説明

拡散シート

【課題】輝度ムラを抑制できる拡散シート、光源ユニット、及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シート状基材の少なくとも一の主面に凹凸構造を有し、凹凸構造を構成する斜面と主面とのなす角度を斜面角度とし、所定の面積を有する測定領域において斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の割合が、シート面内の所定の方向に沿ってピーク値を示すピーク領域とボトム値を示すボトム領域とを含んで周期的に変化し、かつ、ボトム領域における斜面角度の平均値が5°以上であり、所定の方向における一周期分の測定領域を見た場合、縦軸に各測定領域における斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の100分率の計算値が6.0%以上となる測定領域の割合が30%以上70%未満とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等の背面照明(back lighting)に用いられる拡散シート、光源ユニット及びこれらを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示装置は、携帯電話、PDA端末、デジタルカメラ、テレビ、パーソナルコンピュータ用ディスプレイ、ノートパソコン、デジタルフォトフレームなどの幅広い分野で利用されている。液晶表示装置においては、例えば、液晶表示パネルの背後に光源ユニットを配置し、この光源ユニットからの光を液晶表示パネルに供給することにより、画像を表示する。
【0003】
液晶表示装置に使用する光源ユニットを大別すると、液晶表示パネル配置側を上方としたとき、当該液晶表示パネルの直下に光源を複数配置した構成の直下型光源ユニットと、液晶パネルの直下に配置した導光体の側端面に光源を配置した構成のエッジライト型光源ユニットとがある。
【0004】
上記のような各種液晶表示装置に使用される光源ユニットは、表示画像を見やすくするために、液晶表示パネルに均一な光を供給し、かつできるだけ多くの光を供給することが要求される。すなわち光源ユニットには、光拡散性に優れると共に、高い輝度が得られるという光学特性が要求される。
【0005】
ところで、前記のエッジライト型光源ユニットにおいては、導光体の側端面に光源が配置されているため、光源ユニット自身を薄型化できるという長所を有する反面、導光体を通すことにより輝度が低くなるという短所を有している。
【0006】
これに対して、前記の直下型光源ユニットは、高い輝度が得られるという長所を有する反面、液晶表示パネル面の光源の上部と光源間の上部との間での輝度が不均一化しやすいという短所を有している。そのため、直下型光源ユニットにおいては、光源と液晶表示パネルとの間隔をある程度取った上で、光を拡散させる機能を有する光学シート、例えば拡散板や拡散シートを、光源と液晶表示パネルとの間に配置するようにしている。
【0007】
このような輝度ムラを軽減させることのできる拡散シートとして、光の拡散度合が異なる複数の拡散層(レンズ層)が分布形成されていることを特徴とする拡散シートが提案されている(特許文献1)。この拡散シートは、入射光を拡散出射することで輝度ムラを低減する機能を有し、例えば、少なくとも光源の直上位置にあたる表面部位に拡散度合の大きい第一の拡散層を、また、光源の非直上位置にあたる表面部位に拡散度合の小さい第二の拡散層を分布形成する。その結果、光源の直上位置では光が広範囲に拡散することで輝度が低減し、光源の非直上位置では光が狭範囲に拡散することで輝度の低減が抑制される。
【0008】
また、平面視における光源の投影領域を含む出光面の領域における光の拡散角度が、前記光源の間の投影領域を含む出光面の領域における光の拡散角度より高くなるような多数の凹凸構造を前記出光面に有する拡散シートが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−3852号公報
【特許文献2】特開2009−244846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年は、液晶表示装置の薄型化が進み、光源と、該光源光を拡散させるための光学シート(上述の拡散シート等)との間の距離が短くなっている。また、コスト低減及び消費電力低減のため、光源ユニットの光源数を削減する手法も用いられている。このように、液晶表示装置において光源(例えば冷陰極管:CCFL)の数を減らした場合や、光源ユニットの厚さを減らした場合、輝度ムラの問題が顕著となる。
【0011】
これは、光源の数を減らした場合、光源と光源の間の距離が長くなり、また、光源ユニットの厚さを減らした場合、光源と光学シートとの距離が短くなるため、どちらの場合も「光源近傍領域(前記の光源の直上位置、光源の投影領域に相当)」と「光源と光源の間領域(前記の光源の非直上位置、光源の間の投影領域に相当)」間の光強度差が拡大し、輝度ムラが発生しやすくなることによるものである。
【0012】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、面内に発生する輝度ムラを抑制できる拡散シート、光源ユニット、及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、表面に微細な凹凸を有する拡散シートの該凹凸の斜面分布において50°以上60°以下の斜面の割合が重要な技術的意義を有することを見出し、0°以上70°以下の斜面に対する50°以上60°以下の斜面の割合がシート面内の所定の方向に沿って周期的に変化する拡散シートによって上述した従来技術の問題を解決して本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明の拡散シートは、シート状基材の少なくとも一つの主面に凹凸構造を有する樹脂層が積層されている拡散シートであって、横軸に前記凹凸構造を構成する斜面と前記主面とのなす斜面角度をとり、縦軸に所定の面積を有する測定領域における前記斜面角度を有する測定点の数をとった斜面角度分布図において、斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の割合が、前記シート面内の所定の方向に沿ってピーク値を示すピーク領域とボトム値を示すボトム領域とを含んで周期的に変化し、かつ、前記ボトム領域における前記斜面角度の平均値が5°以上であり、横軸に前記所定の方向における全測定領域をとり、縦軸に各測定領域における斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の100分率の計算値をとった割合分布図において、前記100分率の計算値で一周期分の前記測定領域を見た場合、前記100分率の計算値が6.0%以上となる測定領域の割合が30%以上70%未満であることを特徴とする。
