説明

指向性バイオマーカシグナル増幅用の蛍光方法および材料

【課題】タンパク質標的の検出のような方法論にCP材料を取り入れることで、アッセイの性能を劇的に向上させ、従来の色素では実現できなかった検出レベルを得る。
【解決手段】多発色団および/または標的生体分子を同定するための多発色団複合体を含む組成物および方法が得られる。抗体などのセンサ生体分子は、多発色団と共有結合的に連結可能である。また、シグナル伝達発色団も多発色団と共有結合的に連結可能である。シグナル伝達発色団が、多発色団の励起時に多発色団からのエネルギを受け取ることができるように配置される。センサ生体分子が、標的生体分子と相互作用できるため、多発色団および/または多発色団複合体によって標的生体分子用の検出シグナルを強めることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001] 本出願は、2006年10月6日に出願された米国仮特許出願第60/825,615号明細書(この出願を本明細書に援用する)の優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002] 蛍光ハイブリダイゼーションプローブが、DNAおよびRNAの配列特異的検出における重要な手段のひとつとなっている。付加された蛍光標識(または色素)によって生じるシグナルをリアルタイムで監視し、生物学的標的および事象を検出するための単純かつ高速で堅実な方法とすることができる。マイクロアレイおよびリアルタイムPCRから蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に至るまで、さまざまな用途で実用性が認められている。
【0003】
[0003] 多発色団の分野、特に共役ポリマー(CP)に関する最近の研究では、このような方法の検出感度を大幅に高める上で、これらの材料が持つ潜在的な可能性に注目している(Liu and Bazan, Chem. Mater., 2004)。これらの材料の集光構造を水溶性にして、さまざまなプローブ標識の蛍光出力を増幅できるようにすることが可能である(2003年6月20日に出願された米国特許第10/600,286号明細書およびGaylord, Heeger, and Bazan, Proc. Natl. Acad. Sci., 2002、いずれもその内容全体を本明細書に援用する)。
【0004】
[0004] 特に、カチオン性CPには、電荷の異なる核酸に対する強い親和性があり、光励起ポリマー(集光性供与体)から蛍光標識されたプローブ/標的対までエネルギを移動させるのに必要な距離が保証されることが分かっている。直接に励起させた色素単独の場合と比較して、光出力を75倍にすることができる(Liu and Bazan, J. Am. Chem. Soc., 2005)。シグナル増幅によって、同種と異種の両方の検出形式に多種多様な利点が付与されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] このような結果から、核酸診断の分野、特に試料の量が十分ではない場合に、CPが極めて有望であることが分かる。しかしながら、核酸標的については増幅(または複製)するための方法すなわち、PCRがある。これに対して、タンパク質認識の分野では、標的材料を増幅するためのこのような単純な方法はない。それ自体、CPの用途から生じるシグナル強調は、この分野で重要なものである。
【0006】
[0006] 色素標識抗体は通常、免疫組織化学、タンパク質アレイ、ELISA試験、フローサイトメトリーなどの用途において、タンパク質標的の検出に用いられる。このような方法論にCP材料を取り入れることで、こうしたアッセイの性能が劇的に向上することになり、従来の色素では実現できなかった検出レベルが得られるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
[0007] 概して、一態様では、アッセイ方法が、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供し、シグナル伝達発色団と共役し、標的生体分子と相互作用できるセンサを提供し、
【化1】

を含むがこれに限定されるものではない共役ポリマーであって、
[0008] センサと静電的に相互作用し、励起時に、センサシグナル伝達発色団にエネルギを移動できるポリマーを提供し、標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子にセンサが結合可能な条件下で、溶液中にて試料をセンサおよび多発色団に接触させ、多発色団を励起可能な光源を試料に適用し、シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出することを含む。
【0008】
[0009] 一実施形態では、R基がスルホネートである。別の実施形態では、センサが、タンパク質、核酸または抗体などの生体分子である。
【0009】
[0010] 別の実施形態では、センサが、複数のシグナル伝達発色団と共役する複数のセンサを含み得るものであり、複数の発色団のうちの少なくとも2つが、多発色団からのエネルギ移動時に波長の異なる光を放出する。
【0010】
[0011] 概して、別の態様では、少なくとも1つの生体分子に結合される多発色団を含む多発色団複合体が得られる。この生体分子としては、センサ生体分子、バイオコンジュゲート、標的生体分子があげられるが、これに限定されるものではない。複合体の多発色団は、シグナル伝達発色団にさらに結合され、以下の構造を含む。
【化2】

【0011】
[0012] 式中、CP、CP、CPおよびCPは、互いに同一または異なる、置換されていてもよい共役ポリマーセグメントまたはオリゴマー構造である。一実施形態では、共役ポリマーがカチオン性共役ポリマーである。別の実施形態では、共役ポリマーがアニオン性共役ポリマーである。さらに別の実施形態では、共役ポリマーが電荷中性共役ポリマーである。一実施形態では、CP、CP、CPおよびCPが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、チオフェン、フラン、ピリジンおよびオキサジアゾールからなる群から選択される芳香族繰り返し単位であり、各々置換されていてもよく、CPおよびCPが、リンカーによって連結された、1つまたは複数の独特なバイオコンジュゲーション部位を含み得る。
【0012】
[0013] 別の実施形態では、多発色団が、マレイミド、チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)、アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩、スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、アミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)およびスルホ−SBEDスルホスクシンイミジル[2−6−(ビオチンアミド)−2−(p−アジドベンズアミド)−ヘキサノアミド]−エチル−1,3’−ジチオプロピオネートを含むがこれに限定されるものではない、バイオコンジュゲーション部位を含む。
【0013】
[0014] 複合体の多発色団は、構造
【化3】

を有し、
[0015] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩を含むがこれに限定されるものではない、可溶化基である。
【0014】
[0016] あるいは、別の実施形態では、複合体の多発色団が、構造
【化4】

を有し、
[0017] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である。特定の実施形態では、1および2が、構造
【化5】

を有するa〜gの連結基を含むものであってもよい。
【0015】
[0018] 3は、構造
【化6】

を有する基hであってもよい。
【0016】
[0019] 別の実施形態では、複合体の多発色団が、構造
【化7】

を有するものであってもよく、
[0020] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩を含むがこれに限定されるものではない、可溶化基である。
【0017】
[0021] さらに別の実施形態では、複合体の多発色団は、構造
【化8】

を有するものであってもよく、
[0022] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である。
【0018】
[0023] さらに別の実施形態では、複合体の多発色団は、構造
【化9】

を有するものであってもよく、
[0024] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩を含む可溶化基である。
【0019】
[0025] 概して、別の態様では、多発色団と、多発色団と共有結合的に連結されたセンサ生体分子と、多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、を含み、シグナル伝達発色団が、多発色団の励起時に多発色団からのエネルギを受け取ることができ、センサ生体分子が、標的生体分子と相互作用できる、標的生体分子を同定するための多発色団複合体が得られる。一実施形態では、シグナル伝達発色団とセンサ生体分子の両方が、複数のリンカーを介して、多発色団に共有結合的に連結される。別の実施形態では、シグナル伝達発色団とセンサ生体分子の両方が、多発色団、シグナル伝達発色団およびセンサ生体分子を共有結合的に結合する三官能性リンカーを介して、多発色団に共有結合的に連結される。
【0020】
[0026] 一実施形態では、リンカーが、マレイミド/チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)/アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)/アミン、アミン/スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)/チオールおよびアミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)/チオールを含むがこれに限定されるものではない、連結化学を有する。特定の実施形態では、多発色団が、ポリカチオン性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0021】
[0027] 概して、別の態様では、得られるアッセイ方法が、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供するステップと、多発色団と、共有結合的に連結されるシグナル伝達発色団と、共有結合的に連結されるセンサ生体分子と、を含み、シグナル伝達発色団が、多発色団の励起時に多発色団からのエネルギを受け取ることができ、センサ生体分子が、標的生体分子と相互作用できる、多発色団複合体を提供するステップと、標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子にセンサ生体分子が結合可能な条件下で、溶液中にて試料を多発色団複合体に接触させるステップと、多発色団を励起可能な光源を試料に適用するステップと、シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出するステップと、を含むものである。特定の実施形態では、多発色団が、ポリカチオン性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0022】
[0028] 概して、別の態様では、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供するステップと、シグナル伝達発色団と共役し、標的生体分子と相互作用できる第1のバイオコンジュゲートを提供するステップと、構造
【化10】

[0029] (式中、CP、CP、CPおよびCPは、互いに同一または異なる、置換されていてもよい共役ポリマーセグメントまたはオリゴマー構造であり、第2のバイオコンジュゲートが、第1のバイオコンジュゲートと結合可能であり、そのような結合時に、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる)を含む多発色団と共役する第2のバイオコンジュゲートを提供するステップと、標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子に第1のバイオコンジュゲートが結合可能な条件下で、溶液中にて試料を第1のバイオコンジュゲートに接触させるステップと、溶液を第2のバイオコンジュゲートに接触させるステップと、多発色団を励起可能な光源を試料に適用するステップと、シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出するステップと、を含むアッセイ方法が得られる。一実施形態では、CP、CP、CPおよびCPが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、チオフェン、フラン、ピリジンおよびオキサジアゾールを含むがこれに限定されるものではない芳香族繰り返し単位であり、各々置換されていてもよく、CPおよびCPが、リンカーによって連結された、1つまたは複数の独特なバイオコンジュゲーション部位を含み得る。特定の実施形態では、多発色団が、ポリカチオン性共役ポリマー、アニオン性共役ポリマーおよび/または電荷中性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0023】
[0030] 関連の実施形態では、多発色団が、マレイミド、チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)、アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩、スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、アミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)およびスルホ−SBEDスルホスクシンイミジル[2−6−(ビオチンアミド)−2−(p−アジドベンズアミド)−ヘキサノアミド]−エチル−1,3’−ジチオプロピオネートを含むがこれに限定されるものではない、バイオコンジュゲーション部位を有する。
【0024】
[0031] 特定の実施形態では、多発色団が、構造
【化11】

を有し、
[0032] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である。
【0025】
[0033] さらに別の実施形態では、多発色団が、構造
【化12】

を有し、
[0034] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である。
【0026】
[0035] さらに別の実施形態では、1および2が、
構造
【化13】

を有する1つまたは複数のa〜gの連結基を含むものであってもよい。
【0027】
[0036] 一実施形態では、3が基hであり、構造
【化14】

を有する。
【0028】
[0037] 別の実施形態では、複合体の多発色団が、構造
【化15】

を有するものであってもよく、
[0038] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩を含むがこれに限定されるものではない、可溶化基である。
【0029】
[0039] さらに別の実施形態では、複合体の多発色団が、構造
【化16】

を有するものであってもよく、
[0040] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩を含むがこれに限定されるものではない、可溶化基である。
【0030】
[0041] 別の実施形態では、複合体の多発色団は、構造
【化17】

