説明

拡径翼の開閉検知装置

【課題】 杭下端の支持地盤内に拡大球根を形成する技術では、オーガドリルの下端部に取付けた拡径翼の拡開を確認する手段がなかった。
【解決手段】 オーガドリルの拡径翼の開閉動作を直接検知するセンサ30をオーガドリルの下端部10に設け、オーガドリル軸の中空部に、通信ケーブル31を配設し、オーガドリル軸の接続部に、オーガドリルを接続したとき圧着する接触端子を備えたコネクタ32を設け、センサ30の信号を地上で音声信号、可視信号、記録装置等の表示装置によって確認できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭底に拡大球根を形成する地中杭の拡径部掘削に用いる拡径翼の開閉検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
杭下端の支持地盤内に杭の下端と一体化する拡大球根を形成して杭の支持力を高める技術がある。このような技術では、支持ピンを中心に揺動して拡縮する爪などから成る拡径翼をオーガドリルの下端部近傍に取付けておき、オーガドリルの正回転のときこの拡径翼は縮径しており、オーガドリルの主刃のみで地盤を掘削し、オーガドリルを逆回転させると地盤の抵抗によってこの拡径翼が拡径し、拡大球根形成部の地層を撹拌、掘削するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、実際にはオーガドリルを逆回転させたとき拡径翼が拡径したか否かを確認する手段はなく、従来、オーガドリルのモータの電流の増減あるいはトルクの増減等によって判断していた。しかしながら、これらの変動は、一般に顕著ではなく、地層の状況等によっては、その変化を検知することができない。従って、拡径翼による杭底の杭支持層の攪拌、球根形成を確認することが困難であった。また、球根形成を確認するために施工後杭中空部をコアーボーリングで根固め部まで削孔し超音波探査により把握することも出来るが、長時間を要し、費用が高額となるのですべての杭について探査を行うことは困難であり、少数のサンプルを抜き取りで検証することになる。
【特許文献1】特公平7−86231号公報(第3−4頁、図2、3、4(b))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杭下端の支持地盤内に杭の下端と一体化する拡大球根を形成する場合、オーガドリルの下端部近傍に拡径翼を取付けておき、オーガドリルを逆回転させて拡径翼を拡径させ、拡大球根形成部の地層を撹拌、掘削するようになっているが、このとき拡径翼が拡開したことを確認する手段がなかった。本発明は、拡径翼の拡開をセンサによって直接確認する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の手段は、オーガドリルの拡径翼に近接して設けられ翼の開閉動作を直接検知するセンサと、検知した信号を地上に伝達するオーガドリル軸内通信ケーブルと、該信号を表示する表示装置とを備えたことである。
【0006】
拡径翼が開いた時に拡径翼の開閉を直接検知するセンサを設置する。センサは拡径翼の拡開を直接検知するON/OFFスイッチ、トグルスイッチ、圧電素子等を用いる。
【0007】
センサが検知した拡径翼の拡開情報を電気信号として、オーガドリル軸の中空部内を通る通信ケーブルで、地上に伝達する。オーガドリル軸の中空部は通常は、圧縮空気、水、セメントミルクなどの流体の通路として用いるものである。通信ケーブルはその中に設置され、これらの流体に対して絶縁し、保護するように設置する。
【0008】
オーガドリル軸の接続部には、通信ケーブルの両端に電気コネクタを設ける。この電気コネクタはオーガドリル軸を接続したとき、オーガドリルの隣接軸内の通信ケーブルを相互に接続するものである。通信ケーブルはオーガドリル軸の接続、切り離しと同時に電気コネクターによりワンタッチで接続、切り離しができる構造とする。
【0009】
オーガドリル軸の接合端に設けられた電気コネクタの好適な例を挙げると、次のようである。
【0010】
電気コネクタは主材として、オーガドリル軸を接合したとき隣接コネクタと電気的に結合する接触端子と、これを覆うシールガスケットと、その外周を被覆するケーシングとから構成されている。接触端子は圧着方向に付勢するスプリングを備えている。ケーシングはオーガドリル軸内に固定する支持脚を備え、この支持脚はオーガドリル軸とケーシングとを電気的に結合する電気部材を兼ねている。シールガスケットはケーシングと接触端子との間を絶縁すると共に、オーガドリル軸を接合したとき、隣接シールガスケット同士が接触端子を外部流体から隔離保護するリング状先端圧着部を備えている。このような通信ケーブルを用いると信号伝達が確実であり好適である。このような電気コネクタは、従来、管内通信ケーブルなどの接続部にも用いられているものである。
【0011】
