説明

拡散シートおよび液晶表示装置

【課題】エッジライト方式の面光源装置において、簡易な構成で、輝線や暗線を発生させることなく、光の広がりの少ないローカルディミング(エリア毎の明るさ調整)を実現する。
【解決手段】拡散シート13の少なくとも一方の表面に互いに平行でランダムな複数本の溝14を有し、前記複数本の溝14の平均ピッチが30μm以下であって、前記複数本の溝14の平均深さが1〜50μmであるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散シートに関し、特に、ローカルディミング(例えば、ローカルディミングを利用したスキャニング)を行うエッジライト方式の面光源装置に使用するのに適した拡散シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶材が自己発光しないため、バックライトとして面光源装置が使用されている。面光源装置としては、光源を液晶表示パネルの背面に有する直下方式と光源を液晶表示パネルの側面に有するエッジライト方式の2種類があるが、薄型化に適したエッジライト方式の面光源装置が多く用いられている。このようなエッジライト方式の面光源装置は、一般的には、光源からの光を液晶表示パネル側に出射させる導光板と、その側部に配置されたLED(発光ダイオード)やCCFL(冷陰極管)等の光源と、導光板から出射した光を液晶表示パネル側の方向に向けるプリズムシート等から構成される。導光板は、一般に、その側部(入光面)から入射する光を板内部で繰り返し反射させて導光し、導光した光を背面に設けた光出射機構によって出光面から液晶表示パネル側に出射させる。
【0003】
CRT表示装置では蛍光体面を電子銃で走査して画像を表示するために各画素は1フレームの間の一瞬しか発光しないのに対し、液晶表示装置では各画素はバックライトが点灯している間はずっと発光している。そのため、液晶表示装置においては、人間の目の残光特性によるコントラストの低下や動画ボケが発生する。その対策として、液晶表示装置において、一部の領域のみを発光させ、他の領域は発光させないようにエリア制御を行う、ローカルディミング(エリア毎の明るさ調整)という技術が知られている。このローカルディミング技術により、液晶表示装置の高画質化や省電力化を行うことができる。また、このローカルディミング技術は、例えば、液晶表示装置においてメガネシャッタニング方式で3次元画像/映像を表示する際の、バックライトのスキャニング(一般的には、出光面を上下方向に複数の領域に区分し、上から下に一領域ずつ順次発光させる発光方式)にも利用されている。
【0004】
エッジライト方式の面光源装置において一部の領域のみを発光させるためには、導光板の入光面近傍に配置した複数の光源を2つ以上のグループに分けて、必要なグループのみを点灯させることになるが、この場合、光源から発する光が完全な平行光ではなく拡散性を有しているため、出光面の発光させたい領域以外の領域にも導光板の材質の臨界角に応じて出光面と背面との間で全反射が続く範囲で光が広がってしまうという問題がある。
例えば、前述した3次元画像/映像を表示する際のスキャニングにおいて発光させたい領域以外にも光が広がると、右目用画像と左目用画像の混在を完全に防止することができなくなるので、結果的にはクロストーク(二重映り)問題を起こしてしまい、画像/映像が劣化してしまう。
【0005】
このようなローカルディミングを行う際の導光板における光の広がりを抑えるための技術として、特許文献1には、導光板を短冊状に分割することが開示されている。また、特許文献2には、導光板の底面に導光板の厚さの半分以上の切り込みを設けることが開示されている。さらに、特許文献3には、導光板の入光面に凸部を設けると共にその頂部に光源を配置すること、及び、導光板の入光面にレンチキュラーレンズを配置すると共にその焦点位置に光源を配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−210122号公報
【特許文献2】特開2009−199926号公報
【特許文献3】特開2009−199927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、導光板と導光板の間に輝線又は暗線が発生するという表示装置にとって致命的な問題がある。また、導光板が複数あるため、各導光板の固定や寸法管理が煩雑で、これを用いて表示装置を製造するのは実際には困難である。
【0008】
特許文献2に開示された技術においても、導光板に深い切り込みを形成するため、輝線又は暗線の発生という問題がある。また、厚さの半分以上の切り込みを有する導光板を製造することは困難であり、仮に製造できたとしても非常にコストがかかる。
【0009】
特許文献3に開示された技術は、光源と導光板の位置あわせの精度が厳格に要求されるため、面光源装置の製造が難しく、位置ずれが生じた場合には激しい輝度ムラが生じてしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、エッジライト方式の面光源装置において、簡易な構成で、輝線や暗線を発生させることなく、光の広がりの少ないローカルディミングを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、導光板の出光面及び/又はその対向面に、導光板内における光の伝播方向に略平行で(すなわち、入光面に垂直で)ランダムな溝構造を有する拡散シートを積層すると、光源からの光を直線的に出光させることができ、輝線や暗線も発生しないことを見出した。そして、このような導光板を利用すれば、一般的な一枚の導光板を用いて、光の広がりの少ないローカルディミングを行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
少なくとも一方の表面に互いに平行でランダムな複数本の溝を有する拡散シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明の拡散シートを通常の導光板と組み合せて用いれば、光源からの光を直線的に出光させて出光面の特定のエリアのみを発光させることができるので、特別な導光板を用いずに輝線や暗線を発生させることなく、光の広がりの少ないローカルディミングを実現することができる。
【0014】
さらに、本発明による光の直進化の効果は、溝構造のサイズに関わりなく得られので、溝構造を微細にして、表示パネルおよび他の光学シートとの間で発生するモアレという別の品位劣化問題を引き起こさないようにすることができる。よって、溝構造を微細なものとすれば、多種多様な表示パネルや光学シートと組み合せてもモアレを発生させることなく高品質なローカルディミングを実現できる、汎用性の高い導光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の拡散シートの概略図である。
【図2】本発明の拡散シートに形成する溝構造の一例を示す表面プロファイル図である。
【図3】本発明の拡散シートの溝構造を有する面の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の拡散シートの溝構造を有する面の一例を示す概略図である。
【図5】溝構造の形成方法の具体例の説明図である。
【図6】溝構造の形成方法の具体例の説明図である。
【図7】拡散シート製造用多層フィルムの断面図である。
【図8】拡散角度の説明図である。
【図9】本発明の面光源装置の正面概略図である。
【図10】本発明の面光源装置に利用できる点光源(LED)の概略図である。
【図11】本発明の表示装置の断面図である。
【図12】本発明の導光板を用いた液晶表示パネルの正面概略図である。
【図13】本発明のテレビ受信装置の構成を示す図である。
【図14】本発明の拡散シートの層構成の例を示す図である。
【図15】溝の内側面の平均勾配の説明図である。
【図16】実施例・比較例の出光分布の具体例を示す図である。
【図17】実施例・比較例における光の直進性評価1の説明図である。
【図18】実施例・比較例における光の直進性評価2の説明図である。
【図19】G’とG0’の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の拡散シートについて、以下に具体的に説明する。
本発明の拡散シートは、少なくとも一方の表面に、互いに平行でランダムな複数本の溝(以下、「複数本の溝」を「溝構造」ということがある。)を有する。
ここで、複数本の溝が互いに平行であるとは、各溝の中心線が略平行であることをいい、複数本の溝がランダムであるとは、複数本の溝の断面形状、ピッチ及び深さのうち少なくとも1つがランダム(不規則)に異なっていることをいう。
【0017】
各溝の断面形状に限定はなく、例えば、V字形状やU字形状とすることができる。また、溝の断面形状や幅が溝の延在方向に沿って変化していてもよい。
溝のピッチとは、隣合う溝の谷底の間の水平距離(溝構造を有する面に平行な方向の水平距離)をいう。なお、谷底が平坦である場合には、その中心を谷底としてピッチを決定する。
また、溝の深さは、各溝を構成する両側の山のうち高い方の山の山頂と溝の谷底の間の垂直距離(溝構造を有する面に垂直な方向の距離)(山頂と谷底の標高差)をいう。
溝の断面形状、ピッチ及び深さは、溝構造を有する面の任意の垂直断面(入光面に平行な垂直断面)を顕微鏡(走査型電子顕微鏡やレーザー共焦点顕微鏡等)により観察・測定することによって決定することができる。
【0018】
本発明において好ましく利用できる溝構造の具体例を図2A及びBに示す。図2Aは溝構造に垂直な方向への拡散角度(後述)が30度、溝構造に水平な方向への拡散角度が1度の異方性の拡散特性を有する溝構造の具体例を示す表面プロファイル図である。図2Bは溝構造に垂直な方向への拡散角度が60度、溝構造に水平な方向への拡散角度が1度の異方性の拡散特性を有する溝構造の具体例を示す表面プロファイル図である。
【0019】
溝構造の平均ピッチに限定はないが、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。また、溝構造の平均ピッチは580nm(可視光の中心波長)以上であることが好ましく、より好ましくは780nm(可視光全域)以上である。
拡散シートと組み合せて使用される表示パネルの画素ピッチや光学シートの構造ピッチは、それぞれ、概ね100〜600μm、50〜150μmであるので、溝構造の平均ピッチをこのような値に設定すれば、組み合せて使用する表示パネルや光学シートとの空間干渉によるモアレの発生を防ぐことができる。さらに、平均ピッチをこのような値に設定すれば、取り扱い時に溝構造に爪などが引掛かることも少なく、ハンドリング性が向上する。さらに、本発明の拡散シートによって拡散する光は可視光線(380nm〜780nmの電磁波)であるので、溝構造による光の直進化の効果を十分に発揮するためには平均ピッチの下限値は上記のような値であることが好ましい。
溝構造の平均深さにも限定はないが、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは1〜40μm、さらに好ましくは1〜30μmである。
なお、溝構造の平均ピッチ及び平均深さは、溝構造を有する面の任意の断面(溝に垂直な方向の断面)から任意に抽出した300μmの距離の間に存在する溝のピッチ及び深さの平均値とする。
【0020】
また、溝構造のピッチや深さ(ピッチや深さの数値範囲)をエリア毎に変化させることによって、より積極的に光の直進性をコントロールしたり、光の出光面中央への到達度を向上させることが可能となる。
