説明

指標投射手段付きヘルメット

【課題】 ヘルメットを装着して作業を行う者に対する遠隔地の管理者からの指示を、より迅速かつ確実に与えることにより、作業の安全性を向上させることができるヘルメットを提供する。
【解決手段】 ヘルメット10は、カメラ11と、撮影対象に指標を投射するレーザーポインタ12と、撮影された画像を送信する送信手段13と、遠隔地の管理者からの信号を受信する受信手段14と、受信手段に受信された信号に基づいてヘルメット装着者に対する情報を伝達するスピーカー16とを備えており、遠隔地における管理者は、受信手段14に信号を送信することによりスピーカー16を介して装着者に対する情報を提供することができる。これにより、ヘルメット装着者の作業の安全性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影対象に対して指標を投射する指標投射手段を備えた指標投射手段付きヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事や災害復旧活動等の作業現場においては、安全のために作業者はヘルメットを装着する。そして、作業現場における状況や作業目的は様々であるから、現場の状況や作業目的に関する情報を作業者に対して提供することにより、安全な作業に寄与することができるヘルメットが望まれている。
例えば、ヘルメットに装着したカメラにより現場の画像を撮影することが提案されている。これによれば、現場の作業者は撮影した画像の送信による報告を行い、当該報告を受ける者、例えば遠隔地で報告を受ける者は、その画像に基づいて各種の指示や情報を作業者に与えることができる(特許文献1)。
また、ヘルメットのカメラ近傍に配設したレーザーポインタから撮影対象にレーザー光を照射することが提案されている。これによれば、作業者に撮影対象を認識させることができる(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−73910号公報
【特許文献2】特開2007−308855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、現場の状況や作業の目的は様々であるから、上記の従来技術はヘルメットを装着した作業者に対する指示を与えるには必ずしも十分ではない。このため、作業者に対する指示をより迅速かつ確実に与えることによって、作業の更なる安全性の向上に寄与できるヘルメットが望まれている。
【0004】
そこで、本発明は、遠隔地にいる者から作業をしているヘルメット装着者に対して、現場の状況や作業の目的に関する情報を迅速かつ確実に与えることにより、更なる安全性の向上に寄与することができるヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の指標投射手段付きヘルメットは、撮影対象を撮影する撮影手段と、前記撮影対象に指標を投射する指標投射手段と、前記撮影手段により撮影された画像に関する信号を送信する画像送信手段と、ヘルメット装着者に発信された信号を受信する受信手段と、前記受信手段に受信された前記信号に基づいて前記ヘルメット装着者に対する情報を前記受信手段から前記ヘルメット装着者に伝達する情報伝達手段を備えていることを特徴とする。
本発明の指標投射手段付きヘルメットは、前記受信手段により受信された前記信号に基づいて前記指標の投射を制御する指標制御手段を備えているものであってもよい。
前記指標制御手段は、前記受信手段が指標固定信号を受信すると、前記指標固定信号受信時における投射対象に前記指標を保持するように前記指標を投射する方向を制御するものであってもよい。
本発明の指標投射手段付きヘルメットは、前記撮影手段により撮影された前記画像における前記指標の位置が、前記撮影手段から投射対象までの距離に応じて変化するものであってもよい。
前記情報伝達手段は、音声により前記ヘルメット装着者に前記情報を伝達するものであってもよい。あるいは、撮影している映像が、ヘルメット装着者が装着するディスプレーに表示される方式のものであってもよい。ディスプレーは、片方の目の前に置くものが好ましく、更には、半透明で、映像と撮影対象物とが同時に観察できるものが望ましい。
また、前記情報伝達手段は、振動により前記ヘルメット装着者に前記情報を伝達し、装着されたときに直接肌に触れる位置に配置されているものであってもよい。
なお、前記指標投射手段は、前記指標としてレーザー光を投射するものであってもよい。
前記指標投射手段は、前記レーザー光の出力を変化させることができるものであってもよい。
