説明

拡張可能かつ収縮可能な医療機器

カテーテル(またはカニューレ)は、患者の体内に最小限の侵襲で配置するために十分小さい直径であるが、また前置された直径の小さくなったカテーテルを通過できるよりも高速で流量を補助する大径のカテーテルを配置するために配置後に拡張されてもよい。この拡張可能カテーテルは、1つ以上の形状記憶ポリマーを用いて構築され、1つ以上のステント様セクションおよび/または折り畳みローブとして形成されるカニューレの少なくとも一部を備えてもよい。各々のステント様セクションは、カテーテルの他の部分に比較してこのセクションの可塑性を増強し、それによって、このセクションが急屈曲に適合することを可能にし、患者の体内に挿入された場合に曲がるように構成する。この折り畳まれたローブはカニューレの少なくとも1つのセクションを構成する軸方向の折り畳みであり、それらはカテーテルの拡張の際に展開して、大きい断面形状を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)本願は、2010年2月2日出願の米国仮特許出願第61/300,603号の優先権の利益を主張する。この仮特許出願の全体を本明細書に援用する。
【0002】
2007年10月4日公開の共同所有の米国特許出願公開第2007/0233041A1号明細書も本明細書に援用する。最後に、2007年8月23日公開の共同所有の米国特許出願公開第2007/0197856A1号明細書も本明細書に援用する。
【0003】
本発明は、拡張可能かつ収縮可能な医療機器に関し、特に、流量が増すように患者の体内への配置後に拡張するカテーテル又はカニューレに関する。
【背景技術】
【0004】
体内へ及び/又は体内からの血液及び/又は他の1以上の流体の輸送を達成するように、人体の心臓や他の主要な血管へのアクセスに1以上のカテーテル又はカニューレが使用可能であることが知られている。心臓カニューレによって患者と体外の血液回路とのインタフェースが提供され、通常、これらのカニューレは、体外回路へ及び体外回路から1以上の流体導管を提供するように、心臓外科医又は心臓内科医によって直接視の下で主要な血管及び/又は心臓に配置される。
【0005】
本明細書ではカテーテルとカニューレの単語が互換性を有して使用可能であるが、心臓内科医が「カテーテル」を通常用いる一方で、心臓外科医は「カニューレ」を通常用いることに注意されたい。
【0006】
心臓切開術後サポート用に心臓手術センターで用いる最も一般的な技術と装置は、体外生命維持装置(ECLS)、体外膜型人工肺(ECMO)、体外CO(すなわち、二酸化炭素)除去(ECCO-R)、及び補助人工心臓(VAD)を含む。心室機能の乏しさは、手術前に診断し得るか、或いは手術中の心筋損傷(例えば、不十分な潅流、潅流を制限する長期間のクロスクランピング、負傷など)から生じ得る。心拍出量の減少は、低い血圧と少ない血流のため他の器官に影響する。心筋がある期間停止可能なため、回復させることができるが、十分な回復に至らない場合、患者は長期の心臓補助が必要となり得る。心肺バイパスから離脱できず、単離された心室機能障害を有する患者は、VADの候補となり得る。両心バイパス法(BiVAD)で患者を補助するには、2つのポンプ回路が求められる。肺機能不全が心機能不全のあるなしにかかわらず起こる際、患者はECLS、ECMO、又はECCO-R補助の候補となり得る。
【0007】
心臓カニューレは、右心房(RA)、左心房(LA)、左室の尖部(LVA)、大腿動脈(FA)、大腿静脈(FV)、上大静脈(SVC)、下大静脈(IVC)、内頚静脈(IJV)、頚動脈(CA)、鎖骨下動脈(SA)、大動脈、及び他の主な心室又は血管などの主要な血管を通る血管系を介してアクセスできる。2つの管腔が体外回路では通常必要であり、一方の管腔は患者の体から流入する血液に用い、他方の管腔は患者の体へ戻る血液に用いる。これらの管腔は、二重管腔カニューレ(二重管腔カテーテルとしても知られている)に組み込まれる2つの別個の管腔であってもよく、或いは、シングル管腔を備えた1つのカニューレとシングル管腔を備えた第2のカニューレによって、2つの管腔を表してもよい。二重管腔カニューレを採用すると、流入流路と流出流路を形成するように1つの装置を患者内へ配置する必要があるのみである。これは、2つの別個のシングル管腔カテーテルの使用と対照的である。2つのカニューレを用いると、一方のシングル管腔カテーテルは、患者から血液ポンプまで方向付けられる必要があり、他方のシングル管腔カテーテルは、ポンプから患者まで配置される必要がある。
【0008】
開胸式手順では、患者の体内から体外回路に血液を供給するシングル管腔入口(排出口)のカニューレを心室又は心房から皮下の面を通して患者の体の経皮的なアクセス部位まで通してもよく、又はそのカニューレを外在させてもよい。あるいはまた、体外回路から血液を取り入れて、患者の体まで血液を輸送するシングル管腔出口又は戻しカニューレを、血液を患者に戻すように、皮下トンネルを通して上行大動脈(又は、鎖骨下動脈などの別の血管)の弓まで、かつ血管の管腔内を通過させてもよい。経皮的なアクセスと出口部位の両方が、左心補助装置(LVAD)用の左側の腹壁と中間前方位置の同側によく位置する。この位置は、右心補助装置(RVAD)用の右側の腹壁と中間前方位置の同側によくある。胸腔中内に配されたカニューレは、通常、最悪の状態を引き起こし得る偶然の取り外れを防ぐように適所に固定される。組織回復が起こるまで、巾着縫合と任意の安定パッキンを解剖学的固定の提供に使用し得る。そういうものとして、カニューレ取り外し及び/又は交換は、直接可視化の下で第2の手術を必要とする。循環補助を終えた後に開胸の傷を閉じる。
【0009】
開胸式手順を回避できるならば、非開胸式手順が、侵襲性がより少ないため、一般的に好ましい。入口と戻しカテーテルは、非開胸式手順でも配置される必要があるが、非開胸式手順では、通常、配置される各カテーテルの直径は、患者の血管内へのカテーテルの誘導による配置を許容するように理想的にはより小さくなければならない。通常、初めにガイドワイヤが配置され、カテーテルが、患者の体内に配置されるようにガイドワイヤ上を動くが、最少侵襲性の手順でのカテーテル配置の際に、ガイドワイヤの補助があったとしても、カテーテルは、概して、血管系内で急カーブしなければならないため、配置の容易さを目的として比較的小さい直径を有する必要がある。より小さい直径のカテーテルは、より大きい直径のカテーテルの流量を送ることができない。
【0010】
現在、血管ステントも利用可能である。血管ステントの目的は、血管の内壁を押すことで冠動脈などの血管を開放状態に保持することである。血管ステントは金属でできていてもよく、ステントは、患者内で1以上の薬剤を溶出するようにできていてもよい。血管ステントのタイプ又はデザインにかかわらず、ステントは、患者の体内へ又は体内から1以上の流体(血液など)を輸送するように意図、設計、又は使用されない。
【0011】
形状記憶ポリマーが公知である。形状記憶ポリマーは、温度変化などの外的刺激又はトリガーによって、変形した一時的な形状から元の永久的な形状まで変形可能なポリマー材料である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、概して次のようなカテーテル(又はカニューレ)に関する。すなわち、このカテーテルは、患者の体内に侵襲性が最少となるように配置するに十分なほど直径が小さく、かつ、配置前のより小さい直径形状がこのような多い流量を保持不可能な場合でさえも、十分に高い速度で流量を保持するより大きい直径の形態を提供するように、配置後に拡張することもできる。本発明によれば、このような拡張可能なカテーテルは、1以上の形状記憶ポリマーで構成されている。拡張した時点で、カテーテルをその収縮した状態に戻してもよい。拡張状態と収縮状態は、オペレータの要求及び必要に応じて任意の回数達成してもよい。本発明に係る拡張可能及び/又は収縮可能なカテーテルは1以上のステント状のセクションを含んでいてもよく、患者の動脈又は静脈内にカテーテルの遠位先端部を位置づけようとするときに、このセクションでは、患者の体の血管系内の経路にある急コーナー及び急カーブなどを収容するようにセクションの可塑性を高めるよう、各セクションが複数の穴、ポート部、又は他の開口部を含む。1以上のステント状の可塑性を有するセクションに加えて又はその代わりに、本発明の形状記憶ポリマー(SMP)の拡張可能及び/又は収縮可能なカテーテルは、軸方向折り曲げ部を備えた1以上のセクションを有していてもよく、この折り曲げ部は、拡張の際に大きい円形断面の形状を生成するように展開するか開く。すなわち、配置後により小さい円形の直径からより大きい円形の直径まで拡張するのではなく、SMP製の拡張可能なカテーテルは、複数のローブ状の軸方向折り曲げ部を備えた1以上のセクションを有していてもよく、複数のローブ状の軸方向折り曲げ部は、体内へ挿入するように可能な限り最小化された収縮直径、及び患者内へ配置した後に可能な限り拡張した円形の最大化された直径を許容する。
【0013】
