成物、および投与方法に対して、その個体に対して毒性があることがなく、所望の治療反応を成し遂げるのに有効な有効成分の量を得るように、変更されてもよい。
【0127】
これらの治療用ポリマー接合体は、経口、経鼻(例えば噴霧剤によるなど)、直腸、膣内、非経口、大槽内および局所的に(粉末、軟膏剤またはドロップなどによる。口腔内および舌下を含む)が挙げられるいずれかの適切な投与経路によって、治療のためにヒトおよび他の動物に投与されてもよい。
【0128】
選択される投与経路にかかわらず、本発明の治療用ポリマー接合体(適切な水和された形態で使用されてもよい)、および/または医薬組成物は、当業者にとって公知である従来の方法によって薬学的に許容できる剤形へと処方される。
【0129】
特にいくつかの実施形態では、送達される化合物は、個体におけるある状態を治療または予防するための薬物である。
【0130】
用語「薬物」または「治療薬」は、個体におけるある状態の治療、予防、または診断において使用することができるか、または個体の身体的または精神的健康状態を別の態様で増進させるために使用することができる活性薬剤を意味する。
【0131】
用語「状態」は、本願明細書で使用する場合、完全な身体的、精神的および恐らくは社会的な健康の状況を連想させる個体全体またはその1以上の部分の身体的状況とは一致しない、個体のからだ全体またはその1以上の部分の身体的状況を、通常は意味する。本願明細書に記載される「状態」には障害および疾患が含まれるがこれらに限定されず、ここで用語「障害」は、体またはそのいずれかの一部分の機能的異常性に関連する生体の状態を意味し、用語「疾患」は、体またはそのいずれかの一部分の正常な機能性を損なっておりかつ典型的には徴候および症候を識別することにより明らかにされる生体の状態を意味する。例示となる状態としては、個体の怪我、能力障害、障害(精神的および身体的障害を含む)、症候群、感染、逸脱した挙動、ならびに個体のからだまたはその一部分の構造および機能の非定型の変化した状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
用語「治療」は、本願明細書で使用する場合、ある状態についての診療の一部であるかまたはある状態を医学的にまたは外科的に扱ういずれかの活動を意味する。
【0133】
用語「予防」は、本願明細書で使用する場合、個体における状態に由来する死亡率または罹患率の重荷を低下させるいずれかの活動を意味する。これは一次予防、二次予防および第三次予防のレベルで起こり、a)一次予防は疾患の発症を回避し、b)二次予防活動は早期の疾患治療、これによりその疾患の進行および症候の出現を防止するための介入の機会を増やすことを目指し、c)第三次予防は、機能を回復することおよび疾患に関連する合併症を低下させることによりすでに確立された疾患の負の影響を低減する。
【0134】
本願明細書に記載されるナノ粒子によって送達することができかつ薬物として適切である例示となる化合物は、放射線処置(ホウ素中性子捕獲など)で使用されるべき電磁放射線を放射することができる化合物(10B同位体など)を含む。さらなる治療薬は、当該技術分野で公知のものを含めた、いずれかの親油性または親水性の、合成のまたは天然に存在する生物活性のある治療薬を含む。The Merck Index,An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals、第13版、2001年、Merck and Co.,Inc.、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーション(Whitehouse Station)。このような治療薬の例としては、小分子医薬品、抗生物質、ステロイド、ポリヌクレオチド(例えばゲノムDNA、cDNA、mRNA、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ウイルス、およびキメラポリヌクレオチド)、プラスミド、ペプチド、ペプチド断片、小分子(例えばドキソルビシン)、キレート剤(例えばデフェロキサミン(DESFERAL)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、天然物(例えばタキソール、アンホテリシン)、および他の生物活性のある高分子(例えば、タンパク質および酵素など)が挙げられるが、これらに限定されない。本願明細書に記載されるナノ粒子とともに治療薬としてしようすることができる活性薬剤(治療薬)を列挙する米国特許第6,048,736号も参照。小分子治療薬は、複合粒子内の治療薬であってもよいだけではなく、さらなる実施形態では、この複合材料の中のポリマーに共有結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、その共有結合は、(例えばプロドラッグ形態またはジスルフィなどの生分解性結合を介して)可逆的であり、治療薬を送達する別の方法を提供する。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子を用いて送達することができる治療薬としては、エポチロン、カンプトテシン系薬物、タキソールなどの化学療法薬、または核酸(プラスミド、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドアプタマーまたはこれらの組み合わせなど)、および本開示を読めば当業者によって特定できるさらなる薬物が挙げられる。
【0135】
いくつかの実施形態では、送達される化合物は、個体の細胞または組織を撮像することに適した化合物である。本願明細書に記載されるナノ粒子によって送達することができ、かつ画像法に適している例示となる化合物は、磁気共鳴画像法用の19F同位体、PET画像法用の18Fまたは64Cuなどの同位体を含有する化合物を含む。
【0136】
特に、本願明細書に記載されるナノ粒子は、19F含有BAポリマーを含有するように構成することができる。例えば、19F原子は、切断可能ではないBAポリマー化合物または切断可能なBAポリマー化合物へと組み込むことができる。19F原子についての他の場所は、BAポリマー成分、ポリオールポリマー成分上、または送達されるべき薬剤上に存在できる。これらのおよび他の変更態様は、当業者には明らかであろう。
【0137】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子は、農業において使用される化学物質を送達するために使用することができる。本発明の別の実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子によって送達される薬剤は、殺菌上の有用性および農業における有用性を有する生物活性のある化合物である。これらの生物活性のある化合物には、当該技術分野で公知のものが含まれる。例えば、適切な農業上生物活性のある化合物としては、肥料、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、および防かび剤(mildewcide)が挙げられるが、これらに限定されない。消毒薬は、都市の上水道および工業用水系(冷却水など)、製紙における白く泡立った水系を処理するための水処理でも使用される。微生物の攻撃または分解を受けやすい水系は、皮革工業、繊維工業、および塗装業または塗料産業でも見出される。このような消毒薬およびそれらの使用の例は、個々におよび組み合わせて、米国特許第5,693,631号明細書、同第6,034,081号明細書、および同第6,060,466号明細書(これらは、参照により本願明細書に援用したものとする)に記載されている。上で論じたものなどの活性薬剤を含有する組成物は、有効成分それ自体について知られているのと同様にして使用されてもよい。注目すべきことに、このような使用は薬理学的な使用ではないので、当該複合材料のポリマーは、薬学的な使用で必要とされる毒性プロファイルを満たすことは必ずしも必要ではない。
【0138】
ある実施形態では、ポリオールポリマーおよびBAポリマーを含むナノ粒子は、本願明細書中で示された化合物、特に薬剤のいずれかを、ナノ粒子を使用して送達するのに適したシステムの中に含まれてもよい。このシステムのいくつかの実施形態では、ナノ粒子は、個体への投与のためのナノ粒子を調製することに適した構成成分を具える。
【0139】
本願明細書に開示されるシステムは、部品のキットの形態で提供されてもよい。例えば当該ポリオールポリマーおよび/またはBAポリマーは、分子単独としてまたは適切な賦形剤、溶媒もしくは希釈剤の存在下で含まれてもよい。
【0140】
部品のキットでは、ポリオールポリマー、BAポリマー、および/または送達されるべき薬剤は、独立にキットの中に含まれ、恐らく適切な溶媒担体または助剤と一緒に組成物の中に含まれる。例えば、ポリオールポリマーおよび/またはBAポリマーは、単独で1以上の組成物の中に含まれてもよく、かつ/または適切なベクターの中に含まれてもよい。また、送達されるべき薬剤は、適切な溶媒担体または助剤と一緒に組成物の中に含まれてもよい。あるいは、その薬剤は末端使用者によって供給されてもよく、その部品のキットの中に存在しなくてもよい。さらには、当該ポリオールポリマー、BAポリマーおよび/または薬剤は、ナノ粒子への適切な組み込みに適した種々の形態で含まれることができる。
【0141】
さらなる構成成分も含まれてよく、そしてそれらは微小流体チップ、参照基準、緩衝液、および本開示を読めば当業者によって特定できるさらなる構成成分を含む。
【0142】
本願明細書に開示される部品のキットでは、そのキットの構成成分は、本願明細書に開示される方法を実施するために、適切な取扱説明および他の必要な試薬を具えていてもよい。いくつかの実施形態では、当該キットは、当該組成物を別々の容器の中に収容することができる。このアッセイを実施するための取扱説明、例えば書面によるかまたは音声による取扱説明、書類またはテープもしくはCD−ROMなどの電子的なサポートも、このキットの中に含まれてもよい。当該キットは、使用される特定の方法によっては、他の包装された試薬および物質(洗浄緩衝液など)を含むこともできる。
【0143】
当該組成物の適切な担体薬剤または助剤の特定に関するさらなる詳細、ならびに一般に当該キットの製造および包装は、本開示を読めば当業者が特定することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、当該ナノ粒子の個々の成分を調製し、次いで所望の複合材料のナノ粒子構造体に到達するためにこれらの成分を種々の順序で混合することにより、調製されてもよい。成分の調製および混合は、当業者によって知られる適切な溶液の中で実施される。
【0145】
用語「混合(する)」は、本願明細書で使用する場合、注目する分子を含む1つの溶液を注目する別の分子を含む別の溶液に加えることを意味する。例えば、ポリオールポリマーの水溶液は、本開示に関するBAポリマーの水溶液と混合されてもよい。
【0146】
用語「溶液」は、本願明細書で使用する場合、注目する分子を含むいずれかの液体相の試料を意味する。例えば、ポリオールポリマーの水溶液は、水またはいずれかの緩衝化された溶液、特に水溶液の中で希釈されたポリオールポリマーを含んでもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーを送達されるべき薬剤と混合し(図1および図2)、ポリオールポリマー−薬剤ナノ粒子を形成することにより、調製することができる。他の実施形態では、ナノ粒子は、BAポリマーをこのポリオールポリマー−薬剤ナノ粒子とさらに混合することにより、調製されてもよい。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーをBAポリマーと混合し、次いで送達されるべき薬剤を混合することにより、調製される。さらに他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマー、BAポリマー、および送達されるべき薬剤を同時に混合することにより、調製される。
【0148】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、本開示の種々の実施形態に係るポリオールポリマー−薬剤接合体を形成し、このようにしてポリオールポリマー−薬剤接合体から構成されるナノ粒子を調製することにより、調製される。他の実施形態では、ポリオールポリマー−薬剤接合体から構成されるナノ粒子は、ナノ粒子を適切な水溶液に溶解させることにより、調製されてもよい。なおさらなる実施形態では、ポリオールポリマー−薬剤接合体から構成されるナノ粒子は、ポリオールポリマー−薬剤接合体を、標的指向化リガンドを提供するまたは提供しないBAポリマーと混合することにより、調製されてもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、疎水性ポリマーブロックを持つポリオールポリマーを送達されるべき薬剤と混合し、このようにして本開示の実施形態に係る修飾されたミセルを調製することにより、調製することができる。他の実施形態では、ナノ粒子は、修飾されたミセルをBAポリマーとさらに混合することにより、調製されてもよい。さらに他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーをBAポリマーと混合し、次いで送達されるべき薬剤を混合し、このようにして修飾されたミセルであるナノ粒子を調製することによって、調製されてもよい。
【0150】
本開示のいくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと接合された脂質をBAポリマーおよび/または送達されるべき薬剤と混合し、このようにして修飾リポソームを調製することにより、調製することができる。種々の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと接合された脂質をBAポリマーと混合し、次いで送達されるべき薬剤を混合することにより、調製されてもよい。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと接合された脂質を送達されるべき薬剤と混合することにより、調製されてもよい。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと接合された脂質を送達されるべき薬剤と混合し、次いでBAポリマーを混合し、このようにして修飾リポソームであるナノ粒子を調製することにより、調製されてもよい。
【0151】
本開示のいくつかの実施形態に係るナノ粒子の形成は、当業者によって知られる技術および手順を用いて分析することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ粒子内への核酸薬剤の組み込みをモニターおよび測定するために、ゲル遅延度アッセイが使用される(実施例10)。いくつかの実施形態では、公知の方法を使用して適切なナノ粒径および/またはゼータ電位を選択することができる(実施例11)。
【0152】
当該組成物の適切な担体薬剤または助剤の特定に関するさらなる詳細、ならびに一般に当該キットの製造および包装は、本開示を読めば当業者が特定することができる。
【実施例】
【0153】
本願明細書に記載される方法システムは、以下の実施例でさらに例証される。これらの実施例は、例証として提供されており、限定することを意図していない。当業者なら、核酸検出および他の標的(タンパク質、抗原、真核生物細胞または原核生物細胞など)の検出の方法について詳細に記載されている特徴の適用性を理解するであろう。
【0154】
すべての化学試薬は商業的供給業者から入手し、さらに精製することなくそのまま使用した。ポリマー試料は、示差屈折率(RI)検出器、示差粘度計(differential viscometer)および小角光散乱検出器からなるTDA 302 三重検出器アレイを具えたViscotek GPC Systemで分析した。7.5%酢酸溶液を、1mL/分の流量で溶離液として使用した。
【0155】
pGL3、蛍ルシフェラーゼ遺伝子を含有するプラスミドは、pGL3を発現する細菌から抽出し精製した。siGL3は、インテグレーティッド・ディーエヌエー・テクノロジーズ(Integrated DNA Technologies)から購入した(配列を下記に提供する)。siCON1(配列を下記に提供する)は、ダーマコン(Dharmacon)から購入した。HeLa細胞は、カチオン性ムチン酸ジアミン−DMSポリマーによるpDNAまたはsiRNAの送達の有効性を決定するために使用した。
【表1】
【0156】
(実施例1:ムチン酸ジメチルエステル(1)の合成)
5g(22.8mmol)のムチン酸(アルドリッチ(Aldrich))を、120mLのメタノールおよび0.4mLの濃硫酸が入っている500mLの丸底フラスコに加えた。この混合物を、一定撹拌下で、85℃で一晩還流させた。この混合物をその後濾過し、メタノールで洗浄し、次いで80mLのメタノールおよび0.5mLのトリエチルアミンの混合物から再結晶した。真空下で一晩乾燥した後、8.0g(33.6mmol、71%)のムチン酸ジメチルエステルを得た。1H NMR((CD3)2SO) δ 4.88−4.91(d,2H),4.78−4.81(m,2H),4.28−4.31(d,2H),3.77−3.78(d,2H),3.63(s,6H)。ESI/MS(m/z):261.0[M+Na]+。
【化16】
【0157】
(実施例2:N−BOC保護ムチン酸ジアミン(2)の合成)
8g(33.6mmol)のムチン酸ジメチルエステル(1;実施例1)、12.4mL(88.6mmol)のトリエチルアミンおよび160mLのメタノールの混合物を、500mLの丸底フラスコの中で、一定撹拌下、85℃で0.5時間、還流下で加熱し、その後、メタノール(32mL)に溶解した14.2g(88.6mmol)のN−BOCジアミン(フルカ(Fluka))を加えた。次いでこの反応懸濁液を還流状態に戻した。一晩還流した後、この混合物を濾過し、メタノールで洗浄し、メタノールから再結晶し、次いで真空下で乾燥し、9.4g(19mmol、57%)のN−BOC保護ムチン酸ジアミンを得た。1H NMR((CD3)2SO) δ 7.66(m,2H),6.79(m,2H),5.13−5.15(d,2H),4.35−4.38(d,2H),4.08−4.11(m,2H),3.78−3.80(d,2H),2.95−3.15(m,8H),1.38(s,18)。ESI/MS (m/z):517.1[M+Na]+。
【化17】
【0158】
(実施例3:ムチン酸ジアミン(3)の合成)
8g(16.2mmol)の上記N−BOC保護ムチン酸ジアミン(2;実施例2)を、メタノール中の3M HCl(160mL)を含む500mLの丸底フラスコに移し、一定撹拌下で、85℃で一晩還流させた。その後沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄し、一晩真空乾燥して、5.7g(15.6mmol、96%)のムチン酸ジアミンを得た。1H NMR((CD3)2SO) δ 7.97(m,8H),5.35−5.38(m,2H),4.18−4.20(m,2H),3.82(m,2H),3.35−3.42(m,8H),2.82−2.90(m,4H)。ESI/MS(m/z):294.3[M]+,317.1[M+Na]+,333.0[M+K]+。
【化18】
【0159】
(実施例4:ムチン酸ジアミン−DMS共重合体(MAP)(4))
1.5mLのエッペンドルフチューブ(eppendorff tube)に、0.8mLの0.1M NaHCO3の中の85.5mg(0.233mmol)の実施例3のビス(塩酸塩)(3)の溶液を入れた。スベルイミノ酸ジメチル・2HCl(DMS、ピアースケミカル社(Pierce Chemical Co.)、63.6mg、0.233mmol)を加え、この溶液をボルテックスにかけ、遠心してこれらの成分を溶解させた。得られた混合物を室温で15時間撹拌した。次いでこの混合物を水で8mLまで希釈し、1N HClを加えてpHを4にした。次いでこの溶液を、3500 MWCO 透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で24時間透析した。透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥し、49mgの白色のふわふわした粉末を得た。1H NMR(500MHz,dDMSO) δ 9.15(bs),7.92(bs),5.43(bs),4.58(bs),4.17(bs),3.82(bs),3.37(bs),3.28(bs),2.82(bs),2.41(bs),1.61(bs),1.28(bs)。13C NMR(126MHz,dDMSO) δ 174.88(s,1H),168.38(s,1H),71.45(s,4H),71.22(s,3H),42.34(s,2H),36.96(s,3H),32.74(s,3H),28.09(s,4H),26.90(s,4H)。Mw[GPC]=2520、Mw/Mn=1.15。
【化19】
ポリマー4は、カチオン性A−B型(繰り返し構造はABABAB....である)のポリオール含有ポリマーの例である。
【0160】
(実施例5:ボロン酸−アミド−PEG5000(5))
実施例4のポリマーが核酸、例えば、siRNAとともに組織化されるとき、それらはナノ粒子を形成するであろう。これらのナノ粒子は、哺乳動物で使用されるための立体的安定化を有する必要があるであろう。そして任意にそれらは標的指向化薬剤が含まれるようにできるであろう。これらの2つの機能を発揮するために、当該ナノ粒子は立体的安定化およびPEG−標的指向化リガンドのためのPEGで装飾されてもよい。これをするために、ボロン酸を含むPEG化合物を調製する。例えば、ボロン酸を含むPEGは、以下の実施例に従って合成することができる。
【0161】
332mgの4−カルボキシフェニルボロン酸(2mmol)を8mLのSOCl2に溶解した。これに数滴のDMFを加え、この混合物をアルゴン下で2時間還流させた。過剰のSOCl2を減圧下で除去し、得られた固体を10mLの無水ジクロロメタンに溶解した。この溶液に、5mLのジクロロメタンに溶解した500mgのPEG5000−NH2(2mmol)および418μLのトリエチルアミン(60mmol)を0℃、アルゴン下で加えた。得られた混合物を室温まで加温し、撹拌を一晩続けた。ジクロロメタン溶媒を減圧下で除去し、得られた液体を、20mLのジエチルエーテルを用いて沈殿させた。この沈殿物を濾過し、乾燥し、ddH2Oに再溶解した。次いでこの水溶液を0.45μmフィルターを用いて濾過し、3500 MWCO 透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で24時間透析した。透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥した。1H NMR(300MHz,dDMSO) δ 7.92−7.77(m),4.44(d),4.37(t),3.49(m),2.97(s)。
【化20】
【0162】
(実施例6:ボロン酸−ジスルフィド−PEG5000(6))
実施例5のPEG化合物の(還元条件下で)切断可能なバージョンも、以下のようにして合成できる。
【0163】
