説明

担持された分岐高分子−金属微粒子複合体

【課題】担持された分岐高分子−金属微粒子複合体を提供すること。
【解決手段】
アンモニウム基を含有し且つ重量平均分子量が500乃至5,000,000である分岐高分子化合物、及び金属微粒子を含む組成物に、担持剤を配合させて該組成物を固体担体に固着させたことを特徴とする触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担持された分岐高分子−金属微粒子複合体であって、詳細には、該分岐高分子−金属微粒子複合体を固体担体に固着させた触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの金属微粒子を含む組成物は、例えば、種々の化成品の触媒的合成に広く用いられ、更には、環境触媒や水素貯蔵及び取り出し反応等への利用が期待されている。
前記組成物を触媒として用いた例として、アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマー及び金属微粒子を含む組成物からなる還元触媒が報告されている(特許文献1)。しかし、特許文献1では水素化反応において前記還元触媒を固体担体に固着させずに用いており、この文献では、該還元触媒を固体担体に固着させる方法については何ら示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/021386号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体担体に分岐高分子−金属微粒子複合体を含む組成物からなる触媒を固着させることができれば、触媒の回収及び再利用が容易となる。
しかし、分岐高分子−金属微粒子複合体を含む組成物と固体担体を混合するだけでは該組成物を固体担体に固着させることはできず、これまで固体担体に分岐高分子−金属微粒子複合体を含む組成物を固着させた触媒については提案されていない。
そこで、本発明は、分岐高分子−金属微粒子複合体を固体担体に固着させた触媒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、担持剤を配合することにより、固体担体にアンモニウム基を分子末端に有する分岐高分子化合物(以下、「分岐高分子化合物」ともいう。)、及び金属微粒子を含む組成物を固着させることができ、また固体担体に該組成物を固着させた触媒は高い触媒活性及び繰り返し反応性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、第1観点として、アンモニウム基を含有し且つ重量平均分子量が500乃至5,000,000である分岐高分子化合物、及び金属微粒子を含む組成物に、担持剤を配合させて該組成物を固体担体に固着させたことを特徴とする触媒に関する。
第2観点として、前記金属微粒子に、前記分岐高分子化合物のアンモニウム基が付着して複合体を形成しており、配合された担持剤により該複合体が固体担体に固着している第1観点に記載の触媒に関する。
第3観点として、前記金属微粒子が、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛及びビスマスよりなる群より選択される少なくとも1種である第1観点又は第2観点に記載の触媒に関する。
第4観点として、前記金属微粒子が、金、銀、白金、銅、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムよりなる群より選択される少なくとも1種である第3観点に記載の触媒に関する。
第5観点として、前記金属微粒子が1nm以上100nm以下の平均粒径を有する微粒子である、第3観点又は第4観点に記載の触媒に関する。
第6観点として、前記分岐高分子化合物が下記式(1):
【化1】

[式中、
1は水素原子又はメチル基を表し、
2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20の直鎖状、
枝分かれ状又は環状のアルキル基、炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基又は−(CH2CH2O)m−R5(式中、R5は水素原子又はメチル基を表し、mは2乃至100の
任意の整数を表す。)を表すか、R2、R3及びR4が互いに直鎖状、枝分かれ状又は環状
のアルキレン基で結合し、それらと結合する窒素原子と共に環を形成してもよく(該アルキル基及びアリールアルキル基はアルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシル基又はシアノ基で置換されていてもよい)、
-は陰イオンを表し、
1は下記式(2):
【化2】

(式中、
2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖
状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、
1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)で表される構造を表し、
nは、繰り返し構造単位の数であって、2乃至100,000の整数を表す。]で表される化合物からなる第1観点乃至第5観点のいずれか1項に記載の触媒に関する。
第7観点として、前記A1が下記式(3):
【化3】

で表される基であり、
前記X-がハロゲン原子、PF6-、BF4-又はパーフルオロアルカンスルホナートであ
ることを特徴とする第6観点に記載の触媒に関する。
第8観点として、前記担持剤が、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、コハク酸及びクエン酸よりなる群より選択される少なくとも1種である第1観点乃至第7観点のいずれか1項に記載の触媒に関する。
第9観点として、前記固体担体が綿状担体である、第1観点乃至第8観点のいずれか1項に記載の触媒に関する。
第10観点として、前記綿状担体が脱脂綿又はろ紙である、第9観点に記載の触媒に関する。
第11観点として、前記分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物、前記担持剤並びに前記固体担体を混合することを特徴とする、第1観点に記載の触媒の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の触媒は、再生利用能が高いため、繰り返し使用することができ、また固体担体に固着されているため、その回収が容易である。
また本発明の触媒は、分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物と固体担体と担持剤とを撹拌することで調製できるため、製造が極めて容易であり、また該触媒の取扱いも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】合成例1で得られたハイパーブランチポリマー(HPS−Cl)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】合成例2で得られたハイパーブランチポリマー(HPS−N(dod)3Cl)の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得られた担持された分岐高分子−金属微粒子複合体のTEM画像を示す図である。
【図4】実施例1で得られた担持された分岐高分子−金属微粒子複合体のTEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の触媒は、アンモニウム基を含有し且つ重量平均分子量が500乃至5,000,000である分岐高分子化合物、及び金属微粒子を含む組成物に、担持剤を配合させて該組成物を固体担体に固着させたことを特徴とする触媒である。
[アンモニウム基を有する分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物]
<分岐高分子化合物>
前記分岐高分子化合物としては、例えば、下記式(1):
【化4】

