説明

担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法

【課題】 担体支持容器において、プローブが固定化された担体を支持する担体支持部を揺動させて、容器に収容された、生体関連分子を含有する反応溶液をかく拌し、プローブと生体関連分子との結合反応を促進することを可能とする。
【解決手段】 溶液を入れるための容器本体20と、プローブが固定化された担体30を支持する担体支持部12及び容器本体20に係合する蓋部11を具備した容器蓋10とを有し、容器本体20と容器蓋10とを係合させたとき、担体30が、容器本体20内の底部に対面し、かつ容器本体20と容器蓋10とが係合された状態で、相対的に移動する担体支持容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブが固定化された担体を支持可能な容器に関し、特に容器に収容された溶液に、担体を浸漬して用いる担体支持容器及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品の生産や、遺伝子治療、再生医療、免疫療法、環境や食品の検査等の分野において、マイクロアレイやDNAチップなどの、プローブが固定化された担体を用いて、核酸やタンパク質などの生体関連分子を検出することが広く行われている。プローブとは、被検物質を結合して検出可能にするものであり、例えばDNA断片などが用いられる。
このようなプローブが固定化された担体を用いた生体関連分子の検出においては、被検物質を含む溶液が微少量であることが多く、反応速度が遅いことや基板上における反応にムラが生じやすいことが問題となっていた。
【0003】
このような問題の解決手段として、特許文献1に記載の溶液をかく拌する方法を挙げることができる。
この方法によれば、被検物質を含む溶液にガラスビーズや磁気ビーズなどの微粒子又は気泡を混合するとともに、プローブが固定化された担体として、その表面にこれらの微粒子又は気泡が接触しない構造のものを用いてかく拌することで、担体に固定化されたプローブと被検物質との反応を促進し、シグナル強度を向上させることが可能とされている。
【0004】
【特許文献1】特許第4420020号公報
【特許文献2】特開2009−133757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなかく拌方法では、機械的な制御が必要になり、専用の装置が必要になるという問題があった。
そこで、本発明者らは鋭意研究し、容器の形状を工夫することにより、容器蓋と容器本体とを相対的に回転させることで、プローブが固定化された担体を支持する担体支持部を容器に収容された溶液内で揺動させことができる担体支持容器を案出した。このような容器によれば、簡易な構成によって、容器に収容された溶液を適切にかく拌することが可能である。
すなわち、本発明は、担体支持容器を、溶液を入れるための容器本体と、プローブが固定化された担体を支持する担体支持部及び容器本体に係合する蓋部からなる容器蓋とを備えたものとし、容器本体と容器蓋とを係合させたとき、担体が容器本体内の底部に対面し、容器本体と容器蓋とが係合された状態で、相対的に回転する構成とすることで、担体支持部を容器に収容された溶液内で揺動させ、溶液をかく拌できるようになっている。
【0006】
ここで、容器本体と容器蓋とが係合された状態で相対的に回転する容器が記載されている文献として、特許文献2を挙げることができる。
しかしながら、特許文献2に記載の容器は、プローブが固定化された担体を支持可能なものではなく、また容器本体と容器蓋とを相対的に回転させることによって、容器内の溶液をかく拌可能なものではなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、プローブが固定化された担体を支持可能な容器において、容器本体と容器蓋とを係合させて、担体を溶液に浸漬させ、容器本体と容器蓋とを相対的に回転させることで溶液をかく拌することが可能な担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の担体支持容器は、溶液を入れるための容器本体と、プローブが固定化された担体を支持する担体支持部及び容器本体に係合する蓋部を具備した容器蓋とを有し、容器本体と容器蓋とを係合させたとき、担体が、容器本体内の底部に対面し、かつ容器本体と容器蓋とが係合された状態で、相対的に移動する構成としてある。
ここで、「相対的に移動する」とは、少なくとも対象物体の一部が相対的に移動する運動を含み、回転など対象物体の重心の位置が変化しない移動も含まれる。
【0009】