【0015】
本発明の拡散シートにおいて、斜面角度分布図の前記ピーク領域において、前記斜面角度が30°である測定点の数に対する、前記斜面角度が0°である測定点の数の比が1.1以上3.5以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の拡散シートにおいて、前記凹凸構造が、干渉露光によるスペックルパターンを用いて形成された凹凸構造であることが好ましい。
【0017】
本発明の拡散シートにおいて、前記凹凸構造を有する樹脂層が、屈折率1.3以上1.7以下の材料からなることが好ましい。
【0018】
本発明の光源ユニットは、2つ以上の光源と、当該光源に対向して配設される上記拡散シートとを具備する。
【0019】
本発明の光源ユニットにおいて、前記拡散シートの前記所定の方向及びその周期と、前記拡散シートの入光面における照度が周期的に変化する方向及びその周期とが略等しくなるように前記光源と前記拡散シートが配置されることが好ましい。
【0020】
本発明の液晶表示装置は、液晶表示パネルと、当該液晶表示パネルに光を供給する上記光源ユニットとを備え、前記液晶表示パネルの背面側に前記光源ユニットが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、輝度むらを効果的に低減可能な拡散シート、光源ユニット、及びこれを用いた液晶表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の拡散シートの一例の顕微鏡写真図である。
【図2】透過光により主面上に存在する凹凸パターンの斜面の角度を測定する原理を説明する模式図である。
【図3】本発明の光源ユニットの一例の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の光源ユニットの一例の構成を示す模式図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の光源ユニットの一例の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の光源ユニットの一例の構成を示す模式図である。
【図7】実施例にて使用した光源のLED配置を示すパターン図である。
【図8】透過光により主面上に存在する凹凸パターンの斜面の角度を測定する原理を説明する模式図である。
【図9】透過光により主面上に存在する凹凸パターンの斜面の角度を測定する原理を説明する模式図である。
【図10】実施例1〜3の割合分布図である。
【図11】実施例1〜3、及び比較例1のピーク領域とボトム領域の斜面角度分布図である。
【図12】(a)は、ある凹凸面側より入射した光に対する一軸上の透過率強度の角度分布図を示しており、(b)は、(a)より求めた斜面角度分布図である。
【図13(a)】表面粗さ測定器による1測定領域の測定結果の二次元模式図の一例を示す図である。
【図13(b)】図13(a)の三次元模式図である。
【図14】表面粗さ計測器による1測定領域の測定結果から、任意の一軸方向の斜面角度分布図を得る方法を示した模式図である。
【図15】任意の1軸上の方向についての広がりを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0024】
本実施形態の拡散シートは、シート状基材の少なくとも一の主面に凹凸構造を有する樹脂層が積層されている拡散シートである。
【0025】
本発明者は、表面に微細な凹凸を有する拡散シートの該凹凸の斜面分布において、拡散シートの斜面角度が50°以上60°以下の斜面の割合が、概ね反射率と相関があり、斜面の割合が6%以上20%以下となる領域では、0%の領域の約4倍以上の反射率を有する高反射領域となることを見出した。さらに、拡散シートを、0°以上70°以下の斜面に対する50°以上60°以下の斜面の割合がシート面内の所定の方向に沿って周期的に変化し、1周期において高反射領域を所定の割合以上有する構成とすることにより、輝度むらを効果的に低減することができることを見出した。以下に、拡散シートの具体的な構成について説明する。
【0026】
前記拡散シートは、横軸に前記凹凸構造を構成する斜面と前記主面とのなす斜面角度をとり、縦軸にあらかじめ定められた面積を有する測定領域における前記斜面角度を有する測定点の数をとった斜面角度分布図において、斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の割合が、前記シート面内の所定の方向に沿ってピーク値を示すピーク領域とボトム値を示すボトム領域とを含んで周期的に変化し、かつ、前記ボトム領域における前記斜面角度の平均値が5°以上である。
【0027】
また、前記拡散シートは、横軸に前記所定の方向における全測定領域をとり、縦軸に各測定領域における斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の100分率の計算値をとった割合分布図において、前記100分率の計算値で一周期分の前記測定領域を見た場合、前記100分率の計算値が6.0%以上となる測定領域の割合が30%以上70%未満である拡散シートである。
【0028】
(基材)
本実施形態の拡散シートを構成する基材はシート状の基材であり、樹脂、ガラス等の材料からなる光透過性の基材であればよく、特に、基材単体での光透過率が75%以上であることが好ましい。
【0029】
この場合「光」とは、可視光であれば特に限定しないが、例えば、本実施形態の拡散シートを用いた光源ユニットにおける光源より射出される光である。
【0030】
前記光透過率は、例えば、(株)島津製作所社製の紫外可視分光光度計(MPC−2200)を用いて、光源と検出器との間に基材をセットし、550nmにおける入射光強度及び透過光強度を検出した後、下記式(1)によって算出することができる。
【0031】
光透過率(%)=(550nmにおける透過光強度)/(550nmにおける入射光強度)×100 ・・・(1)
基材の厚さは、特に限定されないが、通常、50μm〜500μmの範囲内である。
【0032】
基材の樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー及び/又はアクリレート系のモノマー等からなる電離放射線硬化性樹脂を紫外線又は電子線等の電磁放射線で硬化させた樹脂等が挙げられる。
【0033】
また、ガラスとしては、ソーダ硝子、硼珪酸硝子等が用いられる。
【0034】
(樹脂層)
