説明

拡大読書器

【課題】横書きのみならず縦書き文章に対する使い勝手を向上させ、特に書類等に記入する際の利便性を高めた拡大読書器を提供する。
【解決手段】横書きの文章は、基台2の左右両側部21a,21bの何れか一方の側に撮像カメラ28を保持し、基台2を左右に移動させて文章を走査し、LCDモニタ14の表示面15に表示される拡大文字を読み取る。基台2の底面に設けた前後方向のローラ7により、前後方向の移動がスムーズとなる。右利きの人が記入する場合は基台2の右側に撮像カメラ28を保持し、左利きの人が記入する場合は基台2の左側に撮像カメラ28を保持する。縦書きの文章は、基台2を右若しくは左に回動させて縦書きの文章を走査する。右利きの人が記入する場合は右側に撮像カメラ28が位置するように、また左利き人が記入する場合は、左側に撮像カメラが位置するようにそれぞれ基台2を回動させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、使い勝手を向上させた拡大読書器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
実願平4−15686号(実開平5−78077号)により、表示ユニットに回転機構をもたせた携帯用拡大読書器が提案されている。この携帯用拡大読書器の表示ユニットの回転機構は、モニタ保持部に形成した略H字形の切り欠き溝と、長方形の表示モニタに設けた一対のピンとの組み合わせにより構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記表示モニタを縦長に用いたり横長に用いたりするには、一対のピンを切り欠き溝内で移動させる必要があり、使い勝手がよくない。また、ビデオカメラを移動させて文章を走査する場合と、表示モニタに表示された文章を読み取る場合とでは、目線を大きく移動させる必要があり、特に拡大読書器を必要とする弱視者や老年者にとっては使い勝手がよくない。さらに、上記拡大読書器では、書類等に所定事項を記入する際にも同様の問題点がある。
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、横書きのみならず縦書き文章に対する使い勝手を向上させ、特に書類等に記入する際の利便性を高めた拡大読書器を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1に記載の拡大読書器は、長方形の表示面を有するモニタと、上面に該モニタを載置した基台と、該基台の左右両側部及び少なくとも前後の何れか一方の側部に設けた装着部と、該装着部に着脱可能なカメラホルダと、該カメラホルダに挿抜可能に保持されるとともに、該カメラホルダ内で被撮像面から所定高さに支持する支持脚を備えた撮像カメラと、前記基台内に配設して、該撮像カメラが撮像する画像を前記モニタの表示面に表示させる画像表示制御回路とから構成したことを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載の拡大読書器は、請求項1に記載の構成において、前記基台の上面に前記モニタを前後及び左右に傾動させるチルト機構を設けたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項3に記載の拡大読書器は、請求項1若しくは請求項2に記載の構成において、前記基台の底面に、左右若しくは前後の何れか一方向への移動用のローラを設けたことを特徴とする。
【0007】
【発明の作用及び効果】
請求項1に記載の拡大読書器の作用は以下の通りである。横書きの文章に対しては、基台の左右両側部に設けた装着部の何れか一方に撮像カメラを保持したカメラホルダを装着する。このとき、保持された撮像カメラは、支持脚により被撮像面から所定高さに支持される。そして、基台を左右に移動させて横書きの文章を走査し、モニタの表示面に表示される拡大文字を読み取る。
【0008】
モニタと撮像カメラが基台とともに移動するから、目線をモニタの表示面に注ぐだけでよく使い勝手が向上する。
【0009】
また、横書き書類等に記入する場合には、撮像カメラの支持脚の間に筆記用具の先端を挿入して、モニタの表示面を見ながら記入することができる。右利きの人が記入する場合は、基台の右側の装着部にカメラホルダを装着して撮像カメラを保持し、左利き人が記入する場合は、基台の左側の装着部にカメラホルダを装着して撮像カメラを保持することにより、記入の際の利便性が高まる。
【0010】
縦書きの文章に対しては、基台を右若しくは左に90度回動させてモニタを縦長姿勢にし、基台の左右何れかに向いた装着部に撮像カメラを保持したカメラホルダを装着する。保持された撮像カメラは支持脚により被撮像面から所定高さに支持される。そして、基台を前後に移動させて縦書きの文章を走査し、モニタの表示面に表示される拡大文字を読み取る。この場合もモニタと撮像カメラが基台とともに移動するから、目線をモニタの表示面に注ぐだけでよく使い勝手が向上する。