で表される構造を有するものが挙げられる。
前記式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。また、式(1)中、R2、R3
びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20の直鎖状、枝分かれ状又
は環状のアルキル基、炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基又は−(CH2CH2O)m−R5(式中、R5は水素原子又はメチル基を表し、mは2乃至100の任意の整数を
表す。)を表す。該アルキル基及びアリールアルキル基はアルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシル基又はシアノ基で置換されていてもよい。また、R2、R3及びR4が互いに直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基で結合し、それらと結合す
る窒素原子と共に環を形成してもよい。また、式(1)中、X-は陰イオンを表し、X-として好ましいのはハロゲン原子、PF6-、BF4-又はパーフルオロアルカンスルホナートである。また、式(1)中、A1は下記式(2):
【化5】

(式中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30
の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)で表される構造を表す。
好ましくは、前記A1は下記式(3):
【化6】

で表される構造を有する。また、式(1)中、nは、繰り返し構造単位の数であって、2乃至100,000の整数を表す。
【0010】
上記R2、R3及びR4が表す炭素原子数1乃至20の直鎖状のアルキル基としては、メ
チル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキ
サデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等が挙げられる。枝分かれ状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環構造を有する基等が挙げられる。
上記R2、R3及びR4が表す炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基としては、ベ
ンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
上記R2、R3、R4及びA2が表す直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基等が挙げられる。枝分かれ状のアルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。環状のアルキレン基としては、炭素原子数3乃至30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。
さらに、式(1)で表される構造でR2、R3及びR4が互いに結合し、それらと結合す
る窒素原子と共に形成する環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、ピピリジル環等が挙げられる。
【0011】
上記Y1、Y2、Y3及びY4が表す炭素原子数1乃至20のアルキル基としては、前記R2、R3及びR4が表す炭素原子数1乃至20の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキル基
と同様の基が挙げられる。
上記Y1、Y2、Y3及びY4が表す炭素原子数1乃至20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0012】
また、本発明に用いられる分岐高分子化合物としては、下記式(4):
【化7】

で表される構造を有するものが挙げられる。
前記式(4)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。また、式(4)中、R2は下記式(5):
【化8】

