説明

拡散板、光源装置、及びプロジェクター

【課題】スペックルノイズを抑制することが可能な拡散板、光源装置、及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】光透過性を有する基板761と、基板761に形成された複数の拡散部ARと、を有し、複数の拡散部ARは、レーザー光を拡散させて基板761から所定の距離だけ離れた平面にレーザー光を照射したときに、平面上でのレーザー光のビームスポットの大きさが互いに異なるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散板、光源装置、及びプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクターの高性能化に関して、広色域かつ高効率な光源としてレーザー光源が注目されている。しかしながら、レーザー光はコヒーレント光であるため、スクリーン上には、干渉によって生じたスペックルと呼ばれる斑点模様が観察され、表示品質を低下させる原因となる。
【0003】
このような課題を解決するための技術が検討されており、例えば、特許文献1には、回転可能な拡散素子によりスペックルによる表示品質の低下(スペックルノイズ)を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーザー光が単一の拡散材料により形成された拡散素子を通過する構成であるため、スペックルノイズを低減するにも限界がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、スペックルによる表示品質の低下(スペックルノイズ)を抑制することが可能な拡散板、光源装置、及びプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の拡散板は、光透過性を有する基板と、前記基板に形成された複数の拡散部と、を有し、前記複数の拡散部は、レーザー光を拡散させて前記基板から所定の距離だけ離れた平面にレーザー光を照射したときに、前記平面上での前記レーザー光のビームスポットの大きさが互いに異なるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、基板にレーザー光を入射させつつ基板を移動させると、当該レーザー光が各拡散部に入射する時間が順次切り換わる。すると、基板から所定の距離だけ離れた平面には、互いに異なる大きさのビームスポットが時間順次に形成される。このため、単一の拡散材料により形成された拡散素子を回転させる構成に比べて、レーザー光によって形成される前記平面上でのスペックルのパターンを動的に変化させることができる。そして、このようなスペックルのパターンが時間的に重畳され平均化されることで、スペックルが認識されにくくなる。よって、スペックルによる表示品質の低下(スペックルノイズ)を抑制することが可能となる。
【0009】
前記拡散板において、前記基板は、所定の回転軸を中心として回転する回転円板であり、前記複数の拡散部は、前記基板の回転方向に沿って形成されていてもよい。
また、前記拡散板において、前記基板は、当該基板の法線と直交する方向に振動可能であり、前記複数の拡散部は、前記基板の振動方向に沿って形成されていてもよい。
【0010】
これらの構成によれば、簡単な構成でスペックルノイズを抑制することが可能となる。
【0011】
前記拡散板において、前記複数の拡散部には、第1拡散部と第2拡散部と第3拡散部とが含まれ、前記第1拡散部は、拡散粒子が分散された第1拡散層によって形成され、前記第2拡散部は、拡散粒子が分散された第2拡散層によって形成され、前記第3拡散部は、前記第1拡散層と前記第2拡散層とが前記基板の法線方向から視て重なり合って配置されることにより形成されていることが望ましい。
【0012】
この構成によれば、第1拡散部及び第2拡散部の2種の拡散部のみを有する構成に比べて、レーザー光によって形成される基板から所定の距離だけ離れた平面上でのスペックルのパターンをさらに動的に変化させることができる。よって、スペックルノイズを抑制することが可能となる。
【0013】
前記拡散板において、前記第1拡散層は前記基板の一面に形成されており、前記第2拡散層は前記基板の一面とは反対側の面に形成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、スペックルノイズを抑制することが可能な構成を容易に実現することができる。例えば、第1拡散層及び第2拡散層の双方の拡散層を同一の拡散材料で形成する場合に有効である。
【0015】
前記拡散板において、前記第1拡散層と前記第2拡散層とは、前記第1拡散層へのレーザー光の入射面から所定の距離だけ離れた平面上での当該レーザー光のビームスポットの大きさと前記第2拡散層へのレーザー光の入射面から所定の距離だけ離れた平面上での当該レーザー光のビームスポットの大きさとが互いに等しくなるよう同一の拡散材料で形成されていてもよい。
【0016】
第1拡散層が基板の一面に形成され、第2拡散層が基板の一面とは反対側の面に形成される構成においては、第1拡散層及び第2拡散層の双方の拡散層を同一の拡散材料で形成した場合でも、基板の厚みの分だけ、第1拡散層を透過したレーザー光と第2拡散層を透過したレーザー光との間で基板から所定の距離だけ離れた平面上でのビームスポットの大きさに差が生じる。よって、スペックルノイズを抑制することが可能な構成を容易に実現することができる。
【0017】
前記拡散板において、前記第1拡散層及び前記第2拡散層の双方の拡散層は前記基板の一面に形成されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、スペックルノイズを抑制することが可能な構成を容易に実現することができる。第1拡散層と第2拡散層とが基板の同一の面上に形成されているので、第1拡散層と第2拡散層とを基板の異なる面に形成する場合に比べて、製造が容易になる。例えば、第1拡散層と第2拡散層とで異なる拡散材料を用いる場合に有効である。
【0019】
前記拡散板において、前記基板の前記第1拡散層が形成された部分の厚みと前記第2拡散層が形成された部分の厚みとが互いに異なることが望ましい。
【0020】
この構成によれば、基板の第1拡散層が形成された部分と第2拡散層が形成された部分との間で、基板の厚みの変化分による基板から所定の距離だけ離れた平面でのビームスポットの大きさに差が生じる。このため、レーザー光によって形成される前記平面上でのスペックルのパターンをさらに動的に変化させることができる。よって、スペックルノイズを抑制することが可能となる。
【0021】
前記拡散板において、前記基板の法線方向から視て、前記第1拡散層と前記第2拡散層とは同じ形状で形成されていることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、スペックルノイズを抑制することが可能な構成を容易に実現することができる。例えば、第1拡散層及び第2拡散層の双方の拡散層を同一のマスクパターンを用いて形成する場合に有効である。
【0023】
本発明の光源装置は、レーザー光を射出する光源と、前記光源から射出されるレーザー光を拡散する上述した拡散板と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この光源装置によれば、上述した拡散板を備えているので、スペックルノイズを抑制することが可能な光源装置を提供することができる。
