拡径掘削方法および拡径掘削システム
【課題】先行掘削とその先行掘削孔を拡径するようにして所定口径の立て坑に仕上げる拡径掘削工程とを含んでなる工法を前提として、少なくとも拡径掘削によって発生した土砂を先行掘削孔の底部あるいはケーシング内に取り込み易くした拡径掘削システムを提供する。
【解決手段】先行掘削用ケーシング1を回転せさながら地中に貫入して、直径D2の先行掘削孔H1を掘削する。先行掘削に続く拡径掘削は、拡径掘削機5を回転させながら貫入して先行掘削孔H1を拡径するように直径D3まで拡径してその拡径掘削孔H2をもって立て坑とする。拡径掘削機5のケーシング7の直径D1と先行掘削孔H1の直径D2との間に積極的に隙間Aを持たせて、拡径掘削した土砂の先行掘削孔H1の底部側への落下・取り込みを容易にする。
【解決手段】先行掘削用ケーシング1を回転せさながら地中に貫入して、直径D2の先行掘削孔H1を掘削する。先行掘削に続く拡径掘削は、拡径掘削機5を回転させながら貫入して先行掘削孔H1を拡径するように直径D3まで拡径してその拡径掘削孔H2をもって立て坑とする。拡径掘削機5のケーシング7の直径D1と先行掘削孔H1の直径D2との間に積極的に隙間Aを持たせて、拡径掘削した土砂の先行掘削孔H1の底部側への落下・取り込みを容易にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤における拡径掘削方法と拡径掘削システムに関し、特にケーソン(PCウエルを含む)の圧入沈設による立て坑の構築に際して、そのケーソンの刃先下を拡底または拡径するような形態で掘削するのに好適な拡径掘削方法と拡径掘削システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
大深度地下の有効利用を目的に国土交通省にて「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が平成13年4月1日より施行されている。
【0003】
上記特別措置法における大深度地下とは少なくとも40メートル以深の地下のことを指しており、そのために大深度地下空間と地上とを連絡させる立て坑の構築ニーズが増大し、より大きい径にて、より深く、且つ安全に構築できる技術を目標に各種の工法が開発されている。これらの立て坑の構築にはケーソン沈設工法により構築されるケースが多い。
【0004】
その一方、硬質地盤(軟岩、中硬岩を指す)を掘削しながらケーソンを圧入・沈設しようとする場合において、ハンマーグラブ等の既存設備による掘削ではケーソンの刃先下の掘削ができず、そのために例えば特許文献1〜4に記載のようにケーソン刃先下の掘削を可能とする各種拡径掘削装置が提案されている。
【0005】
これらの掘削装置は、ケーシングパイプの外周に掘削翼を取り付けた拡径掘削装置となっていて、掘削翼で掘削した土砂をケーシングパイプ内に取り込んだ上でグラブバケット等により排土するようにしている。
【0006】
より具体的には、上記特許文献1〜4に記載に代表されるような従来の技術では、ケーシングを把持してこれを回転させながら地中に押し込む回転押し込み装置と、上記ケーシングに装着された拡径掘削翼とを備えているとともに、その拡径掘削翼には掘削刃が植設されていて、上記回転押し込み装置にてケーシングを回転させながら押し込むことにより硬質地盤の掘削を可能としている。この場合、掘削された土砂はケーシングの周囲に開口形成した土砂取り込み口からケーシング内部に取り込まれるようになっていて、ケーシング内に取り込んだ土砂をハンマーグラブまたはグラブバケット等にて掴んで排土している。
【特許文献1】特許第2674731号公報
【特許文献2】特許第3031876号公報
【特許文献3】特開2005−98048号公報
【特許文献4】特開2004−176530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような各種の従来の技術では、掘削対象地盤が硬質地盤であってその地質が粘性質土系の場合には、掘削された後に土砂と水が掘削翼にてかき混ぜ合わされることにより、粘着性の高い泥土へと変化する(いわゆるヘドロ化現象)。ヘドロ化した土砂は、拡径掘削翼とケーシングの交点付近(ケーシングに対する拡径掘削翼の根元付近)にて滞留したり、あるいはその滞留により再度締め固め状態となって掘削翼全体に付着することになる。その結果、ケーシング内への掘削土砂の取り込み効率が悪くなるともに、掘削翼に付着した土砂重量の増加に伴いケーシングを把持している回転押し込み装置の把持能力が限界に達し、様々な二次的不具合の発生が余儀なくされる。
【0008】
その一方、ケーシングの周囲に開口形成してある土砂取り込み口の拡大化はケーシングそのものの強度の上で自ずと限界があり、そのために掘削土砂のケーシング内への取り込み効率向上のために拡径掘削翼をケーシングとともに間歇的に上下動させることも一部で行われているが、この場合には掘削効率を犠牲にすることで初めて成り立つ手法であり、工期の延長やコストアップを招く要因となって好ましくない。
【0009】
このようなことから、掘削土砂をスムーズにケーシング内に取り込むことにより、掘削工程あるいは工期の短縮を可能とし、コストダウンに繋がるような掘削土砂の効率的な取り込み方法についての開発要請があった。
【0010】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけ先行掘削孔を拡径するようにして所定口径の立て坑に仕上げる拡径掘削工程を含んでなる工法を前提として、少なくとも拡径掘削によって発生した土砂を先行掘削孔の底部あるいはケーシング内に取り込み易くした拡径掘削方法と拡径掘削システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、地盤に先行掘削された孔を拡径するように掘削して立て坑とする拡径掘削工程を含んでいて、この拡径掘削工程では、先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段にて上記先行掘削孔を拡径するように掘削するとともに、拡径掘削によって発生した土砂を先行掘削孔と鋼管との隙間を通して先行掘削孔の底部に溜めた上で鋼管内より排土することを特徴とする。
【0012】
より具体的には、請求項2に記載のように、先行掘削手段にて地盤に先行掘削孔を掘削する先行掘削工程を含んでいて、この先行掘削工程では、上記鋼管の直径よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔を掘削するものとする。
【0013】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、拡径掘削の際に先行掘削孔と鋼管との間に常に所定の隙間が確保されることから、拡径掘削によって発生した土砂は、従来のように拡径掘削翼の根元部に滞留することなく、上記隙間を通って落下して先行掘削孔の底部に溜まることになる。そして、先行掘削孔の底部に溜まった土砂は鋼管内を昇降するハンマーグラブ等の排土手段にて掴み取ることが可能であることから、この排土手段にて鋼管外に排土されることになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の方法を前提として、先行掘削と拡径掘削とを同時並行的に行うことを明確化したものであり、拡径掘削手段と先行掘削手段とを兼用化させて、先行掘削手段による先行掘削と拡径掘削手段による拡径掘削とを並行して行うことを特徴とする。
【0015】
より具体的には、請求項4に記載のように、上記先行掘削は、鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けた先行掘削手段にて行うものとする。
【0016】
したがって、請求項3,4に記載の発明では、先行掘削が拡径掘削に先行するように両者が同時並行的に行われることから、先行掘削手段の一部としても機能することになる鋼管の先端部が同時に先行掘削孔の底部となる。そのため、拡径掘削によって発生した土砂は先行掘削によって発生した土砂とともに先行掘削孔の底部すなわち鋼管内に集められた上で、排土手段にて外部に排土されることになる。
【0017】
逆に請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の方法を前提として、先行掘削手段による先行掘削と拡径掘削手段による拡径掘削とを相互に独立して行うことを明確化したものであり、先行掘削手段にて先行掘削孔を先行掘削した後、その先行掘削手段に代えて拡径掘削手段にて拡径掘削を行うことを特徴とする。
【0018】
この場合において、請求項6に記載のように、上記拡径掘削手段にて拡径掘削を行うにあたり、拡径掘削翼の下方位置に先行掘削孔とほぼ同径またはそれ以下の外径を有する誘導手段を設けておき、この誘導手段を先行掘削孔に内接させることにより、先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるように誘導することが望ましい。
【0019】
したがって、少なくとも請求項5に記載の発明では、拡径掘削を行う際には既に拡径掘削手段の鋼管と先行掘削孔との間に所定の隙間が確保されているため、拡径掘削によって発生した土砂は、従来のように拡径掘削翼の根元部に滞留することなく、上記隙間を通って落下して先行掘削孔の底部に溜まることになる。そして、先行掘削孔の底部に溜まった土砂は鋼管内を昇降するハンマーグラブ等の排土手段にて掴み取ることが可能であることから、この排土手段にて鋼管外に排土されることになる。
【0020】
ここで、上記先行掘削は、請求項7に記載のように、拡径掘削手段側の鋼管とほぼ同径の先行掘削用ケーシングチューブの外周に先行掘削翼を設けてなる先行掘削手段にて行うものとする。
【0021】
また、上記先行掘削の際には、請求項8に記載のように、先行掘削用ケーシングチューブのうち先行掘削翼よりも掘削方向前方側に開口形成した土砂取り込み口から先行掘削用ケーシングチューブ内に掘削土砂を取り込むものとする。
【0022】
上記先行掘削は、請求項7に記載のものに代えて、請求項9に記載のように、拡径掘削手段側の鋼管とほぼ同径の先行掘削用ケーシングチューブに先行掘削孔径とほぼ同径の円筒状の第2の鋼管を装着してあり、且つその第2の鋼管の先端に掘削刃を装着してなる先行掘削手段にて行うこともできるほか、請求項10に記載のように、拡径掘削手段側の鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の円筒状の第3の鋼管の先端に掘削刃を装着してなる先行掘削手段にて行うこともできる。
【0023】
上記のようないくつかの工法においては、請求項11に記載のように、拡径掘削翼として拡縮径可能なものを用いることが望ましい。
【0024】
また、請求項12に記載のように、拡径掘削手段を形成している鋼管のうち拡径掘削翼の下方位置に螺旋状の補助翼を設けておき、上記拡径掘削翼で掘削した土砂を、その拡径掘削翼の掘削回転に伴い補助翼にて先行掘削孔内に押し込むことが掘削土砂の効率的集約化の上で望ましい。その結果、拡径掘削によって発生して土砂を積極的に先行掘削孔の底部側ひいては鋼管内に取り込むことが可能となる。
【0025】
もちろん、上記の各工法は、請求項13に記載のように、ケーソンの内部またはケーソンの刃先下の掘削に用いることが可能である。
【0026】
ここで、予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、その立て坑の深さの全長にわたって請求項3または4に記載の方法にて掘削を行うことができるほか、その立て坑の深さの途中まで掘削が進行したならば、その途中段階から以深の掘削を請求項3または4に記載の方法にて行うこともでき、請求項14,15に記載の発明はこれらのことを明確化している。
【0027】
同様に、予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、その立て坑の深さの全長にわたって請求項5に記載の方法にて掘削を行うことができるほか、その立て坑の深さの途中まで掘削が進行したならば、その途中段階から以深の掘削を請求項5に記載の方法にて行うこともでき、請求項16,17に記載の発明はこれらのことを明確化している。
【0028】
請求項18に記載の発明は、請求項3または4に記載の技術を拡径掘削システムとして捉えたものであって、先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、上記鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けられ、当該鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼や先行掘削手段とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段とを備えたことを特徴とする。
【0029】
請求項19に記載の発明は、請求項5または6に記載の技術を拡径掘削システムとして捉えたものであって、先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、上記鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段とを備えたことを特徴とする。
【0030】
さらに、請求項20に記載の発明は、請求項6に記載の技術を拡径掘削システムとして捉えたものであって、先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、上記鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、上記鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けられるとともに先行掘削孔とほぼ同径またはそれ以下の外径を有し、拡径掘削時に先行掘削孔に内接することにより先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるように誘導する誘導手段と、上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
請求項1,2に記載の発明によれば、少なくとも拡径掘削手段にて拡径掘削を行う際には、拡径掘削手段の鋼管と先行掘削孔との間に常に所定の隙間が確保されることになるため、拡径掘削によって発生した土砂が従来のように拡径掘削翼の根元部等に滞留してしまうことがなく、確実に先行掘削孔の底部ひいては鋼管内に取り込まれることになって、土砂の取り込み効率が大幅に向上する。
【0032】
特に請求項3,4に記載の発明によれば、先行掘削と拡径掘削とが同時並行的に行われるため、請求項1に記載の発明と同様の効果に加えて作業性が向上し、掘削工程もしくは工期の大幅な短縮が可能となる。
【0033】
請求項5に記載の発明によれば、先行掘削と拡径掘削とが相互に独立して行われて、拡径掘削の際には拡径掘削手段の鋼管と先行掘削孔との間に常に所定の隙間が確保されているため、拡径掘削で発生した土砂は上記隙間を通して確実に先行掘削孔の底部に溜まり、その後に鋼管内を昇降する排土手段にて排土されることになるので、請求項1に記載の発明と同様に土砂の取り込み効率が大幅に向上する。
【0034】
請求項6に記載の発明によれば、誘導手段があることよって、先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるようにその拡径掘削手段が誘導されるため、先行掘削孔と拡径掘削孔との同心精度が向上するとともに、拡径掘削の際により効率的な掘削を行える。
【0035】
請求項8に記載の発明によれば、先行掘削用ケーシングチューブに開口形成した土砂取り込み口からその先行掘削用ケーシングチューブ内に積極的に掘削土砂を取り込むことができるので、土砂取り込み効率が一段と向上する。
【0036】
請求項12に記載の発明によれば、螺旋状の補助翼のはたらきにより、拡径掘削で発生した土砂の先行掘削孔側への押し込み効果が期待できるため、その先行掘削孔側への土砂の取り込み効率が飛躍的に向上する。
【0037】
請求項13に記載の発明によれば、上記各工法にてケーソンの内部またはケーソンの刃先下の掘削を行うものであるため、土砂の取り込み効率の向上に伴いケーソンの圧入沈設作業も効率良く行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は本発明に係る拡径掘削方法および拡径掘削システムの第1の実施の形態としてその基本概念を示す説明図である。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5に記載の発明のほか、請求項10,11および請求項16,19に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0039】
この第1の実施の形態では、図1の(B)に示す直径D3の所定深度の立て坑H2を構築するにあたり、同図(A)に示すように直径D2の先行掘削孔H1を先行掘削する先行掘削工程と、同図(B)に示すようにその先行掘削孔H1を直径D3まで拡径しながら同径の立て坑H2に仕上げる拡径掘削工程とに分けて施工を行うものとする。
【0040】
図1の(A)の先行掘削工程では、掘削すべき先行掘削孔H1の直径D2と同等の直径の先行掘削手段としてのパイプ状の先行掘削用ケーシングチューブ1と、この先行掘削用ケーシングチューブ1の駆動装置として機能する回転押し込み装置2と、排土手段であるハンマーグラブ3を併用して施工を行うものであり、先行掘削用ケーシングチューブ1の先端には複数の掘削刃4を植設してある。上記回転押し込み装置2は全旋回式オールケーシング掘削機の駆動部と同等の機能を有するものであり、先行掘削用ケーシングチューブ1をチャッキング(把持)した上でこれを回転駆動させる機能と、その先行掘用ケーシングチューブ1の回転駆動と並行して先行掘削用ケーシングチューブ1に推力を付与して地中に圧入する機能とを有している。なお、上記先行掘削用ケーシングチューブ1は、請求項9等に言うところの「円筒状の第3の鋼管」に相当している。