250mgのPEG5000−SH(0.05mmol、レイサン・バイオ社(LaySanBio Inc.))を、撹拌子を具えたガラスバイアルに加えた。これに、4mLのメタノールに溶解した110mgのアルドリチオール−2(0.5mmol、アルドリッチ(Aldrich))を加えた。この溶液を室温で2時間撹拌し、その後、1mLのメタノール中の77mgのメルカプトフェニルボロン酸(0.5mmol、アルドリッチ(Aldrich))を加えた。得られた溶液を室温でさらに2時間撹拌した。メタノールを真空下で除去し、残渣を2mLのジクロロメタンに再溶解した。18mLのジエチルエーテルをこのジクロロメタン溶液に加え、この混合物を1時間静置させた。得られた沈殿物を遠心分離を介して集め、ジエチルエーテルで数回洗浄し、乾燥した。乾燥した固体を水に再溶解し、0.45μmフィルターを用いて濾過し、3500 MWCO透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で15時間透析した。この透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥した。1H NMR(300MHz,dDMSO) δ 8.12−8.00(m),7.83−7.72(m),7.72−7.61(m),7.61−7.43(m),3.72(d,J=5.4),3.68−3.15(m),3.01−2.83(m)。
【化21】
【0164】
(実施例7:(2,3,5,6)−テトラフルオロフェニルボロン酸−PEG5000(7)の合成)
実施例5のボロン酸を含有するPEG化合物のフッ素化されたバージョンは合成することができ、治療用のナノ粒子とともに造影剤として使用することができる。画像法のためのフッ素原子は、以下に記載および説明するようにして組み込むことができる。
【0165】
(2,3,5,6)−フルオロカルボキシフェニルボロン酸を過剰のSOCl2(約100当量)に溶解し、これに数滴のDMFを加える。この混合物を、アルゴン下で2時間還流させる。過剰のSOCl2を減圧下で除去し、得られた残基を無水ジクロロメタンに溶解する。この溶液に、ジクロロメタンに溶解したPEG5000−NH2(1当量)およびトリエチルアミン(30当量)を、アルゴン下、0℃で加える。得られた混合物を室温まで加温し、撹拌を一晩続けた。ジクロロメタン溶媒を減圧下で除去し、得られた液体をジエチルエーテルで沈殿させる。この沈殿物を濾過し、乾燥し、ddH2O中に再溶解する。次いでこの水溶液を、0.45μmフィルターを用いて濾過し、3500 MWCO 透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で24時間透析する。透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥する。
【化22】
フッ素含有化合物は、当該ナノ粒子の中に19Fを与えるのに有用である。この19Fは、標準的な患者用MRIを使用する磁気共鳴分光法によって検出することができる。19Fの添加により、当該ナノ粒子が撮像できる(これは、単に撮像のためだけにできるし、または治療薬の付加があれば撮像および治療を可能にできる)。
【0166】
(実施例8:(2,3,5,6)−テトラフルオロフェニルボロン酸−ジスルフィド−PEG5000(8)の合成)
実施例5のボロン酸を含有する切断可能なPEG化合物のフッ素化されたバージョンは合成することができ、治療用ナノ粒子とともに造影剤として使用することができる。画像法のためのフッ素原子は、以下に記載および説明するようにして組み込むことができる。
【0167】
250mgのPEG5000−SH(0.05mmol、レイサン・バイオ社(LaySanBio Inc.))を、撹拌子を具えたガラスバイアルに加える。これに、4mLのメタノールに溶解した110mgのアルドリチオール(aldrithiol)−2(0.5mmol、アルドリッチ(Aldrich))を加える。この溶液を室温で2時間撹拌し、この後、1mLのメタノール中の77mgの(2,3,5,6)−フルオロ−4−メルカプトフェニルボロン酸(0.5mmol)を加える。得られた溶液を室温でさらに2時間撹拌する。メタノールを真空下で除去し、残渣を2mLのジクロロメタンに再溶解する。18mLのジエチルエーテルをこのジクロロメタン溶液に加え、この混合物を1時間静置させた。得られた沈殿物を遠心分離を介して集め、ジエチルエーテルで数回洗浄し、乾燥する。乾燥した固体を水に再溶解し、0.45μmフィルターを用いて濾過し、3500 MWCO 透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で15時間透析する。透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥する。
【化23】
【0168】
(実施例9:ボロン酸−PEG5000−トランスフェリン(9)の合成)
標的指向化薬剤は、例えばトランスフェリンの連結に関して図12に概略的に説明するアプローチに従って、実施例5〜8の化合物においてボロン酸から見てPEGの他端に配置することができるであろう。
【0169】
従って、治療薬としての核酸を含有するシステムの構成成分はありうる(標的指向化リガンドは、トランスフェリンのようなタンパク質(図12)、抗体または抗体断片、RGDまたはLHRHのようなペプチド、葉酸またはガラクトースなどのような小分子であってよい)。ボロン酸ペグ化標的指向化薬剤は以下のようにして合成することができる。
【0170】
特に、図12に概略的に説明するアプローチに従ってボロン酸PEG5000−トランスフェリンを合成するために、以下の手順を実施した。1mLの0.1M PBS緩衝液(p.H.7.2)中の10mg(0.13μmol)のヒトホロトランスフェリン(鉄に富む)(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))の溶液を、3.2mgのOPSS−PEG5000−SVA(5当量、0.64μmol、レイサン・バイオ社(LaySanBio Inc.))に加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌した。このペグ化トランスフェリンを、Ultracel 50,000 MWCO(Amicon Ultra−4、ミリポア(Millipore))を使用して未反応のOPSS−PEG5000−SVAから、およびゲル濾過カラムG3000SWxl(東ソー・バイオセップ(Tosoh Biosep))を使用して未反応のトランスフェリンから精製した(HPLCおよびMALDI−TOF分析によって確認した)。次いで100μL中の100μgのOPSS−PEG5000ペグ化トランスフェリンを、室温で20μL、4−メルカプトフェニルボロン酸(1μg/μL、20μg、100当量)とともに1時間インキュベーションした。インキュベーション後、過剰の4−メルカプトフェニルボロン酸およびピリジル−2−チオン副生成物を除去するために、この溶液を、YM−30,000 NMWI 装置(ミリポア(Millipore))を用いて2回透析した。
【0171】
(実施例10:MAP−核酸粒子の処方物 − ゲル遅延度アッセイ)
図1に示すように、DNAseおよびRNASeを含まない水中の1μgのプラスミドDNAまたはsiRNA(0.1μg/μL、10μL)を、DNAseおよびRNASeを含まない水の中の種々の濃度の10μLのMAPと混合し、0.5、1、1.5、2、2.5、および5の電荷比(ポリマー上の「+」電荷:核酸上の「−」電荷)を得た。得られた混合物を室温で30分間インキュベーションした。この20μL溶液の10μLを、3.5μLの添加液を用いて1%アガロースゲル上に添加し、図3および図4に示すように、このゲルを80Vで45分間電気泳動にかけた。このナノ粒子内に含有されない核酸は、このゲル上を移動するであろう。これらの結果は、当該ナノ粒子内に核酸を含有するために必要な電荷比に対する指針を与える。
【0172】
(実施例11:MAP−核酸粒子の粒径およびゼータ電位)
DNAseおよびRNASeを含まない水中の1μgのプラスミドDNA(0.1μg/μL、10μL)を、DNAseおよびRNASeを含まない水中の種々の濃度の10μLのMAPと混合し、0.5、1、1.5、2、2.5、および5の電荷比を得た。得られた混合物を、室温で30分間インキュベーションした。次いで20μLの混合物を、粒径測定用に、DNAseおよびRNASeを含まない水で70μLに希釈した。次いでこの70μL溶液を、ゼータ電位測定用に、1mM KClで1400μLに希釈した。粒径およびゼータ電位の測定を、ZetaPals動的光散乱(DLS)機器(ブルックヘブン・インスツルメンツ(Brookhaven Instruments))で行った。結果を図5に示す。
【0173】
(実施例12:ボロン酸PEG5Kを用いたペグ化による粒径安定化)
図2に図表で示すように、DNAseおよびRNASeを含まない水中の2μgのプラスミドDNA(0.45μg/μL、4.4μL)を、DNAseおよびRNASeを含まない水の中で80μLに希釈した。このプラスミド溶液を、DNAseおよびRNASeを含まない水の中で同じく80μLに希釈した4.89μgのMAP(0.5μg/μL、9.8μL)と混合し、3+/−の電荷比および0.0125μg/μLの最終のプラスミド濃度を得た。得られた混合物を室温で30分間インキュベーションした。この溶液に、480μgのボロン酸PEG5K、(化合物6;実施例6)、(20μg/μL、24μL)を加えた。次いでこの混合物をさらに30分間インキュベーションし、DNAseおよびRNASeを含まない水の中で0.5mL 100,000 MWCO膜(BIOMAX、ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation))を用いて2回透析し、160μLのDNAseおよびRNASeを含まない水の中で再構成した。この溶液の半分を、ゼータ電位測定(図6)用に、1.4mLの1mM KClで希釈した。このBA含有ナノ粒子のゼータ電位は、含有しないナノ粒子よりも低いゼータ電位を示すということに留意されたい。これらの結果は、当該BA含有ナノ粒子が当該ナノ粒子の外部に位置しているBAを有するという結論を支持する。他の半分は、粒径を測定するために使用した。粒径を5分間毎分測定し、その後、10.2μLの10× PBSを加え、最終の90.2μL溶液が1× PBSの中にあるようにした。次いで図7に示すように、再び粒径を、さらに10分間毎分測定した。非粒子成分から(濾過によって)分離したBA含有ナノ粒子はPBS中で安定であるのに対し、BAを含まない粒子は安定ではない。これらのデータは、このBA含有ナノ粒子はその外部に存在するBAを有するという結論を支持する。なぜなら、このBA含有ナノ粒子はPBS中での凝集に対して安定であるからである。
【0174】
(実施例13:HeLa細胞へのMAP/pDNA粒子の形質移入)
形質移入の48時間前に、HeLa細胞を24穴プレートに20,000細胞/ウェルで播種し、10%FBSを補った培地中で増殖させた。MAP粒子を、種々のポリマー:pDNAの電荷比で1μgのpGL3を200μLのOpti−MEM I中に含有するように処方した(実施例9を参照)。増殖培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、この粒子処方物を加えた。その後この細胞を、37℃および5% CO2で5時間インキュベーションし、その後、10% FBSを補った800μLの増殖培地を加えた。48時間のインキュベーション後、MTSアッセイを使用して、この細胞の画分を細胞生存率について分析した。残りの細胞を、100μLの1× Luciferase Cell Culture Lysis Reagent(ルシフェラーゼ細胞培養液溶解試薬)の中に溶解した。100μLのLuciferase Assay Reagent(ルシフェラーゼアッセイ試薬)を10μLの細胞ライゼートに加えることによりルシフェラーゼ活性を測定し、Monolightルミノメーター使用してバイオルミネセンスを定量した。その後、ルシフェラーゼ活性は、10,000細胞あたりの相対発光量(relative light unit、RLU)として報告される。結果を図8および図9に示す。
【0175】
(実施例14:HeLa細胞へのMAP/pDNAおよび/またはsiRNA粒子の同時形質移入)
形質移入の48時間前に、HeLa細胞を24穴プレートに20,000細胞/ウェルで播種し、10% FBSを補った培地中で増殖させた。MAP粒子を、5+/−の電荷比で1μgのpGL3および50nMのsiGL3を200μLのOpti−MEM I中に含有するように処方した。pGL3のみまたはpGL3およびsiCONを含有する粒子を対照として使用した。増殖培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、粒子処方物を加えた。その後、この細胞を37℃および5% CO2で5時間インキュベーションし、その後、10% FBSを補った800μLの増殖培地を加えた。48時間のインキュベーション後、実施例12に記載したようにして、この細胞をルシフェラーゼ活性および細胞生存率についてアッセイした。結果を図10に示す。RLUはsiGL3(正しい配列)による形質移入において低下しているので、siGL3およびpGL3はともに同時送達されるに違いない。
【0176】
(実施例15:HeLa−LUC細胞へのMAP/siGL3の形質移入)
形質移入の48時間前に、HeLa−LUC細胞(蛍ルシフェラーゼタンパク質をコードする遺伝子を含有する)を24穴プレートに20,000細胞/ウェルで播種し、10% FBSを補った培地中で増殖させた。MAP粒子を、5+/−の電荷比で50および100nMのsiGL3を200μLのOpti−MEM I中に含有するように処方した。増殖培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、粒子処方物を加えた。その後、この細胞を37℃および5% CO2で5時間インキュベーションし、その後、10% FBSを補った800μLの増殖培地を加えた。48時間のインキュベーション後、実施例12に記載したようにして、この細胞をルシフェラーゼ活性および細胞生存率についてアッセイした。結果を図11に示す。RLUは、siGL3の濃度の上昇とともに減衰するので、これらのデータは、内因性の遺伝子の阻害が起こりうるということを示唆する。
【0177】
(実施例16;ムチン酸ジヨージド(10)の合成)
1g(2.7mmol)のムチン酸ジアミン(実施例3)を、250mLの丸底フラスコの中で3.8mL(27.4mmol)のトリエチルアミンおよび50mLの無水DMFと混合し、その後、1.2mL(13.7mmol)の塩化ヨードアセチルを滴下した。この混合物を、一定撹拌下で、室温で一晩反応させた。その後、溶媒を真空ポンプによって除去し、生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥し、0.8g(1.3mmol、46%)のムチン酸ジヨージドを得た。1H NMR((CD3)2SO) δ 8.20(s 2H),2H),7.77(s,2H),4.11(m,2H),4.03(m,2H),3.79(m,2H),3.11−3.17(m,2H),1.78(d,2H)。ESI/MS(m/z):652.8[M+Na]+。
【化24】
【0178】
(実施例17:ムチン酸ジシステイン(11)の合成)
7mLの0.1Mの脱気した炭酸ナトリウムに、17mgのL−システインおよび0.4gのムチン酸ジヨージドを加えた。得られた懸濁液を、この溶液が透明に変わるまで150℃で5時間還流させた。次いでこの混合物を室温まで冷却し、1N HClによってpHに調整した。次いで、生成物を沈殿させるためにアセトンをゆっくり加えた。濾過、アセトンによる洗浄および真空乾燥後、60mgの粗生成物を得た。
【化25】
【0179】
(実施例17:ムチン酸ジシステイン(11)の合成)
50mLの丸底フラスコ中の、pH 7.5の0.1Mの脱気したリン酸ナトリウム緩衝液20mLに、0.38gのL−システイン(3.2mmol)および0.40g(0.6mmol)のムチン酸二ヨウ素を加えた。得られた懸濁液を75℃で一晩還流させ、室温まで冷却し、凍結乾燥した。その後80mLのDMFをこの凍結乾燥した薄茶色の粉末に加え、濾過によって可溶性生成物からの不溶性の過剰の試薬およびリン酸塩の分離を成し遂げた。DMFを減圧下で除去し、生成物を真空乾燥して、12mg(0.02mmol、3%)のムチン酸ジシステインを得た。
【化26】
【0180】
(実施例18:ポリマー合成、(ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG))(12))
10mLの2口丸底フラスコの中で、12mg(21.7μmol)のムチン酸ジシステインおよび74mg(21.7μmol)のPEG−DiSPA 3400を真空下で乾燥し、その後、アルゴン下で0.6mLの無水DMSOを加えた。10分間の撹拌後、9μL(65.1μmol)の無水DIEAをアルゴン下でこの反応容器に移した。この混合物をアルゴン下で一晩撹拌した。次いで10kDa膜遠心方式デバイス(membrane centrifugal device)を使用してこのポリマー含有溶液を透析し、凍結乾燥し、47mg(58%)のポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)を得た。
【化27】
このポリオール含有ポリマーはアニオン性ABポリマーである。
【0181】
(実施例19:ムチン酸ポリマー(13)への薬物(カンプトテシン、CPT)の共有結合による連結)
10mg(2.7μmolの繰り返し単位)のポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)を、ガラス広口瓶の中で1.5mLの無水DMSOに溶解した。10分間の撹拌後、1.1μLのDIEA(6.3μmol)、3.3mg(6.3μmol)のTFA−Gly−CPT、1.6mg(8.1μmol)のEDCおよび0.7mg(5.9μmol)のNHSをこの反応混合物に加えた。8時間の撹拌後、1.5mLのエタノールを加え、溶媒を減圧下で除去した。沈殿物を水に溶解し、不溶性の物質を0.2μmフィルターを通した濾過によって除去した。次いでこのポリマー溶液を10kDa膜を介して水に対して透析し、その後凍結乾燥し、ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPT接合体を得た。
【化28】
【0182】
(実施例20:水の中での、CPT−ムチン酸ポリマー(13)を用いたナノ粒子の処方物(20))
ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)およびポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPT接合体の有効径を、再蒸留水(0.1〜10mg/mL)の中で当該ポリマーを処方することにより測定し、ZetaPALS(ブルックヘブン・インスツルメント社(Brookhaven Instrument Co)) Instrumentを使用する動的光散乱(DLS)によって評価した。その後各1分間の3回の連続測定を記録し、平均した。ZetaPALS(ブルックヘブン・インスツルメント社(Brookhaven Instrument Co)) Instrumentを使用して、両方の化合物のゼータ電位を1.1mM KCl溶液の中で測定した。次いで0.012の標的残差(target residuals)での10回連続の自動測定を実施し、結果を平均した(図14)。特に、ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPT接合体について2つの分布が測定され、主要な分布は57nm(全粒子数の60%)であった。第2のより小さい分布も、233nmで測定された。
【0183】
(実施例21:水の中でのCPT−ムチン酸ポリマー(13)およびボロン酸−ジスルフィド−PEG5000(6)を用いたボロン酸−ペグ化ナノ粒子の処方物)
ボロン酸ペグ化ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPTナノ粒子を、当該ポリマーを再蒸留水に0.1mg/mLの濃度で溶解し、次いで、ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPT接合体中のムチン酸糖上のジオールに対するBA−PEGの比が1:1であるように、同じく水中のポリマー6(BA−PEG)を加えることにより処方する。この混合物を、30分間インキュベーションし、その後、ZetaPALS(ブルックヘブン・インスツルメント社(Brookhaven Instrument Co)) instrumentを使用して、有効径およびゼータ電位を測定する。
【0184】
(実施例22:マウスにおけるpDNA送達のための標的化されたナノ粒子)
プラスミドpApoE−HCRLucは、ルシフェラーゼを発現するための遺伝子を含有し、肝臓特異的なプロモーターの制御下にある。ポリマー(MAP)4(0.73mg)、ポリマー6(73mg)およびポリマー9(0.073mg)を、5mLの水の中で混合し、次いでpApoE−HCRLucプラスミドを含有する1.2mLの水を加えた(これは、+3の、このプラスミドに対するポリマー4の電荷比を与える)。連続的な回転濾過(spin filtering)およびその後のD5Wの添加(水の中にあった最初の処方物から出発する)により、この粒子をD5W(5% グルコース水溶液)中に置いた。ヌードマウスにHepa−1−6肝癌細胞を移植し、およそ200mm3のサイズまで腫瘍を成長させた。標的化されたナノ粒子の注射は、5mgプラスミド/kgマウスに等しい量で尾静脈において静脈中で行った。これらのマウスを、注射後の24時間に撮像した。これらのマウスは、毒性の徴候を示さず、腫瘍の領域でルシフェラーゼ発現は検出されたが、肝臓の領域では検出されなかった。
【0185】
要約すると、いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されているのは、ボロン酸含有ポリマーにカップリングされたポリオール含有ポリマーを含む担体ナノ粒子であって、このナノ粒子は、このボロン酸含有ポリマーをナノ粒子の外部の環境に対して提示するように構成されている、担体ナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法およびシステムである。
【0186】
上に示した実施例は、当業者に、本開示の粒子、組成物、システムおよび方法の実施形態を製造および使用する方法の完全な開示および説明を与えるために提供されており、本発明者らがその開示と考えるものの範囲を限定するということは意図されていない。当該技術分野の当業者にとっては自明である、本開示を実施するための上記の方法の改変物は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。本願明細書中で言及したすべての特許および公開公報は、本開示が関係する当業者の技能のレベルを示す。本開示で引用されたすべての参考文献は、各参考文献がその全体を個々に参照により援用されたかのごとく、それと同程度に参照により援用される。
【0187】
背景技術、課題を解決するための手段、発明を実施するための形態、および実施例において引用された各文献(特許、特許出願、学術論文、要約、実験室マニュアル、書籍、または他の開示物を含む)の開示全体は、これによって、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0188】
本開示は特定の組成物または生物系に限定されるわけではなく、組成物または生物系は当然様々であってよいということを理解されたい。本願明細書で使用される用語(法)は、特定の実施形態を記載する目的のためだけのものであり、限定することを意図していないということも理解されたい。本願明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a、an)」、および「この、当該、前記(the)」は、文脈から明らかにそうではないと分かる場合を除いて、複数の指示対象を含む。用語「複数の」は、文脈から明らかにそうではないと分かる場合を除いて、2以上の指示対象を含む。特段の記載がない限り、本願明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0189】
