説明

持久力向上剤

【課題】競技的な運動や、筋肉労作を繰り返し行う必要のある労働、歩行等の日常の動作を持続するために必要な運動・筋肉労作における持久力を向上させて、日常生活を健康的に過ごすために必要な持久力を付与するための、持久力向上剤、及び持久力向上活性を有する食品素材を提供すること。
【解決手段】オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とを有効成分として含有する持久力向上剤からなる。本発明は、天然物由来で安全な持久力向上剤を提供する。本発明の持久力向上剤は、アルコール摂取前に又はアルコール摂取後に投与するためのものとして、また、継続投与のためのものとして製剤化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とを有効成分として含有する持久力向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、健康志向の高まりはあるものの、交通手段の発達や情報・通信技術の発展に伴う生活スタイルの多角化による運動不足、食生活の欧米化やインスタント食品摂取に伴う栄養バランスの偏重等が原因で、多くの人々にとって運動能力や基礎体力の低下、その後のQOLに重大な悪影響をもたらすことが問題となっている。例えば、運動不足は、持久力の低下や筋力の低下等、運動機能の低下の原因となり、加齢に伴う筋萎縮や持久力、筋力の低下は運動機能を低下させ、寝たきり等の原因となる。また筋萎縮や筋力の低下が原因で起こる日常動作中の転倒、及びそれに伴う骨折は高齢者における主要な寝たきりの原因となっている。このように、日常生活を送る上でも、活動的かつ持続的な活動をすることが時として困難になることになる。
【0003】
運動機能を向上させるには、運動を行うことが適切であるといえるが、忙しさのため十分な運動をする時間がとれない人や、運動してもすぐに疲労してしまい、継続して運動できない人も多いのが現状である。また、適度な運動を実践する、或いはリハビリテーションを実践する等が運動能力低下を防ぐ手段として用いられているが、モチベーションの維持の困難さや怪我の恐れもあり、現実的にはなかなか難しく、より効果的な方法が望まれている。
【0004】
また、近年スポーツと生理機能との関係についての認識も深まっており、このような中で、持久力の向上など様々な場面でスポーツフーズが利用されている。スポーツフーズの中でも、持久力向上作用を目的とするものは、スポーツ選手の成績向上のためのみならず、一般の人が仕事をする上でも持久力維持や、活力あふれる生活を送るためのものとして多く利用されている。
【0005】
以上のように、持久力は競技的な運動、筋肉労作を繰り返し行う必要のある労働、歩行等の日常のすべての動作についても必要不可欠なもので、日常生活を有意義に、健康的に過ごすためには持久力は極めて重要であるといえる。働き盛りの中年世代や、体力低下を伴う高年齢者、スポーツ選手のみならず幅広い年代層にあてはまる問題で、これを解決する天然由来で安全な持久力向上効果を有する食品素材が強く望まれている。
【0006】
かかる観点から、持久力向上作用を有する成分の探索が種々行われている。例えば、霊芝成分(特開平5−123135号公報)や、サンザシ抽出物(特開平8−47381号公報)、カプシノイドの発酵生産物(特開2004−149494号公報)、プロアントシアニジン及びリコペン(特開2003−334022号公報)、ヌートカトン(特開2007−145724号公報)、などが報告されている。
【0007】
一方、各種の生理、薬理機能を有し、人間の生理機能や障害に対する改善作用を有する物質として、オルニチンが知られている。オルニチンは、成長ホルモンを分泌させ筋肉合成を向上する、或いは、基礎代謝を高め肥満を予防する食品素材として、米国および日本を中心に用いられている。また、オルニチンは、欧州では肝臓障害を改善する医薬品としてL−オルニチンL−アスパラギン酸塩の形態で用いられている。オルニチンの薬理的な機能に基いて、各種の症状改善剤が開示されている。例えば、血中アンモニア値の上昇が関与する病的な疲労において、オルニチンまたはその塩を投与することで血中アンモニア値が低下し、病的な疲労を回復するための改善剤が開示されている(特公昭41−8592号公報、特公昭42−7767号公報、特公昭46−3194号公報、Arzneim.-Forsch. (Drug Res.),1970, vol8, p1064-1067)。
【0008】
また、国際公開番号WO2007/040244、国際公開番号WO2007/142286には、仕事や家事、余暇のスポーツ等の日常活動において現れる肉体的な及び精神的な疲労、すなわち、生理的疲労に対して、その疲労自覚症状を改善する組成物、或いは、各種の感染症や基礎疾患に伴う症状、或いは身体的、精神的障害に伴う症状として現れる病的疲労に対してその疲労自覚症状を改善する組成物として、オルニチン又はその塩を有効成分とする疲労自覚症状改善用組成物或いは疲労軽減剤が開示されている。
【0009】
更に、オルニチンのその他の改善剤として、特開2006−342148号公報には、オルニチン又はその塩を有効成分とする寝つき又は寝起き改善用経口剤が、特開2007−31375号公報には、オルニチン又はその塩を有効成分とする肌質改善用経口剤が、特開2007−119348号公報には、オルニチン又はその塩を有効成分とする冷え症改善剤が、特開2008−50352号公報には、オルニチン、リシン、アルギニン、及びシトルリンから選択される塩基性アミノ酸を含む睡眠改善剤が、国際公開番号WO2007/049628には、オルニチン又はその塩を有効成分とする血液流動性改善剤が、それぞれ開示されている。