【0041】
したがって、図1の(A)の先行掘削工程では、先に述べたように回転押し込み装置2のチャック部でチャッキングした先行掘削用ケーシングチューブ1を回転駆動しながら地中に圧入し、それと並行して先行掘削用ケーシングチューブ1内においてハンマーグラブ3を昇降動作させて、掘削中の先行掘削孔H1の底部に相当する先行掘削用ケーシングチューブ1内の土砂、すなわち先行掘削用ケーシングチューブ1の先端部が切り出した土砂をハンマーグラブ3で掘削しつつ掴んでは先行掘削用ケーシングチューブ1外に排土する。
【0042】
なお、掘削深度の増大に伴い、その先行掘削用ケーシングチューブ1を構成しているところの単位要素であるケーシングピース1aを既設の先行掘削用ケーシングチューブ1の上端に順次継ぎ足しながら施工を行うものとする。そして、所定深度に達したならば先行掘削用ケーシングチューブ1を抜き上げることにより、上記先行掘削用ケーシングチューブ1の径D2と同等径の先行掘削孔H1が形成されることになる。
【0043】
この先行掘削に続く図1の(B)の拡径掘削工程では、拡径掘削手段としての拡径掘削機5と、同図(A)に示したものと同様の回転押し込み装置2Aと、排土手段であるハンマーグラブ6を併用して施工を行うものとする。
【0044】
拡径掘削機5は、同図(B)のほか図2に示すように、図1の(A)の先行掘削用ケーシングチューブ1よりも小径のパイプ状のケーシング7の周囲に例えば3組の略ブレード状の拡径掘削翼8を等ピッチで装着したものであり、これらの拡径掘削翼8の先端である最大直径部が描く軌跡の直径は先の構築すべき立て坑H2の直径D3と同じ大きさに設定されている。これにより、上記ケーシング7の直径D1と先行掘削孔H1の直径D2および立て坑H2の直径D3との相互関係は、D1<D2<D3となるように予め設定されている。なお、上記ケーシング7は請求項1等に言うところの「円筒状の鋼管」に相当している。
【0045】
また、ケーシング7のうち拡径掘削翼8の下側根元部と同等高さ位置であってあって且つそれらの拡径掘削翼8と干渉しない位置には、ケーシング7の内外を連通するべく略矩形状の土砂取り込み口9を開口形成してあるとともに、拡径掘削翼8の下面、および拡径掘削翼8よりも下側に残されたケーシング7の一般部の先端には、先行掘削用ケーシングチューブ1と同様に複数の掘削刃4を植設してある。そして、各拡径掘削翼8の下面はテーパ状に形成してあり、したがって拡径掘削翼8の下面がその回転によって描く軌跡は略円錐形状のものとなるように設定してある。
【0046】
なお、上記の各拡径掘削翼8は、図11に示すように固定翼8aとこれに重合するように配置された可動翼8bとで形成されていて、直動型アクチュエータ等により可動翼8bを固定翼8aに沿ってスライド変位させることで拡縮径可能となっているものであるが、この構造の詳細については後述する。
【0047】
したがって、図1の(B)に示した拡径掘削工程では、回転押し込み装置2Aが把持したケーシング7の先端部を先行掘削孔H1の内部に同心状に挿入する一方、そのケーシング7に付帯してる拡径掘削翼8を拡径状態とした上でケーシング7とともに回転駆動しながら地中に圧入して、先行掘削孔H1を拡径するように掘削して所定口径D3の立て坑H2に仕上げることになる。これと並行して、ケーシング7内においてハンマーグラブ6を昇降動作させて、上方から順に拡径されることになる先行掘削孔H1の底部に相当する位置に溜まった土砂をハンマーグラブ6で掘削しつつ掴んではケーシング7外に排土する。
【0048】
この拡径掘削の過程においては、先行掘削孔H1の直径D2とケーシング7の直径D1とがD1<D2の関係にあるため、ケーシング7と先行掘削孔H1の内周面との間にはD1とD2との差に相当する隙間Aが常時確保されていることになる。そのため、拡径掘削翼8によって掘削された土砂はその拡径掘削翼8の回転に伴いケーシング7に近い部分、すなわちケーシング7に対する拡径掘削翼8の根元部近くに集められた上で上記隙間Aを通って先行掘削孔H1の底部に集められることになる。同時に、一部の土砂はケーシング7に開口形成されている土砂取り込み口9からケーシング7内に取り込まれた上で先行掘削孔H1の底部に落下することになる。
【0049】
したがって、拡径掘削によって発生した土砂が従来のように拡径掘削翼8の根元部付近に滞留したり、あるいはその滞留により再度締め固め状態となって拡径掘削翼8全体に付着することもなくなり、先行掘削孔H1の底部側への掘削土砂の取り込み効率がきわめて良好なものとなる。そして、先行掘削孔H1の底部に集められた土砂は先に述べたようにケーシング7内を昇降動作するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0050】
ここで、先行掘削用ケーシングチューブ1の直径すなわち先行掘削孔H1の直径D2とケーシング7の直径D1との差に基づいて両者の間に積極的に隙間Aを確保し、その隙間Aを利用して拡径掘削時に発生した土砂の落下ひいてはその取り込みの効率化を図るものであるから、上記先行掘削孔H1の直径D2はケーシング7の直径D1の少なくとも1.1倍以上とすることが望ましい。
【0051】
図3,4は本発明の第2の実施の形態を示す図で、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。なお、この実施の形態は、請求項1〜4に記載の発明のほか、請求項7,8,および請求項11,14,18に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0052】
この第2の実施の形態では、直径D2の先行掘削孔H1の掘削を目的とした先行掘削と、その先行掘削孔H1を拡径させて所定口径D3の立て坑H2に仕上げる拡径掘削とを実質的に同時並行的に行うようにしたものであり、後述するように拡径掘削手段である拡径掘削機5の一部が実質的に先行掘削手段を兼ねていることになる。
【0053】
図3に示すように、拡径掘削手段の主要素である直径D1のケーシング7の先端にはそのケーシング7の一部を形成することになるほぼ同径の先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10が着脱可能に装着されていて、そのケーシングアタッチメント10の外周には図4に示すように平面視にて略くの字状に屈曲した例えば3枚の先行掘削翼11が装着されている。
【0054】
この先行掘削翼11は、図5に拡大して示すように、平面視にて略くの字状に屈曲したブレード12の下端に複数の掘削刃13を植設するとともに、背面側を補強プレート14にて補強したものであり、同時にケーシングアタッチメント10の円筒胴部には各先行掘削翼11に近接するようにして、すなわち同先行掘削翼11と同等高さ位置であって且つ先行掘削翼11よりも掘削方向前方側に矩形状の土砂取り込み口15を開口形成してある。そして、各先行掘削翼11の先端(最大直径部)が描く軌跡の直径は掘削すべき先行掘削孔H1の直径D2と同等寸法に設定してある。また、ケーシングアタッチメント10の下端には図1に示したものと同様に複数の掘削刃4を植設してあり、したがって、ケーシングアタッチメント10はケーシング7の一部でありながらも先行掘削翼11とともに先行掘削手段を形成している。
【0055】
したがって、この第2の実施の形態によれば、回転押し込み装置2Aで把持したケーシング7を回転駆動させながら地中に圧入することにより、先行掘削翼11による直径D2の先行掘削孔H1の先行掘削と、その先行掘削孔H1を拡径掘削翼8にて拡径するようにして直径D3の立て坑H2に仕上げる拡径掘削とが同時並行的に行われることになる。
【0056】
この場合、同時回転する先行掘削翼11と拡径掘削翼8との上下方向での位置関係は常に不変であり、先行掘削翼11にて掘削されたばかりの先行掘削孔H1のその上方から追いかけるようにして拡径掘削翼8にて拡径掘削することになる。
【0057】
そして、拡径掘削翼8の下方には常に所定深さの先行掘削孔H1が確保されていることから、拡径掘削孔H2の掘削に伴って発生した土砂は、その一部がケーシング7側の土砂取り込み口9からケーシング7内に取り込まれて先行掘削孔H1の最深部(ケーシングアタッチメント10の先端が位置している部分)に集められる一方、拡径掘削によって発生した多くの土砂は直ちに先行掘削孔H1とケーシング7との隙間Aを通してその下方に落下して、先行掘削翼11が位置している先行掘削孔H1の底部に溜まることになる。この先行掘削翼11のレベル位置に溜まった土砂は、先行掘削翼11自体にて掘削された土砂とともにケーシングアタッチメント10の土砂取り込み口15からケーシングアタッチメント10の内部、すなわち上記と同様に先行掘削孔H1の最深部(ケーシングアタッチメント10の先端が位置している部分)に集められることになる。
【0058】
その後、こうしてケーシングアタッチメント10の内部に取り込まれた土砂は、先の実施の形態と同様にケーシング7内を昇降動作するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0059】
図6は本発明の第3の実施の形態を示し、この実施の形態では先に図3,5に示した先行掘削翼11の構造を図1の(A)に示したものと同様の先行掘削用ケーシングチューブ16に適用したものである。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5に記載の発明のほか、請求項7,8および請求項11,16,19に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0060】
図6の(A)および図7に示すように、直径D1の先行掘削用ケーシングチューブ16の下端に図5に示した直径D1の先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10を接続し、そのケーシングアタッチメント10に直径D2(D2>D1)の先端軌跡を描くことになる複数の先行掘削翼11を装着してある。また、ケーシングアタッチメント10には図5に示したように先行掘削翼11に近接して土砂取り込み口15が開口形成されている。
【0061】
したがって、この第3の実施の形態によれば、図6の(A)に示すように、ケーシングアタッチメント10を先行掘削用ケーシングチューブ16とともに回転押し込み装置2Aにて回転駆動させながら地中に貫入すると、先行掘削用ケーシングチューブ16の直径はD1であっても、ケーシングアタッチメント10に付帯する先行掘削翼11の先端が描く軌跡の直径がD2であるため、結果として直径D2の先行掘削孔H1が掘削されることになる。そして、先行掘削によって発生した土砂は土砂取り込み口15からケーシングアタッチメント10の内部に取り込まれ、先行掘削用ケーシングチューブ16内を昇降するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0062】
この先行掘削に続く図6の(B)の拡径掘削は図1の(B)に示したものと全く同様であり、直径D2の先行掘削孔H1を拡径掘削翼8にて拡径するようにして直径D3の拡径掘削孔、すなわち立て坑H2に仕上げられることになる。
【0063】
この場合、図1に示した第1の実施の形態と同様に、拡径掘削翼8が装着されているケーシング7の直径がD1であるのに対して先行掘削孔H1の直径はD2であり、両者の間には直径D2とD1の差分の隙間Aが確保されているため、拡径掘削翼8による拡径掘削によって生じた土砂はその隙間Aを通ってスムーズに落下して、先行掘削孔H1の底部に集められることになる。また、一部の土砂はケーシング7の土砂取り込み口9から一旦ケーシング7内を通過した上で上記と同様に先行掘削孔H1の底部に集められることになる。
【0064】
したがって、この第3の実施の形態においても、拡径掘削によって発生した土砂が従来のように拡径掘削翼8の根元部付近に滞留したり、あるいはその滞留により再度締め固め状態となって拡径掘削翼8全体に付着することもなくなり、先行掘削孔H1の底部側への掘削土砂の取り込み効率がきわめて良好なものとなる。そして、先行掘削孔H1の底部に集められた土砂は先に述べたようにケーシング7内を昇降動作するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0065】
図8〜15は図3,6に示した上記拡径掘削翼8の要部の詳細を示しており、図8,9に示すように、複数のケーシングアタッチメントを接続してなるケーシング7の先端部には、上段から順にケーシング7と同径の拡径掘削翼用ケーシングタッチメント17および先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10を図示外のボルト・ナット等にて順次着脱可能に直列にて連結してあり、これらの各ケーシングアタッチメント10,17もまたケーシング7の一部を形成している。そして、拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17には後述するように固定翼8aと可動翼8bとからなるそれ自体で拡縮径可能な複数の拡径掘削翼8を装着してある。なお、先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10は、図5に示したように複数の先行掘削翼11を有しているものである。
【0066】
上記拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17には、図10に示すように、円筒外周面の三等分位置に後述する拡径掘削翼8の着座面19aを有する偏平ボックス状のブラケット19を固定してある。このブラケット19は着座面19aが拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の接線方向と平行となるように設定してあり、その着座面19aには多数の取付穴20を規則性をもって形成してある。
【0067】
一方、図11,12に示すように、拡径掘削翼8は平板状の固定翼8aとこれよりも小さな平板状の可動翼8bとをスライド可能に重ね合わせることで形成してあり、その固定翼8aには先に述べた拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17側のブラケット19と同様に多数の取付穴22を規則性をもって形成してある。そして、同図から明らかなように、固定翼8aをブラケット19の着座面19aに着座させつつブラケット19側と固定翼8a側のそれぞれ複数の取付穴20,22同士を合致させた上で、ボルト・ナット29により拡径掘削翼8をブラケット19に対して着脱可能に固定してある。つまり、拡径掘削翼8は、平面視にてケーシング7の接線方向もしくはそれと平行な方向に大きく張り出すようにブラケット19に着脱可能に固定してある。
【0068】
ここで、上記のようにブラケット19および固定翼8aに形成してある多数の取付穴20,22はその全てが同時使用されるものではなく、拡径掘削翼8の長手方向において取付穴20,22同士の合致位置を変えることにより、図11,12に示すように拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の中心から可動翼8bの先端までの距離a、すなわち拡径掘削翼8の回転半径を適宜段階的に調整可能となっている。
【0069】
拡径掘削翼8は、図11,12のほか図13,14に示すように、その回転方向を時計回り方向とした場合に、固定翼8aの回転方向側の面に可動翼8bを重ね合わせるように配置してあり、可動翼8bは固定翼8aに沿って動くように該固定翼8aに設けた翼ガイド23にスライド可能に案内支持させてある。また、回転方向に向かって固定翼8aの背面側すなわち固定翼8aの反回転方向側の面にはブラケット24を介して直動型のアクチュエータとして拡縮径用シリンダ(油圧シリンダ)25を装着してある。この拡縮径用シリンダ25のピストンロッド26は同じく固定翼8aの反回転方向側に位置するスライダ27の一端に連結してあるととともに、さらにスライダ27の他端は固定翼8aをはさんで反対側の可動翼8bに連結してあり、結果として拡縮径用シリンダ25は固定翼8aと可動翼8bにまたがるように架橋的に配置してある。したがって、拡縮径用シリンダ25を伸縮作動させることによりその拡縮径用シリンダ25のストローク分だけ可動翼8bが固定翼8aに対してスライドし、結果としてケーシング7の接線方向もしくはそれと平行な方向で拡径掘削翼8が拡縮径可能な構造となっている。
【0070】
なお、拡径掘削翼8を形成している固定翼8aおよび可動翼8bの下端には、複数の掘削刃(ビット)4を装着してある。
【0071】
ここで、拡縮径用シリンダ25を固定翼8aの反回転方向側の面に装着してあるのは、掘削時に拡径掘削翼8が向かっていくことになる土砂や岩盤等から拡縮径用シリンダ25を保護するためである。また、図12と図15を比較すると明らかなように、可動翼8bの拡径スライド方向に対して拡縮径用シリンダ25の伸長方向を逆向きとなるように設定し、もって拡縮径用シリンダ25の収縮状態において拡径掘削翼8が拡径状態となり、逆に拡縮径用シリンダ25の伸長状態において拡径掘削翼8が縮径状態となるように設定してある。
【0072】
また、図11,13に示すように、拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17のうち隣り合うブラケット19,19同士の間には、それぞれに略矩形状の土砂取り込み口9を開口形成してある。これよって、拡径掘削翼8が拡径状態にあるか縮径状態にあるかにかかわらずその拡径掘削翼8にて掘削した土砂の一部を土砂取り込み口9を通してケーシング7(拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17)の内部に取り込むことが可能となっている。
【0073】
なお、拡径掘削翼8が拡径状態にあるか縮径状態にあるかにかかわらず、拡縮径用シリンダシリンダ25の油圧供給経路をいわゆる油圧的にロックすることで、その拡径または縮径状態が自己保持されることになる。