本願明細書に記載されるものと類似または等価ないずれかの方法および物質が試験のための実施において使用できるが、適切な物質および方法の具体例が本願明細書に記載されている。
【0190】
本開示のいくつかの実施形態を記載した。しかしながら、本開示の趣旨および範囲から逸脱せずに種々の改変がなされうるということを理解されたい。従って、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0191】
参考文献
− Davis Mark E.、Chen Zhuo (Georgia)およびShin Dong M、「Nanoparticle therapeutics: an emerging treatment modality for cancer」、Nature、2008年、第7巻、771−782頁
− Duncan Ruth、「Polymer conjugates as anticancer nanomedicines」、Nature、2006年、第6巻、688−701頁
− Allen Theresa M、「Ligand−Targeted Therapeutics In Anticancer Therapy」、Nature 2002年、第2巻、750−763頁
− Liu YeminおよびReineke Theresa M.、「Hydroxyl Stereochemistry and Amine Number within Poly(glycoamidoamine)s Affect Intracellular DNA Delivery」、J.Am.Chem.Soc.、2005年、第127巻、3004−3015頁
【技術分野】
【0001】
Mark E. DavisおよびChristopher A.Alabiによる。
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年8月13日出願の、発明の名称「Delivery System Utilizing Couplings Between Polyol and Boronic acids(ポリオール−ボロン酸間のカップリングを利用した送達システム)」の米国仮出願第61/188,855号(事件整理番号 CIT−5200−P)に基づく優先権を主張する。この米国仮出願は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本開示は担体ナノ粒子に関し、特に、注目する化合物を送達するのに適したナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞、組織、器官、および生物への注目する化合物の効果的な送達は、生物医学、画像法および所定の標的への種々のサイズおよび次元の分子の送達が望ましい他の分野で、課題となってきた。
【0004】
病理学検査、治療的処置のためであれ、または基礎生物学研究のためであれ、注目する生物活性および/または化学活性と一般には関連づけられている種々の種類の生体材料および生体分子を送達するためのいくつかの方法が公知であり使用されている。
【0005】
化学薬品または生物剤(例えば薬物、生物製剤、治療薬または造影剤)として使用されるのに適した分子の数が増えるにつれて、種々の複雑度、次元および化学的性質を持つ化合物とともに使用するのに適した送達システムの開発は、特に困難であることが判明してきた。
【0006】
ナノ粒子は、種々の送達方法を用いて薬剤を送達するための担体として有用な構造体である。いくつかのナノ粒子送達システムが存在し、それらは、薬剤を包み込み、輸送し、そして特定の標識へと送達するための多くの異なる戦略を利用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に提示されるのは、いくつかの実施形態で注目する化合物の有効かつ特異的な送達のための多機能なツールをもたらすナノ粒子ならびに関連する組成物、方法およびシステムである。特に、いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子は、種々のサイズ、次元および化学的性質を持つ広い範囲の分子を所定の標的へと運んで送達するための柔軟なシステムとして使用することができる。
【0008】
第1の態様によれば、ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子が記載される。このナノ粒子では、ボロン酸含有ポリマーは、ポリオール含有ポリマーにカップリングされ、当該ナノ粒子は、ボロン酸含有ポリマーをそのナノ粒子の外部の環境へと提示するように構成される。このナノ粒子では、1以上の注目する化合物は、ポリオール含有ポリマーおよび/もしくはボロン酸含有ポリマーの一部分として、またはこれらに連結されて、当該ナノ粒子により運ばれうる。
【0009】
第2の態様によれば、組成物が記載される。この組成物は、本願明細書に記載されるナノ粒子と、適切な溶媒および/または賦形剤とを含む。
【0010】
第3の態様によれば、化合物を標的に送達するための方法が記載される。この方法は、その標的を本願明細書に記載されるナノ粒子と接触させることを含み、このとき、当該化合物は、本願明細書に記載されるナノ粒子のポリオール含有ポリマーの中、またはボロン酸含有ポリマーの中に含まれる。
【0011】
第4の態様によれば、化合物を標的に送達するためのシステムが記載される。このシステムは、当該化合物を含む本願明細書に記載されるナノ粒子の中に組織化されるために、可逆的な共有結合を介して相互結合(reciprocal binding)できる、ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを少なくとも含む。
【0012】
第5の態様によれば、化合物を個体に投与するための方法が記載される。この方法は、当該個体に本願明細書に記載されるナノ粒子の有効量を投与することを含み、このとき、この化合物は、ポリオール含有ポリマーの中および/またはボロン酸含有ポリマーの中に含まれる。
【0013】
第6の態様によれば、化合物を個体に投与するためのシステムが記載される。このシステムは、本願明細書に記載される方法に従って当該個体に投与されるべき化合物を連結する本願明細書に記載されるナノ粒子の中に組織化されるために、可逆的な共有結合を介して相互結合できる、ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを少なくとも含む。
【0014】
第7の態様によれば、ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子を調製するための方法が記載される。この方法は、当該ポリオール含有ポリマーを当該ボロン酸含有ポリマーにカップリングすることを可能にする時間の間および条件下で、当該ポリオール含有ポリマーを当該ボロン酸含有ポリマーと接触させることを含む。
【0015】
第8の態様によれば、いくつかのボロン酸含有ポリマーが記載される。これは、本開示の以下の節で詳細に例証される。
【0016】
第9の態様によれば、いくつかのポリオール含有ポリマーが記載される。これは、本開示の以下の節で詳細に例証される。
【0017】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、種々のサイズ、次元および化学的性質を持つ化合物を運ぶのに適した柔軟な分子構造として使用することができる。
【0018】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、分解、免疫系による認識、および血清タンパク質または血液細胞との連結に起因する減少から、運ばれた化合物を保護することができる送達システムとして使用することができる。
【0019】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、立体的安定化、ならびに/または化合物を特定の標的(組織、組織内の特定の細胞種およびさらにはある細胞種の中の特定の細胞内位置)へと送達する能力によって特徴付けられる送達システムとして使用することができる。
【0020】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、運ばれた化合物を制御可能な態様で放出する(同じナノ粒子内の複数の化合物を異なる速度でおよび/または時期に制御放出することを含む)ように設計することができる。
【0021】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、当該技術分野のあるシステムと比べて、標的指向化の間の高められた特異性および/もしくは選択性で、ならびに/または標的による化合物の高められた認識で、化合物を送達するために使用することができる。
【0022】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、いくつかの実施形態では、注目する化合物の制御された送達が望ましい応用例(治療学、診断学および臨床的応用例などの医学的応用が挙げられるが、これらに限定されない)に関連して使用することができる。さらなる応用例は、生物学的分析、獣医学での応用、および動物以外の生物における、特に植物における注目する化合物の送達を含む。
【0023】
本開示の1以上の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の発明を実施するための形態および実施例に示される。他の特徴、対象、および利点は、発明を実施するための形態、実施例および図面から、および添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本願明細書に組み込まれその一部を構成する添付の図面は、本開示の1以上の実施形態を例証し、発明を実施するための形態および実施例とともに、本開示の原理および実施を説明する役割を果たす。
【図1】ボロン酸含有化合物の不存在下での関連する形成についてのナノ粒子および関連する方法の略図を示す。パネルAは、本願明細書に記載される実施形態に係る、ポリオール含有ポリマー(MAP、4)および注目する化合物(核酸)の略図を示す。パネルBは、パネルAに示されるポリオール含有ポリマーおよび化合物の組織化の際に形成されるナノ粒子を示す。
【図2】本開示の実施形態に係る、ナノ粒子および関連する製造方法の略図を示す。パネルAは、本開示の実施形態に係る、注目する分子(核酸)とともに、ポリオール含有ポリマー(MAP、4)およびボロン酸含有ポリマー(BA−PEG、6)を示す。パネルBは、パネルAに示されるポリマーおよび化合物の組織化の際に形成されるBA−ペグ化され安定化されたナノ粒子を示す。
【図3】本願明細書に記載される実施形態に係る、ポリオール含有ポリマーおよび注目する化合物を含む複合体の形成を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係るプラスミドDNAを用いたMAPゲル遅延度アッセイの結果を示す。DNAラダーは、レーン1に添加されている。レーン2〜8は、漸増的に増加された電荷比を持つMAPと組み合わされたプラスミドDNAを示す。電荷比は、このMAP上の正電荷の量を核酸上の負電荷の量で割ったものとして定義される。
【図4】本願明細書に記載される実施形態に係る、ポリオール含有ポリマーおよび注目する化合物を含む複合体の形成を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係るsiRNAを用いたMAPゲル遅延度アッセイの結果を示す。DNAラダーは、レーン1に添加されている。レーン2〜8は、漸増的に増加された電荷比を持つMAPと組み合わされたsiRNAを示す。
【図5】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係る、ナノ粒子の特性を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係るMAP−プラスミドナノ粒子についての、粒径(動的光散乱(DLS)測定から決定された) 対 電荷比およびゼータ電位(ナノ粒子の表面電荷に関連する特性) 対 電荷比のプロットを説明する図表を示す。
【図6】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係るナノ粒子の特性。特に、この図は、本開示の実施形態に係るBA−ペグ化MAP−プラスミドナノ粒子についての粒径(DLS) 対 電荷比およびゼータ電位 対 電荷比のプロットを説明する図表を示す。
【図7】本願明細書に開示される実施形態に係るBA−ペグ化MAP−プラスミドナノ粒子の塩安定性を示す。プロットA: 5:1 BA−PEG + np + 1× PBS 5分後;プロットB: 5:1 BA−PEG + np、3×100kDaで透析した + 1× PBS 5分後;プロットC: 5:1 BA−PEGを用いた予めのペグ化(prePEGylated) + 1× PBS 5分後;プロットD: 5:1 BA−PEGを用いた予めのペグ化 、3×100kDaで透析した + PBS 5分後。
【図8】本願明細書に記載される実施形態に係るナノ粒子を用いたインビトロでのヒト細胞への薬剤の送達を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、HeLa細胞へのMAP/pGL3形質移入についての、相対発光量(RLU)(これは、細胞へと送達されたpGL3プラスミドから発現されたルシフェラーゼタンパク質の量の尺度である) 対 電荷比のプロットを説明する図表を示す。
【図9】本願明細書に記載される実施形態に係るナノ粒子を用いた薬剤の標的への送達を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、MAP/pGL3形質移入後の細胞生存 対 電荷比のプロットを説明する図表を示す。この実験についての生存データは、図8に示されている。
【図10】本願明細書に記載される実施形態に係るナノ粒子を用いた複数の化合物の、標的への送達を示す。特に、この図は、本願明細書に記載される実施形態に係る、5+/−の電荷比でpGL3およびsiGL3を含有するMAP粒子の、HeLa細胞への同時形質移入についての相対発光量(RLU) 対 粒子の種類のプロットを説明する図表を示す。語siCONは、制御配列を持つsiRNAを意味する。
【図11】本願明細書に記載される実施形態に係るナノ粒子を用いた、化合物の標的への送達を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、5+/−の電荷比のMAP/siGL3のHeLa−Luc細胞への送達についての相対発光量(RLU) 対 siGL3濃度のプロットを示す。
【図12】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係る、標的指向化リガンドを提示するボロン酸含有ポリマーの合成の略図を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、ボロン酸−PEGジスルフィド−トランスフェリンの合成についての概略図を示す。
【図13】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係る、ナノ粒子の合成の略図を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、水の中でのカンプトテシン ムチン酸ポリマー(CPT−ムチン酸ポリマー)を用いたナノ粒子の処方物の概略図を示す。
【図14】本開示の実施形態に従って調製された、水の中のCPT−ムチン酸ポリマー接合体から形成されたナノ粒子の粒径およびゼータ電位を要約する表を示す。
【図15】本願明細書に記載されるいくつかの実施形態に係る、ナノ粒子の合成の略図を示す。特に、この図は、本開示の実施形態に係る、水の中でのCPT−ムチン酸ポリマーおよびボロン酸−ジスルフィド−PEG5000を用いたボロン酸−ペグ化ナノ粒子の処方物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ナノ粒子、ならびに当該ナノ粒子の中に含まれる注目する化合物(本願明細書中では積み荷(cargo)とも)を送達するために関連して使用することができる関連する組成物、方法、およびシステムが本願明細書に提示される。
【0026】
用語「ナノ粒子」は、本願明細書で使用する場合、ナノスケールの次元の複合構造体を意味する。特に、ナノ粒子は、典型的には、約1〜約1000nmの範囲のサイズの粒子であり、通常は球状であるが、当該ナノ粒子組成物に応じて異なる形態が可能である。当該ナノ粒子の外部の環境に接触するナノ粒子の部分は、一般に当該ナノ粒子の表面として同定される。本願明細書に記載されるナノ粒子では、サイズの制限は、2次元に限定することができ、その結果、本願明細書に記載されるナノ粒子は約1〜約1000nmの直径を有する複合構造体を含み、特定の直径は、ナノ粒子組成物および実験計画に従う当該ナノ粒子の意図された使用に依存する。例えば、いくつかの治療的応用例で使用されるべきナノ粒子は、典型的には約200nm以下のサイズを有し、特に癌治療に関連する送達のために使用されるものは、典型的には約1〜約100nmの直径を有する。
【0027】
当該ナノ粒子のさらなる所望の特性、例えば表面電荷および立体的安定化もまた、注目する特定の応用例を考慮して変わりうる。癌治療などの臨床的応用例で望まれる可能性がある例示となる特性は、Davisら、2008、Duncan 2006およびAllen 2002(各々、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする)に記載されている。さらなる特性は、本開示を読めば当業者によって特定できる。ナノ粒子の次元および特性は、当該技術分野で公知の技術によって検出することができる。粒子の次元を検出するための例示となる技術としては、動的光散乱(DLS)ならびに様々な顕微鏡法(透過型電子顕微鏡法(TEM)および原子間力顕微鏡(AFM)など)が挙げられるが、これらに限定されない。粒子形態を検出するための例示となる技術としては、TEMおよびAFMが挙げられるが、これらに限定されない。当該ナノ粒子の表面電荷を検出するための例示となる技術としては、ゼータ電位法が挙げられるが、これらに限定されない。他の化学特性を検出するために適切なさらなる技術は1H、11B、および13Cおよび19F NMR、UV/Visおよび赤外/ラマン分光法および蛍光分光法(ナノ粒子が蛍光標識と組み合わせて使用される場合)を含み、さらなる技術は当業者によって特定できる。
【0028】
本願明細書に記載されるナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法、およびシステムは、注目する化合物、特に薬剤を所定の標的に送達するために使用することができる。
【0029】
用語「送達する」および「送達」は、本願明細書で使用する場合、化合物の空間的位置に影響を及ぼすという活動、特に当該位置を制御するという活動を意味する。従って、本開示に関して化合物を送達することは、ある一組の条件下でのある時間におけるその化合物の位置決めおよび移動に影響を及ぼし、その結果それらの条件下でのその化合物の位置決めおよび移動は当該化合物がそうでなければ有していたであろう位置決めおよび移動とは変更される、能力を示す。
【0030】
特に、基準終点に対する化合物の送達は、当該化合物の位置決めおよび移動を制御し、その結果当該化合物が選択された基準終点に最終的に位置決めされる能力を意味する。インビトロ系では、化合物の送達は、通常、当該化合物の化学的ならびに/または生物学的な検出可能な特性および活性の対応する修飾に関連付けられる。インビボ系では、化合物の送達は、典型的には、当該化合物の薬物動態および恐らくは薬力学の修飾にも関連付けられる。
【0031】
化合物の薬物動態は、典型的には個体の体によってもたらされる、系からのその化合物の吸収、分配、代謝および排泄を意味する。特に、用語「吸収」は体に入る物質のプロセスを意味し、用語「分配」は体の体液および組織全体にわたる物質の分散または散在を意味し、用語「代謝」は親化合物の、娘代謝産物への不可逆的な変換を意味し、用語「排泄」は体からの当該物質の排出を意味する。当該化合物が処方物の中にある場合、薬物動態は当該化合物のその処方物からの遊離(これは、その処方物からの当該化合物、典型的には薬物の放出のプロセスを意味する)をも含む。用語「薬力学」は、体に対する、または体内もしくは体上の微生物もしくは寄生虫に対するある化合物の生理学的効果、および薬物作用の機序および薬物濃度と効果との間の関係を意味する。当業者なら、注目する化合物、特に注目する薬剤(薬物など)の薬物動態ならびに薬力学の特徴および特性を検出するために適切な技術および手順を特定することができるであろう。
【0032】
用語「薬剤」は、本願明細書で使用する場合、標的に関連付けられた化学的または生物活性を呈することができる化合物を意味する。用語「化学活性」は、本願明細書で使用する場合、分子が化学反応を実施する能力を意味する。用語「生物活性」は、本願明細書で使用する場合、分子が生命体に影響を及ぼす能力を意味する。薬剤の例示となる化学活性は、共有結合によるまたは静電的な相互作用の形成を含む。薬剤の例示となる生物活性は、内因性分子の産生および分泌、内因性分子または外因性分子の吸収および代謝、ならびに注目する遺伝子の遺伝子発現(転写および翻訳を含む)の活性化または不活化を含む。
【0033】
用語「標的」は、本願明細書で使用する場合、注目する生物系(単細胞または多細胞の生命体またはそれらのいずれかの一部を含む)を意味し、これはインビトロまたはインビボ生物系またはそれらのいずれかの一部を含む。
【0034】
本願明細書に記載されるナノ粒子では、ボロン酸含有ポリマーは、当該ナノ粒子の外部の環境に対して提示されるように当該ナノ粒子の中に配置されるポリオール含有ポリマーにカップリングされる。
【0035】
用語「ポリマー」は、本願明細書で使用する場合、典型的には共有結合による化学結合によって連結される繰り返し構造単位から構成される大分子を意味する。適切なポリマーは、直鎖状および/または分枝状であってもよく、ホモポリマーまたは共重合体の形態をとってもよい。共重合体が使用される場合、その共重合体はランダム共重合体または分枝状の共重合体であってもよい。例示となるポリマーは、水分散性の、特に水溶性のポリマーを含む。例えば、適切なポリマーとしては、多糖、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。治療用のならびに/または医薬としての使用および応用例のために、当該ポリマーは、低毒性プロファイルを有するべきであり、特にこれは毒性または細胞毒性ではない。適切なポリマーとしては、約500,000以下の分子量を有するポリマーが挙げられる。特に、適切なポリマーは、約100,000以下の分子量を有することができる。
【0036】
用語「ポリオール含有ポリマー」または「ポリオールポリマー」は、本願明細書で使用する場合、複数のヒドロキシル官能基を提示するポリマーを意味する。特に、本願明細書に記載されるナノ粒子を形成するのに適切なポリオール含有ポリマーは、ボロン酸含有ポリマーの少なくとも1つのボロン酸とのカップリング相互作用のためのヒドロキシル官能基の少なくとも一部を提示するポリマーを含む。
【0037】
用語「提示する」は、化合物または官能基に関して本願明細書で使用する場合、その化合物または官能基の化学反応性を連結されたままに維持するために実施された連結を意味する。従って、表面に提示された官能基は、その官能基を化学的に特徴付ける1以上の化学反応を適切な条件下で実施することができる。
【0038】