【0025】
本発明のプロジェクターは、上述した光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置からの変調光を投写画像として投写する投写光学系と、を備えることを特徴とする。
【0026】
このプロジェクターによれば、上述した光源装置を備えているので、スペックルノイズを抑制することが可能なプロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプロジェクターの光学系を示す模式図である。
【図2】同、光源装置の発光特性を示すグラフである。
【図3】同、拡散板を示す模式図である。
【図4】同、拡散板でのレーザー光の拡散の様子を示す図である。
【図5】同、レーザー光を拡散させて基板から所定の距離だけ離れた平面にレーザー光を照射したときの当該平面上でのレーザー光のビームスポットを示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプロジェクターの光学系を示す模式図である。
【図7】同、回転蛍光板を示す模式図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る拡散板を示す模式図である。
【図9】同、拡散板の第1変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプロジェクター1000の光学系を示す模式図である。なお、図1において、符号100axは第1の照明光軸(照明装置100から色分離導光光学系200に向けて射出される光の光軸)、符号700axは第2の照明光軸(光源装置700から色分離導光光学系200に向けて射出される光の光軸)である。光軸とは、光学系において、系全体を透過する光束の代表となる仮想的な光線を指すものとする。
図2は、プロジェクター1000に備えられる光源710の発光特性を示すグラフである。グラフの縦軸は相対発光強度を表し、発光強度が最も大きい波長における発光強度を1としている。グラフの横軸は波長を表す。
【0030】
図1に示すように、プロジェクター1000は、照明装置100、光源装置700、色分離導光光学系200、光変調装置としての液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400B、クロスダイクロイックプリズム500及び投写光学系600を備えている。
【0031】
本実施形態のプロジェクター1000では、励起光源10から射出された青色光の全てを蛍光体層42の励起光として利用する。液晶光変調装置400Bの照明光として利用する青色光は、照明装置100とは別個に設けられた光源装置700から射出される。
【0032】
照明装置100は、励起光源10a、励起光源10b、励起光源10c、集光光学系21、回転蛍光板30、モーター50、コリメート光学系60、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130、偏光変換素子140及び重畳レンズ150を備えている。
【0033】
励起光源10a、励起光源10b、励起光源10cの各々は、青色のレーザー光(発光強度のピーク:約445nm、図2参照)を射出するレーザー光源である。
【0034】
集光光学系21は、第1レンズ23aと、第1レンズ23bと、第1レンズ23cと、第2レンズ25とを備えている。第1レンズ23はコリメートレンズであり、第2レンズ25は集光レンズである。第1レンズ23及び第2レンズ25は、例えば凸レンズからなる。集光光学系21は、励起光源10から回転蛍光板30までの光路中に配置され、励起光源10a、励起光源10b、励起光源10cから射出されたレーザー光を略集光した状態で蛍光体層42に入射させる。
【0035】
回転蛍光板30はいわゆる透過型の回転蛍光板である。回転蛍光板30は、モーター50により回転可能な板材40の一部に、単一の蛍光体層42が板材40の回転方向に沿って連続して形成されてなる。蛍光体層42が形成されている領域は、励起光が入射する領域を含む。回転蛍光板30は、励起光(青色光)が入射する側とは反対側に向けて赤色光及び緑色光を射出する。
【0036】
回転蛍光板30は、使用時において7500rpmで回転する。例えば、回転蛍光板30の直径は50mmであり、回転蛍光板30に入射する励起光の光軸が回転蛍光板30の回転中心から約22.5mm離れた場所に位置するように構成されている。つまり、回転蛍光板30は、励起光の集光スポットが約18m/秒で蛍光体層42上を移動するような回転速度で回転する。
【0037】
板材40は、励起光を透過する材料からなる。板材40の材料としては、例えば、石英ガラス、水晶、サファイア、光学ガラス、透明樹脂(例えばアクリル樹脂)等を用いることができる。
【0038】
蛍光体層42は励起光を透過し、蛍光体層42から放射された蛍光を反射するダイクロイック膜44を介して板材40上に形成されている。ダイクロイック膜44は、例えば、誘電体多層膜からなる。
【0039】
蛍光体層42は、例えば、励起光源10から射出された励起光としてのレーザー光(青色光)の略全てを赤色光及び緑色光を含む光に変換する。蛍光体層42は、波長が445nmの励起光によって効率的に励起され、励起光源10が射出する励起光を、赤色光及び緑色光を含む黄色の蛍光に変換して射出する。黄色の蛍光のうち、短波長側の成分は緑色光として利用され、黄色の蛍光のうち、長波長側の成分は赤色光として利用される。
【0040】
蛍光体層42は、例えば、YAG系蛍光体である(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ceを含有する層からなる。蛍光体層42として、赤色光及び緑色光を含む蛍光を射出する他の蛍光体を含有する層を用いてもよい。また、蛍光体層42として、励起光(青色光)を赤色光に変換する蛍光体と、励起光(青色光)を緑色光に変換する蛍光体との混合物を含有する層を用いてもよい。
【0041】
励起光源10aから射出されるレーザー光は、第1レンズ23a及び第2レンズ25を介して蛍光体層42上に集光される。励起光源10bから射出されるレーザー光は、第1レンズ23b及び第2レンズ25を介して蛍光体層42上に集光され、励起光源10cから射出されるレーザー光は、第1レンズ23c及び第2レンズ25を介して蛍光体層42上に集光される。励起光源10a、励起光源10b、励起光源10cから射出されたレーザー光が、集光光学系21によって蛍光体層42上において互いに重ね合わされることによって、蛍光体層42を励起する励起光が形成される。
【0042】
コリメート光学系60は、回転蛍光板30からの光の拡がりを抑える第1レンズ62と、第1レンズ62から入射した光を略平行化する第2レンズ64と、を備えている。コリメート光学系60は、全体として回転蛍光板30からの光を略平行化する機能を有する。第1レンズ62及び第2レンズ64は、例えば、凸レンズからなる。
【0043】
第1レンズアレイ120は、コリメート光学系60からの光を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する。第1レンズアレイ120は、コリメート光学系60からの光を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子として機能する。第1レンズアレイ120は、複数の第1小レンズ122が照明光軸100axと直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。第1小レンズ122の外形形状は、液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bの画像形成領域の外形形状に関して略相似形である。
