説明

持続性インスリン誘導体及びその方法

【課題】本発明は、インスリン分子及び血液成分に共有結合する反応基を含むインスリン誘導体の提供。
【解決手段】当該インスリン分子は、ヒト天然インスリン分子であり、そして当該反応基は、Gly A1、Phe B1、及びLys B29の位置から選ばれる位置でインスリン分子のアミノ酸と結合される誘導体による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
(a) 本発明の分野
[0001] 本発明は、持続性インスリン誘導体に関する。より特異的に、当該インスリン誘導体は、インスリン分子及びそれに結合される反応基を含み、当該反応基は、血液成分と共有結合するためのものであり、それゆえ持続性インスリン誘導体を作成する。
【背景技術】
【0002】
(b) 従来技術の記載
[0002] インスリンは、細胞表面受容体に結合して、血液からのグルコース吸収を高める出来事のカスケードを開始させる。正常に機能しないインスリンのレベルは、I型糖尿病及びII型糖尿病などの重篤な障害を導く。I型糖尿病は、生命を脅かす疾患であり、患者は、生存するために複数回のインスリンの自己投与を毎日行わなければならない。II型糖尿病はまた重篤な内科疾患であり、II型糖尿病では、インスリンの内部レベルに対して患者により発達された抵抗性のため、インスリンの内部レベルは、血糖の正しいレベルをもはや維持できなくなる。長期間の使用の開始を低減するために、インスリンでの治療は、ライフスタイルの変化の失敗又は従来の血糖制御薬剤が無効になったときに必要となる。
【0003】
[0003] 血糖疾患のコントロールの成功は、治療に対する患者の服薬遵守と密接に関わっており、そして必要とされる注射の頻度を減らすことが望まれている。そうするため、新たな持続性インスリン誘導体を提供すること高く望まれている。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本発明に従って、インスリン分子と血液成分に共有結合するための反応基を含むインスリン誘導体が提供される。
【0005】
[0005] 本発明の好ましい実施態様では、当該インスリン分子は以下の式I:
【化1】

