担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法
【課題】生体物質等の各種物質が結合されまたは結合可能な担体を、略静止した状態で変形可能な容器内に保持することで、担体の取り扱いや測定等の処理を効率化、迅速化かつ容易化することができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【解決手段】壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部と、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部と、前記収容部内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体とを有するように構成する。
【解決手段】壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部と、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部と、前記収容部内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体とを有するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象となる目的物質について多数の試薬や物質を用いた一連の反応処理を行う場合には、例えば、前記目的物質をビーズ等の微小担体に結合させて試験管に収容する。その後、該試験管に種々の試薬等を注入し、該担体を何らかの方法で分離し、該担体を別容器に移動し、さらに別の試薬等を注入したり、加熱等の処理を行ったりしていた。例えば、該担体が磁性体である場合には、磁場によって、試験管の内壁に吸着させることで分離を行っていた。
【0003】
また、プレパラート等の平面状の担体に、例えば、種々のオリゴヌクレオチドを固定したものを用いて目的物質の検査を行う処理については、該担体自体を、標識化した目的物質が懸濁する懸濁液中に移動させたり、該担体自体に種々の試薬を分注したり、該担体自体を洗浄液中に移動させたり、発光の測定を行うために該担体を測定機の測定位置にまで移動させたりする一連の反応処理を行うことによって、前記目的物質の塩基配列構造を調べていた。
【0004】
これらの処理を行うには、前記担体自体の分離、および担体自体の移送が必要であり、そのため処理が複雑かつ手間がかかるおそれがあるという問題点を有していた。特に、これらの担体自体を移送する場合については、人手で行う場合には使用者に大きな負担をかけ、またクロスコンタミネーションのおそれもあった。また、担体自体を機械によって移送する場合には大掛かりな装置が必要であった。また、非磁性担体の分離を行う場合には、担体の大きさや比重によって分離を行う必要があり、処理が複雑で手間がかかるという問題点を有していた。
【0005】
そこで、試験管または平面状担体を用いるのではなく、液体の通過が可能な液通過路が設けられたピペットチップ、該ピペットチップが装着されるノズル、前記ピペットチップの液通過路に磁場を及ぼす磁力装置と、該ピペットチップ内に流体を吸引し吐出させるためのプランジャの内蔵されたシリンダを用いた吸引吐出機構を有する本願発明者によって発明された分注装置を用いて反応処理を行うものがあった。
【0006】
この方法によると、表面に各種物質が保持された多数の磁性粒子が懸濁する懸濁液を吸引し、吸引の際に磁場を及ぼすことによって、該磁性粒子を効率的にピペットチップの前記液通過路に吸着させて分離等を行うことができるが、磁性粒子が液通過路を通過可能であるため、磁性粒子を前記ピペットチップ内に保持するには磁場をかけて内壁に吸着させておく必要があった。そのために、処理を行うには、吸引吐出制御と、磁場による吸着制御、ピペットチップの移動制御とを組み合わせる必要があった。また、前記担体が非磁性粒子の場合については、該装置によって分離を行うことはできないという問題点があった。
【0007】
さらに、吸引吐出機構としてプランジャを駆動させるシリンダを用いているが、プランジャ等の機構は、注射器のような高精度の加工部品であり、特に、シリンダ内の容積変化は、基本的に分注チップ内の容積変化と一体であり、プランジャと、そのプランジャの駆動装置との接合部に緩みがないように伝達する必要があった。また、それらの吸引吐出機構のノズルと、分注チップ等を、気体や液体の漏れがないように嵌合させる必要があり、製造や品質管理に水密および気密のための精度や構造が要求される。特に、複数の分注チップを集積化して用いる場合に、複数本のノズルを一斉に複数本の分注チップに挿入嵌合させて装着するために大きな力を必要とし、水密および気密用のOリングの磨耗が激しく高度の品質管理が必要となるおそれがあった。
【0008】
前記吸引吐出機構のノズルに、複数本の分注チップを取り替えながら嵌合させて連続して処理を行う場合には、ノズルと分注チップ内の気体や液体との接触によるクロスコンタミネーションを防止する必要があった。
【0009】
さらに、分注チップの吸引吐出を制御するには、分注チップの容量に相当する容量をもつシリンダが必要であるため、大きな体積の液体を扱うには、装置規模が大きくなるという問題点を有していた(特許文献1〜3)。
【0010】
また、プローブ付のビーズを小さな孔に保持し、ついで、キャピラリーあるいは溝に移動させ種類ごとに定められた順番でビーズを配列させてプローブビーズアレイを作製し、または液体フロー中に定められた順番でプローブ付ビーズを流し込み、溝あるいはキャピラリー内に収納し、定められた順番のプローブアレイを作製するものがあった(特許文献4)。
【0011】
さらに、流体サンプル中の多数の分析物を検出してリアルタイムで解析して表示するためのシステムまたは方法として、少なくとも1の光源と、少なくとも1の光検出器を有し、実質的に同一平面上の光学的アセンブリを含み、コンピュータと通信可能であり、コンピュータにより読み出し可能でかつコンピュータの命令を記憶するメモリ媒体が備えられ、該命令がフローサイトメータを用いたある生物学サンプルの処理と、処理ステップと実質的に同時に該生物学サンプル内の関心のある少なくとも1つの分析物の存在と量との決定とを含むものがあった(特許文献5)。
【0012】
しかしながら、粒子は、人間が取り扱うには非常に小さいもの(例えば、数10μmから数mm)であるため、多数の粒子を予め定めた順番で、溝やキャピラリー内に正確に整列させることは手間がかかり取り扱いにくいおそれがあるという問題点を有していた。また、粒子の配列のずれによって、正確な対応をつけることができないおそれがあるという問題点を有していた。また、液体中に懸濁させた状態の粒子をフローサイトメータを用いて高速に移動させ、光検出器で測定する場合には、1粒子1粒子を厳格に追跡して測定する必要があり、装置構造が複雑化しまた複雑な制御を行う必要のおそれがあるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3115501号公報
【特許文献2】国際公開WO96/29602号
【特許文献3】国際公開WO97/44671号
【特許文献4】特開2000−346842号公報
【特許文献5】特表平14−534657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の第1の目的は、生体物質等の各種物質が結合されまたは結合可能な担体を、略静止した状態で変形可能な容器内に封入することで、担体の取り扱いや測定等の処理を効率化、迅速化かつ容易化することができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【0015】
本発明の第2の目的は、変形可能な容器を用いることで、各種物質の移送、反応、その測定等の一連の処理を、変形可能な容器内で一貫して実行することを自動的または手動で行うことを可能にするとともに、該容器内に導入した液体と該容器外のものとの接触によるクロスコンタミネーションを極力防止することができる担体封入変形容器、担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【0016】
本発明の第3の目的は、変形可能な容器を用いることで、比較的装置規模の小さい構成で、大容量(例えば、1ミリリットル(cc)から数10ミリリットル)の液体の前記担体との接触のみならず、通常の容量(例えば、数10μリットルから数100μリットル)の液体の処理を行うことができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【0017】
本発明の第4の目的は、複雑な流体機構を用いることなく変形可能な容器という簡単な構造をもつ装置構成であるにも拘らず、高精度の処理を行うことができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【0018】
本発明の第5の目的は、変形可能な容器を用いることで、製造や品質管理に水密または気密等のための精度を要求されず、安価に提供でき、また管理負担を軽減することができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供できることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の発明は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部と、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部と、前記収容部内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体とを有するものである。
【0020】
ここで、「変形壁面」とは、その変形が可能な可撓性のある壁面であって、その変形によって、その変形壁面の表面積が実質的に変わらない壁面である。言い換えれば、変形の前後でその壁面の表面積が実質上維持される壁面であって、例えば、折り畳まれた壁面が伸びるように変形したり、弛緩した状態にある壁面が緊張した状態に変形する場合である。従って、該変形壁面を組み込んだ壁面においても、その変形によって全表面積は変らない。「壁面の一部」としては、例えば、前記收容部の全壁面の内口部近傍を除く壁面部分であって、該壁面部分と口部との間には、変形しない非変形壁面が設けられる。
【0021】
また、変形壁面の「所定の変形」は、加える変形の程度に応じて実質的に内部容積が定まる変形が好ましい。すなわち、ある変形方向に沿って変形壁面を押しもしくは引き、または力を除去するその各程度に応じて、壁面で囲まれた内部が膨張または収縮して内部の容積が一律に定まることが好ましい。
【0022】
前記変形壁面は、その変形による内部の膨張方向または収縮方向に付勢されていても良い。膨張方向に付勢されている場合には、その膨張方向に逆らって力を加えることで収縮し、力を除去することで膨張方向へ変形することになる。収縮方向に付勢されている場合には、収縮方向に逆らう方向に力を加えることで膨張し、力を除去することで収縮方向へ変形することになる。変形壁面としては、例えば、蛇腹が形成された壁面、またはゴム等の弾性体の面状部材もしくは膜状部材等で形成され、または変形方向に沿った弾性力をもつバネ等を内蔵する壁面等の、可撓性のある面状部材もしくは膜状部材で形成された壁面である。
【0023】
なお、「吸引吐出」とは、吸引または/および吐出を意味する。前記担体封入変形容器の材料は、例えば、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニール、アクリル系等の樹脂、ゴム等の弾性体、その他の可撓性の材料、またはこれらの組合せである。担体封入変形容器は透明または半透明であることが好ましい。非変形壁面には、例えば、ポリプロピレンを用い、変形壁面には、例えば、ポリエチレンを用いる。
【0024】
前記担体封入変形容器の大きさは、例えば、その口部から装着用開口部に沿ったまたは軸方向の長さが数センチメートルから10数センチメートルで、その容積は、その長さに応じて、例えば、数マイクロリットルから数10ミリリットル程度である。吸引吐出量は、その容積に応じて、例えば、数マイクロリットルから数10ミリリットル程度である。
【0025】
「封入」とは、液体の流入および流出可能な口部を有する容器の内部に収容したもの(例えば、担体)が、前記口部を通って容器外に流出しないように保持されることをいう。
【0026】
「略静止状態」とは、担体が収容部内で、測定時において、自由に移動するのではなく、担体相互においてまたは導入された液体に対して、測定可能にほぼ静止している状態にあることをいう。しかし、必ずしも、完全に固定されている必要はない。
【0027】
「所定の物質が結合しまたは結合可能な担体」とは、前記收容部内に封入され、所定の物質が結合しまたは結合可能な固体であって、例えば、多孔質物質、所定の官能基、所定の化合物を保持した樹脂、繊維性物質等の天然物を含む有機物質、金属、半導体、ガラス、シリカ等の無機物からなる。担体の形状としては、例えば、粒子状、線状、棒状、平面状、ブロック状である。また、「所定の物質」とは、DNA、RNA等の核酸、オリゴヌクレオチド等の遺伝物質、免疫物質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、糖鎖等の生体化合物を含む種々の化合物、または細胞や細菌、ウィルス、プラスミド等の生体自体または生体組織を含む。「所定の物質」は、1の種類の場合のみならず、複数種類の場合を含む。該生体化合物は、リガンドとして該生体化合物に結合性を有する受容体としての生体化合物の結合を検出し、捕獲し、分離し、抽出等に用いられる。受容体としては、前記核酸等の遺伝物質、タンパク、糖鎖、ペプチド等に各々結合性を有する核酸等の遺伝物質、タンパク、糖鎖、ペプチド等の生体物質が該当する。また、生体化合物として、または生体化合物の代わりに細胞、ウィルス、プラスミド等の生体自体をも用いることができる。前記担体には、前記所定の物質、例えば、リガンドまたは受容体に対する結合性を有し、または結合性を有すると考えられる物質、例えば、各々、受容体またはリガンドが、固定されていることになる。
【0028】
「結合」は、前記所定の物質の少なくとも1種類を直接的または別種類の物質を介して間接的に前記担体に関係付けることをいう。結合には、例えば、共有結合、化学吸着による場合の他、物理吸着、水素結合、または電気的相互作用による場合等がある。また、該担体に、所定の化学物質が化学的、物理的吸着、該担体に固定して設けられている結合物質との特異的反応、その他の方法で結合されている。また、該担体を、多孔質性部材、凹凸性部材、繊維質性部材で形成することによって、生体物質等との反応能力や結合能力を高めるようにしても良い。
【0029】
「担体」の素材としては、例えば、金属、半導体、半金属、酸化金属等の金属化合物、セラミックス、ガラス、シリカのような無機物質、ゴム、ラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル等の樹脂、セルロース、前述したナイロン等の繊維物質等の高分子物質、絹等の天然繊維等の天然物質のような有機物質がある。より具体的には、例えば、繊維物質を例にとると、「ポリアミド系高分子」からなる、絹等、ナイロン(3-ナイロン,6-ナイロン,6,6-ナイロン,6,10-ナイロン,7-ナイロン,12-ナイロン等)、PPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)等の全芳香族ポリアミド、や、へテロ環含有芳香族ポリマー等である。また、担体として、例えば、繊維状体、多孔質体、ゲル状体であっても良い。
【0030】
結合のためには、前記担体には、官能基を発現または生成するようにする。そのためには、例えば、「ポリアミド系高分子」が有するペプチド結合を加水分解することで、生体物質の結合に用いる官能基を発現または生成させる。生体物質と結合可能な官能基には、例えば、カルボキシル基-COOH、アミノ基-NH2、またはその誘導基がある。ここで、生体化合物の結合に適した多孔の径は、例えば、数マイクロメートル以下である。
【0031】
「担体」は、前記担体封入変形容器内に封入可能な大きさをもち、前記所定物質の結合位置または結合可能位置が、前記担体封入変形容器の外部から特定できる固体である。
該担体は、前記所定の物質が結合しまたは結合可能となるように、その結合位置または結合可能位置を、1の担体の予め定めた位置に間隔を空けて対応させ、または、複数の予め定めた担体に対応させて、例えば、前記結合位置または結合可能位置が、例えば、前記担体封入変形容器の軸方向に沿う一次元座標によって、またはランダムな状態で特定できるように前記容器内に封入する。このような担体の例としては、1個または複数個の粒子状担体、球状担体、線状担体、棒状担体、短冊状担体、平板状担体またはブロック状担体等がある。
【0032】
その場合、これらの担体に固定された物質または担体自体との結合の可能性がある蛍光物質等の発光物質からなる標識化物質によって標識化された所定の物質を含有する溶液を前記チップ状容器内で、前記担体と接触させることによって、これらの生体物質との結合の有無を、各位置での発光を測定することによって測定し、これによって目的とする生体物質の構造、性質、有無を解析することができる。
【0033】
前記変形容器の大きさは、例えば、その口部を通り、前記収容部に囲まれた直線に沿って、前記変形壁面と口部との交点間の長さ、または軸方向の長さが数センチメートルから10数センチメートルで、その容積は、その長さに応じて、数マイクロリットルから数10ミリリットル程度である。
【0034】
第2の発明は、前記収容部は、前記変形壁面で形成された1または2以上の変形部と、該変形部と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ口部と連通して外部から内部を測定可能な非変形部とを有し、前記担体は該非変形部内に封入された担体封入変形容器である。
【0035】
ここで、前記変形壁面で形成された変形部は、外力が印加されて変形がなされる部分であって1の場合のみならず複数ありうる。
【0036】
「外部から測定可能」とは、前記担体保持部に保持されている各粒子状担体の標識化された状態を外部から特定することができることをいう。
【0037】
第3の発明は、前記収容部は、少なくとも2つの前記変形部を有し、各変形部の変形壁面の変形に基づく収容部の最大変化可能量が異なるように形成された担体封入変形容器である。
【0038】
前記少なくとも2つの前記変形部の最大変化可能量の内の1つを、前記担体が封入された細管部の容積または担体が封入された領域の容積に略等しくすることで、担体と接触される必要がある液体、例えば、試薬溶液や、検体懸濁液の液量の必要最小限を各容器内に用意して、該変形部を用いて変形することで担体と効率的に接触させることができる。洗浄液については、他方の変形部を用いて前記担体が封入されている細管部のみならず太管部にまで接触させる。このようにして、少なくとも2種類の異なる容量を持つ液体の吸引または吐出を行なうことが可能となる。特に、手動で扱う場合には、容量の切り換えを、変形部に加える力の大きさを加減するのではなく変形部の選択によって行うことができることになる。
【0039】
第4の発明は、前記最大変化可能量が最も大きい前記変形部または唯一の前記変形部は、前記口部および前記収容部の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と該変形壁面との交点において該直線方向に沿って前記変形壁面が変形可能に形成された担体封入変形容器である。
【0040】
第5の発明は、前記担体は、複数種類の化学物質が結合しまたは結合可能であって外部から識別可能な複数個の粒子状担体または複数組の粒子状担体の集合である担体封入変形容器である。
【0041】
「粒子状担体」とは、前記担体保持部に導入されて保持されることが可能な大きさをもつ粒子状の固体である。通常、該粒子状担体の1または粒子状担体の集合の1組が、そこに結合しまたは結合可能な前記複数種類の化学物質の1種類に対応する。該粒子状担体の大きさは、例えば、差し渡しまたは径が0.1mmから数mmの大きさをもつ。該粒子状担体を封入した空間部分においては、その容量は、封入した該粒子状担体を除いた空間部分が、例えば、数マイクロリットルから数百マイクロリットルの容積である。粒子状担体または粒子状担体の集合を、結合しまたは結合可能な前記化学物質に応じて標識化することによって、封入された粒子状担体またはその集合の配列位置によって識別する必要がない。
【0042】
「粒子状担体の集合」とは、少なくとも2個の粒子状担体が属する粒子状担体の集まりであって、その集合に属する粒子状担体は、予め定めた個数によって、属する粒子状担体間の予め定めた距離によって、粒子状担体が位置する予め定めた範囲によって、または、属する粒子状担体を囲む予め定めた境界、被膜やケースによって特定されている。これによって、あたかも、粒子状担体の集合を1の粒子状担体の如くまとめて取り扱うことも可能である。また、各種物質を固定化する機能をもつ粒子状担体、識別化を行う機能を持つ粒子状担体、その他の粒子状担体(集合間の境界を示すため、または、標識化によって生ずる光等が混在しないように、光等の遮蔽のため)の如く機能を粒子ごとに分散させて取り扱いを容易化し、さらに他の種々の機能を付加することができる。また、粒子状担体の集合であることさえ明瞭に識別することができれば、それに属する粒子状担体の個数を自由に設定することができるので、拡張性、汎用性、多様性がある。
【0043】
第6の発明は、前記複数個の粒子状担体の各粒子状担体または複数組の各粒子状担体の集合に属する少なくとも1の各粒子状担体は、前記化学物質の種類、前記粒子状担体ごと、または前記粒子状担体の集合ごとに応じて、前記収容部への導入前に、相互に識別可能に標識化された担体封入変形容器である。
【0044】
「前記複数個の粒子状担体の各粒子状担体または複数組の各粒子状担体の集合に属する少なくとも1の各粒子状担体は、前記化学物質の種類、前記粒子状担体ごと、または前記粒子状担体の集合ごとに応じて、相互に識別可能に標識化された」のであるから、前記担体保持部に導入保持されることによってアレイを形成して、その位置的な情報から初めて相互に識別可能となる必要はない。
【0045】
「粒子状担体が識別可能に標識化された」とは、粒子状担体自体に識別可能な標識要素を保持し、結合し、または固定されることによって、または、粒子状担体自体が識別可能に加工または形成されていることを意味する。すなわち、標識化の原因が、粒子状担体に存在することを意味し、粒子状担体の配列や位置等のように、標識化の原因が粒子状担体の外に存在する場合とは相違する。例えば、粒子状担体の形状を、球、立方体、円柱、四角柱、円錐、角錐、凹凸を設ける等に形成することによって、粒子状担体の大きさを種々変えることによって、種々の色素を粒子状担体に付することによって、種々の蛍光物質、燐光物質、化学発光物質等の発光物質、種々の波長の赤外線、紫外線、電波を含む種々の波長の電磁波を発する放射物質、種々の磁性強度を持つ磁性体等の標識要素を粒子状担体に設けることによって標識化する。その場合、標識化は、粒子状担体の表面に前記発光物質、各種電磁波放射性物質、磁性体等の標識要素を設ける場合のみならず、粒子状担体の内部に設ける場合を含む。内部に設ける場合としては、粒子状担体が中空に形成され、その中空内にこれらの物質を収容しまたは束ねる粒子状ケースまたは粒子状被膜である場合がある。その場合、発光物質の場合には、該粒子状ケース又は粒子状被膜は透明又は半透明である必要がある。前記粒子状担体は前記担体保持部への導入保持前に既に標識要素を有し又は粒子状担体自体が識別可能に加工または形成されていることになる。
【0046】
なお、前記標識要素としては、測定によって識別可能な予め定めた発光物質等と特異的に反応可能な結合物質であって、未だ該発光物質等と反応していない状態にある結合物質をも含む。このような結合物質の例としては、リガンドと結合した前記発光物質等に対して、前記リガンドに結合性を有する受容体がある。この標識要素は、潜在的には標識化がなされており、予め定めた前記発光物質等と反応させることで、標識化が顕在化されることになる。したがって、この標識要素を用いることで粒子状担体は、担体保持部に導入前に、潜在的に相互の識別可能に標識化されており、導入後の反応によって前記標識化顕在化するような場合も、導入前に標識化されていることに含まれる。
【0047】
これによって、相互に識別された粒子状担体は、位置識別可能に配列し、または、粒子状担体を順序を含めて移動させることなく、各粒子状担体または各粒子状担体の集合を識別することによって、該粒子状担体に固定されまたは固定可能な各種物質を認識することができる。したがって、例えば、該各種物質と反応または結合する別方法で標識化された目的物質の懸濁液と前記粒子状担体とを接触させることによって、目的物質の標識化と粒子状担体の標識化との組合せにより、前記目的物質が結合した各種物質を特定することができる。
【0048】
すなわち、本発明によれば、各粒子状担体は、各種物質との対応関係をもった位置または順序に配列したアレイを構成することなく、無作為、自由、任意の、または不規則的な位置または順序に保持することでも、該粒子状担体が固定しまたは固定可能な各種物質を認識させることができる。
【0049】
第7の発明は、前記担体は、複数種類の化学物質が外部から識別可能な予め定めた複数の異なる位置に結合しまたは結合可能であって、線状、棒状、平板状もしくはブロック状に形成された担体封入変形容器である。「ブロック状」には、球状、円筒状、立方体状、直方体状、角柱状等も含む。
【0050】
ここで、前記担体は、可撓性のある場合または非可撓性の場合がある。これらの担体は、前記担体封入変形容器内に封入部を用いて封入される。該封入部として、これらの担体を前記担体封入変形容器に吸引した液体と接触可能となるように取り付けて、前記口部からの流出を防止するための取付具を設けるようにしても良い。通常、前記担体上の予め定めた各位置に結合しまたは結合可能な化学物質は、前記複数種類の内の1種類である。
【0051】
第8の発明は、前記非変形部は、内部に液体を貯留可能な太管部、それよりも細い細管部または薄い薄層部、および前記太管部および前記細管部または前記薄層部と連通し前記太管部と前記細管部または前記薄層部との間に設けた移行部とを有し、前記口部は、前記細管部または薄層部と連通して設けられ、前記担体は、前記細管部もしくは前記薄層部のいずれかに封入された担体封入変形容器である。
【0052】
この場合、前記粒子状担体を前記細管内に1列に、または薄層部に1層に保持されるようにすれば、前記細管に沿って前記粒子状担体を走査することによって、または、前記薄層全体を平面的なイメージとして一括して捉えることによって、より一層測定が容易である。ここで、1列または1層であるので、前記細管の径または軸方向に垂直な断面、または、薄層部の厚さまたは法線方向の断面は、前記粒子状担体が軸方向に沿ってすれ違うことができないかまたは軸方向に垂直方向に2個以上並ぶことができない。または、前記粒子状担体が法線方向に沿って2個以上並ぶことができないような形状または大きさをもつ必要がある。すなわち、該粒子状担体の該液よりも大きく、かつ、その外径の2倍よりも小さい内径または幅および長さを持つ細管、または、その外径の2倍よりも小さい暑さを持つ薄層部を有するようにする。
【0053】
すると、細管部または薄層部に封入した各粒子状担体を、前記列に沿って走査して測定して、または一括して測定することができる。このような粒子状担体の外径は、例えば、約0.1mmから3mm程度であり、前記細管は、例えば、約0.2mmから6mm程度の内径をもたせる。
【0054】
細管部、太管部は直線状に限られず、曲線状であっても良い。例えば、口部と装着用開口部とを結ぶ軸の周りの円筒に沿って回旋し、又は平面内で渦巻き状に回旋する螺旋状であったり、湾曲していたり、または、U字状部分を有していてもよい。細管部、太管部は、流体の流れ方向に垂直方向の断面が円形又は環状の場合のみならず、内壁の断面が、例えば、四角形状であっても良い。保持されるべき粒子状担体が球状である場合には、四角形の頂点が流体が通過可能な溝としての役割を果たす。また、薄層部は平面状に限られず、曲面状であっても良い。なお、前記担体が封入された細管部の内、流体を収容可能な空間の容積は、たとえば、数マイクロリットルから数百マイクロリットル程度である。
【0055】
第9の発明は、前記口部から前記収容部内に流入した流体と接触可能な状態で前記収容部内に前記担体を封入する封入部を有する担体封入変形容器である。
【0056】
ここで、「封入部」の例としては、口部が前記担体が通過可能な大きさをもつ場合に、流体は通過可能であるが前記担体は通過不能であるように、該保持部に対して別体に、前記収容部を前記流体の流れ方向に対して仕切るように設けた1または2以上の担体通過阻止部材を有するものがある。
【0057】
「担体通過阻止部材」としては、前記担体封入変形容器とは別体の部材によって形成したものである。該担体封入変形容器の壁等、該担体封入変形容器の壁等を加工したものとの双方を組み合わせて用いたものであっても良い。前記担体通過阻止部材は、容器の内壁面との間に隙間を形成することによって流体が通過可能であるが、その貫通孔または隙間の大きさは粒子状担体が通過できない大きさまたは形をもつものである。例えば、車輪状、十字状、一文字状、放射状、網状、若しくは環状に細管を仕切るように設けた部材、貫通孔を有する貫通性多孔質部材である。貫通性多孔質部材の場合にはポア径よりも大きいサイズを持つ種々の粒子状担体について確実に封入することができる。前記「貫通性多孔質部材」としては、何らかの物質を吸着等により捕獲するフィルタである必要はない。しかし、該封入部がフィルタ、メンブレン等の薄膜状フィルタである場合には、口部からの前記担体の流出を防止するのみならず、所定の物質を捕獲することができる。なお、封入部を担体封入変形容器とは別体に設けた場合には、流体の流れ方向が薄い薄板状若しくは薄膜状に形成した部材を用い、または担体が流出しない条件でポア径の大きい貫通性多孔質部材を用いる。前記担体通過阻止部材の個数は、前記粒子状担体が、前記口部からの流出を防止するためには、該粒子状担体を口部側において少なくとも1箇所に設けるのが好ましい。
【0058】
また、別体に設けた前記担体通過阻止部材を着脱自在に設けることによって、前記担体の封入および抜出を容易に行うことができる。
【0059】
また、封入部として担体封入変形容器を、かしめることによって加工して設けた場合には、担体が流出しない条件で開口部分を大きくすることによって、吸引吐出に必要な圧力を低減することができる。担体封入変形容器そのものを用いたものとしては、前記細管を絞るように細めるために、管の中央方向に突出する突起部を設けたものや、流体の流れ方向に対して仕切るように前記保持部の壁面を突出させた1または2以上の突出部を有するものや、短管状のストッパー等を用いる場合がある。
【0060】
これによって、粒子状担体を加工することなく、前記担体封入変形容器を加工、変形することによって、粒子状担体を確実に封入することができる。
【0061】
第10の発明は、前記封入部は、前記担体を前記収容部内に導入可能となるように該収容部の壁面に穿設された導入孔、および、該導入孔を塞ぐ蓋部を有する担体封入変形容器である。
【0062】
この場合、前記導入孔の大きさは、前記口部の大きさよりも大きく形成するのが好ましい。これによって、前記口部を通過不可能な担体を前記収容部内に封入することができる。
【0063】
第11の発明は、前記非変形部の内、前記担体が封入された部分が着脱自在に取りつけられた担体封入変形容器である。
【0064】
これによって、担体の封入が該部分を、担体封入変形容器本体に取り付けることによって容易に行なうことができる。
【0065】
第12の発明は、前記変形壁面には、蛇腹が形成されている担体封入変形容器である。ここで、「蛇腹」とは、所定の変形方向を略垂直に横切る方向に沿って形成された山および谷を有する波または襞が形成された面状部材または膜状部材であって該山および谷で折れ曲がり可能なものをいう。前記変形方向を軸とする筒状に囲む壁面に、蛇腹が形成された前記面状部材または膜状部材を用いる場合には、前記波または襞の形状としては、前記変形方向に垂直な直線状または該変形方向に垂直な平面内に含有される円周状または閉曲線状(曲線には直線も含む)の山および谷からなる。
【0066】
前記蛇腹は、例えば、前記収容部の全壁面を、蛇腹の変形方向を横切って2つに仕切るように形成される。したがって、前記変形方向は、蛇腹の波形または襞の各山または各谷が含まれる各平面の各法線方向に略一致する。
【0067】
第13の発明は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部、および、前記收容部内に収容された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を有する1または2以上の担体封入変形容器と、1または2以上の前記担体封入変形容器を前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように支持し、該担体封入変形容器の前記変形壁面を変形させることによって、該担体封入変形容器に対する液体の吸引吐出を行う1または2以上の担体封入ヘッドとを有する担体封入変形容器処理装置である。
【0068】
ここで、「前記担体封入変形容器を前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように支持し」は、前記担体封入変形容器を、前記変形壁面の変形によって口部の位置および形状が実質上変動しないようにヘッドに取り付けることである。これは、シリンダ方式の分注チップのように吸引吐出の際に摺動するプランジャと口部とが部材として独立して形成されているのではなく、この担体封入変形容器では、吸引吐出の際に変形する変形壁面と口部とが部材として連続しているからである。例えば、該担体封入変形容器の該ヘッドへの取付位置または固定位置等の支持位置は、前記口部と前記変形壁面との間に設けた変形壁面以外の変形しない非変形壁面である。前記口部は下方に向くように支持するのが好ましい。