本発明の指標投射手段付きヘルメットは、前記ヘルメット装着者の周辺の状況を検知する状況検知手段と、前記状況検知手段により検知された情報を前記ヘルメット装着者から送信する検知情報送信手段とを備えているものであってもよい。
本発明の指標投射手段付きヘルメットは、前記撮影手段、前記指標投射手段、前記画像送信手段、前記受信手段、前記指標制御手段、前記情報伝達手段、前記状況検知手段、及び前記検知情報送信手段が前記ヘルメットに着脱可能な多機能ユニットとして構成されているものであってもよい。
本発明の指標投射手段付きヘルメットは、前記ヘルメット装着者を特定する装着者特定手段を備えたものであってもよい。
また、前記状況検知手段は、前記ヘルメット装着者が倒れているか否かを検知するものであってもよい。例えば、加速度センサーを利用した倒れセンサーが好ましい。
また、本発明の指標投射手段付ヘルメットは、前記ヘルメットが装着されているか否かを検知する装着検知手段を備えているものであってもよい。
前記装着検知手段は、あご紐の連結の有無に基づいて前記ヘルメットが装着されているか否かを検知するものであってもよい。例えば、あご紐の連結のユニットに電気接点を設け、連結すべき紐が連結されたときに、発生させる信号を利用して、装着検知を行ってもよい。あるいは、ガスセンサー、酸素センサー等のセンサーを用いて、周囲の有毒ガスの有無、酸素不足状態等の検知が行われることも好ましい。
【発明の効果】
【0006】
撮影手段により撮影される範囲内の撮影対象に指標を投射することにより、現場において作業を行っているヘルメット装着者(以下「装着者」という。)は、容易に撮影対象を認識することができる。これにより、装着者は、撮影対象を認識するために何ら視界を遮られることなく、安全に作業をすることができる。また、現場から離れた地点において、現場の監視、現場への指示を行う管理者は、送信手段から送信された画像により、現場の状況と自己の有する情報とを併せて認識することができる。
それゆえ、遠隔地の管理者は、現場の状況と自己の有する情報(含む経験、知識等)とに基づいて、作業者等の安全確保や作業内容に関し適切な判断をすることが可能となる。判断の内容としては、作業の中止を指示することや、救助すべき対象が発見された場合に作業場所の移動を指示すること等があげられる。そして、このような場合には、管理者はヘルメットの受信手段に対して、伝達すべき情報に対応した信号を送信する。例えば、音声信号や、指標の投射を制御する指標制御信号を送信することにより、管理者は装着者に対して安全などに関する情報を提供する。この場合には、指標を基準として用いることができるので、指示や情報の提供を明確に行うことができる。これにより、管理者は装着者に対して迅速かつ確実に情報を提供することができる。
例えば、遠隔地の管理者が現場に配置されているプロパンガス等の危険物の位置に関する情報を有している場合には、管理者は送信手段から送信された画像により、作業者が危険物に近づいたことを認識することができる。このような場合には、管理者は受信手段に対して危険を知らせる特定の信号を送信することにより、例えば、危険を示す音、指標の点滅や動きなどを用いて、現場の作業者に対して危険物の存在を知らせることができる。更に、該危険物の存在位置も伝達することができる。この点が本発明の重要な効果で、単に撮影中心等の認知のために、前記指標、前記指標投射手段があるだけでなく、方向性、位置等を装着者に教えることができるのが重要なポイントのひとつである。
したがって、本発明の指標投射手段付きヘルメットによれば、情報伝達手段により現場において作業をしているヘルメット装着者に対して、管理者が有している情報等を迅速かつ確実に与えることができる。これによって、装着者の作業の安全性を著しく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態について、図1及び図2を参照して以下に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である指標投射手段付きヘルメットの正面図である。図1に示すように本実施の形態のヘルメット10は、カメラ(撮影手段)11、レーザーポインタ(指標投射手段)12、送信手段(画像送信手段)13、受信手段14、指標制御手段(情報伝達手段)15、スピーカー(情報伝達手段)16、バイブレータ(情報伝達手段)17、マイク18、一対のベルト19、顎紐20、顎紐コネクタ(装着検知手段)21、鍔22を備えている。
【0008】