【0044】
第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120の複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する。第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1小レンズ122の像を液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bの画像形成領域近傍に結像させる機能を有する。第2レンズアレイ130は、複数の第2小レンズ132が照明光軸100axに直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。
【0045】
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光として射出する光学素子である。偏光変換素子140は、回転蛍光板30からの光に含まれる偏光成分のうち一方の直線偏光成分をそのまま透過し、他方の直線偏光成分を照明光軸100axに垂直な方向に反射する偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸100axに平行な方向に反射する反射層と、反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光成分に変換する位相差板と、を有する。
【0046】
重畳レンズ150は、偏光変換素子140からの各部分光束を集光して液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bの画像形成領域近傍に重畳させるための光学素子である。重畳レンズ150の光軸と照明装置100の光軸とが略一致するように、重畳レンズ150が配置されている。重畳レンズ150は、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成されていてもよい。第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び重畳レンズ150は、回転蛍光板30からの光の面内光強度分布を均一にするインテグレーター光学系を構成する。
【0047】
なお、第1レンズアレイ120及び第2レンズアレイ130を用いたレンズインテグレーター光学系の代わりに、ロッドレンズを用いたロッドインテグレーター光学系を用いてもよい。
【0048】
光源装置700は、光源710、集光光学系720、拡散板760、散乱板730、偏光変換インテグレーターロッド740及び集光レンズ750を備えている。
【0049】
光源710は、色光としてレーザー光からなる青色光(発光強度のピーク:約445nm、図2参照)を射出するレーザー光源である。図2において、符号Bで示すのは、光源710が青色光として射出する色光成分である。図1では光源710を1つ図示しているが、光源710の数はこれに限らず、複数個とすることも可能である。また、445nm以外の波長(例えば460nm)の青色光を射出する光源を用いることもできる。
【0050】
集光光学系720は、第1レンズ722及び第2レンズ724を備えている。集光光学系720は、全体として、青色光を略集光した状態で拡散板760に入射させる。第1レンズ722及び第2レンズ724は、例えば凸レンズからなる。
【0051】
図3は、本発明の第1実施形態に係る拡散板760を示す模式図である。図3(a)は拡散板760の断面図であり、図3(b)は拡散板760の平面図である。
【0052】
図3に示すように、拡散板760は、光透過性を有する基板761と、基板761に形成された複数の拡散部ARと、を有している。複数の拡散部ARは、レーザー光を拡散させて基板761から所定の距離だけ離れた平面にレーザー光を照射したときに、前記平面上でのレーザー光のビームスポットの大きさが互いに異なるように構成されている(図5参照)。
【0053】
拡散板760はいわゆる透過型の回転拡散板である。拡散板760は、モーター765により回転可能な基板761の一部に、複数の拡散部ARが基板761の回転方向に沿って連続して形成されてなる。拡散部ARが形成されている領域は、レーザー光が入射する領域を含む。
【0054】
基板761は、所定の回転軸762を中心として回転する回転円板である。基板761は、レーザー光を透過する材料からなる。基板761の材料としては、例えば、石英ガラス、水晶、サファイア、光学ガラス、透明樹脂(例えばアクリル樹脂)等を用いることができる。複数の拡散部ARは、基板761の回転方向に沿って形成されている。
【0055】
複数の拡散部ARには、第1拡散部AR1と第2拡散部AR2と第3拡散部AR3とが含まれている。第1拡散部AR1は、拡散粒子が分散された第1拡散層763によって形成されている。第2拡散部AR2は、拡散粒子が分散された第2拡散層764によって形成されている。第3拡散部AR3は、第1拡散層763と第2拡散層764とが基板761の法線方向から視て重なり合って配置されることにより形成されている。第1拡散層763及び第2拡散層764は、例えばシリコン樹脂などのバインダーに二酸化チタン(TiO)などの高屈折材料をフィラーとして複合化したものを用いてスクリーン印刷などの方法で形成することができる。これにより、フィラーの濃度を調整することで拡散角の設定が可能となる。また、量産性の面で好適である。
【0056】
第1拡散層763は、基板761の一面(レーザー光が入射する面とは反対側の面)に形成されている。第2拡散層764は、基板761の一面とは反対側の面(レーザー光が入射する面)に形成されている。
【0057】
第1拡散層763と第2拡散層764とは、同一の拡散材料で形成されている。すなわち、第1拡散層763と第2拡散層764とは、第1拡散層763へのレーザー光の入射面(第1拡散層763の基板761の側の面)から所定の距離だけ離れた平面(第1仮想平面)上での当該レーザー光のビームスポットの大きさと、第2拡散層764へのレーザー光の入射面(第2拡散層764の基板761とは反対側の面)から所定の距離だけ離れた平面(第2仮想平面)上での当該レーザー光のビームスポットの大きさとが互いに等しくなるよう同一の拡散材料で形成されている。
【0058】
本実施形態のモーター765は、拡散板760を所定の回転速度で回転駆動する。例えば、レーザー光が第1拡散部AR1を透過する状態、レーザー光が第3拡散部AR3を透過する状態、及びレーザー光が第2拡散部AR2を透過する状態が周期的に繰り返される。レーザー光が第1拡散部AR1を透過する時間、レーザー光が第3拡散部AR3を透過する時間、及びレーザー光が第2拡散部AR2を透過する時間は、それぞれ0.1秒以下(10Hz以上)に設定することが望ましい。この条件を満たすようモーター765を回転させることにより、スペックルノイズを抑制する効果を発現させることができる。
【0059】
