説明

指先操作型情報提供システム、プログラム、記録媒体

【課題】閲覧者が道具を用いずに、投影台に仕掛けを施さずに、投影表示されたコンテンツに対して、コンテンツ操作を指先で指示するシステムを提供することである。
【解決手段】投影台を撮像する赤外カメラと、コンテンツ投影画面データを作成する表示閲覧手段と、撮影画像から閲覧者の指先を検知する指先検出手段と、検出した指先の座標を算出する指先位置決定手段と、連続するフレームの指先座標を基に、指先静止検知する指先静止検知手段と、指先静止検知情報に基づいて、入力イベント情報を生成して、表示閲覧手段に引き渡す入力エミュレーション手段と、を備え、入力イベント情報を受け付けて、適宜コンテンツ投影画面データを更新することを特徴とする対話操作装置と、コンテンツ投影画面データに基づく像を投影台に投影する投影機と、赤外光源と、投影台と、から構成されることを特徴とする指先操作型コンテンツ提供システムにおいて、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閲覧者が指先で投影された情報を操作するシステム、プログラム、記録媒体に関するものである。
本発明は特に、投影台に投影したコンテンツに対して、閲覧者が指先で指示を与えることによって、指示に基づいたコンテンツを投影台に投影させる場合に有用である。
【背景技術】
【0002】
近時、普及の著しいプロジェクターは、壁面や表示板(以下、投影台)にコンテンツを大きく投影することができるので、広告媒体やコミュニケーション・ツールとして活用される機会が増えている。
コンテンツの閲覧者は、たとえば、美術館で、投影されたコンテンツを対話的に操作することで、より多くの美術情報を得て、充実した美術鑑賞をすることが可能となる。
ここで、表示されたコンテンツと対話的に操作する方法を説明する。
【0003】
《 A.カーソル操作 》
マウスやトラックボールに代表されるポインティングデバイスを用いてカーソルを操作して、閲覧者が閲覧するコンテンツを対話的に操作する方法である。
あるいは、閲覧者がレーサーポインターを用いて、レーザースポット光を照射するときの動き方によって、コンテンツを対話的に操作する方法である。
たとえば、特許文献1では、ポインティングデバイスを用いて、コンピュータディスプレー画面と、机や壁の仮想拡張ディスプレー画面と、の間を、デジタル・オブジェクトをシームレスにドラッグ・アンド・ドロップする技術が開示されている。
また、特許文献2では、投影スクリーン上の画面に対して、レーザーポインターの光で指示することによって、画面の切り替えや、線の描画や、画面の部分拡大などのプレゼンテーション画面を操作する技術が開示されている。
《 B.タッチパネル指示》
閲覧者が、コンテンツを表示したタッチパネルに手を触れると、触れた位置に応じて、コンテンツを対話的に操作する方法である。
たとえば、特許文献3では、ディスプレー上の点を指先で押し続ける時間の長さに応じて、領域の広さを変えて、領域選択する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−175374号公報(段落番号「0125」〜段落番号「0135」、図4〜図7)
【特許文献2】特開2001−125738号公報(段落「0065」、段落「0067」〜段落「0069」、図6)
【特許文献3】特開特開2006−113715号公報(段落「0015」〜段落「0016」、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、《 A.カーソル操作》の方法では、閲覧者はマウスなどのポインティングデバイスを使用しなければ、対話操作が行えない。
また、《 B.タッチパネル指示》の方法では、コンテンツを表示する装置に、閲覧者が手を触れたことを検知する装置を備えなければならない。
【0006】
本発明は以上のような点を解決するためになされたものであって、本発明の課題は、閲覧者が道具を用いずに、また、投影台に仕掛けを施さずに、投影表示されたコンテンツに対して、コンテンツ操作を指先で指示するシステム、プログラム、記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の各態様に記載の手段により、前記課題を解決する。
すなわち、本願発明の第1の発明は、赤外光源と、投影機と、投影台と、対話操作装置と、から構成される指先操作型コンテンツ提供システムにおいて、
前記対話操作装置は、
コンテンツ構成データおよびコンテンツ素材データを格納するコンテンツ格納領域と、
コンテンツ投影画面データを保持する表示画面保持領域と、
を備える記憶手段と、
投影台を撮像して、撮影画像を作成する赤外カメラと、