電気コネクタ、通信ケーブルは高耐水性を有するウレタン等の素材を用いて高いシール性を確保する構造とする。
【0012】
通信ケーブルによって搬送された信号は地上の杭打機に設けたスイベル部より外部に取り出すことにより、オーガドリルの正逆回転に左右されずに、電気信号を地上で受け渡すことが可能である。
【0013】
伝達された電気信号は、音声信号装置、可視信号表示装置、デジタル電子信号処理装置、自動記録装置、記憶表示装置などの装置に表示しまたは記録される。例えば、ベースマシン内にある管理記録計に電気信号の経時変化を印字ペン等により記録するようにし、同時に、オペレータが拡径翼の拡開信号をブザーや表示ランプ等によって、拡大翼の開きを確認できるようにするとよい。
【0014】
本発明の拡径翼の開閉検知装置を一組のシステムとして形成し、中堀り工法又は外堀り工法によって杭を沈下する場合に、拡大球根築造の形状確認を確実に記録管理することができる。
【0015】
なお、前記センサとして拡径翼の掘削トルクを検知する応力計をオーガーヘッド軸部に取り付け、その電気信号を記録管理することによって、拡径翼の先端部の地盤抵抗を検知することもでき、支持地盤を確実に検知することができると共に、地盤のN値の概略を知ることも出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オーガドリルの拡径翼の作動をリアルタイムで把握することができるようになった。このように拡径翼の開閉をリアルタイムで確実に知ることにより、根固め球根の形状を各杭ごとに簡易に確認することができ、通常作業以外の格別な作業による確認を必要としないので、杭沈下作業の能率低下がない。また、現在使用されているオーガドリルをそのまま使用することができるので改造、増設、変更が容易である。なお、センサとして応力計を用いることにより、拡径翼先端地盤強度の推定値を各杭ごとに知ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図6に、本発明が適用される拡大球根を有する支持杭を模式的に示した。オーガドリルを用いた中掘り工法又は外掘り工法によって、杭100が地上120から地中に沈下される。オーガドリルが支持地盤130に到達したらオーガドリルを逆回転させて拡径翼を拡径させ、球根部110の地層を攪拌掘削し、その後、この部分にセメントミルク等を注入して球根部110を形成する。
【0019】
拡径翼は、オーガドリルを逆回転させることにより、地層の抵抗により支持ピンを中心に回動して拡径する。従来、この拡径は、オーガドリルの駆動動力やトルクの増大等を電流計等の視認によって確認するのであるが、これらの変化を確認することは容易ではなく、確実性が乏しかった。
【0020】
図1は本発明の実施例に用いるオーガドリルの下端部(オーガヘッド)10の模式的側面図、図2はそのA−A矢視図である。
【0021】
オーガヘッド10は、刃物部12、オーガ軸13、接続部14から成り、オーガドリルの外径にスパイラル羽根15を備えている。刃物部12は底面に掘削刃11を備えており、また、ピン21を中心に回動する拡径翼20が取付けられている。拡径翼20はオーガドリルが正回転のとき、矢印22で示すように刃物部12に密着して縮径しており、オーガドリルを逆回転させたとき、ピン21を中心として矢印23で示す方向に回動して拡径し、地層を攪拌掘削する。
【0022】
本発明はこの拡径翼20が拡径したとき、これを直接検知する位置にセンサ30を刃物部12に取付け、その検知信号を通信ケーブル31、コネクタ32を経てオーガドリル軸内を通って地上に伝送するようにした。
【0023】
オーガドリルは、掘削深度に従って長さ方向にオーガドリル軸を接続して用いる。
【0024】
図3は、オーガドリルの上下軸の接続部の断面図を示したものである。図3ではスクリュー羽根の表示は省略してある。オーガドリル軸40aの端部には六角形の孔を備えたソケット41が形成されており、これと接続するオーガドリル軸40bの端部には外周が六角形のプラグ42が形成されている。軸40aと40bを軸方向に移動して六角形を係合させ、軸直角に係合ピン(図示省略)を打込むと、ソケット41とプラグ42が強固に固定される。
【0025】
オーガドリル軸40a,40bには、圧力流体やセメントミルク等を地中に供給する中空孔が設けられており、この中空孔中に各オーガドリル軸全長に亘って通信ケーブル31が内蔵されている。通信ケーブル31の両端には電気コネクタ50が設けられ、電気コネクタ50はオーガドリル軸40a,40b内に固定されている。
【0026】
