説明

持続放出性のリポ酸を含むペットフード組成物ならびにその製造方法および用途

本発明は、コンパニオンアニマルに経口で与えられた際に遅い持続放出量のリポ酸またはその塩を送達するペットフード組成物を含む。本発明は、その組成物の製造および使用の方法も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] この出願は、2009年7月14日に出願された米国仮出願第61/225,328号に対して優先権を主張し、それを本明細書に援用する。
【0002】
[0002] 本発明は、コンパニオンアニマルに経口で与えられた際に遅い持続放出量のリポ酸またはその塩を送達するペットフード組成物を含む。本発明は、その組成物の製造方法および用途も含む。
【背景技術】
【0003】
[0003] リポ酸はコンパニオンアニマルに対して利益を有する。例えば、リポ酸は成長および加齢に関して重要であり、細胞の損傷を防ぐのを助け、有害な物質の体からの除去自体を助ける。天然に存在するα−リポ酸はリポイルリシン、R−アルファ鏡像異性体として見出され、それは胃腸での吸収の前に最小限の切断を受けると信じられている。加えて、脂肪酸およびシステインからのα−リポ酸のデノボ合成は、α−リポ酸がタンパク質に結合した形で合成されることを示している。α−リポ酸の生物学的利用能は、ヒトにおいて鏡像異性体による違いを示すことが示されている。リポイルリシンの生物学的利用能は評価されておらず、遊離のα−リポ酸と異なる可能性がある。商業的ペットフードにおける栄養素の加工の間にメイラード生成物およびリシンに関して見られるように化合物の付加物が生じ、生物学的利用能に影響を与える可能性があることは周知である。リポ酸をカプセルとして食事と共に与えることが検討されており、吸収を10〜20%減じる可能性がある。しかし、ペットフードの押出成形の前に添加された場合のdl−アルファリポ酸の生物学的利用能は今まで検討されておらず、未知である。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本発明者らは、乾燥した膨張した(expanded)ペットフードキブル(kibble)の中に組み込まれた際にリポ酸の遅い持続放出を有するペットフード組成物を開発した。カプセルの形での1回のリポ酸の投与と比較して、本発明のペットフード組成物中に組み込まれたリポ酸は結果としてリポ酸の血中レベルのより低いスパイクをもたらし、より長い期間にわたってリポ酸の血中レベルを維持する。
【0005】
[0005] 従って、本発明者らは、ペットの飼い主にとって副作用と関係し得るリポ酸の血中レベルの大きなスパイクを避けるようにリポ酸を投与するための容易で便利な方法であり、ペットフード配合物の摂取の後にリポ酸が持続放出により細胞および組織に送達されることを可能にする、リポ酸を含むペットフード配合物を開発した。
【0006】
[0006] 1態様において、本発明はフード構成要素を有する乾燥したペットフード組成物を含み、ここでそのフード構成要素は遅い持続放出量のリポ酸を含む。
[0007] リポ酸は、乾燥したペットフード組成物の上のコーティングの中に配合された場合に、その全体にわたって分布させた場合に、またはその中に充填した場合に、生物学的に利用可能なままであり、遅い持続した期間にわたってペットに送達されることができることが分かっている。従って、本発明は、高度に口に合い、遅い持続された放出期間にわたってコンパニオンアニマルに送達されてリポ酸投与の安全性および有効性を増大させる貯蔵安定性のリポ酸の源を含有する、すぐに食べることができるペットフード組成物の利点を提供する。
【0007】
[0008] 別の態様において、本発明は、乾燥した、すぐに食べることができるペットフード組成物を調製するプロセスを含み、そのプロセスはデンプン源を調理してゼラチン化したデンプン母材を形成し、そのゼラチン化したデンプン母材を断片にし、その断片を乾燥させることを含み、それはリポ酸を、そのリポ酸が遅い持続された期間にわたってペットに送達されるように含有する。
【0008】
[0009] 別の態様において、そのゼラチン化したデンプン母材を押出成形して調理された押出成形物を形成し、その調理された押出成形物を切断し、乾燥させて乾燥した断片を形成することにより、そのゼラチン化したデンプン母材を断片にして乾燥させ、ここでその断片はリポ酸を、そのリポ酸が遅い持続された期間にわたってペットに送達されるように含む。そのゼラチン化した母材を押出成形の際に膨張させて、切断および乾燥の後に、膨張した断片を形成することができる。別の態様において、そのゼラチン化したデンプン母材をローラー乾燥してフレークを形成することにより、そのゼラチン化したデンプン母材を断片にして乾燥させてよい。