例えば、図3のように、溝構造を有する面の中心部分とその両側部分で溝構造のピッチや深さの数値範囲(平均ピッチや平均深さ)を変えてもよい。さらに、例えば、拡散シートの端から中心に向うにしたがって溝構造のピッチや深さの数値範囲(平均ピッチや平均深さ)が徐々に変化していくように(グラデーションがかかって順次変化していくように)することも好ましい。
【0021】
また、溝構造の各溝の内側面の平均勾配の平均値が、0.3〜2.0であることが好ましい。
ここで、溝の内側面の平均勾配とは、拡散シートの複数本の溝に垂直な方向の垂直断面に現れる各溝の内側面の平均勾配であって、溝を構成する山の山頂と溝の谷底との間の垂直距離H1、H2(標高差、拡散シートの水平面に垂直な方向の距離)を、その間の水平距離L1、L2(拡散シートの水平面に平行な方向の距離)で除した値(H1/L1、H2/L2)をいい(図15参照)、各溝の両内側面それぞれについて規定される。(なお、山頂や谷底が平坦である場合には、山頂と谷底の間の水平距離は、両者の間の最短水平距離をいうものとする。
そして、溝の内側面の平均勾配の平均値とは、拡散シートの複数本の溝に垂直な方向の任意の垂直断面から任意に抽出した水平距離300μmの間に存在する溝の両内側面の平均勾配の平均値をいう。
各溝の内側面の平均勾配の平均値が0.3未満であると、光の直進化の効果が十分に得られない場合がある。一方、各溝の内側面の平均勾配の平均値が2.0以上のものは作製が困難である上、これ以上大きくしてもさほど光の直進化の効果は向上しない。
【0022】
溝構造の各溝の内側面の平均勾配の標準偏差は、小さい方が光の直進化の効果が得られるため好ましい。もっとも、標準偏差が、0.1未満となるとモアレの発生のおそれがある。そこで、溝構造の各溝の内側面の平均勾配の標準偏差は、0.1〜0.5であることが好ましい。
【0023】
さらに、溝構造の溝を構成する表面のうち、斜面角度が40度〜60度の範囲内にあるものの占める割合が5%以上であることが好ましい。さらに好ましくは10%以上である。また、その中でも45度±5度であるものの占める割合が多いほうがより直進性向上に貢献する。
ここで、「斜面角度」とは、拡散シートの溝構造を有する面の溝に垂直な断面における各溝を構成する表面の接線と溝構造を有する面とがなす角の総称をいう。
そして、斜面角度が40度〜60度の範囲内にあるものの占める割合については、顕微鏡観察(走査型電子顕微鏡やレーザー共焦点顕微鏡等)により、溝構造を有する面の任意の垂直断面(溝構造に垂直な断面)から任意に300μmの距離の範囲を抽出し、さらに、その範囲の端から0.5μm毎の点を接点とする接線を抽出して、これらと溝構造を有する面とがなす角(鋭角)を測定することによって決定することとする。
溝の斜面角度は光の直進性へ大きな影響を与える。すなわち、本発明の拡散シートにおいては、外側に広がろうとする光を溝の斜面で反射し、内側方向へと戻すことで光の直進性を上げていると考えられる。したがって、各溝の斜面角度は、40度〜60度であることが好ましい。
【0024】
なお、図1、3においては、溝14、33は拡散シートを端から端まで横断しているが、必ずしも端から端まで横断していなくても溝構造による光の直進化の効果は得られる。したがって、拡散シートの製造条件、拡散シートと組み合せて使用する導光板、表示パネル、求められる表示品質等を考慮して、図4のように、溝を拡散シートの端部より内側から設けてもよい。
【0025】
本発明の拡散シートは、その表面に互いに平行でランダムな複数本の溝を有していれば、その大きさや構成に限定はないが、その大きさは、組み合せて使用する導光板の出光面や対向面よりも若干小さくすることが好ましい。具体的には、その幅及び長さが、出光面や対向面の幅及び長さより、0.1〜100mm程度短いことが好ましい。例えば、導光板の出光面または対向面において、入光面となる端部から0.1〜50mmの位置から本発明の拡散シートを積層させた場合、複数の光源が配置されている周期に合わせて発生する明暗のムラ(ホットスポットムラ)を抑制することができる。
【0026】
拡散シートの材料は、透光性のものであれば特に限定はなく、例えば、光学シートの基材として代表的なポリエチレンテレフタレートを使用することができる。また、ポリエチレンテレフタレート以外の材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メタクリレート、ポリスチレンメタクリレート、ポリスチレン、及び、ポリカーボネート等の光学部品の材料として一般に使用されている透明性が高く(例えば、全光線透過率が90%以上、ヘイズが1.0以下)、導光板に貼合した際に、温度・湿度によって反りの起きにくい高分子材料やガラス等の無機材料を用いることができる。
拡散シートには、必要に応じて有機や無機の染料や顔料、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。特に、変色の防止のために、紫外線吸収剤や染料(ブルーイング剤)を添加することが好ましい。
なお、拡散シートは反り防止の観点から延伸していないものであることが好ましい。
【0027】
また、拡散シートの構成は、単層のものであってもよいし、シート状基材と溝構造を有する層とを含む積層体とすることができる。この積層体は、さらに、接着層を有していてもよい。
具体的には、シート状基材の一方の面に複数本の溝を有する層を有し、他方の面に接着層を有する積層体構成(図14A参照)としてもよし、或は、第一のシート状基材の一方の面に複数本の溝を有する層を有し、さらに、その上に第一の接着層、第二のシート基材及び第二の接着層が順次積層された積層体構成(図14B参照)としてもよい。
【0028】
この場合、シート状基材の厚さは、例えば、1〜500μmとすることができ、反り防止や生産性の観点からは50〜250μmとすることがより好ましい。
シート状基材の材料については、前述の拡散シートの材料について述べた事項がすべてあてはまる。さらに、シート状基材もまた、反り防止の観点から、延伸していないものであることが好ましい。
シート状基材の片面又は両面に白色印刷を施すこともできる。白色印刷を施す事により面内での輝度を詳細にコントロールすることが可能となる。
【0029】
接着層の厚さは、例えば、1〜300μmであれば、拡散シートやこれを積層固定した導光板の反りを抑制することができる。
【0030】
接着層を構成する材料に特に制限は無く、一般的な接着剤を使用することができる。
例えば、ホットメルト型接着剤、熱硬化型接着剤、感圧型接着剤、エネルギー線硬化型接着剤、吸湿型接着剤、乾燥型接着剤、UV硬化型接着剤、重合型接着剤、2液反応型接着剤、嫌気型接着剤などのうち透明なものを好ましく用いることができる。これらの中でも、作業性の観点から感圧型接着剤が最も好ましい。感圧型接着剤は一般的に「粘着剤」と呼ばれている。
【0031】
具体的には、アクリル系接着剤やウレタン系接着剤、ゴム系接着剤を使用することができる。
ウレタン樹脂系接着剤は、主成分にウレタン基を有する接着剤の総称であり、イソシアネート基やヒドロキシ基などから誘導される構造を含む。例えば、末端に水酸基を持つポリオールとポリイソシアネートの組み合わせ、側鎖にカルボン酸を有するオリゴマーとポリイソシアネートの組み合わせ、末端にイソシアネート基を持つウレタンプレポリマーとポリオールの組み合わせ、末端にイソシアネート基を持つウレタンプレポリマーと側鎖にカルボン酸を有するオリゴマーとの組み合わせ、等が挙げられる。この他、ウレタンプレポリマーと触媒の混合液を加湿または加熱することにより接着剤とする例もある。
ゴム系接着剤としては、例えば、天然ゴム、天然ゴムとメチルメタクリレートなどのアクリル成分との共重合物、スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、などが挙げられる。なかでも、天然ゴムとメチルメタクリレートなどのアクリル成分との共重合物が好ましい。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
アクリル系接着剤は、透明性や耐久性、リワーク性(貼り直し作業性)、コストの観点から最も一般的に使用されている接着剤である。
アクリル系接着剤は、後述の手法をもって作成するか、一般に入手可能なアクリル系接着剤を使用することができる。このような接着剤の例としては、MO−3006C(リンテック(株)製)、MO−3012C(リンテック(株)製)、SA10−010(リンテック(株)製)、8171JR(3M(株)製)、8172JR(3M(株)製)、パナクリーンPD−S1(パナック(株)製)、マスタックTR−1801(藤森工業(株)製)、マスタッ
クTR−1802(藤森工業(株)製)、CCL/D2−L/T5T5(新タック化成(株)製)、CCL/D1/T3T3(新タック化成(株)製)、EXC10−076(東洋インキ(株)製)、LUCIACS CS9621T(日東電工(株)製)、LUCIACS HJ9150W(日東電工(株)製)、700A50(共同技研(株)製)等の接着剤シートが挙げられるが、特にこれに限定されない。
このような接着剤シートは、通常、軽剥離型セパレート層/接着剤層/重剥離型(軽剥離型と比較して剥離性の高い)セパレート層の3層で形成される。セパレート層には一般に基材上にシリコーン処理したものが用いられており、その厚みは10〜500μm程度である。基材としてはポリエチレンテレフタラートが一般的に用いられている。この場合の接着剤層の厚みは、1〜300μm程度である。
【0033】
アクリル系接着剤としては、例えば、水酸基含有モノマー0.1〜10重量%またはカルボシキル基含有モノマー0.1〜10重量%を共重合してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含むことが特に好ましい。
【0034】
水酸基含有モノマーとして、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
中でも、側鎖の炭素数が4以上の水酸基含有モノマーを用いることが(メタ)アクリル系ポリマーの耐熱性の面から好ましい。
上記水酸基含有モノマーを使用する際は、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜7重量%共重合される。上記水酸基含有モノマーの含有量が少なすぎると長期の耐久性が低下する場合があり、多すぎると硬くなり耐久性に不具合が生じる場合がある。
【0035】
カルボキシル基含有モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などがあげられ、特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましく用いられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これらカルボキシル基含有モノマーは、接着性向上や凝集力増加による耐熱性という観点から効果的である。
上記カルボキシル基含有モノマーを使用する際は、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%共重合される。上記カルボキシル基含有モノマーが少なすぎると接着性に劣り、多すぎると硬くなり耐久性に不具合が生じる場合や、タッキファイヤーとの相溶性が大きく低下して接着剤が白濁する場合があり好ましくない。
【0036】
