説明

拡散装置、通信装置、送信装置、通信方法及びプログラム

【課題】 時間及び周波数の両方のオフセットを利用可能な通信装置等を提案する。
【解決手段】 送信装置3は、式(2)を用いて送信信号sGD(t)を生成する。拡散部13は、時間拡散部25と、周波数拡散部27を備える。時間拡散部25は、時間領域拡散符号Xn,jを乗算する。周波数拡散部27は、周波数領域拡散符号X'n,jを乗算する。式(2)において、τjは、j番目のユーザに対する遅れ時間である。vjは、j番目のユーザに対する周波数オフセットである。これらの時間と周波数が許容されることにより、時間と周波数の両方のオフセットを利用することが可能となる。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散装置、通信装置、送信装置、通信方法及びプログラムに関し、特に、符号分割多元接続(CDMA)等に応用可能な拡散装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ非同期式の直接系列(direct sequence:DS)/符号分割多元接続(code division multiple access:CDMA)システムにおける多元接続干渉(multiple access interference:MAI)の分散は、チップ同期式システムにおけるものよりも小さく、優れている。もし拡散スペクトル(Spread Spectrum:SS)符号が独立かつ同一分布(independent and identically distributed:i.i.d.)確率変数の系列であるならば、MAIの分散は、チップ同期式システムでは1であり、チップ非同期式システムでは2/3である。MAIは、i.i.d.符号を負の相関符号で置き換えることによって、1/√3に減少する。この現象は、モンテカルロシミュレーションにおける分散減少技術(variance reduction technique)(すなわち、相反変量(antithetic variate))を想起させる。
【0003】
発明者らは、近年、周波数分割に基づくCDMA(Frequency division-based CDMA:FD-CDMA)システムを提案した(非特許文献1参照)。これは、チップ非同期式DS/CDMAシステムの周波数双対(frequency dual)として考察されたものである。FD-CDMAシステムは、周波数同期を必要とせず、ユーザ間の相対的な周波数オフセットを許容するという重要な利点がある。FD-CDMAシステムにおけるMAIの分散は、DS/CDMAシステムと同じく表現される。遅れl+εに関する偶奇の相互相関関数(the even/odd cross-correlation function)は、矩形波形に関するDS/CDMAシステムとsinc波形に関するFD-CDMAシステムでは、共に、遅れl及びl+εに関する二重の相互相関関数の線形重畳によって与えられる。ここで、lは整数であり、0<ε<1は、分数部分(fraction part)である。
【0004】
DS/CDMAシステムでは、1つのデータ区間は、いくつかの等しい長さの小さなサブ区間に分割される。これらは、チップと呼ばれる。他方、FD-CDMAシステムでは、1つのデータのバンド幅は、いくつかの周波数のサブバンドに分割される。これらは、周波数チップと呼ばれる。以下では、DS/CDMAは、時分割CDMA(time division CDMA:TD-CDMA)システムとして参照する。表1に、TD-CDMA及びFD-CDMAを含むいくつかの通信方法をまとめている。この表1は、非特許文献2において、詳細に説明されている。
【0005】
なお、非特許文献3及び4は、発明者らの文献であり、従来のFD-CDMA及びTD-CDMAに関する文献である。
【0006】
【表1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.Kohda,外1名,“Variances of multiple access interference:code average against data average,”Electronics letters,IEE,vol.36,pp.1717-1719,2000.
【非特許文献2】T.Kohda、外3名,“Frequency division(FD)-based CDMA system which permits frequency offset,”in Proc.of 2010 Int.Sympo.On Spread Spectrum Techniques and Applications,Taichung,Taiwan,Oct.2010.
【非特許文献3】Y.Jitsumatsu、外1名,“Quasi-orthogonal multi-carrier CDMA,”in Proc.IEEE Globecom 2008,New Orleans,USA,Nov 2008.
【非特許文献4】T.Kohda,“Information sources using chaotic dynamics,”Proc.IEEE,vol.90,no.5,pp.641-661,May 2002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、MAIの分散は、TD-CDMAシステムでは、時間非同期によって減少する。他方、FD-CDMAシステムでは、周波数非同期によって減少する。そのため、従来の手法では、時間及び周波数の両方のオフセットから利益を受けることはできなかった。結果としては、例えばガウス波形を用いる等によっても、MAIの分散は3/5にまでしか減少できなかった。
【0009】
そこで、本願発明は、時間及び周波数の両方のオフセットを利用可能な通信装置等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の第1の観点は、拡散装置であって、入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して、時間領域拡散符号及び周波数領域拡散符号という2次元系列により拡散して拡散信号を生成する拡散手段を備えるものである。
【0011】
本願発明の第2の観点は、第1の観点において、前記拡散手段は、前記時間領域拡散符号を乗算する時間拡散手段と、前記周波数領域拡散符号を乗算する周波数拡散手段を有し、フィルタ信号を用いて信号処理を行うフィルタ手段を備え、前記フィルタ手段は、前記時間拡散手段及び/又は前記周波数拡散手段が前記入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して符号を乗じることにより生成された信号に対して、信号処理を行うものである。
【0012】
本願発明の第3の観点は、第2の観点において、前記同時空間は、複数のセルに分割されており、前記フィルタ信号は、前記各セル上のエネルギーがガウス分布である。
【0013】
本願発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点において、前記2次元系列は、時間軸及び周波数軸で独立にマルコフ性の2次元PN系列である。
【0014】
本願発明の第5の観点は、通信装置であって、入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して、式(eq1)の通信信号uGD(t)を用いて、時間領域拡散符号及び周波数領域拡散符号という2次元系列により拡散して拡散信号を生成する拡散手段を備えるものである。ただし、Nは、時間領域の拡散比である。N'は、周波数領域の拡散比である。Xnは、前記時間領域拡散符号である。Xn'は、前記周波数領域拡散符号である。v(t)は、チップ波形である。TCは、チップ区間である。WCは、チップのバンド幅である。
【0015】
本願発明の第6の観点は、送信装置であって、j番目のユーザの入力信号に対し、式(eq2)の通信信号u(j)GD(t)を用いて、時間軸及び周波数軸の同時空間に対して、時間領域拡散符号Xn,j及び周波数領域拡散符号Xn,j'という2次元系列により拡散して拡散信号を生成する拡散手段と、式(eq3)を計算することによって、拡散信号を重畳して送信信号s(j)GD(t)を生成する統合手段を備えるものである。ただし、Nは、時間領域の拡散比である。N'は、周波数領域の拡散比である。v(t)は、チップ波形である。TCは、チップ区間である。WCは、チップのバンド幅である。d(j)p,qは、j番目のユーザに対する時間周波数領域のp番目の時間期間とq番目のサブキャリアの入力信号である。Tは、シンボル区間である。Wは、シンボルバンド幅である。Tjは、j番目のユーザに対する遅れ時間である。vjは、j番目のユーザに対する周波数オフセットである。
【0016】
本願発明の第7の観点は、拡散手段が、入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して、時間領域拡散符号及び周波数領域拡散符号という2次元系列により拡散して拡散信号を生成するステップを含む通信方法である。
【0017】
本願発明の第8の観点は、コンピュータにおいて、第7の観点の通信方法を実現させるためのプログラムである。
【0018】
なお、本願発明を、第8の観点のプログラムを(定常的に)記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えてもよい。
【0019】
【数1】

