説明

指向性掘削システム

本発明による指向性掘削システムは、メインビット軸線(26)を中心に回転可能なメインドリルビット(24)と、メインビット軸線(26)と実質的に平行なパイロットビット軸線(36)を中心に回転可能なパイロットドリルビット(34)と、メインビット軸線(26)に対するパイロットビット軸線(36)の位置を調整する調整手段(28)を有する。上記指向性掘削システムを用いて掘削する本発明による方法は、パイロットドリルビット(34)を用いてパイロット孔を形成し、メインドリルビット(24)を用いてメイン孔を形成し、メインビット軸線(26)に対するパイロットビット軸線(36)の位置を調整して、メイン孔に対するパイロット孔の位置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル孔又はボアホールの形成に用いられる指向性掘削システムに関し、ドリル孔は、例えば、ドリル孔の形成に引続いて行われる炭化水素の産出のものである。
【背景技術】
【0002】
多数の指向性掘削システムが知られている。例えば、掘削システムにバイアスユニットを設けることが知られており、バイアスユニットは、横方向に差し向けられた力を掘削システムのドリルビットに付与するように動作可能であり、それにより、ドリルビットを、それがドリル孔の軸線からオフセットした(ずらされた)位置に向かって推進させ、その結果、掘削システムの継続作動により、ドリル孔内に逸れ部が形成される。別の形態の進行方向変更(ステアリング)可能な掘削システムは、曲げられたハウジング又はサブ(sub)を有し、その向きを調節することができ、それにより、ドリルビットを差し向ける方向を制御して、掘削システムの継続作動によりドリル孔を延長させる方向を制御する。
【0003】
特許文献1は、パイロットビットがメインビットの前に配置された装置を記載し、パイロットビットは、球軸受に取付けられ、それにより、パイロットビットを望みの方向に差し向けることを可能にし、かくして、掘削システムの進行方向変更を達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第03/008754号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、比較的簡単且つ便利な形態の指向性掘削システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、指向性掘削システムであって、メインビット軸線を中心に回転可能なメインドリルビットと、メインビット軸線と実質的に平行なパイロットビット軸線を中心に回転可能なパイロットドリルビットと、メインビット軸線に対するパイロットビット軸線の位置を調整する調整手段とを有する指向性掘削システムを提供する。
【0007】
好ましくは、メインビットは、複数の摩耗パッドを有し、摩耗パッドは、使用中、メインビットを案内するためにパイロットビットによって形成されたパイロット孔の壁と係合可能である。
【0008】
使用の際、ドリル孔を、選択された方向に差し向けることを望むとき、パイロットビット軸線は、それがメインビット軸線から上記選択された方向にオフセットされた位置に保持され、その場所にパイロット孔を形成する。引続いて、摩耗パッドとパイロット孔との係合により、横方向の力がメインビットに付与され、メインビットを上記選択された方向に推進させる。ほぼ真直ぐなドリル孔領域を形成することを望むとき、実質的に横方向に差し向けられる力がメインビットに全く又はほとんど付与されないように、パイロットビット軸線の位置を連続的に又は実質的に連続的に変化させる。
【0009】
パイロットビット軸線は、好ましくは、メインビット軸線から一定の距離だけオフセットされる。
【0010】
このシステムは、便利には、メインビットとほぼ同軸に延びるステアリングシャフトを含み、パイロットビットの駆動シャフトは、ステアリングシャフトによって回転可能に支持され、且つ、ステアリングシャフトに対して偏心している。
【0011】
パイロットビットは、好ましくは、メインビットの回転によって、例えば太陽/遊星ギヤ型ギヤ装置を介して、駆動されるよう構成され、かかる太陽/遊星ギヤ型ギヤ装置の遊星ギヤは、好ましくは、ステアリングシャフトによって支持される。
【0012】
ステアリングシャフトの角度方向位置を制御するモータが設けられるのがよい。変形例として、ステアリングシャフトの位置を制御するブレーキが設けられてもよい。
【0013】
本発明は又、上述した指向性掘削システムを用いて掘削する方法であって、パイロットドリルビットを用いてパイロット孔を形成する工程と、メインドリルビットを用いてメイン孔を形成する工程と、メインビット軸線に対するパイロットビット軸線の位置を調整して、メインボアに対するパイロット孔の位置を制御する工程とを有する方法に関する。
【0014】
添付図面を参照して、本発明を例示により更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1つの実施形態による指向性掘削システムの概略図である。
【図2】図1の掘削システムの一部分の概略的な拡大図である。
【図3】図2の実施形態のギヤボックス装置の一部分の概略的な断面図である。
【図4】変形実施形態を示す図2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に図1〜図3を参照すると、ドリル孔10の形成に用いられる掘削システムが示されている。この掘削システムは、地表リグ14によって支持されるドリルストリング12を有し、ドリルストリング12はまた、その長さに沿った或る間隔でスタビライザ(安定装置)16によって支持されている。ドリルストリング12は、その下端部において、ボトムホール組立体18を支持し、ボトムホール組立体18は、ダウンホールモータ20及び制御ハウジング22を有している。ダウンホールモータ20は、或る範囲の形態をとることができる。例えば、ダウンホールモータは、電動式であってもよいし、変形例として、ドリルストリング12の中を通して圧力下で供給される流体を用いる液圧駆動式であってもよい。ダウンホールモータ20の出力部は、メインビット24をメインビット軸線26を中心に回転させるように駆動するように構成されている。