ポリオール含有ポリマーを形成する構造単位は、ペンタエリスリトール、エチレングリコールおよびグリセリンなどの単量体ポリオールを含む。例示となるポリオール含有ポリマーはポリエステル、ポリエーテルおよび多糖を含む。例示となる適切なポリエーテルとしては、ジオール、特にp≧1である一般式HO−(CH2CH2O)p−Hを有するジオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。例示となる、適切な多糖としては、シクロデキストリン類、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチンおよびβ−グルカン類が挙げられるが、これらに限定されない。例示となる、適切なポリエステルとしては、ポリカーボネート、ポリブチレート(ポリ酪酸エステル)およびポリエチレンテレフタレート(すべて、ヒドロキシル末端基で停止しているもの)が挙げられるが、これらに限定されない。例示となるポリオール含有ポリマーは、約500,000以下、特に約300〜約100,000の分子量のポリマーを含む。
【0039】
いくつかのポリオール含有ポリマーは、市販されており、かつ/または当業者によって特定できる技術および手順を使用して製造することができる。例示となるポリオールポリマーの合成のための例示となる手順はLiuら 2005に記載されており、他のものは実施例1〜4に例証されている。ポリオール含有ポリマーを作成するためのさらなる手順は、本開示を考慮して当業者によって特定できるであろう。
【0040】
用語「ボロン酸含有ポリマー」または「BAポリマー」は、本願明細書で使用する場合、ポリオール含有ポリマーのヒドロキシル基に結合するために提示された少なくとも1つのボロン酸基を含有するポリマーを意味する。特に、本願明細書に記載されるナノ粒子のボロン酸含有ポリマーは、少なくとも1つの構造単位の中に、炭素−ホウ素の化学結合を含有するアルキルまたはアリール置換ボロン酸を含むポリマーを包含する。適切なBAポリマーは、ボロン酸が末端構造単位にあるかまたは得られたポリマーに親水性を与えるためのいずれかの他の適切な位置にあるポリマーを含む。例示となるポリオール含有ポリマーは、約40,000以下、特に約20,000以下、または約10,000以下の分子量を有するポリマーを含む。
【0041】
いくつかのボロン酸含有ポリマーは、市販されており、かつ/または当業者によって特定できる技術および手順を使用して製造することができる。例示となるポリオールポリマーの合成のための例示となる手順は、LiuおよびReineke(2005)に記載されており、他の新しいものは実施例5〜8に例証されている。BAポリマーを作成するためのさらなる手順は、本開示を考慮して当業者によって特定できるであろう。
【0042】
本願明細書に記載されるナノ粒子では、ポリオールポリマーは当該BAポリマーにカップリングされる。用語「カップリングされる」または「カップリング」は、2つの分子間の連結に関して本願明細書で使用する場合、可逆的な共有結合を形成する相互作用を意味する。特に、適切な媒質の存在下で、当該BAポリマー上に提示されたボロン酸は、迅速かつ可逆的な対をなす共有結合による相互作用を介して当該ポリオールのヒドロキシル基と相互作用し、適切な媒質の中でボロン酸エステルを形成する。適切な媒質としては水およびいくつかの水溶液および当業者によって特定できるさらなる有機媒質が挙げられる。特に、水系媒体の中で接触するとき、BAポリマーおよびポリオールポリマーは反応して、副生成物としての水を生成する。このボロン酸ポリオール相互作用は、一般に水溶液の中でより好ましいが、有機媒質の中でも進行することも知られている。加えて、1,2および1,3ジオール類とともに形成される環状エステルは、それらの非環状エステル対照物よりも一般により安定である。
【0043】
従って、本願明細書に記載されるナノ粒子においては、当該ボロン酸含有ポリマーの少なくとも1つのボロン酸は、可逆的な共有結合で当該ポリオール含有ポリマーのヒドロキシル基に結合される。BAポリマーとポリオールポリマーとの間でのボロン酸エステルの形成は、ホウ素−11核磁気共鳴(11B NMR)、電位差滴定、UV/Visおよび蛍光検出技術などの、当業者によって特定できる方法および技術によって検出することができ、選択される技術は当該ナノ粒子を構成するボロン酸およびポリオールの特定の化学的性質および特性に依存する。
【0044】
本願明細書に記載されるBAポリマーと本願明細書に記載されるポリオールポリマーとのカップリング相互作用から生じるナノ粒子は、当該粒子の表面上にBAポリマーを提示する。いくつかの実施形態では、当該ナノ粒子は、約1〜約1000nmの直径および球状形態を有することができるが、粒子の次元および形態は、当該ナノ粒子を形成するために使用される特定のBAポリマーおよびポリオールポリマーによって、ならびに本開示に従って当該ナノ粒子上で運ばれる化合物によってほぼ決定される。
【0045】
いくつかの実施形態では、当該ナノ粒子により運ばれる注目する化合物はBAポリマーおよび/またはポリオールポリマーの一部を形成する。このような実施形態の例は、ポリマーの1以上の原子が特定の同位体、例えば19Fおよび10Bによって置き換えられているナノ粒子によって提供され、それゆえ、標的を撮像するためおよび/または標的に放射線処置を与えるための薬剤として適切である。
【0046】
いくつかの実施形態では、当該ナノ粒子により運ばれる注目する化合物は、共有結合または非共有結合を介してポリマー、典型的にはポリオールポリマーに連結される。このような実施形態の例は、ポリオールポリマーおよびBAポリマーのうちの少なくとも1つの中の1以上の部分が1以上の注目する化合物を連結するナノ粒子によって与えられる。
【0047】
用語「連結する」、「連結された」または「連結」は、本願明細書で使用する場合、2以上の構成成分を一緒に保つために結合、つなぎ(link)、力またはタイ(tie)によって接続すること(connecting)またはまとめること(uniting)を指し、これは、例えば第1の化合物が第2の化合物に直接結合されている例、および1以上の中間化合物、特に分子がこの第1の化合物と第2の化合物との間に配置されている実施形態など、直接または間接の連結のいずれをも包含する。
【0048】
特に、いくつかの実施形態では、化合物は、ポリマーの適切な部分へのこの化合物の共有結合を介して、ポリオールポリマーまたはBAポリマーに連結されうる。例示となる共有結合は、ムチン酸ポリマーへの薬物カンプトテシンの連結が生分解性エステル結合による結合を介して実施される実施例19、およびBA−PEG5000へのトランスフェリンの連結がトランスフェリンのペグ化を介して実施される実施例9に例証されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、当該ポリマーは、例えば注目する化合物上の対応する官能基に特異的に結合することができる1以上の官能基を付加することにより、特定の注目する化合物の連結を可能にするように、設計または修飾することができる。例えば、いくつかの実施形態では、BA−PEG−X(式中、Xは、マレイミドもしくはヨードアセチル基であるか、またはチオールと特異的にもしくはアミンと非特異的に反応するであろういずれかの脱離基であってもよい)を用いて当該ナノ粒子をペグ化することが可能である。次いで、連結されるべき化合物は、チオール官能基を発現するための修飾の後、マレイミドまたはヨードアセチル基に反応することができる。連結されるべき化合物はまた、アルデヒドまたはケトン基で修飾されてもよく、これらは、縮合反応を介して当該ポリオール上のジオール類と反応して、アセタールまたはケタールを与えることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、注目する化合物は、連結されるべき化合物と当該ポリマーの適切な部分との間の非共有結合(イオン結合および分子間相互作用など)を介して、当該ポリオールポリマーまたはBAポリマーに連結されてもよい。例示となる非共有結合は実施例10に例証されている。
【0051】
注目する化合物は、当該ナノ粒子の形成の前、最中、または形成の後に、例えばポリマーおよび/またはこの微粒子複合材料の中のいずれかの連結された化合物の修飾を介して、当該ナノ粒子に連結されてもよい。当該ナノ粒子上に化合物を連結するための例示となる手順は、実施例の節に例証されている。化合物をBAポリマーポリオールポリマーまたは本願明細書に記載されるナノ粒子の他の成分(例えばそれまでに導入された注目する化合物)に連結するためのさらなる手順は、本開示を読めば、当業者は特定できる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子上に提示されたBAポリマーに連結された少なくとも1つの注目する化合物は、標的指向化リガンドとして使用することができる薬剤である。特に、いくつかの実施形態では、当該ナノ粒子は、BAポリマー上に、標的指向化リガンドとして使用されるべき1以上の薬剤を、そしてポリオールポリマーおよび/またはBAポリマー上に、1以上の選択された標的へと送達されるべき薬剤を連結する。
【0053】
用語「標的指向化リガンド」は、本開示において使用される場合、例えばナノ粒子の細胞受容体連結を可能にすることにより特定の標識、特に特異的な細胞認識を係合する目的でナノ粒子の表面上に提示されうる、いずれかの分子を意味する。適切なリガンドの例としては、ビタミン(例えば葉酸)、タンパク質(例えばトランスフェリン、およびモノクローナル抗体)、単糖(例えばガラクトース)、ペプチド、および多糖が挙げられるが、これらに限定されない。特に、標的指向化リガンドは、ある表面細胞受容体(抗−VEGFなど)、小分子(葉酸など)および他のタンパク質(ホロトランスフェリン(holo−transferrin)など)に対する抗体であってもよい。
【0054】
当業者は理解するとおり、リガンドの選択は、所望の送達の種類によって変わりうる。別の例として、このリガンドは、HIV−1由来のTATタンパク質などの、膜透過性を増大させる薬剤または膜透過性の薬剤であってもよい。TATタンパク質は、細胞核の中へと能動的に運び込まれるウイルス性の転写活性化である。Torchilin,V.P.ら、PNAS. 98、8786 8791、(2001)。BAポリマーに連結された適切な標的指向化リガンドは、典型的には、ボロン酸が遠位端に連結されている柔軟なスペーサー(ポリ(エチレンオキシド)など)を含む(実施例9を参照)。
【0055】
いくつかの実施形態では、含まれるまたは当該ポリオールポリマーおよび/またはBAポリマー(標的指向化リガンドを含む)に連結された化合物の少なくとも1つは、化学活性または生物活性(例えば治療活性)がもたらされるべきである標的(例えば個体)に送達されるべき薬剤(特に薬物)であってもよい。
【0056】
本願明細書に記載されるナノ粒子を形成するのに適したポリオールポリマーおよびBAポリマーの選択は、化合物および注目する標的を考慮して実施することができる。特に、本願明細書に記載されるナノ粒子を形成するための適切なポリオール含有ポリマーおよび適切なBAポリマーの選択は、候補のポリオールポリマーおよびBAポリマーを準備し、本開示に関するカップリング相互作用を形成することができるポリオールポリマーおよびBAポリマーを選択することにより実施することができ、この場合、選択されたBAポリマーおよびポリオールポリマーは、ポリオールポリマーおよび/またはBAポリマーに含まれるまたは連結されるべき注目する化合物および標的指向化リガンドを考慮して、当該ポリオールポリマーがBAポリマーよりも親水性が小さいような化学組成を有する。ナノ粒子の表面上のBAポリマーおよび当該ナノ粒子の外部の環境にある関連する提示物の検出は、ゼータ電位の検出によって実施することができる。このゼータ電位は、実施例12に例証するような当該ナノ粒子の表面の修飾を実証することができる。(特に図6を参照)。当該粒子の表面電荷および塩溶液の中での当該粒子の安定性を検出するためのさらなる手順としては、実施例12に例証されるものなどの粒径の変化の検出(特に図7を参照)および当業者によって特定できるさらなる手順が挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、ポリオール含有ポリマーは、1以上の、以下の構造単位のうちの少なくとも1つを含む。
【化1】
(式中、
Aは式の有機部分
【化2】
であり、式中、
R1およびR2は、独立に、約10kDa以下の分子量を有するいずれかの炭素ベースの基または有機基から選択され、
Xは、独立に、うちの1以上の−H、−F、−C、−Nまたは−Oを含む脂肪族基から選択され、
Yは、独立に、−OHまたはヒドロキシル(−OH)基を有する有機部分から選択され、例としては−CH2OH、−CH2CH2OH、−CF2OH、−CF2CF2OH、およびC(R1G1)(RG2)(R1G3)OHが挙げられるが、これらに限定されず、R1G1、R1G2およびR1G3は独立に有機ベースの官能基であり、
Bは、第1のA部分のR1およびR2のうちの1つを第2のA部分のR1およびR2のうちの1つとつなぐ有機部分である)
【0058】
用語「部分」は、本願明細書で使用する場合、より大きい分子または分子種の一部分を構成する原子の群を意味する。特に、部分は、繰り返されるポリマー構造単位の構成要素を指す。例示となる部分としては、酸または塩基種、糖、炭水化物、アルキル基、アリール基およびポリマー構造単位を形成するのに有用ないずれかの他の分子構成要素が挙げられる。
【0059】
用語「有機部分」は、本願明細書で使用する場合、炭素原子を含有する部分を意味する。特に、有機基としては、天然および合成の化合物、ならびにヘテロ原子を含む化合物が挙げられる。例示となる天然の有機部分としては、ほとんどの糖類、いくつかのアルカロイドおよびテルペノイド、炭水化物、脂質および脂肪酸、核酸、タンパク質、ペプチドおよびアミノ酸、ビタミンおよび油脂が挙げられるが、これらに限定されない。合成の有機基は、他の化合物との反応によって調製される化合物を指す。
【0060】
いくつかの実施形態では、1以上の注目する化合物は、(A)に、(B)に、または(A)および(B)に連結することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、R1およびR2は、独立に、以下の式を有する:
【化3】
(式中、
dは0〜100であり、
eは0〜100であり、
fは0〜100であり、
Zは、1つの有機部分を別の有機部分に、特に本願明細書で画定されるとおりの別の部分Aまたは部分Bにつなぐ共有結合であり、
Z1は、独立に、−NH2、−OH、−SH、および−COOHから選択される)。
【0062】
いくつかの実施形態では、Zは、独立に、−NH−、−C(=O)NH−、−NH−C(=O)、−SS−、−C(=O)O−、−NH(=NH2+)−または−O−C(=O)−から選択することができる。
【0063】
ポリオール含有ポリマーの構造単位Aが式(IV)を有するいくつかの実施形態では、XはCvH2V+1(式中、vは0〜5であり、Yは−OHであることができる)であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、R1および/またはR2は式(V)(式中、Zは−NH(=NH2+)−であり、かつ/またはZ1はNH2である)を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載される粒子のポリオール含有ポリマーにおいて、(A)は、独立に、下式から選択することができる。
【化4】
(式中、
当該スペーサは、独立に、いずれかの有機部分から選択され、特に硫黄、窒素、酸素またはフッ素などのヘテロ原子を任意に含有するアルキル、フェニルまたはアルコキシ基を挙げることができ、
当該アミノ酸は、遊離アミンおよび遊離カルボン酸基を有するいずれかの有機基から選択され、
nは1〜20であり、かつ
Z1は、独立に、−NH2、−OH、−SH、および−COOHから選択される)。
【0066】
いくつかの実施形態では、Z1はNH2であり、かつ/または当該糖は、グルコース、フルクトース、マンニトール、スクロース、ガラクトース、ソルビトール、キシロースまたはガラクトースなどのいずれかの単糖であることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載される粒子のポリオール含有ポリマーにおいて、1以上の構造単位(A)は、独立に、下式を有することができる。
【化5】
【0068】
いくつかの実施形態では、(B)は、官能基を介して2つの(A)部分をつなぐいずれかの直鎖状の、分枝状の、対称的なまたは非対称の化合物によって形成されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、(B)は、少なくとも2つの架橋できる基が2つの(A)部分をつなぐ化合物によって形成されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、(B)は、中性の、カチオン性のまたはアニオン性の有機基を含有する。この(B)の性質および組成は共有結合でまたは非共有結合で繋がれるべき化合物の化学的性質に依存する。
【0071】
アニオン性の積み荷とともに使用するための(B)の例示となるカチオン性部分としては、アミジン基、第四級アンモニウム、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基(それらのpKaより下でプロトン化される)、およびイミダゾリウムを有する有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
カチオン性の積み荷とともに使用するための(B)に含まれる例示となるアニオン性部分としては、式のスルホン酸アニオン、式の硝酸アニオン、式のカルボン酸アニオン、およびホスホン酸アニオンを有する有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
特に、それぞれアニオン性の積み荷およびカチオン性の積み荷とともに使用するための1以上のカチオン性またはアニオン性の部分(B)は、独立に、下式の一般式を有することができる:
【化6】
(式中、R5は、Aが求核性基を含む場合にAに共有結合することができる求電子性基である)。この場合のR5の例としては、とりわけ−C(=O)OH、−C(=O)Cl、−C(=O)NHS、−C(=NH2+)OMe;−S(=O)OCl−、−CH2Br、アルキルエステルおよび芳香族エステル、末端アルキン、トシレート、およびメシレートが挙げられるが、これらに限定されない。部分Aが求電子性末端基を含む場合は、R5は−NH2(第一級アミン)、−OH、−SH、N3および第二級アミンなどの求核性基を有することになろう。
【0074】
特に、部分(B)がアニオン性の積み荷とともに使用するためのカチオン性部分(B)である場合、「有機基」は、CmH2m(式中、m≧1)からなる一般式を有する骨格および他のヘテロ原子を有することができかつ式(XIII)のアミジン、式(XIV)の第四級アンモニウム、式(XV)の第一級アミン基、式(XVI)の第二級アミン基、式(XVII)の第三級アミン基(それらのpKaより下でプロトン化される)、および式(XVIII)のイミダゾリウムが挙げられる官能基のうちの少なくとも1つを含む必要がある、有機部分である。
【化7】
【0075】
実施形態では、部分(B)がカチオン性の積み荷とともに使用するためのアニオン性部分(B)である場合、この「有機基」は、CmH2m(式中、m≧1)からなる一般式を有する骨格および他のヘテロ原子を有してもよいが、式(XIX)のスルホン酸アニオン、式(XX)の硝酸アニオン、式(XXI)のカルボン酸アニオン、および式(XXII)のホスホン酸アニオンが挙げられる官能基のうちの少なくとも1つを含む必要がある。
【化8】
【0076】
(B)がカルボン酸アニオン(XXI)によって構成される実施形態では、第一級アミンまたはヒドロキシル基を含む化合物は、ペプチドまたはエステル結合の形成を介しても連結することができる。
【0077】
(B)が式(XV)の第一級アミン基および/または式(XVI)の第二級アミン基から構成される実施形態では、カルボン酸基を含む化合物は、ペプチド結合の形成を介しても連結することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では部分(B)は、独立に、以下から選択することができる。
【化9】
(式中、
qは1〜20であり、特に5であることができ、
pは20〜200であり、
Lは脱離基である)
【0079】
用語「脱離基」は、本願明細書で使用する場合、不均等結合開裂で一対の電子をもって離れる分子の断片を意味する。特に、脱離基はアニオンまたは中性分子であることができ、脱離基が離れる能力はその共役酸のpKaに相関し、より低いpKaはより良好な脱離基の能力に関連付けられる。例示となるアニオン性脱離基としては、Cl−、Br−、および、I−などのハロゲン化物ならびパラ−トルエンスルホネートまたは「トシレート」(TsO−)などのスルホン酸エステルが挙げられる。例示となる中性分子の脱離基は水(H2O)、アンモニア(NH3)、およびアルコール(ROH)である。
【0080】
特に、いくつかの実施形態では、Lは、塩化物(Cl)、メトキシ(OMe)、tブトキシ(OtBU)またはNヒドロスクシンイミド(NHS)であることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、式(I)の構造単位は下式を有することができる。
【化10】
【0082】
いくつかの実施形態では、式(II)の構造単位は下式を有することができる。
【化11】
【0083】
いくつかの実施形態では、式(III)の構造単位は下式を有することができる。
【化12】
式中、nは1〜20、特に1〜4である。
【0084】
いくつかの実施形態では、ポリオール含有ポリマーは下式を有することができる。
【化13】
【0085】
いくつかの実施形態では、ボロン酸含有ポリマーは少なくとも1つの末端ボロン酸基を含み、以下の構造を有する:
【化14】
(式中、
R3およびR4は、独立に、いずれかの親水性の有機ポリマーから選択することができ、特に独立にいずれかのポリ(エチレンオキシド)、および双性イオンのポリマーであることができ、
X1は、1以上の−CH、−N、または−Bを含む有機部分であることができ、
Y1は、式−CmH2m−(式中、m≧1であり、オレフィンまたはアルキニル基、または芳香族基(フェニル、ビフェニル、ナフチルもしくはアントラセニルなど)を含むことができる)を持つアルキル基であってもよく、
rは1〜1000であり、
aは0〜3であり、
bは0〜3であり、
官能基1および官能基2は同じであるかもしくは異なり、かつ標的指向化リガンド、特にタンパク質、抗体またはペプチドに結合することができ、または−OH、−OCH3もしくは−(X1)−(Y1)−B(OH)2−などの末端基である。
【0086】
いくつかの実施形態では、R3およびR4は(CH2CH2O)t(式中、tは2〜2000、特に100〜300である)である。
【0087】
いくつかの実施形態ではX1は−NH−C(=O)−、−S−S−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−または−C(=O)−O−であることができ、かつ/またはY1はフェニル基であることができる。
【0088】
いくつかの実施形態ではrは1であることができ、aは0であることができ、かつbは1であることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、官能基1および官能基2は同じであるかもしくは異なり、かつ独立に、−B(OH)2−OCH3、−OHから選択される。
【0090】
特に、式(XXXI)の官能基1および/または2は、積み荷、特にタンパク質、抗体またはペプチドなどの標的指向化リガンドに結合することができる官能基であることができるし、または−OH、−OCH3または−(X)−(Y)−B(OH)2などの末端基であることもできる。
【0091】