で表される分子であり、そして反応基は、Gly A1、Phe B1、及びLys B29の位置から選ばれる位置でインスリンのアミノ酸に結合される。
【0006】
[0007] 本発明の好ましい実施態様では、選択された反応基は、マイケル・アクセプター(α,β不飽和カルボニル部分)、スクシンイミジル含有基、及びマレイミド含有基、より好ましくはMPA(3-マレイミドプロピオン酸)からなる群由来である。
【0007】
[0008] 本発明の好ましい実施態様では、反応基は、インスリン分子のアミノ酸に、リンカー、例えば非限定的に、(2アミノ)エトキシ酢酸(AEA)、エチレンジアミン(EDA)、アミノ・エトキシ・エトキシ・スクシニミン酸(amino ethoxy ethoxy succinimic acid)(AEES)、AEES-AEES、2-[2-(2-アミノ)エトキシ)]エトキシ酢酸(AEEA)、AEEA-AEEA、-NH2- (CH2n-COOH、[式中、nは1〜20の整数である]、及び酸素、窒素、又は硫黄原子が取り込まれうる飽和又は不飽和アルキル鎖(C1-C10)モチーフ、例えば非限定的にグリシン、3-アミノプロピオン酸(APA)、8−アミノオクタン酸(OA)、及び4-アミノ安息香酸(AphA)、並びにそれらの組合せを介してインスリン分子のアミノ酸に結合される。
【0008】
[0009] 本発明の好ましい実施態様では、血液成分は血液タンパク質であり、より好ましくは血清アルブミンである。
【0009】
[0010] 本発明に従って、本発明のインスリン誘導体と血液成分を含むインスリン複合体が提供され、ここで当該反応基及び当該血液成分は、当該反応基と当該血液成分との間で形成された共有結合を介して複合体化される。当該複合体は、インビボ又はイクスビボで形成される。
【0010】
[0011] 本発明に従って、本発明のインスリン誘導体を、医薬として許容される担体と供に含む医薬組成物が提供される。
【0011】
[0012] 本発明に従って、本発明のインスリン複合体を、医薬として許容される担体と供に含む医薬組成物が提供される。
【0012】
[0013] 本発明に従って、血糖関連疾患又は障害を患う対象において、血糖関連疾患又は障害を治療する方法であって、本発明のインスリン誘導体、本発明の複合体、及び本発明の医薬組成物の少なくとも1を、当該対象に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0013】
[0014] 本明細書中の全ての参考文献は、援用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】[0015] 図1は、天然ヒトインスリンから派生された実施例I〜実施例VIIIを示す。
【図2】[0016] 図2は、wistarラットの肝臓膜上のインスリン、インスリン誘導体、及びインスリン誘導体の複合体の競合的結合を示す。
【図3】[0017] 図3は、wistarラットの肝臓膜上のインスリン、インスリン誘導体、及びインスリン誘導体の複合体の競合的結合を示す。
【図4】[0018] 図4A、4B、4C、5A、5B、6A、6Bは、3T3L1脂肪細胞分化段階を示す。
【図5】[0018] 図4A、4B、4C、5A、5B、6A、6Bは、3T3L1脂肪細胞分化段階を示す。
【図6】[0018] 図4A、4B、4C、5A、5B、6A、6Bは、3T3L1脂肪細胞分化段階を示す。
【図7】[0019] 図7は、インスリン、実施例III、及びIV、並びにそれらの対応する複合体についての、3T3-L1脂肪細胞におけるグルコース輸送を示す。
【図8】[0020] 図8は、インスリン、実施例III、及びVI、並びにそれらの対応する複合体についてのwisterラット脂肪細胞由来の副睾丸脂肪細胞におけるグルコース輸送を示す。
【図9】[0021] 図9は、インスリン3.6mg/kgで処置された動物における時間関数で、血糖の差分を示す。
【図10】[0022] 図10は、実施例I、II、IIIのインスリン誘導体3.6mg/kgで処置された動物における時間関数で、血糖の差分を示す。
【図11】[0023] 図11は、実施例I、II、IIIのインスリン誘導体17.9mg/kgで処置された動物における時間関数で、血糖の差分を示す。
【図12】[0024] 図12は、インスリン及び実施例Iのインスリン誘導体3.6mg/kgで、並びに実施例Iのインスリン誘導体17.9mg/kgで処置された動物における時間関数で、血糖の差分を示す。
【図13】[0025] 図13は、インスリン及び実施例IIのインスリン誘導体3.6mg/kgで、並びに実施例IIのインスリン誘導体17.9mg/kgで処置された動物における時間関数で、血糖の差分を示す。
【図14】[0026] 図14は、インスリン及び実施例IIIのインスリン誘導体3.6mg/kgで、並びに実施例IIIのインスリン誘導体17.9mg/kgで処置された動物における時間関数で、血糖の差分を示す。
【図15】[0027] 図15は、皮下注射及び静脈注射された未変性のインスリンの薬物動態プロファイルを示す。
【図16】[0028] 図16は、皮下注射及び静脈注射された実施例IIIの複合体のインスリンの薬物動態プロファイルを示す。
【図17】[0029] 図17は、皮下注射及び静脈注射された実施例IIIの薬物動態プロファイルを示す。
【図18】[0030] 図18は、皮下注射されたインスリン、実施例III、及び実施例IIIの複合体の薬物動態プロファイルの比較を示す。
【図19】[0031] 図19は、静脈注射されたインスリン、実施例III、及び実施例IIIの複合体の薬物動態プロファイルの比較を示す。
【図20】[0032] 図20は、ストレプトゾシン誘発糖尿病ラットにおいて、インスリン、実施例I〜IV、及び溶媒の皮下注射後の薬力学プロファイルの比較を示す。
【図21】[0033] 図21は、ストレプトゾシン誘発糖尿病ラットにおいて、インスリン、実施例I〜IVの複合体、及び溶媒の皮下注射後の比較の薬力学プロファイルを示す。
【図22】[0034] 図22は、実施例IIIの繰り返しの皮下注射の比較の薬力学プロファイル(1日目対6日目対12日目対コントロール)を示す。そして
【図23】[0035] 図23は、実施例IIIの複合体の繰り返された皮下注射の比較の薬理学プロファイル(1日目対6日目対12日目対コントロール)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0036] 本発明に従って、持続性インスリン誘導体が提供される。より特異的に、当該インスリン誘導体は、インスリン分子及びそれに結合する反応基を含み、当該反応基は、血液成分に共有結合するためのものである。本出願では、インスリン反応基−血液成分の複合体の形成をもたらす共有結合は、本発明のインスリン誘導体を投与した際に、インビボで形成されうるということが意図される。当該共有結合が、本発明のインスリン誘導体を、組み換えアルブミンであるアルブミンソース又は対象の血漿から抽出されたアルブミンソースと接触することにより、又は他の適切なソースのいずれかから提供することによりイクスビボで生じうるということも意図される。ここで当該ソースは、当業者により知られている。
【0016】
[0037] インスリン分子は、未変性のヒトインスリン(例えば、下記式Iにおける未変性ヒトインスリンの配列を参照のこと)であるか、又はそのアナログ、例えばアミノ酸置換(1又は複数)、アミノ酸欠失(1又は複数)、又はアミノ酸添加(1又は複数)を有するインスリン分子などでありうる。以下は、本発明に従って使用されうるインスリン・アナログの例として記載されており、本アナログを制限する意図はない:Aventis Pharmaceuticals Inc.,のランタス(商標)と呼ばれるインスリン・グラルギン(当該薬剤はA21の位置で置換されたグリセリンを有し、そしてB鎖のC−末端において加えられた2のアルギニン残基を有する)、Novo Nordisk A/Sのレべミール(商標)と呼ばれるインスリン・デテミール(当該薬剤は、B30の位置でスレオニンが欠失され、そしてリジンB29の側鎖上に加えた未変性ヒト・ヒトインスリンである);Eli lillyのヒューマログ(商標)と呼ばれるインスリン・リスプロ(当該薬剤は、Lys B28、ProB29ヒトインスリンである);Novo Nordisk A/S、ノボログ(商標)と呼ばれるインスリン・アスパート(該薬剤はAsp B28ヒト・インスリンである);並びにAventisのアピドラ(Apidra)(商標)と呼ばれるインスリン・グルリシン(Glulisine)(当該薬剤は、Lys B3、Glu B29ヒト・インスリンである)である。
【化2】

