説明

拍動ゆらぎ測定装置およびその情報処理方法

【課題】 拍動のゆらぎをリアルタイムに表示するとともに、被測定者の自律神経の緊張を緩和させ、被測定者を交感神経と副交感神経とのバランスがとれた状態に導くことが可能な拍動ゆらぎ測定装置を提供する。
【解決手段】 被測定者に対して呼吸のリズムを表示する表示部310と、前記被測定者の生体信号を検出し、拍動間隔を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された拍動間隔に基づいて、拍動のゆらぎを求めるための時間領域解析により得られた解析結果を表示する表示部301と、前記解析結果を記録する記録部とを備え、少なくとも、前記抽出部は、表示部310により前記呼吸リズムが表示されるのと並行して前記被測定者の生体信号を検出し、前記拍動間隔を抽出可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電波形や心拍等の生体信号に基づいて拍動のゆらぎを可視化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、交感神経と副交感神経の亢進状態の評価方法として、ローレンツプロットが知られている。一般に交感神経と副交感神経とはバランスがとれていることが重要であり、自律神経が緊張し、交感神経と副交感神経とのバランスが乱れると、拍動のゆらぎに影響を及ぼす。
【0003】
ローレンツプロットとは、この拍動のゆらぎを、心電波形や心拍等の生体信号に基づいて可視化したものであり、広く知られている。
【0004】
図12、図13は、心電波形に基づいてローレンツプロットを生成する方法を示した図である。図12の1201に示すような心電波形が収集されると、まず、R波の位置が同定され、R−R間隔が算出される。R波とは心電波形のピーク部分をいい、R−R間隔とはR波のn拍目(nは任意の整数)とn+1拍目の拍動間隔をいう。図12の例では、R波の位置はそれぞれ、R1、R2、R3、R4と同定され、R−R間隔はそれぞれT21、T32、T43と算出される。
【0005】
そして、当該算出されたR−R間隔に基づいて、図13に示す2次元グラフ領域に、T21を横軸に、T32を縦軸にプロットする。次に、T32を横軸に、T43を縦軸にプロットする。このような処理を、連続するR−R間隔に対して順次行うことで、ローレンツプロットが生成される。図14は、生成されたローレンツプロットの一例を示す図であり、(a)は一般にバランスがとれた良好な状態を示しており、(b)、(c)はバランスがとれていない状態を示している((b)はストレス・疾患パターンを、(c)は不整脈パターンをそれぞれ示している)。
【0006】
このような方法により生成されるローレンツプロットを応用した技術として、本願出願人は、これまでいくつかの提案を行っている。例えば、下記特許文献1、2では、当該ローレンツプロットを心電波形の測定と並行してリアルタイムに表示させることで、被測定者がその場で拍動のゆらぎを把握できるリアルタイム拍動モニタを提案している。
【特許文献1】特開2001−212095号公報
【特許文献2】特開2001−212089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、拍動のゆらぎを被測定者に表示し、拍動のゆらぎが良好でない状態(つまり、自律神経が緊張し、交感神経と副交感神経とのバランスが乱れている)と判断された場合でも、被測定者にとっては、その状態をどのようにして改善したらよいのかわからない場合が多い。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、拍動のゆらぎをリアルタイムに表示するとともに、被測定者の自律神経の緊張を緩和させ、被測定者を交感神経と副交感神経とのバランスがとれた状態に導くことが可能な拍動ゆらぎ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る拍動ゆらぎ測定装置は以下のような構成を備える。即ち、
被測定者に対して呼吸のリズムを表示する第1の表示手段と、
前記被測定者の生体信号を検出し、拍動間隔を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された拍動間隔に基づいて、拍動のゆらぎを求めるための時間領域解析により得られた解析結果を表示する第2の表示手段と、
前記解析結果を記録する記録手段と、を備え、