コンテンツ構成データを解釈して、コンテンツ投影画面データを作成する表示閲覧手段と、
撮影画像から閲覧者の指先を検知する指先検出手段と、
検出した指先の座標を算出する指先位置決定手段と、
連続するフレームの指先座標を用いて指先移動距離を算出して、所定の時間中の指先移動距離がゼロと判定された場合には、指先座標を含む指先静止検知情報を作成する指先静止検知手段と、
指先静止検知情報に基づいて、入力イベント情報を生成して、表示閲覧手段に引き渡す入力エミュレーション手段と、
を備えて、
前記表示閲覧手段は、前記入力エミュレーション手段から引き渡された入力イベント情報を受け付けて、適宜コンテンツ投影画面データを更新する、
ことを特徴とする操作装置であって、
前記投影機は、
コンテンツ投影画面データに基づく像を投影台に投影する、
投影機である
ことを特徴とする指先操作型コンテンツ提供システムである。
【0008】
このように、閲覧者の指先の動きと位置を検知して入力イベント情報を生成して、投影閲覧中のコンテンツを加工して表示することが可能である。
【0009】
本願発明の第2の発明は、第1の発明に記載の指先操作型コンテンツ提供システムにおいて、
前記指先検出手段は、
撮像手段が作成した撮影画像を透視変換撮影画像に透視変換する撮影画像透視変換機能と、
透視変換撮影画像から背景画像を除去する背景除去機能と、
背景画像を除去した透視変換撮影画像から、二値化画像を生成する撮影画像二値化機能と、
二値化画像から距離画像を作成する距離画像作成機能と、
背景画像を除去した透視変換撮影画像から輪郭部画素を検出する輪郭部画素検出機能と、
距離画像と輪郭部画素とを用いて、距離画像の最大輝度を有する画素を内包する輪郭部画素で囲まれた画像を手形画像として抽出する最大輪郭部抽出機能と、
手形画像が接するコンテンツ投影画面の辺の情報を用いて、指先を判定する指先判定機能と、
を備えることを特徴とする指先操作型コンテンツ提供システムである。
【0010】
本願発明の第3の発明は、第1の発明に記載の指先操作型コンテンツ提供システムにおいて、
前記指先位置決定手段は、
連続する各フレームの指先座標を用いて、指先の移動方向ベクトルを算出して、方向ベクトルの変動値が、所定の範囲であれば、最初のフレームの指先の座標を指先座標として用いる指先微小変動判定機能、
を備えることを特徴とする指先操作型コンテンツ提供システムである。
【0011】
本願発明の第4の発明は、コンピューターに組込むことによって、コンピューターを請求項1または2に記載の指先操作型コンテンツ提供システムとして動作させるコンピュータープログラムである。
【0012】
本願発明の第5の発明は、第4の発明に記載のコンピュータープログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、
(1)投影台に情報操作指示の検知装置を設けずに、投影されたコンテンツに対して、情報操作をすることが可能である。
(2)閲覧者は道具を用いずに、指先で情報操作の指示を与えることが可能である。
従って、本発明によれば、閲覧者は投影されたコンテンツに対して、指先で指示するだけで、手軽に情報操作することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態による指先操作型情報提供システム1の概要を説明する図である。(実施例1)
【図2】図2は、対話指示に基づくコンテンツ投影画面の例である。
【図3】図3は、指先操作型情報提供システム1の操作と処理の大まかな操作手順を説明する図である。
【図4】図4は、指先検出の例である。
【図5】図5は、(1)初期設定処理の詳細な流れを説明する図である。
【図6】図6は、投影範囲を設定する例を説明する図である。
【図7】図7は、(3)指先検出処理の詳細な流れを説明する図である。
【図8】図8は、二値化画像作成処理の例を説明する図である。
【図9】図9は、大津の手法を説明するである。
【図10】図10は、(3−6)指先の決定処理のフローチャートである。
【図11】図11は、情報処理装置100の詳細な構成図である。
【図12】図12は、影の映り込みを説明する図である。(実施例2)
【図13】図13は、指先の微動を無視する処理を説明する図である。(実施例3)
【図14】図14は、指先の検出を説明する図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施の形態による指先操作型コンテンツ提供システム1の概要を説明する図である。
指先操作型コンテンツ提供システム1は、投影台400と、赤外光源500と、プロジェクター300(=投影機)と、対話操作装置100と、から構成される。