一態様では、本発明は、ガイドワイヤ上へのカテーテルの配置及び患者の体内へのカテーテルの配置を許容するに十分な収縮直径を有するカテーテルに関する。カテーテルは、収縮直径で可能な速度より高い所定の速度で流量を保持するように、患者の体内に配置後に直径が拡張可能である。カテーテルは管状の壁を含む細長い部材を有し、管状の壁は、これを通って延びる少なくとも1つの管腔を画定する。細長い部材は形状記憶ポリマーを有し、細長い部材が少なくとも1つのトリガーとなる刺激(例えば、温度、電気、又は光など)にさらされると、その収縮直径を超えた直径まで拡張するように、形状記憶ポリマーは細長い部材の少なくとも一部を許容する。さらに、細長い部材の少なくとも1つのセクションは、管状の壁に複数の穴がない細長い部材の他の部分より更に可塑性を有し、かつ屈曲可能にするように、管状の壁に複数の穴を有する。
【0014】
別の態様では、本発明は、患者の血管へ挿入し、患者の体内へ及び/又は患者の体内から1以上の流体を輸送する医療機器に関する。医療機器は、患者の体外に配置するハブと、ハブから延び、少なくとも1つの通路を画定する細長い部材とを有する。細長い部材の少なくとも一部は形状記憶ポリマーを有し、細長い部材の少なくともこの一部は、細長い部材が圧縮状態にあるときに、患者の血管内に配置されるよう設計されている。圧縮状態では、少なくとも1つの通路は、患者の体内へ及び/又は体内から所定の高い速度で流体を輸送するのではなく、ガイドワイヤを受け入れるようにサイズが定められている。細長い部材の少なくとも一部は、十分に高い所定の速度で流体を輸送可能なように、患者の血管内に配置後に拡張状態へ変化するよう構成されている。最終的に、細長い部材の一部の少なくとも1つのセクションは、細長い部材の残りのセクションより更に可塑性が高い。
【0015】
本発明のこの態様に係る実施形態は、様々な特徴を含んでいてもよい。たとえば、細長い部材の1以上の部分の1以上のセクションは、細長い部材の壁に複数の穴がない細長い部材の他の部分より更に可塑性を有し、かつ屈曲可能にするように、細長い部材の壁に複数の穴を有していてもよい。細長い部材は、細長い部材が拡張状態にあるときに展開する複数の軸方向折り曲げ部を備えた1以上のセクションを更に有していてもよい。血管は静脈又は動脈であってもよく、血液又は別の流体を患者の体内へ及び/又は体内から輸送してもよい。細長い部材は2つの通路を画定してもよいため、医療機器は二重管腔カテーテルとなり得る。形状記憶ポリマーは、細長い部材を圧縮状態から拡張状態に変えるように、例えば、熱、光、又は電気で駆動してもよい。細長い部材が患者の血管内に配置され、かつ拡張状態に置かれたときに、細長い部材は、これが患者の血管の内壁を押す力を印加しないように構成してもよい。これにより、配置され、拡張した細長い部材は血管を通る血流を妨げ得ず、その代わりに患者の血管の内壁と細長い部材の外面の間に血液を流し得る。医療機器のハブは、体外の血液回路などの体外支援システムに接続するコネクタを含んでいてもよい。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、患者の血管へ挿入し、患者の体内へ及び/又は体内から1以上の流体を輸送する医療機器に関する。医療機器は、1以上の通路を画定する細長い部材を有する。細長い部材の少なくとも一部は、形状記憶ポリマーを有するとともに、圧縮状態にあるときに患者の血管内に配置してもよく、この圧縮状態では、1以上の通路は、患者の体内へ及び/又は体内から十分に高い所定の速度で流体を輸送するのではなく、ガイドワイヤを受け入れるようにサイズが定められている。1以上の細長い部材は、十分に高い所定の速度で流体を輸送可能なように、患者の血管内に配置後に拡張状態へ変化するよう構成されている。細長い部材の一部の少なくとも1つのセクションは、細長い部材が拡張状態にあるときに展開する複数の軸方向折り曲げ部を有する。
【0017】
本発明のこの他の態様に係る実施形態は、様々な特徴を含んでいてもよい。たとえば、細長い部材の部分の少なくとも1つの他のセクションは、細長い部材の壁に複数の穴がない細長い部材のその他の部分より更に可塑性を有し、かつ屈曲可能にするように、細長い部材の壁に複数の穴を有していてもよい。血管は静脈又は動脈であってもよく、少なくとも血液を患者の体内へ及び/又は体内から輸送してもよい。医療機器が二重管腔カテーテルであるように、細長い部材は2つの通路を画定してもよく、これら2つの管腔は、例えば、同軸又は並列に方向付けてもよい。形状記憶ポリマーは、圧縮状態から拡張状態に変えるように、例えば、熱、光、又は電気で駆動してもよい。細長い部材が患者の血管内に配置され、かつ拡張状態に置かれたときに、細長い部材は、これが患者の血管の内壁を押す力を印加しないように構成してもよい。これにより、配置され、拡張した細長い部材は血管を通る血流を妨げ得ず、その代わりに患者の血管の内壁と細長い部材の外面の間に血液を流し得る。細長い部材は、医療機器のハブから延びていてもよく、ハブは、体外支援システムに接続するコネクタを含んでいてもよい。
【0018】
本明細書に開示された発明の目的、利点、及び詳細は、以下の説明、添付図面、及び請求項を参照することで明らかとなるであろう。以下の説明又は添付図面で明白に指摘されるか否かに関わらず、開示した様々な実施形態及びこれら実施形態の様々な特徴の各々は、互いに排他的でなく、かつ様々な組み合わせ及び置換が存在してもよい。
【0019】
図面において、類似の構造は、様々な図中で同一又は類似の参照番号によって参照される。図面の実施例は、必ずしも寸法を定めるように描かれているわけではなく、その代わり本発明の原理及び開示した実施形態を例示することが概して強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明に係る医療機器の実施形態の側面図であり、この機器のカニューレは収縮した状態(カニューレの内径と外径が最小化されるものの、ガイドワイヤを受け入れるに十分であるような状態)にあり、カニューレの全長を示さないことを分離線が表す。
【図1B】図1Aの機器の収縮したカニューレの遠位セクションの拡大図を示す。
【図1C】図1A及び1Bの機器の収縮したカニューレに沿った任意な点での断面図であり、機器のカニューレが収縮した状態にあるときに、最小化された直径の管腔が機器を通って延びている様子を示す。
【図2A】図1Aの医療機器を示すが、ハブの立体構造が異なったタイプであるとともに、カニューレが拡張状態にあり、図1Cに示す最小化された直径の管腔を通過可能な流量よりも多い流量が、増大した直径の管腔を通過できるように、カニューレの内径と外径が最大化される。
【図2B】図2Aの機器の拡張したカニューレの遠位セクションの一部の拡大図を示し、この拡張した遠位セクションの穴が、そのセクションをこのような穴がないカニューレの他の部分より更に可塑性を有し、かつ屈曲可能にする。
【図2C】図2A及び2Bの機器の拡張したカニューレに沿った任意な点での断面図であり、機器のカニューレが拡張状態にあるときに、最大化された直径の管腔が機器を通って延びている様子を示す。
【図3A】拡張したカニューレを備えた図2Aの医療機器の図であるが、拡張したカニューレの遠位セクションは、それが収縮した状態から拡張状態への遷移のため特定の湾曲した立体構造を呈する。
【図3B】図3Aの機器の拡張したカニューレの遠位セクションの一部の拡大図を示し、この拡張した遠位セクションの穴が、そのセクションをこのような穴がないカニューレの他の部分より更に可塑性を有し、かつ屈曲可能にする。
【図4】図1Aの医療機器を示すが、カニューレの長手方向において分断線がなく、かつ、図1A及び1Bに示すたった1つの遠位セクションとは対照的な収縮したカニューレの2以上の異なった別個のセクションを有する。
【図5】図1Aの医療機器を示すが、収縮したカニューレの一部のみが示され、かつ、収縮したカニューレの遠位端部が患者の体内の特定の位置に配置されるのが確認できるまで、拡張状態へのカニューレの拡張を遅らせるために、剥離シースの一部が収縮したカニューレ上に配置される様子を示す。
【図6A】図2Aの機器の拡張したカニューレの遠位セクションを示すが、図2Bに示す遠位セクションの穴と比較すると穴の形状とパターンが異なっている。
【図6B】図6Aの拡張したカニューレの同じ遠位セクションを示すが、可塑性を有する薄壁性のシースが、拡張したカニューレの少なくともこの遠位セクションの内側と外側の両方で穴を覆うように配置されているため、機器の拡張した直径の管腔内で連続的な流体経路を維持しながら、この遠位セクションの同一の可塑性と可屈曲性が可能になる。
【図6C】傾斜のある穴を有する(図6Aに示すものと同様な)拡張したカニューレの遠位セクションを得るように、本発明に係る医療機器のカニューレの壁に作られた傾斜のある穴を示す。
【図6D】突出した穴を有する(図6Aに示すものと同様な)拡張したカニューレの遠位セクションを得るように、本発明に係る医療機器のカニューレの壁に形成された突出した穴を示す。
【図7A】本発明に係る医療機器の複数のローブ状のカニューレの実施形態の断面図を示し、この機器は図1A、2A、3A、4、及び5に示す機器のいずれかであってもよく、図7A及び7Cは、それぞれ完全に収縮した状態及び完全に拡張した状態にあるカニューレを示し、図7Bは、収縮した状態から拡張状態への遷移状態にあるカニューレを示す。この複数のローブ状のカニューレの軸方向折り曲げ部によって、カニューレが収縮した状態まで縮小するときにカニューレの壁を折り曲げることができ、カニューレが拡張状態まで展開するときにカニューレの壁を開くことができ、これらの折り曲げ部は、カニューレの本体を回転させることで形成できる。
