説明

拡散隔膜レイヤーにおける濃度測定

本発明は、サンプル中の分析物の濃度を測定するための改良型電気化学的なバイオセンサストリップおよび方法に関する。拡散隔膜レイヤーの外に存在する測定可能な種を実質的に排除して、拡散隔膜レイヤー中に存在する測定可能な種を選択的に測定することにより、サンプル構成成分、例えば赤血球、により導入される測定誤差および製造時の変動性を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の参照
[001] 本出願は、発明の名称が“Concentration Determination in A Diffusion Barrier Layer”である2004年10月12日に出願されたU.S.仮出願No. 60/617,889の利益、および発明の名称が“Concentration Determination in A Diffusion Barrier Layer”である2005年2月22日に出願されたU.S.仮出願No. 60/655,180の利益を主張し、これらの全体を参考文献として援用する。
【0002】
背景
[002] 医学的症状および治療行為に対する患者の反応をモニタリングする際、患者にとって、迅速で、正確で、そして便利な分析的な方法を使用することが望ましい。電気化学的な方法は、体液サンプル、特に血液サンプル中における特定の分析物を定量するために有用である。典型的には、これらの生物学的分析物(たとえば、グルコース)は、特定の酵素に接触すると、酸化還元反応を受ける。そのような酸化還元反応により生じる電流は、サンプル中の生物学的分析物の濃度と相関している可能性がある。
【0003】
[003] 医療従事者や臨床技師を必要とすることなく、血液分析物濃度をモニタリングするための自由度を患者に対してもたらす、小型の電気化学的セルが開発された。典型的な患者により操作される電気化学的なシステムは、必要な電気回路および出力システムを含有する専用の測定装置を付属した、使い捨てのセンサストリップを使用する。解析用に、測定装置は、ストリップに適用されるサンプル中の分析物濃度を測定するための電極および試薬を含有する、使い捨ての電気化学的なセンサストリップに接続される。
【0004】
[004] これらの小型の電気化学的システムの最も一般的なものは、血液グルコースレベルの測定値をもたらす、グルコースセンサである。理想的には、グルコース用の小型のセンサは、1滴の全血液、典型的には1〜15マイクロリットル(μL)を解析することにより、血液グルコースレベルの正確な読みとりをもたらすはずである。
【0005】
[005] 典型的な分析的電気化学的なセルにおいて、分析物が関与する酸化または還元半電池反応(half-cell reaction)は、それぞれ、電子を産生しまたは消費する。電子が解析されるサンプルに接触させる作用電極と相互作用することができる場合、この電子の流れを測定することができる。電気回路は、サンプルとも接触されるカウンタ電極を通して、完結される。化学的反応がカウンタ電極でも生じ、そしてこの反応が、作用電極の反応タイプと比較して、反対のタイプの反応である(酸化または還元)。したがって、作用電極で酸化が生じる場合、カウンタ電極では還元が生じる。たとえば、Fundamentals Of Analytical Chemistry, 4th Edition, D.A. Skoog and D. M. West; Philadelphia: Saunders College Publishing (1982), pp 304-341を参照。
【0006】
[006] いくつかの従来型の小型電気化学的システムには、真の意味での基準電極が含まれる。これらのシステムにおいて、真の意味での基準電極は、作用電極およびカウンタ電極に加えて、このシステムに対して、非可変性の基準電位をもたらす第三の電極であってもよい。複数の基準電極の材質が既知であるが、銀(Ag)および塩化銀(AgCl)の混合物が典型的である。非可変性の基準電位を提供する材質(例えば、銀と塩化銀の混合物)は、それらの不溶性によりまたはその他の手段により、分析溶液の反応構成成分から分離される。
【0007】
[007] その他の小型の電気化学的なシステムにおいて、カウンタ/基準電極の組合せが使用される。これらの電気化学的センサストリップは、典型的には、作用電極とカウンタ/基準電極とを有する2種の電極システムである。真の基準電極がカウンタ電極としても使用される場合に、組み合わせたカウンタ/基準電極が可能である。
【0008】
[008] それらは真の基準電極であるため、カウンタ/基準電極は、典型的には、銀(Ag)と塩化銀(AgCl)の混合物であり、これらは、分析溶液の溶液環境中に混合物が不溶性であるため、安定な電気化学的特性を示す。AgClに対するAgの比率は、一過性の使用の間は実質的には変化しないため、電極の電位は、実質的に変化しない。
【0009】
[009] 電気化学的センサストリップは、典型的には、分析ストリップの伝導体表面上を試薬レイヤーでコーティングすることにより作製する。製造を容易にするため、試薬レイヤーを、すべての電極上に単層としてコーティングすることができる。
【0010】
[0010] 試薬レイヤーには、分析物の酸化または還元反応を促進にするための酵素、および分析物反応物と伝導体表面との間での電子の移動を補助する何らかのメディエーターまたはその他の基質が含まれていてもよい。試薬レイヤーにはまた、酵素とメディエーターとを一緒に保持して、それによりそれらを電極上にコーティングすることができるようにする結合剤が含まれていてもよい。
【0011】
[0011] 全血液(WB)サンプルは、赤血球(RBC)および血漿を含有する。血漿は、ほとんどが水であるが、いくつかのタンパク質およびグルコースを含有する。ヘマトクリットは、WBサンプルの全量に対するRBC構成要素の量であり、しばしば%で表される。全血液サンプルは、一般的には、20〜60%の範囲のヘマトクリット%を有し、約40%が平均である。
【0012】
[0012] WB中のグルコース濃度を測定するために使用される従来型の電気化学的センサストリップの欠点の一つは、“ヘマトクリット効果”と呼ばれている。ヘマトクリット効果は、メディエーターまたはその他の測定可能な種が測定用の伝導体表面へ拡散することをRBCが阻害することにより生じる。測定は、サンプルを試験するそれぞれの時間と同じ時間行われるため、様々な濃度のRBCを有する血液サンプルは、測定値の不正確性を引き起こす可能性がある。測定可能な種が伝導体表面へ拡散することをRBCが妨害する場合には、センサがより低い測定可能な種の濃度とより高い測定可能な種の濃度とを区別することができないために、このことは正しい。したがって、WBサンプル中のRBC濃度の差異により、結果としてグルコース読み取り値における不正確性(ヘマトクリット効果)が生じる。
【0013】
[0013] 同一のグルコースレベルを含有するが、20、40、および60%のヘマトクリットを有するWBサンプルを試験した場合、1組のキャリブレーション定数(例えば、傾きや切片)に基づいている従来のシステムによって、3つの異なるグルコース読み取り値が報告されるだろう。グルコース濃度が同一であっても、RBCが測定可能な種が伝導体表面へ拡散することを妨害するため、システムは、20%ヘマトクリットのサンプルが60%ヘマトクリットのサンプルよりも多くのグルコースを含有すると報告するだろう。
【0014】
[0014] 従来型のシステムは、一般的には、血液サンプル中における実際のヘマトクリット含量に関わらず、WBサンプルに関しては40%のヘマトクリット含量であると仮定して、グルコース濃度を報告する様に設定されている。これらのシステムについては、40%よりも少ないヘマトクリットまたは40%よりも多いヘマトクリットを含有する血液サンプルに対して行ったグルコース測定はいずれも、ヘマトクリット効果に起因する何らかの不正確性を含むだろう。
【0015】
[0015] 電流測定センサーに関してヘマトクリット効果を減少させる従来型の方法には、US.特許番号5,708,247および5,951 ,836に開示されるように、フィルタを使用すること;WO 01/57510に開示されるように、読み出しパルスの電位を逆転させること;そしてU.S.特許番号5,628,890に開示されるように、サンプルの固有の抵抗を最大化する方法によること;が含まれる。これらの方法のそれぞれが、様々な長所と短所とのバランスを取っているが、理想的なものは存在しない。
【0016】
[0016] 上述した記載からも見て取れるように、グルコースを含む生物学的分析物の濃度を決定するための改良された装置および方法に関して、現在も必要性が存在している。本発明の装置および方法は、WBサンプル中のヘマトクリット効果およびその他の効果により導入される誤差を減少させることができる。
【0017】
発明の概要
[0017] 一態様において、基板および基板上の第一および第二の電極を含む電気化学的センサストリップが、提供される。第一の電極には、第一の伝導体上に少なくとも一つの第一のレイヤーが含まれ、そこでは第一のレイヤーにオキシドレダクターゼ酵素および結合剤が含まれる。第一のレイヤーの厚さは、使用中に第一および第二の電極に対して読み出しパルスが印加される場合に、測定可能な種が、第一のレイヤー中で実質的に検出され、そして第一のレイヤーの外では実質的に検出されないように選択される。
【0018】
[0018] 別の態様において、定量的な分析物測定の正確性を上昇させる方法を提供する。この方法には、オキシドレダクターゼ酵素、メディエーター、および結合剤を含む少なくとも一つの第一のレイヤーを有する電気化学的センサストリップを提供することが含まれる。次いで、分析物含有サンプルは、電気化学的なセンサストリップに対して導入され、そして電位が、読み出しパルスの形態で印加される。読み出しパルスの持続時間は、第一のレイヤー中のイオン化型のメディエーターを実質的に検出するが、第一のレイヤーの外のイオン化型メディエーターを検出することは実質的に排除する。
【0019】
[0019] 一態様において、基板;試薬レイヤーを含む少なくとも一つの第一のレイヤーを第一の伝導体上に含む、基板上の第一の電極;および基板上の第二の電極;を含む電気化学的センサストリップが提供され、ここで、第一のレイヤーの厚さは、使用中に第一および第二の電極に対して印加される読み出しパルスが、第一のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出するが、第一のレイヤーの外の測定可能な種は実質的に検出しない様に、選択される。
【0020】
[0020] 別の態様において、電気化学的なセンサストリップは、第一の伝導体と第一のレイヤーとの間に第二のレイヤーをさらに含み、ここで、第二のレイヤーの厚さは、使用中に第一および第二の電極に対して印加される読み出しパルスが、第二のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出するが、第一のレイヤー中の測定可能な種を含む第二のレイヤーの外の測定可能な種を実質的に検出しないように選択され、この場合、第一のレイヤーの厚さは、使用中に第一および第二の電極に対して印加される読み出しパルスが第一のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出する様には選択されない。第二のレイヤーは、少なくとも5μm、または8〜25μmの厚さであってもよい。別の側面において、第二のレイヤーは、少なくとも1μm、または5〜25μmの厚さであってもよい。第二のレイヤーは、オキシドレダクターゼ酵素および/またはメディエーターを含まなくてもよいが、しかしながら、ポリマー材料は含んでいてもよい。