少なくとも、前記抽出手段は、前記第1の表示手段により前記呼吸リズムが表示されるのと並行して前記被測定者の生体信号を検出し、前記拍動間隔を抽出可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
拍動のゆらぎをリアルタイムに表示するとともに、被測定者の自律神経の緊張を緩和させ、被測定者を交感神経と副交感神経とのバランスがとれた状態に導くことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、必要に応じて添付図面を参照しながら本発明の各実施形態を詳細に説明する。なお、以下の各実施形態における拍動ゆらぎ測定装置は、被測定者の自律神経の緊張を緩和させ、被測定者を交感神経と副交感神経とのバランスがとれた状態に導くために、最適な呼吸法に基づく呼吸リズムを表示することを特徴とする。これは、最近の研究により、最適な呼吸法が、自律神経の緊張緩和に効果があることがわかってきたためである。
【0012】
更に、以下の各実施形態における拍動ゆらぎ測定装置は、最適な呼吸法に基づく呼吸リズムの表示と並行して、呼吸中の被測定者の拍動のゆらぎの状態を表示することを特徴とする。これにより、被測定者は、最適な呼吸法による自律神経の緊張緩和の効果をリアルタイムで確認することができるからである。
【0013】
つまり、以下の各実施形態における拍動ゆらぎ測定装置によれば、最適な呼吸法による自律神経の緊張緩和の効果が可視化されるため、被測定者はこれを確認しながら呼吸を行うことが可能となる。この結果、当該被測定者を、交感神経と副交感神経とのバランスがとれた状態へと導くことが可能となる。
【0014】
なお、以下の各実施形態で説明する拍動ゆらぎ測定装置は、時間領域解析の幾何学的図形解析法の1つであるローレンツプロットを表示する装置として説明するが、本発明は以下に記載の実施形態に限定されるものではない。例えば、他の拍動変動指標として、時間領域解析の幾何学的図形解析法の1つであるトライアングルインデックスや、時間/領域解析であるSDNN、SDANN、r−MSSD、RR50(NN50)、pNN50(φ0NN50)、CVRR等を表示する装置であってもよい。
【0015】
[第1の実施形態]
1.装置の外観構成
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる拍動ゆらぎ測定装置100の外観構成を示す図である。同図において、101はハウジングであり、内部の電子機器を覆うとともに、装置の外形を形成する。ハウジング101の両側面には、被測定者の指(例えば、人指し指)を挿入するための開口部102が設けられている(図1では、一方の側面に設けられた開口部のみが図示され、他方の側面に設けられた開口部については省略されている)。
【0016】
開口部102の内部には電極が埋め込まれており、被測定者が右手及び左手の指をそれぞれの開口部102に挿入することで、被測定者の心電波形を検出することができる構成となっている。
【0017】
103は表示/操作部であり、検出された心電波形に基づいて時間領域解析法の幾何学的図形解析法の1つとして得られるローレンツプロットを表示すると共に、被測定者による各種操作を受け付ける。
【0018】
2.装置の機能構成
図2は、本発明の第1の実施形態にかかる拍動ゆらぎ測定装置の機能構成を示す図である。同図において、201はクロック部であり、クロック信号を発振し、CPU202に供給する。202はCPUであり、クロック部201より発振されたクロック信号に基づいて動作する。203はRAMであり、CPU202において処理されるプログラムのワークエリアとして機能するとともに、プログラム処理時にデータ等を一時的に記憶する記憶手段としても機能する。204はROMであり、CPU202にて処理されるプログラムが格納されている。
【0019】
205は表示/操作部であり、CPU202において処理された処理結果を表示するとともに、被測定者からの指示入力を受け付ける。206は電極であり、被測定者の心電波形を検出し、電気信号を出力する。207はアンプであり、電極206より出力された電気信号を増幅するとともに、デジタル信号(以下、拍動測定データ)に変換する。
【0020】
208はデータ記録部であり、CPU202において拍動測定データを処理することにより得られた算出データ等を記録する。
【0021】
ROM204に格納されたプログラムにより実現される機能を221から228に示す。221は拍動検出処理部であり、アンプ207より出力された拍動測定データを受信する。222は拍動間隔検出処理部であり、受信した拍動測定データに基づいて、心電波形のR波を同定したのち、各R−R間隔を算出する。
【0022】