樹脂層は、上述した基材の少なくとも一の主面に形成されており、凹凸構造を有している。なお、前記主面とは、上述した基材の厚み部分を含まず、基材を平面と見たときの、表面及び裏面を言う。凹凸構造とは、表面に多数の突起部が設けられた構造である。前記突起部の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、略円錐状、略球状、略楕円体状、略レンチキュラーレンズ状、略放物面状等が挙げられる。各突起部は、規則的に配列していても、不規則に配列していてもよい。また、突起部間は連続的な曲面でつながっていてもよい。
【0035】
また、不規則な凹凸が連続的な曲面でつながっている擬似ランダム構造も、好ましく用いることができる。この擬似ランダム構造は、非平面スペックルによって特徴付けられた微細な3次元構造であることが好ましい。
【0036】
光の拡散性能に関して好ましい特性を得るためには、突起部の高さは1μm〜15μmの範囲が好ましく、ピッチは1μm〜30μmの範囲が好ましい。
【0037】
前記非平面スペックルによって特徴付けられた3次元構造は、機械加工では困難であった10μm以下の微細な凹凸構造の形成に適している。
【0038】
特に、非平面スペックルを用いて凹凸を形成する方法は、拡散シート上の領域に応じて、拡散角度を変化させたものとする場合に適した製法である。この非平面スペックルによる凹凸構造の製造方法については後述する。
【0039】
また、マイクロレンズのような等方的な凹凸構造や、レンチキュラーレンズのような異方的な凹凸構造も、拡散シートの樹脂層の凹凸構造として好ましい。
【0040】
拡散シートの樹脂層に形成されている凹凸構造は、モアレ抑制などの観点から、高さ及びピッチが不規則であることが好ましい。図1に本発明の拡散シートの不均一な凹凸構造の例を示す。なお、図1に例示した拡散シートは異方性を示す凹凸形状を有しているが、等方性を示す凹凸形状を有するものであってもよい。
【0041】
凹凸形状がシートの表面に存在すると、拡散シートに入射してきた光を拡散することが可能となる。
【0042】
前記凹凸構造を有する樹脂層は、屈折率1.3以上1.7以下の材料からなることが好ましい。より好ましくは1.4以上1.6以下である。具体的には、後述の方法によって、光重合性樹脂組成物の硬化物によって形成することができる。
【0043】
本実施形態の拡散シートは、シート面内のどこかに、上記のような凹凸構造が配列されて、光を拡散する機能を示す部分があればよく、拡散機能を有する必要のない部分、例えば端部においては、シート表面が平滑になっている部分が存在していてもよい。
【0044】
(斜面角度分布図)
続いて、斜面角度分布図について説明する。
【0045】
斜面角度分布図とは、表面に微細な凹凸構造を有する物体の該凹凸構造を物理的形状の観点から規定したものであり、本発明においては、本実施形態の拡散シートが有する凹凸構造を好ましい範囲に規定するために使用する。
【0046】
本発明において、斜面角度分布図とは、具体的には、横軸に前記凹凸構造を構成する斜面と前記主面とのなす斜面角度をとり、縦軸にあらかじめ定められた面積を有する測定領域における前記斜面角度を有する測定点の数をとった図をいう。
【0047】
本発明の拡散シートは、斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の割合が、前記シート面内の所定の方向に沿ってピーク値を示すピーク領域とボトム値を示すボトム領域とを含んで周期的に変化し、かつ、前記ボトム領域における前記斜面角度の平均値が5°以上である拡散シートである。本発明では次のようにして、斜面角度を求める。
【0048】
まず、図2に模式的に示すように、シート状の基材において光が入射する側の主面に凹凸構造を有する樹脂層が積層されている場合を考える(樹脂層と基材の屈折率はともにNであるとする。)。この場合には、次に示す式(2)、式(3)を用いて斜面角度を求めることができる。
【0049】
前記凹凸構造を構成する斜面と前記主面のなす斜面角度をθとすると、空気層(屈折率N=1)から主面に垂直な方向に光が入射するとき、前記斜面の法線に対する前記光の入射角はθであり、前記凹凸構造が屈折率Nの材料で形成されているとすると、スネルの法則により、屈折角θは式(2)で表される。
【0050】
sinθ=Nsinθ ・・・(2)
【0051】
屈折光と主面の法線のなす角はθ−θであり、主面から出射するときの屈折角θは、再びスネルの法則に従い、式(3)で表される(屈折率N=1)。
【0052】
sin(θ−θ)=Nsinθ ・・・(3)
【0053】
この二式(2)、(3)を解くと、主面の法線方向から入射した光が入射面側に凹凸構造を有する拡散シートを透過した後に主面の法線となす角度(θ2)から、凹凸構造の斜面角度(θ0)を求めることができる。つまり、凹凸面側より入射した光に対する透過率強度の角度分布から、凹凸構造の斜面角度分布を求めることができる。
【0054】
図12(a)は、凹凸面側より拡散シートの主面に垂直な方向から入射した光に対する一軸上の透過率強度の角度分布の一例を図示したものであり、図12(b)は、図12(a)を上記式(2)、(3)によって、斜面角度分布に変換した図である。ここで角度(θ2)における透過率強度は、該θ2より計算される斜面角度(θ0)を有する斜面の面積の全斜面の面積に対する割合に比例するものとしている。尚、このときの凹凸構造を有する樹脂層を形成する材料の屈折率(N)は、1.5とした。
【0055】
拡散シートの主面の法線方向から入射した光に対する透過率強度の角度分布を、任意の一軸上において測定するには、例えばPhoton(株)社製のGoniometric Radiometers Real−Time Far−Field Angular Profiles Model LD8900(以下「LD8900」という。)で測定することが出来る。以下の実施例で用いたこの装置の入射光のシート面に当たる面積は直径2mmの円状の範囲であり、この測定領域における斜面角度分布をみることになるが、理論的には更に小面積でもよい。
【0056】
上記一軸上の測定で得られる透過率強度の角度分布において、一軸上の方向と直交する方向の幅は厳密に0°では無くてもよく、例えば1°以下であればよい。上記LD8900による測定の場合は、±0.6°の広がりを持つ。図15に上記一軸上と直交する方向を紙面の上下方向としたときの模式図を示す。図15の手前側にある実線矢印のベクトルも、後側にある点線矢印のベクトルも、本測定の角度分布図では、60°としてカウントする。
【0057】
次に、図8の模式的に示すように、シート状の基材として、光が入射する側の主面と出射する側の主面の両方に凹凸構造を有する樹脂層が積層されている場合を考える(樹脂層と基材の屈折率はともにNであるとする。)。このように両方の主面に凹凸構造を有する場合は、前述の式(2)、(3)によって算出することはできない。