【0021】
[0021] 別の態様において、基板、基板上の第一の伝導体、基板上の第二の伝導体、そして少なくとも第一の伝導体上の少なくとも一つの第一のレイヤーを有する電気化学的センサストリップを提供すること(ここで、少なくとも一つの第一のレイヤーには、結合剤を含む試薬レイヤーが含まれる);液体成分を有する分析物含有サンプルを、電気化学的なセンサストリップに対して導入すること(ここで、サンプルは第一および第二の伝導体の間に電気的な連絡をもたらす);第一および第二の伝導体間に、読み出しパルスの形態で、電位を印加すること(ここで、読み出しパルスは、第一のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出するが、第一のレイヤーの外の測定可能な種を実質的に検出しない持続時間のあいだ印加する);読み出しパルスを測定して、第一のレイヤーの外の測定可能な種を実質的に検出する電気化学的センサストリップと比較して正確性を上昇させて、サンプル中の分析物濃度の定量的な値をもたらすこと;を含む、定量的な分析物測定の正確性を上昇させる方法が、提供される。初期パルスおよび時間遅延を、読み出しパルスの前に印加してもよい。
【0022】
[0022] 別の態様において、基板;基板上の第一の電極(ここで、第一の電極は、第一の伝導体上の少なくとも一つの第一のレイヤーを含み、第一のレイヤーにはメディエーター、結合剤、およびグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、およびこれらの少なくとも一つの混合物が含まれる);そして可溶性酸化還元種を含む基板上の第二の電極(ここで、この可溶性酸化還元種は、少なくとも一つの有機遷移金属複合体、遷移金属配位金属複合体、およびこれらの混合物を含み、第一のレイヤーの厚さは、使用中に第一および第二の電極に対して印加される読み出しパルスが、第一のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出するが、第一のレイヤーの外の測定可能な種を実質的に検出しないように選択される);を含む電気化学的センサストリップが提供される。電気化学的なセンサストリップの第二の電極は、第二の伝導体上の第二の酸化還元種を含んでもよく、そこでは、可溶性の酸化還元種が、第一の種および第二の種を含む酸化還元対の第一の酸化還元種であり、そしてそこでは、第二の酸化還元種に対する第一の酸化還元種のモル比が、約1.2:1よりも高い。
【0023】
[0023] 別の態様において、基板;ギャップを規定するように基板に接触するフタ;第一の伝導体を含む基板上の第一の電極;第一の伝導体上の第二のレイヤー(ここで、試薬レイヤーは、第一の伝導体と第二のレイヤーとの間には存在しない);基板上の第二の電極;そしてギャップ中の試薬レイヤーを含む、電気化学的センサストリップが提供される。第二のレイヤーの厚さは、使用中に第一および第二の電極に対して印加される読み出しパルスが、第二のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出するが、第一のレイヤーの外の測定可能な種を実質的に検出しない様に選択される。
【0024】
[0024] 明細書および請求の範囲についての明りょうで矛盾のない理解をもたらすため、以下の定義を提供する。
[0025] 用語“システム”は、サンプル中の分析物の定量を可能にする、電気的測定装置とその伝導体を介して電気的に連絡している電気化学的センサストリップ、として定義される。
【0025】
[0026] 用語“測定装置”は、電気化学的センサストリップの伝導体に対して電位を印加することができ、そしてそれに続く電流を測定することができる電子装置として定義される。測定装置にはまた、測定電位に反応して、1またはそれ以上の分析物の存在および/または濃度を測定するプロセッシング能力が含まれていてもよい。
【0026】
[0027] 用語“サンプル”は、未知量の目的分析物を含有する組成物として定義される。典型的には、電気化学的な解析用のサンプルは、液体形状であり、そして好ましくはサンプルは、水性混合物である。サンプルは、生物学的サンプル、例えば、血液、尿、または唾液、であってもよい。サンプルは、生物学的サンプルの誘導体、例えば、抽出物、希釈物、濾過物、または再構成沈殿物、であってもよい。
【0027】
[0028] 用語“分析物”は、サンプル中に存在する1またはそれ以上の物質として定義される。測定方法は、サンプル中に存在する分析物の存在、総量(amount)、量(quantity)、または濃度を測定する。分析物は、酵素または解析中に存在するその他の種と相互作用してもよい。
【0028】
[0029] 用語“正確性”は、センサストリップにより測定された分析物の量が、サンプル中の分析物の真の量にどの程度近く対応するか、として定義される。
[0030] 用語“正確さ”は、同一サンプルについての複数の分析物測定値が、どの程度近似するか、として定義される。
【0029】
[0031] 用語“伝導体”は、電気化学的な解析のあいだ、同じ状態を維持する電気的に伝導性の物質として定義される。伝導体物質の例としては、固体金属、金属ペースト、伝導性カーボン、伝導性カーボンペースト、そして伝導性ポリマーが含まれる。
【0030】
[0032] 用語“非イオン化物質”は、分析物の電気化学的な解析の間、イオン化されない物質として定義される。非イオン化物質の例としては、炭素、金、プラチナ、およびパラジウムが含まれる。
【0031】
[0033] 用語“測定可能な種”は、電気化学的センサストリップの電極表面にて、適切な電位の下、酸化または還元され得る、電気化学的に活性な種のいずれかとして定義される。測定可能な種の例としては、分析物、基質、またはメディエーターが含まれる。
【0032】
[0034] 用語“定常状態”は、測定可能な種のDBL中への拡散速度が、実質的に一定である場合として定義される。
[0035] 用語“オキシドレダクターゼ”は、測定可能な種の酸化または還元を促進するいずれかの酵素として定義される。オキシドレダクターゼは、試薬である。用語オキシドレダクターゼには、分子の酸素が電子受容体である、酸化反応を促進する“オキシダーゼ類”;分析物が還元されそして分子の酸素が分析物ではない、還元反応を促進する“レダクターゼ類”;そして分子の酸素が電子受容体ではない、酸化反応を促進する“デヒドロゲナーゼ類”、が含まれる。例えば、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Revised Edition, A. D. Smith, Ed., New York: Oxford University Press (1997) pp. 161 , 476, 477, and 560を参照。
【0033】
[0036] 用語“メディエーター”は、酸化または還元することができ、そして第一の物質と第二の物質との間で、1またはそれ以上の電子を輸送することができる物質として定義される。メディエーターは、電気化学的な解析における試薬であり、そして目的分析物ではないが、分析物の間接的な測定値をもたらす。簡単なシステムにおいて、メディエーターは、オキシドレダクターゼが適切な分析物または基質と接触することを介して、還元または酸化された後に、オキシドレダクターゼによる酸化還元反応を受ける。次に、この酸化または還元化されたメディエーターは、作用電極で反対の反応を受け、そしてそのもともとの酸化数に再生される。
【0034】
[0037] 用語“電気活性な有機分子”は、金属を含有せず、そして酸化または還元反応を受けることができる有機分子として定義される。電気活性な有機分子は、酸化還元種として、そしてメディエーターとして、行動することができる。電気活性な有機分子の例には、補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)、ベンゾキノン類およびナフトキノン類、N-オキシド類、ニトロソ化合物、ヒドロキシルアミン類、オキシン類、フラビン類、フェナジン類、フェノチアジン類、インドフェノール類、およびインダミン類が含まれる。
【0035】
[0038] 用語“結合剤”は、作用電極の試薬レイヤー中で使用される試薬と化学的に適合性(compatible)であり、そして電極伝導体上に試薬を含有する一方で、試薬に対する物理的な支持体を提供する物質として定義される。
【0036】
[0039] 用語“平均初期厚”は、液体サンプルを導入する前のその乾燥状態におけるレイヤーの平均高のことを言う。用語“平均”は、レイヤーの上部表面が平坦ではなく、でこぼこを有するために使用される。
【0037】
[0040] 用語“酸化還元反応”は、第一の種から第二の種へ、少なくとも一つの電子を輸送することに関する、2種類の種間での化学的反応として定義される。したがって、酸化還元反応には、酸化および還元が含まれる。反応の酸化部分には、第一の種による少なくとも一つの電子の喪失が関与しており、そして還元部分には、第二の種に対する少なくとも一つの電子の付加が関与する。酸化される種のイオン電荷は、輸送される電子数と等しい量まで、より高いプラスにされる。同様に、還元される種のイオン電荷は、輸送される電子数と等しい量まで、より低いプラスにされる。
【0038】
[0041] 用語“酸化数”は、化学種、例えば、原子、の形式イオン電荷として定義される。より高い酸化数、例えば、(III)、は、より高いプラスであり、そしてより低い酸化数、例えば(II)、は、より低いプラスである。中性種は、ゼロ(0)のイオン電荷を有する。種の酸化により、結果として、その種の酸化数の増加が生じ、そして種の還元により、結果として、その種の酸化数の減少が生じる。
【0039】
[0042] 用語“酸化還元対”は、異なる酸化数を有する化学物質の2種の複合体形成種として定義される。より高い酸化数を有する種の還元により、より低い酸化数を有する種が生成される。あるいは、より低い酸化数を有する種の酸化により、より高い酸化数を有する種が生成される。
【0040】
[0043] 用語“酸化可能種”は、より低い酸化数を有し、そのためにより高い酸化数を有する種の中で酸化される可能性がある酸化還元対の種、として定義される。同様に、用語“還元可能種”は、より高い酸化数を有し、そしてより低い酸化数を有する種の中で還元される可能性がある酸化還元対の種、として定義される。
【0041】
[0044] 用語“可溶性酸化還元種”は、酸化または還元を受けることができ、そして少なくとも1リットル当たり1.0グラムのレベルで水(pH 7、25℃)中に可溶性である物質として定義される。可溶性酸化還元種には、電気活性な有機分子類、有機遷移金属複合体類、および遷移金属配位錯体類が含まれる。用語“可溶性酸化還元種”からは、元素金属類、および孤立金属イオン類、特に、水に不溶性であるかまたは水に難溶性であるもの、は除かれる。