【発明の効果】
【0020】
本願の各請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)によれば、時間領域拡散符号及び周波数領域拡散符号という2次元系列により拡散することにより、時間及び周波数の両方のオフセットを利用可能である。そのため、非同期式ガボール分割(Gabor division:GD)-CDMAシステムを実現することができる。これは、ガボールの通信システムの多元接続バージョンである。これにより、時間及び周波数の両方のオフセットが利用可能になる。その意味で、“二重”の非同期式CDMAシステム(”doubly” asynchronous CDMA system)といえる。特に、ガウス波形を利用することにより、時間及び周波数のオフセットを独立に調整することが可能になる。さらに、例えば非ナイキストのガウス波形及び時間−周波数領域のマルコフSS符号を用いることにより、MAIの分散は、9/25にまで減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明の実施の形態に係る通信システム1の概要を示すブロック図である。
【図2】図1の非同期式CDMAシステムの時間−周波数表現を示す図である。
【図3】GD-CDMAシステムにおけるi.i.d.符号とマルコフ符号の二次元SS信号のパワースペクトルを示す。
【図4】図1の通信システム1における各ユーザの送受信関係を示す図である。
【図5】図1の拡散部13の構成の一例を示す図である。
【図6】図1の拡散部13の構成の他の一例を示す図である。
【図7】FD-CDMAシステムにおいてコード平均化されたMAIの分散を示す図である。
【図8】周波数オフセットに対するコードに関する自己干渉の分散を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
図1は、本願発明の実施の形態に係る通信システム1の概要を示すブロック図である。通信システム1は、送信装置3(本願請求項の「通信装置」及び「送信装置」の一例である。)と受信装置5(本願請求項の「通信装置」の他の一例)を備える。送信装置3と受信装置5は、同様に設計することが可能である。そのため、以下では、送信装置3の構成について、具体的に説明する。
【0024】
通信システム1は、時間−周波数の同時空間におけるCDMAシステムである。この空間では、拡散信号は、ガボール(Gabor)の基本信号の和として表現される。本願では、TD-CDMAとFD-CDMAを組み合わせ、式(1)及び(2)として、時間及び周波数のオフセットに関する非同期式GDシステムを定義する。ここで、N、N’、Xn,j、X'n,j、v(t)、Tc、Wc=1/Tc、d(j)p,q、T=NTc、W=N'Wc、τj、νj、及び、n0(t)は、それぞれ、時間領域の拡散比、周波数領域の拡散比、時間領域拡散符号、周波数領域拡散信号、チップ波形、チップ区間、チップのバンド幅、j番目のユーザに対する時間周波数領域のp番目の時間期間とq番目のサブキャリアのデータ信号、シンボル区間、シンボルバンド幅、j番目のユーザに対する遅れ時間、j番目のユーザに対する周波数オフセット、及び、ノイズである。本願発明は、時間と周波数のオフセットを使用することから、二重の非同期式CDMAシステムと評価することができる。
【0025】
注1:本願発明は、ガボールの通信システム(D.Gabor,“Theory of communication,”J.Inst.Electr.En.,vol.93,pp.429-457,1946参照)を、時間−周波数領域の拡散符号を用いることにより多元接続バージョンとしたものとして捉えることができる。時間−周波数の解像度には、3つのレベルが存在する。一つ目は、データレベルである。これは、T×W=NN’>>1の領域という大きな矩形を占める。これは、ガボールセルとされている。スレピアンの2WT定理によれば、ガボールセルは、近似的にNN’次元である。このレベルの信号は、容易に区別することができる。2つ目は、符号レベルである。これは、Tc×Wcの領域という中間のサイズの正方形を占める。これは、マイクロガボールセルとされている。マイクロガボールセルは、単位次元を持つと考えられる。3つ目は、サブ符号レベルである。1よりも小さな領域を占める。このレベルは、通信信号の統合には使用されない。しかし、実値の時間及び周波数のオフセットにより生じた干渉の理論解析には必要である。
【0026】
図2は、図1の二重の非同期式CDMAシステムの時間−周波数表現を示す。縦軸は、周波数オフセットである。横軸は、時間オフセットである。セル101は、ユーザ1のガボールセルである。セル102は、ユーザ2のガボールセルである。各ガボールセルは、pとqを使って(p,q)−ガボールセルとあらわされる。セル105は、マイクロガボールセルである。各マイクロガボールセルは、縦がWc、横がTcである。各マイクロガボールセルは、(n,n’)−マイクロガボールセルとあらわされる。セル107は、ナノガボールセルである。各ナノガボールセルは、(k,k’)−ナノガボールセルとあらわされる。2ユーザ間には、分数の時間と周波数のオフセット((l+k/M)Tc,l’+k’/M’)Wc)が存在する。
【0027】
送信装置3は、データ信号に、時間領域と周波数領域の拡散信号を乗ずる。通信システム1では、分数の時間及び周波数のオフセットが許容される。これにより、各ユーザのガボール束が一列にそろえられないこととなる。この場合に、MAIは、整数のオフセットを持った相関関数の線形重畳として表現できない。そのため、MAIを分析するためには、アンビギュアティ関数(ambiguity function)を使用しなければならない。アンビギュアティ関数は、式(3)として定義される。このアンビギュアティ関数は、量子システムに対してウィグナーによって提案されたものである(E.Wigner,“On the quantum correlation for thermodynamic equilibrium”,Phys.Rev.,1932,pp.749-759参照)。ここで、V(f)は、v(t)のフーリエ変換である。このようなアンビギュアティ関数は、既に研究されており、レーダーシステムへ応用されている。フーリエ変換では、ガウス波形は、自己双対の特性を有する。そのため、二重の非同期式CDMAシステムに対して、ガウス波形が強力な候補であることを示す。
【0028】
MAIの正規化された分散は、従来のナイキスト(直交)パルスとi.i.d.符号に関する同期式CDMAシステムでは、1である。本願発明の二重の非同期式CDMAシステムでは、非ナイキストのガウス波形及び時間−周波数領域のマルコフSS符号に関して、9/25にまで減少する。さらに、本願発明では、ユーザ間で、時間及び周波数の同期が必要なくなるという利点がある。
【0029】
図3は、GD-CDMAシステムにおけるi.i.d.符号とマルコフ符号の二次元SS信号のパワースペクトルを示す。ここで、マルコフ符号について、N=N’=15であり、λ=λ’=-0.31である。確率変数Zに関する(・)の期待値及び分散をEZ[・]及びvarZ[・]と記す。図3は、EXX’[|U(j)GD(f)|2]で表される、送信信号の平均パワースペクトルを示す。λ=λ’=−1/3の負の相関マルコフSS符号(もともとは、CDMAシステムにおいて、相互及び自己干渉を減らすために導入されたものである。)は、GD-CDMAシステムにおいて、トータルのエネルギーを(15から11.2に)減らすのと同様に、信号の時間−周波数の同時エネルギー分布の平準化において、重要な役割を果たす。負の(又は、正の)相関関係の時間領域拡散符号は、ガウススペクトルで、ハイパス(対応して、ローパス)フィルタの効果がある。このようなハイパスフィルタ化されたガウススペクトルは、マルチキャリアシステムにおいて、互いにオーバーラップする。しかし、負に相関された周波数領域拡散符号によって、周波数領域でトータルのエネルギーが平準化するため、スペクトルのオーバーラップ部分が減少する。
【0030】
図1を参照して、通信装置3の構成について具体的に説明する。通信装置3は、入力信号生成部11と、拡散部13(本願請求項の「拡散装置」及び「拡散手段」の一例)と、統合部15(本願請求項の「統合手段」の一例)を備える。入力信号生成部11は、データ信号に基づいて入力信号を生成して、拡散部13に対して与える。例えば、各データ信号d(j)p,qについて、拡散部13が処理しやすいタイミングで与える等の処理を行う。拡散部13は、入力信号に対して、式(1)の通信信号u(j)GD(t)を用いて拡散して拡散信号を生成する。統合部15は、拡散信号を重畳することにより、式(4)の送信信号s(j)GD(t)を生成する。
【0031】
図4を参照して、各ユーザの送受信関係を説明する。図4は、各ユーザの送受信関係を示す図である。各ユーザjの送信器は、入力信号d(j)p,qから、式(4)の送信信号s(j)GD(t)を生成する。そして、通信路において、ノイズn0(t)が加わる。そして、各ユーザの受信器は、式(2)の受信信号rGD(t)を受信して、Z(j)p,q''を得る。
【0032】
拡散部13は、符号拡散部21と、フィルタ部23(本願請求項の「フィルタ手段」の一例)を備える。符号拡散部21は、時間拡散部25(本願請求項の「時間拡散手段」の一例)と、周波数拡散部27(本願請求項の「周波数拡散手段」の一例)を有する。時間拡散部25は、時間領域拡散符号を乗算する。周波数拡散部27は、周波数領域拡散符号を乗算する。フィルタ部23は、フィルタ信号を用いて信号処理を行う。フィルタ部23は、時間拡散部25及び/又は周波数拡散部27が入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して符号を乗じることにより生成された信号に対して、フィルタ信号を用いて信号処理を行う。ここで、「甲及び/又は乙」は、甲と乙の少なくとも一方を意味するものとする。
【0033】
【数2】