【0009】
[0010] さらなる態様において、そのゼラチン化した母材を押出成形して孔(aperture)を含有する調理された押出成形物を形成し、その断片を切断して乾燥させることにより、そのゼラチン化したデンプン母材を断片にして乾燥させてよく、ここでその孔は持続放出物質およびリポ酸を、そのリポ酸が遅い持続された期間にわたってペットに送達されるように含む。
【0010】
[0011] 別の態様において、本発明は乾燥した、すぐに食べることができるペットフード組成物を調製するプロセスを含み、そのプロセスは、デンプン源を調理してゼラチン化したデンプン母材を形成し;そのゼラチン化したデンプン母材を断片にし、その断片を乾燥させ;そしてその断片を、リポ酸が遅い持続された期間にわたってペットに送達されるようにリポ酸を含有する基材でコートする、またはその基材で充填することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0012] 本発明は概して、リポ酸の遅い持続放出量を可能にする、以下のものを含むフード構成要素を含むペットフード組成物を含む:(i)1種類以上のペットフード栄養素(単数または複数)および(ii)リポ酸またはその塩。本明細書で用いられる場合、用語“リポ酸”はリポ酸およびその塩類を含む。そのペットフードはあらゆる形のペットフードであることができ、それには押出成形された、焼き固められた、巻かれた、ぼろぼろに崩れた、湿った、または他のペットフードの形が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0012】
[0013] 特定の態様において、本発明はリポ酸の持続放出を可能にするための持続放出物質を含む。その持続放出物質には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0013】
[0014] 様々な態様において、その持続放出物質はその組成物中に約4〜約20重量%、または約6〜約16重量%、または約8〜約12重量%の量で存在する。
[0015] 特定の態様において、そのリポ酸は約1ppm〜約4500ppmの量で存在する。特定の態様において、そのリポ酸は約10ppm〜約2500ppmの量で存在する。特定の態様において、そのリポ酸は約50ppm〜約1500ppmの量で存在する。特定の態様において、そのリポ酸は約100ppm〜約1000ppmの量で存在する。特定の態様において、そのリポ酸は約200ppmの量で存在する。
【0014】
[0016] 特定の態様において、そのペットはコンパニオンアニマル、例えばイヌまたはネコである。
[0017] 特定の態様において、そのフード組成物はキブルの形である。
【0015】
[0018] 特定の態様において、そのペットフード組成物はペット用スナックの形である。
[0019] 別の態様において、本発明は以下のものを含むペットフードキブルを含む:
(i)ゼラチン化したデンプン母材;および
(ii)リポ酸またはその塩。
【0016】
[0020] 特定の態様において、そのリポ酸はコーティングまたは充填物中に含まれる。
[0021] 特定の態様において、そのゼラチン化したデンプン母材は押出調理されたデンプン源である。
【0017】
[0022] 特定の態様において、そのコーティングはキャリヤー基材を含み、それはリポ酸を含有する。
[0023] 特定の態様において、そのキャリヤー基材は、脂肪、タンパク質消化物、固形ミルク(milk solids)、糖および粒状香味料からなるグループから選択される少なくとも1種類のキャリヤーである。
【0018】
[0024] 特定の態様において、そのペットフードキブルはさらに可溶性繊維の源を含む。
[0025] 別の態様において、本発明はキブルの形のペットフード組成物を含み、それぞれのキブルは以下のものを含む:
(i)タンパク質源を含む、ゼラチン化したデンプン母材;および
(ii)リポ酸またはその塩。
【0019】
[0026] 特定の態様において、そのリポ酸はコーティングまたは充填物中に含まれる。
[0027] 特定の態様において、そのコーティングはキャリヤー基材を含み、それはリポ酸を含有する。
【0020】
[0028] 特定の態様において、そのキャリヤー基材は脂肪、タンパク質消化物、またはそれらの混合物である。
[0029] 特定の態様において、そのキブルはさらに可溶性繊維の源を含む。
【0021】
[0030] 別の態様において、本発明はペットフード組成物を調製するプロセスを含み、そのプロセスは、デンプン源およびタンパク質源を調理してタンパク質を含有するゼラチン化したデンプン母材を形成し;リポ酸を添加し;そのゼラチン化した母材をキブルへと成形し;そしてそのキブルを乾燥させることを含む。