【0042】
[0045] “OTM複合体”とも呼ばれる用語“有機遷移金属複合体”はまた、遷移金属が、シグマ結合(遷移金属に対してシグマ結合した炭素原子に対して-1の形式電荷)またはpi結合(遷移金属に対してpi結合した炭素原子に対して0の形式電荷)を介して、少なくとも一つの炭素原子に結合される複合体として定義される。例えば、フェロセンは、2つのシクロペンタジエニル(Cp)環を有するOTM複合体であり、それぞれは、その5つの炭素原子を介して、2つのpi結合および1つのシグマ結合によりイオン中心に対して結合される。OTM複合体の別の例は、6個のシアノリガンド(6リガンドのそれぞれに対して-1の形式電荷)がシアノ基の炭素原子を介して、イオン中心に対してシグマ結合される、フェリシアニド(III)およびその還元型フェロシアニド(II)対応物である。
【0043】
[0046] 用語“配位錯体”は、明確な配位構造、例えば、8面体面配置または平面正方形配置、を有する複合体として定義される。それらの結合により定義されるOTM複合体類とは異なり、配位錯体類は、それらの配置により特定される。したがって、配位錯体類は、OTM複合体類(例えば、上述したフェリシアニド)、または炭素以外の非金属原子、例えば、窒素、イオウ、酸素、およびリンを含むヘテロ原子、が、遷移金属中心に対して配位結合(datively bonded)される複合体類であってもよい。例えば、ルテニウムヘキサアミンは、6個のNH3リガンド(6個のリガンドのぞれぞれに対して0の形式電荷)が、ルテニウム中心に対して配位結合される明確な8面体構造を有する配位錯体である。有機遷移金属複合体類、配位錯体類、および遷移金属結合のより完全な検討は、Collman et al., Principles and Applications of Organo Transition Metal Chemistry (1987)およびMiessler & Tarr, Inorganic Chemistry (1991)中に見いだすことができる。
【0044】
[0047] 用語“〜の上”は、“〜の上部”として定義され、そして記載された方向性(orientation)とは相対的なものである。例えば、第一の成分が第二の成分の少なくとも一部上に配置された場合、第一の成分は、第二の成分“の上に配置される”と言われる。別の例において、第一の成分が、第二の成分の少なくとも一部の上部に存在する場合、第一の成分は、第二の成分“の上”にあると言われる。用語“〜の上”を使用することにより、記載される上部成分と下部成分との間に物質が存在することが除かれる訳ではない。例えば、第一の成分は上部表面の上側にコーティングを有していてもよく、しかしながら、第一の成分の少なくとも部分の上側の第二の成分およびその上面コーティングは、第一の成分“の上”のものとして記載することができる。したがって、用語“〜の上”を使用することは、関連する2種の成分が互いに物理的な接触をしていることを意味していてもまたは意味していなくてもよい。
【0045】
詳細な説明
[0063] 小型の電気化学的セルは、患者に対して、患者のグルコースレベルをほぼ瞬時に測定するという利点を提供する。これらの測定における誤差の主要な原因の一つは、ヘマトクリット効果である。ヘマトクリット効果は、赤血球が測定可能な種の作用電極の伝導体表面に対する拡散速度に無作為に影響を与える場合に生じる。
【0046】
[0064] 拡散隔膜レイヤー(DBL)中に存在する測定可能な種を測定することにより、DBLの外に存在する測定可能な種を実質的に排除して、ヘマトクリット効果により導入される測定誤差および製造時の変動性を減少させることができる。DBLの外の測定可能な種を実質的に排除することは、読み出しパルス持続時間に基づいてDBLの厚さを選択することにより、あるいはDBLの厚さに基づいて読み出しパルスの持続時間を選択することにより、達成することができる。
【0047】
[0065] 図1は、作用電極20およびカウンタ電極30を含有する伝導体12および14を有するセンサ基板10の上面図である。図2は、作用電極20およびカウンタ電極30を示す、センサ基板10の側面図である。作用電極20には、第一の主要な伝導体22が含まれていてもよく、一方、カウンタ電極30には、第二の主要な伝導体32が含まれていてもよい。オプションとして、表面伝導体24および34が、主要な伝導体22および32上にそれぞれ存在してもよい。拡散隔膜レイヤー(DBL)28は、作用電極20の主要な伝導体22上に存在してもよい。
【0048】
[0066] 一側面において、主要な伝導体22および32には、伝導性炭素粉末の1またはそれ以上のレイヤーを含む表面伝導体24および34と隣接する金属箔が含まれていてもよい。作用電極20には、第一の主要な伝導体22上に存在する第一の試薬レイヤー26が含まれていてもよく、一方、カウンタ電極30には、第二の主要な伝導体32上に存在する第二の試薬レイヤー36が含まれていてもよい。別の側面において、カウンタ電極30は、既知の酸化または還元電位を有する可溶性酸化還元種によりコーティングされたカウンタ/基準電極またはカウンタ電極であってもよい。センサ基板10は、当該技術分野において知られているようなより少ない構成成分または追加の構成成分を伴う構造を含む、その他の構造を有していてもよい。追加のセンサデザインに関して、例えば、U.S.特許番号5,120,420および5,798,031(共に参考文献として本明細書中に援用する)を参照。
【0049】
[0067] センサ基板10は、好ましくは、電気化学的なシステムをその周囲の状況から分離することができる電気絶縁体である。使用時において、作用電極20およびカウンタ電極30は、それぞれ伝導体12および14を介して、測定装置と電気的な連絡を行う(示さず)。測定装置は、作用電極20とカウンタ電極30との間に電位を印加する。次いで、測定装置は、作用電極20、サンプル(示さず)、およびカウンタ電極30の間で流れる電流を定量することができる。サンプルは、電極20、30間の電気的な連絡を構築することができる。
【0050】
[0068] 電極20および30の主要な伝導体22および32およびオプションの表面伝導体24および34は、金属、伝導性ポリマー、および伝導性炭素を含むいずれかの電気的に伝導性の物質を含有してもよい。電気的に伝導性の物質の例には、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはタングステン等の金属の薄層、ならびに伝導性炭素粉末の薄層が含まれる。好ましくは、センサの使用中にサンプルに接触する伝導体は、不活性物質から構成され、それにより伝導体は、解析中に正味の酸化または正味の還元を受けない。より好ましくは、センサの使用中にサンプルと接触する電極は、非イオン化物質、例えば、炭素、金、プラチナ、およびパラジウム、から構成される。
【0051】
[0069] 金属は、金属箔を沈着させることにより、化学的蒸着により、または金属のスラリーを沈着させることにより、基板10に沈着させることができる。伝導性炭素は、例えば、炭素含有物質の熱分解により、または炭素粉末のスラリーの沈着により、基板10上に沈着させることができる。スラリーは、1より多いタイプの電気的に伝導性の物質を含有してもよい。例えば、スラリーは、パラジウムおよび炭素粉末を両方とも含有してもよい。スラリー沈着の場合、U.S.特許番号5,798,031に記載されるように、液体混合物を、基板物質に対してインクとして適用することができる。
【0052】
[0070] 表面伝導体24および34を主要な伝導体22および32上に沈着させる場合、表面伝導体を作製する際の物質は、非イオン化伝導性物質であることが好ましい。異なる表面伝導体24および34を用いずに主要な伝導体22および32を使用する場合、主要な伝導体を作製する際の伝導性物質は、非イオン化物質であることが好ましい。より好ましくは、第二の試薬レイヤー36(主要な伝導体32または表面伝導体34のいずれか)と接触させるカウンタ電極30の部分は、非イオン化物質である。
【0053】
[0071] DBLは、試薬レイヤー26に不可欠なものであってもよく、または図2中で示される様な別個のレイヤー28であってもよい。このように、DBLは、伝導体表面上の組合せ試薬/拡散隔膜レイヤーとして、伝導体表面上の別個のレイヤーとして、試薬レイヤーが存在する伝導体表面上の別個のレイヤーとして、または試薬レイヤー上の別個のレイヤーとして、形成されてもよい。
【0054】
[0072] DBLは、測定可能な種が存在してもよい内部容量を有する多孔性の空間を提供する。DBLの微細孔は、測定可能な種がDBL中に拡散してもよいが、一方、物理的に大型のサンプル構成成分、例えばRBC、を実質的に排除する様に、選択される。従来型のセンサストリップが、作用電極からRBCを濾過するために様々な物質を使用してきたが、本発明のDBLは、測定可能な種の一部を含ませそしてサンプル容量から単離するための内部多孔性空間をさらに提供する。
【0055】
[0073] 伝導体表面での測定反応の長さを調節することにより、センサストリップは、DBL内部の測定可能な種を測定することができ、一方、DBLの外の測定可能な種を測定から実質的に除外する。伝導体表面に関連して、DBLの内部容量は、DBLの外の測定可能な種の拡散速度に関して、その中に含有される測定可能な種の拡散速度の物理的パラメータを変化させる。
【0056】
[0074] DBLの内部の測定可能な種が、DBLの外の測定可能な種とは異なる速度で伝導体表面へと拡散するため、測定可能な種が優先的に測定される作用電極での測定反応の長さが選択される。分子的見地からは同一であるが、DBLの内部および外の測定可能な種の異なる拡散速度により、それらの実質的な差別化が可能である。
【0057】
[0075] 作用電極20の試薬レイヤー26には結合剤が含まれていてもよいため、読み出しパルスの印加の前にサンプル中に可溶化しない結合剤のいずれかの部分が、DBLとして機能することができる。試薬を結合剤材料と組み合わせて、試薬に対するサポートとDBLを両方とも提供する場合、結合剤材料は少なくとも部分的には水溶性であるポリマー材料が好ましい。このように、結合剤材料の一部を可溶化することができ、一方、結合剤材料の残りの部分を主要な伝導体22上に残してDBLとして機能させることができる。
【0058】
[0076] 適切な部分的に水溶性のポリマー材料には、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシエチレンセルロース(HEC)、ヒドロキシピロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリリジンなどのポリアミノ酸、ポリスチレンスルホネート、ゼラチン、アクリル酸、メタクリル酸、スターチ、およびそれらのマレイン酸無水塩、それらの誘導体、およびそれらの組合せが含まれるが、これらには限定されない。上述した中で、PEO、PVA、CMC、およびHECが現時点で好ましく、CMCおよびPEOが現時点で特に好ましい。
