説明

拡張ダウンミックス信号を発生するための装置、拡張ダウンミックス信号を発生するための方法及びコンピュータプログラム

マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて拡張ダウンミックス信号を発生するための装置は、マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて、直接音の到来方向を記述する方向情報、直接音パワー情報及び拡散音パワー情報を含む1組の空間キューパラメータを計算するように構成されている空間アナライザを備えている。また本装置は、直接音の到来方向を記述する方向情報に依存して、直接音パワー情報に依存して、かつ拡散音パワー情報に依存して拡張フィルタパラメータを計算するためのフィルタ計算器も備えている。また本装置は、拡張ダウンミックス信号を取得するために、拡張フィルタパラメータを用いてマイクロホン信号又はマイクロホン信号から導出される信号を濾波するためのフィルタも備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、拡張ダウンミックス信号を発生するための装置、拡張ダウンミックス信号を発生するための方法及び拡張ダウンミックス信号を発生するためのコンピュータプログラムに関する。
【0002】
本発明による一実施形態は、空間オーディオマイクロホンのための拡張ダウンミックス計算に関する。
【背景技術】
【0003】
サラウンドサウンドを小型マイクロホン構造で録音することは、現在も難題である。最も広く知られているこのような構造の1つは、サウンドフィールドマイクロホン及び対応するサラウンドデコーダ(例えば、非特許文献3参照)である。これは、ほぼ同時に発生するその4つのマイクロホンカプセル信号を濾波し、かつ結合してサラウンドサウンド出力チャネルを生成する。単一チャネルの高い信号忠実度は維持されるものの、この手法の弱点は、一次マイクロホン方向性応答の指向性が限定されていることに関連してチャネル分離が限定的なことにある。
【0004】
あるいは、観察される音場のパラメトリックな表現を基礎とする技術を適用することができる。非特許文献2には、従来的な同時発生ステレオマイクロホンペアを用いてサラウンドサウンドを録音することが提案されていて、これらの指向性マイクロホン信号からの音の空間キューパラメータ直接音対拡散音比及び到来方向を如何に推定するか、及びサラウンドサウンドを発生するために、この情報を如何に適用して空間オーディオのコーディング合成を駆動するかが示されている。非特許文献2では、MPEGサラウンド(MPS)コーディングスキーム(例えば、非特許文献6参照)において用いられる特有の空間パラメータを直に計算するために、音のパラメトリックな情報、すなわち到来方向(DOA)、及び音場の拡散音比(DSR)が如何に使用され得るか、についても論じられている。
【0005】
MPEGサラウンドは、マルチチャネルオーディオ信号のパラメトリック表現であり、高品質空間オーディオコーディングへの効率的なアプローチを表す。MPSは、知覚的観点から、マルチチャネルオーディオ信号は異なるスピーカチャネルに対して著しい冗長性を含む、という事実を活用する。MPSエンコーダは、入力として複数のスピーカ信号を取り込むが、この場合、スピーカの対応する空間的構造は事前に知られていなければならない。これらの入力信号に基づいて、MPSエンコーダは、2チャネル間のチャネルレベル差(CLD)及び2チャネル間のチャネル間相関(ICC)等の周波数サブバンドにおける空間パラメータを計算する。次に、これらの空間パラメータから実際のMPSサイド情報が導出される。さらに、エンコーダはダウンミックス信号を計算する。そのダウンミックス信号は1つ又は複数のオーディオチャネルより成る可能性がある
【0006】
ステレオマイクロホンの入力信号は、空間キューパラメータの推定によく適することが分かっている。しかしながら、未処理のステレオマイクロホン入力信号は、対応するMPEGサラウンドのダウンミックス信号としてそのまま用いることに一般的にはさほど適さないことも分かっている。多くの事例において、左右チャネル間のクロストークが高すぎて、結果的に、MPEGサラウンドの復号信号のチャネル分離が不良になることが分かっている。
【0007】
この状況に鑑みて、拡張ダウンミックス信号によりMPEGサラウンドの復号後に十分に優れた空間オーディオ品質及び局在化特性がもたらされるように、マルチチャネルマイクロホン信号を基礎とする拡張ダウンミックス信号を発生するための概念が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】[1] ISO/IEC 23003-1:2007.Information technology - MPEG Audio technologies - Part 1: MPEG Surround.International Standards Organization, Geneva, Switzerland, 2007.
【0009】
【非特許文献2】[2] C.Faller.Microphone front-ends for spatial audio coders.In 125th AES Convention, Paper 7508, San Francisco, Oct.2008.
【0010】
【非特許文献3】[3] M.A.Gerzon.Periphony: Width-Height Sound Reproduction.J.Aud.Eng.Soc.,21(1):2-10, 1973
【0011】
【非特許文献4】[4] D.Griesinger.Stereo and surround panning in practice.In Preprint 112th Conv.Aud.Eng.Soc., May 2002.
【0012】
【非特許文献5】[5] S.Haykin.Adaptive Filter Theory (third edition).Prentice Hall, 1996.
【0013】
【非特許文献6】[6] J.Herre, K.Kjoerling, J.Breebaart, C.Faller, S.Disch, H.Purnhagen, J.Koppens, J.Hilpert, J.Roeden, W.Oomen, K.Linzmeier, and K.S.Chong.Mpeg surround - the iso/mpeg standard for efficient and compatible multi-channel audio coding.In Preprint 122th Conv.Aud.Eng.Soc., May 2007.
【0014】
【非特許文献7】[7] V.Pulkki.Virtual sound source positioning using Vector Base Amplitude Panning.J.Audio Eng.Soc., 45:456-466, June 1997
【0015】
【非特許文献8】[8] B.D.Van Veen and K.M.Buckley.Beamforming: A versatile approach to apatial filtering.IEEE ASSP Magazine, 5(2):4-24, April 1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この目的は、拡張ダウンミックス信号を発生するための特許請求の範囲に記載の装置、拡張ダウンミックス信号を発生するための特許請求の範囲に記載の方法及び拡張ダウンミックス信号を発生するための特許請求の範囲に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による一実施形態は、マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて拡張ダウンミックス信号を発生するための装置を創出する。本装置は、マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて、直接音の到来方向を記述する方向情報、直接音のパワー情報、及び拡散音のパワー情報を含む1組の空間キューパラメータを計算するように構成されている空間アナライザを備えている。また本装置は、直接音の到来方向を記述する方向情報に依存して、直接音パワー情報に依存して、かつ拡散音パワー情報に依存して拡張フィルタパラメータを計算するためのフィルタ計算器も備えている。また本装置は、拡張ダウンミックス信号を取得するために、拡張フィルタパラメータを用いてマイクロホン信号又はマイクロホン信号から導出される信号を濾波するためのフィルタも備えている。
【0018】
本発明によるこの実施形態は、入力されるマルチチャネルマイクロホン信号より遙かに適する拡張ダウンミックス信号が入力されるマルチチャネルマイクロホン信号の濾波オペレーションによって導出され得るという発見、及び、このような信号拡張濾波オペレーションのためのフィルタパラメータは空間キューパラメータから効率的に導出され得るという発見に基づいている。
【0019】
したがって、拡張フィルタパラメータの計算に際しては、やはりMPEGサラウンドパラメータの導出に適する同じ情報、すなわち空間キューパラメータを再使用することが可能である。したがって、上述の概念を用いれば、高度に効率的なシステムを作り出すことができる。
【0020】
さらに、マルチチャネルマイクロホン信号のチャネル信号が低い空間分離しか含まない場合でも、MPEGサラウンドデコーダにおける処理に際して良好なチャネル分離を可能にするダウンミックス信号を導出することができる。したがって、拡張ダウンミックス信号は、従来システムに比較して、MPEGサラウンドの復号後に遙かに向上した空間オーディオ品質及び局在化特性をもたらすことができる。
【0021】
要約すると、本発明による上述の実施形態は、適度の計算量で優れた空間分離特性を有する拡張ダウンミックス信号を生成できるようにする。
【0022】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は、拡張ダウンミックス信号が望ましいダウンミックス信号に近似すべく拡張フィルタパラメータを計算するように構成されている。この手法を用いれば、拡張フィルタパラメータの、濾波の望ましい結果への十分な適応を保証することができる。例えば、拡張フィルタパラメータは、拡張ダウンミックス信号の1つ又は複数の統計的特性がダウンミックス信号の望ましい統計的特性に近似するように計算することができる。したがって、拡張ダウンミックス信号の期待値への十分な適応が達成可能であり、この場合、期待値は、望ましい相関値として数値的に規定することができる。
【0023】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は、空間キューパラメータに依存して、マルチチャネルマイクロホン信号(又は、より具体的にそのチャネル信号)とダウンミックス信号の望ましいチャネル信号との間の望ましい相関値を計算するように構成されている。この場合、フィルタ計算器は、好ましくは、望ましい相互相関値に依存して拡張フィルタパラメータを計算するように構成されている。この相互相関値は、ダウンミックス信号のチャネル信号が十分に優れたチャネル分離特性を示しているかどうかの優れた尺度であることが分かっている。また、望ましい相関値は、空間キューパラメータに基づいて適度な計算量で計算できることも分かっている。