用語「官能基」は、本願明細書で使用する場合、分子構造またはその一部分の特徴的な化学反応に関与する、その構造またはその一部分中の原子の特定の群を意味する。例示となる官能基としては、炭化水素、ハロゲンを含む基、酸素を含む基、窒素を含む基、ならびにリンおよび硫黄を含む基が挙げられ、すべて当業者によって特定できる。特に、本開示に関しての官能基としては、カルボン酸、アミン、トリアリールホスフィン、アジド、アセチレン、スルホニルアジド、チオ酸およびアルデヒドが挙げられる。特に、例えば、標的指向化リガンドの中の対応する官能基に結合できる官能基は、以下の結合パートナーを含むように選択することができる:カルボン酸基およびアミン基、アジドおよびアセチレン基、アジドおよびトリアリールホスフィン基、スルホニルアジドおよびチオ酸、およびアルデヒドおよび第一級アミン。さらなる官能基は、本開示を読めば当業者が特定することができる。本願明細書で使用する場合、用語「対応する官能基」は、別の官能基に結合することができる官能基を指す。従って、互いに反応することができる官能基は、対応する官能基と呼ぶことができる。
【0092】
末端基は、高分子またはオリゴマー分子の先端である構成単位を意味する。例えば、PETポリエステルの末端基は、アルコール基またはカルボン酸基であってもよい。末端基は、モル質量を決定するために使用することができる。例示となる末端基は−OH、−COOH、NH2、およびOCH3を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、ボロン酸含有ポリマーは下式を有することができる。
【化15】
式中、sは20〜300である。
【0094】
本開示のナノ粒子に連結されうる例示となる薬剤および標的指向化リガンドは、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、アプタマーポリペプチド、タンパク質、多糖、高分子複合体(タンパク質およびポリヌクレオチドの混合物を含む高分子複合体が挙げられるがこれらに限定されない)、糖類および/もしくは多糖、ウイルス、放射性同位体を有する分子、抗体または抗体断片を含めた有機または無機の分子を含む。
【0095】
用語「ポリヌクレオチド」は、本願明細書で使用する場合、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはそれらの類似体を含む2以上の単量体から構成される有機ポリマーを意味する。用語「ヌクレオチド」は、プリンまたはピリミジン塩基およびリン酸基に結合されたリボースまたはデオキシリボース糖からなり、かつ核酸の基本構造単位であるいくつかの化合物のいずれかを指す。用語「ヌクレオシド」は、デオキシリボースまたはリボースと組み合わせたプリンまたはピリミジン塩基からなり、かつとりわけ核酸中で見出される化合物(グアノシンまたはアデノシンなど)を指す。用語「ヌクレオチド類似体」または「ヌクレオシド類似体」は、それぞれ、1以上の個々の原子が異なる原子または異なる官能基で置き換えられているヌクレオチドまたはヌクレオシドを指す。従って、用語「ポリヌクレオチド」は、いずれの長さの核酸、および特にDNA、RNA、類似体およびそれらの断片を包含する。3以上のヌクレオチドのポリヌクレオチドは、「ヌクレオチドオリゴマー」または「オリゴヌクレオチド」とも呼ばれる。
【0096】
用語「アプタマー」は、本願明細書で使用する場合、特定の標的に結合するオリゴ核酸またはペプチド分子を意味する。特に、核酸アプタマーは、例えば、小分子、タンパク質、核酸、およびさらには細胞、組織および生物などの種々の分子標的に結合するように、インビトロセレクション(in vitro selection)またはこれと等価なもの、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment、試験管内進化法)の何回もの繰り返しを通して操作された核酸種を含むことができる。アプタマーは抗体の分子認識特性に匹敵する分子認識特性を与えるので、アプタマーは、バイオテクノロジーでの応用および治療的応用で有用である。ペプチドアプタマーは、細胞内部でタンパク質に特異的に結合してタンパク質−タンパク質相互作用に干渉するように設計されているペプチドである。特に、ペプチドアプタマーは、例えば酵母2−ハイブリッド(Y2H)系から導き出されるセレクション戦略に従って導き出すことができる。特に、この戦略によれば、転写因子結合ドメインに連結された可変のペプチドアプタマーループが、転写因子活性化ドメインに連結された標的タンパク質に対してスクリーニングされる。このセレクション戦略を介するペプチドアプタマーのその標的へのインビボ結合は、下流の酵母マーカー遺伝子の発現として検出される。
【0097】
用語「ポリペプチド」は、本願明細書で使用する場合、2以上のアミノ酸単量体および/またはその類似体から構成される有機の直鎖状の、円形の、または分枝状のポリマーを意味する。用語「ポリペプチド」は、全長タンパク質およびペプチド、ならびにそれらの類似体および断片を含めて、いずれの長さのアミノ酸ポリマーをも包含する。3以上のアミノ酸のポリペプチドは、タンパク質オリゴマー、ペプチドまたはオリゴペプチドとも呼ばれる。特に、用語「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、通常、50アミノ酸単量体未満のポリペプチドを意味する。本願明細書で使用する場合用語「アミノ酸」、「アミノ酸単量体」、または「アミノ酸残基」は、20種の天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、および人工アミノ酸のうちのいずれかを指し、DおよびLの光学異性体の両方を包含する。特に、非天然アミノ酸としては、天然に存在するアミノ酸のD−立体異性体が挙げられる(これらは酵素による分解を受けにくいので、有用なリガンド基本単位を含む)。用語「人工アミノ酸」は、標準的なアミノ酸カップリング化学を使用して容易に一緒にカップリングできるが天然に存在するアミノ酸とは類似していない分子構造を持つ分子を意味する。用語「アミノ酸類似体」は、1以上の個々の原子が異なる原子、同位体、または異なる官能基で置き換えられているが他の点ではその類似体が由来するもとのアミノ酸と同一であるアミノ酸を指す。これらのアミノ酸のすべては、標準的なアミノ酸カップリング化学を使用して、ペプチドまたはポリペプチドへと合成的に組み込むことができる。用語「ポリペプチド」は、本願明細書で使用する場合、1以上の単量体、またはアミノ酸単量体以外の基本単位を含むポリマーを含む。単量体、サブユニット、または基本単位という用語は、適切な条件下で同じであるかもしくは異なる化学的性質の別の単量体に化学的に結合された状態にしてポリマーを形成することができる化合物を意味する。用語「ポリペプチド」は、さらに、1以上の基本単位がアミドまたはペプチド結合以外の化学結合によって別の基本単位に共有結合されているポリマーを含むことが意図されている。
【0098】
用語「タンパク質」は、本願明細書で使用する場合、他のタンパク質、DNA、RNA、脂質、代謝産物、ホルモン、ケモカイン、および小分子を含めた他の生体分子との相互作用(これに限定されない)に関与することができる特定の二次構造および三次構造を持つポリペプチドを意味する。本願明細書に記載される例示となるタンパク質は抗体である。
【0099】
用語「抗体」は、本願明細書で使用する場合、抗原による刺激後の活性化されたB細胞によって産生されかつその抗原に特異的に結合して生物系における免疫応答を促進することができるという種類のタンパク質を指す。完全抗体(full antibody)は典型的には2本の重鎖および2本の軽鎖を含む4つのサブユニットからなる。用語抗体は天然および合成の抗体を包含し、これにはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体またはそれらの断片が含まれるが、これらに限定されない。例示となる抗体としてはIgA、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、IgMなどが挙げられる。例示となる断片としてはFab、Fv、Fab’、F(ab’)2などが挙げられる。モノクローナル抗体は、「エピトープ」と呼ばれる別の生体分子の単一の特定の空間的なかつ極性の組織に特異的に結合し、そしてこれによりその「エピトープ」と呼ばれる別の生体分子の単一の特定の空間的なかつ極性の組織に相補的であるとして定義される抗体である。いくつかの形態では、モノクローナル抗体は同じ構造を有することもできる。ポリクローナル抗体は、異なるモノクローナル抗体の混合物を指す。いくつかの形態では、ポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体のうちの少なくとも2つが異なる抗原エピトープに結合する、モノクローナル抗体の混合物であることができる。この異なる抗原エピトープは、同じ標的上、異なる標的上、またはこれらの組み合わせにあってもよい。抗体は、宿主の免疫化および血清の採取による(ポリクローナル)か、または連続的なハイブリドーマ細胞株を調製し分泌されたタンパク質を集めることによる(モノクローナル)などの当該技術分野で周知の技術によって調製することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、ポリオールポリマーは、図1および図2の概略図に従って、送達されるべき1以上の注目する化合物と非共有結合による複合体または結合を形成する。
【0101】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子構造体は、薬剤と、ポリオール含有ポリマーとを含み、この薬剤は共有結合によりポリオールポリマーにつながれる。薬剤に接合されたポリオールポリマーの例は実施例16〜21に詳述されている。これらの実施形態では、薬剤に接合されたポリオールポリマー(本願明細書中で「ポリオールポリマー−薬剤接合体」と呼ばれる)は、BA分子との相互作用のためにそのポリマーの表面上に部位を提示する構造のナノ粒子を形成する。
【0102】
それらの実施形態のいくつかでは、当該ナノ粒子は、立体的安定化および/または標的指向化官能基をそのナノ粒子に与えるように構成されたBAポリマーをさらに含む。特に、それらの実施形態では、BAポリマーの添加により、自己凝集および他のナノ粒子との望まれない相互作用を最小になり、従って高められた塩および血清の安定性がもたらされる。例えば、立体的安定化は、本願明細書では、実施例12に記載される例示となるナノ粒子によって例証されるようなPEGを有するBAポリマーによってもたらされる。
【0103】
このような実施形態では、このナノ粒子の構造は、先行技術の薬剤送達方法に勝るいくつかの利点、例えば1以上の薬剤の制御放出を提供する能力を与える。この特徴は、例えば、薬剤とポリオールポリマーとの間の生分解性エステル結合の使用によってもたらされうる。当業者なら、この目的のために適切な他の潜在的な結合を認識するであろう。これらの実施形態では、別の利点は、BAポリマー部分を介しての薬剤の特異的な標識指向化を提供する能力である。
【0104】
いくつかの実施形態では、BAポリマーは、MRIもしくは他の類似の技術において造影剤として使用することができるフッ素化されたボロン酸(実施例7)またはフッ素化された切断可能なボロン酸(実施例8)を含んでもよい。このような造影剤は、このナノ粒子によって送達された薬剤の薬物動態または薬力学を追跡するために有用である可能性がある。
【0105】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子構造体は、薬剤と、ポリオールポリマーとを含み、この場合、当該ナノ粒子は修飾リポソームである。これらの実施形態では、この修飾リポソームは、共有結合を介してポリオールポリマーに接合された脂質を含み、その結果、このリポソームの表面はポリオールポリマーを提示する。これらの実施形態では、この修飾リポソームは、送達されるべき薬剤がこのリポソームナノ粒子内に収容されるように、形成する。
【0106】
用語「リポソーム」は、本願明細書で使用する場合、脂質から構成される小胞構造を意味する。この脂質は、典型的には、長い炭化水素鎖を含む尾部基(tail group)および親水性の頭部基(head group)を有する。この脂質は、送達されるべき薬剤を収容するのに適した内側の水系環境と脂質二重層を形成するように配置される。このようなリポソームは、細胞表面受容体または他の注目する標的による特異的な認識のための適切な標的指向化リガンドまたは分子を含んでもよい外部表面を呈する。
【0107】
用語「共役した」は、本願明細書で使用する場合、1つの分子が第2の分子と共有結合を形成しかつ原子が交互の単結合および多重(例えば二重)結合(例えば、C=C−C=C−C)で共有結合して互いに影響を及ぼし、電子の非局在化をもたらす結合を含むということを意味する。
【0108】
本開示のさらに他の実施形態では、ナノ粒子構造体は薬剤およびポリオールを含み、この場合、当該ナノ粒子は修飾されたミセルである。これらの実施形態では、この修飾されたミセルは、疎水性ポリマーブロックを含むように修飾されたポリオールポリマーを含む。
【0109】
用語「疎水性ポリマーブロック」は、本開示において使用される場合、性質上疎水性であろうポリマーのセグメントを意味する。
【0110】
用語「ミセル」は、本願明細書で使用する場合、液体の中に分散した分子の凝集体を指す。水溶液中の典型的なミセルは、親水性の「頭部」領域が周囲の溶媒と接し、疎水性の単一の尾部領域をそのミセルの中心に封鎖する凝集体を形成する。本開示では、この頭部領域は、例えばポリオールポリマーの表面領域であってもよく、他方で、尾部領域は、例えばポリオールポリマーの疎水性ポリマーブロック領域であってもよい。
【0111】
これらの実施形態では、疎水性ポリマーブロックを持つポリオールポリマーは、送達されるべき薬剤と混合されたとき、修飾されたミセルであるナノ粒子を形成して、送達されるべき薬剤がこのナノ粒子内に収容されるように配列する。このようなナノ粒子の実施形態は、その表面上に、前述の実施形態に係る標的指向化官能基を有するまたは有しないBAポリマーと相互作用するのに適したポリオールポリマーを提示する。これらの実施形態では、この目的のために使用することができるBAポリマーとしては、式(I)または(II)の親水性のAおよび疎水性のBを持つBAポリマーが挙げられる。この相互作用は、それが上記の他のナノ粒子の実施形態についてもたらすのと同じまたは類似の利点をもたらす。
【0112】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子または関連する構成成分は、許容できる溶媒と一緒に組成物の中に含まれてもよい。用語「溶媒」は、本願明細書で使用する場合、有効成分として組成物の中に含まれるナノ粒子に対して通常、溶媒、担体、結合剤、賦形剤または希釈剤として作用する種々の媒質のいずれかを意味する。
【0113】
いくつかの実施形態では、当該組成物が個体に投与されることになっている場合、その組成物は医薬組成物であることができ、この許容できる溶媒は薬学的に許容できる溶媒であることができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、賦形剤または希釈剤と一緒に医薬組成物の中に含まれることができる。特に、いくつかの実施形態では、1以上の適合性でかつ薬学的に許容できる溶媒と組み合わせて、特に薬学的に許容できる希釈剤または賦形剤と組み合わせてナノ粒子を含有する医薬組成物が開示される。
【0115】
用語「賦形剤」は、本願明細書で使用する場合、薬物の有効成分のための担体として使用される不活性物質を意味する。本願明細書に開示される医薬組成物のための適切な賦形剤としては、個体のからだが当該ナノ粒子を吸収する能力を高めるいずれの物質も挙げられる。適切な賦形剤としては、簡便かつ正確な投薬を可能にするために、ナノ粒子を有する処方物を増量させるために使用することができるいずれの物質もまた挙げられる。単回投薬量としてのその使用に加えて、賦形剤は、ナノ粒子の取り扱いを補助するために製造プロセスで使用することができる。薬物の投与経路、および形態に応じて、異なる賦形剤が使用されてもよい。例示となる賦形剤としては、固結防止剤(antiadherent)、結合剤、コーティング崩壊剤、充填剤、香料(甘味料など)および着色料、滑剤、潤滑剤、防腐剤、吸着剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
用語「希釈剤」は、本願明細書で使用する場合、組成物の有効成分を希釈または保持するために使用される希釈するための薬剤を意味する。適切な希釈剤としては、医薬製剤の粘度を減少させることができるいずれの物質も挙げられる。
【0117】
ある実施形態では、組成物、特に医薬組成物は、全身投与用に処方することができ、この全身投与は非経口投与、より具体的には静脈内投与、皮内投与、および筋肉内投与を含む。
【0118】
非経口投与用の例示となる組成物としては、ナノ粒子を含む滅菌水溶液、注射剤または懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非経口投与用組成物は、以前にフリーズドライ処理された凍結乾燥された形態で調製された粉末状組成物を、生物学的に適合した水系液体(蒸留水、生理溶液または他の水溶液)に溶解させることにより、使用時に調製することができる。
【0119】
用語「凍結乾燥(lyophilization)」(フリーズドライ処理(freeze−drying)または低温乾燥(cryodesiccation)としても知られる)は、典型的には傷みやすい物質を保存するまたはその物質をより運搬に便利にするために使用される脱水プロセスを意味する。フリーズドライは、物質を凍結させ、次いで周囲の圧力を低下させ、そしてこの物質の中の凍結した水を固相から気体へと直接昇華させることができる十分な熱を加えることにより、機能する。
【0120】
医薬での応用においては、フリーズドライ処理は、製品(ワクチンおよび他の注射剤など)の貯蔵寿命を延ばすためにしばしば使用される。水を物質から除去しその物質をバイアルの中に密封することにより、その物質は容易に保存でき、輸送でき、そして後で注射のためにそのもとの形態へと再構成することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子は所定の標的へと送達される。いくつかの実施形態では、この標的はインビトロ生物系であり、当該方法は、標的を本願明細書に記載されるナノ粒子と接触させることを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、個体への薬剤の送達のために1つの方法が提供される。この方法は、種々の開示された実施形態に係る適切なナノ粒子を処方することを含む。このナノ粒子もまた、いくつかの開示された実施形態に係る薬学的に許容できる組成物へと処方されてもよい。この方法は、ナノ粒子を被験体に送達することをさらに含む。当該ナノ粒子を個体に送達するために、このナノ粒子またはナノ粒子処方物は、経口で、非経口で、局所に、または直腸に与えられてもよい。それらは、各投与経路に適した形態で送達される。例えば、ナノ粒子組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態で、注射、吸入、点眼薬、軟膏剤、座薬、点滴により;ローションまたは軟膏剤により局所に;および座薬により直腸に投与することができる。
【0123】
用語「個体」は、本願明細書で使用する場合、単一の生物学有機体を包含し、この例としては植物または動物、特に高等動物、特に脊椎動物(哺乳動物、特にヒトなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
語句「非経口投与」および「非経口投与された」は、本願明細書で使用する場合、経腸投与および局所投与以外の投与方法、通常は注射による方法を意味し、これには静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内(intradennal)、腹腔内、経気管、皮下、外皮下(subcuticular)、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内および幹内(intrastemal)への注射および点滴が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
語句「全身投与」、「全身投与された」、「末梢投与」および「末梢投与された」は、本願明細書で使用する場合、中枢神経系へと直接投与すること以外のナノ粒子またはその組成物の投与、そのため、このナノ粒子またはその組成物は個体の系に入り、従って代謝および他の類似のプロセスにさらされる投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0126】
本願明細書に記載される医薬組成物の中の有効成分または薬剤の現実の投薬レベルは、特定の個体、組成物、および投与方法に対して、その個体に対して毒性があることがなく、所望の治療反応を成し遂げるのに有効な有効成分の量を得るように、変更されてもよい。
【0127】
これらの治療用ポリマー接合体は、経口、経鼻(例えば噴霧剤によるなど)、直腸、膣内、非経口、大槽内および局所的に(粉末、軟膏剤またはドロップなどによる。口腔内および舌下を含む)が挙げられるいずれかの適切な投与経路によって、治療のためにヒトおよび他の動物に投与されてもよい。
【0128】
選択される投与経路にかかわらず、本発明の治療用ポリマー接合体(適切な水和された形態で使用されてもよい)、および/または医薬組成物は、当業者にとって公知である従来の方法によって薬学的に許容できる剤形へと処方される。
【0129】
特にいくつかの実施形態では、送達される化合物は、個体におけるある状態を治療または予防するための薬物である。
【0130】
用語「薬物」または「治療薬」は、個体におけるある状態の治療、予防、または診断において使用することができるか、または個体の身体的または精神的健康状態を別の態様で増進させるために使用することができる活性薬剤を意味する。
【0131】
用語「状態」は、本願明細書で使用する場合、完全な身体的、精神的および恐らくは社会的な健康の状況を連想させる個体全体またはその1以上の部分の身体的状況とは一致しない、個体のからだ全体またはその1以上の部分の身体的状況を、通常は意味する。本願明細書に記載される「状態」には障害および疾患が含まれるがこれらに限定されず、ここで用語「障害」は、体またはそのいずれかの一部分の機能的異常性に関連する生体の状態を意味し、用語「疾患」は、体またはそのいずれかの一部分の正常な機能性を損なっておりかつ典型的には徴候および症候を識別することにより明らかにされる生体の状態を意味する。例示となる状態としては、個体の怪我、能力障害、障害(精神的および身体的障害を含む)、症候群、感染、逸脱した挙動、ならびに個体のからだまたはその一部分の構造および機能の非定型の変化した状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
用語「治療」は、本願明細書で使用する場合、ある状態についての診療の一部であるかまたはある状態を医学的にまたは外科的に扱ういずれかの活動を意味する。
【0133】
用語「予防」は、本願明細書で使用する場合、個体における状態に由来する死亡率または罹患率の重荷を低下させるいずれかの活動を意味する。これは一次予防、二次予防および第三次予防のレベルで起こり、a)一次予防は疾患の発症を回避し、b)二次予防活動は早期の疾患治療、これによりその疾患の進行および症候の出現を防止するための介入の機会を増やすことを目指し、c)第三次予防は、機能を回復することおよび疾患に関連する合併症を低下させることによりすでに確立された疾患の負の影響を低減する。
【0134】
