説明

指紋検出器

少なくとも部分的な熱伝導面(10)、好ましくは指紋、のパターンを測定する方法および装置であって、試験される面の実質部分に熱的に接触された複数の検出部材(15)を加熱し、各検出部材における温度変化を測定して、各検出部材の供給エネルギーに対する熱損失に相当する信号を発生させ、各検出部材における前記信号を配列して検出部材における熱損失に基づいてセグメント化された画像を形成するようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
指紋検出器 本発明は部分的伝熱面におけるパターン、好ましくは指紋、を測定する方法および装置に関する。
クレジット・カードが偽造される危険性が高まり、またパターン認識アルゴリズムの利用性が著しく増大する結果として、最近は指紋を利用しての識別が目に付くようになってきた。指紋を認識する幾つかの装置はすでに市場で入手することができる。指紋を登録するのに使用される技術は様々である。
これまで周知の解決法の幾つかは、一つ以上の波長を有する光を使用した光学的技術に基づくものである。それらの方法は指紋および検出面のいずれにおける塵埃および汚れにも敏感であり、したがってその両方を清浄にしなければならない。
これに代わる他の方法は圧力測定法である。しかしながらこの方法は、検出器が少なくとも部分的に従動性の面を有していなければならないために、検出面が機械的な摩耗および損傷に敏感となる欠点を有している。
この種の検出器は、各種の、またときには過酷な状況のもとで長期間の使用に供されるので、検出器は強靭な面を有すること、指紋や検出器における汚れにできるだけ鈍感であること、そして検出器の電気回路に支障を及ぼしかねない外部からの干渉や電磁放電を避けるために電気的に遮蔽できることを必要とする。それまでの使用における潜在的な指紋によって撹乱されることなくほとんどすべての指紋を読取ることができなければならない。同様に、パターンがすでに目で見ることのできないような擦り減った指紋を読取ることができなければならない。
例えばクレジット・カードのような或る種の例では、検出器を小型に作り得ることも利点となる。
費用の点から、簡略化および部品点数の最少化の要求もある。
関心の持たれる代替例は、「谷」と「稜線」との間の温度差を用いて指紋のパターンを測定する方法である。しかしながらこの方法は、非常に敏感な検出装置を要求し、また様々な環境下による温度状況の変化に関して敏感でなければならない。この種の検出器は、ノルウェー国特許第153193号および英国特許第4429413号により周知である。
本発明の目的は、容易に製造でき、安価に製造できるようになし、また識別カードやクレジット・カードなどに一体形成できるほど小さな寸法を有する検出器を提供することである。付加的な目的は、指紋および検出器の汚れにできるだけ鈍感で、長期間にわたり保守せずに使用できる検出器を作ることである。
本発明によれば、周知の解決法に係わる問題点は請求の範囲第1項の記載を特徴とする方法を使用することで、また請求の範囲第7項に記載された検出装置を使用することで、解決される。
本発明は、検出器に接触した面、好ましくは指紋、における熱伝導率の差を測定して熱的構成を検出することに関する。これは周囲温度に影響されない測定を可能にする。
塵埃および汚れは、他の同様な方法に比べて検出器の測定で重大な問題とはならない。検出器上に比較的滑らかな薄い層の汚れがあると、その汚れは画面のコントラストに或る程度の影響は与えるが、それでも指紋(押印模様)は読取れる。測定される熱的構成に影響を与えるほど多量の塵埃は、測定エラーを引き起こすことになり得る。
熱伝導率は、測定すべき物体を接触された検出器を加熱し、与えたエネルギーに対して結果的に生じた温度(相対温度)の変化を測定することによって、測定される。被測定物体の熱伝導率が高いほど、温度の局部的変化が小さくなる。熱伝導率は、或る時間にわたって積分されるか、あるいは加熱の開始後または停止後の選択した時点で、時間の関数として測定される。複数の測定値、すなわち各測定部材における連続した温度管理が、熱容量の計算を可能にするとともに、測定物体の熱伝導率の測定値を与える。
加熱そのものは様々な方法で実行できる。全検出器を連合しての加熱は一つの可能性である。連合加熱を得るために、検出器に連結された他の電気回路で発生された熱を利用することができる。