【0074】
図16〜20は本発明の第4の実施の形態を示し、この第4の実施の形態では、ケーソン30の圧入沈設に際して図3と同様の回転押し込み装置2Aおよび先行掘削翼11を有する拡径掘削機5をもってケーソン30のいわゆる刃先(刃口)下を掘削する場合の例を示している。なお、この実施の形態は、請求項1〜4に記載の発明のほか、請求項11,13および請求項14,18に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0075】
上記ケーソン30の圧入沈設は、周知のように先行圧入した既設ケーソン30の内部の土砂を掘削しながらその圧入と掘削とを繰り返す一方、既設ケーソン30の上にはいわゆる輪切り状のセグメント(リフトと呼ばれる)30aを継ぎ足しながら圧入沈設を行うことになる。
【0076】
ここでは、例えば硬質地盤内に内径5.0m、外径6.0mの立て坑を地下40m程度まで構築する場合を想定し、地面から地下30m程度までは普通土であるのに対して、地下30m付近以深では例えば5000〜7000kN/m2程度の強度を有する泥岩等の硬質地盤で地盤構成されているものとする。
【0077】
また、拡径掘削機5におけるケーシング7の直径は2m、拡径掘削翼8を最も縮径させたときの固定翼8aによる掘削径を4.5m、拡径掘削翼8を最も拡径させたときの掘削径を6m、先行掘削翼11による掘削径を3mとする。
【0078】
図17以下の図面は図16に示した拡径掘削機5による施工手順を示しており、ケーソン30の刃先が硬質地盤に到達する深度(上記の例では地下30m付近)までは、図17の(A)〜(B)に示すようにケーソン30の組立構築と油圧ジャッキ等の圧入沈設装置31による圧入沈設、およびクラムシェル等のバケット系掘削手段32による掘削とを繰り返しながら行う。
【0079】
上記硬質地盤に届くまでケーソン30を圧入沈設したならば、図17の(C)に示すようにケーソン30の自沈防止のために仮受け台33を設置する。さらに、同図(D)に示すように、ケーソン30の上部に先に述べた回転押し込み装置2のほか先行掘削翼11を備えた拡径掘削機5をセットする。この時、固定翼8aと可動翼8bとからなる拡径掘削翼8は縮径状態とし、当該拡径掘削翼8の縮径状態での掘削径は4.5mにセットされているものとする。
【0080】
そして、図18の(A),(B)に示すように、一次掘削として先行掘削翼11による先行掘削と拡径掘削翼8の縮径状態での掘削とを同時並行的に行い、拡径掘削翼8がケーソン30の刃先下相当部に達するようになったならば同図(C)に示すように拡径掘削翼8を拡径させて(拡径掘削翼8の拡径状態の掘削径は6mにセットされているものとする)、以深部分の掘削、すなわち同図(D)に示すように深度40m程度まで一気に掘削を行って拡径掘削孔H3とする。この時、先行掘削翼11にて直径3mの先行掘削翼H1が掘削された後に、拡径掘削翼8にて先行掘削孔H1を直径4.5mあるいは6mまで拡径するようにして掘削が行われるほか、先行掘削孔H1の先端部では先行掘削翼11が装着されているケーシングアタッチメント10と先行掘削翼11との径差のために常に段付き状のものとなる。また、拡径掘削翼8が縮径状態から完全なる拡径状態になるまでの過渡状態では、拡径掘削翼8による掘削径が漸次拡大変化することになる。
【0081】
加えて、図18の(D)に示した状態に至るまでの一次掘削の過程では、並行してケーシング7内をハンマーグラブ6が昇降動作して、先行掘削孔H1の底部の溜まった土砂、すなわちケーシングアタッチメント10内に溜まった土砂が排土される。この場合、図16に示すように、拡径掘削翼8にて掘削された土砂はその一部がケーシング7に開口形成された土砂取り込み口9からケーシング7内取り込まれるほか、多くの土砂は先行掘削孔H1とケーシング7との隙間を通して先行掘削翼11の高さ位置まで自重落下してその先行掘削孔H1の底部付近に集められ、先行掘削翼11にて掘削された土砂とともにケーシングアタッチメント10に開口形成された土砂取り込み口15からそのケーシングアタッチメント10内に取り込まれることになる。
【0082】
図18の(D)に示すように所定深度までの掘削および排土を終えたならば、19図の(A)に示すように回転押し込み装置2や拡径掘削機5を撤去した上で、ケーソン30の上部から良質土Gを投入して、先に掘削した拡径掘削孔H3のうちケーソン30の刃先下部分まで埋め戻しを行う。
【0083】
こうして埋め戻しが完了したならば、ケーソン仮受け台33とケーソン30との連結を解除し、ケーソン仮受け台33を撤去する。この際、ケーソン30が自沈しないことを確認しながらケーソン仮受け台33とケーソン30との連結を解除するものとし、万が一ケーソン30が自沈するようであれば先の良質土Gによる埋め戻し量を多くする。
【0084】
この後、図19の(B)〜(D)に示すようにケーソン30の構築(セグメントの継ぎ足し)とそのケーソン30の圧入沈設、およびクラムシェル32によるケーソン30内部の掘削を繰り返して、所定深度までケーソン30の圧入沈設を行うものとする。
【0085】
こうしてケーソン30を所定深度まで圧入沈設したならば、図20の(A),(B)に示すように拡径掘削孔H3の底盤部に堆積したスライムを処理した後に底盤コンクリートCを打設する。これにより、ケーソン30をもって所定の立て坑が構築されたことになる。
【0086】
ここで、上記実施の形態では拡径掘削孔H3の直径をケーソン30の外径寸法と同じ6.0mとしているが、その拡径掘削孔H3の直径をケーソン30の内径(5.0m)以上であって且つ6.0m未満に設定して、ケーソン30の刃先下にケーソン30の自重に耐え得る未掘削部を残すようにすれば、図19の(A)に示したような良質土Gによる埋め戻し作業は必ずしも必要でなくなり、廃止することが可能である。
【0087】
すなわち、図21の(A)〜(D)は図18の(A)〜(D)と同じ状態を示しているものの、その拡径掘削孔H3の直径を例えばケーソン30の内径(5.0m)以上であって且つケーソン30の外径の6.0m未満に設定してある点で図18と異なっている。
【0088】
そして、図22の(A)に示すように、所定深度の拡径掘削孔H3が形成されたならば、続いて同図(B),(C)に示すように良質土にて埋め戻しをすることなくケーソン30の圧入沈設を行う一方、ケーソン30の圧入深度が大きくなったならば、同図(C),(D)に示すようにクラムシェル32等にて適宜拡径掘削孔H3の底部に溜まった土砂Mの掘削および排土を行うものとする。
【0089】
図23の(A),(B)は図20の(A),(B)と同じ状態であり、図23の(A),(B)に示すように拡径掘削孔H3の底盤部に堆積したスライムを処理した後に底盤コンクリートCを打設する。これにより、ケーソン30をもって所定の立て坑が構築されたことになる。
【0090】
ここで、図21〜23では、硬質地盤に所定深度の拡径掘削孔H3を形成した以降はもっぱらケーソン30の圧入を行う場合の例を示しているが、上記硬質地盤においても後述する図25〜27のほか図35〜37および図38〜40と同様に、拡径掘削孔H3の掘削を所定量ずつ進めながらその都度ケーソン30の圧入を行い、これらの拡径掘削孔H3の掘削とケーソン30の圧入とを交互に繰り返しながら行う工法とすることももちろん可能である。
【0091】
図24は本発明の第5の実施の形態を示し、先に第2の実施の形態として図3示した部分と共通する部分には同一符号を付してある。なお、この実施の形態は、請求項1〜4に記載の発明のほか,請求項11,12および請求項14,18に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0092】
この第5の実施の形態では、図24に示すように、拡径掘削翼8が装着されるケーシング7の一部であって、且つ拡径掘削翼8と先行掘削翼11との間に相当する位置には所定の捻れ角を有する単一且つ螺旋状の補助翼40を装着してある。そして、ケーシング7が例えば右ねじの締め込み方向と同様の時計回り方向に回転駆動されると仮定した場合に、補助翼40には左ねじと同等の捻れ角を持たせてあるとともに、その直径は先行掘削孔H1の直径D2よりも小さく設定されている。この補助翼40は、共通のケーシング7に装着されている先行掘削翼11および拡径掘削翼8が共に時計回り方向の回転をもって掘削回転した際に同方向に回転して、少なくとも先行掘削翼11による先行掘削で発生した土砂をその補助翼40よりも下側に押し込める機能を有する。
【0093】
この第5の実施の形態によれば、先行掘削翼11による先行掘削と拡径掘削翼8による拡径掘削とが同時並行的に行われる場合に、補助翼40はその上方の土砂が当該補助翼40よりも下側に落下するのを許容する一方で、補助翼40よりも下側にある土砂がその補助翼40によって下方に押し込められることから、この土砂の押し込みは先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10に開口形成された土砂取り込み口15からその内部への積極的な土砂の取り込みを促進することとなり、土砂の取り込み効率が一段と良好なものとなる。
【0094】
図25〜27は本発明の第6の実施の形態を示し、この第6の実施の形態では、ケーソン30の圧入沈設に際して図24と同様の回転押し込み装置2Aおよび先行掘削翼11を有する拡径掘削機5をもってケーソン30の内部のほかそのケーソン30のいわゆる刃先(刃口)下を掘削する場合の例を示している。なお、この実施の形態は、請求項1〜4に記載の発明のほか、請求項11,13および請求項14,18に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0095】
この実施の形態では、ケーソン30を圧入するのに先立つそのケーソン30の内部の掘削のほか、圧入したケーソン30の刃先下の掘削までの全ての掘削、すなわちケーソン30の圧入沈設に必要な全ての掘削を図24に示した回転押し込み装置2Aおよび先行掘削翼11を有する拡径掘削機5をもって行うもので、上記ケーソン30の圧入沈設は、先にも述べたように先行圧入した既設ケーソン30の内部の土砂を掘削しながらその圧入と掘削とを繰り返す一方、既設ケーソン30の上にはいわゆる輪切り状のセグメント30aを継ぎ足しながら圧入沈設を行うことになる。
【0096】
図25の(A)に示すように、ケーソン30や油圧ジャッキ等の圧入沈設装置31のほか、回転押し込み装置2Aおよび拡径掘削機5等を地上にセットしたならば、同図(B)に示すようにケーシング7を回転駆動しながら地中に押し込み、先行掘削翼11と拡径掘削翼8とを併用してケーソン30の内部を掘削する。なお、この段階では拡径掘削翼8は縮径状態にある。
【0097】
拡径掘削翼8がケーソン30の刃先下に到達したならば、同図(C)に示すように拡径掘削翼8を拡径させた上で、同図(D)に示すように先行掘削翼11および拡径掘削翼8による掘削と圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入とを繰り返す。そして、一段目のケーソン30(セグメント30a)が所定深度まで圧入されたならば、図26の(A)に示すようなケーソン30(セグメント30a)の継ぎ足しと、同図(B)に示すような先行掘削翼11および拡径掘削翼8による掘削、同図(C)に示すような圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入、および同図(D)に示すようなケーソン30(セグメント30a)と継ぎ足しのほか、図27の(A)に示すような先行掘削翼11および拡径掘削翼8によるさらなる掘削、同図(B)に示すような圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入をそれぞれ繰り返すことでケーソン30を圧入沈設することが可能となる。
【0098】
ケーソン30を圧入沈設完了後には、拡径掘削翼8を縮径状態とした上で先行掘削翼11を含む拡径掘削機5をケーシング7とともに地上に抜き上げる。これにより、ケーソン30をもって所定深度の立て坑が構築されたことになる。なお、必要に応じ図20と同様に底盤コンクリートCを打設することは言うまでもない。
【0099】
図28〜30は本発明の第7の実施の形態として拡径掘削工程の別の例を示し、先に第3の実施の形態として図6の(B)に示した部分と共通する部分には同一符号を付してある。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5,6に記載の発明のほか,請求項9,11,12および請求項16,19,20に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0100】
この第7の実施の形態においては、図28のほか図29に示すように、拡径掘削翼8とともに拡径掘削手段を形成しているケーシング7の一部、すなわちそのケーシング7の一部である拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17のうち拡径掘削翼8よりも下方位置には誘導手段としてのスタビライザ50を設けてある。
【0101】
このスタビライザ50は、図29,30に示すように拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の外周に、放射状の3本のサポートアーム52を介してリング状のガイドリング51を同心状に配置したものであり、そのガイドリング51の外径は、先行掘削孔H1と同径またはそれよりもわずかに小径となるように設定されている。
【0102】
したがって、この第7の実施の形態によれば、図28に示すように拡径掘削翼8にて拡径掘削を行う際には、その拡径掘削翼8よりも下方に位置しているスタビライザ50のガイドリング51が先行掘削孔H1に内接することになるので、いわゆる拡径掘削翼8の振止め効果が発揮されて、先行掘削孔H1に対する拡径掘削翼8の芯出し(センタリング)がなされるようにその拡径掘削翼8が自律的に誘導されることになる。そのため、先行掘削孔H1とそれを拡径することで形成されることになる拡径掘削孔H2との同芯精度が向上するほか、図6の(B)と比較すると明らかなように拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17のうち拡径掘削翼8よりも下方側への突出長さを小さくできる利点がある。
【0103】
なお、この第7の実施の形態においては、排土手段であるハンマーグラブ6Aが昇降動作する際に拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の下端部と干渉しないように配慮し、図28,29に示すようにハンマーグラブ6Aとして外形状が滑らかなものを採用する一方、拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の下端にテーパ形状または末広がり形状としたスカート部17aを形成しておくことが望ましい。
【0104】
図31〜34は本発明の第8の実施の形態を示し、先に第3の実施の形態として図6に示した部分と共通する部分には同一符号を付してある。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5に記載の発明のほか,請求項9,11,12および請求項16,19に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0105】
この第8の実施の形態においては、図31の(B)に示す拡径掘削工程は先に第3の実施の形態として図6の(B)に示したものと全く同様であって、図31の(A)の先行掘削工程のみが異なっている。
【0106】
図31の(A)および図32に示すように、直径D1の先行掘削用ケーシングチューブ16の下端に、それよりも大径で且つ最大径が先行掘削孔H1の孔径と同等径の直径D2のケーシングアタッチメント60を接続してある。なお、このケーシングアタッチメント60は請求項9に言う「第2の鋼管」に相当していて、その直径D2はD3>D2>D1の関係にある。
【0107】
このケーシングアタッチメント60は、図32のほか図33,34に示すようにいわゆる円筒状の二重筒構造となっていて、内側チューブ61と外側チューブ62とは互いに同心状となるように放射状の3枚のブリッジプレート63にて連結されているとともに、外側チューブ62は内側チューブ61の最下端位置よりも下方位置まで延びている。なお、外側チューブ62の外径が先に述べた先行掘削孔H1の孔径と同等径の直径D2に設定されている。また、内側チューブ61と外側チューブ62との間にはブリッジプレート63とは別に同じく放射状の3枚のブレード64が配設されていて、これらのブレード64は外側チューブ62の下端位置と同じ高さ位置まで延びている。そして、外側チューブ62の下端のほか各ブレード64の下端には複数の掘削刃4を植設してある。
【0108】
したがって、この第8の実施の形態によれば、図31の(A)に示すように、ケーシングアタッチメント60を先行掘削用ケーシングチューブ16とともに回転押し込み装置2Aにて回転駆動させながら地中に貫入すると、先行掘削用ケーシングチューブ16の直径はD1であっても、ケーシングアタッチメント60の最大直径がD2であるため、結果として直径D2の先行掘削孔H1が掘削されることになる。そして、先行掘削によって発生した土砂は、図32に矢印で示すようにケーシングアタッチメント60のうちでも特に内側チューブ61の直下位置に徐々に集められて、先行掘削用ケーシングチューブ16内を昇降するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0109】
この先行掘削に続く図31の(B)の拡径掘削は図6の(B)に示したものと全く同様であり、直径D2の先行掘削孔H1を拡径掘削翼8にて拡径するようにして直径D3の立て坑H2に仕上げられることになる。
【0110】
なお、図31の(B)に示すように、拡径掘削翼8とともに拡径掘削手段として機能するケーシング7には図24と同様の螺旋状の補助翼40が装着されている。
【0111】