【0022】
[0031] 特定の態様において、そのデンプン源およびタンパク質源を押出調理し;開口部を通して押出成形し;そして次いで切断して断片、例えばキブルにする。
[0032] 別の態様において、本発明はペットフード組成物を調製するプロセスを含み、そのプロセスは、デンプン源、タンパク質源、リポ酸、および持続放出物質を調理してタンパク質およびリポ酸を含有するゼラチン化したデンプン母材を形成し;そのゼラチン化した母材をキブルへと成形し;そしてそのキブルを乾燥させることを含む。
【0023】
[0033] 特定の態様において、そのデンプン源およびタンパク質源を押出調理し;開口部を通して押出成形し;そして次いで切断してキブルにする。
[0034] 別の態様において、本発明は、以下のものを含むペットフードキブルを含む:
(i)穀物、例えばトウモロコシ、米、小麦、テンサイ、大麦、燕麦、大豆、およびそれらの組み合わせから選択される構成要素を含むゼラチン化したデンプン母材;ならびに
(ii)リポ酸またはその塩。
【0024】
[0035] 別の態様において、本発明は、それを必要とする動物において成長を促進する、細胞の損傷を防ぐ、および/または体から有害な物質を除去するのを助けるための方法であって、動物にフード構成要素を含むペットフード組成物を投与することを含む方法を含み、ここでそのフード構成要素はその動物への遅い持続放出量のリポ酸を含む。
【0025】
[0036] 別の態様において、本発明はキブルの形のペットフード組成物を含み、それぞれのキブルは以下のものを含む:
(i)タンパク質源を含むゼラチン化したデンプン母材;
(ii)リポ酸を含有するコーティングまたは充填物、ここで、そのリポ酸は遅い持続放出で送達される。
【0026】
[0037] 特定の態様において、そのコーティングまたは充填物は1種類以上の持続放出物質を含み、それはリポ酸を含有する。
[0038] 特定の態様において、そのキャリヤー基材は脂肪、またはタンパク質消化物、またはそれらの混合物である。
【0027】
[0039] 特定の態様において、そのキブルはさらに可溶性繊維の源を含む。
[0040] 別の態様において、本発明はペットフード組成物を調製するプロセスを含み、そのプロセスは、デンプン源およびタンパク質源を調理してタンパク質を含有するゼラチン化したデンプン母材を形成し;そのゼラチン化した母材をキブルへと成形し;そのキブルを乾燥させ;そしてそのキブルをリポ酸を含有するコーティングでコートすることを含み、ここでそのリポ酸は遅い持続放出で送達される。
【0028】
[0041] 特定の態様において、そのデンプン源およびタンパク質源を押出調理し;開口部を通して押出成形し、次いで切断してキブルにする。
[0042] 本明細書で用いられる場合、用語“栄養素”または“ペットフード栄養素”はそのフード組成物の一部を指し、それはコンパニオンアニマルによる消費に適したあらゆる個々のフード成分の約100%までを含むことができ、またはフード成分の様々な割合での混合物を含むことができる。特定の態様において、ペットフード栄養素は約0重量%〜約50重量%の脂肪、約0重量%〜約75重量%の炭水化物、約0重量%〜約95重量%のタンパク質、約0重量%〜約40重量%の食物繊維、および約0重量%〜約15重量%の1種類以上の栄養バランス剤(balancing agents)の量のフード成分の組み合わせを含む。
【0029】
[0043] 飼料中で投与される量を、全てその試料の重量%(乾燥物質基準)として、遊離物質として測定される有効物質として計算する。
[0044] 本発明者らは、リポ酸を遅く持続放出するペットフード組成物の開発に成功した。本発明の組成物をコンパニオンペットにおいて用いることにより、ある量のリポ酸を遅い様式で送達することができ、その系の中により長い期間維持することができることを示すことができる。
【0030】
[0045] リポ酸またはアルファリポ酸は、アルファ−リポ酸として、または米国特許第5,621,117号(本明細書に援用する)におけるようなリポエート誘導体、それらのラセミ混合物、塩類、エステル類もしくはアミド類としてその飼料の中に投与することができる。アルファ−リポ酸の量は、そのペットの年齢または処置される病気に従って異なり得る。特定の態様において、リポ酸の量は約25ppm、約50ppm、約100ppm、約200ppm、約500ppm、約1000ppm、約1500ppm、約2000ppm、約2500ppm、約3000ppm、約3500ppm、約4000ppm、約4500ppmまたは約5000ppmである。様々な態様において、イヌに投与することができるリポ酸の範囲は約50ppm〜約4500ppmである。様々な態様において、ネコに投与することができるリポ酸の範囲は約65ppm〜約2600ppmである。最大量は、約10ppmからそのペットにとって非毒性であるままである量まで異なり得る。