カメラ11は、へルメット10が作業者に装着された状態において、装着者の視線と撮影される方向とが略一致するように、鍔22の上側中央に設けられている。カメラ11は、鍔22の一部が撮影された画像に含まれるように設定されていてもよい。これにより、遠隔地において画像を確認している管理者は、装着者から見てどの方向が撮影されているのかを理解することができるので、画像に基づく指示を出すことが容易になる。なお、カメラ11の撮影方向は、装着者により直接調整されるものであっても、管理者の指示を受信した受信手段14を介して制御されるものであってもよい。
また、指標制御手段15により特別な指示がなされていない状態においては、指標がカメラ11により撮影された画像の略中心に位置するように調整されていることが好ましい。これにより、通常の状態において指標が画像の中心となるので、装着者はカメラ11により撮影される撮影対象及びその周辺について容易に認識することができる。
また、望ましくは、カメラの光軸は、水平よりやや下向きに設定するのが良い。人間の頭の位置は通常、人が視覚で認識している画像より上方に位置するので、装着者の認識している画像と、管理者の認識している画像が異なる可能性があり、これを防止するためである。
【0009】
レーザーポインタ12は、カメラ11の撮影対象に対して、レーザー光による指標を照射するものである。これにより、装着者は、視界を遮られることなく、カメラ11の撮影対象を容易に認識することができる。ヘルメット10がレーザーポインタ12を備えることにより、例えば、カメラ11により撮影された画像を透過型のモニターによって同時に確認する構成を用いた場合と比較して、広い視界を確保することができる。したがって、作業を行う装着者の安全性を向上させることができる。
なお、本実施の形態のヘルメット10では、レーザーポインタ12を1つのみ備えた構成を開示しているが、レーザーポインタ12を複数備えたものとして構成してもよい。例えば、カメラ11により矩形の画像が撮影される場合には、当該矩形の画像に対応した撮影対象の四隅に指標が形成されるようにすれば、装着者は、カメラ11により撮影されている画像をより正確に認識することができる。また、さらに撮影対象の中心にも指標を形成されるようにしてもよい。
レーザーポインタ12としては、他の作業者や災害の被害者等の目にレーザー光が入った場合にも、危害が生じないレベルの出力(クラス1またはクラス2)のものを用いる。レーザーポインタ12の出力は可変であって、装着者または管理者が容易に出力を変更することができるものであることが好ましい。ヘルメット装着が必要な現場の環境は様々であり、例えば明るい昼間の屋外の現場だけでなく、夜間や煙が立ち込めた建物の中などもあり、環境に応じた調整が必要である。そこで、出力を可変とすることにより、例えば、現場において他者の眼にレーザー光が当たるおそれが全くない場合には、レーザー光の出力を上げることにより撮像対象を示す指標の視認性を向上させることができる。
なお、レーザーポインタ12の出力を可変とする構成を採用する場合には、装着者の側で出力を変更することができる構成、遠隔地の管理者が指標制御手段15を介して変更する構成のいずれとしてもよい。ただし、安全のためレーザーポインタ12のスイッチが入った最初の段階では、低い出力となるように設定されていることが好ましい。
【0010】
送信手段13は、カメラ11と電気的に接続されており、カメラ11により撮影された画像を作業現場以外の遠隔地にいる管理者等に送信するものである。画像送信に用いる通信回線としては、インターネット、電話回線、専用回線等を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、送信手段13は、カメラ11により撮影された画像とともに、マイク18からの装着者の音声を送信することもできる。これによれば、カメラ11の画像によっては確認することができない情報をも遠隔地に送信することが可能となるので、管理者は現場の状況についてより詳しい情報を得て、より適切な指示を与えることができる。なお、遠隔地とは、現場から離れた地点であって、通信手段を介して情報のやり取りをする場所をいう。このため、例えば、作業現場のすぐ近くであっても、通信手段を介して情報のやりとりをしていれば、本実施の形態にいう遠隔地に該当する。
【0011】
受信手段14は、指標制御手段15と電気的に接続されており、遠隔地から送信された信号を受信するものである。この信号により、指標制御手段15がレーザーポインタ12から投射されるレーザー光の投射方向、スピーカー16からの音声の出力、およびバイブレータ17の振動を制御することができる。これにより、作業を行っている装着者は、レーザー光による指標の動き、指標の点滅、音声、振動等により、危険物の存在、危険物の位置といった、安全な作業のために重要な管理者からの情報を得ることができる。
