説明

拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置

【課題】ジャッキを設けずにボディ本体と拡幅部を常に水平関係を維持し一定の姿勢に保持することができ、しかも、車体が傾くような地盤に駐車したとしても拡幅部が垂れ下がらず、さらには常に拡幅部の格納と拡開をスムースに行うことができ、雨仕舞いも良好な拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置を提供すること。
【解決手段】モータ24で発生した回転動力を、直線方向の力に変換し、その直線方向の駆動力を拡幅部20の隅角部に同期させ伝達し、拡幅部20を格納位置から拡幅位置あるいは拡幅位置から格納位置へ移動させるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置に関し、詳しくは、災害対策車、テレビ中継車などの様々な特装車あるいはキャンピングカーなど、車体側面に拡幅部を備えた拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地震などの災害に見舞われた地域では、救援隊員の寝泊りする施設が必要になることから、図7に示したような特装車両2が出動される場合がある。
このような特装車両2(以下、支援車2という)では、もともと車体内部に大空間が具備されているが、さらにスペースの拡大化を図るため、車体側面に伸縮自在な拡幅部4を有している。このような支援車2では、拡幅部4をボディ本体6から側方に拡幅させた時の雨仕舞いとして、ボディ本体6と拡幅部4との間の接触部全周に渡って、図8(A)、(B)に示したように、ゴム製のウェザーストリップ12が介在されている。
【0003】
このウェザーストリップ12は、拡幅部4が本体に対して常にミリ単位で一定圧縮がなされていることが必須である。ウェザーストリップ12が常に一定のミリ単位の精度で圧縮されていないと、漏水や、放射性物質や隙間風の侵入、ひいてはこの部分の機構の破壊の原因になってしまう。
【0004】
ところで、従来型のこのような支援車2は、災害地に到着した後に、先ずボディ本体6のフレームに設けられた油圧シリンダ式のジャッキ8を延ばし、水平器や水準器を使い自己車体6を水平に調整する。
【0005】
続いて、拡幅部4を突出させた後に、図8(A)に示したように、拡幅ボディ4の下面を可搬式のジャッキAで支え、水平器やレベルゲージ等で水平に調整し、これにより、拡幅部4の垂れ下がりを防止するとともに、ウェザーストリップ12が均等に圧縮されるようにする。
【0006】
ところが、拡幅部4の下面に複数のジャッキ8を設置する作業は、拡幅部4の水平度を合わせる必要があることから労を要し、仮に大人が二人がかりで行ったとしても30分程度かかってしまう。
【0007】
また、図8(B)に示したように、拡幅部4の下面にジャッキAを設置した後に地盤がぬかるんでしまうこともある。また、長期間では、人の室内移動などでも、あるジャッキが沈み込むことが良くある。このような場合には、拡幅部4が再び傾斜してしまう。
【0008】
このように、拡幅部4を突出させた後に姿勢が傾いてしまった場合には、拡幅部4を水平方向に移動させようとしても、拡幅部4がスムースに動くことができない。すると、ウェザーストリップ12を傷つけてしまう虞があるとともに、拡幅部4をボディ本体6内に格納できなくなる。
【0009】
従って、長期化する救援活動では、垂れ下がり防止とウェザーストリップ12の均等な圧縮を保持するために、こまめに常にジャッキ8、ジャッキAなどでレベル調整を行い、ボディ本体6と拡幅ボディ4の水平関係を維持しなければならない。
【0010】
このように拡幅部4が傾いて拡幅部4のスムースな移動が困難になるという問題は、エアーサスペンションが具備されている車両の場合に顕著である。
例えば、このような車両において、サスペンションからエアーを抜いた状態で拡幅部4を幅方向に突出させた後、誤ってエンジンを始動させてしまうと、先ずボディ本体6が上昇する。すると、ボディ本体6側のジャッキ8が浮いた状態となる。これに伴って、本体6から突出された拡幅部4も引き上げられるため、結果として、拡幅部4が傾斜しウェザーストリップ取り付け部を破損させてしまう。
【0011】
一方、サスペンションからエアーを抜かずにボディ本体6側のジャッキ8をセットした後エアーを抜くと車体が下がり、車体の重量がボディ本体6側のジャッキ8に作用し、本体側のジャッキ8が沈み込んでしまう。
【0012】
このような場合には作業者がジャッキ8を操作して拡幅部4の姿勢を水平状態に調整することが必要であるが、ジャッキ8を上げ下げしながらの姿勢調整は、特に女性が一人で行うことは極めて困難である。
【0013】