【0034】
続いて、図5及び図6を参照して、拡散部13の具体的な構成の一例について説明する。式(1)について、u(j)GD(t)、Xn,j、X'n',j及び2πn'Wcを、それぞれ、uGD(t)、Xn、X'n'及びωn'と記載する。このとき、式(1)は、式(5)及び式(6)と記載することができる。図5及び図6は、それぞれ、式(5)及び式(6)に対応する構成の一例である。
【0035】
図5を参照して、図1の拡散部13の具体的な構成の一例を説明する。拡散部31は、拡散部13の一例である。拡散部31は、N'個の信号処理部330,…,33n',…,33N'-1と、総和部35を備える。各信号処理部33n'は、周波数領域拡散符号を乗算する乗算器41n'(図1の「周波数拡散部27」の一例)と、中心周波数ωn'のガウスフィルタ43n'(図1の「フィルタ部23」の一例)と、標本化部45n'と、時間領域拡散符号を乗算する乗算器47n'(図1の「時間拡散部25」の一例)を備える。ガウスフィルタ43n'は、中心周波数を等間隔にずらすものである。信号処理部330,…,33n',…,33N'-1の出力信号は、それぞれ、周波数が低いものから高いものに対応する。総和部35は、各信号処理部33n'が生成した信号に対して、遅延処理等を行い、総和をとる。これにより、拡散信号を生成することができる。
【0036】
図6を参照して、図1の拡散部13の具体的な構成の他の一例を説明する。拡散部51は、拡散部13の他の一例である。拡散部51は、時間領域拡散符号を乗算する乗算器61(図1の「時間拡散部25」の一例)と、チップ信号v(t)を用いて信号処理を行う第1フィルタ部63と、遅延処理等を行い総和をとる第1総和部65と、N'個の信号処理部670,…,67n',…,67N'-1と、第2総和部69を備える。各信号処理部67n'は、周波数領域拡散符号を乗算する乗算器71n'(図1の「周波数拡散部27」の一例)と、中心周波数ωn'を等間隔にずらす第2フィルタ部69n'(第1フィルタ部63と第2フィルタ部69n'を併せたものが、図1の「フィルタ部23」の一例である。)を備える。総和部35は、各信号処理部33n'が生成した信号に対して、遅延処理等を行い、総和をとる。これにより、拡散信号を生成することができる。
【0037】
図5及び図6にあるように、図1のフィルタ部23は、時間領域拡散符号及び/又は周波数領域拡散符号が乗算された信号に対して、信号処理を行う。これは、中心の時刻をnTc、中心周波数をn'Wcとする帯域通過フィルタを施すためである。
【0038】
【数3】

