説明

持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体

【課題】仮設足場が存在しない建築現場において、内側空間から施工作業を可能とした持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体を提供する。
【解決手段】スラブの鼻先部に構築した手摺本体の支柱に対して、ブラケットを介して、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの腰壁体を連結した構成において、腰壁体を昇降可能とする摺動機構を設けている。摺動機構は、上下方向に延びるレール部材と、該レール部材に摺動自在に嵌挿されたスライダーを備え、腰壁体を内側空間から外側空間に持ち出した状態で下降させたとき、レール部材の開口部にスライダーを挿入させるように構成され、腰壁体を定位置と上方の作業位置との間で昇降可能とする。スライダーとレール部材の摺動可能な状態と摺動不能な状態を自在とする固定解放手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち出しタイプであり、しかも、スラブ隠しタイプとされた手摺構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
中高層マンションのような集合住宅等においては、工期の短縮とコストの軽減を図る目的から仮設足場を必要としない建築工法が研究されている。この際、バルコニーや外部廊下の手摺構成体は、採光性と防風性、更にはデザイン性を重視する観点から、ガラス腰壁や格子腰壁を備えた「腰壁タイプ」の手摺構成体が多く採用される傾向にある。このような手摺構成体は、バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブの外側空間と内側空間の間に位置する鼻先部に沿って所定間隔で支柱を列設することにより手摺本体を構成し、前記支柱にブラケットを介して腰壁体を取付けることにより構築される。従って、腰壁体が外側に持ち出し状に支持されるため「持ち出しタイプ」と称される。
【0003】
ところで、腰壁タイプのデザイン性を突き詰めると、その一つの方向性として、腰壁体を外壁面と同一面で設置された外壁の一部、又は他の外壁と連続するファサードを構成する一部外壁材としてのデザイン的な要素を有する腰壁タイプの手摺構成体の製作、並びに施工が求められる。
【0004】
このようなデザイン的な要求を満たすためには、建物の外観として、手摺本体の笠木や支柱上部が外部から視認できないように腰壁体で被い隠すことが好ましく、更には、外部からバルコニーや廊下のコンクリートスラブの鼻先部を見せないように、腰壁体によりスラブの鼻先部分を被い隠した「スラブ隠しタイプ」の手摺構成体を提供することが望ましい。これにより、腰壁体が建物の外観部の前面に設置されると共に、他の外壁と同一面上で連続するファサードを構成することが可能になる。
【0005】
この点に関して、特許第3698695号公報(特許文献1)には、集合住宅における腰壁タイプであって、しかも、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプとした手摺構成体が開示されている。
【0006】
また、特開2007−138499号公報(特許文献2)には、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体であって、上下2個所に設けられたブラケットに工夫を施し、腰壁体を一人の作業者でも容易に取付け可能とした技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特許第3698695号公報
【特許文献2】特開2007−138499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプとした手摺構成体は、特に、ガラスの嵌め込みやシール作業を建物の外部側から施工する際に、高層マンションのような高所であって、仮設足場が存在しない現場では、安全かつ迅速に施工を行うことが困難である。
【0009】
また、特許文献1及び特許文献2の持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体は、何れも、施工が完了した後は、腰壁体が取付け施工された位置に固定されており、移動させることができない。換言すれば、腰壁体が建物のスラブ鼻先部を被う位置に固着されているので、ガラスの破損時や、スラブ鼻先部の清掃、更には、スラブ鼻先部のタイル補修または塗装工事等のメンテナンスに対応できる構成を有していない。
【0010】
本発明は、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体であって、従来は取付け施工が不可能とされていた仮設足場が存在しない建築現場においても、バルコニーや廊下等の内側空間から安全かつ迅速に施工できるように構成すると共に、施工後においても、腰壁体を簡単な作業で容易に上動可能とし、前述のようなメンテナンスに対応できるように構成することを課題とする。
【0011】