安全を確保するために装着者の注意を喚起する必要がある場合には、指標の動き、指標の点滅、音声、振動等により知らせることができる。この場合、レーザー光の指標の動きと危険情報の内容と対応について詳細に決めておけば、より詳細な情報を迅速に伝達することが可能となる。また、指標の動きに加えて、スピーカー16およびバイブレータ17を用いることにより、管理者は装着者に対して、より詳細な情報を確実に伝えることができる。また、例えば、レーザーポインタ12は、位置の制御がなくても、初期状態は映像の中央に固定されているので、情報伝達手段により装着者が移動すべき方向、位置を音声で伝えると(例えば、左に何歩、移動すると更に微調整の方向を指示)、その位置等を装着者が知ることができる。
【0012】
指標制御手段15は、受信手段14と電気的に接続されており、受信手段14が指標固定信号を受信すると、指標固定信号受信時における投射対象に指標を保持するように、レーザー光の投射方向を制御するものである。したがって、作業現場から離れた地点でカメラ11により撮影された画像を見ている管理者が、指標固定信号を送信して指標を投射する対象物を固定することにより、その時点の指標投射対象に注意を払う必要があることを現場の装着者等に知らせることができる。
すなわち、現場から離れた地点において、情報端末等により画像を確認しながら指標制御手段15を操作している管理者は、危険物等を発見した場合に、レーザー光の指標が特定の対象物上に保持されるようにすることができる。これにより、作業中の装着者は、レーザーポインタ12の指標の動きにより、操作者が情報を伝えようとする意図について容易に気づくことができる。
また、管理者もヘルメット10の受信手段14に対して、指標固定信号を送信することにより、危険物等の対象物に対して指標を容易に保持することができる。これにより、指示者は受信手段14へ音声信号を送信することにより、スピーカー16等を介して音声による詳細かつ具体的な指示や情報の提供を行うことが容易になる。音声による指示や情報であれば、作業中に視界を奪われることがないので、安全な作業を行うために好ましい。
投射対象に指標を保持するようにする方法は特に限定されるものではないが、例えば、指標固定信号受信時における画像の指標近傍画像を解析し、カメラ11により撮影された画像における指標近傍画像を追跡する方法等を用いることができる。
【0013】
スピーカー16は、受信手段14と電気的に接続されており、受信手段14により受信された信号に基づいて装着者に対して情報を伝達するものである。スピーカー16を介して音声により情報を伝えることができるので、作業者に対してより多くの情報を確実に伝えることが可能となる。
また、遠隔地から作業者に対して情報を提供する管理者は、音声による情報を伝える際に、レーザーポインタ12によって対象物に照射された指標を基準として、相対的な位置(上下左右・前後左右など)を示した上で情報の伝達や指示をすることができる。これにより、現場で作業をしている装着者に対して指標を基準とした明確な情報を容易に伝達することが可能となるので、作業の安全性を向上させることができる。
【0014】
バイブレータ17は、受信手段14と電気的に接続されており、受信手段14の受信した信号に基づいて、装着者に対して振動による情報を伝達するものである。バイブレータ17は、ヘルメット10が装着された状態において、直接肌に触れる位置に配置されている。このため、作業を行っている装着者は、バイブレータ17の振動を直接肌で感じることができるので、情報を確実に認識することができる。なお、ここで、直接肌に触れる位置に配置されているとは、ヘルメット内部にバイブレータ17を配置する場合、バイブレータ17と頭皮との間に髪の毛が介在する場合をも含んでいる。
なお、本実施の形態においては、スピーカー16とバイブレータ17とを別体として構成しているが、両者を一体のものとして構成してもよい。例えば、スピーカー16を耳掛け型としてバイブレータ17を組み込むこととしてもよい。
【0015】
ヘルメット10は、側面両側に一対のベルト19が設けられており、ベルト19は顎紐20により繋がれている。装着者はヘルメット10を被り、顎の下で顎紐コネクタ21によって顎紐20を繋ぐことにより、ヘルメット10を装着することができる。装着者がヘルメット10を装着していないときには、通常、顎紐コネクタ21は外されている。このため、顎紐コネクタ21が繋がれているか否かを検知することにより、ヘルメット10が作業者に装着されているか否かを容易に検知することができる。なお、検知する方法としては、例えば電気的な手段を用いることができる。