【0024】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は、望ましい相互相関値を、複数のスピーカ信号に対するマルチチャネルマイクロホン信号の直接音成分の望ましい寄与を記述する方向依存性の利得係数に依存して、かつ拡張ダウンミックス信号の1つ又は複数のチャネルに対する複数のオーディオチャネル(例えば、スピーカ信号)の望ましい寄与を記述する1つ又は複数のダウンミックスマトリクス値に依存して計算するように構成されている。方向依存性利得係数及びダウンミックスマトリクス値は共に、望ましい相互相関値の計算に極めて適切であること、及び、前記方向依存性利得係数及び前記ダウンミックスマトリクス値は容易に入手可能であることが分かっている。さらに、前記情報に基づいて、望ましい相互相関値が容易に入手可能であることも分かっている。
【0025】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は、方向情報を1組の方向依存性利得係数へマップ(map)するように構成されている。方向情報に依存して利得係数を適度な計算量で計算するためには、マルチチャネル振幅パンニング法が使用できることが分かっている。方向依存性利得係数を決定するためには、例えば、どのスピーカが直接音成分をレンダリングすべきかを記述し得る到来方向情報が適することが分かっている。直接音成分は、到来方向情報(方向情報として略示される)に依存して異なるスピーカ信号へ分散されること、及び、どのスピーカが直接音成分をレンダリングすべきかを記述する利得係数の決定が比較的単純であることは、容易に理解できる。例えば、1組の方向依存性利得係数へ方向情報をマップするために用いられるマッピング(mapping)規則は、単に、到来方向に関連づけられるスピーカは直接音成分をレンダリング(又は主としてレンダリング)する可能性があり、一方で他の方向に関連づけられる他のスピーカは単に直接音成分の僅かな部分をレンダリングするか、又は直接音成分を抑制もすることを決定できる。
【0026】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は、望ましい相互相関値を計算するために、直接音のパワー情報及び拡散音のパワー情報を考慮するように構成されている。前記音成分(直接音成分及び拡散音成分)双方のパワーを考慮することにより、直接音成分及び拡散音成分が共に(典型的には、マルチチャネル)ダウンミックス信号のチャネル信号へ適切に割り当てられることから、結果的に、特に優れた聴感が得られることが分かっている。
【0027】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は、望ましい相互相関値を計算するために、方向情報に依存して直接音のパワー情報を重みづけし、かつ方向情報とは独立して予め決められた重み付けを拡散音のパワー情報に適用するように構成されている。したがって、直接音成分と拡散音成分との間で、結果的にどちらが望ましい相互相関値の現実的な推定をもたらすかの区別が可能である。
【0028】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は、拡張フィルタパラメータを導出するためにウィーナ−ホップ(Wiener-Hopf)方程式を評価するように構成されている。この場合、ウィーナ−ホップ方程式は、マルチチャネルマイクロホン信号の異なるチャネルペア間の相関性を記述する相関値と、拡張フィルタパラメータと、マルチチャネルマイクロホン信号のチャネル信号とダウンミックス信号の望ましいチャネル信号との間の望ましい相互相関値と、の間の関係性を記述する。このようなウィーナ−ホップ方程式の評価は、ダウンミックス信号のチャネル信号の望ましい相関特性に十分適応される拡張フィルタパラメータを生じさせることが分かっている。
【0029】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は、望ましいダウンミックスチャネルのモデルに依存して拡張フィルタパラメータを計算するように構成されている。望ましいダウンミックスチャネルをモデル化することにより、拡張フィルタパラメータは、マルチチャネルデコーダにおける望ましいマルチチャネルスピーカ信号の優れた再構成を可能にするダウンミックス信号を得るように計算することができる。
【0030】
実施形態によっては、望ましいダウンミックスチャネルのモデルは理想的なダウンミキシングのモデルを備えていることができる。理想的なダウンミキシングは、チャネル信号(例えば、スピーカ信号)が個々に利用可能であれば実行される。さらに、モデル化は、マルチチャネルマイクロホン信号が限定的な空間分離しか持たないチャネル信号を含む場合でも、個々のチャネル信号がマルチチャネルマイクロホン信号から如何にして入手され得るかのモデルを含むことができる。したがって、望ましいダウンミックスチャネルの全体的モデルは、例えば、個々のチャネル信号(例えば、スピーカ信号)を如何にして入手し、かつ前記個々のチャネル信号から如何にして望ましいダウンミックスチャネルを導出するかのモデル化を組み合わせることによって得ることができる。したがって、これは、比較的少ない計算量で入手可能な拡張フィルタパラメータの計算にとって十分によい参考になる。
【0031】
ある好適な実施形態において、フィルタ計算器は1チャネルフィルタリング又は2チャネルフィルタリングを選択的に実行するように構成されている。1チャネルフィルタリングでは、ダウンミックス信号の第1のチャネルがマルチチャネルマイクロホン信号の第1のチャネルの濾波によって導出され、ダウンミックス信号の第2のチャネルがマルチチャネルマイクロホン信号の第2のチャネルの濾波によって導出されるとともに、マルチチャネルマイクロホン信号の第1のチャネルからダウンミックス信号の第2のチャネルへのクロストークが回避され、マルチチャネルマイクロホン信号の第2のチャネルからダウンミックス信号の第1のチャネルへのクロストークが回避される。2チャネルフィルタリングでは、ダウンミックス信号の第1のチャネルがマルチチャネルマイクロホン信号の第1及び第2のチャネルを濾波することにより導出され、ダウンミックス信号の第2のチャネルがマルチチャネルマイクロホン信号の第1及び第2のチャネルを濾波することにより導出される。1チャネルフィルタリング及び2チャネルフィルタリングの選択は、マルチチャネルマイクロホン信号の第1のチャネルとマルチチャネルマイクロホン信号の第2のチャネルとの間の相関性を記述する相関値に依存して行われる。1チャネルフィルタリング又は2チャネルフィルタリングを選択することにより、左右のチャネルが高度に相関している状況下で、もし2チャネルフィルタリングが用いられれば現出することがある数値誤差を回避することができる。したがって、マルチチャネルマイクロホン信号のチャネル信号が高度に相関しているか否かに拘わらず、良品質のダウンミックス信号を入手することができる。
【0032】
本発明による別の実施形態は、拡張ダウンミックス信号を発生するための方法を創出する。
【0033】
本発明による別の実施形態は、拡張ダウンミックス信号を発生する前記方法を実行するためのコンピュータプログラムを創出する。
【0034】
本方法及びコンピュータプログラムは、前記装置と同じ発見を基礎とし、かつ前記装置に関連して論じた任意の特徴及び機能によって補うことができる。
【0035】
続いて、添付の図面を参照して本発明による実施形態について述べる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による拡張ダウンミックス信号を発生するための装置を示す概略ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による空間オーディオマイクロホンの処理を示す図解である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による拡張ダウンミックス計算を示す図解である。
【図4】図4は、本発明による実施形態において用いられる場合がある、望ましいダウンミックス信号Y1及びY2を計算するためのチャネルマッピングを示す図解である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態による予め処理されたマイクロホン信号を基礎とする拡張ダウンミックス計算を示す図解である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態によるマルチチャネルマイクロホン信号から拡張フィルタパラメータを導出するための計算を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施形態によるマルチチャネルマイクロホン信号から拡張フィルタパラメータを導出するための計算を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
1. 図1による拡張ダウンミックス信号を発生するための装置
【0038】
図1は、マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて拡張ダウンミックス信号を発生するための装置100を示す概略ブロック図である。装置100は、マルチチャネルマイクロホン信号110を受信し、かつこれに基づいて拡張ダウンミックス信号112を生成するように構成されている。装置100は、マルチチャネルマイクロホン信号110に基づいて1組の空間キューパラメータ122を計算するように構成されている空間アナライザ120を備えている。空間キューパラメータは、典型的には、直接音(この直接音は、マルチチャネルマイクロホン信号に含まれている。)の到来方向を記述する方向情報と、直接音パワー情報と、拡散音パワー情報とを含む。また装置100は、空間キューパラメータ122に依存して、すなわち、直接音の到来方向を記述する方向情報、直接音パワー情報及び拡散音パワー情報に依存して、拡張フィルタパラメータ132を計算するためのフィルタ計算器130も備えている。また装置100は、拡張ダウンミックス信号112を得るために、マイクロホン信号110又はマイクロホン信号110から導出される信号110’を、拡張フィルタパラメータ132を用いて濾波するためのフィルタ140も備えている。信号110’は、任意の事前処理150を用いてマルチチャネルマイクロホン信号110から任意に導出することができる。
【0039】
装置100の機能に関しては、拡張ダウンミックス信号112は、典型的には、拡張ダウンミックス信号112がMPEGサラウンドの復号後にマルチチャネルマイクロホン信号110よりも向上した空間オーディオ品質を可能にするように生成されるということができる。それは、拡張フィルタパラメータ132は、典型的には、この目的を達成するために、フィルタ計算器130によって生成されるからである。拡張フィルタパラメータ130の生成は、空間アナライザにより生成される空間キューパラメータ122に基づいており、拡張フィルタパラメータ130がマルチチャネルマイクロホン信号110の空間特性に従って生成されるように、かつマルチチャネルマイクロホン信号110の空間特性を強調するためになされる。したがって、フィルタ140により実行される濾波は、入力されるマルチチャネルマイクロホン信号110に比較すると、拡張ダウンミックス信号112の空間特性の信号適応処理の向上を可能にする。
【0040】
続いて、空間アナライザ120により実行される空間分析に関する細部を、フィルタ計算器130によって実行されるフィルタパラメータ計算、及びフィルタ140によって実行される濾波に関連してさらに詳しく述べる。