を有するものであってもよく、
[0042] 式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩を含むがこれに限定されるものではない、可溶化基である。特定の実施形態では、多発色団が、ポリカチオン性共役ポリマー、アニオン性共役ポリマーおよび/または電荷中性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0031】
[0043] 一実施形態では、第1および第2のバイオコンジュゲートのうちの少なくとも1つが抗体である。特定の実施形態では、第1および第2のバイオコンジュゲートが抗体である。
【0032】
[0044] 概して、別の態様では、得られるアッセイ方法が、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供するステップと、共有結合的に連結された第1のバイオコンジュゲートを含む多発色団を提供するステップと、標的分子と相互作用できるセンサ生体分子と、シグナル伝達発色団と、第1のバイオコンジュゲートに結合でき、そのような結合時に、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、共有結合的に連結された第2のバイオコンジュゲートと、を有するセンサ生体分子複合体を提供するステップと、標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子にセンサ生体分子が結合可能な条件下で、溶液中にて試料をセンサ生体分子複合体に接触させるステップと、溶液を多発色団に接触させるステップと、多発色団を励起可能な光源を試料に適用するステップと、シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出するステップと、を含む。特定の実施形態では、多発色団が、ポリカチオン性共役ポリマー、アニオン性共役ポリマーおよび/または電荷中性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0033】
[0045] 一実施形態では、第1および第2のバイオコンジュゲートとして、タンパク質、抗体および核酸があげられるが、これに限定されるものではない。関連の実施形態では、第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンまたはビオチンであり、センサ生体分子が抗体であり、第2のバイオコンジュゲートについては、第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンであればビオチンであり、第1のバイオコンジュゲートがビオチンであればストレプトアビジンである。別の実施形態では、第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンまたはビオチンであり、センサ生体分子が核酸であり、第2のバイオコンジュゲートについては、第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンであればビオチンであり、第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンであればビオチンである。
【0034】
[0046] 概して、別の態様では、生体分子を同定するための生体認識複合体が得られる。この複合体は、バイオコンジュゲートと、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結された多発色団と、を含むものであってもよく、その場合、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる。
【0035】
[0047] 一実施形態では、バイオコンジュゲートとして、抗体またはストレプトアビジンがあげられるが、これに限定されるものではない。特定の実施形態では、多発色団が、ポリカチオン性共役ポリマー、アニオン性共役ポリマーおよび/または電荷中性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0036】
[0048] 概して、一態様では、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供し、バイオコンジュゲートと、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結された多発色団と、を含み、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、生体認識複合体を提供するステップと、標的生体分子または標的関連生体分子が存在する場合に、この標的生体分子または標的関連生体分子にバイオコンジュゲートが結合可能な条件下で、溶液中にて試料を生体認識複合体に接触させるステップと、多発色団を励起可能な光源を溶液に適用し、およびシグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出するステップと、を含むアッセイ方法が得られる。特定の実施形態では、多発色団は、ポリカチオン性共役ポリマー、アニオン性共役ポリマーおよび/または電荷中性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0037】
[0049] 概して、別の態様では、バイオコンジュゲートと、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結された多発色団と、多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、を含み、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、標的生体分子を同定するための生体認識複合体が得られる。一実施形態では、バイオコンジュゲートが抗体である。別の実施形態では、バイオコンジュゲートがストレプトアビジンである。特定の実施形態では、多発色団が、ポリカチオン性共役ポリマー、アニオン性共役ポリマーおよび/または電荷中性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0038】
[0050] 概して、別の態様では、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供するステップと、バイオコンジュゲートと、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結された多発色団と、多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、を含み、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、バイオコンジュゲート複合体を含む生体認識複合体を提供するステップと、標的生体分子または標的関連生体分子が存在する場合に、この標的生体分子または標的関連生体分子にバイオコンジュゲートが結合可能な条件下で、溶液中にて試料を生体認識複合体に接触させるステップと、多発色団を励起可能な光源を溶液に適用するステップと、シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出するステップと、を含む、アッセイ方法が得られる。特定の実施形態では、多発色団が、ポリカチオン性共役ポリマー、アニオン性共役ポリマーおよび/または電荷中性共役ポリマーなどの共役ポリマーである。
【0039】
[0051] 別の態様では、本明細書に開示した多数の方法のいずれにおいても、標的生体分子の検出時に遺伝子の発現が検出される方法が提供される。
【0040】
[0052] 別の態様では、本明細書に開示した多数の方法のいずれにおいても、標的生体分子の検出によって、患者の病状を診断するのに用いられる結果が得られる、方法が提供される。一実施形態では、疾患を診断する方法が、試料中における標的生体分子の存在に関するデータを精査または分析するステップと、疾患の診断に関するデータの精査または分析に基づく結論を、患者、ヘルスケア提供者またはヘルスケア管理者に提供するステップと、を含む。結論を提供する関連の実施形態では、ネットワーク経由でのデータの伝送を含む。
【0041】
[0053] 通常、別の態様では、標的生体分子を同定するためのキットが得られる。一実施形態では、キットが、多発色団と、多発色団と共有結合的に連結されたセンサ生体分子と、多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、を含み、シグナル伝達発色団が、多発色団の励起時に多発色団からのエネルギを受け取ることができ、センサ生体分子が、標的生体分子と相互作用できる。特定の実施形態では、キットが基質をさらに含む。
【0042】
援用
[0054] 本明細書で言及する刊行物および特許出願はいずれも、個々の刊行物または特許出願を具体的かつ個別に援用した場合と同程度に、本明細書に援用される。
【0043】
図面の簡単な説明
[0055] 本発明の新規な特徴については、添付の特許請求の範囲において詳細に記載する。本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明ならびに添付の図面を参照することで、本発明の特徴および利点が一層よく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】[0056]本発明の一実施形態における多発色団の静電結合を概略的に示す。
【図2】[0057]増幅色素放出を示すFITC標識抗体の直接励起のプロット(左)と、本発明の一実施形態による多発色団の構造についての概略(右)である。
【図3】[0058]増幅色素放出を示すCy3標識抗体の直接励起のプロット(左)と、本発明の一実施形態による多発色団の構造についての概略(右)である。
【図4】[0059]本発明の一実施形態による、バイオコンジュゲートされる多発色団を概略的に示す。
【図5】[0060]抗体(左)または色素(右)に共役された多発色団を概略的に示す。
【図6】[0061]色素で標識される一次抗体に結合する二次抗体に共役された多発色団を概略的に示す。
【図7】[0062]色素標識一次抗体およびビオチン標識一次抗体(左)または色素標識核酸およびビオチン標識核酸(右)への結合用にストレプトアビジンに共役された多発色団を概略的に示す。
【図8】[0063]色素と共役関係にある抗体に共役された多発色団(左)ならびに、色素と共役関係にあるストレプトアビジンに共役された多発色団(右)を概略的に示す。
【図9】[0064]本発明の一実施形態による多発色団の構造を概略的に示す。
【図10】[0065]本発明の一実施形態によるバイオコンジュゲーション部位を有するモノマーを概略的に示す。
【図11】[0066]本発明の一実施形態によるモノマーへの合成経路を概略的に示す。
【図12】[0067]本発明の別の実施形態によるモノマーへの合成経路を概略的に示す。
【図13】[0068]リンカー(左)または三官能性リンカー(右)を介して色素と生体分子にバイオコンジュゲートされた多発色団を概略的に示す。
【図14】[0069]色素と抗体の両方に共役された多発色団(左)と、色素とタンパク質の両方に共役された多発色団(右)を概略的に示す。
【図15】[0070]2種類の色素で標識したDNAプローブの単一・多検出をプロットしたものである。
【図16】[0071]タンパク質を標的する一次抗体に特異的な二次抗体と色素とに連結された多発色団を概略的に示す。
【図17】[0072]二次抗体でのビオチンとの結合用に色素およびストレプトアビジンに連結された多発色団を概略的に示す。二次抗体は、タンパク質を標的する一次抗体に特異的なものとして示されている。
【図18】[0073]本発明の一実施形態による共役ポリマー多発色団の構造を概略的に示す。
【図19】[0074]本発明の別の実施形態による共役ポリマー多発色団の構造を概略的に示す。
【図20】[0075]本発明の実施形態によるさまざまな芳香族単位の構造を概略的に示す。
【図21】[0076]マレイミドバイオコンジュゲーション部位を有する共役ポリマー多発色団の構造を概略的に示す。
【図22】[0077]代表例の論理素子を示すブロック図である。
【図23】[0078]代表例のキットを示すブロック図である。
【図24】[0079]本発明の実施形態による赤外線(IR)分光分析のプロットである。
【図25】[0080]本発明の実施形態による光学スペクトルのプロットである。
【図26】[0081]本発明の実施形態による蛍光スペクトルのプロットである。
【図27A】[0082]本発明の一実施形態によるビオチニル化に関連する構造を概略的に示す。
【図27B】[0083]本発明によるビオチン−アビジン結合アッセイを概略的に示す。
【図27C】[0084]本発明の一実施形態でのビオチン−アビジン結合アッセイに関連する蛍光スペクトルのプロットである。
【図28】[0085]本発明の別の実施形態による赤外線(IR)分光分析のプロットである。
【図29】[0086]本発明の別の実施形態による光学スペクトルのプロットである。
【図30A】[0087]対照ポリマー構造を概略的に示す。
【図30B】[0088]本発明の一実施形態に関連する実験ポリマー構造を概略的に示す。
【図30C】[0089]前記対照ポリマーおよび実験ポリマーに関連する蛍光スペクトルのプロットである。
【図31A】[0090]本発明の一実施形態に関連する対照ポリマー構造と実験ポリマー構造を概略的に示す。
【図31B】[0091]対照ポリマーおよび実験ポリマーに関連する蛍光アッセイを概略的に示す。
【図32A】[0092]本発明のポリマーの一実施形態での蛍光スペクトルのプロットである。
【図32B】[0093]本発明の一実施形態による蛍光スペクトルの補正値を示すプロットである。
【図33A】[0094]本発明の一実施形態によるポリマーの蛍光シグナル強度のプロットである。
【図33B】[0095]本発明の一実施形態によるポリマーに関連するシグナル増幅のプロットである。
【図34】[0096]本発明のさらに他の実施形態による光学スペクトルのプロットである。
【図35A】[0097]本発明のビオチン−アビジン結合アッセイを概略的に示す。
【図35B】[0098]本発明の一実施形態でのフルオレセイン放出のプロットである。
【図36A】[0099]本発明の一実施形態に関連するポリマー構造を概略的に示す。
【図36B】[00100]本発明の一実施形態によるポリマーに関連する蛍光アッセイを概略的に示す。
【図36C】[00101]本発明のポリマーの一実施形態での蛍光スペクトルのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
[00102] 色素標識した抗体の増幅には、荷電した多発色団構造と基本静電相互作用が有効となり得るが、これよりもさらに指向性の高い多発色団会合方法では、バックグラウンドを減らしてシグナル伝達を改善することが可能である。多発色団材料は、抗体および/または色素に対して直接的に共役(共有結合的に連結)可能であり、アッセイ時の制御性(多発色団−色素距離)が高まる。基本的に、シグナル伝達用の色素は増幅ポリマーに密着する。さらに、多発色団の共役は色素または抗体に限定されるものではなく、多発色団は、タンパク質(アビジン/ストレプトアビジンなど)、核酸、親和性リガンド、糖類、脂質、ペプチドおよび酵素の基質をはじめとするさまざまな生体分子のいずれに対しても共役可能である。これらの形式は、DNAマイクロアレイ、FISHアッセイ、PCRアッセイなどの多岐にわたる用途に適用できるものであり、上述したタンパク質ベースの検出用途も含まれる。ポリマー材料の特性がゆえに、単一の励起波長(レーザ、フィルタなど)を用いて2種類以上の色素を増幅することができる。このため、複数の標的の同時検出(多重化)が可能になる。多発色団およびその用途についての詳細は、本明細書に各々援用する以下の明細書に開示されている。2006年1月10日に出願され、米国特許出願公開第2006−0183140A1号明細書として公開された米国特許第11/329,495号明細書;2006年1月10日に出願され、米国特許出願公開第2006−0216734A1号明細書として公開された米国特許第11/329,861号明細書;2006年1月31日に出願され、米国特許出願公開第2006−0204984A1号明細書として公開された米国特許第11/344,942号明細書;2003年8月26日に出願され、米国特許出願公開第2004−0142344A1号明細書として公開された米国特許第10/648,945号明細書;2003年6月20日に出願され、米国特許出願公開第2004−0219556A1号明細書として公開された米国特許出願第10/600,286号明細書;2003年9月17日に出願され、米国特許出願公開第2005−0059168A1号明細書として公開された米国特許第10/666,333号明細書;2004年2月13日に出願され、米国特許出願公開第2005−0003386A1号明細書として公開された米国特許第10/779,412号明細書。
【0046】
[00103] 本発明について詳細に説明する前に、ここで説明する特定の方法、器具、溶液または装置は、言うまでもなく変更可能であるため、本発明はこのような方法論、器具、溶液または装置に限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない旨も理解されたい。
【0047】
[00104] 単数形「a」「an」および「the」を使用する文脈では、特に断りがなければ、複数形についても言及しているものとする。よって、たとえば、「集合センサ」は複数の集合センサを含み、「プローブ」は複数のプローブを含むといった具合である。また、「2(つ/個)」「3(つ/個)」など具体的に複数形の表現を用いている箇所では、文脈上特に断りがなければ、同じ対象物についてそれよりも多くの数も含むものとする。
【0048】
[00105] 「接続される」「結合される」「共役される」および「連結される」などの表現は、本明細書では同義に用いられ、文脈上特に断りがなければ、直接ならびに間接的な接続、結合、連結または共役を包含する。一例において、「共役ポリマー」という語句は、当該技術分野における通常の意味で用いられ、かつ伸長した一連の不飽和結合を含有するポリマーを示すものであって、その文脈では「共役される」という表現を単なる直接または間接的接続、結合または連結以上に解釈すべきである。
【0049】
[00106] 値の範囲を示す場合、その範囲の上限と下限との間に含まれる整数値ならびに分数も各々、値の部分的な範囲とともに明確に開示されることは理解されたい。どのような範囲にしろ、上限値と下限値は、独立してその範囲に含まれるものであっても含まれないものであってもよく、上限と下限のうち一方が含まれる、両方とも含まれない、あるいは両方が含まれるかを問わず、各々の範囲が本発明に包含される。成分が0%から100%の濃度で存在可能な場合あるいは、水溶液のpHが1から14の範囲である場合のように、対象となる値に固有の限界値が存在する場合は、この固有の限界値が具体的に開示される。ある値を明記する場合、明記した値とほぼ同じ数または量の値も、それに基づく範囲と同様に本発明の範囲に包含されることを理解されたい。組み合わせを開示する場合、その組み合わせの要素の部分的な組み合わせも具体的に開示され、本発明の範囲内である。逆に、異なる要素または要素群が開示される場合、これらの組み合わせも開示される。ある発明の何らかの要素が複数の代替物を持つものとして開示される場合、各々の代替物を単独あるいは他の代替物との組み合わせで除外した発明も、本明細書に開示される。ある発明の2つ以上の要素が、そのような除外をすることができ、こうした除外内容のある要素のあらゆる組み合わせも本明細書に開示される。
【0050】
[00107] 別途定義されるか、文脈上別段に断りがなされるかでない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているものと同じ意味である。本明細書で説明する方法および材料と類似または等価のあらゆる方法および材料を本発明の実施もしくは試験において用いることが可能であるが、好ましい方法および材料をここで説明する。
【0051】
[00108] 本明細書で言及するすべての刊行物は、その文献を引用するに至った特定の材料および方法論を開示・説明する目的で援用するものである。本明細書で論じる刊行物は、本願の出願日以前の開示内容についてのみ提示される。本明細書の記載内容はいずれも、本発明が、従来発明によってそのような開示に先行する権利を享受できないことを認めるものではない。
【0052】
定義
[00109] 本発明について説明するにあたって以下の用語を用いるが、これらの用語を下記のとおり定義する。
【0053】
[00110] 「アルキル」とは、1箇所または複数箇所で置換されていてもよい、炭素数1〜24の分枝、未分枝または環状の飽和炭化水素基を示し、多環式化合物を含む。アルキル基の例としては、置換されていてもよいメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、ヘキシルオクチル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなど、ならびに、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチルおよびノルボルニルなどのシクロアルキル基があげられる。「低級アルキル」という用語は、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を示す。置換アルキル基の置換基の例としては、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、−NO、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、カルボキシアルキル、アミン、アミド、チオエーテルおよび−SHがあげられる。
【0054】
[00111] 「アルコキシ」は「−Oアルキル」基を示し、この場合のアルキルは上記にて定義したとおりである。「低級アルコキシ」基とは、1〜6個、一層好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ基を意図したものである。
【0055】
[00112] 「アルケニル」とは、1箇所または複数箇所で置換されていてもよい、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、炭素数2〜24の分枝、未分枝または環状の炭化水素基を指す。アルケニル基の例としては、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、1−メチルビニル、シクロプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブテニル、1,4−ブタジエニル、シクロブテニル、1−メチルブト−2−エニル、2−メチルブト−2−エン−4−イル、プレニル、ペント−1−エニル、ペント−3−エニル、1,1−ジメチルアリル、シクロペンテニル、へキス−2−エニル、1−メチル−1−エチルアリル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニルなどがあげられる。本明細書で好ましいアルケニル基は、2〜12個の炭素原子を含む。「低級アルケニル」という用語は、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基を意図したものである。「シクロアルケニル」という用語は、炭素数3〜8、好ましくは5または6の環状アルケニル基を示す。置換アルケニル基の置換基の例としては、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、−NO、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アミン、チオエーテルおよび−SHがあげられる。
【0056】
[00113] 「アルケニルオキシ」とは、「−Oアルケニル」基を示し、この場合のアルケニルは上記にて定義したとおりである。
【0057】
[00114] 「アルキルアリール」とは、アリール基に対して共有結合的に接合されるアルキル基を示す。好ましくは、アルキルが低級アルキルである。一例としてのアルキルアリール基としては、ベンジル、フェネチル、フェノプロピル、1−ベンジルエチル、フェノブチル、2−ベンジルプロピルなどがあげられる。
【0058】
[00115] 「アルキルアリールオキシ」とは、「−Oアルキルアリール」基を示し、この場合のアルキルアリールは上記にて定義したとおりである。
【0059】
[00116] 「アルキニル」は、1箇所または複数箇所で置換されていてもよい、少なくとも1つの−C≡C−三重結合を含む、炭素数2〜24の分枝または未分枝炭化水素基を指す。アルキニル基の例としては、エチニル、n−プロピニル、イソプロピニル、プロパルギル、ブト−2−イニル、3−メチルブト−1−イニル、オクチニル、デシニルなどがあげられる。本明細書で好ましいアルキニル基は、2〜12個の炭素原子を含む。「低級アルキニル」という用語は、炭素数が2〜6、好ましくは2〜4であり、−C=C−三重結合を1つ含むアルキニル基を意図したものである。置換アルキニル基の置換基の例としては、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、−NO、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アミン、チオエーテルおよび−SHがあげられる。
【0060】
[00117] 本明細書で言及する場合、「抗体」は最も広い意味で用いられ、具体的には、選択した抗原に対して結合活性または結合親和性を呈するかぎりにおいて、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多選択性抗体(二重特異性抗体など)、抗体フラグメント(Fab、F(ab’)およびFvなど)を包含する。
【0061】
[00118] 「抗原」とは、本明細書で使用する場合、免疫反応を誘発できるあらゆる物質を示す。
【0062】
[00119] 「アミド」とは−C(O)NR’R’’を示し、ここで、R’およびR’’は、水素、アルキル、アリールおよびアルキルアリールから独立して選択される。
【0063】
[00120] 「アミン」とは−N(R’)R’’基を示し、ここで、R’およびR’’は、水素、アルキル、アリールおよびアルキルアリールから独立して選択される。
【0064】
[00121] 「アリール」とは、共役π電子系を有する、少なくとも1個の環を有する芳香族基を示し、炭素環式、複素環式、架橋および/または多環式アリール基を含み、1箇所または複数箇所で置換されていてもよい。代表的なアリール基は、縮合および/または連結されていてもよい、1〜5個の芳香族環を含む。一例としてのアリール基には、フェニル、フラニル、アゾリル、チオフラニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、ビフェニル、インデニル、ベンゾフラニル、インドリル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ピリドピリジニル、ピロロピリジニル、プリニル、テトラリニルなどがある。置換されていてもよいアリール基の置換基の例としては、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルカルボキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、飽和または不飽和で置換されていてもよい縮合環、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアルキル、−S(O)R、スルホニル、−SOR、−SR、−NO、−NRR’、−OH、−CN、−C(O)R、−OC(O)R、−NHC(O)R、−(CHCORまたは−(CHCONRR’があげられ、式中、nは0〜4であり、RおよびR’は独立して、H、アルキル、アリールまたはアルキルアリールである。
【0065】
[00122] 「アリールオキシ」とは、「−Oアリール」基を示し、この場合のアリールは上記にて定義したとおりである。
【0066】
[00123] 「炭素環式」とは、少なくとも1個の環を含み、すべての環原子が炭素であり、飽和または不飽和であってもよい、置換されていてもよい化合物を示す。
【0067】
[00124] 「炭素環式アリール」とは、環原子が炭素である置換されていてもよいアリール基を示す。
【0068】
[00125] 「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを示す。「ハロゲン化物」とは、ハロゲンのアニオン形態を示す。
