説明

持続性保湿組成物

毛髪保湿用の水性組成物が提供される。前記組成物はカチオン性成分、鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するオイル、フィトステロールおよびセルロース系ポリマーを含む。また、毛髪に長期保湿を与える方法も提供され、その方法は、長期保湿を必要としている毛髪に、カチオン性成分、鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するオイル、フィトステロールおよびセルロース系ポリマーを含む組成物を適用するステップと、毛髪に接触している該組成物を毛髪に長期保湿を与えるのに十分な時間にわたり保持するステップを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーソナルケア製品に関する。特に、本発明は毛髪、頭皮および皮膚をコンディショニングするために用いる製品に関係する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の皮脂が周囲の大気から髪に引き付けられた汚れと共に蓄積すると、髪が魅力のない外観を呈する原因となる。髪をシャンプーすることで汚れや皮脂は取り除けるが、頻繁にシャンプーすることによって髪の毛が絡まった状態のままになって、くし通りが悪くなることがある。頻繁なシャンプーの望ましくないさらなる影響としては、乾燥した髪および/または頭皮が含まれる。こうしたことはカラーリングした髪、脱色した髪、パーマをかけた髪および/または違った形でダメージを受けた髪には特に問題であることがわかるだろう。この問題を解決するため、シャンプーの保湿成分やシャンプー後のヘアコンディショナーを含めて、多種多様な製品が毛髪のコンディショニング用に開発されてきた。当然のことながら、現在、毛髪に適度な初期コンディショニングを与える数多くのさまざまな製品が市場に出回っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしこれまで、この分野では髪の毛に長期にわたって潤いを与えること、また、髪に脂っぽい外観や感触を残すことなくそのようにすることは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、クレンジング系によって供給されるかまたはコンディショニング系を通して供給されるかにかかわらず、潤いを長続きさせるヘアコンディショニング製品に対する要求を満たすものである。予期せざることに、本発明に従って開発されたシャンプーは、髪の毛を効果的に洗浄すると同時に、そのプロセス全体を通して豊富な泡と潤いを提供する。さらに、本発明の製品は、植物系の成分を利用する製品への消費者の要望をも満たすものである。
【0005】
コンディショニング効果を与える一般的な方法は、セルロース誘導体のようなカチオン性界面活性剤、例えば、ポリクオタニウム化合物(例:ポリクオタニウム-10)などのカチオン性第4級アンモニウム化合物を用いるものであり、これらの化合物はポリマー-界面活性剤複合体または界面活性剤とのコアセルベートを形成し、髪の毛に付着して、髪をより柔軟に、滑らかに、くし通りしやすくする。カチオン性界面活性剤とは、界面活性剤の活性がその分子のプラスに荷電したカチオン部分にあるものである。したがって、カチオン性界面活性剤はマイナスに荷電した毛髪表面に引き付けられ、それらの相対的に低い溶解性と高分子量のため、熱力学的にシャンプーの水性環境から離れざるを得なくなって、髪の毛に付着する。こうした特徴のため、第4級アンモニウム化合物のようなカチオン性界面活性剤はヒト毛髪の処理に特に適している。それゆえ、多くのヘアコンディショニング製品は第4級アンモニウム化合物をベースにしている。しかしながら、本発明者らは、驚いたことに、本発明の組成物中のカチオン性成分は、より優れた、増強された保湿を通して、湿った髪と乾いた髪の両方の潤い感触、柔らかさ、輝き、しなやかさ、および滑らかなくし通りをもたらす属性を与えるように、他の成分を最適化する水性系中の担体として作用することを見い出した。本発明は頭皮、毛髪およびボディ用のクレンジング、コンディショニングおよびトリートメント製品において使用できると考えられる。
【0006】
本発明は、以下の成分を含む毛髪、頭皮または皮膚用の水性保湿トリートメントを記載する:
a. カチオン性化合物;
b. 鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するオイル;
c. フィトステロール;および
d. セルロース系ポリマー。
【0007】
好ましくは、a、b、cおよびdは、組成物の全重量に基づいて、約0.5〜1:0.7〜1.5:0.7〜1.5:1〜2の比で存在し、約0.8:1:1:1.5の比で存在することが好ましい。
【0008】
本発明はまた、毛髪、頭皮または皮膚に長期保湿を与える方法を記載し、この方法は以下のステップを含んでなる:
(1) 毛髪、頭皮または皮膚を、以下の成分:
a. カチオン性化合物;
b. 鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するオイル;
c. フィトステロール;および
d. セルロース系ポリマー
を含む水性組成物と接触させること;および
(2) 毛髪、頭皮または皮膚と接触している該組成物を、毛髪、頭皮または皮膚に保湿を与えるのに十分な時間にわたり保持すること。
【0009】
好ましくは、a、b、cおよびdは、組成物の全重量に基づいて、約0.5〜1:0.7〜1.5:0.7〜1.5:1〜2の比で存在し、約0.8:1:1:1.5の比で存在することが好ましい。
【0010】
一般的に、上記4つの成分のそれぞれは、組成物の全重量に基づいて、約0.05〜約20%のレベルで組成物中に存在する。本発明の好ましい実施形態では、本発明の組成物は約0.1%〜10%のカチオン性第4級アンモニウム化合物;約0.25%〜約2.5%のオイル;約0.25%〜約2.5%のステロール;および約0.375%〜約3.75%のセルロース系ポリマーを含有する。
【0011】
本発明の組成物中で用いるのに適した水性担体には、水、例えば脱イオン水、蒸留水、水道水、天然水、フローラルウォーター(芳香蒸留水)など;およびアルキルアルコール、多価アルコールの水溶液が含まれ、好ましくは、それらは組成物の全重量に基づいて約20〜99.8%の量で用いられる。
【0012】
当業者は、本発明の組成物が水をほとんどまたはまったく含まない濃縮形態でも提供され得ることを理解するだろう。使用に際して、その濃縮物は毛髪、頭皮または皮膚への適用に先だって水の中に導入される。濃縮処方物は水性組成物と同じ成分比をもつだろう。
【0013】
本明細書では、「含む」という語の使用によって、本発明の組成物はその製品によって達成される最終結果(すなわち、本組成物が適用される毛髪、頭皮または皮膚の優れた保湿)に悪影響を及ぼさない美容上好適なその他の成分を含みうることが意図される。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点は以下の説明に記述されている。本発明の利点は、以下の説明および特許請求の範囲で特に指摘される美容上のヘアコンディショニング組成物によって実現・達成されるだろう。
【0015】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも例示的で、かつ説明的であり、クレームされた本発明のさらなる説明を提供することを意図したものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この図面は、本発明の組成物の成分間の相乗関係を表した略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の保湿トリートメント組成物は水のほかに4種類の成分を含む。
【0018】
カチオン性成分
説明すべき本発明の第1の成分はカチオン性成分である。カチオン性成分はカチオン性化合物またはカチオン性ポリマーの形であってよい。好ましくは、カチオン性成分は乳化剤としておよび/またはその界面活性剤特性もしくはコンディショニング特性のために本発明の組成物中に加えられる。
【0019】
カチオン性化合物はアンモニウム塩のようなカチオン性第4級化合物または脂肪アミンもしくはアミドアミンの塩でありうる。適当な第4級アンモニウム塩には次式のものが含まれる:
【化1】

【0020】
ここで、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜45の飽和もしくは不飽和脂肪族基、または炭素原子数1〜45の芳香族アリールもしくはアルカリール基であり、そしてXはハロゲン(フッ素、塩素、ヨウ素、臭素など)、アセテート、アンモニア、ホスフェート、ニトレート、またはメチルサルフェートから選択されるアニオンである。脂肪族基は、炭素原子に加えて、エーテル結合ならびにアミンまたはアミド基を含むことができる。適当な第4級アンモニウム化合物はモノ長鎖アルキル、ジ長鎖アルキル、トリ長鎖アルキルであってよく、すなわち、「長鎖」という用語はメチルより長いことを意味し、またはここでR1=1である。ある場合には、R1、R2、R3またはR4の1個以上が、パーム油、ババス油、ブリチオイル(buriti oil)、メドウフォーム油、カノラ油、ヒマワリ油、ゴマ油、ヤシ油、ホホバ油、コーン油、ダイズ油などを含むがこれらに限らない、例えば炭素原子数6〜30の、1種以上の飽和または不飽和脂肪酸から得られる脂肪族基を含む。
【0021】
そのような第4級アンモニウム塩の例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:ベヘンアルコニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ベヘンアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、セタルコニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、セトリモニウメトサルフェート、ジベヘニルジモニウムメトサルフェート、ジカプリル/ジカプリリルジモニウムクロリド、ババスアミドプロピルトリモニウムクロリド、ババスアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、ババスアミドプロピルコニウムクロリド、パームアミドプロピルトリモニウムクロリド、パームアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、ステアラルコニウムクロリド、ステアラミドプロピルトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリドなど。最も好ましいものは第4級アンモニウム塩がパーム油から誘導されるものである。
【0022】
さらに、アミドアミン塩も適しており、これらは脂肪酸と多官能性アミンとの縮合生成物であり、例えば式RCONH(CH2)nNR1R2を有するものである。前記式において、RCOは脂肪族基(C6-45飽和もしくは不飽和アルキルまたはアシル基)、例えばステアロイル、ベヘニル、ババスオイル(babassuoyl)、パルミトイルであり、R1およびR2はメチルまたはエチルであり、そしてnは2または3である。こうした化合物の例として、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ババスアミドプロピルジメチルアミン、コカミドプロピルジメチルアミンなどが挙げられる。特に好ましいものはパーム油から誘導されるアミドアミンである。
【0023】
さらに、第1級、第2級、または第3級脂肪アミン(ここで、置換された基は12〜22個の炭素原子を有する)のカチオン塩も適している。こうしたアミンの例として、ジメチルステアラミン、ジメチルソイアミン、ステアリルアミン、ミリスチルアミン、トリデシルアミン、エチルステアラミンなどが挙げられる。
【0024】
カチオン性ポリマーもまたカチオン性成分として用いることができる。カチオン性ポリマーの例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
(a) ビニルピロリドンのコポリマー;
(b) 塩化ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー、または塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリルアミドとのコポリマー。この種の化合物はMerck社からMERQUATという商標名で販売されている;
(c) モノマー単位がアクリルアミド、メチルアクリルアミド、ジアセトン-アクリルアミド、窒素上で低級アルキルにより置換されたアクリルアミドまたはメタクリルアミド、アクリル酸とメタクリル酸のアルキルエステル、ビニルピロリドン、またはビニルエステルから選択される、アクリル酸またはメタクリル酸から誘導されるホモポリマーまたはコポリマー;
(d) カチオン性シリコーン。本明細書中で用いる「カチオン性シリコーン」とは、シリコーン構造自体に正電荷を有する、ポリシロキサンを含めた、シリコン骨格を有するあらゆるシリコーンポリマーまたはオリゴマーを意味する。
【0025】
本発明の組成物中で使用できる他のカチオン性ポリマーの例は米国特許第5,240,450号および第5,573,709号に記載されており、それらを参照により本明細書に組み入れる。カチオン性成分は好ましくはカチオン性第4級アンモニウム化合物である。
【0026】
本発明の組成物において、カチオン性成分は組成物の全重量に基づいて約0.1%〜約5%の量で、好ましくは約0.1%〜約2%の量で、最も好ましくは約0.4%の量で用いられる。
【0027】
オイル成分
説明すべき本発明の第2の成分はオイルである。オイルは本発明の組成物中にエモリエント(軟化剤)として加えられる。本発明の組成物中で用いるのに好ましいオイルを表1に記載する。これらのオイルは鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するもので、ブリチオイル、ダイズ油、メドウフォーム油、ゴマ油、ヒマワリ油およびカノラ(ナタネ)油が挙げられる。本発明の組成物中で用いるのに特に好ましいものはブリチ(Buriti)またはオオミテングヤシ(Maurita flexuosa)果実油(Croda社から入手可能)であり、この果実油はアマゾン地域のBuritiヤシの実から得られ、食料源として、また建築および製織のために伝統的に使われてきた。ブリチオイルはβカロテンとその分解産物ビタミンA(まとめてカロテノイドという)の最も豊富な(ニンジン油よりもさらに豊富な)供給源オイルである。カロテノイドは重要な抗酸化剤であって、UV線をフィルターにかけて吸収し、かつ皮膚で生成されたフリーラジカルを中和し、それによって太陽光線によるダメージから皮膚を保護する。スキンケアにおいて、それはコラーゲンとエラスチンの生産を支援することが報告されている。ブリチオイルはトコフェロール(ビタミンE)とオレイン酸系脂肪酸の優れた供給源であり、また、体内で生産できず、外部供給源すなわち食物から得る必要がある他の必須脂肪酸(EFA)の完全なプロフィールを備えている。しかし、驚いたことに、本発明者らは、毛髪の予想外に優れた長期の軟化および保湿を与えるために、鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するオイルが本組成物中で使用され得ることを見い出した。
【表1】