そして、この第8の実施の形態においても、拡径掘削翼8が装着されているケーシング7の直径がD1であるのに対して先行掘削孔H1の直径はD2であり、両者の間には直径D2とD1の差分の隙間Aが確保されているため、拡径掘削翼8による拡径掘削によって生じた土砂はその隙間Aを通ってスムーズに落下して、先行掘削孔H1の底部に集められることになる。また、一部の土砂はケーシング7の土砂取り込み口9から一旦ケーシング7内を通過した上で上記と同様に先行掘削孔H1の底部に集められることになる。
【0112】
すなわち、この第8の実施の形態においても、拡径掘削によって発生した土砂が従来のように拡径掘削翼8の根元部付近に滞留したり、あるいはその滞留により再度締め固め状態となって拡径掘削翼8全体に付着することもなくなり、先行掘削孔H1の底部側への掘削土砂の取り込み効率がきわめて良好なものとなる。そして、先行掘削孔H1の底部に集められた土砂は先に述べたようにケーシング7内を昇降動作するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0113】
図35〜37は本発明の第9の実施の形態を示す図で、先に第7の実施の形態として図28に示した拡径掘削工程と、同じく先に第8の実施の形態として図31の(A)に示した先行掘削工程とを併用した場合の拡径掘削方法の例を示している。
【0114】
すなわち、この第9の実施の形態では、ケーソン30の圧入沈設に際して、図31の(A)の先行掘削と図28の拡径掘削とを併用することで、ケーソン30の内部のほかそのケーソン30のいわゆる刃先(刃口)下を掘削する場合の例を示している。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5,6に記載の発明のほか、請求項9,11,13および請求項16,19,20に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0115】
この実施の形態では、図35に示すように、ケーソン30を圧入するのに先立つそのケーソン30の内部の掘削のほか、圧入したケーソン30の刃先下の掘削までの全ての掘削、すなわちケーソン30の圧入沈設に必要な全ての掘削を図31の(A)の先行掘削と図28の拡径掘削とを併用して行うもので、上記ケーソン30の圧入沈設は、先にも述べたように先行圧入した既設ケーソン30の内部の土砂を掘削しながらその圧入と掘削とを繰り返す一方、既設ケーソン30の上にはいわゆる輪切り状のセグメント30aを継ぎ足しながら圧入沈設を行うことになる(図36参照)。
【0116】
図35の(A)および(B)は先行掘削工程であり、同図(A)に示すように、ケーソン30や油圧ジャッキ等の圧入沈設装置31のほか、回転押し込み装置2Aおよび先行掘削用ケーシングチューブ16等を地上にセットしたならば、同図(B)に示すように先行掘削用ケーシングチューブ16を回転駆動しながら地中に押し込み、所定深度まで先行掘削孔H1を掘削する。
【0117】
先行掘削孔H1の掘削を終えたならば、同図(C)に示すように先行掘削用ケーシングチューブ16に代えて拡径掘削機5を有するケーシング7をセットする。そして、同図(D)に示すようにケーシング7を回転駆動しながら地中に押し込み、先の先行掘削孔H1を拡径しながらケーソン30の内部を掘削し、これと並行してケーソン30を圧入する。なお、この段階では拡径掘削翼8は縮径状態にある。
【0118】
一段目のケーソン30がある程度地中に圧入されたならば、図36の(A)に示すように以降は拡径掘削翼8を拡径状態とした上で、同図(B)に示すようなケーソン30(セグメント30a)の継ぎ足しと、同図(C)に示すような拡径掘削翼8による掘削および圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入のほか、同図(D)に示すようなケーソン30(セグメント30a)のさらなる継ぎ足し、ならびに図37の(A)に示すような拡径掘削翼8による掘削および圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入をそれぞれ繰り返すことで、同図(B)に示すように所定深度までケーソン30を圧入沈設することが可能となる。
【0119】
ケーソン30の圧入沈設完了後には、拡径掘削翼8を縮径状態とした上で拡径掘削機5をケーシング7とともに地上に抜き上げる。これにより、ケーソン30をもって所定深度の立て坑が構築されたことになる。
【0120】
図38〜40は本発明の第10の実施の形態を示す図で、先に第9の実施の形態として図35〜37に示したものと共通する部分には同一符号を付してある。
【0121】
この第10の実施の形態では、一段目のケーソン30(セグメント30a)を圧入沈設装置31にて圧入するまでは、そのケーソン30の内部をクラムシェル等のバケット系掘削手段32にて掘削するものとし、それ以降の掘削を図35〜37と同様の手順で行うようにしたものである。
【0122】
すなわち、図38の(A),(B)に示すように、バケット系掘削手段32にて地盤を掘削しながら一段目のケーソン30(セグメント30a)を圧入沈設装置31にて圧入し、同図(C)に示すように二段目のケーソン30(セグメント30a)を継ぎ足した上で、同図(D)に示すように回転押し込み装置2Aや先行掘削用ケーシングチューブ16をセットする。
【0123】
そして、図39の(A)に示すように、先行掘削用ケーシングチューブ16を回転駆動しながら地中に押し込み、先行掘削孔H1を所定深度まで掘削する。
【0124】
この後、図39の(B)に示すように、先行掘削用ケーシングチューブ16に代えて拡径掘削機5を有するケーシング7をセットし、以降は図35〜37と同様にして図39の(C),(D)および図40の(A),(B)の手順で拡径掘削機5よる拡径掘削と圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入とを繰り替えすことでケーソン30を圧入沈設することが可能となる。
【0125】
ケーソン30の圧入沈設完了後には、先の第9の実施の形態と同様に、拡径掘削翼8を縮径状態とした上で拡径掘削機5をケーシング7とともに地上に抜き上げる。これにより、ケーソン30をもって所定深度の立て坑が構築されたことになる。
【0126】
ここで、上記各実施の形態においては、拡径掘削翼8として先に述べたように固定翼8aと可動翼8bとを重合配置し、固定翼8aに対して可動翼8bをスライド変位させることで拡縮径させるタイプのものを採用しているが、本発明は特に拡径掘削翼の形式に拘泥するものではないから、先の実施の形態の拡径掘削翼に代えて、例えば先に述べた特許文献2〜4に記載のようなタイプの拡径掘削翼を採用することももちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係る拡径掘削システムの第1の実施の形態を示す図で、(A)は先行掘削の説明図、(B)は同図(A)の先行掘削に続く拡径掘削の説明図。
【図2】図1の(B)に示す拡径掘削機の拡大平面説明図。
【図3】本発明に係る拡径掘削システムの第2の実施の形態を示す説明図。
【図4】図3における拡径掘削機の拡大平面説明図。
【図5】図3における先行掘削翼の詳細を示す図で、(A)は先行掘削翼用ケーシングアタッチメントの拡大正面図、(B)は同図(A)の平面説明図。
【図6】本発明に係る拡径掘削システムの第3の実施の形態を示す図で、(A)は先行掘削の説明図、(B)は同図(A)の先行掘削に続く拡径掘削の説明図。
【図7】図6の(A)に示す先行掘削翼の拡大平面説明図。
【図8】図3に示す拡径掘削機の要部分解図。
【図9】図8に示した拡径掘削機の平面説明図。
【図10】図8における拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント単体での詳細を示す図で、(A)はその平面説明図、(B)は正面説明図。
【図11】図8における拡径掘削翼の拡大説明図。
【図12】図11の要部平面図。
【図13】図11の左側面図。
【図14】図11に示す拡径掘削翼の背面図。
【図15】図12の拡径掘削翼を縮径状態とした図で、(A)はその平面説明図、(B)は正面説明図。
【図16】本発明に係る拡径掘削システムの第4の実施の形態を示す説明図。
【図17】図16のシステムでの施工手順を示す工程説明図。
【図18】図17に続く施工手順を示す工程説明図。
【図19】図18に続く施工手順を示す工程説明図。
【図20】図19に続く施工手順を示す工程説明図。
【図21】図17〜20に示した施工手順の変形例を示す工程説明図。
【図22】図21に続く施工手順を示す工程説明図。
【図23】図22に続く施工手順を示す工程説明図。
【図24】本発明に係る拡径掘削システムの第5の実施の形態を示す説明図。
【図25】本発明の第6の実施の形態として図24のシステムでのケーソン構築の施工手順を示す工程説明図。
【図26】図25に続く施工手順を示す工程説明図。
【図27】図26に続く施工手順を示す工程説明図。
【図28】本発明に係る拡径掘削システムの第7の実施の形態として拡径掘削工程を示す説明図。
【図29】図28の要部拡大説明図。
【図30】図29の下面図。
【図31】本発明に係る拡径掘削システムの第8の実施の形態を示す説明図。
【図32】図31の(A)の要部拡大図。
【図33】図32のE−E線に沿う断面説明図。
【図34】図32のF−F線に沿う断面説明図。
【図35】本発明の第9の実施の形態としてケーソン構築の別の施工手順を示す工程説明図。
【図36】図35に続く施工手順を示す工程説明図。
【図37】図36に続く施工手順を示す工程説明図。
【図38】本発明の第10の実施の形態としてケーソン構築のさらに別の施工手順を示す工程説明図。
【図39】図38に続く施工手順を示す工程説明図。
【図40】図39に続く施工手順を示す工程説明図。
【符号の説明】
【0128】
1…第3の鋼管としての先行掘削用ケーシングチューブ(先行掘削手段)
2,2A…回転押し込み装置
3…ハンマーグラブ(排土手段)
5…拡径掘削機(拡径掘削手段)
6,6A…ハンマーグラブ(排土手段)
7…円筒状の鋼管としてのケーシング(拡径掘削手段)
8…拡径掘削翼(拡径掘削手段)
9…土砂取り込み口
10…先行掘削用ケーシングアタッチメント(先行掘削手段)
11…先行掘削翼(先行掘削手段)
15…土砂取り込み口
16…先行掘削用ケーシングチューブ(先行掘削手段)
30…ケーソン
40…螺旋状の補助翼
50…誘導手段としてのスタビライザ
51…ガイドリング
60…第2の鋼管としてのケーシングアタッチメント
H1…先行掘削孔
H2…拡径掘削孔(立て坑)
H3…拡径掘削孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤における拡径掘削方法と拡径掘削システムに関し、特にケーソン(PCウエルを含む)の圧入沈設による立て坑の構築に際して、そのケーソンの刃先下を拡底または拡径するような形態で掘削するのに好適な拡径掘削方法と拡径掘削システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
大深度地下の有効利用を目的に国土交通省にて「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が平成13年4月1日より施行されている。
【0003】
上記特別措置法における大深度地下とは少なくとも40メートル以深の地下のことを指しており、そのために大深度地下空間と地上とを連絡させる立て坑の構築ニーズが増大し、より大きい径にて、より深く、且つ安全に構築できる技術を目標に各種の工法が開発されている。これらの立て坑の構築にはケーソン沈設工法により構築されるケースが多い。
【0004】
その一方、硬質地盤(軟岩、中硬岩を指す)を掘削しながらケーソンを圧入・沈設しようとする場合において、ハンマーグラブ等の既存設備による掘削ではケーソンの刃先下の掘削ができず、そのために例えば特許文献1〜4に記載のようにケーソン刃先下の掘削を可能とする各種拡径掘削装置が提案されている。
【0005】
これらの掘削装置は、ケーシングパイプの外周に掘削翼を取り付けた拡径掘削装置となっていて、掘削翼で掘削した土砂をケーシングパイプ内に取り込んだ上でグラブバケット等により排土するようにしている。
【0006】
より具体的には、上記特許文献1〜4に記載に代表されるような従来の技術では、ケーシングを把持してこれを回転させながら地中に押し込む回転押し込み装置と、上記ケーシングに装着された拡径掘削翼とを備えているとともに、その拡径掘削翼には掘削刃が植設されていて、上記回転押し込み装置にてケーシングを回転させながら押し込むことにより硬質地盤の掘削を可能としている。この場合、掘削された土砂はケーシングの周囲に開口形成した土砂取り込み口からケーシング内部に取り込まれるようになっていて、ケーシング内に取り込んだ土砂をハンマーグラブまたはグラブバケット等にて掴んで排土している。
【特許文献1】特許第2674731号公報
【特許文献2】特許第3031876号公報
【特許文献3】特開2005−98048号公報
【特許文献4】特開2004−176530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような各種の従来の技術では、掘削対象地盤が硬質地盤であってその地質が粘性質土系の場合には、掘削された後に土砂と水が掘削翼にてかき混ぜ合わされることにより、粘着性の高い泥土へと変化する(いわゆるヘドロ化現象)。ヘドロ化した土砂は、拡径掘削翼とケーシングの交点付近(ケーシングに対する拡径掘削翼の根元付近)にて滞留したり、あるいはその滞留により再度締め固め状態となって掘削翼全体に付着することになる。その結果、ケーシング内への掘削土砂の取り込み効率が悪くなるともに、掘削翼に付着した土砂重量の増加に伴いケーシングを把持している回転押し込み装置の把持能力が限界に達し、様々な二次的不具合の発生が余儀なくされる。
【0008】
その一方、ケーシングの周囲に開口形成してある土砂取り込み口の拡大化はケーシングそのものの強度の上で自ずと限界があり、そのために掘削土砂のケーシング内への取り込み効率向上のために拡径掘削翼をケーシングとともに間歇的に上下動させることも一部で行われているが、この場合には掘削効率を犠牲にすることで初めて成り立つ手法であり、工期の延長やコストアップを招く要因となって好ましくない。
【0009】
このようなことから、掘削土砂をスムーズにケーシング内に取り込むことにより、掘削工程あるいは工期の短縮を可能とし、コストダウンに繋がるような掘削土砂の効率的な取り込み方法についての開発要請があった。
【0010】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけ先行掘削孔を拡径するようにして所定口径の立て坑に仕上げる拡径掘削工程を含んでなる工法を前提として、少なくとも拡径掘削によって発生した土砂を先行掘削孔の底部あるいはケーシング内に取り込み易くした拡径掘削方法と拡径掘削システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、地盤に先行掘削された孔を拡径するように掘削して立て坑とする拡径掘削工程を含んでいて、この拡径掘削工程では、先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段にて上記先行掘削孔を拡径するように掘削するとともに、拡径掘削によって発生した土砂を先行掘削孔と鋼管との隙間を通して先行掘削孔の底部に溜めた上で鋼管内より排土することを特徴とする。
【0012】
より具体的には、請求項2に記載のように、先行掘削手段にて地盤に先行掘削孔を掘削する先行掘削工程を含んでいて、この先行掘削工程では、上記鋼管の直径よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔を掘削するものとする。
【0013】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、拡径掘削の際に先行掘削孔と鋼管との間に常に所定の隙間が確保されることから、拡径掘削によって発生した土砂は、従来のように拡径掘削翼の根元部に滞留することなく、上記隙間を通って落下して先行掘削孔の底部に溜まることになる。そして、先行掘削孔の底部に溜まった土砂は鋼管内を昇降するハンマーグラブ等の排土手段にて掴み取ることが可能であることから、この排土手段にて鋼管外に排土されることになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の方法を前提として、先行掘削と拡径掘削とを同時並行的に行うことを明確化したものであり、拡径掘削手段と先行掘削手段とを兼用化させて、先行掘削手段による先行掘削と拡径掘削手段による拡径掘削とを並行して行うことを特徴とする。
【0015】
より具体的には、請求項4に記載のように、上記先行掘削は、鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けた先行掘削手段にて行うものとする。
【0016】
したがって、請求項3,4に記載の発明では、先行掘削が拡径掘削に先行するように両者が同時並行的に行われることから、先行掘削手段の一部としても機能することになる鋼管の先端部が同時に先行掘削孔の底部となる。そのため、拡径掘削によって発生した土砂は先行掘削によって発生した土砂とともに先行掘削孔の底部すなわち鋼管内に集められた上で、排土手段にて外部に排土されることになる。
【0017】
逆に請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の方法を前提として、先行掘削手段による先行掘削と拡径掘削手段による拡径掘削とを相互に独立して行うことを明確化したものであり、先行掘削手段にて先行掘削孔を先行掘削した後、その先行掘削手段に代えて拡径掘削手段にて拡径掘削を行うことを特徴とする。
【0018】
この場合において、請求項6に記載のように、上記拡径掘削手段にて拡径掘削を行うにあたり、拡径掘削翼の下方位置に先行掘削孔とほぼ同径またはそれ以下の外径を有する誘導手段を設けておき、この誘導手段を先行掘削孔に内接させることにより、先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるように誘導することが望ましい。