223はローレンツプロット算出部であり、ローレンツプロットデータ(2次元グラフ領域にローレンツプロットを表示するための座標データ)を生成する。また、所定時間、例えば1分間あたりの心拍数を算出する。更に、測定が完了した際には、ゆらぎ度を算出する。なお、ゆらぎ度とは、2次元グラフ領域の分布領域の大きさ(本実施形態にかかる拍動ゆらぎ測定装置にあっては、ローレンツプロットデータのばらつき)のことをいうものとする。
【0023】
224は呼吸リズム記憶部であり、被測定者に最適な呼吸法に基づく呼吸リズムのパターンが記憶されている。
【0024】
225はデータ記録処理部であり、算出されたローレンツプロットデータ、ゆらぎ度等を、データ記録部208に記録する。
【0025】
226は表示処理部であり、測定開始時においては、被測定者からの指示入力を受け付ける各種ボタンを表示/操作部205上に表示する。また、測定中は、ローレンツプロット算出部223において生成されたローレンツプロットデータに基づいて、表示/操作部205上にローレンツプロットを表示するとともに、心電波形のR波のタイミングに合わせて、文字、記号、シンボルマーク等で表示される心拍検出マーク(後述)を点滅させ、更に心拍数を表示する。また、測定完了時には、算出されたゆらぎ度を表示する。また、過去の測定履歴を読み出し、表示/操作部205上に表示する。更に、被測定者が、最適な呼吸法に基づく呼吸を実行するために、呼吸リズムを表示する。
【0026】
227はユーザ入力処理部であり、表示/操作部205を介して入力された指示入力を受けつける。
【0027】
3.拍動ゆらぎ測定装置における画面構成
図3は、表示/操作部205の画面例を示す図である(なお、画面は液晶画面のほか、視認性の高い有機ELなどを用いても良い)。301はデータ表示部であり、表示処理部226が各種データを表示する。図3の例では、ローレンツプロットを表示するための画面が図示されており、横軸および縦軸の単位はmsecである。308、309はそれぞれデータ表示部301をスクロールするためのスクロールバーである。307は、カーソル、スクロールバーを任意に移動させるための十字キーである。310は最適な呼吸法に基づく呼吸リズムを表示する呼吸リズム表示部である。
【0028】
302は測定開始ボタンであり、被測定者が測定開始ボタン302を押下することにより、ゆらぎ度を算出するための処理(測定処理)を開始する。なお、以下では、測定開始ボタン302を押下することにより行われる測定処理を「測定開始処理」と称することとする。
【0029】
303は呼吸開始ボタンであり、被測定者が呼吸開始ボタン303を押下することにより、呼吸リズム表示部310に、最適な呼吸法に基づく呼吸リズムが表示するための呼吸リズム表示処理を開始するとともに、測定処理を開始する。なお、以下では呼吸開始ボタン303を押下することにより行われる呼吸リズム表示処理と測定処理とをあわせて「呼吸開始処理」と称することとする。
【0030】
304は履歴表示/終了ボタンである。履歴表示/終了ボタン304が1回押下されると、データ表示部301には、過去に測定されたゆらぎ度が、時刻情報等とともに表示される。また、履歴表示/終了ボタン304が再度押下されると、履歴表示が終了し、データ表示部301には、ローレンツプロットを表示するための画面が表示される。
【0031】
305、306はそれぞれ縮小ボタンおよび拡大ボタンであり、データ表示部301上に表示されるローレンツプロットや履歴表示等を縮小または拡大する。
【0032】
4.拍動ゆらぎ測定装置における処理の流れ(全体)
図4は、本発明の第1の実施形態にかかる拍動ゆらぎ測定装置における全体処理の流れを示すフローチャートである。ステップS401において装置の電源が投入されると、ステップS402では、表示/操作部205に初期画面(例えば、図3に示す画面)が表示される。
【0033】
ステップS403では、被測定者によりどのような操作が行われたのかを判定する。被測定者により測定開始ボタン302が押下されたと判定された場合には、ステップS404に進み、測定開始処理を実行する(測定開始処理の詳細は、後述)。
【0034】
また、被測定者により呼吸開始ボタン303が押下されたと判定された場合には、ステップS405に進む。
【0035】
ステップS405では、呼吸開始処理を実行する(呼吸開始処理の詳細は後述する)。
【0036】
また、被測定者により履歴表示/終了ボタン304が押下されたと判定された場合には、ステップS406に進み、履歴表示を行う(詳細は後述する)。
【0037】