【0028】
本発明において、オイル成分は組成物の全重量に基づいて約0.25%〜約2.5%の量で、好ましくは約0.3%〜約1%、最も好ましくは約0.5%の量で用いられる。
【0029】
当然のことながら、果実油は植物エキスと同じではない。オイルは植物の果実または実から圧搾されるもので、保湿作用があるが、エキスは一般に水性系で、根、茎および葉から抽出されるものである。
【0030】
ステロール成分
説明すべき本発明の第3の成分はステロール成分である。ステロール成分は皮膜形成作用と乳化作用を提供するために本発明の組成物中に加えられる。本発明の組成物で用いるには植物フィトステロールが適している。有用な植物フィトステロールは自然界で植物中に存在するステロイドアルコールであり、カンペステロール、シトステロール、スチグマステロールおよびエルゴステロールを含む。ステロール成分はエマルションの水不溶性内部相の一部を形成する。本発明の組成物において有用な特に好ましいフィトステロールはザクロ(Punica granatum)ステロールから誘導されたステロールである。本発明において、ステロールは組成物の全重量に基づいて約0.25%〜約2.5%の量で、好ましくは約0.3%〜約1%の量で、最も好ましくは約0.5%の量で用いられる。
【0031】
本明細書中に示されるように、in vitro試験で確かめたとき、ステロール成分は本発明の組成物によって毛髪、皮膚および頭皮に付与された保湿を、果実油とバターを含む組成物について観察された保湿の範囲を超えて、延長することが観察される。つまり、ステロールを水溶性エキス、果実油または重質のバターで置き換える場合には、長期保湿が生じない。
【0032】
セルロース系ポリマー成分
説明すべき本発明の第4の成分はセルロース系ポリマー成分である。セルロース系ポリマーはその皮膜形成能のために本発明の組成物中に存在する。皮膜形成の機能はウェットコーミングとドライコーミングに重要であり、シーラントとしても作用する。
【0033】
本発明の組成物中で用いるのに適したセルロース系ポリマーの非限定的な例には、カチオン性セルロース誘導体のようなポリサッカライドポリマーが含まれる。本発明の組成物中で有用なセルロース系ポリマーの例は以下のものである:皮膜形成性のアルキルセルロースポリマー、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース;皮膜形成性のアルキルセルロースポリマーの第4級アンモニウム塩;グアーマメ(guar bean)、イナゴマメ(locust bean)、デンプン、カラギーナンまたはキサンタンガム由来の皮膜形成性天然ポリマー、例えばヒドロキシプロピルグアーセルロースガム;および上記ポリマーの組み合わせを含む皮膜形成性の天然由来ポリマー。好ましいセルロース系ポリマーは、トリメチルアンモニウム置換エポキシドと反応させたヒドロキシエチルセルロースの塩であり、このポリマーは業界(CTFA)ではポリクオタニウム10 (Polyquaternium 10)と呼ばれて、Amerchol社(Edison, N.J., USA)からポリマーのPolymer JRシリーズ(最も好ましいものがJR30M)として入手可能である。他の好ましいセルロース系ポリマーにはカチオン性グアーガム誘導体、例えばグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが含まれ、それらの具体的な例としては、Rhone-Poulenc社から市販されているJaguarシリーズ(好ましくはJaguar C-35)が挙げられる。適当なセルロース系ポリマーの非限定的な例は、CTFA Cosmetic Ingredient Dictionary (CTFA化粧品成分辞典), 第8版, 編集Wenninger, CanterberyおよびMcEwen, Jr. PhD, J.D. (The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association, Inc. (米国化粧品工業会の国際命名法委員会), Washington, D.C. (2000))に記載されており、その記載を参照により本明細書に組み入れる。本組成物において、セルロース系ポリマーは組成物の全重量に基づいて約0.375%〜約3.75%の量で、さらに好ましくは約0.5%〜約1.5%の量で、最も好ましくは約0.75%の量で用いられる。
【0034】
驚いたことに、本発明者らによって、本発明に従って調製された水性組成物は、長続きする保湿を毛髪、頭皮または皮膚に与える、安定で、効果的で、多目的に使える毛髪、頭皮および皮膚トリートメント製品を提供することが見い出された。保湿は従来のシャンプー製品で10回洗浄した後でさえも予想以上に残存する。これは思いがけないことである。なぜなら、本発明の組成物を用いて観察される長期保湿は、本発明の組成物の個々の成分のいずれの特性でもないからである。特定の理論によって縛られることを望まないが、本発明者らの考えでは、水不溶性オイル成分とフィトステロール成分が、カチオン性化合物によって懸濁されたとき、相乗的に作用して強力な長期保湿を提供する;すなわち、カチオン性化合物が毛髪、頭皮または皮膚上に皮膜を形成し、その皮膜が毛髪、頭皮または皮膚の表面上にその他の成分を閉じ込めて、驚くほど長続きする保湿効果(従来のシャンプー製品を用いる最大10回の洗浄を通して観察される)を生み出す。毛髪、頭皮または皮膚を本発明の組成物で処理すると、毛髪、頭皮または皮膚の表面に皮膜の残留層が残って、水分を保持するバリアーを形成する。図1に模式図で示したように、水相中の親水性乳化剤(すなわち、カチオン性化合物)と油相中の疎水性物質がミセルを形成する。これは浸透およびコンディショニング効果を可能にする。その上、外部相(水相)がセルロース系ポリマーを含み、このポリマーはこれらの成分の懸濁を助けると同時に、毛髪シーリング効果を提供する。
【0035】
本発明の組成物はさらに、ヘアケアまたはパーソナルケア製品での使用が知られたまたは有効な1種以上の任意成分(例えば、組成物の安定性、美観および/または性能を高めるもの)を含むことができるが、ただし、その任意成分はここに記載の必須成分と物理的・化学的に適合しうるか、さもなければ製品の安定性、美観または性能を過度に損なわないことを条件とする。そのような任意成分のそれぞれの濃度は、組成物の全重量に基づいて約0.5〜55%の範囲でありうる。本組成物中で用いられる任意成分の非限定的な例としては、以下の成分が挙げられる:香料;フケ防止剤;さらなるヘアコンディショニング剤、例えばシリコーン(例:ジメチコン、ジメチコノールなどの線状シロキサンポリマー、およびシクロペンタシロキサン、シクロメチコンなどの環状ポリシロキサン);植物エキス;スキンコンディショニング剤、例えば植物性オイル、カプリル酸エステルなどのエステル;染料、真珠光沢助剤、増泡剤(foam booster)、例えばアルキルベタイン;さらなる界面活性剤または乳化剤;非イオン性の補助界面活性剤(cosurfactant);懸濁化剤、増粘剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、タンパク質、皮膚活性剤、日焼け防止剤、および酸化防止剤、例えばビタミン類。
【0036】
本発明の組成物において有用なさらなるオイルとしては、本明細書に記載したものを含めて、シリコーン、エステル、植物油、合成油が含まれるが、これらに限らない。オイルは揮発性でも不揮発性でもよいが、室温で注入可能な液体であることが好ましい。「揮発性」という用語は、オイルが測定可能な蒸気圧または20℃で少なくとも約2mmHgの蒸気圧をもつことを意味する。「不揮発性」とは、オイルが20℃で約2mmHgより低い蒸気圧をもつことを意味する。
【0037】
A. 揮発性オイル
適当な揮発性オイルは一般に25℃で約0.5〜200,000センチストークスの粘度を有するもので、線状シリコーン、環状シリコーン、パラフィン系炭化水素、またはこれらの混合物が含まれる。
【0038】
1. 揮発性シリコーン
環状シリコーンは本組成物中で用いることができる揮発性シリコーンの1種である。この種のシリコーンは次の一般式を有し、ここでn=3〜6、好ましくは4、5または6である:
【化2】

【0039】
さらに、線状の揮発性シリコーン、例えば次の一般式を有するものも適しており、ここでn=0、1、2、3、4または5、好ましくは0、1、2、3または4である:
【化3】

【0040】
環状および線状の揮発性シリコーンは、Dow Corning社およびGeneral Electric社をはじめとして、さまざまな商業的供給源から入手可能である。Dow Corning社の線状揮発性シリコーンはDow Corning 244、245、344および200 fluidの商標名で販売されている。これらの液体には、ヘキサメチルジシロキサン(粘度0.65センチストークス(cstと略す))、オクタメチルトリシロキサン(1.0cst)、デカメチルテトラシロキサン(1.5cst)、ドデカメチルペンタシロキサン(2cst)、およびこれらの混合物が含まれる(全ての粘度測定は25℃で行った)。
【0041】
適当な分岐状の揮発性シリコーンにはアルキルトリメチコン、例えばメチルトリメチコンが含まれ、分岐状の揮発性シリコーンは次の一般式を有する:
【化4】

【0042】
メチルトリメチコンは、25℃で1.5センチストークスの粘度を有し、TMF-1.5の商標名で信越シリコーン社(Shin-Etsu Silicones)から購入することができる。
【0043】
2. 揮発性パラフィン系炭化水素
揮発性オイルとして、炭素原子数5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の、より好ましくは炭素原子数8〜16の、さまざまな直鎖または分岐鎖パラフィン系炭化水素も適している。適当な炭化水素には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカン、および米国特許第3,439,088号および第3,818,105号(両方とも参照により本明細書に組み入れる)に開示されるC8-20イソパラフィン類が含まれる。好適な揮発性パラフィン系炭化水素は分子量が70〜225、好ましくは160〜190、沸点範囲が30〜320℃、好ましくは60〜260℃、そして粘度が25℃で約10cstより低いものである。そのようなパラフィン系炭化水素はISOPARSの商標名でEXXON社から、また、Permethyl Corporation社から入手可能である。適当なC12イソパラフィンは商標名Permethyl 99AのもとにPermethyl Corporation社によって製造されている。市販の各種C16イソパラフィン、例えばイソヘキサデカン(商標名Permethyl R)も適している。
【0044】
B. 不揮発性オイル
さまざまな不揮発性オイルもまた、本発明の組成物中で用いるのに適している。不揮発性オイルは一般に、25℃で約5〜10センチストークスより高い粘度を有し、粘度には25℃で最大約1,000,000センチポイズまでの幅がある。不揮発性オイルの例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
1. エステル
適当なエステルはモノ-、ジ-およびトリエステルである。本組成物はこのグループまたはそれらの混合物から選択される1種以上のエステルを含むことができる。
【0045】
(a) モノエステル
モノエステルは、式R-COOH(ここで、Rは直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和の炭素原子数2〜45のアルキル、またはフェニルである)を有するモノカルボン酸と、式R-OH(ここで、Rは直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和の炭素原子数2〜30のアルキル、またはフェニルである)を有するアルコールとの反応により形成されるエステルとして定義される。アルコールと酸はどちらも1個以上のヒドロキシル基で置換されていてよい。酸またはアルコールのいずれか一方または両方が「脂肪」酸または「脂肪」アルコールであり、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和形態で約6〜30個の炭素原子、さらに好ましくは12、14、16、18または22個の炭素原子を有する。本発明の組成物で使用できるモノエステルオイルの例としては、以下が挙げられる:ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ブチル、イソステアリン酸ヘキサデシル、パルミチン酸セチル、ネオペンタン酸イソステアリル、ヘプタン酸ステアリル、イソノナン酸イソステアリル、乳酸ステアリル、オクタン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、イソノナン酸イソノニルなど。
【0046】
(b) ジエステル
適当なジエステルは、ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族アルコールとの、または少なくとも2個のヒドロキシル置換基を有する脂肪族もしくは芳香族アルコールとモノカルボン酸との反応生成物である。ジカルボン酸は2〜30個の炭素原子を含み、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和形態でありうる。ジカルボン酸は1個以上のヒドロキシル基で置換されていてよい。脂肪族もしくは芳香族アルコールも2〜30個の炭素原子を含み、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和形態でありうる。好ましくは、酸またはアルコールの1種以上が脂肪酸または脂肪アルコールであり、すなわち、12〜22個の炭素原子を含む。ジカルボン酸もまたαヒドロキシ酸でありうる。このエステルは二量体または三量体の形であってもよい。本発明の組成物で使用できるジエステルオイルの例としては、以下が挙げられる:マレイン酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジブチル、ダイマージリノール酸ジセテアリル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジイソセチル、アジピン酸ジイソノニル、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、フマル酸ジイソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、リンゴ酸ジオクチルなど。
【0047】
(c) トリエステル
適当なトリエステルは、トリカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族アルコールとの反応生成物、または3個以上のヒドロキシル置換基を有する脂肪族もしくは芳香族アルコールとモノカルボン酸との反応生成物を含む。上記のモノ-およびジエステルと同様に、酸およびアルコールは2〜30個の炭素原子を含み、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖であってよく、また、1個以上のヒドロキシル基で置換されていてよい。好ましくは、酸またはアルコールの1種以上が12〜22個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪アルコールである。トリエステルの例としては、以下が挙げられる:アラキドン酸、クエン酸またはベヘン酸のエステル、例えばトリアラキジン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリイソステアリル、クエン酸トリC12-13アルキル、トリカプリリン、クエン酸トリカプリリル、ベヘン酸トリデシル、クエン酸トリオクチルドデシル、ベヘン酸トリデシル;またはヤシ油脂肪酸トリデシル、イソノナン酸トリデシルなど。
【0048】
本組成物中で用いるのに適したエステルはさらに、C.T.F.A. Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook (CTFA化粧品成分辞典), 第11版, 2006に「Esters」の分類のもとで記載されており、その内容を参照によりそのまま本明細書に組み入れる。
【0049】
2. 炭化水素オイル
本組成物中に1種以上の不揮発性炭化水素オイルを加えることが望ましいこともある。適当な不揮発性炭化水素オイルにはパラフィン系炭化水素およびオレフィン類(好ましくは、約20個より多い炭素原子を有するもの)が含まれる。そのような炭化水素オイルの例として、C24-28オレフィン、C30-45オレフィン、C20-40イソパラフィン、水添ポリイソブテン、ポリイソブテン、ポリデセン、水添ポリデセン、ミネラルオイル、ペンタヒドロスクアレン、スクアレン、スクアラン、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、この種の炭化水素は約300〜1000ダルトンの分子量を有する。
【0050】
3. 脂肪酸のグリセリルエステル
合成または天然の脂肪酸のグリセリルエステル、つまりトリグリセリドも本組成物中で用いるのに適している。植物と動物の両供給源が使用可能である。こうしたオイルの例は、以下のものである:ヒマシ油、ラノリン油、C10-18トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/トリグリセリド、スイートアーモンド油、アンズ核油、ゴマ油、カメリナ油(camelina sativa oil)、タマヌ種子油(tamanu seed oil)、ヤシ油、コーン油、綿実油、アマニ油、インク油(ink oil)、オリーブ油、パーム油、イリペバター(illipe butter)、ナタネ油、ダイズ油、グレープシードオイル、ヒマワリ油、クルミ油、ホホバ油、メドウフォーム油、カノラ油、ムルムルバター(murumuru seed butter)など。
【0051】
さらに、修飾された天然の脂肪またはオイルである脂肪酸モノ-、ジ-またはトリグリセリドのような、合成または半合成のグリセリルエステル、例えば、グリセリンのようなポリオールのモノ-、ジ-またはトリエステルも適している。例として、脂肪(C12-22)カルボン酸を1個以上の反復グリセリル基と反応させる。ステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル-3、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、リシノレイン酸ポリグリセリル-6、ジオレイン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、テトライソステアリン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、ジステアリン酸ジグリセリル、リノール酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、PEGヒマシ油、オレイン酸PEGグリセリル、ステアリン酸PEGグリセリル、牛脂脂肪酸PEGグリセリルなど。
【0052】
4. 不揮発性シリコーン
不揮発性シリコーン油(水溶性または水不溶性)もまた本組成物中で用いるのに適している。そのようなシリコーンは25℃で約5〜800,000cst、好ましくは20〜200,000cstの粘度を有する。適当な水不溶性シリコーンにはアモジメチコン(amodimethicone)のようなアミン官能性シリコーンが含まれる。
【0053】
例えば、不揮発性シリコーンは次の一般式をもつことができる:
【化5】