【0031】
[0046] 特定の態様において、本発明は、15%未満の水分を含有し、粘りのある(tough)柔軟な質感(texture)を有する、多孔性の質感および外観を有する乾燥ペットフードであって、繊維質の食物を模した断片がその中に散在する乾燥ペットフードを含む。
【0032】
[0047] そのペットフード組成物は、コンパニオンアニマルのためのスナック製品の形であることもできる。
[0048] 別の態様において、本発明のペットフード組成物は、あらゆる適切な成分、例えば乾燥した、すぐに食べられるペットフード製品において一般に用いられる成分から製造されてよい。これらの成分の1つはデンプン源である。適切なデンプン源は、例えば穀粉、例えばトウモロコシ、米、小麦、大麦、大豆および燕麦である。加えて、これらの粉末の混合物を用いてよい。その粉末は全粒粉であってよく、またはある部分を取り除いた粉末であってよい;例えば、胚芽部分または穀皮部分を取り除いてよい。米粉、トウモロコシ粉および小麦粉は特に適切であり;単独または組み合わせのどちらかである。デンプン源は主に栄養価、美味性の考慮、および望まれる製品のタイプに基づいて選択されるであろう。
【0033】
[0049] 特定の態様において、そのペットフード組成物はタンパク質源も含有していてよい。適切なタンパク質源は、あらゆる適切な動物性または植物性タンパク質源;例えば家禽肉粉、家禽副産物粉、鶏肉粉、鶏副産物粉、子羊肉粉、肉骨粉、魚粉、大豆粉、大豆タンパク質濃縮物、乳タンパク質、トウモロコシグルテン粉、小麦グルテン、グルテンならびに同様のものから選択されてよい。タンパク質源の選択は、主に栄養上の必要性、美味性の考慮、および望まれる製品のタイプにより決定されるであろう。デンプン源はタンパク質の源であってもよい。特定の態様において、そのタンパク質は加水分解されたものであることができ、またはタンパク質単離物であることができる。
【0034】
[0050] 特定の態様において、本発明はリポ酸の持続放出を可能にするための持続放出物質を含む。様々な態様において、その持続放出物質はその組成物中に約4〜約20重量%、または約6〜約16重量%、または約8〜約12重量%の量で存在する。
【0035】
[0051] 特定の態様において、リポ酸は基材、例えばペットフードキブルの中に、またはその上に組み込まれ、それに持効性または持続放出コーティングが適用される。例えば、そのリポ酸は以下のように支持体の内部に、またはその上に含有されてよい:(i)母材球状体の内部に(例えば許容できる球状化剤(spheronizing agent)、例えばセルロースと一緒に)組み込まれる、(ii)通常放出中心部の中に組み込まれる;または(iii)持続放出物質を含む母材を含む中心部の中に組み込まれる。その後に、持続放出コーティングが基材、例えば上記の(i)〜(iii)において言及されている基材の上に適用される。リポ酸を含むペットフード組成物は、場合により放出の制御に、またはその配合物の保護に適した1種類以上の物質でコートされていてよい。1態様において、コーティングは、例えば胃腸液に曝露された際にpH依存性の、またはpH非依存性の放出のどちらかを可能にするために提供される。
【0036】
[0052] 特定の態様において、そのペットフード組成物にはペットフード栄養素と共に含まれる1種類以上の物質(単数または複数)およびリポ酸の組み合わせが含まれ、それはペレットまたはキブルへと成形され、それはリポ酸の放出を制御するために拡散または浸食に頼っている。例えば、水膨潤性ヒドロゲル母材中におけるリポ酸および栄養剤の不均一な分散液または溶液は、その母材の表面から中心部への遅い膨潤、ならびにそれに続く、その母材の水で膨潤した部分からの栄養素およびリポ酸の拡散ならびにリポ酸を含有する水で膨潤した母材の浸食の組み合わせによるリポ酸の放出により、リポ酸の放出を制御するのに有用である。
【0037】
[0053] 特定の態様において、そのペットフード組成物は持続放出物質を含み、それは本明細書で記述される1種類以上の持続放出成分の使用により望まれる放出プロフィールに従ってリポ酸の持続放出を提供する。他の態様において、その持続放出母材系は、リポ酸を指定した期間にわたって実質的に一定の速度で放出する放出プロフィールを提供するであろう。
【0038】