対話操作装置100は、既存のパーソナルコンピューターで、後述する専用プログラムを搭載したものである。
対話操作装置100は、赤外カメラ106と投影機300を接続する。
赤外光源500は、赤外光を投影台400に照射するLED光源装置である。
赤外カメラ106は、赤外光による反射像を撮像する電子カメラである。
投影機300は、対話操作装置100が作成するコンテンツ投影画面データに基づく像を投影台400に投影するプロジェクターである。
【0017】
ここで、赤外光源500と赤外カメラ106とを用いる理由は、赤外光で照射された閲覧者900の指先は撮像するが、プロジェクター300が、可視光にて投影台400に投影した投影画像(=コンテンツ投影画面)は撮像しないようにするためである。
【0018】
図2は、コンテンツ投影画面403の例である。
図2の(a)は、コンテンツと解説文を表示したコンテンツ投影画面403の例である。
例示されたコンテンツ投影画面の意味は、指先で指示したコンテンツの解説文をコンテンツに重畳させて表示しているということである。
図2の(b)は、コンテンツの部分拡大画像を含むコンテンツ投影画面403の例である。
例示されたコンテンツ投影画面の意味は、指先が乗ったコンテンツ部分を拡大した画像を、コンテンツに重畳させて表示しているということである。
【0019】
次に、図3を用いて、指先操作型情報提供システム1の大まかな操作と情報処理の手順を説明する。
(1)《初期設定処理》システム管理者は、対話操作装置100の赤外カメラが投影台400を撮影して生成した投影台の撮影画像を用いて、撮影画像を透視変換処理する撮影画像透視変換行列関係式や、撮影画像の背景画像などを設定する初期設定処理を行う。(詳細は後述する)
(2)《コンテンツ投影処理》対話操作装置100は、閲覧者に閲覧させるコンテンツ投影画面103を、投影機300を用いて投影台400に、投影する。
(3)《対話操作》閲覧者は、投影台400に投影されたコンテンツ投影画面403に対して、指先を用いて、対話操作を行う。
(4)《指先検出処理》対話操作装置100は、対話操作する閲覧者の指先を赤外カメラ106で撮影して、撮影画像から閲覧者の指先の位置や動作を検知する。ここで、閲覧者の指先動作を検知するためには、撮影画像の各フレームの指先位置を比較すればよい。すなわち、各フレームの指先位置の変化量を計測して、静止しているのか、移動しているのかを判定すればよい。
(5)《対話操作したコンテンツの投影処理》対話操作装置100は、検知した指先の動作を指先動作判定条件(たとえば、指先の静止動作時間が0.5秒以上であれば指先静止動作など)で判定して、指先動作判定条件に応じた対話操作を行い、たとえば、選択したコンテンツの解説文表示や、選択したコンテンツの部分拡大画像表示などの閲覧者が所望する操作の結果を、投影機300を用いて、投影台400に投影する。
ここで、対話操作装置100は、コンテンツの投影画面403の指先に相当する位置にカーソルを重畳してもよい。
(6)《コンテンツ閲覧》閲覧者は、投影台400に投影されたコンテンツ投影画面403を閲覧する。
【0020】
図4を用いて、閲覧者の指先について説明する。
図4の(a)は、手の撮影画像表示画面103の底辺1031から延びた手の指先を説明する例である。
表示画面の底辺から延びた手の撮影画像を画面103に表示した例が示されている。
例示されている撮影画像の意味は、底辺1031から延びた手の場合には、手の最上部1035を指先として検知していることを示している。
【0021】
図4の(b)は、コンテンツの投影画面の左辺1032から延びた手の指先を説明する例である。
表示画面の左辺から延びた手の撮影画像を画面103に表示した例が示されている。
例示されている指先の意味は、左辺1032から延びた手の場合には、手の最右部1036を指先として検知していることを示している。
【0022】
図5と図6を用いて、(1)《初期設定処理》の詳細な流れを説明する
図5は、(1)《初期設定処理》の詳細な流れを説明する図である。
(1−1)《投影範囲指示》システム管理者は、対話操作装置100の赤外カメラが投影台400を撮影して生成した投影台の撮影画像を用いて、投影範囲としての四角形の4頂点座標を入力する。たとえば、システム管理者は、投影台の撮影画像を対話操作装置100の表示部に表示させて、投影範囲の4頂点座標を、たとえば、十字カーソルをキーボードで操作して入力する。
【0023】