本願明細書に記載されるナノ粒子によって送達することができかつ薬物として適切である例示となる化合物は、放射線処置(ホウ素中性子捕獲など)で使用されるべき電磁放射線を放射することができる化合物(10B同位体など)を含む。さらなる治療薬は、当該技術分野で公知のものを含めた、いずれかの親油性または親水性の、合成のまたは天然に存在する生物活性のある治療薬を含む。The Merck Index,An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals、第13版、2001年、Merck and Co.,Inc.、ニュージャージー州、ホワイトハウスステーション(Whitehouse Station)。このような治療薬の例としては、小分子医薬品、抗生物質、ステロイド、ポリヌクレオチド(例えばゲノムDNA、cDNA、mRNA、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ウイルス、およびキメラポリヌクレオチド)、プラスミド、ペプチド、ペプチド断片、小分子(例えばドキソルビシン)、キレート剤(例えばデフェロキサミン(DESFERAL)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、天然物(例えばタキソール、アンホテリシン)、および他の生物活性のある高分子(例えば、タンパク質および酵素など)が挙げられるが、これらに限定されない。本願明細書に記載されるナノ粒子とともに治療薬としてしようすることができる活性薬剤(治療薬)を列挙する米国特許第6,048,736号も参照。小分子治療薬は、複合粒子内の治療薬であってもよいだけではなく、さらなる実施形態では、この複合材料の中のポリマーに共有結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、その共有結合は、(例えばプロドラッグ形態またはジスルフィなどの生分解性結合を介して)可逆的であり、治療薬を送達する別の方法を提供する。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子を用いて送達することができる治療薬としては、エポチロン、カンプトテシン系薬物、タキソールなどの化学療法薬、または核酸(プラスミド、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドアプタマーまたはこれらの組み合わせなど)、および本開示を読めば当業者によって特定できるさらなる薬物が挙げられる。
【0135】
いくつかの実施形態では、送達される化合物は、個体の細胞または組織を撮像することに適した化合物である。本願明細書に記載されるナノ粒子によって送達することができ、かつ画像法に適している例示となる化合物は、磁気共鳴画像法用の19F同位体、PET画像法用の18Fまたは64Cuなどの同位体を含有する化合物を含む。
【0136】
特に、本願明細書に記載されるナノ粒子は、19F含有BAポリマーを含有するように構成することができる。例えば、19F原子は、切断可能ではないBAポリマー化合物または切断可能なBAポリマー化合物へと組み込むことができる。19F原子についての他の場所は、BAポリマー成分、ポリオールポリマー成分上、または送達されるべき薬剤上に存在できる。これらのおよび他の変更態様は、当業者には明らかであろう。
【0137】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子は、農業において使用される化学物質を送達するために使用することができる。本発明の別の実施形態では、本願明細書に記載されるナノ粒子によって送達される薬剤は、殺菌上の有用性および農業における有用性を有する生物活性のある化合物である。これらの生物活性のある化合物には、当該技術分野で公知のものが含まれる。例えば、適切な農業上生物活性のある化合物としては、肥料、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、および防かび剤(mildewcide)が挙げられるが、これらに限定されない。消毒薬は、都市の上水道および工業用水系(冷却水など)、製紙における白く泡立った水系を処理するための水処理でも使用される。微生物の攻撃または分解を受けやすい水系は、皮革工業、繊維工業、および塗装業または塗料産業でも見出される。このような消毒薬およびそれらの使用の例は、個々におよび組み合わせて、米国特許第5,693,631号明細書、同第6,034,081号明細書、および同第6,060,466号明細書(これらは、参照により本願明細書に援用したものとする)に記載されている。上で論じたものなどの活性薬剤を含有する組成物は、有効成分それ自体について知られているのと同様にして使用されてもよい。注目すべきことに、このような使用は薬理学的な使用ではないので、当該複合材料のポリマーは、薬学的な使用で必要とされる毒性プロファイルを満たすことは必ずしも必要ではない。
【0138】
ある実施形態では、ポリオールポリマーおよびBAポリマーを含むナノ粒子は、本願明細書中で示された化合物、特に薬剤のいずれかを、ナノ粒子を使用して送達するのに適したシステムの中に含まれてもよい。このシステムのいくつかの実施形態では、ナノ粒子は、個体への投与のためのナノ粒子を調製することに適した構成成分を具える。
【0139】
本願明細書に開示されるシステムは、部品のキットの形態で提供されてもよい。例えば当該ポリオールポリマーおよび/またはBAポリマーは、分子単独としてまたは適切な賦形剤、溶媒もしくは希釈剤の存在下で含まれてもよい。
【0140】
部品のキットでは、ポリオールポリマー、BAポリマー、および/または送達されるべき薬剤は、独立にキットの中に含まれ、恐らく適切な溶媒担体または助剤と一緒に組成物の中に含まれる。例えば、ポリオールポリマーおよび/またはBAポリマーは、単独で1以上の組成物の中に含まれてもよく、かつ/または適切なベクターの中に含まれてもよい。また、送達されるべき薬剤は、適切な溶媒担体または助剤と一緒に組成物の中に含まれてもよい。あるいは、その薬剤は末端使用者によって供給されてもよく、その部品のキットの中に存在しなくてもよい。さらには、当該ポリオールポリマー、BAポリマーおよび/または薬剤は、ナノ粒子への適切な組み込みに適した種々の形態で含まれることができる。
【0141】
さらなる構成成分も含まれてよく、そしてそれらは微小流体チップ、参照基準、緩衝液、および本開示を読めば当業者によって特定できるさらなる構成成分を含む。
【0142】
本願明細書に開示される部品のキットでは、そのキットの構成成分は、本願明細書に開示される方法を実施するために、適切な取扱説明および他の必要な試薬を具えていてもよい。いくつかの実施形態では、当該キットは、当該組成物を別々の容器の中に収容することができる。このアッセイを実施するための取扱説明、例えば書面によるかまたは音声による取扱説明、書類またはテープもしくはCD−ROMなどの電子的なサポートも、このキットの中に含まれてもよい。当該キットは、使用される特定の方法によっては、他の包装された試薬および物質(洗浄緩衝液など)を含むこともできる。
【0143】
当該組成物の適切な担体薬剤または助剤の特定に関するさらなる詳細、ならびに一般に当該キットの製造および包装は、本開示を読めば当業者が特定することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、当該ナノ粒子の個々の成分を調製し、次いで所望の複合材料のナノ粒子構造体に到達するためにこれらの成分を種々の順序で混合することにより、調製されてもよい。成分の調製および混合は、当業者によって知られる適切な溶液の中で実施される。
【0145】
用語「混合(する)」は、本願明細書で使用する場合、注目する分子を含む1つの溶液を注目する別の分子を含む別の溶液に加えることを意味する。例えば、ポリオールポリマーの水溶液は、本開示に関するBAポリマーの水溶液と混合されてもよい。
【0146】
用語「溶液」は、本願明細書で使用する場合、注目する分子を含むいずれかの液体相の試料を意味する。例えば、ポリオールポリマーの水溶液は、水またはいずれかの緩衝化された溶液、特に水溶液の中で希釈されたポリオールポリマーを含んでもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーを送達されるべき薬剤と混合し(図1および図2)、ポリオールポリマー−薬剤ナノ粒子を形成することにより、調製することができる。他の実施形態では、ナノ粒子は、BAポリマーをこのポリオールポリマー−薬剤ナノ粒子とさらに混合することにより、調製されてもよい。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーをBAポリマーと混合し、次いで送達されるべき薬剤を混合することにより、調製される。さらに他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマー、BAポリマー、および送達されるべき薬剤を同時に混合することにより、調製される。
【0148】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、本開示の種々の実施形態に係るポリオールポリマー−薬剤接合体を形成し、このようにしてポリオールポリマー−薬剤接合体から構成されるナノ粒子を調製することにより、調製される。他の実施形態では、ポリオールポリマー−薬剤接合体から構成されるナノ粒子は、ナノ粒子を適切な水溶液に溶解させることにより、調製されてもよい。なおさらなる実施形態では、ポリオールポリマー−薬剤接合体から構成されるナノ粒子は、ポリオールポリマー−薬剤接合体を、標的指向化リガンドを提供するまたは提供しないBAポリマーと混合することにより、調製されてもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、疎水性ポリマーブロックを持つポリオールポリマーを送達されるべき薬剤と混合し、このようにして本開示の実施形態に係る修飾されたミセルを調製することにより、調製することができる。他の実施形態では、ナノ粒子は、修飾されたミセルをBAポリマーとさらに混合することにより、調製されてもよい。さらに他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーをBAポリマーと混合し、次いで送達されるべき薬剤を混合し、このようにして修飾されたミセルであるナノ粒子を調製することによって、調製されてもよい。
【0150】
本開示のいくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと接合された脂質をBAポリマーおよび/または送達されるべき薬剤と混合し、このようにして修飾リポソームを調製することにより、調製することができる。種々の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと接合された脂質をBAポリマーと混合し、次いで送達されるべき薬剤を混合することにより、調製されてもよい。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと接合された脂質を送達されるべき薬剤と混合することにより、調製されてもよい。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリオールポリマーと接合された脂質を送達されるべき薬剤と混合し、次いでBAポリマーを混合し、このようにして修飾リポソームであるナノ粒子を調製することにより、調製されてもよい。
【0151】
本開示のいくつかの実施形態に係るナノ粒子の形成は、当業者によって知られる技術および手順を用いて分析することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ粒子内への核酸薬剤の組み込みをモニターおよび測定するために、ゲル遅延度アッセイが使用される(実施例10)。いくつかの実施形態では、公知の方法を使用して適切なナノ粒径および/またはゼータ電位を選択することができる(実施例11)。
【0152】
当該組成物の適切な担体薬剤または助剤の特定に関するさらなる詳細、ならびに一般に当該キットの製造および包装は、本開示を読めば当業者が特定することができる。
【実施例】
【0153】
本願明細書に記載される方法システムは、以下の実施例でさらに例証される。これらの実施例は、例証として提供されており、限定することを意図していない。当業者なら、核酸検出および他の標的(タンパク質、抗原、真核生物細胞または原核生物細胞など)の検出の方法について詳細に記載されている特徴の適用性を理解するであろう。
【0154】
すべての化学試薬は商業的供給業者から入手し、さらに精製することなくそのまま使用した。ポリマー試料は、示差屈折率(RI)検出器、示差粘度計(differential viscometer)および小角光散乱検出器からなるTDA 302 三重検出器アレイを具えたViscotek GPC Systemで分析した。7.5%酢酸溶液を、1mL/分の流量で溶離液として使用した。
【0155】
pGL3、蛍ルシフェラーゼ遺伝子を含有するプラスミドは、pGL3を発現する細菌から抽出し精製した。siGL3は、インテグレーティッド・ディーエヌエー・テクノロジーズ(Integrated DNA Technologies)から購入した(配列を下記に提供する)。siCON1(配列を下記に提供する)は、ダーマコン(Dharmacon)から購入した。HeLa細胞は、カチオン性ムチン酸ジアミン−DMSポリマーによるpDNAまたはsiRNAの送達の有効性を決定するために使用した。
【表1】
【0156】
(実施例1:ムチン酸ジメチルエステル(1)の合成)
5g(22.8mmol)のムチン酸(アルドリッチ(Aldrich))を、120mLのメタノールおよび0.4mLの濃硫酸が入っている500mLの丸底フラスコに加えた。この混合物を、一定撹拌下で、85℃で一晩還流させた。この混合物をその後濾過し、メタノールで洗浄し、次いで80mLのメタノールおよび0.5mLのトリエチルアミンの混合物から再結晶した。真空下で一晩乾燥した後、8.0g(33.6mmol、71%)のムチン酸ジメチルエステルを得た。1H NMR((CD3)2SO) δ 4.88−4.91(d,2H),4.78−4.81(m,2H),4.28−4.31(d,2H),3.77−3.78(d,2H),3.63(s,6H)。ESI/MS(m/z):261.0[M+Na]+。
【化16】
【0157】
(実施例2:N−BOC保護ムチン酸ジアミン(2)の合成)
8g(33.6mmol)のムチン酸ジメチルエステル(1;実施例1)、12.4mL(88.6mmol)のトリエチルアミンおよび160mLのメタノールの混合物を、500mLの丸底フラスコの中で、一定撹拌下、85℃で0.5時間、還流下で加熱し、その後、メタノール(32mL)に溶解した14.2g(88.6mmol)のN−BOCジアミン(フルカ(Fluka))を加えた。次いでこの反応懸濁液を還流状態に戻した。一晩還流した後、この混合物を濾過し、メタノールで洗浄し、メタノールから再結晶し、次いで真空下で乾燥し、9.4g(19mmol、57%)のN−BOC保護ムチン酸ジアミンを得た。1H NMR((CD3)2SO) δ 7.66(m,2H),6.79(m,2H),5.13−5.15(d,2H),4.35−4.38(d,2H),4.08−4.11(m,2H),3.78−3.80(d,2H),2.95−3.15(m,8H),1.38(s,18)。ESI/MS (m/z):517.1[M+Na]+。
【化17】
【0158】
(実施例3:ムチン酸ジアミン(3)の合成)
8g(16.2mmol)の上記N−BOC保護ムチン酸ジアミン(2;実施例2)を、メタノール中の3M HCl(160mL)を含む500mLの丸底フラスコに移し、一定撹拌下で、85℃で一晩還流させた。その後沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄し、一晩真空乾燥して、5.7g(15.6mmol、96%)のムチン酸ジアミンを得た。1H NMR((CD3)2SO) δ 7.97(m,8H),5.35−5.38(m,2H),4.18−4.20(m,2H),3.82(m,2H),3.35−3.42(m,8H),2.82−2.90(m,4H)。ESI/MS(m/z):294.3[M]+,317.1[M+Na]+,333.0[M+K]+。
【化18】
【0159】
(実施例4:ムチン酸ジアミン−DMS共重合体(MAP)(4))
1.5mLのエッペンドルフチューブ(eppendorff tube)に、0.8mLの0.1M NaHCO3の中の85.5mg(0.233mmol)の実施例3のビス(塩酸塩)(3)の溶液を入れた。スベルイミノ酸ジメチル・2HCl(DMS、ピアースケミカル社(Pierce Chemical Co.)、63.6mg、0.233mmol)を加え、この溶液をボルテックスにかけ、遠心してこれらの成分を溶解させた。得られた混合物を室温で15時間撹拌した。次いでこの混合物を水で8mLまで希釈し、1N HClを加えてpHを4にした。次いでこの溶液を、3500 MWCO 透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で24時間透析した。透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥し、49mgの白色のふわふわした粉末を得た。1H NMR(500MHz,dDMSO) δ 9.15(bs),7.92(bs),5.43(bs),4.58(bs),4.17(bs),3.82(bs),3.37(bs),3.28(bs),2.82(bs),2.41(bs),1.61(bs),1.28(bs)。13C NMR(126MHz,dDMSO) δ 174.88(s,1H),168.38(s,1H),71.45(s,4H),71.22(s,3H),42.34(s,2H),36.96(s,3H),32.74(s,3H),28.09(s,4H),26.90(s,4H)。Mw[GPC]=2520、Mw/Mn=1.15。
【化19】
ポリマー4は、カチオン性A−B型(繰り返し構造はABABAB....である)のポリオール含有ポリマーの例である。
【0160】
(実施例5:ボロン酸−アミド−PEG5000(5))
実施例4のポリマーが核酸、例えば、siRNAとともに組織化されるとき、それらはナノ粒子を形成するであろう。これらのナノ粒子は、哺乳動物で使用されるための立体的安定化を有する必要があるであろう。そして任意にそれらは標的指向化薬剤が含まれるようにできるであろう。これらの2つの機能を発揮するために、当該ナノ粒子は立体的安定化およびPEG−標的指向化リガンドのためのPEGで装飾されてもよい。これをするために、ボロン酸を含むPEG化合物を調製する。例えば、ボロン酸を含むPEGは、以下の実施例に従って合成することができる。
【0161】
332mgの4−カルボキシフェニルボロン酸(2mmol)を8mLのSOCl2に溶解した。これに数滴のDMFを加え、この混合物をアルゴン下で2時間還流させた。過剰のSOCl2を減圧下で除去し、得られた固体を10mLの無水ジクロロメタンに溶解した。この溶液に、5mLのジクロロメタンに溶解した500mgのPEG5000−NH2(2mmol)および418μLのトリエチルアミン(60mmol)を0℃、アルゴン下で加えた。得られた混合物を室温まで加温し、撹拌を一晩続けた。ジクロロメタン溶媒を減圧下で除去し、得られた液体を、20mLのジエチルエーテルを用いて沈殿させた。この沈殿物を濾過し、乾燥し、ddH2Oに再溶解した。次いでこの水溶液を0.45μmフィルターを用いて濾過し、3500 MWCO 透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で24時間透析した。透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥した。1H NMR(300MHz,dDMSO) δ 7.92−7.77(m),4.44(d),4.37(t),3.49(m),2.97(s)。
【化20】
【0162】
(実施例6:ボロン酸−ジスルフィド−PEG5000(6))
実施例5のPEG化合物の(還元条件下で)切断可能なバージョンも、以下のようにして合成できる。
【0163】
250mgのPEG5000−SH(0.05mmol、レイサン・バイオ社(LaySanBio Inc.))を、撹拌子を具えたガラスバイアルに加えた。これに、4mLのメタノールに溶解した110mgのアルドリチオール−2(0.5mmol、アルドリッチ(Aldrich))を加えた。この溶液を室温で2時間撹拌し、その後、1mLのメタノール中の77mgのメルカプトフェニルボロン酸(0.5mmol、アルドリッチ(Aldrich))を加えた。得られた溶液を室温でさらに2時間撹拌した。メタノールを真空下で除去し、残渣を2mLのジクロロメタンに再溶解した。18mLのジエチルエーテルをこのジクロロメタン溶液に加え、この混合物を1時間静置させた。得られた沈殿物を遠心分離を介して集め、ジエチルエーテルで数回洗浄し、乾燥した。乾燥した固体を水に再溶解し、0.45μmフィルターを用いて濾過し、3500 MWCO透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で15時間透析した。この透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥した。1H NMR(300MHz,dDMSO) δ 8.12−8.00(m),7.83−7.72(m),7.72−7.61(m),7.61−7.43(m),3.72(d,J=5.4),3.68−3.15(m),3.01−2.83(m)。
【化21】
【0164】
(実施例7:(2,3,5,6)−テトラフルオロフェニルボロン酸−PEG5000(7)の合成)
実施例5のボロン酸を含有するPEG化合物のフッ素化されたバージョンは合成することができ、治療用のナノ粒子とともに造影剤として使用することができる。画像法のためのフッ素原子は、以下に記載および説明するようにして組み込むことができる。
【0165】
(2,3,5,6)−フルオロカルボキシフェニルボロン酸を過剰のSOCl2(約100当量)に溶解し、これに数滴のDMFを加える。この混合物を、アルゴン下で2時間還流させる。過剰のSOCl2を減圧下で除去し、得られた残基を無水ジクロロメタンに溶解する。この溶液に、ジクロロメタンに溶解したPEG5000−NH2(1当量)およびトリエチルアミン(30当量)を、アルゴン下、0℃で加える。得られた混合物を室温まで加温し、撹拌を一晩続けた。ジクロロメタン溶媒を減圧下で除去し、得られた液体をジエチルエーテルで沈殿させる。この沈殿物を濾過し、乾燥し、ddH2O中に再溶解する。次いでこの水溶液を、0.45μmフィルターを用いて濾過し、3500 MWCO 透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で24時間透析する。透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥する。
【化22】
フッ素含有化合物は、当該ナノ粒子の中に19Fを与えるのに有用である。この19Fは、標準的な患者用MRIを使用する磁気共鳴分光法によって検出することができる。19Fの添加により、当該ナノ粒子が撮像できる(これは、単に撮像のためだけにできるし、または治療薬の付加があれば撮像および治療を可能にできる)。
【0166】
(実施例8:(2,3,5,6)−テトラフルオロフェニルボロン酸−ジスルフィド−PEG5000(8)の合成)
実施例5のボロン酸を含有する切断可能なPEG化合物のフッ素化されたバージョンは合成することができ、治療用ナノ粒子とともに造影剤として使用することができる。画像法のためのフッ素原子は、以下に記載および説明するようにして組み込むことができる。
【0167】
