説明

拡大ヘッドにおける拡開確認方法

【課題】 地盤の性状に関わりなく、拡大爪が最大径に拡開したことを確実に確認することができる拡開確認方法を提供する。
【解決手段】 ヘッドロッドの外周面に、逆転拡開式拡大爪を、閉縮位置から最大掘削径の最終拡開位置へ往復揺動自在に、軸支した拡大ヘッドにおいて、
上記拡大爪が閉縮位置から最終拡開位置へ揺動する軌道上において、軟質金属からなる検知細材を、上記最終拡開位置に揺動してきた拡大爪により押圧変形を受けうる位置関係に保持し、
拡大掘削作業後、上記拡大ヘッドに残る検知細材の変形を検知して上記拡大爪の最大掘削径での拡開を確認する、
拡大ヘッドにおける拡開確認方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭工事における拡大球根造成等に使用される逆転拡開式拡大爪を備えた拡大ヘッドにおける拡大爪の拡開確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鋼管杭中掘り圧入工法において、マストに昇降自在に支持された電動モータつき回転駆動部にスクリュー掘削ロッドの上端を接続すると共に、スクリュー掘削ロッドの下端に拡大ヘッドを接続し、この拡大ヘッドとして、ヘッドロッドの外周面に、拡大爪を拡縮揺動自在に軸支し、該拡大爪を上記スクリュー掘削ロッドの正回転時に閉縮させるが、逆回転時に周囲の土砂抵抗により自動的に拡開させる逆転拡開式拡大爪としたものが広く使用されている。
【0003】
しかして、上記逆転拡開式拡大爪が土中において逆回転により最大掘削径まで拡開したことを確認する方法としては、拡大爪が拡開するにつれ拡大爪にかかる掘削負荷が増大していき、それに伴って上記電動モータの電流値も増大していくので、作業員はこれを検知しつつ、すでに掘削した孔で拡大爪を正回転させたときの電流値と対比して、明らかに過大な負荷が発生したとき、拡大爪が最大掘削径に拡開したものと判定する方法が一般に採用されている。
【0004】
しかし、上記のような従来の拡開確認方法では、拡大爪にかかる掘削負荷が、地盤の強弱、礫の多少等の地盤の性状によって大きく左右されるものであるため、回転する拡大爪に掘削負荷が最大となり、電動モータの電流値が最大となったときに、拡大爪が最大掘削径に拡開するとは限らないのであり、結局、拡大爪の拡開を確認するには、実用上未だ十分とはいえないものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、地盤の性状に関わりなく、拡大爪が最大掘削径に拡開したことを、拡大掘削作業後に確実に判断することができる拡開確認方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題解決の手段として、本発明は、
ヘッドロッドの外周面に、逆転拡開式拡大爪を、閉縮位置から最大掘削径の最終拡開位置へ往復揺動自在に、軸支した拡大ヘッドにおいて、
上記拡大爪が閉縮位置から最終拡開位置へ揺動する軌道上において、軟質金属からなる検知細材を、上記最終拡開位置に揺動してきた拡大爪により押圧変形を受けうる位置関係に保持し、
拡大掘削作業後、上記拡大ヘッドに残る検知細材の変形を検知して上記拡大爪の最大掘削径での拡開を確認する、
拡大ヘッドにおける拡開確認方法を提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の拡大ヘッドにおける拡開確認方法によれば、拡大爪が逆回転により最大掘削径に拡開したとき、その拡大爪の拡開力によって軟質金属の検知細材に変形が加えられるから、拡大掘削作業後上記検知細材の変形を肉眼で検知して、拡大爪の最大掘削径での拡開を確認することができる。しかも、上記検知細材は、所定位置に保持されて変形を受けるだけであるから、散逸することがなく、確実に確認できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における上記「軟質金属からなる検知細材」には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、錫−鉛合金、その他種々の軟質金属によりパイプ状、丸棒状、チップ状等種々の形状の細材である。
【実施例】
【0009】
以下図面を参照して本発明の実施例について詳述する。まず、本発明方法に使用される拡大ヘッド(A)を図1、2を参照して説明する。
中空のヘッドロッド(1)の外周面に2重らせん羽根(2)、(2)を突設し、該らせん羽根(2)、(2)の下端辺にビット(3)…、(3)…をそれぞれ突設して掘削ヘッド(4)を形成し、この掘削ヘッド(4)の上位に、上記らせん羽根(2)、(2)の一部を切欠して拡大爪取付スペースを形成し、該スペース内に一対の逆転拡開式拡大爪(5)、(5)を設けてある。
【0010】
上記逆転拡開式拡大爪(5)、(5)の構造は次のようである。
上記ヘッドロッド(1)外周面におけるほぼ直径方向相対する位置に、一対のブラケット(6)、(6)を、上記ヘッドロッド(1)の軸線に対し直角に向けた状態で、両ブラケット(6)、(6)の一端を溶接して放射状に突設し、該ブラケット(6)、(6)は、特に図4に示すように、平板状のベース板(7)の一面中央部に、軸孔(9)を有する平板状ブラケット板(8)を直角に突設したもので、そのブラケット板(8)、(8)を水平に向けている。
【0011】