本発明の好ましい実施例において、各別個の温度検出器に別個の熱源が使用され、これは各位置における制御された正確な測定値を与えるもので、これによりこの装置および方法は局部的な温度変化に鈍感となるようにされる。これもまた好都合である。何故なら、与えられるエネルギーは各温度検出器の位置で制御でき、これが温度制御を改善するからであり、またエネルギー源を面および被測定物体に接近して配置でき、したがって被加熱質量体が接近しているのでエネルギーの使用量は少なくなり、応答も速くなるからである。
本発明は開示した図面を参照して、詳細に説明される。
図1は、検出器システムの一部分の概略横断面を示している。
図2は、指紋および検出器の間の接触面の詳細を示している。
図3は、図2と同じ状態ではあるが、指紋が磨滅した状態を示している。
図4は、基本的には図2と同じ状態ではあるが、検出器に連結された電気回路の概略図を加えた状態を示している。
図5は、温度検出器回路の概略図を示している。
図1には他の回路に対する検出器の位置の概略図が示されている。検出器1は指紋と直に接触する。このシステム回路4は、他にもいろいろあるが、検出器1からのデータ収集を制御および管理するために備えられている。検出器1の下側には、他の電気システム回路4との間の熱の遣り取りを制限するために断熱、または部分断熱する材料2から成る層を備え得る。断熱性を向上させるために、層は各検出部材の下側にキャビティを備え得る。システム回路4からの熱が熱伝導の測定に使用されるならば、この層は薄く作り得る。
システム回路4および断熱層2の間には伝熱層3が示されており、この伝熱層は検出器上の異なるシステム回路5からの熱を一様に分散させるようにする。このように滑らかで正確な測定が確保される。
この検出器の物理的な厚さは様々であるが、識別カードに関係して使用される、すなわち識別カードに取付けられるならば、その厚さはできるだけ薄いことが好ましく、システム回路5を含めて0.5mm未満であるのが好ましい。
検出器に使用される最も関心の持たれる材料は、以下のものである。電気回路は半導体材料、好ましくは周知のシリコンまたはガリウム砒素(GaAs)技術によって作られ、また電気的および熱的な絶縁はSiO2または半導体材料を直に取付けることができるようにする他の材料を使用して与えられる。導電体はアルミニウムで作られるのが好ましく、また半導体に良く使われる金や他の材料で作られる。代替例は重合体をベースとした半導体、導電体および絶縁材を使用するもので、こらは大きな柔軟性および弾性を与えるので、クレジット・カードおよび識別カードに関して好都合である。
図2は検出器と指紋との間の接触面の詳細を示しており、検出器はそこに矢印で示す一様な熱源によって加熱される。指紋はそれらの間に谷14を備えた稜線13を有している。皮膚は外皮10(表皮)で形成され、その内側の部分11には血液が循環している(円形矢印で示されている)。稜線13の内側には乳頭12があり、他にもいろいろあるが乳頭には血液が循環している。稜線13が検出器と接触して、加熱され、そして指を流れる循環血液が熱を運び去る。谷では検出器の表面は二つのメカニズム、すなわち谷14内に含まれる空気の放射および熱伝達によって本質的に冷やされる。これらの冷却機構は稜線13における熱伝導ほど効率は良くなく、稜線13で測定される相対温度TSRとそうでない相対温度TSVとの間に差が生じる。これらの温度は温度検出器15を使用して測定し得る。すべての温度検出器15による測定値が集められ、供給されたエネルギーに関する情報を用いて指紋を表すパターンが作られる。
温度検出器15の温度は、一つ以上の時点で、すなわち連続的に測定し得る。
複数の、または連続的な測定値を用いることで、熱伝導率に加えて様々な測定点における有効熱容量を表す画像が得られる。汗腺8およびその周囲の水含有率が高いことにより熱容量の大きな皮膚細胞9(汗分散部(sweat diffusion))は指紋の稜線内に構成されており、この熱容量の差が稜線と谷とを識別する検出器の能力を向上させる。
検出器は温度を測定するので、或る検出器からの出力信号は本質的に指紋の測定点での熱伝導に逆比例する。これらの信号の配列が熱伝導率の分布を表すパターン、したがって指紋、を与えることになる。
まず第一に温度検出器15は通常の電気部品であるが、他の測定技術、例えば光または音響による測定技術を使用し得ることは明らかである。