【0058】
まず、表面形状測定装置により、凹凸構造を有する樹脂面の表面形状を測定する。測定間隔は、データの測定精度が良ければ、前記凹凸構造の大きさより十分小さい方が好ましい。例えば直径約10μmの凹凸からなる凹凸構造に対しては、50nm程度の測定間隔であることが好ましい。
【0059】
また1つの測定領域は、50μm角程度であることが好ましい。図13(a)に測定領域の模式図を示す。図13(a)の1格子は50nm角平均の高さを模式的にプロットしたものであり、中央部(白い部分)において凹凸構造が高いことを示す。各交点が測定領域となる。等高線モデルで描くと、図13(b)のようになる。つまり図13(a)は、1つの測定領域(50μmx50μm)は、50nmx50nm角の平均高さが、座標(x、y)でどのように分布しているかを示した2次元プロットとなる。
【0060】
1つの測定領域内で、隣接した3点が作る面(図13の三角形)の主面からの傾きを斜面角度とし、この斜面の法線ベクトルが、図14に示すように、任意の一軸方向から±0.6°の範囲を持ったライン上に入る範囲の斜面の傾きのみをカウントする。
【0061】
例えば、図14において、Aのように隣接した3点を取ると、この3点が作る面の斜面の法線ベクトルは、白矢印のような方向となる。また、Bのように3点を取ると、法線ベクトルは、黒矢印となる。図中において横方向を、任意の一軸方向とすると、三角形Aの作る白矢印の法線ベクトルは、任意の一軸方向±0.6°の範囲に入らないので、この斜面の角度はカウントされない。また、三角形Bの作る黒矢印の法線ベクトルは、任意の一軸方向±0.6°の範囲に入るので、カウントする。このように、凹凸を形成する面の向きに考慮して、カウントする斜面の角度を限定する。
【0062】
以上のような解析を行うことで、透過率強度の角度分布図から変換した斜面の角度分布図と同様の斜面の角度分布図(図11や図12(b))を得ることが出来る。
【0063】
(割合分布図)
続いて、割合分布図について説明する。
【0064】
本発明において、割合分布図とは、横軸に所定の方向における全測定領域をとり、縦軸に各測定領域における斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の100分率の計算値をとった図をいう。ここで、特定の斜面角度と測定された測定点の数は、該特定の斜面角度を有する斜面の面積に対応する。
【0065】
本発明の拡散シートは、前記100分率の計算値で一周期分の前記測定領域を見た場合、前記100分率の計算値が6.0%以上となる測定領域の割合が30%以上70%未満である拡散シートである。
【0066】
斜面角度分布図は、シート面においてあらかじめ定められた面積を有する各測定領域の物理的形状を明確に示したものであるが、シート面内すべての測定領域で議論するには、情報量が多い。そこで、シート面内での議論が簡便となるように、上記のようにして得られた斜面角度分布図から、斜面角度が0°以上70°以下の全測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下の測定点の数の100分率の計算値を求め、この値を1つの測定領域での代表値とすると、拡散シートの特性を評価するに当たって好ましく使用できる。
【0067】
さらに、前記代表値である斜面角度が50°以上60°以下の斜面の割合を、シート面の所定の方向に沿って測定すると、図10のような割合分布図を得ることが出来る。測定間隔は、0.5〜2mmが好ましい。このとき本発明の拡散シートは、斜面角度が50°以上60°以下の斜面の割合が周期的に変化する。
【0068】
本発明において、「周期的に」変化するとは、繰り返されたパターン同士を比較して、同じ繰り返しに相当するピーク領域の示すピーク値、及びピーク値を与える周期の開始点からの変位、並びに、ボトム領域の示すボトム値、及びボトム値を与える周期の開始点からの変位が、それぞれ、全繰り返しパターンの平均値の±15%以内(好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内)の範囲内にあれば、周期的に変化しているものとする。上記の周期性を示す方向は、拡散シート面内に少なくとも一つあれば良く、拡散シート面について割合分布図を作成することにより特定することができる。
【0069】
本発明の拡散シートは、割合分布図において、周期的に割合を変化することを特徴とする。このときボトム領域においても、全斜面角度の平均値は5°以上を示す。つまり、すべての測定領域において凹凸構造が存在し、前記全斜面角度の平均が5°以上になる。
【0070】
前記凹凸構造の凹凸形状が、主面の法線を含む任意の断面の方向によって異なる50°以上60°以下の斜面の割合を示すとき(例えば、楕円形状をもつとき)は、斜面角度が50°以上60°以下の斜面の割合が最も高い方向を断面の方向と定め、常に同じ方向で所定の方向に沿って測定することが好ましい。尚、点を測る断面の方向と拡散シートの周期性の有無を測る所定の方向は一致していなくても良い。
【0071】
たとえば、図1における斜面角度が50°以上60°以下の斜面の割合が最も高い方向とは、矢印の方向で測定したときである。
【0072】
本発明の拡散シートは、屈折率Nの平滑な拡散能がない基材の上に屈折率Nの凹凸構造を有する樹脂層形状が形成されていても良い。このとき屈折率は理論上N≧Nの範囲で、計算式による算出もできる。
【0073】
本発明の拡散シートの、前記割合分布図において、さらに詳細に見てみると、本発明の拡散シートは前記割合分布図の一周期において、斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の100分率の計算値が6%以上の領域が30%以上70%以下であることが好ましい。より好ましくは、35%以上60%以下、さらに好ましくは40%以上55%以下である。
【0074】
拡散シートの斜面角度が50°以上60°以下の斜面の割合は、同じ材料からなる樹脂層である場合は概ね反射率と相関があり、前記斜面の割合が6%以上20%以下となる領域では、0%の領域の約4倍以上の反射率を有する。また、前記斜面の割合が増えるにつれて、反射率は飽和状態となるため、最大でも、0%の領域の5倍以上になることはない。このようなことから、前記斜面の割合が6%以上20%以下の領域を高反射領域と呼ぶことが出来る。
【0075】