で表されるエーテル結合を含むアルキル鎖を表す。また、式(4)中、X-は陰イオンを
表す。また、式(4)中、A1は前記式(2)で表される構造を表す。また、式(4)中
、nは繰り返し構造単位の数であって2乃至100,000の整数を表す。
【0013】
次に、分子末端にアンモニウム基を有する分岐高分子化合物の製造方法について説明する。
分子末端にアンモニウム基を有する分岐高分子化合物は、例えば、分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物にアミン化合物を反応させることによって得ることができる。
なお、分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物は、国際公開第2008/029688号パンフレットの記載に従い合成することができる。
【0014】
本反応で使用できるアミン化合物は、第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン等の脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミン等のアラルキルアミン;アニリン、p−n−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−オクチルアニリン、p−n−デシルアニリン、p−n−ドデシルアニリン、p−n−テトラデシルアニリン等のアニリン類、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン等のアミノアントラセン類、1−アミノアントラキノン等のアミノアントラキノン類、4−アミノビフェニル、2−アミノビフェニル等のアミノビフェニル類、2−アミノフルオレン、1−アミノ−9−フルオレノン、4−アミノ−9−フルオレノン等のアミノフルオレノン類、5−アミノインダン等のアミノインダン類、5−アミノイソキノリン等のアミノイソキノリン類、9−アミノフェナントレン等のアミノフェナントレン類などの芳香族アミンが挙げられる。更に、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,2−エチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,3−プロピレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,4−ブチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,5−ペンタメチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N−(2−メトキシエチル)アミン、N−(2−エトキシエチル)アミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0015】
第二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、エチルメチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチル−n−ペンチルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル−n−ブチルアミン、エチル−n−ペンチルアミン、メチル−n−オクチルアミン、メチル−n−デシルアミン、メチル−n−ドデシルアミン、メチル−n−テトラデシルアミン、メチル−n−ヘキサデシルアミン、メチル−n−オクタデシルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチルオクチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ヘキサデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン等の脂肪族アミン;ジシクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ジベンジルアミン等のアラルキルアミン;ジフェニルアミン等の芳香族アミン;フタルイミド、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。更に、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、ビス(2−プロポキシエチル)アミン等が挙げられる。
【0016】
第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、
トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリドデシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジエチル−n−デシルアミン、ジメチル−n−ドデシルアミン、ジメチル−n−テトラデシルアミン、ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、ジメチル−n−オクタデシルアミン、ジメチル−n−エイコシルアミン、ジメチル−n−ドデシルアミン等の脂肪族アミン;ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、1−メチルイミダゾール、4,4’−ビピリジル、4−メチル−4,4’−ビピリジル等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。
【0017】
これらの反応で使用できるアミン化合物の使用量は、分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物中のハロゲン原子の1モル当量に対して0.1乃至20倍モル当量、好ましくは0.5乃至10倍モル当量、より好ましくは1乃至5倍モル当量であればよい。
【0018】
分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物とアミン化合物との反応は、水又は有機溶媒溶液中で、塩基の存在下又は非存在下で行なうことができる。使用する溶媒は、分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物とアミン化合物を溶解可能なものが好ましい。さらに、分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物とアミン化合物を溶解可能であるが、分子末端にアンモニウム基を有する分岐高分子化合物を溶解しない溶媒であれば、単離が容易となりさらに好適である。
有機溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであれば良く、水及び酢酸等の有機酸類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化物;n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類が使用できる。これらの溶媒は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、使用量は、分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物の質量に対して0.2乃至1,000倍質量、好ましくは1乃至500倍質量、より好ましくは5乃至100倍質量、最も好ましくは10乃至50倍質量の有機溶媒を使用することが好ましい。
【0019】
好適な塩基としては一般に、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属水素化物及びアルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属アミド、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩(例えば炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば重炭酸ナトリウム)等の無機化合物、並びにアルカリ金属アルキル、アルキルマグネシウムハロゲン化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、ジメトキシマグネシウム等の有機金属化合物が使用される。特に好ましいのは、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムである。また、使用量は、分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物の質量に対して0.2乃至10倍等量、好ましくは0.5乃至10倍等量、最も好ましくは1乃至5倍等量の塩基を使用することが好ましい。
【0020】
この反応では反応開始前に反応系内の酸素を十分に除去する必要があり、窒素、アルゴン等の不活性気体で系内を置換するとよい。反応条件としては、反応時間は0.01乃至100時間、反応温度は0乃至300℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間が0.1乃至10時間で、反応温度が20乃至150℃である。
【0021】
塩基の存在下で、第三級アミンを用いた場合は式(1)で表される分岐高分子化合物を得ることができる。
塩基の非存在下で、第一級アミン又は第二級アミン化合物と分子末端にハロゲン原子を有する分岐高分子化合物を反応させて分子末端にアンモニウム基を有する分岐高分子化合物を得る際、それぞれに対応する分岐高分子化合物の末端第二級アミン及び第三級アミン
がプロトン化されたアンモニウム基末端の分岐高分子化合物が得られる。
また、塩基を用いて反応を行った場合においても、有機溶媒中で塩酸、臭化水素、ヨウ化水素等の酸の水溶液と混合することにより、対応する分岐高分子化合物の末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化されたアンモニウム基末端の分岐高分子化合物が得られる。
【0022】
前記分岐高分子化合物は、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500乃至5,000,000であり、好ましくは1,000乃至1,000,000であり、より好ましくは2,000乃至500,000であり、最も好ましくは3,000乃至200,000である。また、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0乃至7.0であり、好ましくは1.1乃至6.0であり、より好ましくは1.2乃至5.0である。
【0023】
<金属微粒子>
本発明に用いられる組成物に含まれる金属微粒子としては特に限定されず、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛及びビスマスが挙げられ、これらの金属の1種類でもよいし2種以上の合金でも構わない。好ましくは、金、銀、白金、銅、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウム等を挙げることができる。さらに好ましくは、白金及びパラジウムが挙げられる。なお、金属微粒子として、前記金属の酸化物を用いてもよい。
【0024】
前記金属微粒子は、例えば金属塩の水溶液を高圧水銀灯により光照射する方法や、該水溶液に還元作用を有する化合物(所謂還元剤)を添加する方法等により、金属イオンを還元することによって得られる。例えば、上記分岐高分子化合物を溶解した溶液に金属塩の水溶液を添加してこれに紫外線を照射したり、或いは、該溶液に金属塩の水溶液及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することにより、分岐高分子化合物と金属微粒子の複合体を形成させながら、分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物を調製することができる。
【0025】
前記金属塩としては、塩化金酸、硝酸銀、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化スズ、塩化第一白金、塩化白金酸、Pt(dba)2[dba=ジベンジリデンアセトン]、Pt(c
od)2[cod=1,5−シクロオクタジエン]、PtMe2(cod)、塩化パラジウム、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)、硝酸パラジウム、Pd2[(dba)3(CH
Cl3)]、Pd(dba)2、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、Ru(cod)(cot)[cot=シクロオクタトリエン]、塩化イリジウム、酢酸イリジウム、Ni(cod)2等が挙げられる。
前記還元剤としては、特に限定されるものではなく、種々の還元剤を用いることができ、得られる組成物に含有させる金属種等により還元剤を選択することが好ましい。用いることができる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム金属塩;ヒドラジン化合物;クエン酸及びその塩;コハク酸及びその塩;アスコルビン酸及びその塩;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリオール等の第一級又は第二級アルコール類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン[TMEDA]、エチレンジアミン四酢酸[EDTA]等の第三級アミン類;ヒドロキシルアミン;トリプロピルホスフィン、トリブチルホス
フィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエトキシホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン[DPPE]、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[DPPP]、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン[DPPF]、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル[BINAP]等のホスフィン類などが挙げられる。
【0026】
前記金属微粒子の平均粒径は1乃至100nmが好ましい。その理由としては、該金属微粒子の平均粒径が100nmを超えると、表面積が減少し触媒活性が低下するためである。平均粒径としては、75nm以下が更に好ましく、1乃至30nmが特に好ましい。
【0027】
本発明に用いられる組成物における上記分岐高分子化合物の添加量は、上記金属微粒子100質量部に対して50乃至2,000質量部が好ましい。50質量部未満であると、上記金属微粒子の分散性が不充分であり、2,000質量部を超えると、有機物含有量が多くなり、物性等に不具合が生じやすくなる。より好ましくは、100乃至1,000質量部である。
【0028】
[分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物]
本発明に用いられる組成物は、上記分岐高分子化合物及び金属微粒子を含むものであり、上記分岐高分子化合物と金属微粒子が複合体を形成していることが好ましい。
ここで、複合体とは、上記分岐高分子化合物が有するアンモニウム基の作用により、金属微粒子に接触又は近接した状態で両者が共存し、粒子状の形態を為すものである。言い換えると、分岐高分子化合物のアンモニウム基が金属微粒子に付着又は配位した構造を有する複合体であると表現される。
したがって、本発明における「複合体」には、上述のように金属微粒子と分岐高分子化合物が結合して一つの複合体を形成しているものだけでなく、金属微粒子と分岐高分子化合物が結合部分を形成することなく、夫々独立して存在しているものも含まれていてもよい。
【0029】
アンモニウム基を有する分岐高分子化合物と金属微粒子の複合体の形成は、分岐高分子化合物と金属微粒子を含む組成物の調製時に同時に実施され、その方法としては、低級アンモニウム配位子によりある程度安定化した金属微粒子を合成した後に分岐高分子化合物により配位子を交換する方法や、アンモニウム基を有する分岐高分子化合物の溶液中で、金属イオンを直接還元することにより複合体を形成する方法がある。また、上述のように、上記分岐高分子化合物を溶解した溶液に金属塩の水溶液を添加してこれに紫外線を照射したり、或いは、該溶液に金属塩の水溶液及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することによっても複合体を形成できる。
【0030】
配位子交換法において、原料となる低級アンモニウム配位子によりある程度安定化した金属微粒子は、Jounal of Organometallic Chemistry 1996,520,143−162等に記載の方法で合成することができる。得られた金属微粒子の反応混合溶液に、アンモニウム基を有する分岐高分子化合物を溶解し、室温(およそ25℃)又は加熱撹拌することにより目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
使用する溶媒としては、金属微粒子とアンモニウム基を有する分岐高分子化合物とを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、プロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
金属微粒子の反応混合液と、アンモニウム基を有する分岐高分子化合物を混合する温度
は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは、室温(およそ25℃)乃至60℃の範囲である。
なお、配位子交換法において、アミン系分散剤(低級アンモニウム配位子)以外にホスフィン系分散剤(ホスフィン配位子)を用いることによっても、あらかじめ金属微粒子をある程度安定化することができる。
【0031】
直接還元方法としては、金属イオンとアンモニウム基を有する分岐高分子化合物を溶媒に溶解し、水素ガス雰囲気下で反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や、ヘキサカルボニルクロム[Cr(CO)6]、ペンタカルボニル鉄[Fe(Co)5]、オクタカルボニルジコバルト[Co2(CO)8]、テトラカルボニルニッケル[Ni(CO)4]、ヘキサカルボニル
モリブデン[Mo(CO)6]、ヘキサデカカルボニルヘキサロジウム[Rh6(CO)16]、ドデカカルボニルテトラロジウム[Rh4(CO)12]、ヘキサカルボニルタングス
テン[W(CO)6]、デカカルボニルジレニウム[Re2(CO)10]、ドデカカルボニルテトライリジウム[Ir4(CO)12]等の金属カルボニル錯体が使用できる。また金
属オレフィン錯体や金属ホスフィン錯体、金属窒素錯体等の0価の金属錯体も使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとアンモニウム基を有する分岐高分子化合物を必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、プロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
金属イオンとアンモニウム基を有する分岐高分子化合物を混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができる。
【0032】
また、直接還元方法として、金属イオンとアンモニウム基を有する分岐高分子化合物を溶媒に溶解し、熱分解反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や金属カルボニル錯体やその他の0価の金属錯体、酸化銀等の金属酸化物が使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとアンモニウム基を有する分岐高分子化合物を必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくはトルエンが挙げられる。
金属イオンとアンモニウム基を有する分岐高分子化合物を混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは溶媒の沸点近傍、例えばトルエンの場合は110℃(加熱還流)である。
【0033】
[担持剤]
本発明では、担持剤を配合させることにより、上記分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物を固体担体に固着させることができる。
前記担持剤としては前記組成物を固体担体に固着させることができれば特に限定されず、臭化カリウム等の臭化物;ヨウ化カリウム等のヨウ化物;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸などが挙げられ、好ましくは臭化カリウム、ヨウ化カリウム、コハク酸及びクエン酸である。こ
れらの添加剤は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、担持剤の使用量は、アンモニウム基を有する分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物の質量に対して0.1乃至50倍質量、好ましくは0.5乃至30倍質量、より好ましくは1乃至20倍質量である。
【0034】
[固体担体]
上記分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物に固着される固体担体としては、該組成物が固着し、かつ触媒としての作用を阻害しないものであれば特に限定されないが、触媒の回収の観点から、好ましくは綿状担体である。
綿状担体としては、脱脂綿、ろ紙、ガーゼ、不織布、スポンジ等が挙げられ、好ましくは脱脂綿及びろ紙である。
【0035】
[触媒の製造方法]
本発明の触媒の製造方法は、分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物、担持剤並びに固体担体を溶媒中で混合することを特徴とする。
本発明の製造方法に用いられる分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物、担持剤並びに固体担体としては、上述したものが挙げられる。
また、反応条件としては、反応時間は0.01乃至100時間、反応温度は0乃至300℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間が0.1乃至50時間で、反応温度が20乃至200℃である。
【0036】
このとき用いられる溶媒としては、上記分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物並びに上記担持剤を溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、水;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化物;テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、並びにこれら2種以上からなる混合溶媒が挙げられる。これらの中でもアミド類が好ましく、特にN,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、各装置等はそれぞれ以下の機器を使用した。また略記号の意味は下記の通りである。
【0038】
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標) KF−804L + KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)、RI
(2)1H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−L400
溶媒:CDCl3
内部標準:テトラメチルシラン(0.00ppm)
(3)13C NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl3
緩和試薬:トリスアセチルアセトナートクロム(Cr(acac)3
基準:CDCl3(77.0ppm)
(4)ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)
装置:(株)島津製作所製 ICPM−8500
前処理:試料溶液に塩酸を添加し75℃で12時間加熱撹拌した後、フィルタろ過し、測定試料とした。
(5)TEM(透過型電子顕微鏡)
装置:日本電子(株)製 JEM−2100F、JEM−2100XS
【0039】
HPS:ハイパーブランチポリスチレン[日産化学工業(株)製 ハイパーテック(登録商標)HPS−200]
IPA:イソプロパノール
dod:n−ドデシル(n−C1225
dba:ジベンジリデンアセトン(C65CH=CH−C(=O)−CH=CHC65)DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
【0040】
[合成例1]HPS−Clの製造
【化9】