【0017】
[0038] 反応基は、インスリン分子又はそのアナログ上の異なる官能基に結合されうる。好ましくは、当該反応基は、インスリン分子の利用できるアミノ基、例えばA鎖及びB鎖のN−末端アミノ酸のαアミノ基、又はLys B29のε−アミノ基に結合される。本発明に従って、置換された及び/又は加えられたアミノ酸(1又は複数)を含むインスリン・アナログは、反応基を結合するためのさらなるアミノ基を含んでもよいか;或いは反応基が結合するために適した他の官能基を含みうる。インビボ又はイクスビボで、血液成分を共有結合することができる好ましい反応基は、マイケル・アクセプター(α,β、不飽和カルボニル部分)スクシンイミジル含有基及びマレイミド含有基である。より好ましい反応基は、マレイミド含有基であり、そしてより得意的にMPA(3−マレイミド・プロピオン酸)である。
【0018】
[0039] 場合により、反応基は、リンカーを介してインスリン分子に結合される。当該リンカーは、好ましくは、ヒドロキシエチル・モチーフ、例えば(2−アミノ)エトキシ酢酸(AEA)、エチレンジアミン(EDA)、アミノ・エトキシ・エトキシ・スクシニミン酸(AEES)、2−[2−(2−アミノ)エトキシ)]エトキシ・酢酸(AEEA)、AEEA−AEEA、−NH2−(CH2)n−COOH[式中、nは1〜20の整数である]、飽和又は不飽和の1以上のアルキル鎖(C1−C10)であって、酸素、窒素、又は硫黄原子を含みうるアルキル鎖モチーフ、例えばグリシン、3−アミノプロピオン酸(APA)、8−アミノオクタン酸(OA)、4−アミノ安息香酸(AphA)からなる群から選ばれる。リンカーの組合せの例は、非限定的にAEEA−EDA、AEEA−AEEA、AEA−AEEA、AEES−AEESなどを含む。好ましいリンカーは、8−アミノオクタン酸(AOA)であるか、又は反応基(MPA)でリンカーを使用しないものである。当業者は、どのタイプのリンカーが、本発明の目的のために適しているかを容易に知るであろう。
【0019】
[0040] 本発明はまた、インスリン複合体に関する。当該複合体は、その反応基が、共有結合を形成するために、インビボ又はイクスビボで血液成分と反応されたインスリン誘導体を含む。それゆえ、当該複合体は、インビボにおいて、インスリン誘導体の投与により形成されるか、又はイクスビボにおいて、インスリン誘導体を血液溶液又は精製血液成分と、共有結合の形成を許容するイクスビボの条件下で接触することにより形成されうる。精製血液成分は、血液成分からの抽出及び精製により提供されうるか、又は組み替え技術により産生されうる。好ましい血液成分は、血液タンパク質であり、より好ましくは血清アルブミンである。
【0020】
[0041] 本発明はさらに、血糖関連疾患又は障害の治療方法であって、インスリン誘導体又はインスリン複合体の投与を含む方法に関する。血糖関連疾患又は障害は、I型糖尿病及びII型糖尿病、並びに妊娠性糖尿病を含む。また、嚢胞性線維症、多嚢胞性卵巣症候群、膵炎及び他の膵臓関連疾患もまた、本発明のインスリン誘導体又はインスリン複合体を投与することにより治療されうる。インスリンはまた、成長因子として知られており、そしてそれゆえ、本発明のインスリン誘導体又はインスリン複合体は、傷の治癒及び他の関連する適応のための局所投与に有用でありうる。
【0021】
[0042] 以下の実施例は、本発明の範囲を制限する目的ではなく、上記される発明をさらに例示する目的である。
【実施例】
【0022】
[0043] 図1は、インスリン分子並びに以下の実施例にそって言及されるGly A1、Phe B1、及びLys B29部位を示す。
【0023】
実施例I
(Gly A1)−MPA −インスリンの合成
[0044] インスリン(100mg)を、DMF(ジメチルホルムアミド)(20ml)及びTFA(100μl)中に溶解した。当該溶液に、NMM(4−メチルモルホリン、200μl)及びMPA−OSu(N−スクシンイミジル・3マレイミドプロパノエート、9.2mg2.5当量)を加え、そして当該反応液を2時間攪拌した。水を加えることにより反応を止め、そしてAcOH(酢酸)でpH4に調節した。アセトニトリルを加えて、沈殿を溶解し、そして水/アセトニトリル(3:1)の全体の体積は20mlであった。当該溶液を半調製HPLC中に注入した。Phenomenex Luna10mフェニル−ヘキシル21mm×250mmカラムを、水性TFA溶液(水中に0.1%TFA、溶媒A)及びアセトニトリルTFA溶液(アセトニトリル中に0.1%TFA、溶媒B)で平衡化した。27%から31%までのBの勾配を120分かけて流すことにより、9.5ml/分で溶出を達成した。ペプチドを含む分画を、214及び254nmでUV吸収により検出した。分画を9.5mlの一定分量で回収した。所望の産物プロファイルを含む分画を、直接LC/MSに注入後に質量検出により同定した。Rt=36〜46分で純粋な分画を回収し、混合し、そして凍結乾燥して、23mgの回収されたインスリンと供に白色粉末(40mg)を与えた。
【0024】
[0045] 計算された質量は、5958.5g/molであり、そしてLC−MSにより計測された質量は、5958.0g/molである。
【0025】
[0046] 表1は、アミノ酸配列分析(フェニルイソチオシアネートを使用するエドマン分解)を示し、当該分析は、A鎖のN末端がブロックされ、そしてN-末端(フェニルアラニン)が、いまだに遊離していたということを確かめるために行われた。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例II
(Phe B1)-MPA-インスリンの合成
[0047] インスリン(100mg)をDMSO(ジメチルスルホキシド)(4ml)及びEt3N(トリエチルアミン)(100μl)中に、超音波処理して溶解した。当該溶液に、Boc2O(ジ-tert-ブチル・ジカルボネート)(9.3mg、2.5当量)を加え、そして当該反応液を室温で30分間攪拌した。反応溶液を、AcOHでpH4に調節した。当該溶液を、半調製HPLC中に注入した。Phenomenex Luna10mフェニル−ヘキシル21mm×250mmカラムを、水性TFA溶液(水中に0.1%TFA、溶媒A)及びアセトニトリルTFA溶液(アセトニトリル中に0.1%TFA、溶媒B)で平衡化した。27%から40%までのBの勾配を120分かけて流すことにより、9.5ml/分で溶出を達成した。ペプチドを含む分画を、214及び254nmでUV吸収により検出した。分画を9.5mlの一定分量に回収した。所望の産物プロファイルを含む分画を、直接LC/MSに注入後に質量検出により同定した。3の産物(Boc-インスリン、Gly A1Lys B29-BisBoc-インスリン、及びTrisBoc-インスリン)を単離し、そして所望の(Gly A1 Lys B29)-BisBoc-インスリンを混合し、そして凍結乾燥して白色粉末を与えた(72mg)。
【0028】
[0048] DMF(3ml)中の(Gly A1 Lys B29)-BisBoc-インスリン(51mg) を、MPA-OSu(36mg)と、Et3N(30μl)の存在下で反応させた。当該反応液を2時間室温で攪拌した。DMFを減圧下で蒸発させた。当該残基を、TFA(2ml)で10分間処理し、そして次にTFAを蒸発させた。粗製生成物を水/アセトニトリル(3;1)中で溶解し、そして当該溶液を、半調製HPLC中に注入した。Phenomenex Luna10mフェニル−ヘキシル21mm×250mmカラムを、水性TFA溶液(水中に0.1%TFA、溶媒A)及びアセトニトリルTFA溶液(CH3CN中に0.1%TFA、溶媒B)で平衡化した。27%から32%までのBの勾配を120分かけて流すことにより、9.5ml/分で溶出を達成した。ペプチドを含む分画を、214及び254nmでUV吸収により検出した。分画を9.5mlの一定分量に回収した。所望の産物プロファイルを含む分画を、直接LC/MSに注入後に質量検出により同定した。純粋な分画を混合し、そして凍結乾燥して、白色粉末を与えた(29mg)。
【0029】
[0049] 計算された質量は、5958.5g/molであり、そしてLC-MSにより計測された質量は、5958.4g/molであった。
【0030】
[0050] アミノ酸配列分析(フェニルイソチオシアネートを使用するエドマン分解)を使用して、B鎖のN末端がブロックされ、そしてA鎖のN末端(グリシン)がいまだに遊離していたことを確認した(表1参照のこと)。
【0031】
実施例III
(B1)-MPA-OA-インスリンの合成
[0051] (Gly A1 Lys B29)−BisBoc−インスリン(39mg)を含むDMF(3mL)及びEt3N(30μL)を、MPA−OA−OSu([N−スクシンイミジル8−N−(3−マレイミドプロパニルカルボニル)アミノオクタノエート]25mg)と4時間反応させた。DMFを蒸発させ、そして残渣をTFAで10分間処置した。TFAを蒸発させた後、残渣を水/アセトニトリル(1:3)中に溶解した。当該溶液を半調製HPLCに注入した。Phenomenex Luna10mフェニル−ヘキシル21mm×250mmカラムを、水性TFA溶液(水中に0.1%TFA、溶媒A)及びアセトニトリルTFA溶液(アセトニトリル中に0.1%TFA、溶媒B)で平衡化した。27%から36%までのBの勾配を120分かけて流すことにより、9.5ml/分で溶出を達成した。ペプチドを含む分画を、214及び254nmでUV吸収により検出した。分画を9.5mlの一定分量に回収した。所望の産物プロファイルを含む分画を、直接LC/MSに注入後に質量検出により同定した。純粋な分画を混合し、そして凍結乾燥して、白色粉末(21mg)を与えた。
【0032】
[0052] 計算されたMassは6099.5g/molであり、そしてLC-MSにより計測された質量は、6099.6g/molである。
【0033】
実施例IV
(Lys B29)-MPA-インスリンの合成
[0053] インスリン74mgをDMSO(2ml)及びAcOH(46μL)中に溶解した。当該溶液にBoc2O6.9mg、2.5当量)を加え、そして反応液を5時間室温で攪拌した。水(15ml)及びアセトニトリル(5ml)を加え、そして反応液を半調製HPLCカラム(C18フェニル-へキシル)に、流速9.5ml/分、そして勾配を27%〜40%で120分間で注入した。43分での分画を混合し、そして凍結乾燥して(Gly A1 Phe B1)−Boc2−インスリン(30mg)を与えた。
【0034】
[0054] (Gly A1 Phe B1)−Boc2−インスリン(30mg)を含むDMF(2mL)及びNMM(4−メチルモルフォリン、100μL)をMPA−OSu(10mg)と60分間反応させた。DMFを蒸発させ、そして残渣をTFAで10分間処理した。該残渣を水/アセトニトリル(3:1)中で溶解し、そして溶液を半調製HPLCに注入した。Phenomenex Luna10mフェニル−ヘキシル21mm×250mmカラムを、水性TFA溶液(水中に0.1%TFA、溶媒A)及びアセトニトリルTFA溶液(アセトニトリル中に0.1%TFA、溶媒B)で平衡化した。27%から32%までのBの勾配を120分かけて流すことにより、9.5ml/分で溶出を達成した。ペプチドを含む分画を、214及び254nmでUV吸収により検出した。分画を9.5mlの一定分量に回収した。所望の産物プロファイルを含む分画を、直接LC/MSに注入後に質量検出により同定した。純粋な分各を混合し、そして凍結乾燥して、白色粉末を与えた(22.2mg)。
【0035】
[0055] 計算された質量は、5958.5g/molであり、そしてLC-MSにより計測された質量は、5958.0g/molである。
【0036】
[0056] アミノ酸配列分析(フェニルイソチオシアネートを使用するエドマン分解)を使用して、B鎖N末端(フェニルアラニン)及びA鎖N末端(グリシン)の両方が、遊離であることを確認した(表1を参照のこと)。
【0037】
実施例V
MPA(AEES)2-COOHリンカーの合成
[0057] フラッシュカラム・クロマトグラフィーをBiotage(商標)"40iフラッシュ・クロマトグラフィー”モジュラー・システムを使用して行った。半調製HPLC精製を、Phenomex luna(RP-18、10μフェニル-へキシル250×21.2mm)カラムを使用してWaters”Breeze”システム1500シリーズにおいて、9.5ml/分の移動層流速で行った。Phenomex luna(RP-18、10μフェニル-へキシル250×50.0mm)カラムを、50ml/分移動層流速で使用して、Glison690システムを調製スケールの精製に使用した。水(0.1%TFA)中のアセトニトリル(CH3CN)(0.1%TFA)の勾配を、各化合物の合成方法において指示された詳細に基づいて使用した。LC−MSを、ES1エレクトロスプレー・ソースを備えるAglient1100シリーズLC-MSDシングル4極子質量分析計を使用して行った。
【0038】
【化3】