本発明は、パネルタイプの腰壁、竪格子タイプの腰壁、横格子タイプの腰壁のように、任意の形態とした腰壁体を適用することが可能な持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体を提供することを課題とする。この際、矩形フレームにガラス板等のパネルを保持させたパネルタイプの腰壁においては、バルコニーや廊下等の内側空間から、矩形フレームに対するパネルの取付け又は取外し作業を行うことができるように構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明が上記課題を解決するための手段として構成したところは、バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブの外側空間と内側空間の間に位置する鼻先部に沿って所定間隔で立設された支柱を備える手摺本体と、前記手摺本体を外側空間から被う腰壁体と、前記腰壁体を手摺本体の支柱に連結するブラケットから成る持ち出しタイプの手摺構成体において、前記腰壁体は、手摺本体の上端から鼻先部の下端までの上下領域を被う高さ寸法を有しており、該腰壁体の下端部により鼻先部を被った状態で固定される位置を定位置とするスラブ隠しタイプの腰壁を構成し、前記支柱と腰壁体の一方を第1構成部材とし、他方を第2構成部材として、前記ブラケットの基端部を第1構成部材に固着すると共に、該ブラケットの先端部を第2構成部材に摺動機構を介して連結し、前記摺動機構は、上下方向に延びるレール部材と、該レール部材に摺動自在に嵌挿されたスライダーを備え、腰壁体を内側空間から外側空間に持ち出した状態で下降させたとき、レール部材の開口部にスライダーを挿入させるように構成されると共に、該摺動機構により、前記腰壁体を前記定位置と、該腰壁体の下端部を前記鼻先部の上方に位置させる上動位置との間で、昇降可能となるように構成しており、前記スライダーとレール部材の摺動可能な状態と摺動不能な状態を自在とする固定解放手段を設けて成る点にある。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、前記レール部材は、ブラケットの先端部に臨む当接部と、該当接部を幅方向に分断して上下方向に延びるスリット状のスライド溝を有する中空の長尺部材により形成され、前記スライダーは、前記レール部材の中空部に内装されると共に前記当接部に沿って摺動する摺動片を備えており、前記固定解放手段は、前記摺動片に突設されると共に前記スライド溝を挿通して延びる固着用ボルトと、該固着用ボルトを挿通させるように前記ブラケットの先端部に設けられた貫通孔と、該貫通孔を挿通した固着用ボルトの挿出端に螺着される固着ナットとから構成され、前記固着ナットを弛緩することによりレール部材とスライダーを相互に摺動自在に解放し、前記固着ナットを締着することにより前記当接部をスライダーとブラケットの先端部との間に摺動不能に挟着するように構成されている。
【0014】
前記レール部材にストッパー部材を設け、前記腰壁体を定位置まで下動したとき、前記ストッパー部材がブラケット側の固定部材に係止することにより、前記腰壁体が定位置から下動することを阻止するように構成することが好ましい。
【0015】
本発明の手摺構成体における腰壁体は、パネルタイプの腰壁、竪格子タイプの腰壁、横格子タイプの腰壁のように、任意の形態とした腰壁体を構成することが可能である。
【0016】
パネルタイプの腰壁を構成する手摺構成体の実施形態において、前記腰壁体は、透明又は半透明のパネルの外周を額縁状の矩形フレームにより保持されたパネルタイプの腰壁を構成しており、前記矩形フレームは、左右の竪枠の上下端を上枠と下枠により連結すると共に、各枠の内側にパネルの周縁を保持する保持溝を形成し、左右の竪枠の保持溝に対して上方からパネルの両側を挿入可能とする上部開閉手段を設けており、前記竪枠が前記レール部材を形成しており、該レール部材の下端に前記スライダーを下方から挿入可能とする下端開口部を設けている。
【0017】
竪格子タイプの腰壁を構成する手摺構成体の実施形態において、前記腰壁体は、上下方向に延びる竪格子を横方向に列設した竪格子タイプの腰壁体を構成し、該腰壁体に竪枠を備えており、前記竪枠が前記レール部材を形成しており、該レール部材の下端に前記スライダーを下方から挿入可能とする下端開口部を設けている。
【0018】
横格子タイプの腰壁を構成する手摺構成体の実施形態において、前記腰壁体は、横方向に延びる横格子を上下方向に列設した横格子タイプの腰壁体を構成し、前記竪枠が前記レール部材を形成しており、該レール部材の下端に前記スライダーを下方から挿入可能とする下端開口部を設けている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の本発明によれば、持ち出しタイプの腰壁体4であって、しかも、手摺本体3の上端からスラブ1の鼻先部2の下端L1までの上下領域H1を被う高さ寸法H2を有するスラブ隠しタイプの腰壁体4が構築されるので、建物の外観部に腰壁体4を連続させたファサードを構成するデザイン的に優れた手摺構成体を提供することができる。
【0020】
特に、本発明は、ブラケット5により連結される支柱6と腰壁体4の相互間に、上下方向に延びるレール部材13と、該レール部材13に摺動自在に嵌挿されたスライダー14を備えた摺動機構12を設け、腰壁体4を内側空間S2から外側空間S1に持ち出した状態で下降させることにより、レール部材13の開口部から該レール部材13の中空部18にスライダー14を挿入させ、これにより摺動機構12を組付ける構成であるから、該摺動機構12の摺動を介して腰壁体4を下動させた後、定位置P2において固定解放手段15で固定することにより、仮設足場が存在しない建築現場においても、作業者が内側空間S2から全ての施工作業を行うことが可能であり、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体を容易に構築できるという利点がある。
【0021】
この際、前記固定解放手段15は、スライダー14とレール部材13の摺動可能状態と摺動不能状態を自在とするように構成されているので、手摺構成体の施工を完了した後においても、該固定解放手段15を操作することにより摺動可能とした状態で、腰壁体4を定位置P2から作業位置P1まで上動させることが可能である。従って、施工後においても、腰壁体4を簡単容易に上動することができ、鼻先部2の清掃や、鼻先部2のタイル補修または塗装工事等のメンテナンスに対応できるという効果がある。
【0022】