【図7B】本発明に係る医療機器の複数のローブ状のカニューレの実施形態の断面図を示し、この機器は図1A、2A、3A、4、及び5に示す機器のいずれかであってもよく、図7A及び7Cは、それぞれ完全に収縮した状態及び完全に拡張した状態にあるカニューレを示し、図7Bは、収縮した状態から拡張状態への遷移状態にあるカニューレを示す。この複数のローブ状のカニューレの軸方向折り曲げ部によって、カニューレが収縮した状態まで縮小するときにカニューレの壁を折り曲げることができ、カニューレが拡張状態まで展開するときにカニューレの壁を開くことができ、これらの折り曲げ部は、カニューレの本体を回転させることで形成できる。
【図7C】本発明に係る医療機器の複数のローブ状のカニューレの実施形態の断面図を示し、この機器は図1A、2A、3A、4、及び5に示す機器のいずれかであってもよく、図7A及び7Cは、それぞれ完全に収縮した状態及び完全に拡張した状態にあるカニューレを示し、図7Bは、収縮した状態から拡張状態への遷移状態にあるカニューレを示す。この複数のローブ状のカニューレの軸方向折り曲げ部によって、カニューレが収縮した状態まで縮小するときにカニューレの壁を折り曲げることができ、カニューレが拡張状態まで展開するときにカニューレの壁を開くことができ、これらの折り曲げ部は、カニューレの本体を回転させることで形成できる。
【図8】図1Aの医療機器を示すが、カニューレの遠位セクションを有する機器は、温度上昇などのトリガーによって拡張する形状記憶ポリマーでできているのとは対照的に、バルーンによって機械的に拡張するように構成されている。
【図9A】本発明に係る医療機器の実施形態の断面図であり、機器の二重管腔カニューレの長さに沿った分離線が、二重管腔カニューレの全長を示さないことを表す。
【図9B】図9Aの二重管腔機器の2つの管腔用の2つの可能な断面形状を示し、これらの構成の各々は、ガイドワイヤを受け入れる任意のより小さなセンター管腔を有する。
【図9C】図9Aの二重管腔機器の2つの管腔用の2つの可能な断面形状を示し、これらの構成の各々は、ガイドワイヤを受け入れる任意のより小さなセンター管腔を有する。
【図9D】本発明に係る医療機器の二重管腔カニューレの2つの管腔の同軸配置の断面図である。
【図9E】本発明に係る医療機器のマルチ管腔カニューレの断面図であり、3つの別個の管腔が、この特定のマルチ管腔の実施形態で示されているとともに、ガイドワイヤを受け入れる任意のセンター管腔と共に示されている。
【図10A】本発明に係る医療機器の実施形態の断面図であり、収縮した状態にある機器の二重管腔カニューレが、2つの偏心した管腔の外側の内径と外径が最小化されるように、かつ外側の管腔がこれを通る流れを妨げるように構成されている。
【図10B】図10Aの機器を示すが、外側の偏心した管腔は、拡張状態でこれを通る流れを許容する。
【図11A】本発明に係る医療機器の実施形態の断面図であり、収縮した状態にある機器の二重管腔カニューレが、内側及び外側の同軸管腔の両方の内径と外径が最小化されるように、かつ外側の管腔がこれを通る流れを妨げるように構成されている。
【図11B】図11Aの機器を示すが、外側の同軸管腔は、拡張状態でこれを通る流れを許容する。
【図12】収縮した状態の/拡張していないカニューレ(図1Aの側面図に示すカニューレなど)の断面図であり、先細りし、誘導針を有する遠位端部が、カニューレの管腔を通って延びている。
【図13】鋭利で傾斜のある遠位端部を有する収縮した状態の/拡張していないカニューレの断面図であり、このようなカニューレによって、別個の誘導針を必要とせずに患者の皮膚又は他の組織に穴を開けることができる。
【図14】誘導針の管腔内に配置された収縮した状態の/拡張していないカニューレ(図1Aの側面図に示すカニューレなど)の断面図である。
【図15A】本発明に係る医療機器のカニューレの断面図であり、機器は、図1A、2A、3A、4、5、7Aから7C、9A、10A、10B、11A、11B、及び12から14に示す機器のいずれかであってもよく、カニューレの少なくとも一部はワイヤーを含み、ワイヤーは、カニューレが収縮した状態と拡張した状態の間を遷移するように、形状記憶ポリマーの電気的活性化用にカニューレの壁に埋め込まれている。
【図15B】本発明に係る医療機器のカニューレの断面図であり、機器は、図1A、2A、3A、4、5、7Aから7C、9A、10A、10B、11A、11B、及び12から14に示す機器のいずれかであってもよく、カニューレの少なくとも一部は、複数のミクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む形状記憶ポリマーを含み、複数のミクロ粒子及び/又はナノ粒子は、カニューレが収縮した状態と拡張した状態の間を遷移するように、光(例えば、レーザー光源からの光)又は誘導(電磁誘導、静電誘導、又は磁気誘導にかかわらず)によって励起できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るシングル管腔機器は、機器の遠位端部近くで吸入又は流体排出を可能にするように、大きな心室又は血管内に配置してもよい。あるいはまた、別の解剖学的箇所(例えば、心房や腎臓)からの排出又は吸入を引き起こすように、機器のシャフトに沿って離れたある間隔が複数の穴の位置を含んでいてもよい。本発明のシングル管腔機器は、遠位の流体吸入又は流体排出用の蛇行した遠位経路を通って配置してもよい。本発明に係るマルチ管腔機器は、患者の体内の複数の部位から及び/又はこれら部位への流体吸入及び/又は再注輸を同時に実行可能であってもよい。本発明に係る医療機器は、カニューレ又はカテーテルと呼ばれるか否かに関係なく、次のように利用してもよい。すなわち、この医療機器は、血管系、体外回路、及び/又は体外機器(ポンプ、人工肺、熱交換器など)からの静脈血又は動脈血、及び/又はこれらへの静脈血又は動脈血を輸送するように、個別に又は共に利用してもよい。血管アクセスは、単一の部位の静脈穿刺又は複数の部位の静脈穿刺であってもよい。血管アクセスは、視覚手段、触診手段で達するか、或いは蛍光透視、超音波、又は他の視覚化などの画像化を用いて配置してもよい。カニューレの直接利用、或いはガイドワイヤ、拡張器、セルディンガー法又は修正されたセルディンガー法の補助の下での利用のいずれかで経皮的アクセスによって(皮膚を通して)、血管アクセスを提供することを意図する。あるいはまた、比較的主要ではない血管の切開が、配置又はカニューレ拡張の間に、過度の血管損傷の回避に必要であってもよい。ECLS、ECMO、ECCOR、又はVAD利用で利用されるような主要な流れ要件に関し、遠位の単一又は複数のカニューレの先端部(すなわち、心臓に最も近い端部)が、静脈側の下大静脈若しくは上大静脈、右心房、又は右心室などの主要な血管内に大概存在する。右側の静静脈又は静動脈を補助する肺動脈を含む同じ単一の血管又は複数の血管へ、及び、心臓(左心室、左心房又は大動脈)の左側へ戻り血液を輸送してもよい。これらの血管へのアクセスは、大腿動脈、大腿静脈、頚動脈、鎖骨下動脈及び他の主要な動脈などの支流の血管を通って経皮的に達してもよい。
【0022】
本発明は、1以上の形状記憶ポリマー(SMP)の材料を利用する自己拡張式のカテーテル又はカニューレを有する医療機器に関する。本発明に係る医療機器は、患者の1以上の血管を通って患者の体内へ及び/又は体内から1以上の流体を輸送する導管(通路又は管腔とも呼ばれる)を提供する。本発明に係る1つの機器は、カテーテル又はカニューレと呼ばれるか否かに関係なく、ハブと、ハブから延びる細長い部材とを含む。細長い部材の全体、又は、より典型的にはその細長い部材のある部分は患者の血管内に配置され、患者の体内に配置される細長い部材の少なくとも一部は、SMPの形成により形状が変化する。細長い部材はカニューレである。細長い部材の少なくとも一部は、圧縮又は収縮した状態から拡張状態に変化してもよい。形状記憶ポリマーの形状は、皮膚侵入部位での軟組織によって皮下トンネルに沿って圧縮に抗するように調整してもよい。さらに、形状記憶ポリマーの形状は、血管内の一部用の長さに沿ってより更に可塑性を有するように調整してもよい。機器の肉厚を局所的に増加させることで、カテーテルの直径のフープ強度を増大してもよい。カニューレが誘導と位置決めの容易さのためにより小さい直径を有するときに、カニューレは収縮した状態で血管に挿入され、体内へ及び/又は体内から流体が十分高い速度で流れることを可能にするより大きい穴の導管へカニューレは拡張する。収縮した状態では、カニューレは、ガイドワイヤを受け入れ、ガイドワイヤ上を動いてもよいが、収縮した状態の細長いセクションのより小さい直径は、流体が十分高い速度で細長いセクションを通って流れることを許容することを意図しない。1以上のSMPの細長い部材を形成することで形状変化能力が得られ、この形状変化は、温度変化、電流の適用、光、水分、又は他の幾つかのトリガーとなる刺激によって生じてもよい。医療機器は、2以上のトリガーとなる刺激の組み合わせで形状変化するように構成してもよい。そして、医療機器が拡張し、更にその後再び拡張した後に、医療機器を収縮してもよい。医療機器は、オペレータの要求及び必要に応じて任意の回数拡張し、収縮してもよい。