【0039】
ハイゼンベルグの不等式において、ガウス波形は等号を達成する。そのため、ガウス波形は、v(t)として、最適な選択であると考えられる。ガウス波形は、マイクロセルレベルにおいて、シンボル間とキャリア間の干渉に問題を生じる。このことが、ガボールの通信システムが、本来の形で実現されてこなかった理由かもしれない。他方、発明者らは、時間−周波数の拡散符号を採用した。データシンボルは、N×N’次元に関するガボールセルを占める。したがって、データシンボルの決定は、簡単である。そのため、拡散符号により、ガボールの通信システムを実現することができる。
【0040】
注2:OFDMシステムは、J=1(単一ユーザ)、N=N’=1(拡散符号を使わない)であり、uGD(t)が矩形波形によって置き換えられ、サブキャリアの数が28と212のあたりであり、そしてvj=tj=0の場合に対応する。OFDMシステムは、時間及び周波数のオフセットを許さない。他方、本願発明は、時間−周波数の領域のオフセットを許容する。
【0041】
ガウスチップ波形に関する複数のキャリアのCDMAシステムは、発明者らのよって既に提案されている(非特許文献3参照)。ここでは、周波数同期が仮定され、時間非同期のみが考慮されている。他方、本願発明のGD-CDMAシステムでは、前提として、時間にも周波数にも同期されない。したがって、GD-CDMAは、時間−周波数の同期の誤差にも頑強である。
【0042】
以下では、本願発明の二重の非同期式GD-CDMAシステムのMAIが、同期式CDMAシステムよりも小さいことを示す。
【0043】
式(1)及び(2)は、N’=1、vj=0及びX’=1の場合に、TD-CDMAシステムであることを意味している。TD-CDMAの完全な定義については、後に具体的に説明している。TD-CDMAのi番目の相関器の受信器は、式(7)として分解される。ここで、S(i)pは、i番目の信号成分であり、I(i)J,pは、他のJ−1のユーザからのMAIを示し、η(i)pは、ノイズ成分を示す。
【0044】
【数4】