そして、請求項2に記載の本発明によれば、固着用ナット23を弛緩したとき、スライダー14の摺動片14がレール部材13の当接部16に沿って摺動自在とされ、かつ固着用ボルト21がスライド溝17に沿って摺動自在とされる一方、固着用ナット23を締着したとき、レール部材13の当接部16をスライダー14とブラケット5の先端部5bにより摺動不能に挟着するように構成しているので、固着用ナット23を操作するだけで簡単に摺動可能状態と摺動不能状態の切換えが行われ、操作性が良く、内側空間S2からの作業を容易とする。
【0023】
更に、請求項3に記載の本発明によれば、摺動機構12の摺動を介して腰壁体4を作業位置P1から定位置P2まで下動させたとき、ストッパー部材43が固定部材45に係止し、腰壁体4を定位置P2に停止させるので、誤作業により腰壁体4が落下する危険はなく、しかも、定位置P2に位置決めされた状態で固定解放手段15により腰壁体4を固定すれば良く、作業性が極めて良い。更に、施工完了後においても、万一、固定解放手段15の固着用ナット23が緩んだ場合でも、腰壁体4が下動するおそれはなく、定位置P2での取付け状態を維持できるという効果がある。
【0024】
そして、請求項4に記載の本発明によれば、透明又は半透明のパネル7の外周を額縁状の矩形フレーム8により保持したパネルタイプの腰壁を有する手摺構成体が提供される。この際、矩形フレーム8は、竪枠11、11の保持溝28に上方からパネル7の両側縁を挿入可能とする上部開閉手段41を設けており、該竪枠11、11により上記摺動機構12のレール部材13を形成すると共に、該レール部材13の下端に前記スライダー14を下方から挿入可能とする下端開口部を設けている。従って、矩形フレーム8を内側空間S2から外側空間S1に持ち出した状態で下降させることにより、レール部材13の下端の開口部から該レール部材13の中空部18にスライダー14を挿入させ、これにより摺動機構12を組付けた後、固定解放手段15により摺動機構12を摺動不能に固定し、矩形フレーム8を作業位置P1に定置させた状態で、該矩形フレーム8に上方からパネル7を装着することができる。このため、矩形フレーム8を持ち出した状態で固定する作業と、その後、該矩形フレーム8にパネル7を装着する作業を順次に行うことができるので、パネル7がガラス板等の重量物とされる場合でも、内側空間S2からの作業が容易となる。
【0025】
しかも、施工後に、パネル7が破損した場合でも、腰壁体4を定位置P2から作業位置P1まで上動させた位置で固定し、該作業位置P1に定置された矩形フレーム8に対してパネル7の取り替えを行うことができるので、作業性が極めて良い。
【0026】
更に、請求項5に記載の本発明によれば竪格子タイプの腰壁を有する手摺構成体を提供することができ、請求項6に記載の本発明によれば横格子タイプの腰壁を有する手摺構成体を提供することができ、これらの腰壁体4は、何れも、内側空間S2から外側空間S1に持ち出した状態で下降させることにより、レール部材13の下端開口部から該レール部材13の中空部18にスライダー14を挿入させることにより摺動機構12を組付けることができ、仮設足場が存在しない建築現場において、作業者が内側空間S2から全ての施工作業を行うことが可能であり、しかも、施工後においても、スラブ鼻先部の清掃や、スラブ鼻先部のタイル補修または塗装工事等のメンテナンスに対応できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は本発明の手摺構成体の第1実施形態を正面側(外側空間)から見た正面図であり、図2(A)は図1に示す腰壁体の左上端の隅部の拡大図、図2(B)は図2(A)のA−A断面図である。図3(A)は図1に示す腰壁体の左下端の隅部の拡大図、図3(B)は図3(A)のB−B断面図である。図4は図1に示す腰壁体の中央中断面図、図5は図4のC−C断面図、図6は図4のD−D断面図である。図7(A)は手摺本体の支柱とブラケットと摺動機構を分解した状態の斜視図、図7(B)はブラケットと摺動機構を組付けた状態の横断面図である。図8及び図9は作用を示す縦断面図である。
【0029】
図1及び図4に示すように、マンションその他の中高層集合住宅等の建造物のバルコニー又は廊下等を構成するスラブ1は、該スラブ1の先端部となる鼻先部2の端面を外側空間S1と内側空間S2の間に位置している。尚、鼻先部2は、図示のような起立壁に限られるものではなく、水平床部であっても良い。
【0030】
手摺構成体は、内側空間S2に設けられる手摺本体3と、該手摺本体3を外側空間S1から被う腰壁体4と、前記腰壁体4を手摺本体3に連結するブラケット5から成る持ち出しタイプの手摺構成体を構成している。
【0031】
手摺本体3は、前記鼻先部2に沿って所定の等間隔で立設された支柱6と、該支柱6の上端に架設された笠木3aを備えており、鼻先部2の下端L1から笠木3aの上端U1までの高さ領域H1を有する。これに対して、腰壁体4は、支柱5の列設方向に連装されており、各腰壁体4の側縁がそれぞれに対応する支柱6に臨むように配置されている。この際、腰壁体4は、下端L2から上端U2までの高さ寸法H2を有し、H2≧H1となるように構成されており、腰壁体4により外側空間S1から鼻先部2と笠木3aの間の全域を被うスラブ隠しタイプの腰壁を構成する。
【0032】
第1実施形態において、腰壁体4は、パネル7の外周縁を額縁状の矩形フレーム8により保持したパネルタイプの腰壁を構成している。パネル体7は、採光性を有するように透明又は半透明の素材により形成されており、アクリルその他の樹脂パネルにより構成しても良いが、合わせガラス又は強化ガラスから選ばれたガラスパネルにより構成するのが好ましい。額縁状の矩形フレーム8は、左右の竪枠11、11の下端部を下枠9により連結され、上端部を上枠10により連結される。
【0033】
前記支柱6と腰壁体4の一方を第1構成部材M1、他方を第2構成部材M2としたとき、第1構成部材M1にブラケット5の基端部5aをボルト・ナット等の固着手段6aにより固着し、該ブラケット5の先端部5bを第2構成部材M2に対して摺動機構12を介して連結している。図例の場合、支柱6が第1構成部材M1を構成し、腰壁体4が第2構成部材M2を構成しているが、これと反対に構成しても良い。
【0034】