これらの他に、(メタ)アクリル系ポリマーには、共重合可能なアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーが使用される。このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。中でも、接着剤に柔軟性を付与するという観点から、n−ブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、その際には(メタ)アクリル系ポリマー中に30〜99重量%使用されることが好ましく、より好ましくは50〜99重量%である。
【0037】
さらに、上記(メタ)アクリル系ポリマーには、共重合可能な他の単量体(モノマー成分)を適宜共重合してもよい。共重合可能な単量体としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド、ジメチルアミノアルキルアミド、アクリロイルモルホリン、グリシジルアクリレート、スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエンやα−ビニルトルエンの誘導体などの高屈折率単量体、べンジル(メタ)アクリレートやナフチル(メク)アクリレート、フエノキシエチル(メタ)アクリレート、フエノキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、カルボキシル基含有モノマー0.1〜30重量%、n−ブチル(メタ)アクリレート30〜99.9%を共重合成分として含む(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましく、さらに前記(メタ)アクリル系ポリマーのゲル分率が30〜90重量%に調整されたものが好ましい。このような(メタ)アクリル系ポリマーを用いると、接着層の内部凝集力向上と柔軟性向上を両立できるため、接着層を含む拡散シートを導光板に貼合して使用した場合に、接着層と導光板の界面での発泡現象や接着層の導光板からの剥がれが発生しない。
【0039】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常60万以上、好ましくは70万〜300万である。上記重量平均分子量が小さすぎると、耐久性に乏しくなり、多すぎると、作業性が悪くなるために好ましくない。
【0040】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの製造には、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の任意の製法を採用することができる。
たとえば、溶液重合では、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの重合開始剤を、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜0.2重量部使用することが好ましく、より好ましくは0.05〜0.15重量部使用する。酢酸エチルなどの重合溶媒を使用して、窒素気流下で50〜70℃で8〜30時間反応させることにより得られる。
【0041】
このようにして得られた(メタ)アクリル系ポリマーの屈折率を調節したり、内部凝集力を上げたり、耐熱性を上げる目的で、変性処理をすることもできる。
たとえば、上記変性処理として、得られた(メタ)アクリル系ポリマー100重量部の存在下に、上記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分に含まれる単量体、及び/又はモノマー成分とは異なる単量体(モノマー成分)を10〜200重量部、好ましくは10〜100重量部加えて、必要に応じて媒体も調整して、過酸化物0.02〜5重量部、好ましくは0.04〜2重量部を使用して、グラフト重合反応を行う。
ここで(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分に含まれる単量体、及び/又はモノマー成分とは異なる単量体は、特に限定されないが、例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、イソボルミル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマーや、スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエンやα−ビニルトルエンなどの誘導体などの高屈折率単量体があげられる。前記高屈折率単量体をグラフト重合させることにより、(メタ)アクリル系ポリマーの屈折率を高めることができる。
グラフト重合方法としては、溶液重合であれば、(メタ)アクリル系ポリマーの溶液に、必要な単量体と粘度調整される溶媒を加えて、窒素置換した後、過酸化物0.02〜5重量部、好ましくは0.04〜2重量部を加えて、50〜80℃で、4〜15時間加熱して、グラフト重合反応を行う。
乳化重合であれば、(メタ)アクリル系ポリマーの水分散液に、固形分量を調整する水を加えて、さらに必要な単量体を加えて、撹拌しながら窒素置換して(メタ)アクリル系ポリマー体粒子に単量体を吸収させた後に、水溶性の過酸化物水溶液を加えて、50〜80℃で、4〜15時間加熱して反応を終了させる。
このように、(メタ)アクリル系ポリマーの存在下に単量体を重合することで、この単量体のホモポリマーも生成するが、(メタ)アクリル系ポリマーへのグラフト重合も起こるので、他のホモポリマーからなる重合体が(メタ)アクリル系ポリマーに均一に存在する状態になる。この際の開始剤として使用される過酸化物が少ないとグラフト重合反応の時間がかかりすぎ、多すぎると単量体のホモポリマーが多く生成するために好ましくない。
【0042】
上記接着剤には、(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマーの他に、タッキファイヤーなどの接着付与剤を適宜添加してもよい。その透明性は、50重量%トルエン溶液でのガードナー色相1以下であることが好ましい。
上記タッキファイヤーとしては、特に限定されないが、無着色で透明のものが好ましい。上記タッキファイヤーとして、たとえば、芳香族環を有するタッキファイヤーで、屈折率が1.51〜1.75の範囲のものが好ましく使用される。また、タッキファイヤーの重量平均分子量は、1000〜3000であることが好ましく、軟化点は90℃以下であることが好ましい。重量平均分子量が3000を超えるたり、軟化点が90℃を超えると、(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性が低下する場合があり、重量平均分子量が1000未満であると、接着剤の凝集力が低下する場合がある。
具体的には、スチレンオリゴマー、フエノキシエチルアクリレートオリゴマー、スチレンとα−メチルスチレンの共重合体、ビニルトルエンとα−メチルスチレンの共重合体、C9系石油樹脂の水添物、テルペンフエノールの水添物、ロジンおよびその誘導体の水添物などがあげられる。この際、軟化点が40℃以下のタッキファイヤーは、その使用量を30重量部未満とし、軟化点が50℃以上のタッキファイヤーを20重量部以上併用して使用するのが、耐熱性の面で好ましい。
これらのタッキファイヤーの配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー固形分100重量部に対して、10〜150重量部、好ましくは20〜100重量部用いられ、所定の屈折率に調整される。少なすぎると屈折率が十分に上がらず、多すぎると硬くなり接着性が低下するため好ましくない。
【0043】
上記接着剤には架橋剤を適宜用いることができる。特に(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いる際、架橋することにより凝集力や耐久性が向上するため好ましい。
上記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、過酸化物などがあげられる。
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類や、各種ポリオールで変性したジイソシアネート付加物、イソシアヌレート環やビューレット体やアロファネート体を形成させたポリイソシアネート化合物などがあげられる。特に、脂肪族や脂環族のイソシアネートが、架橋物が透明になるため好ましく用いられる。
また、乳化重合にて製造した変性(メタ)アクリル系ポリマーの水分散液では、イソシアネート系架橋剤を用いない場合が多いが、使用する場合には、イソシアネート基が水と反応しやすいため、ブロック化されたイソシアネート系架橋剤を用いても良い。
【0044】
過酸化物としては、加熱によりラジカルを発生して接着剤のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば使用可能である。たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサンなどがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドなどが好ましく用いられる。
前記過酸化物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記ベースポリマー100重量部に対し、前記過酸化物0.03〜2重量部含有することが好ましく、0.04〜1.5重量部含有することがより好ましく、0.05〜1重量部含有することがさらに好ましい。0.03重量部未満では、凝集力が不足する場合があり、一方、2重量部を越えると、架橋形成が過多となり、接着性に劣る場合がある。
【0045】
なお、架橋剤として、芳香族系のイソシアネート化合物を使用した場合には、硬化後の接着剤が着色する場合があることから、透明性が要求される本発明の用途(拡散シート)においては、脂肪族や脂環族系イソシアネートが好ましく用いられる。
【0046】
以上のような架橋剤の配合量としては、使用する材料によっても異なるが、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、通常0.03〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部の範囲で使用される。少なすぎると凝集力が不足し、多すぎると接着性が低下するために好ましくない。
【0047】
また、接着剤にはシランカップリング剤を適宜添加することができる。
シランカップリング剤としては、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などがあげられる。このようなシランカップリング剤を使用することは、耐久性の向上に好ましい。また、ガラス基材に対する接着性も向上する。
【0048】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.01〜2重量部含有することが好ましく、0.02〜1重量部含有することがより好ましい。0.01重量部未満では、耐久性の向上効果に劣る場合があり、一方、2重量部を越えると、接着力が増大しすぎて再剥離性に劣る場合がある。
【0049】