【0010】
上記のとおり、オルニチンの各種の薬理機能から、各種改善剤が開示されているが、しかし、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とを組み合わせた成分を有効成分とする持久力向上剤は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭41−8592号公報
【特許文献2】特公昭42−7767号公報
【特許文献3】特公昭46−3194号公報
【特許文献4】特開平5−123135号公報
【特許文献5】特開平8−47381号公報
【特許文献6】特開2003−334022号公報
【特許文献7】特開2004−149494号公報
【特許文献8】特開2006−342148号公報
【特許文献9】特開2007−31375号公報
【特許文献10】特開2007−119348号公報
【特許文献11】特開2007−145724号公報
【特許文献12】特開2008−50352号公報
【特許文献13】国際公開番号WO2007/040244
【特許文献14】国際公開番号WO2007/049628
【特許文献15】国際公開番号WO2007/142286
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Arzneim.-Forsch. (Drug Res.),1970, vol8, p1064-1067
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、競技的な運動や、筋肉労作を繰り返し行う必要のある労働、歩行等の日常の動作を持続するために必要な持久力を向上させて、日常生活を健康的に過ごすために必要な持久力を付与するための、天然物由来で安全な持久力向上剤、及び持久力向上活性を有する食品素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、持久力向上活性を有する天然物由来の成分について鋭意、探索する中で、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とが、優れた運動・筋肉労作における持久力向上活性を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とを有効成分として含有する持久力向上剤からなる。
【0015】
本発明において、持久力向上剤は、オルニチン又はその塩を、該オルニチン又はその塩として、0.01〜90重量%含有することが好ましい。更に、好ましくは、0.05〜80重量%、特に好ましくは、0.1〜70重量%含有することが好ましい。本発明の持久力向上剤は、アルコール摂取前に又はアルコール摂取後に投与するためのものとして製剤化することができる。また、継続投与のためのものとして製剤化することができる。更に、本発明の持久力向上剤は、経口投与の形態で製剤化することが好ましい。本発明は、持久力向上剤製造のための、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁との使用を包含する。
【0016】
すなわち、具体的には本発明は、(1)オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とを有効成分として含有する持久力向上剤や、(2)持久力向上剤が、オルニチン又はその塩を、0.01〜90重量%含有することを特徴とする上記(1)記載の持久力向上剤や、(3)持久力向上剤が、アルコール摂取前に又はアルコール摂取後に投与するためのものであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の持久力向上剤や、(4)持久力向上剤が、継続投与のためのものであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の持久力向上剤や、(5)持久力向上剤が、経口投与の形態で製剤化されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の持久力向上剤や、(6)持久力向上剤製造のための、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁との使用からなる
【発明の効果】
【0017】
本発明は、持久力を向上させて、日常生活を健康的に過ごすために必要な持久力を付与するための、天然物由来で安全な持久力向上剤、及び持久力向上活性を有する食品素材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例におけるオルニチンの持久力向上効果についての試験において、オルニチン(オルニチンアスパラギン酸塩)、或いは、オルニチンと麦汁の組み合わせ摂取が運動量(遊泳時間)に与える効果(持久力向上効果)を示す図である。I群、II群、III群、IV群はそれぞれコントロール群、オルニチン投与群、オルニチン+麦汁組み合わせ投与群、麦汁投与群示す。縦軸は遊泳時間を示す。*は、危険率5%未満でI群に対して有意差があることを表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とを有効成分として含有する持久力向上剤からなる。本発明で用いられるオルニチンとしては、L−オルニチン及びD−オルニチンが挙げられる。オルニチンは、化学的に合成する方法、発酵生産する方法、素材から抽出する方法等により取得することができる。また、オルニチンは、市販品を購入することにより取得することもできる。