(1−2)《座標変換行列の算出》対話操作装置100は、システム管理者が入力した投影範囲指示を受け付けて、座標変換行列関係式(たとえば、座標変換行列関係式として、すでに数学的に分かっている下記の数式1)に対して、受け付けた投影範囲指示の4つの頂点座標値[Xpk 、Ypk ](k=1、2,3、4)と、コンテンツ投影画面の4つの標準頂点座標値[Xmk、Ymk ](k=1、2,3、4)(たとえば、[0、0][0、1024][768、0][768、1024])とを代入して、12個の式を作成してこれらを解いて、座標変換行列の8つの行列要素Cij (i,j=1、2,3)を算出して、撮影画像透視変換行列関係式(下記の数式2)を導出する。撮影画像透視変換行列関係式は、撮影画像の座標[Xp 、Yp ]とコンテンツ投影画面の座標[Xm、Ym ]とを透視変換する行列関係式である。
【数1】

ここで、xp は、撮影画像のX座標値である。yp は、撮影画像のY座標値である。
hは、カメラ原点と画像平面の距離を変数とする値である。
mは、コンテンツ投影画面のX座標値である。Ym は、コンテンツ投影画面のY座標値である。
ijは、二次元画像透視変換関係式の行列要素である。ここで、i,j=1、2,3である。
【数2】

ここで、Ca 、Cb 、・・、Ch は、算出した撮影画像透視変換関係式の行列要素である。
【0024】
なお、撮影画像透視変換関係式の算出には、opencvの透視変換行列算出関数cvGetPerspectiveTransformを用いて、算出することができる。ここで、opencvとは、インテル(登録商標)が開発・公開したオープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリーである。
【0025】
ここで、図6を用いて、《投影範囲指示》の作業で用いる表示画面を説明する。
図6の(a)には、投影範囲の指示画面1031が、例示されている。例示された投影範囲の指示画面1031には、対話操作装置100の赤外カメラ104で撮影した投影台400の撮影画像が表示されている。
また、この投影範囲の指示画面1031には、投影範囲の4頂点p、q、r、sが入力された様子が示されている。
このとき、投影範囲の4頂点p、q、r、sの頂点角度は、必ずしも直角ではない。
図6の(b)には、撮影画像の投影範囲を透視変換した画像の表示画面1032が、例示されている。
例示された透視変換画像の表示画面1032は、撮影画像透視変換関係式を用いて、撮影画像の投影範囲を透視変換したものである。
ここで、透視変換画像の表示画面1033の4頂点P、Q、R、S(=それぞれの座標が、[0、0][0、1024][768、0][768、1024]に相当する)は、投影範囲の4頂点p、q、r、sが、それぞれ、透視変換された点である。このとき、四角形領域の4頂点P、Q、R、Sの頂点角度は、直角である。
【0026】
図5に戻って、(1)《初期設定処理》の詳細な流れの説明を続ける。
(1−3)《背景画像抽出》対話操作装置100は、投影台の撮影画像から、投影範囲の
画像を抽出して、背景画像とする。この背景画像を抽出するとき、投影範囲の画像に対して、導出した撮影画像透視変換行列関係式(=数式2)を用いて、コンテンツ投影画面の座標に透視変換する。
【0027】
図7から図9までを用いて、(4)《指先検出処理》の詳細な流れを説明する。
図7は、(4)《指先検出処理》の詳細な流れを説明する図である。
指先検出処理は、撮影画像の各フレームに対して行う。
(4−1)《撮影画像の透視変換処理》対話操作装置100は、この導出した撮影画像透視変換行列関係式(=数式2)を用いて、手の撮影画像をコンテンツ画面の座標系の画像に透視変換する。
(4−2)《背景除去》対話操作装置100は、透視変換した手の撮影画像の画素の値から、透視変換した背景画像の画素の値を減算して、透視変換した撮影画像の背景画像除去処理をする。
(4−3)《撮影画像の二値化処理》対話操作装置100は、背景画像除去処理済の透視変換した撮影画像に対して、大津の手法を適用して、閾値を算出して二値化処理して、二値化画像を生成する。
【0028】
ここで、図9を用いて、大津の手法を説明する。大津の手法とは、濃淡画像の画素値ヒストグラムに対して、各画素値を仮のしきい値tによって、2つの領域に分けて、各領域内の分散 σ2a と、2つの領域間の分散 σ2b と、を計算し、領域内での分散と領域間の分散比を算出する関数(仮のしきい値tの関数)W(t)= σ2a / σ2b が最小となるtをしきい値とする手法である。
大津の手法を用いた画像二値化処理では、大津の手法に基づいて二値化閾値を算出し、OpenCVの二値化関数cvThresholdを用いて二値化画像を得ることができる。
【0029】
なお、二値化処理において、大津の手法を用いることは、1つの例である。たとえば、他の値を閾値として用いてもよいし、複数の閾値を用いて、複数の二値化画像を生成するようにしてもよい。
【0030】
図7に戻って、(4)《指先検出処理》の詳細な流れの説明を続ける。