上記接着剤には、ごく少量であれば有機溶剤を含有していてもよく、たとえば、メタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチルエーテル、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、クロロホルム、トルエン、m-キシレン、p-キシレン、o-キシレン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル(酢酸アミル)、酢酸イソペンチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が用いられるが、特に限定されない。これら有機溶剤は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し0.001〜1重量部含有することが好ましく、0.001〜0.5重量部含有することがより好ましく、0.001〜0.1重量部含有することがより好ましい。1重量部以上含有すると、接着剤から発生した有機溶剤がシート状基材や導光板を溶解する場合があるため好ましくない。0.001重量部未満含有する場合、乾燥時間および乾燥コストがかかるので好ましくない。
【0050】
上記接着剤には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、加硫剤、接着付与剤、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0051】
なお、接着剤は、拡散シートの製造の際には、剥離処理した支持体の上に積層された形態で用意することができる。例えば、接着剤を、剥離処理した支持体上に塗布乾燥、架橋処理して粘着剤層付きシートとすることができる。具体的には、剥離処理した支持体上に粘着剤を塗布乾燥し、その上に相対的に剥離強度の弱い剥離処理済みフィルムを貼合して粘着剤付きシートを作製する。あるいは、剥離処理した支持体上に粘着剤を塗布乾燥した後、すぐに基材に貼り合わせてもよい。
このような支持体の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー及び/又はアクリレート系のモノマー等からなる電離放射線硬化性樹脂を紫外線又は電子線等の電磁放射線で硬化させた樹脂等が挙げられる。また、剥離処理としては、シリコーン層を塗布するかまたはエンボス形状を付与するなどが挙げられる。
接着剤の塗布の方法としては、リバースコーター、コンマコーターやリップコーター、ダイコーターなど任意の塗布方法で、通常乾燥後の接着剤厚さが2〜500μm、好ましくは5〜100μmとなるように処理される。
【0052】
<ゲル分率>
接着剤が架橋剤を含有する場合には、シート状基材や上記剥離処理した支持体上に塗布乾燥し、架橋後の接着剤のゲル分率が30〜90重量%、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは45〜85重量%になるように架橋処理してもよい。
ゲル分率が小さすぎると凝集力に劣り、大きすぎると接着性に劣るため好ましくないが、この範囲にすることで、アクリル基材などに貼り合せた際には、基材からの水分や残存モノマーの発生があっても、基材と接着層の接着界面での発泡現象を抑制することができる。ここで接着剤のゲル分率とは、接着剤のうち、酢酸エチルに溶解しないものの割合をいい、架橋したものの割合(質量%)を示す指標である。
(ゲル分率の測定)
ゲル分率は以下のようにして測定することができる。
接着剤をW1g取り出し、酢酸エチルに室温(約25℃)下で7日間浸漬した後、浸漬処理した接着剤(不溶分)を酢酸エチル中から取り出し、130℃で2時間乾燥後の重量W2gを測定し、ゲル分率を
ゲル分率(重量%)=(W2/W1)×100
として計算する。
【0053】
<貯蔵弾性率>
接着層を構成する材料の、100℃における貯蔵弾性率は、20,000〜320,000Paの範囲であることが好ましく、より好ましくは、20,000〜200,000Pa、更に好ましくは20,000〜180,000Paであり、さらにより好ましくは20,000〜100,000Pa、特に好ましくは20,000Pa〜80,000Pa、とりわけ好ましくは75,000Paである。上記貯蔵弾性率が小さすぎると貼り付けた後でのハガレなどが起きやすく、大きすぎると接着性に劣るために好ましくない。また、貯蔵弾性率が小さすぎると、アクリル板に貼り付け時に発泡が起きるため好ましくない。
ここで、100℃における貯蔵弾性率G’とは、以下の条件で測定を行い、得られた結果に基づき、90℃以上110℃未満における貯蔵弾性率G'を平均した値をいう。なお、測定装置としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製 ARESを使用することができる。
・変形モード:ねじり
・測定周波数:一定周波数1Hz
・昇温速度:5℃/分
・ひずみ:0.2%
・測定温度:接着剤のガラス転移温度付近から200℃でまで測定
・測定部形状:パラレルプレート 8mmφ
・試料厚さ:0.8〜1mm
・前処理:温度50℃、真空度−0.02MPaで30分真空乾燥
なお、本発明における100℃における貯蔵弾性率G’は、測定条件として以下の条件を採用する以外は同様にして得られる値(G0’)との間に一対一の相関関係を有している。その対応関係を図19に示す。
・変形モード:ねじり
・測定周波数:一定周波数1rad/s
・昇温速度:5℃/分
・ひずみ:2%
・測定温度:粘着剤のガラス転移温度付近から200℃でまで測定
・測定部形状:パラレルプレート 25mmφ
・試料厚さ:0.8〜2mm
・前処理:なし
【0054】
(アクリル板に貼り付け時の発泡試験)
<発泡試験>
発泡試験は以下の条件で行った。
ポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡製コスモシャインA4300、75μm厚み)に接着剤を貼り付けた後、サイズを160mm×90mmにカットし、同サイズのアクリル板(カナセ工業製、カナセライト1300、厚さ:2mm、サイズ25cm×3cm)に貼合し、100℃の乾燥機に投入して、24時間後の発泡の有無を目視観察した。
【0055】
<熱機械分析(TMA)>
接着層を構成する材料の、100℃でのTMA(熱機械分析)の変位は−1〜2μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0〜1μm、更に好ましくは0〜0.5μmである。上記TMAの変位が小さすぎると貼り付けた後でのハガレなどが起きやすく、大きすぎると熱によってうねりが生じるために好ましくない。
(熱機械分析(TMA)の変位の測定)
熱機械分析の測定は以下の条件で行った。
・装置:セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS120
・プローブ:針入プローブ(先端径:1mm)
・荷重:10mN(1.02g)
・雰囲気:空気
・温度範囲:30℃〜200℃
・昇温時間:5℃/分
・測定試料:25μm厚みの接着層を5mm角に切り取り、石英ディスク(10mmφ)に貼り付けた。
【0056】
<熱重量分析(TG/DTA)>
接着層を構成する材料の、100℃でのTG/DTA(重量減少率)が0〜−0.4%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0〜−0.3%、更に好ましくは0〜−0.2%の接着剤が用いられる。上記TGAが大きすぎると熱による接着剤の劣化が生じるために好ましくない。
(熱重量分析の測定)
熱重量分析の測定は以下の条件で行った。
・装置:セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA220
・雰囲気:窒素(流量:250ml/分)
・温度範囲:30℃〜200℃
・昇温時間:10℃/分
・試料作製:25μm厚みの接着層を全体の重量が約10mgになるように折り重ね、試料容器にセットした。
【0057】
<剥離強度>
接着層を構成する材料の剥離強度は0.3〜1.5N/mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.2N/mm、更に好ましくは0.5〜1.0N/mmの接着剤が用いられる。上記剥離強度が小さすぎると貼り付けた後でのハガレなどが起きやすく、大きすぎるとリワーク性(貼り直し作業性)が低下し、且つ製造も困難なため好ましくない。
(剥離強度の測定)
剥離強度の測定は以下の条件で行った。
・装置:エー・アンド・デイ社製RTG-1210
・剥離角度:90°
・剥離速度:50mm/min
・測定距離:50mm
・試験環境:温度23℃、湿度50%
・接着剤試料:ポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡製コスモシャインA4300、75μm厚み)に接着層を貼り付けた後、幅を3.5mmにカットし、アクリル板(カナセ工業製、カナセライト1300、厚さ:2mm、サイズ25cm×3cm)に貼合し、温度23℃、湿度50%の環境下に1日放置後したものを測定試料とした。
【0058】
<屈折率>
接着層の材料としては、透明性が高いものであることが好ましい。(例えば、全光線透過率が90%以上、ヘイズが1.0以下)また、接着層の材料の屈折率は、1.40〜1.70の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.65、更に好ましくは1.45〜1.60である。
(屈折率の測定)
屈折率の測定は以下の条件で行った。
25℃の雰囲気下で、ナトリウムD線(589nm)を照射し、アッベ屈折率計(ATAGO社製、DR=M4)を用いて屈折率の測定をおこなった。
【0059】
複数本の溝(溝構造)を有する層の材料に限定はないが、溝構造を、後述するUV転写賦形やスペックルパターン露光により形成する場合等には、光重合性樹脂組成物の硬化物を用いることになる。
前記光重合性樹脂組成物としては、(A)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーを70〜99.9質量%、(B)光重合開始剤:0.1〜30質量%を含有するものが好ましい。
【0060】
(A)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、下記の一般式(I)で示される化合物を用いることができる。なお、一般式(I)において、Rは水素原子又はメチル基を、Aは各々独立して炭素数が1〜4のアルキレン基を、nは1〜3の整数を表す。
【化1】

【0061】
上述した(A)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーとしては、上記の一般式(I)で示される化合物の他、公知の(メタ)アクリレート基又はアリル基を有する化合物を使用することができる。
例えば、ノニルフェノールアクリレート、アルコキシ化(1)o−フェニルフェノールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピル−β'−(アクリロイルオキシ)プロピルフタレート、1,4−テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(トリエチレングリコールメタクリレート)ノナプロピレングリコール、ビス(テトラエチレングリコールメタクリレート)ポリプロピレングリコール、ビス(トリエチレングリコールメタクリレート)ポリプロピレングリコール、ビスアリールフルオレン誘導体、ビス(ジエチレングリコールアクリレート)ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA系(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子中にエチレンオキシド鎖とプロピレンオキシド鎖の双方を含む化合物等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシ化(1)o−フェニルフェノールアクリレートが屈折率の観点から好ましく、エトキシ化(1)o−フェニルフェノールアクリレート(例えば、製品名A−LEN−10、新中村化学製)が特に好ましい。