【0017】
制御ハウジング22は、メインビット24と同軸に延びるステアリングシャフト28の角度方向位置又は回転位置を制御するように作動可能な制御装置(図示せず)を収納している。ステアリングシャフト28は、その自由端部のところに、軸受(図示せず)を支持する拡径領域30を備え、軸受は、駆動シャフト32を回転可能に支持している。また、ビット荷重に作用する重量を駆動シャフト32に伝達することを可能にするために、スラスト軸受が設けられている。駆動シャフト32は、パイロットビット34を支持し又はそれと一体に形成されている。スラスト軸受は、パイロットビット軸線36(パイロットビット34及び駆動シャフト32の回転軸線)がメインビット軸線26に対して偏心するように又はそれからオフセットされるように配置されている。メインビット軸線26及びパイロットピット軸線36のオフセットは、図面において誇張されている。ステアリングシャフト28の角度方向位置により、パイロットビット軸線36がメインビット軸線26からオフセットされる方向を定めることを認識すべきであり、かくして、ステアリングシャフト28は、パイロットビット軸線36の位置を調整する調整手段を構成する。
【0018】
図示のように、パイロットビット34は、メインビット24に形成された開口38から突出している。一連の摩耗パッド40が、開口38の周りに設けられている。図示の構成では、開口38は、パイロットビット34よりも小さい直径のものであり、同様に、摩耗パッド40は、パイロットビット34よりも小さい直径の円の周りに配置されている。しかしながら、このようにする必要があるわけではなく、所望ならば、摩耗パッド40は、パイロットビット34の直径と実質的に等しい直径の円の周りに配置されてもよい。
【0019】
パイロットビット34は、好ましくは、メインビット24から駆動されるように構成されている。図示の構成では、このことは、太陽/遊星ギヤ型ギヤボックス装置を設けることによって達成され、太陽/遊星ギヤ型ギヤボックス装置において、メインビット24はその内部に歯付きリングギヤ部42を有している。リングギヤ部42は、メインビット24と一体に形成されてもよいし、変形例として、それにしっかりと固着された別の構成要素を有していてもよい。リングギヤ部42の歯は、一連の遊星ギヤ44の歯と噛合い、遊星ギヤ44は、ステアリングシャフト28によって支持され又はその一部として形成されたスパイダ又は放射状部材46に回転可能に取付けられている。遊星ギヤ44は、更に、内側リングギヤ48と噛合い、内側リングギヤ48は、駆動シャフト32及びパイロットビット34と噛合い、それらを駆動して回転させる。
【0020】
使用の際、モータ20は、メインビット24を駆動し、それをメインビット軸線26を中心に回転させる。メインビット24の回転は、太陽/遊星ギヤ型ギヤボックス装置を介してパイロットビット34に伝達され、それにより、パイロットビット34を、パイロットビット軸線36を中心として回転させる。制御ハウジング22に対するパイロットビット軸線36の位置は、ステアリングシャフト28によって制御される。選択された方向に形成されるドリル孔に逸れ部を形成することを望むとき、ステアリングシャフト28を、パイロットビット軸線36がメインビット軸線26から所望の方向にオフセットされる角度方向位置に、回転に抗して保持し、即ち、地球に対して静止するように保持する。ステアリングシャフト28をこの位置に保持すれば、モータ20の継続作動とビット荷重に付与される重量との組合せにより、メインビット24とパイロットビット34の両方をそれぞれの軸線を中心に回転させ、両方のビットは、地層材料を削り、研磨し、掻き取り、又はその他の仕方で除去するように作用する。この作用の結果として、パイロットビット34は、メインビット軸線26からオフセットされたパイロット孔を形成し、メインビット24は、ドリル孔10を延長させる。摩耗パッド40が移動してパイロット孔の壁に係合する位置に、メインビット24が達すると、摩耗パッド40とパイロット孔の壁が横方向の力をメインビット24に付与し、メインビット24を選択された方向に推進させることを認識すべきであり、それにより、掘削システムの進行方向を、選択された方向に変更させる。
【0021】
全体的に真直ぐなドリル孔10の領域を形成することを望むとき、ステアリングシャフト28を自由に回転させる。その結果、パイロット軸線36の位置は、連続的に変化し、摩耗パッド40とドリル孔壁との係合による実質的に横方向の力は、長期にわたってメインビット24に付与されない。実際、この状況において、ステアリングシャフト28は、典型的には、比較的遅く回転し、ステアリングシャフト28の回転速度は、メインビット24とパイロットビット34との間のトルク差によって決定される。
【0022】
メインビット24の進行方向変更(ステアリング)が、摩耗パッド40とメインドリル孔10の壁の係合ではなく、摩耗パッド40とパイロット孔の壁の係合によって達成されるので、メインドリル孔10を損傷させる恐れが減少することを理解すべきである。また、摩耗パッド40は、増大した長さで作られるのがよく、従って、ドリル孔壁との接触面積が大きくなり、付与される接触圧力が減少する。
【0023】