前記摺動機構12は、図7に示すように、上下方向に延びるレール部材13と、該レール部材13に摺動自在に嵌挿されたスライダー14を備え、該スライダー14とレール部材13を摺動可能な状態と摺動不能な状態の何れにも自在とする固定解放手段15を設けている。
【0035】
図7(B)に示すように、前記レール部材13は、ブラケット5の先端部5bに臨む当接部16と、該当接部16を分断して上下方向に延びるスリット状のスライド溝17を有する中空の長尺部材により形成されている。これに対して、前記スライダー14は、前記レール部材13の中空部18に内装されると共に前記当接部16に沿って摺動する摺動片19を備えており、図例の場合、摺動片19と当接部16の相互に、摺動自在に嵌合する凹凸条20が形成され、該凹凸条20をガイドとして相互に摺動する。
【0036】
固定解放手段15は、前記摺動片19から突出すると共に前記スライド溝17を挿通して延びる固着用ボルト21と、該固着用ボルト21を挿通させるように前記ブラケット5の先端部5bに設けられた貫通孔22と、該貫通孔22を挿通した固着用ボルト21の挿出端に螺着される固着用ナット23とから構成されている。従って、固着用ナット23を弛緩すると、レール部材13とスライダー14が相互に摺動自在となるように解放される。そして、固着用ナット23を締着すると、ブラケット5の先端部5bと摺動片19により当接部16を強く挟着し、レール部材13とスライダー14を相互に摺動不能に固定する。このように、固定解放手段15は、スライダー14とレール部材13の摺動可能状態と摺動不能状態を自在とするように構成されている。
【0037】
前記固着用ボルト21は、合成樹脂製のスライダー14の成形時にインサートすることにより該スライダー14に埋設しても良いが、図例の場合、六角形等の多角形の頭部21aを備えた固着用ボルト21をアルミニウム等の金属製のスライダー14の摺動片19に開設した挿通孔24に挿通させている。この際、スライダー14には一対のリブ壁25、25が形成されており、両リブ壁25、25の間に頭部21aを保持することにより、該頭部21aを回動不能に固定することが好ましい。
【0038】
第1実施形態は、腰壁体4がパネルタイプの腰壁を構成しており、前記レール部材13により矩形フレーム8の竪枠11を構成している。このため、図7(A)に示すように、竪枠11は、レール部材13の外側に板状壁26を介して平行に延びる外装部27を設け、レール部材13と外装部27の間に、パネル7の側縁を保持するように側方を開口した保持溝28を形成しており、アルミニウム等の押出等により成形された長尺材により構成されている。
【0039】
パネル7の側縁を竪枠11の保持溝28に保持するに際しては、図5及び図6に示すように、保持溝28の内部において、パネル7の側縁の外側をガスケット29aで支持し、内側をコーキング29bで支持する。
【0040】
矩形フレーム8の下枠9は、図3に示すように、パネル7の下縁を保持するように上向きに開口する保持溝30を備え、アルミニウム等の押出等により成形された長尺材により構成されている。この下枠9は、左右の竪枠11、11の下端部の間に架設され、竪枠11のレール部材13及び外装部27の側方からビス31を螺入することにより固着される。この状態で、竪枠11、11におけるレール部材13の中空部18及びスライド溝17と、前記前記外装部27の中空部と、前記保持溝30は、それぞれの下端を開口されており、該開口部を蓋部材32により施蓋される。蓋部材32は、ビス33により固着されるが、レール部材13の下端開口部から中空部18に向けて前記スライダー14が挿入された後に下端開口部を施蓋する下部開閉手段34を構成する。尚、下枠9の底部9a及び蓋部材32には水抜き孔35が開設されている。
【0041】
パネル7の下縁を下枠9の保持溝30に保持するに際しては、該パネル下縁を保持溝30の底部にブロック36を介して下方から支持し、パネル7の下縁の外側をガスケット37aで支持し、内側をコーキング37bで支持する。
【0042】
矩形フレーム8の上枠10は、図2に示すように、パネル7の上縁を保持するように下向きに開口する保持溝38を備え、アルミニウム等の押出等により成形された長尺材により構成されており、左右の竪枠11、11の上端部の間に架設される。上枠10の頂部には天板部39が一体に備えられ、該天板部39の延長部39aにより竪枠11の上端を被い、該延長部39aの上方からビス40を螺入することにより竪枠11、11に固着されている。この状態で、竪枠11、11におけるレール部材13の中空部と、前記外装部27の中空部と、前記保持溝28は、それぞれの上端を開口されており、該開口部を前記延長部39aにより施蓋される。上枠10は、前記ビス40により着脱自在であり、上枠10と共に天板の延長部39aを着脱することによりレール部材13の上端開口から保持溝28に向けてパネル7の側縁を挿入可能とする上部開閉手段41が構成されている。
【0043】
パネル7の上縁を上枠10の保持溝38に保持するに際しては、パネル7の両側縁を竪枠11、11の保持溝28、28に挿入すると共に、下端縁を下枠9の保持溝30に保持させた後、前述のように上枠10をビス40で取付け、該パネル7の上縁の外側をガスケット42aで支持し、内側をコーキング42bで支持する。
【0044】
(第1実施形態の施工方法)
パネルタイプの腰壁を構成する第1実施形態の手摺構成体は、内側空間S2において、スラブ1の鼻先部2に手摺本体3を構築した後、支柱6の両側面に一対のブラケット5、5をボルト・ナット等の固着手段6aにより固着する。この際、一対のブラケット5、5は、上下に間隔をあけて複数組(図例の場合は2組)を設けることが好ましい。図示実施形態の場合、ブラケット5は、支柱6の側面に添設される基端部5aから、該支柱6の前面に沿うようにほぼL形に折曲された折曲部5cを介して外側空間S1に向けて延びるアーム部5dを有し、該アーム部5dから外向きにほぼL形に折曲された先端部5bを有している。そこで、スライダー14に固着用ボルト21を組付けた状態で、該固着用ボルト21を先端部5bの貫通孔22に挿通し、挿出端に固着用ナット23を螺合することにより、スライダー14をブラケット先端部5bに仮止めする。この際、固着用ナット23は完全な締着状態ではなく、固着用ボルト21が脱落しない程度に螺合されている。
