説明

拭き布

【課題】 水分および油分という液体の拭き取り性に加えて、対象物を磨いたり、汚れや細かい粉塵等を拭い取る機能も担うことができる拭き布を提供する。
【解決手段】 コットンリンターまたはコットン繊維を主体として構成されるコットン層の両面に、短繊維ウェブ層が積層されてなる拭き布であり、前記短繊維ウェブ層は、吸液性繊維、異形断面繊維、極細繊維とからなり、これらの構成繊維同士が交絡することにより一体化し、かつ、前記コットン層と前記短繊維ウェブ層とは、両層を構成する繊維同士が交絡することにより積層一体化していることを特徴とする拭き布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭やオフィス内で、また工業用等に用いられるワイパー、いわゆる拭き布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
拭き布は、家庭やオフィスでは、机や床、鏡、窓ガラス、戸棚等の様々なものを磨いたり、汚れを拭い取ったり、また、溢した水や油等の液体を拭き取ったりする際に用いられている。また、工業用にも、対象物を磨いたり、汚れを拭い取ったり、付着した液体を拭き取ったりする等の目的で用いられている。
【0003】
特許文献1には、捲縮疎水性長繊維不織布の片面に親水性短繊維不織布を積層交絡させた、水性および油性の両成分の汚れを拭き取ることができる、表面が平滑な複合不織布ワイパーが提案されている。しかし、特許文献1の拭き布は、水や油の拭き取り、いわゆる液体の拭き取り性を考慮したものであり、対象物を磨いたり、汚れを拭い取るということを考慮したものではない。
【特許文献1】特開2004−97462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、水分および油分という液体の拭き取り性に加えて、対象物を磨いたり、汚れや細かい粉塵等を拭い取る機能も担うことができる拭き布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、コットンリンターまたはコットン繊維を主体として構成されるコットン層の両面に、短繊維ウェブ層が積層されてなる拭き布であり、前記短繊維ウェブ層は、吸液性繊維、異形断面繊維、極細繊維とからなり、これらの構成繊維同士が交絡することにより一体化し、かつ、前記コットン層と前記短繊維ウェブ層とは、両層を構成する繊維同士が交絡することにより積層一体化していることを特徴とする拭き布を要旨とするものである。
【0007】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0008】
本発明におけるコットン層は、コットンリンターまたはコットン繊維を主体として構成される。コットンリンターは、綿実に残った短い繊維である。コットンリンターの形態は、いわゆる直線状ではなく、クリンプを有し、半円状の弧を描いた形状をしている。コットン層として、コットンリンターからなる層を用いる場合は、コットンリンターを抄造した抄造シートを用いるとよい。この場合、コットンリンターの平均繊維長は5mm以下のものが好ましい。平均繊維長が5mmを超えると、抄造時に繊維同士が絡み合って分散しにくいためである。コットンリンターからなる抄造シートは、上述したように半円状の弧を描いた形状をしているため、繊維同士の絡みがある程度保持され、シートの形態安定性が良好であり、また、取扱い性に優れる。
【0009】
コットン繊維とは、いわゆる脱脂処理を施した吸液性に優れるものである。コットン繊維からなる層としては、コットン繊維からなるウェブ(織物、編物、不織布、繊維堆積物)が挙げられるが、繊維間の間隙が大きく、保液性に優れることから、不織布を用いることが好ましい。
【0010】
コットン層の目付は、拭き布としての保液性等を考慮すると、20g/m2以上が好ましく、より好ましくは30g/m2以上である。また、目付の上限は、コットン層の両面に短繊維ウェブ層を積層し一体化させることを考慮して、100g/m2程度がよい。
【0011】
本発明の拭き布は、前記コットン層の両面に、短繊維ウェブ層が積層されてなり、短繊維ウェブ層は、吸液性繊維、異形断面繊維、極細繊維とから構成され、これらの構成繊維同士が交絡することにより一体化している。
【0012】
吸液性繊維としては、水や油等の液体を吸収する繊維であって、コットン繊維、レーヨン繊維、溶剤紡糸セルロース繊維、親水性ポリエステル繊維等が挙げられる。
【0013】
異形断面繊維は、三角断面、W断面、十字断面、多葉断面等の横断面を有する繊維であって、その断面形状が有する突起部分で、拭き取り対象物を掻き取る働きを担う。異形断面繊維は、公知のポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性重合体によって構成されるものを用いるとよい。また、異形断面繊維の存在により、拭き取りの際の拭き取り対象物との摩擦抵抗が小さく、作業性が良好である。さらに、拭き布を折りたたんで使用する際には、折りたたみ面同士での摩擦抵抗が大きくなるため、折りたたみ面がずれることなく、良好に作業を行うことができる。
【0014】