また、本発明の担体支持容器の使用方法は、溶液を入れるための容器本体と、プローブが固定化された担体を支持する担体支持部及び容器本体に係合する蓋部を具備した容器蓋とを有する担体支持容器の使用方法であって、容器本体に溶液を入れ、容器本体と容器蓋とを係合させて、担体を溶液に浸漬させ、容器本体と容器蓋とが係合された状態で、これらを相対的に移動させることにより、溶液を攪拌する方法としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、担体支持容器の容器本体と容器蓋とを係合させながら相対的に移動させることにより、溶液をかく拌することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態の担体支持容器の構成を示す図である。
【図2】本発明の第一実施形態の担体支持容器の容器蓋と容器本体の相対的回転を示す図である。
【図3】本発明の第二実施形態の担体支持容器の容器本体における案内溝、及び容器蓋の断面を示す図である。
【図4】本発明の第三実施形態の担体支持容器の容器本体における案内溝を示す図である。
【図5】本発明の第四実施形態の担体支持容器の容器本体における案内溝を示す図である。
【図6】本発明の第五実施形態の担体支持容器の容器蓋におけるかく拌翼を示す図である。
【図7】本発明の第六実施形態の担体支持容器の容器蓋におけるかく拌突起を示す図である。
【図8】本発明の第七実施形態の担体支持容器の容器本体におけるかく拌突起を示す図である。
【図9】本発明の第八実施形態の担体支持容器の容器本体におけるかく拌翼を示す図である。
【図10】本発明の第九実施形態の担体支持容器の容器蓋を示す図である。
【図11】本発明の第十実施形態の担体支持容器の容器蓋を示す図である。
【図12】本発明の第十一実施形態の担体支持容器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態の担体支持容器の構成を示す図であり、図2は、本実施形態の担体支持容器の容器蓋と容器本体の相対的回転を示す図である。
【0013】
本実施形態の担体支持容器は、容器蓋10と容器本体20を有している。容器蓋10は、容器本体20に係合する蓋部11と、プローブが固定化された担体30を支持する担体支持部12とを具備している。
蓋部11は、天板11−1とスカート部11−2を備え、スカート部11−2の内側(内壁)には容器本体20に係合するための手段が備えられている。本実施形態では、この容器本体20に係合するための手段として、ネジ溝11−21が用いられている。
【0014】
容器本体20には、容器蓋10に係合するための手段が備えられている。この容器蓋10に係合するための手段は、同図において、容器本体20の上部外側(外壁)の表面上にネジ山21として設けられている。
なお、上記の例とは反対に、蓋部11にネジ山を、容器本体20にネジ溝を設けることもできる。
【0015】
また、担体支持部12の下端には、担体30を取り付けることができる。担体支持部12への担体30の取り付け方法は、特に限定されないが、例えば、担体支持部12の下端に形成された突出部の中央に嵌め込む方法、あるいは担体30を担体支持部12の下端に粘着剤により貼り付ける方法などを挙げることができる。
さらに、容器本体20には、担体30上のプローブと反応させるための生体関連分子を含む反応溶液40が収容される。
【0016】
容器本体20の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ素酸ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂フェノール、ポリアミド、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィンなどの合成樹脂、合成ゴム及びエラストマー、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸などを用いることができる。これらは単独、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
容器蓋10の材料は、担体支持部12により担体30を支持でき、また容器本体20と係合でき、担体30を取り付けた担体支持部12の下端を反応溶液40に浸漬できるものであれば、特に限定されず、容器本体20と同様の材料やその混合物を用いることができる。
【0018】
本実施形態の担体支持容器は、プローブと生体関連分子との結合反応に用いられ、この結合反応の後に、担体30が洗浄され、次いでプローブに結合した生体関連分子の検出に用いられる。
この生体関連分子の検出は、生体関連分子に結合している蛍光物質に基づき行われることが多いため、不要な光(励起光の散乱など)が発生しないように、容器本体20や担体支持部12の材料には、自家蛍光がなるべく低い材料を用いることが好ましい。
【0019】