本実施形態の拡散シートを少なくとも2つ以上の点光源に対向して配設する場合を想定する。点光源間の距離は、本実施形態の拡散シートとの距離の1.4〜3倍を想定している。点光源は、どの方向から見ても均一な輝度を持つと仮定すると、光の強度は逆2乗の法則により、点光源と拡散シート間の距離の2乗に反比例する。2つの点光源の距離が遠いと、光源と光源の間領域の光量は、光源近傍領域の光量よりも低くなり、輝度ムラを生じることとなる。この光量の変化を照度分布としてみると、照度分布は概ね正弦波に近い形状を示し、光源の直上の照度を100%とし光源と光源の間の照度が最も低い部分の照度を0%としたときに、照度が50%以上となる領域は、全体の約50%である。
【0076】
本実施形態の光源ユニットにおいては、前記割合分布図において斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の100分率の計算値が6%以上の領域に当たる高反射領域と、光源の照度分布の光量の多い部分とを、対向して配設することで、輝度ムラの均一化を測ることができ、結果的に輝度ムラ抑制能をもつこととなる。
【0077】
(拡散シートの製造方法)
次に、本実施形態の拡散シートの製造方法の好ましい例について説明する。
【0078】
本発明の拡散シートの製造方法としては、1)周期的に凹凸構造のボトム領域/ピーク領域に対応する領域を有するマスタをレーザー微細加工等によって製造し、基材シート上の未硬化樹脂層に該マスタの凹凸構造を転写して硬化させる方法、2)予め表面にピーク領域となるような凹凸構造を有するシート基材を作製し、該シート基材の必要箇所に樹脂を塗工して、凹部を一部埋めてボトム領域を形成する方法、3)予め表面にボトム領域となるような凹凸構造を有するシート基材を作製し、該シート基材の必要箇所に凸部となるように樹脂を賦形してピーク領域を形成する方法、などが挙げられる。
【0079】
以下、上記2)の方法を詳細に説明する。上記2)の方法においては、形成されるピーク領域と同程度の大きさの基底凹凸構造が設けられたシート基材が予め作製される。基底凹凸構造とは、例えば、表面に多数の不規則な形状の突起部が設けられた形状である。この形状としては、干渉露光によるスペックルパターンを用いて形成される3次元構造であることが好ましい。
【0080】
干渉露光によるスペックルパターンを用いて形成される3次元構造は、機械加工では困難であった20μm以下の基底凹凸構造の形成に適している。特に、非平面スペックルを用いて基底凹凸構造を形成する方法は、拡散シート上の領域に応じて、斜面角度分布を変えるような場合に、適した製法である。また、マイクロレンズのような等方的な形状や、レンチキュラーレンズのような異方的な形状も容易に形成することができる。なお、干渉露光によって形成された基底凹凸構造は、高さ及びピッチが不規則となるため、モアレ抑制効果や0次光を排除する効果を有するので、より好ましい。
【0081】
また、干渉露光によるスペックルパターンを用いて形成された3次元構造を表面に有し、面内において斜面角度分布が変化するようにしてもよい。このようなシート基材は、具体的には次のようにして製造することができる。まず、予め干渉露光により、レーザー光をレンズやマスクを介して感光性材料やフォトレジストに照射し、斜面角度分布が位置によって変化するようにスペックルパターンを形成させたサブマスタ型を作製する。レーザー照射システムを構成する部材間の距離やサイズを変えスペックルパターンの寸法、形状及び方向を調節することにより、斜面角度の範囲を制御し、異なる斜面角度分布をもつ凹凸構造を記録することができる。
【0082】
一般に、斜面角度分布の範囲は、スペックルの平均サイズ及び形状に依存する。スペックルが小さければ斜面角度範囲が広い。また、基底凹凸構造の単位構造は等方性のものに限らず、異方性のものを形成することもでき、両者の複合された基底凹凸構造とすることもできる。スペックルが横方向の長円形であれば、斜面角度分布の形は縦方向の長円形となる。このように斜面角度分布が位置によって変化するようなサブマスタ型を作製する。このサブマスタ型に電鋳などの方法で金属を被着してこの金属にスペックルパターンを転写して賦形用マスタを作製する。基材シート上に積層した光硬化性樹脂層に、前記賦形用マスタを用いて紫外線による賦形を行って光硬化性樹脂層にスペックルパターンを転写する。微細凹凸構造による拡散角度を位置によって変えた拡散シートの詳細な製造方法については、例えば、特表2003−525472号公報に開示されており、これを参照して斜面角度分布を位置によって変えた拡散シートを製造することができる。また、斜面角度分布は凹凸構造のピッチ、高さ、アスペクト比を変えて制御しても構わない。
【0083】
次に、凹凸構造からなる樹脂層上に樹脂液を塗布する。樹脂液の塗布方法としては、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、及びスプレーなどを用いる方法が使用可能である。好ましくは、斜面角度分布の滑らかな変化を付与する観点から、スプレー及びダイコーターが用いられる。また、マスク等を用いて、樹脂をシート基材上の必要箇所に塗工されるようにしてもよい。さらに、凹凸構造の凸部の間を埋める樹脂層となる樹脂液には、斜面角度分布の滑らかな変化を付与する観点から、溶剤を添加してもよい。溶剤の添加量は形成するピーク領域/ボトム領域の差の程度に応じて適宜調整されるが、樹脂100部に対して溶剤を1部から5000部が好ましい。
【0084】
樹脂液を塗布した後、紫外線照射などの方法により、樹脂液を硬化させる。硬化させる工程は、樹脂液として熱硬化性樹脂を使用した場合は熱による硬化させる方法や、樹脂を溶剤に溶かして塗布した後に乾燥させて硬化させる方法でもよいが、作業性、表面硬度の観点から樹脂液として紫外線硬化樹脂を使用して紫外線照射による硬化工程が好ましい。樹脂液の塗工量、樹脂液の希釈量、樹脂液の塗工部位を制御することによって、ピーク領域/ボトム領域の凹凸の比率、面積比率、形成される凹凸構造の粗さを適切な値にし、必要な光学性能を得ることができる。
【0085】
3)の方法においては、形成されるボトム領域と同程度の大きさの基底凹凸構造が設けられた樹脂層が積層されたシート基材が予め作製される。これは前述の2)と同様の方法で得られる。このシートに対して、ピーク領域に対応する凹凸構造を有するマスタを用いて紫外線硬化樹脂を賦形し、粗面部の凹凸構造を形成することで本発明の実施の形態に係る拡散シートを得ることが出来る。
【0086】
また、別の製造方法として、上記の金属電鋳を行う前のサブマスタに対してボトム領域に対応する部分に樹脂液を塗布して所望のパターンを得た後、これをサブマスタとして金属電鋳加工し、賦形用マスタとするやり方もある。得られた金属製の賦形用マスタを用いて、前述と同じ方法で、光硬化性樹脂層に紫外線による賦形を行って光硬化性樹脂層に光学パターンを転写し、本発明の実施の形態に係る拡散シートを得る。
【0087】