【0039】
実施例VI
(Phe B1)−MPA−(AEES)2−インスリン
【0040】
[0058] メタノール(150ml)中の2-(2-アミノエトキシ)エタノール(50.0g)を、Boc2O(93.4g)と30分間反応させた。メタノールを吸引下で蒸発させ、そして残渣を酢酸エチル中に溶解し、水、塩類溶液で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を蒸発後、粗製生成物を、次のステップに使用した。MS m/Z 205。
【0041】
[0059] 保護アルコールを、Et3N(66ml)の存在下で、N,N-ジメチルホルムアミド(500ml)中に溶解した。MsCl(メシレート・クロリド)を0℃で30分かけて滴下して加え、そして室温で1時間攪拌した。NaN3(127.6g)を次に反応混合液に加え、次にNMM(N-メチルモルフォリン、215ml)を加え、そして反応液を40〜50℃で16時間攪拌した。反応混合液を酢酸エチル(2l)に注ぎ、そして水で洗浄した。水層を酢酸エチル(2L)で戻し抽出し、そして混合酢酸エチル層を水、塩類溶液で洗浄し、そして乾燥した。当該溶媒の蒸発後、粗製生成物を次のステップに使用した(101.4g、いくらかのDMFを含む)。MS m/z 231。
【0042】
[0060] 当該粗製生成物(62.4g)をメタノール(300ml)中に溶解し、次にPd(OAc)2(3.0g)及びギ酸(96%、62g)を加えた。反応終了後、Pd種を、セライトを通したろ過により取り除いた。メタノールを吸引下で取り除き、そしてさらに減圧下で乾燥させた。粗製生成物を次のステップに使用した。
【0043】
[0061] 粗製生成物をジクロロメタン中に溶解し、そしてEt3Nで塩基性になるまで中和した。無水コハク酸(32.3g)を一回で加えた。当該反応液を室温で1時間攪拌した。溶媒を吸引下で取り除き、そして残渣を、HCl(1N)により、pH3に酸性化した。当該生成物を酢酸エチルで抽出した。当該酢酸エチル層を、シリカゲル・プラグ(1kg)を通した。次に該シリカゲルを、2〜4%メタノールを含む酢酸エチルで洗浄した。純粋な分画(薄層クロマトグラフィーにより判断される)を混合し、そして溶媒を吸引下で取り除いて、Boc-AEESを油状残渣として与えた(36g、44%)。MS m/z 305。
【0044】
[0062] Boc-AEES(5.5g)を、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS4.57g)及びエチル-(ジメチルアミノプロピル)カルボジミド・ヒドロクロリド(EDC,7.62g)を含むジクロロメタン(30ml)で2時間処理した。NHSエステルを酢酸エチル(500ml)中に注ぎ、0.1N・HClで洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を吸引下で取り除き、そして当該残渣をそのまま次のステップで使用した。
【0045】
[0063] Boc-AEES(6.05g)をトリフルオロ酢酸(TFA、10ml)で10分間処理した。TFAを吸引下で取り除き、そしてさらに減圧下で乾燥した。(AEES)アミノ酸をN,N-ジメチルホルムアミド(20ml)中に溶解し、そして過剰量のNMMで塩基性化した。次に実施例Vの粗製生成物を加え、そして反応液を室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、そして残渣を、5〜40%の勾配を60分かけて使用する調製HPLCに注入した。当該溶媒を取り除き、そして残渣を減圧下で乾燥して、Boc-(AEES)2-COOHを油として与えた(5.64g、84%)。MS m/z478.
【0046】
[0064] Boc−(AEES)2−COOH(3.60g)をトリフルオロ酢酸(TFA、10ml)で10分間処理した。TFAを吸引下で取り除き、そしてさらに減圧下で乾燥させた。(AEES)2アミノ酸を、N,N-ジメチルホルムアミド中に溶解し、そしてNMMで塩基性にした。MPA-OSu(2.94)を加え、そして混合液を、30分間攪拌した。N,N-ジメチルホルムアミドを減圧下で取り除いた。残渣を水中に溶解し、そして4〜50%の勾配を60分かけて使用する調製HPLC中に注入した。純粋な分画を混合し、そして溶媒を取り除いて、MPA-(AEES)2-COOHを、灰白色固体(3.8g、95%)として与えた。MS m/z542.2.
【0047】
[0065] MPA-(AEES)2-COOH(3.04g)を、NMM(1.13ml)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(20ml)中に溶解し、そしてp-ニトロフェニル・クロロホルメートで処理した(1.13g)。反応混合液を室温で2時間攪拌した。N,N-ジメチルホルムアミドを減圧下で取り除いた。残渣を、Biotage(商標)システムを使用するフラッシュ・カラム・クロマトグラフィーにより精製した。カラムを酢酸エチル(500ml)で洗浄し、続いて10%メタノールを含む酢酸エチル(1l)で洗浄した。純粋な分画を、混合し、そして溶媒を取り除いて、MPA-(AEES)2-CO2PNPを固体として与えた(1.39g、37%)。MS m/z 663。
【0048】
[0066] NMM(200μL)の存在下で室温にて、Gly A1、Lys B29−BisBoc−インスリン(200mg)を含むN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)を、実施例VIIIからのMPA−(AEES)2−CO2PNP(200mg)と16時間結合させた。N,N-ジメチルホルムアミドを減圧下で取り除き、そして残渣をTFAで10分間処理した。TFAを吸引下で取り除き、該残渣を水中に溶解し、そして120分かけて27〜32%勾配を使用するHPLC中に注入した。純粋な分画を混合し、そして溶媒を凍結乾燥して、(Phe B1)-MPA(AEES)2-インスリンを、白色粉末として与えた(95.0mg、43.7%)。MS m/z 6330.4.
【0049】
実施例VII
NMM(200μL)の存在下で室温にて、Gly A1、Phe B1−BisBoc−インスリン(200mg)を含むN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)を、実施例VIからのMPA−(AEES)2−CO2PNP(200mg)と16時間結合させた。N,N-ジメチルホルムアミドを減圧下で取り除き、そして残渣をTFAで10分間処理した。TFAを吸引下で取り除いた後、該残渣を水中に溶解し、そして120分かけて27〜32%勾配を使用するHPLC中に注入した。純粋な分画を混合し、そして溶媒を凍結乾燥して、(Lys B29)-MPA(AEES)2-インスリンを、白色粉末として与えた(56.3.0mg、25.9%)。MS m/z 6328.8.
【0050】
実施例VIII
(B29)-MPA(OA)-インスリンの合成
[0068] Gly A1 Phe B1-BisBoc-インスリン(205mg)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(10ml)を、MPA-OA-CO2SU(139mg)と、室温で16時間、NMM(20μL)の存在下で結合した。溶媒を減圧下で取り除き、そして残渣を水中で溶解し、そして120分かけて27〜36%勾配を使用するHPLC中に注入した。純粋な分画を混合し、そして溶媒を凍結乾燥して、(Lys B29-MPA(OH)-インスリンを、白色粉末(64.2mg、31%)として与えた。MS m/z 6098.8.
【0051】
実施例IX
インビトロ結合アッセイ
[0069] Wistarラットの肝臓膜を、[125I]インスリン、及びさらなる濃度インスリン、図1において記載されるDAC:インスリン、並びにその対応する複合体と、4℃で16時間インキュベーションした。膜をろ過し、そして3回洗浄し、そしてフィルターをカウントして、特異的に結合された[125I]インスリンを測定した。IC50を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して計算した。
【0052】
[0070] IC50の結果を、表2に記載した。
【表2】