【0054】
上記式中、RおよびR'はそれぞれ独立して、C1-30直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和アルキル、フェニル、アリール、またはトリアルキルシロキシであり、xおよびyはそれぞれ独立して1〜1,000,000であり(ただし、xまたはyの少なくとも1つが存在する)、そしてAはアルキルシロキシ末端キャップ単位である。Aがメチルシロキシ末端キャップ単位、特にトリメチルシロキシであり、RおよびR'がそれぞれ独立してC1-30直鎖または分岐鎖アルキル、フェニルまたはトリメチルシロキシ、さらに好ましくはC1-22アルキル、フェニルまたはトリメチルシロキシ、最も好ましくはメチル、フェニルまたはトリメチルシロキシである場合が好適であり、その結果生じるシリコーンはジメチコン、フェニルジメチコン、ジフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、またはトリメチルシロキシフェニルジメチコンである。その他の例としては、アルキルジメチコン、例えばセチルジメチコン、および少なくとも1つのRが脂肪アルキル(C12、C14、C16、C18、C20、またはC22)で、他のRがメチルであり、Aがトリメチルシロキシ末端キャップ単位である同様のジメチコンが含まれるが、ただし、そのようなアルキルジメチコンは室温で注入可能な液体であることを条件とする。フェニルトリメチコンはDow Corning社から556 Fluidという商標名で購入することができる。トリメチルシロキシフェニルジメチコンはWacker-Chemie社からPDM-1000の商標名で購入することができる。セチルジメチコンは、リキッドシリコーンワックス(liquid silicone wax)とも呼ばれており、Dow Corning社からFluid 2502として、またはDeGussa Care & Surface Specialties社からAbil Wax 9801または9814の商標名で購入することができる。
【0055】
さらにまた、1種以上の保湿剤を本組成物中に含めることも望ましいかもしれない。適当な保湿剤の例としてはグリコール類、糖類などがある。適当なグリコール類はモノマーまたはポリマーの形をしており、ポリエチレンおよびポリプロピレングリコール、例えばPEG 4-200(4〜200の繰り返しエチレンオキシド単位を有するポリエチレングリコール);ならびにC1-6アルキレングリコール、例えばプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールなどが含まれる。適当な糖類(そのうちの一部は多価アルコールでもある)もまた好ましい保湿剤となる。そのような糖類の例としては、グルコース、フルクトース、ハチミツ、還元ハチミツ、イノシトール、マルトース、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、スクロース、キシリトール、キシロースなどがある。尿素も適している。好ましくは、本発明の組成物中で用いる保湿剤はグリセリンである。
【0056】
本発明の組成物中で用いるのに適したさらなる界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性、両性または両性イオン性である。本組成物は2種以上の界面活性剤を含んでもよい。一般的に、界面活性剤の量は、全組成物の重量基準で、約0.001〜50%、好ましくは約0.005〜45%、さらに好ましくは約0.01〜40%の範囲でありうる。界面活性剤には以下で説明するものが含まれる。
【0057】
1. 非イオン性界面活性剤
本発明の組成物においては各種の非イオン性界面活性剤を用いることができる。好ましくは、そのような界面活性剤は約12〜20、さらに好ましくは約13〜16のHLB(親水性/親油性バランス)を有する。非イオン性界面活性剤の非限定的な例として、以下が挙げられる:
(a) アルコキシル化アルコール
適当なアルコキシル化アルコールには、脂肪族、芳香族または複素環式アルコールとアルキレンオキシド(一般には、エチレンまたはプロピレンオキシド)との反応から形成されるエーテル類が含まれる。好ましくは、アルコールは脂肪族アルコール、さらに好ましくは炭素原子数10〜22の脂肪アルコールであり、アルキレンオキシドはエチレンオキシドである。好適なアルコキシル化アルコールの例としては、1〜200の繰り返しエチレンオキシド単位を有する、ステアレス(steareth)、セテス(ceteth)、セテアレス(ceteareth)、ベヘネス(beheneth)など、さらに脂肪酸のPEG誘導体、例えばジオレイン酸PEG、ジステアリン酸PEG、イソステアリン酸PEGなどがある。
【0058】
(b) ソルビタン誘導体
適当なソルビタン誘導体は、ソルビタン(ソルビトールの脱水により形成される複素環式エーテル)のエステルまたはエーテルである。ソルビタンはそのヒドロキシル基のエトキシル化および/またはエステル化により誘導体化される。エステル化に用いるのに適した酸には、C1-30酸、より好ましくは炭素原子数6〜22の脂肪酸が含まれる。適当なソルビタン誘導体の例として、以下が挙げられる:ソルビタンのPEG誘導体(繰り返しエチレンオキシド単位数2〜200)、例えばPEGソルビタンミツロウ、グリセリル/ソルビトール/オレエート/ヒドロキシステアレート、PEGソルビタンココエート、ジイソステアリン酸PEGソルビタン、イソステアリン酸PEGソルビタン、ラノリン脂肪酸PEGソルビタン、ラウリン酸PEGソルビタン、オレイン酸PEGソルビタン、パルミチン酸PEGソルビタン、パーイソステアリン酸PEGソルビタン、パーオレイン酸PEGソルビタン、ステアリン酸PEGソルビタン、テトラオレイン酸PEGソルビタン、テトラステアリン酸PEGソルビタン、トリイソステアリン酸PEGソルビタン;ポリソルベート、例えばポリソルベート20-85、酢酸ポリソルベート80;およびソルビタンエステル、例えばカプリル酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ジイソステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、オリーブ脂肪酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなど。
【0059】
(c) グリセリルエーテル
以下の一般式を有するポリグリセロールの直鎖または分岐鎖エーテルも適している:
R-(Gly)n-OH
式中、nは1〜10であり、Rは直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和の、炭素原子数6〜30のアルキルであり、Glyはグリセロール基である。適当なポリグリセリル誘導体の例としては、デカオレイン酸ポリグリセリル、カプリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、イソパルミチン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリルなどが挙げられる。
【0060】
(d) ジアルキルスルホキシド
また、炭素原子数1〜3の短鎖アルキルまたはヒドロキシアルキル基1個と、炭素原子数8〜20のアルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキルまたはケトアルキル基でありうる長鎖疎水性基1個と、エチレンオキシド部分0〜10個と、グリセリル部分0または1個を含む長鎖ジアルキルスルホキシドも適している。
【0061】
(e) アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物
適当な縮合物としては、炭素原子数6〜20のアルキル基をもつアルキルフェノールと、アルキルフェノールのモルあたり約10〜60モルの量で存在するエチレンオキシドとの縮合生成物が含まれる。
【0062】
(f) エチレンジアミンの縮合生成物
適当なエチレンジアミンの縮合生成物の例としては、プロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応生成物とエチレンオキシドとの生成物が含まれる。
【0063】
(g) 長鎖第3級アミンオキシド
好適な長鎖第3級アミンオキシドには以下の一般式に相当するものが含まれる:
R1R2R3NO
式中、R1は炭素原子数8〜18のアルキル、アルケニルまたはモノヒドロキシアルキル基、0〜約10個のエチレンオキシド部分、および0〜約1個のグリセリル部分を含み、R2およびR3はそれぞれ炭素原子数1〜3のアルキルまたはモノヒドロキシアルキル基である。
【0064】
(h) 長鎖第3級ホスフィンオキシド
適当な長鎖第3級ホスフィンオキシドには以下の一般式に相当するものが含まれる:
R1R2R3PO
式中、R1は炭素原子数8〜18のアルキル、アルケニルまたはモノヒドロキシアルキル基、0〜10個のエチレンオキシド部分、および0または1個のグリセリル部分を含み、R2およびR3はそれぞれ炭素原子数1〜3のアルキルまたはモノヒドロキシアルキル基である。
【0065】
(i) ポリヒドロキシ脂肪酸アミド
C10-18の例は、アルキル(C1-6)ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、例えばC12-18メチルグルカミド、N-アルコキシポリヒドロキシ脂肪酸アミド、N-プロピルからN-ヘキシルC12-18グルカミドなどである。
【0066】
(j) アルキルポリサッカライド
適当な非イオン性界面活性剤はアルキルポリサッカライド、つまりアルキルグリコシドであり、これらは米国特許第5,716,418号および第5,756,079号に開示されており、両特許を参照により本明細書に組み入れる。これらのアルキルグリコシドは以下の一般式を有する:
【化6】

【0067】
式中、R1は直鎖または分岐鎖の炭素原子数12〜30のアルキルまたはアルケニル基であり、R2はC2-4アルキレンであり、(G)はアンヒドログルコース単位であり、tは0〜10、好ましくは0〜4の数であり、そしてnは約1〜15の数である。そのようなアルキルポリサッカライドの例は、オクチル、ノニデシル、ウンデシルドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、およびオクタデシル、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、およびヘキサグルコシド、ガラクトシド、ラクトシド、グルコース、フルクトシド、フルクトースなどである。上記式を有するいくつかのポリグリコシドはHenkel社から商標名APG 300、APG 350、APG 500、APG 550、APG 625として、または商標名Planteren、例えばPlanteren 300、600、1200、2000などとして販売されている。
【0068】
2. アニオン性界面活性剤
1種以上のアニオン性界面活性剤も本発明の組成物中で用いるのに適している。
【0069】
(a) アルキル硫酸塩
アニオン性界面活性剤には一般に式ROSO3MおよびRO(C2H4O)xSO3Mを有するアルキルおよびアルキルエーテル硫酸塩が含まれ、式中、Rは炭素原子数約10〜20のアルキルまたはアルケニルであり、xは1〜約10であり、そしてMは水溶性カチオン、例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム、またはトリエタノールアミンのカチオンである。
【0070】
本発明の組成物中で使用できるアニオン性界面活性剤の別のタイプは、以下の一般式の有機硫酸反応生成物の水溶性塩である:
R1SO3-M
式中、R1は直鎖または分岐鎖の、炭素原子数約8〜約24、好ましくは12〜約18の、飽和脂肪族炭化水素基からなる群より選択され、そしてMはカチオンである。このようなアニオン性界面活性剤の例は、炭素原子数8〜24のn-パラフィンのような炭化水素と、三酸化硫黄のようなスルホン化剤の有機硫酸反応生成物の塩である。
【0071】
(b) イセチオン酸によりエステル化された脂肪酸
脂肪酸をイセチオン酸でエステル化しかつ水酸化ナトリウムで中和した反応生成物もアニオン性界面活性剤として適している。脂肪酸はヤシ油または他の同様の脂肪酸含有植物もしくは動物油に由来するものである。
【0072】
(c) スクシネートまたはスクシニメート
さらに、スクシネートまたはスクシニメート(succinimate)も適当なアニオン性界面活性剤である。このクラスには、N-オクタデシルスルホコハク酸ジナトリウム;N-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホコハク酸テトラナトリウム;およびスルホコハク酸ナトリウムのエステル、例えばスルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルなどの化合物が含まれる。
【0073】
(d) オレフィンスルホン酸塩
その他の適当なアニオン性界面活性剤には、約12〜24個の炭素原子を有するオレフィンスルホン酸塩が含まれる。「オレフィンスルホン酸塩」という用語は、αオレフィンを三酸化硫黄(錯体を形成していないもの)でスルホン化し、続いて、この反応で形成されたスルホンを加水分解して対応するヒドロキシ-アルカンスルホン酸塩を生成するような条件下で、酸反応混合物を中和することにより得られる化合物を意味する。オレフィンスルホン酸塩を誘導するためのαオレフィンは、約12〜24個の炭素原子、好ましくは約14〜16個の炭素原子を有するモノオレフィンである。
【0074】
(e) 石鹸
他の適当なアニオン性界面活性剤はβ-アルコキシアルカンスルホン酸塩またはその水溶性石鹸、例えばC10-20脂肪酸の塩(例:ヤシ油および獣脂ベースの石鹸)である。好ましい塩はアンモニウム、カリウムおよびナトリウム塩である。石鹸はまた、1種以上の脂肪酸とモノ-、ジ-またはトリアルカノールアミンとの反応からも形成することができる。
【0075】
(f) N-アシルアミノ酸
アニオン性界面活性剤のさらに別のクラスには、次式を有するN-アシルアミノ酸界面活性剤およびその塩が含まれ、式中、R1はC8-24アルキルまたはアルケニル基、好ましくはC10-18であり; R2はH、C1-4アルキル、フェニル、または-CH2COOMであり; R3はCX2-またはC1-2アルコキシであり、ここで各Xは独立してHまたはC1-6アルキルもしくはアルキルエステルであり; nは1〜4であり、MはHまたは上記のようなカチオンを形成する塩である。そのような界面活性剤の例はN-アシルサルコシネート、例えば、ラウロイルサルコシネート、ミリストイルサルコシネート、ココイルサルコシネート、およびオレオイルサルコシネート、好ましくはそれらのナトリウムまたはカリウム形態である。
【0076】
3. カチオン性、両性または両性イオン性界面活性剤
さらに、特定のタイプの両性、両性イオン性、またはカチオン性界面活性剤も両親媒性界面活性物質として使用することができる。そのような界面活性剤の説明は米国特許第5,843,193号に記載されており、それを参照によりそのまま本明細書に組み入れる。
【0077】
本発明の組成物中で使用できる両性界面活性剤は、脂肪族第2級または第3級アミンの誘導体(1個の脂肪族基は炭素原子数8〜18の直鎖または分岐鎖アルキルであり、他の脂肪族基はカルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェートまたはホスホネートなどのアニオン基を含む)として一般的に記載される。適当な両性界面活性剤は以下の一般式を有するイミダゾリウム化合物である:
【化7】