【0059】
[0077] 作用電極からRBCを除去するためのフィルターを形成するために従来から使用された材料を、DBLにおいても同様に使用することができる。このことは、材料の厚さを増加させることにより、または材料がフィルターとして使用される場合に関して作用電極での測定反応の長さを減少させることにより、達成することができる。そのことは、その粘度を改変する方法で、例えば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム等の塩を導入することを介して、材料を形成することにより、達成することもできる。
【0060】
[0078] 別の側面において、DBLは、別個のDBL28であってもよい。別個のレイヤー28は、少なくとも5μm、好ましくは、8〜25μm、そしてより好ましくは8〜15μmの平均初期厚を有していてもよい。別の側面において、別個のレイヤー28は、少なくとも1μmまたは好ましくは5〜25μmの平均初期厚を有していてもよい。DBLが別個のレイヤーである場合、部分的に可溶性のポリマー材料、例えば、試薬レイヤー26中の結合剤として使用されたものと同一の材料(しかし試薬は含まない)、から形成されていてもよい。別個のレイヤー28は、所望の多孔性空間を提供するが、センサの使用中に部分的にまたはゆっくりと水に可溶性であるどのような材料であってもよい。
【0061】
[0079] 図面中には示されないが、DBLが別個のレイヤー28である場合、試薬レイヤー26は、別個のレイヤー28上に存在しなくてもよい。その代わり、試薬レイヤー26は、試薬をサンプル中に可溶化させることができるセンサストリップのいずれかの部分に存在していてもよい。例えば、試薬レイヤー26は、図8に関して以下に述べる様に、センサ基板10上にまたはフタ50上に存在してもよい。
【0062】
[0080] 一側面において、第一および第二の試薬レイヤーには、同一の構成成分が含まれていてもよく、そして第一および第二の主要な伝導体22、32の両方に存在していてもよい。作用電極およびカウンタ電極、それぞれ20および30、についての試薬レイヤー26および36が、異なる組成を有する場合、各電極用の試薬レイヤーを、別々に最適化することができる。したがって、第一の試薬レイヤー26は、分析物の反応を促進し、この反応の結果の第一の主要な伝導体22への連絡を促進する成分を含有していてもよい。
【0063】
[0081] 同様に、第二の試薬レイヤー36は、解析されるサンプルと第二の主要な伝導体32との間の電子の自由な流れを促進する成分が含まれていてもよい。例えば、第二の試薬レイヤー36中に導入される可溶性酸化還元種は、分析物とは反対の酸化還元反応を受けてもよい。酸化還元種が使用中に消費されたとしても(すなわち、その対応物の種に変換される)、解析の時間スケールのあいだ、測定電流と分析物濃度との間の相対的に一定な直線関係をもたらすように、酸化還元種は第二の試薬レイヤー36中には十分に高い濃度で存在していてもよい。したがって、両方の電極について同一の試薬レイヤーを使用するセンサストリップと比較して、試薬レイヤー26および36を別々に最適化することにより、向上した性能を得ることができる。
【0064】
[0082] カウンタ電極30上に配置する可溶性酸化還元種の大きなモル比は、センサストリップの有効期間を増大させる可能性がある。可溶性酸化還元種のその対応物の種へのわずかな自発的な変換が、ストリップの製造とサンプルによるその使用との間に生じる可能性がある。相対濃度は、可溶性酸化還元種が過剰であるため、高いままであるため、センサは、保存後に正確な結果を生成することができる。
【0065】
[0083] 第一の主要な伝導体22上に存在する第一の試薬レイヤー26には、オキシドレダクターゼが含まれていてもよい。オキシドレダクターゼは、目的の分析物に対して特異的であってもよい。オキシドレダクターゼは、基質に対して特異的であってもよく、それによりオキシドレダクターゼとその基質との反応は、目的とする分析物の存在または量により影響される。正式な意味では、基質は、分析物の量により影響をうけるが、特に指定のない限り、用語“分析物”は、本明細書および添付の請求の範囲において、サンプル中に実際に存在する分析物またはその基質が含まれることを意味している。
【0066】
[0084] オキシドレダクターゼおよびそれらの特異的分析物の例は、以下の表Iに示される。
【0067】
【表1】

【0068】
[0085] 例えば、アルコールオキシダーゼを試薬レイヤー中で使用して、サンプル中のアルコールの存在に敏感なセンサを提供することができる。その様なシステムは、血液アルコール濃度を測定する際に有用である。別の例において、グルコースデヒドロゲナーゼまたはグルコースオキシダーゼを試薬レイヤー中で使用して、サンプル中でのグルコースの存在に敏感なセンサを提供することができる。このシステムは、例えば糖尿病を有することが分かっている患者またはそれが疑われる患者における、血液グルコース濃度を測定する際に有用である。2種類の異なる物質の濃度が、既知の関係を介して関連づけられる場合、オキシドレダクターゼとの物質の相互作用を介してその物質の一つを測定することにより、その他の物質の濃度の計算をもたらすことができる。例えば、オキシドレダクターゼは、特定の基質に対して敏感なセンサを提供し、そして次いで、この基質の測定濃度を使用して、目的の分析物の濃度を計算することができる。
【0069】
[0086] 第一の試薬レイヤー26には、メディエーターが含まれていてもよい。解釈の如何なる理論によっても束縛されることを望まないが、メディエーターは、分析物との反応が生じた後に電子を酵素またはその他の種から受け取るかまたは電子を酵素またはその他の種に提供するための初期酵素反応における酸化還元補因子として、または酸化還元コレクタとして、作用することができると考えられている。酸化還元補因子の場合には、メディエーターは、分析物の酸化還元反応をバランス化する種であると考えられている。したがって、分析物が還元される場合、メディエーターは酸化される。酸化還元コレクタの場合、別の種が最初に酸化または還元され、分析物の酸化還元反応をバランス化することができる。この種は、オキシドレダクターゼそれ自体であってもよく、または酸化還元補因子等の別の種であってもよい。
【0070】
[0087] 酵素的電気化学的セル中のメディエーターは、例えば、U.S.特許番号5,653,863中に記載されており、それを参考文献として本明細書中に援用する。いくつかの事例において、メディエーターは、オキシドレダクターゼを生成するように機能することができる。一側面において、酵素が分析物を酸化する場合、酵素それ自体が還元される。この酵素とメディエーターとの相互作用は、メディエーターの還元をもたらし、同時に酵素をそのもともとの未反応の状態への酸化をもたらす。適切な電位でのメディエーターと作用電極20との相互作用は、1またはそれ以上の電子の電極への放出と同時に、メディエーターのそのもともとの未反応の状態への酸化をもたらす。
【0071】
[0088] メディエーターの例には、1,1'-ジメチルフェロセンなどのフェロセン化合物を含むOTM複合体および配位錯体類;およびU.S.特許番号5,653,863に記載される複合体類、例えば、フェロシアニドおよびフェリシアニドを含むもの、が含まれる。メディエーターの例には、また、補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ);U.S.特許番号4,746,607(参考文献として本明細書中に援用する)中に開示される、置換ベンゾキノン類およびナフトキノン類;EP 0 354 441(参考文献として本明細書中に援用する)中に具体的に開示される、N-オキシド類、ニトロソ化合物、ヒドロキシルアミン類およびオキシン類;EP 0 330 517(参考文献として本明細書中に援用する)中に開示される、フラビン類、フェナジン類、フェノチアジン類、インドフェノール類、置換1,4-ベンゾキノン類およびインダミン類;およびU.S.特許番号3,791,988(参考文献として本明細書中に援用する)中に開示されるフェナジウムおよびフェノキサジニウム塩;等の補酵素を含む電気活性な有機分子も含まれる。生物学的な酸化還元システムの電気化学的なメディエーターのレビューは、Analytica Clinica Acta. 140 (1982)、pages 1-18中に見いだすことができる。電気活性な有機分子メディエーターの例にはまた、3-フェニルイミノ-3H-フェノチアジン(PIPT)、および3-フェニルイミノ-3H-フェノキサジン(PIPO)を含む、U.S.特許番号5,520,786(参考文献として本明細書中に援用する)中に記載されるものが含まれる。
【0072】
[0089] 第二の試薬レイヤー36には、可溶性酸化還元種が含まれてもよい。可溶性酸化還元種は、オキシドレダクターゼの分析物の反応とは反対の酸化還元反応を受け、そしてその際、酸化還元対のその対応物の種中で変換される。例えば、分析物が還元される場合、可溶性酸化還元種が酸化される;そして分析物が酸化される場合、可溶性酸化還元種が還元される。酸化還元対の対応物の種は、レイヤー中に存在していてもよいが、しかしながら最初の酸化還元種の濃度よりも低い濃度で存在することが好ましい。より好ましくは、カウンタ電極上の試薬レイヤー中の酸化還元種は、もっぱら、オキシドレダクターゼの基質の反応とは反対の反応を受ける可溶性酸化還元種である。
【0073】
[0090] 可溶性酸化還元種は、電気活性な有機分子、有機遷移金属複合体、遷移金属配位錯体、またはそれらの組合せであってもよい。適切な電気活性な有機分子には、補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)、置換ベンゾキノン類およびナフトキノン類、N-オキシド類、ニトロソ化合物、ヒドロキシルアミン類、オキシン類、フラビン類、フェナジン類、フェノチアジン類、インドフェノール類、インダミン類、フェナジニウム塩、およびフェノキサジニウム塩が含まれてもよい。
【0074】
[0091] 適切な可溶性酸化還元種は、OTM複合体類または遷移金属配位錯体類であってもよい。多くの遷移金属は、水素、酸素、イオウ、またはその他の遷移金属を伴う化合物として天然に存在し、そしてこれらの遷移金属は、一般的に、1またはそれ以上の酸化状態において見いだされる。例えば、鉄、クロム、およびコバルトは、典型的には、+ 2(すなわち、II)または+ 3(すなわち、III)の酸化状態で見いだされる。したがって、鉄(II)および鉄(III)は、酸化還元対の2つの種である。多数の元素金属類または金属イオンは、水性環境中にわずかながら可溶性である。このような可溶性が無いことは、電気化学的な解析システム中で酸化還元反応をバランス化する際に、酸化還元種としてのその有用性を制限する。さもなければわずかながら可溶性である金属または金属イオンの溶解度を、リガンドと結合させるかまたは配位させることを通じて、改良することができる。
【0075】