【0069】
第14の発明は、種々の溶液、懸濁液等の液体を収容可能な複数の容器を有する容器群と、前記担体封入ヘッドを該容器群に対して相対的に移動させるヘッド移動部とをさらに有するとともに、前記容器群に設けられた各容器は、前記口部を一斉に挿入可能に設けられた担体封入変形容器処理装置。
【0070】
第15の発明は、前記容器はウェルであり、前記容器群は前記ウェルがマトリクス状に配列された少なくとも1のマイクロプレートであり、前記担体封入ヘッドの前記担体封入変形容器はマトリクス状に配列され、前記担体封入ヘッドに設けられた全前記口部は、前記マイクロプレートの全部または一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、対応する前記ウェルの行間隔または列間隔の自然数倍に各々設定され、対応する全前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1である担体封入変形容器処理装置である。
【0071】
ここで、「マトリクス状」とは、列方向および行方向の2方向に沿って要素、例えば、ウェルまたは担体封入変形容器の口部等が所定の行間隔および列間隔で各々所定の行数個および列数個配列された構造をいい、前記行数および列数は各々2以上である。なお、前記列方向および行方向は、通常直交しているが必ずしもこれに限定されずに斜交していても良い。また、各隣接する行または列間で、例えば、列間隔の半分または行間隔の半分の距離だけ配列をずらせて要素が互い違いとなるようにして、最蜜状に配列するような場合も含む。「行間隔」とは、マトリクス状に配列された1の要素が設けられた行と、列方向に隣接する要素が設けられた行との列方向の距離であり、「列間隔」とは、マトリクス状に配列された1の要素が設けられた列と、行方向に隣接する要素が設けられた列との間の行方向の距離をいう。
【0072】
「全前記口部は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられて」いるので、一般には、ウェルのマトリクスよりも口部のマトリクスの方が行数または列数は小さく、口部のマトリクスとウェルのマトリクスとは、その行方向および列方向のなす角は同一であり、口部のマトリクスの行間隔または列間隔は、そのウェルのマトリクスの行間隔または列間隔の自然数倍である必要がある。
【0073】
「前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、対応する前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に各々設定され、対応する前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1」としているので、マイクロプレート内には、口部のマトリクス状配列と同一の配列をもち、相互に重複しない少なくとも自然数個分(>1)のマトリクス状のウェルの配列(以下「ウェル部分行列」という)が存在することになる。しかも、1のウェル部分行列内に属する任意のウェル要素と、それに隣接するウェル部分行列に属する対応する1のウェル要素同士は、マイクロプレート内で互いに隣接するウェル同士の距離以上は離れていないことになる。
【0074】
これによって、担体封入ヘッドの全口部が一斉に挿入可能な独立のウェル群が2以上あるにも拘らず、前記担体封入ヘッドにほぼ相当する面積をもつ1のマイクロプレート内に作業面積を限定することができるので、前記作業面積をいたずらに拡大することがない。また、ノズルヘッドのウェル部分行列間の移動は、せいぜい行間隔または列間隔の距離分の移動を少なくとも(自然数回(>1)−1)回繰り返すことで、マイクロプレート内の全ウェル部分行列に担体封入ヘッドの全口部を挿入可能に位置させることができる。
【0075】
なお、自然数は、2以上であるので、少なくともマイクロプレートのウェル行数または列数のいずれかはこの自然数(>1)を約数にもつ数でなければならない。例えば、4行×12列のマトリクス状のウェルを配列したマイクロプレートに対して、列間隔を3倍に設定した列間隔をもつ口部が配列された担体封入ヘッドについては、自然数は「3」に相当することになり、口部の列数は、ウェルの列数である12列の「3」分の1の4列となる。このように、ウェルの列数12は、「3」を約数にもつことになる。
【0076】
第16の発明は、制御部をさらに有し、該制御部は、前記移動手段に対して、全前記口部が前記マイクロプレートの対応する第1のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させた後に、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させて全前記口部を前記マイクロプレートの対応する第2のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させる担体封入変形容器処理装置である。
【0077】
ここでは、「第1のウェル部分行列」と「第2のウェル部分行列」とを有する場合についてのみ記述したのは、ウェル部分行列の数は、少なくとも前記自然数個(n>1)であるからである。また、前記マイクロプレートのウェルが、通常のマトリクス状の配列を持つ場合には、該マイクロプレートのウェルの行間隔または列間隔の距離分を対応する列方向または/および行方向に沿って、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間での相対的な移動を少なくとも自然数回(n>1回)行なうことでマイクロプレート内の全ウェル部分行列に前記全口部を一斉に挿入可能である。
【0078】
口部の行間隔および列間隔の双方が、前記ウェルの行間隔および列間隔の各々自然数倍(n>1)および自然数倍(m>1)された物である場合には、ウェル部分行列の数は、その1枚のマイクロプレート当たり、全部でnmである。
【0079】
第17の発明は、前記担体封入ヘッドの移動経路に沿った各ウェル部分行列には、処理の各工程で必要とする溶液または懸濁液等の液体が該工程の順序に応じて収容された該工程の順序に応じて収容された担体封入変形容器処理装置である。
【0080】
ここで、「移動経路」とは、前記全ウェル部分行列に順次前記担体封入ヘッドを平行移動させる際に通過する経路であって、移動経路に沿った距離が最も短い経路が好ましい。したがって、処理工程に応じた順序に各ウェル部分行列を選択して必要な試薬等の溶液等を収容する。また、例えば、前記同一のウェル部分行列に属するウェルには相互に同一種類または同一量として取り扱うべき溶液または懸濁液が収容され、異なるウェル部分行列に属するウェル間では、相互に異なる種類または異なる量として取り扱うべき溶液または懸濁液が収容される。これは、同一の担体封入ヘッドに設けられた各担体封入変形容器の吸引吐出の動作は連動しており、実質的に同等であるからである。または、大容量の液体を扱う場合には、異なるウェル部分行列に属するウェル間でも、同一の種類の溶液または懸濁液が収容される場合もありうる。
【0081】
第18の発明は、前記制御部は、前記担体封入ヘッドに設けられた同一の口部が挿入可能な前記マイクロプレート内の各ウェル群に属する全ウェルに対して前記口部が挿入可能な状態に位置するように前記担体封入ヘッドを順次移動させる担体封入変形容器処理装置である。
【0082】
該各ウェル群には、前記各ウェル部分行列に属するウェル要素が各々1ずつ重複せずに含まれている。したがって、各ウェル群に属するウェルの要素数は、1のマイクロプレート内に存在するウェル部分行列の個数に等しい。すなわち、これによって、全ウェル群における該当する各ウェルに対して、前記各担体封入変形容器の口部が同時に挿入可能な状態となっている。各ウェル群に属するウェルの個数は、少なくとも前記自然数個(n>1)である。前記担体封入変形容器の口部の行間隔と列間隔の双方で前記ウェルの行間隔と列間隔が各々自然数倍(n>1,m>1)された場合には、各ウェル群に属するウェルの個数は、nmである。なお、その各口部のウェル群内の移動経路は、該ウェル群内の全ウェル要素を処理工程の順序に従って通過するような経路であり、最も短い距離であることが好ましい。
【0083】
なお、前記担体封入ヘッドに設けられた同一の口部が挿入可能な前記マイクロプレート内のウェル群を相互に仕切る隔壁が前記マイクロプレートの上面に突出して設けられるようにするのが好ましい。
【0084】
これによって、例えば、処理の対象となる多数の異なる検体については、各々隔壁で仕切られた状態で処理を行なうことができるので、一旦隔壁で囲まれた領域内に移動すれば、前記口部が隔壁を超えて移動することなく処理を行うことができる。
【0085】
さらに、前記担体封入ヘッドの台数、およびマイクロプレートの枚数は、各々少なくとも前記自然数台および前記自然数枚になるものである。その際、各担体封入ヘッドの動作を連動させるように設けまたは制御することができる。
【0086】
第19の発明は、前記担体封入ヘッドには、前記収容部内に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記収容部に対して接離可能に設けた2以上の磁石を有する磁力手段が設けられた担体封入変形容器処理装置である。ここで、通常、磁場を及ぼす場合というのは、担体である磁性粒子が前記担体封入変形容器内に収容されている場合か、前記担体封入ヘッドに前記担体封入変形容器に代えて分注チップが装着されている場合である。
【0087】
なお、前記磁力手段としては、例えば、前記行列状に配列された前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定された行間隔または列間隔をもつ口部行または口部列の間に、行方向または列方向に沿って相対的に移動可能に設けられ、前記行方向または前記列方向に沿って伸びかつ前記口部行間または口部列間に挿入可能な幅に設けられた、例えば、前記担体封入変形容器の(行数−1)本または(列数−1)本の櫛歯部材と、該櫛歯部材の一端で連結した支持部材とを有し、前記各櫛歯部材には、前記各担体封入変形容器に対応する位置に前記列間隔または行間隔で配列された列数個または行数個の磁石が設けられたものである。前記担体封入変形容器に磁場を及ぼす場合には、前記全磁石が各担体封入変形容器の全てに最短の距離にくるように移動させ、磁場を除去しまたは弱める場合には、該全磁石を担体封入変形容器が配列されたヘッドから完全に撤退するか、または、前記各磁石が担体封入変形容器の所定間隔の中間の所定位置にくるように移動させるようにしても良い。なお、櫛歯部材の本数としては、前述した場合の他に、1の櫛歯部材に配列された磁石がその両側に配列された各2個の担体封入変形容器に影響を与えるようにすれば、櫛歯部材の本数は前記本数の半分程度で済むことになる。
【0088】
第20の発明は、前記担体封入ヘッドには、前記収容部内の状態を検出する光検出手段をさらに有する担体封入変形容器処理装置である。したがって、前記担体封入変形容器の少なくとも前記非変形部等は透光性部材で形成される必要がある。「液体の状態」には、液体の有無、液体の吸引量または吐出量を含む。
【0089】
なお、前記光検出手段としては、例えば、前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定された行間隔または列間隔を持つ銭担体封入変形容器の口部行または該口部列の間に、行方向または列方向に沿って相対的に移動可能に設けられ、前記行方向または列方向に沿って伸びかつ前記口部行間または口部列間に挿入可能な幅に設けられた、例えば、前記口部の(行数−1)本または(列数−1)本の櫛歯部材と、該櫛歯部材の一端で連結した支持部材とを有し、前記各櫛歯部材には、各々1の光検出部が設けられたものである。
【0090】
第21の発明は、前記光検出手段は、前記收容部の前記非変形部の外部に、該非変形部の周囲を取り囲むように該非変形部に近接して配置された、1または2以上の受光端子、または1または2以上の受光端子および少なくとも1の照射端子を有し、前記非変形部の内粒子状担体を収容可能な全域を走査するように前記非変形部に対して相対的に移動可能である担体封入変形容器処理装置である。
【0091】
ここで、「前記非変形部に対して相対的に移動可能である」ので、前記非変形部を移動させる場合と、前記光検出手段を移動させる場合、双方を移動させる場合がある。
【0092】
第22の発明は、前記担体封入ヘッドは、前記口部および前記收容部の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と該変形壁面との交点において該直線方向に沿って前記変形壁面を変形させる担体封入変形容器処理装置である。
【0093】
第23の発明は、前記担体封入ヘッドは、前記2以上の担体封入変形容器を支持可能な担体収容器支持部と、前記担体封入変形容器の前記変形壁面の所定変形方向に沿って一斉に進退動作可能な可動部材とを有する担体封入変形容器処理装置である。
【0094】
第24の発明は、前記変形壁面の変形、および/または、前記担体封入ヘッドと前記容器群との間の移動を、前記担体封入変形容器の個数もしくは構造、吸引吐出すべき液体、そこに含まれる物質、その量、その収容位置、その温度、もしくはその濃度、処理内容、または指示に基づいて制御する制御部を有する担体封入変形容器処理装置である。
【0095】
第25の発明は、前記変形壁面の変形について所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして、前記変形壁面の変形の制御が行われる担体封入変形容器処理装置である。
【0096】
ここで、「所定基準位置」は、処理で扱う液体量、使用する担体封入変形容器の容量、処理の内容、または担体封入変形容器の加工精度等によって定める。
例えば、処理で扱う液体量が微小量(例えば、数μリットルから数100μリットルのオーダの場合)であったり、使用する担体封入変形容器の容量が小さい場合、処理に精度を要する場合、または担体封入変形容器の加工精度が高くない場合には、基準位置としては、既に担体封入変形容器を所定の変形を加えた状態の可動部材または変形壁面の変形方向に沿った位置を基準にする。これによって、精度の高い制御を行うことが可能である。この場合には、例えば、予め定めた最大の変形量による前記担体封入変形容器内への液体の予め定めた最大吸引量の全てを吐出することができるように設定するのが好ましい。これによって、担体封入変形容器からの液体の吐出による前記担体封入変形容器内への液体の残留を防止することができる。
【0097】
例えば、予め設定された担体封入変形容器の内部の容積をV0とし、該状態に相当する可動部材または変形壁面の位置を基準として、担体封入変形容器の変形による予め定めた最大の内部容積V1、担体封入変形容器の変形による予め定めた最小の内部容積V2とした場合に、前記担体封入変形容器内への液体の予め定めた最大吸引量V1−V0が、予め定めた最大吐出量V0−V2よりも小さい関係、すなわち、V1−V0≦V0−V2、すなわち、(V1+V2)/2≦V0の関係となるように基準位置を設定するのが好ましい。
【0098】
ここで、「予め定めた最大の変形」であるので、必ずしも物理的に最大の変形でなくてもよい。「最大吸引量の全てを吐出することができる」のであるから、「最大吐出量」は「最大吸引量」と同一かそれよりも大きい量をもつ必要がある。これによって、前記担体封入変形容器内への液体の残量を気にせずに処理を行うことができる。
【0099】
一方、扱う液体の量が大きい場合(たとえば、数ミリリットルのオーダの場合)処理に余り精度を要しない等の場合には、担体封入変形容器の変形がされていない非変形状態の位置を基準にして制御することが可能である。そのような場合としては、例えば、未だ可動部材が担体封入変形容器に接触していない状態で、かつその変形方向に沿った位置(例えば、前記チップから1ミリメートル離れた位置)を基準位置に取るような場合である。
【0100】
第26の発明は、前記口部は下端に設けられ、前記收容部は該口部の上方に設けられ、該収容部を囲む壁面の一部に、その内壁面を上下に仕切るようにして上下方向に変形可能な変形壁面を設け、前記收容部の上端と前記可動部材とが接触または接続可能に設けられた担体封入変形容器処理装置である。
【0101】
第27の発明は、前記収容部は、前記可動部材と接触または接続可能であって可動部材によって変形可能な変形壁面を有し気体を収容可能な変形部と、該変形部と連通し変形がされない非変形壁面で形成され先端に前記口部を有し液体を貯留可能な非変形部を有する担体封入変形容器処理装置である。
【0102】
第28の発明は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部、および前記収容部内に収容された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を有する2以上の担体封入変形容器を、前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように担体封入ヘッドに支持させる支持工程と、該担体封入ヘッドを移動する移動工程と、前記口部を容器群内の容器内に挿入して前記変形壁面を一斉に変形させる変形工程とを有する担体封入変形容器処理方法である。
【0103】
第29の発明は、前記変形工程は、前記変形壁面の変形について所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして前記変形壁面の変形を行う担体封入変形容器処理方法である。
【0104】
第30の発明は、前記口部は下端に設けられ、前記変形壁面は、前記収容部を囲む壁面の一部に上下方向に変形可能となるように設けられ、前記収容部は、前記口部の上方に設けられ、前記変形壁面を有し気体を収容可能な変形部と、該変形部と連通し前記変形壁面を有せず前記口部を有して液体を貯留可能な非変形部とを有し、前記変形工程は、前記収容部の上端面に可動部材を接触しまたは接続させる工程と、前記可動部材を下降させおよび/または上昇させる工程を有する担体封入変形容器処理方法である。
【0105】
第31の発明は、前記可動部材の上昇および下降は、前記変形壁面の変形を行う上下方向に沿った所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして行う担体封入変形容器処理方法である。
【0106】
第32の発明は、前記液体には、所定物質を結合可能または所定物質と結合した磁性体が懸濁し、前記収容部または前記容器群の容器内に対して磁場を及ぼすことによって前記磁性体を前記収容部または前記容器の内壁に吸着させて分離する工程を有する担体封入変形容器処理方法である。
【0107】
第33の発明は、マトリクス状にウェルが配列されたマイクロプレートと、流体の吸引および吐出が可能でマトリクス状に配列された担体封入変形容器の口部を有する1または2以上の担体封入ヘッドとを有し、前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定され、対応する前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1である前記担体封入ヘッドを前記マイクロプレートに対して相対的に移動させて前記マイクロプレート内の第1のウェル部分行列に属するウェルに前記各担体封入ヘッドに設けられた全口部を一斉に挿入可能に位置させる第1の工程と、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させて前記全口部を前記マイクロプレート内の対応する第2のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させる第2の工程とを有する担体封入変形容器処理方法である。
【0108】
ここで、「第1の工程」と「第2の工程」とを有する場合のみを記載したのは、ウェル部分行列の数は、少なくとも前記自然数個(n>1)であるからである。したがって、口部の行間隔および列間隔の双方が、前記ウェルの行間隔および列間隔の各々自然数倍(n>1)および自然数倍(m>1)されたものである場合には、ウェル部分行列の数は、その1枚のマイクロプレート当たり、全部でnmであるのでその工程数はその1枚のマイクロプレート当たり、全部でnmである。
【0109】
また、通常のマトリクス状の配列の場合には、前記マイクロプレートのウェルの前記行間隔または列間隔の距離分を対応する列方向または行方向に沿って、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的な移動を少なくとも自然数回(n>1)行なうことでマイクロプレート内の全ウェル行列に前記全口部を一斉に挿入可能である。
【0110】
なお、前記第1の工程では、処理を実行するには、前記口部を各ウェルに挿入させて吸引または吐出する工程および該ウェルから前記口部を抜出する工程を有するようにする。また、第2の工程においても、第1の工程と同様に、挿入工程、吸引吐出工程または抜出工程を有するようにする。なお、必要な工程数は、少なくとも設定した前記自然数(n>1)に応じて定まり、少なくとも前記自然数回の工程を有する。
【発明の効果】
【0111】
第1の発明、第13の発明または第28の発明によれば、生体物質等の各種物質が結合されまたは結合可能な担体を、変形可能な変形容器内に略静止状態で封入し、該変形容器を力学的に変形させることで、液体を吸引しかつ吐出することができる。したがって、シリンダ等の複雑な液体または気体を流す管路等の流体力学機構を用いずに、流体の前記変形容器内への吸引、流体と前記担体との接触、吐出を可能として取り扱いやすく、手動によって、または簡単な構造の装置を用いて、安価にかつ容易に製造しかつ処理を行なうことができる。
【0112】
また、前記壁面の全内表面積を変えることなく変形壁面を変形させることで、吸引、吐出等の液体の処理を行なうようにしているので、該壁面を構成する部材間の嵌合、摺動等を必要とせず、高い加工精度を要求されることなく、完全な水密性および気密性を得て、信頼性の高い処理を行なうことができる。
【0113】
また、所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を口部を有する前記収容部内に封入したままで液体を吸引吐出することと、前記担体封入変形容器を移動することだけで、種々の処理、例えば、反応、洗浄、温度制御、分離、攪拌、分注、清澄、単離、溶出、抽出を行なうことができるので、処理を効率的、迅速かつ容易に行なうことができる。
【0114】
さらに、本発明によれば、担体に結合させた所定の物質との反応から測定までを、口部しか開いていない担体封入変形容器内に封入したままで行うことができるので、目的とする処理を一貫して、前記所定の物質が他の部材や人手に触れることなく、行なうことができるので、クロスコンタミネーションを防止して、高い信頼性で、確実に行なうことができる。また、流体のスピード、扱うべき液量に適した形状をもつように、担体封入変形容器を選択することによって、種々の処理に対応させることができるので、汎用性、多様性がある。
【0115】
また、本発明によれば、担体を略静止状態で保持するものであるため、流体力を加えて動かすものではないので、複雑な同期制御等を行なうことなく簡単な制御で、担体の取り扱いや測定を容易化することができる。
【0116】
第2の発明によれば、担体は非変形壁面で囲まれているので、変形による担体への悪影響を避けることができるとともに、外部から安定した状態で測定を行うことができるので信頼性が高い。
【0117】
第3の発明によれば、収容部に少なくとも2種類の異なる容量を持つ液体の吸引吐出を変形部に加える力の大きさを加減することではなく、変形部の選択によって確実に行なうことが可能となる。特に、手動で少量の液体および大量の液体の双方について予め定め他量を各々確実に吸引および吐出を行なうことができるので信頼性が高い。
【0118】
第4の発明によれば、通常、前記担体封入変形容器は、前記口部を下側に向けて下側から支えるように固定して使用することになるので、変形を上下方向に沿って行なうようにすれば、変形による口部の変動を容易かつ確実に防止することができる。
【0119】
第5の発明によれば、粒子状担体または粒子状担体の集合は、同一の粒子状担体を一貫して用いて、各種物質の固定、反応、その測定等を行うので、一連の処理を一貫して自動的に行なうのに適している。
【0120】
第6の発明によれば、前記粒子状担体に保持されている各種物質を、該粒子状担体に対応付けられた位置に基づいて識別するものではないので、各粒子状担体を各位置に厳密に固定しまたはその順序を厳密に維持し、厳密に測定する必要がない。また、流体力を加えて動かすものではなく、略静止状態で保持するものであるため、複雑な同期制御等を行なうことなく簡単な制御で、各粒子状担体の取り扱いや測定を容易化し、高精度化することができる。
【0121】
本発明によれば、各種物質が結合されまたは結合可能な複数の粒子状担体については、それを保持する収容部に、位置や順序を予め定めることなく簡単に導入しかつ保持することができる。したがって、粒子状担体事態に対する固定処理当の処理を前記収容部とは異なる場所で用意に実行することができるので、処理の効率化、処理の信頼性、処理の確実性を高めることができる。
【0122】
本発明によれば、各種物質が結合されまたは結合可能な複数の粒子状担体を保持前に予め標識化し、該粒子状担体を略静止状態に任意の位置に保持して測定することで、標識物質の有無を測定することで足り、細かい位置座標の測定を行う必要がないので測定が用意である。
【0123】
さらに、本発明によれば、複数の粒子状担体を有する粒子状担体の集合ごとに、標識化することができる。したがって、その集合に属する粒子状担体については、各種物質を固定しまたは固定可能な粒子状担体と、標識化に用いる粒子状担体とを、異ならせることで、粒子状担体ごとに異なる機能を分担させることができる。したがって、標識化、固定化当各粒子状担体ごとに機能を特化することができるのでより高精度の処理を行なうことができる。
【0124】
また、前記粒子状担体の集合に属する粒子状担体の個数を自由に設定することで、種々の標識化を行なうことができるので、拡張性、多様性または汎用性がある。
【0125】
第7の発明によれば、前記複数種類の化学物質は、1の担体上の複数位置に結合しまたは結合可能であるので、該複数位置を、そこに結合しまたは結合可能な化学物質、例えば、一定の間隔、一定の方向等の規則的な配列を行うことで、前記各位置の化学物質を、容易にかつ確実に特定することができる。
【0126】
第8の発明によれば、前記担体を前記細管部または薄層部に封入するようにしているので、例えば、粒子状担体を細管部や薄層部に1列にまたは1層に並べるように保持することによって、各粒子状担体を1次元的または2次元的に保持させて、確実に測定することが可能となる。また、細管部や薄層部に沿って走査するように測定することで、測定を容易化することができる。
【0127】
さらに、細管部に沿って流体を導入し、排出するようにすれば、流体との接触を確実に行なうことができる。また、細管部であれば外部に設けた種々の容器に挿入することができるので、液体の吸引、吐出に都合が良い。また、本発明によれば、粒子状担体と流体とを常に接触可能な状態で処理することができるので、処理の効率性が高い。
【0128】
第9の発明によれば、前記口部から前記収容部内に流入した流体と接触可能な状態で前記収容部内に前記担体を封入する封入部を設けることで、予め容器内に担体を封入した状態で製造する場合に比較して、担体の封入を容器製造の後に封入部を用いて行なうことができるので、製造が容易である。
【0129】
第10の発明によれば、前記担体を、収容部に設けた導入孔を通して導入し蓋部で密封することができるので、前記口部から担体を導入する必要がなく口部として担体が通過しない大きさに形成することによって、担体の封入を確実に行うことができる。また、前記導入孔より前記担体を除去するようにすることができる。
【0130】
第11の発明は、非変形部の内、前記担体が封入された部分を着脱自在に取り付けることによって、前記収容部への担体の導入を容易化することができる。そのような部分を予め複数種類用意することで、処理を効率的に行なうことができる。
【0131】
第12の発明は、前記変形壁面として蛇腹を設けたものである。これによって、簡単な構成で、大きな変形率を持つ壁面を形成することができる。また、剛性のある部材で形成することができるので壊れにくい。さらに、変形により折り曲がる箇所および方向が定まっており、変形の規則性、または変形による定型性が高い。
【0132】
第14の発明によれば、変形方向に沿って、移動させる処理対象の気体液体と接触しない力学的な機構のみを用いることで、吸引、吐出、移送等の液体の処理を可能にするので、液体と接触可能な部分が前記担体封入変形容器内の閉空間と容器のみにほぼ限られるので、コンタミネーションを確実に防止することができる。
【0133】
さらに、前記担体封入変形容器を、その口部が変形壁面の変形の為に加える力によっては変動しないように支持しているので、担体封入変形容器を用いて正確な位置制御を行なうことができ、多数の容器を密接して配列することによって迅速かつ効率的な処理を行なうことができる。
【0134】
第15の発明によれば、担体封入変形容器を、その口部が変形壁面の変形の為に加える力によっては変動しないように支持し、また、複数の担体封入変形容器を一斉に同一の条件で変形することが可能なので、正確な位置制御や再現性の高い吸引吐出制御を行うことができる。また、担体封入変形容器を用いても、多数の処理を並行して行うことができて効率的であり、多数の容器を密接して配列した場合であっても、信頼性の高い処理を行うことができる。
【0135】
前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、対応する前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍となっているために、1の口部に対してウェルを2個以上対応させることができる。したがって、マイクロプレートを新たに設けることなく、1のマイクロプレート内において、2種類以上の溶液等を収容することができるので、作業面積を増大させることなく、より多くの種類の溶液等を扱うことができる。
【0136】
また、1の口部が2以上のウェルに対応することができるので、1のウェルが扱う容量の2倍以上の容量の液体を1の口部が扱うことができる。さらに、隣接する口部間に利用できる大きな空間が出現することになるので、各口部に対して、装置規模を拡大することなく、種々の機能、例えば、前記口部内に磁力を及ぼす機能、口部内の液体の状態を検出する機能等、を付加する機構を設けることができる。
【0137】
第16の発明または第33の発明によれば、第13,14の発明の効果を奏する他、1のヘッドが一度に扱うことができるウェルが1のマイクロプレート内に属する相互に重複することのない各ウェル部分行列であり、かつ、各ウェル部分行列間の距離は、マイクロプレートの隣接するウェル間の距離に相当するだけしか離れていないので、各ウェル部分行列ごとに、1の処理に必要な溶液等を各々収容することで、1の処理を完結するまでの担体封入変形容器配列ヘッドの移動距離が短くて済み、迅速かつ効率的に処理を行なうことができる。
【0138】
第17の発明によれば、1のマイクロプレートに対して、多数の処理対象についての複数の工程からなる一連の処理を、1のヘッドを用いて連続的に一貫して実行することができるので、作業面積に対する処理の効率性が高い。また、ヘッドの移動距離が短くて済むので、作業効率が高い。
【0139】
第18の発明によれば、各ウェル群には、各ウェル部分行列に属するウェル要素が各々1ずつ重複せずに含まれているので、ウェル群に属する全ウェルに対して、口部を挿入可能に移動させることによって、1のマイクロプレートに対して、多数の対象に少なくとも前記自然数(n>1)工程からなる一連の処理を、1のヘッドを用いて連続的に一貫して1のマイクロプレート内で実行することができるので、信頼性が高く、また、管理しやすい。
【0140】
第19の発明または第32の発明によれば、前記収容部内部に磁場を及ぼしまた除去するようにしているので、磁性粒子の懸濁する液体中の磁性粒子を内部に吸着させることで分離を確実に行なうことができる。また、液体ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定するように前記ヘッドに設けた口部の行間隔または列間隔を持つ隣接口部行間または隣接口部列間の隙間を利用して強い磁力を持つ磁石を設けることができるので、ウェルが蜜に集積化されたマイクロプレートであっても、簡単な機構で各担体封入変形容器に強い磁場を及ぼしかつ除去することができる。
【0141】
第20の発明によれば、前記各担体封入変形容器の収容部の非変形部の周囲を取り囲むようにかつ近接内の状態を検出することによって、液体の吸引、吐出状態を測定し、信頼性の高い制御を行うことができる。
【0142】
第21の発明によれば、前記收容部の非変形部の周囲を取り囲むようにかつ近接して受光端子および/または照射端子を設けているので、粒子状担体による発光を確実に捉えることができるので信頼性が高い。
【0143】
第22の発明によると、前記口部を通過するように変形するので、口部を通る流体の吸引吐出を確実に行なうことができる。
【0144】
第23の発明によると、可動部材を変形方向に沿って移動させる処理対象の気体液体と接触しない力学的な機構のみを用いることで、吸引、吐出、移送等の液体の処理を可能にするので、液体と接触可能な部分が担体封入変形容器内の閉空間と容器のみにほぼ限られるので、コンタミネーションを確実に防止することができる。