【0053】
図2及び図3は、本発明のインスリン誘導体の濃度関数における阻害割合(%)の点で、ラット肝臓膜に結合するインスリンを記載する。
【0054】
実施例X
インビトロ 生物活性
[0072] インビトロ活性を評価するために、脂肪細胞におけるグルコースの取り込みを使用した。生物アッセイにおいて使用するために、3T3-L1細胞、マウス線維芽細胞系列を脂肪細胞に分化させた。3T3-L1細胞をDMEM及び10%FBS中に撒き、そしてコンフルエントになるまで成長させ、続いて2日間インキュベーションした。デキサメタソン及びインスリンを加えることにより分化を誘導した(D0)。7日目に、90%より多い細胞が、脂肪細胞の表現型、つまり脂肪滴の増加を示した。図4A-4Cは、3日後の前脂肪細胞を示し、そして7日目の脂肪細胞を示す。図5A及び5Bは、4日目での脂肪細胞及び7日目の脂肪細胞のオイルレッドO染色を示す。図6A及び6Bは、4日目及び7日目でのオイルレッドO染色及びメチレン・ブルー染色を示す。
【0055】
[0073] 3T3-L1脂肪細胞を、5mMグルコース及び0.5%FBSを含むDMEM中で一晩飢餓状態にした。細胞を、1%BSAを含むクレブ-リンゲル-Hepes緩衝液中で洗浄し、そして増加濃度のインスリン、DAC:インスリン誘導体、及びその対応する複合体で、20分間、37℃でインキュベーションし、そして[14C]-2-デオキシ-D-グルコース(1μCi/ウェル)でさらに20分間インキュベーションした。細胞を可溶化し、そして放射活性を計測した。グルコース取り込みを、インスリン・コントロールに対して計算し、そしてEC50を、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して計算した。
【0056】
[0074] 表3は、試験された化合物に対するEC50の結果を示し、そして図7は、当該化合物の濃度(M)の関数におけるコントロールのグルコース取り込みの割合(%)を示す。
【0057】
【表3】