図4に、電気コネクタ50の一例を示した。図5は図4のB−B矢視図(正面図)である。電気コネクタ50は、先端に圧着端子51を突出している。圧着端子51はばね53によって突出方向に付勢されている。ばね53及びばね座54は電気導体を兼ね通信ケーブル31の一方の線55(プラス電圧の線)に連結されている。外皮をなすケーシング61は、図5に示すように、その外周に3本の脚80を備え、脚80の先端はオーガドリル軸内に固定されており、ケーシング61とオーガドリル軸は電気的に接続されている。後部ケーシング62はケーシング61とねじによってシール材63を介して結合されている。後部ケーシング62には通信ケーブル31の他方の線56(アース線)が電気的に結合されている。
【0027】
圧着端子51とケーシング61間の隙間には、両者を絶縁するシールガスケット70が介袋されている。シールガスケット70は、オーガドリル軸40a,40bが結合されたとき、シールガスケット70のリング状の先端が相互に圧着され、圧着端子51の収納空間を密閉し、オーガドリル軸内を通る加圧流体やセメントミルク等が侵入しないようにシールする。シールガスケット70は例えばゴム硬度60℃のニトリルゴム等によって形成される。
【0028】
ばね座54とケーシング61及び後部ケーシング62との間には絶縁材71が装着され、ばね座54とケーシング61、62とを電気的に絶縁している。
【0029】
なお、通信ケーブル31と電気コネクタ50との接合部はウレタン樹脂等による被覆72によって被覆保護されている。
【0030】
信号電流は、プラス電圧の線55からばね座54、ばね53、圧着端子51を経て伝送され、アース線56は後部ケーシング62、ケーシング61、脚80、プラグ42、ソケット41を経てオーガドリル軸に結合されている。
【0031】
本発明の装置は、スイベル機構を備えたオーガドリルに装着して用いられ、通信ケーブルの信号はスイベル機構から地上の表示装置等に伝達される。表示装置等としては、ベル、ブザーその他の音響装置、表示ランプや指示計などの可視信号表示装置、紙記録装置、電気信号装置、又は電子的記憶・表示装置などを用いるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】オーガヘッドの側面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】オーガ軸の接続部を示す断面図である。
【図4】電気コネクタの例を示す断面図である。
【図5】図4の正面図(B−B矢視図)である。
【図6】拡大球根を有する支持杭の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10 オーガヘッド
11 掘削刃
12 刃物部
13 オーガ軸
14 接続部
15 スパイラル羽根
20 拡径翼
21 ピン
22,23 矢印
30 センサ
31 通信ケーブル
32 コネクタ
40a,40b オーガドリル軸
41 ソケット
42 プラグ
50 電気コネクタ
51 圧着端子
53 ばね
54 ばね座
55 プラス電圧の線
56 アース線
61 ケーシング
62 後部ケーシング
63 シール材
70 シールガスケット
71 絶縁材
72 被覆
80 脚
100 杭
110 球根部
120 地上
130 支持地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガドリルの拡径翼に近接して設けられ拡径翼の開閉動作を直接検知するセンサと、検知した信号を地上に伝達するオーガドリル軸内に設けた通信ケーブルと、該信号を表示する表示装置とを備えたことを特徴とする拡径翼の開閉検知装置。
【請求項2】
前記通信ケーブルはオーガドリル軸の接合端に電気コネクタをそれぞれ備え、該電気コネクタは、オーガドリル軸を接合したとき隣接コネクタと電気的に結合する接触端子と、これを覆うシールガスケットと、その外周を被覆するケーシングとからなり、前記接触端子は圧着方向に付勢するスプリングを備え、前記ケーシングはオーガドリル軸内に固定する支持脚を備え、該支持脚はオーガドリル軸とケーシングとを電気的に結合する電気部材を兼ね、前記シールガスケットは前記ケーシングと前記接触端子との間を絶縁すると共にオーガドリル軸を接合したとき隣接シールガスケット同士が前記接触端子を外部流体から隔離保護するリング状先端圧着部を備えたことを特徴とする請求項1記載の拡径翼の開閉検知装置。
【請求項3】
前記表示装置は音声信号装置、可視信号表示装置、デジタル電子信号、自動記録装置、記憶表示装置から成る群から選ばれた1又は2以上の装置であることを特徴とする請求項1記載の拡径翼の開閉検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−82101(P2008−82101A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265372(P2006−265372)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(591197699)日本高圧コンクリート株式会社 (20)
【Fターム(参考)】