【0041】
2. 図2による、拡張ダウンミックス信号を発生するための装置
【0042】
図2は、拡張ダウンミックス信号(2チャネルオーディオ信号の形式をとることができる。)及び2チャンネルより多いチャネルを有するアップミックス信号に関連づけられた1組の空間キューを発生するための装置200を示す概略ブロック図である。装置200は、第1のチャネル信号210a及び第2のチャネル信号210bを含む2チャネルマイクロホン信号を生成するように構成されているマイクロホン装置205を備えている。
【0043】
装置200は、さらに、2チャンネルより多いチャネルを有するアップミックス信号に関連づけられた1組の空間キューを2チャネルマイクロホン信号に基づいて生成するためのプロセッサ216を備えている。プロセッサ216は、拡張フィルタパラメータ232を生成するようにも構成されている。プロセッサ216は、その入力信号として、マイクロホン装置205によって生成される第1のチャネル信号210a及び第2のチャネル信号210bを受信するように構成されている。装置216は、拡張フィルタパラメータ232を生成し、かつ空間キュー情報262も生成するように構成されている。装置200はさらに、2チャネルオーディオ信号プロバイダ240を備えており、2チャネルオーディオ信号プロバイダ240はマイクロホン装置205によって生成される第1のチャネル信号210a及び第2のチャネル信号210bを受信し、これらの第1のチャネルマイクロホン信号210a及び第2のチャネルマイクロホン信号210bの処理されたバージョンを生成して、それをチャネル信号212a、212bを含む2チャネルオーディオ信号212とするように構成されている。
【0044】
マイクロホン装置205は、第1の指向性マイクロホン206と第2の指向性マイクロホン208とを備えている。第1の指向性マイクロホン206及び第2の指向性マイクロホン208は、好ましくは30cmより大きくない距離だけ離れている。したがって、第1の指向性マイクロホン206によって受信される信号と第2の指向性マイクロホン208によって受信される信号は強く相関しており、このことは信号アナライザ220による成分エネルギー情報(又は成分パワー情報)122a及び方向情報122bの計算にとって有益であることが分かっている。しかしながら、第1の指向性マイクロホン206及び第2の指向性マイクロホン208は、第2の指向性マイクロホン208の方向特性209が第1の指向性マイクロホン206の方向特性207の回転バージョンであるように方向づけられる。したがって、第1のチャネルマイクロホン信号210a及び第2のチャネルマイクロホン信号210bは(マイクロホン206、208の空間近接性により)強く相関しているが、(指向性マイクロホン206、208の異なる方向特性207、209により)なおも相違している。特に、略一定方向からマイクロホン装置205へ入射する指向性信号は、第1のチャネルマイクロホン信号210aと第2のチャネルマイクロホン信号210bの強く相関した信号成分であって、時間的に一定した方向依存性振幅比(又は強度比)を有する信号成分を生じさせる。時間的に変わる方向からマイクロホンアレイ205へ入射する周囲オーディオ信号は、第1のチャネルマイクロホン信号210a及び第2のチャネルマイクロホン信号210bの信号成分であって、著しい相関性を有するが時間的に変動する振幅比(又は強度比)を有する信号成分を生じさせる。したがって、マイクロホン装置205は2チャネルマイクロホン信号210a、210bを生成し、それらのマイクロホン信号210a、210bはマイクロホン206、208が近接して配置されてもプロセッサ216の信号アナライザ220が直接音と拡散音とを区別することを可能にする。このように、装置200はオーディオ信号プロバイダを構成し、そのオーディオ信号プロバイダは空間的に小型の形式で実装することができ、それにも拘わらず2チャンネルより多いチャネルを有するアップミックス信号に関連づけられる空間キューを生成できる。
【0045】
空間キュー262は、生成された2チャネルオーディオ信号212a、212bと組み合わせて、空間オーディオデコーダでサラウンドサウンド出力信号を生成するために使用することができる。
【0046】
以下、装置200に関してさらに幾つかの説明を行う。装置200は、場合により、第1のチャネル信号210a及び第2のチャネル信号210bを生成するマイクロホン装置205を備える。第1のチャネル信号210aはx1(t)としても示され、第2のチャネル信号210bはx2(t)として示されている。留意すべきは、第1のチャネル信号210aと第2のチャネル信号210bは、図1による装置100へ入力されるマルチチャネルマイクロホン信号110を表す場合があることである。
【0047】
2チャネルオーディオ信号プロバイダ240は、第1のチャネル信号210a及び第2のチャネル信号210bを受信し、かつ典型的には、拡張フィルタパラメータ情報232も受信する。2チャネルオーディオ信号プロバイダ240は、第1のチャネル信号212a及び第2のチャネル信号212bによって表される2チャネルオーディオ信号212を生成するために、例えば、任意の事前処理150の機能及びフィルタ140の機能を実行することができる。2チャネルオーディオ信号212は、図1の装置100によって出力される拡張ダウンミックス信号112と同等であるとすることができる。
【0048】
信号アナライザ220は、第1のチャネル信号210a及び第2のチャネル信号210bを受信するように構成することができる。また、信号アナライザ220は、2チャネルマイクロホン信号210に基づいて、すなわち第1のチャネル信号210a及び第2のチャネル信号210b基づいて、成分エネルギー情報122a及び方向情報122bを得るように構成することもできる。好ましくは、信号アナライザ220は、成分エネルギー情報122aが2チャネルマイクロホン信号の直接音成分と2チャネルマイクロホン信号の拡散音成分のエネルギー(又は、等価的にパワー)の推定値を示し、かつ方向情報122が2チャネルマイクロホン信号210a、210bの直接音成分が出てくる方向の推定を示すような、成分エネルギー情報122aと方向情報122bを得るように構成されている。したがって、信号アナライザ220は空間アナライザ120の機能を受け持つことができ、成分エネルギー情報122aと方向情報122bは空間キューパラメータ122と同等であるとすることができる。成分エネルギー情報122aは、直接音パワー情報及び拡散音パワー情報と同等であるとすることができる。プロセッサ216は、信号アナライザ220から成分エネルギー情報122aと方向情報122bを受信する空間サイド情報発生器260も備えている。空間サイド情報発生器260は、これらの情報に基づいて空間キュー情報262を生成するように構成されている。好ましくは、空間サイド情報発生器260は、2チャネルマイクロホン信号210a、210bの成分エネルギー情報122aと2チャネルマイクロホン信号210a、210bの方向情報122bを空間キュー情報262へマップするように構成されている。したがって、空間キュー情報262は、空間キュー情報262が2チャンネルより多いチャネルを有するアップミックスオーディオ信号に関連づけられる空間キューの1組を示すように得られる。
【0049】
プロセッサ216は、2チャネルマイクロホン信号210a、210bに基づいて、2チャンネルより多いチャネルを有するアップミックスオーディオ信号に関連づけられる空間キュー情報262の極めて計算効率の良い計算を可能にする。信号アナライザ220は2チャネルマイクロホン信号から大量の情報を抽出することができる。その情報とは、すなわち直接音成分のエネルギーの推定値及び拡散音成分のエネルギーの推定値の双方を示す成分エネルギー情報122aと、2チャネルマイクロホン信号の直接音成分が出てくる方向の推定値を示す方向情報122bである。信号アナライザ220により2チャネルマイクロホン信号210a、210bに基づいて得ることのできるこの情報は、2チャンネルより多いチャネルを有するアップミックスオーディオ信号に関する空間キュー情報262を導出するに足るものであることが分かっている。重要な点として、成分エネルギー情報122aと方向情報122bは、実際にアップミックス・オーディオ・チャネルを中間量として用いることなく空間キュー情報262を直に決定するに足るものであることが分かっている。
【0050】
さらに、プロセッサ216は、成分エネルギー情報122a及び方向情報122bを受信しかつこれらに基づいて拡張フィルタパラメータ情報232を生成するように構成されているフィルタ計算器230を備えている。したがって、フィルタ計算器230は、フィルタ計算器130の機能を引き継ぐことができる。
【0051】
上記を要約すると、装置200は、拡張ダウンミックス信号212と空間キュー情報262の双方を、双方とも同じ中間情報122a、122bを用いて効率的に決定することができる。また、装置200は、(拡張された)ダウンミックス信号212と空間キュー情報262の双方を得るために、空間的に小型のマイクロホン装置205を用いることができる点も留意されるべきである。ダウンミックス信号212は、小型マイクロホン装置205(小型マイクロホン装置205は、装置200の一部である場合も、装置200の外部に存在するが装置200へ接続される場合もある。)を使用しているにも拘わらず、フィルタ計算器230による拡張フィルタパラメータ232の計算により特に優れた空間分離特性を備えている。したがって、(拡張された)ダウンミックス信号212は、空間キュー情報262と組み合わせて取り入れられる場合に(例えば、MPEGサラウンドデコーダを用いる)空間レンダリングに適したものとすることができる。
【0052】
要約すると、図2は、空間オーディオマイクロホン手法の概略ブロック図を示している。図から分かるように、ステレオマイクロホンの入力信号210a(x1(t)でも示される)及び210b(x2(t)でも示される)は、ブロック216において、マルチチャネルアップミックス信号(例えば、2チャネルオーディオ信号212)に関連づけられる空間キュー情報の組262を計算するために用いられる。さらに、2チャネルダウンミックス信号212も生成される。
【0053】
以下、ステレオマイクロホン信号の解析に基づいて空間キュー情報262を決定するために必要とされるステップについて要約する。ここでは、非特許文献2における提示を参照する。
【0054】
3. ステレオ信号解析
【0055】
以下、空間アナライザ120又は信号アナライザ220が実行することのできるステレオ信号解析について述べる。留意すべきは、使用されるマイクロホンが2個より多く存在し、かつマルチチャネルマイクロホン信号のチャネル信号が2チャンネルより多く存在するいくつかの実施形態において、拡張信号解析が使用されることがあるということである。
【0056】
ここで述べるステレオ信号解析は空間キューパラメータ122を生成するために用いることができる。空間キューパラメータ122は成分エネルギー情報122aと方向情報122bの形式をとることができる。ステレオ信号解析は時間−周波数領域において実行できることに留意すべきである。したがって、マルチチャネルマイクロホン信号110、210のチャネル信号210a、210bは、後の解析のために時間−周波数領域表現に変換することができる。
【0057】
マイクロホン信号x1(t)の時間−周波数表現はX1(k,i)、マイクロホン信号x2(t)の時間−周波数表現はX2(k,i)である。ここでkは時間の指数、iは周波数の指数である。X1(k,i)とX2(k,i)は、