【0020】
L−オルニチンを化学的に合成する方法としては、例えば、Coll.Czechoslov.Chem.Commun.,24,1993(1959)に記載の方法があげられる。L−オルニチンを発酵生産する方法としては、例えば、特開昭53−24096号公報、特開昭61−119194号公報に記載の方法があげられる。また、L−オルニチン及びD−オルニチンは、シグマ−アルドリッチ社等より購入することもできる。オルニチンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。その他、塩以外の形態として、ペプチドや素材抽出物など、オルニチンが含まれる全ての物質が利用できる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩があげられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられる。
【0021】
アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩があげられる。アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられる。上記のオルニチンの塩のうち、塩酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸塩、アスパラギン酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、又は2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明において、オルニチン又はその塩とともに有効成分として用いられる、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁は、次のようにして、調製及び入手することができる。
【0023】
本発明において麦若しくは麦芽の抽出物は、麦類を水性溶媒で抽出することにより製造されるものである。麦類は、大麦種子、焙煎大麦種子、麦芽、或いはビール粕のようないずれの形態のものでも良い。大麦(Hordeum vulgare)は、同種内の六条大麦、二条大麦いずれでも良い。水性溶媒としては、水、熱水、アルコール、アルコール水溶液等が用いられるが、経済性やその後の利用を考えて水又は熱水が有利に利用できる。抽出の際の水は、水道水、工業用水、井戸水、海洋深層水、ミネラルウオーター、アルカリ水、酸性水、などから適宜選択でき、これらを脱塩や濾過等の処理をしたものでもよい。抽出のエキス収率を高めるため、固液分離の前後にセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ等の酵素製剤を使用することができる。抽出したエキスを回収するための固液分離は、スクリューデカンタ、フィルタープレス、スクリュープレスなどの固液分離装置により行うことができる。これらの装置を単体もしくは二つ以上を組み合わせて行うのが効果的である。本発明の抽出物は、この抽出物を濃縮して、濃縮抽出物として利用することができる。濃縮方法としては、蒸発濃縮、膜濃縮、凍結濃縮等公知の方法を用いることができる。
【0024】
本発明において、麦芽飲料とは、麦汁を主体とする飲料を意味し、炭酸ガス等により清涼感が付与された麦芽清涼飲料も含まれるものとする。
【0025】
本発明において、麦汁は、麦芽粉砕物と水との混合物を糖化して得られたものを使用することができる。麦芽粉砕物と水の混合物には副原料を添加してもよい。副原料としては、例えば、米、コーンスターチ、コーングリッツ、糖類(例えば、果糖ブドウ糖液糖などの液糖)、食物繊維などが挙げられる。副原料が糖類の場合には麦汁を糖化ないし濾過した後に添加してもよい。また、水はその全量を麦芽粉砕物と混合しても、或いはその一部を麦芽粉砕物と混合し、残りを全部または分割して糖化後の麦汁に添加してもよい。また、後述するように麦芽粉砕物と水との混合物を糖化して得られたものにホップを加え、煮沸することで麦汁にホップの風味・香りを付与することができる。
【0026】
麦汁を構成する麦芽粉砕物、副原料および水の割合は適宜決定することができるが、最終的な麦汁の糖度が3〜20%、好ましくは、7〜14%となるように麦芽粉砕物、副原料および水の割合を決定してもよい。麦芽粉砕物、副原料および水の割合は、例えば、麦芽粉砕物100重量部に対して、副原料0〜100重量部、水400〜2000重量部、好ましくは、副原料0〜30重量部、水600〜1300重量部とすることができる。副原料が果糖ブドウ糖液糖および食物繊維の場合には、麦芽粉砕物、副原料および水の割合は、例えば、麦芽粉砕物100重量部に対して、副原料10〜40重量部、水800〜1500重量部、好ましくは、副原料20〜30重量部、水1000〜1200重量部とすることができる。この場合、果糖ブドウ糖液糖と食物繊維の重量比(固形分)は1:0.1〜10とすることができる。
【0027】
本発明の持久力向上剤には、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁との有効成分に加え、適宜、各用途に適した添加剤を含有させることができる。該添加剤としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、リジン、グルタミン、アラニン、セリン、グリシン、システイン、スレオニン等のアミノ酸等が挙げられる。