【0045】
矩形フレーム8は、内側空間S2において、竪枠11、11に下枠9と上枠10を取付けることにより額縁状に枠組形成される。このとき、下部開閉手段34を構成する蓋部材32は取付けられておらず、竪枠11、11は、レール部材13の中空部18とスライド溝17の下端を開口している。そこで、内側空間S2の側から矩形フレーム8を持ち上げて外側空間S1に持ち出し、下動させながら、ブラケット5に仮止めされたスライダー14を、これに対応する竪枠11のレール部材13の中空部18に下端開口から挿入させ、スライダー14をレール部材13に組付ける。このとき、固着用ボルト21は、スライド溝17に沿って挿入される。所要のスライダー14を全て挿入した後、下部開閉手段34を構成する蓋部材32を取付ける。この状態で、スライダー14とレール部材13が相互に摺動することにより、矩形フレーム8は上下動自在であるが、固着用ナット23を締着することにより、任意の位置で固定される。
【0046】
前記と別の方法として、分解された竪枠11、11のレール部材13をそれぞれが対応するスライダー14に連結し、固着用ナット23により固定した状態で、竪枠11、11に下枠9と上枠10を取付け、額縁状の矩形フレーム8を形成しても良い。何れの方法によっても、矩形フレーム8の枠組み作業は、内側空間S2の側から作業者により行われる。
【0047】
矩形フレーム8を外側空間S1に持ち出した状態でブラケット5に連結した後、図8に示すように、摺動機構12の摺動を介して、該矩形フレーム8の下端L2が鼻先部2の下端L1よりも上方に位置する作業位置P1まで上動させ、固着用ナット23を締着することにより摺動機構12を摺動不能となるように固定し、この状態で、矩形フレーム8にパネル7を挿入する。尚、作業位置P1は、摺動機構12の上下摺動可能な範囲で、作業者が作業し易い任意の位置とすることが可能である。
【0048】
上述のように、上枠10の天板部39の延長部39aにより上部開閉手段41を構成している場合は、該上枠10を取外して上部開閉手段41を開蓋することにより、竪枠11、11の保持溝28の上端を開口させ、上方からパネル7の両側縁を保持溝28、28に挿入しつつ下降させる。パネル7の下縁が下枠9の保持溝30に保持され、ブロック36に支持された後、上枠10を取付け、延長部39aにより構成された上部開閉手段41により竪枠11、11の上端開口部を施蓋する。
【0049】
このようにパネル7を矩形フレーム8に装着する際、下枠9の保持溝30にガスケット37aとコーキング37bが施工され、竪枠11、11の保持溝28にガスケット29aとコーキング29bが施工され、上枠10の保持溝38にガスケット42aとコーキング42bが施工され、このような施工作業も内側空間S2の側から作業者により行われる。
【0050】
上記のようにしてパネル7を矩形フレーム8に装着することによりパネルタイプの腰壁体4を組立てた後、固着用ナット23を緩めて摺動機構12を摺動させることにより、腰壁体4を前記作業位置P1から下動させ、図9(B)に示すように、腰壁体4の下端L2がスラブ1の下端L1にほぼ一致して鼻先部2を被う定位置P2まで下動させた状態で、固着用ナット23を締着することにより摺動機構12を摺動不能に固定する。このようにして、所定数の腰壁体4を連装施工し、作業を完了する。これにより、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの腰壁体4を備えた手摺構成体が構築される。
【0051】
腰壁体4を作業位置P1から下動させ、定位置P2で固定する作業を容易にするために、図6に示すように、レール部材13の所定位置にストッパー部材43を設けることが好ましい。図示実施形態の場合、ストッパー部材43は、レール部材13の背面(手摺本体3に臨む面)にビス44で固着された板部材により構成されており、図4及び図9(B)に示すように、摺動機構12の摺動を介して腰壁体4を下動したとき、該ストッパー部材43がブラケット5の先端部5bの上に当接して載置されることにより、腰壁体4を定位置P2から更に下動することを阻止する。従って、このように定位置P2に停止させた状態で、固着用ナット23を締着することにより摺動機構12を摺動不能に固定することができるので、作業が容易となる。
【0052】
図示実施形態の場合、ブラケット5の先端部5bがストッパー部材43を受け止める固定部材45を構成するが、別の構成を採用することも可能である。例えば、レール部材13に固着されたストッパー部材43によりスライド溝17の一部を閉塞するように構成し、腰壁体4を定位置P2まで下動させたとき、ストッパー部材43がブラケット5の先端部5bの貫通孔22に挿通された固着用ボルト21に当接載置されるように構成しても良い。つまり、この場合は、固着用ボルト21によりストッパー部材43を受け止める固定部材45が構成される。このように、ストッパー部材43を受け止める固定部材45は、ブラケット5の側に固定された部材であれば良い。
【0053】
前述したような図示の実施形態の場合、上部開閉手段41が上枠10に一体形成された天板部39の延長部39aにより構成されており、このため、竪枠11、11の保持溝28、28にパネル7の両側縁を挿入する際に、上枠10の全体を取外す構成を説明した。しかしながら、このような構成に代えて、例えば、図10に示すように、延長部39aを備えた天板部39を上枠10に対して着脱自在に構成し、上枠10を竪枠11、11に取付けたままの状態で、天板部39を取外すことにより竪枠11、11の保持溝28、28を開口させ、該保持溝28、28にパネル7の両側縁を挿入した後に、前記天板部39をビス40で固着するように構成しても良い。
【0054】