(4−4)《距離画像作成処理》対話操作装置100は、二値化画像の白画素から、黒画素への最短距離を求めて、距離に対応付けた画素値を有する画素で構成した距離画像を作成して、距離画像の最大画素値を保持する。
(4−5)《輪郭部画素検出処理》対話操作装置100は、二値化画像の黒画素領域を端から走査して、4連結画素を用いる輪郭抽出アルゴリズムを用いて、黒画素を抽出して、抽出した黒画素を輪郭部画素とする。
ここで、4連結画素を用いる輪郭抽出アルゴリズムとは、二値化画像を端から走査して、検出した未追跡黒画素を始点の輪郭部画素として、この画素を中心にした4連結画素を反時計回りに追跡して黒画素を検出して輪郭部画素として、この画素を次の中心にして、4連結画素追跡により黒画素を検出して、始点に戻るまで繰り返えすものである。輪郭抽出アルゴリズムは、8連結画素を用いてもよい。
(4−6)《手形画像抽出処理》対話操作装置100は、距離画像(=輪郭部画素で囲まれた領域)の画素の輝度を、保持した最大輝度の値と比較して、一致すれば、その領域を閲覧者の手形画像として抽出する。
【0031】
ここで、図8を用いて、《指先検出処理》の例を説明する。
図8の(a)には、二値化画像1961が例示されている。
例示された二値化画像1961は、大きな白画素領域19611と、小さな白画素領域19612を含む画像である。
図8の(b)には、距離画像1962が例示されている。
例示された距離画像1962は、大きな白画素領域19611に対応した距離画像19621と、小さな白画素領域19612に対応した距離画像19622とを含む画像である。ここで、大きな白画素領域19611に対応した距離画像19621は、最大画素値を持つ画素1038を有する画像である。
図8の(c)には、輪郭部画素が例示されている。
例示された輪郭部画素は、大きな白画素領域の輪郭部19631と小さな白画素領域の輪郭部19632とを形成する画素である。ここで、白画素領域の輪郭部19631は、最大画素値を持つ画素1038に対応した画素10381を有する。
図8の(d)には、最大輪郭部が例示されている。
例示された最大輪郭部は、最大画素値を持つ距離画像19621に対応した白画素領域の輪郭部19631である。
【0032】
図7に戻って、(4)《指先検出処理》の詳細な流れの説明を続ける。
(4−7)《指先判定処理》対話操作装置100は、閲覧者の手形画像を用いて、指先判定処理をして、指先を判定する。(詳細は後述する)
(4−8)《指先位置算出》対話操作装置100は、連続するフレームの指先座標を算出する。
(4−9)《指先静止検知処理》対話操作装置100は、連続するフレームの指先座標を比較して指先移動距離を算出して、指先静止判定時間を定めた動作判定条件と照合して、指先静止判定時間中の指先移動距離がゼロであるか否かを判定する。指先静止判定時間中の指先移動距離がゼロと判定された場合には、指先座標を含む指先静止検知情報を作成する。
【0033】
図10は、指先判定処理のフローチャートである。
(1)対話操作装置100は、手の撮影画像が接するコンテンツ投影画面の辺(=撮影画像枠)が、底辺1031であるか否かを判定する。手の撮影画像が接する辺が、下辺1031であれば、次のステップに進む。
手の撮影画像が接する辺が、底辺1031でなければ、ステップS120に進む。(ステップS110)
(2)対話操作装置100は、手の最上部1035を指先と判定して「手が接する辺=底辺」を保持して、終了する。(ステップS115)
(3)対話操作装置100は、手の撮影画像が接するコンテンツ投影画面の辺が、左辺1032であるか否かを判定する。手の撮影画像が接する辺が、左辺1032であれば、次のステップに進む。
手の撮影画像が接する辺が、左辺1032でなければ、ステップS130に進む。(ステップS120)
(4)対話操作装置100は、手の最右部1036を指先と判定して「手が接する辺=左辺」を保持して、終了する。(ステップS125)
(5)対話操作装置100は、手の撮影画像が接するコンテンツ投影画面の辺が、右辺であるか否かを判定する。手の撮影画像が接する辺が、右辺であれば、次のステップに進む。
手の撮影画像が接する辺が、右辺でなければ、ステップS140に進む。(ステップS130)
(6)対話操作装置100は、手の最左部を指先と判定して「手が接する辺=右辺」を保持して、終了する。(ステップS135)
(7)対話操作装置100は、手の撮影画像が接するコンテンツ投影画面の辺が、上辺であるか否かを判定する。手の撮影画像が接する辺が、上辺であれば、次のステップに進む。
手の撮影画像が接する辺が、上辺でなければ、ステップS160に進む。(ステップS140)