【0023】
本発明に係る医療機器は、(1)形状記憶チューブ及び(2)外部ハブ要素を少なくとも含んでいてもよく、形状記憶チューブ(多様で可能な遠位先端部、本体、及び断面形状を有する)は、患者の身体内部の心室又は血管内に配置され、外部ハブ要素は、ポンプ機器又は体外の血液回路要素に体外で接続する。カニューレチューブは、チューブの最大部直径が正常温度(すなわち、34℃から37℃)で又はこの正常温度近傍で実現されるように、かつ、カニューレの相変化が配置後に患者の体内で起こるように構成されている。ポリマーの相変化の回復(すなわち、SMPの特性による収縮した状態から拡張状態への拡張)は、SMP材料(複数可)中の温度伝導で引き起こしてもよく、この温度の伝導は、カニューレが患者の体内に配置されている間などの時間の間に生じてもよい。温度変化/温度伝導によってSMP製カニューレがその最大の拡張状態に達する前に、患者の体内への機器の配置が完了するように、機器を構成してもよい。シース内に医療機器のカニューレチューブ部分を少なくとも含むことで、例えば、患者の体内に機器を配置及び/又は再配置する時間をより多くオペレータに提供するように、ポリマーの相変化の回復を抑制してもよい。カニューレを患者の体内に進入させるときに、カニューレは、患者の体内にカニューレと同時に進入させるシース内に含まれている。その後、シースはオペレータによって患者の体から取り外される。公知の剥離可能な誘導シースを本目的のために使用してもよい。これにより、患者の体内で大気温度(例えば、約20℃であってもよい)からより高い温度へSMP製カニューレを移すことで、ポリマーの相変化の回復を温度上昇によって引き起こすことができる。これの代わりとして、直流供給からの電気誘導など、温度上昇以外のものによって、この回復又は拡張を引き起こしてもよい。光などの他の変化用の刺激も可能であり、収縮した状態から拡張状態へカニューレを移すように、変化用の異なった刺激の組み合わせを採用してもよい。カニューレを形成するのに用いる特定のSMP(複数可)は、収縮した状態から拡張状態へのカニューレの状態変化、及び拡張状態から収縮した状態へ元に戻るカニューレの状態変化を引き起こす要因を決定する。
【0024】
本発明のSMP製カニューレが患者の体内で拡張した時点で、カニューレが患者の体内の適所にある間に、本発明のSMP製カニューレを収縮した状態に戻してもよい。SMPがサイズを増加させて、再び流量を許容するように再び動くまで、例えば、カニューレを通る流量を一時的に減少又は停止さえするように、オペレータは、カニューレを収縮した状態に戻したいと思うこともあり得る。また、減少したサイズ/収縮したカニューレは患者の体からより取り除きやすくなり得る。
【0025】
本発明に係る医療機器は、シングル管腔、二重管腔、又はマルチ管腔のタイプであるか否かに関わらず、本明細書に記載するように構成及び作製してもよい。本発明に係る医療機器の任意の特定のカニューレ又はカテーテルの長さは、体内へのカテーテルの配置が完了した時点で、カテーテルの遠位先端部が人体内の所望の心室及び/又は血管内に位置するように構成されていることに注意されたい。特定のカテーテルの長さは、通常これに基づいて選択及び設定される。
【0026】
図1A〜図1Cを参照すると、本発明による医療機器100は、ハブ102およびストレートカニューレまたはカテーテル104をその収縮状態で備える。このハブ102は、カニューレ104に対して気密性である。カニューレ104は、カニューレ104の少なくとも1つの他のセクションから遠位である少なくとも1つのセクション106を備える。図1Aおよび図1Bで描写される、本発明による医療機器の実施形態では、1つの別個のセクションが示される。これは、収縮した遠位セクション106であり、これは、この特に開示された実施形態では、カニューレ104の遠位端部分に配置される。本発明によれば、1つ以上の形状記憶ポリマー(SMP)物質で、カニューレ104の全長の全体またはほとんどが構築される。別の方法は、1つ以上のSMPから形成されるカニューレ104の1つ以上の部位またはセクションを有することであるが、好ましい実施形態では、このカニューレの長さの全てまたはほとんどが、1つ以上のSMPを含む。SMP(複数可)のカニューレ104を形成することで、カニューレ104は、その小径(すなわち、圧縮または収縮された)状態で患者の体内に前進されることが可能になる。機器100のカニューレ104は、その遠位セクション106を備えており、圧縮状態であって、この状態では、カニューレ104は、ガイドワイヤ(例えば、0.035”〜0.038”の直径)を受容するようにサイズ決めされた直径を有する通過管腔108を有する。この機器100は、ガイドワイヤが患者の身体内にオペレータによって配置された後に、そのガイドワイヤを超えて患者の体内に前進される。一旦、オペレータが患者の体内にカニューレ104の配置を完了すれば、ガイドワイヤが用いられるか否かにかかわらず、カニューレをその完全拡張状態に移行させてもよい。ハブ102内にまたはハブ102に接続するかん流配管上に備えられる、クランプまたはバルブを利用して、医療機器100が接続される体外循環路に連結することが必要になるまで、この管腔108を通じた流体の流れを中断してもよい。この機器100の収縮状態のカニューレ104は、環状の断面形状を有する細長い環状部材として示され、記載されるが、楕円形、四角形などのような他の断面形状のカニューレ104が可能であることに注意のこと。
【0027】
図2A〜2Cを参照すると、ストレートカニューレ204の直径の拡張は、SMP物質(複数可)の温度、電流、光および/または1つ以上の他の誘発性の刺激の効果によって達成され得る。カニューレ204およびその中の任意の排水穴(複数可)、例えば、拡張された遠位セクション206中の穴は、配置後にその最大直径まで拡張し、その結果、最大直径の通過管腔208が生じ、これが血液(および/または1つ以上の他の流体)を、収縮状態のカニューレ104の最小直径の管腔108を通過するのに可能な低い速度に比較して十分に高速で首尾よく移動し得る。拡張状態の管腔208の断面の大きさは、血管の配置の大きさおよび流速の要件に依存して変化する。例えば、成体の心肺バイパスのためには、受容可能な大きさは、管腔208を通る十分に高い流速を達成できるように18F〜25Fであるが、それより長いカニューレでは、それらの長さにわたって圧力低下がより大きくなり、これによって流れが減少し、そのため長さおよび直径は、カニューレが拡張されたとき、カニューレに到達して十分な流れが得られるように考慮されなければならない。圧力流の曲線を作成して、最大許容血流速度を特定するが、−50mmHgも−100mmHg(研究による)も超えない。この限界を超えれば、真空によって、溶液の外に回避されるべきガスを吸引する。V−A ECMOサポートでは、肺がバイパスされるので、より高いカニューレの流速が必要である(最大で6LPMという総サポート)。V−V ECMOサポートでは、これが「アシスト」機器であるので、かなり少ない流速を利用し得る。
【0028】
拡張状態のカニューレ204の壁の外面210は必要なく、好ましくは、カニューレ204が配置された患者の血管の内壁に接触しない。拡張状態のカニューレ204は、体外ポンプの吸い込み側から付与された負の圧力のもとで収縮に対しては耐性であるべきである。拡張状態の管腔208は一般には、カニューレ204が伸ばされる患者の筋肉および血管壁によって付与される力の面でその大きさおよび形状を維持しなければならない。必要に応じて、SMPの圧縮に対する耐性は、収縮を回避するために軟部組織中に保持するセクションについて調節され得る。機器200の拡張状態カニューレ204は、環状断面形状を有する細長い管状部材として示され、記載されるが、楕円形、四角形などのような他の断面形状のカニューレ204が可能であることに注意のこと。その複数の排水穴を考慮すれば、カニューレ204の拡張状態遠位セクション206は、ステント様の立体構造を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、拡張されたカニューレ204の壁は、収縮されたカニューレ104の壁よりも薄いことに注意のこと。この理由は、SMP形状変化が、カニューレがその収縮状態からその拡張状態まで動くにつれて、カニューレの壁厚を減少させることである。しかし、本明細書に記載の多数のローブのカニューレの実施形態では(例えば、図7A〜図7Cを参照)、SMP形状変化は、カニューレ壁(またはそのいくつかの部分もしくは部分(複数))を形成する折り畳まれたローブだけを開放するかまたは展開しており、収縮または折り畳まれた状態から拡張または展開された状態までいく場合、カニューレ壁を薄くすることを伴わない。
【0030】
拡張可能なカニューレは、カニューレ本体の長さにそって複数直径の区画および移行部まで伸展し得ることにも注意のこと。すなわち、その拡張された状態では、このカニューレは、例えば、図2A、図2Cおよび図3Aに示される実施形態が、この複数直径のカニューレ可能性を示さない場合でさえ、その長さに沿って異なるポイントで異なる直径を有し得る。SMPカテーテルは、このカテーテルが患者の軟部組織に配置される場合、構造的圧縮を最小にするためにこのカテーテルの長さの少なくとも一部にそって段階的な耐性があってもよい。