としてモデル化できるものとする。ここで、a(k,i)は利得係数であり、S(k,i)は左チャネルにおける直接音であり、N1(k,i)とN2(k,i)は拡散音を表す。
【0058】
空間オーディオコーディング(SAC)のダウンミックス信号112、212及びサイド情報262はE{SS*}、E{N11*}及びE{N22*}の関数として計算される。ここで、E{.}は短時間平均演算であり、*は複素共役を示す。以下、これらの値を導く。
【0059】
式(1)から、

になる。
【0060】
ここで留意すべきは、E{SS*}は直接音パワー情報又は等価的に直接音エネルギー情報と考えることができ、E{N11*}とE{N22*}は拡散音パワー情報又は拡散音エネルギー情報と考えることができることである。E{SS*}とE{N11*}は成分エネルギー情報と考えることができ、aは方向情報と考えることができる。
【0061】
双方のマイクロホン信号における拡散音の量は同じであって、すなわちE{N11*}=E{N22*}=E{NN*}であり、かつN1とN2との間の正規化された相互相関係数はΦdiff、すなわち、

であるものとする。Φdiffは、例えば既定値をとってもよく、何らかのアルゴリズムに従って計算されてもよい。
【0062】
これらの仮定が与えられたとすれば、式(2)は、

と書き表すことができる。
【0063】
式(2)におけるE{SS*}及びaを除去すれば、二次方程式、

が得られる。但し、

である。
【0064】
よって、E{NN*}は、式(5)の2つの解のうちの物理的に可能な一方、すなわち、

になる。
【0065】
式(5)のもう1つの解はマイクロホン信号パワーより大きい拡散音パワーをもたらすが、それは物理的に不可能である。
【0066】
式(7)が与えられると、a及びE{SS*}の計算は容易である。

【0067】
非特許文献2で論じられているように、直接音の到来方向a(k,i)は、下記のように、振幅比推定値a(k,i)の関数として決定することができる。

【0068】
特有のマッピングは、録音に用いられるステレオマイクロホンの方向特性に依存する。
【0069】
4. 空間サイド情報の生成
【0070】
以下、空間サイド情報発生器260によって生成することのできる空間キュー情報262の生成について述べる。しかしながら、留意すべきは、空間サイド情報の空間キュー情報262形式での生成が本発明による実施形態にとって必要な特徴ではないということである。したがって、空間サイド情報の生成は実施形態によっては省略できることに留意すべきである。また、空間キュー情報262又は他の任意の空間サイド情報を入手するために異なる方法を使用できることも留意されるべきである。
【0071】
しかしながら、以下で論じる空間サイド情報の生成が空間キュー情報を生成するための好ましい概念と考えることができることにも留意すべきである。
【0072】
ステレオ信号解析結果122a、122b、すなわち式(9)による変数a又はα、E{SS*}及びE{NN*}が与えられたとすれば、SACデコーダ互換性空間パラメータは、例えば空間サイド情報発生器260によって生成される。これを実行する1つの効率的な方法は、マルチチャネル信号モデルを考慮することであることが分かっている。以下、一例として、下記を意味する図4に示されているようなスピーカ配置について考察する。すなわち、

ここで、

である。

に対応し、すなわち、

であり、

は全てE{NN*}に等しい同一のパワーを有する。最終的には利得h1からh5が拡散音の量を決定することから、この拡散音パワーの定義が任意であることに留意すべきである。
【0073】
L(k,i)、R(k,i)、C(k,i)、Ls(k,i)及びRs(k,i)は、例えば望ましいチャネル信号又は望ましいスピーカ信号であってもよいことに留意すべきである。
【0074】
第1のステップでは、直接音の到来方向α(k,i)の関数として、マルチチャネル振幅パンニング法(例えば、非特許文献7及び4参照)が適用されて利得係数g1からg5が決定される。次に、発見的手順を用いて拡散音の利得h1〜h5が決定される。定値h1=1.0、h2=1.0、h3=0、h4=1.0及びh5=1.0は合理的な選択であり、すなわちアンビエンスは前後に等しく分散され、その間、センターチャネルはドライ信号として発生される。しかしながら、h1〜h5の異なる選択も可能である。
【0075】
側方及び後方からの直接音は、前方向から到来する音に対して減衰される。マイクロホン信号に含まれる直接音は、好ましくは、マイクロホンの指向性パターンに依存する因数g(α)によって利得補償される。
【0076】
サラウンド信号モデル(10)式が与えられると、使用される特有のSACの空間キュー解析が信号モデルに適用され、MPEGサラウンドの空間キューが取得される。
【0077】
式(10)において定義される信号のパワースペクトルは、

である。但し、

である。
【0078】
以下で用いられるクロススペクトルは、

である。
【0079】
MPEGサラウンドは、サラウンドチャネルへ、それらのさらなる処理に先行して

を印加する。これは、互換的なダウンミックス及び空間サイド情報を発生するために考慮することができる。
【0080】
MPEGサラウンドの第1の2:1(two-to-one)(TTO)ボックスは、LとLsとの間のチャネル間レベル差(ICLD)及びチャネル間コヒーレンス(ICC)を用いる。(10)式に基づき、かつサラウンドチャネルのプレスケーリングが補正されると、これらのキューは、

になる。
【0081】
同様にして、RとRsに関する第2のTTOボックスのICLD及びICCが計算される。すなわち、

である。
【0082】
MPEGサラウンドの3:2(three-to-two)(TTT)ボックスは、「エネルギーモード」で用いられる。例えば、非特許文献1を参照されたい。TTTボックスは、ダウンミックス及び空間サイド情報を計算する前に、

ことに留意すべきである。サラウンドチャネルのプレスケーリングを考慮すると、TTTボックスにより使用される2つのICLDパラメータは、

である。
【0083】
指数iとkは、表記を簡潔にするために取り除かれていることに留意すべきである。
【0084】
したがって、キューICLDLLs、ICCLLs、ICLDRRs、ICCRRs、ICLD1及びICLD2を含む空間キュー情報は、空間サイド情報発生器260により、空間キューパラメータ122、122a、122bに基づいて、すなわち成分エネルギー情報122aと方向情報122bに基づいて得られる。
【0085】
5. MPEGサラウンドの復号
【0086】
以下、ある可能なMPEGサラウンドの復号について述べる。これは、空間キュー情報262(又は他の任意の適切な空間キュー情報)を用いて、ダウンミックス信号(例えば、拡張ダウンミックス信号112又は拡張ダウンミックス信号212)から例えば複数のスピーカ信号のような複数のチャネル信号を導出するために用いることができる。
【0087】
MPEGサラウンドデコーダにおいて、受信されたダウンミックス信号112、212は、受信された空間サイド情報262を用いて2チャンネルより多いチャネルへ拡張される。このアップミックスは、各々いわゆる逆1:2(Reverse-One-To-Two)(R−OTT)ボックス及び逆3:2(Reverse Three-To-Two)(R−TTT)ボックスを適切にカスケードすることによって実行される(例えば、非特許文献6参照)。R−OTTボックスは、モノオーディオ入力とサイド情報に基づいて2つのオーディオチャネルを出力するが、R−TTTボックスは、2チャネルオーディオ入力と関連のサイド情報に基づいて3つのオーディオチャネルを決定する。言い替えれば、逆ボックスは、先に述べた対応するTTTボックス及びOTTボックスとは逆の処理を実行する。
【0088】
エンコーダにおけるマルチチャネル信号モデルと同様に、デコーダは、元のサラウンドサウンドを正しく再生するために特有のスピーカ構成を想定する。さらに、デコーダは、正しいダウンミックス信号を計算するために、MPSエンコーダ(MPEGサラウンドエンコーダ)が複数の入力チャネルの特有のミキシングを実行することを想定する。
【0089】
次項では、MPEGサラウンド・ステレオ・ダウンミックスの計算を提示する。
【0090】
6. MPEGサラウンド・ステレオ・ダウンミックス信号の生成
【0091】
以下、MPEGサラウンド・ステレオ・ダウンミックス信号がどのように発生されるかについて述べる。
【0092】
好適な実施形態において、ダウンミックスは、左右半球体に対応するスピーカチャネル間にクロストークが存在しないように決定される。これには、左半球体から右半球体への音響エネルギーの望ましくない漏れが存在しないという優位点があり、これにより、MPEGサラウンドストリームの復号後の左/右分離が著しく高まる。さらに、右チャネルから左チャネルへの信号漏れについても同じ論法が当て嵌まる。
【0093】
従来の5.1サラウンドのオーディオ信号をコーディングするためにMPEGサラウンドが用いられる場合、使用されるステレオダウンミックスは、
[Y12]T=M[L R C LSS]T (18)
である。ここで、ダウンミックス行列は、