500mLの反応フラスコに、塩化スルフリル[キシダ化学(株)製]27g及びクロロホルム50gを仕込み、撹拌して均一に溶解させた。この溶液を窒素気流下0℃まで冷却した。
別の300mLの反応フラスコに、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーHPS 15g及びクロロホルム150gを仕込み、窒素気流下均一になるまで撹拌した。
前述の0℃に冷却されている塩化スルフリル/クロロホルム溶液中に、窒素気流下、HPS/クロロホルム溶液が仕込まれた前記300mLの反応フラスコから、送液ポンプを用いて、該溶液を反応液の温度が−5〜5℃となるように60分間かけて加えた。添加終了後、反応液の温度を−5〜5℃に保持しながら6時間撹拌した。
さらにこの反応液へ、シクロヘキセン[東京化成工業(株)製]16gをクロロホルム50gに溶かした溶液を、反応液の温度が−5〜5℃となるように加えた。添加終了後、この反応液をIPA 1,200gに添加してポリマーを沈殿させた。この沈殿をろ取して得られた白色粉末を、クロロホルム100gに溶解しIPA 500gに添加してポリマーを再沈殿させた。この沈殿物を減圧ろ過し、真空乾燥して、塩素原子を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−Cl)8.5gを白色粉末として得た(収率99%)。
得られたHPS−Clの1H NMRスペクトルを図1に示す。ジチオカルバメート基
由来のピーク(4.0ppm、3.7ppm)が消失していることから、得られたHPS−Clは、HPS分子末端のジチオカルバメート基がほぼ全て塩素原子に置換されていることが明らかとなった。また、得られたHPS−ClのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは14,000、分散度Mw/Mnは2.9であった。
【0041】
[合成例2]HPS−N(dod)3Clの製造
【化10】