また、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物と、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアクリレート化合物とのウレタン化化合物も用いることができる。この場合のウレタン化化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量で10,000未満のものが好ましい。
上述した(A)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
前記光重合性樹脂組成物中における(A)付加重合性モノマーの含有量は、光重合性樹脂組成物の全質量基準で70質量%以上99.9質量%以下である。好ましくは75質量%以上95質量%以下である。十分に硬化させるという観点から70質量%以上であるものとし、開始剤成分やその他重合禁止剤、染料等を配合することを考慮して99.9質量%以下とする。
【0063】
前記光重合性樹脂組成物中の(B)光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジプロピルケタール、ベンジルジフェニルケタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−フルオロチオキサントン、4−フルオロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の芳香族ケトン類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、α、α−ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルグリシン、N−フェニルグリシン、さらに、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、2,3−ジオキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル−2−(O−ベンゾイルカルボニル)−オキシム等のオキシムエステル類、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、及びp−ジイソプロピルアミノ安息香酸、並びにこれらのアルコールとのエステル化物、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、テトラゾール類、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン類、及び、1−フェニル−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5
−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン等のピラゾリン類が挙げられる。
これらの中でも、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、製品名DAROCURE1173、チバ・スペシャリティ・ケミカル製)が好ましい。
【0064】
前記光重合性樹脂組成物中における(B)光重合開始剤の含有量は、光重合性樹脂組成物の全質量基準で0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
(B)の含有量を0.1質量%以上とすることにより、十分な光硬化感度が得られ、30質量%以下とすることにより、光硬化前の液状樹脂としての保存安定性が得られる。
【0065】
熱安定性、保存安定性を向上させるために、前記光重合性樹脂組成物中に、ラジカル重合禁止剤を含有させることが好ましい。
このようなラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、t−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤の含有量は、光重合性樹脂組成物の全質量基準で0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0066】
上記光重合樹脂組成物には、少量であれば有機溶剤を含有していてもよく、たとえば、メタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチルエーテル、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、クロロホルム、トルエン、m-キシレン、p-キシレン、o-キシレン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル(酢酸アミル)、酢酸イソペンチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が用いられるが、特に限定されない。これら有機溶剤は0.001〜1重量部含有することが好ましく、0.001〜0.5重量部含有することがより好ましく、0.001〜0.1重量部含有することがより好ましい。1重量部以上含有するすると、光重合樹脂組成物から発生した有機溶剤が接触している他の材料を溶解する場合があるため好ましくない。0.001重量部未満含有する場合、乾燥時間および乾燥コストがかかるので好ましくない。
【0067】
硬化後の光重合性樹脂組成物の屈折率としては、1.40〜1.70の範囲が好ましく、より好ましくは1.45〜1.70、更に好ましくは1.45〜1.65である。
屈折率が1.40より低いと、光の直進化の効果が十分に得られない場合がある。一方、屈折率が1.70より高いと製造が困難となる上、これ以上高くしてもさほど光の直進化の効果は向上しない。
【0068】
溝構造を有する層の厚さは、例えば、2〜100μm程度とすることができる。
【0069】
本発明の拡散シートを、導光板の出光面及び/又は対向面に、複数本の溝が入光面に対して垂直になるように積層すると、導光板にその入光面から入射した光の直進性が向上する。
光の直進性が向上する理由は明らかではないが、入光面から入光した光が導光板から出て、拡散シートの溝に当たって全反射する際、光の伝播方向と垂直な面内においては、入射してきた方向に戻るように反射するためであると推測される。ただし、機序はこれに限定されない。
【0070】
本発明の拡散シートの表面に溝構造を形成する方法に限定はない。
例えば、(1)溝構造に対応する凹凸パターンを有する型を用いて溝構造を成形する方法、(2)溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写型を用いて溝構造を転写する方法、(3)スペックルパターン露光により溝構造を形成する層を形成する方法等を用いることができる。
【0071】
(1)の方法として、例えば、射出成形の場合には、拡散シートを成形する金型の溝構造を形成する面に相対する位置に溝構造に対応する凹凸パターンを有するスタンパーを配置することにより、当初から溝構造を有する導光板を成形することができる。この方法は、比較的小型(32型以下程度)の導光板用の拡散シートを製造するのに適している。
また、キャスト成形の場合には、キャストした樹脂又は樹脂組成物を固める際に使用するベース板(型)に溝構造に対応する凹凸パターンを設けておくことにより、当初から溝構造を有する拡散シートを成形することができる。成形後、シートを所定のサイズにカットして(さらに必要に応じて切削加工等を施して)導光板を製造する。
さらに、押出成形の場合には、ダイ51から出てきた樹脂又は樹脂組成物52が熱いうちに、溝構造に対応する凹凸パターンを有するローラー53の間を通すことにより、当初から溝構造を有する拡散シート製造用原反シートを成形することができる(図5参照)。成形後、シートを所定のサイズにカットして(さらに必要に応じて切削加工等を施して)拡散シートを製造する。
【0072】
(2)の方法として、例えば、溝構造を有していない拡散シート(拡散シート製造用原反シート)を押出成形やキャスト成形等により成形した後、溝構造を形成する面に溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写型を用いて溝構造を転写することができる。
図6にこの方法の具体例を示す。図6の方法においては、所定のサイズにカットした透明基板61に溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写ローラー62を加熱しながら押し付けて溝構造を転写する。なお、転写ローラー62に代えてフラットなスタンパーを用いてもよい。
【0073】
なお、上述の(1)、(2)の方法で使用する金型(スタンパー)、転写型(転写ローラー)に、溝構造に対応する凹凸パターンや溝構造を形成する方法に限定はなく、例えば、切削、サンドブラスト等の機械加工によって形成してもよいし、(3)の方法において後述するスペックルパターン露光により形成した溝構造をサブマスタ型とし、このサブマスタ型に電鋳等の方法で金属を被着してこの金属に溝構造に対応する凹凸パターンを転写すること等によって作製することができる。スペックルパターン露光を利用する方法は、機械加工では困難な10μm程度以下の微細な3次元構造の形成に適している。
【0074】
(3)のスペックルパターン露光により溝構造を形成する層を形成する方法としては、具体的には次のようにしてランダムな溝構造を形成することができる。
例えば、レーザー光を用いた干渉露光によりランダムな縞模様のスペックルパターンを発生させ、これをフォトレジスト等の光重合重合性組成物からなる層に照射する。次いで、露光した光重合重合性組成物を公知の方法によって現像すると、光重合重合性組成物硬化物層に上記スペックルパターンに対応したランダムな溝構造が形成される。
ランダムな縞模様のスペックルパターンは、例えば、レーザー光を異方性の強い拡散層等で拡散させることによって発生させることができる。通常、レーザー光を拡散層で拡散させて露光面に照射すると、スペックルは円形ムラとして発生するが、拡散層を異方性の強いものとすると、スペックルを縞模様状にすることができる。さらに、レーザー光の波長やレーザー光を拡散させる条件等を適宜変更することにより、所望のランダム縞模様を得ることが可能となる。具体的には、特表2004−508585号公報の段落0047〜0057に開示される方法等によって発生させることができる。
なお、干渉露光によるスペックルパターンを用いた微細な凹凸パターンの作製方法は周知であり、例えば、特許第3413519号、特表2003−525472号公報及び特表2004−508585号公報等に開示されている。
【0075】
また、拡散シートが、接着層、シート基材及び溝構造を有する層の積層体である場合には、例えば、次のようにして拡散シートを製造することができる。
ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等からなる透明なシート基材上に、例えば、紫外線硬化樹脂層を塗布し、ロール状の金属スタンパを用いて、ロールツーロールで連続的にUV転写賦型する方法等により紫外線硬化樹脂層に溝構造を形成するなどして、溝構造を有する層を形成する。