ステップS407では、履歴表示/終了ボタン304が再度押下されたか否かを判定する。ステップS407において履歴表示/終了ボタン304が再度押下されたと判定された場合には、ステップS408に進み、履歴表示を終了する。
【0038】
ステップS409では、拍動ゆらぎ測定装置の電源をOFFする操作が行われたか否かを判定し、電源をOFFする操作が行われていないと判定された場合には、ステップS403に戻る。一方、電源をOFFする操作が行われたと判定された場合には、処理を終了する。
【0039】
以上のフローチャートのもと、被測定者は、はじめに測定開始ボタン302を押下し、現状の拍動のゆらぎ度を把握した後、呼吸開始ボタン303を押下し、最適な呼吸法に基づく呼吸リズムのもとで呼吸を行いながら、拍動のゆらぎ度を確認する。これにより、被測定者は、最適な呼吸法に基づく呼吸リズムのもとで行う呼吸により、拍動のゆらぎが良好な状態に改善されたことを、確認することができる。
【0040】
5.測定開始処理(ステップS404)の詳細
次に測定開始処理(ステップS404)の詳細について説明する。図5Aは測定処理の詳細を示す図である。
【0041】
ステップS501Aでは、表示画面を初期化する。具体的には、表示画面上に前回の処理結果が残っていた場合には、それを消去し、初期画面(例えば、図3に示す表示画面)にする。
【0042】
ステップS502Aでは、所定時間を計測するためのタイマーをリセットした後、カウントを開始する。
【0043】
ステップS503Aでは、アンプ207より出力される拍動測定データの受信を開始する。ステップS504Aでは、受信した拍動測定データのR波を検出し、データ表示部301上の心拍検出マーク(後述)を、当該R波の検出に同期して点滅させる。また、検出されたR波の拍動間隔に基づいて、単位時間あたり(例えば、1分間あたり)の心拍数をデータ表示部301上に表示する。
【0044】
ステップS505Aでは、検出されたR波の拍動間隔に基づいて、ローレンツプロットデータを算出し、データ表示部301上に、ローレンツプロットを行う。
【0045】
図6Aは、ステップS503Aにおいて拍動測定データの受信が開始された後の表示/操作部205の表示画面を示す図である。
【0046】
図6Aに示すように、測定開始処理(ステップS404)では、被測定者は、最適な呼吸法に基づく呼吸を行わないため、呼吸リズム表示部310には、何も表示されない。
【0047】
一方、データ表示部301には、ステップS503A〜505Aまでの処理結果が表示される。図6Aにおいて、601は心拍検出マークであり、拍動検出処理部221において受信された拍動測定データのR波に合わせて点滅する。602は心拍数表示欄(1分間あたりの心拍数を表示する欄)である。603は、データ表示部301が現在拡大表示されているのか、標準の大きさで表示されているのか、縮小表示されているのかを表示する欄である。604は現在の日時を表示する欄である。605はプロットされたローレンツプロットデータである。606はローレンツプロットデータに基づいて算出されるゆらぎ度を表示するゆらぎ度表示欄である。
【0048】
ステップS506Aでは、拍動測定データの受信が開始されてから所定時間経過したか否かを判定する。所定時間経過していなければ、ステップS502Aに戻る。一方、所定時間が経過していれば、ステップS507Aに進む。なお、所定時間経過するまでの経過を、データ表示部301の任意の位置に表示(セグメント表示などで、カウントダウン表示またはカウントアップ表示)したり、ペット、子供、風景、キャラクタなどを任意に選択して順次画像等を完成させるような画面表示をしてもよい。また、ここでは所定時間経過するまでローレンツプロットを順に表示していく構成としているが、所定時間経過後に、全てのローレンツプロットを同時に表示する構成としても良い。
【0049】
ステップS507Aでは、今回の測定開始処理において算出されたローレンツプロットデータに基づいて、ゆらぎ度を算出し、表示する。好ましくは、更にステップS507Aでは、ローレンツプロットデータの分布領域を示す線を表示する。
【0050】
図7Aは、ローレンツプロットデータの分布領域を示す線701が表示され、ゆらぎ度表示欄606にゆらぎ度702が表示された様子を示す図である。
【0051】
ステップS508Aでは、タイマーカウントを終了するとともに、拍動測定データの受信を終了する。
【0052】
ステップS509Aでは、ステップS507Aで算出されたゆらぎ度をデータ記録部208に記録する。
【0053】
6.呼吸開始処理(ステップS405)の詳細