[0054] 様々な態様において、制御または持続放出プロフィールは、持続放出物質、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)をその持続放出構成要素の主な成分として用いることにより得ることができる。その持続放出構成要素は、その放出プロフィールに影響を及ぼすことができるある量の他の物質も含有することができる。そのような物質の例には、医薬配合物中で用いられる慣習的な蝋および蝋様物質、例えばカルナウバ蝋(carnuba wax)、鯨蝋、キャンデリラ蝋、ココアバター、セトステアリルアルコール(cetosteryl alcohol)、蜜蝋、部分的に水素化された植物油、セレシン、パラフィン、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびステアリン酸が含まれる。親水性ガム類も、放出プロフィールに対して作用を有することができる量での使用が考えられる。親水性ガム類の例には、アカシア、ゼラチン、トラガカント、veegum、キサンタンガム(xanthin gum)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)が含まれる。
【0039】
[0055] 様々な態様において、その持続放出物質は約4〜約20重量%、または約6〜約16重量%または約8〜約12重量%のHPMCを含有するであろう。その持続放出物質の正確な量は、その物質の分子量および望まれる放出プロフィールに応じて異なるであろう。例えば、約85,000の分子量を有するHPMCを含有し、12時間の期間にわたって実質的に一定の放出速度を提供するように設計されたペットフード組成物は、約8〜約12重量%、または約10%のそのHPMCを含有するであろう。
【0040】
本発明の組成物を作る方法
[0056] リポ酸で栄養価を高めたペットフード組成物は、多くの異なる方法で製造することができる。
【0041】
[0057] 1態様において、本発明の遅い持続放出ペットフード組成物は押出成形プロセスにより作られ、ここでそのリポ酸および持続放出物質は、完全な押出成形されたフードミールのプロセスにおいて共製造(co−manufacturing)することによりそのペットフード組成物中に組み込まれる。
【0042】
[0058] そのプロセスは、混合物をブレンドしてプレミックスを形成し、その混合物を調理し、押出成形してリポ酸を含有するフード断片を形成することを含む。その混合物を調理し、押出成形して、粘りのある柔軟な繊維質の質感を有するフード断片を含有する、多孔性の質感および外観を有する膨張した乾燥ペットフード組成物を得る。それぞれの比率の繊維質のフード断片および基礎母材がフード製品を提供し、それは製造の間に、および貯蔵の際にその粒子の完全性を保持する均一な混合物を有する。
【0043】
[0059] 用語“乾燥ペットフード”または“乾燥ペットフード物質”は、15重量%未満の、典型的には約10%の含水量を有するものとして定義される。言及される全ての百分率は別途明記されない限り重量によるものであり、最終製品の重量に基づくことは理解されている。
【0044】
[0060] 慣習的に、本発明の乾燥ペットフード組成物は粗タンパク質、粗脂肪、粗繊維、リポ酸ならびに他の鉱質および添加物を含有する。典型的なタンパク質構成要素には、肉骨粉ならびに植物性タンパク質源、例えば大豆粉が含まれる。他の構成要素もこのペットフード製品における使用に適している。
【0045】
[0061] さらに別の変形において、リポ酸の一部は水と混合された他の乾燥成分と共に添加され、調理され、加工されて部分的に栄養価を高められた生地を形成する。次いで、リポ酸の残りをその混合物と混合して、望まれるレベルまで栄養価を高められた、リポ酸を含有する混合物を調製することができる。
【0046】
[0062] その方法はさらに、混合物を望ましい形状および大きさの個々の断片(例えばキブル)へと成形する工程を含む。一般に用いられる技法および装置を用いてこの工程を実行することができ、当業者は本明細書における使用に適した技法および装置を難なく選択するであろう。
【0047】
[0063] 乾燥ペットフード組成物は、キブル、ビスケット、ミニビスケット、フレーク、またはあらゆるスナック製品の形、形状、または大きさを含む、様々な一般的な形のいずれにも製作することができる。
【0048】
[0064] その方法はさらに、形作られ、ある大きさに作られた個々の断片を乾燥させてリポ酸で栄養価を高められた完成した乾燥ペットフード組成物を形成することを含む。
[0065] 当業者は、望まれる製品に乾燥工程が部分的に依存することを理解するであろう。
【0049】
[0066] さらに別の変形において、リポ酸を含有する乾燥ペットフード組成物を吹き出して膨張させるための温度および圧力の条件の下で押出成形し(“直接膨張”技法)、個々の断片に薄切または切断して個々の膨張物を形成する。この変形において、形成および乾燥の工程は連続的にではなく同時に実行される。