【0069】
[00126] 「ハロアルキル」とは、1箇所または複数箇所にてハロゲンで置換されたアルキル基を示し、これには、1タイプのハロゲン原子でのみ置換されたアルキル基ならびに、異なるタイプのハロゲン原子の混合物で置換されたアルキル基が含まれる。一例としてのハロアルキル基としては、トリフルオロメチルなどのトリハロメチル基があげられる。
【0070】
[00127] 「ヘテロアルキル」とは、1個または複数の炭素原子と付随する水素原子が、置換されていてもよいヘテロ原子によって代置されるアルキル基を示し、1つのタイプのヘテロ原子のみで置換されたアルキル基ならびに、異なるタイプのヘテロ原子の混合物で置換されたアルキル基を含む。ヘテロ原子としては、酸素、硫黄および窒素があげられる。本明細書で使用する場合、窒素ヘテロ原子および硫黄ヘテロ原子には、窒素および硫黄の酸化形態ならびに、プロトン化された形態を含む、4つの共有結合を有する窒素のあらゆる形態が含まれる。置換されていてもよいヘテロ原子とは、窒素原子に結合される1個または複数の水素が、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはヒドロキシルで代置されることを示す。
【0071】
[00128] 「複素環」とは、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、1箇所または複数箇所で置換されていてもよい、少なくとも1個の飽和環もしくは不飽和環を含む化合物を示す。代表的な複素環基は、縮合および/または連結されていてもよい、1〜5個の環を含み、これらの環が各々5個または6個の原子を含む。複素環基の例としては、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニルがあげられる。置換されていてもよい複素環基に対する置換基の例は、環炭素でのアルキルおよびアリールの場合と同様であり、ヘテロ原子ではヘテロアルキルの場合と同様である。
【0072】
[00129] 「複素環アリール」とは、少なくとも1つの芳香族環に少なくとも1個のヘテロ原子を有するアリール基を示す。一例としての複素環アリール基には、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリダジニル、ピロリル、N−低級アルキル−ピロロ、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ビピリジル、トリピリジル、テトラピリジル、フェナジニル、フェナントロリニル、プリニルなどがある。
【0073】
[00130] 「ヒドロカルビル」とは、分枝、未分枝および環状の種ならびに、飽和種および不飽和種をはじめとして、アルキル基、アルキリデニル基、アルケニル基、アルキルアリール基、アリール基などの1から約20個の炭素原子を含むヒドロカルビル置換基を示す。「低級ヒドロカルビル」という用語は、炭素数1〜6、好ましくは、炭素数1〜4のヒドロカルビル基を意図する。
【0074】
[00131] 「置換基」とは、炭素または窒素に結合した1つまたは複数の水素を代置する基を示す。一例としての置換基には、アルキル、アルキリデニル、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アルケニル、アルケニルカルボキシ、アルケニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、−OH、アミド、カルボキサミド、カルボキシ、スルホニル、=O、=S、−NO、ハロゲン、ハロアルキル、置換されていてもよい縮合飽和環または不飽和環、−S(O)R、−SOR、−SR、−NRR’、−OH、−CN、−C(O)R、−OC(O)R、−NHC(O)R、−(CH2)CORまたは−(CH2)CONRR’があり、式中、nは0〜4であり、RおよびR’は独立して、H、アルキル、アリールまたはアルキルアリールである。また、置換基には、炭素原子と1つまたは複数の付随する水素原子が、置換されていてもよいヘテロ原子で代置されるものも含まれる。
【0075】
[00132] 「スルホニル」は−S(O)Rを示し、式中、Rは、アルキル、アリール、−C(CN)=C−アリール、−CHCN、アルキルアリールまたはアミンである。
【0076】
[00133] 「チオアミド」は−C(S)NR’R’’を示し、式中、R’およびR’’は、水素、アルキル、アリール、アルキルアリールから独立して選択される。
【0077】
[00134] 「チオエーテル」は−SRを示し、式中、Rは、アルキル、アリールまたはアルキルアリールである。
【0078】
[00135] 本明細書で使用する場合、「結合対」という表現は、試料中の他の成分に対してよりも高い親和性で互いに特異的に結合する第1の分子と第2の分子を示す。結合対の要素間の結合は一般に、非共有結合である。一例としての結合対には、免疫学的結合対(対応する抗体または結合部分またはそのフラグメントとの組み合わせでのハプテンまたは抗原化合物、たとえば、ジゴキシゲニンと抗ジゴキシゲニン、フルオレセインと抗フルオレセイン、ジニトロフェノールと抗ジニトロフェノール、ブロモデオキシウリジンと抗ブロモデオキシウリジン、マウス免疫グロブリンとヤギ抗マウス免疫グロブリンなど)ならびに非免疫学的結合対(ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジン、ホルモン[たとえば、チロキシンとコルチゾール]−ホルモン結合タンパク質、受容体−受容体アゴニストまたはアンタゴニスト(たとえば、アセチルコリン受容体−アセチルコリンまたはその類似体)IgG−タンパク質A、レクチン−糖質、酵素−酵素補助因子、酵素−酵素−阻害因子、核酸二重鎖を形成可能な相補的ポリヌクレオチド対など)などがある。結合対の一方または両方の要素は、別の分子に共役可能である。
【0079】
[00136] 「ポリヌクレオチド」「オリゴヌクレオチド」「核酸」「核酸分子」という用語は、本明細書では任意の長さのヌクレオチドの高分子形態を示して同義に用いられ、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、これらの類似体またはこれらの混合物を含むことができる。これらの用語は、分子の一次構造のみを示すものである。よって、これらの用語には、三本鎖、二本鎖および一本鎖デオキシリボ核酸(「DNA」)ならびに三本鎖、二本鎖、一本鎖リボ核酸(「RNA」)も含む。また、ポリヌクレオチドをアルキル化および/またはキャッピングなどによって修飾した形態と、未修飾の形態も含む。これらの用語のさらに詳細ならびに、塩基対形成の詳細については、2006年1月31日に出願された米国特許出願第11/344,942号明細書(その全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0080】
[00137] 「相補的」または「実質的に相補的」とは、たとえば、センサペプチド核酸と標的ポリヌクレオチドとの間など、ヌクレオチドもしくは核酸間でハイブリダイズまたは塩基対を形成可能であることを示す。相補的ヌクレオチドは一般に、AとT(またはAとU)あるいはCとGである。2つの一本鎖ポリヌクレオチドまたはPNAは、最適に整列および比較され、かつ適切な挿入または欠失を含む一方の鎖の塩基が、他方の鎖の塩基の少なくとも約80%、通常は少なくとも約90%〜95%、一層好ましくは約98%〜100%対形成する場合、実質的に相補的であると言われる。
【0081】
[00138] あるいは、実質的相補性は、ポリヌクレオチドまたはPNAが自らの相補体に対して選択的ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする場合に存在する。一般に、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも14個〜25個の塩基配列に対して少なくとも約65%相補、好ましくは少なくとも約75%、一層好ましくは少なくとも約90%相補である場合に起こる。M.Kanehisa Nucleic Acids Res. 12:203(1984)を参照のこと。
【0082】
[00139] 「優先的結合」または「優先的ハイブリダイゼーション」とは、試料における非相補的ポリマーと比較した場合に、1つのポリヌクレオチドまたはPNAが試料で自らの相補体に結合しやすい傾向を示す。
【0083】
[00140] ポリヌクレオチドの場合のハイブリダイゼーション条件では一般に、塩濃度が約1M未満、一層普通なのは約500mM未満、好ましくは約200mM未満である。ペプチド核酸とポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの場合、塩をわずかしか含まないかまったく含まない溶液中でハイブリダイゼーションを実施することが可能である。ハイブリダイゼーション温度は、5℃まで下げることが可能であるが、一般的に22℃より高く、さらに一般的には約30℃より高く、好ましくは約37℃を超える。さらに長いフラグメントであれば、特異的ハイブリダイゼーションのためにこれよりも高いハイブリダイゼーション温度が必要になることもある。相補鎖の塩基組成や長さ、有機溶媒の存在、塩基ミスマッチの程度をはじめとする他の要因がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響することもあり、使用するパラメーターの組み合わせのほうが、いずれかひとつだけの絶対的測定値よりも重要である。制御できる他のハイブリダイゼーション条件として、緩衝液のタイプと濃度、溶液のpH、反復配列などのバックグラウンド結合を減らすブロッキング試薬またはブロッキングタンパク質溶液の存在と濃度、洗浄剤のタイプと濃度、ポリヌクレオチドの相対濃度を高めるポリマーなどの分子、金属イオンおよびその濃度、キレート化剤およびその濃度、当該技術分野において周知の他の条件があげられる。
【0084】
[00141] 本明細書における「多重化」とは、複数の検体を同時にアッセイ可能なアッセイまたは他の分析方法を示す。
【0085】
[00142] 「有する(Having)」は、「含む(comprising)」および「含む(including)」同様にオープンエンドの言い回しであり、別の要素が含まれる状況やこれが含まれない状況を含む。
【0086】
[00143] 「任意の」または「任意に」とは、この表現に続いて説明される事象または状況が生じても生じなくてもよく、事象または状況が起こる場合とそれが起こらない場合が説明に含まれることを意味する。
【0087】
[00144] 本明細書に開示する本発明は、広義には、多発色団を含む複合体およびアッセイと、シグナル増幅を高めて標的生体分子または標的分子に関連した生体分子を同定するのに有用なシグナル伝達発色団とに関する。
【0088】
[00145] 概して、一態様において、本発明は、バイオコンジュゲート(抗体など)をはじめとする生体分子であってもよいセンサ上の色素への多発色団エネルギ移動を含む。
【0089】
[00146] 一実施形態では、Gaylord, Heeger, and Bazan, J. Am. Chem. Soc., 2003に記載されているような核酸センサアッセイに関して以下のような形式を変更した手法を利用することが可能である。具体的には、多発色団のシグナル増幅を非特異的静電結合事象に基づく形にして、ハイブリダイゼーション事象を示すことが可能である。確立された多発色団を供与体として選択し、1種または複数の色素、好ましくは効率的なエネルギ移動歴のあるフルオレセインおよびCy3などの色素を受容体として選択することが可能である。色素については、センサ分子に直接共役できると想定される。図1に概略的に示すように、センサは、溶液中または基質上の生体分子(抗体など)であればよく、これに多発色団を付加することができる。図1に示す実施形態では、正味の負電荷を有する抗体(Y字形構造)に色素を共有結合的に連結(バイオコンジュゲート)することが可能である。カチオン性多発色団(波線で図示)を付加すると、多発色団と抗体との間に静電結合が生じ、多発色団と色素とを近接させることができる。よって、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)のための距離的な要件が満たされ、光(hνで図示)でポリマーを励起させると増幅色素放出が発生する。色素が有意な吸光度を持たない波長で多発色団を励起できると想定される。一実施形態では、多発色団の放出よりも色素の放出のほうが波長を長くすることが可能である。実用上、アッセイ方法には、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供するステップと、シグナル伝達発色団と共役し、標的生体分子と相互作用できるセンサを提供するステップと、センサと静電的に相互作用し、励起時に、センサシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる多発色団を提供するステップと、標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子にセンサが結合可能な条件下で、溶液中にて試料をセンサおよび多発色団に接触させるステップと、を含み得ると想定される。次に、この方法は、多発色団を励起可能な光源を試料に適用し、シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出することを含み得る。
【0090】
[00147] 図1に示す実施形態で得られるデータの一例を図2に示す。グラフに示されるように、FITC標識マウス−抗ヒトCD22抗体を、直接(FITCと表示した下側の線)あるいは、励起、静電的に結合した多発色団(図2の右に示す構造)ならびに、これに続くFRETによるエネルギ移動によって間接的(ポリマーによって増幅されるシグナルと表示した上側の線)に励起可能である。実験の細目には、FITC標識マウス−抗ヒトCD22抗体の直接励起(FITCと表示した下側の線、496nmで励起、[FITC標識マウス−抗ヒトCD22]=1ng/mL)と、1×SSPE2mL中での多発色団−増幅色素放出(上側の線、380nmで励起、[多発色団]=1×10−6M(繰り返し単位)、RU)が含まれていた。供与体多発色団の構造をグラフの右に示す。都合のよいことに、多発色団の共存下でエネルギ移動をすると、直接励起の場合と比べて色素シグナル強度が5倍に増幅された。
【0091】
[00148] 図1に示す実施形態で得られるデータの第2の例を図3に示す。ここで、グラフでは、Cy3標識ロバ−抗マウス二次抗体の直接励起(下側の線、Cy3と表示、540nmで励起)および間接励起(上側の線、380nmで励起)のための光学レポーティング(optical reporting)シグナルを比較して示してある。実験条件は、容量を半分にしたこと以外は前の実験の場合と同様とした。供与体多発色団構造を図3の右側に示す。多発色団増幅色素強度は、この色素を直接励起した場合と比較して10倍の強度であった。
【0092】
[00149] 本明細書で開示するように、荷電した多発色団と色素標識抗体との間の静電結合は、たとえば生体分子標的の検出感度を高めるための実行可能な手法となり得る。さらに別の実施形態では、多発色団(抗体複合体など)を色素/生体分子に共有結合的に結合させることで、バックグラウンドの低減やエネルギ移動の改善といった複数の利点が得られる。生体分子への直接連結の場合、静電結合事象ではなく生体認識事象が多発色団の存在を支配することになる。このようにして、生体分子に対する多発色団の非特異的結合を排除でき、多発色団自体に起因するバックグラウンド放出が低減される。上述の生体分子としては、タンパク質、ペプチド、親和性リガンド、抗体、抗体フラグメント、糖類、脂質および核酸(ハイブリダイゼーションプローブおよび/またはアプタマーとして)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0093】
[00150] 色素または生体分子/色素複合体への直接連結の場合は、静電結合の強さに左右されるのではなく、供与体−受容体間の距離を固定でき、エネルギ移動効率を有意に高めることが可能である。これは、色素シグナル伝達の改善と、供与体−受容体クロストークに関連したバックグラウンド蛍光の低減という観点で、非常に重要なことである。この場合のクロストークとは、多発色団(供与体)と色素(受容体)との放出ピークが重なることを示す。エネルギ移動には長すぎる距離で非特異的に結合する多発色団は、バックグラウンド蛍光(またはクロストーク)の原因となり得る。供与体と受容体との間の距離を短く(固定に)することで、直接的な色素増幅が容易になるばかりでなく、供与体の放出を大幅に抑えることが可能である。これによって、受容体の放出波長での供与体放出量が減り、結果としてクロストーク補正の必要性が低減されるか、必要性がなくなることすらある。
【0094】
[00151] 概して、別の態様では、本発明は、親和性リガンド(親和性リガンドとは、別の生体分子に対する親和性を有する生体分子のことである)に対する多発色団のバイオコンジュゲーションを含む。多発色団(波線で示す)が、色素、生体分子または生体分子/色素複合体(Xと表示)に連結されるクラスの材料を図4に示す。多発色団への連結は、生体分子および/または色素(X参照)に連結された第2の機能性リンカーA’と共有結合的に連結可能なバイオコンジュゲーション部位として機能する、多発色団の第1の機能性リンカーAを介して行うことが可能である。このようにすることで、多発色団とXとの距離を一定にすることが可能であり、よって、多発色団とXとの間には特定の相互作用だけが保証される。本実施形態の生体分子成分Xは、抗体、タンパク質、親和性リガンドまたは核酸を含むがこれに限定されるものではない、本明細書に開示するさまざまな生体分子のうちのどのような生体分子であってもよいと思われる。
【0095】
[00152] この文脈でのXとしては、色素、蛍光タンパク質、ナノ材料(Quantum Dotなど)、色素と化学発光生成分子とのコンジュゲート、蛍光タンパク質と化学発光生成分子とのコンジュゲート、ナノ材料(Quantum Dotなど)と化学発光生成分子とのコンジュゲート、ストレプトアビジン、アビジン、酵素、酵素用の基質、酵素用の基質類似物、受容体、受容体用のリガンド、受容体用のリガンド類似物、DNA、RNA、修飾核酸、DNAアプタマー、RNAアプタマー、修飾核酸アプタマー、ペプチドアプタマー、抗体、抗原、ファージ、細菌または上述した任意の物質2つのコンジュゲートを用いることが可能であると思われるが、これに限定されるものではない。
【0096】
[00153] A−A’およびB−B’の連結化学としては、マレイミド/チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)/アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)/アミン、アミン/スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)/チオールおよびアミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)/チオールがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0097】
[00154] 別の態様では、本発明は、標識された多発色団を含む。標識された多発色団の2つの例を図5に示す。一実施形態では、左側に、多発色団(波線で示す)が、1°または2°抗体などであればよい抗体と共役された状態で示されている。多発色団と抗体とのコンジュゲートについては、アッセイなどでレポーターとして利用することができる。光(図示せず)で多発色団を励起させると、この多発色団が放出され、抗体(1°または2°)が存在することが分かる。図5の右側に示す別の実施形態では、多発色団を発色団などの色素で標識する。この場合、図示のFRETプロセスにおいて多発色団は供与体として作用でき、色素は受容体として作用できる。ここで、多発色団は、集光器として作用でき、多発色団の励起に続いてFRETプロセスによる色素への励起のチャネリングが生じる。この結果、(色素の直接励起ではなく)増幅色素放出が生じる。供与体多発色団の蛍光は、一実施形態では、消光可能(たとえば、>90%消光)である。
【0098】
[00155] 概して、別の態様では、本発明は、標的生体分子またはタグ付き標的生体分子向けのアッセイ方法を含む。図6に示すように、一実施形態では、多発色団(波線で示す)を、1°抗体などの第2の色素標識バイオコンジュゲートに特異的な2°抗体などの第1のバイオコンジュゲート(Y字形の物体として示す)に連結することが可能である。ここで、1°抗体と2°抗体との間の認識事象がゆえに、供与体多発色団と受容体色素との間の距離が短くなる。この認識事象の後、光(hνで図示)で供与体多発色団が励起されて受容体色素へのFRET(曲がった矢印で表示)が生じ、(色素の直接励起ではなく)増幅色素放出が観察される。実用上、アッセイ方法には、シグナル伝達発色団に共役され、標的生体分子と相互作用できる1°抗体などの第1のバイオコンジュゲートを提供するステップによって、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供することを含み得ると思われる。続いて、多発色団と共役される2°抗体などの第2のバイオコンジュゲートを提供し、この場合、第2のバイオコンジュゲートが、第1のバイオコンジュゲートと結合可能であり、そのような結合時に、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる。次に、この方法は、標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子に第1のバイオコンジュゲートが結合可能な条件下で、溶液中にて試料を第1のバイオコンジュゲートに接触させ、溶液を第2のバイオコンジュゲートに接触させることを含む。さらに、この方法は、標的生体分子またはタグ付きの標的生体分子に光源を適用(この場合の光源は、多発色団を励起可能なものである)し、続いてシグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出することを含む。
【0099】
[00156] 概して、別の態様では、本発明は、多発色団とセンサ生体分子複合体とを利用して試料をアッセイする方法を含む。図7の左側に示されるように、多発色団(波線で示す)を、ビオチンに対する親和性の高いストレプトアビジン(SA)などの第1のバイオコンジュゲートに共役させることが可能である。図7の左では、センサ生体分子(1°抗体または2°抗体であり得る抗体など)を色素と第2のバイオコンジュゲート(ビオチン部分など)の両方に共役させる。第1のバイオコンジュゲートと第2のバイオコンジュゲートとの間(SAとビオチンとの間など)での生体認識事象の後、多発色団と色素が近接することになり、供与体多発色団の励起によって受容体色素へのFRETが生じる。色素が放出されることで、第1のバイオコンジュゲート(抗体など)が存在することが分かる。色素を直接励起する場合とは異なり、FRETによって間接的に励起されると色素シグナル強度の増幅が観察されることになる。
【0100】
[00157] 別の実施形態では、図7の右側に示されるように、核酸などのセンサ生体分子が、色素と第1のバイオコンジュゲート(ビオチン部分など)の両方と共役される。第2のバイオコンジュゲート(SAなど)と第1のバイオコンジュゲート(ビオチンなど)との間の生体認識事象の後、多発色団と色素が近接することになり、供与体多発色団の励起によって受容体色素へのFRETが生じる。色素を直接励起する場合とは異なり、FRETによって間接的に励起されると色素シグナル強度の増幅が観察されることになる。色素が放出されることで、センサ生体分子(核酸など)が存在することが分かる。
【0101】
[00158] 図7に示す実施形態を用いる方法は、標的生体分子を含有するとみられる試料を提供するステップと、共有結合的に連結された第1のバイオコンジュゲート(SAなど)を含む多発色団を提供するステップと、標的分子と相互作用できるセンサ生体分子と、シグナル伝達発色団と、第1のバイオコンジュゲートに結合でき、そのような結合時に、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、共有結合的に連結された第2のバイオコンジュゲートと、を含むセンサ生体分子複合体を提供するステップと、を含み得る。この方法はさらに、標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子にセンサ生体分子が結合可能な条件下で、溶液中にて試料をセンサ生体分子複合体に接触させるステップと、溶液を多発色団に接触させるステップと、多発色団を励起可能な光源を試料に適用するステップと、シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出するステップと、を含み得る。
【0102】
[00159] 概して、別の態様では、本発明は、バイオコンジュゲートと、シグナル伝達発色団と、多発色団とを含む生体分子を同定するための生体認識複合体を提供するものである。抗体などの色素標識バイオコンジュゲートに直接共役された多発色団(左)を図8に示す。図8はさらに、多発色団が色素標識SAと共役される別の実施形態(右)も示している。左側に示す実施形態では、バイオコンジュゲート(Y字形で図示)および色素と多発色団との共有連結によって、供与体多発色団と受容体色素とが近接する。抗体などのバイオコンジュゲートと、抗原などのその標的との間での生体認識事象の際、供与体多発色団の励起によって受容体色素へのFRETが生じる。図8の右側に示す別の一実施形態では、多発色団と色素とが一定の近接した位置に保たれる。それ自体、結合事象の際に、たとえば、SAとビオチン部分との間で、供与体多発色団の励起によって受容体色素へのFRETが生じる。図8に示すいずれの実施形態でも、増幅色素の放出が多発色団の励起に起因して生じるものでなければならない。
【0103】
[00160] CP構造の非限定的な例を図9に示す。骨格は主に、フルオレン−フェニレン繰り返し単位からなるものであればよく、FRETプロセスでの供与体として機能する。CPはR1基とR2基で官能化される。どちらも、第4級アミンまたはPEGタイプの官能基を含むがこれに限定されるものではない親水基でCPを可溶化するよう機能できるのに対し、R2は、エネルギレベルの変更によって光学特性を調節するよう機能することもできる。部位Aで官能化された第3のコ−モノマーフェニル基は、色素または生体分子へのバイオコンジュゲーションを可能にするものである。リンカーAとしては、マレイミド、チオール、スクシミジルエステル(またはNHS−エステル)、アミン、アジド、ビオチン、アビジン/ストレプトアビジンあるいは、生体分子または色素で得られるA’リンカーと反応する他のいくつかのリガンド−受容体(図4の場合などを参照)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0104】
[00161] 図9に示す一例としてのポリマーの合成を可能にする独特なモノマーを図10に示す。このモノマーには、鈴木カップリングが可能な2つの部位があり(Liu and Bazan, J. Am. Chem. Soc., 2005;Liu and Bazan, Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 2005;Bazan, Liu、2003年9月17日に出願された米国仮特許出願第60/666,333号明細書を参照のこと)、重要なことに、バイオコンジュゲーションを可能にする部位Aもある。部位Aは、バイオコンジュゲーション部位自体であってもよいし、フタルイミド(保護アミン)などの前駆体であってもよい。
【0105】
[00162] 適したモノマー合成のいくつかの例を図11および図12に示す。図11は、保護アミンとして機能するフタルイミド官能基を用いるモノマーの合成について概略的に示している。図12は、チオールへのバイオコンジュゲートが可能なマレイミドを用いるモノマーの合成について説明するものである。
【0106】
[00163] 重合用の2種類のモノマー構造の合成例を以下に示す。最初は、スクシミジルエステルへのバイオコンジュゲーションを目的として保護アミン(フタルイミドの形を取る)で官能化されたモノマーの一段合成、2つ目は、チオールへのバイオコンジュゲーションを目的としてマレイミドで官能化されたモノマーの四段合成である。
【0107】