(6)対話操作装置100は、手の最下部を指先と判定して「手が接する辺=上辺」を保持して、終了する。(ステップS145)
(7)保持した手形が接する辺の値に応じて、指先の位置を以下のとおりに判定する。
・「手が接する辺=底辺」であれば、手の最上部を指先と判定する、
・「手が接する辺=左辺」であれば、手の最右部を指先と判定する、
・「手が接する辺=右辺」であれば、手の最左部を指先と判定する、
・「手が接する辺=上辺」であれば、手の最下部を指先と判定する、
終了する。
【0034】
図11は、対話操作装置100の詳細な構成図である。
対話操作装置100は、CPU101と、表示部102と、キーボード103と、赤外カメラ部106と、投影機接続部107(=投影機接続手段)と、ネットワーク通信部108と、記憶部109と専用プログラムとを備える。
CPU101と、表示部102と、キーボード部103と、カメラ部106と、投影機接続部107と、ネットワーク通信部108と、記憶部109とは、BUS199で接続される。
【0035】
CPU101は、中央演算装置である。
表示部102は、液晶表示装置や有機EL表示装置である。
投影機接続手段107は、プロジェクターアダプターである。
ネットワーク通信部108は、LANアダプターである。
【0036】
赤外カメラ部106は、赤外電子カメラである。
赤外カメラ部106は、赤外光源500の赤外光が照射された閲覧者900の手を撮像して、手の撮影画像を生成する。
【0037】
記憶部109は、半導体メモリーや磁気メモリーである。
記憶部109は、表示画面保持領域1091と、初期設定情報格納領域1092と、コンテンツ格納領域1093と、を備えて、オペレーティングシステム185と、専用プログラムとを記憶する。
表示画面保持領域1091は、コンテンツ投影画面データ198を保持する。
初期設定情報格納領域1092は、撮影画像透視変換関係式193と背景画像データ195とを格納する。
コンテンツ格納領域1093は、コンテンツ投影画面データを作成するためのコンテンツ構成データ197およびコンテンツ素材データ192を格納する。
コンテンツ構成データ197は、コンテンツ全体の構成(たとえば、何ページから成っているかなど)と、コンテンツ素材データの使い方(たとえば、何ページのどの位置に、どの素材を配置するかなど)を現したデータである。
コンテンツ素材データ192は、写真やテキストのデータである。
【0038】
オペレーティングシステム185は、対話操作装置100のハードウェア(たとえば、表示部102と、キーボード103と、投影機接続部107と、ネットワーク通信部108と、記憶部109など)を管理・制御して、応用ソフトウエア(たとえば、専用プログラム)に対して、これらのハードウェアを利用できるようなサービスを提供する基本ソフトウエアである。
オペレーティングシステム185は、マウス左クリックエミュレート関数やカーソル表示エミュレート関数を含むマウス関数ライブラリー191を有する。
オペレーティングシステム185は、マウス左クリックエミュレート関数が発行するマウス左クリックのマウスイベント(=入力イベント情報)を受け取って、一時記憶領域に保持する。このときにアクティブなプロセスは、一時記憶領域を参照して保持されたマウスイベントを読み出して、そのイベントに応じたプロセスの処理を行う。
【0039】
このほかに、初期設定手段110と、指先検出手段130と、指先位置算出手段140と、指先静止検知手段150と、入力エミュレーションモジュール155と、表示画面作成手段160と、投影表示手段170と、備える。これらの各手段は、それぞれの専用プログラムによって実現され、専用プログラムがCPU101に解釈・実行されることによって機能する。
【0040】
初期設定手段110は、赤外カメラが投影台400を撮影して生成した投影台の撮影画像の投影範囲の入力を受け付ける投影範囲指示機能と、
撮影画像の座標とコンテンツ投影画面の座標との透視変換の関係を表す撮影画像透視変換行列関係式を算出する座標変換行列算出機能と、
投影台の撮影画像から、投影範囲の画像を抽出して、背景画像とする背景画像抽出機能と、から構成される。
初期設定手段の詳細は、図5における(1)《初期設定処理》の詳細な流れを説明する項で述べた。
【0041】
指先検出手段130は、撮像手段106が作成した閲覧者の手の撮影画像を透視変換撮影画像に透視変換する撮影画像透視変換機能と、
透視変換撮影画像から背景画像を除去する背景除去機能と、
背景画像を除去した透視変換撮影画像から二値化画像を生成する撮影画像二値化機能と、
二値化画像から距離画像を作成する距離画像作成機能と、
背景画像を除去した透視変換撮影画像から輪郭部画素を検出する輪郭部画素検出機能と、
距離画像と輪郭部画素とを用いて、手形画像を抽出する最大輪郭部抽出機能と、