【0011】
縦書き書類等に記入する場合には、撮像カメラの支持脚の間に筆記用具の先端を挿入して、モニタの表示面を見ながら記入することができる。そして、右利きの人が記入する場合は右側に撮像カメラが位置するように、また左利き人が記入する場合は、左側に撮像カメラが位置するように基台を回動させる。これにより、縦書きで記入する際の利便性も高まる。
【0012】
請求項2に記載の拡大読書器によれば、基台の上面にモニタを前後及び左右に傾動させるチルト機構を設けたから、使用時モニタの手前側を低く傾斜させることにより、表示面に対する視認性が高まり使い勝手が向上する。
【0013】
また、請求項3に記載の拡大読書器によれば、基台の底面に、左右若しくは前後の何れか一方向への移動用のローラを設けたから、左右方向若しくは前後方向のの移動がスムーズとなり、斜め方向の移動が阻止できる。この場合、横書き文章を読み取る場合と縦書き文章を読み取る場合では、基台を左右何れかに90度回動させるから、左右若しくは前後の何れか一方向にローラを設ければよい。これにより、横書き及び縦書きの文章を確実に走査することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る拡大読書器1の斜視図である。拡大読書器1は、主として基台2、LCDモニタ14、カメラホルダ24及び撮像カメラ28とから構成される。基台2は、LCDモニタ14を横長姿勢にしたとき正面となる前側面3にスイッチ4、調整ノブ5及び接続端子6等が設けられている。また、図2に示すように基台2の底面の四隅には、左右方向に向けたローラ7が固定されている。
尚、基台2と撮像カメラ28間を接続するコードは省略してある。
【0015】
そして、基台2の上面8には、LCDモニタ14を前後及び左右に傾動させるチルト機構9が設置されている。チルト機構9は、一対の軸支ブラケット10,10により回動自在に軸支した左右方向の第1チルト軸11と、該第1チルト軸11に直交させて固定した支持軸12に回動自在に挿通した前後方向の第2チルト軸13とから構成されている。
【0016】
基台2の内部には、撮像カメラ28が撮像する画像をLCDモニタ14の表示面15に表示させる画像表示制御回路(図示せず)を実装した回路基板16が格納されている。そして、基台2にはカバー17が被着され、チルト機構9から下方の側部四周が覆われている。LCDモニタ14は、チルト機構9の第2チルト軸13に嵌着されたブラケット18に固定されている。
【0017】
上記基台2に被着したカバー17の前側面19には、該基台2のスイッチ4、調整ノブ5及び接続端子6が現れる開口部20が形成されている。そして、カバー17の左右両側部21a,21b及び前後方向の後部22には、それぞれ平面形状を略T字形とした装着溝23が形成されている(図3)。該装着溝23には、カメラホルダ24が装着される。
尚、装着溝23は、スイッチ4等を別の場所に移し、基台2の前部にも設けることができる。
【0018】
カメラホルダ24は、筒形保持部25とその外周から略直角に突出させた装着アーム26とから構成されている。装着アーム26の先端は、装着溝23に雌雄の関係で上方から着脱自在に嵌めて装着できるように略T字形に形成されている。また、筒形保持部25の内周壁には、直交する径方向の4箇所に平らな壁面27が回り止めとして形成されている。
【0019】
筒形保持部25に挿抜可能に保持される撮像カメラ28は、撮像レンズ(図示せず)を下向きとした固体撮像素子を用いたカメラであって、円筒形のケーシング29の下端に複数本の足を有する支持脚30が取り付けられている。ケーシング29の外周には、筒形保持部25の内周壁に形成した4箇所の平らな壁部27に係合する平面31を4箇所に形成したリング32が嵌められている。
【0020】
この平面31と筒形保持部25の内周壁の壁部27とにより、撮像カメラ28を回動角度90度毎に位置決めでき、撮像カメラ28の保持位置を変えた場合に、倒立画像や横向画像がLCDモニタ14の表示面15に表示されないようにできる。ケーシング29の上面からは、コード33が延出され基台2に接続されている。図面ではコード33の中間部を省略している。
【0021】
上記構成の拡大読書器1は、横書きの文章に対しては、横長姿勢のLCDモニタ14をチルト機構9により手前側を低く傾斜させて、表示面15に対する視認性高め、基台2の左右両側部21a,21bに設けた装着溝23の何れか一方に撮像カメラ28を保持したカメラホルダ24の装着アーム26を嵌める(図4)。このとき、保持された撮像カメラ28は、支持脚30により被撮像面から所定高さに支持される。
【0022】
そして、基台2を左右に移動させて横書きの文章を走査し、LCDモニタ14の表示面15に表示される拡大文字を読み取る。LCDモニタ14と撮像カメラ28が基台2とともに移動するから、目線をLCDモニタ14の表示面15に注ぐだけでよく使い勝手が向上する。この場合、基台2の底面の四隅に設けたローラ7により左右方向の移動がスムーズとなり、斜め方向の移動が阻止できる。