しかも、このような従来の拡幅部4を備えた支援車2では、拡幅部4の拡幅あるいは収納を、車体側部に設けた油圧シリンダ式のブーム10で行っていることから、複数のブーム10間の移動速度に若干の差が発生し易い。その場合には、拡幅部4の出幅が左右で一定にならず、拡幅部4のスムースな拡幅、格納を行うことができなくなる。仮に拡幅、格納ができたとしてもウェザーストリップ12が均一に圧縮されず、雨やほこりの浸入は逃れず、さらに異音発生の原因ともなる。
【0014】
さらに、従来の拡幅部を備えた支援車2では、油圧シリンダとブーム10を具備する必要があり、しかもその設置場所を拡幅部4の下方に確保しなければならず、車体重量が増大するとともにコスト高になる。また、拡幅部4の下方にブーム10を設ける必要があることから、拡幅部4を高位置に設定しなければならず、結果として重心位置が上になってしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような実情に鑑み、拡幅したボディの下をジャッキで支えなくても本体と拡幅ボディの水平度を常に維持し、雨仕舞いも良好で、コンパクトな構造で、加えて重心位置を低く設定することができる拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明は、
ボディ本体の側面に拡幅部を備えた車両において、
前記拡幅部を移動させる回転動力を発生させるモータと、
前記モータで発生した回転動力を、前記拡幅部の下部左右に伝達する力伝達手段と、
前記力伝達手段から伝達された回転駆動力を、直線方向の力に変換する力変換手段と、
直線方向に移動しようとする動きを拡幅部の隅角部にあるスプロケットを同回転させる手段と、
前記同回転するスプロケットを同距離移動させる手段と、
を備え、
前記モータで発生した回転動力を、前記力伝達手段により前記拡幅部の下部左右に伝達し、この下部左右に伝達された回転駆動力を前記力変換手段により直線方向の力に変換し、前記拡幅部の四隅部から力を入力することにより、当該拡幅部を格納位置から拡幅位置、あるいは拡幅位置から格納位置へ移動させるように設定したことを特徴としている。
【0017】
このような構成であれば、拡幅部が常に同期して移動するので、移動の最中に拡幅部が傾いたり垂れ下がったりする虞がない。しかも、ジャッキを用いる必要がないので、労を要する作用が不要であり、操作ボタンだけで行うことができる。
【0018】
ここで、本発明では、前記力伝達手段には、スプロケットに巻き掛けられた一対のチェーンが採用されていることが好ましい。
このように一対のチェーンを採用することにより、拡幅部の大きさがどのような大きさを有していても、左右方向の両端部に同時に回転力を伝達することができる。
【0019】
さらに、本発明では、前記力変換手段には、30°台形ネジが採用されていることが好ましい。
このような構成であれば、回転駆動力を直線方向の力に容易に変換することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置によれば、拡幅部に対し同時に直線方向の力が出力されるので、拡幅部の出幅が常に一定であり、これにより拡幅部の移動中、同じ姿勢を保持することができる。さらに、拡幅した状態あるいはぬかるみなどに駐車した場合であっても、拡幅部だけが傾斜してしまうことがない。また、拡幅部の下方にジャッキを設置しないので、これまでのように傾斜したときにジャッキを一人で操作して傾斜角度を調整するなどの労を要する作業が不要となる。
【0021】
さらには、構造が容易であることからメンテナンスが容易であるとともに、軽量化を促進することができる。さらには油圧シリンダおよびブームを使用しないことから、コスト的にも安価である。また拡幅部の下方に油圧シリンダを設ける必要がないことから、重心位置を低く抑えることができる。
【0022】
また、拡幅部にジャッキが不要であるため、エアーサスペンションの車が拡幅中にエンジンの始動や停止が行われ、これにより車体の車高が途中で変わったとしても、ウェザーストリップなどにダメージが生じることがない。又、同理由から拡幅部下が沼や池、瓦礫などの障害物がある場所でも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る拡幅部の同期駆動と自己保持装置を備えた支援車の拡幅部の概略斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したモータの周辺を示した斜視図である。
【図3】図3は図1に示した拡幅部の角部A、角部E付近の斜視図である。
【図4】図4(A)は図1及び図3に示した角部Aに配置された軸(30°台形ネジ)の要部を示す側面図、図4(B)はその軸に螺合されたナットを回転不能にするための構造を示す斜視図である。