【0050】
[0067] 別の変形において、その乾燥工程は、断片を乾燥させるだけでなく断片を膨張させて乾燥した、および吹き出された、またはフレークにされた完成した断片を形成する条件の下で断片を加熱することを含むことができる。例えば、ペレットをガンで吹き出して乾燥した吹き出されたペットフード組成物製品を形成することができる。
【0051】
[0068] 乾燥したリポ酸で栄養価を高められた乾燥ペットフード組成物に、どのように形成されたものであろうとも、場合により局所的なコーティングを提供し、続いてコーティング溶液から追加された水分を除去するために最後に乾燥させて、完成した乾燥ペットフード組成物を形成することができる。他の変形において、場合により塩および/または香味を有する局所的なコーティングを適用して完成した乾燥ペットフード組成物を形成する。
【0052】
[0069] 商業的な実践において、その方法の工程の1つ以上を装置の単一の部分において、またはそれにより、組み合わせる、および実施することができる。例えば、リポ酸を含む成分の乾燥混合物を、一軸式または二軸式のような調理押出成形機において水および/または蒸気と混合することができる。その調理押出成形機はその成分を加熱、調理および加工してリポ酸を含有する乾燥ペットフード組成物を形成する。当技術において直接膨張と呼ばれる1変形において、その押出成形機の条件は、押出成形の際にその調理された製品が膨張および乾燥して小さい断片に切り分けられるようなものである。その断片は最終的な形であることができる。わずかな変形において、その断片を最終的な含水量までさらに乾燥させることができる。
【0053】
[0070] 次いでそのように調製された乾燥ペットフード組成物を流通および販売のために都合よく包装することができる。
[0071] 別の態様において、コンパニオンアニマルはそのリポ酸で栄養価を高められた乾燥ペットフード組成物を消費して高リポ酸食の栄養的および生理的利益を得ることができる。その乾燥ペットフード組成物の驚くべき利点は、そのリポ酸がほとんど“見えない”、すなわち、例え高レベルのリポ酸でも完成した製品においてほとんど感覚受容的に認識できないことである。驚いたことに、リポ酸で栄養価を高められた完成した乾燥ペットフード組成物は、添加されたリポ酸成分の存在にも関わらず、それらの栄養価を高められていない対応物に類似している。その製品は良好な香味、良好な質感および他の好ましい感覚受容的特性を特徴とする。従って、本発明は、持続放出量のリポ酸を含む一部のキブルとリポ酸を含まない他のキブルとの混合物を含むペットフード組成物も含む。
【0054】
[0072] リポ酸でコートされたペットフード組成物を製造するために、断片をコートするのに適したあらゆる技法を用いることができる。例えば、液体キャリヤー基材の場合、リポ酸およびそのキャリヤー基材の混合物を乾燥した断片の上にスプレーすることができる。これはあらゆる適切な様式で実施されてよい。例えば、その断片を流動床の中に供給することができ、その上にその混合物をスプレーする。あるいは、その断片をロータリーコーターの中に供給することができ、その中にその混合物をスプレーする。さらなる代替手段として、その断片をカーテン中で落下させ、そのコーティング混合物をそのカーテンの上にスプレーすることができる。ビタミン類およびアミノ酸類のような熱の影響を受けやすい構成要素も乾燥混合物中に含まれてよい。次いでその乾燥混合物を凝集剤を用いてその乾燥した断片の上に凝集させる。脂肪、油および糖の溶液は、適切な凝集剤の例である。
【0055】
[0073] リポ酸を充填したペットフード組成物製品に関しては、リポ酸およびキャリヤー基材の混合物をそれぞれの断片の中央の穴の中に充填する。この場合、キャリヤー基材は好ましくは粘性があり、または急速に固まる物質である。脂肪は特に適切である。あるいは、そのペットフード組成物をタンブル乾燥機の中に供給し、シロップを用いてキャリヤー基材をその製品に凝集させることができる。この場合、その製品はコートされ、かつ充填される。
【0056】
[0074] 本発明の新規の観点を過度に制限すること無く説明するために、下記の実施例を示す。
【実施例】
【0057】
実施例1
[0075] コンパニオンアニマル、例えばイヌおよびネコ対する、より遅い、延長されたリポ酸の利用可能性をもたらすであろう、ペットへのリポ酸の投与のための方法を調べた。リポ酸は、カプセルとして投与された場合、比較的急速な吸収および血清からの消失を有する。それは肝臓により急速に代謝され、尿中に排泄される。リポ酸をより長い期間にわたって、しかしより低いレベルで利用可能にすることができる方法を提供する能力は、結果として増大した抗酸化効能をもたらし、動物への毒性の可能性を低減させる可能性がある。加えて、ペットの飼い主にとって、リポ酸を含有するフードミールをペットに単回与えることは、1日あたり多数回カプセルを投与することを試みたり、大量のリポ酸を単回与えたりすることによってペットを害する危険を冒すよりも好都合である。