[00164] N−4’−(3’’,5’’−ジブロモフェノキシ)ブチルフタルイミドまたは1−(4’−フタルイミドブトキシ)3,5−ジブロモベンゼン。3,5−ジブロモフェノール(970mg、3.85mmol)をヘキサンから再結晶化した。溶媒を除去した後、N−(4−ブロモブチル)フタルイミド(1.38g、4.89mmol)と、KCO(1.88g、13.6mmol)と、18−クラウン−6(53mg、0.20mmol)と、アセトン(20mL)とを加えた。これを1時間還流した後、水100mLに注ぎ入れた。水性相をジクロロメタンで抽出(4×30mL)した。有機層同士を組み合わせ、水、飽和NaHCOおよびブラインで洗浄した後、MgSOで乾燥させて濾過した。溶媒を除去したところ、白色の固体が得られ、これをカラムクロマトグラフィ(4:1ヘキサン:CHCl)で精製した後、ヘキサン中にて再結晶化させて、無色の針状物質(650mg、87%)を得た。
【0108】
[00165] N−メトキシカルボニルマレイミド。マレイミド(2.00g、20.6mmol)とN−メチルモルホリン(2.08g、20.6mmol)との酢酸エチル溶液を0℃まで冷却した。クロロギ酸メチル(1.4mL、20.7mmol)を滴下して添加したところ、白色の沈殿が生じた。この溶液を0℃で1時間攪拌した後、固体を濾過により除去した。濾液を濃縮すると、桃色の油が生じ、これをカラムクロマトグラフィ(溶離液3:1ヘキサン:酢酸エチル)で精製して淡い黄色の結晶を得た。
【0109】
[00166] N−(ω−ヒドロキシヘキシル)マレイミド。6−アミノ−1−ヘキサノールと飽和NaHCO(20mL)とを0℃まで冷却した。攪拌しながらN−メトキシカルボニルマレイミドを数回に分けて加えた。固体は完全には溶解されなかった。これを0℃で30分間攪拌(20分を経過するとほとんどの固体が溶解)し、続いて氷浴を取り除き、溶液をさらに30分間攪拌したところ、この時点で溶液は淡い桃色になった。これを水で3倍に希釈し、クロロホルムで洗浄(3×40mL)し、MgSOで乾燥させて濾過し、回転蒸発によって溶媒を除去した。
【0110】
[00167] 1−(6’−ブロモヘキシルオキシ)−3,5−ジブロモベンゼン。3,5−ジブロモフェノールをヘキサンから再結晶化した。溶媒を除去した後、1,6−ジブロモヘキサン、KCO、18−クラウン−6およびアセトンを加えた。これを1時間還流した後、水100mLに注ぎ入れた。水性相をジクロロメタンで抽出(4×30mL)した。有機層同士を組み合わせ、水、飽和NaHCOおよびブラインで洗浄した後、MgSO上で乾燥させて濾過した。溶媒を除去したところ、乳白色の固体が得られ、これをカラムクロマトグラフィで精製して白色の固体を得た。
【0111】
[00168] 1−(6’−(6’’マレイミドヘキシルオキシ)ヘキシルオキシ)−3,5−ジブロモベンゼン。N−(ω−ヒドロキシヘキシル)マレイミドと、1−(6’−ブロモヘキシルオキシ)−3,5−ジブロモベンゼンと、KCOと、18−クラウン−6と、アセトンとを1時間還流した後、水100mLに注ぎ入れる。水性相をジクロロメタンで抽出(4×30mL)する。有機層同士を組み合わせ、水、飽和NaHCO、ブラインで洗浄した後、MgSO上で乾燥させて濾過する。溶媒を除去すると、粗材料が得られ、これをカラムクロマトグラフィで精製して精製生成物を得る。
【0112】
[00169] 概して、別の態様では、本発明は、多発色団と、センサ生体分子と、シグナル伝達発色団とを含む、標的生体分子を同定するための多発色団複合体を提供するものである。図13に示すように、一実施形態では、多発色団を色素と生体分子(生体認識分子など)の両方にバイオコンジュゲートすることが可能である。有用な生体分子としては、抗体、親和性リガンド、核酸、タンパク質、ナノ粒子または酵素用の基質があげられるが、これに限定されるものではない。色素を多発色団と近接して共有結合的に連結することの利点については、上述した。受容体色素と生体認識分子の両方を多発色団に付加すると、受容体が供与体多発色団付近にくるように(あるいはその逆)供与体−受容体距離を一定にし、生体認識事象を示すための多発色団結合の特異性を高めることで、利点が二倍になる。これらの共有結合複合体は、本明細書で説明するモノマーと連結化学によって生成可能なものである。
【0113】
[00170] 図13の左側に示すように、一実施形態では、多発色団(波線)をリンカー官能基A−A’によって色素Xにバイオコンジュゲートし、リンカー官能基B−B’によって生体分子Yにバイオコンジュゲートすることができる。図13の右側に示す別の実施形態では、三官能性リンカーによって、リンカー官能基A−A’、B−B’、C−C’を介して多発色団を色素Xと生体分子Yにバイオコンジュゲートすることができる。図13に示す実施形態では、Xとしては、色素、蛍光タンパク質、ナノ材料(Quantum Dotなど)、色素と化学発光生成分子とのコンジュゲート、蛍光タンパク質と化学発光生成分子とのコンジュゲート、またはナノ材料(Quantum Dotなど)と化学発光生成分子とのコンジュゲートを用いることが可能であると思われるが、これに限定されるものではない。Yとしては、ストレプトアビジン、アビジン、酵素、酵素用の基質、酵素用の基質類似物、受容体、受容体用のリガンド、受容体用のリガンド類似物、DNA、RNA、修飾核酸、DNAアプタマー、RNAアプタマー、修飾核酸アプタマー、ペプチドアプタマー、抗体、抗原、ファージ、細菌または上述した任意の物質2つのコンジュゲートを用いることが可能であると思われるが、これに限定されるものではない。
【0114】
[00171] A−A’、B−B’、C−C’の連結化学としては、マレイミド/チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)/アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)/アミン、アミン/スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)/チオールおよびアミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)/チオールがあげられるが、これに限定されるものではない。市販のスルホ−SBEDスルホスクシンイミジル[2−6−(ビオチンアミド)−2−(p−アジドベンズアミド)−ヘキサノアミド]−エチル−1,3’−ジチオプロピオネートなどの三官能性リンカーであれば、X、Y、多発色団の三方向への連結にうまく作用することができる。
【0115】
[00172] 実用上、図13に示す実施形態は、標的生体分子を同定するための多発色団複合体であってもよく、この場合、複合体は、多発色団と、多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、多発色団と共有結合的に連結されたセンサ生体分子とを含む。複合体のシグナル伝達発色団は、多発色団の励起時に多発色団からエネルギを受け取ることができ、センサ生体分子は、標的生体分子と相互作用できる。生体分子には、抗体、タンパク質、親和性リガンド、ペプチドまたは核酸を用いることが可能であるが、これに限定されるものではないと想定される。
【0116】
[00173] 概して、別の態様では、本発明は、生体分子を同定するための生体認識複合体を提供するものであり、この場合の複合体は、バイオコンジュゲートと、多発色団と、シグナル伝達発色団とを含む。図14の左側に示す一実施形態では、多発色団が、抗体(1°または2°)などのバイオコンジュゲートおよび色素の両方と共役される。供与体多発色団と受容体色素とが共有結合的に連結されることで、これらが確実に近接することになる。供与体多発色団が励起されると、受容体色素へのFRETが生じることになる。バイオコンジュゲートが抗体である場合、抗体がその標的(抗原など)に結合すると、それが供与体多発色団の励起時に色素の放出によって示される。別の実施形態では、図14の右側に示されるように、多発色団をSAおよび色素の両方に共役させることが可能である。繰り返すが、供与体多発色団と受容体色素とが共有結合的に連結されることで、これらが確実に近接し、供与体多発色団が励起されると受容体色素へのFRETが生じる。SA複合体を利用して、ビオチニル化抗体または核酸などのビオチン標識生体分子を標識または検出することが可能である。色素標識へのFRETを伴う多発色団の励起によって、検出シグナルが大幅に増強される(すなわち感度が高まる)ことになる。
【0117】
[00174] レポーター色素と2°抗体(Y字形構造)の両方にバイオコンジュゲートした二重標識多発色団(波線で示す)の一例を図16に示す。アッセイでは、未標識の1°抗体が、標的タンパク質(黒い三角形で示す)などの抗原に結合可能である。多発色団と共役され、さらに色素と共役される2°抗体の付加物(addition)を、1°抗体に特異的に結合することが可能である。多発色団を光学励起させると、直接励起での結果とは違って色素にエネルギを移動し、増幅色素を放出することが可能である。
【0118】
[00175] 本発明の一実施形態によるサンドイッチタイプの複合体の一例を図17に示す。ここで、多発色団複合体は、色素と生体分子(ストレプトアビジン(SA)など)の両方にバイオコンジュゲートされる多発色団(波線で示す)で構成される。未標識の1°抗体が、黒い三角形で示す標的タンパク質に結合した後、ビオチン標識2°抗体が1°抗体に特異的に結合する。別のステップでは、色素の直接励起とは異なり、多発色団複合体を付加するとビオチンとストレプトアビジンとの間に特異的結合が生じ、多発色団の励起によって増幅色素放出が生じる。色素放出に伴うシグナルが、標的タンパク質の存在を示すことになる。
【0119】
[00176] さらに他の態様では、本発明は、供与体から複数の受容体へのエネルギ移動を多重化するものである。多発色団をFRET系での供与体として利用することで、利点には多重化する機能も含まれる。単一の供与体で複数の色素にエネルギを移動させることができるため、単一の励起源を用いて、複数の色素の強度を監視することが可能である。これは、タンパク質−抗体認識事象によって異なるタイプの細胞を監視可能な細胞の画像化(すなわち免疫組織化学)を含むがこれに限定されるものではない用途に有用である。
【0120】
[00177] 一実施形態では、2種類の色素標識抗体を培養細胞株などの生物学的材料と一緒にインキュベートすることが可能である。抗体は、表面で標的タンパク質が発現された細胞を認識し、これらのタンパク質にのみ特異的に結合することができる。2種類の抗体を異なる色素で標識することで、2種類の異なるタンパク質または異なる細胞型の発現を同時に監視することが可能である。一般に、これには、正しい励起波長で各々に1回ずつ2回の走査または2つの画像が必要である。分析前の最終ステップとして、これらの2つの画像を重ねなければならない。色素と多発色団の両方に共役される抗体を利用することで、1つの励起波長を両方の色素に利用することができ、1つの画像に2つの抗体の各々から得られるデータセットが含まれることになる。
【0121】
[00178] この実施形態と関連する例を図15に示す。図中、フルオレセイン標識DNAプローブへのエネルギ移動(点線)、Texas red標識DNAプローブへのエネルギ移動(破線)、両方のプローブへのエネルギ移動(実線)の場合について、単一の供与体多発色団での放出スペクトルが示されている。また、2種類の色素の直接励起で生じるスペクトルも図15の下に向かう実線で示す。3つの事例のいずれにおいても色素の有意な増幅が認められる。さらに、他の色素の有無を問わずそれぞれの色素で強いシグナルが観察されることから、多重化の見込みがあることが分かる。タンパク質診断で並列の結果が想定される。
【0122】
[00179] 多重化分析の可能性を考慮すると、フルオレセイン、6−FAM、ローダミン、Texas Red、テトラメチルローダミン、カルボキシローダミン、カルボキシローダミン6G、カルボキシロードル(carboxyrhodol)、カルボキシローダミン110、Cascade Blue、Cascade Yellow、クマリン、Cy2(登録商標)、Cy3(登録商標)、Cy3.5(登録商標)、Cy5(登録商標)、Cy5.5(登録商標)、Cy-Chrome、フィコエリトリン、PerCP(ペリジニンクロロフィル−aタンパク質)、PerCP-Cy5.5、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン)、NED、ROX(5−(および−6)−カルボキシ−X−ローダミン)、HEX、Lucifer Yellow、Marina Blue、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Alexa Fluor.RTM. 350、Alexa Fluor(登録商標)430、Alexa Fluor(登録商標) 488、Alexa Fluor(登録商標) 532、Alexa Fluor(登録商標) 546、Alexa Fluor(登録商標) 568、Alexa Fluor(登録商標) 594、Alexa Fluor(登録商標) 633、Alexa Fluor(登録商標) 647、Alexa Fluor(登録商標) 660、Alexa Fluor(登録商標) 680、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸、BODIPY.RTM. FL、BODIPY(登録商標) FL-Br.sub.2、BODIPY(登録商標) 530/550、BODIPY(登録商標) 558/568、BODIPY(登録商標) 564/570、BODIPY(登録商標) 576/589、BODIPY(登録商標) 581/591、BODIPY(登録商標) 630/650、BODIPY(登録商標) 650/665、BODIPY(登録商標) R6G、BODIPY(登録商標) TMR、BODIPY(登録商標) TR、これらのコンジュゲートおよびこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない、多数の色素に多発色団を連結できると想定される。
【0123】
[00180] 本明細書に記載の本発明を利用して、経口流体試料用のFDA認可HIV診断試験であるOraSure Technologies, Inc.(Bethlehem , PA)製のOraQuick Rapid HIV-1/2 Antibody Testを含むがこれに限定されるものではない、業務利用可能な多数の試験の感度を高めることが可能であると想定される。この試験を用いると、わずか20分間で99パーセントを超える精度でスクリーニングを行うことができる。
【0124】
[00181]多発色団
[00182] 集光性多発色団系は、近接する発光種に対してエネルギを効率的に移動することができる。エネルギ移動の機序としては、たとえば、共鳴エネルギ移動(Forster(または蛍光)型共鳴エネルギ移動すなわちFRET)、量子電荷交換(Dexter型エネルギ移動)などがあげられる。しかしながら、これらのエネルギ移動機序は一般に、その範囲が比較的短く、エネルギを効率的に移動させるには集光性多発色団系がシグナル伝達発色団に近接している必要がある。集光性多発色団系の個々の発色団の数が多い場合は、放出が増幅される。つまり、入射光(「ポンプ光」)が集光性多発色団系で吸収される波長にあってフルオロフォアに移動される場合のほうが、フルオロフォアがポンプ光で直接励起される場合よりも、フルオロフォアからの放出のほうが強い。
【0125】
[00183] 本発明で用いる多発色団は、電荷が中性であってもよいし、カチオン性またはアニオン性であってもよい。いくつかの実施形態では、多発色団がポリカチオン性多発色団である。
【0126】
[00184] 多発色団がポリカチオン性である実施形態では、これを、多糖、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、抗体などの複数のアニオン性基を含む生体分子と相互作用させることが可能である。いくつかの実施形態では、多発色団が標的抗体またはポリヌクレオチドと静電的に相互作用するため、センサポリヌクレオチドと標的ポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションまたは抗体−抗原認識によって、荷電していないセンサポリヌクレオチドのシグナル伝達発色団をエネルギ受容近位に持っていくことが可能である。光を吸収し、好ましくはエネルギを放出または移動させるポリカチオン性多発色団であれば、どのようなポリカチオン性多発色団でもここに述べる方法で使用することが可能である。使用可能な一例としての多発色団としては、多数の発色団を実現可能な形で取り入れた、共役ポリマー(CP)、飽和ポリマーまたはデンドリマーあるいは、半導体ナノ結晶(SCNC)があげられる。CP、飽和ポリマーおよびデンドリマーは、複数のカチオン種を取り込むよう調製可能なものであり、誘導体化して合成後にこれをポリカチオン性にすることも可能である。一方、半導体ナノ結晶は、その表面にカチオン種を付加することでポリカチオン性にすることができるものである。いくつかの実施形態では、ポリカチオン性多発色団は、励起時にエネルギを移動させる機能で検出されるわけではないため、このような検出スキームを伴う方法では、多発色団でエネルギを放出または移動させる必要がない。
【0127】
[00185] いくつかの実施形態では、多発色団がCPである。特定の実施形態では、CPが、約450nmから約1000nmの範囲でポリマーに吸収性を与えるタイプおよび量の「低バンドギャップ繰り返し単位」を含むものである。低バンドギャップ繰り返し単位は、重合前にこのような吸収を呈するものであってもよいし、呈するものでなくてもよいが、共役ポリマーに取り入れられるとその吸収を導くものである。このような吸収特性がゆえに、生物学的試料の分析および画像形成および/または分子の検出時を含む、さまざまな設定で、バックグラウンド蛍光が少ない波長でのポリマー励起が可能になる。CPの吸光度を、エネルギが低く波長の長いほうにシフトさせると、一層感度が高く堅実な方法が得られることになる。さらに、市販の機器の多くは、こうした問題を少なくともいくらかは回避する波長で動作する画像形成部品を取り入れている。たとえば、この領域で動作する、増幅反応時にリアルタイムの検出を行うサーマルサイクラーと、マイクロアレイリーダとが入手可能である。この領域で吸収するポリマーを提供ことで、検出方法をこのような形態に適合させることが可能になり、まったく新しい方法を実施することも可能になる。
【0128】
[00186] バンドギャップを低減する繰り返し単位を取り入れると、このような特性を持つ共役ポリマーを生成することが可能である。そのような波長で光を吸収するポリマーが得られる、置換されていてもよい種の例としては、2,1,3−ベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾテルロジアゾール、ナフトセレナジアゾール、4,7−ジ(チエン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、スクアライン色素、キノキサリン、低バンドギャップの業務用色素、オレフィンおよびシアノ置換オレフィンおよびこれらの異性体があげられる。好適な多発色団の組成、構造、特性および合成に関するさらに詳細については、2005年1月10日に出願された米国仮特許出願第60/642,901号明細書、2006年1月10日に出願され、現在は米国特許出願公開第2006−0183140A1号明細書として公開されている、米国特許第10/600,286号明細書(ともに本明細書に援用する)に記載されている。
【0129】
[00187] 多発色団については、一組の共有結合的に結合した発色単位または発色団の共有結合集合として説明することができる。多発色団としては、共役ポリマー(CP)などの直鎖状構造と樹状構造(Wang, Gaylord, and Bazan, Adv. Mater., 2004, Wang, Hong, and Bazan, Org. Lett., 2005)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0130】
[00188] 直鎖状多発色団としてのCPの一般的な構造を図18に示す。一実施形態では、このようなCPは、米国特許第10/666,333号明細書:Conformationally Flexible Cationic Conjugated Polymers(LiuおよびBazan)の表1および表2またはスキーム1に記載されている単位で構成可能なものであり、本明細書の図10に示すような1つまたは複数の独特なバイオコンジュゲーション部位を含むモノマーを含むものである。CPは、好ましくは少なくとも約0.01mol%のバイオコンジュゲーション部位を含み、少なくとも約0.02mol%、少なくとも約0.05mol%、少なくとも約0.1mol%、少なくとも約0.2mol%、少なくとも約0.5mol%、少なくとも約1mol%、少なくとも約2mol%、少なくとも約5mol%、少なくとも約10mol%、少なくとも約20mol%または少なくとも約30mol%を含むものであってもよい。CCPは、最大で100mol%のバイオコンジュゲーション部位を含むものであってもよく、約99mol%またはそれ未満、約90mol%またはそれ未満、約80mol%またはそれ未満、約70mol%またはそれ未満、約60mol%またはそれ未満、約50mol%またはそれ未満,または約40mol%またはそれ未満を含むものであってもよい。
【0131】
[00189] 図18では、単位CP、CP、CPおよびCPは、置換されていてもよい共役ポリマーセグメントまたはオリゴマー構造であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。CP、CP、CPおよびCPは、芳香族繰り返し単位であってもよく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、チオフェン、フラン、ピリジンおよびオキサジアゾールからなる群から選択されるものであってもよく、各々が置換されていてもよい。また、CP3およびCP4が、図3hのように、リンカーLによって連結された、1つまたは複数の独特なバイオコンジュゲーション部位を含み得る。これらのバイオコンジュゲーション部位は、マレイミド、チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)、アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩、スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、アミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)またはスルホ−SBEDスルホスクシンイミジル[2−6−(ビオチンアミド)−2−(p−アジドベンズアミド)−ヘキサノアミド]−エチル−1,3’−ジチオプロピオネート(図13でX、YおよびCPの三方向への連結として機能できる)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0132】
[00190] 典型的な芳香族繰り返し単位が、米国特許第10/666,333号明細書:Conformationally Flexible Cationic Conjugated Polymers(LiuおよびBazan)の表1に、代表的なポリマーセグメントおよびオリゴマー構造が表2に示されている。
【0133】
[00191] 図18は、角度をなす(angled)リンカー(meta位)であってもよく、5〜20個の原子を有する単環式または多環式の置換されていてもよいアリール基であってもよいCPおよびCPを含む。CPおよびCP単位は、ポリマーの主鎖に沿って均等に分布していてもよいし、ランダムに分布していてもよい。
【0134】
[00192] CP、CP、CPおよびCPは各々、1箇所または複数箇所において、−−R1−−A、−−R2−−B、−−R3−−Cおよび−R4−−Dから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく、これは、架橋官能基−−E−−および−−F−−を介して結合されていてもよいが、ただし、全体としてのポリマーが、カチオン性、アニオン性または電荷が中性の複数の水溶性基で置換されていなければならない。
【0135】
[00193] R1、R2、R3およびR4は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルおよびポリアルキレンオキシドから独立して選択され、各々置換されていてもよく、これが1つまたは複数のヘテロ原子を含むものであってもよいし、存在しないものであってもよい。R1、R2、R3およびR4は、C1〜22アルキル、C1〜22アルコキシ、C1〜22エステル、1〜約22個の炭素原子を有するポリアルキレンオキシド、1〜約22個の炭素原子を有する環状クラウンエーテルから独立して選択可能であり、存在しなくてもよい。好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルキル基あるいは、1〜約12個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択されてもよい。1箇所または複数箇所で式に示されるように、2つ以上の官能基を環に付加してもよいことは理解されたい。
【0136】
[00194] A、B、CおよびDは、H、−−SiR’R’’R’’’、−−NR’R’’R’’’、グアニジウム基、ヒスチジン、ポリアミン、ピリジニウム基およびスルホニウム基から独立して選択される。R’、R’’およびR’’’は、水素、C1〜12アルキルおよびC1〜12アルコキシおよびC3〜12シクロアルキルからなる群から独立して選択される。R’、R’’およびR’’が低級アルキルまたは低級アルコキシ基であると好ましい。
【0137】
[00195] EおよびFは、存在せず、−−O−−、−−S−−、−−C(O)−−、−−C(O)O−−、−−C(R)(R’)−−、−−N(R’)−−および−−Si(R’)(R’’)から独立して選択され、式中、R’およびR’’は、上記にて定義したとおりである。
【0138】
[00196] Xは、O、S、Se、−−N(R’)−−または−−C(R’)(R’’)−−であり、YおよびZは、−−C(R)=および−−N=から独立して選択され、式中、R、R’およびR’’は上記にて定義したとおりである。
【0139】
[00197] 図19は、フルオレン単位と、芳香族単位1、2および3とを含む骨格からなるCPを示す。単位1および2は、図20に示す構造であってもよいが、これに限定されるものではない。単位3は、バイオコンジュゲーション部位を含む。R1官能基には、可溶化基として示されており、荷電したアルキル官能基(すなわち(CH2)nNMe3Brまたは(CH2)nSO3Na)あるいは親水性基(すなわち、エチレングリコール単位(OCH2CH2)n)が可能であるが、これに限定されるものではない。
【0140】
[00198] 図19のπ−共役単位1、2、3は、LiuおよびBazan、米国特許第10/666,333号明細書:Conformationally Flexible Cationic Conjugated Polymersの表1および表2ならびにスキーム1に記載されているものを含む。図20は、図19に示される一般的なCP構造に含まれていてもよいπ−共役単位のいくつかの具体例を示すものであり、図中、アスタリスクはCP骨格への共有結合点を示す。これらの単位は、CP骨格に対して一般的なpara位(a、bおよびe)で接続されるか、meta形式で接続されるベンゼン単位を含み、これによってCP骨格(cおよびd)内の柔軟性が高くなる。これらの単位は、供与基(アルコキシまたはエチレングリコール単位)および求引基(フッ素)をはじめとする電子構造を変化させる(b、dおよびe)か、第四級アミンまたはスルホネートなどの親水性エチレングリコール単位または荷電した基で水溶性を改善する(e)部分で官能化可能なものである。また、チオフェン(f)およびベンゾチアジアゾール基(g)などの単位も含まれるが、これらは電子構造を変化させるための手段として作用する。これらの単位もまた、上述したように官能化可能なものである。単位hは、アルコキシ基などのリンカーLを介してπ−共役セグメントに共有結合的に結合されたマレイミドなどの特異的バイオコンジュゲーション部位Aであり、CPの骨格に、ortho、paraまたはmeta位で取り入れられてもよい。
【0141】
[00199] 具体的なポリマー構造のいくつかの変形例として、図21に示すものがあげられるが、これは、マレイミドまたはスクシミジルエステルバイオコンジュゲーション部位がエーテルおよびアルコキシ連結を介して連結された単位を一定の割合で含む。
【0142】
[00200] 本発明において有用な共役ポリマーは、以下を含むがこれに限定されるものではない。
【化18】