還流塔を付した300mLの反応フラスコに、合成例1で製造したHPS−Cl 3.0g(20mmol)、トリドデシルアミン[東京化成工業(株)製]11.5g(22mmol)及びクロロホルム−IPA混合液(体積比2:1)60mLを仕込み、窒素置換した。これを撹拌しながら48時間加熱還流した。液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。この残渣にアセトン100gを加え、一晩静置し、ポリマーを粘調油状物として析出させた。デカンテーションで上澄み液を除去し、得られた粘調油状物を40℃で減圧乾燥して、トリドデシルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−N(dod)3Cl)4.9gを淡黄色固体として得た。
得られたHPS−N(dod)3Clの13C NMRスペクトルを図2に示す。塩素原
子が結合したメチレン基と、アンモニウム基が結合したメチレン基のピークから、得られたHPS−N(dod)3Clは、HPS−Cl分子末端の塩素原子の68%がアンモニ
ウム基に置換されていることが明らかとなった。
【0042】
[合成例3]Pd[HPS−N(dod)3Cl]の製造
50mLの二つ口フラスコに、合成例2で製造したHPS−N(dod)3Cl 0.
2g、Pd2[(dba)3CHCl3][エヌ・イー ケムキャット(株)製]0.2g
及びクロロホルム10mLを仕込んだ。この中へエタノール10mLを加え、窒素置換した後、70℃で48時間撹拌した。
溶媒を留去し、その残渣をクロロホルム50mLに溶解した。この溶液をIPA 250mLに添加して、生成物を再沈殿させた。この沈殿物を減圧ろ過し、真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl])0.16gを黒色粉末として得た。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−N(dod)3Cl]のPd含有
量は33質量%であった。
【0043】
[実施例1]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/脱脂綿の製造
シュレンク管に、合成例3に記載の方法に従って製造したPd[HPS−N(dod)3Cl](Pd含量33質量%)2.5mg、臭化カリウム[東京化成工業(株)製]8
mg及び脱脂綿[(株)スズケン製 Kenz脱脂綿]30mgを入れ、窒素置換した。この中へDMF4mLを加え、100℃で2時間撹拌した。この混合物を室温(およそ2
5℃)まで冷却後、脱脂綿を取り出した。この脱脂綿を、水、アセトン、ジエチルエーテルで順に洗浄し乾燥させることで、目的とする脱脂綿に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/脱脂綿)を、黒く着色した脱脂
綿の形態で得た。
上記洗浄液中のPd量をICP発光分析により定量したところ、その量は0.0528mgであり、Pdの脱脂綿への担持率(使用したPd質量に対する担持されたPd質量の割合)は94%であった。得られた担持された分岐高分子−金属微粒子複合体のTEM画像を図3及び図4に示す。
【0044】
[実施例2]Pd[HPS−N(dod)3Cl・I]/脱脂綿の製造
臭化カリウムに替えてヨウ化カリウム[関東化学(株)製]8mgを使用した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする脱脂綿に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・I]/脱脂綿)を、黒く着色した脱脂綿の形態で得
た。
【0045】
[実施例3]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Succ]/脱脂綿の製造
臭化カリウムに替えてコハク酸[東京化成工業(株)製]8mgを使用した以外は実施例1と同様に操作し、目的とする脱脂綿に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・Succ]/脱脂綿)を、黒く着色した脱脂綿の形態
で得た。
【0046】
[実施例4]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙の製造
脱脂綿に替えてろ紙[アドバンテック東洋(株)製 定量濾紙No.5C]70mgを使用した以外は実施例1と同様に操作し、目的とするろ紙に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙)を、黒く着色したろ
紙の形態で得た。
実施例1と同様にして求めたPdのろ紙への担持率は80%であった。
【0047】
[実施例5]Pd[HPS−N(dod)3Cl・I]/ろ紙の製造
脱脂綿に替えてろ紙[アドバンテック東洋(株)製 定量濾紙No.5C]70mgを、臭化カリウムに替えてヨウ化カリウム[関東化学(株)製]8mgを使用した以外は実施例1と同様に操作し、目的とするろ紙に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・I]/ろ紙)を、黒く着色したろ紙の形態で得た。
【0048】
[実施例6]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Succ]/ろ紙の製造
脱脂綿に替えてろ紙[アドバンテック東洋(株)製 定量濾紙No.5C]70mgを、臭化カリウムに替えてコハク酸[東京化成工業(株)製]8mgを使用した以外は実施例1と同様に操作し、目的とするろ紙に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・Succ]/ろ紙)を、黒く着色したろ紙の形態で得た