【0058】
[0076] 27匹の健康なイヌにおいて、経口で投与されたdl−アルファ−リポ酸(ALA)の薬物動態に対する、用量の効果および送達方法の効果を評価するための試験を実施する。アルファ−リポ酸の3種類の異なる用量(2.5、12.5または25mg/kg体重)および経口投与の3種類のバリエーションを評価する:1)12時間の絶食の後に投与されるリポ酸カプセル形式、2)フードミール(対照フード)と共に与えられるリポ酸カプセル形式、3)完全な押出成形されるフードミールのプロセスにおいて共製造されるリポ酸。ALA無しの対照フードを、試験期間全体を通して与える。この試験において与えられるフードの分析結果は表1にある。
【0059】
表1.そのまま与えられるフードの分析結果。
【0060】
【表1】

【0061】
[0077] 3種類の期間のラテン方格法を用いて処置の3×3の要因配置を作り、計画した処置の割り当てに従ってイヌをグループに割り当てた。アルファ−リポ酸の投与の1分前およびアルファリポ酸単回投与の15、30、45、60、および120分後に血清を集める。非コンパートメントモデルを用いて薬物動態パラメーターを計算し、SAS v9でのWinNonlin 4.1のノンパラメトリック検定を用いて分析する。全ての送達方法に関して、用量の有意な効果があった(P<0.05)。加えて、単回のドライフードミール中に組み込まれたアルファリポ酸に関して送達方法の有意な作用があり(P<0.05)、結果としてより低い最大血清濃度をもたらした。その試験の結果が表2にある。
【0062】
表2:異なる方法論によりリポ酸を投与されたイヌにおける薬物動態パラメーター(PKパラメーター)に関する平均±標準偏差(n=平均動物数)。
【0063】
【表2】

【0064】
SNF=絶食の後にカプセルとして与えられた栄養補助剤;SF=カプセルとしてフードミールと共に与えられた栄養補助剤;CMF=押出成形されたドッグフード母材において共製造された補助的リポ酸。Cmaxは、異なる用量でのリポ酸の投与の後に血漿中で得られた最大濃度である。AUC0〜無限大は、異なる経路および用量により投与されたリポ酸に関して計算された曲線下面積である。排出半減期は、リポ酸の用量の半分を血漿空間から排出するための時間である。
【0065】
[0078] 表2から分かるように、血漿中のリポ酸の最大濃度は、リポ酸がフードにおいて共製造された場合、有意に、おおよそ8〜10分の1に減少し、従ってより高い血漿濃度からの毒性の可能性を低減する。加えて、排出半減期および総曲線下面積は共製造されたフードに関してより大きく、それはフードと共製造されたリポ酸が血漿空間へのより遅く長い有効放出時間を有することを示す。
【0066】
[0079] これらの、および関連する因子における変形は本明細書で教えられる概念の範囲内で容易になされ得ることは理解されている。
[0080] 本明細書で引用される、および本明細書に添付される参考文献の全てを、特許、特許出願、文献の刊行物、および同様のものを含め、本明細書にそのまま援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のもの:(i)ペットフード栄養素;(ii)ある量のリポ酸またはその塩;および(iii)持続放出物質を含むフード構成要素を含むペットフード組成物であって、そのリポ酸が遅い持続放出量として送達される、前記ペットフード組成物。
【請求項2】
持続放出物質がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシメチルセルロース(CMC);ヒドロキシプロピルセルロース(HPC);ヒドロキシエチルセルロース(HEC);およびそれらの組み合わせである、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項3】
ペットフード栄養素が乾燥物質基準で10〜50%の量のタンパク質を含む、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項4】
ペットフード栄養素が乾燥物質基準で5〜30%の量の脂肪を含む、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項5】
リポ酸が約1ppm〜約4500ppmの量で存在する、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項6】