次に呼吸開始処理(ステップS405)の詳細について説明する。図5Bは呼吸開始処理の詳細を示す図である。
【0054】
ステップS501Bでは、表示画面を初期化する。具体的には、表示画面上に前回の処理結果が残っていた場合には、それを消去し、初期画面(例えば、図3に示す表示画面)にする。
【0055】
ステップS502Bでは、予め定められた最適な呼吸法に基づく呼吸リズムを呼吸リズム記憶部224より読み出し、呼吸リズム表示部310に、バーグラフの表示を開始する。なお、呼吸リズム表示部310に表示されるバーグラフは、呼吸リズムのうち、空気を吸う時間の経過に伴って、バーグラフが紙面右方向に伸びていき、空気を吐く時間の経過に伴って、バーグラフが紙面左側に縮んでいくものとする。
【0056】
ステップS503Bでは、所定時間を計測するためのタイマーをリセットした後、カウントを開始する。
【0057】
ステップS504Bでは、アンプ207より出力される拍動測定データの受信を開始する。ステップS505Bでは、受信した拍動測定データのR波を検出し、データ表示部301上の心拍検出マーク(後述)を、当該R波の検出に同期して点滅させる。また、検出されたR波の拍動間隔に基づいて、単位時間あたり(例えば、1分間あたり)の心拍数をデータ表示部301上に表示する。
【0058】
ステップS506Bでは、検出されたR波の拍動間隔に基づいて、ローレンツプロットデータを算出し、データ表示部301上に、ローレンツプロットを行う。
【0059】
図6Bは、ステップS504Bにおいて拍動測定データの受信が開始された後の表示/操作部205の表示内容を示す図である。
【0060】
図6Bに示すように、呼吸開始処理(ステップS405)では、呼吸リズム表示部310には、バーグラフ607が表示される。
【0061】
また、データ表示部301には、ステップS504B〜506Bまでの処理結果が表示される。なお、図6Bのデータ表示部301に表示される表示内容は、図6Aのデータ表示部301に表示される表示内容と同じであるため、ここでは説明は省略する。
【0062】
ステップS507Bでは、拍動測定データの受信が開始されてから所定時間経過したか否かを判定する。所定時間経過していなければ、ステップS503Bに戻る。一方、所定時間が経過していれば、ステップS508Bに進む。なお、所定時間経過するまでの経過を、データ表示部301の任意の位置に表示(セグメント表示などで、カウントダウン表示またはカウントアップ表示)したり、ペット、子供、風景、キャラクタなどを任意に選択して順次画像等を完成させるような画面表示をしてもよい。また、ここでは所定時間経過するまでローレンツプロットを順に表示していく構成としているが、所定時間経過後に、全てのローレンツプロットを同時に表示する構成としても良い。
【0063】
ステップS508Bでは、今回の呼吸開始処理において算出されたローレンツプロットデータに基づいて、ゆらぎ度を算出し、表示する。好ましくは、更にステップS508Bでは、ローレンツプロットデータの分布領域を示す線を表示する。
【0064】
図7Bは、ローレンツプロットデータの分布領域を示す線701’が表示され、ゆらぎ度表示欄606にゆらぎ度702’が表示された様子を示す図である。
【0065】
ステップS509Bでは、呼吸リズムに基づくバーグラフの表示を停止させるとともに、タイマーカウントを終了し、拍動測定データの受信を終了する。
【0066】
ステップS510Bでは、ステップS508Bで算出されたゆらぎ度をデータ記録部208に記録する。
【0067】
7.履歴表示処理(ステップS406)
図8は、履歴表示/終了ボタン304が押下され、データ表示部301に履歴表示画面が表示された様子を示す図である。
【0068】
図8に示すように、履歴表示画面は、表示項目として、番号(801)測定が行われた日時(802)と、算出されたゆらぎ度(803)と、ローレンツプロットデータ(804)とを備える。これにより、被測定者は、過去の測定履歴を参照することができる。
【0069】
以上の説明から明らかなように、本実施形態にかかる拍動ゆらぎ測定装置では、拍動のゆらぎを被測定者に表示するため、被測定者は自律神経が緊張状態にあるのか否かを把握することができる。
【0070】
また、自律神経を緩和させる最適な呼吸法に基づく呼吸リズムを表示するため、被測定者は当該呼吸リズムに基づいて呼吸を行うことができる。
【0071】
更に、呼吸中の拍動のゆらぎをリアルタイムで被測定者に表示するため、被測定者は、呼吸により拍動のゆらぎが良好な状態に改善したことを確認することが可能となる。
【0072】