【0145】
第24の発明によると、変形壁面の変形、および/または、前記ヘッドの移動を、前記担体封入変形容器の構造等に基づいて制御を行なうようにしているので、吸引吐出を確実に行なうことができる。
【0146】
第25の発明、第26の発明または第29の発明によると、壁面変形によるその内部の膨張および収縮の双方が可能な基準変形状態に基づいて変形の制御が行なわれるので、変形による内部の膨張及び収縮のどちらにも直ちに対応することができて迅速で効率的な処理を行うことができる。また、前記基準変形状態をうまく設定することによって、液体の吐出による前記担体封入変形容器内の液体の残留を防止することができる。
【0147】
第26の発明または第30の発明によると、気体については変形壁面を有する変形部に収容し、導入した液体は変形壁面を有しない非変形部に貯留するようにしている。したがって、導入した液体は変形壁面の変形の影響を受けず、液体が変形壁面に付着して残留する事態を防止することができ、定量の処理を行なう場合等において信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る担体封入変形容器に適用した光センサーを示す斜視図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る担体封入変形容器の断面図および斜視図を示す。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る担体封入変形容器処理装置の斜視図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る担体封入変形容器処理装置のマイクロプレートを示す図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る櫛歯状光検出部および櫛歯状磁石を示す奢侈図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る櫛歯状光検出部を示す図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図12】本発明の第8の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図13】本発明の第9の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図14】本発明の第10の実施の形態に係る担体封入変形容器処理方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0149】
続いて、図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る担体封入変形容器および該担体封入変形容器処理装置およびその処理方法について説明する。
【0150】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る担体封入変形容器11を示すものである。
図1(a)に示すように、該担体封入変形容器11は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部12と、該収容部12と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部13と、前記収容部12内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の粒子状担体14,15を有するものである。前記収容部12は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部16と、該変形部16と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部13と連通して外部から内部を測定可能な非変形部17とを有している。
【0151】
前記変形部16は、その変形壁面に蛇腹18が形成されている。該蛇腹18は、前記収容部12の全壁面または前記変形部16の変形壁面を変形方向である該変形部16または収容部12の軸方向を横切って2つに仕切るように形成され、その一方の部分には、頂点19があり、他方には、非変形部17、および、変形部16と非変形部17との境界に設けられ、該担体封入変形容器11を主に手もしくは指で支持するために用いられ、前記変形部16および非変形部17よりも大きい半径を有して外向きに突出するフランジ20が設けられている。したがって、この担体封入変形容器11は、手動に適したものである。この蛇腹18の波形の各山または各谷が含まれる各仮想的な平面の各法線方向は、前記軸方向に略一致する。該蛇腹18は、前記口部13および前記収容部12の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線(軸線)と該変形壁面との交点において該直線方向(前記軸方向)に沿って前記変形壁面が変形可能に形成されていることになる。
【0152】
前記非変形部17は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略円筒状の太管部21、それよりも細い略円筒状の細管部22、および該太管部21と前記細管部22との間に設けた漏斗状の移行部23とを有し、前記口部13は、前記細管部22の先端に設けられている。該細管部22は、内部に粒子状担体14,15を封入した後、前記移行部23の下端にある嵌合部24に嵌合して接着、熱溶着等によって取り付けられる。前記細管部22は、蛍光色素で標識化される粒子状担体14,15の測定の際に、蛍光を発しない樹脂であって、ある程度の強度を要するポリプロピレンで形成されるのが適当である。一方、前記変形部16および該変形部16と一体的に形成される細管部22を除く収容部12の部分は、ある程度の軟らかさをもったポリエステルで形成されるのが適当である。
【0153】
該細管部22内には、複数(この例では20個)の粒子状担体14,15が一列状に収容され、その上側絞り部25と下側絞り部26において、細管部22をかしめて液体の流出流入は可能であるが粒子状担体14,15の流出が不可能となるように細く絞るように加工して、その領域外に前記粒子状担体14,15が流出しないように封入されている。該上側絞り部25および該下側絞り部26は前記封入部に相当する。
【0154】
前記粒子状担体14,15は、例えば、0.5mm程度の大きさをもつ複数組の粒子状担体の集合(2個の要素が属する)からなる。その各粒子状担体の集合に属する少なくとも1の各粒子状担体は、所定の化学物質が結合しまたは結合可能であり、かつ、該化学物質を識別するために蛍光色素や化学発光物質等の発光物質で標識化がされた粒子状担体14であって、例えば、シリカやナイロン等の繊維物質からなり、該集合に属する他の粒子状担体は、該発光が隣接する粒子状担体に届くのを防止するための遮光性物質、例えば、不透明性の樹脂や金属で形成された粒子状担体15であって、粒子状担体14と粒子状担体15とは互い違いに配列されているものである。ここでは、前記粒子状担体14は、前記收容部12内への導入前に、相互に異なる蛍光等の標識物質または相互に異なる標識物質の組み合わせまたはその量比によって識別可能に標識化されている。
【0155】
続いて、図2に基づいて、本発明の第2の実施の形態に係る担体封入変形容器を説明する。なお、図1と同一の符号は同一のものを示しているので、それの詳細な説明を省略する。
【0156】
図2(a)に示すように、該担体封入変形容器27は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部28と、該収容部28と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部29と、該収容部28内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の粒子状担体14,15を有するものである。前記収容部28は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部16と、該変形部16と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ口部29と連通して外部から内部を測定可能な非変形部30とを有している。
【0157】
前記非変形部30は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略円筒状の太管部21、それよりも細い略円筒状の細管部31、および該太管部21と前記細管部31との間に設けた漏斗状の移行部23を有し、前記細管部31は、その上端が該移行部23の下端にある嵌合部24に嵌合されて着脱自在に取り付けられている。前記細管部31は、蛍光色素で標識化される粒子状担体14,15の測定の際に、蛍光を発しない樹脂であって、ある程度の強度を要するポリプロピレンで形成されるのが適当である。
【0158】
該細管部31内には、前述したように複数(この例では20個)の粒子状担体14,15が一列状に封入され、その上側と下側において、該細管部31内に嵌合して挿入された、例えば、ステンレス製のパイプ32,33が取り付けられている。該パイプ32,33の粒子状担体と接触可能側部分では、前記粒子状担体14,15が前記パイプ32,33を塞ぐことのないように、軸方向に対して斜方向にカットされた、斜面34,35を有している。なお、下側のパイプ33の下端の孔が前記口部29に相当する。
【0159】
続いて、本発明の第3の実施の形態に係る担体封入変形容器36について、図3に基づいて説明する。なお、図1または図2と同一の符号は、同一のものを示しているので説明を省略する。
【0160】
該担体封入変形容器36は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部37と、該収容部37と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体流入流出可能な口部38と、該収容部41内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の粒子状担体14,15を有するものである。前記収容部41は、変形部39,40と、それ以外の非変形部とからなる。前記非変形部は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な太管部42と、それよりも細い細管部43と、前記太管部42または前記細管部43との間に設けた漏斗状の移行部44とを有し、前記口部38は、前記細管部43の下端に設けられている。前記粒子状担体14,15は前記細管部43内に設けられている。この例では、前記細管部43は、移行部44および太管部42と一体に形成されている。
【0161】
前記変形壁面で囲まれた2つの変形部39,40は、各変形部39,40の変形壁面の変形に基づく収容部37の各最大変化可能量V39,V40が異なり、V39<<V40である。この場合、前記最大変化可能量V40の大きさは、前記細管部43に封入されている粒子状担体14,15を除いた細管部43の空間の容積に略等しく設定するのが好ましい。
【0162】
なお、該最大変化可能量が最も大きいV39をもつ変形部39は、前記口部38および前記収容部37の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と前記変形壁面との交点において前記直線方向(軸方向)に沿って前記変形壁面が変形可能に形成されている。
【0163】
また、該細管部43は、前記移行部44と連通するようにして太管部42、移行部44と一体的に形成されている。該細管部43内には、複数(この例では20個)の粒子状担体14,15が一列状に収容され、その上側絞り部45と下側絞り部46において、該細管部43をかしめて液体の流出流入は可能であるが粒子状担体14,15の流出は不可能となるように細く絞るように加工して、その領域外に前記粒子状担体14,15が流出しないように封入されている。該上側絞り部25および該下側絞り部26は、前記封入部に相当する。
【0164】
続いて、図4に基づいて、第3の実施の形態に係る担体封入変形容器36内の細管部43に封入された前記粒子状担体14,15を光学的に測定する光検出手段としての光センサー47について説明する。該光センサー47は1本の担体封入変形容器36が、前記口部38を下方に向け、前記変形壁面を変形可能でかつ上下方向に移動可能な状態で担体封入ヘッド(図示せず)に支持された状態で用いる場合に適している。前記担体封入変形容器36の前記細管部43には、標識物質として蛍光物質が結合した粒子状担体14,15が1列状に配列されて封入されているものとする。
【0165】
図4(a)には、前記担体封入変形容器36の前記細管部43に装着する光センサー47を示す。該光センサー47は、前記担体封入変形容器36の細管部43に対して、水平面上接離可能に設けた
【0166】
該光センサー47は、前記担体封入ヘッドに設けられている。ここで、前記担体封入変形容器36の前記細管部43には、標識物質として蛍光物質が用いられているものとする。該光センサー47は該蛍光を検出可能なものであって、中央に前記細管部43が貫通可能な内径をもつ中央孔50が形成された円筒状に組み合わせ可能であって該円筒の直径およびその軸を含む平面に沿って分離可能な半円筒状の2つのセグメント48,49と、該セグメント48に取り付けられ前記中央孔の内側面にその端面52が設けられ所定の励起光を照射可能な光ファイバ53と、前記セグメント49に取り付けられ前記中央孔の内側面にその端面51が設けられ前記中央孔内部からの発光を受光可能な光ファイバ54とを有する。
【0167】
図4(b)に示すように、該光センサー47の2つの前記セグメント48,49は、その中央に前記細管部43が貫通する孔部が設けられ上下方向に移動可能な支持板(図示せず)上に、該孔部を覆うように取り付けられることで、該セグメント48,49が前記支持板上において前記中央孔および孔部を通して前記細管部43を貫通させた状態で、該細管部43の下端を挟むようにして、取り付けられる。
【0168】
該支持板(図示せず)および光センサー47を、前記細管部43の下端から相対的に上方向に、前記細管部43の上端にまで移動させることによって、前記細管部43に沿って走査し該細管部43内に封入されている粒子状担体からの発光を測定する。
【0169】
図5には、第4の実施の形態に係る担体封入変形容器55を示す。
該担体封入変形容器55は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部56と、該収容部56と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部57と、該収容部56内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個(この例では8個)の粒子状担体14を封入したものである。前記收容部56は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部67と、該変形部67と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ口部57と連通して外部から内部を測定可能な非変形部58とを有している。
【0170】
前記変形部67には、蛇腹59が形成されている。該蛇腹59は、変形方向として、該収容部56の上下に沿った軸方向を略垂直に横切る方向に沿って形成された山および谷を有する波が、該変形方向を筒状に囲む壁面に形成され、該山および谷で折れ曲がり可能である。該波の山または谷の形状としては、前記変形方向に垂直な仮想的な平面内に含有される閉曲線状である。該変形部67の上端面60を軸方向に沿って所定可動部材で押圧することで、蛇腹59の山および谷を折り曲げて変形部67を収縮させ、該押圧を解除することで、前記変形部67の持つ弾性力によって元の状態にまで回復させる。
【0171】
非変形部58は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略角筒状の太管部61、それよりも細い略円筒状の細管部62、および該太管部61と前記細管部62との間に設けた段差が形成された移行部63を有する。前記太管部61の軸方向に垂直な断面の略長方形の形状の例としては、長辺の長さが短辺の長さの略2倍である。
【0172】
前記細管部62内には、前述したように複数個(ここでは8個)の粒子状担体14が、導入された液体と接触可能となるように、一列状に封入され、その上側と下側において、該細管部62内に、前記粒子状担体14が通過せずかつそれによって閉塞されない断面形状(円以外の断面形状)をもつ短管64,65が前記細管部62の内壁面に嵌合して設けられている。
【0173】
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る担体封入変形容器処理装置10の斜視図である。該担体封入変形容器処理装置10は、本発明の第3の実施の形態に係る担体封入変形容器55を2本以上(この例では、96本)を前記口部57を下側に向けて2組の12行×4列のマトリクス状に配列し、前記変形壁面の変形によって前記口部57が変動しないように支持し、該担体封入変形容器55の前記変形壁面を一斉に変形させることによって、該担体封入変形容器55に対する液体の吸引吐出を一斉に行う担体封入ヘッド70と、種々の溶液、懸濁液等の液体を収容可能な2以上のウェル75を12行×8列のマトリクス状に配列した容器群としての2枚のマイクロプレート73,74と、前記担体封入ヘッド70を前記容器群としての2つのマイクロプレート73,74に対して相対的に移動させるヘッド移動部(図示せず)とを有する。
【0174】
前記担体封入ヘッド70には、前記12行×8列のマトリクス状に配列した担体封入変形容器55の全上端面60と接触可能かつ上下動可能であって、該担体封入変形容器55を一斉に変形かつ回復可能な可動部材71,72を有している(図6中、可動部材71は、説明上、担体封入変形容器の配列状態を明示するために上方向に取り外した状態で示している)。該可動部材71,72は、例えば、上下方向に沿って設けたボール螺子に螺合するナット部とアームを介して連結させ、前記ボール螺子をモータによって回転駆動することによって前記ナット部を該ボール螺子に沿って並進駆動することによって行う。前記担体封入ヘッド70は、例えば、前記マトリクス状(12行×4列)に前記行間隔および列間隔で穿設された48個の支持孔を有する2枚のプレートを水平に設け、前記担体封入変形容器55を前記各支持孔に挿入して嵌合することで支持する。前記支持孔の形状は、前記担体封入変形容器55の前記63の角筒部分に対応する角孔の形状を有し、上側の段差部分で支えている。該プレートは、前記移動部によって前記担体封入ヘッド70の一部として上下動および水平動が可能である。該担体封入ヘッド70の移動は、例えば、別途設けたボール螺子を用いて行う。
【0175】
さらに、一方の前記可動部材71が設けられている方のマトリクス状に配列した担体封入変形容器55群には、該各担体封入変形容器55の非変形部58の細管部62の内部に磁場を及ぼすための磁力手段としての櫛歯状磁石77と、前記各担体封入変形容器55の内部の粒子状担体の状態を検出する光検出手段としての櫛歯状光検出部78とを有している。なお、符号79は、前記担体封入ヘッド70に固定して取り付けられて、前記櫛歯状磁石77を列方向に移動可能に支持するトレイである。
【0176】
図7(a)には、前記12行×8列のマトリクス状に配列したウェル75を有するマイクロプレート73(74)を詳細に示す斜視図である。
該マイクロプレート73は、12行×8列の96個のウェル75,76を基体80にマトリクス状に配列したものである。さらに、該基体80上には、対応する前記担体封入ヘッド70の前記担体封入変形容器55の配列の列間隔に対応して行方向に並んだ前記自然数個、「2」個ずつのウェル75,76からなるウェル群ごとに仕切るように、前記基体80の表面に上方向に向かって突出するように、行方向に沿って3枚、列方向に沿って11枚の細長い薄板状の隔壁81を設けている。
【0177】
図7(b)には、該マイクロプレート73に対応する担体封入ヘッド70のマトリクス状に配列された全担体封入変形容器55の前記口部57が一斉に挿入可能なウェルの集合である第1のウェル部分行列(図中、黒丸で表したウェル75)と、第2のウェル部分行列(図中、白丸で表したウェル76)を示している。したがって、前記担体封入ヘッド70の前記担体封入変形容器55の配列は、この第1のウェル部分行列(75、黒丸)と第2のウェル部分行列(76、白丸)の配列に対応するマトリクスを有していることになる。
【0178】
ここで、この第1のウェル部分行列(75、黒丸)に属する黒丸で表したウェル75と、第2のウェル部分行列(76、白丸)に属するウェル76との図上、上下に隣接する1組のウェル75,76は、対応する前記担体封入ヘッド70に設けられた前記担体封入変形容器55の内、同一の担体封入変形容器55によって挿入可能なウェルの集合であるウェル群82を示すものである。したがって、一旦、この隔壁81で囲まれた領域内に位置決めされた担体封入変形容器55は、該マイクロプレート73(74)についての処理が完結するまでは、該隔壁81を越えて移動することはない。
【0179】
図7(c)(d)には、他の実施の形態に係る担体封入ヘッドに対応するマイクロプレート83の例を示すものである。該マイクロプレート83は、12行×8列のマトリクス状に96個のウェル85,86,87,88が基体84に配列されたものである。さらに、該基体84上には、対応する担体封入ヘッド(図示せず)の担体封入変形容器55の配列の行間隔および列間隔に対応して、列方向および行方向に並んだ前記自然数個、「4」個ずつのウェル85,86,87,88からなるウェル群90ごとに仕切るように、前記基体84の表面に上方向に向かって突出するように列方向に沿って3枚、行方向に沿って5枚の細長い薄板状の隔壁89を設けている。
【0180】
ここで、該マイクロプレート83に対応する前記担体封入ヘッド(図示せず)とは、図6に示した担体封入ヘッド70において、4本各列において、列方向に配列された12本の担体封入変形容器55を1つおきに間引きした6本の担体封入変形容器55が配列された、6行×4列のマトリクス状に配列された24本の担体封入変形容器55を有するものである。
【0181】
該マイクロプレート83は、図7(d)に示すように、該マイクロプレート83には、対応する担体封入ヘッド(図示せず)のマトリクス状に配列された24本の全担体封入変形容器55が一斉に挿入可能なウェルの集合である第1のウェル部分行列(図中、白丸で表したウェル85)、第2のウェル部分行列(図中、黒丸で表したウェル86)、第3のウェル部分行列(図中、十文字で表したウェル87)、第4のウェル部分行列(図中、一本線で表したウェル88)を示している。
【0182】
ここで、この第1のウェル部分行列に属する白丸で表したウェル85、第2のウェル部分行列に属する黒丸で表したウェル86、第3のウェル部分行列に属する十文字で表したウェル87、および、第4のウェル部分行列に属する一本線で表したウェル88の4個のウェル85,86,87,88の1組は、対応する前記担体封入ヘッド(図示せず)に設けられた担体封入変形容器55の内、同一の担体封入変形容器55によって挿入可能なウェルの集合であるウェル群90を示すものである。したがって、一旦、この隔壁89内で囲まれた領域内に位置決めされた担体封入変形容器55は、該マイクロプレート83に付いての処理が完結するまでは、該隔壁89を超えて移動することはない。
【0183】
なお、該マイクロプレート83を4枚用意し、24本の前記担体封入変形容器55を前記6行×4列のマトリクス状に配列した束を4つ用意すると、全部で96本の担体封入変形容器55を有することになり、総数で1のマイクロプレート83のウェル数と等しい点で、図6の場合と変らないにも拘らず、同時に4枚のマイクロプレートを処理することができるので効率が高い。
【0184】
続いて、図8(a)は、前記櫛歯状磁石77および櫛歯状光検出部78を取り出して示す斜視図である。該櫛歯状磁石77は、前記担体封入ヘッド70に設けられ、48本の前記担体封入変形容器55の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように、前記各担体封入変形容器55に対して各々接離可能に設けられた12行×4列のマトリクス状に全部で48個の磁石92を配列したものである。
【0185】
前記櫛歯状磁石77は、前記ウェル75,76の列間隔について前記自然数である「2」倍に設定された列間隔をもつ担体封入変形容器55の隣接する列間に、列方向に沿って移動可能に設けられ、前記列方向に沿って伸びかつ前記担体封入変形容器55の隣接する列間に挿入可能な幅に設けられた前記担体封入変形容器55の(列数−1)本である3本の略角柱状の櫛歯部材91と、該櫛歯部材91の外側に設けられ、前記櫛歯部材91よりもやや幅廣に形成された2本の略角柱状の櫛歯端91a,91bと、前記櫛歯部材91および前記櫛歯端91a,91bの一端で連結し行方向に伸びる支持部材(図示せず)とを有し、前記各櫛歯部材91および前記櫛歯端91bには、その長手方向、すなわち、列方向に沿って、前記ウェル75,76の行間隔に設定された間隔で各々前記行数個(12個)が配列された磁石92と、該各櫛歯部材91,91a,91bの長手方向、すなわち列方向に沿って設けられたガイドレール93とを有する。前記磁石92は前記櫛歯部材91および櫛歯端91bの同じ側面側に設けられ、該側面から遠い位置に前記ガイドレール93が設けられている。前記ガイドレール93は、前記櫛歯部材91,91a,91bの上表面に移動可能に設けられた前記櫛歯状光検出部78の移動を案内する。
【0186】
図8(b)は、他の実施の形態に係る櫛歯状磁石94および前記櫛歯状光検出部78を示す斜視図である。該櫛歯状磁石94は、前記担体封入ヘッド(図示せず)に設けられ、前記担体封入変形容器55の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように、前記各担体封入変形容器55に対して、各々接離可能に設けられた6行×4列のマトリクス状に全部で24個の磁石92を配列したものである。すなわち、図8(a)の櫛歯状磁石77と異なり、各櫛歯部材および櫛歯端に配列される磁石92の個数が12個の半分に間引きされて個数が6個になっている。これは、前述した担体封入ヘッド(図示せず)に相当するものである。
【0187】
図9は、前記櫛歯状光検出部78を詳細に示すものであり、該櫛歯状光検出部78は前記担体封入ヘッド70に設けられた櫛歯状磁石77上に、該櫛歯状磁石77に対して相対的に移動可能に設けられ、前記各担体封入変形容器55内部の状態を検出するものである。
【0188】
前記櫛歯状光検出部78は、前記ウェル75,76の列間隔の自然数倍、すなわち、「2」倍に設定された列間隔をもつ隣接する担体封入変形容器55の間に、列方向に沿って前記櫛歯状磁石77または前記担体封入変形容器55に対して移動可能に設けられ、前記列方向に沿って伸びかつ隣接する前記担体封入変形容器55列間に挿入可能な幅に設けられた前記担体封入変形容器55の(列数−1)本である3本の略角柱状の櫛歯部材95と、該櫛歯部材95の外側に設けられ、前記櫛歯部材95よりもやや幅廣に形成された2本の略角柱状の櫛歯端95a,95bと、前記櫛歯部材95および前記櫛歯端95a,95bの一端で連結し行方向に伸びる支持部材96とを有し、前記各櫛歯部材95および前記櫛歯端95a,95bには、各々1の光検出用孔98が行方向に沿って穿設して設けられている。
【0189】
1の前記櫛歯部材95または前記櫛歯端95a,95bに設けられた前記光検出用孔98には、発光部100からの光ファイバ99の先端が設けられ、それに、前記担体封入変形容器55列が配列されるべき細長い空隙を介して隣接する櫛歯部材95,櫛歯端95a,95bの前記光検出用孔98には、光センサー102と接続した光ファイバ101の先端が、前記櫛歯部材95、または櫛歯端95a,95bの隣接する2つによって挟まれた前記空隙に面するように設けられている。
【0190】
なお、符号97は、前記ガイドレール93と係合して摺動可能な前記列方向に沿って前記各櫛歯部材95、櫛歯端95a,95bに設けられた細溝を示す。
また、前記櫛歯状光検出部78の前記櫛歯部材95、櫛歯端95a,95b、支持部材96の大きさおよび形状は、各々、前記櫛歯状磁石77に相当する大きさおよび形状に形成されている。
【0191】
図10には、前記担体封入変形容器処理装置10の前記担体封入ヘッド70に装着するのに適した本発明の第6の実施の形態に係る担体封入変形容器103を示すものである。なお、図1と同一の符号は同一のものを表すので、その詳細な説明を省略する。
【0192】
図10に示すように、該担体封入変形容器103は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部104と、該収容部104と連通し該変形壁面による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部13と、前記收容部104内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の粒子状担体14,15を有するものである。該収容部104は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部107と、該変形部107と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部13と連通して外部から内部を測定可能な非変形部108とを有している。
【0193】
前記変形部107は、蛇腹109が形成されている。該蛇腹109は、前記收容部104の全壁面または前記変形部107の変形壁面を変形方向である該変形部107または収容部104の軸方向を横切って2つに仕切るように形成され、その一方の部分には、頂点110があり、他方には、非変形部108および、変形部107と非変形部108との境界に設けられ、該担体封入変形容器103を前記担体封入ヘッド70に支持するために用いられ、前記変形部107よりも小さい半径を有して外向きに突出するフランジ111が設けられている。すなわち、この担体封入変形容器103は、担体封入ヘッド70に装着して用いる自動化に適したものである。この蛇腹109の波形の各山または各谷が含まれる各仮想的な平面の各法線方向は、前記軸方向に略一致する。該蛇腹109は、前記口部13および前記收容部104の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線(軸線)と該変形壁面との交点において該直線方向(前記軸方向)に沿って前記変形壁面が変形可能に形成されていることになる。
【0194】
前記非変形部108は、前記太管部21、前記細管部22、前記移行部23とを有し、該細管部22は、内部に粒子状担体105,106を収容して、細管部封入した後、前記移行部23の下端にある嵌合部24に嵌合して接着、熱溶着等によって取り付けられる。前記細管部22は、蛍光色素で標識化される粒子状担体105,106の測定の際に、蛍光を発しない樹脂であって、ある程度の強度を要するポリプロピレンで形成されるのが適当である。
【0195】
図11は、本発明の第7の実施の形態に係る担体封入変形容器113を示すものである。図11に示すように、該担体封入変形容器113は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その変形面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部114と、該収容部114と連通し該変形壁面による前記内部の膨張および収縮によって吸引と出される液体が流入流出可能な口部13と、前記収容部114内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個所の結合位置115を有する棒状の担体118を有するものである。前記収容部114は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部107と、該変形部107と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部13と連通して外部から内部を測定可能な非変形部120とを有している。
【0196】
前記棒状の担体118は、図11に示すように、複数種の化学物質が結合しまたは結合可能な複数箇所の結合位置115が、その結合位置115間に設けられた油性のインク等の疎水性の材料で境界116によって仕切られている。該細管部117内には、前記棒状の担体118が一列状に上下方向に沿って収容され、その上側絞り部25と下側絞り部26において、小さいパイプ119を細管部117の内部に設け前記細管部117をかしめて液体の流出流入が可能であるが、該棒状の担体118の流出しないように封入している。該上側絞り部25、該下側絞り部26および2本の前記パイプ119は前記封入部に相当する。
【0197】
続いて、図12は、前記担体封入変形容器処理装置10の前記担体封入ヘッド70に装着するのに適した本発明の第8の実施の形態に係る担体封入変形容器121を示すものである。
【0198】
図12に示すように、該担体封入変形容器122は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部122と、該収容部122と連通し該変形壁面による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部123と、前記収容部122内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の球状担体124を有するものである。該収容部122は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部125と、前記球状担体124が封入され、前記変形部125と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部123と連通して外部から内部を測定可能な非変形部126とを有している。