なお、バイブレータ17をベルト19や顎紐20の内側、すなわちヘルメット10が装着された状態において、装着者の顔や頭に触れる側に設けることにより、ヘルメット10が装着された場合に、直接肌に触れる位置にバイブレータ17を配置することができる。
【0016】
図2は、ヘルメットのカメラからの画像を遠隔地の情報端末に表示した状態を示す説明図である。
図2に示すように、ヘルメット10は、カメラ11の近傍にレーザーポインタ12を備えているので、撮影対象にレーザーポインタ12による指標32を付した状態で画像を撮影することができる。これにより、カメラ11により撮影される画像31は、指標32が付された状態で、情報端末30に表示されることとなる。したがって、遠隔地において情報端末30の操作を行う管理者は、指標32を基準として、ヘルメット10の装着者に対する情報の提供や指示をすることができる。
遠隔地において情報端末30を操作する操作者による指示がなされていない場合には、図2に示したように、指標32が画像31の中心となるように、カメラ11の撮影方向とレーザーポインタ12の指標投射方向とを設定しておくことが好ましい。本実施の形態のヘルメット10は、カメラ11の近傍にレーザーポインタ12が設けられているので、ヘルメット11の撮影方向とレーザーポインタ12の投射するレーザー光の光軸とを一致させることにより、カメラ11により撮影された画像31の中心に位置させることができる。これにより、操作者は、指標32の位置を基準として装着者に対する情報を容易に提供することができる。
【0017】
また、カメラ11の撮影方向とレーザーポインタ12の光軸とがずれるように設定すれば、画像31における指標32の位置をカメラ11から撮影対象までの距離に対応して変化させることができる。なぜなら、カメラ11の撮影方向とレーザーポインタ12の光軸の方向とを異ならせることにより、カメラ11から撮影対象までの距離が大きくなるに伴い、指標32の画像31の中心からの距離も大きくなるからである。
したがって、管理者は、装着者から画像31に写っている撮影対象物までの距離を、画像31における指標32の位置(中心からのずれ)に基づいて判断することができる。これにより、操作者は、画像31のみから判断することが困難である作業者から撮影対象物までの距離をふまえて、情報の提供や指示をすることが可能となる。
なお、カメラ11により撮影された画像31における指標32の変化は、画像31の中心からの指標32までの位置の変化に限られず、カメラ11から撮影対象までの距離に関する情報を操作者が得られるものであればよい。例えば、レーザーポインタを円錐型に照射すれば、距離に応じてレーザーポインタが広がり、その半径から、平面のモニターを見ている管理者にとって撮影対象までの距離が把握できる。さらに、単位面積当たりの出力が弱まるので、捜索対象が人の場合、レーザーが目に入ったとしても危害が生じにくい。
【0018】
(実施の形態2)
本発明の他の実施の形態について、図3を参照して以下に説明する。
図3は、本発明の他の実施の形態である指標投射手段付きヘルメットが多機能ユニットと本体とが分離された状態を示す右斜視図である。
図3に示すように本実施の形態のヘルメット40は、分割可能な多機能ユニット50と本体60とから構成されている。以下では、上述した実施の形態において説明した構成と同一の機能を奏する要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0019】
図3に示すように、多機能ユニット50は、カメラ11、レーザーポインタ12、受信手段14、指標制御手段15、凸部51、出力端子(情報伝達手段)52、メモリ素子用スロット(装着者特定手段)53、状況検知手段54、及び送信手段(画像送信手段、検知情報送信手段)55を備えている。本体60は、ベルト19、顎紐20、顎紐コネクタ21、鍔22、溝部61、凹部62、切り欠き部63を備えている。
多機能ユニット50は、本体60の溝部61にはめ込んで固定されるように構成されており、凸部51と凹部62とが係合することにより本体60と一体となる。凸部51と凹部62との係合は、所定の方法により容易に外すことができ、多機能ユニット50が不要な場合には、本体60から取り外すことができる。