【0143】
[00201]抗原−抗体相互作用
[00202] 抗原と抗体との間の相互作用は、他の非共有結合タンパク質−タンパク質相互作用と同じである。通常、抗原と抗体との間には、(i)水素結合、(ii)分散力、(iii)ルイス酸とルイス塩基との間の静電力、(iv)疎水性相互作用という4タイプの結合相互作用がある。特定の物理力が、抗原−抗体結合の一助となり、たとえば、異なる抗体結合部位を持つエピトープ形状のフィットまたは優遇(the fit or complimentary)。さらに、他の材料および抗原が抗体と交差反応することで、利用可能な遊離抗体と拮抗するものであってもよい。
【0144】
[00203] 使用するのに最適な抗原および抗体調製物を評価するためだけでなく、基本的なイムノアッセイデザインが整った後で品質制御を維持するためのイムノアッセイの有効性を判断する上でのピボット要素に、抗原と抗体との結合の親和定数と特異性の測定がある。
【0145】
[00204]抗体
[00205] 抗体分子は、免疫グロブリンと呼ばれる血漿タンパク質のファミリに属するものであり、その基本的な構成要素である免疫グロブリンフォールドまたはドメインが、免疫系や他の生物学的認識系の多くの分子でさまざまな形で利用されている。一般的な免疫グロブリンには、可変部として知られる抗原結合領域と定常部として知られる非可変部とを含む4つのポリペプチド鎖がある。
【0146】
[00206] 天然の抗体および免疫グロブリンは通常、2つの等しい軽(L)鎖と2つの等しい重(H)鎖とからなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、ジスルフィド共有結合によって重鎖に連結されるが、ジスルフィド連結の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖ごとに異なる。重鎖および軽鎖は各々、規則的に間隔のあいた鎖内ジスルフィド架橋も有する。重鎖は各々、一端に可変領域(VH)を有し、これに多数の定常領域が続いている。軽鎖は各々、一端に可変領域(VL)を有し、その他端に定常領域がある。軽鎖の定常領域は、重鎖の第1の定常領域と整列され、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と整列される。
【0147】
[00207] その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに振り分けることが可能である。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという少なくとも五(5)種類の主なクラスがあり、これらのいくつかがさらに、IgG−1、IgG−2、IgG−3およびIgG−4;IgA−1およびIgA−2といった具合にサブクラス(アイソタイプ)に分けられる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成が周知である。抗体の構造、機能、用途および調製に関するさらに詳細については、2006年2月14日に発行された米国特許第6,998,241号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されている。
【0148】
[00208]サンドイッチアッセイ
[00209] 1984年12月4日に発行された米国特許第4,486,530号明細書ならびに、そこに引用された参考文献に開示されているものをはじめとして、抗体または複数抗体サンドイッチアッセイが当業者間で周知である。図6、図7、図8および図14で説明した構造を、説明のように直接に利用するか、あるいはさまざまなサンドイッチ構成で利用することが可能である。サンドイッチ構成またはサンドイッチアッセイとは、連続した認識事象を使用してさまざまな生体分子およびレポート要素からなる層を構成し、標的生体分子または標的関連生体分子などの特定の生体分子の存在をシグナル伝達することを指す。これの標準的な例として、抗体の連続使用があげられる。これらのアッセイでは、一次抗体が標的に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第3の抗体が二次抗体に結合できるといった具合である。順次並んだ各々の層w用いて、別のレポート基を加えてもよい。別の戦略として、マルチマー構造の形をとる成分の一方または両方を含む2つ(またはそれ以上の)相互に認識可能な成分または3以上の成分を鎖認識関係で交互の層にした繰り返し付加を用いることがある。このようなセットアップでは、各々のマルチマー構造の1つまたは複数の官能基をレポート基で標識することが可能であり、占領されていない(unoccupied)官能基が他の成分の認識部位として機能でき、この系が後にシグナル増幅のプラットフォームとなる。この手法の一般的な例として、ストレプトアビジン−レポーターコンジュゲートとビオチニル化抗ストレプトアビジン抗体を用いることがある。そのようなアッセイでは、ビオチニル化センサ分子(核酸または抗体)を使って、標的生体分子を結合することが可能であり、これが後に、ストレプトアビジン−レポーターコンジュゲートとビオチニル化抗ストレプトアビジン抗体とを含む検出系で認識される。この場合のサンドイッチ構造は、シグナル増幅を達成するためのビオチニル化抗体と標識されたストレプトアビジン複合体相互作用の連続したラウンド(round)によって構成可能なものである。ビオチニル化抗体またはストレプトアビジン−レポーター複合体のいずれかに対して多発色団をさらにコンジュゲーションすると、シグナル出力をさらに増すことが可能である。要するに、このタイプのシグナル増幅系に多発色団を取り込むと、シグナルをさらに高いレベルまで増幅することが可能なのである。
【0149】
[00210] 図6、図7、図8、図14、図16および図17で説明したバイオ共役ポリマー複合体を利用すると、集光性多発色団を一般に用いられている認識要素に直接取り込むことで、光学的に強化されたサンドイッチアッセイを作製することが可能である。連続的な認識要素を用いることなく、多発色団共役構造の利点を直接に一次標識認識要素に適用することが可能である。たとえば、図14に示すように一次抗体を多発色団−色素複合体に直接に共役することが可能である。このような複合体は、標的生体分子の存在を直接にプローブする目的で利用可能なものである。
【0150】
[00211]ポリヌクレオチド
[00212] 増幅された標的ポリヌクレオチドに対して、増幅後処理をほどこしてもよい。たとえば、場合によっては、より一層容易に利用可能なセグメントを得るために、ハイブリダイゼーションの前に標的ポリヌクレオチドを断片化することが望ましいことがある。核酸の断片化については、実施対象となるアッセイで有用なサイズのフラグメントを生成する方法であれば、どのような方法で実施しても構わない。好適な物理的方法、化学的方法、酵素的な方法が当該技術分野において周知である。
【0151】
[00213] 増幅サイクルの少なくとも一部の間に、センサポリヌクレオチドを増幅産物にハイブリダイズすることを可能にする条件で増幅反応を実施可能である。このようにしてアッセイを実施すると、増幅時の光の放出を監視することで、このハイブリダイゼーション事象をリアルタイムに検出することが可能である。
【0152】
[00214] リアルタイムPCR生成物分析(ならびに関連のリアルタイムの逆転写PCR)によって、多種多様な場面で用いられているリアルタイムPCR監視のための周知の技術が得られ、これを本明細書に記載の方法で用いるのに合わせることが可能である(Laurendeau et al. (1999) “TaqMan PCR-based gene dosage assay for predictive testing in individuals from a cancer family with INK4 locus haploinsufficiency” Clin Chem 45(7):982-6; Laurendeau et al. (1999) “Quantitation of MYC gene expression in sporadic breast tumors with a real-time reverse transcription-PCR assay” Clin Chem 59(12):2759-65;Kreuzer et al. (1999) “LightCycler technology for the quantitation of bcr/abl fusion transcripts” Cancer Research 59(13):3171-4を参照のこと。これらをすべて援用する)。
【0153】
試料
[00215] 原理上、試料は、集合センサの集合を引き起こすことができる凝集物(aggregant)を含有するとみられるどのような材料であってもよい。いくつかの実施形態では、試料は、細胞、組織または流体をはじめとして、生きた臓器から直接または間接に得られるポリヌクレオチドを含むどのような生物学的材料源に由来するものであってもよく、ウイルス、マイコプラズマおよび化石をはじめとするその微生物によって沈着物が残る。試料は、合成手段で調製された凝集物を全体または一部含むものであってもよい。一般に、試料は、主に水性の媒体として得られるか、主に水性の媒体に分散される。試料の非限定的な例としては、血液、尿、精液、乳、痰、粘液、頬の拭き取り検体、膣の拭き取り検体、直腸の拭き取り検体、吸引液、針生検、たとえば手術または解剖で得られた組織の切片、血漿、血清、髄液、リンパ液;皮膚、呼吸器、腸および泌尿生殖器の外分泌;涙、唾液、腫瘍、臓器、in vitro細胞培養構成物の試料(細胞培地での細胞増殖に由来する条件培地、推定的にウイルス感染した細胞、組換え細胞、細胞成分を含むがこれに限定されるものではない)およびポリヌクレオチド配列を含む組換えライブラリがあげられる。
【0154】
[00216] 試料は、凝集物あるいは、結果としてサロゲートを含有することが知られている正の対照試料であってもよい。凝集物を含有するとは思えないが、(1つまたは複数の試薬による汚染が原因で)凝集物または偽陽性を生成可能な別の成分を含有する疑いのある負の対照試料も利用可能であり、特定のアッセイで用いられる試薬の標的ポリヌクレオチドによる汚染の欠如を確認し、特定のセットのアッセイ条件で偽陽性(試料に標的ポリヌクレオチドが存在しないにもかかわらず生じる陽性シグナル)が生成するか否かを判断する目的で試験される。
【0155】
[00217] 試料については、希釈、溶解、懸濁、抽出またはそうでなければ処理して、存在する標的ポリヌクレオチドを可溶化および/または精製するかあるいは、増幅スキームで用いられている試薬が到達可能にするか、あるいは試薬を検出することが可能である。試料が細胞を含有する場合、この細胞を溶解または透過処理して細胞内のポリヌクレオチドを放出することが可能である。一段階透過処理緩衝液を利用して、細胞を溶解することが可能であるが、これはたとえばポリメラーゼ鎖反応など、溶解後に直接実施できるようにするものである。
【0156】
シグナル伝達発色団
[00218] いくつかの実施形態では、光学的に活性の単位の励起状態からのエネルギを受け取る、あるいは、標識プローブとあるいは複数のエネルギ移動スキームでエネルギを交換する目的で、シグナル伝達発色団またはフルオロフォアを利用してもよい。本明細書にて説明する本発明で有用なフルオロフォアとしては、適切な波長でエネルギを吸収あるいは、エネルギを放出・移動可能な物質があげられる。多重化アッセイでは、検出可能な異なる発行スペクトルで、複数の異なるフルオロフォアを利用することが可能である。代表的なフルオロフォアとしては、蛍光色素、半導体ナノ結晶、ランタニドキレートおよび緑色蛍光タンパク質があげられる。
【0157】
[00219] 一例としての蛍光色素としては、フルオレセイン、6−FAM、ローダミン、Texas Red、テトラメチルローダミン、カルボキシローダミン、カルボキシローダミン6G、カルボキシロードル(carboxyrhodol)、カルボキシローダミン110、Cascade Blue、Cascade Yellow、クマリン、Cy2(登録商標)、Cy3(登録商標)、Cy3.5(登録商標)、Cy5(登録商標)、Cy5.5(登録商標)、Cy-Chrome、フィコエリトリン、PerCP(ペリジニンクロロフィル−aタンパク質)、PerCP-Cy5.5、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン)、NED、ROX(5−(および−6)−カルボキシ−X−ローダミン)、HEX、Lucifer Yellow、Marina Blue、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Alexa Fluor(登録商標) 350、Alexa Fluor(登録商標) 430、Alexa Fluor(登録商標) 488、Alexa Fluor(登録商標) 532、Alexa Fluor(登録商標) 546、Alexa Fluor(登録商標) 568、Alexa Fluor(登録商標) 594、Alexa Fluor(登録商標) 633、Alexa Fluor(登録商標) 647、Alexa Fluor(登録商標) 660、Alexa Fluor(登録商標) 680、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸、BODIPY(登録商標) FL、BODIPY(登録商標) FL-Br、BODIPY(登録商標) 530/550、BODIPY(登録商標) 558/568、BODIPY(登録商標) 564/570、BODIPY(登録商標) 576/589、BODIPY(登録商標) 581/591、BODIPY(登録商標) 630/650、BODIPY(登録商標) 650/665、BODPY(登録商標) R6G、BODIPY(登録商標) TMR、BODIPY(登録商標) TR、これらのコンジュゲートおよびこれらの組み合わせがあげられる。一例としてのランタニドキレートとしては、ユーロピウムキレート、テルビウムキレートおよびサマリウムキレートがあげられる。
【0158】
[00220] 多岐にわたる蛍光半導体ナノ結晶(「SCNC」)が当該技術分野において周知である。半導体ナノ結晶を生成および利用する方法が、Bawendiらが発明者である1999年5月27日公開の国際公開第99/26299号パンフレット;Weissらに付与された1999年11月23日発行の米国特許第5,990,479号明細書;Bruchez et al., Science 281:2013, 1998に記載されている。十分に確定されたピーク放出波長を有する非常に幅の狭い放出バンドを呈する半導体ナノ結晶を得ることができるため、多数の異なるSCNCを同一アッセイにおいてシグナル伝達発色団として(任意で他の非SCNCタイプのシグナル伝達発色団と組み合わせて)用いることが可能となる。
【0159】
[00221] ポリヌクレオチド特異的色素の一例として、アクリジンオレンジ、アクリジンホモ二量体、アクチノマイシンD、7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD)、9−アミノ−6−クロル−2−メトキシアクリジン(ACMA)、BOBO(商標)-1ヨージド(462/481)、BOBO(商標)-3ヨージド(570/602)、BO-PRO(商標)-1ヨージド(462/481)、BO-PRO(商標)-3ヨージド(575/599)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、二塩酸塩(DAPI)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、二塩酸塩(DAPI)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、二乳酸塩(DAPI、二乳酸塩)、ジヒドロエチジウム(ヒドロエチジン)、ジヒドロエチジウム(ヒドロエチジン)、臭化エチジウム、エチジウムジアジドクロリド、エチジウムホモ二量体−1(EthD−1)、エチジウムホモ二量体−2(EthD−2)、エチジウムモノアジドブロマイド(EMA)、ヨウ化ヘキシジウム、Hoechst 33258、Hoechst 33342、Hoechst 34580、Hoechst S769121、ヒドロキシスチルバミジン、メタンスルホネート、JOJO(商標)-1ヨージド(529/545)、JO-PRO(商標)-1ヨージド(530/546)、LOLO(商標)-1ヨージド(565/579)、LO-PRO(商標)-1ヨージド(567/580)、NeuroTrace(商標) 435/455、NeuroTrace(商標) 500/525、NeuroTrace(商標) 515/535、NeuroTrace(商標) 530/615、NeuroTrace(商標) 640/660、OliGreen、PicoGreen(登録商標) ssDNA、PicoGreen(登録商標) dsDNA、POPO(商標)-1ヨージド(434/456)、POPO(商標)-3ヨージド(534/570)、PO-PRO(商標)-1ヨージド(435/455)、PO-PRO(商標)-3ヨージド(539/567)、ヨウ化プロピジウム、RiboGreen(登録商標)、SlowFade(登録商標)、SlowFade(登録商標) Light、SYBR(登録商標) Green I、SYBR(登録商標) Green II、SYBR(登録商標) Gold、SYBR(登録商標) 101、SYBR(登録商標) 102、SYBR(登録商標) 103、SYBR(登録商標) DX、TO-PRO(登録商標)-1、TO-PRO(登録商標)-3、TO-PRO(登録商標)-5、TOTO(登録商標)-1、TOTO(登録商標)-3、YO-PRO(登録商標)-1(オキサゾールイエロー)、YO-PRO(登録商標)-3、YOYO(登録商標)-1、YOYO(登録商標)-3、TO、SYTOX(登録商標) Blue、SYTOX(登録商標) Green、SYTOX(登録商標) Orange、SYTO(登録商標) 9、SYTO(登録商標) BC、SYTO(登録商標) 40、SYTO(登録商標) 41、SYTO(登録商標) 42、SYTO(登録商標) 43、SYTO(登録商標) 44、SYTO(登録商標) 45、SYTO(登録商標) Blue、SYTO(登録商標) 11、SYTO(登録商標) 12、SYTO(登録商標) 13、SYTO(登録商標) 14、SYTO(登録商標) 15、SYTO(登録商標) 16、SYTO(登録商標) 20、SYTO(登録商標) 21、SYTO(登録商標) 22、SYTO(登録商標) 23、SYTO(登録商標) 24、SYTO(登録商標) 25、SYTO(登録商標) Green、SYTO(登録商標) 80、SYTO(登録商標) 81、SYTO(登録商標) 82、SYTO(登録商標) 83、SYTO(登録商標) 84、SYTO(登録商標) 85、SYTO(登録商標) Orange、SYTO(登録商標) 17、SYTO(登録商標) 59、SYTO(登録商標) 60、SYTO(登録商標) 61、SYTO(登録商標) 62、SYTO(登録商標) 63、SYTO(登録商標) 64、SYTO(登録商標) Red、ネトロプシン、ジスタマイシン、アクリジンオレンジ、3,4−ベンゾピレン、チアゾールオレンジ、TOMEHE、ダウノマイシン、アクリジン、ペンチル−TOTABおよびブチル−TOTINがあげられる。不斉シアニン色素をポリヌクレオチド特異的色素として用いることができる。目的の他の色素としては、Geierstanger, B.H. and Wemmer, D.E., Annu. Rev. Vioshys. Biomol. Struct. 1995,24,463-493, by Larson, C.J. and Verdine, G.L., Bioorganic Chemistry: Nucleic Acids, Hecht, S.M., Ed., Oxford University Press: New York, 1996; pp 324-346およびGlumoff, T. and Goldman, A. Nucleic Acids in Chemistry and Biology, 2nd ed., Blackburn, G.M. and Gait, M.J., Eds., Oxford University Press: Oxford, 1996, pp375-441に記載されているものがあげられる。ポリヌクレオチド特異的色素は、挿入色素であってもよく、二本鎖ポリヌクレオチドに特異的であってもよい。他の色素およびフルオロフォアについては、www.probes.com (Molecular Probes, Inc.)に記載されている。
【0160】
[00222] 「緑色蛍光タンパク質」という用語は、天然のイクオレア(Aequorea)緑色蛍光タンパク質と、変更された励起および放出最大値ならびに、異なる形状の励起および放出スペクトルを含む、変更された蛍光特性を示すことが確認されている変異型(Delagrave, S. et al. (1995) Bio/Technology 13:151-154;Heim, R. et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12501-12504;Heim, R. et al. (1995) Nature 373:663-664)の両方を示す。Delgraveらは、励起スペクトルが赤方偏移しているクローン化オワンクラゲGFPの変異体を単離した。Bio/Technology 13:151-154 (1995)。Heim, R.らは、青色蛍光を有する変異体(Tyr66がHisに変異)を報告した(Proc. Natl. Acad. Sci. (1994) USA 91:12501-12504)。
【0161】
基板
[00223] いくつかの実施形態では、アッセイ成分を基板上に配置することが可能である。基板は、生物学的、非生物学的、有機、無機またはこれらの任意の組み合わせのいずれかの広範囲にわたる材料を含むものであってもよい。たとえば、基板は、重合したLangmuir Blodgett膜、機能性ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、変性シリコンあるいは、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリ酸無水物、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリシロキサン、高分子シリカ、ラテックス、デキストランポリマー、エポキシ樹脂、ポリカーボネートまたはこれらの組み合わせなど、多岐にわたるゲルまたはポリマーのいずれかであればよい。導電性ポリマーおよび光伝導性材料を利用することも可能である。
【0162】
[00224] 基板には、シリカベースの基板(ガラス、石英など)などの平面結晶基板あるいは、シリコン、ガリウムヒ素、インジウム添加GaNなどの半導体およびマイクロプロセッサ産業で利用される結晶基板を用いることが可能であり、半導体ナノ結晶がこれに含まれる。
【0163】
[00225] 基板は、光ダイオード、光電半導体チップまたは光電薄膜半導体などの光電センサ、またはバイオ素子の形態をとりうる。基板上のプローブの位置は、アドレス指定可能なものである。これは高密度フォーマットで行うことが可能であり、その位置はマイクロアドレス指定可能なものまたはナノアドレス指定可能なものとすることができる。
【0164】
[00226] シリカエーロゲルを基板として使用することも可能であり、これを当該技術分野において周知の方法で調製することができる。エーロゲル基板を自立基板として、あるいは別の基板材料用の表面コーティングとして用いてもよい。
【0165】
[00227] 基板はどんな形態もとりうるが、一般に、プレート、スライド、ビーズ、ペレット、ディスク、粒子、微粒子、ナノ粒子、撚糸、沈殿物、任意で多孔質のゲル、シート、チューブ、球体、容器、毛管、パッド、薄片、フィルム、チップ、マルチウェルプレートまたは皿、光ファイバなどである。基板は、硬質または半硬質の形態をとることもできる。基板はアッセイ成分が配置される凸または凹領域を含んでいてもよい。基板の表面を周知技術でエッチング処理することにより、所望の表面特徴、たとえば溝、V溝、メサ構造などを提供することができる。
【0166】
[00228] 基板の表面は、基板と同一の材料で構成してもよいし、別の材料から作製しても構わない。また、この表面を化学的または物理的手段により基板に結合することができる。このように結合された表面は、多岐にわたる材料、たとえばポリマー、プラスチック、樹脂、多糖、シリカまたはシリカベースの材料、カーボン、金属、無機ガラス、膜のうちのいずれかあるいは、上記にて列挙した基板材料のうちのいずれかで構成されていてもよい。表面を光学的に透明にしてもよいし、表面にシリカ表面で見られるような表面Si−OH機能を持たせることもできる。
【0167】
[00229] 基板および/またはその任意の表面については、使用する合成および/または検出方法に適した特性が得られるように選択可能である。基板および/または表面を透明にすることで、複数の方向からの光に基板を曝露することができる。基板および/または表面に反射「鏡」構造を設け、光の回収率を高めてもよい。
【0168】
[00230] 基板および/またはその表面は通常、使用時に曝露される条件に対して耐性であるか、あるいは耐性となるよう処理されており、任意に処理することで、このような条件への曝露後に耐性材料を除去することができる。
【0169】
[00231] ポリヌクレオチドプローブは、米国特許第5,143,854号明細書、国際公開第92/10092号パンフレット、1990年12月6日に出願された米国特許出願第07/624,120号明細書(放棄されている)、Fodor et al., Science, 251: 767-777 (1991)、国際公開第90/15070号パンフレットに記載されている方法などの好適な方法で、基板上にて製造または基板に結合可能なものである。機械的な合成法でこれらのアレイを合成するための技術が、たとえば、国際公開第93/09668号パンフレットおよび米国特許第5,384,261号明細書に記載されている。
【0170】
[00232] さらに別の技術としては、米国特許出願第93/04145号明細書に記載されているようなビーズを用いる技術、米国特許第5,288,514号明細書に記載されているようなピンを用いる方法があげられる。
【0171】
[00233] センサポリヌクレオチドを基板に付加する目的で適用できる別のフローチャネルまたはスポット法が、1992年11月20日に出願された米国特許出願第07/980,523号明細書および米国特許第5,384,261号明細書に記載されている。(1)所定の領域上の定められたチャネル内を流すか、あるいは(2)所定の領域上に「スポット」することにより、試薬が基板に送達される。親水性または疎水性のコーティング(溶媒の性質によって決まる)などの保護コーティングを、場合によっては他の領域においてこの反応溶液による湿潤を容易にする材料と併用して、保護対象となる基板の一部に対して使用することができる。このようにして、流れている溶液が指定された流路の外に流れ出すのをさらに防ぐ。
【0172】
[00234] 一般的なディスペンサとしては、さまざまな試薬を連続または同時に反応領域へ送達することができるように、任意でロボット制御されるマイクロピペット、インクジェットプリンタ、一連のチューブ、マニフォルド、ピペットのアレイなどがあげられる。
【0173】
[00235] 照会対象の基板または領域上にあるセンサの同定を行えるように、基板またはその領域をコードしてもよい。光学コード、RFIDタグ、磁気コード、物理コード、蛍光コード、これらのコードの組み合わせなど、どのようなコーディングスキームでも利用できる。
【0174】
励起および検出
[00236] 集合センサを励起でき、検出対象となる放出波長よりも短い波長を出力する機器であれば、そのような機器でも励起用に利用可能である。市販の装置を用いて、好適な励起波長ならびに好適な検出成分を得ることが可能である。
【0175】
[00237] 励起源の例としては、適切なフィルタを付けたジュウテリウムランプなどの広帯域UV光源、キセノンランプまたはジュウテリウムランプなどの白色光源の出力をモノクロメータに通して所望の波長を抽出したもの、連続波(cw)ガスレーザ、固体状態のダイオードレーザまたは任意のパルスレーザがあげられる。放射光については、好適な装置または技術で検出することが可能である。多くの好適な手法が当該技術分野において周知である。たとえば、蛍光光度計または分光光度計を利用して、多発色団の励起時に試験試料がシグナル伝達発色団の波長特性を持つ光を放出するか否かを検出してもよい。
【0176】
合成物
[00238] さまざまな形態をとる本明細書に記載の分子からなる合成物も提供される。本明細書に記載されているような多発色団ならびに、多発色団を含む複合体を、精製および/または単離された形態で得るようにしてもよい。また、多発色団ならびに、多発色団を含む複合体を結晶形態で得るようにしてもよい。
【0177】
[00239] 多発色団ならびに、多発色団を含む複合体を、多くの場合は水溶液であればよい溶液中で提供してもよく、この水溶液には、別の溶媒、緩衝液、生体分子、ポリヌクレオチド、フルオロフォアなどを含むがこれに限定されるものではない、本明細書に記載の1つまたは複数の他の溶液成分が含まれていてもよい。多発色団ならびに、多発色団を含む複合体については、第1の光学的に活性な単位からの第1の放出を、生体分子標的またはこれに関連する生体分子の非存在下で検出可能な濃度で溶液中に存在させることが可能である。この溶液は、多発色団ならびに、多発色団を含む複合体について、あるクラスの生体分子標的またはこれに関連する生体分子の種に特異的な蛍光標識抗体またはポリヌクレオチドなどの標識プローブをはじめとする本明細書に記載するような別の成分を含むものであってもよい。
【0178】
[00240] 多発色団ならびに、多発色団を含む複合体は、フィルムの形で提供されるものであってもよい。合成物は、提案された構造、合成方法、吸収および/または放出スペクトル、要素分析、NMRスペクトルまたは他の任意の特性または特徴をはじめとする、本明細書に記載の特性によって権利請求されるものであればよい。
【0179】
[00241] いくつかの実施形態では、試料で遺伝子の発現を検出する。さらに別の実施形態では、検出生体分子標的またはこれに関連する生体分子の測定結果を用いて、患者の病状を診断することが可能である。さらに別の実施形態では、本発明の検出方法に、病状を診断する方法をさらに含むことが可能である。関連の実施形態では、疾患を診断する方法が、生体分子標的またはこれに関連する生体分子の存在と関するデータを精査または分析し、疾患の診断に関するデータの精査または分析に基づく結論を、患者、ヘルスケア提供者またはヘルスケア管理者に提供することを含むものであってもよい。このようなデータの精査または分析については、本明細書で説明するように、コンピュータまたは他のデジタルデバイスとネットワークとを利用して容易にすることが可能なものである。このようなデータに関する情報をネットワーク経由で送信できることも想定される。
【0180】
[00242] 本発明の方法を実施するにあたり、分子生物学分野における従来の多くの技術を利用してもよい。これらの技術は周知であり、たとえば、Ausubel et al. (Eds.) Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, (1997)、Ausubel et al. (Eds.), Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, 5th Ed., John Wiley & Sons, Inc. (2002)、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2000)およびInnis et al. (Eds.) PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Elsevier Science & Technology Books (1990)(いずれも本明細書に援用する)に説明されている。
【0181】
[00243] 図22は、代表例の論理素子を示すブロック図であり、この論理素子によって、本発明に関する精査または分析データを実現できる。このようなデータは、被検体の疾患、機能障害または症状に関連するものであり得る。図22は、たとえば、結果を生成する目的で、多発色団または多発色団複合体824と一緒に用いられる装置820に接続されたコンピュータシステム(またはデジタルデバイス)800を示す。コンピュータシステム800は、固定媒体812を有するサーバ809に任意に接続可能な媒体811および/またはネットワークポート805からの指示を読むことのできる論理装置として理解できよう。図22に示すシステムは、CPU801と、ディスクドライブ803と、キーボード815および/またはマウス816などの任意選択の入力装置と、任意選択のモニタ807とを含む。ローカルまたは遠隔地で、指定の通信媒体を介してサーバ809へのデータ通信を実現できる。通信媒体には、データの伝送手段および/または受信手段を含み得る。たとえば、通信媒体は、ネットワーク接続、ワイヤレス接続またはインターネット接続であってもよい。本発明に関するデータをこのようなネットワークまたは接続経由で伝送可能であると想定される。
【0182】
[00244] 一実施形態では、コンピュータ読み取り可能な媒体が、生物学的試料の分析結果の伝送に適した媒体を含む。この媒体は、被検体の疾患の状況または状態に関する結果を含み得るものであり、このような結果は、本明細書に記載の方法で導かれるものである。
【0183】
キット
[00245] ここに記載の方法を実施するのに有用な試薬を含むキットも提供される。
【0184】
[00246] いくつかの実施形態では、キットが、本明細書に記載したような、多発色団または多発色団複合体、抗体などのバイオコンジュゲートおよび他の成分を含む試薬を含む。
【0185】
[00247] キットは、多発色団または多発色団複合体に取り入れることが可能な1つまたは複数の標識のうちの1つまたは複数と、アレイを含むものであっても含まないものであってもよい1種または複数の基質と含むものであってもよい。
【0186】
[00248] キットの構成要素は、ハウジングに保持可能なものである。記載された方法を実施するためのキットの使用説明書をハウジングに同梱可能であり、固定媒体にて提供することも可能である。また、説明書をハウジングの中に入れておいてもよいし、ハウジングの外に添付してもよく、説明書の内容が読みやすいようにハウジングをなす表面の内側または外側に印刷してもよい。1つまたは複数の異なる標的生体分子またはこれに関連する生体分子の検出用に、キットを多重式としてもよい。
【0187】
[00249] 本明細書にて説明し、図23に示すように、特定の実施形態では、キット903に、さまざまな構成要素を収容するための容器またはハウジング902を含み得る。図23に示し、本明細書にて説明するように、一実施形態では、1つまたは複数の多発色団または多発色団複合体試薬905と、任意に基質900とを含むキット903が提供される。図23に示し、本明細書にて説明するように、キット903は、説明書901を含むものであってもよい。構成要素が本明細書に記載のさまざまな別の特徴を有するキット903の他の実施形態も想定される。
【実施例】
【0188】
実施例
実施例1
[00250] ポリマー−色素共役抗体を用いるサンドイッチELISA法のための汎用的なプロトコール:
[00251] 1.96ウェルのポリ塩化ビニル(PVC)マイクロタイタープレートにて、抗体溶液約50μLを各ウェル(PBS中20μg/mL)に加え、未標識の抗体を各ウェルの底に結合させる。PVCは、約100ng/ウェル(300ng/cm)結合する。抗体の使用量はアッセイごとに決まる。
[00252]2.プレートを4℃で一晩インキュベートして、完全に結合させる。
[00253]3.ウェルをPBSで2回洗浄する。
[00254]4.マイクロタイタープレートでのタンパク質結合用の残りの部位を、ブロッキング緩衝液と一緒にインキュベートして飽和させる必要がある。0.02%ナトリウムアジドを加え3%BSA/PBSでウェルを上まで満たす。湿った雰囲気中、室温にて2時間から一晩インキュベートする。
[00255]5.ウェルをPBSで2回洗浄する。
[00256]6.抗原(または試料)溶液50μLをウェルに加える(抗原溶液を滴定しておく)。希釈はすべてブロッキング緩衝液(3%BSA/PBS)中で実施する。湿った雰囲気中、室温にて少なくとも2時間インキュベートする。
[00257]7.プレートをPBSで4回洗浄する。
[00258]8.ポリマー−色素−第2抗体コンジュゲート(実施例AまたはC)またはビオチン標識抗体のいずれかをアクセス量(access amount)で加える。
[00259]9.湿った雰囲気中、室温にて2時間またはそれよりも長くインキュベートする。
[00260]10.PBSを数回交換して洗浄する。
[00261]11.ビオチン標識抗体をステップ8に利用する場合、ストレプトアビジン−ポリマー−色素コンジュゲート(実施例BまたはD、1MのNaCl含有PBS中)を加え、湿った雰囲気中、室温にて2時間またはそれよりも長くインキュベートする。
[00262]12.ELISAプレートリーダーにて標的波長での光学密度を測定する。
【0189】
[00263] 定量的な結果を得るには、未知試料のシグナルを標準曲線と比較する。精度を高めるために、アッセイごとに標準を用いる必要がある。
【0190】
[00264] ELISAアッセイでは、マイクロタイタープレートのウェルの側面と底に一次抗体分子が結合する。標的分子を含む試料をウェルに入れると、固定化された一次抗体はこれらの標的を捕捉するのみであり、試料の残りの成分は洗い流されることになる。一般に用いられている蛍光標識抗体と比較して、ここで説明するポリマー−色素−二次抗体コンジュゲートは、集光能が高く、エネルギ移動効率をよくする同じ分子内の設計になっていることから、通常のセットアップよりもかなり強いシグナル(10〜100倍)を放出できる。これらの利点を、さらに感度の高いアッセイに結び付けることも可能である。ポリマー−色素−二次抗体コンジュゲートと、シグナル増幅機能のある他の二次抗体(たとえば、西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗体)とをさらに比較すると、ポリマー−色素−二次抗体コンジュゲートを用いると一段階プロセス(酵素基質を別途必要としない)でシグナル増幅の目的を達成することが可能である。ここで説明するコンジュゲートのコスト効率のよさ(時間と材料の両方)からも、市場に受け入れられやすいものと見込まれる。
【0191】
実施例2
[00265]ポリマー−色素共役抗体でのマイクロアレイ標識のための汎用的なプロトコール:
[00266]1.全RNAまたはmRNAを調製する。
[00267]2.T7−オリゴ(dT)プライマーを使用して、1サイクルまたは2サイクルのcDNA合成を行う。
[00268]3.二本鎖cDNAを精製(cleanup)する。
[00269]4.IVT(in vitro転写)増幅キットを利用して、ビオチン標識リボヌクレオチドをcRNAに取り込む。
[00270]5.cRNAを断片化する。
[00271]6.cRNAフラグメントをチップ上でハイブリダイズする。
[00272]7.残ったcRNAを洗い流し、チップをストレプトアビジン−ポリマー−色素コンジュゲート(実施例BまたはD)で染色する。
[00273]8.チップ上に残った試薬を洗い流す。
[00274]9.マイクロアレイを走査する。
【0192】
[00275] マイクロアレイ方法の通常の実施時、ビオチン標識ヌクレオチドをcRNA配列に組み込むことは、ストレプトアビジンフィコエリトリンコンジュゲートおよびビオチニル化抗ストレプトアビジン抗体を増幅シグナルレポート用に隔離するための手段である。ストレプトアビジンフィコエリトリンコンジュゲートの製造上の複雑さがゆえに、バッチ間のばらつきが大きい。したがって、ストレプトアビジン−ポリマー−色素コンジュゲートが、ストレプトアビジンフィコエリトリンコンジュゲートに代わる極めて良好な代替手段となり得る。さらに、過去の刊行物では、MULTICHROMOPHORESを用いると、その集光性とエネルギ移動機能を利用して、蛍光シグナルを最大75倍まで増幅可能であることが示されている。ストレプトアビジン−ポリマー−色素コンジュゲートが、フィコエリトリンと同等またはこれよりも良好に働くと考えることは、もっともである。
【0193】
[00276] 以上、本明細書において本発明の好ましい実施形態について図示し、説明してきたが、このような実施形態が一例にすぎないことは当業者であれば自明であろう。当業者であれば、本発明から逸脱せずに多数の変形例、変更および置き換えを行うことになろう。本発明を実施するにあたっては、本明細書に記載の本発明の実施形態にさまざまな改変をほどこし得ることは理解されたい。以下の特許請求の範囲で本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲に含まれる方法および構造ならびにその等価物が包含されることを意図している。
【0194】
実施例3
[00277]アミン官能基を有するカチオン性共役ポリマーCA001の合成:
【化19】