【図5】図5は図1に示した拡幅部の角部D、角部H付近の斜視図である。
【図6】図6は図1に示した拡幅部の右側面に配置された動力系の概略を示す側面図である。
【図7】図7は従来の拡幅部を備えた車両の一例を示す斜視図である。
【図8】図8(A)は従来の拡幅部を突出させた支援車を前後方向から見たときの概略図、図8(B)はその拡幅部を保持するジャッキがぬかるみに嵌ったときの概略図である。
【図9】図9(A)、図9(B)は、エアーサスペンションを具備した車両において、不具合が生じたときを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に示した実施例を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る拡幅部の同期駆動と自己保持装置が具備された支援車の拡幅部を周囲の面材を取り外した状態で示している。
【0025】
この拡幅部20は、複数のアングル材22などにより矩形枠状に構成されている。そして、この枠体の四隅部のボディ本体側周囲に本発明に係る拡幅部の同期駆動と自己保持装置が構成されている。この拡幅部の同期駆動と自己保持装置により、本実施例では、図7に示した支援車2の場合と同様に、ボディ本体6から拡幅部20が拡幅したり、格納したりする。
【0026】
なお、以下の説明では、図1の拡幅部20は、図1の矢印X方向が拡幅部20の格納する方向、矢印Y方向が拡幅部20の拡幅する方向とする。そして、以下の説明では、拡幅部20の構造を説明するにあたり、拡幅部20の基本構成である枠体の各角部を、図示したように、A,B,C,D,E,F、G,Hとし、ABCDで囲まれる面を拡幅部20の「後面」、EFGHで囲まれる面を拡幅部20の「前面」、BCGFで囲まれる面を拡幅室側から見て「左側面」、ADHEで囲まれる面を「右側面」として説明する。
【0027】
拡幅部20の後面下方には、回転駆動力を発生するためのモータ24が配置されている。
そして、本実施例では、この1つのモータ24の回転駆動力が後述するチェーン、軸などを構成要素とする力伝達手段30により、角部A、Bに伝達され、角部A,Bに伝達された回転駆動力が、この角部A,Bで直線方向の力に変換される。そして、直線方向に変換された力が、角部A,B、C,Dの全ての箇所から同時に拡幅部20に作用する。なお、これら力の伝達は全て同期している。
【0028】
このように、拡幅部20は、四つの角部全てから同じ力を受けて同じ方向に同時に移動することになる。しかも、拡幅部20は車体全体で支持されているので、ぬかるみなどに車両が設置された場合であれ、拡幅部の移動動作の途中であれ姿勢が常に安定している。
【0029】
本実施例では、モータ24と、モータ24で発生した回転動力を拡幅部の下部左右に伝達する力伝達手段30と、力伝達手段から伝達された回転駆動力を直線方向の力に変換する力変換手段60とを有している。
【0030】
また本実施例では、図2に示したように、モータ24の回転軸に2つのスプロケット25(一つは図示されず)が並設され、これらの各スプロケット25には、チェーン26、28が掛け渡されている。なお、これらチェーン26、28を含め、力の伝達に係わる機構は、モータ24を中心として左右方向に同様に構成されているので、以下の説明では、右側に延びるチェーン28から伝達される経路を例にして説明する。そして、反対側の経路の構成は、同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0031】
図3に示したように、角部Aにはスプロケット29が配置され、このスプロケット29にモータ24から延びるチェーン28が掛け渡されている。そして、このスプロケット29から若干下がった位置にこれと対をなすスプロケット32が配置され、スプロケット29とスプロケット32との間に連結チェーン34が掛け渡されている。
【0032】
なお、図1及び図3などに示した角部A,E、角部D,Hなどに延びるチェーン44、54はこの位置に存在するが、拡幅部20にではなくボディ本体側に固定されたものである。また、図3に示したスプロケット29は、チェーン28とチェーン34の張りを同時に調整できるように斜め右上にずらして固定することができる。
【0033】
下位のスプロケット32は、角部A,E方向に沿って延びる軸35の端部に固設されたもので、このスプロケット32が連結チェーン34から回転力を受けて駆動されることにより軸35も回転する。なお、この軸35は30°台形ネジと称されるもので、図4(A),(B)に示したように、軸35とこれに螺合されるナット36との組み合わせにより回転方向の力が直線方向に変換される。また、ナット36には一対のピン37,37が突設されている。そして、このピン37,37を挟持するように、断面略コ字状の係止部材39が外方から装着されることにより、ナット36の回転が規制されている。