なお、上記2)、3)の方法を用いて製造された拡散シート自身を最終製品の拡散シートとして用いる以外に、さらにはこの拡散シートの表面形状をコピーして、マスタとして用いることも可能である。
【0088】
また、金属平板マスタまたは金属ロールマスタによって、シート状基材の表面に凹凸構造を有する樹脂層を積層する方法の他に、上記凹凸構造を有する金属金型を製造して、これを用いた射出成形を行うことにより、上記凹凸構造がシート状基材の表面に直接形成された拡散シートを製造することも可能である。
【0089】
本実施形態の拡散シートは、前記ピーク領域の斜面角度分布図において、斜面角度が30°である測定点の数に対する、前記斜面角度が0°である測定点の数の比が、1.1以上3.5以下であることが、製造方法を簡便にすることができるため、好ましい。
【0090】
本発明の斜面角度が50°以上60°以下となる斜面の割合が、好ましい状態において、輝度ムラ低減効果を示す理由については、以下のように考えている(図9)。まず凹凸構造のある面と反対側の主面から法線方向に沿って入射した光を考えると、入射光は、凹凸構造の有する斜面と空気との界面において、屈折する。このとき凹凸構造が屈折率1.3以上1.7以下の材料を用いて形成されている場合、法線方向から入射された光は、斜面角度50°以上60°以下の凹凸界面において、少なくとも50%以上が反射する。この結果は強度反射率の式を用い、s偏光とp偏光とが同程度存在すると仮定した場合、強度反射率は振幅反射係数の2乗により求めることができるので、s偏光、p偏光それぞれの強度反射率の平均値を採用した。
【0091】
つまり、シート面内において、斜面50°以上60°以下の割合が高い部分では光の反射性能が高く、斜面50°以上60°以下の割合が低い部分では反射性能が低くなる。例えば、光源直上に50°以上60°以下の割合が高い部分を配置し、光源と光源の間に50°以上60°以下の割合が低い部分を配置すると、光源の直上では光源間に比べて光が効果的に反射されるので、全体の輝度が均一化される。
【0092】
尚、入射光がシート面の法線方向からではなく、法線方向に対する角度を持って入射した場合には、空気‐基材界面、基材‐凹凸構造を作成する材料界面、の反射・屈折を考慮する必要があるが、本拡散シートを用いる形態においては、法線方向から入射する光や、法線方向を0°方向とした場合に比較的角度の小さい(30°以下)方向から入射する光が多く、凹凸界面上の反射成分は、大きいものが多いと考えられるので、考慮に入れなくとも大きな差異はないと考えられる。
【0093】
50°以上60°以下の斜面角度を有する凹凸形状は、前記の作製方法において、比較的容易に作製できる凹凸形状であり、かつ、表面形状測定装置の精度も十分に安定した領域である。また凹凸形状に由来する斜面角度分布は、ノイズを除外すると連続かつ滑らかな曲線となる。従って、少なくとも前述した製造方法であれば、さらに斜面角度が60度より急な斜面の特性を考慮しなくとも、反射特性・輝度ムラ抑制効果について、類推することが可能である。
【0094】
(光源ユニット)
次に、上述した本発明に関わる拡散シートを用いた光源ユニットについて説明する。
【0095】
図3及び図4は、本実施の形態に係る光源ユニットの概略構成を示す図である。本実施形態に係る光源ユニットは、基本的には、少なくとも二つの光源11(または12)と、前記光源の上方に配設され、光源の光を拡散させる拡散板14と、前記拡散板14の上方に配設された本発明に係る拡散シート15と、を具備する構成を採る。また、光源の下方には、光を反射させるための反射シート13が使用される。したがって、上記構成を有していれば、さらに、少なくとも一つの光学シート14、拡散シート15等を配設しても良い。また、本実施形態では、拡散板14を用いているが、拡散板14を用いない構成の光源ユニットであっても良い。
【0096】
光源としては、図3に示すように、冷陰極管(CCFL)などの線光源11や、図4に示すLED(発光ダイオード)、レーザーなどの点光源12を用いることができる。光源の配置は画像の表示面に対して、直下に配列されている。
【0097】
拡散板14は、光を拡散させることのできるものであれば、様々なものを用いることができる。例えばポリスチレン、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー等に、光を拡散させる効果がある有機ポリマーや無機微粒子を添加したものを用いることができる。これらの拡散板14は、光を拡散させ、下部光源の光を均一化させる効果がある。また、前記拡散板14は、表面に凹凸形状が形成されていても良い。これらには、必要に応じて、前記有機ポリマーや無機微粒子を添加したものを用いることができる。また、2成分以上の樹脂を混合し、延伸してシート状とした拡散板も用いることができる。
【0098】
反射シート13は、光を反射させることのできるものであれば、様々なものを用いることができる。例えば、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂を発泡させて内部に微細な空気の粒を入れシート状としたもの、2成分以上の樹脂を混合してシート状としたもの、屈折率の異なる樹脂層を積層したシート等を用いることができる。また、前記反射シート13は、表面に凹凸形状が形成されていても良い。これらには、必要に応じて、表面に無機微粒子などを添加したものを用いることができる。
【0099】
本実施形態に関わる光源ユニットは、本発明の拡散シートを用いて他の配設構成、例えば図5(a)から図5(c)に示す配設構成を採用することができる。光源ユニットについては、光源として直下型LEDを用いても良く、本発明の拡散シートを用いて、図6に示すような配設構成を採用することができる。
【0100】
図5(a)は、図3に示す構成において、光源直上に配置される拡散板14と本発明の拡散シート15の間に、微細な凹凸構造が表面に形成された表面賦形型拡散シート16を配置し、さらに本発明の拡散シート15の直上に、前記表面賦形型拡散シート16を配置してなる光源ユニットを示す。
【0101】
ここで、表面賦形型拡散シート16としては、アクリル系樹脂の球状ビーズがポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース、或いはポリカーボネート等のシート上に塗布されたシートを用いることができる。また、表面賦形型拡散シートとしては、紫外線硬化樹脂による微細な凹凸構造がポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース、或いはポリカーボネート等のシート上に転写されたシートを用いることができる。このような表面賦形型拡散シートは、光を拡散させ均一化させる効果とともに、拡散板で拡散された光を集光する機能を有する。これらの表面賦形型拡散シート16と、本発明の拡散シート15とを組み合わせて使用することにより、輝度むらを軽減し、光源ユニットの薄型化や光源数の削減を実現することができる。