なお、レーザー光が第1拡散部AR1を透過する時間、レーザー光が第3拡散部AR3を透過する時間、及びレーザー光が第2拡散部AR2を透過する時間は、それぞれ0.01秒以下(100Hz以上)に設定するとさらによい。この条件を満たすようモーター765を回転させることにより、スペックルノイズを抑制する効果を十分に発現させることができる。
【0060】
図4は、本発明の第1実施形態に係る拡散板760を示す模式図である。図4(a)は、レーザー光が第1拡散部AR1を透過する状態である。図4(b)は、レーザー光が第3拡散部AR3を透過する状態である。図4(c)は、レーザー光が第2拡散部AR2を透過する状態である。なお、図4において、符号θ1〜θ3はレーザー光の拡散角(基板761の法線と拡散されたレーザー光の主光線とのなす角度)である。
【0061】
図4に示すように、各拡散部ARに入射するレーザー光の拡散角を比較すると、レーザー光が第3拡散部AR3を透過する場合に拡散角θ3が最も大きくなる。レーザー光が第1拡散部AR1を透過する場合の拡散角θ1とレーザー光が第2拡散部AR2を透過する場合の拡散角θ2とは略等しくなる。しかしながら、拡散部ARを透過した場合のレーザー光の拡がり度合いを比較すると、レーザー光が第1拡散部AR1を透過した場合よりもレーザー光が第2拡散部AR2を透過した場合のほうが基板761を透過した距離に応じて基板761の出射側の面でレーザー光の拡がり度合いが大きい。
【0062】
図5は、レーザー光を拡散させて基板から所定の距離Lsfだけ離れた平面(仮想平面)SFにレーザー光を照射したときの当該平面SF上でのレーザー光のビームスポットを示す図である。図5(a)において、「所定の距離Lsf」とは、基板761の主面761a(基板761のレーザー光が入射する面とは反対側の面)から仮想平面SFまでの距離である。図5(b)において、符号BS1はレーザー光が第1拡散部AR1を透過した場合のレーザー光のビームスポット、符号BS2はレーザー光が第2拡散部AR2を透過した場合のレーザー光のビームスポット、符号BS3はレーザー光が第3拡散部AR3を透過した場合のレーザー光のビームスポットである。
【0063】
なお、ビームスポットとは、仮想平面SF上のレーザー光が照射される領域である。拡散部AR1を透過したレーザー光は、ビームスポットの中心では強度が高く、ビームスポットの中心から離れるに従って強度が低くなる。例えば、ビームスポットは、レーザー光の強度が所定の割合(例えば50%)まで低下したときのスポット径におけるビームスポットとする。
【0064】
図5(a)に示すように、拡散板760にレーザー光を入射させつつ拡散板760を回転させ、レーザー光を拡散させて基板から所定の距離だけ離れた平面(仮想平面)SFにレーザー光を照射した場合を考える。
【0065】
図5(b)に示すように、各拡散部ARを透過したレーザー光のビームスポットを比較すると、レーザー光が第3拡散部AR3を透過した場合のレーザー光のビームスポットBS3が最も大きくなる。レーザー光が第1拡散部AR1を透過した場合のレーザー光のビームスポットBS1は最も小さくなる。レーザー光が第2拡散部AR2を透過した場合のレーザー光のビームスポットBS2は、ビームスポットBS3とビームスポットBS1との間の大きさとなる。
【0066】
拡散板760にレーザー光を入射させつつ拡散板760を回転させると、当該レーザー光が各拡散部ARに入射する時間が順次切り換わる。すると、基板761から所定の距離だけ離れた平面SFには、互いに異なる大きさのビームスポットBS1、BS2、BS3が、ビームスポットBS1、ビームスポットBS3、ビームスポットBS2、ビームスポットBS3のサイクルで時間順次に形成される。
【0067】
図1に戻り、散乱板730は、光源710からの青色光を所定の散乱度で散乱し、蛍光(回転蛍光板30から射出される赤色光及び緑色光)に似た配光分布を有する青色光とする。散乱板730としては、例えば、光学ガラスからなる磨りガラスを用いることができる。
【0068】
偏光変換インテグレーターロッド740は、光源710からの青色光の面内光強度分布を均一にし、かつ、当該青色光を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光とする光学素子である。偏光変換インテグレーターロッド740は、例えば、インテグレーターロッドと、当該インテグレーターロッドの入射面側に配置され、青色光が入射する小孔を有する反射板と、射出面側に配置される反射型偏光板と、を備えている。
【0069】
なお、ロッドレンズを用いた偏光変換インテグレーターロッドの代わりに、レンズアレイを用いたレンズインテグレーター光学系及び偏光変換素子を用いることもできる。
【0070】
集光レンズ750は、偏光変換インテグレーターロッド740からの光を集光して液晶光変調装置400Bの画像形成領域近傍に入射させる。
【0071】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210、反射ミラー222,230,250を備えている。色分離導光光学系200は、照明装置100からの光を赤色光及び緑色光に分離し、照明装置100からの赤色光及び緑色光並びに光源装置700からの青色光のぞれぞれの色光を照明対象となる液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bに導光する機能を有する。色分離導光光学系200と液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bとの間には、集光レンズ300R,集光レンズ300G,集光レンズ300Bが配置されている。
【0072】
ダイクロイックミラー210を通過した赤色光は、反射ミラー230で反射され、集光レンズ300Rを通過して赤色光用の液晶光変調装置400Rの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー210で反射された緑色光は、反射ミラー222でさらに反射され、集光レンズ300Gを通過して緑色光用液晶光変調装置400Gの画像形成領域に入射する。光源装置700からの青色光は、反射ミラー250で反射され、集光レンズ300Bを通過して青色光用の液晶光変調装置400Bの画像形成領域に入射する。
【0073】
液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bは、入射した色光を画像情報に応じて変調しカラー画像を形成するものである。液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bは、照明装置100の照明対象となる。図示を省略したが、各集光レンズ300R,300G,3000Bと各液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bとの間には、それぞれ入射側偏光板が配置され、液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bとクロスダイクロイックプリズム500との間には、それぞれ射出側偏光板が配置されている。入射側偏光板、液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400B及び射出側偏光板によって、入射した各色光の光変調が行われる。
【0074】