【0034】
ナット36の回転が規制されることにより、例えば軸35が、図4(B)において、矢印J方向に回転すればナット36が矢印Z方向に移動する。これにより、係止部材39に一体的に具備されたプレート42も矢印Z方向に移動する。すなわち、拡幅部20が矢印Z方向に移動する。
【0035】
プレート42は、図3に示したように、その上部に構成されたアングル材などを支えるための支持部材を兼用している。このプレート42は、角部A、B間に差し渡された水平板材43の下面に、ボルトにより固定されている。
【0036】
本実施例では、このように角部A,Bに30°台形ネジと称される軸35を水平方向に配置することにより、この2ヶ所において、モータ24の回転駆動力を直線方向の力に変換することができる。
【0037】
一方、本実施例では、拡幅部20が格納されるボディ本体側の側面に、所定間隔離間して2条のチェーン44が固定されている。
ボディ本体側に固定された2条のチェーン44は、図6に示したように、ブラケット11などにより両端部が固定されたもので、それ自身移動することはない。
【0038】
なお、図6に示した後述する2条のチェーン54もそれ自身移動することはない。
チェーン44は、その上部に配置されたスプロケット46の回転軌道として用いられる。スプロケット46は、図3の水平板材43の上に設置された支持ブラケット47に回転自在に支持されている。
【0039】
また、支持ブラケット47内には、角部A,B方向に配置された軸48の端部が配置され、2条のチェーン44の上に配置されたスプロケット46は、軸48に一体的に固定されている。
【0040】
したがって、軸35(30°台形ネジ)が図4において矢印J方向に回転すれば、ナット36と係止部材39と水平板材43とが、一体に矢印Z方向に移動する。これにより、スプロケット46もチェーン44を軌道として、Z方向に移動する。しかも、このスプロケット46の回転力により、角部A,B方向に配置された水平方向の軸48が、図3において矢印K方向に回転する。
【0041】
一方、水平方向の軸48の角部A側の端部には、スプロケット49が固設されている。このスプロケット49はチェーン50を介して上方のスプロケット51に回転力を伝達する。すなわち、図5に示したように、角部Dにもスプロケット51が配置され、スプロケット49,51間にチェーン50が掛け渡されているので、角部A,D部に回転力が伝達される。
【0042】
このスプロケット51も、角部Aのスプロケット49の場合と同様に、角部C,D間に配置された水平方向の軸53に固結されている。また、スプロケット51のさらに外方には、スプロケット55が配されている。スプロケット55の下方には、図6に示したように、両端部がブラケット11に固定された2条のチェーン54が配されている。このチェーン54も下方のチェーン44と同様に、それ自身移動することはない。その上部に配置されたスプロケット55の回転軌道として用いられる。
【0043】
なお、角部A,B間の水平方向の軸48、および角部C,D間の水平方向の軸53の途中にはそれぞれターンバックルが介在され、このターンバックルにより軸48の全体の長さが調整可能にされている。
【0044】
本実施例による拡幅部20の同期駆動と自己保持装置は、概略上記のように構成されている。
そして、モータ24で発生した回転動力を隅角部A,B、C,Dに伝達する力伝達手段30は、図1に示したように、モータ24から角部A,Bに掛け渡された一対のチェーン26,28と、角部A,Dおよび角部B,Cに掛け渡された一対のチェーン50,50などから構成されている。また、モータ24で発生した回転駆動力を直線方向の力に変換する力変換手段60は、30°台形ネジ(軸35)とナット36などから構成されている。
【0045】
このように構成された本実施例の拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置の作用について説明する。この場合も、主に右側を例にして説明する。
今、拡幅部20が、ボディ本体6内に格納した状態にある。
【0046】
この状態から拡幅部20を、図1において矢印Y方向に移動させてボディ本体6から拡幅させるには、先ず、操作ボックスなどに設けられた押しボタンスイッチを操作してモータ24を始動する。なお、このモータ24は正逆回転可能であるが、拡幅部20を拡幅する場合のモータ回転方向は、図2において反時計方向である。そして、このモータ24の回転駆動力は、一対のチェーン26,28により幅方向に伝達される。
【0047】
そして、チェーン28を介して右方のスプロケット29に回転力が伝達され、さらにチェーン34を介して下段のスプロケット32に回転力が伝達される。このスプロケット32が、図3および図4(B)において矢印J方向に回転すると、30°台形ネジ(軸35)に螺合されたナット36が矢印Z方向に移動する。