【0199】
前記変形部125の変形壁面には蛇腹127が形成されている。該蛇腹127は、前記収容部122の全壁面または前記変形部125の変形壁面を変形方向である該変形部125または収容部122の軸方向を横切って2つに仕切るように形成され、その一方の上側部分の上端には、前記球状担体124を前記収容部122内に導入するための導入孔129が穿設されている。また、該導入孔129は、前記球状担体124の導入後に、蓋部128を前記導入孔129の周囲のフランジ部分に接着または熱溶接によって取り付けられて前記導入孔129を塞ぐ。
【0200】
また、他方の下側部分には、非変形部126、および、前記変形部125と非変形部126との境界に設けられ、該担体封入変形容器121を前記担体封入ヘッド70に支持するために用いられ、前記変形部125よりも小さい半径を有して外向きに突出するフランジ130が設けられている。すなわち、この担体封入変形容器121は、担体封入ヘッド70に装着して用いられる自動化に適したものである。この蛇腹127の波形の各山または各谷が含まれる各仮想的な平面の各法線方向は、前記軸方向に略一致する。該蛇腹127は、前記口部123および前記収容部122の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線(軸線)と該変形壁面との交点において該直線方向(前記軸方向)に沿って前記変形壁面が変形可能に形成されていることになる。
【0201】
前記非変形部126は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略円筒状の太管部131、それよりも細い略円筒状の細管部132、および該太管部131と前記細管部132との間に設けた漏斗状の移行部133とを有し、前記口部123は、前記細管部132の先端に設けられている。前記太管部131には、クロマトグラフィーの粒子状充填剤として、前記所定の物質を吸着等によって捕獲可能であって、前記細管部132の内径よりも大きい径をもつ複数の球状担体が封入されている。前記移行部133は、前記球状担体124によって塞がれないように、軸方向に垂直な断面は楕円形状である。ここで、「充填剤」とは、液クロマトグラフィーの原理に基づいて、いわゆる移動相としての所定流体に含有される対象生体物質の吸着を図るために選択される所定の容器内に充填される不溶性固定相である。
【0202】
図13は、前記担体封入変形容器処理装置10の前記担体封入ヘッド70に装着するのに適した本発明の第9の実施の形態に係る担体封入変形容器134を示すものである。なお、図12と同一の符号は図12に示すものと同一のものなので、それについての詳細な説明を省略する。
【0203】
図13に示すように、該担体封入変形容器134は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部135と、該収容部135と連通し該変形壁面による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部123と、前記収容部135内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な1個の球状担体136を有するものである。該収容部135は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部125と、前記球状担体136が封入され、前記変形部125と連通氏変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部123と連通して外部から内部を測定可能な非変形部139とを有している。
【0204】
前記非変形部139は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略円筒状の太管部140、それよりも細い略円筒状の細管部132、および該太管部140と前記細管部132との間に設けた漏斗状の移行部133とを有し、前記口部123は、前記細管部132の先端に設けられている。前記太管部140には、前記充填剤として、前記所定の物質を吸着等によって捕獲可能であって、前記細管部132および前記移行部133の内径よりも十分に大きな径をもつ1の球状担体136が封入されている。該球状担体136は、前記太管部140の壁面の内、該太管部140の軸線を通るように対向した内側にやや突出する2つの凸点137,138において支えられている。該凸点137,138は、前記太管部140の外側から押し込められるように形成されているため、その2つの凸点を結ぶ径方向を水平面内で90度回転した径方向には前記球状担体と前記太管部140の内壁面との間には、隙間が形成されて液体の通過が可能である。
【0205】
続いて、第5の実施の形態に係る担体封入変形容器処理装置10を用いた、第10の実施の形態に係る担体封入変形容器処理方法をSNPs検出反応に適用する場合について説明する。
【0206】
図14に模式的に示すように、該方法は、96人の被検者から採取した検体の遺伝子(ATase exon6、ATase exon8、CYP2C19 exon5、CYP2D6 exon1)の4箇所の各SNPs(Single Nucleotide Polymorphysms)の多型(ここでは2種類)の塩基を検出するための処理に適用したものである。この処理は、検体の遺伝子を抽出して増幅し、後述するASPE法によってASPE産物を調製する準備段階としての試料調製工程S1と、前記担体封入変形容器55内に封入すべき粒子状担体14に検出用のプローブである後述するタグDNAを結合させた複数種類(この例では8種類)の粒子状担体14を調製して前記担体封入変形容器55内に封入する封入工程S2と、該粒子状担体14と前記ASPE産物との結合反応を行わせる結合反応工程S3と、結合反応結果を検出する検出工程S4とを有する。
【0207】
ステップS1の試料調製工程は、図14(a)に示すように、例えば、口腔粘膜、血液、爪等の検体を96人の被検者から採取する採取工程と、該口腔粘膜等に含有されているDNAを抽出して、PCR法で増幅する増幅工程と、該DNAを精製する精製工程と、精製したDNAを後述するASPEを用いてASPE産物を調製するASPE産物調製工程とを有する。
【0208】
前記採取工程は、96人の被検者から採取した前記口腔粘膜等を懸濁させた液体を各々96個のウェル(図示せず)をもつマイクロプレート(図示せず)に収容する。前記担体封入変形容器55に担体が封入がされていない状態の変形容器を前記担体封入ヘッド70に装着し、各ウェル(図示せず)に、表面が多孔性の物質またはシリカ等の物質で覆われた磁性粒子の懸濁液を吸引して移送し各々一斉に吐出することで投入する。
【0209】
前記可動部材71,72を上下動することで吸引吐出を繰り返して、前記DNAを磁性粒子に結合して捕獲させ、前記櫛歯状磁石77を前記各変形容器に接近させてその内部に磁場を及ぼした状態で、前記可動部材71,72を上下動させることで、前記各変形容器の内壁に前記DNAを捕獲した前記磁性粒子を吸着させて分離させる。該分離した前記DNAを捕獲した磁性粒子から前記DNAを乖離させることでDNAを抽出し、マイクロプレートの各ウェル内に収容する。
【0210】
次に、抽出されたDNAはPCR法によって、所定のプライマーを用いて、4つの前記DNAを得るように増幅し前記マイクロプレートの96個の各ウェル内に収容する。増幅したDNAの懸濁液を収容した各ウェル内に、プライマーや口腔粘膜等の残留物を含む夾雑物を除去するために、新たな磁性粒子の懸濁液を、新たな変形容器を前記担体封入ヘッド70に装着し前記可動部材71,72を用いて上下動させて吸引吐出を行うことで前記DNAを前記磁性粒子に捕獲させ、前記櫛歯状磁石77を用いて前記変形容器55内に磁場を及ぼして前記磁性粒子を前記変形容器55の内壁に吸着させて分離して精製する。
【0211】
次に、ASPE(Allele-specific primer extension 法)を用いて、各検体の遺伝子について前記4箇所のSNPの決定を行うためのASPE産物148を調製する。
【0212】
図14(b)に示すように、後述する一本鎖のタグDNA142の塩基配列143に相補的な塩基配列144を3'末端にもち、前記SNPの塩基145を5'末端にもち、塩基配列144と塩基145の間の配列は4つの前記各遺伝子のSNPの直近配列に相補的な塩基配列となるように設計した一本鎖の数十塩基からなる合成DNAをプライマーとして用意する。多型の可能性のある種類、ここでは4つの各遺伝子ごとに2種類ずつ、計8種類のプライマーを合成し、各プライマーには、8種類の相互に異なる所定の塩基配列をもつタグDNA142の1および該当するSNPの塩基が含まれる。そのプライマーと、塩基「T」に代えてDig-dUTP146を塩基に用いて、前記検体ごとの各遺伝子に基づいてPCR法により伸長増幅させる。すると、前記検体のDNAの多型の種類に応じたプライマーのみについて伸長増幅が行われ、96の各検体ごとに前記ASPE産物148が調製されることになる。
【0213】
調製されたASPE産物148は、マイクロプレート73,74のウェル75(黒丸)が属する第1の部分行列のウェル群に収容しておく。一方、マイクロプレート73,74のウェル76(白丸)が属する第2の部分行列のウェル群には、後述するステップS4の検出工程で用いるための洗浄液を収容しておく。さらに、図示しない同様の2枚の他のマイクロプレートには、その第1の部分行列には前記Dig-dUTP146と特異的に結合する前記AP標識Dig抗体147が収容され、第2の部分行列には、基質液149(CDP-Star)を収容する。
【0214】
なお、この例では、各検体ごとに8種類の前記ASPE産物148の全てを混合したものを各ウェル75に収容しているが、例えば、2種類の前記ASPE産物148ごとに混合したものを第1の部分行列に収容し、第2の部分行列には前記基質液を収容したマイクロプレート73,74等の必要なマイクロプレートの組を4組用意することで処理を行うようにしてもよい。
【0215】
ステップS2においては、前記担体封入変形容器55内に収容すべき粒子状担体14を作製して、封入する。作製すべき粒子状担体14は、図14(b)に示すように、例えば、アビディン141で被覆され、ビオチン化した所定の塩基配列143をもつタグDNA142を結合させたものである。ここで、前記粒子状担体14としては、例えば、直径略1mm前後のサイズであって、例えば、ナイロン(Polysciences社製)等の各種樹脂を用いる。その他、例えば、セラミックス(千葉セラミック社製、アルミナ1.88mm径)を用いることができる。なお、前記遮光性粒子を用いる場合には、例えば、直径2.0mmのカラーガラスを用いる。
【0216】
また、各タグDNA142の塩基配列143、および、前記プライマーに含有させた相補的な塩基配列144は、前記各遺伝子のSNPの可能性のある多型の塩基ごとに異なる塩基配列143,144を持つように合成する。すると、本実施の形態に係る処理では、4箇所のSNPにおいて、それぞれ2種類ずつの可能性のある多型の塩基に対しては、8種類の塩基配列143,144が必要となるので8種類の粒子状担体14が作製されることになる。例えば、第1の粒子状担体と、第2の粒子状担体は、前記遺伝子 ATase exon6に対応するものであって、タグDNA142として、Tag1(塩基C)およびTag3 (塩基T)を用い、第3の粒子状担体および第4の粒子状担体は、前記遺伝子 ATase exon8に対応するものであって、タグDNA142として、Tag4(塩基A)およびTag2(塩基G)を用い、第5の粒子状担体および第6の粒子状担体は、前記遺伝子 CYP2C19 exon5に対応するものであって、タグDNA142として、Tag7(塩基A),Tag6(塩基G)を用い、第7の粒子状担体および第8の粒子状担体は、前記遺伝子 CYP2D6 exon1に対応するものであって、タグDNA142として、Tag9(塩基C),Tag10(塩基T)を用いるものである。
【0217】
このようにして作製された前記ビオチン化した8種類の前記所定の塩基配列143を有するタグDNA142を結合した8種類の粒子状担体14を予め定めた順序、前述した第1の粒子状担体から第8の粒子状担体の順序にしたがって配列したものを各担体封入変形容器55内に封入したものを96本作製して、前記担体封入ヘッド70に行列状に装着する。該粒子状担体14を封入するには、例えば、前記各担体封入変形容器55の細管部62の前記配列の上側と下側部分に前記短管64,65を嵌合させることによって行う。前記複数の粒子状担体14を封入した前記96本の前記担体封入変形容器55を、2組の12行×4列のマトリクス状に分けて配列しておく。なお、前記複数種類の各粒子状担体を各種類ごとに標識物質を用いて相互に識別可能に形成する場合には、その各細管部62内の粒子状担体の配列順序は特に定める必要はない。なお、遮光性粒子を用いる場合には、例えば、反応用の粒子状担体と遮光性粒子とを交互に配列する。
【0218】
前記細管部62としては、例えば、ポリプロピレン製の前記細管部62を用いる。該細管部62の大きさとしては、例えば、前記粒子状担体として、1.0mm径のセラミック製を用いる場合には、例えば、1.1mm径の丸型を用いる。また、1.88mm径のセラミック製を用いる場合には、2.0mm径の丸型を用いる。さらに、遮光性粒子として、前記2.0mmのガラスビーズを用いるには、2.2mm径の丸型を用いる。
【0219】
ステップS3において、移動部(図示せず)を用いて、前記担体封入ヘッド70の2組のマトリクス状に配列された各担体封入変形容器55の各前記口部57が前記マイクロプレート73,74の各ウェル75からなる第1の部分行列に挿入可能な位置に移動させる。次に、前記移動部(図示せず)によって、前記口部57をマイクロプレート73,74の各ウェル75に一斉に挿入させる。前記担体封入変形容器55の変形については、所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして、変形壁面の変形の制御が行われる。すなわち、該可動部材71,72の位置は、基準状態においては、前記上端面60と接触した状態であって、その最大の変形容器の内部容積をV1とし、最小の変形容器の内部容積をV2とした場合に、基準状態の容積V0は、V1−V0≦V0−V2、すなわち(V1+V2)/2≦V0となるように定めることによって、吸引量(V1−V0)が吐出量(V0−V2)よりも小さくなるように基準量を設定することによって、吸引した液体の量が担体封入変形容器55内に残留することを防止することができる。すなわち、前記可動部材71,72は、前記担体封入変形容器55の内部容積がV0となるように前記担体封入変形容器55の前記上端面60を押圧した状態にある。
【0220】
次に、前記口部57を前記マイクロプレート73,74の各ウェル75に属する第1の部分行列に相当するウェル75に挿入した後、前記可動部材71,72を上方向に動かすことによって、各検体ごとに収容した前記ASPE産物148の混合液を前記担体封入変形容器55内に吸引することで、該液体と前記各粒子状担体14とを接触させて、前記タグDNA142の塩基配列143と、前記ASPE産物148の前記塩基配列143と相補性のある塩基配列144との間でハイブリダイゼーション反応を起こさせて、前記各粒子状担体14ごとに、対応するASPE産物148がある場合には、該ASPE産物148を結合させることになる。
【0221】
次に、ステップS4において、移動部(図示せず)を用いて、前記担体封入ヘッド70を洗浄液が収容されている前記マイクロプレート73,74の第2の部分行列にまで、前記移動経路としての前記行方向に列間隔だけ移動させて、前記口部57を前記第2の部分行列に属するウェル76に位置させて、一斉に挿入させる。次に、前記可動部材71,72を用いて基準位置から上方向および下方向に移動させることによって、吸引吐出を繰り返して洗浄する。その後、前記担体封入ヘッド70を、前記Dig-dUTP146と特異的に結合する前記AP標識Dig抗体147を収容したマイクロプレート(図示せず)にまで前記担体封入ヘッド70を移動させて、前記口部57を前記第1の部分行列に属するウェル(図示せず)に位置させて一斉に挿入させ、前記可動部材71,72を用いて吸引吐出を繰り返すことで、前記前記Dig-dUTP146と前記AP標識Dig抗体147とを結合させる。すると、各検体の各粒子状担体14の内、存在する多型に応じた種類のみに前記AP標識Dig抗体147が結合したASPE産物148が粒子状担体14に結合されていることになる。好ましくは、さらに洗浄液で洗浄した後、前記移動部(図示せず)を用いて、前記担体封入ヘッド70を前記移動経路としての前記行方向に列間隔だけ移動させて、前記口部57を前記第2の部分行列に属するウェル(図示せず)に位置させて、一斉に挿入させる。次に、前記可動部材71,72を用いて基準位置から上方向および下方向に移動させることによって、前記基質液149を前記担体封入変形容器55内に吸引および吐出を繰り返すことで前記基質液149を前記Digと反応させることによって化学発光を起こさせる。その際、前記担体封入ヘッド70に設けた前記櫛歯状光検出部78を用いて封入された前記粒子状担体14からの発光の検出を行う。化学発光の検出を行うには、前記櫛歯状光検出部78の櫛歯部材95、および櫛歯端95a,95bを,列方向に沿って前記光検出用孔98を、各担体封入変形容器55行(4個)ごとに順次移動させるとともに、該担体封入変形容器55を上方向に移動させることで、前記粒子状担体14ごとに光ファイバ101で受光することを繰り返して検出を行う。ある検体の遺伝子についての測定結果が図14のステップS4の写真に示されている。この検体の遺伝子については、第1の粒子状担体、第6の粒子状担体および第7の粒子状担体については、非常に弱い発光しか検出されていないことから、この検体の遺伝子ATase exon6のSNPについては、塩基Tであり、遺伝子ATase exon8のSNPについては、塩基A/Gであり、遺伝子CYP2C19 exon5のSNPについては、塩基Aであり、遺伝子CYP2D6 exon1のSNPについては、塩基Tであることがわかる。
【0222】
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解するために具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、前記実施の形態では、主として蛇腹によって変形を行なったが、例えば、蛇腹以外の形状をもつ変形壁面や、ゴム等の弾性体をその変形壁面の素材に使用することによっても実現することができる。また、前記担体封入変形容器の形状も前述したものに限られず、太管部や細管部に段差をもつものであっても良い。
【0223】
また、前記担体封入変形容器の担体封入ヘッドにおける配列は、前述した配列に限定されるものではなく、例えば、4,6,8,12,96,384本を一列状または行列状に配列したものがある。また、前記処理としては、DNAについてハイブリダイゼーションを用いたSNPsの検出についてのみ説明したが、この場合に限られず、例えば、抗原抗体反応を用いたタンパク質の検出等に用いることもできる。また、前記担体封入ヘッドとして、48本の担体封入変形容器に対して1の可動部材を用いたものを2組、96個のウェルを有する4枚のマイクロプレートを用いた処理を行った場合のみを説明したが、この場合に限られることなく、例えば、24本の担体封入変形容器に対して1の可動部材を用いたものを4組、96個のウェルを有する8枚のマイクロプレートを用いた処理を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明に係る担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置および担体封入変形容器処理方法は、種々の生体物質等を含む溶液の処理が要求される分野、例えば、工業分野、食品、農産、水産加工等の農業分野、製薬分野、衛生、保険、免疫、疾病、遺伝等を扱う医療分野、化学若しくは生物学等の分野等、あらゆる分野に関係するものである。本発明は、特に、多数の試薬や物質を用いた一連の処理を所定の順序に連続的に処理を実行する場合に有効である。
【符号の説明】
【0225】
10 担体封入変形容器処理装置
11,27,36,55,103,113,121,134 担体封入変形容器
14,15 粒子状担体
18,59,109,127 蛇腹
70 担体封入ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象となる目的物質について多数の試薬や物質を用いた一連の反応処理を行う場合には、例えば、前記目的物質をビーズ等の微小担体に結合させて試験管に収容する。その後、該試験管に種々の試薬等を注入し、該担体を何らかの方法で分離し、該担体を別容器に移動し、さらに別の試薬等を注入したり、加熱等の処理を行ったりしていた。例えば、該担体が磁性体である場合には、磁場によって、試験管の内壁に吸着させることで分離を行っていた。
【0003】
また、プレパラート等の平面状の担体に、例えば、種々のオリゴヌクレオチドを固定したものを用いて目的物質の検査を行う処理については、該担体自体を、標識化した目的物質が懸濁する懸濁液中に移動させたり、該担体自体に種々の試薬を分注したり、該担体自体を洗浄液中に移動させたり、発光の測定を行うために該担体を測定機の測定位置にまで移動させたりする一連の反応処理を行うことによって、前記目的物質の塩基配列構造を調べていた。
【0004】
これらの処理を行うには、前記担体自体の分離、および担体自体の移送が必要であり、そのため処理が複雑かつ手間がかかるおそれがあるという問題点を有していた。特に、これらの担体自体を移送する場合については、人手で行う場合には使用者に大きな負担をかけ、またクロスコンタミネーションのおそれもあった。また、担体自体を機械によって移送する場合には大掛かりな装置が必要であった。また、非磁性担体の分離を行う場合には、担体の大きさや比重によって分離を行う必要があり、処理が複雑で手間がかかるという問題点を有していた。
【0005】
そこで、試験管または平面状担体を用いるのではなく、液体の通過が可能な液通過路が設けられたピペットチップ、該ピペットチップが装着されるノズル、前記ピペットチップの液通過路に磁場を及ぼす磁力装置と、該ピペットチップ内に流体を吸引し吐出させるためのプランジャの内蔵されたシリンダを用いた吸引吐出機構を有する本願発明者によって発明された分注装置を用いて反応処理を行うものがあった。
【0006】
この方法によると、表面に各種物質が保持された多数の磁性粒子が懸濁する懸濁液を吸引し、吸引の際に磁場を及ぼすことによって、該磁性粒子を効率的にピペットチップの前記液通過路に吸着させて分離等を行うことができるが、磁性粒子が液通過路を通過可能であるため、磁性粒子を前記ピペットチップ内に保持するには磁場をかけて内壁に吸着させておく必要があった。そのために、処理を行うには、吸引吐出制御と、磁場による吸着制御、ピペットチップの移動制御とを組み合わせる必要があった。また、前記担体が非磁性粒子の場合については、該装置によって分離を行うことはできないという問題点があった。
【0007】
さらに、吸引吐出機構としてプランジャを駆動させるシリンダを用いているが、プランジャ等の機構は、注射器のような高精度の加工部品であり、特に、シリンダ内の容積変化は、基本的に分注チップ内の容積変化と一体であり、プランジャと、そのプランジャの駆動装置との接合部に緩みがないように伝達する必要があった。また、それらの吸引吐出機構のノズルと、分注チップ等を、気体や液体の漏れがないように嵌合させる必要があり、製造や品質管理に水密および気密のための精度や構造が要求される。特に、複数の分注チップを集積化して用いる場合に、複数本のノズルを一斉に複数本の分注チップに挿入嵌合させて装着するために大きな力を必要とし、水密および気密用のOリングの磨耗が激しく高度の品質管理が必要となるおそれがあった。
【0008】
前記吸引吐出機構のノズルに、複数本の分注チップを取り替えながら嵌合させて連続して処理を行う場合には、ノズルと分注チップ内の気体や液体との接触によるクロスコンタミネーションを防止する必要があった。
【0009】
さらに、分注チップの吸引吐出を制御するには、分注チップの容量に相当する容量をもつシリンダが必要であるため、大きな体積の液体を扱うには、装置規模が大きくなるという問題点を有していた(特許文献1〜3)。
【0010】
また、プローブ付のビーズを小さな孔に保持し、ついで、キャピラリーあるいは溝に移動させ種類ごとに定められた順番でビーズを配列させてプローブビーズアレイを作製し、または液体フロー中に定められた順番でプローブ付ビーズを流し込み、溝あるいはキャピラリー内に収納し、定められた順番のプローブアレイを作製するものがあった(特許文献4)。
【0011】
さらに、流体サンプル中の多数の分析物を検出してリアルタイムで解析して表示するためのシステムまたは方法として、少なくとも1の光源と、少なくとも1の光検出器を有し、実質的に同一平面上の光学的アセンブリを含み、コンピュータと通信可能であり、コンピュータにより読み出し可能でかつコンピュータの命令を記憶するメモリ媒体が備えられ、該命令がフローサイトメータを用いたある生物学サンプルの処理と、処理ステップと実質的に同時に該生物学サンプル内の関心のある少なくとも1つの分析物の存在と量との決定とを含むものがあった(特許文献5)。
【0012】
しかしながら、粒子は、人間が取り扱うには非常に小さいもの(例えば、数10μmから数mm)であるため、多数の粒子を予め定めた順番で、溝やキャピラリー内に正確に整列させることは手間がかかり取り扱いにくいおそれがあるという問題点を有していた。また、粒子の配列のずれによって、正確な対応をつけることができないおそれがあるという問題点を有していた。また、液体中に懸濁させた状態の粒子をフローサイトメータを用いて高速に移動させ、光検出器で測定する場合には、1粒子1粒子を厳格に追跡して測定する必要があり、装置構造が複雑化しまた複雑な制御を行う必要のおそれがあるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3115501号公報
【特許文献2】国際公開WO96/29602号
【特許文献3】国際公開WO97/44671号
【特許文献4】特開2000−346842号公報
【特許文献5】特表平14−534657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の第1の目的は、生体物質等の各種物質が結合されまたは結合可能な担体を、略静止した状態で変形可能な容器内に封入することで、担体の取り扱いや測定等の処理を効率化、迅速化かつ容易化することができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【0015】
本発明の第2の目的は、変形可能な容器を用いることで、各種物質の移送、反応、その測定等の一連の処理を、変形可能な容器内で一貫して実行することを自動的または手動で行うことを可能にするとともに、該容器内に導入した液体と該容器外のものとの接触によるクロスコンタミネーションを極力防止することができる担体封入変形容器、担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【0016】
本発明の第3の目的は、変形可能な容器を用いることで、比較的装置規模の小さい構成で、大容量(例えば、1ミリリットル(cc)から数10ミリリットル)の液体の前記担体との接触のみならず、通常の容量(例えば、数10μリットルから数100μリットル)の液体の処理を行うことができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【0017】
本発明の第4の目的は、複雑な流体機構を用いることなく変形可能な容器という簡単な構造をもつ装置構成であるにも拘らず、高精度の処理を行うことができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供することである。
【0018】
本発明の第5の目的は、変形可能な容器を用いることで、製造や品質管理に水密または気密等のための精度を要求されず、安価に提供でき、また管理負担を軽減することができる担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置、および担体封入変形容器処理方法を提供できることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の発明は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部と、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部と、前記収容部内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体とを有するものである。
【0020】
ここで、「変形壁面」とは、その変形が可能な可撓性のある壁面であって、その変形によって、その変形壁面の表面積が実質的に変わらない壁面である。言い換えれば、変形の前後でその壁面の表面積が実質上維持される壁面であって、例えば、折り畳まれた壁面が伸びるように変形したり、弛緩した状態にある壁面が緊張した状態に変形する場合である。従って、該変形壁面を組み込んだ壁面においても、その変形によって全表面積は変らない。「壁面の一部」としては、例えば、前記收容部の全壁面の内口部近傍を除く壁面部分であって、該壁面部分と口部との間には、変形しない非変形壁面が設けられる。
【0021】
また、変形壁面の「所定の変形」は、加える変形の程度に応じて実質的に内部容積が定まる変形が好ましい。すなわち、ある変形方向に沿って変形壁面を押しもしくは引き、または力を除去するその各程度に応じて、壁面で囲まれた内部が膨張または収縮して内部の容積が一律に定まることが好ましい。
【0022】
前記変形壁面は、その変形による内部の膨張方向または収縮方向に付勢されていても良い。膨張方向に付勢されている場合には、その膨張方向に逆らって力を加えることで収縮し、力を除去することで膨張方向へ変形することになる。収縮方向に付勢されている場合には、収縮方向に逆らう方向に力を加えることで膨張し、力を除去することで収縮方向へ変形することになる。変形壁面としては、例えば、蛇腹が形成された壁面、またはゴム等の弾性体の面状部材もしくは膜状部材等で形成され、または変形方向に沿った弾性力をもつバネ等を内蔵する壁面等の、可撓性のある面状部材もしくは膜状部材で形成された壁面である。
【0023】
なお、「吸引吐出」とは、吸引または/および吐出を意味する。前記担体封入変形容器の材料は、例えば、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニール、アクリル系等の樹脂、ゴム等の弾性体、その他の可撓性の材料、またはこれらの組合せである。担体封入変形容器は透明または半透明であることが好ましい。非変形壁面には、例えば、ポリプロピレンを用い、変形壁面には、例えば、ポリエチレンを用いる。
【0024】
前記担体封入変形容器の大きさは、例えば、その口部から装着用開口部に沿ったまたは軸方向の長さが数センチメートルから10数センチメートルで、その容積は、その長さに応じて、例えば、数マイクロリットルから数10ミリリットル程度である。吸引吐出量は、その容積に応じて、例えば、数マイクロリットルから数10ミリリットル程度である。
【0025】
「封入」とは、液体の流入および流出可能な口部を有する容器の内部に収容したもの(例えば、担体)が、前記口部を通って容器外に流出しないように保持されることをいう。
【0026】
「略静止状態」とは、担体が収容部内で、測定時において、自由に移動するのではなく、担体相互においてまたは導入された液体に対して、測定可能にほぼ静止している状態にあることをいう。しかし、必ずしも、完全に固定されている必要はない。
【0027】
「所定の物質が結合しまたは結合可能な担体」とは、前記收容部内に封入され、所定の物質が結合しまたは結合可能な固体であって、例えば、多孔質物質、所定の官能基、所定の化合物を保持した樹脂、繊維性物質等の天然物を含む有機物質、金属、半導体、ガラス、シリカ等の無機物からなる。担体の形状としては、例えば、粒子状、線状、棒状、平面状、ブロック状である。また、「所定の物質」とは、DNA、RNA等の核酸、オリゴヌクレオチド等の遺伝物質、免疫物質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、糖鎖等の生体化合物を含む種々の化合物、または細胞や細菌、ウィルス、プラスミド等の生体自体または生体組織を含む。「所定の物質」は、1の種類の場合のみならず、複数種類の場合を含む。該生体化合物は、リガンドとして該生体化合物に結合性を有する受容体としての生体化合物の結合を検出し、捕獲し、分離し、抽出等に用いられる。受容体としては、前記核酸等の遺伝物質、タンパク、糖鎖、ペプチド等に各々結合性を有する核酸等の遺伝物質、タンパク、糖鎖、ペプチド等の生体物質が該当する。また、生体化合物として、または生体化合物の代わりに細胞、ウィルス、プラスミド等の生体自体をも用いることができる。前記担体には、前記所定の物質、例えば、リガンドまたは受容体に対する結合性を有し、または結合性を有すると考えられる物質、例えば、各々、受容体またはリガンドが、固定されていることになる。
【0028】