【0045】
(i)pは、d(j)p(j≠i)と独立であるとする。そのとき、一般性を失わず、2ユーザシステムのMAIを考えることができる。以下では、一般性を失わず、d(i)p=1がtransmittedであるとする。
【0046】
補題1:TD-CDMAの多元接続干渉(MAI)は、式(8)で定義される。ここで、d(j)p,0は、d(j)pで置き換えた。u(j)TD(t)の定義は、後に具体的に説明する。
【0047】
注3:FD-CDMAシステムのMAIは、式(9)で定義されることである。ここで、d(j)0,qは、d(j)qで置き換えた。U(j)FD(f)の定義は、後に具体的に説明する。
【0048】
【数5】

【0049】
二重の非同期式GD-CDMAシステムに対して、i番目のユーザに対するp番目の期間とq番目のサブキャリアの相関器の出力は、式(10)で与えられる。ここで、S(i)p,q’’、η(i)p,q’’及びI(i)J,p,q’’は、それぞれ、信号成分、ノイズ項及びMAI成分である。これらの3つの成分は、複素数値である。
【0050】
定理1:D(j)を、d(j)p,qに対するi.i.d.確率変数とする。信号成分S(i)p,qの期待値をEGDとし、√(NN’)で正規化され、i.i.d.データD(j)上で平均化された複素MAIの絶対値の分散をσ2GDとする。もしv(t)がガウス波形ならば、式(11)及び式(12)が成り立つ。ここで、ETD、EFD、σ2TD及びσ2FDは、それぞれ、TD-及びFD-CDMAシステムの期待値及び分散である。後に具体的に定義する。
【0051】
【数6】

【0052】
注4:もしチップ波形がガウスであれば、ETD/σTD及びEFD/σFDは、独立に最適化することができる。なぜなら、二重の非同期式GD-CDMAのMAIは、二重の値の積として表現されるためである。他方、矩形/sincのパルスに対するMAIの分散は、分離することができない。
【0053】
実値の時間及び周波数のオフセットによる干渉を評価するため、名目上のマイクロガボールセルを、さらにM×M’個の小さな領域に分割する。これらは、ナノガボールセルと呼ばれる。ウィグナー−ヴィルのアンビギュアティ関数を使い、このような実数値のオフセットに関する干渉を表現する。これは、不確定性原理によって裏付けられている。ここで、時間−周波数の平面においてエネルギー密度によって記されたウィグナーの分布を使うというアイディアは、ヴィルによって提案されたものである。
【0054】
TD-及びFD-CDMAシステムにおける不完全に同期化された受信器のMAI及び自己干渉の解析を再検討する。ある正の整数M、集合{0,1、…,N−1}の要素li,j及び集合{0,1,…,M−1}の要素kijに対し、相対的な遅れ時間が式(13)で表されるとする。このシステムは、もしlij=kij=0ならば同期であるといい、もしlij≠0かつkij=0ならばチップ同期であるといい、もしkij≠0ならばチップ非同期であるという。
【0055】
【数7】

【0056】
簡単のため、Xi、Xj、lij及びkijを、それぞれ、X、Y、l及びkと置き換える。パースリーの非周期的な相互相関関数(M.B.Pursley,”Performance evaluation for phase-coded SS multiple access communication-part-I:system analysis,”IEEE Trans.Comun.,vol.25,no.8,pp.795-799,Aug.1977参照)は、式(14)で定義される。このとき、式(8)及び式(9)は、それぞれ、式(15)と式(16)で表現される。ここで、ε=k/M及びε’=k’/M’である。ModuliTc及びWcよりも大きいオフセットの項(すなわち、θ((ε―2)Tc,0)及びθ((ε+1)Tc,0))は、支配的ではないため、省略した。
【0057】
【数8】

【0058】
非特許文献4では、矩形のチップパルスは、チップ非同期式TD-CDMAシステムに対して仮定された。この場合、MAIは、式(17)である。ここで、Xupは、XをM倍にアップサンプルした系列である。式(18)として定義される。また、非周期的な相互相関関数は、式(19)の関係がある。
【0059】
【数9】