測定される指紋のコントラストは供給熱量を増やすことで高め得る。熱伝導率の差があることで熱を奪われることのない部分はその他の部分よりも急速に温度が高まる。これが画像の巧みな処理または他の拡大計算を用いることなく信号のコントラストを増大させる直接的な方法を与える。
図3は同様ではあるが、指紋の稜線が磨滅して、したがって指紋が実際に目視できなくなった状態を示している。この状況における熱伝導率の差は外皮10の厚さで与えられる。以前に稜線13であった部分では、以前に谷14であった部分に比較して相変わらず大きな熱伝導率が測定される。これは検出器から血液の循環する部分までの距離が乳頭の存在によって谷の部分14における距離dVよりも小さいからである。したがって稜線部分に供給された熱量は谷部分に供給された熱量よりも一層効率的に運び去られる。それ故に、この種の指紋は有効熱容量の差に加えて、熱伝導率の差によっても登録し得る。
図4は検出器の電気回路の可能とされる配置を示す概略図を示している。指紋に最も接近して導電性の接地された層20が描かれており、この導電層20は例えばアルミニウム、または他の導体または半導体材料で作られて、周囲からの電気的乱れを回避し、また放電して検出器に害を与えるのを防止する。層20は機械的抵抗材料25、例えばSiO2、Si34またはα−Al23、で作られた層を含み、機械的応力および化学的腐食から検出器を保護する。これらの層20,25は指紋に対する熱移送を妨げないように、また測定に悪影響を及ぼさないように十分に薄いことが好ましい。
検出部材15の間には、それらの間の熱伝導を制限するための断熱部分23が形成されている。実際に、検出部材15は相互に断熱し合うために断熱部分によって囲まれる。しかしながら、本発明の範囲内において、或る程度の熱伝導が検出部材15の間で許されるようになされた興味ある実施例がある。これは、他にもいろいろあるが、拡大計算を用いないで望ましくない局部的な温度変化の作用を抑制する、すなわち画像のノイズを減少させるようなフィルター効果を与え得る。
部材間の熱伝導は多くの方法で、例えば断熱部分の物理的な寸法および形状、材料の選択、または熱を伝えるように導電層20の厚さを調整することで選定し得る。
供給熱量の増大と、検出部材の間の許され、制御された熱伝導との組合わせによって、信号を滑らかにする一方でコントラストを維持し得る。
断熱部分は例えばSiO2または同様材料で作り得る。製造の観点から好ましいとされる実施例は、断熱材料が図1の断熱層2と同じであるか共存できる材料とされ、また断熱層2に連結されるものである。電気回路を集積しての製造を可能にする材料の選定も製造工程に好都合となる。
図示実施例での各検出部材15は既知の熱量を発生する対応する加熱部材21を有している。図示実施例では、加熱部材21はVkにより、また電気接点スイッチ24の使用により中央制御される。しかしながら、熱源の局部的な制御を与えるために各加熱部材の個別制御を備えた回路を与えることが可能である。これを達成できる技術を以下に説明する。電気接点スイッチ22、例えば二重ゲート式モス電界効果(MosFET)トランジスタ、を使用して温度検出器からの信号が処理され、制御される。
図5には温度検出器の回路の概略図が示されている。図示実施例では、検出器はこれまで説明したセグメント化された画像の一つのピクセルに対応する512×512検出器ユニット30で構成され、これらのユニットは通常の方法でグループにて別々にまたは同時に読取り得る。この検出器の物理的寸法は測定する指紋に応じて様々に変更し得るが、約13×13mm2から始まる。ピクセル寸法は指紋の構造の画像を形成するために十分小さくなければならない。上述の寸法を使用すれば、ピクセルは約25.4×25.4μm2の寸法となる。検出器は一般的な半導体技術を使用して一体的に作られ、重合技術を用いても可能である。
行レジスタ31および列レジスタ32は検出器の一部として、またはシステム回路の一部として配備することができるとともに、別々のピクセルからデータを集め、そのデータを処理するために使用し得る。
行レジスタ33および列レジスタ34は検出器またはシステム回路で構成され、各加熱部材の処理および制御に使用し得る。
各検出部材の制御された局部加熱を達成するために、おそらくアクセス時間を調整して対象とするピクセルが繰り返して処理される。したがって電流が検出部材の電気回路を通して繰り返し送られる。これは検出部材に熱を蓄積することになり、選択されたピクセルの熱供給の部分的な制御に使用し得る。