上述のように固定解放手段15は、スライダー14とレール部材13の摺動可能状態と摺動不能状態を自在とするように構成されており、手摺構成体の施工を完了した後においても、固着用ナット23を緩めることにより、腰壁体4を定位置P2から作業位置P1まで上動させ、再び固着用ナット23を締着することにより腰壁体4を作業位置P1で固定することが可能である。従って、施工後においても、腰壁体4を簡単容易に上動することができ、パネル7が破損したときの取り替えや、鼻先部2の清掃や、鼻先部2のタイル補修または塗装工事等のメンテナンスに対応できる。
【0055】
(第2実施形態)
図11は本発明の手摺構成体の第2実施形態を正面側(外側空間)から見た正面図であり、図12は手摺本体と腰壁体の連結部を示す横断面図である。図13は手摺本体の支柱とブラケットと摺動機構を分解した状態の斜視図である。
【0056】
第2実施形態は、腰壁体4が上下方向に延びる竪格子4aを横方向に列設した竪格子タイプの腰壁を構成している。手摺本体3の構成は上記第1実施形態と同様である。即ち、内側空間S2に設けられた手摺本体3に対して、該手摺本体3を外側空間S1から被うように腰壁体4が配設され、該腰壁体4と手摺本体3の支柱6を連結するブラケット5が設けられている。この際、腰壁体4は、外側空間S1から鼻先部2と笠木3aの間の全域を被う高さ寸法を有しており、これにより持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの腰壁を構成する。そして、基端部5aを支柱6に固着されたブラケット5の先端部5bと腰壁体4の相互間に摺動機構12を設けている。
【0057】
腰壁体4は、図示実施形態の場合、各竪格子4aの上下端部を上桟部材51と下桟部材52に固着することにより縦縞状の面格子を構成しており、上下桟部材51、52の背後(手摺本体3に臨む側)に竪枠53をビス54、55で固着することにより、該竪枠53を腰壁体4と一体的に構成している。尚、竪枠53は、手摺本体3の支柱6に対応して設けられている。
【0058】
前記摺動機構12は、上下方向に延びるレール部材13と、該レール部材13に摺動自在に嵌挿されるスライダー14を備え、該スライダー14とレール部材13を相互に摺動不能に固定する固定解放手段15を設けており、この点は上記第1実施形態と同様である。そして、第2実施形態において、前記竪枠53それ自体がレール部材13を構成している。尚、摺動機構12の詳細は、上記第1実施形態について説明した図7(B)の構成と同様である。
【0059】
(第2実施形態の施工方法)
竪格子タイプの腰壁を構成する第2実施形態の手摺構成体は、内側空間S2において、スラブ1の鼻先部2に手摺本体3を構築した後、支柱6の両側面に一対のブラケット5、5をボルト・ナット等の固着手段6aにより固着する。この際、一対のブラケット5、5は、上下に間隔をあけて複数組(例えば2組)を設けることが好ましい。図示実施形態の場合、ブラケット5は、支柱6の側面に添設される基端部5aから外側空間S1に向けて延びるアーム部5dを有し、該アーム部5dから外向きにほぼL形に折曲された先端部5bを有している。そこで、スライダー14に固着用ボルト21を組付けた状態で、該固着用ボルト21を先端部5bの貫通孔22に挿通し、挿出端に固着用ナット23を螺合することにより、スライダー14をブラケット先端部5bに仮止めする。この際、固着用ナット23は完全な締着状態ではなく、固着用ボルト21が脱落しない程度に螺合されている。
【0060】
腰壁体4は、工場で予め組立てられ、又は現場における内側空間S2で組立てられ、レール部材13の下端を開口している。そこで、内側空間S2の側から腰壁体4を持ち上げて外側空間S1に持ち出し、下動させながら、ブラケット5に仮止めされたスライダー14を、これに対応するレール部材13の中空部18に下端開口から挿入させ、スライダー14をレール部材13に組付ける。このとき、固着用ボルト21は、スライド溝17に沿って挿入される。所要のスライダー14を全て挿入した後、レール部材13の下端開口を下部開閉手段(図示せず)により閉蓋しても良いが、開口させたままでも良い。この状態で、スライダー14とレール部材13が相互に摺動することにより、腰壁体4は上下動自在であるが、固着用ナット23を締着することにより、任意の位置で固定される。
【0061】
腰壁体4を外側空間S1に持ち出した状態でブラケット5に連結した後、摺動機構12の摺動を介して、腰壁体4を下動させ、上記第1実施形態について説明したのと同様に、腰壁体4の下端L2がスラブ1の下端L1にほぼ一致して鼻先部2を被う定位置P2まで下動させた状態で、固着用ナット23を締着することにより摺動機構12を摺動不能に固定する。これにより、竪格子タイプであって、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの腰壁体4を備えた手摺構成体が構築される。
【0062】
図示省略しているが、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、腰壁体4を定位置P2で固定する作業を容易にするために、レール部材13の所定位置にストッパー部材を設けることが好ましい。
【0063】
(第3実施形態)
図14は本発明の手摺構成体の第3実施形態を正面側(外側空間)から見た正面図であり、図15は手摺本体と腰壁体の連結部を示す横断面図である。図16は手摺本体の支柱とブラケットと摺動機構を分解した状態の斜視図である。
【0064】
第3実施形態は、腰壁体4が水平な横方向に延びる横格子4bを横方向に列設することにより水平ルーバーを形成する横格子タイプの腰壁を構成している。手摺本体3の構成は上記第1実施形態と同様である。即ち、内側空間S2に設けられた手摺本体3に対して、該手摺本体3を外側空間S1から被うように腰壁体4が配設され、該腰壁体4と手摺本体3の支柱6を連結するブラケット5が設けられている。この際、腰壁体4は、外側空間S1から鼻先部2と笠木3aの間の全域を被う高さ寸法を有しており、これにより持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの腰壁を構成する。そして、基端部5aを支柱6に固着されたブラケット5の先端部5bと腰壁体4の相互間に摺動機構12を設けている。