次いで、上記シート基材の溝構造を形成した面とは反対側の面に、透光性の接着剤を塗布すると共にその上にポリエチレンテレフタレート等からなる剥離フィルムを貼り合わせるか、又は、剥離フィルム付きの接着フィルムの透光性接着層を貼り合わせる等して、接着剤側が剥離フィルムでカバーされた多層フィルムを製造する。このような多層フィルムの層構成の具体例を図7に示す。図7の7a、7bは、共に、剥離フィルムを片側に設けた多層フィルムである。多層フィルム7aにおいては、下から順に、剥離フィルム71、接着層72、ベースフィルム73及び溝構造が形成された層74が積層されている。また、多層フィルム7bにおいては、溝構造が形成された層74の上にさらに、接着層及び台紙フィルム層が設けられ、下から順に、剥離フィルム71、接着層72、ベースフィルム73、溝構造が形成された層74、接着層75及び台紙フィルム76が積層されている。なお、剥離フィルム71及び台紙フィルム76は、拡散シートの製造中や導光板への貼合の際、台紙又は保護フィルムの役割を果たすものであり、その厚みに限定はなく、例えば(その材質にもよるが)、10〜200μmとすることができる。
そして、この多層フィルム7a又は7bを拡散シートのサイズに切断することにより、拡散シートが得られる。このときのサイズは、導光板の溝構造を形成する面(出光面/対向面)と同じとしてもよいし、これより若干小さくしてもよい。拡散シートのサイズを、導光板の溝構造を形成する面より小さくしておくと、貼り合わせの際に、多少のずれがあってもはみ出しが起きる心配がなく、剥がれにくい高信頼性の導光板が提供できる。また、貼り合わせ精度にも尤度が生まれ生産性も向上する。
【0076】
なお、このような多層構成の拡散シートは、導光板の製造工程や導光板を有する面光源装置の組立工程において、次のようにして、導光板(基材)に貼り合わせられる。
多層フィルム7aから得られた拡散シートの場合は上記溝構造が形成されたフィルム(72〜74)を剥離フィルム71から剥がして接着層72を介して導光板に貼り合せる。多層フィルム7bから得られた拡散シートの場合は、上記溝構造が形成されたフィルム(71〜74)を接着層75から剥がし、次いで剥離フィルム71を剥がして接着層72を介して導光板に貼り合わせる。最後に、必要に応じてフィルムと導光板との間の空気をローラー等により抜くことにより密着させてもよい。
なお、貼り合わせに先立ち、接着層72及び/又は導光板の溝構造を設ける面にエキシマUV処理やコロナ処理等の表面処理を施すことによって表面の分子結合を切断した後、直ちに接着層72と導光板とを密着させることによって、貼り合わせ強度を向上させることもできる。
【0077】
本発明の拡散シートに設けられる溝構造は、その表面形状により、溝構造に垂直な方向への拡散角度が最大で、溝構造に平行な方向への拡散角度が最小である異方性の拡散特性を示す。
拡散角度(溝構造に垂直に光線を入射させたときの出射光の拡散角度(FWHM))の具体的な値に限定はないが、溝構造に垂直な方向への拡散角度が40°以上であることが好ましく、40°〜90°としてもよいし、50°〜70°としてもよいし、65°としてもよい。一方、溝構造に平行な方向への拡散角度は、例えば10°以下とすることができる。
溝構造がこのような拡散角度を与える表面形状を有していると、光の直進化の効果が十分に得られる。
溝構造に対して平行な方向、垂直な方向の拡散角度は、共に、各溝の形状や溝構造の深さ及びピッチ等を適宜変更することによって調整することができ、スペックルパターンを利用して溝構造を形成する場合、これらはレーザー光を拡散させる条件等を適宜変更することによって調整できる。
また、拡散特性は溝構造の全領域において略一定であることが好ましい。
【0078】
ここで、「拡散角度」とは、透過光強度がピーク強度の半分に減衰する角(半値角)の2倍の角度(FWHM:Full Width Half Maximum)をいう(図8参照)。この拡散角度は、例えば、Photon Inc.製のGoniometric Radiometers Real−Time Far−Field Angular Profiles Model LD8900や日本電色工業株式会社製のGC5000L等の変角色差計を用いて、溝構造の法線方向から、溝構造(溝構造を形成した材料)に入射した光の透過光強度の角度分布(透過光の強度の出射角度に対する分布)を測定することによって求めることができる。ここで、溝構造の法線方向とは、図1の16に示す方向を指す。
【0079】
次に、本発明の導光板について、その一例の概略図を示す図1を用いて説明する。
本発明の導光板1は、出光面11と、出光面と対向する対向面(図示せず)と、出光面と対向面との間に挟まれた少なくとも1つの入光面12を有する。ここで、「出光面」とは、当該導光板を組み込んだ面光源装置を表示装置内に配置する際に、光を照射するべき表示パネル(液晶パネル)の側に対面することになる面をいう。通常は、入光面から光を入射させたときの輝度が導光板の面の中で最も高くなるように設計されている。
さらに、本発明の導光板おいては、出光面及び対向面の少なくとも一方に、上述した本発明の拡散シート13が、その表面に形成された複数本の溝14が導光板の入光面12に対して垂直になるように(入光面12の出光面11と接する辺15に垂直となるように)積層されている。
本発明の導光板においては、近傍に配置された光源の光を入光面12から導光板内に入射させ、板内部及び拡散シートとの間で繰り返し反射させて導光し、導光した光を出射機構(図示せず)によって出光面11に向け、出光面11から外部に出射させる。
【0080】
拡散シートは、出光面及び対向面のどちらか一方にのみ積層されていてもよいし、出光面及び対向面の両方に積層されていてもよい。両方の面に積層すると、導光板の反りを抑制することができるので好ましい。
また、拡散シートは、出光面及び/又は対向面の少なくとも一部に積層されていればよく、積層される領域に限定はないが、例えば、出光面、対向面の端(各辺)から0.1〜50mm内側全面に積層されていることが好ましい。
【0081】
拡散シートは、導光板上に単に積層するだけでもよいし、粘着剤や接着剤を介して積層(固定)してもよい。拡散シートが接着層を含む多層構造体である場合には、その接着層を利用して、導光板に固定することができる。
【0082】
本発明の導光板の形状(外形)は、出光面、これに対向する対向面及びこれらに挟まれた入光面を有していれば特に限定はない。また、入光面は少なくとも1つあればよく、2つあってもよい。導光板の厚さ(入光面における、出光面と対向面との間の距離)に限定はないが、例えば、1.0〜10.0mm程度とすることができる。
導光板が入光面を2つ有する場合、導光板の形状は出光面と対向面を主面とする平板状の直方体であることが好ましく、さらに、2つの入光面が対向していることが好ましい。この場合、対向する二つの入光面は長さが同じであるため、点光源の数や種類を同一にし、部品の共通化を図ることができるというメリットがある。
【0083】
また、本発明の導光板は、必要に応じて有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整剤及び離型剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0084】
本発明の導光板の対向面及び/又は出光面には、導光した光を出光面から出射させるための出射機構を設けることができる。
出射機構の具体例としては、白色インクや拡散インク(拡散材を含有する透明インク)等による印刷パターン、熱転写・射出成形によるシボパターン、CO2レーザー等を利用したレーザーパターン(スパッタリングによる凹のシボパターン)等の光散乱パターンが挙げられる。
出光面における出光分布(輝度分布)を均一にするために、出射機構は、入光面近傍では疎に、入光面から離れるにしたがって密に設けることが好ましい。例えば、入光面から遠ざかる方向に向かってグラデーションを有する光散乱パターンを形成することができる。
光散乱パターンとしては、例えば、ドットや凹凸形状を、入光面から離れるに従って徐々に面積が広くなるようなグラデーションパターンにしたものや、同一大のドットや凹凸形状を光源から離れるに従ってピッチが狭くなるようにしたグラデーションパターンが挙げられる。この場合のドットや凹凸の形状には円形、四角形などが挙げられ、その大きさは例えば、0.1〜2.0mm程度とすることができる。
【0085】
次に、本発明の面光源装置について説明する。
図9に本発明の面光源装置の一例の概略図を示す。
本発明の面光源装置9は、本発明の導光板91と、導光板の入光面の近傍に配置された複数の点光源92とを有する。
点光源に限定はないが、LED(発光ダイオード)を用いることが好ましい。LEDの種類に限定はなく、例えば、青色LEDにより緑色、赤色蛍光体を励起するワンチップタイプの擬似白色LED、赤色/緑色/青色LEDを組み合わせて白色光を作るマルチチップタイプ、更には近紫外LEDと赤色/緑色/青色蛍光体を組み合わせたワンチップタイプの擬似白色LED等が挙げられる。
図10に本発明で使用できる箱型のLED10の一例の概略図を示す。なお、LEDの外形や発光面のサイズに限定はないが、外形が5.6mm(幅)×3.0mm(高さ)×1.0mm(厚み)程度で、発光面101の横幅102が5mm以下のものが一般的に使用されている。
【0086】
点光源の配置方法に限定はないが、導光板の入光面に沿って(出光面に平行に)一直線上に等間隔(「等間隔」には±10%の誤差を含むものとする)に配置することが好ましい。この場合、点光源の配列ピッチPは、例えば、0.2mm〜50mm程度にするのが一般的である。輝度ムラ防止の観点からは、点光源はなるべく密に配置されている方がよく、基板上への実装制約の観点ではある程度距離が開いている方が良い。点光源の配列ピッチは、好ましくは0.5mm〜30mm、より好ましくは1〜15mmである。
【0087】
また、本発明の面光源装置は、導光板としてローカルディミングに適した本発明の導光板を使用しているので、ローカルディミングを実施できるよう、入光面近傍に配置する複数の点光源を2つ以上のグループに区画し、各点光源の明るさ(点滅)をグループ毎に独立して制御できるようにしてもよい。さらに、複数の点光源を、複数のグループに(好ましくは端から順に等分に)区画し、各グループに属する点光源が上下(場合によっては左右)に順次点灯するように制御すれば、3次元映像の表示に利用されるスキャニングが可能となる。
【0088】
本発明の面光源装置においては、導光板及び点光源に加え、反射シート等の、所謂エッジライト方式の面光源装置において一般に採用される光学要素をさらに含むことができる。具体的には、反射シートを導光板の対向面下方に配置することができる。さらに、導光板の出光面上方には、プリズムシートや、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズシートなどの集光シートや、液晶パネルの偏光板での光学損失を回避するための偏光反射シートなどを一枚又は複数枚組み合せて配置することもできる。
【0089】
次に、本発明の表示装置について説明する。
本発明の表示装置は、面光源装置の光の透過を調整することによって表示をする表示エリアを有する表示パネルと、表示パネルの背面に配置された前述の面光源装置とを有する。