【0078】
式中、R1はC8-22アルキルまたはアルケニル、好ましくはC12-16であり; R2は水素またはCH2CO2Mであり; R3はCH2CH2OHまたはCH2CH2OCH2CHCOOMであり; R4は水素、CH2CH2OHまたはCH2CH2OCH2CH2COOMであり; ZはCO2MまたはCH2CO2Mであり; nは2または3、好ましくは2であり; Mは水素またはカチオン、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、またはアルカノールアンモニウムカチオンである。そのような物質の例はMiranol社からMIRANOLの商標名で販売されている。
【0079】
さらに、適当な両性界面活性剤はモノカルボキシレートまたはジカルボキシレート、例えば、ココアンホカルボキシプロピオネート、ココアンホカルボキシプロピオン酸、ココアンホカルボキシグリシネート、およびココアンホアセテートである。
【0080】
他のタイプの両性界面活性剤には、式R-NH(CH2)nCOOMのアミノアルカノエートまたは式R-N[(CH2)mCOOM]2のイミノジアルカノエートおよびこれらの混合物が含まれ、式中、nおよびmは1〜4であり、RはC8-22アルキルまたはアルケニルであり、Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、またはアルカノールアンモニウムである。そのような両性界面活性剤の例としては、n-アルキルアミノプロピオネートおよびn-アルキルイミノジプロピオネート、例えば、N-ラウリル-β-アミノプロピオン酸、N-ラウリル-β-イミノ-ジプロピオン酸、またはこれらの混合物が挙げられ、これらはMiranol社からMIRATAINEの商標名で、またはHenkel社からDERIPHATの商標名で販売されている。
【0081】
両性イオン性界面活性剤も本発明の組成物中で用いるのに適している。そのような界面活性剤の一般式は以下のとおりである:
【化8】

【0082】
式中、R2は、約8〜約18個の炭素原子のアルキル、アルケニルまたはヒドロキシアルキル、0〜約10個のエチレンオキシド部分、および0または1個のグリセリル部分を含み; Yは窒素、リンおよび硫黄原子からなる群より選択され; R3は約1〜3個の炭素原子を含むアルキルまたはモノヒドロキシアルキルであり; Xは、Yが硫黄原子であるとき1で、Yが窒素またはリン原子であるとき2であり; R4は約1〜約4個の炭素原子のアルキレンまたはヒドロキシアルキレンであり; そしてZはカルボン酸、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸およびリン酸基からなる群より選択される基である。
【0083】
両性イオン性界面活性剤としては、以下のようなベタインが挙げられる:高級アルキルベタイン、例えば、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルαカルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルγカルボキシエチルベタイン、およびこれらの混合物。スルホ-およびアミド-ベタインも適しており、例えば、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ババスアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタインなどである。
【0084】
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに詳しく説明することにする。
【実施例】
【0085】
実施例1 潜在的保湿成分組成物を識別するための試験方法
はじめに
長年にわたり、ヒトの毛髪の機械的性質を評価するために引張試験が使用されてきた。ヒト毛髪の水分含量に対する各種の成分組成物(表II)の効果が検討された。ケラチン繊維の水分含量が増加すると、ヤング率、引張強度および破断仕事量(work to break)が減少し、同時に伸長が増加することが判っている。毛髪を対照処方物(「組成物」の項に記載するように、水性担体のみ)または成分組成物のいずれかで処理した。毛髪の断面積はMitutoyoレーザーマイクロメーターを使って測定した。次に、Dia-Stron MTT675繊維・毛髪自動引張試験機で毛髪を破断点まで引き伸ばして、応力/ひずみ曲線を作成した。その後、得られた曲線を利用して、ヒト毛髪の機械的性質に及ぼす成分組成物の影響を評価した。
【0086】
ヒト毛髪の応力/ひずみ曲線は明確に区別される3つの領域を有する:フック(Hookean)領域、降伏領域および後降伏領域。フック領域では、応力がひずみまでほぼ直線的である。ヤング率または弾性率を計算することができるのはその傾きからである。ヤング率は次のように定義される:
E=ΔF*L/ΔL*A
ここで、ΔFは長さの変化によって誘導される力の変化であり、ΔLは繊維の平衡長さであり、そしてAは断面積である。試験した毛髪の水分含量が多ければ多いほど、毛髪が柔らかいのでそれを引き伸ばすのに必要とされる仕事量は少ない。
【0087】
ヤング率および断面積に加えて、検討される他のパラメーターには、毛髪を15%伸長まで引き伸ばす仕事量、破断までの応力(引張強度または破断荷重とも呼ばれる)、破断までの伸長百分率、および破断までの全仕事量(応力/ひずみ曲線下面積)が含まれる。ぬれた髪はあまり強くないため、毛髪を破断するのに要する力がそれだけ小さくなる(破断荷重の減少)。保湿された髪の毛も水分保持の結果として比較的容易に破断する。
【0088】
保湿成分組成物の効果を評価するために実施した試験は3つのパートに分けられる。すなわち、パートIは、ヒト毛髪に水分を効果的に供給する成分の組成物を見つけ出すために実施された(表III)。パートIIは、毛髪にさらなる水分の効果を供給するセルロース系ポリマーを見つけるために実施された(表Va)。試験のパートIIIでは、Ultra Moisturizing Complexにより毛髪に与えられた保湿の寿命を評価した。
【0089】
試験毛髪の準備
毛髪の引張特性は主に皮質の特性であることが証拠から示唆されている。したがって、成分組成物の効果を強調するために、試験に用いる毛髪にダメージを与えて、その空隙率を増やした(すなわち、キューティクルの鱗片を分離した)。毛髪の空隙率が増加すると、成分組成物が皮質に到達しやすくなり、そのため(ダメージを受けてない毛髪での試験と比べて)引張試験の結果を強調することができると理論上考えられた。
【0090】
ヨーロッパ人の標準的な茶色の毛髪をワックスで固定した幅75mmの毛束に、市販の脱色剤とパーマを用いて化学的ダメージを与えた。最初に、市販の脱色剤を37℃で30分間用いて、毛束を脱色した。次に、その毛髪標本を37℃の水道水で1分間すすいだ。脱色後、9%チオグリコール酸ナトリウムを含む市販のアルカリ性パーマ液で毛髪標本を処理した。パーマ液の滞留時間を8分とし、その後、毛束を37℃の水道水で10分間すすいだ。次いで、その毛束を10分間空気中和させてから、市販の中和剤で処理した。毛束をさらに5分間処理した。処理後、その毛束を37℃の水道水で5分間すすぎ、空気乾燥させた。
【0091】
水性担体の調製
試験に用いた水性ベースの担体は、2.0%セチルアルコール、2.0%ステアリン酸グリセリル/PEG-100、2.0%グリセリン、および0.3%ジアゾリジニル尿素を含む処方物からなるものであった。この水性担体は引張試験の対照処方物としても使用した。
【0092】
成分組成物の調製
各成分組成物(表II、VbおよびVII)のため、材料を適当なサイズのビーカーに入れて一緒にし、均質なバッチとなるように適度に撹拌しながら80℃に加熱した。その後、加熱を止めて、溶液を適度に撹拌しながら室温に戻した。
【0093】
毛髪の処理
各試験(表III、VIおよびIX)を行うため、上記の手順で化学的ダメージを与えた大きい毛束から約7mmの毛束を2つ切り取った。これらの毛束を毛束1および毛束2とラベルした。毛束1に対照処方物(水性担体のみ)を塗りつけた。確実に飽和状態とするため毛束1に対照処方物を過剰に塗りつけた。その毛束をプラスチック製くしでとかし、プラスチック製計量ボートに入れて50℃のオーブン内に30分間置いた。オーブンから取り出した後、その毛束を37℃の水道水で1分間すすいでから一晩空気乾燥させた。次に、指定した成分組成物を毛束2に過剰に塗りつけて飽和状態にした。その毛束をプラスチック製くしでとかし、プラスチック製計量ボートに入れて50℃のオーブン内に30分間置いた。オーブンから取り出した後、その毛束を37℃の水道水で1分間すすいでから一晩空気乾燥させた。
【0094】
寿命試験(表IX)のため、最初に毛髪を上記のように処理した。次に、シャンプーを以下のように使用した。すなわち、ぬれた毛束に、飽和状態にするためシャンプーを過剰につけ、次にシャンプーを毛束の中に30秒間もみ込み、その後37℃の水道水で1分間すすいでから空気乾燥させた。その後この手順を9回繰り返して、合計10回洗浄した。
【0095】
毛束を5%ラウリル硫酸ナトリウム(表IX)で処理するため、ラウリル硫酸ナトリウム溶液を含むビーカーの中に毛髪を30回(1回につき1秒)浸し、次に37℃の水道水で1分間すすいでから空気乾燥させた。その後この手順を9回繰り返して、合計10回洗浄した。引張試験を5回の洗浄後と、10回の洗浄後にも実施した。
【0096】
引張試験法
毛束1(対照で処理したもの)から50本の髪の毛を無作為に選択し、真鍮製ファスナーの中に根元から毛先まで手で通した。次にプレスを使ってファスナーを固定した。これらのサンプルを1〜50とラベルした。毛束2(指定した成分組成物で処理したもの)から50本の髪の毛を無作為に選択し、真鍮製ファスナーの中に根元から毛先まで手で通した。次にプレスを使ってファスナーを固定した。毛束2からのサンプルを51〜100とラベルした。次に、サンプル(1〜100)の断面積をレーザースキャンマイクロメーター(18m-6100およびLSM 500H) MTT 765で測定した。各サンプルから5つのスライス(スキャン)を取り出して平均断面積を求めた。毛髪の断面積は後で引張試験データに組み入れた。
【0097】
次に、サンプルを引張試験機MTT 675 (675.04.02.001)の100サンプルカセットに入れた。サンプルはその根末端をカセットの内側に向けて装填した。その後、均等化するために相対湿度65%の制御環境チャンバーモデル518(electro-tech systems社製)にサンプルを一晩配置した。その後、毛髪繊維を12.5mm/分の伸長速度で破断点まで引き伸ばした。
【0098】
その後、UvWinソフトウェアを用いてデータを解析し、さらなる解析のためMicrosoft Excelにエクスポートした。全試験の統計的有意性は両側t検定(α=0.05)により確認した。
【0099】
表IIIに記載した各引張試験のために上記の方法を繰り返した。
【0100】
実施例2 引張試験結果 - パートI
表IVに示した数値は、水だけの対照からの変化%を表し、以下のように算出される:
(サンプル−対照)/対照×100
試験1
試験1(表III)では、対照処方物で処理した毛髪を成分組成物A(表II)で処理した毛髪と比較した。対照と成分組成物Aで処理した毛髪との間に断面積または全仕事量における有意差は認められなかった。さらに、15%伸長時の仕事量、破断荷重およびヤング率は有意に増加したが、破断伸長は減少した。試験1の結果を表IVに示す。これらの結果はケラチン水分含量の増加を示さなかった。したがって、成分組成物Aのさらなる試験を続行しないことにした。
【0101】
試験2
試験2(表III)では、対照処方物で処理した毛髪を成分組成物B(表II)で処理した毛髪と比較した。対照を成分組成物Bで処理した毛髪と比較したとき、断面積、ヤング率、15%伸長時の仕事量、破断伸長または全仕事量に有意差が認められなかった。破断荷重は有意に増加した。試験2の結果を表IVに示す。これらの結果はケラチン水分含量の増加を示さなかった。したがって、成分組成物Bのさらなる試験を続行しないことにした。
【0102】
試験3
試験3(表III)では、対照処方物で処理した毛髪を成分組成物C(表II)で処理した毛髪と比較した。対照と成分組成物Cで処理した毛髪との間には、断面積、破断伸長、15%伸長時の仕事量または全仕事量に有意差が認められなかった。破断荷重とヤング率は有意に増加した。試験3の結果を表IVに示す。これらの結果はケラチン水分含量の増加を示さなかった。したがって、成分組成物Cのさらなる試験を続行しないことにした。
【0103】
試験4
試験4(表III)では、対照処方物で処理した毛髪を成分組成物D(表II)で処理した毛髪と比較した。対照と成分組成物Dで処理した毛髪との間には、断面積、15%伸長時の仕事量、破断伸長または全仕事量に有意差が認められなかった。破断荷重とヤング率は有意に増加した。試験4の結果を表IVに示す。これらの結果はケラチン水分含量の増加を示さなかった。したがって、成分組成物Dのさらなる試験を続行しないことにした。
【0104】
試験5
試験5(表III)では、対照処方物で処理した毛髪を成分組成物E(表II)で処理した毛髪と比較した。対照を成分組成物Eで処理した毛髪と比較したとき、15%伸長時の仕事量、破断伸長または全仕事量に有意差が認められなかった。断面積は有意に増加したが、ヤング率と破断荷重は有意に減少した。試験5の結果を表IVに示す。これらの結果は保湿特性を示すことができたが、オオムギ(Hordeum distichon)とトマト(Solanum Lycopersicum)の実/葉/茎の複合エキスのサンプルを一貫して得ることの問題ゆえに、可能性のある他の成分組成物を追跡することにした。
【0105】
試験6
試験6(表III)では、対照処方物で処理した毛髪を成分組成物F(表II)で処理した毛髪と比較した。対照を成分組成物Fで処理した毛髪と比較したとき、断面積、15%伸長時の仕事量、または全仕事量に有意差が認められなかった。破断荷重とヤング率は有意に増加したが、破断伸長は有意に減少した。試験6の結果を表IVに示す。これらの結果はケラチン水分含量の増加を示さなかった。したがって、成分組成物Fのさらなる試験を続行しないことにした。
【0106】
試験7
試験7(表III)では、対照処方物で処理した毛髪を成分組成物G(表II)で処理した毛髪と比較した。対照を成分組成物Gで処理した毛髪と比較したとき、断面積、15%伸長時の仕事量、破断伸長、破断荷重、ヤング率、または全仕事量に有意差が認められなかった。試験7の結果を表IVに示す。これらの結果はケラチン水分含量の増加を示さなかった。したがって、成分組成物Gのさらなる試験を続行しないことにした。
【0107】
試験8
試験8(表III)では、対照処方物で処理した毛髪を成分組成物H(表II)で処理した毛髪と比較した。対照を成分組成物Hで処理した毛髪と比較したとき、断面積、15%伸長時の仕事量、破断伸長、破断荷重、または全仕事量に有意差が認められなかった。しかし、ヤング率は有意に減少し、成分組成物Hが保湿特性を有することを示した。試験8の結果を表IVに示す。したがって、組成物Hについては、さらなる試験を行うことにした。
【表2】