【0065】
腰壁体4は、図示実施形態の場合、各横格子4bを竪枠61に対して交差配置させ、相互にビス等で固着することにより横縞状の面格子を構成している。従って、竪枠61が腰壁体4と一体的に構成されている。尚、竪枠61は、手摺本体3の支柱6に対応して設けられている。
【0066】
前記摺動機構12は、上下方向に延びるレール部材13と、該レール部材13に摺動自在に嵌挿されるスライダー14を備え、該スライダー14とレール部材13を相互に摺動不能に固定する固定解放手段15を設けており、この点は上記第1実施形態と同様である。そして、第3実施形態において、前記竪枠61それ自体がレール部材13を構成している。尚、摺動機構12の詳細は、上記第1実施形態について説明した図7(B)の構成と同様である。
【0067】
(第3実施形態の施工方法)
横格子タイプの腰壁を構成する第3実施形態の手摺構成体は、内側空間S2において、スラブ1の鼻先部2に手摺本体3を構築した後、支柱6の両側面に一対のブラケット5、5をボルト・ナット等の固着手段6aにより固着する。この際、一対のブラケット5、5は、上下に間隔をあけて複数組(例えば2組)を設けることが好ましい。図示実施形態の場合、ブラケット5は、支柱6の側面に添設される基端部5aから外側空間S1に向けて延びるアーム部5dを有し、該アーム部5dから外向きにほぼL形に折曲された先端部5bを有している。そこで、スライダー14に固着用ボルト21を組付けた状態で、該固着用ボルト21を先端部5bの貫通孔22に挿通し、挿出端に固着用ナット23を螺合することにより、スライダー14をブラケット先端部5bに仮止めする。この際、固着用ナット23は完全な締着状態ではなく、固着用ボルト21が脱落しない程度に螺合されている。
【0068】
腰壁体4は、工場で予め組立てられ、又は現場における内側空間S2で組立てられ、レール部材13の下端を開口している。そこで、内側空間S2の側から腰壁体4を持ち上げて外側空間S1に持ち出し、下動させながら、ブラケット5に仮止めされたスライダー14を、これに対応するレール部材13の中空部18に下端開口から挿入させ、スライダー14をレール部材13に組付ける。このとき、固着用ボルト21は、スライド溝17に沿って挿入される。所要のスライダー14を全て挿入した後、レール部材13の下端開口を下部開閉手段(図示せず)により閉蓋しても良いが、開口させたままでも良い。この状態で、スライダー14とレール部材13が相互に摺動することにより、腰壁体4は上下動自在であるが、固着用ナット23を締着することにより、任意の位置で固定される。
【0069】
腰壁体4を外側空間S1に持ち出した状態でブラケット5に連結した後、摺動機構12の摺動を介して、腰壁体4を下動させ、上記第1実施形態について説明したのと同様に、腰壁体4の下端L2がスラブ1の下端L1にほぼ一致して鼻先部2を被う定位置P2まで下動させた状態で、固着用ナット23を締着することにより摺動機構12を摺動不能に固定する。これにより、横格子タイプであって、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの腰壁体4を備えた手摺構成体が構築される。
【0070】
図示省略しているが、第1実施形態と同様に、第3実施形態においても、腰壁体4を定位置P2で固定する作業を容易にするために、レール部材13の所定位置にストッパー部材を設けることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の手摺構成体の第1実施形態を正面側(外側空間)から見た正面図である。
【図2】第1実施形態を示しており、(A)は図1に示す腰壁体の左上端の隅部の拡大図であり、(B)はA−A断面図である。
【図3】第1実施形態を示しており、(A)は図1に示す腰壁体の左下端の隅部の拡大図であり、(B)はB−B断面図である。
【図4】第1実施形態の中央中断面図である。
【図5】図4のC−C断面図である。
【図6】図4のD−D断面図である。
【図7】(A)は手摺本体の支柱とブラケットと摺動機構を分解した状態を示す斜視図であり、(B)はブラケットと摺動機構を組付けた状態を示す横断面図である。
【図8】第1実施形態の施工方法を示しており、矩形フレームにパネルを装着している状態を示す縦断面図である。
【図9】第1実施形態の施工方法を示しており、(A)は矩形フレームにパネルが装着され腰壁体が形成された状態を示す縦断面図であり、(B)は腰壁体を定位置に下動した状態を示す縦断面図である。
【図10】第1実施形態に関して上部開閉手段の別の実施例を示しており、(A)は正面図であり、(B)は縦断面図である。
【図11】本発明の手摺構成体の第2実施形態を正面側(外側空間)から見た正面図である。
【図12】第2実施形態を示しており、手摺本体と腰壁体の連結部を示す横断面図である。
【図13】第2実施形態を示しており、手摺本体の支柱とブラケットと摺動機構を分解した状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の手摺構成体の第3実施形態を正面側(外側空間)から見た正面図である。
【図15】第3実施形態を示しており、手摺本体と腰壁体の連結部を示す横断面図である。
【図16】第3実施形態を示しており、手摺本体の支柱とブラケットと摺動機構を分解した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1 スラブ
2 鼻先部
3 手摺本体
4 腰壁体
5 ブラケット
5a 基端部
5b 先端部
6 支柱
6a 固着手段
7 パネル
8 矩形フレーム
9 下枠
10 上枠
11 竪枠
12 摺動機構
13 レール部材
14 スライダー