【0058】
実施例XI
[0075] さらに、インビトロ活性を評価するために、脂肪細胞の他のソースにおいてグルコース取り込みを使用した。体重175±25gのWister由来雄ラットから得た副睾丸脂肪を使用する。組織(0.03g/ml)を、コラゲナーゼを含む改変HEPES溶液pH7.4により、37℃で分解した。試験化合物及び/又は溶媒を、500μLの一定量の改変HEPES緩衝液pH7.4でインキュベーションし、そしてD-[3−3−H]グルコース(2.5μCi/ml)を次に加えて、2時間インキュベーションした。試験化合物誘導性のグルコース取り込みであって、コントロール2nMインスリンの応答に対して50%以上多いグルコースの取り込みの増加は、有力なインスリン受容体アゴニスト活性を指し示す。50%を超えて、インスリン誘導性グルコースの取り込み応答を阻害する試験化合物は、インスリン受容体アンタゴニスト活性を指し示す。化合物は、10、1、0.1、0.01、及び0.001μMでスクリーニングされる。
【0059】
[0076] 表4は、試験される化合物についてのEC50の結果を示し、そして図8は、化合物の濃度(M)関数におけるコントロールのグルコース取り込み割合(%)を示す。
【0060】
【表4】

【0061】
実施例XII
インビボ実験
[0077] 組換えヒトインスリンと本発明のインスリン誘導体との間の血中グルコース低下効力の評価は、糖尿病の雌db/dbマウスに皮下投与される際に、比較される。
【0062】
[0078] 試験化合物を、一回の皮下ボーラス注射により、5〜6週齢のメスdb/dbマウス、体重24.3〜33.3gに投与した。注射された投与溶液の平均体積は、0.35ml/マウス(12.5ml/kg)であった。
【0063】
[0079] 組換え(イー・コリ(E. coli))ヒト・インスリン(以下でrHインスリンと呼ぶ)は、ICNTMにより、28IU/mgの濃度で提供される。
【0064】
インスリン誘導体のストック溶液を、合成インスリン誘導体を酸性水(〜pH2)で再構成することにより、14.29mg/ml(〜400IU/ml)で調製した。ストック溶液を次に0.9%NaClで希釈し、そして0.22μmフィルター(Millex GV)を通して、表5に表される投与溶液を得た。群Iは、コントロール溶液として、0.9%NaCl・USPを受けた。
【0065】
【表5】