極細繊維は、油脂分等のミクロな汚れを拭い取って、対象物を磨いたり、また、毛細管現象により、拭き取った液体を内層のコットン層に導く働きを担う。このような極細繊維の単糸繊度は、0.2デシテックス以下のものが好ましい。また、極細繊維として、相溶性に乏しい2種の熱可塑性重合体からなる分割型複合繊維が、分割により発現した割繊繊維を用いてもよい。この場合、割繊繊維は、断面形状が異形であるため、ミクロな汚れの拭い取り性、掻き取り性により優れることとなる。
【0015】
短繊維ウェブ層を構成する繊維の繊維長は、20mm〜80mmであることが好ましい。この範囲外であると、短繊維ウェブを製造する際のカード通過性に劣る傾向となる。
【0016】
短繊維ウェブ層は、本発明の拭き布の両表面層に配されるものであり、拭き取る対象物を掻き取り、拭き取り、吸液する働きをする。吸液性繊維、異形断面繊維、極細繊維の3者の混合割合は、吸液性繊維が20〜50質量%、異形断面繊維が25〜40質量%、極細繊維が25〜40質量%とするとよい。吸液性繊維が20質量%未満となると、液体の吸収性に劣り、拭き残りが生じる傾向となる。一方、吸液性繊維が50質量%を超えると、掻き取り性、拭い取り性を担う異形断面繊維および極細繊維の量が相対的に減るため、所望の汚れの掻き取り性、拭い取り性を発揮しにくい。
【0017】
短繊維ウェブ層の構成繊維同士は、交絡することにより一体化している。交絡により、繊維同士の間隙が保たれ、その間隙に拭き取った塵や埃、液体を保持することができる。また、繊維同士が交絡しているため、拭き取りによる摩擦に対して、毛羽が発生しにくく、繊維が脱落して繊維屑を残す恐れはない。
【0018】
本発明の拭き布は、前記コットン層の両面に、短繊維ウェブ層が積層されて、両層を構成する繊維同士が交絡することにより積層一体化している。両層を構成する繊維同士が交絡しているため、拭き布表面の短繊維ウェブ層が拭き取った液体は、内層であるコットン層に良好に移行することができる。
【0019】
コットン層と両面に配する短繊維ウェブ層との積層比率は、短繊維ウェブ層:コットン層:短繊維ウェブ層=35〜20:30〜60:35〜20(質量%)とするとよい。
【0020】
本発明の拭き布の目付は、特に限定されないが、40〜200g/m2程度が好ましく、より好ましくは60〜150g/m2である。
【0021】
本発明の拭き布は、使用の際、清掃用の薬液等を含浸して用いてもよい。
【0022】
本発明の拭き布は、以下の方法によって、良好に得ることができる。
【0023】
すなわち、まず、コットン層、短繊維ウェブ層をそれぞれ用意し、短繊維ウェブ層/コットン層/短繊維ウェブ層の順に積層する。前記積層物に、高圧液体流を施し、短繊維ウェブ層を構成している繊維同士、また、短繊維ウェブ層とコットン層との繊維同士を交絡させて積層一体化する。
【0024】
高圧液体流を施すとは、いわゆるスパンレース法であり、具体的には、孔径0.05〜2mmの噴射孔が、噴射孔間隔0.05〜10mmで一列ないし複数列に配置した装置を用い、噴射孔から液体流を1.96MPa〜19.6MPaの圧力で噴射して、支持板に載置した積層物に衝突させる。支持板としては、メッシュスクリーンや有孔板を用いるとよい。メッシュスクリーンの組織やメッシュの大きさ等を適宜選択すると、拭き布の表面形態を平滑にしたり、模様等を付与したりを種々変化させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、コットンリンターまたはコットン繊維を主体として構成されるコットン層の両面に、短繊維ウェブ層が積層されてなる拭き布であり、前記短繊維ウェブ層は、吸液性繊維、異形断面繊維、極細繊維とからなり、これらの構成繊維同士が交絡することにより一体化し、かつ、前記コットン層と前記短繊維ウェブ層とは、両層を構成する繊維同士が交絡することにより積層一体化しているものである。短繊維ウェブ層(表面層)の吸液性繊維が、水や油等の液体を吸い込むことができ、吸い込んだ液体は内層のコットン層に吸収される。また、短繊維ウェブ層(表面層)の異形断面繊維は、その断面形状が有する突起部分で、拭き取り対象物を掻き取る働きを担い、こびりついた汚れや細かい粉塵を掻き取ることができる。また、短繊維ウェブ層(表面層)の極細繊維は、油脂分等のミクロな汚れを拭い取ったり、また、毛細管現象により、拭き取った液体を内部のコットン層に導く働きを担い、良好に対象物を磨いたり、拭き取った液体を抜き布内層部へ良好に保持させることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。下記の実施例および比較例において、各物性値は以下により求めた。
(1)目付(g/m2):JIS L 1906の記載に準じて測定した。
【0027】
(2)引張強力(N/5cm幅):JIS L 1906記載に準じて測定した。なお、試料は、長さ15cm、幅5cmのもの10点とし、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM−4−1−100)を用いた際の条件は、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分とした。
【0028】
(3)拭き取り性(水分):試料(20cm×20cm)を用意し、この試料を四つ折りにして拭き取り性を評価した。ガラス板上に水2ccを載せ、この水を四つ折りにした試料で拭き取った。拭き取りの際には、試料を往復させて水跡が消えるまでの回数をカウントし、下記により評価した。