【0031】
図1A〜1Cおよび図2A〜2Cに示されるストレートカニューレの代わりに、本発明の医療機器200は、図3Aおよび図3Bに示されるように形成または成形されたカニューレ304を有してもよい。この拡張状態カニューレ304はまた、その遠位セクション306中に複数の穴を有するステント様の立体構造を有するが、SMPが誘因(トリガー)によって活性化される場合、カニューレ304は、拡張して、図3Aに示される形状のようなプリセット形状をとる。この特定の実施形態では、拡張された遠位セクション306は、4インチの長さを有し、患者の下大静脈から患者の肺動脈にアクセスするように設計され、成形される。開示された形状をとることに加えて、この拡張された遠位セクション306のステント様立体構造は、その複数の穴を有し、遠位セクション306(および同様に図2Aの遠位セクション206)に可塑性およびねじれずに屈曲する能力を与える。このカニューレ304の中実の穴無し部分は、屈曲したとき、ねじれやすく、遠位セクション(複数可)306ほど(または、それぞれ図2Aおよび図1Aの遠位セクション206および106ほど)可塑性でも屈曲性でもない。
【0032】
さらに図3Aおよび図3Bを参照すると、非ストレートカニューレ304は、上で示したように、その収縮状態からその拡張状態へ拡張するにつれてその形状をとってもよいし、あるいはこのカニューレ304は、患者の体内への挿入の前に選択された種々のプリセットの立体構造への製造プロセスによって事前成形されてもよい。例えば、患者の肺動脈へカニューレの遠位先端を配置するために、オペレータは、標的の生体構造に適合するように事前成形されたカニューレを選択して、これによってカニューレが右心房を通過するように屈曲した必要な形状を最も容易に作製し、これを三尖弁を通って右心室へ前進させ、これが肺動脈弁を通って前進するように屈曲した別の形状を作成し、肺動脈内に残っているカニューレの遠位先端で終わる。このカニューレは、オペレータによって感覚で、または蛍光顕微鏡もしくは超音波のもとで、そうでなければスワン・ガンツカテーテル(これは、典型的には、カテーテルに適合するためにはカニューレの管腔のわずかに大きい収縮内径を要する)によって前進され得る。カニューレは、2次元または3次元の任意の種々の単一または複数屈曲の構造に事前成形され得る。
【0033】
ここで図4を参照すると、単一の遠位セクション(106、206、306)の代わりに、本発明による医療機器400は、2つの可塑性の遠位セクション406A、406Bを有するカテーテル404を有し得る。3つ以上のこのようなセクションが可能であるが、示してはいない。図4に示すような2つの可塑性セクションを有するカニューレを使用することによって、オペレータは、患者の体内にカニューレを配置すること、ならびに上大静脈/下大静脈接合部および腎臓の両方から同時に血液を流すことが可能になり得る。また、カニューレの拡張された遠位セクション(206、306、406A、406B)は最も可塑性でかつ屈曲可能なセクションであるが、収縮された遠位セクション(106)もまた、本発明による医療機器のカニューレの中実な、穴ナシの部分よりも可塑性および屈曲性を有することにも注意のこと。
【0034】
本発明の医療機器(100、200、300、400)は、1、2、3またはそれ以上の可塑性セクション(106、206、306、406A、406B)を有するカテーテル(104、204、304、404)を備え、これらの可塑性セクションの各々は、このセクションの壁全体の中および周囲に配置された複数の穴を備える。この穴は、切断セクションを形成するためにカニューレの壁へレーザー切断するような、任意の多数の方法で形成され得る。各々のセクション中の穴のコレクションは、さらに可塑性セクションを提供することおよび流体の通過を可能にすることを包含する、多数の機能を達成するように意図される。形成される穴のパターンは、血管ステントのものと同様であるが、穴を有するカニューレの遠位セクションは、(血管ステントがするように)血管壁を開けたままにする意図ではなく、可塑性をもたらし、それを通過する流量を可能にするように設計される。このカニューレの任意のセクションにおける穴の形状、位置および幾何学的条件は、閉塞の領域が最小限になるようでなければならない。所望の流れの特徴を達成するためにテーパー状の壁厚の端部が必要である場合がある。共同所有の米国特許出願公開第2007/0197856号(A1)(2007年8月23日公開、参照によって本明細書に援用される)に記載の様に、テーパー状の穴は、血栓形成を低下するための流路のより入念な掃引を提供する場合がある。カニューレの壁中の各々の穴についての1つの可能性のある立体構造は、図6Cに示すようであってもよく、ここでは傾斜のある穴620を、カニューレの壁に形成して示しており、そして別の穴の立体構造の可能性を図6Dに示しており、ここでは、突出した側面の穴がカニューレの壁に形成される。複数の突出している側面の穴の各々は、カニューレがその拡張状態にある場合、図6Dに示されるように開口622であってもよく、収縮状態では、壁の突出は後退して、なんら開口622のない平滑で閉じた壁を形成する。図6Aに示される穴の配列が可能であり、図2Bおよび図3Bに示される穴の配列とはいくらか異なる。
【0035】
図6Bは、図6Aのような拡張されたカニューレの同じ遠位セクション606であって、ただし、穴をカバーする拡張されたカニューレの少なくともこの遠位セクション606の内側および外側の両方に配置された可塑性の薄壁性のシース610を備え、これによって、この機器の収縮直径および拡張直径の両方の管腔を通じる連続の流体通過を維持しながら、この遠位セクションの同じ可塑性および屈曲性を可能にする、遠位セクションを示す。このシース610は、カニューレの全長にわたって延びてもよく、または遠位セクション606のようにちょうどその1つ以上の部分にわたって延びてもよい。そしてこのシース610は、内側および外側の両方ではなく、ちょうど外側だけ、またはちょうど内側だけであってもよい。このシース610は、例えば、ポリウレタン、ビニル、熱可塑性ゴム、またはシリコーンのような熱硬化性物質であってもよい。好ましい1つの物質は、ウレタンである。シース610は、例えば、カニューレを液体ポリマーで浸漬またはコーティングすることによって作製されても、吹き付け成形され(spray molded)ても、インフレーションフィルム(blown film)成形されても、押出成形されても、射出成形されても、引き抜き成形されても、または別々の構成要素として均一なストックから組み立てられてもよい。このカニューレのカバーされてない区画は、任意のカバーされてない穴を通じ、およびカニューレの通過管腔の遠位開口を通じてカニューレの中外に流れをもたらす。
【0036】
排液に関して、切断パターンの長さは、最小の所望の流速、所望の流動特徴および所望の得られた流体剪断の関数であり得ることに注意のこと。このパターンは、(拡張活動の間所望の位置を維持するために)、長さの損失が最小限であるカニューレの半径方向の拡張を可能にする。
【0037】
この切断パターンによってまた、カニューレがさらに可塑性であり、ねじれにくくなることも可能である。管腔の開存性は、血液を吸引または戻す場合に重要である。肺動脈にアクセスするために、管腔の断面は、いずれの感知できる方法でも減少されるべきではない。肺動脈にアクセスするために、心臓へ移行してその中にあるカニューレ本体の部分の可塑性によって、開口した管腔を維持しなければならない。カニューレの切断は、薄壁性のポリウレタンまたは他の生体適合性物質でコーティングされたくぼみ(dip)であってもよい。このコーティングは、(i)切断を通じた血液の排出から管腔を、所望の流体駆出部位(例えば、肺動脈)に達するまでシールすること、(ii)カニューレの拡張(これによって、拡張の間、カニューレの回復の間に物質が伸展することを必要とする)のためにほとんど抵抗を与えないこと、ならびに(iii)カニューレ全体を内側および必要に応じて外側をコーティングして、そのカニューレの生体適合性を改善すること、を含めて多数の目的を有する。
【0038】
任意の穴の他の可能性としては、環状形状、卵型の形状、または任意の他の形状が挙げられる。1つ以上の穴は、流体吸引中にじょうごのように機能するため、その拡張状態で広げられてもよい。
【0039】