【0066】
[0081] 群と処理は、表6において要約される。
【表6】

【0067】
[0082] 血液採取(一滴)を、尻尾の先で行い、そしてグルコースレベルを、手持ちグルコメーター(モデル:ワンタッチUltraTM、Lifescan Canada)を使用して測定した。血液グルコースレベルを、投与前に一度全ての動物で測定し、そして投与後1、2、3、4、6、24、30、48、及び72時間で測定した。
【0068】
インビボ結果:
[0083] 全ての動物は、試験化合物の投与前に通常であるようにみえた。投与後およそ1時間で、100IU/kgの組換えヒト・インスリン(rHインスリン)で皮下投与された群2の動物は、活動が少し低下し、そして非強調的な歩行を示した。他の処置を受けた動物は、実験を通して通常であるように見えた。食餌消費のわずかな減少が、実施例IIIの17.9mg/kgの化合物で処置された動物において観測された。
【0069】
[0084] 表7は、rHインスリン及びインスリン誘導体の一回投与の後の食餌消費(全重量/ケージ(g))を示す。
【表7】

【0070】
[0085] 表8は、rHインスリン及びインスリン誘導体の一回投与後のコントロールに対する食餌消費(全重量/ケージ)を示す。
【表8】

【0071】
血糖の差分は、図9、10、11、12、13、及び14において報告された各々のマウスについて、投与後の血中グルコース・レベル対投与前のグルコース・レベルから計算される。一般的に、インスリン誘導体(実施例I、実施例II、及び実施例III)は、用量依存的様式で血中グルコース濃度を低下でき、そして一回の投与量(100IU/kg)のみで試験された組換えインスリンは、2時間活性であった。3.6mg/kgにおいて、実施例2は、最初の2時間インスリンと同程度の活性であり、一方実施例I及び実施例IIIでは不十分な効果しか得られない。rHインスリンの低下効果は、17.9mg/kgでより強調された。なぜなら、当該効果が24時間まで観察されたからである。全体図は、インスリン誘導体が、24時間まで(コントロール群に比べて)活性であることを示したが、グルコース・レベルが投与後1〜2時間減少し、次に3〜4時間で増加し、そして再び6時間で減少しているということに留意することは重要である。この「上昇と下降」応答は、マウスの食性および代謝が、薬剤の効力に影響を与えうる重要なパラメーターであるということを示唆しうる。db/dbマウスが、年齢につれてインスリン抵抗性を発達させ、このことが、グルコース低下効果を得るために注射されなければならないかなり高用量のインスリンを説明しうるということについて言及することは重要である。
【0072】
実施例XIII
通常ラットにおける薬物動態プロファイル
[0087] Rhインスリン、実施例IIIのインスリン誘導体、及び実施例IIIのインスリン誘導体の複合体を、7〜8週齢の雄CDラットに、36nmol/kg sc又は12nmol/kg静脈内(iv)のいずれかで投与した。血液サンプルを、72時間まで(rhインスリン-処置した動物については3時間まで)回収した。薬剤レベルを、ヒト・インスリンELISAキット(Linco)を使用して測定した。薬物動態パラメーターを、WinNonlinソフトウェアを使用して、化合物/投与経路あたりN=4で非区画分析により計算した。図15は、通常のSDラットにおけるインスリンの薬物動態プロファイルである。ここでインスリンは、scで36nmol/kgで投与され、そしてivで12nmol/kgで投与された。図16は、通常のSDラットにおける実施例IIIの複合体の薬物動態プロファイルであり、ここで複合体は、scで36nmol/kg、及びivで12nmol/kgで投与された。図17は、通常のSDラットにおける実施例IIIのインスリン誘導体の薬物動態プロファイルであり、ここでインスリン誘導体は、scで36nmol/kgで投与され、そしてivで12nmol/kgで投与された。図18は、インスリン、実施例IIIのインスリン誘導体、及び実施例IIIのインスリン誘導体の複合体の皮下投与のPKプロファイルである。図19は、インスリン、実施例IIIのインスリン誘導体、及び実施例IIIのインスリン誘導体の複合体の静脈内投与のPKプロファイルである。
【0073】
実施例XIV
糖尿病ラットにおける一回用量の薬力学
[0088] 雄CDラットにおいて、ストレプトゾトシン(60mg/kg)の一回iv注射で、糖尿病を誘導した。2日後、DAC(商標):インスリン誘導体を120nmol/kg、前もって成形された複合体300nmol/kg、rhインスリン20U/kg(120nmol/kg)、又は溶媒を、ラットに1回sc注射した。血中グルコースレベルを手持ちグルコメーターで、注射直前、及び投与後1、2、3、4、6、8、10、11、24、30、及び48時間後、5匹のラット/群で測定した。但し溶媒群については3匹のラット/群で試験した。通常のラットにおける血糖の範囲は、5.2〜7.6mmol/lであった。
【0074】
[0089] 図20は、120nmol/kgの実施例I〜IVを投与した後のラットにおける血中グルコースレベルを示す。図21は、本発明の実施例I〜IVの対応する複合体を300nmol/kgで投与した後の、ラットにおける血糖レベルを示す。
【0075】
実施例XV
繰返し皮下注射後の、DAC:インスリン誘導体の効力及び前もって成形された対応の複合体の効力の評価
[0090] 本アッセイは、成獣雄CD(商標)ラットに繰返し皮下注射した後の、実施例IIIのインスリン誘導体及びその複合体の効力対遊離ヒト組換えインスリンの効力を評価するために行われた。
【0076】
[0091] 1型糖尿病を、ストレプトゾトシン(60mg/kg、pH4.5)の1回静脈(iv)注射により、実験1日目に雄CD(商標)ラットに誘導した。高血糖は、血液を試験する血中グルコースモニターを使用して確認された。試験化合物を、実験3日目から14日目まで1日1回、皮下(sc)注射により1ml/kg体重で投与した。血中グルコースレベルを、それぞれの日の投与の直前、及び投与後2、8、19時間で試験した。食餌と水の消費量を、毎日モニターした。体重を、実験1、3、6、9、12、15、及び17日目に集めた。
【0077】
[0092] 図22は、実施例IIIのインスリン誘導体についての1日目、6日目、及び12日目における1日の血中グルコース・プロファイルを示し、そして図23は、実施例IIIのインスリン誘導体の複合体について、1日目、6日目、及び12日目での1日の血中グルコース・プロファイルを示す。
【0078】
[0093] 本発明は、その特異的な実施態様に関して記載される一方で、さらなる改良が可能であり、そして当該出願が、本発明の原理に一般的に従う発明、並びに本発明が関連する技術において既知又は慣習的な慣行の範囲内であり、本明細書に記載された基本的特徴に適用され、そして添付の特許請求の範囲内に従う開示からの逸脱を含む発明の全てのバリエーション、使用、又は適応をカバーすることが意図されることが、理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン分子及び血液成分に共有結合するための反応基を含むインスリン誘導体。
【請求項2】
前記インスリン分子が以下の式I:
【化1】