であり、gsはサラウンドチャネルに与えられる先に述べたプレ利得である。
【0094】
式(18)、式(19)によるダウンミックスの計算は、対応するスピーカ位置でカバーされる再生エリアの、2つのダウンミックスチャネルへのマッピングと考えることができる。図4には、このマッピングは、従来のダウンミックス計算(18)、(19)の特有の事例に関して示されている。
【0095】
7. 拡張ダウンミックス計算
【0096】
7.1 拡張ダウンミックス計算の概要
【0097】
以下、拡張ダウンミックス計算に関して詳述する。本概念の優位点の理解を容易にするために、ここでは幾つかの従来システムとの比較を行う。
【0098】
第2章において述べた空間オーディオマイクロホンの場合、ダウンミックス信号は基本的に、以下で述べる拡張ダウンミックス計算が存在しないステレオマイクロホン(例えば、マイクロホン装置205)の録音信号に対応する。実際のステレオマイクロホンは、その特有の指向性パターンに起因して左右信号成分の望ましい分離を与えないことが分かっている。必然的に、左右チャネル(例えば、チャネル信号210a及び210b)間のクロストークが高すぎて、結果的にMPEGサラウンドの復号信号におけるチャネル分離は不良になることも分かっている。
【0099】
本発明による実施形態は拡張ダウンミックス信号112、212を計算する手法を生み出している。拡張ダウンミックス信号112、212は、望ましいSACダウンミックス信号(例えば、信号Y1、Y2)に近似するものであり、すなわち、異なるチャネル間に望ましいレベルのクロストークを呈するものである。そのクロストークのレベルは元のステレオ入力110、210に含まれるクロストークレベルとは異なる。その結果、関連の空間サイド情報262を用いた空間オーディオ復号後の音質は向上する。
【0100】
図1、図2、図3及び図5に示されている概略ブロックは本提案手法を示している。図から分かるように、元のマイクロホン信号110、210、310は、拡張ダウンミックスチャネル112、212、312を得るためにダウンミックス拡張ユニット140、240、340によって処理される。マイクロホン信号110、210、310の修正は、制御ユニット120、130、216、316によって制御される。制御ユニット120、130、216、316は、スピーカ再生のマルチチャネル信号モデルと推定された空間キューパラメータ122、122a、122b、322を考慮する。この情報から、制御ユニット120、130、216、316は、拡張のためのターゲット、すなわち望ましいダウンミックス信号(例えば、ダウンミックス信号Y1、Y2)のモデルを決定する。以下、本発明の詳細について論じる。
【0101】
7.2 望ましいステレオダウンミックス信号のモデル
【0102】
本章では、望ましいステレオダウンミックス信号のモデルについて論じ、提案する拡張ダウンミックス計算のターゲットも提示する。
【0103】
方程式(10)による我々が想定するサラウンド信号モデルに方程式(18)及び(19)を適用すれば、

に従って望ましいダウンミックス信号のモデルが得られる。

である。
【0104】
左右マイクロホン信号における拡散音は、N1及びN2である。したがって、ダウンミックスは、N1及びN2に関連する拡散音を基礎とするものであるべきである。先に定義したように、

のパワーは同じであることから、

と同じパワーを有するN1及びN2を基礎とする拡散信号は、

である。
【0105】
したがって、望ましいステレオダウンミックス信号のモデルは、望ましいステレオダウンミックス信号のチャネル信号Y1、Y2を利得値g1、g2、g3、g4、g5、gs、h1、h2、h3、h4、h5の関数として、かつまたステレオマイクロホン信号内の直接音の

に依存して表すことを可能にする。
【0106】
7.3 1チャネルのフィルタリング
【0107】
以下、拡張ダウンミックス信号の第1のチャネルがマルチチャネルマイクロホン信号の第1のチャネル信号から導出され、かつ拡張ダウンミックス信号の第2のチャネルがマルチチャネルマイクロホン信号の第2のチャネル信号から導出される手法について述べる。留意すべきは、以下で述べる濾波は、フィルタ140によって、又は2チャネルオーディオ信号プロバイダ240によって、又はダウンミックス拡張340によって実行できるということである。また、拡張フィルタパラメータH1、H2はフィルタ計算器130によって、フィルタ計算器230によって、又は制御装置316によって生成できることにも留意すべきである。
【0108】
式(20)による望ましいダウンミックス信号Y1(k,i)とY2(k,i)を決定するための可能な一手法は、元のステレオマイクロホン入力X1(k,i)とX2(k,i)へ拡張フィルタを適用すること、すなわち、

である。
【0109】
これらのフィルタは、

(すなわち、マルチチャネルマイクロホン信号のチャネル信号を濾波することによって得られる実際のダウンミックス信号)が各々望ましいダウンミックス信号Y1(k,i)とY2(k,i)に近似するように選択される。適切な近似は、

が各々、マルチチャネルスピーカ信号モデルのエネルギーに関して、ターゲットであるダウンミックス信号Y1(k,i)とY2(k,i)で与えられるものと同じエネルギー分散を共有するというものである。言い替えれば、フィルタは、マルチチャネルマイクロホン信号のチャネル信号を濾波することによって得られる実際のダウンミックス信号が、例えばエネルギー特性又は相互相関特性のような幾つかの統計的特性に関して望ましいダウンミックス信号に近似するように選択される。
【0110】
拡張フィルタがウィーナ(Wiener)フィルタ(例えば、非特許文献5参照)に一致する場合、H1(k,i)とH2(k,i)は、

に従って決定することができる。
【0111】
式(24)に式(20)と式(22)を代入すると、

となる。但し、

である。
【0112】
これから分かるように、拡張フィルタはマルチチャネル信号モデル(10)の異なる成分に直に依存する。これらの成分は、空間キューパラメータに基づいて推定されることから、拡張ダウンミックス計算のフィルタH1(k,i)とH2(k,i)はこれらの空間キューパラメータにも依存する、と結論することができる。言い替えれば、拡張フィルタの計算は、図3にも示されているように、推定される空間キューパラメータによって制御できる。
【0113】
7.4 2チャネルのフィルタリング
【0114】
本項では、「1チャネルのフィルタリング」と題する章で論じた1チャネル手法の代替方法を提示する。この場合、

は各々、マイクロホン入力信号X1、X2双方の濾波されたバージョンから決定される。この手法は、双方のマイクロホンチャネルを最適に組み合わせることができるために、1チャネルのフィルタリング方法に比べて向上した性能を期待できる。
【0115】
実際のダウンミックス信号は、

によって得ることができる。
【0116】
以下、2チャネルウィーナフィルタに基づいて拡張フィルタを推定する一例を示す。表示を単純にするために、以後は指数(k,i)を省略する。

のウィーナ−ホップ方程式は、

である。
【0117】
したがって、フィルタは、

のように得られる。但し、

である。
【0118】
マイクロホン入力信号X1、X2と望ましいダウンミックスチャネルY1、Y2との間の相互相関は、

によって表すことができる。但し、重みwiは式(26)−式(29)において導入されている。
【0119】
7.5 1チャネルのフィルタリング及び2チャネルのフィルタリングの選択
【0120】
以下、1チャネルのフィルタリングと2チャネルのフィルタリングとの間の信号適応型選択を可能にする概念について述べる。
【0121】
これまでに述べたように、2チャネルのフィルタリングには、実施に際して時々(又は、頻繁にも)オーディオアーティファクトを引き起こすフィルタを作り出すという問題がある。左右のチャネルが高度に相関している場合、ウィーナ−ホップ方程式の共分散行列の条件付けは常に不良である。よって結果的に生じる数値的感度は、不合理でありかつオーディオアーティファクトを生じさせるフィルタをもたらす。これを防止するために、2チャネルが所定の相関度を超える場合は常に1チャネルのフィルタリングが使用される。これは、
1,1 = H1
1,2 = 0
2,1 = 0
2,2 = H2, (36)
のようなフィルタを、