○:往復10回以下で水跡が消えた。
×:往復11回を超えても水跡が残った。
【0029】
(4)拭き取り性(油分):試料(20cm×20cm)を用意し、この試料を四つ折りにして拭き取り性を評価した。ガラス板上に油1ccを載せ、この油を四つ折りにした試料で拭き取った。拭き取りの際には、試料を往復させて油が拭き取れるまでの回数をカウントし、下記により評価した。
○:往復10回以下で油が拭き取れた。
×:往復11回を超えても油が残った。
【0030】
実施例1
コットン層として、平均繊維長3mmのコットンリンターからなる目付30g/m2の抄造シートを用意した。
【0031】
短繊維ウェブ層の構成繊維としては、吸液性繊維として平均繊維長25mmのコットン晒綿、異形断面繊維として三角断面繊維(日本エステル株式会社製<P800> 単糸繊度1.4デシテックス、繊維長44mm)、また、割繊により極細繊維を発現する分割型複合繊維(日本エステル株式会社製<N91> ポリエチレンテレフタレートとナイロン6とからなる20分割型繊維 単糸繊度2.2デシテックス、繊維長51mm)を用意した。吸液性繊維:異形断面繊維:分割型複合繊維=40:30:30(質量比)の混率で混合し、ランダムカード機により20g/m2の短繊維ウェブを得た。
【0032】
短繊維ウェブ/抄造シート/短繊維ウェブの順に積層して70g/m2の積層物を得、この積層物を移動する100メッシュの金属製ネット上に載置し、孔径0.6mmで一列に配されたオリフィスヘッドを用い、積層物の上方50mmの位置より、噴射圧3.9MPaの高圧液体流により予備交絡を施した。次いで、噴射圧9.8MPaの高圧液体流により交絡処理を施した。その後、積層物を反転させ噴射圧9.8MPaの高圧液体流により交絡処理を施した。交絡処理後
余剰の水分を公知の水分除去装置であるマングルにより除去し、サクションバンド方式の乾燥機を用い120℃で乾燥処理を行い、本発明の拭き布を得た。拭き布の両表面の繊維を顕微鏡にて観察すると、分割型複合繊維は、分割割繊されて、楔型の0.11デシテックスのポリエチレンテレフタレートからなる割繊繊維(極細繊維)と、楔型の0.11デシテックスのナイロン6からなる割繊繊維(極細繊維)とを発現しており、分割型複合繊維としてその原形をとどめるものは存在しなかった。
【0033】
実施例2
短繊維ウェブ層における構成繊維の混合比を、吸液性繊維:異形断面繊維:分割型複合繊維=20:40:40(質量比)の混率で混合したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の拭き布を得た。
【0034】
実施例3
コットン層である抄造シートとして、目付を20g/m2の抄造シートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の拭き布を得た。
【0035】
実施例4
コットン層である抄造シートとして、目付を50g/m2の抄造シートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の拭き布を得た。
【0036】
実施例5
吸液性繊維として、溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製 商品名:リヨセル 単糸繊度1.7デシテックス、繊維長38mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の拭き布を得た。
【0037】
比較例1
平均繊維長25mmのコットン繊維を用意し、ランダムカード機にて70g/m2のウェブを作成し、このウェブに、実施例1と同様にして高圧液体流による交絡処理を施し、コットン繊維からなる拭き布を得た。
【0038】
得られた実施例1〜5の拭き布、および比較例1の拭き布の物性を表1に示した。
【0039】
【表1】

表1より明らかなように、実施例1〜5の拭き布は、水分および油の拭き取り性が良好であった。一方、コットンのみからなる比較例1の拭き布は、往復10回の拭き取りでは、水分および油も完全に拭い取ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コットンリンターまたはコットン繊維を主体として構成されるコットン層の両面に、短繊維ウェブ層が積層されてなる拭き布であり、前記短繊維ウェブ層は、吸液性繊維、異形断面繊維、極細繊維とからなり、これらの構成繊維同士が交絡することにより一体化し、かつ、前記コットン層と前記短繊維ウェブ層とは、両層を構成する繊維同士が交絡することにより積層一体化していることを特徴とする拭き布。
【請求項2】
極細繊維が、ポリエステルとポリアミドからなる分割型複合繊維が、分割により発現した割繊繊維であることを特徴とする請求項1記載の拭き布。

【公開番号】特開2006−316361(P2006−316361A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137659(P2005−137659)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】