出力端子52は、受信手段14と電気的に接続されており、受信手段14により受信された信号に基づいて出力するものである。例えば、出力端子52にイヤホンのジャックを挿入することにより、装着者は耳の穴に入れたイヤホンから音声情報を得ることができる。
メモリ素子用スロット53は、本体60の装着者を特定する所定のカードを挿入するためのものであり、送信手段55と電気的に接続されている。これにより、遠隔地の管理者は、メモリ素子用スロット53に挿入された所定のカードにより、送信手段55を介して送信された情報に基づいて、多機能ユニット50を使用している者を特定することができる。
【0020】
本体60には切り欠き部63が設けられているので、装着者は本体60に多機能ユニット50を装着した状態においても、切り欠き部63から所定のカードを挿入することができる。なお、切り欠き部63の代わりに、本体60の一部に本体60の使用者を特定する情報を備えた情報記憶媒体をあらかじめ設けておき、多機能ユニット50が本体60の溝部61にはめ込まれることにより、自動的に当該情報記憶媒体がメモリ素子用スロット53に挿入される構成としてもよい。これによれば、本体60が作業者毎に割り当てられている場合には、多機能ユニット50と本体60とを一体とすることにより、自動的にヘルメット40を装着している装着者を特定することができる。
本実施の形態のように、多機能ユニット50と本体60とを別体として構成することにより、多機能ユニット50を複数の者で共有することが可能となる。この場合には、高価な多機能ユニットを必要に応じて使用することができるので、コストの削減をすることができる。しかし、多機能ユニット50を共有した場合には、多機能ユニット50によって装着者を特定することができない。そこで、本実施の形態のヘルメット40は、メモリ素子用スロット53を多機能ユニット50に設けることにより、このような場合においても、装着者を特定する情報が記録されたカード等のメモリ素子をメモリ素子用スロット53に挿入すること等により、装着者を特定することが可能となる。
【0021】
状況検知手段54は、その周囲の状況や装着者の状況を検知するものである。そして、電気的に接続された送信手段55を介して、遠隔地の管理者等に検知された状況を送信する。状況検知手段54によって検知される状況や情報としては、例えば、外気温、脈拍、体温等が挙げられる。これらの情報を検知することにより、例えば、作業者が熱射病の危険が高い状況下にある場合に、このような状況を状況検知手段54により検知し、遠隔地の管理者に提供することができる。これにより、管理者は、現場において作業をしている他の作業者に対して当該情報を提供することができるので、現場における危険の発生を未然に防止することが可能となる。
状況検知手段54は、装着者が倒れていることを検知する機能を備えていてもよい。状況検知手段54がこの機能を備えている場合には、送信手段55により当該情報を送信することにより、作業現場において装着者が倒れていることを遠隔地の指示者に知らせることができる。当該情報を得た管理者は、出力端子52からの出力、あるいは、レーザーポインタ12の投射する指標の動きを制御することにより、現場における他の装着者に倒れた者がいることを知らせることができる。あるいは、送信手段55から情報を受けた情報端末が自動的に他の装着者に知らせることとしてもよい。
【0022】
上記のように管理者や情報端末を介して情報を知らせる方法の他に、現場で作業している他の装着者に情報を直接知らせる構成としてもよい。例えば、大きなアラーム音や、危険を示す特定の光を発する手段をヘルメット40に設けてもよい。これにより、状況検知手段54により装着者が倒れていることが検知された場合に、これらの手段が音声や光を発することにより、他の作業者に対して装着者が倒れたことを直接知らせることができる。
共有されている多機能ユニット50使用している装着者が倒れた場合にも、メモリ素子用スロット53により倒れた装着者を特定することができるので、遠隔地の管理者はより適切な対応についての指示や情報を他の装着者に提供することが可能となる。
また、多機能ユニット50にGPSやスマートロケーターなどを設けてもよい。これによって、現場において作業をしている装着者の位置を把握しておくことができるので、例えば、倒れた者の近くで作業している者に、近くで緊急事態が生じたことを知らせることができる。したがって、上記の構成によれば、より迅速に作業者を救助することができる。
装着者が倒れているか否かの検知は、例えば、ヘルメットの水平度を基準として、一定時間以上継続して水平度が所定の範囲内の値を継続している場合や、ヘルメットの動きが一定時間以上継続して止まっている場合になされる。