である場合に常に計算することによって実行することができる。但し、コヒーレンス/相関しきい値Tは、1チャネルのフィルタリングが使用される際の相関度を決定する。T=0.9という値は良い結果をもたらす。
【0122】
言い替えれば、マルチチャネルマイクロホン信号の任意のチャネル信号間の相関度に応じて、1チャネルのフィルタリングと2チャネルのフィルタリングとを選択的に切り替えることができる。相関が予め決められた相関値より大きければ、2チャネルのフィルタリングではなく1チャネルのフィルタリングが使用できる。
【0123】
7.6 マルチチャネルの一般的事例
【0124】
以下、式(10)によるマルチチャネル信号モデルに基づくMPEGサラウンド・ステレオ・ダウンミックス信号の拡大された計算を、より一般的なチャネル構成へ一般化する。式(10)と同様に、K個のスピーカチャネルを想定する一般化されたマルチチャネル信号モデルは、

によって与えられ、l=1,2,…,Kである。利得係数gl(k,i)は、直接音のDOAと再生構成内のl番目のスピーカの位置に依存する。利得係数h1は、先に説明したように予め決めて使用できる。Zlは、複数のチャネルの望ましいチャネル信号を表し、l=1,2,…,Kである。
【0125】
望ましいダウンミックスチャネルjの信号Yj(k,i)の計算は、

による適正なミキシング演算によって達成される。
【0126】
ミキシング加重mj,lは、l番目のスピーカの位置に関連づけられる再生エリアの、j番目のダウンミックスチャネルへの特有な空間パーティショニング(partitioning)又はマッピングを表す。
【0127】
一例を挙げると、スピーカチャネルl、すなわち所定の再生エリアがj番目のダウンミックス信号に寄与すべきでない場合、対応するミキシング加重mj,lはゼロに設定される。
【0128】
各式(23)、式(30)及び式(30)と同様に、元のマイクロホン入力チャネルXj(k,i)は、適切に選択された拡張フィルタによって、望ましいダウンミックスチャネルYj(k,i)に近似するように修正される。
【0129】
1チャネルフィルタの場合は、

になる。

【0130】
式(40)は、利用可能な入力マイクロホン信号が2チャンネルより多く存在する場合にも適用できることに留意されたい。結果として生じるフィルタも、推定される空間キューパラメータに依存する。しかしながら、2チャンネルより多いマイクロホン入力チャネルに基づく空間キューパラメータの推定は本発明の必須部分ではないことから、ここではこれについて論じない。
【0131】
一般的なマルチチャネルダウンミックス拡張フィルタに関して必要とされる方程式は、式(30)、(30)と同様に導出することができる。M個のマイクロホン入力信号を想定すると、j番目の望ましいダウンミックスチャネルYj(k,i)は、M個の拡張フィルタを対応するマイクロホン信号Xm(k,i)へ適用することによって近似される。

【0132】
対応する望ましいダウンミックスチャネルYj(k,i)は、一般化された信号モデル(38)を用いて式(39)から得ることができる。
【0133】
マルチチャネル拡張行列Hj(k,i)の要素は、対応するウィーナ−ホップ方程式、

を解くことによってえることができる。但し、Hはオペランドのエルミートを示す。
【0134】
注意すべきことは、上述の方法は、マルチチャネル信号モデル(38)におけるスピーカの数Kが多い場合は、空間キュー情報に基づく一般的なマイクロホン・クロストークの抑制器と考えることができることである。この場合、スピーカ位置は、そのまま直接音の対応するDOAと考えることができる。本発明を適用すれば、1つ又は複数の抑制フィルタを用いて柔軟性のあるクロストーク抑制器を実現することができる。
【0135】
8. マイクロホン信号の事前処理
【0136】
これまでは、信号Xj(k,i)がマイクロホンの出力信号を表す事例のみを考察した。提案する新規概念又は方法は、これに代わって、事前処理されたマイクロホン信号にも適用することができる。図5は、対応する手法を示している。
【0137】
事前処理は、元のマイクロホン入力信号に基づいて固定時間不変ビーム形成(fixed time-invariant beamforming)(例えば、非特許文献8参照)を適用することにより実現することができる。事前処理の結果として、所定のマイクロホン信号への望ましくない信号漏れの幾分かは、拡張フィルタの適用前に既に軽減することができる。
【0138】
事前処理された入力チャネルを基礎とする拡張フィルタは、先に論じたフィルタと同様に、Xj(k,i)を事前処理ステージの出力信号Xj,mod(k,i)で置換することによって導出することができる。
【0139】
9. 図3による装置
【0140】
図3は、本発明の別の実施形態による、マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて拡張ダウンミックス信号を発生するための装置300を示す概略ブロック図である。
【0141】
装置300は2つのマイクロホン306、308を備え、これらは、時間−周波数領域表現X1(k,i)により表される第1のチャネル信号と、第2の時間−周波数表現X2(k,i)により表される第2のチャネル信号とを含む2チャネルマイクロホン信号310を生成する。装置300は空間分析320も備え、これは、2チャネルマイクロホン信号310を受信し、かつこれに基づいて空間キューパラメータ322を生成する。空間分析320は、空間アナライザ120又は信号アナライザ220の機能を担うこともあるので、空間キューパラメータ322は、空間キューパラメータ122、又は成分エネルギー情報122a及び方向情報122bと同等物であることもある。装置300は制御装置316も備え、これは、空間キューパラメータ322を受信し、かつ2チャネルマイクロホン信号310も受信する。制御ユニット316はまた、マルチチャネル信号モデル318を
受信するか、又はこのようなマルチチャネル信号モデル318のパラメータを備えている。制御装置316は、拡張フィルタパラメータ332をダウンミックス拡張装置340へ与える。制御装置316は、例えばフィルタ計算器130又はフィルタ計算器230の機能を担うことがあるので、拡張フィルタパラメータ332は拡張フィルタパラメータ132又は拡張フィルタパラメータ232と同等物であることもある。ダウンミックス拡張装置340は2チャネルマイクロホン信号310を受信し、また拡張フィルタパラメータ332も受信し、かつこれらに基づいて(実際の)拡張マルチチャネルダウンミックス信号312を生成する。拡張マルチチャネルダウンミックス信号312の第1のチャネル信号は

で表され、かつ拡張マルチチャネルダウンミックス信号312の第2のチャネル信号は

で表される。留意すべきは、ダウンミックス拡張装置340はフィルタ140又は2チャネルオーディオ信号プロバイダ240の機能を担うことがあるということである。
【0142】
10. 図5による装置
【0143】
図5は、マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて拡張ダウンミックス信号を発生するための装置500を示す概略ブロック図である。図5による装置500は図3による装置300に極似するものであり、よって同一の手段及び信号は等しい参照数字で示し、説明は省略する。しかしながら、装置300の機能ブロックに加えて、装置500は事前処理580も備えている。事前処理580は、2チャネルマイクロホン信号310を受信し、かつこれに基づいてマルチチャネルマイクロホン信号の事前処理バージョン310’を生成する。この場合、ダウンミックス拡張340は、マルチチャネルマイクロホン信号310自体ではなく、2チャネルマイクロホン信号210の処理されたバージョン310’を受信する。また、制御装置316も、マルチチャネルマイクロホン信号310自体ではなく、マルチチャネルマイクロホン信号の処理されたバージョン310’を受信する。しかしながら、ダウンミックス拡張340及び制御装置316の機能は、この変形により実質的に影響されない。
【0144】
11. 図4によるダウンミックス信号へのチャネル信号の割り付け
【0145】
先に論じたように、望ましいダウンミックスチャネルY1、Y2又はその幾つかの統計的特性を導出するために用いられるダウンミックスのモデル化は、