【0049】
[実施例7]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Malo]/ろ紙の製造
ねじ口試験管に、合成例3に記載の方法に従って製造したPd[HPS−N(dod)3Cl](Pd含量33質量%)2.5mg、マロン酸[米山薬品工業(株)製]50m
g及びろ紙[アドバンテック東洋(株)製 定性濾紙No.1]50mgを入れた。この中へDMF2mLを加え、100℃で12時間撹拌した。この混合物を室温(およそ25℃)まで冷却後、ろ紙を取り出した。このろ紙を、水、アセトンで順に洗浄し、これを3回繰返した後、乾燥させることで、目的とするろ紙に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・Malo]/ろ紙)を、黒く着色したろ紙
の形態で得た。
実施例1と同様にして求めたPdのろ紙への担持率は61%であった。
【0050】
[実施例8]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Succ]/ろ紙の製造2
マロン酸に替えてコハク酸[和光純薬工業(株)製]50mgを使用した以外は実施例7と同様に操作し、目的とするろ紙に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・Succ]/ろ紙)を、黒く着色したろ紙の形態で得た。
実施例1と同様にして求めたPdのろ紙への担持率は48%であった。
【0051】
[実施例9]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Glut]/ろ紙の製造
マロン酸に替えてグルタル酸[和光純薬工業(株)製]50mgを使用した以外は実施例7と同様に操作し、目的とするろ紙に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・Glut]/ろ紙)を、黒く着色したろ紙の形態で得た