【0060】
(j)pに対する確率変数をD(j)とする。式(19)、及び、関係ED(j)[D(j)p(j)p+1]=0により、式(20)が成り立つ。ここで、E+(l)は、RAN(l;X,Y)の分散とRAN(N-l;X,Y)の分散をNで除したものである。F+(l)は、RAN(l;X,Y)とRAN(l+1;X,Y)の共分散とRAN(N-l;X,Y)とRAN(N-l-1;X,Y)の共分散の和をNで除したものである。E+(l)及びF+(l)の定義は、非特許文献1及び非特許文献4を参照されたい。varXY[I(i)2,p/√N]をMAIの符号平均分散という。
【0061】
注5:チップ同期式CDMAにおいて、kは常に0である。そのため、式(17)の右辺は、常にE+(l)である。他方、チップ非同期式CDMAでは、kは、{0,1,…,M-1}の値をとる。確率mass関数Pr{K=k}=1/Mのkに対する確率変数を、Kとする。このとき、M>>1に対して、EK[(1−K/M)2]=EK[(K/M)]=EK[2(1−K/M)K/M]=1/3となる。よって、M>>1に対して、式(21)が成立する。
【0062】
+(l)〜E+(l+1)及びF+(l)〜0とする。このとき、式(21)より、チップ非同期式システムに対するK上で平均化されたMAIの符号平均分散は、チップ同期式システムに対するMAIの符号平均分散の2/3である。この意味で、相互の時間のオフセットから利益を受けることができる。より重要なのは、式(21)は、負のF+(l)を選択することで、MAIの符号平均分散を減らすことができることを示唆することである。この技術は、分散減少技術での従来の様々な方法と同じである。
【0063】
もし波形が矩形でないならば、式(15)に戻らなければならない。MAIの符号平均分散は、式(22)により表される。
【0064】
負のF+(l)は、マルコフ符号によって実現することができる。X0→X1→…→XN-1が、状態空間{+1,−1}に関するマルコフ連鎖を形成しているとする。1以外マルコフ連鎖の推移確率行列の固有値を−1<λ<1とする。このとき、式(23)が成り立つ。それゆえ、F+(l)は、λと同じ正負となる。式(21)は、λが-2+√3のとき、最小値となる(非特許文献1参照)。
【0065】
【数10】

【0066】
図7では、N’=8のFD-CDMAシステムのMAIのコード平均化された分散が、周波数オフセットν=(l’+k’/M’)Wcに対してプロットされている。横軸は、周波数オフセットνである。縦軸は、MAIの分散である。このグラフは、N’をNとし、横軸νを時間オフセットτ=τi−τj=(l+k/M)Tcとした場合、非同期式TD-CDMAシステムのコード平均化された分散をも示す。
【0067】
図7は、i.i.d.(λ=0)(点線)とマルコフ(λ=-2+√3)(実線)に対する、MAIの経験的な符号平均分散を示す。これは、式(20)の左辺である。マルコフ符号に対してk上で平均化されたMAIの符号平均分散(破線)は、i.i.d.符号に対するもの(一点破線)よりも小さい。これらの平均は、N/√3及び2N/3である。これらは、同様に、図7にプロットされている。この図は、どのようにMAIの分散を減少させることができるかを説明する。マルコフ符号のMAIの符号平均分散は、チップ同期の状態(k=0)でi.i.d.のものよりも大きい。マルコフ符号は、チップ非同期の状態(k≠0)では、MAIを、i.i.d.よりも小さくする。
【0068】
式(20)を式(19)に代入することにより、マルコフ符号に関する一般的な波形g(t)に対するMAIの符号平均分散が得られる。k/Mを不可避な遅れ時間であるとする。
【0069】
補題2:i.i.d.データD(j)及び分数の遅れ時間K上で平均化されたMAIの符号平均分散は、式(24)である。ここで、a,b及びcは、式(25)である。
【0070】
もし符号がi.i.d.(すなわち、λ=0)ならば、MAIの符号平均分散は、 ̄σ2TD=a+bである。式(24)の第1項及び第2項は、常に非負であるが、第3項は、負になりうる。これは、cλ<0ならば生ずる。最小値は、λが式(26)のときである。
【0071】
FD-CDMAシステムに対するMAIの符号平均分散は、 ̄σ2FD(λ’)により表される。これは、式(24)において、a、b、c及びλを、それぞれ、a’、b’、c’及びλ’で置き換えることによって定義される。ここで、a’、b’及びc’は式(27)で表されるものであり、λ’は、周波数領域拡散符号の固有値である。
【0072】
【数11】

【0073】
式(24)のa,b及びcの値は、チップ波形の選択に依存する。TD-CDMA(又はFD-CDMA)システムにおける矩形のパルス(対応して、sincパルス)に対して、式(21)で論じたように、a=b=c=1/3である。他方、TD-CDMAシステムにおけるsincパルスは、c〜0とする。この場合、MAIの分散を減少させることができず、λ=0が最良となる。表2は、矩形、sinc、ガウスの各波形に対する係数a、b及びc並びにMAIの分散を示す。ここで、波形は正規化されており、θ(0,0)=1を満たす。
【0074】
【表2】