【0019】
したがって、少なくとも請求項5に記載の発明では、拡径掘削を行う際には既に拡径掘削手段の鋼管と先行掘削孔との間に所定の隙間が確保されているため、拡径掘削によって発生した土砂は、従来のように拡径掘削翼の根元部に滞留することなく、上記隙間を通って落下して先行掘削孔の底部に溜まることになる。そして、先行掘削孔の底部に溜まった土砂は鋼管内を昇降するハンマーグラブ等の排土手段にて掴み取ることが可能であることから、この排土手段にて鋼管外に排土されることになる。
【0020】
ここで、上記先行掘削は、請求項7に記載のように、拡径掘削手段側の鋼管とほぼ同径の先行掘削用ケーシングチューブの外周に先行掘削翼を設けてなる先行掘削手段にて行うものとする。
【0021】
また、上記先行掘削の際には、請求項8に記載のように、先行掘削用ケーシングチューブのうち先行掘削翼よりも掘削方向前方側に開口形成した土砂取り込み口から先行掘削用ケーシングチューブ内に掘削土砂を取り込むものとする。
【0022】
上記先行掘削は、請求項7に記載のものに代えて、請求項9に記載のように、拡径掘削手段側の鋼管とほぼ同径の先行掘削用ケーシングチューブに先行掘削孔径とほぼ同径の円筒状の第2の鋼管を装着してあり、且つその第2の鋼管の先端に掘削刃を装着してなる先行掘削手段にて行うこともできるほか、請求項10に記載のように、拡径掘削手段側の鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の円筒状の第3の鋼管の先端に掘削刃を装着してなる先行掘削手段にて行うこともできる。
【0023】
上記のようないくつかの工法においては、請求項11に記載のように、拡径掘削翼として拡縮径可能なものを用いることが望ましい。
【0024】
また、請求項12に記載のように、拡径掘削手段を形成している鋼管のうち拡径掘削翼の下方位置に螺旋状の補助翼を設けておき、上記拡径掘削翼で掘削した土砂を、その拡径掘削翼の掘削回転に伴い補助翼にて先行掘削孔内に押し込むことが掘削土砂の効率的集約化の上で望ましい。その結果、拡径掘削によって発生して土砂を積極的に先行掘削孔の底部側ひいては鋼管内に取り込むことが可能となる。
【0025】
もちろん、上記の各工法は、請求項13に記載のように、ケーソンの内部またはケーソンの刃先下の掘削に用いることが可能である。
【0026】
ここで、予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、その立て坑の深さの全長にわたって請求項3または4に記載の方法にて掘削を行うことができるほか、その立て坑の深さの途中まで掘削が進行したならば、その途中段階から以深の掘削を請求項3または4に記載の方法にて行うこともでき、請求項14,15に記載の発明はこれらのことを明確化している。
【0027】
同様に、予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、その立て坑の深さの全長にわたって請求項5に記載の方法にて掘削を行うことができるほか、その立て坑の深さの途中まで掘削が進行したならば、その途中段階から以深の掘削を請求項5に記載の方法にて行うこともでき、請求項16,17に記載の発明はこれらのことを明確化している。
【0028】
請求項18に記載の発明は、請求項3または4に記載の技術を拡径掘削システムとして捉えたものであって、先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、上記鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けられ、当該鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼や先行掘削手段とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段とを備えたことを特徴とする。
【0029】
請求項19に記載の発明は、請求項5または6に記載の技術を拡径掘削システムとして捉えたものであって、先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、上記鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段とを備えたことを特徴とする。
【0030】
さらに、請求項20に記載の発明は、請求項6に記載の技術を拡径掘削システムとして捉えたものであって、先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、上記鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、上記鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けられるとともに先行掘削孔とほぼ同径またはそれ以下の外径を有し、拡径掘削時に先行掘削孔に内接することにより先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるように誘導する誘導手段と、上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
請求項1,2に記載の発明によれば、少なくとも拡径掘削手段にて拡径掘削を行う際には、拡径掘削手段の鋼管と先行掘削孔との間に常に所定の隙間が確保されることになるため、拡径掘削によって発生した土砂が従来のように拡径掘削翼の根元部等に滞留してしまうことがなく、確実に先行掘削孔の底部ひいては鋼管内に取り込まれることになって、土砂の取り込み効率が大幅に向上する。
【0032】
特に請求項3,4に記載の発明によれば、先行掘削と拡径掘削とが同時並行的に行われるため、請求項1に記載の発明と同様の効果に加えて作業性が向上し、掘削工程もしくは工期の大幅な短縮が可能となる。
【0033】
請求項5に記載の発明によれば、先行掘削と拡径掘削とが相互に独立して行われて、拡径掘削の際には拡径掘削手段の鋼管と先行掘削孔との間に常に所定の隙間が確保されているため、拡径掘削で発生した土砂は上記隙間を通して確実に先行掘削孔の底部に溜まり、その後に鋼管内を昇降する排土手段にて排土されることになるので、請求項1に記載の発明と同様に土砂の取り込み効率が大幅に向上する。
【0034】
請求項6に記載の発明によれば、誘導手段があることよって、先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるようにその拡径掘削手段が誘導されるため、先行掘削孔と拡径掘削孔との同心精度が向上するとともに、拡径掘削の際により効率的な掘削を行える。
【0035】
請求項8に記載の発明によれば、先行掘削用ケーシングチューブに開口形成した土砂取り込み口からその先行掘削用ケーシングチューブ内に積極的に掘削土砂を取り込むことができるので、土砂取り込み効率が一段と向上する。
【0036】
請求項12に記載の発明によれば、螺旋状の補助翼のはたらきにより、拡径掘削で発生した土砂の先行掘削孔側への押し込み効果が期待できるため、その先行掘削孔側への土砂の取り込み効率が飛躍的に向上する。
【0037】
請求項13に記載の発明によれば、上記各工法にてケーソンの内部またはケーソンの刃先下の掘削を行うものであるため、土砂の取り込み効率の向上に伴いケーソンの圧入沈設作業も効率良く行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は本発明に係る拡径掘削方法および拡径掘削システムの第1の実施の形態としてその基本概念を示す説明図である。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5に記載の発明のほか、請求項10,11および請求項16,19に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0039】
この第1の実施の形態では、図1の(B)に示す直径D3の所定深度の立て坑H2を構築するにあたり、同図(A)に示すように直径D2の先行掘削孔H1を先行掘削する先行掘削工程と、同図(B)に示すようにその先行掘削孔H1を直径D3まで拡径しながら同径の立て坑H2に仕上げる拡径掘削工程とに分けて施工を行うものとする。
【0040】
図1の(A)の先行掘削工程では、掘削すべき先行掘削孔H1の直径D2と同等の直径の先行掘削手段としてのパイプ状の先行掘削用ケーシングチューブ1と、この先行掘削用ケーシングチューブ1の駆動装置として機能する回転押し込み装置2と、排土手段であるハンマーグラブ3を併用して施工を行うものであり、先行掘削用ケーシングチューブ1の先端には複数の掘削刃4を植設してある。上記回転押し込み装置2は全旋回式オールケーシング掘削機の駆動部と同等の機能を有するものであり、先行掘削用ケーシングチューブ1をチャッキング(把持)した上でこれを回転駆動させる機能と、その先行掘用ケーシングチューブ1の回転駆動と並行して先行掘削用ケーシングチューブ1に推力を付与して地中に圧入する機能とを有している。なお、上記先行掘削用ケーシングチューブ1は、請求項9等に言うところの「円筒状の第3の鋼管」に相当している。
【0041】
したがって、図1の(A)の先行掘削工程では、先に述べたように回転押し込み装置2のチャック部でチャッキングした先行掘削用ケーシングチューブ1を回転駆動しながら地中に圧入し、それと並行して先行掘削用ケーシングチューブ1内においてハンマーグラブ3を昇降動作させて、掘削中の先行掘削孔H1の底部に相当する先行掘削用ケーシングチューブ1内の土砂、すなわち先行掘削用ケーシングチューブ1の先端部が切り出した土砂をハンマーグラブ3で掘削しつつ掴んでは先行掘削用ケーシングチューブ1外に排土する。
【0042】
なお、掘削深度の増大に伴い、その先行掘削用ケーシングチューブ1を構成しているところの単位要素であるケーシングピース1aを既設の先行掘削用ケーシングチューブ1の上端に順次継ぎ足しながら施工を行うものとする。そして、所定深度に達したならば先行掘削用ケーシングチューブ1を抜き上げることにより、上記先行掘削用ケーシングチューブ1の径D2と同等径の先行掘削孔H1が形成されることになる。
【0043】
この先行掘削に続く図1の(B)の拡径掘削工程では、拡径掘削手段としての拡径掘削機5と、同図(A)に示したものと同様の回転押し込み装置2Aと、排土手段であるハンマーグラブ6を併用して施工を行うものとする。
【0044】
拡径掘削機5は、同図(B)のほか図2に示すように、図1の(A)の先行掘削用ケーシングチューブ1よりも小径のパイプ状のケーシング7の周囲に例えば3組の略ブレード状の拡径掘削翼8を等ピッチで装着したものであり、これらの拡径掘削翼8の先端である最大直径部が描く軌跡の直径は先の構築すべき立て坑H2の直径D3と同じ大きさに設定されている。これにより、上記ケーシング7の直径D1と先行掘削孔H1の直径D2および立て坑H2の直径D3との相互関係は、D1<D2<D3となるように予め設定されている。なお、上記ケーシング7は請求項1等に言うところの「円筒状の鋼管」に相当している。
【0045】
また、ケーシング7のうち拡径掘削翼8の下側根元部と同等高さ位置であってあって且つそれらの拡径掘削翼8と干渉しない位置には、ケーシング7の内外を連通するべく略矩形状の土砂取り込み口9を開口形成してあるとともに、拡径掘削翼8の下面、および拡径掘削翼8よりも下側に残されたケーシング7の一般部の先端には、先行掘削用ケーシングチューブ1と同様に複数の掘削刃4を植設してある。そして、各拡径掘削翼8の下面はテーパ状に形成してあり、したがって拡径掘削翼8の下面がその回転によって描く軌跡は略円錐形状のものとなるように設定してある。
【0046】
なお、上記の各拡径掘削翼8は、図11に示すように固定翼8aとこれに重合するように配置された可動翼8bとで形成されていて、直動型アクチュエータ等により可動翼8bを固定翼8aに沿ってスライド変位させることで拡縮径可能となっているものであるが、この構造の詳細については後述する。
【0047】
したがって、図1の(B)に示した拡径掘削工程では、回転押し込み装置2Aが把持したケーシング7の先端部を先行掘削孔H1の内部に同心状に挿入する一方、そのケーシング7に付帯してる拡径掘削翼8を拡径状態とした上でケーシング7とともに回転駆動しながら地中に圧入して、先行掘削孔H1を拡径するように掘削して所定口径D3の立て坑H2に仕上げることになる。これと並行して、ケーシング7内においてハンマーグラブ6を昇降動作させて、上方から順に拡径されることになる先行掘削孔H1の底部に相当する位置に溜まった土砂をハンマーグラブ6で掘削しつつ掴んではケーシング7外に排土する。
【0048】
この拡径掘削の過程においては、先行掘削孔H1の直径D2とケーシング7の直径D1とがD1<D2の関係にあるため、ケーシング7と先行掘削孔H1の内周面との間にはD1とD2との差に相当する隙間Aが常時確保されていることになる。そのため、拡径掘削翼8によって掘削された土砂はその拡径掘削翼8の回転に伴いケーシング7に近い部分、すなわちケーシング7に対する拡径掘削翼8の根元部近くに集められた上で上記隙間Aを通って先行掘削孔H1の底部に集められることになる。同時に、一部の土砂はケーシング7に開口形成されている土砂取り込み口9からケーシング7内に取り込まれた上で先行掘削孔H1の底部に落下することになる。
【0049】
したがって、拡径掘削によって発生した土砂が従来のように拡径掘削翼8の根元部付近に滞留したり、あるいはその滞留により再度締め固め状態となって拡径掘削翼8全体に付着することもなくなり、先行掘削孔H1の底部側への掘削土砂の取り込み効率がきわめて良好なものとなる。そして、先行掘削孔H1の底部に集められた土砂は先に述べたようにケーシング7内を昇降動作するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0050】
ここで、先行掘削用ケーシングチューブ1の直径すなわち先行掘削孔H1の直径D2とケーシング7の直径D1との差に基づいて両者の間に積極的に隙間Aを確保し、その隙間Aを利用して拡径掘削時に発生した土砂の落下ひいてはその取り込みの効率化を図るものであるから、上記先行掘削孔H1の直径D2はケーシング7の直径D1の少なくとも1.1倍以上とすることが望ましい。
【0051】
図3,4は本発明の第2の実施の形態を示す図で、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。なお、この実施の形態は、請求項1〜4に記載の発明のほか、請求項7,8,および請求項11,14,18に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0052】
この第2の実施の形態では、直径D2の先行掘削孔H1の掘削を目的とした先行掘削と、その先行掘削孔H1を拡径させて所定口径D3の立て坑H2に仕上げる拡径掘削とを実質的に同時並行的に行うようにしたものであり、後述するように拡径掘削手段である拡径掘削機5の一部が実質的に先行掘削手段を兼ねていることになる。
【0053】
図3に示すように、拡径掘削手段の主要素である直径D1のケーシング7の先端にはそのケーシング7の一部を形成することになるほぼ同径の先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10が着脱可能に装着されていて、そのケーシングアタッチメント10の外周には図4に示すように平面視にて略くの字状に屈曲した例えば3枚の先行掘削翼11が装着されている。
【0054】
この先行掘削翼11は、図5に拡大して示すように、平面視にて略くの字状に屈曲したブレード12の下端に複数の掘削刃13を植設するとともに、背面側を補強プレート14にて補強したものであり、同時にケーシングアタッチメント10の円筒胴部には各先行掘削翼11に近接するようにして、すなわち同先行掘削翼11と同等高さ位置であって且つ先行掘削翼11よりも掘削方向前方側に矩形状の土砂取り込み口15を開口形成してある。そして、各先行掘削翼11の先端(最大直径部)が描く軌跡の直径は掘削すべき先行掘削孔H1の直径D2と同等寸法に設定してある。また、ケーシングアタッチメント10の下端には図1に示したものと同様に複数の掘削刃4を植設してあり、したがって、ケーシングアタッチメント10はケーシング7の一部でありながらも先行掘削翼11とともに先行掘削手段を形成している。
【0055】
したがって、この第2の実施の形態によれば、回転押し込み装置2Aで把持したケーシング7を回転駆動させながら地中に圧入することにより、先行掘削翼11による直径D2の先行掘削孔H1の先行掘削と、その先行掘削孔H1を拡径掘削翼8にて拡径するようにして直径D3の立て坑H2に仕上げる拡径掘削とが同時並行的に行われることになる。
【0056】
この場合、同時回転する先行掘削翼11と拡径掘削翼8との上下方向での位置関係は常に不変であり、先行掘削翼11にて掘削されたばかりの先行掘削孔H1のその上方から追いかけるようにして拡径掘削翼8にて拡径掘削することになる。
【0057】
そして、拡径掘削翼8の下方には常に所定深さの先行掘削孔H1が確保されていることから、拡径掘削孔H2の掘削に伴って発生した土砂は、その一部がケーシング7側の土砂取り込み口9からケーシング7内に取り込まれて先行掘削孔H1の最深部(ケーシングアタッチメント10の先端が位置している部分)に集められる一方、拡径掘削によって発生した多くの土砂は直ちに先行掘削孔H1とケーシング7との隙間Aを通してその下方に落下して、先行掘削翼11が位置している先行掘削孔H1の底部に溜まることになる。この先行掘削翼11のレベル位置に溜まった土砂は、先行掘削翼11自体にて掘削された土砂とともにケーシングアタッチメント10の土砂取り込み口15からケーシングアタッチメント10の内部、すなわち上記と同様に先行掘削孔H1の最深部(ケーシングアタッチメント10の先端が位置している部分)に集められることになる。