拡大爪(10)、(10)は、二又状の軸受部(11)からほぼ弧状に回曲したアーム(12)を延出し、該アーム(12)の一側辺にビット(13)…を突設したもので、その二又状軸受部(11)を、上記ブラケット(6)のブラケット板(8)の外側端部に被嵌し、ピン(14)により水平面上で、上記掘削ヘッド(4)の掘削径内に後退する閉縮位置から上記掘削ヘッド(4)の掘削径外へ突出する拡開位置へ往復揺動自在に軸支してある。
【0012】
この場合、上記拡大爪(10)を閉縮位置と拡開位置とに往復揺動可能にするため、まず、拡大爪(10)の二又状軸受部(11)のベース板(7)に対向する先端形状をピン(14)と同心の約1/2円弧周面(a)に形成すると共に、該円弧周面(a)とブラケットのベース板(7)平坦面との間に小間隙をあけ、一方上記ブラケット板(8)の外側端部を、上記ピン(14)と同心の1/4円弧周面(b)に形成し、それにより拡大爪(10)が図2、3に実線で示す閉縮位置と仮想線で示す拡開位置とに揺動可能となる。
【0013】
さらに、上記拡大爪(10)を最大掘削径に拡開保持するため、図3に示すように上記二又状軸受部(11)の上記1/2円弧周面(a)の終点(c)における接線と平行で、若干外方へ張り出す当接面(d)を形成してあり、それにより拡大爪(10)が拡開方向に揺動して該当接面(d)が上記ベース板(7)面に全面で当接したとき、拡大爪(10)のそれ以上の拡開揺動を阻止して拡大爪(10)を最大掘削径に拡開させる。
【0014】
(15)はヘッドロッド(1)上端に突設されたオス継手で、該オス継手(15)により拡大ヘッド(A)を掘削スクリューロッド等の作業ロッドの下端に接続する。
【0015】
上例の拡大ヘッド(A)における拡大爪拡開確認方法の実施例について次に説明する。
【0016】
まず、上記拡大爪(10)が閉縮位置から最大掘削径の最終拡開位置へ揺動する軌道として、本例では上記二又状軸受部(11)の一対の当接面(d)、(d)の揺動軌道を利用し、該当接面(d)、(d)が全面で当接すべきベース板(7)の板面上に、一例として外径6mmのアルミニウムパイプからなる検知細管(16)を保持する。
【0017】
本例では、上記検知細管(16)を、図4に示すように、上記ブラケット板(8)基部の上下方向の通孔(20)に上から貫通し、ついでベース板(7)の板面上を横切って、上記ベース板(7)下辺に突設されたマウント(18)の上下方向のメネジ孔(19)に細管(16)下端部を挿入し、その状態で上記メネジ孔(19)にヘッドつきボルト(17)を下から螺合し、該ボルト(17)により上記細管(16)を落下防止の状態に保持する。かくして検知細管(16)は、両端部分をベース板(7)板面上に延長した状態で垂直に保持される。他方の逆転拡開式拡大爪(5)も上記と同一構造である。
【0018】
上記拡大ヘッド(A)を掘削スクリューロッドの下端部に接続して鋼管杭中掘り圧入工法を実施した場合、まず掘削スクリューロッドの正回転により鋼管杭中掘りと圧入を行い、その間拡大爪(10)、(10)が周囲の土圧により閉縮状態にある。
【0019】
支持層に至ったとき、掘削スクリューロッドを逆回転に切換えると、拡大爪(10)、(10)が周囲の土砂抵抗により拡開し、その当接面(d)(d)、(d)(d)が揺動してベース板(7)、(7)板面に近づいたとき、検知細管(16)、(16)に接し、その拡開力により検知細管(16)、(16)をベース板(7)、(7)との間で圧潰しつつ最大掘削径に拡開する。
【0020】
最大径の拡大掘削及びセメントミルク注入後、掘削スクリューロッドの逆回転により拡大爪(10)、(10)を閉縮して掘削スクリューロッドを地上に引き抜き、検知細管(16)、(16)の潰れた状態を検知することにより拡大爪(10)、(10)が最大掘削径に拡開し、それに応じた最大掘削径の拡大孔を掘削できたことを確認することができる。
【0021】
使用ずみの検知細管(16)は取り外し、代って新たな検知細管(16)を同様に上から挿入して次の使用に備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による拡大ヘッドの拡大爪閉縮状態の正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2における逆転拡開式拡大爪部分の一部省略拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【符号の説明】
【0023】
A 拡大ヘッド
1 ヘッドロッド
5 逆転拡開式拡大爪
10 拡大爪
16 検知細管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドロッドの外周面に、逆転拡開式拡大爪を、閉縮位置から最大掘削径の最終拡開位置へ往復揺動自在に、軸支した拡大ヘッドにおいて、
上記拡大爪が閉縮位置から最終拡開位置へ揺動する軌道上において、軟質金属からなる検知細材を、上記最終拡開位置に揺動してきた拡大爪により押圧変形を受けうる位置関係に保持し、
拡大掘削作業後、上記拡大ヘッドに残る検知細材の変形を検知して上記拡大爪の最大掘削径での拡開を確認する、
拡大ヘッドにおける拡開確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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