「結合」は、前記所定の物質の少なくとも1種類を直接的または別種類の物質を介して間接的に前記担体に関係付けることをいう。結合には、例えば、共有結合、化学吸着による場合の他、物理吸着、水素結合、または電気的相互作用による場合等がある。また、該担体に、所定の化学物質が化学的、物理的吸着、該担体に固定して設けられている結合物質との特異的反応、その他の方法で結合されている。また、該担体を、多孔質性部材、凹凸性部材、繊維質性部材で形成することによって、生体物質等との反応能力や結合能力を高めるようにしても良い。
【0029】
「担体」の素材としては、例えば、金属、半導体、半金属、酸化金属等の金属化合物、セラミックス、ガラス、シリカのような無機物質、ゴム、ラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル等の樹脂、セルロース、前述したナイロン等の繊維物質等の高分子物質、絹等の天然繊維等の天然物質のような有機物質がある。より具体的には、例えば、繊維物質を例にとると、「ポリアミド系高分子」からなる、絹等、ナイロン(3-ナイロン,6-ナイロン,6,6-ナイロン,6,10-ナイロン,7-ナイロン,12-ナイロン等)、PPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)等の全芳香族ポリアミド、や、へテロ環含有芳香族ポリマー等である。また、担体として、例えば、繊維状体、多孔質体、ゲル状体であっても良い。
【0030】
結合のためには、前記担体には、官能基を発現または生成するようにする。そのためには、例えば、「ポリアミド系高分子」が有するペプチド結合を加水分解することで、生体物質の結合に用いる官能基を発現または生成させる。生体物質と結合可能な官能基には、例えば、カルボキシル基-COOH、アミノ基-NH2、またはその誘導基がある。ここで、生体化合物の結合に適した多孔の径は、例えば、数マイクロメートル以下である。
【0031】
「担体」は、前記担体封入変形容器内に封入可能な大きさをもち、前記所定物質の結合位置または結合可能位置が、前記担体封入変形容器の外部から特定できる固体である。
該担体は、前記所定の物質が結合しまたは結合可能となるように、その結合位置または結合可能位置を、1の担体の予め定めた位置に間隔を空けて対応させ、または、複数の予め定めた担体に対応させて、例えば、前記結合位置または結合可能位置が、例えば、前記担体封入変形容器の軸方向に沿う一次元座標によって、またはランダムな状態で特定できるように前記容器内に封入する。このような担体の例としては、1個または複数個の粒子状担体、球状担体、線状担体、棒状担体、短冊状担体、平板状担体またはブロック状担体等がある。
【0032】
その場合、これらの担体に固定された物質または担体自体との結合の可能性がある蛍光物質等の発光物質からなる標識化物質によって標識化された所定の物質を含有する溶液を前記チップ状容器内で、前記担体と接触させることによって、これらの生体物質との結合の有無を、各位置での発光を測定することによって測定し、これによって目的とする生体物質の構造、性質、有無を解析することができる。
【0033】
前記変形容器の大きさは、例えば、その口部を通り、前記収容部に囲まれた直線に沿って、前記変形壁面と口部との交点間の長さ、または軸方向の長さが数センチメートルから10数センチメートルで、その容積は、その長さに応じて、数マイクロリットルから数10ミリリットル程度である。
【0034】
第2の発明は、前記収容部は、前記変形壁面で形成された1または2以上の変形部と、該変形部と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ口部と連通して外部から内部を測定可能な非変形部とを有し、前記担体は該非変形部内に封入された担体封入変形容器である。
【0035】
ここで、前記変形壁面で形成された変形部は、外力が印加されて変形がなされる部分であって1の場合のみならず複数ありうる。
【0036】
「外部から測定可能」とは、前記担体保持部に保持されている各粒子状担体の標識化された状態を外部から特定することができることをいう。
【0037】
第3の発明は、前記収容部は、少なくとも2つの前記変形部を有し、各変形部の変形壁面の変形に基づく収容部の最大変化可能量が異なるように形成された担体封入変形容器である。
【0038】
前記少なくとも2つの前記変形部の最大変化可能量の内の1つを、前記担体が封入された細管部の容積または担体が封入された領域の容積に略等しくすることで、担体と接触される必要がある液体、例えば、試薬溶液や、検体懸濁液の液量の必要最小限を各容器内に用意して、該変形部を用いて変形することで担体と効率的に接触させることができる。洗浄液については、他方の変形部を用いて前記担体が封入されている細管部のみならず太管部にまで接触させる。このようにして、少なくとも2種類の異なる容量を持つ液体の吸引または吐出を行なうことが可能となる。特に、手動で扱う場合には、容量の切り換えを、変形部に加える力の大きさを加減するのではなく変形部の選択によって行うことができることになる。
【0039】
第4の発明は、前記最大変化可能量が最も大きい前記変形部または唯一の前記変形部は、前記口部および前記収容部の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と該変形壁面との交点において該直線方向に沿って前記変形壁面が変形可能に形成された担体封入変形容器である。
【0040】
第5の発明は、前記担体は、複数種類の化学物質が結合しまたは結合可能であって外部から識別可能な複数個の粒子状担体または複数組の粒子状担体の集合である担体封入変形容器である。
【0041】
「粒子状担体」とは、前記担体保持部に導入されて保持されることが可能な大きさをもつ粒子状の固体である。通常、該粒子状担体の1または粒子状担体の集合の1組が、そこに結合しまたは結合可能な前記複数種類の化学物質の1種類に対応する。該粒子状担体の大きさは、例えば、差し渡しまたは径が0.1mmから数mmの大きさをもつ。該粒子状担体を封入した空間部分においては、その容量は、封入した該粒子状担体を除いた空間部分が、例えば、数マイクロリットルから数百マイクロリットルの容積である。粒子状担体または粒子状担体の集合を、結合しまたは結合可能な前記化学物質に応じて標識化することによって、封入された粒子状担体またはその集合の配列位置によって識別する必要がない。
【0042】
「粒子状担体の集合」とは、少なくとも2個の粒子状担体が属する粒子状担体の集まりであって、その集合に属する粒子状担体は、予め定めた個数によって、属する粒子状担体間の予め定めた距離によって、粒子状担体が位置する予め定めた範囲によって、または、属する粒子状担体を囲む予め定めた境界、被膜やケースによって特定されている。これによって、あたかも、粒子状担体の集合を1の粒子状担体の如くまとめて取り扱うことも可能である。また、各種物質を固定化する機能をもつ粒子状担体、識別化を行う機能を持つ粒子状担体、その他の粒子状担体(集合間の境界を示すため、または、標識化によって生ずる光等が混在しないように、光等の遮蔽のため)の如く機能を粒子ごとに分散させて取り扱いを容易化し、さらに他の種々の機能を付加することができる。また、粒子状担体の集合であることさえ明瞭に識別することができれば、それに属する粒子状担体の個数を自由に設定することができるので、拡張性、汎用性、多様性がある。
【0043】
第6の発明は、前記複数個の粒子状担体の各粒子状担体または複数組の各粒子状担体の集合に属する少なくとも1の各粒子状担体は、前記化学物質の種類、前記粒子状担体ごと、または前記粒子状担体の集合ごとに応じて、前記収容部への導入前に、相互に識別可能に標識化された担体封入変形容器である。
【0044】
「前記複数個の粒子状担体の各粒子状担体または複数組の各粒子状担体の集合に属する少なくとも1の各粒子状担体は、前記化学物質の種類、前記粒子状担体ごと、または前記粒子状担体の集合ごとに応じて、相互に識別可能に標識化された」のであるから、前記担体保持部に導入保持されることによってアレイを形成して、その位置的な情報から初めて相互に識別可能となる必要はない。
【0045】
「粒子状担体が識別可能に標識化された」とは、粒子状担体自体に識別可能な標識要素を保持し、結合し、または固定されることによって、または、粒子状担体自体が識別可能に加工または形成されていることを意味する。すなわち、標識化の原因が、粒子状担体に存在することを意味し、粒子状担体の配列や位置等のように、標識化の原因が粒子状担体の外に存在する場合とは相違する。例えば、粒子状担体の形状を、球、立方体、円柱、四角柱、円錐、角錐、凹凸を設ける等に形成することによって、粒子状担体の大きさを種々変えることによって、種々の色素を粒子状担体に付することによって、種々の蛍光物質、燐光物質、化学発光物質等の発光物質、種々の波長の赤外線、紫外線、電波を含む種々の波長の電磁波を発する放射物質、種々の磁性強度を持つ磁性体等の標識要素を粒子状担体に設けることによって標識化する。その場合、標識化は、粒子状担体の表面に前記発光物質、各種電磁波放射性物質、磁性体等の標識要素を設ける場合のみならず、粒子状担体の内部に設ける場合を含む。内部に設ける場合としては、粒子状担体が中空に形成され、その中空内にこれらの物質を収容しまたは束ねる粒子状ケースまたは粒子状被膜である場合がある。その場合、発光物質の場合には、該粒子状ケース又は粒子状被膜は透明又は半透明である必要がある。前記粒子状担体は前記担体保持部への導入保持前に既に標識要素を有し又は粒子状担体自体が識別可能に加工または形成されていることになる。
【0046】
なお、前記標識要素としては、測定によって識別可能な予め定めた発光物質等と特異的に反応可能な結合物質であって、未だ該発光物質等と反応していない状態にある結合物質をも含む。このような結合物質の例としては、リガンドと結合した前記発光物質等に対して、前記リガンドに結合性を有する受容体がある。この標識要素は、潜在的には標識化がなされており、予め定めた前記発光物質等と反応させることで、標識化が顕在化されることになる。したがって、この標識要素を用いることで粒子状担体は、担体保持部に導入前に、潜在的に相互の識別可能に標識化されており、導入後の反応によって前記標識化顕在化するような場合も、導入前に標識化されていることに含まれる。
【0047】
これによって、相互に識別された粒子状担体は、位置識別可能に配列し、または、粒子状担体を順序を含めて移動させることなく、各粒子状担体または各粒子状担体の集合を識別することによって、該粒子状担体に固定されまたは固定可能な各種物質を認識することができる。したがって、例えば、該各種物質と反応または結合する別方法で標識化された目的物質の懸濁液と前記粒子状担体とを接触させることによって、目的物質の標識化と粒子状担体の標識化との組合せにより、前記目的物質が結合した各種物質を特定することができる。
【0048】
すなわち、本発明によれば、各粒子状担体は、各種物質との対応関係をもった位置または順序に配列したアレイを構成することなく、無作為、自由、任意の、または不規則的な位置または順序に保持することでも、該粒子状担体が固定しまたは固定可能な各種物質を認識させることができる。
【0049】
第7の発明は、前記担体は、複数種類の化学物質が外部から識別可能な予め定めた複数の異なる位置に結合しまたは結合可能であって、線状、棒状、平板状もしくはブロック状に形成された担体封入変形容器である。「ブロック状」には、球状、円筒状、立方体状、直方体状、角柱状等も含む。
【0050】
ここで、前記担体は、可撓性のある場合または非可撓性の場合がある。これらの担体は、前記担体封入変形容器内に封入部を用いて封入される。該封入部として、これらの担体を前記担体封入変形容器に吸引した液体と接触可能となるように取り付けて、前記口部からの流出を防止するための取付具を設けるようにしても良い。通常、前記担体上の予め定めた各位置に結合しまたは結合可能な化学物質は、前記複数種類の内の1種類である。
【0051】
第8の発明は、前記非変形部は、内部に液体を貯留可能な太管部、それよりも細い細管部または薄い薄層部、および前記太管部および前記細管部または前記薄層部と連通し前記太管部と前記細管部または前記薄層部との間に設けた移行部とを有し、前記口部は、前記細管部または薄層部と連通して設けられ、前記担体は、前記細管部もしくは前記薄層部のいずれかに封入された担体封入変形容器である。
【0052】
この場合、前記粒子状担体を前記細管内に1列に、または薄層部に1層に保持されるようにすれば、前記細管に沿って前記粒子状担体を走査することによって、または、前記薄層全体を平面的なイメージとして一括して捉えることによって、より一層測定が容易である。ここで、1列または1層であるので、前記細管の径または軸方向に垂直な断面、または、薄層部の厚さまたは法線方向の断面は、前記粒子状担体が軸方向に沿ってすれ違うことができないかまたは軸方向に垂直方向に2個以上並ぶことができない。または、前記粒子状担体が法線方向に沿って2個以上並ぶことができないような形状または大きさをもつ必要がある。すなわち、該粒子状担体の該液よりも大きく、かつ、その外径の2倍よりも小さい内径または幅および長さを持つ細管、または、その外径の2倍よりも小さい暑さを持つ薄層部を有するようにする。
【0053】
すると、細管部または薄層部に封入した各粒子状担体を、前記列に沿って走査して測定して、または一括して測定することができる。このような粒子状担体の外径は、例えば、約0.1mmから3mm程度であり、前記細管は、例えば、約0.2mmから6mm程度の内径をもたせる。
【0054】
細管部、太管部は直線状に限られず、曲線状であっても良い。例えば、口部と装着用開口部とを結ぶ軸の周りの円筒に沿って回旋し、又は平面内で渦巻き状に回旋する螺旋状であったり、湾曲していたり、または、U字状部分を有していてもよい。細管部、太管部は、流体の流れ方向に垂直方向の断面が円形又は環状の場合のみならず、内壁の断面が、例えば、四角形状であっても良い。保持されるべき粒子状担体が球状である場合には、四角形の頂点が流体が通過可能な溝としての役割を果たす。また、薄層部は平面状に限られず、曲面状であっても良い。なお、前記担体が封入された細管部の内、流体を収容可能な空間の容積は、たとえば、数マイクロリットルから数百マイクロリットル程度である。
【0055】
第9の発明は、前記口部から前記収容部内に流入した流体と接触可能な状態で前記収容部内に前記担体を封入する封入部を有する担体封入変形容器である。
【0056】
ここで、「封入部」の例としては、口部が前記担体が通過可能な大きさをもつ場合に、流体は通過可能であるが前記担体は通過不能であるように、該保持部に対して別体に、前記収容部を前記流体の流れ方向に対して仕切るように設けた1または2以上の担体通過阻止部材を有するものがある。
【0057】
「担体通過阻止部材」としては、前記担体封入変形容器とは別体の部材によって形成したものである。該担体封入変形容器の壁等、該担体封入変形容器の壁等を加工したものとの双方を組み合わせて用いたものであっても良い。前記担体通過阻止部材は、容器の内壁面との間に隙間を形成することによって流体が通過可能であるが、その貫通孔または隙間の大きさは粒子状担体が通過できない大きさまたは形をもつものである。例えば、車輪状、十字状、一文字状、放射状、網状、若しくは環状に細管を仕切るように設けた部材、貫通孔を有する貫通性多孔質部材である。貫通性多孔質部材の場合にはポア径よりも大きいサイズを持つ種々の粒子状担体について確実に封入することができる。前記「貫通性多孔質部材」としては、何らかの物質を吸着等により捕獲するフィルタである必要はない。しかし、該封入部がフィルタ、メンブレン等の薄膜状フィルタである場合には、口部からの前記担体の流出を防止するのみならず、所定の物質を捕獲することができる。なお、封入部を担体封入変形容器とは別体に設けた場合には、流体の流れ方向が薄い薄板状若しくは薄膜状に形成した部材を用い、または担体が流出しない条件でポア径の大きい貫通性多孔質部材を用いる。前記担体通過阻止部材の個数は、前記粒子状担体が、前記口部からの流出を防止するためには、該粒子状担体を口部側において少なくとも1箇所に設けるのが好ましい。
【0058】
また、別体に設けた前記担体通過阻止部材を着脱自在に設けることによって、前記担体の封入および抜出を容易に行うことができる。
【0059】
また、封入部として担体封入変形容器を、かしめることによって加工して設けた場合には、担体が流出しない条件で開口部分を大きくすることによって、吸引吐出に必要な圧力を低減することができる。担体封入変形容器そのものを用いたものとしては、前記細管を絞るように細めるために、管の中央方向に突出する突起部を設けたものや、流体の流れ方向に対して仕切るように前記保持部の壁面を突出させた1または2以上の突出部を有するものや、短管状のストッパー等を用いる場合がある。
【0060】
これによって、粒子状担体を加工することなく、前記担体封入変形容器を加工、変形することによって、粒子状担体を確実に封入することができる。
【0061】
第10の発明は、前記封入部は、前記担体を前記収容部内に導入可能となるように該収容部の壁面に穿設された導入孔、および、該導入孔を塞ぐ蓋部を有する担体封入変形容器である。
【0062】
この場合、前記導入孔の大きさは、前記口部の大きさよりも大きく形成するのが好ましい。これによって、前記口部を通過不可能な担体を前記収容部内に封入することができる。
【0063】
第11の発明は、前記非変形部の内、前記担体が封入された部分が着脱自在に取りつけられた担体封入変形容器である。
【0064】
これによって、担体の封入が該部分を、担体封入変形容器本体に取り付けることによって容易に行なうことができる。
【0065】
第12の発明は、前記変形壁面には、蛇腹が形成されている担体封入変形容器である。ここで、「蛇腹」とは、所定の変形方向を略垂直に横切る方向に沿って形成された山および谷を有する波または襞が形成された面状部材または膜状部材であって該山および谷で折れ曲がり可能なものをいう。前記変形方向を軸とする筒状に囲む壁面に、蛇腹が形成された前記面状部材または膜状部材を用いる場合には、前記波または襞の形状としては、前記変形方向に垂直な直線状または該変形方向に垂直な平面内に含有される円周状または閉曲線状(曲線には直線も含む)の山および谷からなる。
【0066】
前記蛇腹は、例えば、前記収容部の全壁面を、蛇腹の変形方向を横切って2つに仕切るように形成される。したがって、前記変形方向は、蛇腹の波形または襞の各山または各谷が含まれる各平面の各法線方向に略一致する。
【0067】
第13の発明は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部、および、前記收容部内に収容された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を有する1または2以上の担体封入変形容器と、1または2以上の前記担体封入変形容器を前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように支持し、該担体封入変形容器の前記変形壁面を変形させることによって、該担体封入変形容器に対する液体の吸引吐出を行う1または2以上の担体封入ヘッドとを有する担体封入変形容器処理装置である。
【0068】
ここで、「前記担体封入変形容器を前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように支持し」は、前記担体封入変形容器を、前記変形壁面の変形によって口部の位置および形状が実質上変動しないようにヘッドに取り付けることである。これは、シリンダ方式の分注チップのように吸引吐出の際に摺動するプランジャと口部とが部材として独立して形成されているのではなく、この担体封入変形容器では、吸引吐出の際に変形する変形壁面と口部とが部材として連続しているからである。例えば、該担体封入変形容器の該ヘッドへの取付位置または固定位置等の支持位置は、前記口部と前記変形壁面との間に設けた変形壁面以外の変形しない非変形壁面である。前記口部は下方に向くように支持するのが好ましい。
【0069】
第14の発明は、種々の溶液、懸濁液等の液体を収容可能な複数の容器を有する容器群と、前記担体封入ヘッドを該容器群に対して相対的に移動させるヘッド移動部とをさらに有するとともに、前記容器群に設けられた各容器は、前記口部を一斉に挿入可能に設けられた担体封入変形容器処理装置。
【0070】
第15の発明は、前記容器はウェルであり、前記容器群は前記ウェルがマトリクス状に配列された少なくとも1のマイクロプレートであり、前記担体封入ヘッドの前記担体封入変形容器はマトリクス状に配列され、前記担体封入ヘッドに設けられた全前記口部は、前記マイクロプレートの全部または一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、対応する前記ウェルの行間隔または列間隔の自然数倍に各々設定され、対応する全前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1である担体封入変形容器処理装置である。
【0071】
ここで、「マトリクス状」とは、列方向および行方向の2方向に沿って要素、例えば、ウェルまたは担体封入変形容器の口部等が所定の行間隔および列間隔で各々所定の行数個および列数個配列された構造をいい、前記行数および列数は各々2以上である。なお、前記列方向および行方向は、通常直交しているが必ずしもこれに限定されずに斜交していても良い。また、各隣接する行または列間で、例えば、列間隔の半分または行間隔の半分の距離だけ配列をずらせて要素が互い違いとなるようにして、最蜜状に配列するような場合も含む。「行間隔」とは、マトリクス状に配列された1の要素が設けられた行と、列方向に隣接する要素が設けられた行との列方向の距離であり、「列間隔」とは、マトリクス状に配列された1の要素が設けられた列と、行方向に隣接する要素が設けられた列との間の行方向の距離をいう。
【0072】
「全前記口部は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられて」いるので、一般には、ウェルのマトリクスよりも口部のマトリクスの方が行数または列数は小さく、口部のマトリクスとウェルのマトリクスとは、その行方向および列方向のなす角は同一であり、口部のマトリクスの行間隔または列間隔は、そのウェルのマトリクスの行間隔または列間隔の自然数倍である必要がある。
【0073】
「前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、対応する前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に各々設定され、対応する前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1」としているので、マイクロプレート内には、口部のマトリクス状配列と同一の配列をもち、相互に重複しない少なくとも自然数個分(>1)のマトリクス状のウェルの配列(以下「ウェル部分行列」という)が存在することになる。しかも、1のウェル部分行列内に属する任意のウェル要素と、それに隣接するウェル部分行列に属する対応する1のウェル要素同士は、マイクロプレート内で互いに隣接するウェル同士の距離以上は離れていないことになる。
【0074】
これによって、担体封入ヘッドの全口部が一斉に挿入可能な独立のウェル群が2以上あるにも拘らず、前記担体封入ヘッドにほぼ相当する面積をもつ1のマイクロプレート内に作業面積を限定することができるので、前記作業面積をいたずらに拡大することがない。また、ノズルヘッドのウェル部分行列間の移動は、せいぜい行間隔または列間隔の距離分の移動を少なくとも(自然数回(>1)−1)回繰り返すことで、マイクロプレート内の全ウェル部分行列に担体封入ヘッドの全口部を挿入可能に位置させることができる。
【0075】
なお、自然数は、2以上であるので、少なくともマイクロプレートのウェル行数または列数のいずれかはこの自然数(>1)を約数にもつ数でなければならない。例えば、4行×12列のマトリクス状のウェルを配列したマイクロプレートに対して、列間隔を3倍に設定した列間隔をもつ口部が配列された担体封入ヘッドについては、自然数は「3」に相当することになり、口部の列数は、ウェルの列数である12列の「3」分の1の4列となる。このように、ウェルの列数12は、「3」を約数にもつことになる。
【0076】
第16の発明は、制御部をさらに有し、該制御部は、前記移動手段に対して、全前記口部が前記マイクロプレートの対応する第1のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させた後に、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させて全前記口部を前記マイクロプレートの対応する第2のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させる担体封入変形容器処理装置である。
【0077】
ここでは、「第1のウェル部分行列」と「第2のウェル部分行列」とを有する場合についてのみ記述したのは、ウェル部分行列の数は、少なくとも前記自然数個(n>1)であるからである。また、前記マイクロプレートのウェルが、通常のマトリクス状の配列を持つ場合には、該マイクロプレートのウェルの行間隔または列間隔の距離分を対応する列方向または/および行方向に沿って、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間での相対的な移動を少なくとも自然数回(n>1回)行なうことでマイクロプレート内の全ウェル部分行列に前記全口部を一斉に挿入可能である。
【0078】
口部の行間隔および列間隔の双方が、前記ウェルの行間隔および列間隔の各々自然数倍(n>1)および自然数倍(m>1)された物である場合には、ウェル部分行列の数は、その1枚のマイクロプレート当たり、全部でnmである。
【0079】
第17の発明は、前記担体封入ヘッドの移動経路に沿った各ウェル部分行列には、処理の各工程で必要とする溶液または懸濁液等の液体が該工程の順序に応じて収容された該工程の順序に応じて収容された担体封入変形容器処理装置である。
【0080】
ここで、「移動経路」とは、前記全ウェル部分行列に順次前記担体封入ヘッドを平行移動させる際に通過する経路であって、移動経路に沿った距離が最も短い経路が好ましい。したがって、処理工程に応じた順序に各ウェル部分行列を選択して必要な試薬等の溶液等を収容する。また、例えば、前記同一のウェル部分行列に属するウェルには相互に同一種類または同一量として取り扱うべき溶液または懸濁液が収容され、異なるウェル部分行列に属するウェル間では、相互に異なる種類または異なる量として取り扱うべき溶液または懸濁液が収容される。これは、同一の担体封入ヘッドに設けられた各担体封入変形容器の吸引吐出の動作は連動しており、実質的に同等であるからである。または、大容量の液体を扱う場合には、異なるウェル部分行列に属するウェル間でも、同一の種類の溶液または懸濁液が収容される場合もありうる。
【0081】
第18の発明は、前記制御部は、前記担体封入ヘッドに設けられた同一の口部が挿入可能な前記マイクロプレート内の各ウェル群に属する全ウェルに対して前記口部が挿入可能な状態に位置するように前記担体封入ヘッドを順次移動させる担体封入変形容器処理装置である。
【0082】
該各ウェル群には、前記各ウェル部分行列に属するウェル要素が各々1ずつ重複せずに含まれている。したがって、各ウェル群に属するウェルの要素数は、1のマイクロプレート内に存在するウェル部分行列の個数に等しい。すなわち、これによって、全ウェル群における該当する各ウェルに対して、前記各担体封入変形容器の口部が同時に挿入可能な状態となっている。各ウェル群に属するウェルの個数は、少なくとも前記自然数個(n>1)である。前記担体封入変形容器の口部の行間隔と列間隔の双方で前記ウェルの行間隔と列間隔が各々自然数倍(n>1,m>1)された場合には、各ウェル群に属するウェルの個数は、nmである。なお、その各口部のウェル群内の移動経路は、該ウェル群内の全ウェル要素を処理工程の順序に従って通過するような経路であり、最も短い距離であることが好ましい。
【0083】
なお、前記担体封入ヘッドに設けられた同一の口部が挿入可能な前記マイクロプレート内のウェル群を相互に仕切る隔壁が前記マイクロプレートの上面に突出して設けられるようにするのが好ましい。
【0084】
これによって、例えば、処理の対象となる多数の異なる検体については、各々隔壁で仕切られた状態で処理を行なうことができるので、一旦隔壁で囲まれた領域内に移動すれば、前記口部が隔壁を超えて移動することなく処理を行うことができる。
【0085】
さらに、前記担体封入ヘッドの台数、およびマイクロプレートの枚数は、各々少なくとも前記自然数台および前記自然数枚になるものである。その際、各担体封入ヘッドの動作を連動させるように設けまたは制御することができる。
【0086】
第19の発明は、前記担体封入ヘッドには、前記収容部内に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記収容部に対して接離可能に設けた2以上の磁石を有する磁力手段が設けられた担体封入変形容器処理装置である。ここで、通常、磁場を及ぼす場合というのは、担体である磁性粒子が前記担体封入変形容器内に収容されている場合か、前記担体封入ヘッドに前記担体封入変形容器に代えて分注チップが装着されている場合である。
【0087】
なお、前記磁力手段としては、例えば、前記行列状に配列された前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定された行間隔または列間隔をもつ口部行または口部列の間に、行方向または列方向に沿って相対的に移動可能に設けられ、前記行方向または前記列方向に沿って伸びかつ前記口部行間または口部列間に挿入可能な幅に設けられた、例えば、前記担体封入変形容器の(行数−1)本または(列数−1)本の櫛歯部材と、該櫛歯部材の一端で連結した支持部材とを有し、前記各櫛歯部材には、前記各担体封入変形容器に対応する位置に前記列間隔または行間隔で配列された列数個または行数個の磁石が設けられたものである。前記担体封入変形容器に磁場を及ぼす場合には、前記全磁石が各担体封入変形容器の全てに最短の距離にくるように移動させ、磁場を除去しまたは弱める場合には、該全磁石を担体封入変形容器が配列されたヘッドから完全に撤退するか、または、前記各磁石が担体封入変形容器の所定間隔の中間の所定位置にくるように移動させるようにしても良い。なお、櫛歯部材の本数としては、前述した場合の他に、1の櫛歯部材に配列された磁石がその両側に配列された各2個の担体封入変形容器に影響を与えるようにすれば、櫛歯部材の本数は前記本数の半分程度で済むことになる。
【0088】
第20の発明は、前記担体封入ヘッドには、前記収容部内の状態を検出する光検出手段をさらに有する担体封入変形容器処理装置である。したがって、前記担体封入変形容器の少なくとも前記非変形部等は透光性部材で形成される必要がある。「液体の状態」には、液体の有無、液体の吸引量または吐出量を含む。
【0089】
なお、前記光検出手段としては、例えば、前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定された行間隔または列間隔を持つ銭担体封入変形容器の口部行または該口部列の間に、行方向または列方向に沿って相対的に移動可能に設けられ、前記行方向または列方向に沿って伸びかつ前記口部行間または口部列間に挿入可能な幅に設けられた、例えば、前記口部の(行数−1)本または(列数−1)本の櫛歯部材と、該櫛歯部材の一端で連結した支持部材とを有し、前記各櫛歯部材には、各々1の光検出部が設けられたものである。
【0090】
第21の発明は、前記光検出手段は、前記收容部の前記非変形部の外部に、該非変形部の周囲を取り囲むように該非変形部に近接して配置された、1または2以上の受光端子、または1または2以上の受光端子および少なくとも1の照射端子を有し、前記非変形部の内粒子状担体を収容可能な全域を走査するように前記非変形部に対して相対的に移動可能である担体封入変形容器処理装置である。
【0091】
ここで、「前記非変形部に対して相対的に移動可能である」ので、前記非変形部を移動させる場合と、前記光検出手段を移動させる場合、双方を移動させる場合がある。
【0092】
第22の発明は、前記担体封入ヘッドは、前記口部および前記收容部の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と該変形壁面との交点において該直線方向に沿って前記変形壁面を変形させる担体封入変形容器処理装置である。
【0093】
第23の発明は、前記担体封入ヘッドは、前記2以上の担体封入変形容器を支持可能な担体収容器支持部と、前記担体封入変形容器の前記変形壁面の所定変形方向に沿って一斉に進退動作可能な可動部材とを有する担体封入変形容器処理装置である。
【0094】
第24の発明は、前記変形壁面の変形、および/または、前記担体封入ヘッドと前記容器群との間の移動を、前記担体封入変形容器の個数もしくは構造、吸引吐出すべき液体、そこに含まれる物質、その量、その収容位置、その温度、もしくはその濃度、処理内容、または指示に基づいて制御する制御部を有する担体封入変形容器処理装置である。
【0095】
第25の発明は、前記変形壁面の変形について所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして、前記変形壁面の変形の制御が行われる担体封入変形容器処理装置である。
【0096】
ここで、「所定基準位置」は、処理で扱う液体量、使用する担体封入変形容器の容量、処理の内容、または担体封入変形容器の加工精度等によって定める。
例えば、処理で扱う液体量が微小量(例えば、数μリットルから数100μリットルのオーダの場合)であったり、使用する担体封入変形容器の容量が小さい場合、処理に精度を要する場合、または担体封入変形容器の加工精度が高くない場合には、基準位置としては、既に担体封入変形容器を所定の変形を加えた状態の可動部材または変形壁面の変形方向に沿った位置を基準にする。これによって、精度の高い制御を行うことが可能である。この場合には、例えば、予め定めた最大の変形量による前記担体封入変形容器内への液体の予め定めた最大吸引量の全てを吐出することができるように設定するのが好ましい。これによって、担体封入変形容器からの液体の吐出による前記担体封入変形容器内への液体の残留を防止することができる。