【0023】
ここで、例えば、作業者がヘルメットを装着せずに休憩している場合や、作業者がヘルメットを外して現場から離れた場合にまで、装着者が倒れていると検知されると、現場において不要な混乱が生じたり、検知の信頼性の低下が生じたりするため、これを防止する必要がある。
そこで、本実施の形態のヘルメット40は、ヘルメットが装着されているか否かを検知する装着検知手段を備えており、装着されていない場合には、状況検知手段54が検知しないこと、または送信手段55による送信をしないことにより、誤報が生じることを防止している。具体的には、装着検知手段として、顎紐コネクタ21により顎紐20の連結の有無を電気的に検出することにより、状況検知手段54により装着者が倒れていることが誤って検知されることを防止している。
なお、送信手段55により装着者が倒れていることを送信する前に、出力端子52からの出力により装着者に対して送信してもよいかを確認し、装着者が送信ストップを指示するスイッチ(図示せず)を操作しなかった場合にのみ送信をする構成としてもよい。例えば、装着者が動かなくなったことを検出して30秒経過したときに、装着者に対し警告音(アラーム)を鳴らし、その後15秒間装着者によってなんらの操作がなされなかったときは、送信手段55により装着者が倒れていることを送信するようにしてもよい。しかし、この構成では、作業者がヘルメットを外して現場から離れた場合や、休憩時間にヘルメットを外した場合など、状況検知手段54のスイッチを切り忘れた場合の送信手段55による誤送信を防止することができないという問題がある。これに対して、顎紐コネクタ21によってヘルメットが装着されているか否かを検知することにより、上記のような誤送信を防止することができる。もちろん、上記のような警告音(アラーム)と組み合わせることにより、さらに誤送信の防止を図ることができる。
なお、ヘルメット装着の有無の検知は、上述した顎紐コネクタ21の連結を検出する方法以外に、ヘルメット内部のヘッドバンドにセンサーを設ける方法ことや、無線LANを用いている場合にはその容量変化による人体の有無を検出する方法により行うことができる。
【0024】
なお、多機能ユニット50は、このような機能をもたないヘルメットに比べて高価であるので、現場において作業を行う全ての者に装着させることが困難な場合もある。このため、ダミーのユニットを製作しておいてもよい。これによれば、例えば、多機能ユニット50により装着者の作業の管理をする場合等に、誰の映像が遠隔地の管理者に送信されているかにつき、装着者に気づかせることなく作業をさせることが可能となる。
また、多機能ユニット50の操作に用いるスイッチは、例えばシートスイッチとして構成することができる。この場合、シートスイッチの位置は、装着者が手探りでも解るよう明確にしておくことが好ましい。これにより、誤操作の発生を避けることができる、例えば、スイッチの種類毎に異なる形状のくぼみを設けたり、シート状のスイッチを目で確認することができる位置に引き出すことができる構成にすることにより、スイッチの位置を明確化することができる。
ヘルメットの各機能を奏する手段への電力を供給する電池は、繰り返し充電可能な二次電池とすることが好ましい。また、充電方法は特に限定されるものではないが、作業を終えてヘルメットをラックにかけることにより自動的に充電することとしてもよい。これによれば、充電忘れによる電池切れを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の指標投射手段付きヘルメットは、建築作業や土木作業等の工事現場における頭部保護用のヘルメット、オートバイ等の車両用のヘルメット、火災や地震等の震災時における頭部防護用のヘルメットに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態である指標投射手段付きヘルメットの正面図
【図2】ヘルメットのカメラが撮影した画像を遠隔地の情報端末に表示した状態を示す説明図
【図3】本発明の他の実施の形態である指標投射手段付きヘルメットが多機能ユニットと本体とが分離された状態における概略を示す右斜視図
【符号の説明】
【0027】
10、40 ヘルメット
11 カメラ(撮影手段)
12 レーザーポインタ(指標投射手段)
13 送信手段(画像送信手段)
14 受信手段
15 指標制御手段(情報伝達手段)
16 スピーカー(情報伝達手段)
17 バイブレータ(情報伝達手段)
18 マイク
21 顎紐コネクタ(状況検知手段)
50 多機能ユニット