[0092] 典型的には、有機遷移金属複合体または遷移金属配位錯体中の金属は、センサストリップを使用する間に実際に還元されまたは酸化される複合体中の部分である。例えば、フェロセン中のイオン中心[Fe(II)(C5H62]およびフェロシアニドイオン中のイオン中心[Fe(II)(CN)64-は、+ 2の形式酸化状態であるが、一方フェリシアニドイオン[Fe(III)(CN)63-は、鉄を+ 3形式酸化状態で含有する。あわせて、フェロシアニドとフェリシアニドは一緒に、酸化還元対を形成する。作用電極の試薬レイヤー中に存在するオキシドレダクターゼの型に依存して、金属複合体のいずれかは、カウンタ電極上の試薬レイヤー中で、可溶性酸化還元種として機能することができる。酸化還元対含有性遷移金属配位錯体類の例は、2種のルテニウムヘキサアミン、[Ru(III)(NH363+および[Ru(II)(NH362+の組合せである。
【0076】
[0093] 可溶性酸化還元種は、電気化学的なセンサストリップを使用する間に、酸化還元対を形成することができる。カウンタ電極30上の試薬レイヤー36中に存在する第一の種として言及されるこの酸化還元対の種は、同一の酸化還元対のその対応物の種(すなわち、第二の種)よりも、高いモル量で存在することが好ましい。好ましくは、第一の種の第二の種に対するモル比は、少なくとも1.2:1である。より好ましくは、第一の種の第二の種に対するモル比は、少なくとも2:1である。さらにより好ましくは、第一の種の第二の種に対するモル比は、少なくとも10:1または少なくとも100:1である。現在特に好ましい側面において、酸化還元対の第二の種は、解析においてセンサストリップを使用する前に、多くても1000分の1(ppt)または多くても100万分の1(ppm)の量で存在する。
【0077】
[0094] 好ましくは、可溶性酸化還元種がサンプル中で可溶化され、そして分析物およびその他のサンプル構成成分と混合される。解析の流れの間に、どのような測定可能な程度でも生じるという訳ではないが、可溶性酸化還元種は、時間がたてば、酵素およびメディエーターと混合される。可溶性酸化還元種は、機構的障壁によって液体サンプルから分離されず、液体サンプルとは異なる分離相中に存在するという理由では、液体サンプルから分離されない。
【0078】
[0095] 好ましい態様において、標準的な水素電極(SHE)と比較して、+0.24ボルトまたはそれ以上の標準的な還元電位を有する可溶性酸化還元種が選択される。別の好ましい態様において、SHE と比較して、+ 0.35ボルトまたはそれ以上の標準的な還元電位を有する可溶性酸化還元種が選択される。さらに別の好ましい態様において、SHEと比較して、(0.01 M HCl中)約+0.48ボルトの還元電位を有する酸化還元種が選択される。
【0079】
[0096] したがって、オキシドレダクターゼ、メディエーター、および可溶性酸化還元種の幅広い組合せを使用して、電気化学的な解析センサを調製することができる。それらの対応物の種と比較して、より高い参加数またはより低い酸化数を有する可溶性酸化還元種を酸化還元対において使用することは、作用電極で行われるべき反応タイプにより決定される。
【0080】
[0097] 一例において、分析物は、オキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼとの相互作用により、酸化される。この場合において、カウンタ電極上のより濃縮された酸化還元種は、より高い酸化数を有する。この状況の具体的な例は、グルコースオキシダーゼまたはグルコースデヒドロゲナーゼを使用したグルコースの解析である。別の例において、分析物は、レダクターゼとの相互作用により還元される。この場合において、カウンタ電極上のより濃縮された酸化還元種は、より低い酸化数を有する。これらの例のいずれかにおいて、メディエーターは、カウンタ電極上のより濃縮された酸化還元種、または別の酸化還元対の酸化還元種と同一物質であってもよい。
【0081】
[0098] 図3は、誘電体層40の下の伝導体12および14、および電極20および30を含む、センサ基板10の上面図である。誘電体層40は、電極20および30を部分的に覆っていてもよく、そしていずれかの可溶性の誘電体層、例えば、絶縁性ポリマー、から作成されていてもよい。誘電体層40は、伝導体12および14と接触している電極の一部から、第一および第二の試薬レイヤー26および36と接触する電極の一部を分離することができる。誘電体層40は、存在する場合、電極20および30を試薬レイヤー26および36でそれぞれコーティングする前、コーティングする間、コーティングした後、に、センサ基板10上に蒸着させることができる。
【0082】
[0099] 電極20、30は、いずれかの便利な手段、例えば、プリント、液相成長、またはインクジェット蒸着、により、試薬レイヤー26、36を用いて、コーティングすることができる。一側面において、試薬レイヤーは、電極20、30上に、プリントにより蒸着させる。その他の因子は等しいままで、プリント用のブレードの角度は、電極20、30上に存在する試薬レイヤーの厚さに逆の影響を与える可能性がある。例えば、ブレードがセンサ基板10に対して約82°の角度で移動する場合、得られる1または複数の試薬レイヤーは、約10μmの厚さを有していてもよい。同様に、センサ基板10に対して約62°のブレード角を用いる場合、より厚い30μmのレイヤーを生成することができる。この側面において、lower ブレード角により、より厚い試薬レイヤーを提供することができる。さらに、ブレード角に対して、試薬レイヤーを構成する材料の厚さを含むその他の因子が、得られる試薬レイヤー26、36の厚さに影響を与える。
【0083】
[00100] 図4〜6は、センサ基板10、作用電極20、カウンタ電極30、伝導体12および14、伝導体13、および第三の電極70をそれぞれ有する、3種の電極センサストリップの上面図である。第三の電極70は、伝導体13を介して、測定装置(示さない)と電気的に連絡していてもよい。
【0084】
[00101] 測定装置は、作用電極20、第三の電極70、および電極間の電気的な連絡をもたらすサンプル(示さず)の間での電位を測定することができる。別の側面において、測定装置は、作用電極20、第三の電極70、およびサンプルに対して提供される電位を印加し、そして電位を測定することができる。センサ基板10は、当該技術分野において既知の、より少ない構成成分または追加の構成成分を伴う構造を含む、その他の構造を有していてもよい。
【0085】
[00102] 図7は、オプションの第三の電極70を示す図5のセンサ基板10の側面図である。一側面において、オプションの第三の電極70は、真の意味での基準電極であってもよい。別の側面において、第三の電極70は、可溶性酸化還元種を含む第三の試薬レイヤー76でコーティングされていてもよい。オプションの第三の電極表面伝導体74は、第三の主要な伝導体72上に存在してもよい。一側面において、第三の主要な伝導体72には、金属箔が含まれ、一方、表面伝導体74には、伝導性炭素粉末の1またはそれ以上のレイヤーが含まれる。第三の試薬レイヤー76および第二の試薬レイヤー36には、同一の構成成分が含まれていてもよく、または使用目的に応じて異なる構成成分が含まれていてもよい。一側面において、第三の試薬レイヤー76は、主要な伝導体32および72上に沈着される第二の試薬レイヤー36の一部である。
【0086】
[00103] 表面伝導体74が、主要な伝導体72上に沈着される場合、表面伝導体を構成する物質は、非イオン化伝導性物質であることが好ましい。主要な伝導体72が異なる表面伝導体レイヤー74を伴わずに使用される場合、主要な伝導体を構成する伝導性物質は、非-イオン性であることが好ましい。より好ましくは、第三の試薬レイヤー76と接触させる第三の電極70の部分(主要な伝導体72または表面伝導体74のいずれか)は、非イオン化物質である。第三の試薬レイヤー76には、第一および第二の試薬レイヤー26(示さず)および36と同一の構成成分が含まれていてもよい。別の側面において、第三の試薬レイヤー76には、第二の試薬レイヤー36と同一の構成成分が含まれていてもよい。さらに別の側面において、第三の試薬レイヤー76には、解析されるサンプルと第三の主要な伝導体72との間における、電子の自由な流れを特異的に調製する有効成分が含まれていてもよい。
【0087】
[00104] 試薬レイヤー76は、図2に関連して上述したように、可溶性酸化還元種を含有していてもよい。好ましくは、第三の電極70の試薬レイヤー76は、カウンタ電極30の試薬レイヤー36と同一の組成である。第三の電極上の試薬レイヤーおよびカウンタ電極上の試薬レイヤーが同一である場合、試薬レイヤー組成の単一部分で両電極をコーティングすることが好ましい。
【0088】
[00105] 第三の電極70の使用は、いくつかの用途にとって好ましい可能性がある。印加される電圧の正確性の増大により、分析物の測定におけるより高い正確性が得られる可能性がある。第三の電極70を使用する場合、カウンタ電極30のサイズを減少させることができるか、またはより少量の酸化還元種をカウンタ電極に対して適用することができる。第三の電極70が、図6に示されるように、カウンタ電極30の上流に位置している場合、不十分なサンプルがストリップに対して適用される場合に、“under-fill”と呼ばれる状況を検出することができる。Under-fill検出は、作用電極20と第三の電極70とのあいだで回路を完成するためには十分であるがカウンタ電極30をカバーするためには十分ではないサンプルが存在する場合に生じる可能性がある。セル中の電流が欠乏していることは、ユーザーに対するシグナルに電気的に変換され、それがユーザーに対してストリップに対して追加のサンプルを添加するように指示することができる。
【0089】
[00106] 図8は、排出口54、凹部領域52、および入力および開口部60を含むフタ50により少なくとも部分的にカバーされる、センサ基板10を含む組み立てセンサストリップ800の透視図である。好ましくは、フタ50は、試薬レイヤー26および36(示さず)をカバーするが接触はせず、それにより、フタ50と電極との間にギャップ56を提供する。
【0090】
[00107] 液体サンプルをセンサストリップ800の開口部60に対して導入することにより、生物学的サンプルを、電極に対して輸送することができる。ギャップ56によりそれまで含有されていた空気を排出口54から排出しながら、液体をギャップ56に満たす。このように、サンプルが、電極間の電気的な連絡をもたらす。ギャップ56は、サンプルおよびその含有物を電極上の領域に固定化することにより、ギャップ中に液体サンプルを保持する際の補助とする物質を含有していてもよい(示さない)。その様な物質の例には、水-膨潤性のポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロースおよびポリエチレングリコール;そして多孔性ポリマーマトリクス、例えば、デキストランおよびポリアクリルアミド;が含まれる。
【0091】