【0097】
例えば、予め設定された担体封入変形容器の内部の容積をV0とし、該状態に相当する可動部材または変形壁面の位置を基準として、担体封入変形容器の変形による予め定めた最大の内部容積V1、担体封入変形容器の変形による予め定めた最小の内部容積V2とした場合に、前記担体封入変形容器内への液体の予め定めた最大吸引量V1−V0が、予め定めた最大吐出量V0−V2よりも小さい関係、すなわち、V1−V0≦V0−V2、すなわち、(V1+V2)/2≦V0の関係となるように基準位置を設定するのが好ましい。
【0098】
ここで、「予め定めた最大の変形」であるので、必ずしも物理的に最大の変形でなくてもよい。「最大吸引量の全てを吐出することができる」のであるから、「最大吐出量」は「最大吸引量」と同一かそれよりも大きい量をもつ必要がある。これによって、前記担体封入変形容器内への液体の残量を気にせずに処理を行うことができる。
【0099】
一方、扱う液体の量が大きい場合(たとえば、数ミリリットルのオーダの場合)処理に余り精度を要しない等の場合には、担体封入変形容器の変形がされていない非変形状態の位置を基準にして制御することが可能である。そのような場合としては、例えば、未だ可動部材が担体封入変形容器に接触していない状態で、かつその変形方向に沿った位置(例えば、前記チップから1ミリメートル離れた位置)を基準位置に取るような場合である。
【0100】
第26の発明は、前記口部は下端に設けられ、前記收容部は該口部の上方に設けられ、該収容部を囲む壁面の一部に、その内壁面を上下に仕切るようにして上下方向に変形可能な変形壁面を設け、前記收容部の上端と前記可動部材とが接触または接続可能に設けられた担体封入変形容器処理装置である。
【0101】
第27の発明は、前記収容部は、前記可動部材と接触または接続可能であって可動部材によって変形可能な変形壁面を有し気体を収容可能な変形部と、該変形部と連通し変形がされない非変形壁面で形成され先端に前記口部を有し液体を貯留可能な非変形部を有する担体封入変形容器処理装置である。
【0102】
第28の発明は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部、および前記収容部内に収容された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を有する2以上の担体封入変形容器を、前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように担体封入ヘッドに支持させる支持工程と、該担体封入ヘッドを移動する移動工程と、前記口部を容器群内の容器内に挿入して前記変形壁面を一斉に変形させる変形工程とを有する担体封入変形容器処理方法である。
【0103】
第29の発明は、前記変形工程は、前記変形壁面の変形について所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして前記変形壁面の変形を行う担体封入変形容器処理方法である。
【0104】
第30の発明は、前記口部は下端に設けられ、前記変形壁面は、前記収容部を囲む壁面の一部に上下方向に変形可能となるように設けられ、前記収容部は、前記口部の上方に設けられ、前記変形壁面を有し気体を収容可能な変形部と、該変形部と連通し前記変形壁面を有せず前記口部を有して液体を貯留可能な非変形部とを有し、前記変形工程は、前記収容部の上端面に可動部材を接触しまたは接続させる工程と、前記可動部材を下降させおよび/または上昇させる工程を有する担体封入変形容器処理方法である。
【0105】
第31の発明は、前記可動部材の上昇および下降は、前記変形壁面の変形を行う上下方向に沿った所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして行う担体封入変形容器処理方法である。
【0106】
第32の発明は、前記液体には、所定物質を結合可能または所定物質と結合した磁性体が懸濁し、前記収容部または前記容器群の容器内に対して磁場を及ぼすことによって前記磁性体を前記収容部または前記容器の内壁に吸着させて分離する工程を有する担体封入変形容器処理方法である。
【0107】
第33の発明は、マトリクス状にウェルが配列されたマイクロプレートと、流体の吸引および吐出が可能でマトリクス状に配列された担体封入変形容器の口部を有する1または2以上の担体封入ヘッドとを有し、前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定され、対応する前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1である前記担体封入ヘッドを前記マイクロプレートに対して相対的に移動させて前記マイクロプレート内の第1のウェル部分行列に属するウェルに前記各担体封入ヘッドに設けられた全口部を一斉に挿入可能に位置させる第1の工程と、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させて前記全口部を前記マイクロプレート内の対応する第2のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させる第2の工程とを有する担体封入変形容器処理方法である。
【0108】
ここで、「第1の工程」と「第2の工程」とを有する場合のみを記載したのは、ウェル部分行列の数は、少なくとも前記自然数個(n>1)であるからである。したがって、口部の行間隔および列間隔の双方が、前記ウェルの行間隔および列間隔の各々自然数倍(n>1)および自然数倍(m>1)されたものである場合には、ウェル部分行列の数は、その1枚のマイクロプレート当たり、全部でnmであるのでその工程数はその1枚のマイクロプレート当たり、全部でnmである。
【0109】
また、通常のマトリクス状の配列の場合には、前記マイクロプレートのウェルの前記行間隔または列間隔の距離分を対応する列方向または行方向に沿って、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的な移動を少なくとも自然数回(n>1)行なうことでマイクロプレート内の全ウェル行列に前記全口部を一斉に挿入可能である。
【0110】
なお、前記第1の工程では、処理を実行するには、前記口部を各ウェルに挿入させて吸引または吐出する工程および該ウェルから前記口部を抜出する工程を有するようにする。また、第2の工程においても、第1の工程と同様に、挿入工程、吸引吐出工程または抜出工程を有するようにする。なお、必要な工程数は、少なくとも設定した前記自然数(n>1)に応じて定まり、少なくとも前記自然数回の工程を有する。
【発明の効果】
【0111】
第1の発明、第13の発明または第28の発明によれば、生体物質等の各種物質が結合されまたは結合可能な担体を、変形可能な変形容器内に略静止状態で封入し、該変形容器を力学的に変形させることで、液体を吸引しかつ吐出することができる。したがって、シリンダ等の複雑な液体または気体を流す管路等の流体力学機構を用いずに、流体の前記変形容器内への吸引、流体と前記担体との接触、吐出を可能として取り扱いやすく、手動によって、または簡単な構造の装置を用いて、安価にかつ容易に製造しかつ処理を行なうことができる。
【0112】
また、前記壁面の全内表面積を変えることなく変形壁面を変形させることで、吸引、吐出等の液体の処理を行なうようにしているので、該壁面を構成する部材間の嵌合、摺動等を必要とせず、高い加工精度を要求されることなく、完全な水密性および気密性を得て、信頼性の高い処理を行なうことができる。
【0113】
また、所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を口部を有する前記収容部内に封入したままで液体を吸引吐出することと、前記担体封入変形容器を移動することだけで、種々の処理、例えば、反応、洗浄、温度制御、分離、攪拌、分注、清澄、単離、溶出、抽出を行なうことができるので、処理を効率的、迅速かつ容易に行なうことができる。
【0114】
さらに、本発明によれば、担体に結合させた所定の物質との反応から測定までを、口部しか開いていない担体封入変形容器内に封入したままで行うことができるので、目的とする処理を一貫して、前記所定の物質が他の部材や人手に触れることなく、行なうことができるので、クロスコンタミネーションを防止して、高い信頼性で、確実に行なうことができる。また、流体のスピード、扱うべき液量に適した形状をもつように、担体封入変形容器を選択することによって、種々の処理に対応させることができるので、汎用性、多様性がある。
【0115】
また、本発明によれば、担体を略静止状態で保持するものであるため、流体力を加えて動かすものではないので、複雑な同期制御等を行なうことなく簡単な制御で、担体の取り扱いや測定を容易化することができる。
【0116】
第2の発明によれば、担体は非変形壁面で囲まれているので、変形による担体への悪影響を避けることができるとともに、外部から安定した状態で測定を行うことができるので信頼性が高い。
【0117】
第3の発明によれば、収容部に少なくとも2種類の異なる容量を持つ液体の吸引吐出を変形部に加える力の大きさを加減することではなく、変形部の選択によって確実に行なうことが可能となる。特に、手動で少量の液体および大量の液体の双方について予め定め他量を各々確実に吸引および吐出を行なうことができるので信頼性が高い。
【0118】
第4の発明によれば、通常、前記担体封入変形容器は、前記口部を下側に向けて下側から支えるように固定して使用することになるので、変形を上下方向に沿って行なうようにすれば、変形による口部の変動を容易かつ確実に防止することができる。
【0119】
第5の発明によれば、粒子状担体または粒子状担体の集合は、同一の粒子状担体を一貫して用いて、各種物質の固定、反応、その測定等を行うので、一連の処理を一貫して自動的に行なうのに適している。
【0120】
第6の発明によれば、前記粒子状担体に保持されている各種物質を、該粒子状担体に対応付けられた位置に基づいて識別するものではないので、各粒子状担体を各位置に厳密に固定しまたはその順序を厳密に維持し、厳密に測定する必要がない。また、流体力を加えて動かすものではなく、略静止状態で保持するものであるため、複雑な同期制御等を行なうことなく簡単な制御で、各粒子状担体の取り扱いや測定を容易化し、高精度化することができる。
【0121】
本発明によれば、各種物質が結合されまたは結合可能な複数の粒子状担体については、それを保持する収容部に、位置や順序を予め定めることなく簡単に導入しかつ保持することができる。したがって、粒子状担体事態に対する固定処理当の処理を前記収容部とは異なる場所で用意に実行することができるので、処理の効率化、処理の信頼性、処理の確実性を高めることができる。
【0122】
本発明によれば、各種物質が結合されまたは結合可能な複数の粒子状担体を保持前に予め標識化し、該粒子状担体を略静止状態に任意の位置に保持して測定することで、標識物質の有無を測定することで足り、細かい位置座標の測定を行う必要がないので測定が用意である。
【0123】
さらに、本発明によれば、複数の粒子状担体を有する粒子状担体の集合ごとに、標識化することができる。したがって、その集合に属する粒子状担体については、各種物質を固定しまたは固定可能な粒子状担体と、標識化に用いる粒子状担体とを、異ならせることで、粒子状担体ごとに異なる機能を分担させることができる。したがって、標識化、固定化当各粒子状担体ごとに機能を特化することができるのでより高精度の処理を行なうことができる。
【0124】
また、前記粒子状担体の集合に属する粒子状担体の個数を自由に設定することで、種々の標識化を行なうことができるので、拡張性、多様性または汎用性がある。
【0125】
第7の発明によれば、前記複数種類の化学物質は、1の担体上の複数位置に結合しまたは結合可能であるので、該複数位置を、そこに結合しまたは結合可能な化学物質、例えば、一定の間隔、一定の方向等の規則的な配列を行うことで、前記各位置の化学物質を、容易にかつ確実に特定することができる。
【0126】
第8の発明によれば、前記担体を前記細管部または薄層部に封入するようにしているので、例えば、粒子状担体を細管部や薄層部に1列にまたは1層に並べるように保持することによって、各粒子状担体を1次元的または2次元的に保持させて、確実に測定することが可能となる。また、細管部や薄層部に沿って走査するように測定することで、測定を容易化することができる。
【0127】
さらに、細管部に沿って流体を導入し、排出するようにすれば、流体との接触を確実に行なうことができる。また、細管部であれば外部に設けた種々の容器に挿入することができるので、液体の吸引、吐出に都合が良い。また、本発明によれば、粒子状担体と流体とを常に接触可能な状態で処理することができるので、処理の効率性が高い。
【0128】
第9の発明によれば、前記口部から前記収容部内に流入した流体と接触可能な状態で前記収容部内に前記担体を封入する封入部を設けることで、予め容器内に担体を封入した状態で製造する場合に比較して、担体の封入を容器製造の後に封入部を用いて行なうことができるので、製造が容易である。
【0129】
第10の発明によれば、前記担体を、収容部に設けた導入孔を通して導入し蓋部で密封することができるので、前記口部から担体を導入する必要がなく口部として担体が通過しない大きさに形成することによって、担体の封入を確実に行うことができる。また、前記導入孔より前記担体を除去するようにすることができる。
【0130】
第11の発明は、非変形部の内、前記担体が封入された部分を着脱自在に取り付けることによって、前記収容部への担体の導入を容易化することができる。そのような部分を予め複数種類用意することで、処理を効率的に行なうことができる。
【0131】
第12の発明は、前記変形壁面として蛇腹を設けたものである。これによって、簡単な構成で、大きな変形率を持つ壁面を形成することができる。また、剛性のある部材で形成することができるので壊れにくい。さらに、変形により折り曲がる箇所および方向が定まっており、変形の規則性、または変形による定型性が高い。
【0132】
第14の発明によれば、変形方向に沿って、移動させる処理対象の気体液体と接触しない力学的な機構のみを用いることで、吸引、吐出、移送等の液体の処理を可能にするので、液体と接触可能な部分が前記担体封入変形容器内の閉空間と容器のみにほぼ限られるので、コンタミネーションを確実に防止することができる。
【0133】
さらに、前記担体封入変形容器を、その口部が変形壁面の変形の為に加える力によっては変動しないように支持しているので、担体封入変形容器を用いて正確な位置制御を行なうことができ、多数の容器を密接して配列することによって迅速かつ効率的な処理を行なうことができる。
【0134】
第15の発明によれば、担体封入変形容器を、その口部が変形壁面の変形の為に加える力によっては変動しないように支持し、また、複数の担体封入変形容器を一斉に同一の条件で変形することが可能なので、正確な位置制御や再現性の高い吸引吐出制御を行うことができる。また、担体封入変形容器を用いても、多数の処理を並行して行うことができて効率的であり、多数の容器を密接して配列した場合であっても、信頼性の高い処理を行うことができる。
【0135】
前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、対応する前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍となっているために、1の口部に対してウェルを2個以上対応させることができる。したがって、マイクロプレートを新たに設けることなく、1のマイクロプレート内において、2種類以上の溶液等を収容することができるので、作業面積を増大させることなく、より多くの種類の溶液等を扱うことができる。
【0136】
また、1の口部が2以上のウェルに対応することができるので、1のウェルが扱う容量の2倍以上の容量の液体を1の口部が扱うことができる。さらに、隣接する口部間に利用できる大きな空間が出現することになるので、各口部に対して、装置規模を拡大することなく、種々の機能、例えば、前記口部内に磁力を及ぼす機能、口部内の液体の状態を検出する機能等、を付加する機構を設けることができる。
【0137】
第16の発明または第33の発明によれば、第13,14の発明の効果を奏する他、1のヘッドが一度に扱うことができるウェルが1のマイクロプレート内に属する相互に重複することのない各ウェル部分行列であり、かつ、各ウェル部分行列間の距離は、マイクロプレートの隣接するウェル間の距離に相当するだけしか離れていないので、各ウェル部分行列ごとに、1の処理に必要な溶液等を各々収容することで、1の処理を完結するまでの担体封入変形容器配列ヘッドの移動距離が短くて済み、迅速かつ効率的に処理を行なうことができる。
【0138】
第17の発明によれば、1のマイクロプレートに対して、多数の処理対象についての複数の工程からなる一連の処理を、1のヘッドを用いて連続的に一貫して実行することができるので、作業面積に対する処理の効率性が高い。また、ヘッドの移動距離が短くて済むので、作業効率が高い。
【0139】
第18の発明によれば、各ウェル群には、各ウェル部分行列に属するウェル要素が各々1ずつ重複せずに含まれているので、ウェル群に属する全ウェルに対して、口部を挿入可能に移動させることによって、1のマイクロプレートに対して、多数の対象に少なくとも前記自然数(n>1)工程からなる一連の処理を、1のヘッドを用いて連続的に一貫して1のマイクロプレート内で実行することができるので、信頼性が高く、また、管理しやすい。
【0140】
第19の発明または第32の発明によれば、前記収容部内部に磁場を及ぼしまた除去するようにしているので、磁性粒子の懸濁する液体中の磁性粒子を内部に吸着させることで分離を確実に行なうことができる。また、液体ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定するように前記ヘッドに設けた口部の行間隔または列間隔を持つ隣接口部行間または隣接口部列間の隙間を利用して強い磁力を持つ磁石を設けることができるので、ウェルが蜜に集積化されたマイクロプレートであっても、簡単な機構で各担体封入変形容器に強い磁場を及ぼしかつ除去することができる。
【0141】
第20の発明によれば、前記各担体封入変形容器の収容部の非変形部の周囲を取り囲むようにかつ近接内の状態を検出することによって、液体の吸引、吐出状態を測定し、信頼性の高い制御を行うことができる。
【0142】
第21の発明によれば、前記收容部の非変形部の周囲を取り囲むようにかつ近接して受光端子および/または照射端子を設けているので、粒子状担体による発光を確実に捉えることができるので信頼性が高い。
【0143】
第22の発明によると、前記口部を通過するように変形するので、口部を通る流体の吸引吐出を確実に行なうことができる。
【0144】
第23の発明によると、可動部材を変形方向に沿って移動させる処理対象の気体液体と接触しない力学的な機構のみを用いることで、吸引、吐出、移送等の液体の処理を可能にするので、液体と接触可能な部分が担体封入変形容器内の閉空間と容器のみにほぼ限られるので、コンタミネーションを確実に防止することができる。
【0145】
第24の発明によると、変形壁面の変形、および/または、前記ヘッドの移動を、前記担体封入変形容器の構造等に基づいて制御を行なうようにしているので、吸引吐出を確実に行なうことができる。
【0146】
第25の発明、第26の発明または第29の発明によると、壁面変形によるその内部の膨張および収縮の双方が可能な基準変形状態に基づいて変形の制御が行なわれるので、変形による内部の膨張及び収縮のどちらにも直ちに対応することができて迅速で効率的な処理を行うことができる。また、前記基準変形状態をうまく設定することによって、液体の吐出による前記担体封入変形容器内の液体の残留を防止することができる。
【0147】
第26の発明または第30の発明によると、気体については変形壁面を有する変形部に収容し、導入した液体は変形壁面を有しない非変形部に貯留するようにしている。したがって、導入した液体は変形壁面の変形の影響を受けず、液体が変形壁面に付着して残留する事態を防止することができ、定量の処理を行なう場合等において信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る担体封入変形容器に適用した光センサーを示す斜視図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る担体封入変形容器の断面図および斜視図を示す。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る担体封入変形容器処理装置の斜視図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る担体封入変形容器処理装置のマイクロプレートを示す図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る櫛歯状光検出部および櫛歯状磁石を示す奢侈図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る櫛歯状光検出部を示す図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図12】本発明の第8の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図13】本発明の第9の実施の形態に係る担体封入変形容器を示す断面図および斜視図である。
【図14】本発明の第10の実施の形態に係る担体封入変形容器処理方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0149】
続いて、図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る担体封入変形容器および該担体封入変形容器処理装置およびその処理方法について説明する。
【0150】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る担体封入変形容器11を示すものである。
図1(a)に示すように、該担体封入変形容器11は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部12と、該収容部12と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部13と、前記収容部12内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の粒子状担体14,15を有するものである。前記収容部12は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部16と、該変形部16と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部13と連通して外部から内部を測定可能な非変形部17とを有している。
【0151】
前記変形部16は、その変形壁面に蛇腹18が形成されている。該蛇腹18は、前記収容部12の全壁面または前記変形部16の変形壁面を変形方向である該変形部16または収容部12の軸方向を横切って2つに仕切るように形成され、その一方の部分には、頂点19があり、他方には、非変形部17、および、変形部16と非変形部17との境界に設けられ、該担体封入変形容器11を主に手もしくは指で支持するために用いられ、前記変形部16および非変形部17よりも大きい半径を有して外向きに突出するフランジ20が設けられている。したがって、この担体封入変形容器11は、手動に適したものである。この蛇腹18の波形の各山または各谷が含まれる各仮想的な平面の各法線方向は、前記軸方向に略一致する。該蛇腹18は、前記口部13および前記収容部12の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線(軸線)と該変形壁面との交点において該直線方向(前記軸方向)に沿って前記変形壁面が変形可能に形成されていることになる。
【0152】
前記非変形部17は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略円筒状の太管部21、それよりも細い略円筒状の細管部22、および該太管部21と前記細管部22との間に設けた漏斗状の移行部23とを有し、前記口部13は、前記細管部22の先端に設けられている。該細管部22は、内部に粒子状担体14,15を封入した後、前記移行部23の下端にある嵌合部24に嵌合して接着、熱溶着等によって取り付けられる。前記細管部22は、蛍光色素で標識化される粒子状担体14,15の測定の際に、蛍光を発しない樹脂であって、ある程度の強度を要するポリプロピレンで形成されるのが適当である。一方、前記変形部16および該変形部16と一体的に形成される細管部22を除く収容部12の部分は、ある程度の軟らかさをもったポリエステルで形成されるのが適当である。
【0153】
該細管部22内には、複数(この例では20個)の粒子状担体14,15が一列状に収容され、その上側絞り部25と下側絞り部26において、細管部22をかしめて液体の流出流入は可能であるが粒子状担体14,15の流出が不可能となるように細く絞るように加工して、その領域外に前記粒子状担体14,15が流出しないように封入されている。該上側絞り部25および該下側絞り部26は前記封入部に相当する。
【0154】
前記粒子状担体14,15は、例えば、0.5mm程度の大きさをもつ複数組の粒子状担体の集合(2個の要素が属する)からなる。その各粒子状担体の集合に属する少なくとも1の各粒子状担体は、所定の化学物質が結合しまたは結合可能であり、かつ、該化学物質を識別するために蛍光色素や化学発光物質等の発光物質で標識化がされた粒子状担体14であって、例えば、シリカやナイロン等の繊維物質からなり、該集合に属する他の粒子状担体は、該発光が隣接する粒子状担体に届くのを防止するための遮光性物質、例えば、不透明性の樹脂や金属で形成された粒子状担体15であって、粒子状担体14と粒子状担体15とは互い違いに配列されているものである。ここでは、前記粒子状担体14は、前記收容部12内への導入前に、相互に異なる蛍光等の標識物質または相互に異なる標識物質の組み合わせまたはその量比によって識別可能に標識化されている。
【0155】
続いて、図2に基づいて、本発明の第2の実施の形態に係る担体封入変形容器を説明する。なお、図1と同一の符号は同一のものを示しているので、それの詳細な説明を省略する。
【0156】
図2(a)に示すように、該担体封入変形容器27は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部28と、該収容部28と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部29と、該収容部28内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の粒子状担体14,15を有するものである。前記収容部28は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部16と、該変形部16と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ口部29と連通して外部から内部を測定可能な非変形部30とを有している。
【0157】
前記非変形部30は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略円筒状の太管部21、それよりも細い略円筒状の細管部31、および該太管部21と前記細管部31との間に設けた漏斗状の移行部23を有し、前記細管部31は、その上端が該移行部23の下端にある嵌合部24に嵌合されて着脱自在に取り付けられている。前記細管部31は、蛍光色素で標識化される粒子状担体14,15の測定の際に、蛍光を発しない樹脂であって、ある程度の強度を要するポリプロピレンで形成されるのが適当である。
【0158】
該細管部31内には、前述したように複数(この例では20個)の粒子状担体14,15が一列状に封入され、その上側と下側において、該細管部31内に嵌合して挿入された、例えば、ステンレス製のパイプ32,33が取り付けられている。該パイプ32,33の粒子状担体と接触可能側部分では、前記粒子状担体14,15が前記パイプ32,33を塞ぐことのないように、軸方向に対して斜方向にカットされた、斜面34,35を有している。なお、下側のパイプ33の下端の孔が前記口部29に相当する。
【0159】
続いて、本発明の第3の実施の形態に係る担体封入変形容器36について、図3に基づいて説明する。なお、図1または図2と同一の符号は、同一のものを示しているので説明を省略する。
【0160】
該担体封入変形容器36は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部37と、該収容部37と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体流入流出可能な口部38と、該収容部41内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の粒子状担体14,15を有するものである。前記収容部41は、変形部39,40と、それ以外の非変形部とからなる。前記非変形部は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な太管部42と、それよりも細い細管部43と、前記太管部42または前記細管部43との間に設けた漏斗状の移行部44とを有し、前記口部38は、前記細管部43の下端に設けられている。前記粒子状担体14,15は前記細管部43内に設けられている。この例では、前記細管部43は、移行部44および太管部42と一体に形成されている。
【0161】
前記変形壁面で囲まれた2つの変形部39,40は、各変形部39,40の変形壁面の変形に基づく収容部37の各最大変化可能量V39,V40が異なり、V39<<V40である。この場合、前記最大変化可能量V40の大きさは、前記細管部43に封入されている粒子状担体14,15を除いた細管部43の空間の容積に略等しく設定するのが好ましい。
【0162】
なお、該最大変化可能量が最も大きいV39をもつ変形部39は、前記口部38および前記収容部37の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と前記変形壁面との交点において前記直線方向(軸方向)に沿って前記変形壁面が変形可能に形成されている。
【0163】
また、該細管部43は、前記移行部44と連通するようにして太管部42、移行部44と一体的に形成されている。該細管部43内には、複数(この例では20個)の粒子状担体14,15が一列状に収容され、その上側絞り部45と下側絞り部46において、該細管部43をかしめて液体の流出流入は可能であるが粒子状担体14,15の流出は不可能となるように細く絞るように加工して、その領域外に前記粒子状担体14,15が流出しないように封入されている。該上側絞り部25および該下側絞り部26は、前記封入部に相当する。
【0164】
続いて、図4に基づいて、第3の実施の形態に係る担体封入変形容器36内の細管部43に封入された前記粒子状担体14,15を光学的に測定する光検出手段としての光センサー47について説明する。該光センサー47は1本の担体封入変形容器36が、前記口部38を下方に向け、前記変形壁面を変形可能でかつ上下方向に移動可能な状態で担体封入ヘッド(図示せず)に支持された状態で用いる場合に適している。前記担体封入変形容器36の前記細管部43には、標識物質として蛍光物質が結合した粒子状担体14,15が1列状に配列されて封入されているものとする。
【0165】
図4(a)には、前記担体封入変形容器36の前記細管部43に装着する光センサー47を示す。該光センサー47は、前記担体封入変形容器36の細管部43に対して、水平面上接離可能に設けた
【0166】
該光センサー47は、前記担体封入ヘッドに設けられている。ここで、前記担体封入変形容器36の前記細管部43には、標識物質として蛍光物質が用いられているものとする。該光センサー47は該蛍光を検出可能なものであって、中央に前記細管部43が貫通可能な内径をもつ中央孔50が形成された円筒状に組み合わせ可能であって該円筒の直径およびその軸を含む平面に沿って分離可能な半円筒状の2つのセグメント48,49と、該セグメント48に取り付けられ前記中央孔の内側面にその端面52が設けられ所定の励起光を照射可能な光ファイバ53と、前記セグメント49に取り付けられ前記中央孔の内側面にその端面51が設けられ前記中央孔内部からの発光を受光可能な光ファイバ54とを有する。
【0167】
図4(b)に示すように、該光センサー47の2つの前記セグメント48,49は、その中央に前記細管部43が貫通する孔部が設けられ上下方向に移動可能な支持板(図示せず)上に、該孔部を覆うように取り付けられることで、該セグメント48,49が前記支持板上において前記中央孔および孔部を通して前記細管部43を貫通させた状態で、該細管部43の下端を挟むようにして、取り付けられる。
【0168】
該支持板(図示せず)および光センサー47を、前記細管部43の下端から相対的に上方向に、前記細管部43の上端にまで移動させることによって、前記細管部43に沿って走査し該細管部43内に封入されている粒子状担体からの発光を測定する。
【0169】
図5には、第4の実施の形態に係る担体封入変形容器55を示す。