【0048】
一方、このようにスプロケット32が回転すると、スプロケット46も回転する。そして、スプロケット46の回転力は、軸48を介して内方に位置するスプロケット49に伝達され、されに上下方向のチェーン50に伝達され、このチェーン50を介して角部Dのスプロケット55に伝達される。そして、この回転駆動力が上方のスプロケット55に出力されると、このスプロケット55がチェーン54を回転軌道として図6のZ方向に移動するため、スプロケット55は角部Hに向かって移動する。なお、これら力の伝達は、チェーン、スプロケット、軸などを介して同時に伝達される。したがって、拡幅部20の角部A、B,C,Dでは、同時に力を受けて水平方向(図1のY方向、図6のZ方向)に移動することになる。
【0049】
すなわち、拡幅部20は、角部A,D(角部B,C)で直線方向の力を同時に受けて、図6に示したように、矢印Z方向に移動する。この移動に際し、本発明では、拡幅部20のスプロケット46,55が車体側の枠部分のチェーン44,54により強固に噛み込み保持された状態で移動するので、従来例の油圧シリンダとアーム10で突出させる場合のように、ある部分で片寄ったりすることはない。したがって、従来のブーム式とは違い常にシンクロしているため、拡幅部20が垂れ下がってしまうことはない。
【0050】
以上、説明したように、本実施例による拡幅部20の直線方向の移動は、全て同期しているため曲がって移動することはない。しかも、突出した状態で傾いてしまうこともない。また、拡幅部20が拡幅された状態から格納される場合の移動においても、力の伝達は同様である。したがって、この場合もスムースな移動を確保することができる。
【0051】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、支援車と呼ばれる特装車について説明したが、本発明は、例えば、テレビ中継車、電波などの計測車両などにも有効に適用することができ、またキャンピングカーにも勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
4 拡幅部
6 ボディ本体
11 ブラケット
20 拡幅部
22 アングル材
24 モータ
25 スプロケット
26,28 チェーン
29 スプロケット
30 力伝達手段
32 スプロケット
34 連結チェーン
35 軸(30°台形ネジ)
36 ナット
39 係止部材
42 プレート
43 水平板材
44 チェーン
46 スプロケット
47 支持ブラケット
48 軸
49 スプロケット
50 チェーン
54 チェーン
51,55 スプロケット
53 軸
60 力変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ本体の側面に拡幅部を備えた車両において、
前記拡幅部を移動させる回転動力を発生させるモータと、
前記モータで発生した回転動力を、前記拡幅部の下部左右に伝達する力伝達手段と、
前記力伝達手段から伝達された回転駆動力を、直線方向の力に変換する力変換手段と、
直線方向に移動しようとする動きを拡幅部の隅角部にあるスプロケットを同回転させる手段と、
前記同回転するスプロケットを同距離移動させる手段と、
を備え、
前記モータで発生した回転動力を、前記力伝達手段により前記拡幅部の下部左右に伝達し、この下部左右に伝達された回転駆動力を前記力変換手段により直線方向の力に変換し、前記拡幅部の四隅部から力を入力することにより、当該拡幅部を格納位置から拡幅位置、あるいは拡幅位置から格納位置へ移動させるように設定したことを特徴とする拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置。
【請求項2】
前記力伝達手段には、スプロケットに巻き掛けられたチェーンが採用されていることを特徴とする請求項1に記載の拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置。
【請求項3】
前記力変換手段には、30°台形ネジが採用されていることを特徴とする請求項1に記載の拡幅車両における拡幅部の同期駆動と自己保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10420(P2013−10420A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144351(P2011−144351)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(593157622)株式会社ヨコハマ・モーターセールス (6)
【Fターム(参考)】