【0028】
本発明の持久力向上剤には、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁との有効成分に加え、適宜、その他の成分を含有させることでより持久力向上に適した組成物にできる。該その他の成分としては、例えば、麦由来の成分、麦芽、ホップ、ホップエキス、生茶葉抽出物、玄米、はと麦、ハブ茶、とうもろこし、コラーゲンペプチド、飲用海洋深層水、乾燥ローズヒップ、黒豆、黒胡麻、キダチアロエ、ゆずの皮、ビタミン、ビタミンC、香辛料抽出物、紅茶、カフェイン、果糖ぶどう糖液糖、食塩、シトルリン、有機酸、クエン酸、クエン酸Na、乳酸Ca、ピロリン酸鉄、グルコン酸Ca、塩化K、塩化Mg、果糖ぶどう糖液糖、砂糖、酸味料、ウコン、発酵ウコンエキス等があげられる。
【0029】
本発明の持久力向上剤は、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁を含有し、必要に応じて薬理学的に許容される一種または二種以上の担体、さらに必要に応じて他の治療のための有効成分を含有していてもよい。
【0030】
本発明の持久力向上剤は、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とを、必要に応じ担体等と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造することができる。製剤の投与形態は、経口投与が好ましい。投与する剤形としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、縣濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤等の経口剤、注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の非経口剤のいずれでもよいが、経口剤として好適に用いられる。
【0031】
本発明の持久力向上剤を製剤化する際には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。経口投与に適当な、例えばシロップ剤等の液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類などを添加して、製剤化することができる。
【0032】
また、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤、顆粒剤等の場合には、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して、製剤化することができる。
【0033】
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
【0034】
経口投与に適当な製剤は、そのまま、又は、例えばビール、発酵アルコール飲料、ビール風味麦芽飲料(「ビール風味」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りをいう。)、ジュース類、清涼飲料水、茶類、乳酸菌飲料、発酵乳、冷菓、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂乳等の乳製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉製品、蒲鉾、竹輪、さつま揚げ等の魚肉練り製品、だし巻き、卵豆腐等の卵製品、クッキー、ゼリー、チューインガム、キャンディー、スナック菓子等の菓子類、パン類、麺類、漬物類、燻製品、干物、佃煮、塩蔵品、スープ類、調味料等、粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態として持久力向上剤用の健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等の飲食品として用いてもよい。
【0035】
本発明の持久力向上剤中のオルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁との濃度は、製剤の種類、当該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、オルニチン又はその塩として、通常は0.01〜90重量%、好ましくは0.05〜80重量%、特に好ましくは0.1〜70重量%の濃度であることが好ましい。また、麦汁等の濃度としては、通常は0.5〜100%、好ましくは5〜100%、特に好ましくは25%〜100%である。
【0036】
本発明の製剤の投与量及び投与回数は、投与形態、投与される者の年齢、体重等に応じて異なるが、成人に対し一日あたりオルニチンまたはその塩として、通常は5mg〜30g、好ましくは50mg〜10g、特に好ましくは200mg〜3g、更に好ましくは400mg〜1gとなるように、また、麦汁として、通常は1ml〜10l、好ましくは3.5ml〜5l、特に好ましくは35ml〜2.5l、更に、好ましくは80ml〜700mlとなるように、1日に1回ないし数回に分けて投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1日間〜3ヶ月間である。
【0037】