リポ酸が約10ppm〜約2500ppmの量で存在する、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項7】
リポ酸が約100ppm〜約1000ppmの量で存在する、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項8】
ペットがイヌまたはネコである、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項9】
キブルの形である、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項10】
ペット用スナックの形である、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項11】
以下のもの:
(i)ゼラチン化したデンプン母材;および
(ii)リポ酸またはその塩
を含むペットフードキブルであって、リポ酸が遅い持続放出量で送達される、前記ペットフードキブル。
【請求項12】
ゼラチン化したデンプン母材が押出調理されたデンプン源である、請求項11に記載のペットフードキブル。
【請求項13】
ゼラチン化したデンプン母材が穀物、例えばトウモロコシ、米、小麦、テンサイ、大麦、燕麦、大豆、およびそれらの組み合わせから選択される構成要素を含む、請求項11に記載のペットフードキブル。
【請求項14】
さらに持続放出物質を含む、請求項11に記載のペットフードキブル。
【請求項15】
持続放出物質がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシメチルセルロース(CMC);ヒドロキシプロピルセルロース(HPC);ヒドロキシエチルセルロース(HEC);およびそれらの組み合わせである、請求項14に記載のペットフードキブル。
【請求項16】
持続放出物質がそのキブル中に約4重量%〜約20重量%の量で存在する、請求項14に記載のペットフードキブル。
【請求項17】
さらに可溶性繊維の源を含む、請求項14に記載のペットフードキブル。
【請求項18】
以下のもの:
(i)ゼラチン化したデンプン母材、ここで、ゼラチン化したデンプン母材はタンパク質源を含む;および
(ii)リポ酸またはその塩
を含むペットフードキブルであって、リポ酸が遅い持続放出量として送達される、前記ペットフードキブル。
【請求項19】
さらに持続放出物質を含む、請求項18に記載のペットフードキブル。
【請求項20】
持続放出物質がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシメチルセルロース(CMC);ヒドロキシプロピルセルロース(HPC);ヒドロキシエチルセルロース(HEC);およびそれらの組み合わせである、請求項19に記載のペットフードキブル。
【請求項21】
持続放出物質がそのキブル中に約4重量%〜約20重量%の量で存在する、請求項20に記載のペットフードキブル。
【請求項22】
さらに可溶性繊維の源を含む、請求項20に記載のペットフードキブル。
【請求項23】
ペットフード組成物を調製するプロセスであって、そのプロセスが、デンプン源およびタンパク質源を調理してタンパク質を含有するゼラチン化したデンプン母材を形成し;リポ酸またはその塩を添加し;そのゼラチン化した母材をキブルへと成形し;そのキブルを乾燥させることを含む、前記プロセス。
【請求項24】
デンプン源およびタンパク質源を押出調理し;開口部を通して押出成形し;次いで切断してキブルにする、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
ペットフード組成物を調製するプロセスであって、そのプロセスが、デンプン源およびタンパク質源を調理してタンパク質を含有するゼラチン化したデンプン母材を形成し;持続放出物質およびリポ酸またはその塩を添加し;そのゼラチン化した母材をキブルへと成形し;そのキブルを乾燥させることを含む、前記プロセス。
【請求項26】
デンプン源およびタンパク質源を押出調理し;開口部を通して押出成形し;次いで切断してキブルにする、請求項25に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−533302(P2012−533302A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520730(P2012−520730)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/041888
【国際公開番号】WO2011/008800
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】