つまり、本実施形態によれば、被測定者の自律神経の緊張を緩和させ、交感神経と副交感神経のバランスがとれた状態に被測定者を導くことが可能となる。
【0073】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、呼吸開始ボタン303が押下された際に、予め設定された最適な呼吸法に基づく呼吸リズムが呼吸リズム記憶部224より読み込まれる構成としたが、本発明は特にこれに限られない。
【0074】
例えば、予め複数の呼吸リズムを格納しておき、呼吸開始ボタン303が押下された際に、被測定者が選択できるように構成してもよい。
【0075】
図9は、呼吸開始ボタン303が押下された際に、データ表示部301に呼吸リズム選択画面が表示された様子を示す図である。図9に示すように、呼吸リズム選択画面は、表示項目として、1分間あたりの呼吸数(回数)とそのリズムとを備える。なお、ここでいうリズムとは、1分間あたりの呼吸数を実現するにあたり、空気を吸う時間と吐く時間の割合をいう。図9の例では、例えば1分間あたりの呼吸数が6回の場合でも、吸う時間と吐く時間の割合によって、3種類のリズムが用意されている。具体的には、1分間あたりの呼吸数が6回の場合、1呼吸あたり10秒要することとなるが、吸う時間と吐く時間とを均等に配分した場合には、吸う時間=5sec、吐く時間=5secとなる(呼吸リズム選択画面の番号=10参照)。一方、吐く時間を吸う時間の3倍とすると、吸う時間=2.5sec、吐く時間=7.5secとなる(呼吸リズム選択画面の番号=11参照)。また、吸う時間を吐く時間の3倍とすると、吸う時間=7.5sec、吐く時間=2.5secとなる(呼吸リズム選択画面の番号=12参照)。
【0076】
なお、図9に示す呼吸リズムはあくまで一例であり、これ以外の呼吸リズムが含まれていても良いし、図9に示す呼吸リズムが含まれていなくてもよい。
【0077】
被測定者は、十字キー307を用いてカーソルを移動させ、所望の番号を指定し決定することで呼吸リズムを選択することができる。
【0078】
なお、上記第1の実施形態では、測定履歴として、測定が行われた日時と、算出されたゆらぎ度と、ローレンツプロットデータとを記録することとしたが、本実施形態のように呼吸リズムを選択できるように構成した場合にあっては、選択された呼吸リズムを示す番号をあわせて記録するようにしても良い。
【0079】
[第3の実施形態]
上記第1の実施形態では、測定履歴を表示するにあたり、過去の測定により得られたゆらぎ度等を、時系列でテキスト表示する構成としたが、本発明はこれに限られない。例えば、過去の測定により得られたゆらぎ度等を、棒グラフにより表示するようにしてもよい。
【0080】
図10の(a)は、データ記録部208に記録されているゆらぎ度等を、時系列に棒グラフ表示した様子を示す図である。図10の(a)に示すように、棒グラフ表示することにより、被測定者は過去のゆらぎ度を一目で認識することができるようになる。また、各ゆらぎ度の棒グラフに、選択された呼吸リズムもあわせて表示するようにしてもよい。
【0081】
また、過去の測定により得られたゆらぎ度等の中から、特定の呼吸リズムを選択した際のゆらぎ度等を抽出して表示するようにしてもよい。
【0082】
図10の(b)は、データ記録部208に記録されているゆらぎ度等の中から、特定の呼吸リズムが選択された際の測定により得られたゆらぎ度のみを抽出し、時系列に棒グラフで表示した様子を示す図である。図10の(b)に示すように、特定のゆらぎ度のみを表示することで、被測定者は、呼吸リズムごとにわけて、ゆらぎ度の改善効果を認識することが可能となる。
【0083】
また、過去の測定により得られたゆらぎ度等を、呼吸リズムごとに分類した後、それぞれの呼吸リズムに属するゆらぎ度の平均値を算出したうえで、表示するようにしても良い。
【0084】
図10の(c)は、データ記録部208に記録されているゆらぎ度等を、呼吸リズムごとに分類した後、それぞれの呼吸リズムに属するゆらぎ度の平均値を算出し、呼吸リズムごとに、該算出されたゆらぎ度の平均値を棒グラフで表示した様子を示す図である。図10の(c)に示すように、呼吸リズムごとにわけて表示することで、被測定者は、呼吸リズムごとのゆらぎ度の改善効果の違いを一目で認識することが可能となる。
【0085】
また、図10の(c)の表示に基づいて、自動的に最適な呼吸リズムを選択する構成としてもよい。
【0086】
[第4の実施形態]
上記第1の実施形態では、測定開始処理により表示されたローレンツプロットをリセットしてから、呼吸開始処理によるローレンツプロットを表示する構成としたが、本発明はこれに限られない。