【0102】
図5(b)は、図3に示す構成において、光源直上に配置される拡散板14及び本発明の拡散シート15の上方に、アレイ状のプリズム配列構造を有する光学シート17と、微細な凹凸構造が表面に形成された表面賦形型拡散シート16と、をこの順で配置してなる光源ユニットを示す。また図5(c)は、図3に示す構成において、光源直上に配置される拡散板14及び本発明の拡散シート15の上方に、微細な凹凸構造が表面に形成された表面賦形型拡散シート16と、アレイ状のプリズム配列構造を有する光学シート(プリズムシート)17と反射型偏光シート18と、を配置してなる光源ユニットを示す。
【0103】
プリズムシート17としては、表面に、断面形状が略三角形状、略台形状、略楕円状であるプリズム条列がアレイ状に配列しているような光学シートを用いることができる。
【0104】
前記断面形状の頂点を丸めた形状としたものも、耐擦傷性向上等の観点から、好ましく用いることができる。これらのプリズムシートとしては、紫外線硬化樹脂によるプリズム条列がポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース、又はポリカーボネート等の基材シート上に転写された形態として用いることができる。このようなプリズムシート17は再帰反射性を示すため、入射光を正面へ集光する機能を有する。このプリズムシートと、本発明の拡散シートとを組み合わせて使用することにより、輝度むらを軽減し、光源ユニットの薄型化や光源数の削減を実現することができる。
【0105】
反射型偏光シート18としては、自然光又は偏光から直線偏光を分離する機能を有するシートを用いることができる。
【0106】
前記直線偏光を分離するシートとしては、例えば、軸方向で直交する直線偏光の一方を透過し、他方を反射するフィルム等が挙げられる。
【0107】
前記反射型偏光シート18としては、具体的には、複屈折位相差の大きい樹脂(ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等)と、複屈折位相差の小さい樹脂(シクロオレフィンポリマー等)とを交互に多層積層し一軸延伸して得られるシートや、複屈折性のポリエステル樹脂を数百層積層した構造からなるシート(商品名 DBEF、3M(株)製)等を用いることができる。
【0108】
図6は、図4に示す構成において、光源直上に配置される拡散板及び本発明の拡散シートの上方に、微細な凹凸構造が表面に形成された表面賦形型拡散シート16を2枚配置し、反射型偏光シート18と、をこの順で配置してなる光源ユニットを示す。
【0109】
本実施形態の光源ユニットは、拡散シートの前記斜面角度50°以上60°以下の斜面の割合が周期的に変化する方向及びその周期と、前記拡散シートの入光面における照度が周期的に変化する方向及びその周期とを等しくすることが好ましい。拡散シートの入光面における照度分布は、例えばELDIM社のEZContrastXL88などによって測定できる。具体的には、本発明の拡散シートが設けられる光源ユニットを用意し、前記拡散シートだけを取り除き、拡散シートの入光面が位置する箇所に装置の焦点を定めて全方位輝度分布を測定し、その結果から積算光束量(Integrated Intensity)を得る、ということを面内測定対象範囲において繰り返すことで測定する。
【0110】
尚、照度分布の周期は、概ね、拡散シートと光源との間の距離と対応する。
【0111】
(液晶表示装置)
本実施形態の液晶表示装置は、所定の表示ユニットと、上記に亘り説明した本実施形態の光源ユニットとを具備している。
【0112】
例えば、図6に示すような本実施形態の光源ユニットの上方に、2枚の偏光板の間に液晶層を有する液晶表示パネルを設けたものが挙げられる。
【実施例】
【0113】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0114】
実施例1〜3および比較例1に示される斜面角度0°以上70°以下の斜面の測定点の数を100%としたときの斜面角度50°以上60°以下となる測定点の数の割合は、PETからなるシート基材上に凹凸構造を有する樹脂層が形成された拡散シートに対して、凹凸構造を有する面から入光させ、LD8900で透過光強度の角度分布を測定したものから計算している。なお、樹脂層は、硬化後の屈折率が1.5の紫外線硬化樹脂を用い、当該紫外線硬化樹脂の表面に凹凸構造を形成した。また、公知技術との比較のために、同測定データを用いて、斜面角度0°以上70°以下の斜面の斜面角度の平均値を特許第4440788号記載の方法を用いて算出した。
【0115】
実施例1〜3および比較例1において、光学シートとして記載がないものについて、すなわち、反射シート、拡散板、表面賦形型拡散シート、アレイ状のプリズム配列構造を有する光学シート、反射型偏光シートについては、それぞれ、ポリエステル樹脂からなる白色反射シート(以下、RSと略記)、ポリスチレンからなり、厚さ1.5mm、拡散剤濃度13000ppmの拡散板(以下、DPと略記)、厚さ250μmのPET基材上に半球レンズがUV硬化性樹脂によって賦形された光学シート(以下、MLFと略記)、厚さ250μmのPET基材上に頂角90°、ピッチ50μmのプリズム条列がUV硬化性樹脂によって賦形された光学シート(以下、プリズムシートと略記)、反射型偏光シート(以下、DBEFと略記。3M社製)を用いた。
【0116】
実施例1〜3および比較例1については、光源ユニットの光源として、CREE社製の3.5mm角、高さ2.0mmの白色LED光源を用いた。このLEDを図7に示すようなパターンで並べて配置し、光源ユニットを作製した。輝度及び輝度むらは、コニカミノルタ製の2次元色彩輝度計(CA2000)を使用し、光源ユニットから70cm離して設置し、光源ユニットの中心部120mm×120mmの範囲で正面から測定した。
【0117】
輝度むらは、x軸方向及びy軸方向の2方向について算出した値の平均値とした。まず、x軸(120mm)方向の平均輝度値を求め、y軸方向について、各々の点の輝度値を各々の点から±12mm分の輝度平均値で割り返した値の標準偏差として輝度むらを求めた。同様に、y軸(100mm)方向の平均輝度値を求め、x軸方向について、各々の点の輝度値を各々の点から±15mm分の輝度平均値で割り返した値の標準偏差として輝度むらを求めた。最後に、x軸方向の標準偏差とy軸方向の標準偏差を平均した値(S.D.)を、光源ユニットの輝度むらとした。
【0118】
ここで、正面輝度むらの判定基準を下記のように、2段階(○、×)に分類した。
○:S.D.≦0.005
×:0.005<S.D.