自家蛍光が低い材料としては、カーボン、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Co及びCuの酸化物、Si、Ti、Ta、Zr及びCrの炭化物等を例示することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、フェノール、メラミン、ユリア、不飽和ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、ジアリルフタレート、珪素、ポリイミド、ビニルエステル、塩化ビニル、ABS、フッ素、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドなどの合成樹脂、合成ゴム、エラストマー、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上と混合しても良い。
【0020】
担体30は、DNAチップやマイクロアレイなどの、生体関連分子を検出するための装置であり、プローブが固定化されている。プローブは、特定の遺伝子、タンパク質などの生体関連分子が他と区別しにくく直接には選択が困難である場合に、生体関連分子に結合させることで、検出可能にする検出子である。例えば、生体関連分子として、特定の菌のDNA断片を検出する場合、プローブには、この生体関連分子に結合するDNA断片が用いられ、担体支持容器において生体関連分子とのハイブリダイゼーションが行われる。標的の生体関連分子を蛍光物質などで予め標識しておくことで、プローブに結合した生体関連分子を検出することができるようになっている。
【0021】
反応溶液40は、生体関連分子とプローブの結合反応に用いられる溶液である。この反応溶液40には、生体関連分子の他、例えば3×SSC クエン酸−生理食塩水にSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を添加した緩衝液などが含有される。また、この生体関連分子としては、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により増幅された核酸などを用いることができる。
【0022】
本実施形態の担体支持容器の使用方法は、以下のような工程を有するものとすることができる。
まず、容器本体20に反応溶液40を入れ、容器蓋10を容器本体20に取り付ける。このとき、容器本体20と容器蓋10とを係合させると、図1及び図2に示すように、担体支持容器に支持された担体30は、容器本体20内における反応溶液40に浸漬させた状態で、容器本体20内の底部に対面する。
次に、容器本体20と容器蓋10とを係合させたまま、左右に交互に相対的に回転させる。
このとき、担体30は反応溶液40に浸漬された状態で、反応溶液40内で左右に回転しつつ、上下に移動する。
【0023】
このように本実施形態の担体支持容器とその使用方法によれば、簡易な構成によって優れたかく拌効果を得ることができる。
すなわち、担体支持部12の微少な上下揺動を、容器蓋の回転距離により制御することができ、担体支持容器内に収容された反応溶液40を効率良くかく拌して、担体30上のプローブと反応溶液40内の生体関連分子との結合反応を促進させることが可能となる。かく拌実験の結果、従来数時間かかっていた当該反応時間を、約15分程度に短縮できることが分かっている。
【0024】
なお、上記の例では、担体支持容器を、プローブと生体関連分子との結合反応のために使用する場合について説明したが、本実施形態は、このような使用に限定されるものではなく、容器本体20に収容された液体をかく拌させる使用方法であれば、その他の用途に用いることもできる。例えば、容器本体20に洗浄液を収容して、担体30を支持する容器蓋10を容器本体20に対して相対的に回転させて使用することも好ましい。このようにすれば、担体30を洗浄液に浸漬した状態で洗浄液をかく拌することができ、担体30に結合しなかった生体関連分子などを効率的に除去することが可能になる。これは、以下の実施形態においても同様である。
【0025】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図3を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器本体における案内溝、及び容器蓋の断面を示す図である。
本実施形態は、容器蓋10aと容器本体20aとが、ネジ構造ではなく、案内溝と二以上の突起により係合される点で第一実施形態と異なっている。その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができる。
【0026】