【表3】

【表4】

【0108】
実施例3 引張試験結果 - パートII
表VIIIに示した数値は、水だけの対照からの変化%を表し、以下のように算出される:
(サンプル−対照)/対照×100
試験9
試験9(表Vb)では、対照処方物で処理した毛髪を0.75%のJaguar C135セルロース系ポリマー(表Va)で処理した毛髪と比較した。対照をJaguar C135セルロース系ポリマーで処理した毛髪と比較したとき、断面積、15%伸長時の仕事量、または全仕事量に有意差が認められなかった。破断荷重とヤング率は有意に増加し、一方破断伸長は有意に減少した。試験9の結果を表VIIIに示す。これらの結果はケラチン水分含量の増加を示さなかった。したがって、Jaguar C135セルロース系ポリマーのさらなる試験を続行しないことにした。
【0109】
試験10
試験10(表Vb)では、対照処方物で処理した毛髪を0.75%のJR-30Mセルロース系ポリマー(表Va)で処理した毛髪と比較した。対照をJR-30Mセルロース系ポリマーで処理した毛髪と比較したとき、断面積に有意差が認められなかった。破断伸長の有意な増加と、破断荷重、ヤング率、全仕事量および15%伸長時の仕事量の有意な減少が認められた。試験10の結果を表VIIIに示す。ヤング率の有意な減少はJR-30Mセルロース系ポリマーが保湿特性をもつことを示すので、このセルロース系ポリマーを用いてさらなる試験を行うことにした。
【0110】
試験11
試験11(表VI、VII)では、試験8で保湿特性をもつことが示された成分組成物Hを、試験10で保湿特性をもつことが示されたセルロース系ポリマーJR30Mと組み合わせることによってUltra Moisturizing Complex(超保湿複合体)を処方した。対照処方物で処理した毛髪をUltra Moisturizing Complexで処理した毛髪と比較した。断面積、15%伸長時の仕事量、破断伸長、破断荷重または全仕事量に有意差が認められなかった。ヤング率は有意に減少した。試験11の結果を表VIIIに示す。ヤング率の有意な減少はUltra Moisturizing Complexに起因する保湿特性を示すので、Ultra Moisturizing Complexによって毛髪に与えられた保湿効果の寿命を調べるためのさらなる試験を行うことにした。
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【0111】
実施例4 引張試験結果 - パートIII
表Xに示した数値は、水だけの対照からの変化%を表し、以下のように算出される:
(サンプル−対照)/対照×100
試験12および13
試験12および13(表IX)では、Ultra Moisturizing Complex(表VII)によって毛髪に与えられた保湿効果の寿命を評価した。この試験では、3つのサンプルを分析した:(1)対照処方物で処理した毛髪、(2)Ultra Moisturizing Complexで処理した毛髪、および(3)Ultra Moisturizing Complexで処理した後に市販の基本シャンプー(全ヘアタイプ用のPrellシャンプー)で10回シャンプーした毛髪。これらの試験の目的は、Ultra Moisturizing Complexが毛髪に長期の保湿(すなわち、標準シャンプーによる多数回の洗浄を通して持続する水分)を提供できることを示すことである。
【0112】
Ultra Moisturizing Complexで処理した後に標準シャンプーで10回洗浄した毛髪を対照と比較したとき、15%伸長時の仕事量、全仕事量または破断伸長に有意差が認められなかった。ヤング率と破断荷重は有意に減少し、同時に断面積も有意に減少した。これらの結果は、標準シャンプーで10回洗浄した後でも、Ultra Moisturizing Complexにより毛髪に与えられた水分がまだ残っていることを示している。試験12の試験結果を表Xに示す。
【0113】
Ultra Moisturizing Complexの効果が10回のシャンプー後に著しく低下しないことを示すために、Ultra Moisturizing Complexで処理してから基本シャンプーで10回洗浄した毛髪をUltra Moisturizing Complexのみで処理した毛髪と比較した。Ultra Moisturizing Complexで処理してから標準シャンプーで10回洗浄した毛髪を対照と比較したとき、15%伸長時の仕事量、全仕事量、破断荷重、ヤング率または破断伸長に関して有意差が認められなかった。断面積が有意に増加したが、これは多数回のシャンプーが髪の毛を膨潤させた可能性があることを示している。試験13の試験結果を表Xに示す。
【0114】
試験14
試験14(表IX)では、Ultra Moisturizing Complex(表VII)によって毛髪に与えられた保湿効果の寿命を評価した。この試験では、毛髪を対照処方物で処理し、この対照毛髪を、Ultra Moisturizing Complexで処理してから5%ラウリル硫酸ナトリウム溶液で10回シャンプーした毛髪と比較した。この試験の目的は、Ultra Moisturizing Complexが多数回のシャンプーを通じて持続する水分を毛髪に与えることができるかを観察することである。しかし、ラウリル硫酸ナトリウムは日常づかいのシャンプーより「きつい」と考えられる。
【0115】
Ultra Moisturizing Complexで処理してから5%ラウリル硫酸ナトリウムで10回洗浄した毛髪を対照と比較したとき、断面積、15%伸長時の仕事量、破断荷重、全仕事量、またはヤング率に関して有意差が認められなかった。破断伸長は有意に減少した。これらの結果は、5%ラウリル硫酸ナトリウムによる10回のシャンプー後に、Ultra Moisturizing Complexにより毛髪に与えられた水分が残っていないことを示している。したがって、ラウリル硫酸ナトリウムによる洗浄の回数を10回から5回に減らして、この試験を繰り返すことにした。試験14の結果を表Xに示す。
【0116】
試験15
試験15(表IX)では、Ultra Moisturizing Complex(表VII)によって毛髪に与えられた保湿効果の寿命を評価した。この試験では、毛髪を対照処方物で処理し、この対照毛髪を、Ultra Moisturizing Complexで処理してから5%ラウリル硫酸ナトリウム溶液で5回シャンプーした毛髪と比較した。この試験の目的は、Ultra Moisturizing Complexが多数回のシャンプーを通じて持続する水分を毛髪に与えることができるかを観察することである。
【0117】
Ultra Moisturizing Complexで処理してから5%ラウリル硫酸ナトリウムで5回洗浄した毛髪を対照と比較したとき、断面積、15%伸長時の仕事量、破断荷重、全仕事量、または破断伸長に関して有意差が認められなかった。ヤング率は有意に減少した。これらの結果は、5%ラウリル硫酸ナトリウムによる5回のシャンプー後に、Ultra Moisturizing Complexにより毛髪に与えられた水分が残っていることを示しており、これは長期にわたる保湿特性を示している。試験15の結果を表Xに示す。
【表9】

【表10】

【0118】
実施例5
表XI:Ultra Moisturizing Complexシャンプー組成物
以下に本発明の組成物を示す。他に指定のない限り、百分率は重量基準である。
【表11】

【0119】
手順: 相Aの成分を主タンクに25℃で混合しながら入れる。均質になったら、85℃へと加熱を開始する。そのバッチが85℃に達したら、相Bの成分を1つずつ加える。30分混合し、27℃へと冷却を開始する。バッチが45℃に達したとき、相Cの成分を個別に混合しながら添加する。
【0120】
実施例6
表XII:Ultra Moisturizing Complexコンディショナー組成物
以下に本発明の組成物を示す。他に指定のない限り、百分率は重量基準である。
【表12】

【0121】
手順: 相Aの成分を主タンクに25℃で加え、均質になるまで混合し、82℃へと加熱を開始する。別の容器に、相Bの成分を加えて、混合しながら82℃へと加熱を開始する。両方の相が82℃になったら、相Bを相Aに添加して30分混合する。27℃へと冷却を開始する。バッチが45℃に達したとき、混合しながら相Cの成分を1つずつ添加する。
【0122】
実施例7
表XIII:Ultra Moisturizing Complexトリートメントマスク組成物
以下に本発明の組成物を示す。他に指定のない限り、百分率は重量基準である。
【表13】

【0123】
手順: 相Aの成分を主タンクに25℃で加え、均質になるまで混合し、80℃へと加熱を開始する。別の容器に、相Bの成分を加えて、混合しながら80℃へと加熱を開始する。両方の相が80℃になったら、相Bを相Aに添加して30分混合する。27℃へと冷却を開始する。バッチが45℃に達したとき、混合しながら相Cの成分を1つずつ添加する。
【0124】
実施例8 Ultra Moisturizing Complexシャンプーの引張および寸法解析
この研究の目的は、Ultra Moisturizing Complexシャンプーがヒト毛髪の引張および寸法特性に及ぼす効果を検討することであった。
【0125】
方法
パートI:引張解析
毛髪の損傷
Ultra Moisturizing Complexシャンプーの効果はレベル2の混合源毛髪を用いて評価した。化学的ダメージを与えるため、髪の毛を脱色してパーマをかけた。脱色剤は、40容の過酸化物発色剤とヘアブリーチングパウダーを2:1の比でヘアカラーボウルに計量することにより調製した。この脱色剤混合物をヘアカラーブラシで十分にかき混ぜて、ファニング法(fanning method)を用いて毛髪に過剰に塗りつけた。毛髪に脱色剤を完全にむらなく塗った後、それを計量ボートに配置して、37℃のオーブンに30分間入れた。毛髪を30分間処理したら、37℃の水道水で1分間すすぎ、5%SLSで洗って過剰の脱色剤を除去した。この方法に続いて、9%チオグリコール酸ナトリウムを含むアルカリ性パーマ液であるパーマネントウェーブ液で処理した。パーマ液を毛髪につけたままにして8分間処理し、次に37℃の水道水で10分間洗い流した。その毛髪を10分間空気中和させてからパーマネントウェーブ用の過酸化物中和剤で処理した。パッケージの説明書きに従って室温で5分間、中和剤を毛髪につけたままにしておいた。処理後、毛束を37℃の水道水で5分間すすぎ、空気乾燥させた。
【0126】
毛髪の処理
ダメージレベル2の混合源毛髪の3つの毛束に以下の処理を割り当てた:
毛束1:水のみ - 対照
毛束2:Ultra Moisturizing Complexシャンプー(実施例5; 表XI)
毛束3:Sap Moss Asiaシャンプー*
毛束1は水道水ですすぎ、30秒間もんでから37℃水道水で1分間すすいだ。これを行うことによって、3つ全ての毛束が等しい水暴露と機械的操作を受けるのを確実にした。毛束2は水道水ですすぎ、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで飽和し、30秒間もんでから37℃水道水で1分間すすいだ。毛束3は水道水ですすぎ、Sap Moss Asiaシャンプーで飽和し、30秒間もんでから37℃水道水で1分間すすいだ。その後、3つ全ての毛束を空気乾燥させた。
【0127】
*Sap Moss Asiaシャンプーの成分は次のとおりである:
水性(水、精製水(Aqua Purificata)、精製済み)エキス: Cetraria Islandica (アイスランド苔)エキス、Yucca Filamentosa (ユッカ)エキス、Saponaria Officinalis (ソープワート(Soapwort))エキス、Quillaja Saponaria (シャボンノキ)エキス、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ココアルキル硫酸ナトリウム、セチルアルコール、メチルココイルタウリンナトリウム、水添ヒマシ油、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ガラクトアラビナン、オリバナム(Olibanum)、Ferula Galbaniflua (ガルバナム(Galbanum))樹脂オイル、ババスアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-7、香料(パルファム)、塩化ナトリウム、クエン酸、グルコン酸ナトリウム、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、カラメルカラー。
【0128】
相対湿度65%での引張解析
毛束1、毛束2および毛束3から50本の髪の毛を無作為に選択し、真鍮製クリンプの中に根元から毛先まで手で通した。次にクリンピングプレスを使ってクリンプを固定し、レーザースキャンマイクロメーターを用いて測定した。5セットの寸法を各サンプルから集めて平均断面積を求めた。サンプルから寸法データを集めた後、クリンプの根末端を引張試験機の100スロットカセットの中心に向けてクリンプを装填した。次に、均等化するために相対湿度65%の制御環境チャンバーにクリンプ装填カセットを一晩置いた。その後、クリンプの引張パラメーターを引張試験機で測定した。データはレーザースキャンマイクロメーターから測定された毛髪の断面積を加えるように標準化され、また、必要とあれば、標準化する前にも検討された。その引張データをUvWinソフトウェアにより解析し、さらなる解析のためMicrosoft Excelにエクスポートした。全比較の統計的有意性は両側t検定(α=0.05)により確認した。
【0129】
相対湿度65%での引張解析の再試験
「相対湿度65%での引張解析」に概説した方法を毛束1および毛束2について繰り返した。
【0130】
相対湿度100%での引張解析
この方法は毛束1および毛束2について相対湿度65%で概説した方法と同じであるが、ただし、クリンプをカセットに装填した後、サンプルを逆浸透水で覆い、確実に飽和させるため最低でも10分間そのままにしておいた。
【0131】
相対湿度85%での引張解析
この方法は毛束1および毛束2について相対湿度65%で概説した方法と同じであるが、ただし、クリンプをカセットに装填した後、均等化するために相対湿度85%の制御環境チャンバーにクリンプ装填カセットを一晩置いた。
【0132】
パートII:寸法データ解析
パートIでレーザースキャンマイクロメーターにより集めた寸法データを3つ全ての引張解析のためにコンパイルした。UvWinソフトウェアを用いてデータを解析し、さらなる解析のためMicrosoft excelにエクスポートした。統計的有意性は両側t検定(α=0.05)により確認した。
【0133】
パートIII:破断伸長データ解析
パートIで引張試験機により集めた破断伸長データを3つ全ての引張解析のためにコンパイルした。UvWinソフトウェアを用いてデータを解析し、さらなる解析のためMicrosoft excelにエクスポートした。統計的有意性は両側t検定(α=0.05)により確認した。
【0134】
結果
この研究のために集めた全データは、Microsoft Excelのデータ解析ツールで対応のある両側t検定(paired two-tailed t-test)を用いて解析した。t検定は「Two-sample Assuming Equal Variance」オプションを利用して行った。
【0135】
パートI:引張解析
表XIV〜XVIに示した数値は、
(サンプル−対照)/対照×100
として算出された、対照からの変化%を表す。全ての表に関して、「サンプル」はUltra Moisturizing Complexによる処理をさす。表XIVおよびXVに関して、「対照」は「水のみの対照」を意味する。
【0136】
相対湿度65%での引張解析
水で処理した対照毛髪をUltra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪と比較したとき、断面積、ヤング率、破断伸長、破断荷重、または全仕事量における有意差が2つの毛束間に認められなかった。結果を表XIVに示す。
【0137】
相対湿度65%で行った再試験の解析によると、この場合も、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪と対照との間に断面積、破断伸長、破断荷重、または全仕事量における有意差はなかった。Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪についてはヤング率の有意な減少が見られた。
【0138】
Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪をSap Moss Asiaシャンプーで処理した毛髪と比較したとき、破断伸長または全仕事量に有意差はなかった。Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪ではヤング率の有意な減少が見られた。Buriti Moistで処理した毛髪では、Sap Moss Asiaシャンプーで処理した毛髪と比較したとき、毛髪の断面積の有意な増加が認められた。断面積における有意差は、標準化破断荷重の計算への寸法データの組み込みを妨げた。その結果、非標準化破断荷重が算出された。解析によると、これら2つの処理間に非標準化破断荷重における有意差はなかった。結果を表XVに示す。
【0139】
相対湿度100%での引張解析
水で処理した対照毛髪をUltra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪と比較したとき、断面積、ヤング率、破断荷重、または全仕事量における有意差が2つの毛束間に認められなかった。Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛束では破断伸長の有意な増加が見られた。結果を表XIVに示す。
【0140】
相対湿度85%での引張解析
対照毛髪をUltra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪と比較したとき、断面積、破断荷重、または全仕事量における有意差が2つの毛束間に認められなかった。Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛束ではヤング率の有意な減少と破断伸長の有意な増加が見られた。結果を表XIVに示す。
【0141】
パートII:寸法データ解析
水で処理した対照毛髪とUltra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪についてパートIの引張解析から得られたコンパイル済みデータを比較したとき、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪では断面積および直径の有意な増加が認められた。
【0142】
Sap Moss Asiaシャンプーで処理した毛髪との比較では、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪において断面積の有意な増加が認められた。これら2つのサンプル間で直径に有意差はなかった。結果を表XVIに示す。
【0143】
パートIII:破断伸長データ解析
Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪と対照毛髪について相対湿度100%、85%および65%での引張解析から得られたコンパイル済み破断伸長データを比較したとき、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪には破断伸長の有意な増加(対照からの変化4.19%;結果は示してない)が認められた。
【表14】