液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bは、一対の透明なガラス基板の間に電気光学物質である液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置である。液晶光変調装置400R,液晶光変調装置400G,液晶光変調装置400Bは、例えばポリシリコンTFTをスイッチング素子として備え、与えられた画像信号に応じて、入射側偏光板から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0075】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。クロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形形状をなす。直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、緑色光及び青色光を通過させ赤色光を反射する誘電体多層膜であり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光及び緑色光を通過させ青色光を反射する誘電体多層膜である。略X字状の界面に形成された2種類の誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0076】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で画像を形成する。
【0077】
本実施形態に係る拡散板760によれば、基板761にレーザー光を入射させつつ基板761を移動させると、当該レーザー光が各拡散部ARに入射する時間が順次切り換わる。すると、基板761から所定の距離Lsfだけ離れた平面SFには、互いに異なる大きさのビームスポットBSが時間順次に形成される。このため、単一の拡散材料により形成された拡散素子を回転させる構成に比べて、レーザー光によって形成される前記平面上でのスペックルのパターンを動的に変化させることができる。そして、このようなスペックルのパターンが時間的に重畳され平均化されることで、スペックルが認識されにくくなる。よって、スペックルによる表示品質の低下(スペックルノイズ)を抑制することが可能となる。
【0078】
また、この構成によれば、基板761が回転軸762を中心として回転する回転基板であるため、簡単な構成でスペックルノイズを抑制することが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態の光源装置700は、2種の拡散部のみを有する構成であってもよい。
【0080】
ただし、第1実施形態の構成によれば、第1拡散部及び第2拡散部の2種の拡散部のみを有する構成に比べて、レーザー光によって形成される基板761から所定の距離Lsfだけ離れた平面上でのスペックルのパターンをさらに動的に変化させることができる。よって、スペックルノイズを抑制することが可能となる。
【0081】
また、この構成によれば、第1拡散層763が基板761の一面に形成され、第2拡散層764が基板761の一面とは反対側の面に形成されているので、スペックルノイズを抑制することが可能な構成を容易に実現することができる。例えば、第1拡散層763及び第2拡散層761の双方の拡散層を同一の拡散材料で形成する場合に有効である。
【0082】
第1拡散層763が基板761の一面に形成され、第2拡散層764が基板761の一面とは反対側の面に形成される構成においては、第1拡散層763及び第2拡散層764の双方の拡散層を同一の拡散材料で形成した場合でも、基板761の厚みの分だけ、第1拡散層763を透過したレーザー光と第2拡散層764を透過したレーザー光との間で基盤761から所定の距離Lsfだけ離れた平面SF上でのビームスポットの大きさに差が生じる。よって、スペックルノイズを抑制することが可能な構成を容易に実現することができる。
【0083】
本実施形態に係る光源装置700によれば、上述した拡散板760を備えているので、スペックルノイズを抑制することが可能な光源装置700を提供することができる。
【0084】
本実施形態に係るプロジェクター1000によれば、上述した光源装置700を備えているので、スペックルノイズを抑制することが可能なプロジェクター1000を提供することができる。
【0085】
なお、本実施形態の光源装置700では、第1拡散層763と第2拡散層764とはパターン形成の上で同一のスクリーンにより形成できることを一つの特徴としたが、パターン形成のスクリーンを同一とせず、例えば、第1拡散層763、又は第2拡散層764のいずれかを連続した環状パターンで形成してもよい。特に、第1拡散層763を連続した環状パターンとした場合は、図5(b)に示す拡散されたレーザー光のビーム径がBS1(第1拡散層を透過したとき)とBS3(第1拡散層と第2拡散層の双方を透過したとき)の大きな動的な変化を大きくすることができ、スペックル低減の効果を得ることができる。
【0086】
また、本実施形態の光源装置700では、モーター765が駆動時間内において所定の回転数で駆動する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、駆動時間内においてモーター765の回転数が時間的に変動してもよい。
【0087】
また、本実施形態のプロジェクター1000では、液晶光変調装置として3つの液晶光変調装置を用いたが、これに限らない。1つ、2つ又は4つ以上の液晶光変調装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0088】
また、本実施形態のプロジェクター1000では、透過型のプロジェクターを用いたが、これに限らない。例えば、反射型のプロジェクターを用いてもよい。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶表示装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を透過するタイプであることを意味している。「反射型」とは、反射型の液晶表示装置等のように光変調手段としての光変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクターに本発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を奏することができる。
【0089】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係るプロジェクター2000の光学系を示す模式図である。なお、図6において、符号800axは照明光軸(照明装置800からDMD850に向けて射出される光の光軸)である。
【0090】
図6に示すように、本実施形態に係るプロジェクター2000は、上述の照明装置100及び光源装置700に替えて照明装置800を備えている点、上述の色分離導光光学系200、3つの集光レンズ300R,300G,300B、光変調装置としての3つの液晶光変調装置400R,400G,400B及びクロスダイクロイックプリズム500に替えてマイクロミラー型の光変調装置850を備えている点、で上述の第1実施形態に係るプロジェクター1000と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0091】
プロジェクター2000は、照明装置800と、マイクロミラー型の光変調装置850と、投写光学系600と、を具備して構成されている。
【0092】