該担体封入変形容器55は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部56と、該収容部56と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部57と、該収容部56内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個(この例では8個)の粒子状担体14を封入したものである。前記收容部56は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部67と、該変形部67と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ口部57と連通して外部から内部を測定可能な非変形部58とを有している。
【0170】
前記変形部67には、蛇腹59が形成されている。該蛇腹59は、変形方向として、該収容部56の上下に沿った軸方向を略垂直に横切る方向に沿って形成された山および谷を有する波が、該変形方向を筒状に囲む壁面に形成され、該山および谷で折れ曲がり可能である。該波の山または谷の形状としては、前記変形方向に垂直な仮想的な平面内に含有される閉曲線状である。該変形部67の上端面60を軸方向に沿って所定可動部材で押圧することで、蛇腹59の山および谷を折り曲げて変形部67を収縮させ、該押圧を解除することで、前記変形部67の持つ弾性力によって元の状態にまで回復させる。
【0171】
非変形部58は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略角筒状の太管部61、それよりも細い略円筒状の細管部62、および該太管部61と前記細管部62との間に設けた段差が形成された移行部63を有する。前記太管部61の軸方向に垂直な断面の略長方形の形状の例としては、長辺の長さが短辺の長さの略2倍である。
【0172】
前記細管部62内には、前述したように複数個(ここでは8個)の粒子状担体14が、導入された液体と接触可能となるように、一列状に封入され、その上側と下側において、該細管部62内に、前記粒子状担体14が通過せずかつそれによって閉塞されない断面形状(円以外の断面形状)をもつ短管64,65が前記細管部62の内壁面に嵌合して設けられている。
【0173】
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る担体封入変形容器処理装置10の斜視図である。該担体封入変形容器処理装置10は、本発明の第3の実施の形態に係る担体封入変形容器55を2本以上(この例では、96本)を前記口部57を下側に向けて2組の12行×4列のマトリクス状に配列し、前記変形壁面の変形によって前記口部57が変動しないように支持し、該担体封入変形容器55の前記変形壁面を一斉に変形させることによって、該担体封入変形容器55に対する液体の吸引吐出を一斉に行う担体封入ヘッド70と、種々の溶液、懸濁液等の液体を収容可能な2以上のウェル75を12行×8列のマトリクス状に配列した容器群としての2枚のマイクロプレート73,74と、前記担体封入ヘッド70を前記容器群としての2つのマイクロプレート73,74に対して相対的に移動させるヘッド移動部(図示せず)とを有する。
【0174】
前記担体封入ヘッド70には、前記12行×8列のマトリクス状に配列した担体封入変形容器55の全上端面60と接触可能かつ上下動可能であって、該担体封入変形容器55を一斉に変形かつ回復可能な可動部材71,72を有している(図6中、可動部材71は、説明上、担体封入変形容器の配列状態を明示するために上方向に取り外した状態で示している)。該可動部材71,72は、例えば、上下方向に沿って設けたボール螺子に螺合するナット部とアームを介して連結させ、前記ボール螺子をモータによって回転駆動することによって前記ナット部を該ボール螺子に沿って並進駆動することによって行う。前記担体封入ヘッド70は、例えば、前記マトリクス状(12行×4列)に前記行間隔および列間隔で穿設された48個の支持孔を有する2枚のプレートを水平に設け、前記担体封入変形容器55を前記各支持孔に挿入して嵌合することで支持する。前記支持孔の形状は、前記担体封入変形容器55の前記63の角筒部分に対応する角孔の形状を有し、上側の段差部分で支えている。該プレートは、前記移動部によって前記担体封入ヘッド70の一部として上下動および水平動が可能である。該担体封入ヘッド70の移動は、例えば、別途設けたボール螺子を用いて行う。
【0175】
さらに、一方の前記可動部材71が設けられている方のマトリクス状に配列した担体封入変形容器55群には、該各担体封入変形容器55の非変形部58の細管部62の内部に磁場を及ぼすための磁力手段としての櫛歯状磁石77と、前記各担体封入変形容器55の内部の粒子状担体の状態を検出する光検出手段としての櫛歯状光検出部78とを有している。なお、符号79は、前記担体封入ヘッド70に固定して取り付けられて、前記櫛歯状磁石77を列方向に移動可能に支持するトレイである。
【0176】
図7(a)には、前記12行×8列のマトリクス状に配列したウェル75を有するマイクロプレート73(74)を詳細に示す斜視図である。
該マイクロプレート73は、12行×8列の96個のウェル75,76を基体80にマトリクス状に配列したものである。さらに、該基体80上には、対応する前記担体封入ヘッド70の前記担体封入変形容器55の配列の列間隔に対応して行方向に並んだ前記自然数個、「2」個ずつのウェル75,76からなるウェル群ごとに仕切るように、前記基体80の表面に上方向に向かって突出するように、行方向に沿って3枚、列方向に沿って11枚の細長い薄板状の隔壁81を設けている。
【0177】
図7(b)には、該マイクロプレート73に対応する担体封入ヘッド70のマトリクス状に配列された全担体封入変形容器55の前記口部57が一斉に挿入可能なウェルの集合である第1のウェル部分行列(図中、黒丸で表したウェル75)と、第2のウェル部分行列(図中、白丸で表したウェル76)を示している。したがって、前記担体封入ヘッド70の前記担体封入変形容器55の配列は、この第1のウェル部分行列(75、黒丸)と第2のウェル部分行列(76、白丸)の配列に対応するマトリクスを有していることになる。
【0178】
ここで、この第1のウェル部分行列(75、黒丸)に属する黒丸で表したウェル75と、第2のウェル部分行列(76、白丸)に属するウェル76との図上、上下に隣接する1組のウェル75,76は、対応する前記担体封入ヘッド70に設けられた前記担体封入変形容器55の内、同一の担体封入変形容器55によって挿入可能なウェルの集合であるウェル群82を示すものである。したがって、一旦、この隔壁81で囲まれた領域内に位置決めされた担体封入変形容器55は、該マイクロプレート73(74)についての処理が完結するまでは、該隔壁81を越えて移動することはない。
【0179】
図7(c)(d)には、他の実施の形態に係る担体封入ヘッドに対応するマイクロプレート83の例を示すものである。該マイクロプレート83は、12行×8列のマトリクス状に96個のウェル85,86,87,88が基体84に配列されたものである。さらに、該基体84上には、対応する担体封入ヘッド(図示せず)の担体封入変形容器55の配列の行間隔および列間隔に対応して、列方向および行方向に並んだ前記自然数個、「4」個ずつのウェル85,86,87,88からなるウェル群90ごとに仕切るように、前記基体84の表面に上方向に向かって突出するように列方向に沿って3枚、行方向に沿って5枚の細長い薄板状の隔壁89を設けている。
【0180】
ここで、該マイクロプレート83に対応する前記担体封入ヘッド(図示せず)とは、図6に示した担体封入ヘッド70において、4本各列において、列方向に配列された12本の担体封入変形容器55を1つおきに間引きした6本の担体封入変形容器55が配列された、6行×4列のマトリクス状に配列された24本の担体封入変形容器55を有するものである。
【0181】
該マイクロプレート83は、図7(d)に示すように、該マイクロプレート83には、対応する担体封入ヘッド(図示せず)のマトリクス状に配列された24本の全担体封入変形容器55が一斉に挿入可能なウェルの集合である第1のウェル部分行列(図中、白丸で表したウェル85)、第2のウェル部分行列(図中、黒丸で表したウェル86)、第3のウェル部分行列(図中、十文字で表したウェル87)、第4のウェル部分行列(図中、一本線で表したウェル88)を示している。
【0182】
ここで、この第1のウェル部分行列に属する白丸で表したウェル85、第2のウェル部分行列に属する黒丸で表したウェル86、第3のウェル部分行列に属する十文字で表したウェル87、および、第4のウェル部分行列に属する一本線で表したウェル88の4個のウェル85,86,87,88の1組は、対応する前記担体封入ヘッド(図示せず)に設けられた担体封入変形容器55の内、同一の担体封入変形容器55によって挿入可能なウェルの集合であるウェル群90を示すものである。したがって、一旦、この隔壁89内で囲まれた領域内に位置決めされた担体封入変形容器55は、該マイクロプレート83に付いての処理が完結するまでは、該隔壁89を超えて移動することはない。
【0183】
なお、該マイクロプレート83を4枚用意し、24本の前記担体封入変形容器55を前記6行×4列のマトリクス状に配列した束を4つ用意すると、全部で96本の担体封入変形容器55を有することになり、総数で1のマイクロプレート83のウェル数と等しい点で、図6の場合と変らないにも拘らず、同時に4枚のマイクロプレートを処理することができるので効率が高い。
【0184】
続いて、図8(a)は、前記櫛歯状磁石77および櫛歯状光検出部78を取り出して示す斜視図である。該櫛歯状磁石77は、前記担体封入ヘッド70に設けられ、48本の前記担体封入変形容器55の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように、前記各担体封入変形容器55に対して各々接離可能に設けられた12行×4列のマトリクス状に全部で48個の磁石92を配列したものである。
【0185】
前記櫛歯状磁石77は、前記ウェル75,76の列間隔について前記自然数である「2」倍に設定された列間隔をもつ担体封入変形容器55の隣接する列間に、列方向に沿って移動可能に設けられ、前記列方向に沿って伸びかつ前記担体封入変形容器55の隣接する列間に挿入可能な幅に設けられた前記担体封入変形容器55の(列数−1)本である3本の略角柱状の櫛歯部材91と、該櫛歯部材91の外側に設けられ、前記櫛歯部材91よりもやや幅廣に形成された2本の略角柱状の櫛歯端91a,91bと、前記櫛歯部材91および前記櫛歯端91a,91bの一端で連結し行方向に伸びる支持部材(図示せず)とを有し、前記各櫛歯部材91および前記櫛歯端91bには、その長手方向、すなわち、列方向に沿って、前記ウェル75,76の行間隔に設定された間隔で各々前記行数個(12個)が配列された磁石92と、該各櫛歯部材91,91a,91bの長手方向、すなわち列方向に沿って設けられたガイドレール93とを有する。前記磁石92は前記櫛歯部材91および櫛歯端91bの同じ側面側に設けられ、該側面から遠い位置に前記ガイドレール93が設けられている。前記ガイドレール93は、前記櫛歯部材91,91a,91bの上表面に移動可能に設けられた前記櫛歯状光検出部78の移動を案内する。
【0186】
図8(b)は、他の実施の形態に係る櫛歯状磁石94および前記櫛歯状光検出部78を示す斜視図である。該櫛歯状磁石94は、前記担体封入ヘッド(図示せず)に設けられ、前記担体封入変形容器55の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように、前記各担体封入変形容器55に対して、各々接離可能に設けられた6行×4列のマトリクス状に全部で24個の磁石92を配列したものである。すなわち、図8(a)の櫛歯状磁石77と異なり、各櫛歯部材および櫛歯端に配列される磁石92の個数が12個の半分に間引きされて個数が6個になっている。これは、前述した担体封入ヘッド(図示せず)に相当するものである。
【0187】
図9は、前記櫛歯状光検出部78を詳細に示すものであり、該櫛歯状光検出部78は前記担体封入ヘッド70に設けられた櫛歯状磁石77上に、該櫛歯状磁石77に対して相対的に移動可能に設けられ、前記各担体封入変形容器55内部の状態を検出するものである。
【0188】
前記櫛歯状光検出部78は、前記ウェル75,76の列間隔の自然数倍、すなわち、「2」倍に設定された列間隔をもつ隣接する担体封入変形容器55の間に、列方向に沿って前記櫛歯状磁石77または前記担体封入変形容器55に対して移動可能に設けられ、前記列方向に沿って伸びかつ隣接する前記担体封入変形容器55列間に挿入可能な幅に設けられた前記担体封入変形容器55の(列数−1)本である3本の略角柱状の櫛歯部材95と、該櫛歯部材95の外側に設けられ、前記櫛歯部材95よりもやや幅廣に形成された2本の略角柱状の櫛歯端95a,95bと、前記櫛歯部材95および前記櫛歯端95a,95bの一端で連結し行方向に伸びる支持部材96とを有し、前記各櫛歯部材95および前記櫛歯端95a,95bには、各々1の光検出用孔98が行方向に沿って穿設して設けられている。
【0189】
1の前記櫛歯部材95または前記櫛歯端95a,95bに設けられた前記光検出用孔98には、発光部100からの光ファイバ99の先端が設けられ、それに、前記担体封入変形容器55列が配列されるべき細長い空隙を介して隣接する櫛歯部材95,櫛歯端95a,95bの前記光検出用孔98には、光センサー102と接続した光ファイバ101の先端が、前記櫛歯部材95、または櫛歯端95a,95bの隣接する2つによって挟まれた前記空隙に面するように設けられている。
【0190】
なお、符号97は、前記ガイドレール93と係合して摺動可能な前記列方向に沿って前記各櫛歯部材95、櫛歯端95a,95bに設けられた細溝を示す。
また、前記櫛歯状光検出部78の前記櫛歯部材95、櫛歯端95a,95b、支持部材96の大きさおよび形状は、各々、前記櫛歯状磁石77に相当する大きさおよび形状に形成されている。
【0191】
図10には、前記担体封入変形容器処理装置10の前記担体封入ヘッド70に装着するのに適した本発明の第6の実施の形態に係る担体封入変形容器103を示すものである。なお、図1と同一の符号は同一のものを表すので、その詳細な説明を省略する。
【0192】
図10に示すように、該担体封入変形容器103は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部104と、該収容部104と連通し該変形壁面による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部13と、前記收容部104内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の粒子状担体14,15を有するものである。該収容部104は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部107と、該変形部107と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部13と連通して外部から内部を測定可能な非変形部108とを有している。
【0193】
前記変形部107は、蛇腹109が形成されている。該蛇腹109は、前記收容部104の全壁面または前記変形部107の変形壁面を変形方向である該変形部107または収容部104の軸方向を横切って2つに仕切るように形成され、その一方の部分には、頂点110があり、他方には、非変形部108および、変形部107と非変形部108との境界に設けられ、該担体封入変形容器103を前記担体封入ヘッド70に支持するために用いられ、前記変形部107よりも小さい半径を有して外向きに突出するフランジ111が設けられている。すなわち、この担体封入変形容器103は、担体封入ヘッド70に装着して用いる自動化に適したものである。この蛇腹109の波形の各山または各谷が含まれる各仮想的な平面の各法線方向は、前記軸方向に略一致する。該蛇腹109は、前記口部13および前記收容部104の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線(軸線)と該変形壁面との交点において該直線方向(前記軸方向)に沿って前記変形壁面が変形可能に形成されていることになる。
【0194】
前記非変形部108は、前記太管部21、前記細管部22、前記移行部23とを有し、該細管部22は、内部に粒子状担体105,106を収容して、細管部封入した後、前記移行部23の下端にある嵌合部24に嵌合して接着、熱溶着等によって取り付けられる。前記細管部22は、蛍光色素で標識化される粒子状担体105,106の測定の際に、蛍光を発しない樹脂であって、ある程度の強度を要するポリプロピレンで形成されるのが適当である。
【0195】
図11は、本発明の第7の実施の形態に係る担体封入変形容器113を示すものである。図11に示すように、該担体封入変形容器113は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その変形面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部114と、該収容部114と連通し該変形壁面による前記内部の膨張および収縮によって吸引と出される液体が流入流出可能な口部13と、前記収容部114内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個所の結合位置115を有する棒状の担体118を有するものである。前記収容部114は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部107と、該変形部107と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部13と連通して外部から内部を測定可能な非変形部120とを有している。
【0196】
前記棒状の担体118は、図11に示すように、複数種の化学物質が結合しまたは結合可能な複数箇所の結合位置115が、その結合位置115間に設けられた油性のインク等の疎水性の材料で境界116によって仕切られている。該細管部117内には、前記棒状の担体118が一列状に上下方向に沿って収容され、その上側絞り部25と下側絞り部26において、小さいパイプ119を細管部117の内部に設け前記細管部117をかしめて液体の流出流入が可能であるが、該棒状の担体118の流出しないように封入している。該上側絞り部25、該下側絞り部26および2本の前記パイプ119は前記封入部に相当する。
【0197】
続いて、図12は、前記担体封入変形容器処理装置10の前記担体封入ヘッド70に装着するのに適した本発明の第8の実施の形態に係る担体封入変形容器121を示すものである。
【0198】
図12に示すように、該担体封入変形容器122は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部122と、該収容部122と連通し該変形壁面による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部123と、前記収容部122内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な複数個の球状担体124を有するものである。該収容部122は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部125と、前記球状担体124が封入され、前記変形部125と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部123と連通して外部から内部を測定可能な非変形部126とを有している。
【0199】
前記変形部125の変形壁面には蛇腹127が形成されている。該蛇腹127は、前記収容部122の全壁面または前記変形部125の変形壁面を変形方向である該変形部125または収容部122の軸方向を横切って2つに仕切るように形成され、その一方の上側部分の上端には、前記球状担体124を前記収容部122内に導入するための導入孔129が穿設されている。また、該導入孔129は、前記球状担体124の導入後に、蓋部128を前記導入孔129の周囲のフランジ部分に接着または熱溶接によって取り付けられて前記導入孔129を塞ぐ。
【0200】
また、他方の下側部分には、非変形部126、および、前記変形部125と非変形部126との境界に設けられ、該担体封入変形容器121を前記担体封入ヘッド70に支持するために用いられ、前記変形部125よりも小さい半径を有して外向きに突出するフランジ130が設けられている。すなわち、この担体封入変形容器121は、担体封入ヘッド70に装着して用いられる自動化に適したものである。この蛇腹127の波形の各山または各谷が含まれる各仮想的な平面の各法線方向は、前記軸方向に略一致する。該蛇腹127は、前記口部123および前記収容部122の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線(軸線)と該変形壁面との交点において該直線方向(前記軸方向)に沿って前記変形壁面が変形可能に形成されていることになる。
【0201】
前記非変形部126は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略円筒状の太管部131、それよりも細い略円筒状の細管部132、および該太管部131と前記細管部132との間に設けた漏斗状の移行部133とを有し、前記口部123は、前記細管部132の先端に設けられている。前記太管部131には、クロマトグラフィーの粒子状充填剤として、前記所定の物質を吸着等によって捕獲可能であって、前記細管部132の内径よりも大きい径をもつ複数の球状担体が封入されている。前記移行部133は、前記球状担体124によって塞がれないように、軸方向に垂直な断面は楕円形状である。ここで、「充填剤」とは、液クロマトグラフィーの原理に基づいて、いわゆる移動相としての所定流体に含有される対象生体物質の吸着を図るために選択される所定の容器内に充填される不溶性固定相である。
【0202】
図13は、前記担体封入変形容器処理装置10の前記担体封入ヘッド70に装着するのに適した本発明の第9の実施の形態に係る担体封入変形容器134を示すものである。なお、図12と同一の符号は図12に示すものと同一のものなので、それについての詳細な説明を省略する。
【0203】
図13に示すように、該担体封入変形容器134は、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部135と、該収容部135と連通し該変形壁面による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部123と、前記収容部135内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な1個の球状担体136を有するものである。該収容部135は、前記変形壁面で囲まれた1の変形部125と、前記球状担体136が封入され、前記変形部125と連通氏変形がされない非変形壁面で囲まれ前記口部123と連通して外部から内部を測定可能な非変形部139とを有している。
【0204】
前記非変形部139は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の透光性の樹脂で形成された内部に液体を貯留可能な略円筒状の太管部140、それよりも細い略円筒状の細管部132、および該太管部140と前記細管部132との間に設けた漏斗状の移行部133とを有し、前記口部123は、前記細管部132の先端に設けられている。前記太管部140には、前記充填剤として、前記所定の物質を吸着等によって捕獲可能であって、前記細管部132および前記移行部133の内径よりも十分に大きな径をもつ1の球状担体136が封入されている。該球状担体136は、前記太管部140の壁面の内、該太管部140の軸線を通るように対向した内側にやや突出する2つの凸点137,138において支えられている。該凸点137,138は、前記太管部140の外側から押し込められるように形成されているため、その2つの凸点を結ぶ径方向を水平面内で90度回転した径方向には前記球状担体と前記太管部140の内壁面との間には、隙間が形成されて液体の通過が可能である。
【0205】
続いて、第5の実施の形態に係る担体封入変形容器処理装置10を用いた、第10の実施の形態に係る担体封入変形容器処理方法をSNPs検出反応に適用する場合について説明する。
【0206】
図14に模式的に示すように、該方法は、96人の被検者から採取した検体の遺伝子(ATase exon6、ATase exon8、CYP2C19 exon5、CYP2D6 exon1)の4箇所の各SNPs(Single Nucleotide Polymorphysms)の多型(ここでは2種類)の塩基を検出するための処理に適用したものである。この処理は、検体の遺伝子を抽出して増幅し、後述するASPE法によってASPE産物を調製する準備段階としての試料調製工程S1と、前記担体封入変形容器55内に封入すべき粒子状担体14に検出用のプローブである後述するタグDNAを結合させた複数種類(この例では8種類)の粒子状担体14を調製して前記担体封入変形容器55内に封入する封入工程S2と、該粒子状担体14と前記ASPE産物との結合反応を行わせる結合反応工程S3と、結合反応結果を検出する検出工程S4とを有する。
【0207】
ステップS1の試料調製工程は、図14(a)に示すように、例えば、口腔粘膜、血液、爪等の検体を96人の被検者から採取する採取工程と、該口腔粘膜等に含有されているDNAを抽出して、PCR法で増幅する増幅工程と、該DNAを精製する精製工程と、精製したDNAを後述するASPEを用いてASPE産物を調製するASPE産物調製工程とを有する。
【0208】
前記採取工程は、96人の被検者から採取した前記口腔粘膜等を懸濁させた液体を各々96個のウェル(図示せず)をもつマイクロプレート(図示せず)に収容する。前記担体封入変形容器55に担体が封入がされていない状態の変形容器を前記担体封入ヘッド70に装着し、各ウェル(図示せず)に、表面が多孔性の物質またはシリカ等の物質で覆われた磁性粒子の懸濁液を吸引して移送し各々一斉に吐出することで投入する。
【0209】
前記可動部材71,72を上下動することで吸引吐出を繰り返して、前記DNAを磁性粒子に結合して捕獲させ、前記櫛歯状磁石77を前記各変形容器に接近させてその内部に磁場を及ぼした状態で、前記可動部材71,72を上下動させることで、前記各変形容器の内壁に前記DNAを捕獲した前記磁性粒子を吸着させて分離させる。該分離した前記DNAを捕獲した磁性粒子から前記DNAを乖離させることでDNAを抽出し、マイクロプレートの各ウェル内に収容する。
【0210】
次に、抽出されたDNAはPCR法によって、所定のプライマーを用いて、4つの前記DNAを得るように増幅し前記マイクロプレートの96個の各ウェル内に収容する。増幅したDNAの懸濁液を収容した各ウェル内に、プライマーや口腔粘膜等の残留物を含む夾雑物を除去するために、新たな磁性粒子の懸濁液を、新たな変形容器を前記担体封入ヘッド70に装着し前記可動部材71,72を用いて上下動させて吸引吐出を行うことで前記DNAを前記磁性粒子に捕獲させ、前記櫛歯状磁石77を用いて前記変形容器55内に磁場を及ぼして前記磁性粒子を前記変形容器55の内壁に吸着させて分離して精製する。
【0211】
次に、ASPE(Allele-specific primer extension 法)を用いて、各検体の遺伝子について前記4箇所のSNPの決定を行うためのASPE産物148を調製する。
【0212】
図14(b)に示すように、後述する一本鎖のタグDNA142の塩基配列143に相補的な塩基配列144を3'末端にもち、前記SNPの塩基145を5'末端にもち、塩基配列144と塩基145の間の配列は4つの前記各遺伝子のSNPの直近配列に相補的な塩基配列となるように設計した一本鎖の数十塩基からなる合成DNAをプライマーとして用意する。多型の可能性のある種類、ここでは4つの各遺伝子ごとに2種類ずつ、計8種類のプライマーを合成し、各プライマーには、8種類の相互に異なる所定の塩基配列をもつタグDNA142の1および該当するSNPの塩基が含まれる。そのプライマーと、塩基「T」に代えてDig-dUTP146を塩基に用いて、前記検体ごとの各遺伝子に基づいてPCR法により伸長増幅させる。すると、前記検体のDNAの多型の種類に応じたプライマーのみについて伸長増幅が行われ、96の各検体ごとに前記ASPE産物148が調製されることになる。
【0213】
調製されたASPE産物148は、マイクロプレート73,74のウェル75(黒丸)が属する第1の部分行列のウェル群に収容しておく。一方、マイクロプレート73,74のウェル76(白丸)が属する第2の部分行列のウェル群には、後述するステップS4の検出工程で用いるための洗浄液を収容しておく。さらに、図示しない同様の2枚の他のマイクロプレートには、その第1の部分行列には前記Dig-dUTP146と特異的に結合する前記AP標識Dig抗体147が収容され、第2の部分行列には、基質液149(CDP-Star)を収容する。
【0214】
なお、この例では、各検体ごとに8種類の前記ASPE産物148の全てを混合したものを各ウェル75に収容しているが、例えば、2種類の前記ASPE産物148ごとに混合したものを第1の部分行列に収容し、第2の部分行列には前記基質液を収容したマイクロプレート73,74等の必要なマイクロプレートの組を4組用意することで処理を行うようにしてもよい。
【0215】
ステップS2においては、前記担体封入変形容器55内に収容すべき粒子状担体14を作製して、封入する。作製すべき粒子状担体14は、図14(b)に示すように、例えば、アビディン141で被覆され、ビオチン化した所定の塩基配列143をもつタグDNA142を結合させたものである。ここで、前記粒子状担体14としては、例えば、直径略1mm前後のサイズであって、例えば、ナイロン(Polysciences社製)等の各種樹脂を用いる。その他、例えば、セラミックス(千葉セラミック社製、アルミナ1.88mm径)を用いることができる。なお、前記遮光性粒子を用いる場合には、例えば、直径2.0mmのカラーガラスを用いる。
【0216】
また、各タグDNA142の塩基配列143、および、前記プライマーに含有させた相補的な塩基配列144は、前記各遺伝子のSNPの可能性のある多型の塩基ごとに異なる塩基配列143,144を持つように合成する。すると、本実施の形態に係る処理では、4箇所のSNPにおいて、それぞれ2種類ずつの可能性のある多型の塩基に対しては、8種類の塩基配列143,144が必要となるので8種類の粒子状担体14が作製されることになる。例えば、第1の粒子状担体と、第2の粒子状担体は、前記遺伝子 ATase exon6に対応するものであって、タグDNA142として、Tag1(塩基C)およびTag3 (塩基T)を用い、第3の粒子状担体および第4の粒子状担体は、前記遺伝子 ATase exon8に対応するものであって、タグDNA142として、Tag4(塩基A)およびTag2(塩基G)を用い、第5の粒子状担体および第6の粒子状担体は、前記遺伝子 CYP2C19 exon5に対応するものであって、タグDNA142として、Tag7(塩基A),Tag6(塩基G)を用い、第7の粒子状担体および第8の粒子状担体は、前記遺伝子 CYP2D6 exon1に対応するものであって、タグDNA142として、Tag9(塩基C),Tag10(塩基T)を用いるものである。
【0217】
このようにして作製された前記ビオチン化した8種類の前記所定の塩基配列143を有するタグDNA142を結合した8種類の粒子状担体14を予め定めた順序、前述した第1の粒子状担体から第8の粒子状担体の順序にしたがって配列したものを各担体封入変形容器55内に封入したものを96本作製して、前記担体封入ヘッド70に行列状に装着する。該粒子状担体14を封入するには、例えば、前記各担体封入変形容器55の細管部62の前記配列の上側と下側部分に前記短管64,65を嵌合させることによって行う。前記複数の粒子状担体14を封入した前記96本の前記担体封入変形容器55を、2組の12行×4列のマトリクス状に分けて配列しておく。なお、前記複数種類の各粒子状担体を各種類ごとに標識物質を用いて相互に識別可能に形成する場合には、その各細管部62内の粒子状担体の配列順序は特に定める必要はない。なお、遮光性粒子を用いる場合には、例えば、反応用の粒子状担体と遮光性粒子とを交互に配列する。
【0218】
前記細管部62としては、例えば、ポリプロピレン製の前記細管部62を用いる。該細管部62の大きさとしては、例えば、前記粒子状担体として、1.0mm径のセラミック製を用いる場合には、例えば、1.1mm径の丸型を用いる。また、1.88mm径のセラミック製を用いる場合には、2.0mm径の丸型を用いる。さらに、遮光性粒子として、前記2.0mmのガラスビーズを用いるには、2.2mm径の丸型を用いる。
【0219】
ステップS3において、移動部(図示せず)を用いて、前記担体封入ヘッド70の2組のマトリクス状に配列された各担体封入変形容器55の各前記口部57が前記マイクロプレート73,74の各ウェル75からなる第1の部分行列に挿入可能な位置に移動させる。次に、前記移動部(図示せず)によって、前記口部57をマイクロプレート73,74の各ウェル75に一斉に挿入させる。前記担体封入変形容器55の変形については、所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして、変形壁面の変形の制御が行われる。すなわち、該可動部材71,72の位置は、基準状態においては、前記上端面60と接触した状態であって、その最大の変形容器の内部容積をV1とし、最小の変形容器の内部容積をV2とした場合に、基準状態の容積V0は、V1−V0≦V0−V2、すなわち(V1+V2)/2≦V0となるように定めることによって、吸引量(V1−V0)が吐出量(V0−V2)よりも小さくなるように基準量を設定することによって、吸引した液体の量が担体封入変形容器55内に残留することを防止することができる。すなわち、前記可動部材71,72は、前記担体封入変形容器55の内部容積がV0となるように前記担体封入変形容器55の前記上端面60を押圧した状態にある。