【表15】

【表16】

【0144】
結論
パートI:引張解析
相対湿度65%で試験したとき、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪と水で処理した毛髪の間には断面積、ヤング率、破断伸長、破断荷重、または全仕事量に有意差がなかった。どのパラメーターにも有意差がないということは、Ultra Moisturizing Complexシャンプーがヒト毛髪の引張特性に影響を及ぼさないことを示している。Ultra Moisturizing Complexシャンプーの以前の引張解析は保湿特性を示したので、相対湿度65%で再試験を行った。再試験の結果の解析によると、この場合にも2つのサンプル間には断面積、破断伸長、破断荷重、または全仕事量に有意差がなかった。しかしながら、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪では、未処理対照と比較したとき、ヤング率の有意な減少が認められた。このヤング率の減少は以前の結果を支持しており、Ultra Moisturizing Complexシャンプーがヒト毛髪にかなりの水分を与えることを示している。
【0145】
相対湿度100%での引張解析から得られた結果を分析したとき、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪と未処理対照の間には断面積、ヤング率、破断荷重、または全仕事量に有意差がなかった。Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪については破断伸長の有意な増加が見られた。破断伸長の増加は毛髪の弾力性が増していることを示し、それは保湿された毛髪によく見られることである。ヒト毛髪の引張特性に対するUltra Moisturizing Complexシャンプーの効果をさらに調べるため、引張解析を相対湿度85%で行った。
【0146】
相対湿度85%で実施される引張解析は通常、洗い流さないタイプの製品(leave-on product)の効果を評価するために実施される。Ultra Moisturizing Complexシャンプーは洗い流さないタイプの製品として使用されるものではないが、3番目の湿度から引張データを集めることは処理の効果をさらに理解する上で役に立つ可能性がある。データを解析したとき、断面積、破断荷重、または全仕事量に有意差はなかった。この場合にもヤング率の有意な減少と破断伸長の増加が見られたが、これは毛髪が保湿されて弾力性が増したことをさらに支持する。
【0147】
ヒト毛髪の機械的特性に対するUltra Moisturizing Complexシャンプーの効果がSap Moss Asiaシャンプーの効果にどのように匹敵するかを調べるため、引張解析を相対湿度65%で行った。解析によると、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪については断面積の有意な増加が見られた。断面積の増加は水分含量の増加による毛髪の膨潤、キューティクルのコーティング、または試験に用いた毛髪の予測不能な変化に起因すると考えられる。しかし、このシャンプーは水分を付与することが試験から判っているので、この研究において断面積増加の最も可能性の高い理由は、水分の増加による毛髪繊維の膨潤である。この断面積の有意な増加は標準化破断荷重の計算への寸法データの組み込みを妨げた。その結果、非標準化破断荷重が算出された。結果の解析によると、これら2つの処理間に非標準化破断荷重における有意差はなかった。Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪についてはヤング率の有意な減少が認められたが、このことは、その毛髪がSap Moss Asiaシャンプーで処理した毛髪と比べて保湿されたことを示している。これら2つの処理間には破断伸長または全仕事量に有意差がなかった。
【0148】
全体的に見て、この研究での引張解析は、Ultra Moisturizing Complexシャンプーがヒト毛髪にかなりの水分を与え、さらにSap Moss Asiaシャンプー処方物と比べて顕著に毛髪を保湿することを示している。
【0149】
パートII:寸法データ解析
未処理対照とUltra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪の断面積および直径を解析したとき、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪については断面積の平均4.2%の有意な増加および毛髪直径の平均1.8%の増加が認められた。断面積の増加はキューティクル上の付着物または水分含量の増加に伴う毛髪の膨潤による可能性がある。不適切なキャリブレーションまたは髪の毛の予測できない変化が毛髪の寸法増加の原因である可能性はあまりない。なぜなら、データは3つの別々の引張解析から組み合わされたもので、低分散を保証するのに役立っているからである。Ultra Moisturizing Complexシャンプーがキューティクル上に付着しているかを確かめるために走査電子顕微鏡検査を実施できることに注目した。パートIで集めたUltra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪とSap Moss Asiaシャンプーで処理した毛髪を比較したとき、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪については平均5.5%の断面積の増加が見られた。Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪については平均2.2%の直径の増加が見られたが、この増加は有意でなかった。
【0150】
全体的に見て、寸法データ解析の結果は、Ultra Moisturizing Complexシャンプーがヒト毛髪の断面積と直径を有意に増加させることを示している。また、Ultra Moisturizing ComplexシャンプーはSap Moss Asiaシャンプーと比べて毛髪の断面積を有意に増加させる。毛髪繊維の寸法を増加させることによって、Ultra Moisturizing Complexシャンプーはヒト毛髪を有意に濃くする。
【0151】
パートIII:破断伸長データ解析
破断伸長データをパートIからの3つ全ての引張解析のためにコンパイルし、その後解析した。解析によると、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで処理した毛髪については、対照と比較したとき、破断伸長が有意に平均4.20%増加した。この増加は、Ultra Moisturizing Complexシャンプーがヒト毛髪の弾力性を有意に増加させることを示している。
【0152】
実施例9 Ultra Moisturizing Complexレジメン(シャンプー: 実施例5、表XIおよびコンディショナー: 実施例6、表XII)
引張解析
この研究の目的は、Ultra Moisturizing ComplexシャンプーおよびコンディショナーからなるUltra Moisturizing Complexレジメンがヒト毛髪の引張および寸法特性に及ぼす効果を検討することであった。
【0153】
方法
毛髪の損傷
Ultra Moisturizing Complexレジメンの効果はレベル2の混合源毛髪を用いて評価した。ダメージを与えるため、髪の毛を脱色してパーマをかけた。脱色剤は、40容の過酸化物発色剤とヘアブリーチングパウダーを2:1の比でヘアカラーボウルに計量することにより調製した。この脱色剤混合物をヘアカラーブラシで十分にかき混ぜて、ファニング法(fanning method)を用いて毛髪に過剰に塗りつけた。毛髪に脱色剤を完全にむらなく塗った後、それを計量ボートに配置して、37℃のオーブンに30分間入れた。毛髪を30分間処理したら、37℃の水道水で1分間すすぎ、Scalp Benefitsシャンプー(Aveda社)で洗って過剰の脱色剤を除去した。この方法に続いて、9%チオグリコール酸ナトリウムを含むパーマネントウェーブアルカリ性パーマ液で処理した。パーマ液を毛髪につけたままにして8分間処理し、次に37℃水道水で10分間洗い流した。その毛髪を10分間空気中和させてからパーマネントウェーブ中和剤で処理した。パッケージの説明書きに従って室温で5分間、中和剤を毛髪につけたままにしておいた。処理後、毛束を37℃水道水で5分間すすぎ、空気乾燥させた。
【0154】
パートI:Ultra Moisturizing Complexレジメン引張解析
毛髪の処理
ダメージレベル2の混合源毛髪の2つの毛束(幅およそ7mm)に以下の処理を割り当てた:
毛束1:水のみ - 対照
毛束2:Ultra Moisturizing Complexレジメン
毛束1は水道水ですすぎ、30秒間もみ、37℃水道水で1分間すすぎ、30秒間もみ、その後再度37℃水道水で1分間すすいで空気乾燥させた。これを行うことによって、両方の毛束が同等の水暴露と機械的操作を受けるのを確実にした。毛束2は水道水ですすぎ、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで飽和し、30秒間もみ、その後37℃水道水で1分間すすいだ。次に、その毛束をUltra Moisturizing Complexコンディショナーで飽和し、30秒間もみ、37℃水道水で1分間すすいで空気乾燥させた。
【0155】
相対湿度65%での引張解析
それぞれの毛束から50本の髪の毛を無作為に選択し、真鍮製クリンプの中に根元から毛先まで手で通した。次にクリンピングプレスを使ってクリンプを固定し、レーザースキャンマイクロメーターを用いて測定した。5セットの寸法を各サンプルから集めて平均断面積を求めた。サンプルから寸法データを集めた後、クリンプの根末端を引張試験機の100スロットカセットの中心に向けてクリンプを装填した。次に、均等化するために相対湿度65%の制御環境チャンバーにクリンプ装填カセットを一晩置いた。その後、クリンプの引張パラメーターを引張試験機で測定した。データはレーザースキャンマイクロメーターから測定された毛髪の断面積を加えるように標準化され、また、必要とあれば、標準化する前にも検討された。その引張データをUvWinソフトウェアにより解析し、さらなる解析のためMicrosoft Excelにエクスポートした。全比較の統計的有意性は両側t検定(α=0.05)により確認した。
【0156】
相対湿度100%での引張解析
この方法は毛束1および毛束2について相対湿度65%で概説した方法と同じであるが、ただし、クリンプをカセットに装填した後、サンプルを逆浸透水で覆い、確実に飽和させるため最低でも10分間そのままにしておいた。
【0157】
相対湿度85%での引張解析
この方法は毛束1および毛束2について相対湿度65%で概説した方法と同じであるが、ただし、クリンプをカセットに装填した後、均等化するために相対湿度85%の制御環境チャンバーにクリンプ装填カセットを一晩置いた。
【0158】
パートII:Ultra Moisturizing Complexレジメン対Sap Moss Asiaレジメン引張解析
毛髪の処理
ダメージレベル2の混合源毛髪の2つの毛束(幅およそ7mm)に以下の処理を割り当てた:
毛束1:Sap Moss Asiaレジメン(シャンプーおよびコンディショナー**)
毛束2:Ultra Moisturizing Complexレジメン
毛束1は水道水ですすぎ、Sap Moss Asiaシャンプーで飽和し、30秒間もみ、その後37℃水道水で1分間すすいだ。次に、その毛束をSap Moss Asiaコンディショナーで飽和し、30秒間もみ、37℃水道水で1分間すすいで空気乾燥させた。毛束2は水道水ですすぎ、Ultra Moisturizing Complexシャンプーで飽和し、30秒間もみ、その後37℃水道水で1分間すすいだ。次に、その毛束をUltra Moisturizing Complexコンディショナーで飽和し、30秒間もみ、37℃水道水で1分間すすいで空気乾燥させた。
【0159】
**Sap Moss Asiaコンディショナーの成分は次のとおりである:
水性(水、精製水(Aqua Purificata)、精製済み)エキス: Cetraria Islandica(アイスランド苔)エキス、グリセリン、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、セテアリルアルコール、シクロペンタシロキサン、ジカプリリルエーテル、ジセチルジモニウムクロリド、ガラクトアラビナン、Ferula Galbaniflua(ガルバナム(Galbanum))樹脂オイル、オリバナム(Olibanum)、Prunus Armeniaca(アンズ)核エキス、加水分解コムギタンパク質、コムギアミノ酸、加水分解コムギデンプン、パンテノール、ステアリン酸グリセリル、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、セチルアルコール、ベヘントリモニウムメトサルフェート、セトリモニウムクロリド、PEG/PPG-18/18ジメチコン、セチルヒドロキシエチルセルロース、香料(パルファム)、硫酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、カラメルカラー。
【0160】
相対湿度65%での引張解析
引張解析はパートIの「相対湿度65%での引張解析」の項に概説した方法に従って行った。
【0161】
パートIII:寸法データ解析
パートIでの3つの引張解析からレーザースキャンマイクロメーターを用いてUltra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪および対照毛髪についての寸法測定値を集めた。さらに、パートIIでの引張解析からUltra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪およびSap Moss Asiaレジメンで処理した毛髪についての寸法測定値も集めた。寸法データをまとめて、先に記載したように解析した。統計的有意性は両側t検定(α=0.05)により確認した。
【0162】
パートIV:破断伸長データ解析
パートIでの引張解析の間に引張試験機を用いてUltra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪および対照について破断伸長測定値を集めた。3つ全ての引張解析からの破断伸長データをコンパイルし、統計的有意性を両側t検定(α=0.05)により確認した。
【0163】
結果
データは、Microsoft Excelのデータ解析ツールで対応のあるt検定(paired t-test)を用いて解析した。この研究でt検定に用いたオプションは「Two-sample Assuming Equal Variance」であった。両側t検定を採用した。
【0164】
パートI:Ultra Moisturizing Complexレジメン引張解析
表XVII〜XIXに示した数値は、
(サンプル−対照)/対照×100
として算出された、対照からの変化%を表す。全ての表に関して、「サンプル」はUltra Moisturizing Complexによる処理をさす。表XVIIおよびXIXに関して、「対照」は「水のみ」を意味する。
【0165】
相対湿度65%での引張解析
相対湿度65%での試験は、断面積、破断伸長または全仕事量に関して対照毛髪とUltra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪との間で有意差を示さなかった。Ultra Moisturizing ComplexレジメンIで処理した毛髪についてはヤング率と破断荷重の有意な減少が見られた。結果を表XVIIに示す。
【0166】
相対湿度100%での引張解析
相対湿度100%で試験したとき、Ultra Moisturizing ComplexレジメンIで処理した毛髪と対照の間に断面積、ヤング率、破断伸長、または全仕事量における有意差はなかった。Ultra Moisturizing ComplexレジメンIで処理した毛髪には破断荷重の有意な減少が見られた。結果を表XVIIに示す。
【0167】
相対湿度85%での引張解析
相対湿度85%での試験は、断面積または全仕事量に関して対照毛髪とUltra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪との間で有意差を示さなかった。Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪にはヤング率と破断荷重の有意な減少が見られた。さらに、処理した毛髪には破断伸長の有意な増加も見られた。結果を表XVIIに示す。
【0168】
パートII:Ultra Moisturizing Complexレジメン対Sap Moss Asiaレジメン引張解析
相対湿度65%での引張解析
相対湿度65%で試験したとき、Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪とSap Moss Asiaレジメンで処理した毛髪の間に全仕事量における有意差はなかった。Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪については、Sap Moss Asiaレジメンで処理した毛髪と比べて、断面積の有意な増加が見られた。断面積に有意差があったので、標準化破断荷重の計算に寸法データを組み込むことができなかった。したがって、非標準化破断荷重を算出して解析した。解析によると、Ultra Moisturizing Complex処理毛髪には非標準化破断荷重の有意な増加が見られた。さらに、Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪にはヤング率と破断伸長の有意な減少も見られた。結果を表XVIIIに示す。
【0169】
パートIII:寸法データ解析
パートIでの引張解析からのコンパイル済み寸法データを解析したとき、対照処理毛髪と比較して、Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪には断面積および直径の有意な増加が見られた。パートIIでの引張解析からのUltra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪とSap Moss Asiaレジメンで処理した毛髪の寸法データを比較したとき、Ultra Moisturizing Complex処理毛髪については断面積と直径が有意に増加した。結果を表XIXに示す。
【0170】
パートIV:破断伸長データ解析
Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪と対照処理毛髪についてパートIからの65%、100%および85%引張解析から得られた全てのコンパイル済み破断伸長データを解析したところ、これらの処理間に破断伸長における有意差はなかった。
【表17】