【0058】
その後、こうしてケーシングアタッチメント10の内部に取り込まれた土砂は、先の実施の形態と同様にケーシング7内を昇降動作するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0059】
図6は本発明の第3の実施の形態を示し、この実施の形態では先に図3,5に示した先行掘削翼11の構造を図1の(A)に示したものと同様の先行掘削用ケーシングチューブ16に適用したものである。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5に記載の発明のほか、請求項7,8および請求項11,16,19に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0060】
図6の(A)および図7に示すように、直径D1の先行掘削用ケーシングチューブ16の下端に図5に示した直径D1の先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10を接続し、そのケーシングアタッチメント10に直径D2(D2>D1)の先端軌跡を描くことになる複数の先行掘削翼11を装着してある。また、ケーシングアタッチメント10には図5に示したように先行掘削翼11に近接して土砂取り込み口15が開口形成されている。
【0061】
したがって、この第3の実施の形態によれば、図6の(A)に示すように、ケーシングアタッチメント10を先行掘削用ケーシングチューブ16とともに回転押し込み装置2Aにて回転駆動させながら地中に貫入すると、先行掘削用ケーシングチューブ16の直径はD1であっても、ケーシングアタッチメント10に付帯する先行掘削翼11の先端が描く軌跡の直径がD2であるため、結果として直径D2の先行掘削孔H1が掘削されることになる。そして、先行掘削によって発生した土砂は土砂取り込み口15からケーシングアタッチメント10の内部に取り込まれ、先行掘削用ケーシングチューブ16内を昇降するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0062】
この先行掘削に続く図6の(B)の拡径掘削は図1の(B)に示したものと全く同様であり、直径D2の先行掘削孔H1を拡径掘削翼8にて拡径するようにして直径D3の拡径掘削孔、すなわち立て坑H2に仕上げられることになる。
【0063】
この場合、図1に示した第1の実施の形態と同様に、拡径掘削翼8が装着されているケーシング7の直径がD1であるのに対して先行掘削孔H1の直径はD2であり、両者の間には直径D2とD1の差分の隙間Aが確保されているため、拡径掘削翼8による拡径掘削によって生じた土砂はその隙間Aを通ってスムーズに落下して、先行掘削孔H1の底部に集められることになる。また、一部の土砂はケーシング7の土砂取り込み口9から一旦ケーシング7内を通過した上で上記と同様に先行掘削孔H1の底部に集められることになる。
【0064】
したがって、この第3の実施の形態においても、拡径掘削によって発生した土砂が従来のように拡径掘削翼8の根元部付近に滞留したり、あるいはその滞留により再度締め固め状態となって拡径掘削翼8全体に付着することもなくなり、先行掘削孔H1の底部側への掘削土砂の取り込み効率がきわめて良好なものとなる。そして、先行掘削孔H1の底部に集められた土砂は先に述べたようにケーシング7内を昇降動作するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0065】
図8〜15は図3,6に示した上記拡径掘削翼8の要部の詳細を示しており、図8,9に示すように、複数のケーシングアタッチメントを接続してなるケーシング7の先端部には、上段から順にケーシング7と同径の拡径掘削翼用ケーシングタッチメント17および先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10を図示外のボルト・ナット等にて順次着脱可能に直列にて連結してあり、これらの各ケーシングアタッチメント10,17もまたケーシング7の一部を形成している。そして、拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17には後述するように固定翼8aと可動翼8bとからなるそれ自体で拡縮径可能な複数の拡径掘削翼8を装着してある。なお、先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10は、図5に示したように複数の先行掘削翼11を有しているものである。
【0066】
上記拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17には、図10に示すように、円筒外周面の三等分位置に後述する拡径掘削翼8の着座面19aを有する偏平ボックス状のブラケット19を固定してある。このブラケット19は着座面19aが拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の接線方向と平行となるように設定してあり、その着座面19aには多数の取付穴20を規則性をもって形成してある。
【0067】
一方、図11,12に示すように、拡径掘削翼8は平板状の固定翼8aとこれよりも小さな平板状の可動翼8bとをスライド可能に重ね合わせることで形成してあり、その固定翼8aには先に述べた拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17側のブラケット19と同様に多数の取付穴22を規則性をもって形成してある。そして、同図から明らかなように、固定翼8aをブラケット19の着座面19aに着座させつつブラケット19側と固定翼8a側のそれぞれ複数の取付穴20,22同士を合致させた上で、ボルト・ナット29により拡径掘削翼8をブラケット19に対して着脱可能に固定してある。つまり、拡径掘削翼8は、平面視にてケーシング7の接線方向もしくはそれと平行な方向に大きく張り出すようにブラケット19に着脱可能に固定してある。
【0068】
ここで、上記のようにブラケット19および固定翼8aに形成してある多数の取付穴20,22はその全てが同時使用されるものではなく、拡径掘削翼8の長手方向において取付穴20,22同士の合致位置を変えることにより、図11,12に示すように拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の中心から可動翼8bの先端までの距離a、すなわち拡径掘削翼8の回転半径を適宜段階的に調整可能となっている。
【0069】
拡径掘削翼8は、図11,12のほか図13,14に示すように、その回転方向を時計回り方向とした場合に、固定翼8aの回転方向側の面に可動翼8bを重ね合わせるように配置してあり、可動翼8bは固定翼8aに沿って動くように該固定翼8aに設けた翼ガイド23にスライド可能に案内支持させてある。また、回転方向に向かって固定翼8aの背面側すなわち固定翼8aの反回転方向側の面にはブラケット24を介して直動型のアクチュエータとして拡縮径用シリンダ(油圧シリンダ)25を装着してある。この拡縮径用シリンダ25のピストンロッド26は同じく固定翼8aの反回転方向側に位置するスライダ27の一端に連結してあるととともに、さらにスライダ27の他端は固定翼8aをはさんで反対側の可動翼8bに連結してあり、結果として拡縮径用シリンダ25は固定翼8aと可動翼8bにまたがるように架橋的に配置してある。したがって、拡縮径用シリンダ25を伸縮作動させることによりその拡縮径用シリンダ25のストローク分だけ可動翼8bが固定翼8aに対してスライドし、結果としてケーシング7の接線方向もしくはそれと平行な方向で拡径掘削翼8が拡縮径可能な構造となっている。
【0070】
なお、拡径掘削翼8を形成している固定翼8aおよび可動翼8bの下端には、複数の掘削刃(ビット)4を装着してある。
【0071】
ここで、拡縮径用シリンダ25を固定翼8aの反回転方向側の面に装着してあるのは、掘削時に拡径掘削翼8が向かっていくことになる土砂や岩盤等から拡縮径用シリンダ25を保護するためである。また、図12と図15を比較すると明らかなように、可動翼8bの拡径スライド方向に対して拡縮径用シリンダ25の伸長方向を逆向きとなるように設定し、もって拡縮径用シリンダ25の収縮状態において拡径掘削翼8が拡径状態となり、逆に拡縮径用シリンダ25の伸長状態において拡径掘削翼8が縮径状態となるように設定してある。
【0072】
また、図11,13に示すように、拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17のうち隣り合うブラケット19,19同士の間には、それぞれに略矩形状の土砂取り込み口9を開口形成してある。これよって、拡径掘削翼8が拡径状態にあるか縮径状態にあるかにかかわらずその拡径掘削翼8にて掘削した土砂の一部を土砂取り込み口9を通してケーシング7(拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17)の内部に取り込むことが可能となっている。
【0073】
なお、拡径掘削翼8が拡径状態にあるか縮径状態にあるかにかかわらず、拡縮径用シリンダシリンダ25の油圧供給経路をいわゆる油圧的にロックすることで、その拡径または縮径状態が自己保持されることになる。
【0074】
図16〜20は本発明の第4の実施の形態を示し、この第4の実施の形態では、ケーソン30の圧入沈設に際して図3と同様の回転押し込み装置2Aおよび先行掘削翼11を有する拡径掘削機5をもってケーソン30のいわゆる刃先(刃口)下を掘削する場合の例を示している。なお、この実施の形態は、請求項1〜4に記載の発明のほか、請求項11,13および請求項14,18に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0075】
上記ケーソン30の圧入沈設は、周知のように先行圧入した既設ケーソン30の内部の土砂を掘削しながらその圧入と掘削とを繰り返す一方、既設ケーソン30の上にはいわゆる輪切り状のセグメント(リフトと呼ばれる)30aを継ぎ足しながら圧入沈設を行うことになる。
【0076】
ここでは、例えば硬質地盤内に内径5.0m、外径6.0mの立て坑を地下40m程度まで構築する場合を想定し、地面から地下30m程度までは普通土であるのに対して、地下30m付近以深では例えば5000〜7000kN/m2程度の強度を有する泥岩等の硬質地盤で地盤構成されているものとする。
【0077】
また、拡径掘削機5におけるケーシング7の直径は2m、拡径掘削翼8を最も縮径させたときの固定翼8aによる掘削径を4.5m、拡径掘削翼8を最も拡径させたときの掘削径を6m、先行掘削翼11による掘削径を3mとする。
【0078】
図17以下の図面は図16に示した拡径掘削機5による施工手順を示しており、ケーソン30の刃先が硬質地盤に到達する深度(上記の例では地下30m付近)までは、図17の(A)〜(B)に示すようにケーソン30の組立構築と油圧ジャッキ等の圧入沈設装置31による圧入沈設、およびクラムシェル等のバケット系掘削手段32による掘削とを繰り返しながら行う。
【0079】
上記硬質地盤に届くまでケーソン30を圧入沈設したならば、図17の(C)に示すようにケーソン30の自沈防止のために仮受け台33を設置する。さらに、同図(D)に示すように、ケーソン30の上部に先に述べた回転押し込み装置2のほか先行掘削翼11を備えた拡径掘削機5をセットする。この時、固定翼8aと可動翼8bとからなる拡径掘削翼8は縮径状態とし、当該拡径掘削翼8の縮径状態での掘削径は4.5mにセットされているものとする。
【0080】
そして、図18の(A),(B)に示すように、一次掘削として先行掘削翼11による先行掘削と拡径掘削翼8の縮径状態での掘削とを同時並行的に行い、拡径掘削翼8がケーソン30の刃先下相当部に達するようになったならば同図(C)に示すように拡径掘削翼8を拡径させて(拡径掘削翼8の拡径状態の掘削径は6mにセットされているものとする)、以深部分の掘削、すなわち同図(D)に示すように深度40m程度まで一気に掘削を行って拡径掘削孔H3とする。この時、先行掘削翼11にて直径3mの先行掘削翼H1が掘削された後に、拡径掘削翼8にて先行掘削孔H1を直径4.5mあるいは6mまで拡径するようにして掘削が行われるほか、先行掘削孔H1の先端部では先行掘削翼11が装着されているケーシングアタッチメント10と先行掘削翼11との径差のために常に段付き状のものとなる。また、拡径掘削翼8が縮径状態から完全なる拡径状態になるまでの過渡状態では、拡径掘削翼8による掘削径が漸次拡大変化することになる。
【0081】
加えて、図18の(D)に示した状態に至るまでの一次掘削の過程では、並行してケーシング7内をハンマーグラブ6が昇降動作して、先行掘削孔H1の底部の溜まった土砂、すなわちケーシングアタッチメント10内に溜まった土砂が排土される。この場合、図16に示すように、拡径掘削翼8にて掘削された土砂はその一部がケーシング7に開口形成された土砂取り込み口9からケーシング7内取り込まれるほか、多くの土砂は先行掘削孔H1とケーシング7との隙間を通して先行掘削翼11の高さ位置まで自重落下してその先行掘削孔H1の底部付近に集められ、先行掘削翼11にて掘削された土砂とともにケーシングアタッチメント10に開口形成された土砂取り込み口15からそのケーシングアタッチメント10内に取り込まれることになる。
【0082】
図18の(D)に示すように所定深度までの掘削および排土を終えたならば、19図の(A)に示すように回転押し込み装置2や拡径掘削機5を撤去した上で、ケーソン30の上部から良質土Gを投入して、先に掘削した拡径掘削孔H3のうちケーソン30の刃先下部分まで埋め戻しを行う。
【0083】
こうして埋め戻しが完了したならば、ケーソン仮受け台33とケーソン30との連結を解除し、ケーソン仮受け台33を撤去する。この際、ケーソン30が自沈しないことを確認しながらケーソン仮受け台33とケーソン30との連結を解除するものとし、万が一ケーソン30が自沈するようであれば先の良質土Gによる埋め戻し量を多くする。
【0084】
この後、図19の(B)〜(D)に示すようにケーソン30の構築(セグメントの継ぎ足し)とそのケーソン30の圧入沈設、およびクラムシェル32によるケーソン30内部の掘削を繰り返して、所定深度までケーソン30の圧入沈設を行うものとする。
【0085】
こうしてケーソン30を所定深度まで圧入沈設したならば、図20の(A),(B)に示すように拡径掘削孔H3の底盤部に堆積したスライムを処理した後に底盤コンクリートCを打設する。これにより、ケーソン30をもって所定の立て坑が構築されたことになる。
【0086】
ここで、上記実施の形態では拡径掘削孔H3の直径をケーソン30の外径寸法と同じ6.0mとしているが、その拡径掘削孔H3の直径をケーソン30の内径(5.0m)以上であって且つ6.0m未満に設定して、ケーソン30の刃先下にケーソン30の自重に耐え得る未掘削部を残すようにすれば、図19の(A)に示したような良質土Gによる埋め戻し作業は必ずしも必要でなくなり、廃止することが可能である。
【0087】
すなわち、図21の(A)〜(D)は図18の(A)〜(D)と同じ状態を示しているものの、その拡径掘削孔H3の直径を例えばケーソン30の内径(5.0m)以上であって且つケーソン30の外径の6.0m未満に設定してある点で図18と異なっている。
【0088】
そして、図22の(A)に示すように、所定深度の拡径掘削孔H3が形成されたならば、続いて同図(B),(C)に示すように良質土にて埋め戻しをすることなくケーソン30の圧入沈設を行う一方、ケーソン30の圧入深度が大きくなったならば、同図(C),(D)に示すようにクラムシェル32等にて適宜拡径掘削孔H3の底部に溜まった土砂Mの掘削および排土を行うものとする。
【0089】
図23の(A),(B)は図20の(A),(B)と同じ状態であり、図23の(A),(B)に示すように拡径掘削孔H3の底盤部に堆積したスライムを処理した後に底盤コンクリートCを打設する。これにより、ケーソン30をもって所定の立て坑が構築されたことになる。
【0090】
ここで、図21〜23では、硬質地盤に所定深度の拡径掘削孔H3を形成した以降はもっぱらケーソン30の圧入を行う場合の例を示しているが、上記硬質地盤においても後述する図25〜27のほか図35〜37および図38〜40と同様に、拡径掘削孔H3の掘削を所定量ずつ進めながらその都度ケーソン30の圧入を行い、これらの拡径掘削孔H3の掘削とケーソン30の圧入とを交互に繰り返しながら行う工法とすることももちろん可能である。
【0091】
図24は本発明の第5の実施の形態を示し、先に第2の実施の形態として図3示した部分と共通する部分には同一符号を付してある。なお、この実施の形態は、請求項1〜4に記載の発明のほか,請求項11,12および請求項14,18に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0092】
この第5の実施の形態では、図24に示すように、拡径掘削翼8が装着されるケーシング7の一部であって、且つ拡径掘削翼8と先行掘削翼11との間に相当する位置には所定の捻れ角を有する単一且つ螺旋状の補助翼40を装着してある。そして、ケーシング7が例えば右ねじの締め込み方向と同様の時計回り方向に回転駆動されると仮定した場合に、補助翼40には左ねじと同等の捻れ角を持たせてあるとともに、その直径は先行掘削孔H1の直径D2よりも小さく設定されている。この補助翼40は、共通のケーシング7に装着されている先行掘削翼11および拡径掘削翼8が共に時計回り方向の回転をもって掘削回転した際に同方向に回転して、少なくとも先行掘削翼11による先行掘削で発生した土砂をその補助翼40よりも下側に押し込める機能を有する。
【0093】
この第5の実施の形態によれば、先行掘削翼11による先行掘削と拡径掘削翼8による拡径掘削とが同時並行的に行われる場合に、補助翼40はその上方の土砂が当該補助翼40よりも下側に落下するのを許容する一方で、補助翼40よりも下側にある土砂がその補助翼40によって下方に押し込められることから、この土砂の押し込みは先行掘削翼用ケーシングアタッチメント10に開口形成された土砂取り込み口15からその内部への積極的な土砂の取り込みを促進することとなり、土砂の取り込み効率が一段と良好なものとなる。