照明装置800は、光源ユニット810と、集光光学系820と、第1ダイクロイックミラー831と、コリメート集光光学系840と、回転蛍光板860と、モーター865と、リレー光学系870と、第2ダイクロイックミラー832と、を具備して構成されている。
【0093】
照明装置800は、回転蛍光板860の回転に従って、励起光(青色光)及び蛍光(赤色光及び緑色光を含む光)を順次出射する。
【0094】
光源ユニット810は、光軸が照明光軸800axと直交するように配置されている。光源ユニット810は、レーザー光(励起光B)を射出する。集光光学系820は、青色光Bを略集光した状態で回転蛍光板860に入射させる。
【0095】
第1ダイクロイックミラー831は、集光光学系820とコリメート集光光学系840(第2レンズ842)との間に、光源ユニット810の光軸及び照明光軸800axのそれぞれに対して45°の角度で交わるように配置されている。第1ダイクロイックミラー831は、光源ユニット810から射出された励起光(青色光)を透過し、蛍光(赤色光及び緑色光)を反射する。具体的には、第1ダイクロイックミラー831は、光源ユニット810から射出されて集光光学系820を透過した青色光Bを入射し、入射した青色光をコリメート集光光学系840に向けて透過する。また、第1ダイクロイックミラー831は、青色光Bを受けて蛍光体層866から放射された蛍光を第2ダイクロイックミラー832に向けて反射する。
【0096】
コリメート集光光学系840は、第1ダイクロイックミラー831から回転蛍光板860までの光路中に配置されている。コリメート集光光学系840は、第1レンズ841及び第2レンズ842を備えている。第1レンズ841及び第2レンズ842は凸レンズからなっている。コリメート集光光学系840は、第1ダイクロイックミラー831を透過した青色光Bを略集光した状態で蛍光体層866に入射させるとともに、蛍光体層866から放射された蛍光を略平行化する。
【0097】
図7は、本発明の第2実施形態に係る回転蛍光板860を示す模式図である。図7(a)は回転蛍光板860の断面図であり、図7(b)は回転蛍光板860の平面図である。
【0098】
図7に示すように、回転蛍光板860は、回転軸865を中心として回転可能な基板861と、基板861上に設けられ、基板861の回転中心から所定の距離だけ離間した位置に照射される励起光(青色光)によって励起されて蛍光を放射する蛍光体層866(赤色光を放射する赤色蛍光体層866R及び緑色光を放射する緑色蛍光体層866G)と、複数の拡散部ARと、を備えている。複数の拡散部ARは、レーザー光を拡散させて基板861から所定の距離だけ離れた平面にレーザー光を照射したときに、前記平面上でのレーザー光のビームスポットの大きさが互いに異なるように構成されている。
【0099】
基板861は、回転軸865を中心として回転する回転円板である。基板861は、レーザー光を透過する材料からなる。基板861の材料としては、例えば、石英ガラス、水晶、サファイア、光学ガラス、透明樹脂(例えばアクリル樹脂)等を用いることができる。複数の拡散部ARは、基板761の回転方向に沿って形成されている。
【0100】
基板861は、複数(3つ)の扇形形状のセグメント領域SGを有する。セグメント領域SGには、第1のセグメント領域SG1、第2のセグメント領域SG2、及び第3のセグメント領域SG3が含まれている。
【0101】
基板861の第1のセグメント領域SG1及び第2のセグメント領域SG2には、光を反射する反射膜867が形成されている。反射膜867は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料から形成されている。基板861の第3のセグメント領域SG3の部分は、光透過性を有する。
【0102】
基板861の第1のセグメント領域SG1の反射膜867上には、赤色蛍光体層866Rが形成されている。基板861の第2のセグメント領域SG2の反射膜867上には、緑色蛍光体層866Gが形成されている。基板861の第3のセグメント領域SG3には、複数の拡散部ARが形成されている。このような構成により、回転蛍光板860を回転軸862を中心として回転させることによって、赤色光R、緑色光G、青色光Bをバランスよく取り出すことができる。
【0103】
複数の拡散部ARには、第1拡散部AR1と第2拡散部AR2と第3拡散部AR3とが含まれている。第1拡散部AR1は、拡散粒子が分散された第1拡散層863によって形成されている。第2拡散部AR2は、拡散粒子が分散された第2拡散層864によって形成されている。第3拡散部AR3は、第1拡散層863と第2拡散層864とが基板861の法線方向から視て重なり合って配置されることにより形成されている。第1拡散層863及び第2拡散層864は、例えばシリコン樹脂などのバインダーに二酸化チタン(TiO)などの高屈折材料をフィラーとして複合化したものを用いてスクリーン印刷などの方法で形成することができる。
【0104】
第1拡散層863及び第2拡散層864は、基板861の一面(レーザー光が入射する面)に形成されている。基板861の法線方向から視て、第1拡散層863と第2拡散層864とは同じ形状で形成されている。
【0105】
このため、第1拡散層863と第2拡散層864とを形成する場合には、同一のマスクパターンを有するマスクを用いることができる。例えば、先ず、当該マスクを用いて基板861上に第2拡散層864を形成する。次いで、第2拡散層864が形成された基板861を回転軸862を中心にして所定の角度だけずらす。そして、当該マスクを用いて基板861上の第2拡散層864と一部重なるように第1拡散層863を形成する。以上の工程で、複数の拡散部ARを形成することができる。
【0106】
図6に戻り、リレー光学系870は、回転蛍光板860から第2ダイクロイックミラー832までの光路に配置されている。リレー光学系870は、第1反射ミラー871と、第2反射ミラー872と、を備えている。リレー光学系870は、第1ダイクロイックミラー831を透過した励起光を第2ダイクロイックミラー832に導く。
【0107】
第1反射ミラー871は、第1ダイクロイックミラー831を透過し、回転蛍光板860(複数の拡散部ARが形成された第3のセグメント領域SG3)を通過した励起光を第2反射ミラー872に向けて反射する。第2反射ミラー872は、第1反射ミラー871によって反射された励起光を、第2ダイクロイックミラー832に向けて反射する。
【0108】
第2ダイクロイックミラー832は、第1ダイクロイックミラー831から蛍光が反射される方向に配置されるとともに、第2反射ミラー872から励起光が反射される方向に配置されている。第2ダイクロイックミラー832は、第1ダイクロイックミラー831で反射された蛍光を透過させるとともに、リレー光学系870によって第2ダイクロイックミラー832に導かれた励起光を蛍光の透過方向と同じ方向に反射する。
【0109】
マイクロミラー型の光変調装置850は、例えばDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)(TI社の商標)を用いる。プロジェクター2000は、DMDと専用信号処理技術を用いたDLP(Digital Light Processing)方式を採用している。DMD850は、複数のマイクロミラーがマトリクス状に配列されたものである。DMD850は、正面方向に対して一方向に傾いた入射方向から入射した光を、複数のマイクロミラーの傾き方向の切換えにより正面方向のオン状態光線と斜め方向のオフ状態光線とに分けて反射することにより画像を表示する。一方の傾き方向に傾動されたマイクロミラーに入射した光を該マイクロミラーにより正面方向に反射してオン状態光線とし、他方の傾き方向に傾動されたマイクロミラーに入射した光を該マイクロミラーにより斜め方向に反射してオフ状態光線とするとともに、該オフ状態光線を吸光板で吸収し、正面方向への反射による明表示と、斜め方向への反射による暗表示とにより画像を生成する。DMD850は、照明装置800から射出される赤色光、緑色光、青色光を順次変調する。