【0075】
以上より、二重の非同期式GD-CDMAシステムのMAIを議論できるようになった。集合{0,1,…,N-1}の要素であるl及び集合{0,1,…,N’-1}の要素であるl’に対し、遅れ時間及び周波数のオフセットが、それぞれ、τj−τi=(l+ε)Tc及びνj−νi=(l’+ε’)Wcと表現されるとする。
【0076】
補題3:2ユーザの二重の非同期式GD-CDMAシステムの複素数のMAI(図7参照)は、式(28)である。ここで、CANN’(l+ε,l’+ε’)は、時間−周波数の領域における実数値のオフセットに関する非周期的な相互相関であり、式(29)により定義される。これは、もしε’=0及びN’=1ならば、式(15)及びFD-CDMAバージョンを与える。もしε=0及びN=1ならば、式(29)は、遅れ時間及び周波数オフセットの実数値部分の効果を記す。
【0077】
【数12】

【0078】
相互相関と自動相関関係の間にトレードオフがあり、MAIの削減が自己干渉を増加することになると疑う人がいるかもしれない。しかし、これは問題とならない。以下に示すように、マルコフ符号は、MAIと同様に、自己干渉も削減するためである。
【0079】
もし、受信器が、意図したユーザの信号に完全には同期しないならば、自己同期化誤差が自己干渉を生じる。i番目のユーザの同期誤差は、τS=(lS+kS/M)Wcとあらわされる。ここで、lSは、{0,1,…,N-1}の要素であり、kSは、{0,1,…,M-1}の要素である。すると、信号成分S(i)pは、式(14)のd(j)p、l、k及びYupを、それぞれ、d(i)p、lS、kS及びXupで置き換えることにより得られる。周波数オフセットτSに関する受信器の信号成分の期待値は、式(30)で表される。
【0080】
【数13】

【0081】
自己干渉の分散は、式(24)のk、l、E+及びF+を、それぞれ、kS、lS、G+及びH+で置き換えることにより得られる。ここで、G+(lS)及びH+(lS)の定義、及び、大きなNに対するこれらの近似的なものは、ここでは省略する。非特許文献4を参照されたい。
【0082】
図8は、FD-CDMAに対する自己干渉の分散のシミュレーション結果を示す。図8は、周波数オフセットνs=l’s+k’s/M’に対するコードに関する自己干渉の分散を示す。横軸は、周波数オフセットνsである。縦軸は、自己干渉の分散である。このグラフは、横軸のνSをτSで置き換えることにより、同様に、TD-CDMAの自己干渉の分散を示すグラフともなる。|τS|は、チップ周波数の有理数の中にあるとしてよい。この場合、マルコフ符号の自己干渉の分散(点線)は、i.i.d.符号のもの(実線)よりも小さくなる。よって、マルコフ符号は、相互干渉と同様に、自己干渉に関してi.i.d.よりも優れたものである。
【0083】
J人のユーザが、i.i.d.データと独立な周波数オフセットを使ってTD-CDMAシステムを通じて通信しているとする。n0(t)を、two-sidedパワースペクトル密度N0/2の白色ガウスノイズとする。時間オフセット|εS|<1/2の近似的に同期された受信器のBERは、式(31)により与えられる。ここで、σ2T、εS、 ̄σ2TD(λ)、σ2S及びQ(x)は、式(32)のものである。
【0084】
式(32)のN,εS及びλをN’、εS’及びλ’で置き換えることにより、式(32)を、FD-CDMAシステムのBER推定として使用することができる。
【0085】
【数14】

【0086】
注6:上記のBER表現は、信号成分が、負のλにより減り、他方、相互干渉 ̄σ2TD(λ)は、σ2S(εS,λ)と同様に、より大きく減少することを示唆する。Jが十分に大きいとき、干渉は、信号成分よりも減少する。したがって、マルコフ符号は、完全には同期化されていない受信器のBERを改善する。この状況から、受信器の厳密な調整は必要ないことになる。これは、マルコフ符号は有望であることを示唆する。
【0087】
もしチップ波形がガウス及び矩形の関数であれば、アンビギュアティ関数は、それぞれ、ガウス関数は式(33)、及び、矩形は式(34)である。ここで、α及びβ=1/4αは、それぞれ、時間及び周波数の領域でのガウス波形の分散である。sinc関数のアンビギュアティ関数は、式(34)のτ、ν及びTcをν、τ及びWcで置き換えることにより得られる。
【0088】
式(33)より、ガウスは、θ(τ,ν)=θ(τ,0)・θ(0,ν)と定義することにより、分離可能性を満たす。これは、MAI表現をかなり単純化する。よって、定理1が得られる。ここで、ETD、EFD、σ2TD及びσ2FDは、それぞれ、式(35)、(36)、(37)及び(38)である。
【0089】
式(33)を式(35)及び(36)に代入することにより、もしN及びN’が十分大きければ、|εS|<1/2及び|ε’S|<1/2に関して、完全には同期化されていない受信器の信号成分は、近似的に、式(39)のEGDとなることが示される。
【0090】
【数15】