【0094】
図25〜27は本発明の第6の実施の形態を示し、この第6の実施の形態では、ケーソン30の圧入沈設に際して図24と同様の回転押し込み装置2Aおよび先行掘削翼11を有する拡径掘削機5をもってケーソン30の内部のほかそのケーソン30のいわゆる刃先(刃口)下を掘削する場合の例を示している。なお、この実施の形態は、請求項1〜4に記載の発明のほか、請求項11,13および請求項14,18に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0095】
この実施の形態では、ケーソン30を圧入するのに先立つそのケーソン30の内部の掘削のほか、圧入したケーソン30の刃先下の掘削までの全ての掘削、すなわちケーソン30の圧入沈設に必要な全ての掘削を図24に示した回転押し込み装置2Aおよび先行掘削翼11を有する拡径掘削機5をもって行うもので、上記ケーソン30の圧入沈設は、先にも述べたように先行圧入した既設ケーソン30の内部の土砂を掘削しながらその圧入と掘削とを繰り返す一方、既設ケーソン30の上にはいわゆる輪切り状のセグメント30aを継ぎ足しながら圧入沈設を行うことになる。
【0096】
図25の(A)に示すように、ケーソン30や油圧ジャッキ等の圧入沈設装置31のほか、回転押し込み装置2Aおよび拡径掘削機5等を地上にセットしたならば、同図(B)に示すようにケーシング7を回転駆動しながら地中に押し込み、先行掘削翼11と拡径掘削翼8とを併用してケーソン30の内部を掘削する。なお、この段階では拡径掘削翼8は縮径状態にある。
【0097】
拡径掘削翼8がケーソン30の刃先下に到達したならば、同図(C)に示すように拡径掘削翼8を拡径させた上で、同図(D)に示すように先行掘削翼11および拡径掘削翼8による掘削と圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入とを繰り返す。そして、一段目のケーソン30(セグメント30a)が所定深度まで圧入されたならば、図26の(A)に示すようなケーソン30(セグメント30a)の継ぎ足しと、同図(B)に示すような先行掘削翼11および拡径掘削翼8による掘削、同図(C)に示すような圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入、および同図(D)に示すようなケーソン30(セグメント30a)と継ぎ足しのほか、図27の(A)に示すような先行掘削翼11および拡径掘削翼8によるさらなる掘削、同図(B)に示すような圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入をそれぞれ繰り返すことでケーソン30を圧入沈設することが可能となる。
【0098】
ケーソン30を圧入沈設完了後には、拡径掘削翼8を縮径状態とした上で先行掘削翼11を含む拡径掘削機5をケーシング7とともに地上に抜き上げる。これにより、ケーソン30をもって所定深度の立て坑が構築されたことになる。なお、必要に応じ図20と同様に底盤コンクリートCを打設することは言うまでもない。
【0099】
図28〜30は本発明の第7の実施の形態として拡径掘削工程の別の例を示し、先に第3の実施の形態として図6の(B)に示した部分と共通する部分には同一符号を付してある。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5,6に記載の発明のほか,請求項9,11,12および請求項16,19,20に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0100】
この第7の実施の形態においては、図28のほか図29に示すように、拡径掘削翼8とともに拡径掘削手段を形成しているケーシング7の一部、すなわちそのケーシング7の一部である拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17のうち拡径掘削翼8よりも下方位置には誘導手段としてのスタビライザ50を設けてある。
【0101】
このスタビライザ50は、図29,30に示すように拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の外周に、放射状の3本のサポートアーム52を介してリング状のガイドリング51を同心状に配置したものであり、そのガイドリング51の外径は、先行掘削孔H1と同径またはそれよりもわずかに小径となるように設定されている。
【0102】
したがって、この第7の実施の形態によれば、図28に示すように拡径掘削翼8にて拡径掘削を行う際には、その拡径掘削翼8よりも下方に位置しているスタビライザ50のガイドリング51が先行掘削孔H1に内接することになるので、いわゆる拡径掘削翼8の振止め効果が発揮されて、先行掘削孔H1に対する拡径掘削翼8の芯出し(センタリング)がなされるようにその拡径掘削翼8が自律的に誘導されることになる。そのため、先行掘削孔H1とそれを拡径することで形成されることになる拡径掘削孔H2との同芯精度が向上するほか、図6の(B)と比較すると明らかなように拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17のうち拡径掘削翼8よりも下方側への突出長さを小さくできる利点がある。
【0103】
なお、この第7の実施の形態においては、排土手段であるハンマーグラブ6Aが昇降動作する際に拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の下端部と干渉しないように配慮し、図28,29に示すようにハンマーグラブ6Aとして外形状が滑らかなものを採用する一方、拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント17の下端にテーパ形状または末広がり形状としたスカート部17aを形成しておくことが望ましい。
【0104】
図31〜34は本発明の第8の実施の形態を示し、先に第3の実施の形態として図6に示した部分と共通する部分には同一符号を付してある。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5に記載の発明のほか,請求項9,11,12および請求項16,19に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0105】
この第8の実施の形態においては、図31の(B)に示す拡径掘削工程は先に第3の実施の形態として図6の(B)に示したものと全く同様であって、図31の(A)の先行掘削工程のみが異なっている。
【0106】
図31の(A)および図32に示すように、直径D1の先行掘削用ケーシングチューブ16の下端に、それよりも大径で且つ最大径が先行掘削孔H1の孔径と同等径の直径D2のケーシングアタッチメント60を接続してある。なお、このケーシングアタッチメント60は請求項9に言う「第2の鋼管」に相当していて、その直径D2はD3>D2>D1の関係にある。
【0107】
このケーシングアタッチメント60は、図32のほか図33,34に示すようにいわゆる円筒状の二重筒構造となっていて、内側チューブ61と外側チューブ62とは互いに同心状となるように放射状の3枚のブリッジプレート63にて連結されているとともに、外側チューブ62は内側チューブ61の最下端位置よりも下方位置まで延びている。なお、外側チューブ62の外径が先に述べた先行掘削孔H1の孔径と同等径の直径D2に設定されている。また、内側チューブ61と外側チューブ62との間にはブリッジプレート63とは別に同じく放射状の3枚のブレード64が配設されていて、これらのブレード64は外側チューブ62の下端位置と同じ高さ位置まで延びている。そして、外側チューブ62の下端のほか各ブレード64の下端には複数の掘削刃4を植設してある。
【0108】
したがって、この第8の実施の形態によれば、図31の(A)に示すように、ケーシングアタッチメント60を先行掘削用ケーシングチューブ16とともに回転押し込み装置2Aにて回転駆動させながら地中に貫入すると、先行掘削用ケーシングチューブ16の直径はD1であっても、ケーシングアタッチメント60の最大直径がD2であるため、結果として直径D2の先行掘削孔H1が掘削されることになる。そして、先行掘削によって発生した土砂は、図32に矢印で示すようにケーシングアタッチメント60のうちでも特に内側チューブ61の直下位置に徐々に集められて、先行掘削用ケーシングチューブ16内を昇降するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0109】
この先行掘削に続く図31の(B)の拡径掘削は図6の(B)に示したものと全く同様であり、直径D2の先行掘削孔H1を拡径掘削翼8にて拡径するようにして直径D3の立て坑H2に仕上げられることになる。
【0110】
なお、図31の(B)に示すように、拡径掘削翼8とともに拡径掘削手段として機能するケーシング7には図24と同様の螺旋状の補助翼40が装着されている。
【0111】
そして、この第8の実施の形態においても、拡径掘削翼8が装着されているケーシング7の直径がD1であるのに対して先行掘削孔H1の直径はD2であり、両者の間には直径D2とD1の差分の隙間Aが確保されているため、拡径掘削翼8による拡径掘削によって生じた土砂はその隙間Aを通ってスムーズに落下して、先行掘削孔H1の底部に集められることになる。また、一部の土砂はケーシング7の土砂取り込み口9から一旦ケーシング7内を通過した上で上記と同様に先行掘削孔H1の底部に集められることになる。
【0112】
すなわち、この第8の実施の形態においても、拡径掘削によって発生した土砂が従来のように拡径掘削翼8の根元部付近に滞留したり、あるいはその滞留により再度締め固め状態となって拡径掘削翼8全体に付着することもなくなり、先行掘削孔H1の底部側への掘削土砂の取り込み効率がきわめて良好なものとなる。そして、先行掘削孔H1の底部に集められた土砂は先に述べたようにケーシング7内を昇降動作するハンマーグラブ6にて排土されることになる。
【0113】
図35〜37は本発明の第9の実施の形態を示す図で、先に第7の実施の形態として図28に示した拡径掘削工程と、同じく先に第8の実施の形態として図31の(A)に示した先行掘削工程とを併用した場合の拡径掘削方法の例を示している。
【0114】
すなわち、この第9の実施の形態では、ケーソン30の圧入沈設に際して、図31の(A)の先行掘削と図28の拡径掘削とを併用することで、ケーソン30の内部のほかそのケーソン30のいわゆる刃先(刃口)下を掘削する場合の例を示している。なお、この実施の形態は、請求項1,2,5,6に記載の発明のほか、請求項9,11,13および請求項16,19,20に記載の発明にそれぞれ対応している。
【0115】
この実施の形態では、図35に示すように、ケーソン30を圧入するのに先立つそのケーソン30の内部の掘削のほか、圧入したケーソン30の刃先下の掘削までの全ての掘削、すなわちケーソン30の圧入沈設に必要な全ての掘削を図31の(A)の先行掘削と図28の拡径掘削とを併用して行うもので、上記ケーソン30の圧入沈設は、先にも述べたように先行圧入した既設ケーソン30の内部の土砂を掘削しながらその圧入と掘削とを繰り返す一方、既設ケーソン30の上にはいわゆる輪切り状のセグメント30aを継ぎ足しながら圧入沈設を行うことになる(図36参照)。
【0116】
図35の(A)および(B)は先行掘削工程であり、同図(A)に示すように、ケーソン30や油圧ジャッキ等の圧入沈設装置31のほか、回転押し込み装置2Aおよび先行掘削用ケーシングチューブ16等を地上にセットしたならば、同図(B)に示すように先行掘削用ケーシングチューブ16を回転駆動しながら地中に押し込み、所定深度まで先行掘削孔H1を掘削する。
【0117】
先行掘削孔H1の掘削を終えたならば、同図(C)に示すように先行掘削用ケーシングチューブ16に代えて拡径掘削機5を有するケーシング7をセットする。そして、同図(D)に示すようにケーシング7を回転駆動しながら地中に押し込み、先の先行掘削孔H1を拡径しながらケーソン30の内部を掘削し、これと並行してケーソン30を圧入する。なお、この段階では拡径掘削翼8は縮径状態にある。
【0118】
一段目のケーソン30がある程度地中に圧入されたならば、図36の(A)に示すように以降は拡径掘削翼8を拡径状態とした上で、同図(B)に示すようなケーソン30(セグメント30a)の継ぎ足しと、同図(C)に示すような拡径掘削翼8による掘削および圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入のほか、同図(D)に示すようなケーソン30(セグメント30a)のさらなる継ぎ足し、ならびに図37の(A)に示すような拡径掘削翼8による掘削および圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入をそれぞれ繰り返すことで、同図(B)に示すように所定深度までケーソン30を圧入沈設することが可能となる。
【0119】
ケーソン30の圧入沈設完了後には、拡径掘削翼8を縮径状態とした上で拡径掘削機5をケーシング7とともに地上に抜き上げる。これにより、ケーソン30をもって所定深度の立て坑が構築されたことになる。
【0120】
図38〜40は本発明の第10の実施の形態を示す図で、先に第9の実施の形態として図35〜37に示したものと共通する部分には同一符号を付してある。
【0121】
この第10の実施の形態では、一段目のケーソン30(セグメント30a)を圧入沈設装置31にて圧入するまでは、そのケーソン30の内部をクラムシェル等のバケット系掘削手段32にて掘削するものとし、それ以降の掘削を図35〜37と同様の手順で行うようにしたものである。
【0122】
すなわち、図38の(A),(B)に示すように、バケット系掘削手段32にて地盤を掘削しながら一段目のケーソン30(セグメント30a)を圧入沈設装置31にて圧入し、同図(C)に示すように二段目のケーソン30(セグメント30a)を継ぎ足した上で、同図(D)に示すように回転押し込み装置2Aや先行掘削用ケーシングチューブ16をセットする。
【0123】
そして、図39の(A)に示すように、先行掘削用ケーシングチューブ16を回転駆動しながら地中に押し込み、先行掘削孔H1を所定深度まで掘削する。
【0124】
この後、図39の(B)に示すように、先行掘削用ケーシングチューブ16に代えて拡径掘削機5を有するケーシング7をセットし、以降は図35〜37と同様にして図39の(C),(D)および図40の(A),(B)の手順で拡径掘削機5よる拡径掘削と圧入沈設装置31によるケーソン30の圧入とを繰り替えすことでケーソン30を圧入沈設することが可能となる。
【0125】
ケーソン30の圧入沈設完了後には、先の第9の実施の形態と同様に、拡径掘削翼8を縮径状態とした上で拡径掘削機5をケーシング7とともに地上に抜き上げる。これにより、ケーソン30をもって所定深度の立て坑が構築されたことになる。
【0126】
ここで、上記各実施の形態においては、拡径掘削翼8として先に述べたように固定翼8aと可動翼8bとを重合配置し、固定翼8aに対して可動翼8bをスライド変位させることで拡縮径させるタイプのものを採用しているが、本発明は特に拡径掘削翼の形式に拘泥するものではないから、先の実施の形態の拡径掘削翼に代えて、例えば先に述べた特許文献2〜4に記載のようなタイプの拡径掘削翼を採用することももちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係る拡径掘削システムの第1の実施の形態を示す図で、(A)は先行掘削の説明図、(B)は同図(A)の先行掘削に続く拡径掘削の説明図。
【図2】図1の(B)に示す拡径掘削機の拡大平面説明図。
【図3】本発明に係る拡径掘削システムの第2の実施の形態を示す説明図。
【図4】図3における拡径掘削機の拡大平面説明図。
【図5】図3における先行掘削翼の詳細を示す図で、(A)は先行掘削翼用ケーシングアタッチメントの拡大正面図、(B)は同図(A)の平面説明図。
【図6】本発明に係る拡径掘削システムの第3の実施の形態を示す図で、(A)は先行掘削の説明図、(B)は同図(A)の先行掘削に続く拡径掘削の説明図。
【図7】図6の(A)に示す先行掘削翼の拡大平面説明図。
【図8】図3に示す拡径掘削機の要部分解図。
【図9】図8に示した拡径掘削機の平面説明図。
【図10】図8における拡径掘削翼用ケーシングアタッチメント単体での詳細を示す図で、(A)はその平面説明図、(B)は正面説明図。
【図11】図8における拡径掘削翼の拡大説明図。
【図12】図11の要部平面図。
【図13】図11の左側面図。
【図14】図11に示す拡径掘削翼の背面図。
【図15】図12の拡径掘削翼を縮径状態とした図で、(A)はその平面説明図、(B)は正面説明図。
【図16】本発明に係る拡径掘削システムの第4の実施の形態を示す説明図。
【図17】図16のシステムでの施工手順を示す工程説明図。
【図18】図17に続く施工手順を示す工程説明図。
【図19】図18に続く施工手順を示す工程説明図。
【図20】図19に続く施工手順を示す工程説明図。
【図21】図17〜20に示した施工手順の変形例を示す工程説明図。
【図22】図21に続く施工手順を示す工程説明図。
【図23】図22に続く施工手順を示す工程説明図。
【図24】本発明に係る拡径掘削システムの第5の実施の形態を示す説明図。
【図25】本発明の第6の実施の形態として図24のシステムでのケーソン構築の施工手順を示す工程説明図。
【図26】図25に続く施工手順を示す工程説明図。
【図27】図26に続く施工手順を示す工程説明図。
【図28】本発明に係る拡径掘削システムの第7の実施の形態として拡径掘削工程を示す説明図。
【図29】図28の要部拡大説明図。
【図30】図29の下面図。
【図31】本発明に係る拡径掘削システムの第8の実施の形態を示す説明図。
【図32】図31の(A)の要部拡大図。
【図33】図32のE−E線に沿う断面説明図。