【0110】
DMD850から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で画像を形成する。
【0111】
本実施形態に係る拡散板によれば、スペックルノイズを抑制することが可能な構成を容易に実現することができる。第1拡散層863と第2拡散層864とが基板861の同一の面上に形成されているので、第1拡散層と第2拡散層とを基板の異なる面に形成する場合に比べて、製造が容易になる。例えば、第1拡散層863と第2拡散層864とで異なる拡散材料を用いる場合に有効である。
【0112】
また、この構成によれば、基板861の法線方向から視て、第1拡散層863と第2拡散層864とが同じ形状で形成されているので、スペックルノイズを抑制することが可能な構成を容易に実現することができる。例えば、第1拡散層863及び第2拡散層864の双方の拡散層を同一のマスクパターンを用いて形成する場合に有効である。
【0113】
なお、本実施形態では、第1拡散層863と第2拡散層864とはパターン形成の上で同一のスクリーンにより形成できることを一つの特徴としたが、パターン形成のスクリーンを同一とせず、例えば、第1拡散層863、又は第2拡散層864のいずれかを連続した環状パターン(第3セグメントSG3の領域内で連続)で形成してもよい。特に、第1拡散層863を連続した環状パターンとした場合は、第1拡散層863を断続した環状パターンとしたときに比べて、拡散されたレーザー光のビーム径の大きな動的な変化を大きくすることができ、スペックル低減の効果を得ることができる。
【0114】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る拡散板960を示す模式図である。図8(a)は拡散板960の断面図であり、図8(b)は拡散板960の平面図である。
【0115】
図8に示すように、拡散板960は、光透過性を有する基板961と、基板961に形成された複数の拡散部ARと、を有している。複数の拡散部ARは、レーザー光を拡散させて基板961から所定の距離だけ離れた平面にレーザー光を照射したときに、前記平面上でのレーザー光のビームスポットの大きさが互いに異なるように構成されている(図5参照)。
【0116】
なお、本実施形態における「所定の距離」とは、基板961の主面961a(基板961のレーザー光が入射する面とは反対側の面であって複数の拡散部ARが形成されていない部分の面)から仮想平面SFまでの距離である。
【0117】
拡散板960はいわゆる透過型の振動拡散板である。拡散板960は、圧電素子などの駆動素子965により振動可能な基板961の一部に、複数の拡散部ARが基板961の振動方向に沿って連続して形成されてなる。拡散部ARが形成されている領域は、レーザー光が入射する領域を含む。
【0118】
基板961は、当該基板961の法線と直交する方向に振動する。基板961は、レーザー光を透過する材料からなる。基板961の材料としては、例えば、石英ガラス、水晶、サファイア、光学ガラス、透明樹脂(例えばアクリル樹脂)等を用いることができる。複数の拡散部ARは、基板961の振動方向に沿って形成されている。
【0119】
複数の拡散部ARには、第1拡散部AR1と第2拡散部AR2と第3拡散部AR3とが含まれている。第1拡散部AR1は、基板961の表面をサンドブラストにより粗面化することによって形成されている(第1拡散面962)。第2拡散部AR2は、第1拡散部AR1と隣り合う位置の基板961の表面を例えばサンドブラストにより粗面化することによって形成されている(第2拡散面963)。第3拡散部AR3は、第2拡散部AR2と隣り合う位置の基板961の表面をサンドブラストにより粗面化することによって形成されている(第3拡散面964)。
【0120】
第1拡散面962、第2拡散面963、及び第3拡散面964は、基板961の一面(レーザー光が入射する面とは反対側の面)に形成されている。
【0121】
本実施形態の駆動素子965は、拡散板960を所定の振動速度で振動させる。例えば、レーザー光が第1拡散部AR1を透過する状態、レーザー光が第3拡散部AR3を透過する状態、及びレーザー光が第2拡散部AR2を透過する状態が周期的に繰り返される。レーザー光が第1拡散部AR1を透過する時間、レーザー光が第3拡散部AR3を透過する時間、及びレーザー光が第2拡散部AR2を透過する時間は、それぞれ0.1秒以下(10Hz以上)に設定することが望ましい。この条件を満たすよう駆動素子965を駆動させることにより、スペックルノイズを抑制する効果を発現させることができる。
【0122】
なお、レーザー光が第1拡散部AR1を透過する時間、レーザー光が第3拡散部AR3を透過する時間、及びレーザー光が第2拡散部AR2を透過する時間は、それぞれ0.01秒以下(100Hz以上)に設定するとさらによい。この条件を満たすよう駆動素子965を駆動させることにより、スペックルノイズを抑制する効果を十分に発現させることができる。
【0123】
本実施形態の拡散板960によれば、基板961が当該基板961と直交する方向に振動可能であるので、簡単な構成でスペックルノイズを抑制することが可能となる。
【0124】
(第1変形例)
図9は、本発明の第3実施形態に係る拡散板の第1変形例を示す模式図である。図9(a)は拡散板960Aの断面図であり、図9(b)は拡散板960Aの平面図である。
【0125】
図9に示すように、本変形例の拡散板960Aは、基板961Aの各拡散層962A〜964Aが形成された部分の厚みが互いに異なる点で上述した第3実施形態に係る拡散板960と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図8と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0126】
拡散板960Aは、光透過性を有する基板961Aと、基板961Aに形成された複数の拡散部ARと、を有している。複数の拡散部ARは、レーザー光を拡散させて基板961Aから所定の距離だけ離れた平面にレーザー光を照射したときに、前記平面上でのレーザー光のビームスポットの大きさが互いに異なるように構成されている(図5参照)。
【0127】
なお、本実施形態における「所定の距離」とは、基板961Aの主面961Aa(基板961Aのレーザー光が入射する面とは反対側の面であって複数の拡散部ARが形成されていない部分の面)から仮想平面SFまでの距離である。
【0128】
拡散板960Aはいわゆる透過型の振動拡散板である。拡散板960Aは、圧電素子などの駆動素子965により振動可能な基板961Aの一部に、複数の拡散部ARが基板961Aの振動方向に沿って連続して形成されてなる。拡散部ARが形成されている領域は、レーザー光が入射する領域を含む。
【0129】