検出器は指紋の測定に関係して上述で説明された。しかしながら、熱伝導率、熱容量および(または)面における熱的構成が様々に異なる他の面に使用し得ることも明らかである。一例は、例えば銀行通帳または同様に構成された面における構造測定である。この検出器は、被測定物の熱的構造に影響を及ぼす限りにおいて、表面に近い一様性の乱れ、例えば亀裂や材料の不均一さ、を検査するのにも使用し得る。

【特許請求の範囲】
1. 少なくとも部分的な熱伝導面、好ましくは指紋におけるパターンを測定する方法であって、 前記熱伝導面内で多数の検出部材が測定されるべき面(10)の実質部分と接触されるようになされ、また該熱伝導面内で前記各測定部材の温度が測定するようになされた方法において、 前記検出部材(15)を熱源で加熱し、 各検出部材の温度を一度または複数回にわたって、または連続して測定し、 各検出部材(15)の測定温度または温度変化を供給熱量と比較して、該検出部材(15)から前記面(10)への熱損失を測定し、および 各単一の検出部材(15)における熱損失を配列して、検出部材から面(10)への熱損失の変化状態に基づいて前記面のセグメント化された画像を形成することを特徴とする方法。
2. 各単一の検出部材(15)の測定値を制御して、別個に読取ることを特徴とする請求の範囲第1項に記載された方法。
3. 各単一の検出部材(15)の加熱を別々に制御すること、例えば対象とする検出部材の局部的な温度検出器を処理することでこれを熱源として作用させるようにして制御することを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載された方法。
4. 前記検出部材(15)が断熱材料(23)を使用して部分的に断熱されていること、および前記断熱材料(23)の熱伝導率が前記検出部材(15)間の温度差を滑らかにするように作用して、前記セグメント化された画像にフィルター効果を与えるようになされていることを特徴とする請求の範囲第1項から第3項までのいずれか一項に記載された方法。
5. 全体的に前記検出器に対する供給熱量を増大すること、または前記各検出部材(15)に対する供給熱量を増大することで、前記セグメント化された画像のコントラストを向上させることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項までのいずれか一項に記載された方法。
6. 前記検出部材を個々に加熱し、 各検出部材に供給する熱量を該検出部材の温度または温度変化に応じて調整することを特徴とする請求の範囲第5項に記載された方法。
7. 少なくとも部分的な熱伝導面(10)、好ましくは指紋、におけるパターンを測定する装置であって、前記面の実質的部分と熱的な接触をするようになされた複数の検出部材(15)と、該各検出部材の温度を測定するようになされた温度検出器(15)とを有する前記パターンを測定する装置において、 前記検出部材を加熱するようになされた一つ以上の装置(21)と、既知の供給熱量および測定温度または温度の変化に基づいて前記各検出部材における熱伝導率に相当する信号を発生する手段とを含み、前記検出部材における熱損失の差に基づいて全体としてのセグメント化された画像を確定するようになっていることを特徴とする装置。
8. 前記検出部材間に部分的に断熱材料(23)を含むことを特徴とする請求の範囲第7項に記載された装置。
9. 各検出部材(15)が個々の熱源(21)を備えていることを特徴とする請求の範囲第7項または第8項に記載された装置。
10. 各検出部材が熱供給を少なくとも部分的に制御するようになされた請求の範囲第7項から第9項までのいずれか一項に記載された装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表平11−503347
【公表日】平成11年(1999)3月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−530923
【出願日】平成8年(1996)4月10日
【国際出願番号】PCT/NO96/00082
【国際公開番号】WO96/32061
【国際公開日】平成8年(1996)10月17日
【出願人】
【氏名又は名称】ディン,ヌゴク,ミン