【0195】
[00278] 1−(4’−フタルイミドブトキシ)−3,5−ジブロモベンゼン:3,5−ジブロモフェノール(970mg、3.85mmol)をヘキサンから再結晶化した。溶媒を除去した後、N−(4−ブロモブチル)フタルイミド(1.38g、4.89mmol)と、KCO(1.88g、13.6mmol)と、18−クラウン−6(53mg、0.20mmol)と、アセトン(20mL)とを加えた。これを1時間還流した後、水100mLに注ぎ入れた。水性相をジクロロメタンで抽出(4×30mL)した。有機層同士を組み合わせ、水、飽和NaHCO、ブラインで洗浄した後、MgSOで乾燥させて濾過した。溶媒を除去したところ、白色の固体が得られ、これをカラムクロマトグラフィ(4:1ヘキサン:CHCl)で精製した後、ヘキサン中にて再結晶化させて、無色の針状物質(650mg、87%)を得た。H NMR(CDCl):7.860(m,2H);7.733(m,2H);7.220(t,J=1.6Hz,1H);6.964(d,J=2.0Hz,2H);3.962(t,J=6.0Hz,2H);3.770(t,J=6.6Hz,2H);1.846(m,4H)。
【化20】

【0196】
[00279] ポリ[(2,7−{9,9−ビス(6’−ブロモヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(6’−ブロモヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{4’−フタルイミドブトキシ)フェニレン)]:2,7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス(6’−ブロモヘキシル)フルオレン(1.001g、1.34mmol)と、1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン(346.6mg、1.274mmol)と、1−(4’−フタルイミドブトキシ)−3,5−ジブロモベンゼン(30.8mg、0.068mmol)と、炭酸カリウム(2.15g、15.5mmol)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(37.2mg、0.032mmol)とを、ウォータージャケット付き還流凝縮器を取り付けた100mL容の丸底フラスコでTHF(45mL)および水(15mL)に入れた溶液を、4回の凍結−ポンプ−解凍サイクルで脱気した(3回目と4回目の脱気後にアルゴンを導入)。この溶液をアルゴン雰囲気下にて還流するまで48時間加熱した。冷却後、この溶液40mLを攪拌メタノールに滴下して加えてポリマーを沈殿させ、これを遠心処理により回収した。続いてデカントし、メタノールで洗浄(2回)して低分子量画分を除去し、淡い黄色のふわふわした粉末(500mg、62%)を得た。1H NMR(CD2Cl2):7.912〜7.419(m,8H);3.322(t,J=7.4Hz,4H);2.120(br s,4H);1.693(t,J=7.0Hz,4H);1.237(br s,4H);1.153(br s,4H);0.788(br s,4H)。Mn 17K、PDI 2.1。
【0197】
[00280] ポリ[(2,7−{9,9−ビス(6’−(N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)ヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(6’−(N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)ヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{4’−フタルイミドブトキシ)フェニレン)]:トリメチルアミン(1mL)を、ポリ[(2,7−{9,9−ビス(6’−ブロモヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(6’−ブロモヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{4’−フタルイミドブトキシ)フェニレン)](130mg、0.215mmol)のTHF(10mL)溶液に減圧下にて凝縮した。この溶液を24時間攪拌し、その時点でポリマーが溶液から沈殿した。メタノールを加えて(50mL)ポリマーを可溶化した後、別に1mLのトリメチルアミンを減圧下で反応フラスコに凝縮した。これをさらに24時間攪拌した後、すべての溶媒と過剰なトリメチルアミンを減圧下で除去して、淡い黄色の膜(140mg、90%)を得た。1H NMR(D2O):7.871〜7.423(m,8H);3.148(m,4H);2.970(br s,18H);2.116(br s,4H);1.525(br s,4H);1.119(br s,8H);0.681(br s,4H)。
【0198】
[00281] CA001、ポリ[(2,7−{9,9−ビス(6’−(N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)ヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(6’−(N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)ヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{4’−アミノブトキシ)フェニレン)]:ヒドラジン一水和物の溶液(73.1mg、1.46mmol)と、ポリ[(2,7−{9,9−ビス(6’−(N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)ヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(6’−(N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)ヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{4’−フタルイミドブトキシ)フェニレン)](100mg、0.137mmol)のメタノール(10mL)溶液を、5時間還流した。室温まで冷却した後、溶液に0.9mLの1M HClを加え、これをさらに2時間還流した。得られた溶液を50%メタノール水溶液に対して透析した後、蒸発乾固させた。
【0199】
[00282] 官能化モノマーの最終ポリマー構造への取り込みを評価するための方法を決定した。重合反応時にはアミン官能基をフタルイミドとして保護し、触媒汚染を防止した。この保護基には、赤外線(IR)分光法で図24に実線で示すような独特のサインがある。示されたピークが、フタルイミド保護基だけに存在する独特なC=Oピークに対応する。フタルイミド基の脱保護後(遊離アミンを生成)に、フタルイミドのサインであるC=Oピークが欠如したCA001のIRサインが生じ(破線、図24)、活性なアミンを共役に利用できることを示している。
【0200】
[00283] CA001の光学スペクトルを図25に示す。図中、実線は吸収を示し、点線は放出スペクトルを示す。
【0201】
実施例4
[00284]カチオン性共役ポリマー−FAMコンジュゲートCA001−FAMの合成:
[00285] 脱保護したポリマーCA001(遊離アミンを有する)を、www.invitrogen.com(最後に訪問したのは10/04/07)で入手可能なプロトコールのスクシミジルエステルFAM、5(6)FAM-SE(Invitrogen、#C1311)と反応させた。負の対照として、同じポリマーをフルオレセイン(反応性基なし)と一緒に同じ反応条件でインキュベートした。この手順のプロトコールは以下のとおりである。
【0202】
[00286]NHS−FAMのCA001へのコンジュゲーション
[00287]目的:
[00288] CA001をNHS−FAMでビオチニル化し、共有結合した色素へのFRETを示す。
【0203】
[00289]材料:
[00290]UV透過性キュベット付き蛍光光度計
[00291]UV−VIS機器
[00292]精製済みCA001
[00293]NHS−FAM(Invitrogen #C−1311)
[00294]0.5M NEt3(ストック(7.2M)NEt3の1:14希釈)
[00295]MC30フィルタ
【0204】
[00296]手順:
[00297]1.アミン−ポリマーに対するNH−FAMの10倍XSを用いて反応物をセットアップ。10uL rxnあたりポリマー50ugとNHS−FAM 8.0ugとを使用。
【0205】
【表1】