複数の拡散部ARには、第1拡散部AR1と第2拡散部AR2と第3拡散部AR3とが含まれている。第1拡散部AR1は、表面に微細な凹凸構造を有する第1光拡散フィルム962Aによって形成されている。第2拡散部AR2は、表面に微細な凹凸構造を有する第2光拡散フィルム963Aによって形成されている。第3拡散部AR3は、表面に微細な凹凸構造を有する第3光拡散フィルム964Aによって形成されている。
【0130】
第1光拡散フィルム962A、第2光拡散フィルム963A、及び第3光拡散フィルム964Aは、基板961Aの一面(レーザー光が入射する面とは反対側の面)に形成されている。
【0131】
基板961Aの第1光拡散フィルム962Aが形成された部分の厚みd1と、基板961Aの第2光拡散フィルム963Aが形成された部分の厚みd2と、基板961Aの第3光拡散フィルム964Aが形成された部分の厚みd3とは厚みが互いに異なっている。基板961Aの第1光拡散フィルム962Aが形成された部分の厚みd1は、基板961A本体の厚み(光拡散フィルムが形成されていない部分の厚み)と同じである。基板961Aの第2光拡散フィルム963Aが形成された部分の厚みd2は、基板961Aの第1光拡散フィルム962Aが形成された部分の厚みd1よりも厚くなっている(d2>d1)。基板961Aの第3光拡散フィルム964Aが形成された部分の厚みd3は、基板961Aの第1光拡散フィルム962Aが形成された部分の厚みd1よりも薄くなっている(d3<d1)。
【0132】
本実施形態の拡散板960Aによれば、基板961Aの第1光拡散フィルム962Aが形成された部分と第2光拡散フィルム963Aが形成された部分との間で、基板961Aの厚みの変化分による基板961Aから所定の距離だけ離れた平面でのビームスポットの大きさに差が生じる。このため、レーザー光によって形成される前記平面上でのスペックルのパターンをさらに動的に変化させることができる。よって、スペックルノイズを抑制することが可能となる。
【0133】
なお、拡散部ARについては、入射するレーザー光に対して異なる拡散性を有する拡散部が複数あることが必要であり、レーザー光に動的な拡散性の変化を与えるために少なくとも2以上の異なる拡散部が必要である。また、拡散部は3以上であってもよい。
【0134】
本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも、適用することができる。
【0135】
上記各実施形態においては、本発明の光源装置をプロジェクターに適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、本発明の光源装置を他の光学機器(例えば、光ディスク装置、自動車のヘッドランプ、照明機器等)に適用することも可能である。
【0136】
上記第1実施形態においてはLCDを用いた構造で回転蛍光板に対して2つの拡散層が異なる面に配置された例を示し、上記第2実施形態においてはDMDを用いた構造で回転蛍光板に対して2つの拡散層が同じ面に配置された例を示し、上記第3実施形態においては振動蛍光板に対して拡散部の表面粗さや基板の厚みが異なる例を示したが、これに限らず、各実施形態の組み合わせが入れ替わっていてもよい。
【符号の説明】
【0137】
700…光源装置、710…光源、760,960,960A…拡散板、761,861,961,961A…基板、762,862…回転軸、763,863…第1拡散層、764,864…第2拡散層、400R,400G,400B…液晶光変調装置(光変調装置)、600…投写光学系、1000,2000…プロジェクター、AR…拡散部、AR1…第1拡散部、AR2…第2拡散部、AR3…第3拡散部、BS1,BS2,BS3…ビームスポット、d1,d2,d3…基板の厚み、Lsf…所定の距離、SF…基板から所定の距離だけ離れた平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基板と、
前記基板に形成された複数の拡散部と、を有し、
前記複数の拡散部は、レーザー光を拡散させて前記基板から所定の距離だけ離れた平面にレーザー光を照射したときに、前記平面上での前記レーザー光のビームスポットの大きさが互いに異なるように構成されていることを特徴とする拡散板。
【請求項2】
前記基板は、所定の回転軸を中心として回転する回転円板であり、
前記複数の拡散部は、前記基板の回転方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の拡散板。
【請求項3】
前記基板は、当該基板の法線と直交する方向に振動可能であり、
前記複数の拡散部は、前記基板の振動方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の拡散板。
【請求項4】
前記複数の拡散部には、第1拡散部と第2拡散部と第3拡散部とが含まれ、
前記第1拡散部は、拡散粒子が分散された第1拡散層によって形成され、
前記第2拡散部は、拡散粒子が分散された第2拡散層によって形成され、
前記第3拡散部は、前記第1拡散層と前記第2拡散層とが前記基板の法線方向から視て重なり合って配置されることにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の拡散板。
【請求項5】
前記第1拡散層は前記基板の一面に形成されており、
前記第2拡散層は前記基板の一面とは反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の拡散板。
【請求項6】
前記第1拡散層と前記第2拡散層とは、
前記第1拡散層へのレーザー光の入射面から所定の距離だけ離れた平面上での当該レーザー光のビームスポットの大きさと前記第2拡散層へのレーザー光の入射面から所定の距離だけ離れた平面上での当該レーザー光のビームスポットの大きさとが互いに等しくなるよう同一の拡散材料で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の拡散板。
【請求項7】
前記第1拡散層及び前記第2拡散層の双方の拡散層は前記基板の一面に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の拡散板。
【請求項8】
前記基板の前記第1拡散層が形成された部分の厚みと前記第2拡散層が形成された部分の厚みとが互いに異なることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の拡散板。
【請求項9】
前記基板の法線方向から視て、前記第1拡散層と前記第2拡散層とは同じ形状で形成されていることを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の拡散板。
【請求項10】
レーザー光を射出する光源と、
前記光源から射出されるレーザー光を拡散する請求項1〜9のいずれか一項に記載の拡散板と、
を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置からの変調光を投写画像として投写する投写光学系と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−194268(P2012−194268A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56898(P2011−56898)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】