15 固定解放手段
16 当接部
17 スライド溝
18 中空部
19 摺動片
21 固着用ボルト
22 貫通孔
23 固着用ナット
27 外装部
28、30、38 保持溝
43 ストッパー部材
45 固定部材
4a 竪格子
53 竪枠
4b 横格子
61 竪枠
S1 外側空間
S2 内側空間
P1 作業位置
P2 定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブ(1)の外側空間(S1)と内側空間(S2)の間に位置する鼻先部(2)に沿って所定間隔で立設された支柱(6)を備える手摺本体(3)と、前記手摺本体(3)を外側空間(S1)から被う腰壁体(4)と、前記腰壁体を手摺本体の支柱に連結するブラケット(5)から成る持ち出しタイプの手摺構成体において、
前記腰壁体(4)は、手摺本体(3)の上端から鼻先部(2)の下端(L1)までの上下領域(H1)を被う高さ寸法(H2)を有しており、該腰壁体(4)の下端部により鼻先部(2)を被った状態で固定される位置を定位置(P2)とするスラブ隠しタイプの腰壁を構成し、
前記支柱(6)と腰壁体(4)の一方を第1構成部材(M1)とし、他方を第2構成部材(M2)として、前記ブラケット(5)の基端部(5a)を第1構成部材(M1)に固着すると共に、該ブラケットの先端部(5b)を第2構成部材(M2)に摺動機構(12)を介して連結し、
前記摺動機構(12)は、上下方向に延びるレール部材(13)と、該レール部材に摺動自在に嵌挿されたスライダー(14)を備え、腰壁体(4)を内側空間(S2)から外側空間(S1)に持ち出した状態で下降させたとき、レール部材(13)の開口部にスライダー(14)を挿入させるように構成されると共に、該摺動機構(12)により、前記腰壁体(4)を前記定位置(P2)と、該腰壁体の下端部を前記鼻先部(2)の上方に位置させる上動位置(P1)との間で、昇降可能となるように構成しており、
前記スライダー(14)とレール部材(13)の摺動可能な状態と摺動不能な状態を自在とする固定解放手段(15)を設けたことを特徴とする持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体。
【請求項2】
前記レール部材(13)は、ブラケット(5)の先端部(5b)に臨む当接部(16)と、該当接部を幅方向に分断して上下方向に延びるスリット状のスライド溝(17)を有する中空の長尺部材により形成され、
前記スライダー(14)は、前記レール部材(13)の中空部(18)に内装されると共に前記当接部(16)に沿って摺動する摺動片(19)を備えており、
前記固定解放手段(15)は、前記摺動片(19)に突設されると共に前記スライド溝(17)を挿通して延びる固着用ボルト(21)と、該固着用ボルトを挿通させるように前記ブラケット(5)の先端部(5b)に設けられた貫通孔(22)と、該貫通孔を挿通した固着用ボルト(21)の挿出端に螺着される固着ナット(23)とから構成され、
前記固着ナット(23)を弛緩することによりレール部材(13)とスライダー(14)を相互に摺動自在に解放し、前記固着ナット(23)を締着することにより前記当接部(16)をスライダー(14)とブラケット(5)の先端部(5b)との間に摺動不能に挟着するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体。
【請求項3】
前記レール部材(13)にストッパー部材(43)を設けており、
前記腰壁体(4)を定位置(P2)まで下動したとき、前記ストッパー部材(43)がブラケット側の固定部材(45)に係止することにより、前記腰壁体(4)が定位置(P)から下動することを阻止するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体。
【請求項4】
前記腰壁体(4)は、透明又は半透明のパネル(7)の外周を額縁状の矩形フレーム(8)により保持されたパネルタイプの腰壁を構成しており、
前記矩形フレーム(8)は、左右の竪枠(11)(11)の上下端を上枠(10)と下枠(9)により連結すると共に、各枠の内側にパネル(7)の周縁を保持する保持溝(28)((38)(30)を形成し、左右の竪枠(11)(11)の保持溝(28)(28)に対して上方からパネル(7)の両側縁を挿入可能とする上部開閉手段(41)を設けており、
前記竪枠(11)が前記レール部材(13)を形成しており、該レール部材(13)の下端に前記スライダー(14)を下方から挿入可能とする下端開口部を設けたことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体。
【請求項5】
前記腰壁体(4)は、上下方向に延びる竪格子(4a)を横方向に列設した竪格子タイプの腰壁を構成し、該腰壁体(4)に竪枠(53)を備えており、
前記竪枠(53)が前記レール部材(13)を形成しており、該レール部材(13)の下端に前記スライダー(14)を下方から挿入可能とする下端開口部を設けたことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体。
【請求項6】
前記腰壁体(4)は、横方向に延びる横格子(4b)を上下方向に列設した横格子タイプの腰壁を構成し、該腰壁体(4)に竪枠(61)を備えており、
前記竪枠(61)が前記レール部材(13)を形成しており、該レール部材(13)の下端に前記スライダー(14)を下方から挿入可能とする下端開口部を設けたことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−144403(P2010−144403A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322251(P2008−322251)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000133629)株式会社ツヅキ (10)
【Fターム(参考)】