【0206】
[00298]2.色素以外をすべて混合したら、130uL無水DMSO/mg色素の割合で色素1〜2mgをDMSOに溶解させる。溶解後、すみやかにNHS−試薬を使用。
[00299]3.ヒートブロックにて25℃で30分間インキュベート。
[00300]4.90M1T(400ul中10uL)で希釈。
[00301]5.MC30で脱塩、2X
[00302]6.UV/Visにより濃度をアッセイ
【0207】
[00303] 各反応生成物で得られた蛍光スペクトルを図26に示す。正の対照からの蛍光を実線で示す。ポリマーが励起されると、受容体色素(ポリマーに共有結合している)へのFRETが生じ、強いフルオレセイン放出が起こる。負の対照からの蛍光を点線で示す。負の対照のフルオレセインはポリマーと結合できないため、ポリマーが励起されてもFRETは発生せず、ポリマーの放出だけが観察される。これらのデータから、CA001上のアミンをコンジュゲーションに利用できることが分かる。
【0208】
実施例5
[00304]ビオチニル化共役ポリマーすなわちビオチニル−CA001の合成:
【化21】

【0209】
[00305] Pierce社から入手可能なNHS−ビオチンリンカー(#20217)を利用して、CA001上のアミン官能基をビオチン官能基に変換した。この手順のプロトコールは、Pierce社のウェブサイトwww.piercenet.com(最後に訪問したのは09/23/2007)にあるPierce社のプロトコールを変更したものである。この手順のプロトコールは、実施例12で説明するものに同じように従っている。
【0210】
実施例6
[00306]ビオチニル−CA001、Avidin DN、ビオチニル−フルオレセインによるシグナル増幅法:
[00307]目的:
[00308] ビオチニル−CA001、Avidin DN、ビオチニル−フルオレセインを利用してFRETによる蛍光シグナル増幅を示す
[00309]材料:
[00310]NanoDrop蛍光光度計
[00311]Perkin-Elmer蛍光光度計、型番PE−LS55
[00312]UV透過性プラスチックキュベット(1ml)
[00313]ピペッター+先端
[00314]ビオチニル−CA001(BCA)
[00315]CA001(CA)
[00316]ビオチニル−フルオレセイン(BFL)
[00317]Avidin DN(ADN)
[00318]TBS
[00319]手順:
[00320]1.エッペンドルフチューブで、以下の表に列挙した試薬を混合する。このとき、ADNを最後に加えるようにし、ADNを加える前に他の試薬を混合する。蛍光光度計での測定前に、NanoDropの場合は100uLで1uL、ベンチトップ蛍光光度計の場合は1mLキュベットで10ulとして、混合物を100倍に希釈する。
[00321]2.フルオレセインを488nmで直接励起させるとともに、ポリマーを380nmで励起させてFRETで間接的に励起させる。
[00322]3.関連する波長でピーク高についてのデータを集める。これらのソースを含めて、ピーク高からバックグラウンドを差し引く。
[00323]3a)緩衝液単独の対照
[00324]3b)FRETからフルオレセインピークへのポリマーピークテイル(約5%)
【0211】
【表2】

【0212】
実施例7
[00325]ビオチニル−CA001、Avidin DN、ビオチニル−フルオレセインによるシグナル増幅の分析:
[00326] CA001のビオチニル化を図27Aに示す。アミンポリマーCA001(ビオチニルポリマーの前駆体)はアビジンに結合しないものとし、負の対照ポリマーとして利用する。このアッセイを図27Bに概略的に示す。ビオチン−アビジン結合によって、ビオチニル化色素とポリマーとを特異的に一緒にする。負の対照ポリマー(アミンポリマーCA001、CAと表示)はアビジンと結合することがないものとする。上記プロトコール(実施例6)でのアッセイの蛍光スペクトルを図27Cに示す。点線はAvidin DN(AvDN)とビオチニル化フルオレセイン(B−Fl)を含む溶液中で非特異的ポリマー(CA)を380nmで励起させた場合の蛍光スペクトルを示す。420nmが中心波長となるポリマー放出のみが観察される。実線は、Avidin DN(AvDN)とビオチニル化フルオレセイン(B−Fl)とを含む溶液中でビオチニル化ポリマー(BCA)を380nmで励起させた場合の蛍光スペクトルを示す。強いエネルギ移動が観察され、中心530nmでフルオレセインからさらに放出が発生する。FRETはビオチニル−CA001の場合にしか生じないことから、供与体のビオチニル−CA001と受容体のフルオレセインとが、ビオチン−アビジン結合によって近接していることが分かる。これは、Pierce社手順によるCA001のビオチニル化(実施例5)を裏付けるものである。488nmでの色素の直接励起を破線で示す。破線と実線とを比較すると、直接励起させた場合に対して間接的に(FRETによって)励起させると色素が19倍増幅していることが明らかになる。
【0213】
実施例8
[00327]カルボキシレート官能基を有するカチオン性共役ポリマー前駆体CC001の合成:
【化22】

【0214】
[00328] ポリ[(2,7−{9,9−ビス(6’−ブロモヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(6’−ブロモヘキシル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{7’−エチルエステルヘプトキシ)フェニレン)]:2,7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス(6’−ブロモヘキシル)フルオレン(500mg、0.670mmol)と、1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン(173.2mg、0.637mmol)と、1−(7’−エチルエステルヘプトキシ)−3,5−ジブロモベンゼン(13.6mg、0.033mmol)と、炭酸カリウム(1.12g、8.12mmol)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(21mg、0.018mmol)とをTHF(15mL)および水(5mL)に入れた溶液を、ウォータージャケット付き還流凝縮器を取り付けた50mL容の丸底フラスコで、4回の凍結−ポンプ−解凍サイクルで脱気した(3回目と4回目の脱気後にアルゴンを導入)。この溶液を加熱してアルゴン雰囲気下にて48時間還流した。冷却後、この溶液を40mLの攪拌メタノールに滴下して加えてポリマーを沈殿させ、これを遠心処理により回収した。続いてデカントし、メタノールで洗浄(2回)して低分子量画分を除去し、淡い黄色のふわふわした粉末を得た。1H NMR(CD2Cl2):7.887〜7.406(m,8H);3.322(t,J=6.6Hz,4H);2.080(br s,4H);1.710(t,J=7.0Hz,4H);1.269(br s,4H);1.158(br s,4H);0.799(br s,4H)。Mn 39.5K、PDI 2.1。
【0215】
[00329] IR分光法を利用して、官能化モノマーの最終ポリマー構造への取り込みを評価した。重合反応時にはカルボキシレート官能基をエステルとして保護し、触媒汚染を防止した。この保護基には、赤外線(IR)分光法で図28に示すような独特のサインがある。示されたピークが、カルボキシレート保護基だけに存在する独特なC=Oピークに対応する。図28の破線がモノマーのIRスペクトルに対応し、実線がポリマーのIRスペクトルに対応する。どちらの場合も、カルボキシレートピークが観察され、機能的モノマーの取り込みを示している。
【0216】
実施例9
[00330]アミン官能基を有するアニオン性共役ポリマーAA003の合成:
【化23】

【0217】
[00331] ポリ[(2,7−{9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{4’−フタルイミドブトキシ)フェニレン)]:2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)フルオレン(129.5mg、0.202mmol)と、1,4−ジボロン酸(37.4mg、0.225mmol)と、1−(4’−フタルイミドブトキシ)−3,5−ジブロモベンゼン(10.4mg、0.023mmol)と、炭酸カリウム(366mg、2.65mmol)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(8.8mg、0.008mmol)との、DMF(20mL)および水(20mL)中の溶液を、ウォータージャケット付き還流凝縮器を取り付けた100mL容の丸底フラスコで、4回の凍結−ポンプ−解凍サイクルで脱気した(3回目と4回目の脱気後にアルゴンを導入)。この溶液を加熱してアルゴン雰囲気下にて48時間還流した。反応の過程で、黒色の沈殿物が形成された。冷却後、溶液を除去し、沈殿物をアセトンで洗浄して、褐色の粉末を得た。1H NMR(DMSO):7.910〜7.597(m,10H);2.206(br s,8H);1.400(br s,4H);0.668(br s,4H)。IR:1696cm−1、保護アミン(フタルイミド)を示す。
【0218】
[00332] AA003、ポリ[(2,7−{9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{4’−アミノブトキシ)フェニレン)]:ヒドラジン一水和物(29.9mg、0.598mmol)とポリ[(2,7−{9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)}フルオレン−コ−オルト−1,4−{2,5−ジフルオロ}フェニレン)−コ−(2,7−{9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)}フルオレン−コ−オルト−3,5−1−{4’−アミノブトキシ)フェニレン)](45mg、0.081mmol)との、50%メタノール/水(5mL)中の溶液を5時間還流した。室温まで冷却した後、1MのHClを用いて溶液のpHを3に調整し、続いてさらに2時間還流した。冷却して15mL容のFalconチューブに移した後、以下のプロトコールでAA003を精製した。
【0219】
[00333]脱保護したAA003の精製
[00334]目的:
[00335]アミン活性化アニオン性ポリマーを豊富にする
[00336]材料:
[00337]UV透過性プラスチックキュベット(1mL)
[00338]遠心機
[00339]UV−Vis分光光度計
[00340]ピペッター+先端
[00341]NaOH、1.0M、0.1mL:
[00342] NaOH、10M 10uL
[00343] HO 90uL
[00344]粗AA003
[00345]90%MeOH、1%T20(90M1T、50mL)
[00346]MC30フィルタ
[00347]手順:
[00348]1.画分を選別:
[00349]1a)チューブの内側にフィルムライニング(沈殿ポリマー)がある場合、上清を新しいチューブに注ぎ出す。ピペットの先端を使って、上清全てを完全に取り出し、取り分けておく。
[00350]1b)チューブを覆っているフィルム(ppt)を処理:
[00351] i.水0.5mLを加え、リトマスでpHを確認する。必要があれば、NaOHを加えて(最初に0.1MのNaOHを1〜5uLの量で加え、さらに実施するのであれば1.0MのNaOH)pH約7〜8に中和し、混合し、ペレット化し、リトマスで確認する。pH8に維持されるまで、添加−混合−ペレット化−pH試験確認のサイクルを数回実施する。
[00352]ii.水抽出物を除去し、1.5mLのeppiに入れる。
[00353]iii.14krcfで2秒間スピンさせる。上澄み(sup.)を保管してペレット化する。
[00354]iv.ペレットを凍結乾燥させる。
[00355]1c)ステップ1a)の上清を処理:
[00356]i.上清0.5mL(通常は懸濁液)を分取し、1.5mLのeppi.に入れる。
[00357]ii.リトマスでpHを調べ、pHを記録する。
[00358]iii.上記ステップ1b1と同様にしてpH約7〜8に中和する。
[00359]iv.14krcfで2秒間遠心処理する。
[00360]v.ペレットから上澄みを分離し、両方を保管する。
[00361]vi.ペレットを凍結乾燥させる。
[00362]vii.ペレットを最低限の量の無水DMSOで再懸濁させる。
[00363]viii.水中にてUV/Vis分光分析を実施し、吸光度を記録し、有効な消散係数(Ext. Coef.)を利用してすべての画分の濃度を計算する。
[00364]2.MC30による脱塩。
[00365] AA003の光学スペクトルを図29に示す。図中、実線は吸収を示し、破線は放出スペクトルを示す。脱保護したポリマーAA003(遊離アミンを有する)を、www.invitrogen.com(最後に訪問したのは10/04/07)で入手可能なプロトコールのスクシミジルエステルFAM、5(6)FAM-SE(Invitrogen、#C1311)と反応させた。負の対照として、同じポリマーをフルオレセイン(反応性基なし)と一緒に同じ反応条件でインキュベートした。この手順のプロトコールは、実施例4で説明したものと同様に従っている。
【0220】
実施例10
[00366]マレイミド官能基を有するアニオン性共役ポリマーAA003−M01の合成:
【化24】

【0221】
[00367] GMBSなどの二官能性リンカーを利用して、多発色団上のアミン官能基を他の官能基に変換することが可能である。この手法を採用して、AA003をAA003−M01に変換した。この手順のプロトコールは、Pierce社のウェブサイトwww.piercenet.com(最後に訪問したのは09/23/2007)にあるPierce社のプロトコールを変更したものである。使用したプロトコールは以下のとおりである。
【0222】
[00368]GMBSのAA003へのコンジュゲーション
[00369]目的:
[00370] GMBSでAA003を官能化し、マレイミド部分を得る
[00371]材料:
[00372]遠心機
[00373]UV−Vis分光光度計
[00374]UV透過性キュベット(1mL)
[00375]ピペッター+先端
[00376]AA003
[00377]GMBS(Pierce #22309)
[00378]90%MeOH、1%T20(90M1T、50mL)
[00379]DMSO
[00380]NEt3
[00381]MC30フィルタ
[00382]手順:
[00383]1.マレイミドでAA003を官能化するには、本明細書において有用な使用量がある:
[00384]1a)40X XSの場合、0.3mMのポリマーと12mMのGMBSを使用する。これは、以下のようにポリマー3.0nmol/10uL rxnを意味する。
【0223】
【表3】

【0224】
[00385]2.リンカー以外のすべての試薬を混合する場合:
[00386]2a)GMBSをDMSOに溶解させる(溶解後すみやかにGMBSを使用):
[00387]i.120mM GMBS=3.4mg/0.1mL DMSOまたは30uL/mg
[00388]2b)ヒートブロックにて25℃で30分間インキュベート。透明度を確認。
[00389]3.MC30でXS GMBSを除去:
[00390]3a)MCカップに適用する前に、DMSOを<5%まで希釈
[00391]3b)反応物w/400uL 90M1T各々を別途混合
[00392]3c)カップに適用
[00393]3d)14k rcfで10分間スピン
[00394]3e)未透過流の容積を推定してさらにスピンを継続する必要があるかどうかを判断
[00395]3f)濾液を廃棄
[00396]3g)90M1Tをさらに400uL加え、再度スピン
[00397]3h)未透過流がほぼ乾燥したように見えたら、90M1Tを20uL加え、カップ内で若干渦を作る
[00398]3i)ひっくり返し、スピンして未透過流を回収
[00399]3j)未透過流の最終容積を測定=_____uL
[00400]3k)UV−visで濃度を求めた後、0.5X 90M1Tにて最終濃度を25uMに調節
【0225】
実施例11
[00401]アニオン性共役ポリマー−フルオレセインコンジュゲートAA003−M01−Flの合成:
[00402] www.invitrogen.com(最後に訪問したのは10/04/07)で入手可能なプロトコールを用いて、SAMSA−フルオレセイン(Invitrogen)と反応させることで、AA003−M01上のマレイミド官能基のチオール反応性を試験した。AA003を負の対照として利用した。改変後のプロトコールは以下のとおりである。
【0226】
[00403]マレイミドのSAMSAアッセイ
[00404]目的:AA003−M01に対する10X XS SAMSA−フルオレセインを用いてAA003−M01が活性なマレイミド部分であることを示す
[00405]材料:
[00406]遠心機
[00407]UV透過性キュベット(1mL)
[00408]蛍光光度計、型番PE−LS55
[00409]ピペッター+先端
[00410]リン酸カリウム0.5M、pH7.0、0.2mL:
[00411]K2HPO4、1M 62uL
[00412]KH2PO4、1M 39uL
[00413]H20 100uL
[00414]HCl、6M、0.2mL:
[00415]H2O 0.1mL
[00416]HCl、12M 0.1mL
[00417]NaOH、0.1M、1mL:
[00418]NaOH、10M 10uL
[00419]H2O 990uL
[00420]AA003
[00421]AA003−M01
[00422]SAMSA−フルオレセイン(Invitrogen、製品A685)
[00423]MC30フィルタ
[00424]手順:
[00425]1.1.0mMの脱保護SAMSAを調製:
[00426]1a)1.0mg SAMSA/95uL 0.1M NaOH(20mM SAMSA)を溶解させる
[00427]1b)室温にて15分間インキュベートし、アセチル保護基を除去する
[00428]1c)6M HCl:1.4uL/mg SAMSA(20mM SAMSA)で中和する
[00429]1d)20uL 0.5Mリン酸ナトリウム、pH7/mg SAMSA(16mM SAMSA)で緩衝する
[00430]1e)1.0mM SAMSAまで水で16倍に希釈する。
[00431]2.以下のものを加えてrxnをセットアップ。
[00432]2a)AA003−M01の場合:10uLの1.0mM脱保護SAMSAと10uLの25uM AA003+GMBS(実施例10のプロトコールから3.k+G)
[00433]2b)AA003の場合:10uLの1.0mM脱保護SAMSAと10uLの25uM AA003−GMBS(実施例10のプロトコールから3.k−G)
[00434]3.ヒートブロックにて25℃で30分間インキュベート
[00435]4.MC30でXS SAMSAを除去:
[00436]4a)MCカップに適用する前に、DMSOを<5%まで希釈
[00437]4b)rxn w/400uL 90M1T各々を別途混合
[00438]4c)カップに適用
[00439]4d)14k rcfで10分間スピン
[00440]4e)未透過流の容積を推定してさらにスピンを継続する必要があるかどうかを判断
[00441]4f)濾液を廃棄
[00442]4g)90M1Tをさらに400uL加え、再度スピン
[00443]4h)未透過流がほぼ乾燥したように見えたら、90M1Tを20uL加え、カップ内で若干渦を作る
[00444]4i)ひっくり返し、スピンして未透過流を回収
[00445]5.ステップ4.iで得られたAA003−M01試料とAA003試料の両方を488および380励起で蛍光分析
【0227】
[00446] このアッセイの結果を図30Cに示す。上記の手順で、AA003−M01(図30Bにマレイミド官能性ポリマーとして示す)と負の対照ポリマー(マレイミドなし、AA003、図30Aに負の対照ポリマーとして示す)をチオール化フルオレセイン(SAMSA−フルオレセイン)と反応させた。マレイミド官能化ポリマーAA003−M01は、チオール化フルオレセインと反応し、フルオレセインに共有結合して、供与体ポリマーと受容体色素との間の距離が一定になる。よって、ポリマーの励起が受容体色素へのFRETにつながり、強い色素放出が観察される(実線、図30C)。負の対照はフルオレセインに共有結合せず、ポリマーを励起させてもポリマーの放出だけが観察される(点線、図30C)。
【0228】
実施例12
[00447]ビオチニル化アニオン性共役ポリマー、ビオチニル−AA003の合成:
【化25】

【0229】
[00448] Pierce社から入手可能なNHS−ビオチンリンカー(#20217)を利用して、AA003上のアミン官能基をビオチンに変換した。この手順のプロトコールは、Pierce社のウェブサイトwww.piercenet.com(最後に訪問したのは09/23/2007)にあるPierce社のプロトコールを変更したものである。使用したプロトコールは以下のとおりである。
【0230】
[00449]AA003へのNHS−ビオチンのコンジュゲーション手順
[00450]目的:
[00451] NHS−ビオチンでAA003をビオチニル化する
[00452]材料:
[00453]UV透過性キュベット付き蛍光光度計
[00454]UV−VIS機器
[00455]精製済みAA003(AA3)
[00456]NHS−ビオチン(Pierce #20217)
[00457]0.5M NEt3(ストック(7.2M)NEt3の1:14希釈)
[00458]DMSO
[00459]MC30フィルタ
[00460]手順:
[00461]1.反応物すなわち0.5mMポリマーと20mMNHS−ビオチンをセットアップ:
【0231】
【表4】

【0232】
[00462]2.ビオチン以外をすべて混合したら、15uL無水DMSO/mg NHS−ビオチン(または1.7mg/0.025mL;200mM)の割合でNHS−ビオチン1〜2mgをDMSOに溶解させる。溶解後、すみやかにNHS−試薬を使用。
[00463]3.ヒートブロックにて25℃で30分間インキュベート
[00464]4.90M1Tにて1:100に希釈(100中1uLまたは400uL中4)
[00465]5.MC30で脱塩、2X
[00466]6.UV/Visにより濃度をアッセイ
【0233】
実施例13
[00467]ビオチニル−AA003およびAvidin D−フルオレセインによるシグナル増幅法:
[00468]目的:
[00469] ビオチニル−AA003およびAvidin D−フルオレセインを利用して、FRETによる特異的蛍光シグナルを示す
【0234】
[00470]材料:
[00471]蛍光光度計(NanoDropまたはPerkin-Elmer製PE−LS55)
[00472]UV透過性プラスチックキュベット(1ml)
[00473]ピペッター+先端
[00474]ビオチニル−AA003(BAA)
[00475]AA003(AA)
[00476]Avidin D−フルオレセイン(A−Fl)
[00477]TBS
[00478]手順:
[00479]1.エッペンドルフチューブで、以下の表に列挙した試薬を混合する。5分間インキュベートした後、蛍光光度計での測定前に、NanoDropの場合は100uLで1uL、ベンチトップ蛍光光度計の場合は1mLキュベットで10uLとして、混合物を100倍に希釈する。
[00480]2.A−Flを488nmで直接励起させるとともに、ポリマーを380nmで励起させてFRETで間接的に励起させる。
[00481]3.関連する波長でピーク高についてのデータを集める。これらのソースを含めて、ピーク高からバックグラウンドを差し引く。
[00482]3a)緩衝液単独の対照
[00483]3b)FRETからフルオレセインピークへのポリマーピークテイル(約5%)
【0235】
【表5】