実施例1と同様にして求めたPdのろ紙への担持率は7%であった。
【0052】
[実施例10]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Citr]/ろ紙の製造
マロン酸に替えてクエン酸[関東化学(株)製]50mgを使用した以外は実施例7と同様に操作し、目的とするろ紙に担持された分岐高分子−金属微粒子複合体(Pd[HPS−N(dod)3Cl・Citr]/ろ紙)を、黒く着色したろ紙の形態で得た。
実施例1と同様にして求めたPdのろ紙への担持率は81%であった。
【0053】
[比較例1]
臭化カリウムを使用しなかった以外は実施例1と同様に操作したが、脱脂綿には何も担持されず、白色の脱脂綿が回収されるのみであった。
【0054】
[比較例2]
臭化カリウムに替えて塩化カリウム[東京化成工業(株)製]8mgを使用した以外は実施例1と同様に操作したが、脱脂綿には何も担持されず、白色の脱脂綿が回収されるのみであった。
【0055】
[比較例3]
脱脂綿に替えてろ紙[アドバンテック東洋(株)製 定量濾紙No.5C]70mgを、臭化カリウムに替えて酢酸[東京化成工業(株)製]50mgをそれぞれ使用し、さらに反応時間を24時間とした以外は実施例1と同様に操作したが、ろ紙には何も担持されず、白色のろ紙が回収されるのみであった。
【0056】
[比較例4]
脱脂綿に替えてろ紙[アドバンテック東洋(株)製 定量濾紙No.5C]70mgを、臭化カリウムに替えて安息香酸[東京化成工業(株)製]50mgをそれぞれ使用し、さらに反応時間を24時間とした以外は実施例1と同様に操作したが、ろ紙には何も担持されず、白色のろ紙が回収されるのみであった。
【0057】
[比較例5]
脱脂綿に替えてろ紙[アドバンテック東洋(株)製 定量濾紙No.5C]70mgを、臭化カリウムに替えてイソフタル酸[東京化成工業(株)製]50mgをそれぞれ使用し、さらに反応時間を24時間とした以外は実施例1と同様に操作したが、ろ紙には何も担持されず、白色のろ紙が回収されるのみであった。
【0058】
[比較例6]
脱脂綿に替えてろ紙[アドバンテック東洋(株)製 定量濾紙No.5C]70mgを
、臭化カリウムに替えてフェノール[東京化成工業(株)製]50mgをそれぞれ使用し、さらに反応時間を24時間とした以外は実施例1と同様に操作したが、ろ紙には何も担持されず、白色のろ紙が回収されるのみであった。
【0059】
[実施例11]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/脱脂綿を用いたHeck反

【化11】

シュレンク管に、3−ヨードアニソール[東京化成工業(株)製]117mg(0.5mmol)、tert−ブチルアクリラート[東京化成工業(株)製]256mg(2.0mmol)、炭酸カリウム[東京化成工業(株)製]276mg(2.0mmol)、及び触媒として実施例1に従って製造して得られたPd[HPS−N(dod)3Cl・
Br]/脱脂綿の全量(Pd含量0.77mg)を入れ、窒素置換した。この中へDMF4mLを加え、80℃で12時間撹拌後、通常の方法によりHeck反応生成物を得た。反応後の脱脂綿担持触媒を取り出し、水、アセトン、ジエチルエーテルで順に洗浄し乾燥させ、再び同様の反応に使用した。同様に20回まで使用した際のHeck反応生成物の各収率を表1に示す。なお、19回目と20回目は反応時間を24時間とした。
【0060】
【表1】

【0061】
[実施例12]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/脱脂綿を用いたSuzuk
i−Miyaura反応
【化12】

シュレンク管に、3−ヨードアニソール[東京化成工業(株)製]117mg(0.5mmol)、フェニルボロン酸[東京化成工業(株)製]91mg(0.75mmol)、炭酸カリウム[東京化成工業(株)製]207mg(1.5mmol)、及び触媒として実施例1に従って製造して得られたPd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/脱脂
綿の全量(Pd含量0.77mg)を入れ、窒素置換した。この中へTHF−水混合液(体積比5:1)1.2mLを加え、50℃で24時間撹拌後、通常の方法によりカップリング生成物を得た(収率>99%)。
【0062】
[実施例13]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙を用いたHeck反応
【化13】

シュレンク管に、3−ヨードアニソール[東京化成工業(株)製]117mg(0.5mmol)、tert−ブチルアクリラート[東京化成工業(株)製]256mg(2.0mmol)、炭酸カリウム[東京化成工業(株)製]276mg(2.0mmol)、及び触媒として実施例4に従って製造して得られたPd[HPS−N(dod)3Cl・
Br]/ろ紙の全量(Pd含量0.66mg)を入れ、窒素置換した。この中へDMF4mLを加え、80℃で12時間撹拌後、通常の方法によりHeck反応生成物を得た(収率>99%)。
【0063】
[実施例14]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙(リユース1回目)を
用いたSuzuki−Miyaura反応
【化14】