図3の(a)には、本実施形態の担体支持容器における容器本体20aの上部外側の表面上に設けられた案内溝22aが示されている。また、図3の(b)には、容器蓋10aのスカート部11a−2の内側に形成された突起11a−22が示されている。案内溝22aに、突起11a−22を係合させることで、容器蓋10aを容器本体20aに取り付けたり、取り外したりすることができるようになっている。
【0027】
案内溝22aは、開閉溝22a−1と移動溝22a−2とからなっており、容器本体20aにおいて二以上設けられる。また、突起11a−22も、容器蓋10aにおいて二以上設けられる。この突起11a−22を開閉溝22a−1に沿って移動させることで、容器蓋10aを容器本体20aに取り付けて、蓋を閉めることができる。
また、一度蓋を閉めた後に、容器蓋10aと容器本体20aとを互いに押し合いながら、突起11a−22を移動溝22a−2に沿って左右に移動させることで、容器蓋10aと容器本体20aとを相対的に回転させつつ、上下に移動させることができる。
【0028】
さらに、一度蓋を閉めた状態から、容器蓋10aを上方に引きながら突起11a−22を開閉溝22a−1に沿って移動させることで、容器蓋10aを容器本体20aから取り外して、蓋を開けることができる。
このように本実施形態の担体支持容器は、容器蓋10aを容器本体20aに取り付けた状態で、左右に回転させることにより、担体支持部12aを容器本体20aに対して回転させつつ上下動させることができる。
【0029】
ここで、移動溝22a−2は、同図の例では、左端部において開閉溝22a−1と同じ溝を共有し、この左端部から下方に湾曲し、最下部から再び上方に湾曲して右端部の行き止まりに到達する波状に形成されている。これにより、突起11a−22が移動溝22a−2に沿って移動すると、容器蓋10aは、蓋を閉めた状態から、さらに下方に移動したのち、再び蓋を閉めた状態と同じ高さに戻るようになっている。なお、移動溝22a−2の右端部の底面からの高さを、左端部の底面からの高さと同じにする必要はなく、一方を他方より高くしても良い。
次に、容器蓋10aを、容器本体20aに対して、上記回転の方向とは左右反対の方向に回転させることで、突起11a−22が移動溝22a−2に沿って戻り、再び上記の蓋を閉めた状態の位置に移動する。
【0030】
以上の動作により、容器蓋10aを、容器本体20aに対して左右に一度回転させることで、容器蓋10aは容器本体20aに対して上下に二度振幅運動を行う。このような容器蓋10aを容器本体20aに対して左右に回転させる動作を繰り返すことで、容器蓋10aの担体支持部12aが、容器本体20aに収容された反応溶液40内で揺動され、反応溶液40を効率的にかく拌することが可能になっている。
【0031】
なお、本実施形態において、移動溝22a−2は下方に一回湾曲した形状となっているが、これに限定されるものではなく、突起11a−22を移動溝22a−2に沿って移動させることで、容器蓋10aを容器本体20aに対して上下に移動させることができるものであれば、その他の形状でも良い。例えば、移動溝22a−2を下方に二回以上湾曲した波状に形成することもできる。
【0032】
本実施形態の担体支持容器の使用方法は、以下のような工程を有するものとすることができる。
まず、容器本体20aに反応溶液40を入れて、容器蓋10aの突起11a−22を、容器本体20aの開閉溝22a−1に沿って挿入して係合させる。このとき、突起11a−22を開閉溝22a−1の左端部奥まで移動させることで、容器蓋10aを容器本体20aに対してしっかりと締め付け、閉じた状態にすることができる。この状態において、担体支持部12aの先端に取り付けられた担体30は、容器本体20a内の底部に対面し、反応溶液40に浸漬された状態となっている。
次に、容器蓋10aと容器本体20aとを互いに押し合うようにして、左右に回転させる。このとき、突起11a−22は、移動溝22a−2に沿って移動し、容器蓋10aにおける担体支持部12aが、容器本体20aに収容された反応溶液40で左右に回転しつつ上下動することで、反応溶液40が効率的にかく拌される。
【0033】
このように本実施形態の担体支持容器とその使用方法によれば、容器蓋10aを容器本体20aに取り付けた後、容器蓋10aを容器本体20aに押しつけるようにして左右に交互に回転させることで、容器本体20a内の反応溶液40を効率的にかく拌することができる。
このため、担体30上のプローブと反応溶液40内の生体関連分子との結合反応を促進させることが可能となる。
【0034】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図4を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器本体における案内溝を示す図である。
本実施形態は、容器本体20bが、一又は二以上の上下動突起23bが設けられた移動溝22b−2を備えた案内溝22bを有している点で第二実施形態と異なっている。その他の点については、第二実施形態と同様のものとすることができ、容器蓋10aは、第二実施形態と同様のものを用いることができる。