本発明による任意の収縮状態のカニューレは、短縮が最小限であって、収縮状態で最初のカニューレ配置から予測可能な方法で、その完全直径まで回復(すなわち、拡張する)能力を有しなければならない。これを最高に達成するには、カニューレの本体を、2つ以上の羽根、折り畳みまたはローブで事前形成してもよい。ローブは、事前拡張状態でカニューレに配置され、カニューレ拡張の際に、折り畳みから環状へ移行する。ローブは均一であっても、非対称であってもよい。図7A、図7Bおよび図7Cは、本発明による医療機器のこのような複数のローブ状のカニューレの実施形態の断面図を示しており、ここでは、この機器は、図1A、2A、3A、4および5に示される任意の機器であってもよい。図7Aおよび図7Cは、それぞれ、その完全に収縮した状態および完全に拡張した状態のカニューレを示す。図7Bは、そのカニューレを収縮された状態から拡張された状態への移行中に示す。この複数のローブ状のカニューレの軸方向折り畳みによって、このカニューレが小さくなるにつれて、カニューレの壁をその収縮状態まで折り畳むことおよびそのカニューレが開くにつれてその拡張状態までそのカニューレの壁を展開することが可能になり、これらの折り畳みは、カニューレの本体を回転することによって創出され得る。ローブ形成ツールは、折り畳み/拡張可能な医療バルーンを製造するために利用されるツールと同様に、そのカニューレの長さ全体にわたって、またはその長さの一部にわたって利用されてもよく、それによって、そのカニューレの少なくともアクセス部分については小さい直径が作製される。ハブに接近するにつれ、このカニューレは翼状から環状に移行し得る。カニューレ本体の直径は、このような翼またはローブ形成の技術によって軸方向断面で小さくなり、ここでは、物質の形状およびこの形態を軸方向に包むことによって直径全体が圧縮される。これは、その一部を、丸い断面から、包むことを可能にする断面へ移行する金型(die)に引き込むことによって達成され得る。得られた内径によって、患者の血管系を通じたカニューレの前進のためのガイドワイヤまたはカテーテルにまたがって通過および誘導を可能にするのに有効な軸方向の管腔が得られる。
【0040】
ここで図5を参照すると、図1Aの医療機器は、剥離シース500とともに用いられてもよい。この剥離シース500は、カニューレまたはその一部を形成する温度活性化SMP物質の拡張時間を制御するために用いる。カニューレ104が、配置の間、より長い滞留時間を必要とするならば、この剥離シース500を用いて、収縮されたカニューレ104を内包させる。このコントロールシース500は、カニューレが前進することを可能にする、示された引きはがし(peel−away)立体構造を有し得る。所望の拡張の際に、シース500は、ハブ102に向かってスライドして戻され、カニューレ104をオペレータが導入する温められた流体に対して、および/または温かい流体(複数可)に対して、および/または患者の体内の温度に対して完全に露出する。シース500は、これが患者の体内から、従ってカニューレの周囲から引っ張られるにつれて、二等分に分けられる。カニューレは、患者の体内に残る。引きはがし(peel−away)シース500のようなシースが一般に公知である。この引きはがしシース500は、2つの側方タブを有し、これがオペレータの手で掴まれて、その長さにそってシースを半分に剥がすために引きはがされ得る。引きはがし可能なシースは典型的には、オペレータによる引きはがしを容易にするためにその長さに沿って切り込み線を付けられる。あるいは、線状の配向されたポリマー(現在処理中の分子整列)を剥離シースのために利用してもよい(例えば、線状テフロン(登録商標)(Teflon)、線状ポリエチレンなど)。首尾よいカニューレ配置およびシース500の除去の際、体外循環は終了され、任意のクランプがカニューレおよび/またはハブおよび/またはこのハブに接続された1つ以上のチューブの近位端から取り除かれ、そしてこの機器の拡張された管腔を通じて循環が開始される。
【0041】
好ましい実施形態では、本発明による医療機器のカニューレは、単一のSMP物質から構築される。そのSMP物質は、所望の最終直径に生成される。このカニューレは、所望の二次元または三次元の形状に成形され、次いでそのカニューレが機械加工またはレーザー切断されて、拡張形状の任意の所望の穴パターン(複数可)を組み込む。次いでハブが、例えば、インサート成形または機械的アセブリによって結合され、ウレタン膜がその医療機器の所望の標的領域に適用される。
【0042】
本発明による医療機器の1つの特定の実施形態では、カニューレの圧縮または収縮直径は、0.06”〜0.15”の範囲であってもよく、ここで標的直径は、0.08”である。カニューレの壁厚は、拡張状態のポリマーの所望のフープ強度の関数であり、この壁厚は、0.005”〜0.050”におよび得る。カニューレのフレンチサイズ(French size)は、8F〜36Fに変化してもよいが、その概念はまた、IVインフュージョンまたは他の適用のために用いられるようなゲージサイズ(Gage size)のカテールにもあてはまり得、ここでは配置は、流量が小さいことによって容易になるが、配置後には最大の流量が望ましい。医療機器の管腔の内径は、カニューレの先端がより小さい内径を有してもよく、カニューレの長さにそって、流体の圧力低下を低減するために内径が増大してもよいという点で、一貫している必要はない。カニューレは、他の特徴を有してもよい。例えば、患者の身体から出てくるカニューレの一部は、皮膚の組織が増殖することを可能にし、創傷について細菌のウイッキング(wicking)を軽減することを可能にするために、ベロア様のチューブ内に含まれてもよい。ベロア材は、編まれるかもしくは織られたポリエステル、または他の織物加工された物質であってもよい。編まれた物質の構造は、拡張して、織られた構造よりも容易に収縮して、皮膚の部位に好ましい。ベロアチューブは、導管の外径に結合されなければならない。カニューレの管腔は、これが単に最大の許容可能な直径まで拡張するにつれて、それが配置される血管より大きくてもよい。(他の物質またはより複雑な設計を用いて、カテーテルの経皮的アクセス部分の組織の内殖を増強してもよい)。あるいは、カニューレの遠位端(複数可)は、吸引先端剪断またはジェット排出を軽減するために鐘形(ベル口状)であってもよい。近位端の配置のための深い配置は、カニューレに対するマーカーバンドまたはスライドするリングバンドによって特定され得る。放射線(X線)不透過性のマーカーを、X線撮影でカニューレの位置を特定するのに役立つようにカニューレ本体に組み込んでもよい。
【0043】
カニューレまたはカニューレの1つ以上の部分を形成するために用いられるSMP物質(複数可)の活性化に関して、カニューレがその収縮状態からその拡張状態まで変化するようにさせる誘因は、温度、電気、光および湿度のうちの1つ以上であり得る。湿度活性化形状記憶ポリマーは、水、外科的溶液および/または血液に曝された場合、その形状を変化する。温度が好ましい誘因である。
【0044】
SMPは、ポリマーの作業形状を設定するための適用温度(T)を超える温度曝露において少なくとも一時的な上昇を必要とし得る。例えば、作業温度が37℃(体温)の場合、物質の設定温度は、39℃または40℃に等しいT(ガラス転移温度)を有するように仕立てられ得る。これは、100℃(Tg)であることがかえって好都合であり得るが、ところで、体温に近いほど、応答時間は速くなる。この物質は、挿入物が形状回復(すなわち、カニューレの拡張)を開始した後に、体温まで上昇する。形状復帰を促進するために、加熱生理食塩水をカニューレを通して注入してもよく、ただしこの流体は血液の損傷レベル(41.5℃)より下である。一旦安定化されれば、37℃という自然な体温は、その機器の機能的な使用のための安定な環境を提供するはずである。回復を遅くするために、必要な場合は、拡張のために身体内に配置するために、カニューレを収縮して、図5の剥離シース500のような支持チューブ中で抑圧してもよい。これは、活性化の準備までポリマーを遮断する。シースを取り除いた後、その物質は、所望の拡張形状まで復帰する。
【0045】
また、拡張されたカテーテルは、患者の体内におかれたままで、収縮するように誘引されてもよい。例えば、冷却された生理食塩水を、カテーテル中に通過させて、患者の体内からその除去を容易にするために、その拡張形状からカテーテルを収縮するようにさせてもよい。本明細書において他のいずれかで示されるように、温度以外の誘因が可能であり、繰り返してカテーテルを拡張および収縮するために用いられてもよい。
【0046】
図15Aに示されるとおり、SMPは、カニューレ1504のSMP壁内に配置されたワイヤ1510で製造され得、これらのワイヤ1510の抵抗加熱を使用して、SMPの所望の形状を回復するためにポリマー内の温度変化を誘導してもよい。あるいは、そして図15Bに示されるとおり、カニューレ1504のSMP壁は、例えば、いくらか磁性の例えばシリカコーティングの磁性の酸化鉄のナノ粒子を含む、十分な量の誘導的に感受性の物質1520で充填されてもよいし、そうでなければそれを含むように作製されてもよく、次いで、内部誘導コイルをカニューレ導入器内に配置し、カニューレの内径を通じてスライドさせて、誘導コイルがそばを通るにつれてSMPを活性化してもよい。
【0047】
SMPの光活性化もまた可能である。さらに図15Bを参照すると、カニューレ1504のSMP壁は、十分な量のレーザー吸収色素で充填されてもよいし、そうでなければ含むように作製されてもよく、次に、導入器/光ガイドを利用して、カニューレの内側管腔を色素中への吸収のための散光に曝露してSMPを活性化して、カニューレの形状回復を生じる。
【0048】