【表18】

【表19】

【0171】
結論
パートI:Ultra Moisturizing ComplexレジメンI引張解析
相対湿度65%で試験したとき、Ultra Moisturizing Complexレジメン処理毛髪と対照処理毛髪の間には断面積、破断伸長、または全仕事量に有意差がなかった。Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪についてはヤング率と破断荷重の有意な減少が見られた。ヤング率の減少は毛髪の水分含量の増加を示し、また、破断荷重の減少は保湿特性の存在を支持する。
【0172】
相対湿度100%での試験からの引張結果は、Ultra Moisturizing Complexレジメン処理毛髪と対照処理毛髪の間で断面積、ヤング率、破断伸長、または全仕事量に有意差がないことを明らかにした。Ultra Moisturizing Complex処理毛髪については破断荷重の有意な減少が見られた。破断荷重の減少は、毛髪を破断するのにより小さい力が必要であったことを示唆しており、水分を与えられた毛髪によく見られることである。Ultra Moisturizing Complexレジメンの保湿特性をさらに検証するため、引張解析を相対湿度85%で行った。
【0173】
相対湿度85%での引張試験は一般に、洗い流さないタイプの製品の効果を評価するために用いられる。Ultra Moisturizing Complexシャンプーおよびコンディショナーは洗い流さないタイプのトリートメントとして使用されたものではないが、3番目の湿度範囲からデータを集めることは処理の効果を明らかにするのに役立つ可能性がある。解析によると、処理間に断面積または全仕事量における有意差はなかった。水分の増加を示しているヤング率と破断荷重の有意な減少が見られ、これは相対湿度65%および100%引張解析の結果を支持する。また、毛髪の弾力性の増加を示している破断伸長の有意な増加も見られた。
【0174】
全体的に見て、この引張解析の結果は、Ultra Moisturizing Complexシャンプーおよびコンディショナーがヒト毛髪にかなりの水分を与えることを示している。
【0175】
パートII:Ultra Moisturizing Complexレジメン対Sap Moss Asiaレジメン引張解析
Ultra Moisturizing ComplexレジメンがSap Moss Asiaレジメンより高い保湿効果を示すかを確かめるため、Ultra Moisturizing ComplexシャンプーおよびコンディショナーをSap Moss Asiaシャンプーおよびコンディショナーと比較した。相対湿度65%引張解析からの結果は、Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪について断面積の有意な増加を明らかにした。断面積の増加はレーザーマイクロメーターの不適切なキャリブレーションの人的エラー、毛髪の膨潤、キューティクル上の付着物、または引張試験に用いた毛髪の予測不能な変化のいずれかの結果であろうと考えられた。断面積の有意な変化は、標準化破断荷重の計算への寸法データの組み込みを妨げる。したがって、非標準化破断荷重が算出され、解析された。解析によると、Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪には非標準化破断荷重の有意な増加が見られた。破断荷重の増加は、毛髪を破断するのにより大きな力が必要であったことを示唆している。さらに、Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪には、Sap Moss Asiaレジメンで処理した毛髪と比較して、ヤング率および破断伸長の有意な減少が認められた。ヤング率の減少は毛髪の水分含量が増加したことを示しており、また、破断伸長の減少は毛髪の弾力性が少なくなったことを示している。ヤング率の減少と破断荷重の増加は、保湿特性と強化特性の両方を示して、互いに相いれない。しかし、強化する処理の場合は、毛髪繊維の水分含量が減少しなければならない。強化特性は相対湿度65%では確認できず、強度により敏感であることが知られている湿潤条件下で評価する必要がある。Ultra Moisturizing ComplexレジメンがSap Moss Asiaレジメンより多く水分を毛髪に与えるかを確かめるためにさらなる試験が必要である。
【0176】
パートIII:寸法データ解析
毛髪の寸法を評価するため、数値の平均に対して、レーザースキャンマイクロメーターで測定した個々の測定値を解析した。解析によると、Ultra Moisturizing Complexシャンプーおよびコンディショナーで処理した毛髪については、対照と比較して、平均9.9%の断面積の有意な増加および平均11.2%の直径の増加が認められた。毛髪寸法の増加は、毛髪繊維の水分含量の増加による皮質の膨潤またはキューティクル上の付着物の結果であると考えられるので、走査電子顕微鏡法を利用してUltra Moisturizing Complexレジメンがキューティクル上に付着しているのかを調べた。
【0177】
Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪をSap Moss Asiaレジメンで処理した毛髪と比較したとき、Ultra Moisturizing Complexシャンプーおよびコンディショナーで処理した毛髪については平均26.3%の断面積の有意な増加および平均11.2%の直径の増加が認められた。これらの増加は、Ultra Moisturizing ComplexレジメンがSap Moss Asiaレジメンより大幅に毛髪の寸法を増大させることを示している。
【0178】
パートIV:破断伸長データ解析
相対湿度85%で試験したとき破断伸長が有意に増加したので、全ての破断伸長データをパートIからの相対湿度65%、100%、および85%引張解析のためにコンパイルし、その後解析した。解析によると、Ultra Moisturizing Complexレジメンで処理した毛髪については弾力性の平均0.90%の増加が認められた。しかし、この破断伸長の増加は2つの処理間で有意ではなかった。このことは、Ultra Moisturizing Complexレジメンがヒト毛髪の弾力性に大きな影響を及ぼさないことを示している。
【0179】
実施例10 ブリチオイル走査電子顕微鏡解析
この研究の目的は、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて、ヒト毛髪の表面形態に及ぼすブリチオイルの影響を検討することであった。
【0180】
この研究では、ブリチオイルがヒト毛髪の表面形態に及ぼす影響を調べた。このオイルの影響は、走査電子顕微鏡法(SEM)によってレベル6の混合源毛髪で評価した。
【0181】
コンディショナー基剤が髪の毛の表面形態に可視的変化を生じさせたかを検討するため、未処理毛髪の画像(示してない)をコンディショナー基剤で処理した毛髪の画像(示してない)と比較した。これらの画像の主観的比較によって、コンディショナー処理毛髪の表面にくっついているコンディショナー成分の数個の塊を除けば、髪の毛にはほとんど差がないことが明らかになった。基剤で処理した毛髪のキューティクル顕微鏡写真からは、明確な形のキューティクルがはっきりと見えたが、付着や被覆はまったく見えなかった。このことは、この研究に用いたコンディショナー基剤がヒト毛髪の外観にほとんど影響を与えないことを実証している。
【0182】
コンディショナー基剤がヒトの髪の毛の表面形態に影響を及ぼさないことが確立されたら、ブリチオイルで処理した毛髪の外観の変化は、この研究で水性担体として用いたコンディショナー基剤ではなく、ブリチオイルに起因しうると予測することができる。ブリチオイルの影響を調べるため、コンディショナー基剤で処理した毛髪とブリチオイルで処理した毛髪から集めたSEM画像(示してない)を比較した。主観的分析から、ブリチオイルで処理した毛髪の表面は薄いフレーク状の残留物で覆われていることが明らかになった。これらの結果に基づいて、ブリチオイルはヒト毛髪を被覆すると結論づけることができる。ブリチオイルで覆われた毛髪は厚みのある外観を呈する。
【0183】
実施例11 Ultra Moisturizing Complexコンディショナー中の成分の置換がヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響
この研究の目的は、Ultra Moisturizing Complexコンディショナー中の各種成分をヒト毛髪の保湿に有効であることが示された成分に置き換えた場合の前記コンディショナーの効果を検討することであった。
【0184】
方法
パートI:Deep Moisture Complexを含むドライレメディー(dry remedy)コンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
毛髪の準備
この試験はレベル4の混合源毛髪を用いて行った。化学的ダメージを与えるために、毛髪を脱色し、パーマをかけた。市販の脱色剤をヘアカラーブラシで十分に混ぜて、毛髪に過剰に塗りつけた。毛髪に脱色剤を完全にむらなく塗った後、それを計量ボートに配置して、37℃のオーブンに30分間入れた。毛髪を30分間処理したら、37℃の水道水で十分にすすいだ。その毛束を蛇口の200mm下に吊り下げたロッドにクランプで固定した。水を37℃±2℃に保持し、また、400mLビーカーを4〜5秒で満たしてあふれさせる速度に流量を維持した。次に、毛束をScalp Benefitsシャンプー*で洗って過剰の脱色剤を除いた。この方法に続いて、9%チオグリコール酸ナトリウムを含む市販のアルカリ性パーマ液で毛髪を処理した。パーマ液を毛髪につけたままにして8分間処理し、次に、先に記載した手順に従って37℃水道水で10分間洗い流した。その毛髪を10分間空気中和させてから市販の中和剤で処理した。パッケージの説明書きに従って室温で5分間、中和剤を毛髪につけたままにしておいた。処理後、先に記載した手順に従って毛束を37℃水道水で5分間すすぎ、空気乾燥させた。
【0185】
* Aveda Scalp Benefitsシャンプーの成分:
水性(水、精製水(aqua purificata)、精製済み)エキス:シーベリー(hippophae rhamnoides)エキス、echinacea purpurea (コーンフラワー(coneflower))エキス、arctium lappa (ゴボウ)根エキス、salvia officinalis (セージ)葉エキス、ババスアミドプロピルベタイン、ココイルイセチオン酸ナトリウム、メチルココイルタウリンナトリウム、塩化ナトリウム、ラウレススルホコハク酸ジナトリウム、フサザキスイセン(narcissus tazetta)球根エキス、PEG-12ジメチコン、メドウフォーム油脂肪酸PEG-8ジメチコン、香料、ポリソルベート20、イソ乳酸ステアラミドプロピルモルホリン、クエン酸、EDTAジナトリウム、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン。
【0186】
毛髪の処理
引張解析のため、ダメージレベル4の混合源毛髪(複数の人からの茶中間色の白人/ヨーロッパ人の毛髪)の2つの毛束(幅およそ7mm)に以下の処理を割り当てた:
毛束1:未処理対照
毛束2:Ultra Moisturizing Complexコンディショナー
毛束1は脇に置いて、未処理のまま放置した。毛束2にUltra Moisturizing Complexコンディショナーを過剰に塗りつけた。その後、毛束を30秒間もみ、「毛髪の準備」の項に記載した方法を用いて37℃水道水で1分間すすいだ。その後、毛束を空気乾燥させた。
【0187】
相対湿度65%での引張解析
それぞれの毛束標本から50本の髪の毛を無作為に選択し、真鍮製クリンプの中に根元から毛先まで手で通した。次にクリンピングプレスを使ってクリンプを固定し、レーザースキャンマイクロメーターを用いて測定した。5セットの寸法を各サンプルから集めて平均断面積を求めた。サンプルから寸法データを集めた後、クリンプの根末端を引張試験機の100スロットカセットの中心に向けてクリンプを装填した。次に、均等化するために相対湿度65%の制御環境チャンバーにクリンプ装填カセットを一晩置いた。その後、クリンプの引張パラメーターを引張試験機で測定した。データはレーザースキャンマイクロメーターから測定された毛髪の断面積を加えるように標準化され、また、必要とあれば、標準化する前にも検討された。その引張データをUvWinソフトウェアにより解析し、さらなる解析のためMicrosoft Excelにエクスポートした。データの統計的有意性は両側t検定(p<0.05)により確認した。
【0188】
パートII:ブリチオイルの代わりにダイズ油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
毛髪の準備
この研究パートで用いる毛束に、パートIで記載した方法を用いて化学的ダメージを与えた。
【0189】
毛髪の処理
引張解析のため、ダメージレベル4の混合源毛髪の2つの毛束(幅およそ7mm)に以下の処理を割り当てた:
毛束1:未処理対照
毛束2:ブリチオイルの代わりにダイズ油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナー
これらの毛束をパートIの「毛髪の処理」の項に記載した方法に従って処理した。
【0190】
相対湿度65%での引張解析
引張解析はパートIに記載したように相対湿度65%で行った。
【0191】
パートIII:ブリチオイルの代わりにメドウフォーム油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
毛髪の準備
この研究パートで用いる毛束に、パートIで記載した方法を用いて化学的ダメージを与えた。
【0192】
毛髪の処理
引張解析のため、ダメージレベル4の混合源毛髪の2つの毛束(幅およそ7mm)に以下の処理を割り当てた:
毛束1:未処理対照
毛束2:ブリチオイルの代わりにメドウフォーム油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナー
これらの毛束をパートIの「毛髪の処理」の項に記載した方法に従って処理した。
【0193】
相対湿度65%での引張解析
引張解析はパートIに記載したように相対湿度65%で行った。
【0194】
パートIV:ザクロステロールの代わりにコレステロールを含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
毛髪の準備
この研究パートで用いる毛束に、パートIで記載した方法を用いて化学的ダメージを与えた。
【0195】
毛髪の処理
引張解析のため、ダメージレベル4の混合源毛髪の2つの毛束(幅およそ7mm)に以下の処理を割り当てた:
毛束1:未処理対照
毛束2:ザクロステロールの代わりにコレステロールを含むUltra Moisturizing Complexコンディショナー
これらの毛束をパートIの「毛髪の処理」の項に記載した方法に従って処理した。
【0196】
相対湿度65%での引張解析
引張解析はパートIに記載したように相対湿度65%で行った。
【0197】
結果
データは、Microsoft Excelのデータ解析ツールで対応のあるt検定(paired t-test)を用いて解析した。この研究でt検定に用いたオプションは「Two-sample Assuming Equal Variance」であった。両側t検定を採用した。表XX、XXI、XXIIおよびXXIIIに示した数値は未処理対照からの変化%を表し、(サンプル−対照)/対照×100として算出される。
【0198】
パートI:Ultra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
相対湿度65%での引張解析
相対湿度65%結果の解析から、前記処理間では断面積、破断伸長、破断荷重または全仕事量に有意差がなかった(表XX)。しかし、未処理対照毛髪と比較して、コンディショナー処理毛髪ではヤング率の有意な減少が見られた(表XX)。
【表20】