なお、本発明の製剤は、ヒトだけでなく、ヒト以外の動物(以下、非ヒト動物と略す)に対しても使用することができる。非ヒト動物としては、ほ乳類、は虫類、両生類、魚類等、ヒト以外の動物をあげることができる。
【0038】
本発明の持久力向上剤を、非ヒト動物に投与する場合のオルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁との投与量及び投与回数は、投与形態、動物の年齢、種類等により異なるが、体重1Kg1日当たり、オルニチンまたはその塩として、通常は5mg〜3000mg、好ましくは10mg〜1000mg、特に好ましくは20mg〜300mgとなるように、また、麦汁として、通常は0.01ml〜1l、好ましくは0.02ml〜200ml、特に好ましくは0.05ml〜40mlとなるように、一日一回ないし数回投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1日間〜3ケ月間である。本発明の持久力向上剤を医薬又は飲食品の形態で投与又は摂取することにより持久力を向上させることができる。
【0039】
本発明において、「持久力」とは、運動・筋肉労作における持久力を意味し、ある一定の作用・機能、例えば運動状態を継続して行うことができる能力をいい、「持久力向上作用」とは、運動・筋肉労作における持久力向上作用を意味し、その継続してできる能力が増強される作用、例えば、具体的には継続時間が延びることにより確認することができる。例えば、「長時間水泳をし続けることができる」「長く仕事をしていても疲れない」「毎日の生活で疲れが残らない」等を挙げることができる。本発明における持久力向上作用は、例えば後述する実施例のように、マウスを用いた遊泳疲労試験などにより評価することができる。
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
[オルニチンの持久力向上効果についての調査]
<試験方法>
日本エスエルシー株式会社より購入したddYマウス(オス)5週齢90匹を標準食(AIN93G)で1週間馴化した後、体重の9%の重りをつけて水温30±1℃で強制遊泳させた。飼育条件は明期8:00−20:00、暗期20:00−8:00とし、遊泳実験は全て16時間の絶食の後に実施した。遊泳時間が同程度の個体を40匹選別し、遊泳時間及び体重が群間で均一になるように10匹ずつ以下の通り群分けをした。
【0042】
I群(コントロール群);II群(オルニチン摂取群);III群(オルニチン+麦汁摂取群);IV群(麦汁摂取群)。I及びIV群は、AIN93Gで、II及びIII群はAIN93Gに0.5%のオルニチン(1%オルニチンアスパラギン酸塩)を混合し、I及びII群は水で、III及びIV群は麦汁を25%混合した水で、2週間飼育した。試験前日夜に全群に体重1kg当たり4gのエタノールを投与した。翌日午前中に上述した強制遊泳試験を実施し疲労困憊までの遊泳時間を測定した。疲労困憊の基準は、マウスの鼻が5秒間水中に沈んだ時点とした。
【0043】
<結果>
その結果、I群と比較して、II及びIV群で有意な遊泳時間の延長が観察されないのに対し、III群で有意に遊泳時間が延長することが分かった(図1)。遊泳時間は持久力を示していることから、本試験結果から、特に、オルニチンと麦汁を組み合わせて摂取することにより、持久力が顕著に向上することが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、日常生活を健康的に過ごすために必要な持久力を付与するための、天然物由来で安全な持久力向上剤、及び持久力向上活性を有する食品素材を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁とを有効成分として含有する持久力向上剤。
【請求項2】
持久力向上剤が、オルニチン又はその塩を、0.01〜90重量%含有することを特徴とする請求項1記載の持久力向上剤。
【請求項3】
持久力向上剤が、アルコール摂取前に又はアルコール摂取後に投与するためのものであることを特徴とする請求項1又は2記載の持久力向上剤。
【請求項4】
持久力向上剤が、継続投与のためのものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の持久力向上剤。
【請求項5】
持久力向上剤が、経口投与の形態で製剤化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の持久力向上剤。
【請求項6】
持久力向上剤製造のための、オルニチン又はその塩と、麦若しくは麦芽抽出物又は麦芽飲料製造工程で調製される麦汁との使用。


【図1】
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【公開番号】特開2011−132174(P2011−132174A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293162(P2009−293162)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【出願人】(308032666)協和発酵バイオ株式会社 (41)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【出願人】(594197388)小岩井乳業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】