【0035】
すなわち、本実施形態では、図4に示すように、案内溝22bは、開閉溝22b−1と移動溝22b−2とからなっており、開閉溝22b−1に沿って突起11a−22を移動させることで、容器蓋10aを容器本体20bに取り付けて、蓋を閉めることができる。
また、一度蓋を閉めた後に、容器蓋10aと容器本体20bとを互いに押し合いながら、突起11a−22を移動溝22b−2に沿って左右に移動させることで、容器蓋10aと容器本体20bとを相対的に回転させつつ、上下に移動させることができる。
さらに、一度蓋を閉めた状態から、容器蓋10aを上方に引きながら突起11a−22を開閉溝22b−1に沿って移動させることで、容器蓋10aを容器本体20bから取り外して、蓋を開けることができる。
【0036】
ここで、移動溝22b−2は、容器本体20bの底部に平行に、容器本体20bの上部外側表面上に備えられ、溝の下部に一又は二以上の上下動突起23bが備えられている。容器蓋10aにおける突起11a−22を、蓋を閉めた状態の位置から移動溝22b−2に沿って移動させると、突起11a−22が上下動突起23bを通過する際に上下に振動するため、容器蓋10aにおける担体支持部12aは、容器本体20bにおける反応溶液40内で上下に揺動されるようになっている。
【0037】
上下動突起23bの形状やサイズ、個数、位置は、突起11a−22が移動溝22b−2を移動できるものであれば、特に限定されない。
また、図4の例では、移動溝22b−2を容器本体20bの底部に平行に形成しているが、第二実施形態の移動溝22a−2のように、下方に湾曲した波状のものにすることもできる。
【0038】
このように本実施形態の担体支持容器とその使用方法によれば、容器蓋10aを容器本体20bに取り付けた後、容器蓋10aを容器本体20bに押しつけるようにして左右に交互に回転させることで、容器蓋10aと容器本体20bに断続的に上下動が生じる。
これによって、容器本体20b内の反応溶液40を効率的にかく拌することが可能になっている。
【0039】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図5を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器本体における案内溝を示す図である。
本実施形態は、容器本体20cが、全周に連続した移動溝22c−2を備えた案内溝22cを有している点で第二実施形態と異なっている。その他の点については、第二実施形態と同様のものとすることができ、容器蓋10aは、第二実施形態と同様のものを用いることができる。
【0040】
すなわち、案内溝22cは、開閉溝22c−1と移動溝22c−2とを備えており、移動溝22c−2は容器本体20cの全周に連続してつながっている。開閉溝22c−1に沿って突起11a−22を移動させ、容器蓋10aを容器本体20cに取り付けることで、蓋を閉めることができる。
そして、このように蓋を閉めた状態で、容器蓋10aと容器本体20cとを互いに押し合いながら、突起11a−22を移動溝22c−2に沿って左右のいずれか一方向に連続して回転移動させることができる。なお、容器蓋10aを容器本体20aに対して取り付ける方向(図5の容器本体20cの場合、容器蓋10aを上方から見て右回りに回転させる方向)であれば、容器蓋10aと容器本体20cとを互いに押し合わせることなく、連続して回転させることもできる。
【0041】
これによって、容器蓋10aと容器本体20cとを相対的に回転させつつ、上下に移動させることができる。また、この移動溝22c−2内に、第三実施形態における上下動突起23bと同様の構成を備えて、より複雑な上下動を行わせるようにすることも可能である。
さらに、一度蓋を閉めた状態から、容器蓋10aを上方に引きながら突起11a−22を開閉溝22c−1に沿って移動させることで、容器蓋10aを容器本体20cから取り外して、蓋を開けることができる。
なお、図5の例では、二以上の移動溝22c−2の連続部分の溝幅を狭く形成し、この部分に突起11a−22を移動させることで、容器蓋10aを容器本体20cに対してしっかりと締め付けた状態にすることができるようにしているが、連続部分の溝を他の部分と同じ溝幅に形成することで、回転をスムーズにすることもできる。
【0042】
このように本実施形態の担体支持容器とその使用方法によれば、容器蓋10aを容器本体20cに取り付けた後、左右のいずれか一方向に連続して回転させることで、容器蓋10aを容器本体20cに対して回転させつつ、上下に移動させることができる。
このため、容器本体20c内の反応溶液40を効率的にかく拌することが可能になる。