手形画像が接するコンテンツ投影画面の辺の情報を用いて、指先を判定する指先判定機能と、
を備える。
【0042】
指先検出手段130の詳細は、図7における(3)《指先検出処理》の詳細な流れを説明する項で述べた。
【0043】
指先位置算出手段140は、指先の座標を算出する。
指先静止検知手段150は、連続するフレームの指先座標を用いて指先移動距離を算出して、所定の時間中の指先移動距離がゼロと判定された場合には、指先座標を含む指先静止検知情報を作成する。
【0044】
入力エミュレーションモジュール155は、指先静止検知情報に基づいて、入力イベント情報を生成して、表示閲覧手段に引き渡す。
詳細には、入力エミュレーション手段155は、指先静止検知情報を受け付けて、マウス左クリックエミュレート関数を呼び出して、マウス左クリックエミュレート関数が発行するマウス左クリック情報に基づくマウスイベントを発行させるマウスクリック機能と、
指先座標を受け付けて、マウスカーソル関数を呼び出して、この指先座標カーソル表示エミュレート関数が発行するカーソル表示情報に基づくマウスイベントを発行させるカーソル表示機能と、
を備える。
【0045】
表示閲覧手段160は、コンテンツ構成データ196を解釈して、コンテンツ素材データ192を用いてコンテンツ投影画面データ198を作成する。
また、表示閲覧手段160は、オペレーティングシステム185を通じて引き渡されたマウスイベントを受け付けて、適宜コンテンツ投影画面データを更新する。詳細には、表示閲覧手段160は、オペレーティングシステム185が一時記憶領域に保持したマウスイベントを読み出して、適宜コンテンツ投影画面データを更新する。(請求項1における入力エミュレーション手段は、入力エミュレーションモジュール155とオペレーティングシステム185との協調動作により実現される)
【0046】
次に、影の誤抽出防止について、説明する。
投影台に閲覧者の手が無い状態(=何も映っていない状態)にも関わらず、影の撮影画像を手の撮影画像と誤抽出することがあることが経験的に分かっているので、以下の処理を行う。
《撮影画像の二値化処理》対話操作装置100は、背景画像除去処理済の透視変換した撮影画像に対して、濃淡画像の画素値ヒストグラムを、各画素値を仮のしきい値tとして、2つの領域に分けて、各領域内の分散(=クラス内分散)σ2a と、2つの領域間の分散(=クラス間分散)σ2b と、を計算し、領域内での分散と領域間の分散の和(=全分散) を算出する関数(仮のしきい値tの関数)w = σ2a + σ2b が所定の値以上であれば、大津の手法を適用して、二値化画像を生成する。
【0047】
図12は、濃淡画像の画素値ヒストグラムの分散を説明する図である。
図12の(a)は、何も映っていない状態の撮影画像の例である。
何も映っていない状態の撮影画像の画素値ヒストグラムの全分散は、小さいことを示している。
図12の(b)は、手が映っている状態の撮影画像の例である。
手が映っている状態の撮影画像の画素値ヒストグラムの全分散は、大きいことを示している。
【0048】
次に、静止した指先の座標が微動変動することに対する対策を説明する。
閲覧者が指先を静止させたときに、手の撮影画像から算出する指先の座標は、指先があたかも微動しているかのように、微小に変動することが経験的に分かっているので、以下の処理を行う。
《指先微小変動判定処理》対話操作装置100は、連続する各フレーム(=撮影画像の静止画)から算出する指先の座標を用いて、指先の移動方向ベクトルを算出して、方向ベクトルの変動値が所定の条件(たとえば、方向ベクトルの変動角度θを用いて、方向ベクトルの変動値をcosθで定義して、所定の条件がθ<25°)を満たせば、指先の座標が微小変動したとして、最初のフレームの指先の座標を保持する。
【0049】
図13は、指先の微小変動を説明する図である。
移動する指先を撮影した画像の連続4フレームの各フレーム間の方向ベクトルν1、ν2、ν3、である場合には、方向ベクトルの変動値は、数式3のように表すことができる。
【数3】

図13の(a)は、指先が移動しているときのcosθの例である。
指先が移動しているときの数式3の値は大きい。言い換えるとθの値は小さい。例えば、θが25°未満である場合には、指先が移動しているときである。
図13の(b)は、指先が静止しているときのcosθの例である。
指先が静止しているときの数式3の値は小さい。言い換えるとθの値は大きい。例えば、θが25°以上である場合には、指先が静止しているときである。
【0050】
次に、手形画像がコンテンツ投影画面の辺に接しない場合の指先判定処理を説明する。