をチャネル信号(例えば、L(k,i)、R(k,i)、C(k,i)、Ls(k,i)、Rs(k,i)又はZl(k,i))へマップすることと、スピーカチャネル信号をダウンミックスチャネル信号へマップすることを含む。
【0146】
直接音成分と拡散音成分をスピーカチャネル信号へマップする第1のマッピングに関しては、方向依存性のマッピングを用いることができ、それは利得係数glにより記述される。しかしながら、スピーカチャネル信号をダウンミックスチャネル信号へマップするマッピングに関しては、一定の想定を用いてもよく、それはダウンミックス行列により記述されることがある。図4に示されているように、スピーカチャネル信号C、L及びLsのみが第1のダウンミックスチャネル信号Y1に寄与し、かつ、スピーカチャネル信号C、R及びRsのみがダウンミックスチャネル信号Y2に寄与すると想定してもよい。図4はこれを示している。
【0147】
12. 図6による信号処理の流れ
【0148】
以下、図6を参照して、本発明による一実施形態における信号処理の流れについて述べる。図6は、例えば時間周波数表現X1及びX2により表されるマルチチャネルマイクロホン信号から拡張フィルタパラメータHを導出するための信号処理の流れを示す概略表示である。
【0149】
処理の流れ600は、空間分析610を、例えば第1のステップとして含む。空間分析610は空間キューパラメータの計算機能を担うことができる。したがって、直接音パワー情報(又は直接音エネルギー情報)E{SS*}、拡散音パワー情報(又は拡散音エネルギー情報)E{NN*}及び方向情報α,aは、マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて得ることができる。直接音パワー情報(又は直接音エネルギー情報)の導出、拡散音パワー情報(又は拡散音エネルギー情報)の導出、及び方向情報に関する詳細は先に述べた。
【0150】
また処理の流れ600は利得係数のマッピング620も含み、方向情報はここで複数の利得係数(例えば、利得係数g1からg5)へマップされる。利得係数のマッピング620は、例えば、先に述べたように、マルチチャネル振幅パンニング法を用いて実行できる。
【0151】
また処理の流れ600はフィルタパラメータの計算630も含み、ここで、直接音パワー情報、拡散音パワー情報、方向情報及び利得係数から拡張フィルタパラメータHが導出される。フィルタパラメータの計算630は、さらに、1つ又は複数の一定のパラメータ、例えばスピーカチャネルのダウンミックスチャネル信号への望ましいマッピングを記述するパラメータを用いてもよい。また、拡散音成分のスピーカ信号へのマッピングを記述する予め決められたパラメータを適用してもよい。
【0152】
フィルタパラメータの計算は、例えば、w−マッピング632を含む。方程式26から方程式29に従って実行され得るw−マッピングでは、中間量として作用し得る値w1からw4を得ることができる。フィルタパラメータの計算630はさらにH−マッピング634を含む。H−マッピング634は、例えば方程式25に従って実行することができる。H−マッピング634では、拡張フィルタパラメータHを決定することができる。H−マッピングのために、マイクロホン信号のチャネルとダウンミックス信号のチャネルとの間の望ましい相互相関値E{X1,Y1*}、E{X2,Y2*}を用いることができる。これらの望ましい相互相関値は直接音パワー情報E{SS*}とE{NN*}に基づいて得ることができる。E{SS*}とE{NN*}は方程式(25)の分子に見ることのできるようなものであり、方程式(24)の分子と同一である。
【0153】
結論を言えば、図6の処理の流れは、チャネル信号X1、X2により表されるマルチチャネルマイクロホン信号から拡張フィルタパラメータHを導出するために適用することができる。
【0154】
13. 図7による信号処理の流れ
【0155】
図7は、本発明の別の実施形態による信号処理の流れ700を示す概略表示である。信号処理の流れ700は、マルチチャネルマイクロホン信号から拡張フィルタパラメータHを導出するために使用することができる。
【0156】
信号処理の流れ700は空間分析710を含む。空間分析710は空間分析610と同一とすることができる。また、信号処理の流れ700は利得係数のマッピング720を含む。利得係数のマッピング720は利得係数のマッピング620と同一とすることができる。
【0157】
信号処理の流れ700は、フィルタパラメータの計算730も含む。フィルタパラメータの計算730はw−マッピング732を含むことができる。w−マッピング732は、事例によってはw−マッピング632と同一とすることができる。しかしながら、適切であるようであれば、異なるw−マッピングを使用してもよい。
【0158】
フィルタパラメータの計算730は望ましい相互相関の計算734も含み、その中で、マルチチャネルマイクロホン信号のチャネルと(望ましい)ダウンミックス信号のチャネルとの間の望ましい相互相関が計算される。この計算は、例えば、方程式35に従って実行できる。望ましい相互相関の計算734では、望ましいダウンミックス信号のモデルが適用できることに留意すべきである。例えば、望ましい相互相関の計算734において、マルチチャネルマイクロホン信号の直接音成分が方向情報に依存して複数のスピーカ信号へどのようにマップされるべきか、に関する想定が適用できる。加えて、望ましい相互相関の計算734において、マルチチャネルマイクロホン信号の拡散音成分がスピーカ信号においてどのように反映されるべきか、に関する想定も評価できる。さらに、望ましい相互相関の計算734において、複数のスピーカチャネルのダウンミックス信号への望ましいマッピングに関する想定も適用できる。したがって、マイクロホン信号のチャネルと(望ましい)ダウンミックス信号のチャネルとの間の望ましい相互相関E{Xi,Yj*}は、直接音パワー情報、拡散音パワー情報、方向情報及び方向依存性利得係数(後者の情報は、中間値wを取得するために組み合わすことができる。)に基づいて得ることができる。
【0159】
フィルタパラメータの計算730は、ウィーナ−ホップ方程式736を解くことも含み、これは、例えば方程式33及び方程式34に従って実行できる。この目的に沿って、ウィーナ−ホップ方程式は、直接音パワー情報、拡散音パワー情報、及びマルチチャネルマイクロホン信号のチャネルと(望ましい)ダウンミックス信号のチャネルとの間の望ましい相互相関に依存して設定できる。ウィーナ−ホップ方程式(例えば、方程式32)の解としては、拡張フィルタパラメータHが得られる。
【0160】
上記を要約すると、いくらかの実施形態において、拡張フィルタパラメータHの決定は、望ましい相互相関を計算するステップ、ウィーナ−ホップ方程式を設定するステップ、及びそれを解くステップ(ステップ736)からなる別々のステップを含むことができる。
【0161】
14. 結論
【0162】
これまでの説明を要約すると、本発明による実施形態は、マイクロホン入力信号に基づいてパラメトリック空間オーディオコーダの望ましいダウンミックス信号を計算するための拡張された概念と方法を生み出す。ある重要な一例は、ステレオマイクロホン信号を、計算されたMPSパラメータに対応するMPEGサラウンドダウンミックスに変換することによって与えられる。拡張ダウンミックス信号は、非特許文献2において提案されている最新技術事例に比較して、MPEG復号後に遙かに向上した空間オーディオ品質及び局在化特性をもたらす。本発明による簡単な一実施形態は、下記のステップ1から4を含む。
1.マイクロホン入力信号を受信するステップ、
2.空間キューパラメータを計算するステップ、
3.望ましいダウンミックスチャネルのモデル、デコーダ出力のマルチチャネルスピーカ信号モデル及び空間キューパラメータに基づいてダウンミックス拡張フィルタを決定するステップ、及び、
4.空間オーディオマイクロホンに使用するための拡張ダウンミックス信号を得るために、拡張フィルタをマイクロホン入力信号へ適用するステップ。
【0163】
本発明による別の簡単な実施形態は、ダウンミックス信号を発生するための装置、方法及びコンピュータプログラムを生み出す。この装置、方法又はコンピュータプログラムは、マイクロホン信号に関する情報に基づいて、又は意図される再生装備に関する情報に基づいて拡張フィルタパラメータを計算するためのフィルタ計算器を備えている。また、この装置、方法又はコンピュータプログラムは、前記拡張フィルタパラメータを用いてマイクロホン信号を濾波して拡張ダウンミックス信号を得るためのフィルタ装置(又は濾波ステップ)を備えている。
【0164】
この装置、方法又はコンピュータプログラムは、フィルタ計算器が望ましいダウンミックスチャネルのモデル、デコーダ出力のマルチチャネルスピーカ信号モデル又は空間キューパラメータに基づいて拡張フィルタパラメータを計算するように構成されていることに関して任意に改善することができる。
【0165】
15. 変形実施例
【0166】
以上、幾つかの態様を装置の文脈で説明したが、これらの態様は対応方法を記述するものでもあることは明らかであり、ブロック又は装置が方法ステップ又は方法ステップの特徴に対応する。同様に、方法ステップの文脈で説明された態様も、対応する装置の対応するブロック、項目(item)又は特徴の説明を表す。これらの方法ステップのうちの幾つか又は全ては、例えばマイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータ又は電子回路のようなハードウェア装置によって(又はこれを使用して)実行することができる。実施形態によっては、最も重要な方法ステップのうちの1つ又はそれ以上がこのような装置によって実行されることもある。
【0167】
本発明による符号化されたオーディオ信号は、デジタル記憶媒体に蓄積することができ、又はインターネット等の無線伝送媒体もしくは有線伝送媒体のような伝送媒体で伝送することができる。
【0168】
実施の要請に応じて、本発明の実施形態はハードウェア又はソフトウェアとして実施することができ、その実施は、電子的に読取り可能な制御信号を蓄積している、例えばフロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROM又はフラッシュメモリであるデジタル記憶媒体を用いて実行することができる。これらのデジタル記憶媒体は個々の方法が実行されるようにプログラム可能コンピュータシステムと協働する(又は、協働することができる)。したがって、これらのデジタル記憶媒体はコンピュータ読取りできる。
【0169】
本発明によるいくつかの実施形態は電子的に読取り可能な制御信号を有するデータキャリアを含む。それらの制御信はプログラム可能コンピュータシステムと協働できるので、本明細書に記述されている方法のうちの1つが実行される。
【0170】
一般に、本発明の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実施することができる。前記プログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されると本発明の方法のうちの1つを実行するように動作可能である。プログラムコードは、例えば、機械読取り可能キャリアに蓄積することができる。
【0171】
他の実施形態は、機械読取り可能キャリアに蓄積され、本明細書に記述されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを含む。
【0172】
言い替えれば、本発明方法の一実施形態は、したがって、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると本明細書に記述されている方法のうちの1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0173】
本発明方法のさらなる実施形態は、したがって、本明細書に記述されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを記録して有するデータキャリア(又は、デジタル記憶媒体又はコンピュータ読取り可能媒体)である。データキャリア、デジタル記憶媒体又は記録媒体は、典型的には有形及び/又は非移行性(non-transitionary)である。
【0174】
本発明方法のさらなる実施形態は、したがって、本明細書に記述されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリーム又は信号シーケンスである。データストリーム又は信号シーケンスは、例えば、データ通信接続を介して、例えばインターネットを介して、転送されるように構成することができる。
【0175】
さらなる実施形態は、本明細書に記述されている方法のうちの1つを実行するように構成又は適合化されている処理手段、例えばコンピュータ、又はプログラマブル論理装置を含む。
【0176】
さらなる実施形態は、本明細書に記述されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムをインストールしているコンピュータを含む。
【0177】
本発明によるさらなる実施形態は、本明細書に記述されている方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを受信機へ(例えば、電子的又は光学的に)転送するように構成されている装置又はシステムを含む。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル装置、メモリ装置又はこれらに類似するものとすることができる。例えば、前記装置又はシステムはコンピュータプログラムを受信機へ転送するためのファイルサーバを含むことができる。
【0178】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記述されている方法の機能のうちの幾つか、又は全てを実行するために、プログラマブル論理装置(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)を使用してもよい。いくつかの実施形態においては、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイが、本明細書に記述されている方法のうちの1つを実行するためにマイクロプロセッサと協働することができる。一般に、それらの方法は、好ましくは任意のハードウェア装置によって実行される。
【0179】
これまでに述べた実施形態は、単に本発明の原理を例示するものである。本明細書に記述されている装置及び詳細の修正及び変形は当業者には明らかであることが理解される。したがって、本発明は、本明細書における実施形態の記述及び説明によって提示された特定の詳細ではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチチャネルマイクロホン信号(110;210;310)に基づいて拡張ダウンミックス信号(112;212;312)を生成するための装置(100;200;300;500)であって、
前記マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて、直接音の到来方向を記述する方向情報(a,α)と、直接音パワー情報(E{SS*})と、拡散音パワー情報(E{NN*})とを含む1組の空間キューパラメータ(E{NN*},E{SS*},a,α)を計算するように構成されている空間アナライザ(120;220;320)と、
前記直接音の到来方向を記述する前記方向情報(a,α)に依存して、前記直接音パワー情報(E{SS*})に依存して、かつ前記拡散音パワー情報(E{NN*})に依存して拡張フィルタパラメータ(132;232;332)を計算するためのフィルタ計算器(130;230;316)と、
前記拡張ダウンミックス信号(112;212;312)を得るために、前記拡張フィルタパラメータ(132;232;332)を用いて前記マイクロホン信号(110;210;310)又は前記マイクロホン信号(110;210;310)から導出される信号を濾波するためのフィルタ(140;240;340)と、を備えている装置。
【請求項2】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記拡張フィルタパラメータ(132;232;332;H1,H2,H1,1,H1,2,H2,1,H2,1)を、