図11に本発明の表示装置11の一例の断面図を示す。図11において、導光板111の出光面の上には溝構造が形成された拡散シート112が積層され、導光板の対向面には出射機構113が形成されている。導光板の入光面の近傍にはLED114が、対向面の下方には反射シート115が、出光面の上方には拡散シート116及びプリズムシート117を介して表示パネル118が、それぞれ配置され、これらがバックライトシャーシの中119に収められている。
なお、図11の表示装置11においては、表示パネル118として液晶表示パネルが用いられており、これは、液晶層(図示せず)と、これを挟む2枚のガラス板1181と、ガラス板の表裏に設けられた偏光板1182で構成されている。
【0090】
表示パネルの画素ピッチに限定はないが、導光板に設けられた溝構造のピッチが10〜20μm程度の場合には、表示パネルの画素ピッチを100μm以上とするとモアレの発生が十分に低減できる。
【0091】
導光板の出光面において、入光面近傍では輝度ムラが発生し十分な表示品質を保証できないこともあるので、表示パネルの表示エリア(アクティブエリア)は、導光板の入光面よりも内側から始まるように設計されることが好ましい。
すなわち、導光板91の入光面93と表示エリアとの間の水平距離G(導光板91上に表示エリアに相当する領域94を投影したときのその領域94と入光面93との距離(図9参照))を一定以上確保するように設計されることが好ましい。
【0092】
本発明の導光板が入光面を2つ有する場合、第一の入光面の近傍に配置された点光源の配列ピッチをP1、第二の入光面の近傍に配置された点光源の配列ピッチをP2、前記第一の入光面と前記表示エリアとの間の水平距離をG1、前記第二の入光面と前記表示エリアとの間の水平距離をG2としたときに、P1/G1:P2/G2=100:90〜100:110の範囲内であることが好ましく、P1/G1:P2/G2=100:95〜100:105の範囲内であることがより好ましい。
また、G1とG2は必ずしも同一にする必要はない。
【0093】
表示パネルは、液晶表示パネルであることが好ましい。液晶表示パネルとしては従来使用されているものを使用することができるが、その構成の一例の概略を図12に示すと共に、以下に説明する。
図12は液晶表示パネル12の一例の正面概略図である。点線121の内側が表示エリア122であり、表示エリア122の外側には、光漏れ防止のブラックマトリックス123が設けられ、その裏側にパネル配線(図示せず)等が存在する。図12において、124、125は、それぞれ、ソースライン(後述、図示せず)に電圧を印加するためのドライバICであるソースチップ、ゲートライン(後述、図示せず)に電圧を印加するためのドライバICであるゲートチップである。
【0094】
透過型の液晶表示パネルでは、一般に、透明基板上にマトリクス状に配置された多数の画素電極が、透明基板上に配置されたアクティブマトリクス素子によって駆動される。透明基板上にアクティブマトリクス素子および画素電極が設けられたアクティブマトリクス基板には、液晶層が積層状態で設けられており、この液晶層を挟んでアクティブマトリクス基板と対向するように対向基板が配置されている。対向基板は、対向電極が設けられた透明基板であり、この対向電極が液晶層における表示領域に対向している。
【0095】
アクティブマトリクス基板に設けられたアクティブマトリクス素子には、各画素電極にそれぞれ接続されたアクティブ素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)が設けられている。また、アクティブマトリクス素子には、行方向に沿って相互に平行に配置された複数のゲートラインと、各ゲートラインと直交する列方向に沿って相互に平行に配置された複数のソースラインとが設けられており、各ゲートラインと各ソースラインとの交差部近傍に各TFTがそれぞれが配置されている。そして、各TFTは、近接する交差部をそれぞれ形成するゲートラインおよびソースラインのそれぞれに接続されている。
【0096】
各TFTは、それぞれが接続されたゲートラインから供給されるゲート信号によってオンして、それぞれが接続されたソースラインから供給されるソース信号を、それぞれに接続された画素電極に供給するように構成されている。
【0097】
このような液晶表示パネルにおいては、通常、1フレーム毎に、アクティブマトリクス基板において行方向に沿って配置された各ゲートラインに対して、列方向に沿った順番に線順次にゲート信号(水平同期信号)が供給されるようになっており、列方向に隣接するゲートラインに対して連続してゲート信号が供給される。
【0098】
表示パネルとしてこのような液晶表示パネルを使用する場合、上記ゲートラインの方向と、導光板に積層された拡散シートの複数本の溝の方向が一致する(平行になる)ように、表示パネルと導光板(面光源装置)を配置することが好ましい。
【0099】
本発明の表示装置は、面光源装置としてスキャニングを実施できるように構成されたもの(複数の点光源を複数のグループに(好ましくは端から順に等分に)区画し、各グループに属する点光源が上下又は左右に順次点灯するよう制御可能なもの)を採用した場合、3次元映像を表示するのに適している。この場合、表示パネルが右目用画像と左目用画像を交互に表示するようにすることが好ましく、また、映像信号を1フレーム以上記憶するフレームメモリを設けることが好ましい。また、表示パネルの画素ピッチは100μm以上とすることが好ましい。
3次元映像を表示する場合、面光源装置の各光源のグループ毎の点灯制御を表示パネルの光の透過の調整と同期するようにすることが好ましく、詳細には、各グループに属する光源が、表示パネルのゲートの動作と同期して(ゲート走査(図12の矢印の方向)に追従するように)、順次点灯するように構成することが好ましい。
【0100】
本発明の表示装置131を、スピーカー1321の設けられた前キャビネット132;テレビチューナー回路基板133、電源回路基板134、制御回路基板135等の各種回路基板;裏キャビネット136及びスタンド137等と組み合せることにより、テレビ受信装置を製造することができる。図13にこのようなテレビ受信装置13の構成の一例を示す。
また、本発明の表示装置はゲーム等に使用するモニターにも好適に使用できる。このようなモニターの構成は、テレビチューナー回路基板133を有さない以外は図13のテレビ受信装置13と同様であり、スピーカー1321は場合により設けなくてもよい。
【実施例】
【0101】
[実施例1]
ポリカーボネートからなる厚み125μmの透明なシート状基材(帝人化成株式会社製 パンライトPC−2151)の一方の面に、表1に示す特性を有する溝構造を表面に有する紫外線硬化樹脂層を、他方の面に、剥離紙の上に積層されたアクリル系粘着剤(G’=77,000Pa(G0’=18,000Pa))フィルム(パナック株式会社製パナクリーンPD−S1、粘着剤フィルム厚さ:25μm、100℃でのTG/DTA(重量減少率)−0.06%)を貼合し、接着層付き拡散シートを作製した。
この接着層付き拡散シートを、SONY製液晶テレビBRAVIA 32EX700から取り出したPMMA製導光板(幅400mm、長さ700mm、厚み4mmの平板)の出光面と同じ大きさに切断し、出光面上に、接着層を介して貼合して、導光板を作製した。この際、拡散シート表面に形成された複数本の溝が、導光板の入光面に対して垂直になるように貼合した。
具体的には、まず導光板の出光面に前述の拡散シートを接着層と導光板が接するようにして仮留めし、その後拡散シートの剥離紙を剥がしながらラミネーターを用いて貼合した。
以上のようにして作製した導光板の出光面上に、別の拡散シート(東レセーハン株式会社製 TDF187)を1枚積層すると共に、入光面に沿って9個のLEDを配列ピッチが42mmとなるように略均等に配置し、面光源装置を作製した。この際、発光幅は89mmであった。尚、発光幅とは点灯している両端のLED間距離を表す。
LEDを点灯し、導光板上に積層した拡散シート上の入光面側端部から10mm、200mm、及び10cm内側に相当する位置における輝度を、コニカミノルタ製 二次元色彩輝度計(CA−2000)を用いて測定し、後述する直進性割合、広がり角を求めた。
【0102】
<直進性評価1>
導光板の出光面上のLED光源からの距離が10cmである入光面と平行な直線における輝度断面(図17)から、直進性割合を求めた。
直進性割合とは、上記輝度断面における輝度の積分値をS、上記輝度断面のうちLEDの入光範囲(点灯させた9個のLEDの発光面とこれらの発光面の間に挟まれた部分に対向する範囲)にあたる部分の輝度の積分値をAとしたときに、A/S×100であらわされる値であり、その値が大きいほど(Aの割合が高いほど)導光板へ入光した光が広がらずにまっすぐ光が進む、すなわち、直進性が高いことを示す(図17参照)。
溝構造を持たない導光板(ソニー株式会社製 BRAVIA KDL−32EX700内蔵)と比較したときの、
直進性割合の増加が10%以上であるものを◎、
直進性割合の増加が5%以上10%未満にとどまるものを○、
直進性割合の増加が1%以上5%未満にとどまるものを△、
直進性割合の増加が1%未満であるもの、または、直進性割合が低くなるものを×
として評価した。結果を表1に示す。
【0103】
<直進性評価2>
図18に示すように、出光面上のLEDからの距離が10mmである入光面と平行な直線の輝度断面(図17)のFWHM(Full Width Harf Maximum)A−A´と、LEDからの距離が200mmである入光面と平行な方向の輝度断面(図示せず)のFWHM B−B´と、A−A´をLEDから200mmの距離まで190mm平行移動させたC−C´において、BAとCAの成す角度∠BACの値(tan-1((距離200mmの輝度断面のFWHM−距離10mmの輝度断面のFWHM)/380)を比較した。この角度(以下「広がり角度」という。)が小さいほど、直進性が高いことを示す。
広がり角度が10°未満であるものを◎、
広がり角度が10°以上15°未満にとどまるものを○、
広がり角度が15°以上20°未満にとどまるものを△、
広がり角度が20°以上のものを×
として評価した。
比較結果を表1に示す。
【0104】
<光到達性評価>
LEDの入光範囲+左右3cmの範囲内にある測定点における輝度の平均値を、光の伝播方向に対してプロットした輝度プロファイルを光到達性評価用の輝度断面とした。
光到達性は、実施例の前記光到達性評価用輝度断面におけるピーク輝度(輝度の最大値)が、溝構造を持たない比較例1の導光板のそれと比較してどれだけ増加したかによって評価した。
溝構造を持たない導光板に対するピーク輝度の増加率が、
0%以上40%未満のものを◎、
40%以上80%未満のものを○、
80%以上のものを△
として評価した。結果を表1に示す。
【0105】
<反りの評価>
実施例1で用いた拡散シートを、サイズ160mm×90mmのアクリル板(カナセ工業製、カナセライト1300、厚さ:2mm、サイズ25cm×3cm)に貼合し、得られた積層体を、温度60℃、湿度90RH%の恒温恒湿槽に24時間後保管した。その後、室温で10分放置し水平な台からの変位量を定規で測定した。測定値はアクリル板の隅の4点平均値とし、以下のように評価した。
変位量が0.1mm未満:◎
変位量が0.1mm以上〜0.3mm未満:○
変位量が0.3mm以上〜0.5mm未満:△
変位量が0.5mm以上:×
【0106】
<ホットスポットの評価>
LEDを点灯し、出光面上のホットスポットの有無を目視で確認し以下の様に評価した。
ホットスポットが全く観察されない:○
ホットスポットがわずかに観察される:△
ホットスポットがはっきりと観察される:×