【0119】
(実施例1)
図6に示すように、光源上方にDP、実施例1の拡散シート、MLF、MLF、DBEFと、をこの順で配置し、実施例1の光源ユニットを構成した。
【0120】
実施例1の拡散シートは、前述の、予め表面にピーク領域となるような凹凸構造を有するシート基材を作製し該シート基材の必要箇所に樹脂を塗工して凹部を一部埋めてボトム領域を形成する方法に従って作製した。具体的には、図7の光源の上に対応する拡散シート上の領域をピーク領域のまま残し、図7の光源と光源の間の上に対応する拡散シート上の領域がボトム領域となるように前記樹脂を塗工して作製した。なお、前記樹脂塗工前のピーク領域となるような凹凸構造は等方性を示す凹凸形状であった。
【0121】
また、実施例の拡散シートは、斜面角度0°以上70°以下の斜面の測定点の数を100%としたときの斜面角度50°以上60°以下の斜面の測定点の数の割合を算出したとき、ピーク値が8.4%、ボトム値が0.1%であり、ピーク領域とボトム領域が周期的に繰り返すものであり、図7のY方向に対応するシート上の位置を横軸とする割合分布図における100分率の計算値が6%以上の領域が40.6%を占める形状をしている。ピーク領域の平均斜面角度は、11.7°、ボトム領域の平均斜面角度は6.1°である。実施例1に関する斜面角度分布図を図11(a)、割合分布図を図10に示す。
【0122】
前記拡散シートを、ピーク領域が光源の直上になるように、凹凸構造を有する樹脂面が出光面となるように配置した。ここで、RSとDPの入光面との距離hを19.0mmとした。実施例1の光源ユニットにおける正面輝度むらを上記の方法で算出した。その結果を下記表1に示す。
【0123】
(実施例2)
図6に示すように、光源上方にDP、実施例2の拡散シート、MLF、MLF、DBEFと、をこの順で配置し、実施例2の光源ユニットを構成した。
【0124】
実施例2の拡散シートは、実施例1と同様の方法で作製した。なお、前記樹脂塗工前のピーク領域となるような凹凸構造は等方性を示す凹凸形状であった。また、斜面角度0°以上70°以下の斜面の測定点の数を100%としたときの斜面角度50°以上60°以下の斜面の測定点の数の割合を算出したとき、ピーク値が12.4%、ボトム値が0.1%であり、ピーク領域とボトム領域が周期的に繰り返すものであり、図7のY方向に対応するシート上の位置を横軸とする割合分布図における100分率の計算値が6%以上の領域が45.3%を占める形状をしている。ピーク領域の平均斜面角度は、14.5°、ボトム領域の平均斜面角度は6.7°である。実施例2に関する斜面角度分布図を図11(b)、割合分布図を図10に示す。
【0125】
前記拡散シートを、ピーク領域が光源の直上になるように、凹凸構造を有する樹脂面が出光面となるように配置した。ここで、RSとDPの入光面との距離hを19.0mmとした。実施例2の光源ユニットにおける正面輝度むらを上記の方法で算出した。その結果を下記表1に示す。
【0126】
(実施例3)
図6に示すように、光源上方にDP、実施例3の拡散シート、MLF、MLF、DBEFと、をこの順で配置し、実施例3の光源ユニットを構成した。
【0127】
実施例3の拡散シートは、実施例1と同様の方法で作製した。なお、前記樹脂塗工前のピーク領域となるような凹凸構造は等方性を示す凹凸形状であった。また、斜面角度0°以上70°以下の斜面の測定点の数を100%としたときの斜面角度50°以上60°以下の斜面の測定点の数の割合を算出したとき、ピーク値が13.3%、ボトム値が0.2%であり、ピーク領域とボトム領域が周期的に繰り返すものであり、図7のY方向に対応するシート上の位置を横軸とする割合分布図における100分率の計算値が6%以上の領域が46.9%を占める形状をしている。ピーク領域の平均斜面角度は、15.0°、ボトム領域の平均斜面角度は6.3°である。実施例3に関する斜面角度分布図を図11(c)、割合分布図を図10に示す。
【0128】
前記拡散シートを、ピーク領域が光源の直上になるように、凹凸構造を有する樹脂面が出光面となるように配置した。ここで、RSとDPの入光面との距離hを19.0mmとした。実施例3の光源ユニットにおける正面輝度むらを上記の方法で算出した。その結果を下記表1に示す。
【0129】
(比較例1)
図6に示すように、光源上方にDP、MLF、MLF、MLF、DBEFと、をこの順で配置し、比較例1の光源ユニットを構成した。
【0130】
MLFは、斜面角度0°以上70°以下の斜面の測定点の数を100%としたときの斜面角度50°以上60°の斜面の測定点の数の割合を算出したとき、面内均一なのでピーク値・ボトム値は共に1.8%を示し、割合分布図における100分率の計算値が6%以上の領域が0%を占める形状をしている。ピークおよびボトム領域の平均斜面角度は、9.5°である。比較例1に関する斜面角度分布図を図11(d)に示す。
【0131】
前記MLFを凹凸面が出光面となるように配置した。ここで、RSとDPの入光面との距離hを19.0mmとした。比較例1の光源ユニットにおける正面輝度むらを上記の方法で算出した。その結果を下記表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
表1より、実施例1〜3の拡散シートは、正面輝度むら低減能力が良好であり、正面輝度むらを許容範囲内の値におさえた上で光源ユニットの光源数を削減、または光源と光学フィルム間の距離を短くできることがわかる。特に実施例1では、斜面角度0°が実施例2、3に比べて多いにもかかわらず、同様の輝度むら抑制能を示すことができ、製造方法を考慮すると非常に有益である。
【0134】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態における部材の材質、配置、形状などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。また、上記実施例で示した構成を適宜組み合わせて光源ユニットを構成することができる。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の拡散シート及び光源ユニットは、液晶表示装置用の拡散シート及び光源ユニットとして産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0136】
11 線光源(冷陰極管(CCFL))
12 点光源(LED)
13 反射シート
14 光学シート、拡散板
15 拡散シート
16 表面賦形型拡散シート
17 プリズムシート
18 反射型偏光シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の少なくとも一つの主面に凹凸構造を有する樹脂層が積層されている拡散シートであって、
横軸に前記凹凸構造を構成する斜面と前記主面とのなす斜面角度をとり、縦軸に所定の面積を有する測定領域における前記斜面角度を有する測定点の数をとった斜面角度分布図において、斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の割合が、前記シート面内の所定の方向に沿ってピーク値を示すピーク領域とボトム値を示すボトム領域とを含んで周期的に変化し、かつ、前記ボトム領域における前記斜面角度の平均値が5°以上であり、
横軸に前記所定の方向における全測定領域をとり、縦軸に各測定領域における斜面角度が0°以上70°以下となる測定点の数に対する、斜面角度が50°以上60°以下となる測定点の数の100分率の計算値をとった割合分布図において、前記100分率の計算値で一周期分の前記測定領域を見た場合、前記100分率の計算値が6.0%以上となる測定領域の割合が30%以上70%未満である拡散シート。
【請求項2】
前記斜面角度分布図の前記ピーク領域において、前記斜面角度が30°である測定点の数に対する、前記斜面角度が0°である測定点の数の比が1.1以上3.5以下である請求項1に記載の拡散シート。
【請求項3】
前記凹凸構造が、干渉露光によるスペックルパターンを用いて形成された凹凸構造である請求項1または2に記載の拡散シート。
【請求項4】
前記凹凸構造を有する樹脂層が、屈折率1.3以上1.7以下の材料からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の拡散シート。
【請求項5】
2つ以上の光源と、当該光源に対向して配設される請求項1〜4のいずれか1項に記載の拡散シートと、を具備する光源ユニット。
【請求項6】
前記拡散シートの前記所定の方向及びその周期と、前記拡散シートの入光面における照度が周期的に変化する方向及びその周期とが略等しくなるように前記光源と前記拡散シートが配置された請求項5に記載の光源ユニット。
【請求項7】
液晶表示パネルと、当該液晶表示パネルに光を供給する請求項5または6に記載の光源ユニットと、を備え、
前記液晶表示パネルの背面側に前記光源ユニットが配置されている液晶表示装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−53293(P2012−53293A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196010(P2010−196010)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】