閲覧者の袖口が撮影できない場合には、手形画像がコンテンツ投影画面の辺に接しないので、指先判定処理は、以下のとおりに行う。
《指先判定処理》対話操作装置100は、指先判定処理において、手形画像がコンテンツ投影画面の辺に接しない場合には、距離画像の最高輝度点を基準にして、保持した手形が接する辺の側の輪郭は探索しないで、指先を判定する。
図14は、閲覧者の袖口が撮影できない手の撮影画像の例である。
例示された手の画像は、画面の左辺に閲覧者の袖口がかかり、手の撮影画像が左辺から離れている状態を示している。
閲覧者の手は、左辺から移動してきたので、距離画像の最高輝度点1038を基準にして、その左側の輪郭は探索しないで、指先を判定する。
【符号の説明】
【0051】
1 指先操作型コンテンツ提供システム
100 対話操作装置
103 撮影画像表示画面
106 赤外カメラ
107 投影機接続手段
110 初期設定手段
130 指先検出手段
140 指先位置算出手段
150 指先静止検知手段
155 入力エミュレーション手段
160 表示閲覧手段
170 投影表示手段
191 マウス関数ライブラリー
300 プロジェクター、投影機
400 投影台
403 コンテンツ投影画面
500 赤外光源
900 閲覧者



【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光源と、投影機と、投影台と、対話操作装置と、から構成される指先操作型コンテンツ提供システムにおいて、
前記対話操作装置は、
コンテンツ構成データおよびコンテンツ素材データを格納するコンテンツ格納領域と、
コンテンツ投影画面データを保持する表示画面保持領域と、
を備える記憶手段と、
投影台を撮像して、撮影画像を作成する赤外カメラと、
コンテンツ構成データを解釈して、コンテンツ投影画面データを作成する表示閲覧手段と、
撮影画像から閲覧者の指先を検知する指先検出手段と、
検出した指先の座標を算出する指先位置決定手段と、
連続するフレームの指先座標を用いて指先移動距離を算出して、所定の時間中の指先移動距離がゼロと判定された場合には、指先座標を含む指先静止検知情報を作成する指先静止検知手段と、
指先静止検知情報に基づいて、入力イベント情報を生成して、表示閲覧手段に引き渡す入力エミュレーション手段と、
を備え、
前記表示閲覧手段は、前記入力エミュレーション手段から引き渡された入力イベント情報を受け付けて、適宜コンテンツ投影画面データを更新する、
ことを特徴とする対話操作装置であって、
前記投影機は、
コンテンツ投影画面データに基づく像を投影台に投影する、
投影機である
ことを特徴とする指先操作型コンテンツ提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の指先操作型コンテンツ提供システムにおいて、
前記指先検出手段は、
撮像手段が作成した撮影画像を透視変換撮影画像に透視変換する撮影画像透視変換機能と、
透視変換撮影画像から背景画像を除去する背景除去機能と、
背景画像を除去した透視変換撮影画像から、二値化画像を生成する撮影画像二値化機能と、
二値化画像から距離画像を作成する距離画像作成機能と、
背景画像を除去した透視変換撮影画像から輪郭部画素を検出する輪郭部画素検出機能と、
距離画像と輪郭部画素とを用いて、距離画像の最大輝度を有する画素を内包する輪郭部画素で囲まれた画像を手形画像として抽出する最大輪郭部抽出機能と、
手形画像が接するコンテンツ投影画面の辺の情報を用いて、指先を判定する指先判定機能と、
を備えることを特徴とする指先操作型コンテンツ提供システム。
【請求項3】
請求項1に記載の指先操作型コンテンツ提供システムにおいて、
前記指先位置決定手段は、
連続する各フレームの指先座標を用いて、指先の移動方向ベクトルを算出して、方向ベクトルの変動値が、所定の範囲であれば、最初のフレームの指先の座標を指先座標として用いる指先微小変動判定機能、
を備えることを特徴とする指先操作型コンテンツ提供システム。
【請求項4】
コンピューターに組込むことによって、コンピューターを請求項1または2に記載の指先操作型コンテンツ提供システムとして動作させるコンピュータープログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のコンピュータープログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−22945(P2011−22945A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169589(P2009−169589)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】