ここで図8を振り返れば、医療機器の1つの別の実施形態は、なんらSMP物質を全く用いない。代わりに、図1Aに示されるものと同様の機器100は、バルーンによって機械的に拡張されるように構成されたそのカニューレの遠位セクションを有する。この機器のこの別の実施形態では、拡張可能なバルーンが用いられる。収縮されたバルーン804は、導管802を通じて流体を提供してバルーンを充填し、膨張したバルーン806を創出し得るシリンジ800とカップリングされる。収縮したバルーンを用いれば、これは、収縮状態の機器100の管腔に挿入され、次いでシリンジ800を用いて、バルーン内に流体(例えば、生理食塩水)を押し込んで、バルーンを膨張させ、これが次に、少なくとも収縮した遠位セクション106をその拡張状態へと機械的に押す。
【0049】
1つ以上のSMP物質を用いる本発明による実施形態を振り返って、本発明による医療機器900の実施形態の断面図である図9Aを参照のこと。この機器は、前に開示した単一管腔の実施形態とは対照的にカニューレ904の中に少なくとも2つの管腔901、903を備える。この図9Aの二重管腔の機器900は、収縮状態で患者の体内に前進され、ここで、各々の管腔の遠位端は、この2つの別の管腔の各々の遠位先端の間の距離に典型的には起因して、異なる位置に配置される。図9Aに示されるような2つの管腔のカニューレについては、1つの管腔は、排出カニューレとして機能するように配置されてもよく、それならば他の管腔は、流体復帰カニューレである。カニューレの開口の2つの遠位端の間の距離は、10cm以上離れてもよい。ある例は、ポンプ吸引のために用いられ、上大静脈に配置される外側管腔と、右心房にまたはその付近に位置する戻り管腔とを備える、首を通じた経皮的なカニューレ配置である。拡張された場合、カニューレは、血液を取り出し、身体に戻すことを可能にする流体導管をもたらす。管腔は適用に応じて、排出であっても戻りであってもよい。あるいは、両方の管腔とも排出または戻りに用いられてもよい。図9B〜9Dに示されるように、2つの管腔は、カニューレ904内で分割されても、またはカニューレ904内で同軸であってもよい。図9Eは、本発明による医療機器が、機器のカニューレ部位に3つの管腔を有し得ることを示す。任意の中央管腔を、図9B、図9Cおよび図9Eに示されるように、ガイドワイヤを受容するために提供してもよい。図9Dの内部同軸管腔は、ガイドワイヤを受容し得る。ガイドワイヤを受容するために用いられる任意の管腔は、かならずしも中心である必要はない。本発明による二重管腔または複数管腔の機器によって規定される1つ以上の管腔は、本明細書に記載される1つ以上の可塑性セクションおよび/またはこれも本明細書にやはり記載されるような1つ以上の折り畳みセクションを備え得る。
【0050】
図10Aおよび図10Bに示されるとおり、本発明による別の実施形態は、単一の所望の最大径を維持する1つの管腔を有する二重管腔カニューレを包含するが、他の管腔は、その収縮(すなわち、小径)型で開始する。これは、図10Aの機器1000によって示される。SMP物質(複数可)から作製する必要があるのは収縮された管腔のみである。完全に拡大(すなわち、拡張した)状態で製造される管腔の1つを保っておくための論理的根拠とは、カニューレのこの部分を導入器として用いることである。患者の体内への挿入の間、収縮状態で第二の管腔を維持することによって、このカニューレの直径を小さく保持することが可能になり、これによってカニューレ挿入が容易になる。患者の体内での最終位置への首尾よい挿入の際に第二の管腔を拡張することによって、回路の流動能力の増大で循環または呼吸のサポートを増強することが可能になる。配置して拡張した機器1010を図10Bに示す。
【0051】
これらの全ての二重管腔の実施形態によれば(例えば、図9A、10A、10B、11Aおよび11Bに示されるような)、2つの管腔は、機器のハブおよび2つの単一管腔への移行部に分かれ、この各々が体外循環への接続のためのポートを有する。これは主にまたは排他的に、本明細書に記載されるような容易な血管へのアクセスを可能にするように収縮されているカニューレの(患者の体内へ)埋め込まれた部分である。この収縮された管腔は、前に記載されたように翼状であっても、またはローブ形成されてもよく、この収縮された管腔は、排液および戻りの流量のための穴パターンを備えてもよい。さらに、1つまたは両方の管腔を、患者の身体の脈管内への遠位先端の容易な配置のために事前成形してもよい。
【0052】
図11Aおよび図11Bに示されるとおり、本発明による医療機器の別の実施形態は、両方とも拡張可能である内側管腔および外側管腔を有する、二重管腔カニューレに関与する。図11Aの機器1100は、収縮状態で示しており、ここでは最小化された内側および外側の両方の同軸の管腔の内側直径および外側直径を有する。図11Aでは、収縮された外側管腔は、それを通過する流れを妨げる。図11Bの機器1110は、機器1100であるが、その拡張状態にあり、同軸管腔の両方が拡張されており、詳細にはその外側同軸管腔が拡張されて、それを通じた流れを可能にする。
【0053】
本明細書に記載される管状形状のカテーテルは、再循環回路またはシステム中に必ずしも組み合されていない(患者の身体への)一方向の流体送達を提供し得る。というわけで、静脈内(IV)カテーテルなどのカテーテル適用におけるSMP物質(複数可)の使用は、静脈穿刺を得るために導入器/穿刺針より上かまたはその中に配置され得る。このような機器は、小径の利用を可能にするが、拡張して、血液、生理食塩水または医療溶液の急速な注入のためのより高流量が可能になる。より小さいカテーテルは、種々の静脈穿刺患者で利用することが可能であり得るが、標準的な技術によって通常得られるよりも多くまたは最大の流体導入を可能にする。あるいは、SMP物質(複数可)は、導入器の針を必要とすることなく、組織の直接穿刺を可能にするために、先端で鋭利に成形されてもよい。より小さい穿刺部位を可能にするために拡張するが、一旦ポートが拡張すればより大きい機器が体腔にアクセスすることを可能にする、管状形状のポートが、腹腔鏡または内視鏡のアクセスに利用されるポートとして、導入されてもよい。図12は、収縮状態/非拡張カニューレ1204の断面図(図1Aの側面図に示されるカニューレ104などまたはそれと同様)であり、これは、漸減する遠位末端部分を備え、カニューレ1204の管腔を通じて延びる導入器の針1200を備える。図13は、収縮状態/非拡張のカニューレ1304の断面図であり、これは、別々の導入器の針の必要性なしに患者の皮膚および他の組織に穿刺することを可能にするように鋭利に成形されて、かつ傾斜のある遠位末端を備える。そして図14は、導入器の針1400の管腔内に配置された、収縮状態/非拡張カニューレ1404の断面図(図1Aの側面図に示されるカニューレ104などまたはそれと同様)である。
【0054】
形状記憶ポリマーは一般に公知であるが、完全を期して本明細書にある程度記載している。ほとんどのSMP物質は、2つの形状を保持し得、その間の移行は通常は温度によって誘導される。温度変化に加えて、SMPの形状変化はまた、電場もしくは磁場、光、湿度または溶液によって誘発され得る。ポリマーと同様に一般には、SMPはまた、SMPを構成する構造単位次第で、安定から生体分解性まで、軟性から硬性まで、および弾性から剛性まで広範な特性の範囲を包含する。SMPは、熱可塑性および熱硬化性(共有結合的に架橋された)ポリマー物質を含む。SMPは、最大3つまでの異なる形状を記憶することができることが公知である。SMPの形状記憶効果を記述するために用いられる2つの重要な数値とは、歪み回復率(strain recovery rate)(R)および歪み固定率(strain fixity rate)(R)である。この歪み回復率は、その物質が永続的な形状を記憶する能力を指すが、歪み固定率は、切り替え区画が機械的な変形を固定する能力を指す。形状記憶効果を呈するポリマーは、一時的な形態および記憶された(永続的)形態の両方を有する。一旦後者が従来の方法によって製造されれば、その物質は、加熱、変形および最終的には冷却を通じた処理によって別の一時的な形態に変化される。このポリマーは、永続的形態への形状変化が所定の外部刺激によって活性化されるまで、この一時的な形状を維持する。これらの物質の形状変化の能力は、少なくとも2つの別の相を含む、それらの分子網目状構造に依拠する。最高の温度遷移を示す相、Tpermとは、永続的な形状を担う物理的架橋を確立するために突破されなければならない温度である。他方では、切り替え区画とは、特定の遷移温度(Ttrans)を超えて軟化する能力を有する区画であり、一時的な形状を担う。ある場合には、これは、ガラス遷移温度(T)および他の融解温度(T)である。Ttransを超えれば(ただしTperm未満を維持しながら)、これらの切り替え区画を軟化することによって切り替えを活性化し、それによって、この物質がその本来の(永続的)形態を回復することを可能にする。Ttrans未満では、この区画の可塑性は、少なくとも部分的に制限される。SMPをプログラミングするためにTを選択する場合、切り替え区画の歪み誘発性の結晶化は、Tより上で伸展され、引き続きTより低く冷却される場合に開始され得る。これらの微結晶は、共有結合のネットポイントを形成し、これは、ポリマーがその通常のコイル構造を再形成することを妨げる。軟性区画に対する硬性区画の比は5/95〜95/5の間である場合が多いが、理想的には、この比は、20/80〜80/20の間である。この形状記憶ポリマーは、事実上粘弾性であり、多くのモデルおよび分析方法が存在する。