【0043】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図6を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器蓋におけるかく拌翼を示す図である
本実施形態は、容器蓋10bにおける担体支持部12bが、かく拌翼13bを備えている点で、上記各実施形態と相違する。その他の点については、第一から第四実施形態のいずれかと同様のものとすることができる。
【0044】
すなわち、本実施形態の担体支持容器は、担体支持部12bの先端部の側面四箇所にオール状のかく拌翼13bが備えられている。このかく拌翼13bの数や、形状、取り付けの向きは、求めるかく拌力に応じて適宜決定することができる。
また、このかく拌翼13bの取り付け位置は、容器蓋10bを容器本体20に係合させ、これらを相対移動させて、担体支持部12bを上下動させたときに、かく拌翼13b全体が反応溶液40内に浸漬する位置とすることが好ましい。
【0045】
容器本体20内に反応溶液40を収容し、容器蓋10bを、ネジ構造又は、案内溝及び二以上の突起により、容器本体20に係合させて相対的に回転させることで、反応溶液40をかく拌翼13bにより効率的に攪拌することができる。
このように、本実施形態の担体支持容器及びその使用方法によれば、容器本体20に収容された反応溶液40を、一層効率的にかく拌することが可能になっている。
【0046】
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図7を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器蓋におけるかく拌突起を示す図である。
本実施形態は、容器蓋10cにおける担体支持部12cが、かく拌突起14cを備えている点で、上記各実施形態と相違する。その他の点については、第一から第四実施形態のいずれかと同様のものとすることができる。
すなわち、本実施形態の担体支持容器には、担体支持部12bの先端部の担体30の取り付け位置の周囲四箇所において、とげ状のかく拌突起14cが形成されている。このかく拌突起14cの数や形状は、求めるかく拌力に応じて適宜決定することができる。
【0047】
容器本体20内に反応溶液40を収容し、容器蓋10cを、ネジ構造又は、案内溝及び二以上の突起により、容器本体20に係合させて相対的に回転させることで、反応溶液40をかく拌突起14cにより効率的に攪拌することができる。
このように、本実施形態の担体支持容器及びその使用方法によっても、容器本体20に収容された反応溶液40を、一層効率的にかく拌することが可能になっている。
また、本実施形態の担体支持容器に、第五実施形態におけるかく拌翼13bをさらに備えて、かく拌効率を向上させることも可能である。
【0048】
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図8を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器本体におけるかく拌突起を示す図である。
本実施形態は、容器本体20dが、反応溶液40を収容する内部底面上に、かく拌突起24dを備えている点で、上記各実施形態と相違する。その他の点については、第一から第六実施形態のいずれかと同様のものとすることができる。
【0049】
すなわち、本実施形態の担体支持容器は、容器本体20dの内壁の底面上に、かく拌突起24dが形成されたものとなっている。このかく拌突起24dの数や、形状、取り付け位置は、求めるかく拌力に応じて適宜決定することができる。
このように本実施形態の担体支持容器とその使用方法によれば、容器本体20dに形成したかく拌突起24dが、容器蓋10と容器本体20dとを相対的に移動させたときに生じる、反応溶液40の流れの障害となるため、反応溶液40のかく拌効果が向上するようになっている。
【0050】
[第八実施形態]
次に、本発明の第八実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図9を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器本体におけるかく拌翼を示す図である。
本実施形態は、容器本体20eが、反応溶液40を収容する内部の下方側面四箇所にオール状のかく拌翼25eを備えている点で、上記各実施形態と相違する。その他の点については、第一から第七実施形態のいずれかと同様のものとすることができる。
【0051】
すなわち、本実施形態の担体支持容器は、容器本体20eの内壁の下方側面四箇所にオール状のかく拌翼25eを備えている。このかく拌翼25eの数や、形状、向きなどは、求めるかく拌力に応じて適宜決定することができる。