の分子であり、そして前記反応基が、Gly A1、Phe B1、及びLys B29の位置から選ばれる位置で、インスリン分子のアミノ酸に結合する、請求項1に記載のインスリン誘導体。
【請求項3】
前記反応基が、マイケル・アクセプター、スクシンイミジル含有基、及びマレイミド含有基からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載のインスリン誘導体。
【請求項4】
前記マイケル・アクセプターが、α,β,不飽和カルボニル部分である、請求項3に記載のインスリン誘導体。
【請求項5】
前記反応基が、マレイミド含有基である、請求項1又は2に記載のインスリン誘導体。
【請求項6】
前記反応基が、3-マレイミドプロピオン酸(MPA)である、請求項1又は2に記載のインスリン誘導体。
【請求項7】
前記反応基が、リンカーを介して、前記インスリン分子のアミノ酸に結合される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインスリン誘導体。
【請求項8】
前記リンカーが、(2-アミノ)エトキシ酢酸(AEA)、エチレンジアミン(EDA)、アミノ・エトキシ・エトキシ・スクシニミン酸(AEES)、AEES-AEES、2-[2-(2-アミノ)]エトキシ酢酸(AEEA)、AEEA-AEEA、-NH2-(CH2n-COOH、[式中、nが、1〜20の整数である]、及びアルキル鎖(C1-C10)モチーフ、並びにそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項7に記載のインスリン誘導体。
【請求項9】
前記アルキル鎖(C1-C10)モチーフが、酸素、窒素、又は硫黄原子が取り込まれうる飽和又は不飽和の1以上のアルキル鎖(C1-C10)である、請求項8に記載のインスリン誘導体。
【請求項10】
前記アルキル鎖が、グリシン、3-アミノプロピオン酸(APA)、8-アミノオクタン酸(AOA)、及び4-アミノ安息香酸(APhA)からなる群から選ばれる、請求項9に記載のインスリン誘導体。
【請求項11】
前記組合せが、AEEA-EDA、AEEA-AEEA、及びAEA-AEEAからなる群から選ばれる、請求項8に記載のインスリン誘導体。
【請求項12】
前記リンカーが、-NH2-(CH27-COOHである、請求項6に記載のインスリン誘導体。
【請求項13】
以下の式:
【化2】

を有する、請求項1に記載のインスリン誘導体。
【請求項14】
以下の式:
【化3】

を有する請求項1に記載のインスリン誘導体。
【請求項15】
以下の式:
【化4】

を有する、請求項1に記載のインスリン誘導体。
【請求項16】
前記血液成分が、血液タンパク質である、請求項1に記載のインスリン誘導体。
【請求項17】
前記血液タンパク質が、血清アルブミンである、請求項16に記載のインスリン誘導体。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載されるインスリン誘導体及び血液成分を含むインスリン複合体であって、当該反応基及び当該血液成分が、当該反応基と当該血液成分との間で形成される共有結合を介して結合される、前記複合体。
【請求項19】
前記血液成分が、血液タンパク質である、請求項18に記載のインスリン複合体。
【請求項20】
前記血液タンパク質が、血清アルブミンである、請求項19に記載のインスリン複合体。
【請求項21】
前記複合体が、ex vivoで形成される、請求項18に記載のインスリン複合体。
【請求項22】
医薬として許容される担体と供に、請求項1〜17のいずれか1項に記載のインスリン誘導体を含む医薬組成物。
【請求項23】
医薬として許容される担体と供に、請求項18〜21のいずれか1項に記載のインスリン複合体を含む医薬組成物。
【請求項24】
血糖関連疾患又は障害を患う対象において血糖関連疾患又は障害を治療する方法であって、請求項1〜17のいずれか1項に記載のインスリン誘導体を、当該対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠性糖尿病、嚢胞性線維症、多嚢胞性卵巣症候群、及び膵炎からなる群から選ばれる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病及びII型糖尿病からなる群から選ばれる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
請求項18〜21のいずれか1項のインスリン複合体の投与を含む、血糖関連疾患又は障害の治療方法。
【請求項28】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠性糖尿病、嚢胞性線維症、多嚢胞性卵巣症候群、及び膵炎からなる群から選ばれる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病及びII型糖尿病からなる群から選ばれる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
請求項22及び23のいずれか1項に記載の医薬組成物の投与を含む、血糖関連疾患又は障害の治療方法。
【請求項31】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠性糖尿病、嚢胞性線維症、多嚢胞性卵巣症候群、及び膵炎からなる群から選ばれる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病及びII型糖尿病からなる群から選ばれる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
血糖関連疾患又は障害の治療用医薬の製造のための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の誘導体の使用。
【請求項34】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠性糖尿病、嚢胞性線維症、多嚢胞性卵巣症候群、及び膵炎からなる群から選ばれる、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病及びII型糖尿病からなる群から選ばれる、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
血糖関連疾患又は障害の治療用医薬の製造のための、請求項18〜19のいずれか1項に記載の複合体の使用。
【請求項37】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病、II型糖尿病、嚢胞性線維症、多嚢胞性卵巣症候群、及び膵炎からなる群から選ばれる、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記血糖関連疾患が、I型糖尿病及びII型糖尿病からなる群から選ばれる、請求項37に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−62311(P2012−62311A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−184958(P2011−184958)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【分割の表示】特願2006−521357(P2006−521357)の分割
【原出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(511209114)コンジュシェム リミティド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】