【0236】
実施例14
[00484]ビオチニル−AA003およびフルオレセイン標識Avidin Dによるシグナル増幅分析:
[00485] このアッセイについては、実施例13で手続き的に説明する。このアッセイのスキームを図31Bに示す。ビオチニル−AA003(ビオチニルポリマーとして示す図31A参照)をフルオレセイン標識Avidin Dと一緒にインキュベートする。負の対照として、アミンポリマーAA003(負の対照ポリマーとして示す図31A参照)をフルオレセイン標識Avidin Dと一緒に同じようにしてインキュベートする。いずれの場合も、ポリマーが励起し、フルオレセイン放出が観察される。負の対照AA003では、ポリマー放出のみ(中心波長420nm)が観察されるのに対し、ビオチニル−AA003では、強い色素放出が観察される。
【0237】
[00486] このアッセイの結果を図32A〜Bに示す。アビジン1あたり4の色素を含有するAvidin Dでビオチニル−AA003を試験した。対照ポリマーからのシグナルと色素のみの場合のシグナルも記録し、図32A〜Bに示す。図32Aは、得られる蛍光スペクトルを示す。このデータセットの523nmでの色素シグナルを図32Bにまとめておく。
【0238】
[00487] これらのデータから、ポリマーの共存下にてフルオレセインシグナル(523nm)が増幅され(図32A、実線対波線スペクトル(左)とビオチニル−AA003対色素単独(右))、観察されたシグナルが特異的ポリマー−Avidin D複合体によるものである(図32A、実線対点線スペクトル(左)、ビオチニル−ポリマー対対照(右))ことが分かる。アミンポリマー対照(ビオチンなし)はアビジンを結合できず、最小限のエネルギ移動が観察された(88%特異性)。特異性は1−(対照シグナル/特異的色素シグナル)で定義される。右図に、ポリマーがある場合とない場合、正と負の対照試料での色素シグナルの差を示す。図32Bに示すデータは、緩衝液およびポリマーテイルからのシグナルについて補正したものである。523nmでのポリマーテイルの寄与率は419nmでのポリマーピーク高の5%である。
【0239】
実施例15
[00488]さまざまな色素:Avidin D比での増幅効果:
[00489] ポリマーと色素の異なる比について試験した。これについては、アビジン1あたり平均して0.8、1.5、4のフルオレセイン色素を含むVector Laboratoriesから入手したAvidin Dコンジュゲートを用いて評価した。色素数が増えるにつれて、ポリマーと色素との吸光係数の比(吸光度)が低下する。したがって、このセットのフルオレセイン標識Avidin Dでは、含有色素数が最小のアビジンコンジュゲートで最適な増幅値が観察されると思われた。Avidin Dあたり2当量のポリマーについて、ポリマー濃度を一定に保った。
【0240】
[00490] 図33A〜Bに示すデータから、予想どおりポリマー対色素の比に依存していることが分かる。ポリマーとアビジンの濃度を一定にしてAvidin Dあたりの色素数を増やすことで、この比が変化した。データから、色素:アビジンの比が0.8から4に増すと、色素のシグナル強度も高まる(図33A)が、観察される増幅が低下する(図33B)ということが分かる。色素数が増えるにつれて、吸光度が高まり蛍光が強まる(灰色の棒、図33A)ことで、直接的な色素シグナルも増す。
【0241】
実施例16
[00491]405nmで励起可能なアミン官能基を有するアニオン性共役ポリマーAA002の合成:
【化26】

【0242】
[00492] ポリ[2,7−{9,9−ビス(1−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)))}−コ−オルト−(2,7−{9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)}フルオレン−コ−2,7−{9,9−ビス(1−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)))}−コ−オルト−3,5−1−{4’−フタルイミドブトキシ)フェニレン)]:2,7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス(1−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)))フルオレン(120.1mg、0.150mmol)と、2,7−ジブロモ{9,9−ビス(4’−(ナトリウムスルホネート)ブチル)}フルオレン(91.3mg、0.143mmol)と、1−(4’−フタルイミドブトキシ)−3,5−ジブロモベンゼン(3.7mg、0.0082mmol)と、炭酸カリウム(234mg、1.7mmol)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(6.2mg、0.0054mmol)とをDMF(3.8mL)、THF(2.5mL)および水(2.5mL)に入れた溶液を、48mL容のSchlenckチューブで、アルゴンで拡散しながら20分間脱気した。この溶液をアルゴン雰囲気下にて3日間かけて85℃まで加熱した。この溶液を攪拌アセトンに滴下して加え、暗褐色の固体を得た。この固体をメタノールと一緒に攪拌し、濾液を回収し、溶媒を除去して明るい黄色の固体を得た。1H NMR(DMSO):8.055〜7.828(m,12H);3.558〜3.293(m,24H);3.188(m,12H);2.217〜2.161(m,8H);1.417(br s,4H);0.664(br s,4H)。二峰性、Mn7.3K、PDI1.02およびMn49K、PDI1.2。
【0243】
[00493] 次に、実施例9で説明した手順と同様の手順を利用してこのポリマーを脱保護し、精製してAA002を得た。AA002の光学スペクトルを図34に示す。図中、実線は吸収を示し、破線は放出スペクトルを示す。
【0244】
実施例17
[00494]ビオチニル化共役ポリマー、ビオチニル−AA002の合成:
【化27】

【0245】
[00495] Pierce社から入手可能なNHS−ビオチンリンカー(#20217)を利用して、AA002上のアミン官能基をビオチン官能基に変換した。この手順のプロトコールは、Pierce社のウェブサイトwww.piercenet.com(最後に訪問したのは09/23/2007)にあるPierce社のプロトコールを変更したものである。この手順のプロトコールは、実施例12で説明したものと同様に従っている。
【0246】
実施例18
[00496]さまざまなポリマー:Avidin D比での増幅効果
[00497] 一定濃度に保持したフルオレセイン標識Avidin DまたはAvidin D-Fl(アビジン1あたり0.8の色素)を、ビオチニル−AA002濃度を0から8当量に増加させながらインキュベートした。これを、最初の2当量のビオチニル−AA002について図35Aに概略的に示す。それぞれの比で、色素蛍光を直接および間接励起(FRETによる)で記録した。図35Bすなわちフルオレセイン放出をAA002対Avidin D-Flの比の関数としたプロットに示すように、ポリマー対色素比が高くなるにつれて、直接励起によるシグナルはかなり一定に保たれたが、間接励起によるシグナルは増加した。このシグナル増加の安定期は、ビオチニル−AA002のほぼ4当量に達し、Avidin Dのすべてのビオチン結合部位が占有されていることと一致する。
【0247】
[00498] これらのデータは、フルオレセイン標識Avidin Dに対するビオチニル−AA002の特異的結合と一致する。高いシグナル増幅が観察されるが、これはポリマーの4当量で頭打ちになることから、すべての利用できるビオチン結合部位が占有されていることが分かる。
【0248】
実施例19
[00499]色素シグナルの静電増幅
[00500] 図36Bに概略的に示すように、色素標識タンパク質(Cy3標識IgGおよびフルオレセイン標識BSA)を各々独立してカチオン性ポリマーPFP−2Fと一緒にインキュベートした(図36A参照)。ポリマーと各色素標識タンパク質との間に非特異的静電会合が生じた。各溶液を380nmで励起させ、放出スペクトルを集めた。これらのスペクトルを、色素の直接励起で得られた放出スペクトルと比較したところ、図36Cに示すように、Cy3標識IgGが30倍増幅、フルオレセイン標識BSAが25倍増幅されていた。使用したCy3標識IgGは、標的ジゴキシゲニン標識抗体を用いる抗ジゴキシゲニン抗体であった。
【0249】
[00501] 以上、本明細書において本発明の好ましい実施形態について図示し、説明してきたが、このような実施形態が一例にすぎないことは当業者であれば自明であろう。当業者であれば、本発明から逸脱せずに多数の変形例、変更および置き換えを行うことになろう。本発明を実施するにあたっては、本明細書に記載の本発明の実施形態にさまざまな改変をほどこし得ることは理解されたい。以下の特許請求の範囲で本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲に含まれる方法および構造ならびにその等価物が包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的生体分子を含有するとみられる試料を提供し、
シグナル伝達発色団と共役し、標的生体分子と相互作用できるセンサを提供し、
【化1】

からなる群から選択される共役ポリマーであって、センサと静電的に相互作用し、励起時に、センサシグナル伝達発色団にエネルギを移動できるポリマーを提供し、
標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子にセンサが結合可能な条件下で、溶液中にて試料をセンサおよび多発色団に接触させ、
多発色団を励起可能な光源を試料に適用し、
シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出すること、
を含むアッセイ方法。
【請求項2】
R基がスルホネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
センサが生体分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生体分子が抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
センサが、複数のシグナル伝達発色団と共役する複数のセンサを含み、複数の発色団のうちの少なくとも2つが、多発色団からのエネルギ移動時に波長の異なる光を放出する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
センサ生体分子、バイオコンジュゲートおよび標的生体分子からなる群から選択される少なくとも1つの生体分子に結合される多発色団であって、シグナル伝達発色団にさらに結合され、構造
【化2】

(式中、CP、CP、CPおよびCPは、互いに同一または異なる、置換されていてもよい共役ポリマーセグメントまたはオリゴマー構造である)を含む多発色団を備える、
多発色団複合体。
【請求項7】
共役ポリマーがカチオン性共役ポリマーである、請求項6に記載の多発色団。
【請求項8】
共役ポリマーがアニオン性共役ポリマーである、請求項6に記載の多発色団。
【請求項9】
共役ポリマーが電荷中性共役ポリマーである、請求項6に記載の多発色団。
【請求項10】
CP、CP、CPおよびCPが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、チオフェン、フラン、ピリジンおよびオキサジアゾールからなる群から選択される芳香族繰り返し単位であり、各々置換されていてもよく、CPおよびCPが、リンカーによって連結された、1つまたは複数の独特なバイオコンジュゲーション部位を含み得る、請求項6に記載の多発色団。
【請求項11】
マレイミド、チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)、アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩、スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、アミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)およびスルホ−SBEDスルホスクシンイミジル[2−6−(ビオチンアミド)−2−(p−アジドベンズアミド)−ヘキサノアミド]−エチル−1,3’−ジチオプロピオネートからなる群から選択されるバイオコンジュゲーション部位をさらに含む、請求項6に記載の多発色団。
【請求項12】
多発色団が、構造
【化3】

を含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項6に記載の多発色団。
【請求項13】
多発色団が、構造
【化4】

を含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項6に記載の多発色団。
【請求項14】
1および2が、構造
【化5】

を有するa〜gの連結基からなる群から選択され、3が、構造
【化6】

を有する基hである、請求項12または13に記載の多発色団。
【請求項15】
構造
【化7】

をさらに含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項12または13に記載の多発色団。
【請求項16】
構造
【化8】

をさらに含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項12または13に記載の多発色団。
【請求項17】
構造
【化9】

をさらに含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩を含む可溶化基である、請求項12または13に記載の多発色団。
【請求項18】
多発色団と、
多発色団と共有結合的に連結されたセンサ生体分子と、
多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、を含み、シグナル伝達発色団が、多発色団の励起時に多発色団からのエネルギを受け取ることができ、センサ生体分子が、標的生体分子と相互作用できる、
標的生体分子を同定するための多発色団複合体。
【請求項19】
シグナル伝達発色団とセンサ生体分子の両方が、複数のリンカーを介して、多発色団に共有結合的に連結される、請求項18に記載の多発色団複合体。
【請求項20】
シグナル伝達発色団とセンサ生体分子の両方が、多発色団、シグナル伝達発色団およびセンサ生体分子を共有結合的に結合する三官能性リンカーを介して、多発色団に共有結合的に連結される、請求項18に記載の多発色団複合体。
【請求項21】
リンカーが、マレイミド/チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)/アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)/アミン、アミン/スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)/チオールおよびアミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)/チオールからなる群から選択される連結化学を含む、請求項18に記載の多発色団複合体。
【請求項22】
多発色団が共役ポリマーである、請求項18に記載の多発色団複合体。
【請求項23】
共役ポリマーがポリカチオン性共役ポリマーである、請求項18に記載の多発色団複合体。
【請求項24】
標的生体分子を含有するとみられる試料を提供し、
多発色団と、共有結合的に連結されるシグナル伝達発色団と、共有結合的に連結されるセンサ生体分子と、を含み、シグナル伝達発色団が、多発色団の励起時に多発色団からのエネルギを受け取ることができ、センサ生体分子が、標的生体分子と相互作用できる、多発色団複合体を提供し、
標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子にセンサ生体分子が結合可能な条件下で、溶液中にて試料を多発色団複合体に接触させ、
多発色団を励起可能な光源を試料に適用し、
シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出する、
アッセイ方法。
【請求項25】
多発色団が共役ポリマーである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
共役ポリマーがポリカチオン性共役ポリマーである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
標的生体分子を含有するとみられる試料を提供し、
シグナル伝達発色団と共役し、標的生体分子と相互作用できる第1のバイオコンジュゲートを提供し、
構造
【化10】

(式中、CP、CP、CPおよびCPは、互いに同一または異なる、置換されていてもよい共役ポリマーセグメントまたはオリゴマー構造であり、第2のバイオコンジュゲートが、第1のバイオコンジュゲートと結合可能であり、そのような結合時に、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる)を含む多発色団と共役する第2のバイオコンジュゲートを提供し、
標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子に第1のバイオコンジュゲートが結合可能な条件下で、溶液中にて試料を第1のバイオコンジュゲートに接触させ、
溶液を第2のバイオコンジュゲートに接触させ、
多発色団を励起可能な光源を試料に適用し、
シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出すること、
を含むアッセイ方法。
【請求項28】
共役ポリマーがカチオン性共役ポリマーである、請求項27に記載の多発色団。
【請求項29】
共役ポリマーがアニオン性共役ポリマーである、請求項27に記載の多発色団。
【請求項30】
共役ポリマーが電荷中性共役ポリマーである、請求項27に記載の多発色団。
【請求項31】
CP、CP、CPおよびCPが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、チオフェン、フラン、ピリジンおよびオキサジアゾールからなる群から選択される芳香族繰り返し単位であり、各々置換されていてもよく、CPおよびCPが、リンカーによって連結された、1つまたは複数の独特なバイオコンジュゲーション部位を含み得る、請求項27に記載の多発色団。
【請求項32】
マレイミド、チオール、スクシミジルエステル(NHSエステル)、アミン、アジド化学、カルボキシ/EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩、スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、アミン/BMPH(N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA)およびスルホ−SBEDスルホスクシンイミジル[2−6−(ビオチンアミド)−2−(p−アジドベンズアミド)−ヘキサノアミド]−エチル−1,3’−ジチオプロピオネートからなる群から選択されるバイオコンジュゲーション部位をさらに含む、請求項27に記載の多発色団。
【請求項33】
多発色団が、構造
【化11】

を含み、
式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項27に記載の多発色団。
【請求項34】
多発色団が、構造
【化12】

を含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項27に記載の多発色団。
【請求項35】
1および2が、構造
【化13】

を有するa〜gの連結基からなる群から選択され、3が、構造
【化14】

を有する基hである、請求項33または34に記載の多発色団。
【請求項36】
構造
【化15】

をさらに含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項33または34に記載の多発色団。
【請求項37】
構造
【化16】

をさらに含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項33または34に記載の多発色団。
【請求項38】
構造
【化17】

をさらに含み、式中、Rは、エチレングリコールオリゴマー、エチレングリコールポリマー、ω−アンモニウムアルコキシ塩およびω−スルホネートアルコキシ塩からなる群から選択される可溶化基である、請求項33または34に記載の多発色団。
【請求項39】
共役ポリマーがポリカチオン性共役ポリマーである、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
共役ポリマーがアニオン性共役ポリマーである、請求項27に記載の多発色団。
【請求項41】
共役ポリマーが電荷中性共役ポリマーである、請求項27に記載の多発色団。
【請求項42】
第1および第2のバイオコンジュゲートのうちの少なくとも1つが抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項43】
第1および第2のバイオコンジュゲートが抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
標的生体分子を含有するとみられる試料を提供し、
共有結合的に連結された第1のバイオコンジュゲートを含む多発色団を提供し、
標的分子と相互作用できるセンサ生体分子と、シグナル伝達発色団と、第1のバイオコンジュゲートに結合でき、そのような結合時に、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、共有結合的に連結された第2のバイオコンジュゲートと、を有するセンサ生体分子複合体を提供し、
標的生体分子が存在する場合に、この標的生体分子にセンサ生体分子が結合可能な条件下で、溶液中にて試料をセンサ生体分子複合体に接触させ、
溶液を多発色団に接触させ、
多発色団を励起可能な光源を試料に適用し、
シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出すること、
を含むアッセイ方法。
【請求項45】
多発色団が共役ポリマーである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
共役ポリマーがポリカチオン性共役ポリマーである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
第1および第2のバイオコンジュゲートが、タンパク質、抗体および核酸からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンまたはビオチンであり、センサ生体分子が抗体であり、第2のバイオコンジュゲートが、第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンであればビオチンであり、第1のバイオコンジュゲートがビオチンであればストレプトアビジンである、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンまたはビオチンであり、センサ生体分子が核酸であり、第2のバイオコンジュゲートが、第1のバイオコンジュゲートがストレプトアビジンであればビオチンであり、第1のバイオコンジュゲートがビオチンであればストレプトアビジンである、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
バイオコンジュゲートと、
バイオコンジュゲートと共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、
バイオコンジュゲートと共有結合的に連結された多発色団と、を含み、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、
生体分子を同定するための生体認識複合体。
【請求項51】
バイオコンジュゲートが抗体である、請求項50に記載の生体認識複合体。
【請求項52】
バイオコンジュゲートがストレプトアビジンである、請求項50に記載の生体認識複合体。
【請求項53】
多発色団が共役ポリマーである、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
共役ポリマーがポリカチオン性共役ポリマーである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
標的生体分子を含有するとみられる試料を提供し、
バイオコンジュゲートと、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結された多発色団と、を含み、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、生体認識複合体を提供し、
標的生体分子または標的関連生体分子が存在する場合に、この標的生体分子または標的関連生体分子にバイオコンジュゲートが結合可能な条件下で、溶液中にて試料を生体認識複合体に接触させ、
多発色団を励起可能な光源を溶液に適用し、
シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出すること、
を含むアッセイ方法。
【請求項56】
多発色団が共役ポリマーである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
共役ポリマーがポリカチオン性共役ポリマーである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
バイオコンジュゲートと、
バイオコンジュゲートと共有結合的に連結された多発色団と、
多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、を含み、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、
標的生体分子を同定するための生体認識複合体。
【請求項59】
バイオコンジュゲートが抗体である、請求項58に記載の生体認識複合体。
【請求項60】
バイオコンジュゲートがストレプトアビジンである、請求項58に記載の生体認識複合体。
【請求項61】
多発色団が共役ポリマーである、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
共役ポリマーがポリカチオン性共役ポリマーである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
標的生体分子を含有するとみられる試料を提供し、
バイオコンジュゲートと、バイオコンジュゲートと共有結合的に連結された多発色団と、多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、を含み、多発色団の励起がシグナル伝達発色団にエネルギを移動できる、バイオコンジュゲート複合体を含む生体認識複合体を提供し、
標的生体分子または標的関連生体分子が存在する場合に、この標的生体分子または標的関連生体分子にバイオコンジュゲートが結合可能な条件下で、溶液中にて試料を生体認識複合体に接触させ、
多発色団を励起可能な光源を溶液に適用し、
シグナル伝達発色団から光が放出されたか否かを検出すること、
を含むアッセイ方法。
【請求項64】
多発色団が共役ポリマーである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
共役ポリマーがポリカチオン性共役ポリマーである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
標的生体分子の検出時に遺伝子の発現が検出される、請求項1、24、27、44、54および62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
標的生体分子の検出によって、患者の病状を診断するのに用いられる結果が得られる、請求項1、24、27、44、54および62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
疾患を診断する方法が、
試料中における標的生体分子の存在に関するデータを精査または分析し、
疾患の診断に関するデータの精査または分析に基づく結論を、患者、ヘルスケア提供者またはヘルスケア管理者に提供することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
結論を提供することが、ネットワーク経由でのデータの伝送を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
多発色団と、
多発色団と共有結合的に連結されたセンサ生体分子と、
多発色団と共有結合的に連結されたシグナル伝達発色団と、を含み、シグナル伝達発色団が、多発色団の励起時に多発色団からのエネルギを受け取ることができ、センサ生体分子が、標的生体分子と相互作用できる、
標的生体分子を同定するためのキット。
【請求項71】
キットが基質をさらに含む、請求項70に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図30C】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34】
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【図35A】
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【図35B】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36C】
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【公表番号】特表2010−540885(P2010−540885A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531642(P2009−531642)
【出願日】平成19年10月8日(2007.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/080734
【国際公開番号】WO2008/100344
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(509089627)シリゲン,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】