使用の際、ステアリングシャフト28を回転に抗して保持するのに必要なトルクは、かなり大きいことがある。例えば、かかるトルクは、メインビット24に付与されるトルクと同等である。ステアリングシャフト28を回転に抗して保持するのに必要なトルクを発生させるために、例えば電動式又は液圧式の適当なモータ50が制御ハウジング22内に設けられるのがよいことが考えられる。
【0024】
変形例として、図3に示すように、太陽/遊星ギヤ型ギヤボックス装置の改造によって、ステアリングシャフト28を駆動するのに必要なトルクが、使用中にボトムホール組立体18が回転する方向と同じ方向であることを確保することが可能であり、かくして、ボトムホール組立体18の回転と組合せた単純なブレーキが、シャフト28の回転を制御するのに使用されることを可能にし、それにより、ステアリングシャフト28のための別のモータ50を設ける必要を回避する。
【0025】
上述した構成が、有利であることを認識すべきであり、有利な点は、かかる構成が、真直ぐなドリル孔領域を形成するのに用いられてもよいし、逸らされたドリル孔領域を形成するのに用いられてもよいこと、かかる構成が比較的短く、例えば、2つの在来のドリルビットの長さとほぼ等しいこと、単一のシャフトの位置を制御することによって、係る構成を簡単に制御できること、及び、かかる構成が、上記回転又はボトムホール組立体の位置と同期するように制御する必要がないことである。
【0026】
典型的には、通常のダウンホール掘削システムと同様、多くの他の構成要素が設けられ、典型的には、通常のように、掘削流体又は掘削泥の通路が設けられ、それにより、ドリルビットへの流体の供給を可能にする。しかしながら、かかる構成要素又は特徴を設けることは、本発明にとって付随的であり、従って、そのことの詳細を本明細書において説明しない。
【0027】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述した構成の多くの改造例及び変形例を想到することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性掘削システムであって、
メインビット軸線を中心に回転可能なメインドリルビットと、
前記メインビット軸線と実質的に平行なパイロットビット軸線を中心に回転可能なパイロットドリルビットと、
前記メインビット軸線に対する前記パイロットビット軸線の位置を調整する調整手段と、を有する指向性掘削システム。
【請求項2】
前記メインビットは、複数の摩耗パッドを有し、前記摩耗パッドは、使用中、前記メインビットを案内するために前記パイロットビットによって形成されたパイロット孔の壁に係合可能である、請求項1に記載の指向性掘削システム。
【請求項3】
前記パイロットビット軸線は、前記メインビット軸線から一定の距離だけオフセットされる、請求項1又は2に記載の指向性掘削システム。
【請求項4】
前記調整手段は、前記メインビットとほぼ同軸に延びるステアリングシャフトを含み、 前記パイロットビットの駆動シャフトは、前記ステアリングシャフトによって回転可能に支持され、且つ、前記ステアリングシャフトに対して偏心している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の指向性掘削システム。
【請求項5】
前記パイロットビットは、前記メインビットの回転によって駆動されるように構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の指向性掘削システム。
【請求項6】
前記パイロットビットは、太陽/遊星ギヤ型ギヤ装置を介して前記メインビットから駆動される、請求項5に記載の指向性掘削システム。
【請求項7】
更に、前記ステアリングシャフトの角度方向位置を制御するモータを有する、請求項4に記載の指向性掘削システム。
【請求項8】
更に、前記ステアリングシャフトの位置を制御するブレーキを有する、請求項4に記載の指向性掘削システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の指向性掘削システムを用いて掘削する方法であって、
前記パイロットドリルビットを用いてパイロット孔を形成する工程と、
前記メインドリルビットを用いてメイン孔を形成する工程と、
前記メインビット軸線に対する前記パイロットビット軸線の位置を調整して、前記メイン孔に対する前記パイロット孔の位置を制御する工程と、を有する方法。
【請求項10】
前記メインビットは、複数の摩耗パッドを有し、前記摩耗パッドと前記パイロット孔の係合により、ほぼ横方向に向けられた力が前記メインビットに付与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パイロットビット軸線の位置は、ステアリングシャフトの向きを制御することによって制御される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステアリングシャフトの向きは、モータを用いて制御される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステアリングシャフトの向きは、ブレーキを用いて制御される、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−523987(P2011−523987A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538951(P2010−538951)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003949
【国際公開番号】WO2009/101476
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】