[00108] 開口部60を介して導入されたサンプルが、オキシドレダクターゼ用の分析物を含有する場合、分析物と酵素との間の酸化還元反応は、試薬レイヤーとサンプルとを接触させる時点で開始することができる。結果として生じる酸化還元反応から生成されまたは消費される電子は、作用電極とカウンタ電極との間に電位(すなわち、電圧)を印加することにより、そして電流を測定することにより、定量することができる。このシステムを既知量の分析物を含む類似のサンプルを用いてキャリブレーションした場合、この電流測定値は、サンプル中の分析物の濃度と相関している可能性がある。
【0092】
[00109] あるいは、第三の電極70(図4-7)を使用して、印加された電圧をモニタリングすることができる。電位の意図された値の何らかのドリフトは、第三の電極を介して電気回路へのフィードバックをもたらすことができ、それにより電圧を適切に調整することができる。測定装置は、好ましくは、有用な情報、例えばサンプル中の分析物の濃度、患者体内の分析物の濃度、または測定分析物に関連するその他の物質の対応する濃度を、提供するための、必要な電気回路およびマイクロプロセッサを含有する。
【0093】
[00110] いったんサンプルが開口部60を介して導入されると、サンプルは可溶化し始め、そして試薬レイヤー26、36、そしてオプションとしての76と反応し始める。試薬が分析物の一部を測定可能な種に変換し、その後電位を印加するまでの“インキュベーション時間”を提供することが好ましい。より長いインキュベーション時間を利用する場合、好ましくは、電圧は、初めは、開口部60を介してサンプルを導入する時と同時に、または導入後すぐに、センサストリップ800に対して印加される。インキュベーション時間のより徹底的な処理は、U.S.特許番号5,620,579および5,653,863中に見いだすことができる。
【0094】
[00111] 初めに印加された電圧は、ある一定期間のあいだ、例えば従来のセンサストリップについては約10秒、維持し、そしてその後停止することができる。次いで、一定の遅延時間のあいだ、例えば従来のセンサストリップについては約10秒、電圧を印加しない。この遅延時間の後、定電位または“読み出しパルス”を、センサストリップの作用電極およびカウンタ電極を通して印加し、分析物の濃度を測定することができる。従来の電流測定センサーについては、電流を5〜10秒間の読み出し時間のあいだモニタリングしながら、この読み出しパルスを印加する。サンプル容量がギャップ56により含有されることを考慮すると、5〜10秒間の読み出しパルスは、比較的長いものである。
【0095】
[00112] 従来からの5〜10秒間の読み出しパルスと比較して、作用電極20(図2)が本発明のDBLと共に構築されている場合、より短い読み出し時間が好ましい。図9Aおよび9Bは、長い読み出しパルスおよび短い読み出しパルスを適用する間の伝導体表面930およびDBL 905を有する作用電極900を示す。サンプル(示さない)は、作用電極900に対して適用され、そしてサンプルには、905上に存在するRBC 920、サンプル中に存在する外の測定可能な種910、そしてDBL 905内に存在する内部の測定可能な種915が含まれる。
【0096】
[00113] 図9A中に示されるように、長い、10秒間の読み出しパルスを作用電極900に対して適用する場合、外の測定可能な種および内部の測定可能な種910および915の両方とも、伝導体表面930の表面で酸化状態の変化により、測定される。この測定プロセスのあいだ、外の測定可能な種910は、RBC 920が存在するサンプル領域を介して、そして表面930で測定されるDBL 905を介して、拡散される。以前に検討したように、測定中にRBC 920を介して外の測定可能な種910がこのように拡散することにより、ヘマトクリット効果が導入される。
【0097】
[00114] さらに、図9aに示される様な、DBLを有するストリップに対して印加される長い読み出しパルスは、DBLを有さないストリップに対して印可される短い読み出しパルスに対して、同様に作用する。読み出しパルスの間に伝導体表面で測定される前に、測定可能な種がRBCを介して拡散するため、類似点が生じる。いずれの場合においても、読み出しパルスの間に測定される種の実質的な部分は、試験サンプルに由来する。
【0098】
[00115] 図9Aとは異なり、図9Bは、短い読み出しパルスを、本発明にしたがって、DBL 905を有するセンサストリップ900に対して印加する状況を示している。ここで、DBL 905中に存在する内部の測定可能な種915は、表面930での酸化状態の変化を受ける。DBL 905の外側に存在する実質的にすべての測定可能な種910は、DBLの外側に位置し続けるか、または実質的にDBL 905を介して拡散せず、読み出しパルスの間に伝導体表面930に到達する。したがって、本発明は、実質的に、外の測定可能な種910を測定からは除き、代わりにDBL 905の内部である測定可能な種915を測定する。
【0099】
[00116] 図10Aおよび10Bは、DBLを本発明にしたがって短い読み出しパルスと組み合わせた場合の、測定精度の改良を示すグラフである。全血液サンプルは、基礎となるグルコース濃度を示すために5:1希釈比率でフェロシアニドと組み合わせ、そして1秒の読み出しパルスを用いて測定した。このように、初めの20%、40%および60%のヘマトクリットWBサンプルを希釈して、16%、32%および48%ヘマトクリットとした(3つすべてのヘマトクリット値を20%低下)。20%、40%、および60%の線は、16%、32%、および48%のヘマトクリットを含有する血液サンプルについての測定電流をそれぞれ示す。
【0100】
[00117] 図10Aは、ヘマトクリットおよびDBLを有さないむき出しの伝導体センサストリップ由来のその他の効果により導入される不正確性を示す。不正確性は、20%および60%のヘマトクリットの線の間の差として示され(全ヘマトクリットバイアス範囲)、そして、ヘマトクリット効果に寄与する最大測定値不正確性を示す。より小さなバイアス値は、より正確な結果を示す。図9Aに関して上述したようにDBLがより長い読み出しパルスとともに使用される場合、同様な性能が得られた。
【0101】
[00118] 逆に、図10Bは、DBLを、本発明にしたがって、1秒の読み出しパルスと組み合わせる場合、20%および60%のキャリブレーション線の間の距離が顕著に減少することを示す。PEOポリマーの異なるDBLおよび10%KCl(試薬無し)を、上の図10Aについて使用したように、伝導体表面上にプリントした。驚くべきことに、DBL/短い読み出しパルスありの場合の全バイアスヘマトクリット範囲が、DBLなしの場合の全バイアス範囲と比較して、2/3少なくなった。したがって、本発明は、従来の、基板伝導体電極の場合と比較して、測定精度が顕著に上昇した。
【0102】
[00119] 何らかの特定の理論に束縛されることは望まないが、DBLの厚さに関して読み出し時間の長さを限定することにより、本発明は、測定可能な種のDBLの孔への拡散速度が可変である一方、DBL内部容量から伝導体表面の表面への測定可能な種の拡散速度は一定である、という現象を利用することができる、と現在は考えられている。WBマトリクスにより引き起こされるDBL中の拡散の様々な程度は、ヘマトクリット効果をもたらすと考えられている。したがって、RBCを含むサンプル構成成分により導入される測定誤差(バイアス)を、比較的一定な拡散速度を持つと考えられているDBLの内部容量中に存在する測定可能な種に、測定を実質的に限定することにより、低下させることができる。
【0103】
[00120] 図11Aおよび11Bは、DBLを使用する場合に、読み出しパルスの持続時間を減少させることに起因する正確性の向上を証明するグラフである。図11Aは、DBLなしの場合、0.9、5、10、および15秒の読み出しパルスを伴うバイアスが、ほぼ同一であることを示す。メディエーターが伝導体の表面に到達する能力が、RBCを含むサンプル構成成分により影響を受けるため、読み出しパルスの長さにかかわらず、全バイアス範囲の値は約40%およびそれ以上(平均では50%)である。しかしながら、図11Bに示すように、DBLを使用する場合、0.9秒の読み出しパルスについてのバイアスは、一般的に、5秒間の読み出しパルスについて得られたバイアスの半分未満であり、そして従来の10秒間の読み出しパルスについて得られたバイアスよりも、フェロシアニド濃度に依存して、2.5分の1程度まで低下した。
【0104】
[00121] DBLと組み合わせた場合、5秒未満の読み出しパルスが好ましく、そして3秒未満の読み出しパルスはより好ましい。別の側面において、0.1〜2.8秒の読み出しパルス、または0.5〜2.4秒の読み出しパルスが好ましい。さらに別の側面において、0.05〜2.8秒の読み出しパルスまたは0.1〜2.0秒の読み出しパルスが好ましい。現時点では、0.8〜2.2秒の読み出しパルスまたは0.8〜1.2秒の読み出しパルスがより好ましく、一方、0.1〜1.5秒の読み出しパルスまたは0.125〜0.8秒の読み出しパルスは、特に好ましい。読み出しパルスの印加の間存在するDBLの厚さは、パルスの間、DBLの外の測定可能な種が伝導体の表面に拡散することを実質的に防止する様に、選択することができる。
【0105】
[00122] 図12は、DBLを有する複数のタイプのセンサストリップを用いて行われた複数の解析からの、1〜10秒間の読み出しパルスについてのバイアス結果を比較する表である。この表は、50、100、200、および400 mg/dLのグルコースを含有するWBサンプルについての全バイアス範囲の値を示す。絶対的なバイアス値は、50 mg/dLのサンプルについて列挙され、一方%バイアスは、100、200、および400 mg/dLのサンプルについて示される。可変のグルコース濃度についてのバイアス値は、10秒間の読み出しパルスおよび1秒間の読み出しパルスの両方について、平均化された。より短い1秒間の読み出しパルスにより、従来からの10秒間の読み出しパルスと比較した場合、バイアス値において実質的な減少がもたらされ、約21%〜約90%の減少であった。36回行われた試行について、全体の平均バイアス減少は、約50%であった。したがって、本発明にしたがってDBLと短い読み出しパルスとを組み合わせることは、測定精度を実質的に増大させた。
【0106】
[00123] 図13A-13Cは、DBLを有するセンサストリップが、短い読み出しパルスを使用して、サンプルの真のグルコース濃度を正確に測定する能力を示すグラフである。図面の基礎となるデータは、測定可能な種としてのフェロシアニドを含有するWBおよび血漿溶液における電流を測定することにより、収集された。血漿サンプルはRBCを有さないため、血漿測定値は、ヘマトクリット効果により導入された不正確性を有さない。逆に、WBサンプルにおいて得られた測定値には、ヘマトクリット効果により導入された不正確性が含まれた。
【0107】
[00124] 図13Aは、むき出しの伝導体センサストリップに対して1秒の読み出しパルスを使用することにより収集された血漿測定値とWB測定値とを相互に関連づける。得られた相関プロットの傾きは、わずか0.43であり、これは、平均して、WBサンプル中に存在する測定可能な種の43%のみが測定されたことを示唆する。対照的に、図13Bは、DBLを有するセンサストリップに対して1秒の読み出しパルスを使用することにより収集された血漿測定値とWB測定値を相互に関連づける。得られた相関プロットの傾きは、実質的に0.86以上であり、これは、WBサンプル中に存在する約86%の測定可能な種が測定されたことを示唆する。したがって、むき出しの伝導体と比較した場合、本発明にしたがってDBLと組み合わせた短い読み出しパルスは、測定分析物濃度vs. WBサンプル中の実際の分析物濃度において100%の改善がもたらされる可能性がある。