実施例13において使用したPd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙を反応
混合物より回収し、水、アセトン、ジエチルエーテルで順に洗浄し乾燥させた。
シュレンク管に、3−ヨードアニソール[東京化成工業(株)製]117mg(0.5mmol)、フェニルボロン酸[東京化成工業(株)製]91mg(0.75mmol)、炭酸カリウム[東京化成工業(株)製]207mg(1.5mmol)、及び触媒として上記回収Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙を入れ、窒素置換した。こ
の中へTHF−水混合液(体積比5:1)1.2mLを加え、50℃で24時間撹拌後、通常の方法によりカップリング生成物を得た(収率95%)。
【0064】
[実施例15]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙(リユース2回目)を
用いたカップリング反応
【化15】

実施例14において使用したPd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙を反応
混合物より回収し、水、アセトン、ジエチルエーテルで順に洗浄し乾燥させた。
シュレンク管に、3−(2−ヨードフェニルメトキシ)アニソール170mg(0.5mmol)、酢酸カリウム[東京化成工業(株)製]294mg(3.0mmol)、及び触媒として上記回収Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙を入れ、窒素置
換した。この中へDMAc2mLを加え、120℃で24時間撹拌後、通常の方法によりカップリング生成物を得た(収率97%)。
なお、上記3−(2−ヨードフェニルメトキシ)アニソールは、以下のスキームに従って公知の方法により合成した。
【化16】

【0065】
[実施例16]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙(リユース3回目)を
用いたHeck反応
【化17】

実施例15において使用したPd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙を反応
混合物より回収し、水、アセトン、ジエチルエーテルで順に洗浄し乾燥させた。
シュレンク管に、ヨードベンゼン[東京化成工業(株)製]102mg(0.5mmol)、tert−ブチルアクリラート[東京化成工業(株)製]256mg(2.0mmol)、炭酸カリウム[東京化成工業(株)製]276mg(2.0mmol)、及び触媒として上記回収Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/ろ紙を入れ、窒素置換し
た。この中へDMF4mLを加え、80℃で12時間撹拌後、通常の方法によりHeck反応生成物を得た(収率>99%)。
【0066】
[実施例17]Pd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/脱脂綿を用いた水添反応
【化18】

オートクレーブに、4−tert−ブチルシクロヘキサノン[東京化成工業(株)製]154mg(1.0mmol)、及び触媒として実施例1に従って製造して得られたPd[HPS−N(dod)3Cl・Br]/脱脂綿の全量(Pd含量0.77mg)を入れ
た。この中へ水5mLを加え、30気圧水素雰囲気下、室温(およそ25℃)で17時間撹拌後、通常の方法により4−tert−ブチルシクロヘキサノールを得た。反応後の脱脂綿担持触媒を取り出し、水、アセトン、ジエチルエーテルで順に洗浄し乾燥させ、再び同様の反応に使用した。同様に4回まで使用した際の水素化生成物の各収率及び異性体比を表2に示す。
【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニウム基を含有し且つ重量平均分子量が500乃至5,000,000である分岐高分子化合物、及び金属微粒子を含む組成物に、担持剤を配合させて該組成物を固体担体に固着させたことを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記金属微粒子に、前記分岐高分子化合物のアンモニウム基が付着して複合体を形成しており、配合された担持剤により該複合体が固体担体に固着している請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記金属微粒子が、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛及びビスマスよりなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記金属微粒子が、金、銀、白金、銅、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムよりなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記金属微粒子が1nm以上100nm以下の平均粒径を有する微粒子である、請求項3又は請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記分岐高分子化合物が下記式(1):
【化1】

[式中、
1は水素原子又はメチル基を表し、
2、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20の直鎖状、
枝分かれ状又は環状のアルキル基、炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基又は−(CH2CH2O)m−R5(式中、R5は水素原子又はメチル基を表し、mは2乃至100の
任意の整数を表す。)を表すか、R2、R3及びR4が互いに直鎖状、枝分かれ状又は環状
のアルキレン基で結合し、それらと結合する窒素原子と共に環を形成してもよく(該アルキル基及びアリールアルキル基はアルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシル基又はシアノ基で置換されていてもよい)、
-は陰イオンを表し、
1は下記式(2):
【化2】

(式中、
2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖
状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、
1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)で表される構造を表し、
nは、繰り返し構造単位の数であって、2乃至100,000の整数を表す。]で表される化合物からなる請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
前記A1が下記式(3):
【化3】

で表される基であり、
前記X-がハロゲン原子、PF6-、BF4-又はパーフルオロアルカンスルホナートであ
ることを特徴とする請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記担持剤が、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、コハク酸及びクエン酸よりなる群より選択される少なくとも1種である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
前記固体担体が綿状担体である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
前記綿状担体が脱脂綿又はろ紙である、請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
前記分岐高分子化合物及び金属微粒子を含む組成物、前記担持剤並びに前記固体担体を混合することを特徴とする、請求項1に記載の触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196666(P2012−196666A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53411(P2012−53411)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】