52 出力端子(情報伝達手段)
53 メモリ素子用スロット(装着者特定手段)
54 状況検知手段
55 送信手段(画像送信手段、検知情報送信手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象を撮影する撮影手段と、前記撮影対象に指標を投射する指標投射手段と、前記撮影手段により撮影された画像に関する信号を送信する画像送信手段と、ヘルメット装着者に発信された信号を受信する受信手段と、前記受信手段に受信された前記信号に基づいて前記ヘルメット装着者に対する情報を、前記受信手段から前記ヘルメット装着者に伝達する情報伝達手段とを備えていることを特徴とする指標投射手段付きヘルメット。
【請求項2】
前記受信手段により受信された前記信号に基づいて前記指標の投射を制御する指標制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項3】
前記指標制御手段は、前記受信手段が指標固定信号を受信すると、前記指標固定信号受信時における投射対象に前記指標を保持するように前記指標を投射する方向を制御することを特徴とする請求項2に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項4】
前記撮影手段により撮影された前記画像における前記指標の位置が、前記撮影手段から投射対象までの距離に応じて変化することを特徴とする請求項1に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項5】
前記情報伝達手段は、音声により前記ヘルメット装着者に前記情報を伝達することを特徴とする請求項1に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項6】
前記情報伝達手段は、振動により前記ヘルメット装着者に前記情報を伝達し、装着されたときに直接肌に触れる位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項5に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項7】
前記指標投射手段は、前記指標としてレーザー光を投射することを特徴とする請求項1に記載の指標投射手段付ヘルメット。
【請求項8】
前記指標投射手段は、前記レーザー光の出力を変化させることができることを特徴とする請求項7に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項9】
前記ヘルメット装着者の周辺の状況を検知する状況検知手段と、前記状況検知手段により検知された情報を前記ヘルメット装着者から送信する検知情報送信手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項10】
前記撮影手段、前記指標投射手段、前記画像送信手段、前記受信手段、前記指標制御手段、前記情報伝達手段、前記状況検知手段、及び前記検知情報送信手段が前記ヘルメットに着脱可能な多機能ユニットとして構成されていることを特徴とする請求項9に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項11】
前記ヘルメット装着者を特定する装着者特定手段を備えていることを特徴とする請求項10に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項12】
前記状況検知手段は、前記ヘルメット装着者が倒れているか否かを検知することを特徴とする請求項9に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項13】
前記ヘルメットが装着されているか否かを検知する装着検知手段を備えていることを特徴とする請求項12に記載の指標投射手段付きヘルメット。
【請求項14】
前記装着検知手段は、あご紐の連結の有無に基づいて前記ヘルメットが装着されているか否かを検知することを特徴とする請求項13に記載の指標投射手段付きヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−185155(P2010−185155A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31123(P2009−31123)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000149930)株式会社谷沢製作所 (48)
【Fターム(参考)】