250mgのPEG5000−SH(0.05mmol、レイサン・バイオ社(LaySanBio Inc.))を、撹拌子を具えたガラスバイアルに加える。これに、4mLのメタノールに溶解した110mgのアルドリチオール(aldrithiol)−2(0.5mmol、アルドリッチ(Aldrich))を加える。この溶液を室温で2時間撹拌し、この後、1mLのメタノール中の77mgの(2,3,5,6)−フルオロ−4−メルカプトフェニルボロン酸(0.5mmol)を加える。得られた溶液を室温でさらに2時間撹拌する。メタノールを真空下で除去し、残渣を2mLのジクロロメタンに再溶解する。18mLのジエチルエーテルをこのジクロロメタン溶液に加え、この混合物を1時間静置させた。得られた沈殿物を遠心分離を介して集め、ジエチルエーテルで数回洗浄し、乾燥する。乾燥した固体を水に再溶解し、0.45μmフィルターを用いて濾過し、3500 MWCO 透析膜(ピアース(Pierce)のひだ付き透析チューブ)を用いてddH2O中で15時間透析する。透析した溶液を乾固するまで凍結乾燥する。
【化23】
【0168】
(実施例9:ボロン酸−PEG5000−トランスフェリン(9)の合成)
標的指向化薬剤は、例えばトランスフェリンの連結に関して図12に概略的に説明するアプローチに従って、実施例5〜8の化合物においてボロン酸から見てPEGの他端に配置することができるであろう。
【0169】
従って、治療薬としての核酸を含有するシステムの構成成分はありうる(標的指向化リガンドは、トランスフェリンのようなタンパク質(図12)、抗体または抗体断片、RGDまたはLHRHのようなペプチド、葉酸またはガラクトースなどのような小分子であってよい)。ボロン酸ペグ化標的指向化薬剤は以下のようにして合成することができる。
【0170】
特に、図12に概略的に説明するアプローチに従ってボロン酸PEG5000−トランスフェリンを合成するために、以下の手順を実施した。1mLの0.1M PBS緩衝液(p.H.7.2)中の10mg(0.13μmol)のヒトホロトランスフェリン(鉄に富む)(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))の溶液を、3.2mgのOPSS−PEG5000−SVA(5当量、0.64μmol、レイサン・バイオ社(LaySanBio Inc.))に加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌した。このペグ化トランスフェリンを、Ultracel 50,000 MWCO(Amicon Ultra−4、ミリポア(Millipore))を使用して未反応のOPSS−PEG5000−SVAから、およびゲル濾過カラムG3000SWxl(東ソー・バイオセップ(Tosoh Biosep))を使用して未反応のトランスフェリンから精製した(HPLCおよびMALDI−TOF分析によって確認した)。次いで100μL中の100μgのOPSS−PEG5000ペグ化トランスフェリンを、室温で20μL、4−メルカプトフェニルボロン酸(1μg/μL、20μg、100当量)とともに1時間インキュベーションした。インキュベーション後、過剰の4−メルカプトフェニルボロン酸およびピリジル−2−チオン副生成物を除去するために、この溶液を、YM−30,000 NMWI 装置(ミリポア(Millipore))を用いて2回透析した。
【0171】
(実施例10:MAP−核酸粒子の処方物 − ゲル遅延度アッセイ)
図1に示すように、DNAseおよびRNASeを含まない水中の1μgのプラスミドDNAまたはsiRNA(0.1μg/μL、10μL)を、DNAseおよびRNASeを含まない水の中の種々の濃度の10μLのMAPと混合し、0.5、1、1.5、2、2.5、および5の電荷比(ポリマー上の「+」電荷:核酸上の「−」電荷)を得た。得られた混合物を室温で30分間インキュベーションした。この20μL溶液の10μLを、3.5μLの添加液を用いて1%アガロースゲル上に添加し、図3および図4に示すように、このゲルを80Vで45分間電気泳動にかけた。このナノ粒子内に含有されない核酸は、このゲル上を移動するであろう。これらの結果は、当該ナノ粒子内に核酸を含有するために必要な電荷比に対する指針を与える。
【0172】
(実施例11:MAP−核酸粒子の粒径およびゼータ電位)
DNAseおよびRNASeを含まない水中の1μgのプラスミドDNA(0.1μg/μL、10μL)を、DNAseおよびRNASeを含まない水中の種々の濃度の10μLのMAPと混合し、0.5、1、1.5、2、2.5、および5の電荷比を得た。得られた混合物を、室温で30分間インキュベーションした。次いで20μLの混合物を、粒径測定用に、DNAseおよびRNASeを含まない水で70μLに希釈した。次いでこの70μL溶液を、ゼータ電位測定用に、1mM KClで1400μLに希釈した。粒径およびゼータ電位の測定を、ZetaPals動的光散乱(DLS)機器(ブルックヘブン・インスツルメンツ(Brookhaven Instruments))で行った。結果を図5に示す。
【0173】
(実施例12:ボロン酸PEG5Kを用いたペグ化による粒径安定化)
図2に図表で示すように、DNAseおよびRNASeを含まない水中の2μgのプラスミドDNA(0.45μg/μL、4.4μL)を、DNAseおよびRNASeを含まない水の中で80μLに希釈した。このプラスミド溶液を、DNAseおよびRNASeを含まない水の中で同じく80μLに希釈した4.89μgのMAP(0.5μg/μL、9.8μL)と混合し、3+/−の電荷比および0.0125μg/μLの最終のプラスミド濃度を得た。得られた混合物を室温で30分間インキュベーションした。この溶液に、480μgのボロン酸PEG5K、(化合物6;実施例6)、(20μg/μL、24μL)を加えた。次いでこの混合物をさらに30分間インキュベーションし、DNAseおよびRNASeを含まない水の中で0.5mL 100,000 MWCO膜(BIOMAX、ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation))を用いて2回透析し、160μLのDNAseおよびRNASeを含まない水の中で再構成した。この溶液の半分を、ゼータ電位測定(図6)用に、1.4mLの1mM KClで希釈した。このBA含有ナノ粒子のゼータ電位は、含有しないナノ粒子よりも低いゼータ電位を示すということに留意されたい。これらの結果は、当該BA含有ナノ粒子が当該ナノ粒子の外部に位置しているBAを有するという結論を支持する。他の半分は、粒径を測定するために使用した。粒径を5分間毎分測定し、その後、10.2μLの10× PBSを加え、最終の90.2μL溶液が1× PBSの中にあるようにした。次いで図7に示すように、再び粒径を、さらに10分間毎分測定した。非粒子成分から(濾過によって)分離したBA含有ナノ粒子はPBS中で安定であるのに対し、BAを含まない粒子は安定ではない。これらのデータは、このBA含有ナノ粒子はその外部に存在するBAを有するという結論を支持する。なぜなら、このBA含有ナノ粒子はPBS中での凝集に対して安定であるからである。
【0174】
(実施例13:HeLa細胞へのMAP/pDNA粒子の形質移入)
形質移入の48時間前に、HeLa細胞を24穴プレートに20,000細胞/ウェルで播種し、10%FBSを補った培地中で増殖させた。MAP粒子を、種々のポリマー:pDNAの電荷比で1μgのpGL3を200μLのOpti−MEM I中に含有するように処方した(実施例9を参照)。増殖培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、この粒子処方物を加えた。その後この細胞を、37℃および5% CO2で5時間インキュベーションし、その後、10% FBSを補った800μLの増殖培地を加えた。48時間のインキュベーション後、MTSアッセイを使用して、この細胞の画分を細胞生存率について分析した。残りの細胞を、100μLの1× Luciferase Cell Culture Lysis Reagent(ルシフェラーゼ細胞培養液溶解試薬)の中に溶解した。100μLのLuciferase Assay Reagent(ルシフェラーゼアッセイ試薬)を10μLの細胞ライゼートに加えることによりルシフェラーゼ活性を測定し、Monolightルミノメーター使用してバイオルミネセンスを定量した。その後、ルシフェラーゼ活性は、10,000細胞あたりの相対発光量(relative light unit、RLU)として報告される。結果を図8および図9に示す。
【0175】
(実施例14:HeLa細胞へのMAP/pDNAおよび/またはsiRNA粒子の同時形質移入)
形質移入の48時間前に、HeLa細胞を24穴プレートに20,000細胞/ウェルで播種し、10% FBSを補った培地中で増殖させた。MAP粒子を、5+/−の電荷比で1μgのpGL3および50nMのsiGL3を200μLのOpti−MEM I中に含有するように処方した。pGL3のみまたはpGL3およびsiCONを含有する粒子を対照として使用した。増殖培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、粒子処方物を加えた。その後、この細胞を37℃および5% CO2で5時間インキュベーションし、その後、10% FBSを補った800μLの増殖培地を加えた。48時間のインキュベーション後、実施例12に記載したようにして、この細胞をルシフェラーゼ活性および細胞生存率についてアッセイした。結果を図10に示す。RLUはsiGL3(正しい配列)による形質移入において低下しているので、siGL3およびpGL3はともに同時送達されるに違いない。
【0176】
(実施例15:HeLa−LUC細胞へのMAP/siGL3の形質移入)
形質移入の48時間前に、HeLa−LUC細胞(蛍ルシフェラーゼタンパク質をコードする遺伝子を含有する)を24穴プレートに20,000細胞/ウェルで播種し、10% FBSを補った培地中で増殖させた。MAP粒子を、5+/−の電荷比で50および100nMのsiGL3を200μLのOpti−MEM I中に含有するように処方した。増殖培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、粒子処方物を加えた。その後、この細胞を37℃および5% CO2で5時間インキュベーションし、その後、10% FBSを補った800μLの増殖培地を加えた。48時間のインキュベーション後、実施例12に記載したようにして、この細胞をルシフェラーゼ活性および細胞生存率についてアッセイした。結果を図11に示す。RLUは、siGL3の濃度の上昇とともに減衰するので、これらのデータは、内因性の遺伝子の阻害が起こりうるということを示唆する。
【0177】
(実施例16;ムチン酸ジヨージド(10)の合成)
1g(2.7mmol)のムチン酸ジアミン(実施例3)を、250mLの丸底フラスコの中で3.8mL(27.4mmol)のトリエチルアミンおよび50mLの無水DMFと混合し、その後、1.2mL(13.7mmol)の塩化ヨードアセチルを滴下した。この混合物を、一定撹拌下で、室温で一晩反応させた。その後、溶媒を真空ポンプによって除去し、生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥し、0.8g(1.3mmol、46%)のムチン酸ジヨージドを得た。1H NMR((CD3)2SO) δ 8.20(s 2H),2H),7.77(s,2H),4.11(m,2H),4.03(m,2H),3.79(m,2H),3.11−3.17(m,2H),1.78(d,2H)。ESI/MS(m/z):652.8[M+Na]+。
【化24】
【0178】
(実施例17:ムチン酸ジシステイン(11)の合成)
7mLの0.1Mの脱気した炭酸ナトリウムに、17mgのL−システインおよび0.4gのムチン酸ジヨージドを加えた。得られた懸濁液を、この溶液が透明に変わるまで150℃で5時間還流させた。次いでこの混合物を室温まで冷却し、1N HClによってpHに調整した。次いで、生成物を沈殿させるためにアセトンをゆっくり加えた。濾過、アセトンによる洗浄および真空乾燥後、60mgの粗生成物を得た。
【化25】
【0179】
(実施例17:ムチン酸ジシステイン(11)の合成)
50mLの丸底フラスコ中の、pH 7.5の0.1Mの脱気したリン酸ナトリウム緩衝液20mLに、0.38gのL−システイン(3.2mmol)および0.40g(0.6mmol)のムチン酸二ヨウ素を加えた。得られた懸濁液を75℃で一晩還流させ、室温まで冷却し、凍結乾燥した。その後80mLのDMFをこの凍結乾燥した薄茶色の粉末に加え、濾過によって可溶性生成物からの不溶性の過剰の試薬およびリン酸塩の分離を成し遂げた。DMFを減圧下で除去し、生成物を真空乾燥して、12mg(0.02mmol、3%)のムチン酸ジシステインを得た。
【化26】
【0180】
(実施例18:ポリマー合成、(ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG))(12))
10mLの2口丸底フラスコの中で、12mg(21.7μmol)のムチン酸ジシステインおよび74mg(21.7μmol)のPEG−DiSPA 3400を真空下で乾燥し、その後、アルゴン下で0.6mLの無水DMSOを加えた。10分間の撹拌後、9μL(65.1μmol)の無水DIEAをアルゴン下でこの反応容器に移した。この混合物をアルゴン下で一晩撹拌した。次いで10kDa膜遠心方式デバイス(membrane centrifugal device)を使用してこのポリマー含有溶液を透析し、凍結乾燥し、47mg(58%)のポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)を得た。
【化27】
このポリオール含有ポリマーはアニオン性ABポリマーである。
【0181】
(実施例19:ムチン酸ポリマー(13)への薬物(カンプトテシン、CPT)の共有結合による連結)
10mg(2.7μmolの繰り返し単位)のポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)を、ガラス広口瓶の中で1.5mLの無水DMSOに溶解した。10分間の撹拌後、1.1μLのDIEA(6.3μmol)、3.3mg(6.3μmol)のTFA−Gly−CPT、1.6mg(8.1μmol)のEDCおよび0.7mg(5.9μmol)のNHSをこの反応混合物に加えた。8時間の撹拌後、1.5mLのエタノールを加え、溶媒を減圧下で除去した。沈殿物を水に溶解し、不溶性の物質を0.2μmフィルターを通した濾過によって除去した。次いでこのポリマー溶液を10kDa膜を介して水に対して透析し、その後凍結乾燥し、ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPT接合体を得た。
【化28】
【0182】
(実施例20:水の中での、CPT−ムチン酸ポリマー(13)を用いたナノ粒子の処方物(20))
ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)およびポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPT接合体の有効径を、再蒸留水(0.1〜10mg/mL)の中で当該ポリマーを処方することにより測定し、ZetaPALS(ブルックヘブン・インスツルメント社(Brookhaven Instrument Co)) Instrumentを使用する動的光散乱(DLS)によって評価した。その後各1分間の3回の連続測定を記録し、平均した。ZetaPALS(ブルックヘブン・インスツルメント社(Brookhaven Instrument Co)) Instrumentを使用して、両方の化合物のゼータ電位を1.1mM KCl溶液の中で測定した。次いで0.012の標的残差(target residuals)での10回連続の自動測定を実施し、結果を平均した(図14)。特に、ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPT接合体について2つの分布が測定され、主要な分布は57nm(全粒子数の60%)であった。第2のより小さい分布も、233nmで測定された。
【0183】
(実施例21:水の中でのCPT−ムチン酸ポリマー(13)およびボロン酸−ジスルフィド−PEG5000(6)を用いたボロン酸−ペグ化ナノ粒子の処方物)
ボロン酸ペグ化ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPTナノ粒子を、当該ポリマーを再蒸留水に0.1mg/mLの濃度で溶解し、次いで、ポリ(ムチン酸−DiCys−PEG)−CPT接合体中のムチン酸糖上のジオールに対するBA−PEGの比が1:1であるように、同じく水中のポリマー6(BA−PEG)を加えることにより処方する。この混合物を、30分間インキュベーションし、その後、ZetaPALS(ブルックヘブン・インスツルメント社(Brookhaven Instrument Co)) instrumentを使用して、有効径およびゼータ電位を測定する。
【0184】
(実施例22:マウスにおけるpDNA送達のための標的化されたナノ粒子)
プラスミドpApoE−HCRLucは、ルシフェラーゼを発現するための遺伝子を含有し、肝臓特異的なプロモーターの制御下にある。ポリマー(MAP)4(0.73mg)、ポリマー6(73mg)およびポリマー9(0.073mg)を、5mLの水の中で混合し、次いでpApoE−HCRLucプラスミドを含有する1.2mLの水を加えた(これは、+3の、このプラスミドに対するポリマー4の電荷比を与える)。連続的な回転濾過(spin filtering)およびその後のD5Wの添加(水の中にあった最初の処方物から出発する)により、この粒子をD5W(5% グルコース水溶液)中に置いた。ヌードマウスにHepa−1−6肝癌細胞を移植し、およそ200mm3のサイズまで腫瘍を成長させた。標的化されたナノ粒子の注射は、5mgプラスミド/kgマウスに等しい量で尾静脈において静脈中で行った。これらのマウスを、注射後の24時間に撮像した。これらのマウスは、毒性の徴候を示さず、腫瘍の領域でルシフェラーゼ発現は検出されたが、肝臓の領域では検出されなかった。
【0185】
要約すると、いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されているのは、ボロン酸含有ポリマーにカップリングされたポリオール含有ポリマーを含む担体ナノ粒子であって、このナノ粒子は、このボロン酸含有ポリマーをナノ粒子の外部の環境に対して提示するように構成されている、担体ナノ粒子、ならびに関連する組成物、方法およびシステムである。
【0186】
上に示した実施例は、当業者に、本開示の粒子、組成物、システムおよび方法の実施形態を製造および使用する方法の完全な開示および説明を与えるために提供されており、本発明者らがその開示と考えるものの範囲を限定するということは意図されていない。当該技術分野の当業者にとっては自明である、本開示を実施するための上記の方法の改変物は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。本願明細書中で言及したすべての特許および公開公報は、本開示が関係する当業者の技能のレベルを示す。本開示で引用されたすべての参考文献は、各参考文献がその全体を個々に参照により援用されたかのごとく、それと同程度に参照により援用される。
【0187】
背景技術、課題を解決するための手段、発明を実施するための形態、および実施例において引用された各文献(特許、特許出願、学術論文、要約、実験室マニュアル、書籍、または他の開示物を含む)の開示全体は、これによって、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0188】
本開示は特定の組成物または生物系に限定されるわけではなく、組成物または生物系は当然様々であってよいということを理解されたい。本願明細書で使用される用語(法)は、特定の実施形態を記載する目的のためだけのものであり、限定することを意図していないということも理解されたい。本願明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a、an)」、および「この、当該、前記(the)」は、文脈から明らかにそうではないと分かる場合を除いて、複数の指示対象を含む。用語「複数の」は、文脈から明らかにそうではないと分かる場合を除いて、2以上の指示対象を含む。特段の記載がない限り、本願明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0189】
本願明細書に記載されるものと類似または等価ないずれかの方法および物質が試験のための実施において使用できるが、適切な物質および方法の具体例が本願明細書に記載されている。
【0190】
本開示のいくつかの実施形態を記載した。しかしながら、本開示の趣旨および範囲から逸脱せずに種々の改変がなされうるということを理解されたい。従って、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0191】
参考文献
− Davis Mark E.、Chen Zhuo (Georgia)およびShin Dong M、「Nanoparticle therapeutics: an emerging treatment modality for cancer」、Nature、2008年、第7巻、771−782頁
− Duncan Ruth、「Polymer conjugates as anticancer nanomedicines」、Nature、2006年、第6巻、688−701頁
− Allen Theresa M、「Ligand−Targeted Therapeutics In Anticancer Therapy」、Nature 2002年、第2巻、750−763頁
− Liu YeminおよびReineke Theresa M.、「Hydroxyl Stereochemistry and Amine Number within Poly(glycoamidoamine)s Affect Intracellular DNA Delivery」、J.Am.Chem.Soc.、2005年、第127巻、3004−3015頁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子であって、
前記ボロン酸含有ポリマーは、可逆的な共有結合で前記ポリオール含有ポリマーにカップリングされており、
前記ナノ粒子は、前記ボロン酸含有ポリマーを前記ナノ粒子の外部の環境へと提示するように構成されている、ナノ粒子。
【請求項2】
前記ポリオール含有ポリマーは、1以上の、以下の構造単位のうちの少なくとも1つ
【化1】
(式中、
Aは式の有機部分
【化2】
であり、式中、
R1およびR2は、独立に、約10kDa以下の分子量を有するいずれかの炭素ベースの基または有機基から選択され、
Xは、独立に、1以上の−H、−F、−C、−Nまたは−Oを含む脂肪族基から選択され、
Yは、独立に、−OHまたは−OHを提示する有機部分から選択され、
Bは、前記ポリマー中の第1の前記部分AのR1およびR2のうちの1つを第2の前記部分AのR1およびR2のうちの1つとつなぐ有機部分である)
を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
R1およびR2は、独立に、式:
【化3】
(式中、
dは0〜100であり、
eは0〜100であり、
fは0〜100であり、
Zは、1つの有機部分を別の有機部分につなぐ共有結合であり、
Z1は、独立に、−NH2、−OH、−SH、および−COOHから選択される)
を有する、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
Xは、CnH2n+1(式中、nは0〜5である)であり、
Yは−OHである、
請求項2または請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
Aは、独立に、
【化4】
(式中、
前記スペーサは、独立に、いずれかの有機基から選択され、
前記アミノ酸は、遊離アミンおよび遊離カルボン酸基を有するいずれかの有機基から選択され、
nは1〜20であり、