【0108】
[00125] 図13Cは、読み出しパルスの持続時間を減少させると、本発明にしたがうDBLを備えたセンサストリップについての測定性能が亢進されることを示す。このグラフは、図13Aおよび13Bに関して上述されたWBサンプルおよび血漿サンプルにおいて得られた1、5、および10秒の読み出しパルスの測定値についての相関プロットを示す。1 、5、および10秒のパルスは、0.86、0.78および0.71、の相関プロットの傾きをそれぞれ有する。したがって、読み出しパルス持続時間の減少は、測定の不正確性を減少させた。
【0109】
[00126] 組合せDBL/試薬レイヤーを使用する場合、初期パルスの長さおよび遅延の長さは、後に印加する読み出しパルスのあいだ、DBLの厚さに影響を与える。上述したように、組合せDBL/試薬レイヤーは、読み出しパルスに適用する前にサンプル中で部分的に溶解される、水溶性の結合剤材料に依存する。読み出しパルスのあいだ残存する結合剤物質を含有する試薬は、DBLとして機能する。
【0110】
[00127] 結合剤材料の可溶化は、サンプルが開口部60を介して導入されたらすぐに開始するため(図8)、初期パルスおよび遅延時間のあいだに経過する時間は、読み出しパルスのあいだ、どの程度の組合せレイヤーが伝導体表面に存在するか、に影響を与える。したがって、十分な結合剤物質が有効なDBLとして機能するように伝導体上に存在することを確実にするために、より短い初期パルスおよび遅延時間が好ましい。
【0111】
[00128] しかしながら、DBL厚の増加のために、読み出しパルスを印加する前に、センサシステムが“定常状態”に到達することができないという結果をもたらす可能性があるため、読み出しパルスの持続時間に依存して、DBL厚については、好ましい上限が存在する。センサシステムが定常状態に到達する前、DBL中の測定可能な種の濃度は、サンプル中の測定可能な種の濃度を、正確には示していない。一側面において、DBL中の測定可能な種の濃度とサンプル中の測定可能な種の濃度とのこの相違は、DBLの再水和状態が変化することに起因している可能性がある。
【0112】
[00129] したがって、定常状態の条件に到達する前に読み出しパルスが印加されそして記録されると、測定可能な種の測定濃度は、サンプル中の濃度と相関しない可能性がある。このようにDBL中の測定可能な種の濃度とサンプル中の測定可能な種の濃度との相関性が失われることにより、測定値に不正確性が導入される可能性があり、それによりDBLの外の測定可能な種を測定から排除することにより得られるはずの正確性の向上が相殺される。
【0113】
[00130] 図14A〜14Fは、組合せDBL/試薬レイヤーの異なる初期厚を連続的な1秒の読み出しパルスとともに使用した場合の、複数のグルコース濃度について得られた結果を示す。このデータは、複数回の200 mV読み出しパルスを、それぞれ1秒の持続時間で、0.5秒の待ちの間隔をあけて使用して、得られた。以下の表IIは、およその平均DBL/試薬レイヤー厚、および各図に関して定常状態に到達する間でのおよその時間をまとめた。定常状態のおよその開始は、個々の読み出しパルスについて得られた時間のデータ点の最後に、個々の読み出しパルスのいずれかについて得られた時間のデータ点の最後の最大電流値を示す場合に、得られたものである。
【0114】
[00131] したがって、図14Fについて、約1.5秒で開始された読み出しパルスについての最後の時間(一番右)の約1750 nAデータ点が、674.8 mg/dLグルコース濃度では約2.5秒で定常状態に到達したことを証明する。
【0115】
【表2】

【0116】
[00132] 表IIのデータは、1秒の読み出しパルスの後に0.5秒の遅延を行うあいだ、組合せDBL/試薬レイヤーの平均初期厚が、好ましくは30または23マイクロメートル(μm)未満であり、そしてより好ましくは16μm未満である。0.5〜5秒の遅延および0.5〜1.2秒の読み出しパルスとともに使用するための組合せDBL/試薬レイヤーの好ましい平均初期厚は、5〜15μmまたは11〜14μmである。0.5〜5秒の遅延および0.05〜2.8秒の読み出しパルスとともに使用するための組合せDBL/試薬レイヤーのより好ましい平均初期厚は、1〜15μmまたは2〜5μmである。したがって、0.8〜1.2秒の読み出しパルスのあいだ、これらの厚さは、読み出しパルスのあいだ伝導体表面からの測定可能な種を実質的に排除する一方、センサシステムが定常状態に到達することができるようにする。
【0117】
[00133] 伝導体に対して適用される試薬レイヤーの好ましい初期厚は、初期パルスの長さ、遅延時間、および読み出しパルスの持続時間に依存するが、5秒未満の読み出しパルス持続時間について、5〜30μmまたは11〜20μmの試薬レイヤー厚が好ましい。さらに、1.5秒またはそれ以下の持続時間の読み出しパルスについて、1〜10μmまたは2〜5μmの試薬レイヤー厚が好ましい。組合せDBL/試薬レイヤーの所望の平均初期厚を、定常状態に到達するのがいつかに基づいて、特定の読み出しパルスの長さ、たとえば表IIの1秒の読み出しパルスのあいだ、について選択することができる。
【0118】
[00134] 一側面において、初期パルスおよび6秒未満の遅延時間が好ましい。1〜4秒の初期パルス時間および0.5〜5秒の遅延時間が、より好ましい。好ましい側面において、初期パルスおよび遅延時間は、組合せDBL/試薬レイヤーの平均初期厚の少なくとも50%が、読み出しパルスを印加する場合に伝導体表面上に残存するように選択される。別の側面において、組合せレイヤーの平均初期厚の60〜85%または70〜80%が、読み出しパルスを印加する場合に伝導体表面上に残存する。
【0119】
[00135] 特異的な読み出しパルスの長さに対するDBLの好ましい厚さは、DBLの性質に依存していてもよい。測定のあいだに測定可能な種がDBLを介して移動する速度がゆっくりであればあるほど、必要とされるDBLの厚さは薄い。しかしながら、DBLを介した測定可能な種の拡散が非常にゆっくりである場合、所望の定常状態を得ることが困難である場合がある。DBLを介して測定可能な種が拡散する速度は、試験サンプルのイオン強度および/またはDBLの孔内部のイオン強度に影響を与える添加物によって変化させることができる。一側面において、添加物は、沈着溶液/ペースト中に1〜2モル濃度で存在する塩、たとえば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、であってもよい。試験サンプルのイオン強度に影響を与える、化学分野の当業者に既知のその他の塩および組成物もまた、使用することができる。
【0120】
[00136] 3秒未満の読み出しパルスを用いてDBL中で測定可能な種を測定することのその他の利点は、センサストリップ800のギャップ56中に存在するサンプル容量が変化することに由来する測定の不正確性を減少させることである(図8)。ギャップ56中に存在する測定可能な種の実質的にすべてを測定するまで読み出しパルスを継続させる場合、サンプル中の測定可能な種の濃度をもはや示さず、ギャップ56中の測定可能な種の量を代わりに測定することになる;これは非常に異なる測定値である。ギャップ56の容量に対して読み出しパルスを長くするにつれて、電流測定値は、ギャップ56の容量に依存するようになり、基礎となる分析物濃度に依存しなくなる。したがって、パルスの長さがギャップ56中に存在する測定可能な種を“超越”してしまう場合、より長い読み出しパルスにより、結果として分析物濃度に関して非常に不正確な測定値が得られる可能性がある。
【0121】
[00137] このように、電気化学的なセンサストリップ中に存在するギャップ56の容量の何らかの可変性が、測定の不正確さを引き起こす可能性がある。これは、測定装置中の電子機器が、同一の電位を印加し、そして各試験について同一の計算を行うためである。したがって、読み出しパルスがギャップ容量を超越している場合、同一のサンプルについて、より大きなギャップ容量を有する従来型のセンサストリップは、より小さなギャップ容量を有するセンサストリップよりも高い分析物濃度を示す。DBL中に存在する測定可能な種に測定を実質的に限定することにより、本発明は、異なるギャップ容量を有するセンサストリップにより導入される不正確性を減少させることができる。このように、センサストリップ中に可変性を作成することにより、さもなければ測定結果が有している効果を、減少させることができる。
【0122】
[00138] 図15は、1、5、10、および15秒の読み出しパルスを印加した場合の、DBLと1、3、5、および10 mLのギャップ容量とを有するセンサストリップとのあいだにおける正確性を比較する。表Aは、2秒のプレパルスおよび4秒の遅延に続いて、1、5、10、および15秒の読み出しパルスを行った場合に収集されたデータを示す。表Bは、4秒のプレパルスおよび2秒の遅延に続いて、1、5、10、および15秒の読み出しパルスを行った場合に収集されるデータを示す。ギャップ容量と読み出しパルス持続時間の各組合せについてのキャリブレーション線の傾きおよび切片のあいだの差異は、%-CVとして表す。表Aと表Bから得た%-CV値は、読み出しパルスの持続時間が増加するにつれて、ギャップ容量の変化のために測定値の不正確性もまた増加することを示す。両方のパルスの流れについて、ギャップ容量間の偏差は、約1秒の読み出しパルスの場合に最小であり、そして15秒の読み出しパルスの場合に最大である。これらの結果からさらに、本発明に従う短いパルスの長さでDBLを使用することのメリットが証明される。
【0123】
[00139] ヘマトクリット効果およびギャップ容量の可変性に加えて、ギャップ56中に存在する測定可能な種(図8)が測定される場合、液体サンプルを測定中に移動させる場合に、分析物読みとり値の正の誤差が導入される可能性がある。このサンプルの移動により、フレッシュな分析物を、一定の拡散パターンがすでに生じた作用電極周辺領域に導入することができ、したがって測定をゆがめる。拡散速度が変動するDBLの外の測定可能な種を測定から実質的に排除しながら、比較的一定な拡散速度を有するDBL内部の測定可能な種を、短い読み出しパルスを用いて測定することにより、本発明は、サンプルの移動により導入される測定誤差をさらに減少させることができる。
【0124】
[00140] 本発明の様々な態様が記載されている一方、その他の態様および器具が本発明の範囲内のものとして可能であることは当業者にとって明らかであろう。したがって、添付のクレームおよびその均等物の範囲以外には、本発明は限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