【0087】
例えば、測定開始処理によるローレンツプロットと、呼吸開始処理によるローレンツプロットとを、重ねて表示するようにしても良い。図11は、測定開始処理によるローレンツプロットと、呼吸開始処理によるローレンツプロットとを重ねて表示した様子を示す図である。これにより、最適な呼吸法による呼吸開始前と呼吸中との拍動のゆらぎの差異が明確となり、最適な呼吸法に基づいて呼吸を行うことによる拍動のゆらぎ度の改善効果を被測定者がより認識しやすくなる。
【0088】
このとき、データ表示部301に表示されるローレンツプロットは、測定開始処理と呼吸開始処理とで、記号をわけて表示するようにしてもよいし、色をわけて表示するようにしてもよい。また、記号および色の両方を変えて表示するようにしても良い。
【0089】
更に、測定開始処理により算出されたゆらぎ度と呼吸開始処理により算出されたゆらぎ度とを対比して表示するようにしてもよい。図11の1101は測定開始処理により算出されたゆらぎ度と呼吸開始処理により算出されたゆらぎ度とを対比して表示した様子を示している。
【0090】
[第5の実施形態]
上記第1の実施形態では、測定開始処理により得られたゆらぎ度と、呼吸開始処理により得られたゆらぎ度とを、それぞれ独立してすべて記録する構成としたが、本発明はこれに限られない。
【0091】
例えば、呼吸開始処理により得られたゆらぎ度のみを記録し、その直前の測定開始処理により得られたゆらぎ度については、呼吸開始処理により得られたゆらぎ度との差異を算出し、これを呼吸開始処理により得られたゆらぎ度と対応付けて記録するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる拍動ゆらぎ測定装置100の外観構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる拍動ゆらぎ測定装置の機能構成を示す図である。
【図3】表示/操作部205の画面例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる拍動ゆらぎ測定装置における全体処理の流れを示すフローチャートである。
【図5A】測定開始処理(ステップS404)の詳細を示す図である。
【図5B】呼吸開始処理(ステップS405)の詳細を示す図である。
【図6A】拍動測定データの受信が開始された後の表示/操作部205の表示画面を示す図である。
【図6B】拍動測定データの受信が開始された後の表示/操作部205の表示画面を示す図である。
【図7A】ローレンツプロットデータの分布領域を示す線701が表示され、ゆらぎ度表示欄606にゆらぎ度702が表示された様子を示す図である。
【図7B】ローレンツプロットデータの分布領域を示す線701’が表示され、ゆらぎ度表示ラン606にゆらぎ度702’が表示された様子を示す図である。
【図8】履歴表示/終了ボタン304が押下され、データ表示部301に履歴表示画面が表示された様子を示す図である。
【図9】呼吸開始ボタン303が押下された際に、データ表示部301に呼吸リズム選択画面が表示された様子を示す図である。
【図10】データ記録部208に記録されている測定履歴を、棒グラフで表示した様子を示す図である。
【図11】測定開始処理によるローレンツプロットと、呼吸開始処理によるローレンツプロットとを重ねて表示した様子を示す図である。
【図12】心電波形に基づくローレンツプロット方法を説明するための図である。
【図13】心電波形に基づくローレンツプロット方法を説明するための図である。
【図14】ローレンツプロットの一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者に対して呼吸のリズムを表示する第1の表示手段と、
前記被測定者の生体信号を検出し、拍動間隔を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された拍動間隔に基づいて、拍動のゆらぎを求めるための時間領域解析により得られた解析結果を表示する第2の表示手段と、
前記解析結果を記録する記録手段と、を備え、
少なくとも、前記抽出手段は、前記第1の表示手段により前記呼吸リズムが表示されるのと並行して前記被測定者の生体信号を検出し、前記拍動間隔を抽出可能であることを特徴とする拍動ゆらぎ測定装置。
【請求項2】
被測定者に対して呼吸のリズムを表示する第1の表示手段と、
前記被測定者の生体信号を検出し、拍動間隔を抽出する抽出手段と、
前記抽出されたn拍目の拍動間隔とn+1拍目の拍動間隔とを、2次元グラフ領域の縦軸または横軸として順次プロットする場合の各座標データを算出する座標算出手段と、