【0023】
また、横書き書類等に記入する場合には、撮像カメラ28の支持脚30の間に筆記用具(図示せず)の先端を挿入して、LCDモニタ14の表示面15を見ながら記入することができる。右利きの人が記入する場合は図5(a)に示すように、基台2の右側の装着溝23にカメラホルダ24の装着アーム26を嵌めて撮像カメラ28を保持し、左利き人が記入する場合は図5(b)に示すように、基台2の左側に撮像カメラ28を保持することにより、記入の際の利便性が高まる。
【0024】
縦書きの文章に対しては、基台2を右若しくは左に90度回動させてLCDモニタ14を縦長姿勢にし、チルト機構9により手前側を低く傾斜させて表示面15に対する視認性を高め、基台2の左右何れかに向いた装着溝23に撮像カメラ28を保持したカメラホルダ24の装着アーム26を嵌めて装着する(図6)。カメラホルダ24に保持された撮像カメラ28は、支持脚30により被撮像面から所定高さに支持される。LCDモニタ14を縦長姿勢にすることにより、左右方向に設けたローラ7が前後方向に向く。
【0025】
そして、基台2を前後に移動させて縦書きの文章を走査し、LCDモニタ14の表示面15に表示される拡大文字を読み取る。この場合もLCDモニタ14と撮像カメラ28が基台2とともに移動するから、目線をLCDモニタ14の表示面15に注ぐだけでよく使い勝手が向上する。このとき、基台2の底面に設けたローラ7は前後方向に向いているから、前後方向の移動がスムーズとなり、斜め方向の移動が阻止できる。
【0026】
縦書き書類等に記入する場合には、撮像カメラ28の支持脚30の間に筆記用具(図示せず)の先端を挿入して、LCDモニタ14の表示面15を見ながら記入することができる。そして、右利きの人が記入する場合は右側に撮像カメラ28が位置する(図7(a))ように、また左利き人が記入する場合は、左側に撮像カメラが位置する(図7(b))ようにそれぞれ基台2を回動させる。これにより、縦書きで記入する際の利便性も高まる。
【0027】
その他、撮像カメラ28が基台2の側部に保持されるとともに、支持脚30により被撮像面から所定高さに支持されるから、ページ数が多い本で開いたとき綴じ込み近くに生じる湾曲部分にも追従でき、ページの端部分の読み取りに支障を来さないなどの利点がある。
尚、チルト機構9の代わりにユニバーサルジョイント機構を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】拡大読書器の斜視図である。
【図2】基台のカバーを取り除いた状態の拡大読書器の斜視図である。
【図3】LCDモニタを取り除いた状態の拡大読書器の斜視図である。
【図4】横書き文章に対応させた状態を例示した拡大読書器の斜視図である。
【図5】横書き書類等に記入する際の対応を示した説明図である。
【図6】縦書き文章に対応させた状態を例示した拡大読書器の斜視図である。
【図7】縦書き書類等に記入する際の対応を示した説明図である。
【符号の説明】
1...拡大読書器
2...基台
7...ローラ
9...チルト機構
14...LCDモニタ
15...表示面
16...回路基板
21a,21b...両側部
22...後部
23...装着溝
24...カメラホルダ
25... 筒形保持部
26... 装着アーム
28...撮像カメラ
30...支持脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の表示面を有するモニタと、上面に該モニタを載置した基台と、該基台の左右両側部及び少なくとも前後の何れか一方の側部に設けた装着部と、該装着部に着脱可能なカメラホルダと、該カメラホルダに挿抜可能に保持されるとともに、該カメラホルダ内で被撮像面から所定高さに支持する支持脚を備えた撮像カメラと、前記基台内に配設して、該撮像カメラが撮像する画像を前記モニタの表示面に表示させる画像表示制御回路とから構成したことを特徴とする拡大読書器。
【請求項2】
前記基台の上面に前記モニタを前後及び左右に傾動させるチルト機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の拡大読書器。
【請求項3】
前記基台の底面に、左右若しくは前後の何れか一方向への移動用のローラを設けたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の拡大読書器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2004−364126(P2004−364126A)
【公開日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−162300(P2003−162300)
【出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)