【0199】
パートII:ブリチオイルの代わりにダイズ油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
相対湿度65%での引張解析
相対湿度65%結果の解析から、前記処理間では断面積、破断伸長、全仕事量または破断荷重に有意差がなかった(表XXI)。未処理対照毛髪と比較して、コンディショナー処理毛髪ではヤング率が有意に低かった(表XXI)。
【表21】

【0200】
パートIII:ブリチオイルの代わりにメドウフォーム油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
相対湿度65%での引張解析
結果の解析から、前記処理間では断面積、破断伸長、破断荷重または全仕事量に有意差がなかった(表XXII)。しかし、未処理対照毛髪と比較して、コンディショナー処理毛髪ではヤング率の有意な減少が見られた(表XXII)。
【表22】

【0201】
パートIV:ABSザクロステロールの代わりにコレステロールを含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
相対湿度65%での引張解析
相対湿度65%結果の解析から、前記処理間では断面積、破断伸長、全仕事量、破断荷重またはヤング率に有意差がなかった(表XXIII)。
【表23】

【0202】
結論
この研究は、ヒト毛髪の水分含量に及ぼすコンディショナーの効果を検討するために実施された。この研究ではさらに、Ultra Moisturizing Complexコンディショナー中の各種成分をUltra Moisturizing Complexコンディショナー中に通常見られる材料に置き換えた場合のUltra Moisturizing Complexコンディショナー処方物の効果も検討された。試験は各処方物につき相対湿度65%で実施した。全ての引張解析のためダメージレベル4の混合源毛髪を使用した。
【0203】
パートI:Ultra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
Ultra Moisturizing Complexコンディショナーが毛髪の水分含量に及ぼす効果を検討するため、コンディショナーで処理した毛束を未処理対照毛束と比較した。相対湿度65%での引張解析からは、これらの処理間で断面積、破断荷重、破断伸長または全仕事量に有意差が現われなかった。しかしながら、未処理対照毛髪と比較して、コンディショナー処理毛髪についてヤング率の有意な減少が見られた。この減少は、Ultra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪にかなりの水分を与えることを示している。
【0204】
全体的に見て、この研究のパートIの結果は、Ultra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の保湿に有効であることを示している。
【0205】
パートII:ブリチオイルの代わりにダイズ油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
ブリチオイルの代わりにダイズ油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーが毛髪の水分含量に及ぼす効果を検討するため、コンディショナーで処理した毛束を未処理対照毛束と比較した。相対湿度65%では、これらの処理間に断面積、破断伸長、全仕事量または破断荷重における有意差がなかった。ヤング率は、未処理対照毛髪と比較して、コンディショナー処理毛髪で有意に低下していた。先に述べたように、ヤング率の低下は、その処理がヒト毛髪にかなりの水分を与えることを示している。
【0206】
全体的に見て、この研究のパートIIの結果は、ブリチオイルの代わりにダイズ油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の保湿に有効であることを示している。
【0207】
パートIII:ブリチオイルの代わりにメドウフォーム油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
ブリチオイルの代わりにメドウフォーム油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーが毛髪の水分含量に及ぼす効果を検討するため、コンディショナーで処理した毛束を未処理対照毛束と比較した。相対湿度65%では、これらの処理間に断面積、破断伸長、破断荷重または全仕事量における有意差がなかった。しかし、未処理対照毛髪と比較して、コンディショナー処理毛髪についてヤング率の有意な減少が見られた。パートIおよびIIで述べたように、この減少は、ブリチオイルの代わりにメドウフォーム油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーによる処理がヒト毛髪に相当の水分を与えることを示している。
【0208】
全体的に見て、この研究のパートIIIの結果は、ブリチオイルの代わりにメドウフォーム油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の保湿に有効であることを示している。
【0209】
パートIV:ザクロステロールの代わりにコレステロールを含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の引張特性に及ぼす影響の解析
ザクロステロールの代わりに合成コレステロールを含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーが毛髪の水分含量に及ぼす効果を検討するため、コンディショナーで処理した毛束を未処理対照毛束と比較した。相対湿度65%では、これらの処理間に断面積、破断伸長、全仕事量、破断荷重またはヤング率における有意差がなかった。この有意差の欠如は、ザクロステロールの代わりにコレステロールを含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーによってヒト毛髪の水分含量が影響されないことを示している。
【0210】
全体的に見て、この研究のパートIVの結果は、ザクロステロールの代わりにコレステロールを含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーがヒト毛髪の水分含量に影響を与えないことを示している。
【0211】
要約すると、この研究の結果から、ブリチオイルの代わりにダイズ油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーおよびブリチオイルの代わりにメドウフォーム油を含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーはヒト毛髪に水分を補給するが、ザクロステロールの代わりにコレステロールを含むUltra Moisturizing Complexコンディショナーはヒト毛髪の水分含量に影響を与えないことが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. カチオン性成分;
b. 鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するオイル;
c. フィトステロール;および
d. セルロース系ポリマー
を含む水性保湿組成物。
【請求項2】
前記カチオン性成分、オイル、フィトステロールおよびセルロース系ポリマーが前記組成物中に約0.5〜1:0.7〜1.5:0.7〜1.5:1〜2の比で存在する、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項3】
前記カチオン性成分、オイル、フィトステロールおよびセルロース系ポリマーが前記組成物中に約0.8:1:1:1.5の比で存在する、請求項2に記載の水性保湿組成物。
【請求項4】
前記カチオン性成分がカチオン性第4級化合物である、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項5】
カチオン性第4級化合物が第4級アンモニウム塩、脂肪アミンの塩、またはアミドアミン塩である、請求項4に記載の水性保湿組成物。
【請求項6】
第4級アンモニウム塩がベヘンアルコニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ベヘンアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、セタルコニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、セトリモニウメトサルフェート、ジベヘニルジモニウムメトサルフェート、ジカプリル/ジカプリリルジモニウムクロリド、ババスアミドプロピルトリモニウムクロリド、ババスアミドプロピルコニウムクロリド、パームアミドプロピルトリモニウムクロリド、パームアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、ステアラルコニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、およびステアラミドプロピルトリモニウムクロリドからなる群より選択される、請求項5に記載の水性保湿組成物。
【請求項7】
第4級アンモニウム塩がパームアミドプロピルトリモニウムクロリドまたはパームアミドプロピルトリモニウムメトサルフェートである、請求項6に記載の水性保湿組成物。
【請求項8】
アミドアミン塩がステアラミドプロピルジメチルアミン、ババスアミドプロピルジメチルアミン、およびコカミドプロピルジメチルアミンからなる群より選択される、請求項5に記載の水性保湿組成物。
【請求項9】
前記カチオン性成分がカチオン性ポリマーである、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項10】
カチオン性ポリマーがビニルピロリドンのコポリマー、塩化ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリルアミドとのコポリマー、アクリル酸もしくはメタクリル酸のホモポリマーまたはコポリマー、またはカチオン性シリコーンである、請求項9に記載の水性保湿組成物。
【請求項11】
前記オイルがブリチオイル、ダイズ油、メドウフォーム油、ヒマワリ油、ゴマ油、およびカノラ油からなる群より選択される、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項12】
前記オイルがブリチオイルである、請求項11に記載の水性保湿組成物。
【請求項13】
前記フィトステロールがカンペステロール、シトステロール、スチグマステロールおよびエルゴステロールの1種以上を含む、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項14】
前記フィトステロールがザクロに由来するものである、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項15】
前記セルロース系ポリマーが皮膜形成性のアルキルセルロースポリマー、カチオン性グアーガム誘導体、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項16】
皮膜形成性のアルキルセルロースポリマーがメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルメチルセルロース、およびこれらの第4級アンモニウム塩からなる群より選択される、請求項15に記載の水性保湿組成物。
【請求項17】
前記セルロース系ポリマーがグアーマメ、イナゴマメ、デンプン、カラギーナンまたはキサンタンガム由来の皮膜形成性天然ポリマーである、請求項15に記載の水性保湿組成物。
【請求項18】
前記セルロース系ポリマーが皮膜形成性アルキルセルロースポリマーとカチオン性グアーガム誘導体の組み合わせを含む、請求項15に記載の水性保湿組成物。
【請求項19】
前記セルロース系ポリマーがグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドである、請求項18に記載の水性保湿組成物。
【請求項20】
アルキルセルロースポリマーのトリアルキルアンモニウム置換エポキシドを含む、請求項15に記載の水性保湿組成物。
【請求項21】
前記セルロース系ポリマーがポリクオタニウム10である、請求項20に記載の水性保湿組成物。
【請求項22】
前記カチオン性成分、オイル、フィトステロールおよびセルロース系ポリマーのそれぞれが全組成物の重量基準で約0.05〜20%の量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項23】
前記カチオン性成分が約0.1〜10%の量で前記組成物中に存在し、前記オイルが約0.25〜2.5%の量で前記組成物中に存在し、前記フィトステロールが約0.25〜2.5%の量で前記組成物中に存在し、そして前記セルロース系ポリマーが約0.375〜3.75%の量で前記組成物中に存在し、ここで、前記量は前記組成物の全重量に基づくものである、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項24】
香料、フケ防止剤、さらなるヘアコンディショニング剤、植物エキス、スキンコンディショニング剤、染料、真珠光沢助剤、増泡剤、さらなる界面活性剤または乳化剤、非イオン性の補助界面活性剤、さらなるオイル、保湿剤、懸濁化剤または増粘剤または粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、タンパク質、皮膚活性剤、日焼け防止剤、および酸化防止剤の1種以上を含む、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項25】
a. カチオン性第4級アンモニウム化合物;
b. 鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するオイル;
c. フィトステロール;および
d. セルロース系ポリマー
を含み、その際a、b、cおよびdが組成物中に0.5〜1:0.7〜1.5:0.7〜1.5:1〜2の比で存在する、水性保湿組成物。
【請求項26】
a、b、cおよびdが前記組成物中に0.8:1:1:1.5の比で存在する、請求項25に記載の水性保湿組成物。
【請求項27】
パームアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、ブリチオイル、ザクロフィトステロールおよびポリクオタニウム10を含み、それぞれが全組成物の重量基準で約0.05〜20量%の量で前記組成物中に存在する、請求項25に記載の水性保湿組成物。
【請求項28】
頭皮、毛髪または皮膚用のクレンジング、コンディショニングまたはトリートメント製品である、請求項1に記載の水性保湿組成物。
【請求項29】
毛髪に長期保湿、増大した厚みおよび/または改善した弾力性を与えるか、あるいは皮膚に長期保湿を与える方法であって、
(1) 長期保湿、増大した厚みおよび/または改善した弾力性を必要としている毛髪、あるいは長期保湿を必要としている皮膚に、
a. カチオン性化合物;
b. 鎖長C18以上の不飽和脂肪酸を約70%以上含有するオイル;
c. フィトステロール;および
d. セルロース系ポリマー
を含み、a、b、cおよびdが組成物中に約0.5〜1:0.7〜1.5:0.7〜1.5:1〜2の比で存在する組成物を適用すること;および
(2) 毛髪または皮膚と接触している該組成物を、毛髪または皮膚に長期保湿を与えるのに十分な時間にわたり保持すること;
を含んでなる、上記方法。
【請求項30】
a、b、cおよびdが前記組成物中に約0.8:1:1:1.5の比で存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記カチオン性化合物が第4級アンモニウム化合物であり、そして前記セルロース系ポリマーがアルキルセルロースポリマーのトリアルキルアンモニウム置換エポキシドである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記カチオン性化合物がパームアミドプロピルトリモニウムメトサルフェートであり、前記オイルがブリチオイルであり、前記フィトステロールがザクロフィトステロールを含み、そして前記セルロース系ポリマーがポリクオタニウム10である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記カチオン性化合物が約0.1〜10%の量で前記組成物中に存在し、前記オイルが約0.25〜2.5%の量で前記組成物中に存在し、前記フィトステロールが約0.25〜2.5%の量で前記組成物中に存在し、そして前記セルロース系ポリマーが約0.375〜3.75%の量で前記組成物中に存在し、ここで、前記量は前記組成物の全重量に基づくものである、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−521951(P2011−521951A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511716(P2011−511716)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/044621
【国際公開番号】WO2009/148825
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(501316998)アヴェダ コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】