Z1は、独立に、−NH2、−OH、−SH、および−COOHから選択される)
からなる群から選択される、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
Aは、独立に、
【化5】
から選択される、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
Bは、
【化6】
(式中、
qは1〜20であり、
pは20〜200であり、
Lは脱離基である)
である、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
式(I)の構造単位は、
【化7】
である、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項9】
式(II)の構造単位は、
【化8】
である、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項10】
式(III)の構造単位は、
【化9】
(式中、nは1〜20である)
である、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記ポリオール含有ポリマーは、
【化10】
である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記ボロン酸含有ポリマーは少なくとも1つの末端ボロン酸基を含み、かつ一般式:
【化11】
(式中、
R3およびR4は、独立に、親水性の有機ポリマーであり、
X1は、1以上の−C、−N、または−Bを含む有機部分であり、
Y1は、式−CmH2m−(式中、m≧1である)を持つアルキル基または芳香族基であり、
rは1〜1000であり、
aは0〜3であり、
bは0〜3である)
を有する、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
R3およびR4は(CH2CH2O)t(式中、tは2〜2000である)である、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
X1は、−NH−C(=O)−、−S−S−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−または−C(=O)−O−であり、Y1はフェニル基である、請求項12または請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
rは1であり、aは0であり、bは1である、請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項16】
官能基1および官能基2は同じであるかまたは異なり、かつ独立に、−B(OH)2、−OCH3、−OHから選択される、請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記ボロン酸含有ポリマーは、
【化12】
(式中、sは20〜300である)である、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項18】
化合物をさらに含み、前記化合物は、前記ポリオール含有ポリマーおよび/または前記ボロン酸含有ポリマーの一部を形成する、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項19】
化合物をさらに含み、前記化合物は、前記ポリオール含有ポリマーおよび/または前記ボロン酸含有ポリマーに連結されている、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項20】
化合物をさらに含み、前記化合物は治療薬である、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項21】
前記治療薬は小分子化学療法剤である、請求項20に記載のナノ粒子。
【請求項22】
複数の化合物をさらに含み、前記複数の化合物のうちの少なくとも1つの化合物は標的指向化リガンドである、請求項1から請求項21のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項23】
前記標的指向化リガンドはタンパク質、小分子、完全抗体、または抗体断片である、請求項22に記載のナノ粒子。
【請求項24】
前記標的指向化リガンドはトランスフェリン、葉酸およびガラクトースから選択され、前記ナノ粒子は、カンプトテシン、エポチロン、タキサンもしくはポリヌクレオチドまたはこれらのいずれかの組み合わせから選択される治療薬をさらに含む、請求項23に記載のナノ粒子。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子と、適切な溶媒および/または賦形剤とを含む、組成物。
【請求項26】
前記組成物は医薬組成物であり、かつ前記適切な溶媒および/または賦形剤は薬学的に許容できる溶媒および/または賦形剤である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ナノ粒子は、少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーの一部として19Fをさらに含み、前記ボロン酸含有ポリマーのうちの少なくとも1つは、式
【化13】
(式中、sは20〜300である)を有し、
前記組成物は19F NMR分光法を介するインビボ撮像用に処方されている、
請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ナノ粒子は、少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーの一部として10Bをさらに含み、前記組成物はインビボでのホウ素による中性子放射化治療用に処方されている、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
化合物を標的に送達するための方法であって、
前記標的を請求項18から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子と接触させること
を含む、方法。
【請求項30】
前記標的は哺乳動物の体内の癌細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
化合物を標的に送達するためのシステムであって、前記システムは、
可逆的な共有結合を介して相互結合できる少なくとも1つのポリオール含有ポリマーおよび少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーを含み、
前記少なくとも1つのポリオール含有ポリマーおよび前記少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーは、請求項18から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子の中に前記化合物とともに組織化され、前記化合物を前記標的に送達するために使用される、システム。
【請求項32】
化合物を個体に投与するための方法であって、
前記個体に、前記化合物を含む請求項18から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子を投与すること
を含む、方法。
【請求項33】
化合物を個体に投与するためのシステムであって、前記システムは、
可逆的な共有結合を介して相互結合できる少なくとも1つのポリオール含有ポリマーおよび少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーを含み、
前記少なくとも1つのポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーは、請求項18から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子の中に前記化合物とともに組織化され、前記個体に投与される、システム。
【請求項34】
ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子を調製するための方法であって、前記方法は、
前記ポリオール含有ポリマーを前記ボロン酸含有ポリマーにカップリングすることを可能にする時間の間および条件下で、前記ポリオール含有ポリマーを前記ボロン酸含有ポリマーと接触させること
を含む、方法。
【請求項35】
式のボロン酸含有ポリマー
【化14】
(式中、
R3およびR4は、独立に、親水性の有機ポリマーであり、
X1は、1以上の−CH、−N、または−Bを含む有機部分であり、
Y1は、式−CmH2m−(式中、m≧1である)のアルキル基または芳香族基であり、
rは1〜1000であり、
aは0〜3であり、
bは0〜3である)。
【請求項36】
R3およびR4は、独立に(CH2CH2O)t(式中、tは2〜2000である)である、請求項35に記載のポリマー。
【請求項37】
X1は、−NH−C(=O)−、−S−S−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−または−C(=O)−O−であり、Y1はフェニル基である、請求項35または請求項36に記載のポリマー。
【請求項38】
rは1であり、aは0であり、bは1である、請求項35から請求項37のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項39】
前記官能基1および官能基2は同じであるかまたは異なり、かつ独立に、−B(OH)2、−OCH3、−OHから選択される、請求項35に記載のポリマー。
【請求項40】
ポリオール含有ポリマーであって、1以上の、請求項2に記載の式(I)、(II)および(III)の構造単位のうちの少なくとも1つを含み、式(I)の構造単位は、
【化15】
である、ポリオール含有ポリマー。
【請求項41】
ポリオール含有ポリマーであって、1以上の、請求項2に記載の式(I)、(II)および(III)の構造単位のうちの少なくとも1つを含み、式(II)の構造単位は、
【化16】
である、ポリオール含有ポリマー。
【請求項42】
ポリオール含有ポリマーであって、1以上の、請求項2に記載の式(I)、(II)および(III)の構造単位のうちの少なくとも1つを含み、式(III)の構造単位は、
【化17】
(式中、nは1〜20である)
である、ポリオール含有ポリマー。
【請求項43】
式
【化18】
を有するポリオール含有ポリマー。
【請求項1】
ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子であって、
前記ボロン酸含有ポリマーは、可逆的な共有結合で前記ポリオール含有ポリマーにカップリングされており、
前記ナノ粒子は、前記ボロン酸含有ポリマーを前記ナノ粒子の外部の環境へと提示するように構成されている、ナノ粒子。
【請求項2】
前記ポリオール含有ポリマーは、1以上の、以下の構造単位のうちの少なくとも1つ
【化1】
(式中、
Aは式の有機部分
【化2】
であり、式中、
R1およびR2は、独立に、約10kDa以下の分子量を有するいずれかの炭素ベースの基または有機基から選択され、
Xは、独立に、1以上の−H、−F、−C、−Nまたは−Oを含む脂肪族基から選択され、
Yは、独立に、−OHまたは−OHを提示する有機部分から選択され、
Bは、前記ポリマー中の第1の前記部分AのR1およびR2のうちの1つを第2の前記部分AのR1およびR2のうちの1つとつなぐ有機部分である)
を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
R1およびR2は、独立に、式:
【化3】
(式中、
dは0〜100であり、
eは0〜100であり、
fは0〜100であり、
Zは、1つの有機部分を別の有機部分につなぐ共有結合であり、
Z1は、独立に、−NH2、−OH、−SH、および−COOHから選択される)
を有する、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
Xは、CnH2n+1(式中、nは0〜5である)であり、
Yは−OHである、
請求項2または請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
Aは、独立に、
【化4】
(式中、
前記スペーサは、独立に、いずれかの有機基から選択され、
前記アミノ酸は、遊離アミンおよび遊離カルボン酸基を有するいずれかの有機基から選択され、
nは1〜20であり、
Z1は、独立に、−NH2、−OH、−SH、および−COOHから選択される)
からなる群から選択される、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
Aは、独立に、
【化5】
から選択される、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
Bは、
【化6】
(式中、
qは1〜20であり、
pは20〜200であり、
Lは脱離基である)
である、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
式(I)の構造単位は、
【化7】
である、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項9】
式(II)の構造単位は、
【化8】
である、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項10】
式(III)の構造単位は、
【化9】
(式中、nは1〜20である)
である、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記ポリオール含有ポリマーは、
【化10】
である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記ボロン酸含有ポリマーは少なくとも1つの末端ボロン酸基を含み、かつ一般式:
【化11】
(式中、
R3およびR4は、独立に、親水性の有機ポリマーであり、
X1は、1以上の−C、−N、または−Bを含む有機部分であり、
Y1は、式−CmH2m−(式中、m≧1である)を持つアルキル基または芳香族基であり、
rは1〜1000であり、
aは0〜3であり、
bは0〜3である)
を有する、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
R3およびR4は(CH2CH2O)t(式中、tは2〜2000である)である、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
X1は、−NH−C(=O)−、−S−S−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−または−C(=O)−O−であり、Y1はフェニル基である、請求項12または請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
rは1であり、aは0であり、bは1である、請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項16】
官能基1および官能基2は同じであるかまたは異なり、かつ独立に、−B(OH)2、−OCH3、−OHから選択される、請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記ボロン酸含有ポリマーは、
【化12】
(式中、sは20〜300である)である、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項18】
化合物をさらに含み、前記化合物は、前記ポリオール含有ポリマーおよび/または前記ボロン酸含有ポリマーの一部を形成する、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項19】
化合物をさらに含み、前記化合物は、前記ポリオール含有ポリマーおよび/または前記ボロン酸含有ポリマーに連結されている、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項20】
化合物をさらに含み、前記化合物は治療薬である、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項21】
前記治療薬は小分子化学療法剤である、請求項20に記載のナノ粒子。
【請求項22】
複数の化合物をさらに含み、前記複数の化合物のうちの少なくとも1つの化合物は標的指向化リガンドである、請求項1から請求項21のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項23】
前記標的指向化リガンドはタンパク質、小分子、完全抗体、または抗体断片である、請求項22に記載のナノ粒子。
【請求項24】
前記標的指向化リガンドはトランスフェリン、葉酸およびガラクトースから選択され、前記ナノ粒子は、カンプトテシン、エポチロン、タキサンもしくはポリヌクレオチドまたはこれらのいずれかの組み合わせから選択される治療薬をさらに含む、請求項23に記載のナノ粒子。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子と、適切な溶媒および/または賦形剤とを含む、組成物。
【請求項26】
前記組成物は医薬組成物であり、かつ前記適切な溶媒および/または賦形剤は薬学的に許容できる溶媒および/または賦形剤である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ナノ粒子は、少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーの一部として19Fをさらに含み、前記ボロン酸含有ポリマーのうちの少なくとも1つは、式
【化13】
(式中、sは20〜300である)を有し、
前記組成物は19F NMR分光法を介するインビボ撮像用に処方されている、
請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ナノ粒子は、少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーの一部として10Bをさらに含み、前記組成物はインビボでのホウ素による中性子放射化治療用に処方されている、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
化合物を標的に送達するための方法であって、
前記標的を請求項18から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子と接触させること
を含む、方法。
【請求項30】
前記標的は哺乳動物の体内の癌細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
化合物を標的に送達するためのシステムであって、前記システムは、
可逆的な共有結合を介して相互結合できる少なくとも1つのポリオール含有ポリマーおよび少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーを含み、
前記少なくとも1つのポリオール含有ポリマーおよび前記少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーは、請求項18から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子の中に前記化合物とともに組織化され、前記化合物を前記標的に送達するために使用される、システム。
【請求項32】
化合物を個体に投与するための方法であって、
前記個体に、前記化合物を含む請求項18から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子を投与すること
を含む、方法。
【請求項33】
化合物を個体に投与するためのシステムであって、前記システムは、
可逆的な共有結合を介して相互結合できる少なくとも1つのポリオール含有ポリマーおよび少なくとも1つのボロン酸含有ポリマーを含み、
前記少なくとも1つのポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーは、請求項18から請求項24のいずれか1項に記載のナノ粒子の中に前記化合物とともに組織化され、前記個体に投与される、システム。
【請求項34】
ポリオール含有ポリマーおよびボロン酸含有ポリマーを含むナノ粒子を調製するための方法であって、前記方法は、
前記ポリオール含有ポリマーを前記ボロン酸含有ポリマーにカップリングすることを可能にする時間の間および条件下で、前記ポリオール含有ポリマーを前記ボロン酸含有ポリマーと接触させること
を含む、方法。
【請求項35】
式のボロン酸含有ポリマー
【化14】
(式中、
R3およびR4は、独立に、親水性の有機ポリマーであり、
X1は、1以上の−CH、−N、または−Bを含む有機部分であり、
Y1は、式−CmH2m−(式中、m≧1である)のアルキル基または芳香族基であり、
rは1〜1000であり、
aは0〜3であり、
bは0〜3である)。
【請求項36】
R3およびR4は、独立に(CH2CH2O)t(式中、tは2〜2000である)である、請求項35に記載のポリマー。
【請求項37】
X1は、−NH−C(=O)−、−S−S−、−C(=O)−NH−、−O−C(=O)−または−C(=O)−O−であり、Y1はフェニル基である、請求項35または請求項36に記載のポリマー。
【請求項38】
rは1であり、aは0であり、bは1である、請求項35から請求項37のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項39】
前記官能基1および官能基2は同じであるかまたは異なり、かつ独立に、−B(OH)2、−OCH3、−OHから選択される、請求項35に記載のポリマー。
【請求項40】
ポリオール含有ポリマーであって、1以上の、請求項2に記載の式(I)、(II)および(III)の構造単位のうちの少なくとも1つを含み、式(I)の構造単位は、
【化15】
である、ポリオール含有ポリマー。
【請求項41】
ポリオール含有ポリマーであって、1以上の、請求項2に記載の式(I)、(II)および(III)の構造単位のうちの少なくとも1つを含み、式(II)の構造単位は、
【化16】
である、ポリオール含有ポリマー。
【請求項42】
ポリオール含有ポリマーであって、1以上の、請求項2に記載の式(I)、(II)および(III)の構造単位のうちの少なくとも1つを含み、式(III)の構造単位は、
【化17】
(式中、nは1〜20である)
である、ポリオール含有ポリマー。
【請求項43】
式
【化18】
を有するポリオール含有ポリマー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−500208(P2012−500208A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523150(P2011−523150)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053620
【国際公開番号】WO2010/019718
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(598128421)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053620
【国際公開番号】WO2010/019718
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(598128421)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (26)
【Fターム(参考)】
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