が望ましいダウンミックス信号(Y1,Y2)に近似するように計算すべく構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記空間キューパラメータに依存して、前記マルチチャネルマイクロホン信号(110;210;310)のチャネル信号(X1,X2)と前記ダウンミックス信号の望ましいチャネル信号(Y1,Y2)との間の望ましい相互相関値(E{X11*},E{X22*},E{X1,Y2*},E{X22*})を計算するように構成され、かつ、
前記フィルタ計算器は、前記望ましい相互相関値に依存して前記拡張フィルタパラメータ(H1,H2;H1,1,H1,2,H2,1,H2,2)を計算するように構成されている請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記フィルタ計算器は、前記望ましい相互相関値を、複数のスピーカ信号(L,R,C,Ls,Rs;Zl)に対する前記マルチチャネルマイクロホン信号の直接音成分(S)の望ましい寄与を記述する方向依存性の利得係数(g1,g2,g3,g4,g5)に依存して、かつ前記拡張ダウンミックス信号の1つ又は複数のチャネルに対する複数のオーディオチャネル(L,R,C,Ls,Rs;Zl)の望ましい寄与を記述する1つ又は複数のダウンミックスマトリクス値(gs;mj,l)に依存して計算するように構成されている請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記方向情報(a,α)を1組の方向依存性利得係数(g1,g2,g3,g4,g5)へマップするように構成されている請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記望ましい相互相関値(E{X11*},E{X2*},E{X12*},E{X22*})を計算するために、前記直接音パワー情報(E{SS*})及び前記拡散音パワー情報(E{NN*})を考慮するように構成されている請求項3から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記望ましい相互相関値(E{X11*},E{X21*},E{X12*},E{X22*})を計算するために、前記方向情報(a,α)に依存して前記直接音パワー情報(E{NN*})を重み付けし、かつ前記方向情報とは独立している予め決められた重み付けを前記拡散音パワー情報に行うように構成されている請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、

に従ってフィルタ係数H1、H2を計算するように構成され、かつ、
前記フィルタ(140;240;340)は、

に従って、前記拡張ダウンミックス信号(112;212;312)の

を前記マルチチャネルマイクロホン信号の第1のチャネル信号X1(k,i)及び第2のチャネル信号X2(k,i)に依存して決定するように構成されている請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
ここで、E{SS*}は直接音パワー情報、E{NN*}は拡散音パワー情報、w1及びw2は前記方向情報(a,α)に依存する係数、w3及びw4は拡散音利得(h1,h2,h3,h4,h5)によって決定される係数である。
【請求項9】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、

に従ってフィルタ係数(H1,H1,2,H2,1及びH2,2)を計算するように構成されている請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
ここで、

1は前記マルチチャネルマイクロホン信号の第1のチャネル信号を示し、
2は前記マルチチャネルマイクロホン信号の第2のチャネル信号を示し、
E{・}は短時間平均演算を示し、
*は複素共役演算を示し、
E{X11*}、E{X21*}、E{X12*}及びE{X22*}は、前記マルチチャネルマイクロホン信号のチャネル信号X1、X2と前記拡張ダウンミックス信号の望ましいチャネル信号Y1、Y2との間の相互相関値を示す。
【請求項10】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記拡張フィルタパラメータHj,l(k,i)からHj,M(k,i)を、前記拡張フィルタパラメータに従って前記マルチチャネルマイクロホン信号の前記チャネル信号(X1,X2)を濾波することにより得られる前記拡張ダウンミックス信号(112;212;312)の

が、類似性の統計的尺度に関して、

として定義される望ましいチャネル信号に近似するように計算すべく構成されている請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
ここで、

1は、前記方向情報(a,α)に依存し、かつ複数のスピーカ信号(Zl)に対する前記マルチチャネルマイクロホン信号(110;210;310)の

の望ましい寄与を表す利得係数であり、
1は、複数のスピーカ信号に対する前記マルチチャネルマイクロホン信号(110;210;310)の

の望ましい寄与を記述する予め定められた値である。
【請求項11】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記拡張フィルタパラメータ(132;232;332;H1,H2;H1,1,H1,2;H2,1,H2,2)を導出するためにウィーナ−ホップ方程式を評価するように構成されており、
前記ウィーナ−ホップ方程式は、前記マルチチャネルマイクロホン信号の異なるチャネルペア間の関係性を記述する相関値E{X11*},E{X12*},E{X21*},E{X22*}と、拡張フィルタパラメータ(H1,1,H1,2,H2,1,H2,2)と、前記マルチチャネルマイクロホン信号(110;210;310)のチャネル信号(X1,X2)と前記ダウンミックス信号の望ましいチャネル信号(Y1,Y2)との間の望ましい相互相関値(E{X11*},E{X21*},E{X12*},E{X22*})と、の間の関係性を記述するものである請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記拡張フィルタパラメータ(132;232;332)を望ましいダウンミックスチャネルのモデルに依存して計算するように構成されている請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記フィルタ計算器(130;230;316)は、前記拡張ダウンミックス信号(112;212;312)の

が前記マルチチャネルマイクロホン信号(110;210;310)の第1のチャネル(X1)の濾波によって導出され、かつ前記拡張ダウンミックス信号の

が前記マルチチャネルマイクロホン信号の第2のチャネル(X2)の濾波によって導出され、その間、前記マルチチャネルマイクロホン信号の前記第1のチャネルから前記拡張ダウンミックス信号の前記第2のチャネルへのクロストーク及び前記マルチチャネルマイクロホン信号の前記第2のチャネルから前記拡張ダウンミックス信号の前記第1のチャネルへのクロストークが回避される1チャネルのフィルタリング、又は、
拡張ダウンミックス信号の

が前記マルチチャネルマイクロホン信号の第1及び第2のチャネル(X1,X2)を濾波することにより導出され、かつ前記拡張ダウンミックス信号の

が前記マルチチャネルマイクロホン信号の第1及び第2のチャネル(X1,X2)を濾波することにより導出される2チャネルのフィルタリングを、
前記マルチチャネルマイクロホン信号の前記第1のチャネル(X1)と前記マルチチャネルマイクロホン信号の前記第2のチャネル(X2)との間の相関性を記述する相関値に依存して選択的に実行するように構成されている請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて拡張ダウンミックス信号を生成するための方法であって、
前記マルチチャネルマイクロホン信号に基づいて、直接音の到来方向を記述する方向情報、直接音パワー情報及び拡散音パワー情報を含む1組の空間キューパラメータを計算することと、
前記直接音の前記到来方向を記述する前記方向情報に依存して、前記直接音パワー情報に依存して、かつ前記拡散音パワー情報に依存して拡張フィルタパラメータを計算することと、
前記拡張ダウンミックス信号を取得するために、前記拡張フィルタパラメータを用いて前記マイクロホン信号又は前記マイクロホン信号から導出される信号を濾波することを含む方法。
【請求項15】
コンピュータ上でコンピュータプログラムが実行される際に請求項14に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−520691(P2013−520691A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554287(P2012−554287)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052246
【国際公開番号】WO2011/104146
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(500341779)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン (75)
【Fターム(参考)】