【0055】
光活性化形状記憶ポリマー(LASMP)は、Tを変化するために光架橋および光切断の処理を用いる。光架橋は、光の1つの波長を用いることによって達成されるが、光の第二の波長は、光架橋された結合を可逆的に切断する。達成される効果とは、この物質がエラストマーと剛性のポリマーとの間で可逆的に切り替えられ得ることである。光は温度を変化せず、この物質内の架橋密度を変化するだけである。例えば、桂皮基を備えるポリマーはUV光照射(>260nm)によって事前決定された形状に固定され、次いで、異なる波長(<260nm)のUV光に曝された場合、その元来の形状を回復し得ることが報告された。光応答性切り替えの例としては、桂皮酸およびシンナミリデン酢酸が挙げられる。
【0056】
ポリマーの形状記憶効果を活性化するための電気の使用は、熱を用いることが不可能である適用について所望される。カーボンナノチューブを有する導電性SMP複合体、例えば、短いカーボンファイバー(SCF)、カーボンブラック、および金属のNi粉末を用いてもよい。これらの導電性SMPは、硝酸および硫酸の混合溶媒中で、多層カーボンナノチューブ(multi−walled carbon nanotubes(MWNT))を化学的に表面修飾することによって生成され、ポリマーと導電性充填材との間の界面結合を改善する目的である。これらの種類のSMPにおける形状記憶効果は、MWNTの充填材含量および表面修飾の程度に依存することが示され、ここで表面修飾されたバージョンは、良好なエネルギー変換効率および改善された機械的特性を示す。また、表面修飾された超常磁性ナノ粒子を用いてもよい。ポリマーマトリクス中に導入した場合、形状移行の遠隔作動が可能である。この例は、2〜12%のマグネタイトナノ粒子とのオリゴ(e−カポラクトン(capolactone))ジメタクリレート/ブチルアクリレート複合体の使用を包含する。ニッケルおよびハイブリッドファイバーも用いてもよい。
【0057】
本発明による特定の実施形態が開示された。これらの実施形態は、本発明の例示であり、本発明の限定ではない。他の実施形態、ならびに開示された実施形態の種々の改変および組み合わせが可能であり、本開示の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤの上でかつ患者の体内にカテーテルの配置を可能にするのに十分な収縮直径を有しており、前記収縮直径で可能な速度よりも高速な所定の速度で流量を補助するために、前記患者の体内に配置された後に直径が拡張可能なカテーテルであって:
細長い部材であって、それを通じて伸びる少なくとも1つの管腔を規定する管状壁を備える細長い部材を備え、前記細長い部材は、少なくとも1つの誘発性の刺激に曝された場合、前記細長い部材の少なくとも一部がその収縮直径を超えてその直径を拡張することを可能にする形状記憶ポリマーを備え、前記細長い部材の少なくとも1つのセクションは、前記管状壁中に複数の穴を備え、そのセクションがそのような穴のない前記細長い部材の他の部分よりも可塑性でかつ屈曲可能であるようにさせる、カテーテル。
【請求項2】
患者の血管への挿入のため、ならびに患者の身体の中におよび/または外に1つ以上の流体を運ぶための医療機器であって、前記医療機器は:
前記患者の身体の外側の配置のためのハブと;
前記ハブから延びており、少なくとも1つの通路を規定する細長い部材であって、前記細長い部材の少なくとも1つの部分が、形状記憶ポリマーを備え、前記細長い部材が圧縮状態である場合、前記患者の血管内の配置のためであり、ここで前記少なくとも1つの通路は、ガイドワイヤを受容するように、ただし前記患者の体内および/または外で十分に高い所定の速度で流体を運ばないようにサイズ決めされ、前記細長い部材の前記少なくとも一部は、前記十分に高い所定の速度で流体を運べるように、前記患者の血管内に配置された後に拡張状態まで変化するように構成されて、前記細長い部材の前記少なくとも一部の少なくとも1つのセクションは、前記細長い部材の前記少なくとも一部の少なくとも残りよりも可塑性である、細長い部材と;を備える、医療機器。
【請求項3】
前記細長い部材の前記少なくとも一部の前記少なくとも1つのセクションが、前記細長い部材の壁中に複数の穴を備えて、そのセクションをそのような穴のない前記細長い部材の他の部分よりも可塑性にかつ屈曲性にさせる、請求項2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記細長い部材が拡張状態であるとき展開する複数の軸方向の折り畳みを有する少なくとも1つの他のセクションを前記細長い部材がさらに備える、請求項2に記載の医療機器。
【請求項5】
前記血管が静脈または動脈であり、少なくとも血液が前記患者の身体の中におよび/または外に運ばれる、請求項2に記載の医療機器。
【請求項6】
前記細長い部材が2つの通路を規定する、請求項2に記載の医療機器。
【請求項7】
前記形状記憶ポリマーが、前記圧縮状態から前記拡張状態まで前記細長い部材を変化させるために、熱、光および電気のうちの少なくとも1つによって活性化される、請求項2に記載の医療機器。
【請求項8】
前記細長い部材が、前記患者の血管内に配置されかつ拡張状態であるとき、前記患者の血管の内壁上に押す力を発揮しないように構成される、請求項2に記載の医療機器。
【請求項9】
前記配置されかつ拡張された細長い部材が、血管を通る血液の流れをブロックしない代わりに前記患者の血管の内壁と前記細長い部材の外面との間を血液が流れることを可能にする、請求項8に記載の医療機器。
【請求項10】
前記ハブが、体外支援システムに対して接続するためのコネクターを備える、請求項2に記載の医療機器。
【請求項11】
患者の血管への挿入のため、ならびに患者の身体中におよび/または外側に1つ以上の流体を運ぶための医療機器であって、前記医療機器は:
少なくとも1つの通路を規定する細長い部材であって、前記細長い部材の少なくとも1つの部分が、形状記憶ポリマーを備え、前記細長い部材が圧縮状態である場合、前記患者の血管内の配置のためであり、ここで前記少なくとも1つの通路は、ガイドワイヤを受容するように、ただし前記患者の体内および/または外で十分に高い所定の速度で流体を運ばないようにサイズ決めされ、前記細長い部材の前記少なくとも一部は、前記十分に高い所定の速度で流体を運べるように、前記患者の血管内に配置された後に拡張状態まで変化するように構成されて、前記細長い部材の前記少なくとも一部の少なくとも1つのセクションは、前記細長い部材が拡張状態である場合に展開する複数の軸方向の折り畳みを備える、細長い部材を備える、医療機器。
【請求項12】
前記細長い部材が、前記細長い部材の壁に複数の穴を備える少なくとも1つの他のセクションをさらに備えて、そのセクションをこのような穴のない前記細長い部材の他の部分よりも可塑性にかつ屈曲可能であるようにさせる、請求項11に記載の医療機器。
【請求項13】
前記血管が静脈または動脈である、請求項11に記載の医療機器。
【請求項14】
少なくとも血液が、前記患者の身体の中および/または外に運ばれる、請求項13に記載の医療機器。
【請求項15】
前記細長い部材が、2つの通路を規定する、請求項11に記載の医療機器。
【請求項16】
前記2つの通路が同軸上にまたは並んで配向される、請求項15に記載の医療機器。
【請求項17】
前記形状記憶ポリマーが、前記圧縮状態から前記拡張状態まで前記細長い部材を変化させるために、熱、光および電気のうちの少なくとも1つによって活性化される、請求項11に記載の医療機器。
【請求項18】
前記細長い部材が、前記患者の血管内に配置されかつ拡張状態であるとき、前記患者の血管の内壁上に押す力を発揮しないように構成される、請求項11に記載の医療機器。
【請求項19】
前記配置されかつ拡張された細長い部材が、血管を通る血液の流れをブロックしない代わりに前記患者の血管の内壁と前記細長い部材の外面との間を血液が流れることを可能にする、請求項18に記載の医療機器。
【請求項20】
前記細長い部材が延びるハブをさらに備え、前記ハブが、体外支援システムに対して接続するためのコネクターを備える、請求項11に記載の医療機器。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A−7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公表番号】特表2013−518670(P2013−518670A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552033(P2012−552033)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023341
【国際公開番号】WO2011/097229
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512201786)ソラテック エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】