なお、以上の○、△及び×に該当する出光分布の例を図16に示した。
【0107】
[実施例2]
拡散シートの溝構造の特性を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の測定を行った。
[実施例3]
拡散シートの溝構造の特性を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の測定を行った。
[実施例4]
拡散シートの溝構造の特性を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の測定を行った。
[実施例5]
拡散シートの溝構造のシート状基材をポリメチルメタクリレートフィルム(株式会社カネカ製、サンデュレンSD014NST、厚み50μm)に変更した以外は実施例1と同様の測定を行った。
【0108】
[実施例6]
接着層を、剥離紙の上に積層されたアクリル系粘着剤(G'=84,000Pa(G0’=19,800Pa))フィルム(藤森工業株式会社製TR−1801A、粘着剤フィルム厚さ:25μm、100℃でのTG/DTA(重量減少率)−0.05%、剥離強度:0.63N/mm)に変更した以外は実施例1と同様にして測定を行った。
[実施例7]
接着層を、剥離紙の上に積層されたアクリル系粘着剤(G'=68,000Pa(G0’=16,900Pa))フィルム(新タック化成株式会社製CCL/D1/T3T3、粘着剤フィルム厚さ:25μm 剥離強度:0.61N/mm)に変更した以外は実施例1と同様にして測定を行った。
[実施例8]
接着層を、剥離紙の上に積層されたアクリル系粘着剤(G'=44,000Pa(G0’=10,700Pa))フィルム(東洋インキ株式会社製EXC10−076、粘着剤フィルム厚さ:50μm)に変更した以外は実施例1と同様にして測定を行った。
[実施例9]
接着層を、剥離紙の上に積層されたアクリル系粘着剤(G'=160,000Pa(G0’=44,600Pa))からなるフィルム(リンテック株式会社製MO−3006C、粘着剤フィルム厚さ:25μm、100℃でのTG/DTA(重量減少率)−0.09%)に変更した以外は実施例1と同様にして測定を行った。
[実施例10]
接着層を、剥離紙の上に積層されたアクリル系粘着剤(G'=30,000Pa(G0’=6,100Pa))からなるフィルム(リンテック株式会社製MO−3012C、粘着剤フィルム厚さ:25μm、100℃でのTG/DTA(重量減少率)−0.10%)に変更した以外は実施例1と同様にして測定を行った。
【0109】
[実施例11]
拡散シートを導光板の出光面よりも長さが20mm短くなるように切断し導光板の出光面の入光面から10mm内側から貼合した以外は実施例1と同様にして測定を行った。
【0110】
[比較例1]
拡散シートを貼合せずに、SONY製液晶テレビBRAVIA 32EX700から取り出したに使用されていたPMMA製導光板(幅400mm、長さ700mm、厚み4mmの平板)を用いて実施例1と同様の測定を行った。
【0111】
比較例、実施例1及び実施例4に関する測定結果を表1に示す。
【表1】

表1より、本発明の溝構造を有する拡散シートを用いると、光到達性を損なうことなく、点光源からの光の直進性が大きく向上することが確認できた。また、拡散シートの粘着層およびシート状基材の材料を選択することにより、導光板に拡散シートを貼合した際の反りを抑制する事が可能となることも確認できた。さらに、拡散シートの導光板端面からの貼合位置を選択することにより、ホットスポットを軽減することが可能であることも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の拡散シートは、LED等の点光源を用いるエッジライト方式の面光源装置に有用であり、光源からの光を非常に高い直進性をもって導光できるので、とりわけ、ローカルディミング(特に、スキャニング)を行う面光源装置に好適に利用できる。さらには、3次元画像や映像を表示する液晶表示装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0113】
1 導光板
11 出光面
12 入光面
13 拡散シート
14 溝
15 入光面の出光面と接する辺
16 出光面の法線方向
33 溝
41 入光面
51 ダイ
52 樹脂又は樹脂組成物
53 構造に対応する凹凸パターンを有するローラー
61 透明基板
62 転写ローラー
7a 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
7b 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
71 剥離フィルム
72 接着層
73 シート基材
74 溝構造が形成された層
75 接着層
76 台紙フィルム
9 面光源装置
91 導光板
92 点光源
93 入光面
94 表示エリアに相当する領域
10 LED
101 発光面
102 発光面の横幅
111 導光板
112 溝構造
113 出射機構
114 LED
115 反射シート
116 拡散シート
117 プリズムシート
118 表示パネル
1181 ガラス板
1182 偏光板
119 バックライトシャーシ
12 液晶表示パネル
122 表示エリア
123 ブラックマトリックス
124 ソースチップ
125 ゲートチップ
13 テレビ受信装置
131 表示装置
132 前キャビネット
1321スピーカー
133 テレビチューナー回路基板
134 電源回路基板
135 制御回路基板
136 裏キャビネット
137 スタンド
G 導光板の入光面と表示エリアとの間の水平距離
P 点光源の配列ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に互いに平行でランダムな複数本の溝を有する拡散シート。
【請求項2】
前記複数本の溝の平均ピッチが30μm以下である、請求項1に記載の拡散シート。
【請求項3】
前記複数本の溝の平均深さが1〜50μmである、請求項1又は2に記載の拡散シート。
【請求項4】
前記複数本の溝が、スペックルパターン露光により形成されたものである、請求項1〜3いずれか1項に記載の拡散シート。
【請求項5】
前記複数本の溝の内側面の平均勾配の平均値が0.3〜2.0である、請求項1〜4いずれか1項に記載の拡散シート。
【請求項6】
前記複数本の溝の内側面の平均勾配の標準偏差が0.1〜0.5である、請求項1〜5いずれか1項に記載の拡散シート。
【請求項7】
前記複数本の溝を構成する表面のうち、斜面角度が40度〜60度であるものの割合が5%以上である請求項1〜6いずれか1項に記載の導光板。
【請求項8】
前記複数本の溝に垂直な方向への拡散角度が40度以上である、請求項1〜7いずれか1項に記載の拡散シート。
【請求項9】
前記複数本の溝に平行な方向への拡散角度が10度以下である、請求項1〜8いずれか1項に記載の拡散シート。
【請求項10】
シート状基材と、
前記シート状基材の少なくとも一方の表面に設けられた互いに平行でランダムな複数本の溝を有する層と、
を含む、請求項1〜9いずれか1項に記載の拡散シート。
【請求項11】
前記シート状基材が、ポリメタクリル酸メタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリスチレン及びポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの高分子化合物を含む樹脂組成物からなる、請求項10に記載の拡散シート。
【請求項12】
接着層をさらに含む、請求項10又は11に記載の拡散シート。
【請求項13】
前記接着層は、100℃における貯蔵弾性率G'が20,000〜200,000Paである材料で構成されている請求項12に記載の拡散シート。
【請求項14】
前記接着層の厚みが1〜300μmである、請求項12又は13に記載の拡散シート。
【請求項15】
前記シート状基材の一方の表面に前記複数本の溝を有する層が設けられ、他方の表面に前記接着層が設けられている、請求項12〜14いずれか1項に記載の拡散シート。
【請求項16】
出光面と、該出光面と対向する対向面と、前記出光面と前記対向面との間に挟まれた少なくとも1つの入光面を有する導光板であって、
前記出光面及び対向面の少なくとも一方に、請求項1〜15いずれか1項に記載の拡散シートが積層されている、導光板。
【請求項17】
出光面と、該出光面と対向する対向面と、前記出光面と前記対向面との間に挟まれた少なくとも1つの入光面を有する導光板であって、
前記出光面及び対向面の両方に、請求項1〜15いずれか1項に記載の拡散シートが積層されている、導光板。
【請求項18】
前記拡散シートが、前記出光面及び/又は前記対向面の端から0.1〜50mm内側の領域に積層されている、請求項16又は17に記載の導光板。
【請求項19】
前記対向面が、出射機構を有する、請求項16〜18いずれか1項に記載の導光板。
【請求項20】
請求項16〜19いずれか1項に記載の導光板と、
該導光板の前記少なくとも1つの入光面の近傍に配置された複数の光源と、
を有する面光源装置。
【請求項21】
前記複数の光源が2つ以上のグループに区画され、各光源の明るさがグループ毎に独立して制御可能である、請求項20に記載の面光源装置。
【請求項22】
光の透過を調整することによって表示をする表示エリアを有する表示パネルと、
該表示パネルの背面に配置された請求項20又は21に記載の面光源装置と、
を有する表示装置。
【請求項23】
前記表示パネルが、
少なくとも一辺に表示電圧を供給するソースと、
前記少なくとも一辺に直交する少なくとも一辺に前記ソースが供給する電圧を書き込むラインを制御するゲートを有する、
請求項22に記載の表示装置。
【請求項24】
前記ラインの方向と導光板に積層された拡散シートの複数本の溝の方向が一致している、請求項23に記載の表示装置。
【請求項25】
前記面光源装置の光源が、前記ゲートの動作と同期して順次点灯するように構成されている、請求項23又は24に記載の表示装置。
【請求項26】
前記面光源装置の光源のグループ毎の明るさ制御が、前記表示パネルの光の透過の調整と同期するように構成されている、請求項22〜25いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項27】
前記表示パネルが、右目用画像と左目用画像を交互に表示するように構成されている、請求項22〜26いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項28】
前記表示パネルの画素ピッチが、100μm以上である、請求項22〜27いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項29】
さらに、映像信号を1フレーム以上記憶するフレームメモリを有する、請求項22〜28いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項30】
請求項22〜29いずれか1項に記載の表示装置と、
放送映像信号を受信するチューナーと、
を有するテレビ受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−226290(P2012−226290A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124442(P2011−124442)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】