所定時間内に算出された前記座標データのばらつきを算出するばらつき算出手段と、
前記所定時間内に算出された前記座標データを前記2次元グラフ領域にプロットするとともに、該座標データのばらつきを表示する第2の表示手段と、
前記算出されたばらつきを記録する記録手段と、を備え、
少なくとも、前記抽出手段は、前記第1の表示手段により前記呼吸リズムが表示されるのと並行して前記被測定者の生体信号を検出し、前記拍動間隔を抽出可能であることを特徴とする拍動ゆらぎ測定装置。
【請求項3】
複数の呼吸のリズムの中から、1の呼吸のリズムを選択する選択手段を更に備え、
前記第1の表示手段は、前記選択手段により選択された呼吸のリズムを、前記被測定者に対して表示することを特徴とする請求項2に記載の拍動ゆらぎ測定装置。
【請求項4】
前記記録手段は、
前記選択手段により選択された呼吸のリズムを示す情報を、前記算出されたばらつきと対応付けて記録することを特徴とする請求項3に記載の拍動ゆらぎ測定装置。
【請求項5】
前記選択手段は、
前記記録手段に記録されたばらつきを、前記呼吸のリズムを示す情報ごとに分類した場合の、各分類に属するばらつきの平均値が最も大きくなる呼吸のリズムを選択することを特徴とする請求項4に記載の拍動ゆらぎ測定装置。
【請求項6】
前記第2の表示手段は、
前記第1の表示手段により前記呼吸のリズムが表示されるのと並行して前記被測定者の生体信号を検出し、拍動間隔を抽出した場合に算出された前記座標データと、前記第1の表示手段により前記呼吸のリズムが表示されていない状態で前記被測定者の拍動を検出し、拍動間隔を抽出した場合に算出された前記座標データとを、前記2次元グラフ領域において、互いに区別しながら重ねてプロットすることを特徴とする請求項2に記載の拍動ゆらぎ測定装置。
【請求項7】
前記第1の表示手段により前記呼吸のリズムが表示されるのと並行して前記被測定者の生体信号を検出し、拍動間隔を抽出した場合に算出された前記座標データのばらつきと、前記第1の表示手段により前記呼吸のリズムが表示されていない状態で前記被測定者の拍動を検出し、拍動間隔を抽出した場合に算出された前記座標データのばらつきとの差異を算出する差異算出手段を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の拍動ゆらぎ測定装置。
【請求項8】
被測定者に対して呼吸のリズムを表示する第1の表示工程と、
前記被測定者の生体信号を検出し、拍動間隔を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程において抽出された拍動間隔に基づいて、拍動のゆらぎを求めるための時間領域解析により得られた解析結果を表示する第2の表示工程と、
前記解析結果を記録する記録工程と、を備え、
少なくとも、前記抽出工程は、前記第1の表示工程において前記呼吸リズムが表示されるのと並行して前記被測定者の生体信号を検出し、前記拍動間隔を抽出可能であることを特徴とする拍動ゆらぎ測定装置における情報処理方法。
【請求項9】
被測定者に対して呼吸のリズムを表示する第1の表示工程と、
前記被測定者の生体信号を検出し、拍動間隔を抽出する抽出工程と、
前記抽出されたn拍目の拍動間隔とn+1拍目の拍動間隔とを、2次元グラフ領域の縦軸または横軸として順次プロットする場合の各座標データを算出する座標算出工程と、
所定時間内に算出された前記座標データのばらつきを算出するばらつき算出工程と、
前記所定時間内に算出された前記座標データを前記2次元グラフ領域にプロットするとともに、該座標データのばらつきを表示する第2の表示工程と、
前記算出されたばらつきを記録する記録工程と、を備え、
少なくとも、前記抽出工程は、前記第1の表示工程において前記呼吸リズムが表示されるのと並行して前記被測定者の生体信号を検出し、前記拍動間隔を抽出可能であることを特徴とする拍動ゆらぎ測定装置における情報処理方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の情報処理方法をコンピュータによって実現させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−279127(P2008−279127A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127035(P2007−127035)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】