【0091】
系:σ2TDとσ2FDとは、別々に評価することができる。時間及び周波数の領域における分散減少の量を等しくするために、α=Tc2及びβ=Wc2/2と選択する。時間領域では、MAIの分散は、a=b〜1/2及びc〜4/5として式(24)で与えられる。周波数領域では、MAIの分散は、a’=b’〜1/2及びc’〜4/5として ̄σ2FD(λ’)により与えられる。したがって、σ2GDは、(3/5)2=9/25に減少し、λ=λ’=−1/2により達成される(表2参照)。
【0092】
以下、FD-CDMA及びTD-CDMAについて、本願発明に関連する部分について補足する。
【0093】
チップ非同期式TD-CDMAシステムは、すべてのj、p及びq≠0に対してN’=1、νj=0、X’0,j=1、d(j)p,q=0であり、v(t)が、式(1)及び(2)において矩形の場合である。d(j)p,0=d(j)pと置き換えることにより、SS符号信号及び受信信号が式(40)及び式(41)により得られる。ここで、rectTc(t)は、|t|<Tc/2において1であり、それ以外では0である。
【0094】
FD-CDMAは、TD-CDMAの周波数双対である。すべてのj、q及びp≠0に対して、N=1、τj=0、X0,j=1及びd(j)p,q=0とする。d(j)0,q=0をd(j)qで置き換えるとともに、sinc波形v(t)=Wcsinc(Wct)とすると、式(42)及び(43)を得ることができる。ここで、sinc(t)=sin(πt)/(πt)である。
【0095】
フーリエ変換により、これらの周波数領域表現が、それぞれ式(44)及び(45)として得られる。
【0096】
【数16】

【符号の説明】
【0097】
1 通信システム、3 送信装置、5 受信装置、13,31,51 拡散部、15 統合部、21 符号拡散部、23 フィルタ部、25 時間拡散部、27 周波数拡散部、41n',47n',71n',61 乗算器、43n' フィルタ部、63 第1フィルタ部、73n' 第2フィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散装置であって、
入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して、時間領域拡散符号及び周波数領域拡散符号という2次元系列により拡散して拡散信号を生成する拡散手段を備える拡散装置。
【請求項2】
前記拡散手段は、
前記時間領域拡散符号を乗算する時間拡散手段と、
前記周波数領域拡散符号を乗算する周波数拡散手段を有し、
フィルタ信号を用いて信号処理を行うフィルタ手段を備え、
前記フィルタ手段は、前記時間拡散手段及び/又は前記周波数拡散手段が前記入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して符号を乗じることにより生成された信号に対して、信号処理を行う、請求項1記載の拡散装置。
【請求項3】
前記同時空間は、複数のセルに分割されており、
前記フィルタ信号は、前記各セル上のエネルギーがガウス分布である、請求項2記載の拡散装置。
【請求項4】
前記2次元系列は、時間軸及び周波数軸で独立にマルコフ性の2次元PN系列である、請求項1から3のいずれかに記載の拡散装置。
【請求項5】
通信装置であって、
入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して、式(eq1)の通信信号uGD(t)を用いて、時間領域拡散符号及び周波数領域拡散符号という2次元系列により拡散して拡散信号を生成する拡散手段を備える通信装置。
ただし、Nは、時間領域の拡散比である。N'は、周波数領域の拡散比である。Xnは、前記時間領域拡散符号である。Xn'は、前記周波数領域拡散符号である。v(t)は、チップ波形である。TCは、チップ区間である。WCは、チップのバンド幅である。
【数1】

【請求項6】
送信装置であって、
j番目のユーザの入力信号d(j)p,qに対し、式(eq2)の通信信号u(j)GD(t)を用いて、時間軸及び周波数軸の同時空間に対して、時間領域拡散符号Xn,j及び周波数領域拡散符号Xn,j'という2次元系列により拡散して拡散信号を生成する拡散手段と、
式(eq3)を計算することによって、拡散信号を重畳して送信信号s(j)GD(t)を生成する統合手段を備える送信装置。
ただし、Nは、時間領域の拡散比である。N'は、周波数領域の拡散比である。v(t)は、チップ波形である。TCは、チップ区間である。WCは、チップのバンド幅である。d(j)p,qは、j番目のユーザに対する時間周波数領域のp番目の時間期間とq番目のサブキャリアの入力信号である。Tは、シンボル区間である。Wは、シンボルバンド幅である。Tjは、j番目のユーザに対する遅れ時間である。vjは、j番目のユーザに対する周波数オフセットである。
【数2】

【請求項7】
拡散手段が、入力信号の時間軸及び周波数軸の同時空間に対して、時間領域拡散符号及び周波数領域拡散符号という2次元系列により拡散して拡散信号を生成するステップを含む通信方法。
【請求項8】
コンピュータにおいて、請求項7記載の通信方法を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−238977(P2012−238977A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105717(P2011−105717)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)