【0220】
次に、前記口部57を前記マイクロプレート73,74の各ウェル75に属する第1の部分行列に相当するウェル75に挿入した後、前記可動部材71,72を上方向に動かすことによって、各検体ごとに収容した前記ASPE産物148の混合液を前記担体封入変形容器55内に吸引することで、該液体と前記各粒子状担体14とを接触させて、前記タグDNA142の塩基配列143と、前記ASPE産物148の前記塩基配列143と相補性のある塩基配列144との間でハイブリダイゼーション反応を起こさせて、前記各粒子状担体14ごとに、対応するASPE産物148がある場合には、該ASPE産物148を結合させることになる。
【0221】
次に、ステップS4において、移動部(図示せず)を用いて、前記担体封入ヘッド70を洗浄液が収容されている前記マイクロプレート73,74の第2の部分行列にまで、前記移動経路としての前記行方向に列間隔だけ移動させて、前記口部57を前記第2の部分行列に属するウェル76に位置させて、一斉に挿入させる。次に、前記可動部材71,72を用いて基準位置から上方向および下方向に移動させることによって、吸引吐出を繰り返して洗浄する。その後、前記担体封入ヘッド70を、前記Dig-dUTP146と特異的に結合する前記AP標識Dig抗体147を収容したマイクロプレート(図示せず)にまで前記担体封入ヘッド70を移動させて、前記口部57を前記第1の部分行列に属するウェル(図示せず)に位置させて一斉に挿入させ、前記可動部材71,72を用いて吸引吐出を繰り返すことで、前記前記Dig-dUTP146と前記AP標識Dig抗体147とを結合させる。すると、各検体の各粒子状担体14の内、存在する多型に応じた種類のみに前記AP標識Dig抗体147が結合したASPE産物148が粒子状担体14に結合されていることになる。好ましくは、さらに洗浄液で洗浄した後、前記移動部(図示せず)を用いて、前記担体封入ヘッド70を前記移動経路としての前記行方向に列間隔だけ移動させて、前記口部57を前記第2の部分行列に属するウェル(図示せず)に位置させて、一斉に挿入させる。次に、前記可動部材71,72を用いて基準位置から上方向および下方向に移動させることによって、前記基質液149を前記担体封入変形容器55内に吸引および吐出を繰り返すことで前記基質液149を前記Digと反応させることによって化学発光を起こさせる。その際、前記担体封入ヘッド70に設けた前記櫛歯状光検出部78を用いて封入された前記粒子状担体14からの発光の検出を行う。化学発光の検出を行うには、前記櫛歯状光検出部78の櫛歯部材95、および櫛歯端95a,95bを,列方向に沿って前記光検出用孔98を、各担体封入変形容器55行(4個)ごとに順次移動させるとともに、該担体封入変形容器55を上方向に移動させることで、前記粒子状担体14ごとに光ファイバ101で受光することを繰り返して検出を行う。ある検体の遺伝子についての測定結果が図14のステップS4の写真に示されている。この検体の遺伝子については、第1の粒子状担体、第6の粒子状担体および第7の粒子状担体については、非常に弱い発光しか検出されていないことから、この検体の遺伝子ATase exon6のSNPについては、塩基Tであり、遺伝子ATase exon8のSNPについては、塩基A/Gであり、遺伝子CYP2C19 exon5のSNPについては、塩基Aであり、遺伝子CYP2D6 exon1のSNPについては、塩基Tであることがわかる。
【0222】
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解するために具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、前記実施の形態では、主として蛇腹によって変形を行なったが、例えば、蛇腹以外の形状をもつ変形壁面や、ゴム等の弾性体をその変形壁面の素材に使用することによっても実現することができる。また、前記担体封入変形容器の形状も前述したものに限られず、太管部や細管部に段差をもつものであっても良い。
【0223】
また、前記担体封入変形容器の担体封入ヘッドにおける配列は、前述した配列に限定されるものではなく、例えば、4,6,8,12,96,384本を一列状または行列状に配列したものがある。また、前記処理としては、DNAについてハイブリダイゼーションを用いたSNPsの検出についてのみ説明したが、この場合に限られず、例えば、抗原抗体反応を用いたタンパク質の検出等に用いることもできる。また、前記担体封入ヘッドとして、48本の担体封入変形容器に対して1の可動部材を用いたものを2組、96個のウェルを有する4枚のマイクロプレートを用いた処理を行った場合のみを説明したが、この場合に限られることなく、例えば、24本の担体封入変形容器に対して1の可動部材を用いたものを4組、96個のウェルを有する8枚のマイクロプレートを用いた処理を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明に係る担体封入変形容器、担体封入変形容器処理装置および担体封入変形容器処理方法は、種々の生体物質等を含む溶液の処理が要求される分野、例えば、工業分野、食品、農産、水産加工等の農業分野、製薬分野、衛生、保険、免疫、疾病、遺伝等を扱う医療分野、化学若しくは生物学等の分野等、あらゆる分野に関係するものである。本発明は、特に、多数の試薬や物質を用いた一連の処理を所定の順序に連続的に処理を実行する場合に有効である。
【符号の説明】
【0225】
10 担体封入変形容器処理装置
11,27,36,55,103,113,121,134 担体封入変形容器
14,15 粒子状担体
18,59,109,127 蛇腹
70 担体封入ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部と、
該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部と、
前記収容部内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体とを有する担体封入変形容器。
【請求項2】
前記収容部は、前記変形壁面で形成された1または2以上の変形部と、該変形部と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ口部と連通して外部から内部を測定可能な非変形部とを有し、前記担体は該非変形部内に封入された請求項1に記載の担体封入変形容器。
【請求項3】
前記収容部は、少なくとも2つの前記変形部を有し、各変形部の変形壁面の変形に基づく収容部の最大変化可能量が異なるように形成された請求項2に記載の担体封入変形容器。
【請求項4】
前記最大変化可能量が最も大きい前記変形部または唯一の前記変形部は、前記口部および前記収容部の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と該変形壁面との交点において該直線方向に沿って前記変形壁面が変形可能に形成された請求項2または請求項3のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項5】
前記担体は、複数種類の化学物質が結合しまたは結合可能であって外部から識別可能な複数個の粒子状担体または複数組の粒子状担体の集合である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項6】
前記複数個の粒子状担体の各粒子状担体または複数組の各粒子状担体の集合に属する少なくとも1の各粒子状担体は、前記化学物質の種類、前記粒子状担体ごと、または前記粒子状担体の集合ごとに応じて、前記収容部への導入前に、相互に識別可能に標識化された請求項5に記載の担体封入変形容器。
【請求項7】
前記担体は、複数種類の化学物質が外部から識別可能な予め定めた複数の異なる位置に結合しまたは結合可能であって、線状、棒状、平板状もしくはブロック状に形成された請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項8】
前記非変形部は、内部に液体を貯留可能な太管部、それよりも細い細管部または薄い薄層部、および前記太管部および前記細管部または前記薄層部と連通し前記太管部と前記細管部または前記薄層部との間に設けた移行部とを有し、前記口部は、前記細管部または薄層部と連通して設けられ、前記担体は、前記細管部もしくは前記薄層部のいずれかに封入された請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項9】
前記口部から前記収容部内に流入した流体と接触可能な状態で前記収容部内に前記担体を封入する封入部を有する請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項10】
前記封入部は、前記担体を前記収容部内に導入可能となるように該収容部の壁面に穿設された導入孔、および、該導入孔を塞ぐ蓋部を有する請求項9に記載の担体封入変形容器。
【請求項11】
前記非変形部の内、前記担体が封入された部分が着脱自在に取りつけられた請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項12】
前記変形壁面には、蛇腹が形成されている請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項13】
壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部、および、前記收容部内に収容された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を有する1または2以上の担体封入変形容器と、1または2以上の前記担体封入変形容器を前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように支持し、該担体封入変形容器の前記変形壁面を変形させることによって、該担体封入変形容器に対する液体の吸引吐出を行う1または2以上の担体封入ヘッドとを有する担体封入変形容器処理装置。
【請求項14】
種々の溶液、懸濁液等の液体を収容可能な複数の容器を有する容器群と、前記担体封入ヘッドを該容器群に対して相対的に移動させるヘッド移動部とをさらに有するとともに、前記容器群に設けられた各容器は、前記口部を一斉に挿入可能に設けられた請求項13に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項15】
前記容器はウェルであり、前記容器群は前記ウェルがマトリクス状に配列された少なくとも1のマイクロプレートであり、前記担体封入ヘッドの前記担体封入変形容器はマトリクス状に配列され、前記担体封入ヘッドに設けられた全前記口部は、前記マイクロプレートの全部または一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、対応する前記ウェルの行間隔または列間隔の自然数倍に各々設定され、対応する全前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1である請求項14に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項16】
制御部をさらに有し、該制御部は、前記移動手段に対して、全前記口部が前記マイクロプレートの対応する第1のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させた後に、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させて全前記口部を前記マイクロプレートの対応する第2のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させる請求項15に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項17】
前記担体封入ヘッドの移動経路に沿った各ウェル部分行列には、処理の各工程で必要とする溶液または懸濁液等の液体が該工程の順序に応じて収容された該工程の順序に応じて収容された請求項16に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記担体封入ヘッドに設けられた同一の口部が挿入可能な前記マイクロプレート内の各ウェル群に属する全ウェルに対して前記口部が挿入可能な状態に位置するように前記担体封入ヘッドを順次移動させる請求項13ないし請求項17のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項19】
前記担体封入ヘッドには、前記収容部内に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記収容部に対して接離可能に設けた2以上の磁石を有する磁力手段が設けられた請求項13ないし請求項18のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項20】
前記担体封入ヘッドには、前記収容部内の状態を検出する光検出手段をさらに有する請求項12ないし請求項19のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項21】
前記光検出手段は、前記收容部の前記非変形部の外部に、該非変形部の周囲を取り囲むように該非変形部に近接して配置された、1または2以上の受光端子、または1または2以上の受光端子および少なくとも1の照射端子を有し、前記非変形部の内粒子状担体を収容可能な全域を走査するように相対的に移動可能である請求項20に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項22】
前記担体封入ヘッドは、前記口部および前記收容部の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と該変形壁面との交点において該直線方向に沿って前記変形壁面を変形させる請求項12ないし請求項21のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項23】
前記担体封入ヘッドは、前記2以上の担体封入変形容器を支持可能な担体収容器支持部と、前記担体封入変形容器の前記変形壁面の所定変形方向に沿って一斉に進退動作可能な可動部材とを有する請求項13ないし請求項22のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項24】
前記変形壁面の変形、および/または、前記担体封入ヘッドと前記容器群との間の移動を、前記担体封入変形容器の個数もしくは構造、吸引吐出すべき液体、そこに含まれる物質、その量、その収容位置、その温度、もしくはその濃度,処理内容、または指示に基づいて制御する制御部を有する請求項13ないし請求項23のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項25】
前記変形壁面の変形について所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして、前記変形壁面の変形の制御が行われる請求項13ないし請求項24のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項26】
前記口部は下端に設けられ、前記收容部は該口部の上方に設けられ、該収容部を囲む壁面の一部に、その内壁面を上下に仕切るようにして上下方向に変形可能な変形壁面を設け、前記收容部の上端と前記可動部材とが接触または接続可能に設けられた請求項13ないし請求項25のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項27】
前記収容部は、前記可動部材と接触または接続可能であって可動部材によって変形可能な変形壁面を有し気体を収容可能な変形部と、該変形部と連通し変形がされない非変形壁面で形成され先端に前記口部を有し液体を貯留可能な非変形部を有する請求項13ないし請求項26のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項28】
壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部、および前記収容部内に収容された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を有する2以上の担体封入変形容器を、前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように担体封入ヘッドに支持させる支持工程と、
該担体封入ヘッドを移動する移動工程と、
前記口部を容器群内の容器内に挿入して前記変形壁面を一斉に変形させる変形工程とを有する担体封入変形容器処理方法。
【請求項29】
前記変形工程は、前記変形壁面の変形について所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして前記変形壁面の変形を行う請求項28に記載の担体封入変形容器処理方法。
【請求項30】
前記口部は下端に設けられ、前記変形壁面は、前記収容部を囲む壁面の一部に上下方向に変形可能となるように設けられ、前記収容部は、前記口部の上方に設けられ、前記変形壁面を有し気体を収容可能な変形部と、該変形部と連通し前記変形壁面を有せず前記口部を有して液体を貯留可能な非変形部とを有し、前記変形工程は、前記収容部の上端面に可動部材を接触しまたは接続させる工程と、前記可動部材を下降させおよび/または上昇させる工程を有する請求項28または請求項29に記載の担体封入変形容器処理方法。
【請求項31】
前記可動部材の上昇および下降は、前記変形壁面の変形を行う上下方向に沿った所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして行う請求項30に記載の担体封入変形容器処理方法。
【請求項32】
前記液体には、所定物質を結合可能または所定物質と結合した磁性体が懸濁し、前記収容部または前記容器群の容器内に対して磁場を及ぼすことによって前記磁性体を前記収容部または前記容器の内壁に吸着させて分離する工程を有する請求項28ないし請求項31のいずれかに記載の担体封入変形容器処理方法。
【請求項33】
マトリクス状にウェルが配列されたマイクロプレートと、流体の吸引および吐出が可能でマトリクス状に配列された担体封入変形容器の口部を有する1または2以上の担体封入ヘッドとを有し、前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定され、対応する前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1である前記担体封入ヘッドを前記マイクロプレートに対して相対的に移動させて前記マイクロプレート内の第1のウェル部分行列に属するウェルに前記各担体封入ヘッドに設けられた全口部を一斉に挿入可能に位置させる第1の工程と、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させて前記全口部を前記マイクロプレート内の対応する第2のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させる第2の工程とを有する担体封入変形容器処理方法。
【請求項1】
壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部と、
該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部と、
前記収容部内に略静止状態で封入された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体とを有する担体封入変形容器。
【請求項2】
前記収容部は、前記変形壁面で形成された1または2以上の変形部と、該変形部と連通し変形がされない非変形壁面で囲まれ口部と連通して外部から内部を測定可能な非変形部とを有し、前記担体は該非変形部内に封入された請求項1に記載の担体封入変形容器。
【請求項3】
前記収容部は、少なくとも2つの前記変形部を有し、各変形部の変形壁面の変形に基づく収容部の最大変化可能量が異なるように形成された請求項2に記載の担体封入変形容器。
【請求項4】
前記最大変化可能量が最も大きい前記変形部または唯一の前記変形部は、前記口部および前記収容部の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と該変形壁面との交点において該直線方向に沿って前記変形壁面が変形可能に形成された請求項2または請求項3のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項5】
前記担体は、複数種類の化学物質が結合しまたは結合可能であって外部から識別可能な複数個の粒子状担体または複数組の粒子状担体の集合である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項6】
前記複数個の粒子状担体の各粒子状担体または複数組の各粒子状担体の集合に属する少なくとも1の各粒子状担体は、前記化学物質の種類、前記粒子状担体ごと、または前記粒子状担体の集合ごとに応じて、前記収容部への導入前に、相互に識別可能に標識化された請求項5に記載の担体封入変形容器。
【請求項7】
前記担体は、複数種類の化学物質が外部から識別可能な予め定めた複数の異なる位置に結合しまたは結合可能であって、線状、棒状、平板状もしくはブロック状に形成された請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項8】
前記非変形部は、内部に液体を貯留可能な太管部、それよりも細い細管部または薄い薄層部、および前記太管部および前記細管部または前記薄層部と連通し前記太管部と前記細管部または前記薄層部との間に設けた移行部とを有し、前記口部は、前記細管部または薄層部と連通して設けられ、前記担体は、前記細管部もしくは前記薄層部のいずれかに封入された請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項9】
前記口部から前記収容部内に流入した流体と接触可能な状態で前記収容部内に前記担体を封入する封入部を有する請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項10】
前記封入部は、前記担体を前記収容部内に導入可能となるように該収容部の壁面に穿設された導入孔、および、該導入孔を塞ぐ蓋部を有する請求項9に記載の担体封入変形容器。
【請求項11】
前記非変形部の内、前記担体が封入された部分が着脱自在に取りつけられた請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項12】
前記変形壁面には、蛇腹が形成されている請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の担体封入変形容器。
【請求項13】
壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部、および、前記收容部内に収容された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を有する1または2以上の担体封入変形容器と、1または2以上の前記担体封入変形容器を前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように支持し、該担体封入変形容器の前記変形壁面を変形させることによって、該担体封入変形容器に対する液体の吸引吐出を行う1または2以上の担体封入ヘッドとを有する担体封入変形容器処理装置。
【請求項14】
種々の溶液、懸濁液等の液体を収容可能な複数の容器を有する容器群と、前記担体封入ヘッドを該容器群に対して相対的に移動させるヘッド移動部とをさらに有するとともに、前記容器群に設けられた各容器は、前記口部を一斉に挿入可能に設けられた請求項13に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項15】
前記容器はウェルであり、前記容器群は前記ウェルがマトリクス状に配列された少なくとも1のマイクロプレートであり、前記担体封入ヘッドの前記担体封入変形容器はマトリクス状に配列され、前記担体封入ヘッドに設けられた全前記口部は、前記マイクロプレートの全部または一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、対応する前記ウェルの行間隔または列間隔の自然数倍に各々設定され、対応する全前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1である請求項14に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項16】
制御部をさらに有し、該制御部は、前記移動手段に対して、全前記口部が前記マイクロプレートの対応する第1のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させた後に、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させて全前記口部を前記マイクロプレートの対応する第2のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させる請求項15に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項17】
前記担体封入ヘッドの移動経路に沿った各ウェル部分行列には、処理の各工程で必要とする溶液または懸濁液等の液体が該工程の順序に応じて収容された該工程の順序に応じて収容された請求項16に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記担体封入ヘッドに設けられた同一の口部が挿入可能な前記マイクロプレート内の各ウェル群に属する全ウェルに対して前記口部が挿入可能な状態に位置するように前記担体封入ヘッドを順次移動させる請求項13ないし請求項17のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項19】
前記担体封入ヘッドには、前記収容部内に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記収容部に対して接離可能に設けた2以上の磁石を有する磁力手段が設けられた請求項13ないし請求項18のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項20】
前記担体封入ヘッドには、前記収容部内の状態を検出する光検出手段をさらに有する請求項12ないし請求項19のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項21】
前記光検出手段は、前記收容部の前記非変形部の外部に、該非変形部の周囲を取り囲むように該非変形部に近接して配置された、1または2以上の受光端子、または1または2以上の受光端子および少なくとも1の照射端子を有し、前記非変形部の内粒子状担体を収容可能な全域を走査するように相対的に移動可能である請求項20に記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項22】
前記担体封入ヘッドは、前記口部および前記收容部の内部を通過して前記変形壁面を貫く直線と該変形壁面との交点において該直線方向に沿って前記変形壁面を変形させる請求項12ないし請求項21のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項23】
前記担体封入ヘッドは、前記2以上の担体封入変形容器を支持可能な担体収容器支持部と、前記担体封入変形容器の前記変形壁面の所定変形方向に沿って一斉に進退動作可能な可動部材とを有する請求項13ないし請求項22のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項24】
前記変形壁面の変形、および/または、前記担体封入ヘッドと前記容器群との間の移動を、前記担体封入変形容器の個数もしくは構造、吸引吐出すべき液体、そこに含まれる物質、その量、その収容位置、その温度、もしくはその濃度,処理内容、または指示に基づいて制御する制御部を有する請求項13ないし請求項23のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項25】
前記変形壁面の変形について所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして、前記変形壁面の変形の制御が行われる請求項13ないし請求項24のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項26】
前記口部は下端に設けられ、前記收容部は該口部の上方に設けられ、該収容部を囲む壁面の一部に、その内壁面を上下に仕切るようにして上下方向に変形可能な変形壁面を設け、前記收容部の上端と前記可動部材とが接触または接続可能に設けられた請求項13ないし請求項25のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項27】
前記収容部は、前記可動部材と接触または接続可能であって可動部材によって変形可能な変形壁面を有し気体を収容可能な変形部と、該変形部と連通し変形がされない非変形壁面で形成され先端に前記口部を有し液体を貯留可能な非変形部を有する請求項13ないし請求項26のいずれかに記載の担体封入変形容器処理装置。
【請求項28】
壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部、該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部、および前記収容部内に収容された所定の物質が結合しまたは結合可能な担体を有する2以上の担体封入変形容器を、前記変形壁面の変形によって前記口部が変動しないように担体封入ヘッドに支持させる支持工程と、
該担体封入ヘッドを移動する移動工程と、
前記口部を容器群内の容器内に挿入して前記変形壁面を一斉に変形させる変形工程とを有する担体封入変形容器処理方法。
【請求項29】
前記変形工程は、前記変形壁面の変形について所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして前記変形壁面の変形を行う請求項28に記載の担体封入変形容器処理方法。
【請求項30】
前記口部は下端に設けられ、前記変形壁面は、前記収容部を囲む壁面の一部に上下方向に変形可能となるように設けられ、前記収容部は、前記口部の上方に設けられ、前記変形壁面を有し気体を収容可能な変形部と、該変形部と連通し前記変形壁面を有せず前記口部を有して液体を貯留可能な非変形部とを有し、前記変形工程は、前記収容部の上端面に可動部材を接触しまたは接続させる工程と、前記可動部材を下降させおよび/または上昇させる工程を有する請求項28または請求項29に記載の担体封入変形容器処理方法。
【請求項31】
前記可動部材の上昇および下降は、前記変形壁面の変形を行う上下方向に沿った所定基準位置を設定し、該基準位置を基準にして行う請求項30に記載の担体封入変形容器処理方法。
【請求項32】
前記液体には、所定物質を結合可能または所定物質と結合した磁性体が懸濁し、前記収容部または前記容器群の容器内に対して磁場を及ぼすことによって前記磁性体を前記収容部または前記容器の内壁に吸着させて分離する工程を有する請求項28ないし請求項31のいずれかに記載の担体封入変形容器処理方法。
【請求項33】
マトリクス状にウェルが配列されたマイクロプレートと、流体の吸引および吐出が可能でマトリクス状に配列された担体封入変形容器の口部を有する1または2以上の担体封入ヘッドとを有し、前記口部の行間隔または列間隔の少なくとも1は、前記ウェルの行間隔または列間隔の2以上の自然数倍に設定され、対応する前記口部の行数または列数の少なくとも1は前記ウェルの行数または列数の前記自然数分の1である前記担体封入ヘッドを前記マイクロプレートに対して相対的に移動させて前記マイクロプレート内の第1のウェル部分行列に属するウェルに前記各担体封入ヘッドに設けられた全口部を一斉に挿入可能に位置させる第1の工程と、前記担体封入ヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させて前記全口部を前記マイクロプレート内の対応する第2のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させる第2の工程とを有する担体封入変形容器処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−150118(P2012−150118A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33753(P2012−33753)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2006−164042(P2006−164042)の分割
【原出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2006−164042(P2006−164042)の分割
【原出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]