また、このかく拌翼25eの取り付け位置は、容器本体20eに、プローブと生体関連分子との反応に用いる所定量の反応溶液40を収容した場合に、かく拌翼25e全体が反応溶液40内に浸漬される位置とすることが好ましい。
【0052】
本実施形態の担体支持容器とその使用方法によれば、容器本体20eにかく拌翼25eを形成することで、容器蓋10と容器本体20eとを相対的に移動させ、担体支持部12を反応溶液40内で回転させながら上下に移動させたときに、このかく拌翼25eが反応溶液40に生じる流れの障害となり、反応溶液40のかく拌効果が向上するようになっている。
【0053】
[第九実施形態]
次に、本発明の第九実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図10を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器蓋を示す図である。
本実施形態は、容器蓋10dにおける担体支持部12dの位置が、容器蓋10dの水平平面の中心に対して偏心して備えられている点で、上記各実施形態と相違する。その他の点については、第一から第八実施形態のいずれかと同様のものとすることができる。
【0054】
すなわち、本実施形態の担体支持容器は、担体支持部12dの上面の中心が、天板11d−1の中心と異なる位置に配置されるように、天板11d−1に取り付けられている。
担体支持部12dを、容器蓋10dにおけるこのような位置に備えることで、容器本体20に反応溶液40を収容し、容器蓋10dと容器本体20を相対的に移動させたときに、担体支持部12dにより反応溶液40をかく拌することができる。
このように本実施形態の担体支持容器とその使用方法によれば、容器蓋10dにおける担体支持部12dにより、反応溶液40をかく拌することができ、反応溶液40を比較的強くかく拌することが可能となる。
【0055】
[第十実施形態]
次に、本発明の第十実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図11を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器蓋を示す図である。
本実施形態は、容器蓋10eにおける担体支持部12eが、容器本体20に対して斜めになるように備えられている点で、上記各実施形態と相違する。その他の点については、第一から第八実施形態のいずれかと同様のものとすることができる。
【0056】
すなわち、本実施形態の担体支持容器は、担体支持部12eが、鉛直方向に対して斜めになるように、容器蓋10eにおける天板11e−1の水平面に対して傾斜させた状態で取り付けられている。
担体支持部12eを容器蓋10eにこのような状態で備えることで、容器本体20に反応溶液40を収容し、容器蓋10eと容器本体20を相対的に移動させたときに、担体支持部12eにより反応溶液40をかく拌することができる。
このように本実施形態の担体支持容器とその使用方法によっても、容器蓋10eにおける担体支持部12eにより、反応溶液40をかく拌することができ、反応溶液40を比較的強くかく拌することが可能である。
【0057】
[第十一実施形態]
次に、本発明の第十実施形態の担体支持容器、及び担体支持容器の使用方法について、図12を参照して説明する。同図は、本実施形態の担体支持容器の容器蓋を示す図である。
本実施形態は、容器蓋10fがシール部15fを備えている点で、上記各実施形態と相違する。その他の点については、第一から第十実施形態のいずれかと同様のものとすることができる。
【0058】
すなわち、本実施形態の容器蓋10fには、天板11f−1の下面における担体支持部12fとスカート部11f−2との間に、シール部15fが備えられ、容器蓋10fを容器本体20に係合させて、蓋を閉めたときに、容器本体20の内部が密閉されるようになっている。
このシール部15fは、容器蓋10fと容器本体20とを相対的に移動させて、反応溶液40をかく拌するときに、容器本体20の内部が密閉される状態となる厚さにすることが好ましい。
【0059】
このシール部15fの材料は、シール部材として用いられている一般的なものを用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に有する熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、接着剤としては、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフイン共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等の1種又は2種以上の組合せや、イソシアネート系又はエポキシ系等の熱硬化型接着剤樹脂などを用いることができる。
【0060】