【図34】図32のF−F線に沿う断面説明図。
【図35】本発明の第9の実施の形態としてケーソン構築の別の施工手順を示す工程説明図。
【図36】図35に続く施工手順を示す工程説明図。
【図37】図36に続く施工手順を示す工程説明図。
【図38】本発明の第10の実施の形態としてケーソン構築のさらに別の施工手順を示す工程説明図。
【図39】図38に続く施工手順を示す工程説明図。
【図40】図39に続く施工手順を示す工程説明図。
【符号の説明】
【0128】
1…第3の鋼管としての先行掘削用ケーシングチューブ(先行掘削手段)
2,2A…回転押し込み装置
3…ハンマーグラブ(排土手段)
5…拡径掘削機(拡径掘削手段)
6,6A…ハンマーグラブ(排土手段)
7…円筒状の鋼管としてのケーシング(拡径掘削手段)
8…拡径掘削翼(拡径掘削手段)
9…土砂取り込み口
10…先行掘削用ケーシングアタッチメント(先行掘削手段)
11…先行掘削翼(先行掘削手段)
15…土砂取り込み口
16…先行掘削用ケーシングチューブ(先行掘削手段)
30…ケーソン
40…螺旋状の補助翼
50…誘導手段としてのスタビライザ
51…ガイドリング
60…第2の鋼管としてのケーシングアタッチメント
H1…先行掘削孔
H2…拡径掘削孔(立て坑)
H3…拡径掘削孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に先行掘削された孔を拡径するように掘削して立て坑とする拡径掘削工程を含んでいて、
この拡径掘削工程では、
先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段にて上記先行掘削孔を拡径するように掘削するとともに、拡径掘削によって発生した土砂を先行掘削孔と鋼管との隙間を通して先行掘削孔の底部に溜めた上で鋼管内より排土することを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項2】
先行掘削手段にて地盤に先行掘削孔を掘削する先行掘削工程を含んでいて、
この先行掘削工程では、
上記鋼管の直径よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔を掘削することを特徴とする請求項1に記載の拡径掘削方法。
【請求項3】
上記拡径掘削手段と先行掘削手段とを兼用化させて、先行掘削手段による先行掘削と拡径掘削手段による拡径掘削とを並行して行うことを特徴とする請求項2に記載の拡径掘削方法。
【請求項4】
上記先行掘削は、
鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けた先行掘削手段にて行うものであることを特徴とする請求項3に記載の拡径掘削方法。
【請求項5】
先行掘削手段にて先行掘削孔を先行掘削した後、その先行掘削手段に代えて拡径掘削手段にて拡径掘削を行うことを特徴とする請求項2に記載の拡径掘削方法。
【請求項6】
上記拡径掘削手段にて拡径掘削を行うにあたり、
拡径掘削翼の下方位置に先行掘削孔とほぼ同径またはそれ以下の外径を有する誘導手段を設けておき、
この誘導手段を先行掘削孔に内接させることにより、先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるように誘導することを特徴とする請求項5に記載の拡径掘削方法。
【請求項7】
上記先行掘削は、
拡径掘削手段側の鋼管とほぼ同径の先行掘削用ケーシングチューブの外周に先行掘削翼を設けてなる先行掘削手段にて行うものであることを特徴とする請求項1,2および請求項5,6のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項8】
上記先行掘削の際に、先行掘削用ケーシングチューブのうち先行掘削翼よりも掘削方向前方側に開口形成した土砂取り込み口から先行掘削用ケーシングチューブ内に掘削土砂を取り込むことを特徴とする請求項7に記載の拡径掘削方法。
【請求項9】
上記先行掘削は、
拡径掘削手段側の鋼管とほぼ同径の先行掘削用ケーシングチューブに先行掘削孔径とほぼ同径の円筒状の第2の鋼管を装着してあり、且つその第2の鋼管の先端に掘削刃を装着してなる先行掘削手段にて行うものであることを特徴とする請求項1,2および請求項5,6のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項10】
上記先行掘削は、
拡径掘削手段側の鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の円筒状の第3の鋼管の先端に掘削刃を装着してなる先行掘削手段にて行うものであることを特徴とする請求項1,2および請求項5,6のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項11】
上記拡径掘削翼として拡縮径可能なものを用いることを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項12】
拡径掘削手段を形成している鋼管のうち拡径掘削翼の下方位置に螺旋状の補助翼を設けておき、
上記拡径掘削翼で掘削した土砂を、その拡径掘削翼の掘削回転に伴い補助翼にて先行掘削孔内に押し込むことを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項13】
ケーソンの内部またはケーソンの刃先下の掘削を行うものであることを特徴とする請求項1〜12のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項14】
予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、
その立て坑の深さの全長にわたって請求項3または4に記載の方法にて掘削を行うことを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項15】
予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、
その立て坑の深さの途中まで掘削が進行したならば、その途中段階から以深の掘削を請求項3または4に記載の方法にて行うことを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項16】
予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、
その立て坑の深さの全長にわたって請求項5に記載の方法にて掘削を行うことを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項17】
予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、
その立て坑の深さの途中まで掘削が進行したならば、その途中段階から以深の掘削を請求項5に記載の方法にて行うことを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項18】
請求項3または4に記載の拡径掘削方法に用いる拡径掘削システムであって、
先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、
上記鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けられ、当該鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、
上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼や先行掘削手段とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、
上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段と、
を備えたことを特徴とする拡径掘削システム。
【請求項19】
請求項5または6に記載の拡径掘削方法に用いる拡径掘削システムであって、
先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、
上記鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、
上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、
上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段と、
を備えたことを特徴とする拡径掘削システム。
【請求項20】
請求項6に記載の拡径掘削方法に用いる拡径掘削システムであって、
先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、
上記鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、
上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、
上記鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けられるとともに先行掘削孔とほぼ同径またはそれ以下の外径を有し、拡径掘削時に先行掘削孔に内接することにより先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるように誘導する誘導手段と、
上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段と、
を備えたことを特徴とする拡径掘削システム。
【請求項1】
地盤に先行掘削された孔を拡径するように掘削して立て坑とする拡径掘削工程を含んでいて、
この拡径掘削工程では、
先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段にて上記先行掘削孔を拡径するように掘削するとともに、拡径掘削によって発生した土砂を先行掘削孔と鋼管との隙間を通して先行掘削孔の底部に溜めた上で鋼管内より排土することを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項2】
先行掘削手段にて地盤に先行掘削孔を掘削する先行掘削工程を含んでいて、
この先行掘削工程では、
上記鋼管の直径よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔を掘削することを特徴とする請求項1に記載の拡径掘削方法。
【請求項3】
上記拡径掘削手段と先行掘削手段とを兼用化させて、先行掘削手段による先行掘削と拡径掘削手段による拡径掘削とを並行して行うことを特徴とする請求項2に記載の拡径掘削方法。
【請求項4】
上記先行掘削は、
鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けた先行掘削手段にて行うものであることを特徴とする請求項3に記載の拡径掘削方法。
【請求項5】
先行掘削手段にて先行掘削孔を先行掘削した後、その先行掘削手段に代えて拡径掘削手段にて拡径掘削を行うことを特徴とする請求項2に記載の拡径掘削方法。
【請求項6】
上記拡径掘削手段にて拡径掘削を行うにあたり、
拡径掘削翼の下方位置に先行掘削孔とほぼ同径またはそれ以下の外径を有する誘導手段を設けておき、
この誘導手段を先行掘削孔に内接させることにより、先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるように誘導することを特徴とする請求項5に記載の拡径掘削方法。
【請求項7】
上記先行掘削は、
拡径掘削手段側の鋼管とほぼ同径の先行掘削用ケーシングチューブの外周に先行掘削翼を設けてなる先行掘削手段にて行うものであることを特徴とする請求項1,2および請求項5,6のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項8】
上記先行掘削の際に、先行掘削用ケーシングチューブのうち先行掘削翼よりも掘削方向前方側に開口形成した土砂取り込み口から先行掘削用ケーシングチューブ内に掘削土砂を取り込むことを特徴とする請求項7に記載の拡径掘削方法。
【請求項9】
上記先行掘削は、
拡径掘削手段側の鋼管とほぼ同径の先行掘削用ケーシングチューブに先行掘削孔径とほぼ同径の円筒状の第2の鋼管を装着してあり、且つその第2の鋼管の先端に掘削刃を装着してなる先行掘削手段にて行うものであることを特徴とする請求項1,2および請求項5,6のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項10】
上記先行掘削は、
拡径掘削手段側の鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の円筒状の第3の鋼管の先端に掘削刃を装着してなる先行掘削手段にて行うものであることを特徴とする請求項1,2および請求項5,6のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項11】
上記拡径掘削翼として拡縮径可能なものを用いることを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項12】
拡径掘削手段を形成している鋼管のうち拡径掘削翼の下方位置に螺旋状の補助翼を設けておき、
上記拡径掘削翼で掘削した土砂を、その拡径掘削翼の掘削回転に伴い補助翼にて先行掘削孔内に押し込むことを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項13】
ケーソンの内部またはケーソンの刃先下の掘削を行うものであることを特徴とする請求項1〜12のうちのいずれか一つに記載の拡径掘削方法。
【請求項14】
予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、
その立て坑の深さの全長にわたって請求項3または4に記載の方法にて掘削を行うことを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項15】
予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、
その立て坑の深さの途中まで掘削が進行したならば、その途中段階から以深の掘削を請求項3または4に記載の方法にて行うことを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項16】
予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、
その立て坑の深さの全長にわたって請求項5に記載の方法にて掘削を行うことを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項17】
予め定められた深さの立て坑を構築するにあたり、
その立て坑の深さの途中まで掘削が進行したならば、その途中段階から以深の掘削を請求項5に記載の方法にて行うことを特徴とする拡径掘削方法。
【請求項18】
請求項3または4に記載の拡径掘削方法に用いる拡径掘削システムであって、
先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、
上記鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けられ、当該鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、
上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼や先行掘削手段とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、
上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段と、
を備えたことを特徴とする拡径掘削システム。
【請求項19】
請求項5または6に記載の拡径掘削方法に用いる拡径掘削システムであって、
先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、
上記鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、
上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、
上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段と、
を備えたことを特徴とする拡径掘削システム。
【請求項20】
請求項6に記載の拡径掘削方法に用いる拡径掘削システムであって、
先行掘削孔よりも小径の円筒状の鋼管の外周に拡径掘削翼を設けてなる拡径掘削手段と、
上記鋼管よりも大径で且つ拡径掘削径よりも小径の先行掘削孔の掘削が可能な先行掘削手段と、
上記鋼管を把持した上でその鋼管を拡径掘削翼とともに回転させながら地中に押し込む回転押し込み手段と、
上記鋼管のうち拡径掘削翼よりも下方位置に設けられるとともに先行掘削孔とほぼ同径またはそれ以下の外径を有し、拡径掘削時に先行掘削孔に内接することにより先行掘削孔に対する拡径掘削手段の芯出しがなされるように誘導する誘導手段と、
上記鋼管内を昇降動作してその鋼管内の土砂を掴んだ上で鋼管外に排土する排土手段と、
を備えたことを特徴とする拡径掘削システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2008−38593(P2008−38593A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181631(P2007−181631)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【Fターム(参考)】
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