[0048] 本発明は、以下の図面および記載を参照することによりよりよく理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも本発明の原理を拡大したり強調したりするものではないが、本発明の原理を説明する際に用いられる。さらに、図面において、参考文献と同様に、番号は、一般的には、異なる図面を通して対応する部分を示す。
【図1】[0049] 図1は、作用電極およびカウンタ電極を含有するセンサ基板の上面図である。
【図2】[0050] 図2は、図1のセンサ基板の側面図である。
【図3】[0051] 図3は、誘電体レイヤーの下のセンサ基板および電極の上面図である。
【図4】[0052] 図4〜6は、3種の電極センサストリップの上面図を示す。
【図5】[0052] 図4〜6は、3種の電極センサストリップの上面図を示す。
【図6】[0052] 図4〜6は、3種の電極センサストリップの上面図を示す。
【図7】[0053] 図7は、第三の電極を示す図5のセンサ基板の側面図である。
【図8】[0054] 図8は、完全に組み立てられたセンサストリップの透視画である。
【図9】[0055] 図9Aおよび9Bは、長時間および短時間の読み出しパルスを印加する間の、伝導体表面およびDBLを有する作用電極を示す。
【図10】[0056] 図10Aおよび10Bは、DBLを本発明にしたがって短時間の読み出しパルスと組み合わせた場合の測定精度の改良を説明するグラフである。
【図11】[0057] 図11Aおよび11Bは、DBLを使用した場合に、読み出しパルスの持続時間の減少から生じる正確さの改善を証明するグラフである。
【図12】[0058] 図12は、拡散隔膜レイヤーを有する複数のタイプのセンサストリップを用いて行った、複数の解析からの1秒および10秒の読み出しパルスについてのバイアスの結果を比較する表である。
【図13−1】[0059] 図13A〜13Cは、本発明にしたがったDBLを有するセンサストリップが、短時間の読み出しパルスを使用して、サンプルの真のグルコース濃度を正確に測定する能力を説明するグラフである。
【図13−2】[0059] 図13A〜13Cは、本発明にしたがったDBLを有するセンサストリップが、短時間の読み出しパルスを使用して、サンプルの真のグルコース濃度を正確に測定する能力を説明するグラフである。
【図14−1】[0060] 図14A〜14Fは、組合せDBL/試薬レイヤーの様々な厚さを、連続的な1秒の読み出しパルスと共に使用した場合の、複数のグルコース濃度についての遅延プロファイルを示すグラフである。
【図14−2】[0060] 図14A〜14Fは、組合せDBL/試薬レイヤーの様々な厚さを、連続的な1秒の読み出しパルスと共に使用した場合の、複数のグルコース濃度についての遅延プロファイルを示すグラフである。
【図14−3】[0060] 図14A〜14Fは、組合せDBL/試薬レイヤーの様々な厚さを、連続的な1秒の読み出しパルスと共に使用した場合の、複数のグルコース濃度についての遅延プロファイルを示すグラフである。
【図14−4】[0061] 図14Gは、最初の1秒のパルス、その後連続的に0.25秒の読み出しパルスを使用した、1〜2μmの組合せDBL/試薬レイヤーに関する複数のグルコース濃度についての遅延プロファイルを示す。
【図15】[0062] 図15は、1、5、10、および15秒の読み出しパルスを印加した場合の、DBLと、1、3、5、および10 mLのギャップ用量とを有するセンサストリップのあいだの正確性を比較する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板;
基板上の第一の電極(ここで、第一の電極は、第一の伝導体上に、試薬レイヤーを含む少なくとも一つの第一のレイヤーを含む);そして
基板上の第二の電極;
を含み、第一のレイヤーの厚さは、分析物の解析の間に第一および第二の電極に印加された読み出しパルスが、第一のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出するが、第一のレイヤーの外の測定可能な種は実質的に検出しない様に選択される、電気化学的センサストリップ。
【請求項2】
前記試薬レイヤーには、オキシドレダクターゼ酵素および結合剤が含まれる、請求項1に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項3】
第二の電極が、第二の伝導体上に第一のレイヤーを含む、請求項1または2に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項4】
読み出しパルスの持続時間が5秒未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項5】
読み出しパルスの持続時間が、3秒未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項6】
読み出しパルスの持続時間が、0.05秒〜2.8秒である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項7】
読み出しパルスの持続時間が、0.1秒〜1.5秒である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項8】
第一のレイヤーの平均初期厚が少なくとも1μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項9】
第一のレイヤーの平均初期厚が、30μm未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項10】
第一のレイヤーの平均初期厚が、1〜30μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項11】
第一のレイヤーの平均初期厚が、5〜25μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項12】
読み出しパルスを印加する場合に少なくとも50%の厚さが伝導体上に残っている様に、第一の伝導体上の第一のレイヤーの平均初期厚がさらに選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項13】
読み出しパルスを印加する場合に70〜80%の厚さが伝導体上に残っている様に、第一の伝導体上の第一のレイヤーの平均初期厚がさらに選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項14】
基板;
基板上の第一の電極(ここで、第一の電極は、第一の伝導体上に、試薬レイヤーと、第一の伝導体と第一のレイヤーとの間の第二のレイヤーと、を含む少なくとも一つの第一のレイヤーを含む);そして
基板上の第二の電極(第二のレイヤーの厚さは、分析物の解析の間に第一および第二の電極に印加された読み出しパルスが、第二のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出するが、第二のレイヤーの外の測定可能な種は実質的に検出しない様に選択される);
を含む、電気化学的センサストリップ。
【請求項15】
第二のレイヤーの平均初期厚が、少なくとも1μmである、請求項14に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項16】
第二のレイヤーの平均初期厚が、5〜25μmである、請求項14に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項17】
第二のレイヤーが、少なくとも一つのオキシドレダクターゼ酵素およびメディエーターを含まない、請求項14〜16のいずれか1項に記載の電気化学的センサストリップ。
【請求項18】
第二のレイヤーが、ポリマー材料を含む、請求項14〜17のいずれか1項に電気化学的センサストリップ。
【請求項19】
ポリマー材料が、ポリ(エチレンオキシド)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチレンセルロース、ヒドロキシピロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、それらの誘導体、およびそれらの組合せの少なくとも一つを含む、請求項18に電気化学的センサストリップ。
【請求項20】
ポリマー材料が、部分的に水に可溶性である、請求項18に電気化学的センサストリップ。
【請求項21】
液体構成成分を有する分析物含有サンプルを、基板、基板上の第一の伝導体、基板上の第二の伝導体、および少なくとも第一の伝導体上の少なくとも一つの第一のレイヤーを有する電気化学的センサストリップに対して導入する工程(ここで、少なくとも一つの第一のレイヤーが結合剤を含む試薬レイヤーを含み、そしてサンプルが第一および第二の伝導体間での電気的な連絡をもたらす);
読み出しパルスの形態で第一および第二の伝導体間で電位を印加する工程(ここで、読み出しパルスは、第一のレイヤー中の測定可能な種を実質的に検出するが、第一のレイヤーの外の測定可能な種は実質的に検出しない持続時間のあいだ、印加される);
読み出しパルスを測定して、第一のレイヤーの外の測定可能な種を実質的に検出する電気化学的センサストリップと比較して、高い正確性をもってサンプル中の分析物濃度の定量値を与える工程;
を含む、定量的な分析物測定の正確性を上昇させる方法。
【請求項22】
高い正確性が、少なくとも部分的に、液体運動作用により分析物濃度測定へ持ち込まれる不正確性を減少させることの結果である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数の電気化学的センサストリップのあいだでの分析物濃度の定量値の正確性を高める工程をさらに含む、請求項21または22に記載の方法であって、ここで、サンプルは、基板と各センサストリップの蓋との間に形成され、複数の電気化学的センサストリップの個々のものの間で異なる容量を有するギャップ中に存在する、前記方法。
【請求項24】
初期パルスを印加する工程および読み出しパルスまでの時間遅延をさらに含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
初期パルスが、1〜4秒である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
時間遅延が、2〜4秒である、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図14−4】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−516261(P2008−516261A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536878(P2007−536878)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036806
【国際公開番号】WO2006/042304
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)