このような本実施形態の担体支持容器とその使用方法によれば、容器蓋と容器本体とを相対的に回転させて反応溶液をかく拌することで、担体上のプローブと反応溶液内の生体関連分子との結合反応を促進させるにあたり、反応溶液が揮発することを抑制することが可能となる。
【0061】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記各実施形態では、担体支持部に取り付けられた担体上のプローブと、容器本体内に収容された反応溶液における生体関連分子との結合反応に用いる場合について説明しているが、例えば担体の洗浄のために、反応溶液をかく拌する場合に用いるなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、DNAチップやマイクロアレイなどを溶液に浸漬させて、各種処理を行う場合に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
10(10a〜10f) 容器蓋
11 蓋部
11−1 天板
11−2 スカート部
11−21 ネジ溝
11−22 突起
12 担体支持部
13 かく拌翼
14 かく拌突起
15 シール部
20(20a〜20e) 容器本体
21 ネジ山
22 案内溝
22−1 開閉溝
22−2 移動溝
23 上下動突起
24 かく拌突起
25 かく拌翼
30 担体
40 反応溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を入れるための容器本体と、プローブが固定化された担体を支持する担体支持部及び前記容器本体に係合する蓋部を具備した容器蓋とを有し、
前記容器本体と前記容器蓋とを係合させたとき、前記担体が、前記容器本体内の底部に対面し、かつ前記容器本体と前記容器蓋とが係合された状態で、相対的に移動する
ことを特徴とする担体支持容器。
【請求項2】
前記蓋部が、天板とスカート部を備え、前記スカート部の内壁が二以上の突起又は案内溝を備え、前記二以上の突起又は前記案内溝がそれぞれ前記容器本体の外壁に備えられた案内溝又は二以上の突起に係合される
ことを特徴とする請求項1記載の担体支持容器。
【請求項3】
前記案内溝が、容器の開閉のために用いられる開閉溝と、前記容器本体と前記容器蓋を鉛直方向に相対的に移動させるために用いられる移動溝とからなる
ことを特徴とする請求項2記載の担体支持容器。
【請求項4】
前記移動溝が波状に形成されたことを特徴とする請求項3記載の担体支持容器。
【請求項5】
前記移動溝内に一又は二以上の突起が形成されたことを特徴とする請求項3記載の担体支持容器。
【請求項6】
前記移動溝が前記容器本体の外壁の全周に連続して形成されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の担体支持容器。
【請求項7】
前記移動溝が前記容器本体の外壁に弧状に二以上形成されたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の担体支持容器。
【請求項8】
前記蓋部が、天板とスカート部を備え、前記スカート部の内壁がネジ溝又はネジ山を備え、前記ネジ溝又はネジ山がそれぞれ前記容器本体の外壁に備えられたネジ山又はネジ溝に係合されることを特徴とする請求項1記載の担体支持容器。
【請求項9】
前記担体支持部の先端付近と、前記容器本体の内壁の底面付近の側面又は底面の少なくともいずれかに、溶液を攪拌するための一又は二以上の翼又は突起が備えられたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の担体支持容器。
【請求項10】
前記担体支持部が、前記容器蓋の水平平面の中心に対して偏心させて、前記容器蓋の天板に備えられたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の担体支持容器。
【請求項11】
前記担体支持部が、鉛直方向に対して斜めになるように、前記容器蓋の天板に備えられたことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の担体支持容器。
【請求項12】
溶液を入れるための容器本体と、プローブが固定化された担体を支持する担体支持部及び前記容器本体に係合する蓋部を具備した容器蓋とを有する担体支持容器の使用方法であって、
前記容器本体に溶液を収容し、
前記容器本体と前記容器蓋とを係合させて、前記担体を前記溶液に浸漬させ、
前記容器本体と前記容器蓋とが係合された状態で、これらを相対的に移動させることにより、前記溶液を攪拌する
ことを特徴とする担体支持反応容器の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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